(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】杭圧入装置及び杭圧入施工方法
(51)【国際特許分類】
E02D 7/20 20060101AFI20230228BHJP
【FI】
E02D7/20
(21)【出願番号】P 2019035904
(22)【出願日】2019-02-28
【審査請求日】2022-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000141521
【氏名又は名称】株式会社技研製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】北村 精男
(72)【発明者】
【氏名】村田 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】青木 伸敏
(72)【発明者】
【氏名】水田 浩貴
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-035226(JP,A)
【文献】特開昭56-097018(JP,A)
【文献】特開2013-159936(JP,A)
【文献】特開2006-161477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の第1杭の杭列の杭同士の間を閉塞するように第2杭を圧入する杭圧入装置であって、
1本の前記第1杭の上端を把持するクランプ装置と、
圧入する
第2杭を把持するチャック装置と、
前記チャック装置を前記クランプ装置に対して上下動させる昇降装置と、
前記チャック装置を、当該チャック装置が把持する
第2杭の長手方向に平行で当該チャック装置の内部を通る軸回りに回転させることが可能なチャック回転機構と、
前記クランプ装置を、前記チャック装置が把持する第2杭の長手方向に平行で当該クランプ装置の内部を通る軸回りに回転させることが可能なクランプ回転機構と、
を備え、
前記クランプ装置を一つのみ備え、
前記クランプ装置で把持した前記
第1杭から反力を取って前記チャック装置で把持し前記
第2杭を前記昇降装置の動作により地盤に圧入
し、
前記チャック回転機構は、圧入された前記第2杭を前記チャック装置で把持した状態で、前記第1杭の上方に回避した前記クランプ装置を、前記チャック装置の内部を通る軸回りに旋回させて前記杭列に属する次の第1杭上に配置する杭圧入装置。
【請求項2】
前記第1杭が円筒杭であり、前記第2杭は前記第1杭より小径の円筒杭である請求項1記載の杭圧入装置。
【請求項3】
杭圧入装置により、既設の杭列に沿って新たな杭列を圧入施工する杭圧入施工方法であって、
前記杭圧入装置は、
既設杭の上端を把持するクランプ装置と、圧入する杭を把持するチャック装置と、前記チャック装置を前記クランプ装置に対して上下動させる昇降装置とを備え、前記クランプ装置で把持した既設杭から反力を取って前記チャック装置で把持し杭を前記昇降装置の動作により地盤に圧入する杭圧入装置であって、
前記チャック装置を、当該チャック装置が把持する杭の長手方向に平行で当該チャック装置の内部を通る軸回りに回転させることが可能なチャック回転機構と、
前記クランプ装置を、前記チャック装置が把持する杭の長手方向に平行で当該クランプ装置の内部を通る軸回りに回転させることが可能なクランプ回転機構と、
を備える杭圧入装置であり、
(1)前記既設の杭列に属する既設杭の上端を前記クランプ装置で把持した状態で、前記チャック装置で把持した対象杭を地盤に圧入し、
(2)前記クランプ装置を前記既設杭の上方に回避させて、前記対象杭を前記チャック装置で把持した状態で前記チャック回転機構を動作させて前記既設の杭列に属する次の既設杭上に前記クランプ装置を配置して前記クランプ装置により前記次の既設杭の上端を把持し、
(3)前記チャック装置を前記対象杭の上方に回避させ、前記クランプ回転機構を動作させて前記チャック装置を次の対象杭の圧入予定位置に配置し、
(4)上記(3)の次の対象杭を上記(1)(2)(3)の対象杭として上記(1)(2)(3)の工程を所望の回数繰り返し実行し、
(5)最後の対象杭について、圧入を完了することで、前記新たな杭列を構築する杭圧入施工方法。
【請求項4】
前記既設杭が円筒杭であり、前記対象杭が隣り合う当該円筒杭同士の間を閉塞する閉塞部材である請求項3に記載の杭圧入施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭圧入装置及び杭圧入施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クランプ装置で既設杭の上端を把持して反力をとり、チャック装置に把持した杭を地盤に圧入する杭圧入装置が利用されている。
従来の杭圧入装置にあっては、クランプ装置の近くに杭(1本目とする)を圧入して圧入完了し、さらにクランプ装置から離れた2本目の杭を途中まで圧入し、2本目の杭をチャック装置で把持した状態で、クランプ装置を2本目の杭に近い既設杭の上端に移動させる。これにより、杭列上を自走しつつ、杭列を延長していく杭圧入施工を実施する。
また、特許文献1では、鋼管杭の圧入を実施して鋼管杭の杭列を構築するとともに、隣り合う鋼管杭同士の間を閉塞する閉塞部材をも圧入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術の杭列上の自走方法によると、クランプ装置とチャック装置との間の距離を伸縮するスライド機構が杭圧入装置に必要となるとともに、クランプ装置とチャック装置との間の距離を伸ばし杭圧入装置の全長が長くなった状態では、杭圧入や自走時に杭圧入装置に負荷されるモーメントが大きくなって望ましくはない。
【0005】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、クランプ装置とチャック装置との間の距離を伸縮する自走方法(伸縮式自走)によらない新たな自走方法を可能とする機能を有した杭圧入装置及びこれを用いた杭圧入施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するための請求項1記載の発明は、既設の第1杭の杭列の杭同士の間を閉塞するように第2杭を圧入する杭圧入装置であって、
1本の前記第1杭の上端を把持するクランプ装置と、
圧入する第2杭を把持するチャック装置と、
前記チャック装置を前記クランプ装置に対して上下動させる昇降装置と、
前記チャック装置を、当該チャック装置が把持する第2杭の長手方向に平行で当該チャック装置の内部を通る軸回りに回転させることが可能なチャック回転機構と、
前記クランプ装置を、前記チャック装置が把持する第2杭の長手方向に平行で当該クランプ装置の内部を通る軸回りに回転させることが可能なクランプ回転機構と、
を備え、
前記クランプ装置を一つのみ備え、
前記クランプ装置で把持した前記第1杭から反力を取って前記チャック装置で把持し前記第2杭を前記昇降装置の動作により地盤に圧入し、
前記チャック回転機構は、圧入された前記第2杭を前記チャック装置で把持した状態で、前記第1杭の上方に回避した前記クランプ装置を、前記チャック装置の内部を通る軸回りに旋回させて前記杭列に属する次の第1杭上に配置する杭圧入装置である。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記第1杭が円筒杭であり、前記第2杭は前記第1杭より小径の円筒杭である請求項1に記載の杭圧入装置である。
【0008】
請求項3記載の発明は、杭圧入装置により、既設の杭列に沿って新たな杭列を圧入施工する杭圧入施工方法であって、
前記杭圧入装置は、
既設杭の上端を把持するクランプ装置と、圧入する杭を把持するチャック装置と、前記チャック装置を前記クランプ装置に対して上下動させる昇降装置とを備え、前記クランプ装置で把持した既設杭から反力を取って前記チャック装置で把持し杭を前記昇降装置の動作により地盤に圧入する杭圧入装置であって、
前記チャック装置を、当該チャック装置が把持する杭の長手方向に平行で当該チャック装置の内部を通る軸回りに回転させることが可能なチャック回転機構と、
前記クランプ装置を、前記チャック装置が把持する杭の長手方向に平行で当該クランプ装置の内部を通る軸回りに回転させることが可能なクランプ回転機構と、
を備える杭圧入装置であり、
(1)前記既設の杭列に属する既設杭の上端を前記クランプ装置で把持した状態で、前記チャック装置で把持した対象杭を地盤に圧入し、
(2)前記クランプ装置を前記既設杭の上方に回避させて、前記対象杭を前記チャック装置で把持した状態で前記チャック回転機構を動作させて前記既設の杭列に属する次の既設杭上に前記クランプ装置を配置して前記クランプ装置により前記次の既設杭の上端を把持し、
(3)前記チャック装置を前記対象杭の上方に回避させ、前記クランプ回転機構を動作させて前記チャック装置を次の対象杭の圧入予定位置に配置し、
(4)上記(3)の次の対象杭を上記(1)(2)(3)の対象杭として上記(1)(2)(3)の工程を所望の回数繰り返し実行し、
(5)最後の対象杭について、圧入を完了することで、前記新たな杭列を構築する杭圧入施工方法である。
【0009】
請求項4記載の発明は、前記既設杭が円筒杭であり、前記対象杭が隣り合う当該円筒杭同士の間を閉塞する閉塞部材である請求項3に記載の杭圧入施工方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、チャック回転機構によりクランプ装置をチャック装置の後方側から前方側に旋回移動させ、さらにクランプ回転機構によりチャック装置をクランプ装置の後方側から前方側に旋回移動させる動作による杭列上の自走方法(旋回式自走)が可能であり、この旋回方式自走を既設鋼管杭列に沿った閉塞部材等の新たな杭列を構築する杭圧入施工方法に応用することができる。
本発明によれば、クランプ装置とチャック装置との間の距離を変えることなく自走可能であるので、杭圧入装置の全長が長くなることに起因して杭圧入や自走時に杭圧入装置に負荷されるモーメントが大きくなってしまうことは回避される。
本発明によれば、クランプ回転機構によりチャック装置の方角を変えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る杭圧入施工方法による止水壁の平面施工図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る杭圧入装置及び杭の平面見取図(a)及び側面見取図(b)である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る杭圧入装置及び杭の平面見取図(a)及び側面見取図(b)である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る杭圧入装置及び杭の平面見取図(a)及び側面見取図(b)である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る杭圧入装置及び杭の平面見取図(a)及び側面見取図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の一実施形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。
【0013】
(施工条件概要)
本実施形態では、
図1に示す大径杭11,12,13・・・による既設杭列に沿って小径杭21L,21R,22L,22R・・・を圧入施工する杭圧入施工方法につき説明する。
大径杭11・・・は鋼管杭等であり、大径杭(11)を把持できるチャック装置を有した従来の杭圧入装置により圧入施工される。大径杭(11)を圧入施工する従来の杭圧入装置(不図示)は、従来の伸縮式自走方法によるもので、圧入完了した大径杭(11)、すなわち、既設杭の上端を把持するクランプ装置を複数有した従来の構成であり、
図1の矢印A方向において、大径杭11,12,13・・・による既設杭列を延長施工しているものとする。
【0014】
図2~
図5に示す本実施形態の杭圧入装置30は、小径杭21L,21R・・・を圧入対象とする。すなわち、本実施形態の杭圧入装置30にとっての対象杭は、小径杭21L,21R・・・である。
小径杭21L,21R・・・は、隣り合う大径杭(大径杭11と大径杭12等)同士の間を閉塞する閉塞部材である。大径杭11,12,13・・・と、その間を閉塞する小径杭21L,21R,22L,22R・・・によって止水壁を構築しようとするものである。
なお、閉塞部材の断面形状は問わない。本実施形態では、円筒杭としているが、角杭やアングル等でも閉塞部材として機能する。
【0015】
(杭圧入装置の構成)
本実施形態の杭圧入装置30は、クランプ装置31と、クランプ回転機構32と、サドル33と、マスト34と、昇降装置35と、チャック回転機構36と、チャック装置37とを備えて構成されている。
クランプ装置31は、大径杭11・・・の上端を把持する。クランプ装置31は、大径杭11・・・の上端開口の内部に挿入した把持爪を拡開することで把持する機構のものである。
クランプ装置31は、サドル33の下部にクランプ回転機構32を介して連結されている。
クランプ回転機構32はクランプ装置31を、チャック装置37が把持する小径杭21L,21R・・・の長手方向(図面上の上下方向)に平行でクランプ装置31の内部を通る軸A1回りに回転させることが可能な装置である。クランプ回転機構32はクランプ装置31を、360度越えで無制限に回転可能にする構成である。
クランプ回転機構32はクランプ装置31を、サドル33に対して回転させる。
【0016】
マスト34は、サドル33上に立設され、前後にスライド可能に設けられる。マスト34の前後動機能により、クランプ装置31の中心とチャック装置37の中心とを、大径杭11・・・と、これに隣接する小径杭21L,21R・・・との中心間距離に調整可能である。また、クランプ回転機構32によりチャック装置37の方角を変えることができ、クランプ回転機構32とマスト34の前後動機能により、クランプ装置31で把持した既設杭を基準にしたチャック装置37の中心位置、従って杭圧入位置を調整することができる。
【0017】
チャック装置37は、昇降装置35と、さらにチャック回転機構36を介してマスト34に支持されている。
チャック装置37及びチャック回転機構36を含む部分は、上下に小径杭21L,21R・・・を挿通させる挿通空間を形成しており、そこに挿通された小径杭21L,21R・・・に対して、チャック装置37は把持爪を周囲から押圧することで小径杭21L,21R・・・を把持する。
チャック回転機構36は、チャック装置37が把持した小径杭21L,21R・・・をチャック装置37とともに、その中心軸A2回りに回転させる装置である。チャック回転機構36はチャック装置37を、360度越えで無制限に回転可能にする構成である。
昇降装置35がマスト34に対して昇降させる部分(チャックフレーム38)にチャック回転機構36が連結され、チャック回転機構36が同部分に対してチャック装置37を回転させる。
【0018】
昇降装置35は、チャック装置37をクランプ装置31に対して上下動させる。本実施形態では、昇降装置35は、マスト34に支持され、マスト34に対してチャック装置37及びチャック回転機構36を昇降するように設けられている。結果、昇降装置35は、チャック装置37をクランプ装置31に対して上下動させる。これは相対的であるから、昇降装置35は、クランプ装置31をチャック装置37に対して上下動させる。
【0019】
杭圧入装置30は、クランプ装置31で把持した既設杭(11・・・)から反力を取ってチャック装置37で把持した杭(21L・・・)を昇降装置35の動作により地盤に圧入する。なお、チャック回転機構36の動作を併用することで、杭の回転圧入が可能である。そのために、チャック回転機構36は、チャック装置37が把持した小径杭21L,21R・・・をその中心軸A2回りに回転させるように構成されている。
なお、杭圧入装置30の旋回式自走を実現するためには、チャック回転機構36はチャック装置37を、チャック装置37が把持する杭の長手方向に平行でチャック装置37の内部を通る軸回りに回転させることが可能であればよい。回転圧入機能を兼ねるために、チャック回転機構36は、チャック装置37が把持した小径杭21L,21R・・・をその中心軸A2回りに回転させるように構成されている。
【0020】
杭圧入装置30は、クランプ装置として、1本の既設杭(11)に対応したクランプ装置31のみを備える。これは、上述した大径杭(11)を圧入施工する従来の杭圧入装置(伸縮式自走方法による。不図示)に対する一つの相違点である。
【0021】
(杭圧入施工方法)
次に、杭圧入装置30により、既設の杭列11,12,13・・・に沿って新たな杭列21L,21R,22L,22R・・・を圧入施工する杭圧入施工方法につき説明する。
杭圧入装置30は、以下に説明する動作工程により、小径杭21L,21Rを圧入施工しつつ、矢印A方向に移動する。
なお、以下の工程においてチャック装置37の持ち替え動作を適宜に行う。チャック装置37の持ち替え動作とは、チャック装置37による杭の把持を解除して昇降装置35によりチャック装置37を昇降させて杭に対する上下方向の位置を変え、再びチャック装置37により杭を把持する動作をいう。
【0022】
(1)既設の杭列11,12,13・・・に属する既設杭11の上端をクランプ装置31で把持した状態で、チャック装置37で把持した対象杭21Lを地盤に圧入する。
図2では、対象杭21Rの圧入を先に完了し、次いで対象杭21Lを、杭圧入装置30を支持可能なレベルまで圧入したものとする。
【0023】
(2)次に、対象杭21Lをチャック装置37で把持した状態で、クランプ装置31による既設杭11の把持を解除した上で昇降装置35の動作によりクランプ装置31を上昇させることで、
図2に示すようにクランプ装置31を既設杭11の上方に回避させる。
続いて
図3に示すように、対象杭21Lをチャック装置37で把持した状態で、チャック回転機構36を動作させてクランプ装置31側を旋回させることで、既設の杭列に属する次の既設杭12上にクランプ装置31を配置する。このとき、旋回動作は時計回り、反時計回りのどちらでも選択可能である。
続いて
図4に示すように、昇降装置35の動作によりクランプ装置31を下降させてクランプ装置31により次の既設杭12の上端を把持する。
【0024】
(3)次に、昇降装置35の動作により対象杭21Lを押し下げて圧入を完了する。なお、対象杭21Lと対象杭21Rの圧入はどちらが先でもよい(旋回の支軸が対象杭21Lと対象杭21Rのどちらとなってもよい。)。また、
図2の状態で対象杭21Rを圧入せず、対象杭21Lだけを途中まで圧入した後、対象杭21Lをチャック装置37で把持した状態での旋回動作(
図2→
図3)を実施し、続けて対象杭21Lの圧入を完了し、その次に対象杭21Rの圧入を行ってもよい。この場合も、対象杭21Lと対象杭21Rの圧入はどちらが先でもよい(旋回の支軸が対象杭21Lと対象杭21Rのどちらとなってもよい。)。
【0025】
一か所の既設杭の間の部分(杭11と杭12の間)に対して施工する閉塞部材である杭(本実施形態では一対の小径杭(21L,21R)としている)の圧入が完了したら、チャック装置37を対象杭21L,21Rの上方に回避させ(対象杭21L,21Rを杭11,12の上端レベルまで押し下げているので回避可能)、クランプ回転機構32を動作させてチャック装置37側を旋回させることで、チャック装置37を次の対象杭の圧入予定位置(杭12と杭13の間)に配置する(
図5へ)。このとき、旋回動作は時計回り、反時計回りのどちらでも選択可能である。
【0026】
(4)
図5に示すように上記(3)の次の対象杭(22L,22R)を上記(1)(2)(3)の対象杭として上記(1)(2)(3)の工程を所望の回数繰り返し実行する。
【0027】
(5)最後の対象杭について、圧入を完了することで、新たな杭列21L,21R,22L,22R・・・を構築する。例えば、
図5に示す一対の小径杭22L,22Rが最後の杭ならば、一対の小径杭22L,22Rの圧入を完了することで、閉塞部材の杭列の構築が終了する。
【0028】
以上のように杭圧入装置30は旋回式自走により移動しつつ新たな杭列21L,21R,22L,22R・・・を圧入施工することができる。
なお、以上の実施形態においては、一か所の既設杭の間の部分に圧入する対象杭が一対の構成であったが、1本でも実施可能であることは勿論である。
また、対象杭を既設杭間の閉塞部材とせず、例えば、既設杭列に沿った圧入杭連続壁を構築する場合にも適用できる。
【0029】
また杭圧入装置30によれば、クランプ装置31とチャック装置37との間の距離を変えることなく自走可能であるので、伸縮式自走の杭圧入装置のように全長が長くなることに起因して杭圧入や自走時に杭圧入装置に負荷されるモーメントが大きくなってしまうことは回避される。
さらに杭圧入装置30は、クランプ装置として、1本の既設杭(11)に対応したクランプ装置31のみを備えるから、構成が簡素で小型軽量であり、簡素な機械構成でクランプ装置31を中心にした旋回が可能であり、かつ、既設杭の間ごとに対象杭を圧入することを実現でき、杭圧入装置に負荷されるモーメントを小さく抑えることができる。
【0030】
本実施形態の杭圧入施工方法によれば、本杭(11・・・)の施工と同時に閉塞杭(21L,21R・・・)の圧入施工を実施できるから、同一の杭圧入装置により本杭と閉塞杭の圧入施工を順に実施する場合に比較して、止水壁の施工期間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0031】
11,12,13 既設杭(大径杭)
21L,21R,22L,22R 対象杭(小径杭、閉塞部材)
30 杭圧入装置
31 クランプ装置
32 クランプ回転機構
33 サドル
34 マスト
35 昇降装置
36 チャック回転機構
37 チャック装置
A 施工方向
A1 クランプ回転機構の回転中心軸
A2 チャック回転機構の回転中心軸