(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】車両用安全装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/08 20060101AFI20230228BHJP
F16F 7/00 20060101ALI20230228BHJP
B60R 21/0136 20060101ALI20230228BHJP
B60R 21/16 20060101ALI20230228BHJP
B60R 21/0134 20060101ALN20230228BHJP
【FI】
B60R21/08 A
F16F7/00 J
B60R21/08 B
B60R21/0136
B60R21/08 P
B60R21/16
B60R21/0134
(21)【出願番号】P 2019035876
(22)【出願日】2019-02-28
【審査請求日】2022-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127203
【氏名又は名称】奈良 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】笹本 幸一
(72)【発明者】
【氏名】福島 淳
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 展幸
(72)【発明者】
【氏名】大中 崇弘
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-149240(JP,A)
【文献】特開平09-039625(JP,A)
【文献】特開2019-023039(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0152436(US,A1)
【文献】特公昭49-004178(JP,B1)
【文献】特公昭49-004177(JP,B1)
【文献】特開2002-012067(JP,A)
【文献】特開2005-231612(JP,A)
【文献】特開平04-043140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/00-21/38
F16F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
展開時において、車両内に設けられた座席に着座中の乗員を保護可能な保護ネットと、
前記座席の両側部に設けられた一対の側壁部のそれぞれに設けられ、前記保護ネットを展開する際に、前記保護ネットを展開方向に案内するガイド部と、
前記保護ネットを展開させる駆動力を発生する駆動部と、
前記駆動部の駆動力を伝達する伝達部と、
を備えていることを特徴とする車両用安全装置。
【請求項2】
前記伝達部が、通常時は圧縮されており、作動時に前記保護ネットを展開する方向に膨張して伸長可能となるように前記保護ネットの少なくとも一部に連結されている袋状部材であり、
前記駆動部が、作動時に発生させたガスを前記袋状部材の内部に供給可能に設けられているガス発生器であることを特徴とする請求項1に記載の車両用安全装置。
【請求項3】
前記ガス発生器が、電気信号によって作動する点火器を含む火薬式のものであることを特徴とする請求項2に記載の車両用安全装置。
【請求項4】
前記ガイド部が、展開後の前記保護ネットの位置を制止するストッパーを有していることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の車両用安全装置。
【請求項5】
座席の両側部に設けられ、車両内に設けられた座席に着座中の乗員を緊急時に保護可能な一対の側壁部を備え、
前記側壁部は、
作動時において途中
に設けられた接続部を軸として内側に向かって
折れ曲がるように移動可能な移動部と、
前記移動部を移動させる駆動力を発生する駆動部と、
前記駆動部の駆動力を伝達する伝達部と、
を有していることを特徴とする車両用安全装置。
【請求項6】
前記側壁部の一部または全面を粘弾性樹脂材料で覆うことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の車両用安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急時などにおいて、乗員を保護する車両用安全装置に関するものである。
【0002】
近年、自動運転技術が実用化されつつあるが、自動運転技術の実用化が確立された場合、走行中に操縦用のハンドルを握る必要はなくなり、車両内の座席配置なども従来とは異なって、自由度が増すと考えられている。自動運転中に運転以外の行為を指す言葉として、セカンダリアクティビティがある。セカンダリアクティビティ中に乗員の安全を確保する車両用安全装置が求められている。
【0003】
ここで、例えば、下記特許文献1には、緊急時において、一対の管状袋体の間に張られた網布類を用いて、乗員を保護する乗員保護装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献における乗員保護装置によれば、乗員を保護することが可能ではあるが、構成が複雑であり、車両に設けることが比較的困難な装置となっている。
【0006】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、構成が簡単で車両に設けることが容易であって、かつ、車両搭乗時の快適性を確保しつつ、車両搭乗時の安全性も保持可能な車両用安全装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明の車両用安全装置は、展開時において、車両内に設けられた座席に着座中の乗員を保護可能な保護ネットと、前記座席の両側部に設けられた一対の側壁部のそれぞれに設けられ、前記保護ネットを展開する際に、前記保護ネットを展開方向に案内するガイド部と、前記保護ネットを展開させる駆動力を発生する駆動部と、前記駆動部の駆動力を伝達する伝達部と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
(2) 上記(1)の車両用安全装置においては、前記伝達部が、通常時は圧縮されており、作動時に前記保護ネットを展開する方向に膨張して伸長可能となるように前記保護ネットの少なくとも一部に連結されている袋状部材であり、前記駆動部が、作動時に発生させたガスを前記袋状部材の内部に供給可能に設けられているガス発生器であることが好ましい。
【0009】
(3) 上記(2)の車両用安全装置においては、前記ガス発生器が、電気信号によって作動する点火器を含む火薬式のものであることが好ましい。
【0010】
(4) 上記(1)~(3)の車両用安全装置においては、前記ガイド部が、展開後の前記保護ネットの位置を制止するストッパーを有していることが好ましい。
【0011】
(5) 別の観点として、本発明の車両用安全装置は、座席の両側部に設けられ、車両内に設けられた座席に着座中の乗員を緊急時に保護可能な一対の側壁部を備え、前記側壁部は、作動時において途中に設けられた接続部を軸として内側に向かって折れ曲がるように移動可能な移動部と、前記移動部を移動させる駆動力を発生する駆動部と、前記駆動部の駆動力を伝達する伝達部と、を有しているものであってもよい。
【0012】
(6) 上記(1)~(5)の車両用安全装置においては、前記側壁部の一部または全面を粘弾性樹脂材料で覆うことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、構成が簡単で車両に設けることが容易であって、かつ、車両搭乗時の快適性を従来よりも確保しつつ、車両搭乗時の安全性も保持可能な車両用安全装置を提供できる。また、本発明によれば、簡素な構造であるため、製造しやすいとともにコストを低減化でき、さらに軽量化することができる。また、従来の車両などに後から取り付けることも容易である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る車両用安全装置の作動前を示す図である。
【
図2】
図1の車両用安全装置の作動後を示す図である。
【
図3】
図1の車両用安全装置の一方の側面図である。
【
図4】
図1の車両用安全装置のロック機構を示す図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る車両用安全装置の作動前を示す図である。
【
図6】
図5の車両用安全装置の作動後を示す図である。
【
図7】
図5の車両用安全装置の一方の側面図である。
【
図8】本発明の第3実施形態に係る車両用安全装置の作動前を示す図である。
【
図9】
図8の車両用安全装置の作動後を示す図である。
【
図10】
図8の車両用安全装置の一方の側面図である。
【0015】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係る車両用安全装置100について、
図1~
図4に基づいて説明する。
【0016】
図1および
図3に示すように、車両用安全装置100は、座席1と、防護壁2と、ガイド部3、4と、ストッパー5、6と、収容室7と、ガス発生器8と、を備えている。
【0017】
座席1は、乗員が車両に搭乗して座る場所であり、周囲は防護壁2によって防護されている。
【0018】
防護壁2は、車両前方側に開口部を有するように、座席1を挟む位置に設けられた一対の側壁部21、22と、車両後部側において一対の側壁部21、22間を接続するように設けられた後壁部23と、を有している。また、防護壁2の側壁部21、22の上部の内部には、収容室7が設けられている。また、防護壁2の少なくとも内側表面(好ましくは表面全体)には、乗員などにとって比較的柔らかい部材(衝撃を緩衝する材料)が設けられており、乗員が防護壁2に衝突することがあったとしても、その衝突による衝撃を吸収できるようになっている。具体的には、耐熱性を考慮すると、シリコーンゴム、シリコーン系エラストマー、シリコーン系ゲルなどのシリコーン系の粘弾性樹脂材料が好適である。それ以外では、アクリル系ゲル、ポリオレフィン系ゲル、ポリウレタン系ゲル、ブタジエンゲル、イソプレンゲル、ブチルゲル、スチレンブタジエンゲル、エチレン酢酸ビニル共重合体ゲル、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体ゲル又はフッ素ゲルが適宜選択される。なお、防護壁2の全体表面が、衝撃を緩衝する材料で覆われていてもよい。
【0019】
収容室7の内部には、通常時において、
図2に示した保護ネット71および袋状部材72が、折り畳まれた状態、巻き取られたような状態、または、圧縮された状態で収容されている。
【0020】
保護ネット71は、
図2においては、説明の便宜上、紐状部材からなるものを示しているが、帯状部材からなるものであってもよい。また、後述するが、保護ネット71は、緊急時(たとえば、車両が衝突を検知または予測したとき)において、
図2に示したように展開可能である。また、保護ネット71の材質は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、アラミドなどの粘弾性樹脂からなるものである。
【0021】
袋状部材72は、蛇腹状の部材であり、作動時にガス発生器8で発生したガスが供給されるものであり、ガス供給時には膨張し、
図2に示したように長細い筒形状に変形する。なお、袋状部材72は、長細い形状に変形可能であれば、蛇腹状の部材に限られず、単なる筒形状などであってもよい。
【0022】
ガス発生器8は、防護壁2に内蔵されており、内部の火薬が燃焼してガスを発生させることができるものである。具体的に説明すると、ガス発生器8は、小型軽量のものであり、ガス発生剤が充填されたカップ体と、ガス発生剤を着火させるための点火器と、点火器を保持するホルダとを備えるものである。また、ガス発生器8は、たとえば、マイクロガスジェネレータなどが挙げられるが、ガスを発生させることができるのであれば、どのような装置であってもよい。なお、ガス発生剤は、点火器が作動することによって生じた熱粒子によって着火され、燃焼することによってガスを発生させる薬剤(火薬または推進薬)である。
【0023】
一般的にガス発生器は、非火薬式と火薬式とに大別できる。非火薬式の主流は、二酸化炭素や窒素等のガスを封入したガスボンベに、針等の鋭利部材と圧縮したバネとを連結して、バネ力を利用して鋭利部材を飛ばし、ボンベを封止している封板に衝突させてガスを放出させるものである。このとき、バネの圧縮力を解放するために、サーボモータ等の駆動源が通常使用される。次に、火薬式の場合であるが、点火器単体でもよいし、点火器とガス発生剤とを備えたものでもよい。また、火薬の力で小型のガスボンベにおける封板を開裂させ、内部のガスを外部へと排出するハイブリッド型、ストアード型のガス発生器を使用してもよい。この場合、ガスボンベ内の加圧ガスは、アルゴン、ヘリウム、窒素、二酸化炭素などの不燃性のガスから少なくとも一つ以上から選ばれる。また、加圧ガスが放出される際、確実に膨張させるために火薬式の発熱体をガス発生器に備えていてもよい。さらにガス発生器には、必要に応じてフィルタまたは/およびガス流量を調整するオリフィスを備えてもよい。
【0024】
ガス発生剤としては、非アジド系ガス発生剤を用いることが好ましく、一般に燃料と酸化剤と添加剤とを含む成形体としてガス発生剤が形成される。燃料としては、たとえばトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、グアニジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、ヒドラジン誘導体等又はこれらの組み合わせが利用される。具体的には、たとえばニトログアニジン、硝酸グアニジン、シアノグアニジン、5-アミノテトラゾール等が好適に利用される。また、酸化剤としては、たとえば塩基性硝酸銅等の塩基性硝酸塩、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩、又は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アンモニアから選ばれたカチオンを含む硝酸塩等が利用される。硝酸塩としては、たとえば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が好適に利用される。また、添加剤としては、バインダ、スラグ形成剤、燃焼調整剤等が挙げられる。バインダとしては、たとえばカルボキシメチルセルロースの金属塩、ステアリン酸塩等の有機バインダ、又は、合成ヒドロキシタルサイト、酸性白土等の無機バインダが好適に利用可能である。スラグ形成剤としては窒化珪素、シリカ、酸性白土等が好適に利用可能である。また、燃焼調整剤としては、金属酸化物、フェロシリコン、活性炭、グラファイト等が好適に利用可能である。また、ニトロセルロースを主成分としたシングルベース火薬、ダブルベース火薬、トリプルベース火薬を用いてもよい。
【0025】
また、ガス発生剤の成形体の形状には、顆粒状、ペレット状、円柱状等の粒状のもの、ディスク状のものなど様々な形状のものがある。また、円柱状のものでは、成形体内部に貫通孔を有する有孔状(たとえば単孔筒形状又は多孔筒形状等)の成形体も利用される。また、ガス発生剤の形状の他にもガス発生剤の線燃焼速度、圧力指数などを考慮に入れて成形体のサイズおよび充填量を適宜選択することが好ましい。
【0026】
ガイド部3、4は、側壁部21、22のそれぞれの内側に沿って設けられた所定長さのレール状部材であり、作動時において、展開方向(
図1~
図3の下方)へ保護ネット71を案内する機能を備えている。なお、図示しないが、保護ネット71の一部(たとえば、
図2で示した保護ネット71の下端部の両角部)には、ガイド部3、4のレール状部材に対してスライド可能なスライド部材が設けられており、ガイド部3、4によってスムーズに案内されるようになっている。また、ガイド部3、4の下端部には、ストッパー5、6が設けられている。
【0027】
ストッパー5、6は、作動時において、ガイド部3、4に沿ってスライドしながら展開してきた保護ネット71の先端部(
図2の保護ネット71下端部)の位置を制止して、展開時の勢いを止める機能を備えている。また、ストッパー5、6は、保護ネット71の下端部の両角部に設けられたスライド部材に接した際に、逆方向へ戻らないように保持するロック機構を有している。
【0028】
このロック機構の例としては、たとえば、
図4に示したように、軸31でガイド部3に固定した板バネ32を用いて、展開方向(
図4(a)矢印方向)には進むことができる(
図4(b)参照)が、一度入ると逆方向へは進めないような逆止弁タイプのものなどが挙げられる。
【0029】
次に、本実施形態における車両用安全装置100の動作について説明する。まず、車両が衝突事故などに遭遇した場合に、車両に搭載されている制御部(CPU、ROM、RAMなどを有したコンピュータ(図示せず))からガス発生器8の作動信号が発信され、ガス発生器8が作動する。次に、
図1の状態から、ガス発生器8の作動によりガスが発生し、そのガス圧によって袋状部材72は膨張して、収容室7から飛び出し、
図2に示したように長細い筒形状に変形していく。このとき、袋状部材72に接続されている保護ネット71は、袋状部材72とともに展開され、
図2に示した状態になっていく。そして、保護ネット71の先端部(
図2では下端部)が、
図2に示した位置にまで到達した場合、ストッパー5、6において保護ネット71の展開の勢いを制止するとともに、これ以上、展開しないようにしつつ、ロック機構を作動させることにより、保護ネット71が逆方向に戻っていかないように保持してロックする。
【0030】
したがって、座席1にいる乗員が、事故の衝撃で車両の前方に移動することになっても、
図2に示した状態の保護ネット71と防護壁2とにより、車両の外部への放出および装備品との衝突を防止するとともに、衝突時の衝撃を吸収することができる。
【0031】
以上のように、本実施形態における車両用安全装置100では、構成が簡単で車両に設けることが容易であって、かつ、車両搭乗時の快適性を従来よりも確保しつつ、車両搭乗時の安全性も保持可能な車両用安全装置を提供することができる。また、車両用安全装置100によれば、簡素な構造であるため、製造しやすいとともにコストを低減化でき、さらに軽量化することができる。
【0032】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る車両用安全装置200について、
図5~
図7に基づいて説明する。なお、本実施形態において、特に説明がない限り、上記第1実施形態と下二桁が同じ番号の部位は上記第1実施形態と同様のものであるので、説明を省略することがある。
【0033】
図5および
図7に示すように、車両用安全装置200は、座席101と、防護壁102と、ガス発生器108と、を備えている。
【0034】
防護壁102は、
図5に示すように、車両前方側に開口部を有するように、座席101を挟む位置に設けられた一対の側壁部121、122と、車両後部側において一対の側壁部121、122間を接続するように設けられた後壁部123と、を有している。側壁部121、122は、それぞれ接続部121bおよび接続部122bを軸として内側に折れ曲がるように移動可能なものであって、移動後には
図6に示した状態になるものである。すなわち、側壁部121と後壁部123とは接続部121bを介して可動可能に接続(連結)され、側壁部122と後壁部123とは接続部122bを介して可動可能に接続(連結)されている。なお、側壁部121、122は、それぞれ複数のアーム部121a、122aを有している。複数のアーム部121a、122aは、側壁部121、122が可動した場合において、
図6に示したような交互に挟み合う位置となるように形成されている。
【0035】
ここで、一変形例として、通常時において、
図5の状態が保持されるように、マジックテープ(登録商標)などで、側壁部121、122外部側の壁面と、後壁部123の外部側の壁面とが、仮固定されていてもよい。これにより、作動時にマジックテープ(登録商標)などが外れて、
図6の状態になるようにすることも可能である。
【0036】
図7に示したように、側壁部122と後壁部123との間には、通常時においては圧縮されている袋状部材109が設けられている。袋状部材109には、袋状部材109内部に作動時に発生させたガスを供給可能にガス発生器108が接続されている。ガス発生器108が作動した場合、袋状部材109は膨張し、側壁部122の後方部を押し出し、接続部122bを軸として側壁部122を移動させ、
図6に示した状態にすることができる。
【0037】
また、
図6に示したように、側壁部122と後壁部123との間にも、袋状部材109と同様の袋状部材110が設けられている。袋状部材110にもガス発生器108と同様のガス発生器(図示せず)が接続されており、当該ガス発生器が作動した場合、袋状部材110は膨張し、側壁部121の後方部を押し出し、接続部121bを軸として側壁部122を移動させ、
図6に示した状態にすることができる。
【0038】
次に、本実施形態における車両用安全装置200の動作について説明する。まず、車両が衝突事故などに遭遇した場合に、車両に搭載されている制御部(CPU、ROM、RAMなどを有したコンピュータ(図示せず))からガス発生器108の作動信号が発信され、ガス発生器108が作動する。次に、
図5の状態から、ガス発生器108の作動によりガスが発生し、そのガス圧によって袋状部材109、110は膨張して、側壁部121、122の後方部のそれぞれを押し出し、
図6に示したように側壁部121、122の位置を移動させる。
【0039】
したがって、座席101にいる乗員が、事故の衝撃で車両の前方に移動することになっても、
図6に示した状態の側壁部121、122により、車両の外部への放出および装備品との衝突を防止するとともに、衝突時の衝撃を吸収することができる。
【0040】
以上のように、本実施形態における車両用安全装置200では、構成が簡単で車両に設けることが容易であって、かつ、車両搭乗時の快適性を従来よりも確保しつつ、車両搭乗時の安全性も保持可能な車両用安全装置を提供することができる。また、車両用安全装置200によれば、簡素な構造であるため、製造しやすいとともにコストを低減化でき、さらに軽量化することができる。
【0041】
<第3実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る車両用安全装置300について、
図8~
図10に基づいて説明する。なお、本実施形態において、特に説明がない限り、上記第1、第2実施形態と下二桁が同じ番号の部位は上記第1、第2実施形態と同様のものであるので、説明を省略することがある。
【0042】
図8および
図10に示すように、車両用安全装置300は、座席201と、防護壁202と、ガス発生器208と、を備え、第2実施形態とは、防護壁202の形状が異なっている点以外、ほぼ同構成である。
【0043】
防護壁202は、
図8に示すように、車両前方側に開口部を有するように、座席201を挟む位置に設けられた一対の側壁部221、222と、車両後部側において一対の側壁部221、222間を接続するように設けられた後壁部223と、を有している。側壁部221、222は、それぞれ接続部221bおよび接続部222bを軸として内側に折れ曲がるように移動可能なものであって、移動後には
図9に示した状態になるものである。すなわち、側壁部221と後壁部223とは接続部221bを介して可動可能に接続(連結)され、側壁部222と後壁部223とは接続部222bを介して可動可能に接続(連結)されている。なお、側壁部221、222は、
図9に示したように可動して所定時間経過後は、いわゆる観音開きが可能な状態となる。
【0044】
以上のように、本実施形態における車両用安全装置300は、第2実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0045】
今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。たとえば、上記第2、第3実施形態において、側壁部の内側にエアバッグを設けておき、側壁部を可動させつつ、エアバッグによる衝撃吸収をも行うというものであってもよい。
【0046】
また、上記第2、第3実施形態においては、ガス発生器から供給されたガスの圧力を利用した袋状部材の膨張によって、側壁部を可動させたが、直接、ガス発生器で発生したガスを側壁部の後方部に噴射し、当該噴射の衝撃で側壁部を可動させてもよい。
【0047】
また、上記第1実施形態においては、側壁部の移動のための駆動力としてガス発生器を用いたが、巻きばねなどの弾性体などを用いてもよい。また、上記第2、第3実施形態において、ガス発生器の代わりに電動モータを用いてもよいが、この場合、ギアおよびピニオンなどを用いた機構によって、電動モータの駆動力を機械的に側壁部に伝達して、当該側壁部を移動させるものであってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1、101、201 座席
2、102、202 防護壁
3、4 ガイド部
5、6 ストッパー
7 収容室
8、108、208 ガス発生器
21、22、121、122、221、222 側壁部
23、123、223 後壁部
31 軸
32 板バネ
71 保護ネット
72 袋状部材
100、200、300 車両用安全装置
109、110、209、210 袋状部材
121a、122a アーム部
121b、122b、221b、222b 接続部