(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】パッケージ及びパッケージの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/02 20060101AFI20230228BHJP
H01L 23/08 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
H01L23/02 C
H01L23/08 Z
H01L23/02 F
(21)【出願番号】P 2019043692
(22)【出願日】2019-03-11
【審査請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】田家 良久
【審査官】正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/147940(WO,A1)
【文献】特開2018-157159(JP,A)
【文献】特表2020-509942(JP,A)
【文献】特開2019-174267(JP,A)
【文献】特開2019-174224(JP,A)
【文献】特開2012-189327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/02
H01L 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
前記第1基板の上面側に設けられる素子と、
前記第1基板の上面側に前記素子を覆った状態で接合され、前記第1基板側に配置される下面側に、前記第1基板に接合される平面視枠状の凸状体と、平面視で前記凸状体に囲まれるように形成され、前記素子上に封止空間を確保するための凹状のキャビティ領域とを有する第2基板と、
前記第2基板に形成された前記凸状体の先端に平面視枠状で設けられる第2金属接合膜と、前記第2基板に形成された前記凸状体に対応する位置で、前記第1基板の上面に平面視枠状に設けられる第1金属接合膜とが金属拡散接合されてなる接合体と、を備え、
前記第1金属接合膜及び前記第2金属接合膜は、周方向における少なくとも一部が、平面視で前記周方向に沿って交互に配列された凹部及び凸部からなる凹凸形状を有し、前記第1金属接合膜の凹部及び凸部と前記第2金属接合膜の凹部及び凸部とが重ね合わせられて接合されて
おり、
前記凸状体は、前記第2金属接合膜に設けられた前記凹凸形状に対応するように、周方向における少なくとも一部が、前記周方向に沿って交互に配列された凹部及び凸部からなる凹凸形状を有していることを特徴とするパッケージ。
【請求項2】
前記第1金属接合膜及び前記第2金属接合膜は、前記凹凸形状が、前記周方向において周期的に配列された形状であることを特徴とする請求項1に記載のパッケージ。
【請求項3】
前記第1基板及び前記第2基板がシリコン基板からなることを特徴とする請求項1
又は請求項2に記載のパッケージ。
【請求項4】
前記素子が赤外線検出素子であり、且つ、前記第2基板が赤外線を透過可能とされていることを特徴とする請求項1~請求項
3の何れか一項に記載のパッケージ。
【請求項5】
少なくとも、
基板材料の表面をエッチングすることにより、素子を収容する凹状のデバイス領域を形成して第1基板を得る工程(1)と、
基板材料の表面をエッチングすることにより、平面視枠状の凸状体と、平面視で前記凸状体に囲まれるように形成され、前記素子上に封止空間を確保するための凹状のキャビティ領域と、を形成して第2基板を得る工程(2)と、
前記第2基板に形成された前記凸状体の先端に、平面視枠状で、周方向における少なくとも一部が、平面視で前記周方向に沿って交互に配列された凹部及び凸部からなる凹凸形状を有した第2金属接合膜を形成する工程(3)と、
前記第1基板上に、該第1基板と前記第2基板とを重ね合わせたときに前記凸状体に対応する位置で、平面視枠状で、周方向における少なくとも一部が、平面視で前記周方向に沿って交互に配列された凹部及び凸部からなる凹凸形状を有した第1金属接合膜を形成する工程(4)と、
前記第1基板に形成された前記デバイス領域に前記素子を配置する工程(5)と、
前記第1基板と前記第2基板との間に前記素子が配置されるように前記第1基板と前記第2基板とを重ね合わせ、前記第1金属接合膜と前記第2金属接合膜とを互いに加圧して金属拡散接合することで、前記第1金属接合膜の凹部及び凸部と前記第2金属接合膜の凹部及び凸部とを重ね合わせて接合し、前記第1基板と前記第2基板とを接合する工程(6)と、
を備えることを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項6】
前記工程(3)及び前記工程(4)は、前記第1金属接合膜又は前記第2金属接合膜に設けられる前記凹凸形状を、前記周方向で周期的に配列して形成することを特徴とする請求項
5に記載のパッケージの製造方法。
【請求項7】
前記工程(2)は、さらに、前記凸状体を、前記周方向における少なくとも一部が、前記周方向に沿って交互に配列された凹部及び凸部からなる凹凸形状となるように形成し、
前記工程(3)は、前記第2金属接合膜を、前記凸状体の先端を覆うように、周方向における少なくとも一部が、前記周方向に沿って交互に配列された凹部及び凸部からなる凹凸形状となるように形成することを特徴とする請求項
5又は請求項
6に記載のパッケージの製造方法。
【請求項8】
前記工程(1)及び前記工程(2)は、前記基板材料としてシリコン基板を用いることを特徴とする請求項
5~請求項
7の何れか一項に記載のパッケージの製造方法。
【請求項9】
前記工程(5)は、前記素子として、赤外線検出素子を、前記第1基板に形成された前記デバイス領域に配置することを特徴とする請求項
5~請求項
8の何れか一項に記載のパッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージ及びパッケージの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、赤外線センサ等の半導体装置に使用されているパッケージは、一般に、第1基板と、センサ素子と、第2基板とが備えられる。センサ素子は第1基板の上面に設けられており、各種検知を行う。また、第2基板は、センサ素子を覆った状態で第1基板の上面に接合される。また、第1基板と第2基板とに覆われた、センサ素子の上方に確保される封止空間は、減圧空間(キャビティ)とされている。
【0003】
上記のようなパッケージ、特に赤外センサにおいては、センサ特性の安定化及び向上のために外系と熱的な隔離を行う必要があることから、一般に、キャビティ内を真空封止した構成が採用される。従来から、キャビティ内を真空封止するパッケージにおいては、例えば、第1基板と第2基板とを接合するための金属接合層(ハンダ)として、金(Au):80%、及び、錫(Sn):20%を含む材料(Au-Sn共晶合金)等が用いられるが、このような金属接合層を用いた場合、高温下で各基板間を接合する必要がある。しかしながら、第1基板と第2基板とを高温下で接合すると、熱膨張係数の差により、接合部にクラックが発生することがある。このような問題を解決することを目的として、例えば、接合部に応力緩和バッファレイヤを形成することで、接合部のクラック発生を抑制する技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術のように、接合部に応力緩和バッファレイヤを設けた構成を採用した場合、この応力緩和バッファレイヤの熱膨張率が、基板の表面部分の熱膨張率よりも大きい値で、且つ、金属接合層に用いられる材料の熱膨張率よりも小さい値であることが求められる。一方、上記のような金属接合層の他、基板上に成膜される各膜の厚みにはばらつきがあるため、これら各膜を成膜する際の工程管理を、応力緩和バッファレイヤの成膜の工程管理と併せて実施した場合、工程時間が長くなり、製造コストが増大するという問題がある。さらに、基板上への複数の膜の成膜や、応力緩和バッファレイヤの熱膨張係数を考慮した工程管理を行うことは、工程品質を確保する観点から大きな労力を必要とするという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、簡便な構成で、基板同士を接合して封止する接合部にクラック等が生じるのを抑制でき、低コストであるとともに生産性及び素子特性に優れたパッケージを提供することを目的とする。
また、本発明は、煩雑な工程管理を必要とすることなく、基板同士を接合して封止する際に接合部に生じる応力を緩和し、この接合部にクラック等が生じるのを抑制でき、素子特性に優れたパッケージを生産性よく製造することが可能なパッケージの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のパッケージは、第1基板と、前記第1基板の上面側に設けられる素子と、前記第1基板の上面側に前記素子を覆った状態で接合され、前記第1基板側に配置される下面側に、前記第1基板に接合される平面視枠状の凸状体と、平面視で前記凸状体に囲まれるように形成され、前記素子上に封止空間を確保するための凹状のキャビティ領域とを有する第2基板と、前記第2基板に形成された前記凸状体の先端に平面視枠状で設けられる第2金属接合膜と、前記第2基板に形成された前記凸状体に対応する位置で、前記第1基板の上面に平面視枠状に設けられる第1金属接合膜とが金属拡散接合されてなる接合体と、を備え、前記第1金属接合膜及び前記第2金属接合膜は、周方向における少なくとも一部が、平面視で前記周方向に沿って交互に配列された凹部及び凸部からなる凹凸形状を有し、前記第1金属接合膜の凹部及び凸部と前記第2金属接合膜の凹部及び凸部とが重ね合わせられて接合されており、前記凸状体は、前記第2金属接合膜に設けられた前記凹凸形状に対応するように、周方向における少なくとも一部が、前記周方向に沿って交互に配列された凹部及び凸部からなる凹凸形状を有していることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、上記のように、枠状の第1金属接合膜及び第2金属接合膜が、周方向に沿って交互に配列された凹部及び凸部からなる凹凸形状を有し、且つ、第1金属接合膜と第2金属接合膜とが、各々の凹部及び凸部が重ね合わされて接合されていることで、接合部におけるストレスが水平方向及び垂直方向に分散し、応力が効果的に緩和されるので、第1基板と第2基板とが高温下で接合される場合であっても、接合部にクラック等が生じるのを防止できる。
また、第1金属接合膜及び第2金属接合膜からなる接合体が設けられていることにより、第1基板と第2基板とが接合されたとき、金属拡散接合によって高い封止気密性が得られる。さらに加えて、第1基板及び第2基板における加工精度に起因する凹凸等が吸収されるので、封止気密性の向上に加え、内部における電気的特性もより良好になり、優れた素子特性が得られる。
また、第2金属接合膜と同様、凸状体が、周方向に沿って交互に配列された凹部及び凸部からなる凹凸形状を有することで、第1金属接合膜及び第2金属接合膜の凹凸形状によって得られる作用と併せて、接合部におけるストレスがより効果的に分散され、応力が緩和される作用が顕著に得られる。
従って、簡便な構成で、低コストであるとともに生産性及び素子特性に優れたパッケージが実現できる。
【0009】
また、本発明のパッケージは、上記構成において、前記第1金属接合膜及び前記第2金属接合膜の、前記凹凸形状が、前記周方向において周期的に配列された形状である構成とすることができる。
【0010】
本発明によれば、第1金属接合膜及び第2金属接合膜における凹凸形状が、周方向で周期的に配列された形状であることにより、上記のような、接合部におけるストレスが水平方向及び垂直方向に分散することで応力が緩和される作用が安定的に得られる。
【0013】
また、本発明のパッケージは、上記構成において、前記第1基板及び前記第2基板がシリコン基板からなる構成を採用することが好ましい。
【0014】
本発明によれば、第1基板及び第2基板が、加工性に優れるシリコン基板からなることで、接合による内部応力が低減されるとともに、エッチング処理による加工精度が向上するので、素子特性にさらに優れたものとなる。
【0015】
また、本発明のパッケージは、上記構成において、前記素子が赤外線検出素子であり、且つ、前記第2基板が赤外線を透過可能とされた、所謂赤外線センサとしての構成を採用することが可能である。
【0016】
本発明によれば、上記のパッケージ構造を有し、素子として赤外線検出素子を備えた構成を採用することで、接合部にクラック等が生じるのが抑制され、低コストであるとともに生産性及び素子特性に優れたパッケージとしての赤外線センサが実現できる。
【0017】
本発明のパッケージの製造方法は、少なくとも、基板材料の表面をエッチングすることにより、素子を収容する凹状のデバイス領域を形成して第1基板を得る工程(1)と、基板材料の表面をエッチングすることにより、平面視枠状の凸状体と、平面視で前記凸状体に囲まれるように形成され、前記素子上に封止空間を確保するための凹状のキャビティ領域と、を形成して第2基板を得る工程(2)と、前記第2基板に形成された前記凸状体の先端に、平面視枠状で、周方向における少なくとも一部が、平面視で前記周方向に沿って交互に配列された凹部及び凸部からなる凹凸形状を有した第2金属接合膜を形成する工程(3)と、前記第1基板上に、該第1基板と前記第2基板とを重ね合わせたときに前記凸状体に対応する位置で、平面視枠状で、周方向における少なくとも一部が、平面視で前記周方向に沿って交互に配列された凹部及び凸部からなる凹凸形状を有した第1金属接合膜を形成する工程(4)と、前記第1基板に形成された前記デバイス領域に前記素子を配置する工程(5)と、前記第1基板と前記第2基板との間に前記素子が配置されるように前記第1基板と前記第2基板とを重ね合わせ、前記第1金属接合膜と前記第2金属接合膜とを互いに加圧して金属拡散接合することで、前記第1金属接合膜の凹部及び凸部と前記第2金属接合膜の凹部及び凸部とを重ね合わせて接合し、前記第1基板と前記第2基板とを接合する工程(6)と、を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、上記のように、工程(3)において、第2基板上の枠状の凸状体の先端に凹凸形状を有する第2金属接合膜を形成し、工程(4)において、第1基板上に、第2基板の凸状体に対応する位置で、凹凸形状を有する第1金属接合膜を形成したうえで、工程(6)において、第1金属接合膜と第2金属接合膜とを、各々の凹凸を重ね合わせて金属拡散接合することにより、各金属接合膜間の接合代が形成される。このような接合代を形成することで、接合部におけるストレスが水平方向及び垂直方向に分散し、応力が効果的に緩和される。これにより、第1基板と第2基板とを高温下で接合する際、基板上に形成される各膜の熱膨張率の管理が不要で、煩雑な工程管理が不要であるとともに、新たな工程を追加したりすることなく、接合部にクラック等が生じるのを防止できる。
また、上記の工程(3)及び工程(4)を備え、上記の第1金属接合膜及び第2金属接合膜を、それぞれ対応する位置で形成したうえで、上記の工程(6)において、第1金属接合膜と第2金属接合膜とを金属拡散接合させ、第1基板と第2基板とを接合することで、高い封止気密性を有するパッケージが得られる。また、第1基板及び第2基板における加工精度に起因する凹凸等が吸収されるので、封止気密性の向上に加え、内部における電気的特性もより良好になり、優れた特性を有するパッケージを製造することが可能になる。
従って、煩雑な工程管理を必要とすることなく、安価で素子特性に優れたパッケージを生産性よく製造することが可能になる。
【0019】
また、本発明のパッケージの製造方法は、上記構成において、前記工程(3)及び前記工程(4)が、前記第1金属接合膜又は前記第2金属接合膜に設けられる前記凹凸形状を、前記周方向で周期的に配列して形成する方法とすることができる。
【0020】
本発明によれば、第1金属接合膜及び第2金属接合膜に設けられる凹凸形状を、周方向で周期的に形成することにより、上記の工程(6)において第1基板と第2基板とを接合する際に、接合部におけるストレスが水平方向及び垂直方向に分散して応力が緩和される作用が安定的に得られる。
【0021】
また、本発明のパッケージの製造方法は、上記構成において、前記工程(2)が、さらに、前記凸状体を、前記周方向における少なくとも一部が、前記周方向に沿って交互に配列された凹部及び凸部からなる凹凸形状となるように形成し、前記工程(3)が、前記第2金属接合膜を、前記凸状体の先端を覆うように、前記周方向における少なくとも一部が、前記周方向に沿って交互に配列された凹部及び凸部からなる凹凸形状となるように形成する方法としてもよい。
【0022】
本発明によれば、凸状体を、第2金属接合膜と同様、周方向に沿って交互に配列された凹部及び凸部からなる凹凸形状に形成することで、第1金属接合膜及び第2金属接合膜の凹凸形状によって得られる作用と併せて、上記の工程(6)において第1基板と第2基板とを接合する際の、接合部におけるストレスが水平方向及び垂直方向に分散して応力が緩和される作用が顕著に得られる。
【0023】
また、本発明のパッケージの製造方法は、上記構成において、前記工程(1)及び前記工程(2)が、前記基板材料としてシリコン基板を用いる工程であることがより好ましい。
【0024】
本発明によれば、第1基板及び第2基板に、加工性に優れるシリコン基板を用いることで、後工程となる工程(6)で第1基板と第2基板とを接合する際の内部応力が低減されるとともに、エッチング処理による加工精度が向上するので、素子特性にさらに優れたパッケージを製造することが可能になる。
【0025】
また、本発明のパッケージの製造方法は、上記構成において、前記工程(5)が、前記素子として、赤外線検出素子を、前記第1基板に形成された前記デバイス領域に配置する方法を採用してもよい。
【0026】
本発明によれば、上記の各工程によって得られるパッケージ構造を有し、素子として赤外線検出素子をデバイス領域に配置する方法なので、接合部にクラック等が生じるのが抑制され、低コストであるとともに生産性及び素子特性に優れたパッケージとしての赤外線センサを製造することが可能になる。
【発明の効果】
【0027】
本発明のパッケージによれば、上記構成を備えることにより、接合部におけるストレスが水平方向及び垂直方向に分散して応力が効果的に緩和されるので、第1基板と第2基板とが高温下で接合される場合であっても、接合部にクラック等が生じるのを防止できる。従って、簡便な構成で、低コストであるとともに生産性及び素子特性に優れたパッケージが実現できる。
【0028】
また、本発明のパッケージの製造方法によれば、上記方法を採用することにより、接合部におけるストレスが水平方向及び垂直方向に分散し、応力が効果的に緩和されるので、基板上に形成される各膜の熱膨張率の管理が不要となり、煩雑な工程管理が不要であるとともに、新たな工程を追加したりすることなく、接合部にクラック等が生じるのを防止できる。従って、煩雑な工程管理を必要とすることなく、安価で素子特性に優れたパッケージを生産性よく製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の実施形態であるパッケージを模式的に説明する平面図である。
【
図2】本発明の実施形態であるパッケージを模式的に説明する図であり、
図1中に示すI-I断面図である。
【
図3】本発明の実施形態であるパッケージを模式的に説明する図であり、
図3(a)は、第2金属接合膜を示す平面図、
図3(b)は、第1金属接合膜を示す平面図である。
【
図4】本発明の実施形態であるパッケージを模式的に説明する図であり、
図3(a)に示す第2金属接合膜と、
図3(b)に示す第1金属接合膜とを重ね合わせて接合した接合部における、各接合膜が重なった接合代の形状を示す概略図である。
【
図5】本発明の実施形態であるパッケージの製造方法を模式的に説明する図であり、
図5(a)、(b)は、工程(2)において基板をウェットエッチングすることで第2基板を得るステップを示す工程図、
図5(c)は、工程(3)において第2基板の凸状体に第2金属接合膜を形成するステップを示す工程図である。
【
図6】本発明の実施形態であるパッケージの製造方法を模式的に説明する図であり、
図6(a)は、工程(4)において第1基板の表面に第1金属接合膜を形成するステップ、及び、工程(5)においてデバイス領域に素子を配置するステップを示す工程図、
図6(b)は、工程(6)において第1基板と第2基板とを接合することでパッケージを得るステップを示す工程図、
図6(c)は、ウエハをダイシングすることで電極を露出させるとともに、チップ化するステップを示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明のパッケージ及びパッケージの製造方法の実施形態を挙げ、その構成について
図1~
図6を適宜参照しながら詳述する。なお、以下の説明で用いる各図面は、本発明のパッケージの特徴をわかりやすくするため、便宜上、特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等は実際とは異なる場合がある。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0031】
[パッケージの構成]
以下に、本実施形態のパッケージの構成について説明する。
図1は、本実施形態のパッケージ1を模式的に説明する平面図であり、
図2は、
図1中に示すパッケージ1のI-I断面図である。また、
図3(a)は第2金属接合膜6を示す平面図、
図3(b)は第1金属接合膜5を示す平面図であり、
図4は、
図3(a)に示す第2金属接合膜6と、
図3(b)に示す第1金属接合膜5とを重ね合わせて接合した接合部における、各接合膜間が重なった接合代Kの形状を示す図である。
【0032】
図1及び
図2に示すように、本実施形態のパッケージ1は、第1基板2(ベース基板)と、素子4と、第2基板3(リッド基板)とを備える。本実施形態のパッケージ1は、内部に素子4が設けられることで、種々のセンサ装置や半導体装置等を構成するものである。
【0033】
より詳細には、本実施形態のパッケージ1は、第1基板2と、第1基板2の上面2a側に設けられる素子4と、素子4を覆った状態で第1基板2の上面2a側に接合され、第1基板2側に配置される下面3a側に、第1基板2に接合される平面視枠状の凸状体31と、平面視で凸状体31に囲まれるように形成され、素子4上に封止空間(減圧空間・キャビティ)Cを確保するための凹状のキャビティ領域32とを有する第2基板3と、を備えて概略構成される。
図1に示すように、本実施形態のパッケージ1には、検出信号を出力するための電極8a,8bが備えられている。
【0034】
また、本実施形態のパッケージ1は、第2基板3に形成された凸状体31の先端に平面視枠状で設けられる第2金属接合膜6と、第2基板3に形成された凸状体31に対応する位置で、第1基板2の上面2aに平面視枠状に設けられる第1金属接合膜5とが金属拡散接合されてなる接合体50とを備える。
【0035】
そして、本実施形態のパッケージ1は、接合体50を構成する第1金属接合膜5及び第2金属接合膜6が、平面視枠状の周方向(長さ方向)における少なくとも一部が、周方向に沿って交互に配列された凹部5A,6A及び凸部5B,6Bからなる凹凸形状を有し、第1金属接合膜5の凹部5A及び凸部5Bと第2金属接合膜6の凹部6A及び凸部6Bとが重ね合わせられて接合されている。より具体的には、第1金属接合膜5の凹部5A及び凸部5Bと第2金属接合膜6の凹部6A及び凸部6Bとが、交互に組み合わされるように重ね合わせられることで、平面視C字状の接合代Kによって接合されている(
図3(a),(b)及び
図4も参照)。
図1に示す例においては、接合体50を構成する第1金属接合膜5及び第2金属接合膜6が、上記の凹凸形状が周方向の全周にわたって設けられた構成とされており、また、各接合膜の両幅方向で対称形状となるように凹凸が設けられている。
【0036】
また、図示は省略するが、パッケージ1の内部には、素子4と電極8a,8bとを電気的に接続するための内部配線が設けられている。
以下、本実施形態のパッケージ1の構成について説明する。
【0037】
第1基板2は、パッケージ1のベース基板であり、例えば、シリコン基板からなる。また、第1基板2は、
図1に示す例では、平面視で矩形状に形成されている。また、第1基板2の上面2aには、後述する素子4を配置するためのデバイス領域22が凹状に形成されており、図示例においては、平面視で概略中央にデバイス領域22が設けられている。
【0038】
第1基板2は、シリコン基板をウェットエッチングすることにより、デバイス領域22を形成することで得ることができる。デバイス領域22は、例えば、平面視矩形状に形成される領域である。
また、第1基板2の平面視形状は、図示例のような概略矩形状のものには限定されず、パッケージ1としての平面視形状に合わせて各種形状を採用することができる。
また、本実施形態においては、第1基板2の上面2a及び下面2bは、デバイス領域22の部分を除いて概略平坦に構成されている。
【0039】
素子4は、上述のように、第1基板2の上面2a側に形成された凹状のデバイス領域22に収容されるように設けられている。また、素子4は、その検出信号を、電極8a,8bを介して外部に向けて出力する。
【0040】
素子4は、例えば、ベース基板である第1基板2の構成材料から構成された部分を有してもよく、外部から供給された材料から構成された部分を有してもよく、第1基板2の構成材料と外部から供給された材料とを混合して構成された部分を有してもよい。本実施形態における素子4としては、例えば、センサ素子の他、電子素子、集積回路等が挙げられる。また、センサ素子としては、例えば、赤外線センサ、加速度センサ、角速度センサ等が挙げられる。
【0041】
また、
図1及び
図2等においては図示を省略しているが、本実施形態のパッケージ1においては、第1基板2におけるデバイス領域22の周囲や、電極8a,8bの周囲等に絶縁層が設けられていてもよい。具体的には、図視略の絶縁層は、第1基板2の上面2a側のうち、素子4よりも外側の領域に、平面視で素子4を囲むように設けることができる。この絶縁層は、絶縁性を有する材料からなり、例えば、二酸化ケイ素(SiO
2)等のシリコン酸化膜や、シリコン窒化膜(SiN
x)等から形成される。
【0042】
第2基板3は、パッケージ1のリッド基板(蓋)であり、第1基板2と同様、例えば、シリコン基板からなる。また、図示例の第2基板3は、第1基板2と同様、平面視で矩形状に形成されている。また、第2基板3は、縁部近傍に平面視で枠状の凸状体31を有し、概略で蓋状に形成されている。さらに、第2基板3における凸状体31よりも平面視で内側の領域は、詳細を後述するように、第1基板2の上面2aと、第2基板3の下面3a側に設けられた凸状体31とを組み合わせて接合した際に、キャビティ領域32による封止空間Cを形成する。
なお、図示例のキャビティ領域32は、平面視矩形状とされている。
また、図示例の凸状体31は、詳細を後述するウェットエッチングによる加工条件に伴い、側部が傾斜して形成されている。
【0043】
第2基板3は、第1基板2に対して概略平行となるように重ね合わせられている。
また、第2基板3の平面視形状も、第1基板2の場合と同様、図示例のような概略矩形状には限定されず、パッケージ1としての平面視形状に合わせて、第1基板2と対応する形状とすることができる。
また、第2基板3は、上記の素子4が赤外線検出素子である場合には、赤外線を透過可能に構成される。
【0044】
なお、第2基板3は、詳細を後述するように、凸状体31を、詳細を後述する第2金属接合膜6に設けられた凹凸形状に対応するように、周方向における少なくとも一部が凹凸形状である構成を採用することも可能である。
【0045】
また、本実施形態のパッケージ1においては、第1基板2及び第2基板3がシリコン基板からなることが好ましい。このように、第1基板2及び第2基板3が、加工性に優れるシリコン基板からなることで、接合による内部応力が低減されるとともに、エッチング処理による加工精度が向上するので、素子特性にさらに優れたものとなる。
【0046】
接合体50は、上記のように、第1基板2の上面2aと第2基板3の凸状体31との間に配置され、第1基板2と第2基板3とを接合するものである。
図2中に示すように、接合体50は、第2基板3に形成された凸状体31の先端に設けられた第2金属接合膜6と、第1基板2の上面2aにおける、第2基板3に形成された凸状体31に対応する位置で設けられた第1金属接合膜5とからなり、これらの間が金属拡散接合されて構成される。また、接合体50は、
図1中に示すように、平面視で概略枠状に構成される。
【0047】
パッケージ1に備えられる接合体50は、第1基板2と第2基板3とを接合することで、これら第1基板2、第2基板3及び接合体50に囲まれた封止空間Cを形成する。
また、接合体50は、第2基板3に形成された凸状体31、及び、第1基板2の上面2aにおける第1金属接合膜5の形成箇所とともに、第1基板2と第2基板3との間を接合するための接合部を構成する。
【0048】
より具体的には、接合体50は、第1基板2の上面2aに配置される第1下地層51、及び、第1下地層51上に積層して設けられる第1接合層52からなる第1金属接合膜5と、第2基板3の凸状体31の先端に配置される第2下地層61、及び、第2下地層61に積層して設けられる第2接合層62からなる第2金属接合膜6と、から構成される。
図2中に示す第1金属接合膜5及び第2金属接合膜6は、平面視矩形状で、且つ枠状に形成されている。
【0049】
第1下地層51及び第2下地層61は、それぞれ、第1基板2の上面2a、又は、第2基板3の凸状体31の先端に接合される。上記のような各下地層を備えることにより、第1接合層52が第1基板2に対して強固に接合され、第2接合層62が第2基板3の凸状体31に対して強固に接合される。
【0050】
第1下地層51及び第2下地層61は、それぞれ、第1基板2の上面2a上、又は、第2基板3の凸状体31の先端において、導電性を有する金属材料によって薄膜状に形成されている。
第1下地層51及び第2下地層61の材料としては、特に限定されないが、例えば、タンタル(Ta)又は窒化チタン(TiN)からなる薄膜とされていることが好ましい。
また、第1基板2側に設けられる第1下地層51は、例えば、図視略のグラウンドに接続されている。このグラウンドは、例えば、第1基板2の下面2b側に設けることができるが、第1基板2の上面2a側に設けられていてもよい。
【0051】
第1接合層52及び第2接合層62は、上記のように、それぞれ、第1下地層51又は第2下地層61に積層されている。
第1接合層52及び第2接合層62の材料としては、特に限定されないが、例えば、第1下地層51及び第2下地層61の材料としてタンタルを用いた場合には、第1接合層52及び第2接合層62の材料として金(Au)を用いる。また、第1下地層51及び第2下地層61の材料として窒化チタンを用いた場合には、第1接合層52及び第2接合層62の材料としてアルミニウム(Al)を用いる。
【0052】
そして、本実施形態においては、第1接合層52と第2接合層62とが、同じ材料同士で接合されるように構成される。即ち、第1接合層52及び第2接合層62は、両方が同じ材料、即ち、金(Au)又はアルミニウム(Al)の何れか一方の材料を含むように構成される。
【0053】
接合体50を上記材料から構成した場合、各層の厚さは特に限定されない。一方、電気的特性や接合時の強度等を勘案し、第1下地層51及び第2下地層61をタンタルから構成し、第1接合層52及び第2接合層62を金から構成した場合には、例えば、{第1接合層52(又は第2接合層62):0.5nm~2μm/第1下地層51(又は第2下地層61):0.05~0.2μm}の範囲とすることが好ましい。
同様に、第1下地層51及び第2下地層61を窒化チタンから構成し、第1接合層52及び第2接合層62をアルミニウムから構成した場合には、例えば、{第1接合層52(又は第2接合層62):1~3μm/第1下地層51(又は第2下地層61):0.05~0.5μm}の範囲とすることが好ましい。
【0054】
本実施形態においては、接合体50を上記のような層構造から構成することにより、詳細については後述するが、第1基板2と第2基板3とを重ね合わせて加圧した際に、第1下地層51及び第1接合層52と、第2下地層61及び第2接合層62との間に金属拡散接合が発現される。これにより、接合体50を強固な接合構造とし、且つ、第1基板2と第2基板3とを、封止空間Cにおける封止性を高めながら強固に接合することが可能になる。
【0055】
また、本実施形態においては、接合体50を上記材料から構成して金属拡散接合させることには限定されない。例えば、接合体50の各層を金(Au)又はスズ(Sn)から構成し、Au-Sn共晶接合させた構成を採用してもよい。この場合、例えば、第1下地層51及び第2下地層61、並びに、第1接合層52及び第2接合層62を、それぞれAu-Sn共晶合金から形成し、共晶温度まで加熱及び溶融させることで、第1下地層51及び第1接合層52と、第2下地層61及び第2接合層62との間を共晶接合させる。これにより、第1基板2と第2基板3とを接合することができる。
【0056】
そして、本実施形態のパッケージ1に備えられる接合体50は、
図3(a),(b)に示すように、第1金属接合膜5及び第2金属接合膜6が、平面視枠状の周方向(長さ方向)における少なくとも一部が、周方向に沿って交互に配列された凹部5A,6A及び凸部5B,6Bからなる、括れるように設けられた凹凸形状を有している。そして、
図4に示す例では、第1金属接合膜5と第2金属接合膜6とは、第1金属接合膜5の凹部5A及び凸部6Bと第2金属接合膜6の凹部6A及び凸部6Bとが交互に組み合わされるように重ね合わせられることで、平面視で略C字状(略コの字状)の接合代Kによって接合されている。
【0057】
本実施形態のパッケージ1によれば、第1金属接合膜5及び第2金属接合膜6が上記の凹凸形状とされることで、接合代Kが略C字状に形成されるので、第1金属接合膜5と第2金属接合膜6とが重ね合わせられて高温下で接合された際に、この接合部に生じるストレスが水平方向及び垂直方向に分散される作用が得られる。これにより、接合部及びその周辺における応力が効果的に緩和されるので、クラック等が生じるのを防止できる効果が得られる。
【0058】
第1金属接合膜5の凹部5Aの深さ(括れ深さ)F1、及び、第2金属接合膜6の凹部6Aの深さ(括れ深さ)F2は、特に限定されないが、例えば、第1金属接合膜5の全幅H1、及び、第2金属接合膜6の全幅H2に対して、1/4~1/3程度の寸法とすることが好ましい。例えば、第1金属接合膜5及び第2金属接合膜6の全幅H1,H2が100μmの場合には、各々の凹部5A,6Aの深さF1,F2は25~30μmの範囲であることが好ましい。
また、周方向における第1金属接合膜5の凹部5Aの長さL1、及び、第2金属接合膜6の凹部6Aの長さL2も、特に限定されないが、例えば、上記の凹部5A,6Aの深さF1,F2と同等程度から、第1金属接合膜5及び第2金属接合膜6の全幅H1,H2と同等程度の範囲の寸法とすることができる。例えば、第1金属接合膜5及び第2金属接合膜6の全幅H1,H2が100μmの場合には、各々の凹部5A,6Aの長さL1,L2は25~100μの範囲であることが好ましい。
第1金属接合膜5及び第2金属接合膜6の全幅H1,H2、各々の凹部5A,6A、及び、各々の長さL1,L2を上記範囲とすることにより、上記のような、接合部に生じるストレスが水平方向及び垂直方向に分散されることで応力が緩和される作用が、より効果的に得られる。
【0059】
また、第1金属接合膜5と第2金属接合膜6との接合代Kの寸法についても、特に限定されないが、略C字状で重ね合わせられた各位置において、30μm程度の重ね合わせ寸法で確保されていることが好ましい。この場合、例えば、第1基板2と第2基板3とを重ね合わせて位置決めする際のアライメント精度が±10μmであれば、接合代Kの各位置における最小の重ね合わせ寸法は20μm程度となる。
第1金属接合膜5と第2金属接合膜6との接合代Kの寸法を、上記のような寸法とすることにより、上記のような、接合部に生じるストレスが水平方向及び垂直方向に分散されることで応力が緩和される作用が、より安定的に得られる。
【0060】
なお、後述の製造方法の説明で詳述するが、第1金属接合膜5及び第2金属接合膜6に上記のような凹凸形状を設けることは、第1金属接合膜5又は第2金属接合膜6を形成する各工程において同時に実施可能である。このため、新たな工程を設ける必要が無いので、製造コストを増大させることなく、生産性及び素子特性に優れたパッケージ1が得られる。
【0061】
また、第1金属接合膜5及び第2金属接合膜6は、上記の凹凸形状を、周方向において周期的に配列された形状に構成してもよい。即ち、
図3(a),(b)等に示す例のように、第1金属接合膜5の凹部5A及び凸部5Bと、第2金属接合膜6の凹部6A及び凸部6Bとが、それぞれ、周期的に配列されていてもよい。この場合においても、上記のような、接合部におけるストレスが水平方向及び垂直方向に分散して応力が緩和される作用が、より安定的に得られる。
また、第1金属接合膜5及び第2金属接合膜6の凹凸形状は、枠状とされた周方向において非周期的に配列されていてもよい。
【0062】
第1基板2の上面2aには、電極8a,8b、及び、図視略の内部配線が設けられている。
電極8a,8bは、図視略の内部配線等を介して素子4と電気的に接続され、素子4による検出信号等を外部に出力するものである。電極8a,8bは、第1基板2の上面2a上において、それぞれ対向する縁部に沿って設けられており、図示例においては、電極8aと電極8bとが、それぞれ対向して4カ所に設けられている。また、電極8a,8bは、平面視で第2基板3よりも外側に設けられている。電極8a,8bは、例えば、赤外線検出素子等の素子4による検出信号等を必要とする種々の外部機器に対して電気的に接続可能に設けられる。
【0063】
上記の電極8a,8b及び内部配線を構成する材料としては、優れた導電性を有する配線材料又は電極材料であれば、特に限定されず、従来からこの分野で用いられている金属材料を何ら制限無く用いることができる。例えば、電極8a,8b及び内部配線として、窒化チタン(TiN)、アルミシリコン合金(AlSi)、及び窒化チタン(TiN)を、スパッタリング法によって順次積層したもの等を用いることが可能である。
【0064】
本実施形態のパッケージ1によれば、第1金属接合膜5及び第2金属接合膜6が、上記のような凹凸形状を有し、
図4に示す例では、第1金属接合膜5の凹部5A及び凸部6Bと第2金属接合膜6の凹部6A及び凸部6Bとが交互に組み合わされて接合され、各金属接合膜の接合代Kが略C字状で設けられている。これにより、接合部におけるストレスが水平方向及び垂直方向に分散して応力が効果的に緩和されるので、第1基板2と第2基板3とが高温下で接合される場合であっても、接合部にクラック等が生じるのを防止できる。
従って、簡便な構成で、低コストであるとともに生産性及び素子特性に優れたパッケージ1が実現できる。
【0065】
また、本実施形態のパッケージ1によれば、上記の第1金属接合膜5及び第2金属接合膜6からなる接合体50が設けられていることにより、第1基板2と第2基板3とが接合されたとき、金属拡散接合によって高い封止気密性が得られる。さらに、第1基板2及び第2基板3における加工精度に起因する凹凸等が吸収されるので、封止気密性の向上に加え、内部における電気的特性もより良好になり、優れた素子特性が得られる。
【0066】
また、第2基板3に設けられる凸状体31についても、第1金属接合膜5及び第2金属接合膜6と同様に、周方向に沿って交互に配列された凹部及び凸部からなる凹凸形状で構成した場合には、第1金属接合膜5及び第2金属接合膜6の凹凸形状によって得られる作用と併せて、接合部におけるストレスがより効果的に分散され、応力が緩和される作用が顕著に得られる。
【0067】
また、本実施形態のパッケージ1によれば、第1基板2及び第2基板3が、詳細を後述するウェットエッチングによって加工した際の加工性が優れるシリコン基板からなることで、素子特性にさらに優れたものとなる。
【0068】
また、本実施形態のパッケージ1によれば、素子4として赤外線検出素子を採用し、且つ、第2基板3が赤外線を透過可能に構成されることにより、接合部にクラック等が生じるのが抑制され、低コストであるとともに生産性及び素子特性に優れた赤外線センサが実現できる。
【0069】
次に、本実施形態のパッケージ1を用いた各種検出に係る処理の一例として、素子4に赤外線検出素子を用い、赤外線センサとしてパッケージを構成した場合について説明する。
まず、赤外線が第2基板3の上面3b側から入射して第2基板3を透過すると、赤外線検出素子からなる素子4は、その赤外線を検出して検出信号を出力する。素子4から出力された検出信号は、図視略の内部配線等を通り、複数の電極8a,8bから出力される。複数の電極8a,8bから出力された検出信号は、外部機器に送信されて所定の動作が行われる。
【0070】
[パッケージの製造方法]
次に、本実施形態のパッケージ1を製造する方法について、
図5及び
図6を参照しながら詳述する(パッケージ1の構成については
図1~
図3も適宜参照)。
図5及び
図6は、本実施形態のパッケージ1の製造方法を模式的に説明する図であり、
図5(a),(b)は、以下に説明する工程(2)においてシリコン基板をウェットエッチングすることで第2基板3を得るステップを示す工程図、
図5(c)は、工程(3)において第2基板3の凸状体31に第2金属接合膜6を形成するステップを示す工程図である。また、
図6(a)は、工程(4)において第1基板2の上面(表面)2aに第1金属接合膜5を形成するステップを示す工程図、
図6(b)は、工程(6)において第1基板2と第2基板3とを接合することでパッケージ1を得るステップを示す工程図、
図4(c)は、ウエハをダイシングすることで電極8a,8bを露出させるとともに、チップ化するステップを示す工程図である。
【0071】
本実施形態のパッケージ1の製造方法は、例えば、
図1及び
図2に示すような本実施形態のパッケージ1を製造する方法であり、少なくとも以下の工程(1)~(6)を備える方法である。
工程(1):基板材料の表面をエッチングすることにより、素子4を収容する凹状のデバイス領域22を形成して第1基板2を得る。
工程(2):基板材料の表面をエッチングすることにより、平面視枠状の凸状体31と、平面視で凸状体31に囲まれるように形成され、素子4上にキャビティ(減圧空間)Cを確保するための凹状のキャビティ領域32とを形成して第2基板を得る。
工程(3):第2基板3に形成された凸状体31の先端に、平面視枠状で、周方向における少なくとも一部が、平面視で周方向に沿って交互に配列された凹部6A及び凸部6Bからなる凹凸形状を有した第2金属接合膜6を形成する。
工程(4):第1基板2上に、該第1基板2と第2基板3とを重ね合わせたときに凸状体31に対応する位置で、平面視枠状で、周方向における少なくとも一部が、平面視で周方向に沿って交互に配列された凹部5A及び凸部5Bからなる凹凸形状を有した第1金属接合膜5を形成する。
工程(5):第1基板2に形成されたデバイス領域22に素子4を配置する。
工程(6):第1基板2と第2基板3との間に素子4が配置されるように第1基板2と第2基板3とを重ね合わせ、第1金属接合膜5と第2金属接合膜6とを互いに加圧して金属拡散接合することで、第1金属接合膜5の凹部5A及び凸部5Bと第2金属接合膜6の凹部6A及び凸部6Bとを重ね合わせて接合し、第1基板2と第2基板3とを接合する。
【0072】
まず、工程(1)において、基板材料、例えばシリコン基板の表面をウェットエッチングし、素子4を収容する凹状のデバイス領域22を形成して第1基板2を作製する(
図6(a)を参照)。
具体的には、工程(1)では、まず、基板材料となるシリコン基板の表面に、フォトリソグラフィ法により、凹状のデバイス領域22をウェットエッチングで形成するための、図視略のレジストパターンを形成する。
次いで、シリコン基板の表面をウェットエッチングすることにより、凹状のデバイス領域22を形成する。
その後、第1基板2からレジストパターンを剥離する。
【0073】
工程(1)においては、フォトリソグラフィ法によってレジストパターンを形成するにあたり、例えばスピンコート法等を用いて、従来公知の条件でレジストパターンを形成することができる。
また、工程(1)におけるウェットエッチング条件としても、特に限定されず、例えば、従来からシリコン基板のエッチングに用いられているKOH等のエッチング液を用いることができる。また、エッチング液の温度やエッチング時間等の各条件についても、従来公知の条件を何ら制限無く採用できる。
【0074】
本実施形態では、上記工程(1)を実施するのと平行して、工程(2)において、基板材料、例えばシリコン基板の表面(下面3a)をエッチングすることにより、平面視枠状の凸状体31と、平面視で凸状体31に囲まれるように形成され、素子4上に封止空間Cを確保するための凹状のキャビティ領域32とを形成して第2基板3を作製する。
【0075】
即ち、工程(2)においては、まず、
図5(a)に示すような、基板材料となるシリコン基板3Aを準備する。
次いで、詳細な図示を省略するが、シリコン基板3Aの一方の表面(下面3a)にドライフィルムレジストを塗布した後、フォトリソグラフィ法によってパターン化することにより、凸状体31及びキャビティ領域32をウェットエッチングで形成するための図視略のレジストパターンを形成する。
【0076】
次いで、
図5(b)に示すように、シリコン基板3Aの一方の表面(下面3a)をウェットエッチングすることにより、凸状体31を形成するとともに、
図1及び
図2中にも示すような、平面視枠状の凸状体31に囲まれたキャビティ領域32を形成する(工程(2))。
【0077】
上記の工程(2)により、第2基板3が得られる。
なお、本実施形態の製造方法で得られるパッケージ1は、上記のキャビティ領域32に対応する領域が封止空間Cとなる。
その後、第2基板3からレジストパターンを剥離する。
【0078】
工程(2)においても、フォトリソグラフィ法によってレジストパターンを形成するにあたり、例えばスピンコート法等を用いて、従来公知の条件でレジストパターンを形成することができる。
また、工程(2)におけるウェットエッチング条件としても、特に限定されず、例えば、従来からシリコン基板のエッチングに用いられているKOH等のエッチング液を用いることができる。また、エッチング液の温度やエッチング時間等の各条件についても、従来公知の条件を何ら制限無く採用できる。
【0079】
次に、工程(3)においては、第2基板3に形成された凸状体31の先端に、平面視枠状で、周方向における少なくとも一部が、平面視で周方向に沿って交互に配列された凹部6A及び凸部6Bからなる凹凸形状を有した第2金属接合膜6を形成する。
具体的には、まず、
図5(b)に示すような、工程(2)で得られた第2基板3の下面3a側に、スプレーコート法等のフォトリソグラフィ法により、第2金属接合膜6を形成するための、図視略のレジストパターンを形成する。この際、第2基板3の下面3aにおける、凸状体31の部分を除いた全面、及び、凸状体31の側面の全体にレジストパターンを形成するとともに、凸状体31の先端に、
図3(a)に示した、凹部6A及び凸部6Bからなる凹凸形状を有した第2金属接合膜6に対応する箇所以外の部分にレジストパターンを形成する。
【0080】
次いで、例えば、スパッタリング法、蒸着法又はめっき法等の方法により、
図5(c)に示すように、凸状体31の先端に第2金属接合膜6を形成する。この際、材料及び積層順を適宜選択することにより、上述したような{Au層(第2接合層62)/Ta層(第2下地層61)}構造、又は、{Al層(第2接合層62)/TiN層(第2下地層61)}構造の薄膜からなり、
図3(a)に示すような凹凸形状を有した第2金属接合膜6を形成する。
その後、第1基板2の上面2aから図視略のレジストパターンを剥離する。
【0081】
また、本実施形態では、上記の工程(3)を実施するとともに、工程(4)において、第1基板2と第2基板3とを重ね合わせたときに凸状体31に対応する位置で、平面視枠状で、周方向における少なくとも一部が、平面視で周方向に沿って交互に配列された凹部5A及び凸部5Bからなる凹凸形状を有した第1金属接合膜5を形成する。
具体的には、まず、
図6(a)中に示すような、デバイス領域22が形成された第1基板2の上面2a上に、上記同様、スプレーコート法等のフォトリソグラフィ法により、第1金属接合膜5を形成するための、図視略のレジストパターンを形成する。この際、第1基板2の上面2aにおける、第2基板3の凸状体31に対応する部分を除いた全面にレジストパターンを形成するとともに、
図3(b)に示した、凹部5A及び凸部5Bからなる凹凸形状を有した第1金属接合膜5に対応する箇所以外の部分にレジストパターンを形成する。
【0082】
次いで、例えば、スパッタリング法、蒸着法又はめっき法等の方法により、第1基板2の上面2a上に、
図3(b)に示すような凹凸形状を有した第1金属接合膜5を形成する(
図6(a)も参照)。
【0083】
なお、工程(4)においては、材料及び積層順を適宜選択することにより、上述したような{Au層(第1接合層52)/Ta層(第1下地層51)}構造、又は、{Al層(第1接合層52)/TiN層(第1下地層51)}構造の薄膜からなる第1金属接合膜5を形成することができる。また、この際、第2金属接合膜6が{Au層(第2接合層62)/Ta層(第2下地層61)}からなる場合には、第1金属接合膜5も同様の材料から形成する。この場合には、第1金属接合膜5のAu層(第1接合層52)と第2金属接合膜6のAu層(第2接合層62)とが接合するように、各層の積層順を調整する。
また、第2金属接合膜6が{Al層(第2接合層62)/TiN層(第2下地層61)}からなる場合には、第1金属接合膜5も同様の材料から形成する。この場合には、第1金属接合膜5のAl層(第1接合層52)と第2金属接合膜6のAl層(第2接合層62)とが接合するように、各層の積層順を調整する。
その後、第1基板2から図視略のレジストパターンを剥離する。
【0084】
なお、上記の工程(3),(4)においては、第1金属接合膜5又は第2金属接合膜6の凹凸形状を、周方向で周期的に配列して形成してもよい。即ち、
図3(a),(b)等に示す例のように、第1金属接合膜5の凹部5A及び凸部5B、及び、第2金属接合膜6の凹部6A及び凸部6Bを、それぞれ、周期的に配列して形成してもよい。
【0085】
また、本実施形態においては、
図6(a)中に示すように、第1基板2の上面2aに、スパッタリング法によって導電性材料を積層することにより、電極8a,8b、及び、図視略の内部配線を形成する。この際、電極8a,8bに用いられる電極材料、及び、内部配線に用いられる配線材料としては、特に限定されないが、例えば、上述したような、TiN、AlSi、及びTiNを順次積層することで形成することができる。
【0086】
次に、工程(5)において、第1基板2の上面2aに形成された凹状のデバイス領域22に、素子4を配置する(
図6(a)等を参照)。
【0087】
次に、工程(6)において、
図6(b)に示すように、第1基板2と第2基板3との間に素子4が配置されるように第1基板2と第2基板3とを重ね合わせ、第1基板2と第2基板3とを接合する。即ち、第2基板3の凸状体31の先端に形成された第2金属接合膜6と、第1基板2の上面2a上に形成された第1金属接合膜5とを重ね合わせ、互いに加圧することで金属拡散接合を発現させることにより、第1基板2と第2基板3とを接合する。また、工程(6)においては、第1金属接合膜5の凹部5A及び凸部5Bと第2金属接合膜6の凹部6A及び凸部6Bとを重ね合わせた接合代Kによって接合されるように、第1基板2と第2基板3とを接合する。
【0088】
具体的には、まず、
図6(b)に示すように、第1金属接合膜5と第2金属接合膜6とを突き合わせるように、第1基板2と第2基板3とを重ね合わせる。
次いで、第1基板2と第2基板3とを互いに加圧することにより、第1金属接合膜5と第2金属接合膜6との間に金属拡散接合を発現させ、この部分を接合する。この際、
図4中に示すように、第1金属接合膜5の凹部5A及び凸部5Bと、第2金属接合膜6の凹部6A及び凸部6Bとを、それぞれ交互に組み合わせて重ね合わせることで、平面視で略C字状の接合代Kを形成するように位置決めする。
【0089】
上記の拡散接合を行う際の条件、即ち、パッケージ1の封止空間Cを封止する条件としては、特に限定されないが、例えば、第1基板2側の第1金属接合膜5、及び、第2基板3側の第2金属接合膜6が{Au層(第1接合層52又は第2接合層62)/Ta層(第1下地層51又は第2下地層61)}である場合には、例えば、温度条件を300~350℃の範囲とし、加圧力を450~900kPaの範囲とすることが好ましい。
一方、第1金属接合膜5及び第2金属接合膜6が{Al層(第1接合層52又は第2接合層62)/TiN層(第1下地層51又は第2下地層61)}である場合には、例えば、温度条件を350~400℃の範囲とし、加圧力を27~60MPaの範囲とすることが好ましい。
【0090】
また、第1基板2と第2基板3とを接合する際の封止幅(接合幅)、即ち、第1金属接合膜5及び第2金属接合膜6の最大幅も、特に限定されない。一方、封止気密性の向上等を考慮した場合、上記の封止幅は、第1金属接合膜5及び第2金属接合膜6が{Au層(第1接合層52又は第2接合層62)/Ta層(第1下地層51又は第2下地層61)}である場合には、例えば、0.15~0.30mmの範囲であることが好ましい。また、第1金属接合膜5及び第2金属接合膜6が{Al層(第1接合層52又は第2接合層62)/TiN層(第1下地層51又は第2下地層61)}である場合には、上記の封止幅は、例えば、0.03~0.1mmの範囲であることが好ましい。
【0091】
そして、本実施形態では、上記の工程(6)の後、
図6(c)に示すように、ダイシングラインLに沿って、第2基板3において対向する一対の縁部をダイシングすることにより、電極8a,8bを露出させ、その後、チップ単位に個片化する。
以上の各工程により、本実施形態のパッケージ1を製造することができる。
なお、上記の各工程は、可能な範囲で、その工程順を変更したり、あるいは、同じ工程として行ったりすることも可能である。
【0092】
本実施形態のパッケージ1の製造方法によれば、工程(3)において、第2基板3上に上記の凹凸形状を有する第2金属接合膜6を形成するとともに、工程(4)において、第1基板2上に上記の凹凸形状を有する第1金属接合膜5を形成したうえで、工程(6)において、第1金属接合膜5と第2金属接合膜6とを、各々の凹凸が交互に組み合わされるように金属拡散接合する。このとき、第1金属接合膜5と第2金属接合膜6との接合代Kが略C字状に形成されるので、接合部全体におけるストレスが水平方向及び垂直方向に分散し、応力が効果的に緩和される。これにより、第1基板2と第2基板3とを高温下で接合する際、基板上に形成される各膜の熱膨張率の管理が不要で、煩雑な工程管理が不要であるとともに、新たな工程を追加したりすることなく、接合部にクラック等が生じるのを防止できる。従って、煩雑な工程管理を必要とすることなく、安価で素子特性に優れたパッケージを生産性よく製造することが可能になる。
【0093】
また、本実施形態の製造方法では、上記の工程(3)及び工程(4)を備え、第1金属接合膜5及び第2金属接合膜6を、それぞれ対応する位置で形成したうえで、上記の工程(6)において、第1金属接合膜5と第2金属接合膜6とを金属拡散接合させ、第1基板2と第2基板3とを接合することで、高い封止気密性を有するパッケージ1が得られる。また、第1基板2及び第2基板3における加工精度に起因する凹凸等が吸収されるので、封止気密性の向上に加え、内部における電気的特性もより良好になり、優れた特性を有するパッケージ1を製造できる。
【0094】
また、本実施形態の製造方法によれば、第1金属接合膜5及び第2金属接合膜6における凹凸形状を、周方向で周期的に配列して形成することで、工程(6)において第1基板2と第2基板3とを接合する際に、接合部におけるストレスが水平方向及び垂直方向に分散して応力が緩和される作用が安定的に得られる。
【0095】
また、本実施形態の製造方法によれば、工程(2)において、凸状体31を、第2金属接合膜と同様、周方向に沿って交互に配列された凹部及び凸部からなる凹凸形状となるように形成した場合には、上記の第1金属接合膜5及び第2金属接合膜6の凹凸形状によって得られる作用と併せて、工程(6)において第1基板2と第2基板3とを接合する際の、接合部におけるストレスが水平方向及び垂直方向に分散して応力が緩和される作用が顕著に得られる。
【0096】
また、本実施形態の製造方法によれば、工程(1)及び工程(2)において、第1基板2及び第2基板3に、ウェットエッチングによる加工性に優れるシリコン基板を用いることで、工程(6)で第1基板2と第2基板3とを接合する際の内部応力が低減されるとともに、エッチング処理による加工精度が向上するので、素子特性にさらに優れたパッケージ1を製造できる。
【0097】
また、本実施形態の製造方法によれば、工程(5)において、素子4として赤外線検出素子をデバイス領域に配置することにより、基板同士を接合して封止する際に接合部に生じる応力が緩和され、この接合部にクラック等が生じるのを防止でき、低コストであるとともに生産性及び素子特性に優れたパッケージ1として赤外線センサを製造できる。
【0098】
[作用効果]
以上説明したように、本実施形態のパッケージ1によれば、上記のような凹凸形状を有する第1金属接合膜5及び第2金属接合膜からなる接合体50を備えることで、接合部におけるストレスが水平方向及び垂直方向に分散して応力が効果的に緩和される。これにより、第1基板2と第2基板3とが高温下で接合される場合であっても、接合部にクラック等が生じるのを防止できる。
従って、簡便な構成で、低コストであるとともに生産性及び素子特性に優れたパッケージ1が実現できる。
【0099】
また、本発明のパッケージの製造方法によれば、上記のような工程(3),(4)において、上記のような凹凸形状を有する第1金属接合膜5及び第2金属接合膜6を形成し、工程(6)において、各々の凹部及び凸部を重ね合わせ、これらを金属拡散接合することで第1基板2と第2基板3とを接合する方法なので、接合部におけるストレスが水平方向及び垂直方向に分散し、応力が効果的に緩和される。これにより、基板上に形成される各膜の熱膨張率の管理が不要となり、煩雑な工程管理が不要であるとともに、新たな工程を追加したりすることなく、接合部にクラック等が生じるのを防止できる。
従って、煩雑な工程管理を必要とすることなく、安価で素子特性に優れたパッケージ1を生産性よく製造することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明のパッケージは、上述したように、基板同士を接合して封止する際に接合部に生じる応力が緩和され、低コストであるとともに生産性及び素子特性に優れている。従って、信頼性の高い各種検出精度が要求される電子機器等における用途、例えば、携帯端末、スマートフォン、センサネットワーク・デバイス、モノのインターネット(IoT)技術等において非常に好適である。
【符号の説明】
【0101】
1…パッケージ
2…第1基板
2a…上面
2b…下面
22…デバイス領域
3…第2基板
3a…下面
3b…上面
31…凸状体
32…キャビティ領域
3A…シリコン基板
4…素子
50…接合体
5…第1金属接合膜
5A…凹部
5B…凸部
51…第1下地層
52…第1接合層
6…第2金属接合膜
6A…凹部
6B…凸部
61…第2下地層
62…第2接合層
8a,8b…電極
C…キャビティ(減圧空間)
L…ダイシングライン
F1,F2…凹部の深さ(括れ深さ)
L1,L2…凹部の長さ
K…接合代