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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】組電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/209 20210101AFI20230228BHJP
   H01M 50/284 20210101ALI20230228BHJP
   H01M 50/271 20210101ALI20230228BHJP
【FI】
H01M50/209
H01M50/284
H01M50/271 S
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019015367
(22)【出願日】2019-01-31
(65)【公開番号】P2020123519
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】マレリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 伸
(72)【発明者】
【氏名】笹本 和孝
(72)【発明者】
【氏名】堀越 孝一郎
(72)【発明者】
【氏名】小島 直人
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-101498(JP,A)
【文献】特開2017-200282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セルを収容するケースと、
前記電池セルに電気的に接続されているリレーと、
前記リレーの接点端子に接続されているバスバと、
前記ケースとともに前記リレーを挟持する板部を有し、該リレーを覆うカバーと、
前記ケースおよび前記リレーの間と、前記リレーおよび前記カバーの間とに介挿された吸振部材と、を備え、
前記吸振部材はバスバを、前記ケースおよび前記カバーの間の空間に露出させ、
前記板部における少なくとも前記バスバと挟持方向において対向する肉厚部分の肉厚が、前記カバーの特定部分の肉厚より厚く、
前記特定部分は、前記板部において前記吸振部材と当接する部分を含む
組電池。
【請求項2】
請求項1に記載の組電池において、
前記板部は、掛合体に掛合する掛合部分を有し、
前記特定部分は、前記掛合部分を含む
組電池。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の組電池において、
前記肉厚部分は補強リブを有する
組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両などに用いられる組電池では、リレーが用いられていることが一般的である。従来、リレーの動作時に発する動作音を低減することが望まれている。組電池の構造として、複数の電池セルを収容するケースにリレーを固定し、当該ケースをカバーにより覆った構造が知られている(特許文献1参照)。このような構造の組電池においては、リレーが発する動作音はケース側においては、電池セルの重みにより減衰する。また、リレーの消音化のために、リレーのベースを、内部に吸音材を充填した2重構造のケースにより覆うことが提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-125255号公報
【文献】実開昭57-128742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の構成において、リレーの動作音がカバーに伝達されると伝達された動作音は外部に放射されうる。また、特許文献2の構成においては、リレーにおける動作音を発する接点に直接接続されている外部接続端子が露出しているため、外部接続端子を介して放射される動作音がカバーなどに伝達され、当該伝達された動作音が外部に放射されうる。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、外部に放射する動作音を低減する組電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の第1の観点に係る組電池は、
電池セルを収容するケースと、
前記電池セルに電気的に接続されているリレーと、
前記リレーの接点端子に接続されているバスバと、
前記ケースとともに前記リレーを挟持する板部を有し、該リレーを覆うカバーと、
前記ケースおよび前記リレーの間と、前記リレーおよび前記カバーの間とに介挿された吸振部材と、を備え、
前記吸振部材はバスバを、前記ケースおよび前記カバーの間の空間に露出させ、
前記板部における少なくとも前記バスバと挟持方向において対向する肉厚部分の肉厚が、前記カバーの特定部分の肉厚より厚く、
前記特定部分は、前記板部において前記吸振部材と当接する部分を含む
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、外部に放射する動作音を低減する組電池を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る組電池の構成を示す分解図である。
図2図1のケースおよびセルホルダの内部構造を示す部分分解図である。
図3図1の組電池をA-A方向から見た断面図である。
図4図3の組電池をB-B方向から見た断面図である。
図5図1のカバーを開放された方向から見た下面図である。
図6図1の組電池に掛合させる掛合体との組電池の位置関係を示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用した組電池の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る組電池10は、ケース11、リレー12、吸振部材13、およびカバー14を含む。
【0011】
ケース11は、樹脂などの比較的剛性の大きな材料で形成されてよい。ケース11は、一面が開放された箱型形状を有してよい。ケース11の外表面において面積が最大である面が、例えば、底面に定められてよい。底面の反対側の面が上面usに定められてよい。なお、ケース11そのもの、および組電池10において、底面から上面usに向かう方向に平行な方向を上下方向と呼ぶ。
【0012】
ケース11は、電池セル(図1において図示せず)を収容する。図2に示すように、ケース11は、例えば、複数の電池セル15を収容してよい。電池セル15は、例えば、リチウムイオン電池、またはニッケル水素電池等の二次電池である。電池セル15は、例えば、扁平な略直方体の形状であり、扁平面fsに対する側面の一面である端子面tscにセル端子16が設けられていてよい。
【0013】
複数の電池セル15は、端子面tscがケース11の開放された部分から露出するように、収容されてよい。複数の電池セル15は、端子面tscが同一平面に位置するように、収容されてよい。複数の電池セル15は、扁平面fsに垂直な方向に積層されるように、収容されてよい。
【0014】
複数の電池セル15は、単一の列に積層されてもよく、複数の列に分かれて積層されてもよい。本実施形態においては、3層に積層された電池セル15の列と、2層に積層された電池セル15の列とが、積層方向および端子面tscの向く方向に垂直な方向に並列する。
【0015】
ケース11に収容された、電池セル15の端子面tscは、セルホルダ17によって覆われてよい。セルホルダ17は、一面が開放された箱型形状を有してよく、開放された部分側から、端子面tscを含めて電池セル15を覆ってよい。セルホルダ17における、端子面tscに対向する板部(図1において図示せず)には開口が穿設されており、当該穴からセル端子16が露出してよい。当該穴から露出するセル端子16には、セル用バスバ18が接続されてよい。一部のセル用バスバ18の一端は、セルホルダ17の外表面に露出して、組電池10の出力端子19、または後述するリレー用バスバ(図2において図示せず)を介してリレー12に接続されてよい。組電池10における全電池セル15は、セル用バスバ18を用いて直列に接続されてよい。なお、電池セル15は、並列に接続されてもよい。
【0016】
ケース11は、上面usに固定枠20を有してよい。固定枠20は、一部を切欠いた、略矩形であってよい。ケース11は、固定枠20内に、後述する吸振部材13を介して、リレー12を支持してよい。
【0017】
ケース11は、互いに対向する2つの側面に、当該側面に直交する助力ガイド21を有してよい。なお、組電池10において、セルホルダ17の、ケース11の助力ガイド21が設けられる側面に平行な2つの壁面に、当該壁面に直交する助力ガイド22を有してよい。助力ガイド21、22は、製造途中の組電池10を保持するために、助力装置の突起の挿入に用いられる。助力ガイド21、22は、円筒形状および四角筒形状などであってよい。助力ガイド21、22には補強リブが設けられてもよい。
【0018】
図3に示すように、助力ガイド21、22、は、積層方向に垂直、かつ端子面tscに平行な方向から見て、積層方向に並ぶ2つの電池セル15を跨ぐ位置に設けられている。また、セルホルダ17において、助力ガイド22は、端子面tscと、当該端子面tscに対向するセルホルダ17の板部23とを跨ぐ位置に設けられている。
【0019】
図1おいて、リレー12は、組電池10の制御用のコントローラの制御に基づいて、遮断状態と通電状態とを切替えてよい。組電池10は、リレー12を遮断状態に切替えることにより、電力の出力を停止してよい。組電池10は、リレー12を通電状態に切替えることにより、電力を出力してよい。
【0020】
リレー12は、少なくとも1つ設けられていればよく、例えば2つのリレー12が設けられてよい。2つのリレー12は、リレー用バスバ24を用いて直列に接続されていてよい。2つのリレー12は、直列または並列に接続された複数の電池セル15に電気的に直列に接続されてよい。一方のリレー12は、リレー用バスバ24およびセル用バスバ18を介して、電池セル15に接続されてよい。他方のリレー12は、リレー用バスバ24およびヒューズ25を介して、組電池10の出力端子19に接続されていてよい。
【0021】
リレー12は、略直方体形状であってよい。リレー12において面積が最大である底面bsに対して直交する側面の中の、互いに対向する2つの端子面tsrに、接点端子26が設けられていてよい。リレー用バスバ24は、接点端子26においてリレー12に接続されていてよい。
【0022】
吸振部材13は、圧縮可能な樹脂発泡体により形成されていてよい。樹脂発泡体は、応力からの解放時に元の形状に復元するような弾性を有していればよい。なお、元の形状に復元するとは、応力を受ける前の形状に完全に戻ることに限定されず、圧縮されていた方向と逆方向に復元すればよい。吸振部材13に用いる樹脂発泡体に、軟質の樹脂発泡体であるチップウレタンが用いられてよい。チップウレタンは、軟質ポリウレタンフォームで形成したクッションの端材を粉砕して、バインダとともに金型に入れて押固めたものである。
【0023】
吸振部材13は、第1の吸振部材27および第2の吸振部材28を含んでよい。第1の吸振部材27は、ケース11およびリレー12の間に介挿されている。第2の吸振部材28は、リレー12およびカバー14の間に介挿されている。
【0024】
第1の吸振部材27は、積層方向に平行である、ケース11の上下方向から見て固定枠20と同一の形状である平板状の底部29を含んでよい。第1の吸振部材27は、底部29において、ケース11およびリレー12の間に介挿され、両者に当接してよい。第1の吸振部材27は、底部29の縁の一部に底部29に直交する壁部30を有してよい。第1の吸振部材27は、壁部30において、固定枠20およびリレー12の間に介挿され、両者に当接してよい。
【0025】
第2の吸振部材28は、リレー12の両端子面tsr間の間隔と同じ幅である平板状であってよい。第2の吸振部材28は、後述するカバー14およびリレー12の間に介挿され、両者に当接してよい。
【0026】
吸振部材13は、自身が当接するリレー12、ケース11、およびカバー14に発生しうる振動を減衰させる。吸振部材13は、リレー12の接点端子26には当接せず、ケース11およびカバー14の間の空間に露出させてよい。吸振部材13は、リレー用バスバ24をケース11およびカバー14の間の空間に露出させる。
【0027】
カバー14は、少なくとも板部31を有する。カバー14は、繊維強化樹脂などの比較的剛性の大きな材料によって形成され、板部31を底板として、底板の外縁から直交する4つの側壁32を有する形状であってよい。カバー14は、ケース11の上面us側からリレー12を覆う。カバー14は板部31において、ケース11とともにリレー12を挟持する。
【0028】
図4、5に示すように、カバー14の板部31は、組電池10において、上下方向から見て、少なくともリレー用バスバ24と対向する肉厚部分33を有する。肉厚部分33の肉厚は、後述する、カバー14の特定部分の肉厚より厚い。板部31において、特定部分以外はすべて肉厚部分33であってもよい。
【0029】
特定部分は、カバー14の側壁32を含んでよい。また、特定部分は、組電池10において吸振部材13と当接する当接部分34を含んでよい。
【0030】
また、図6に示すように、特定部分は、板部31における掛合部分35を含んでよい。なお、掛合部分35とは、カバー14の板部31において掛合体36と掛合する部分である。掛合体36とは、例えば、カバー14から露出させる出力端子19を覆うための、端子カバーであってよい。掛合体36および掛合部分35には、互いに掛合する溝および突起などの掛合部が形成されている。
【0031】
図5、6に示すように、特定部分は、立体形状部分37を含んでよい。なお、図6に示すように、立体形状部分37とは、板部31に対して傾斜または直交する方向に延びる構造を含む部分であって、立体形状部分37は、例えば、組電池10において、上下方向において板部31よりもセルホルダ17側で終端する出力端子19を上下方向から見た周囲に囲繞する部分の、板部31近傍の部分である。
【0032】
図5に示すように、肉厚部分33には、補強リブ38が形成されていてよい。補強リブ38は、板部31の板面に平行な2方向に延びるように延設されていてよい。
【0033】
以上のような本実施形態に係る組電池10では、吸振部材13は、リレー12に接続されるリレー用バスバ24をケース11およびカバー14の間の空間に露出させる。このような構成により、組電池10は、吸振部材13をリレー用バスバ24に当接させないので、リレー12の接点などにおいて発生した熱の、リレー用バスバ24における放熱性を確保しうる。リレー用バスバ24が露出している構成においては、リレー12で発生する動作音に基づき、リレー用バスバ24が振動することにより、リレー用バスバ24が放射音を発しうる。リレー用バスバ24の発する放射音は、カバー14の板部31を振動させて組電池10の外部に放射音が放射されうる。一方で、本実施形態に係る組電池10では、ケース11とともにリレー12を挟持する板部31において、少なくともリレー用バスバ24に挟持方向において対向する肉厚部分33の肉厚が特定部分の肉厚より厚い。このような構成により、組電池10は、肉厚部分33の剛性を特定部分に比較して高くしうる。したがって、組電池10は、リレー用バスバ24の発する放射音により振動しやすい板部31の一部の剛性が高いので、外部への放射音の伝達を抑制しうる。
【0034】
また、本実施形態に係る組電池10では、特定部分は掛合部分35を含む。このような構成により、組電池10は、放射音の伝達を抑制しながらも、板部31において、寸法精度や面精度が要求される部分を、寸法精度および面精度を確保可能に薄肉化させうる。
【0035】
また、本実施形態に係る組電池10では、特定部分は板部31において吸振部材13と当接する当接部分34を含む。このような構成において、組電池10は、当接部分34では吸振部材13により振動が減衰されうるので、板部31において振動しづらい部分を薄肉化することにより、放射音の伝達を抑制しながらも、小型化されうる。
【0036】
また、本実施形態に係る組電池10では、肉厚部分33が補強リブ38を有する。このような構成により、組電池10では、肉厚部分33の剛性がより高められる。したがって、組電池10は、外部への放射音の伝達をより抑制しうる。
【0037】
また、本実施形態に係る組電池10では、特定部分はカバー14の側壁32を含む。このような構成により、側壁32は板部31より各面の面積が小さく且つ突起や隆起物を有しうるため剛性が比較的高い。したがって、組電池10は、比較的剛性の高い側壁32を薄肉化することにより、放射音の伝達を抑制しながらも、小型化されうる。
【0038】
また、本実施形態に係る組電池10は、ケース11およびセルホルダ17において、それぞれ助力ガイド21、22を有する。このような構成により、組電池10は、2つの電池セル15間のセル端子16とセル用バスバ18とを接合する接合部分への入力を低減させ得る。
【0039】
また、本実施形態に係る組電池10は、ケース11およびセルホルダ17において、それぞれ助力ガイド21、22を、2つの電池セル15を跨ぐ位置に有する。このような構成により、組電池10は、助力装置の助力ガイド21、22への挿入時に、電池セル15にかかる力が分散されうる。
【0040】
また、本実施形態に係る組電池10では、セルホルダ17において、助力ガイド22は、端子面tscと、セルホルダ17の板部23とを跨ぐ位置に設けられている。このような構成により、組電池10は、電池セル15にかかる力がセルホルダ17にも分散されうる。
【0041】
本発明は、その精神又はその本質的な特徴から離れることなく、上述した実施形態以外の他の所定の形態で実現できることは当業者にとって明白である。したがって、先の記述は例示的なものであり、これに限定されるものではない。発明の範囲は、先の記述によってではなく、付加した請求項によって定義される。あらゆる変更のうちその均等の範囲内にあるいくつかの変更は、その中に包含されるものとする。
【符号の説明】
【0042】
10 組電池樹脂
11 ケース
12 リレー
13 吸振部材
14 カバー
15 電池セル
16 セル端子
17 セルホルダ
18 セル用バスバ
19 出力端子
20 固定枠
21 ケースの助力ガイド
22 セルホルダの助力ガイド
23 セルホルダの板部
24 リレー用バスバ
25 ヒューズ
26 接点端子
27 第1の吸振部材
28 第2の吸振部材
29 底部
30 壁部
31 カバーの板部
32 カバーの側壁
33 肉厚部分
34 当接部分
35 掛合部分
36 掛合体
37 立体形状部分
38 肉厚部分の補強リブ
bs リレーの底面
fs 扁平面
tsc 電池セルの端子面
tsr リレーの端子面
us ケースの上面
図1
図2
図3
図4
図5
図6