(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】電子内視鏡及び電子内視鏡システム
(51)【国際特許分類】
A61B 1/04 20060101AFI20230228BHJP
G02B 23/24 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
A61B1/04 520
G02B23/24 B
(21)【出願番号】P 2019005155
(22)【出願日】2019-01-16
【審査請求日】2021-11-05
(31)【優先権主張番号】P 2018015611
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小林 元起
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-158484(JP,A)
【文献】特開2003-180609(JP,A)
【文献】特開2014-113350(JP,A)
【文献】特開2012-254185(JP,A)
【文献】特開2009-201684(JP,A)
【文献】特開2004-113635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00- 1/32
G02B 23/24- 23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織を撮像し撮像画像をプロセッサに伝送する電子内視鏡であって、
生体組織を撮像する撮像素子を先端に備え、体腔内に挿入される挿入部と、
前記撮像素子から伝送される撮像画像の信号を信号処理する電子回路を備え、前記電子回路で信号処理した前記撮像画像の信号をプロセッサに伝送する、前記プロセッサと接続可能に設けられたコネクタと、を備え、
前記コネクタには、前記電子回路の基板を囲む金属製フレームと、前記金属製フレームによって囲まれ、前記電子回路の発熱部品に接続した板状の第1熱伝導部材と、が設けられており、
前記第1熱伝導部材は、前記発熱部品の、前記電子回路側とは反対側の面に設けられている平板であり、前記発熱部品と接続する側の平面の面積が、前記発熱部品と接続する接続領域の面積以上であって前記接続領域の面積の4倍以下の範囲内である、ことを特徴とする電子内視鏡。
【請求項2】
前記金属製フレームは、前記基板の外周を囲み、かつ、前記基板に対して立設した壁面となる面を有し、
前記第1熱伝導部材は、前記金属製フレームの前記壁面によって区画される内側の空間内に位置している、請求項1に記載の電子内視鏡。
【請求項3】
前記コネクタには、前記第1熱伝導部材と接続した第2熱伝導部材が設けられ、前記第2熱伝導部材は、前記基板の両端を挟む前記金属製フレームの壁面同士を接続する、請求項2に記載の電子内視鏡。
【請求項4】
前記第2熱伝導部材は、前記金属製フレームの壁面で挟まれるように
前記金属製フレームの壁面同士を接続する、請求項3に記載の電子内視鏡。
【請求項5】
前記第2熱伝導部材は、板状部材であり、
前記金属製フレームの壁面と接続する前記第2熱伝導部材の接続部分は、前記板状部材の端を折り曲げて形成された折り曲げ面を有し、前記折り曲げ面が、前記金属製フレームの壁面と接続される、請求項3または4に記載の電子内視鏡。
【請求項6】
前記コネクタの、大気と接触する外周面には、第3熱伝導部材が設けられ、
前記第2熱伝導部材は、前記第3熱伝導部材と対向する位置まで延びている、請求項3~5のいずれか1項に記載の電子内視鏡。
【請求項7】
前記第2熱伝導部材及び前記金属製フレームは、前記第2熱伝導部材の熱が前記第3熱伝導部材に伝達される程度に前記第3熱伝導部材に対して離間している、請求項6に記載の電子内視鏡。
【請求項8】
前記第3熱伝導部材は、前記外周面のうち、前記プロセッサと対向するコネクタ対向面に設けられている、請求項6または7に記載の電子内視鏡。
【請求項9】
生体組織を撮像し撮像画像をプロセッサに伝送する電子内視鏡であって、
生体組織を撮像する撮像素子を先端に備え、体腔内に挿入される挿入部と、
前記撮像素子から伝送される撮像画像の信号を信号処理する電子回路を備え、前記電子回路で信号処理した前記撮像画像の信号をプロセッサに伝送する、前記プロセッサと接続可能に設けられたコネクタと、を備え、
前記コネクタには、前記電子回路の基板を囲む金属製フレームが設けられ、
前記金属製フレームの前記基板を囲む面が、前記電子回路の発熱部品が設けられた前記基板の表面、前記表面と反対側の前記基板の裏面、及び前記表面と前記裏面とを繋ぐ前記基板の両側の端面と対向するように、前記金属製フレームは前記基板に対して設けられ、
前記基板を囲む前記金属製フレームの面うち、前記表面に対向する面には、前記金属製フレームによって囲まれた内側の空間内に向かって突出する突出部が設けられ、前記突出部の突出先端が第6熱伝導部材を介して前記発熱部品に接続するように構成されており、
前記第6熱伝導部材は、伝導ジェルである、ことを特徴とする電子内視鏡。
【請求項10】
前記突出先端は、前記発熱部品の面と対向する面を有する、請求項9に記載の電子内視鏡。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の電子内視鏡と、
前記撮像画像の信号を前記電子内視鏡から受けて表示用画像を生成するプロセッサと、を備える、ことを特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項12】
電子内視鏡とプロセッサを少なくとも備える電子内視鏡システムであって、
請求項3~8のいずれか1項に記載の電子内視鏡と、
前記コネクタで信号処理した前記撮像画像の信号を、さらに信号処理する処理回路を備えるプロセッサと、を備え、
前記コネクタの前記金属製フレームには、前記金属製フレームから前記プロセッサと対向するコネクタ対向面に延びる第4熱伝導部材が設けられ、
前記プロセッサの前記コネクタと対向するプロセッサ対向面には、前記プロセッサの内部から延びる第5熱伝導部材が設けられ、
前記第4熱伝導部材と前記第5熱伝導部材は、前記コネクタと前記プロセッサが接続されたとき、互いに当接するように構成されている、ことを特徴とする電子内視鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織を撮像素子で撮像し撮像画像をプロセッサに伝送する電子内視鏡及び電子内視鏡とプロセッサを備えた電子内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
人体内部の生体組織の観察や治療に電子内視鏡システムが使用されている。電子内視鏡システムは、生体組織を撮像素子で撮像して撮像画像をプロセッサに伝送する電子内視鏡と、撮像画像の信号を信号処理して表示用画像を作成するプロセッサを備える。電子内視鏡には、プロセッサと接続するためのコネクタが設けられている。近年、撮像素子で撮像して得られる撮像画像の信号をプロセッサに伝送する前に、信号処理をするために、コネクタに電子部品を搭載した信号処理回路が設けられた電子内視鏡が広まっている。
【0003】
例えば、撮像素子を含む電子スコープ全体の電気的駆動に関する回路が形成された、第一の基板および第二の基板を有し、第一の基板と第二の基板とが重ね合わせて固定された基板構造を備えた電子内視鏡のコネクタが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記コネクタでは、2つの基板を重ね合わせた構造であるため、回路を構成する電子部品の発熱により熱が蓄積され回路の温度が上昇し易い。
一般に、電子内視鏡は、高性能な機能を備え、かつ小型で取り扱い易いことが望まれるため、コネクタは小型化されている。しかも、コネクタ内の回路には高性能な処理能力が要求されるので、電子部品の発熱はいっそう増大し回路の温度上昇は大きい。一方、コネクタには、他のシステムにノイズ障害を与えず、他のシステムや自らのシステムが出すノイズの影響を受けないようにするために(EMC対策のために)、電子部品を搭載した回路の周りを金属製フレームで覆う構成となっているため、金属製フレームで囲まれた空間内の熱は放熱し難い。このため、放熱フィン等を設けても冷却効果は極めて小さく、蓄熱によるコネクタ内の温度の上昇を抑制することは難しい。
【0006】
さらに、近年、高性能な処理能力を確保するために、電子部品としてFPGA(field-programmable gate array)からなる集積回路が用いられる。このため、発熱による温度上昇の問題はより深刻になっている。この結果、回路の動作は不安定になり易く、さらには、電子部品が破損する場合も多くなる。このように、コネクタの小型化と温度上昇の抑制を両立することは、従来の技術では十分にできなかった。
【0007】
そこで、本発明は、小型化されたコネクタにおいて、電子部品を備える電子回路の熱による温度上昇を簡単な構造により抑制することができる電子内視鏡及び電子内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、生体組織を撮像し撮像画像をプロセッサに伝送する電子内視鏡である。当該電子内視鏡は、
生体組織を撮像する撮像素子を先端に備え、体腔内に挿入される挿入部と、
前記撮像素子から伝送される撮像画像の信号を信号処理する電子回路を備え、前記電子回路で信号処理した前記撮像画像の信号をプロセッサに伝送する、前記プロセッサと接続可能に設けられたコネクタと、を備える。
前記コネクタには、前記電子回路の基板を囲む金属製フレームと、前記金属製フレームによって囲まれ、前記電子回路の発熱部品に接続した板状の第1熱伝導部材と、が設けられている。
【0009】
前記金属製フレームは、前記基板の外周を囲み、かつ、前記基板に対して立設した壁面となる面を有し、
前記第1熱伝導部材は、前記金属製フレームの前記壁面によって区画される内側の空間内に位置している、ことが好ましい。
【0010】
前記第1熱伝導部材は、前記発熱部品に比べて熱容量が大きい、ことが好ましい。例えば、前記発熱部品は、シリコンチップ上に設けられた半導体デバイスであり、実質的に前記発熱部品の全質量をシリコン材料が占有していると想定できるので、シリコンの比熱と前記発熱部品の質量を乗算した熱容量の値よりも大きな熱容量を有することが好ましい。
【0011】
前記第1熱伝導部材は、平板であり、前記平板の前記発熱部品と接続する第1の側の平面は、前記発熱部品と接続する接続領域の面積と同じか、それよりも広い、ことが好ましい。前記発熱部品と接続する前記第1の側の平面の面積は、前記接続領域の面積の4倍以下であることが好ましい。
【0012】
前記第1熱伝導部材の体積の、全表面積に対する値(mm)は、前記発熱部品の前記電子回路の基板からの高さ(mm)の0.4倍よりも大きい、ことが好ましい。
【0013】
前記コネクタには、前記第1熱伝導部材と接続した第2熱伝導部材が設けられ、前記第2熱伝導部材は、前記基板の両端を挟む前記金属製フレームの壁面同士を接続する、ことが好ましい。
【0014】
前記第2熱伝導部材は、板状部材であり、
前記金属製フレームの壁面と接続する前記第2熱伝導部材の接続部分は、前記板状部材の端を折り曲げて形成された折り曲げ面を有し、前記折り曲げ面が、前記金属製フレームの壁面と接続される、ことが好ましい。
【0015】
前記コネクタの、大気と接触する外周面には、第3熱伝導部材が設けられ、
前記第2熱伝導部材は、前記第3熱伝導部材と対向する位置まで延びている、ことが好ましい。
【0016】
前記第2熱伝導部材及び前記金属製フレームは、前記第2熱伝導部材の熱が前記第3熱伝導部材に伝達される程度に前記第3熱伝導部材に対して離間している、ことが好ましい。
【0017】
前記第3熱伝導部材は、前記外周面のうち、前記プロセッサと対向するコネクタ対向面に設けられている、ことが好ましい。
【0018】
本発明の他の一態様も、生体組織を撮像し撮像画像をプロセッサに伝送する電子内視鏡である。当該電子内視鏡は、
生体組織を撮像する撮像素子を先端に備え、体腔内に挿入される挿入部と、
前記撮像素子から伝送される撮像画像の信号を信号処理する電子回路を備え、前記電子回路で信号処理した前記撮像画像の信号をプロセッサに伝送する、前記プロセッサと接続可能に設けられたコネクタと、を備える。
前記コネクタには、前記電子回路の基板を囲む金属製フレームが設けられ、
前記金属製フレームの前記基板を囲む面が、前記発熱部品が設けられた前記基板の表面、前記表面と反対側の前記基板の裏面、及び前記表面と前記裏面とを繋ぐ前記基板の両側の端面と対向するように、前記金属製フレームは前記基板に対して設けられ、
前記基板を囲む前記金属製フレームの面うち、前記表面に対向する面には、前記金属製フレームによって囲まれた内側の空間内に向かって突出する突出部を有し、前記突出部の突出先端が第6熱伝導部材を介して前記発熱部品に接続するように構成されている。
【0019】
前記突出先端は、前記発熱部品の面と対向する面を有する、ことが好ましい。
【0020】
本発明のさらに他の一態様は、前記電子内視鏡と、
前記撮像画像の信号を前記電子内視鏡から受けて表示用画像を生成するプロセッサと、を備える、ことを特徴とする電子内視鏡システムである。
【0021】
本発明のさらに他の一態様も、電子内視鏡とプロセッサを少なくとも備える電子内視鏡システムである。当該電子内視鏡システムは、
前記電子内視鏡と、
前記コネクタで信号処理した前記撮像画像の信号を、さらに信号処理する処理回路を備えるプロセッサと、を備える。
前記コネクタの前記金属製フレームには、前記金属製フレームから前記プロセッサと対向するコネクタ対向面に延びる第4熱伝導部材が設けられ、
前記プロセッサの前記コネクタと対向するプロセッサ対向面には、前記プロセッサの内部から延びる第5熱伝導部材が設けられ、
前記第4熱伝導部材と前記第5熱伝導部材は、前記コネクタと前記プロセッサが接続されたとき、互いに当接するように構成されている。
【発明の効果】
【0022】
上述の電子内視鏡システムによれば、小型化されたコネクタにおいて、電子部品を備える電子回路の熱による温度上昇を簡単な構造により抑制することができる。これにより、電子回路の安定した動作を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】一実施形態の医療用の内視鏡の外観斜視図である。
【
図2】(a),(b)は、一実施形態におけるコネクタの内部構造の例を示す図である。
【
図3】(a),(b)は、他の一実施形態におけるコネクタの内部構造の例を示す図である。
【
図4】他の一実施形態であるコネクタの内部構造の断面の一例を示す図である。
【
図5】さらに他の一実施形態のコネクタの内部構造及びプロセッサの内部構造の断面の一例を示す図である。
【
図6】(a)~(c)は、さらに他の一実施形態のコネクタの内部構造及びプロセッサの内部構造の断面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、一実施形態の医療用の電子内視鏡(以降、単に内視鏡という)の外観斜視図である。以下の説明中の前後方向は、内視鏡の可撓管1の先端側を「前方」、ユニバーサルチューブ6の先端側(コネクタ部7側)を「後方」と定義している。
【0025】
医療用の内視鏡は、操作部3と、操作部3から前方に延びかつ可撓性を有する可撓管1と、可撓管1の前方に連結部10を介して連結された湾曲管2と、操作部3から後方に延びるユニバーサルチューブ6と、ユニバーサルチューブ6の後端に固定したコネクタ7と、を備える。操作部3、可撓管1及び湾曲管2内には、複数の湾曲操作ワイヤが挿通される。各湾曲操作ワイヤは、先端部5の後端の側で、先端部5を操作する操作機構に連結され、この操作機構が、湾曲操作ワイヤを介して操作部3の湾曲操作レバー4(湾曲操作機構)に連結される。湾曲管2は、湾曲操作レバー4の操作に応じて任意の方向に任意の角度だけ湾曲する。
【0026】
湾曲管2の前方には、先端部5が設けられている。先端部5は実質的に弾性変形不能な硬質樹脂材料(例えば、ABS、変性PPO、PSUなど)によって構成されており、先端部5の平面からなる先端面には、対物レンズ(観察レンズ)を備える開口、照明レンズが設けられている光出射口、送気・送水口、鉗子口等が設けられている。
【0027】
操作部3、可撓管1、湾曲管2、ユニバーサルチューブ6及びコネクタ7の内部には、その前端が照明レンズに接続する光ケーブルの束であるLCB(Light Carrying Bundle)ケーブルが設けられている。さらに先端部5の内部には対物レンズの直後に位置する撮像素子(図示略)が設けられている。
可撓管1、湾曲管2、先端部5、及び連結部10は、体腔内に挿入される挿入部12を形成する。先端部に設けられた撮像素子から延びる画像信号用ケーブルは、湾曲管2、可撓管1、操作部3及びユニバーサルチューブ6の内部を通ってコネクタ7の内部まで延びている。コネクタ7は、内視鏡用プロセッサ(以降、単にプロセッサという)8に接続される。プロセッサ8は、撮像素子から送られてくる画像信号を処理して、撮像素子で撮像した被写体の画像をモニタ(図示略)に表示するように制御している。プロセッサ8は、生体組織を照明する照明光となる光を出射する図示されない光源装置を備える。光源装置から出射される光は、コネクタ7を経由して、先端部5までLCBケーブル内を伝送される。このLCBケーブルは、ユニバーサルチューブ6及び可撓管1内に設けられている。
【0028】
内視鏡は洗浄及び消毒をして再利用可能な構成とするために、水密、気密性が高く、コネクタ7の内部構造は閉密状態となっている。このため、コネクタ7の外側には、内部構造を閉密にする筐体が設けられている。
【0029】
コネクタ7は、内部構造として、撮像素子から送信される画像信号をプロセッサ8に送信する前に、信号処理する信号処理回路、及び内視鏡の固有情報を記録したメモリを備える。内視鏡の固有情報には、例えば、撮像素子の画素数や感度、動作可能なフレームレート、型番等が含まれる。信号処理回路は、メモリから読み出された固有情報をプロセッサ8に設けられた図示されないシステムコントローラに出力する。
すなわち、内視鏡は、生体組織を撮像する撮像素子を先端に備え、体腔内に挿入される挿入部12と、撮像素子から伝送される撮像画像の信号を信号処理する電子回路である信号処理回路を備え、信号処理した撮像画像の信号をプロセッサ8に伝送する、プロセッサ8と接続可能に設けられたコネクタ7と、を備える。
このようなコネクタ7の信号処理回路には、信号処理回路の発熱によるコネクタ7の温度上昇を抑制するために高温抑制機構が設けられている。
【0030】
図2(a),(b)は、一実施形態におけるコネクタ7の内部構造の例を示す図である。
コネクタ7は、外部に樹脂製の筐体が設けられている。
図2(a)は、筐体が除去されたコネクタ7の内部構造を示す。
図2(b)は、
図2(a)中の内部構造を
図2(a)の紙面左側から右側を見た断面図である。
コネクタ7は、コネクタ7から突出したLCB接続端7aと信号線接続端7bを有する。LCB接続端7aと信号線接続端7bは、プロセッサ8に設けられた穴状のLCB接続端受け部と信号線接続端受け部に、それぞれ挿入されて、プロセッサ8と接続される。LCB接続端7aは、コネクタ7がプロセッサ8と接続されることにより、プロセッサ8内の光源装置の出射口と近接し、光源装置から出射される光が、LCBケーブル内に入射される。信号線接続端7bは、コネクタ7がプロセッサ8と接続されることにより、プロセッサ8の信号線端子と接続され、画像信号、固有情報を含む信号、あるいは内視鏡の動作を制御する制御信号が、プロセッサ8とコネクタ7の信号処理回路との間で送受信される。
【0031】
コネクタ7は、
図2(a)、(b)に示すように、信号処理回路、すなわち電子回路20を備える。
具体的には、コネクタ7には、電子回路20の周囲を囲む金属製フレーム
(金属フレーム)22と、金属製フレーム22によって囲まれ、電子回路20の発熱部品20aに接続した第1熱伝導部材24と、が設けられている。
図2(a)では、第1熱伝導部材24が発熱部品20aに装着される様子が矢印で示されている。発熱部品20aは、例えば、半導体装置であり、FPGA(Field-Programmable Gate Array)が一例として挙げられる。電子回路20は、プリント配線基板上に設けられている。金属製フレーム22は、より詳細には、プリント配線基板の基板面が向く方向を上下方向として電子回路20の上下左右を筒状に取り囲むシールドケース22a(
図2(b)参照)と、電子回路20のプリント配線基板の周囲をプリント配線基板の基板面に対して立設した壁面となって基板の外周を壁面のように取り囲むコネクタフレーム22b(
図2(a)参照)とを、構成部材として含む。筒状のシールドケース22aの電子回路20のプリント配線基板を囲む面は、プリント配線基板の発熱部品20aが設けられた表面、表面と反対側の裏面、及び表面と裏面を繋ぐ側面に対向するように、シールドケース22aは設けられる。
【0032】
電子回路20の周りを覆うように金属製フレーム22を設けるのは、他のシステムにノイズ障害を与えず、他のシステムや自らのシステムが出すノイズの影響を受けないようにするため、すなわちEMC対策のためである。金属フレーム22の、LCB接続端7aと信号線接続端7bの側には、2つの穴があけられているが、この穴はそれぞれ、信号線やLCBを通す穴であり、信号線やLCBで穴は塞がれる。また、金属フレーム22の、LCB接続端7aと信号線接続端7bの側と反対側には、1つの穴があけられているが、この穴は、信号線及びLCBを通す穴であり、信号線及びLCBで穴は塞がれる。したがって、コネクタ7の筐体内では、金属フレーム22によって電子回路20は囲まれているので、筐体外部から電子回路20への空気の流れは存在しない。このため、電子回路20の発熱部品20aからの発熱により、発熱部品20aは高温になり易い。発熱部品20aは、半導体装置等で構成されるので、高温化した状態が続くことは好ましくない。このため、
図2(a),(b)に示す実施形態では、板状の第1熱伝導部材24が電子回路20の発熱部品20aに接続するように設けられる。
【0033】
第1熱伝導部材24は、発熱部品20aの上面に設けられることが好ましい。第1熱伝導部材24と発熱部品20aは、一実施形態によれば、高い伝導ジェルや粘着性のある高熱伝導シートを介して接続されることが好ましい。
【0034】
このような第1熱伝導部材24の材料の比熱は、一実施形態によれば、室温において、800[J/kg/K]以上であることが、発熱部品20aの熱を効果的に低減する点で好ましい。
このように第1熱伝導部材24を発熱部品20aに接続することにより、発熱部品20aの熱を第1熱伝導部材24に拡散することができるので、小型化されたコネクタ7において電子部品である発熱部品20aを含む電子回路20の熱による温度上昇を抑制することができる。特に、コネクタ7では、EMC対策のために、金属フレーム22で囲まれているので、外気の空気を流すことはできず、周知の冷却フィンを設けることはできない。このため、発熱部品20aで発生した熱を板状の第1熱伝導部材24に拡散させて、電子回路20の温度上昇を抑制することが好ましい。
【0035】
したがって、一実施形態によれば、発熱部品20aに比べて熱容量が大きい、ことが好ましい。例えば、発熱部品20aは、多くの場合、シリコンチップ上に設けられた半導体デバイスであるので、実質的に発熱部品20aの全質量をシリコン材料が占有していると想定できる。このため、第1熱伝導部際24の熱容量は、シリコンの比熱と発熱部品20aの質量を乗算した熱容量の値よりも大きな熱容量を有することが好ましい。
【0036】
また、一実施形態によれば、第1熱伝導部材24は、平板であり、平板の発熱部品20aと接続する側(第1の側)の平面の面積は、発熱部品20aと接続する接続領域の面積と同じか、それよりも広い、ことが好ましい。一実施形態によれば、発熱部品20aと接続する第1の側の平面の面積は、接続領域の面積の4倍以下であることが好ましい。この理由は、第1熱伝導部材24が、オーバーハング状に発熱部品20aの上に設けられると、オーバーハング状の第1熱伝導部材24の下部の空間に熱がこもり易くなることを防止するためである。
【0037】
また、一実施形態によれば、第1熱伝導部材24の体積の、全表面積に対する比率(mm)は、電子回路20のプリント配線基板からの発熱部品20aの高さ(mm)の0.4倍よりも大きい、ことが好ましい。このような構成により、第1熱伝導部材24の体積を大きくすることで、熱容量を大きくすることができる。冷却フィンの場合、総面積を大きくするので、冷却フィンの上記比率(mm)は、発熱部品20aの高さ(mm)の0.4倍より小さい。この点で、第1熱伝導部材24は、冷却フィンと異なる。
【0038】
また、金属フレーム22は、プリント配線基板の外周を囲み、かつ、プリント配線基板に対して立設した壁面となる面を有し、第1熱伝導部材24は、金属製フレーム22の壁面によって区画された内側の空間内に位置していることが好ましい。壁面によって区画された空間内に位置するとは、プリント配線基板の法線方向から見て壁面によって囲まれた領域内に位置し、かつ、第1熱伝導部材24が壁面の最上位置から上方に突出しないことをいう。第1熱伝導部材24は、金属製材料が用いられる場合が多い。このため、第1熱伝導部材24を金属フレーム22の壁面で囲むことにより、電子回路20で生成された高周波ノイズが第1熱伝導部材24を経由して電磁波ノイズとして放射されることを防止することができる。
【0039】
図3(a),(b)は、他の一実施形態におけるコネクタ7の内部構造の例を示す図である。
コネクタ7は、外部に樹脂製の筐体が設けられている。
図3(a)は、筐体が除去されたコネクタ7の内部構造を示す。
図3(b)は、
図3(a)中の内部構造を
図3(a)の紙面左側から右側を見た断面図である。
【0040】
図3(a),(b)に示すコネクタ7の内部構造には、
図2(a)に示す発熱部品20aに接続された第1熱伝導部材24に接続した第2熱伝導部材26が設けられている。
図3(a)では、第2熱伝導部材26が第1熱伝導部材24に接続するように装着される様子が矢印で示されている。
このように、第2熱伝導部材26を第1熱伝導部材24に接続するのは、熱容量をさらに増やし、発熱部品20aの熱を第2熱伝導部材26にまで伝導させて、発熱部品20aさらには電子回路20の温度の上昇を抑制するためである。したがって、第2熱伝導部材26の材料は、第1熱伝導材料24と同じ比熱の高い材料が用いられることが好ましい。また、第2熱伝導部材26を設けることにより、コネクタ7の筐体内部の空間と接する表面積が増えるので、内部空間の空気の流れはないにしても、空気を介した熱放射により、第2熱伝導部材26、第1熱伝導部材24、さらには、発熱部品20aの温度の低下を促す。
第2熱伝導部材26と第1熱伝導部材24の接続は、高熱伝導ジェルあるいは高熱伝導シートを介して接続されてもよい。
【0041】
図3(b)に示されるように、第1熱伝導部材24と接続した第2熱伝導部材26は、プリント配線基板の前方-後方の両端を挟む金属製フレーム22の壁面同士を接続するように設けられていることが好ましい。第1熱伝導部材24が第2熱伝導部材26を介して金属製フレーム26と接続されることで、金属フレーム26にも、発熱部品20aの熱が流れ込む部材として機能するので、熱容量は一層大きくなる他、金属製フレーム22の分、コネクタ7の筐体内部の空間と接する表面積が増えるので、内部空間の空気の流れはないにしても、空気を介した熱放射により、金属製フレーム22、第2熱伝導部材26、第1熱伝導部材24、さらには、発熱部品20aの温度の低下を促す。
【0042】
また、一実施形態によれば、
図3(a)に示すように、第2熱伝導部材26は、板状部材であり、金属フレーム22の壁面と接続する第2熱伝導部材26の接続部分は、金属フレーム22の壁面との接続面が広がるように板状部材を折り曲げて折り曲げ面を形成した部分26a,26bを設け、この部分26a,26b(折り曲げ面)が、金属フレーム22の壁面と接続されることが好ましい。このように第2熱伝導部材26に折り曲げ形状を成した部分26a,26b(折り曲げ面)を設けることで、第2熱伝導部材26から金属製フレーム22への熱の移動が容易に行われる。
【0043】
図4は、さらに他の一実施形態であるコネクタ7の内部構造の断面の一例を示す図である。
図4は、コネクタ7とプロセッサ8の接続部分を拡大している。
図4に示すように、コネクタ7は、外表面に筐体7cが設けられ、筐体7cの内部には、
図3に示すものと同じ、プリント配線基板に設けられた電子回路20の発熱部品20a、金属フレーム22、第1熱伝導部材24、及び第2熱伝導部材26が設けられている。筐体7cから突出するLCB接続端7aと信号線接続端7bがプロセッサ8内に挿入されて接続されている。筐体7cは、コネクタ7内の電子回路20の保護のために電気絶縁性を有する樹脂が用いられる。
【0044】
図4に示すように、コネクタ7の、大気と接触する筐体7cの外周面には、第3熱伝導部材28が設けられている。このとき、第2熱伝導部材26は、第3熱伝導部材28と対向する位置まで延びている。具体的には、第2熱伝導部材26が金属フレーム22と接続する部分26bは、発熱部品20aから見て第3熱伝導部材の側に位置する。これにより、第2熱伝導部材26の熱の流れを第3熱伝導部材28の方に向け、冷却を促すことができる。
【0045】
さらに、一実施形態によれば、第3熱伝導部材28は、第2熱伝導部材24及び金属製フレーム22の接続部分に対向するように設けられていることが好ましい。これにより、第2熱伝導部材26の熱が第3熱伝導部材28に容易に伝達される。したがって、発熱部品20aで発生した熱は、第1熱伝導部材24、第2熱伝導部材26、及び第3熱伝導部材28を介して外部に放出されるので、発熱部品20aの温度を低下させることができる。
このとき、第2熱伝導部材26及び金属製フレーム28は、第2熱伝導部材26の熱が第3熱伝導部材28に伝達される程度に、第3熱伝導部材28に対して離間していることが好ましい。第2熱伝導部材26及び第3熱伝導部材28は金属材料が用いられる場合が多く、第2熱伝導部材26及び金属製フレーム22の何れか一方が、第3熱伝導部材28と接触して電気的に導通することは、外部に露出する第3熱伝導部材28が内部構造の電子回路20と導通状態になり易く、電子回路20の電気的保護の点から好ましくない。このように、第2熱伝導部材26及び金属製フレーム28と第3熱伝導部材28とが接触しなくても、適度な離間距離の隙間があれば、この隙間の空気を介してあるいは熱放射を介して、第2熱伝導部材26及び金属製フレーム22から第3熱伝導部材28へ熱は流れる。
【0046】
一実施形態によれば、第3熱伝導部材28は、筐体7cの外周面のうち、プロセッサ8と対向するコネクタ対向面7dに設けられていることが好ましい。第3熱伝導部材28がコネクタ対向面7dに設けられることで、高温になった第3熱伝導部材28を術者が不意に触ることはなく、術者の作業の障害になり難い。
【0047】
図5は、さらに他の一実施形態のコネクタ7の内部構造及びプロセッサ8の内部構造の断面の一例を示す図である。
コネクタ7は、外表面に筐体7cが設けられ、筐体7cの内部には、
図4に示すものと同じ、プリント配線基板に設けられた電子回路20の発熱部品20a、金属フレーム22、第1熱伝導部材24、第2熱伝導部材26が設けられている。ここで、金属製フレーム22には、金属製フレーム22からプロセッサと対向するコネクタ対向面7dに延びる第4熱伝導部材40が設けられている。
図5に示す例では、第4熱伝導部材40は信号線接続端7bを取り巻くように筒状を成して、コネクタ対向面7dから、筐体7cに覆われて突出している。一方、プロセッサ8のコネクタ7と対向するプロセッサ対向面8aには、プロセッサ8の内部から延びる第5熱伝導部材42が設けられている。
図5に示す例では、第5熱伝導部材42は筒状を成して、プロセッサ対向面8aからわずかに突出している。第4熱伝導部材40と第5熱伝導部材42は、コネクタ7とプロセッサ8が接続されたとき、互いに当接するように構成されている。第4熱伝導部材40及び第5熱伝導部材42は、例えば、第1,2熱伝導部材24,26等と同じ材料が用いられることが好ましい。
【0048】
このように、第5熱伝導部材42と第4接続部材40は、コネクタ7とプロセッサ8が接続されることにより当接するので、発熱部品20aの発する熱は、第1熱伝導部材24、第2熱伝導部材26、金属フレーム22、第4熱伝導部材40、及び第5熱伝導部材42に広がる。このため、発熱部品20a、ひいては電子回路20の温度の上昇はより一層抑制される。第4熱伝導部材40、及び第5熱伝導部材42は、筒状を成しているので、熱容量は大きく、発熱部品20a、ひいては電子回路20の温度の上昇の抑制の程度は大きい。
【0049】
図6(a)~(c)は、さらに他の一実施形態のコネクタ7の内部構造及びプロセッサ8の内部構造の断面の一例を示す図である。
上述した発熱部分20aと接続する熱伝導部材は、板状部材であるが、板状部材に限定されない。
図6(a)~(c)に示す形態は、電子回路20を囲む金属フレーム22と、第6熱伝導部材44とを有し、上述した板状の第1熱伝導部材24及び第2熱伝導部材26を有さない。第6熱伝導部材44は、板状部材ではなく、例えば、高い伝導ジェルや粘着性のある高熱伝導シート等の熱伝導材料の部材で構成される。
発熱部品20aは、電子回路20を構成するプリント配線基板上に設けられる。ここで、
図6(a)に示すように、金属フレーム22の一部材である筒状のシールドケース22aの電子回路20を囲む面が、発熱部品20aが設けられたプリント配線基板の表面、この表面と反対側の裏面、及び表面と裏面とを繋ぐプリント配線基板の両側の端面と対向するように、金属製フレーム22はプリント配線基板に対して設けられる。このとき、
図6(b),(c)に示すように、シールドケース22aの上記発熱部品20aが設けられたプリント配線基板の表面に対向する面には、シールドケース22aによって囲まれた内側の空間内に向かって突出した突出部が設けられ、この突出部の突出先端22cが第6熱伝導部材44を介して発熱部品20aに接続するように構成されている。
【0050】
このように、発熱部品20aが、第6熱伝導部材44を介して金属製フレーム22のシールドケース22aに接続されるので、発熱部品20aの熱を、第6熱伝導部材44を介してシールドケース22aに拡散することができるので、小型化されたコネクタ7において電子部品である発熱部品20aを含む電子回路20の熱による温度上昇を抑制することができる。特に、コネクタ7では、EMC対策のために、金属フレーム22で囲まれているので、外気の空気を流すことはできず、周知の冷却フィンを設けることはできない。このため、発熱部品20aで発生した熱をシールドケース22aに拡散させて、電子回路20の温度上昇を抑制することが好ましい。
【0051】
一実施形態によれば、シールドケース22aの突出先端22cは、発熱部品20aの面と対向する面を有する、ことが好ましい。第6熱伝導部材44を介して、突出先端22cの面と発熱部品20aの面とが接続することにより、シールドケース22aへの熱の移動を素早く行うことができる。
【0052】
以上、本発明の電子内視鏡及び電子内視鏡システムについて詳細に説明したが、本発明の電子内視鏡及び電子内視鏡システムは上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0053】
1 可撓管
2 湾曲管
3 操作部
4 湾曲操作レバー
5 先端部
6 ユニバーサルチューブ
7 コネクタ
7a LCB接続端
7b 信号線接続端
7c 筐体
7d コネクタ対向面
8 内視鏡用プロセッサ
8a プロセッサ対向面
10 連結部
12 挿入部
20 電子回路
20a 発熱部品
22 金属製フレーム(金属フレーム)
22a シールドケース
22b コネクタフレーム
22c 突出先端
24 第1熱伝導部材
26 第2熱伝導部材
26a,26b 部分
28 第3熱伝導部材
40 第4熱伝導部材
42 第5熱伝導部材
44 第6熱伝導部材