(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】接続構造、接続方法及び接続部材
(51)【国際特許分類】
H02G 15/10 20060101AFI20230228BHJP
H02G 15/08 20060101ALI20230228BHJP
H02G 1/14 20060101ALI20230228BHJP
H02G 1/06 20060101ALI20230228BHJP
H01R 4/20 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
H02G15/10
H02G15/08
H02G1/14
H02G1/06
H01R4/20
(21)【出願番号】P 2019045083
(22)【出願日】2019-03-12
【審査請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】石川 信治
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】望月 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】青木 和江
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-044432(JP,U)
【文献】特開2006-042475(JP,A)
【文献】特開2018-196207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 15/00-15/196
H02G 1/00- 1/10
H02G 1/14- 1/16
H01R 3/00- 4/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体、耐火層及び絶縁体層を有し、前記絶縁体層から前記導体が露出した状態で処理されるケーブルの接続構造であって、
複数の前記導体を接続する接続子と、
少なくとも、前記接続子、前記導体及び前記絶縁体層の間の隙間を埋める耐火部材と、
前記耐火部材を被覆する被覆部材と、
を備え、
前記耐火部材は、可塑性を有すると共に変形可能なパテ材であ
り、
前記耐火部材は、
前記接続子と前記導体との隙間、前記導体と前記耐火層との隙間、及び前記耐火層と前記絶縁体層との隙間を塞ぐ第1耐火部材と、
前記接続子、一対の前記第1耐火部材、及び一対の前記絶縁体層を被覆する第2耐火部材と、を含んでいる、
接続構造。
【請求項2】
前記耐火部材の室温における可塑度は100以上且つ700以下である、
請求項1に記載の接続構造。
【請求項3】
前記耐火部材は、加熱時に硬くなって焼結する焼結材料によって構成されている、
請求項1又は2に記載の接続構造。
【請求項4】
前記耐火部材は、外力が付与されない状態においてシート状とされている、
請求項1~3のいずれか一項に記載の接続構造。
【請求項5】
導体、耐火層及び絶縁体層を有するケーブルの接続方法であって、
前記導体、前記耐火層及び前記絶縁体層がこの順で露出するように前記絶縁体層及び前記耐火層を剥ぐ工程と、
露出した複数の前記導体を接続子を介して接続する工程と、
可塑性を有すると共に変形可能とされたパテ材である耐火部材によって、少なくとも前記接続子、前記導体及び前記絶縁体層の間の隙間を埋める工程と、
前記耐火部材を被覆部材で被覆すると共に前記被覆部材で前記耐火部材を締め付ける工程と、
を備え
、
前記耐火部材は、
前記接続子と前記導体との隙間、前記導体と前記耐火層との隙間、及び前記耐火層と前記絶縁体層との隙間を塞ぐ第1耐火部材と、
前記接続子、一対の前記第1耐火部材、及び一対の前記絶縁体層を被覆する第2耐火部材と、を含んでいる、
接続方法。
【請求項6】
導体、耐火層及び絶縁体層を有するケーブルを接続する接続部材であって、
複数の前記導体を接続する接続子と、
少なくとも、前記接続子、前記導体及び前記絶縁体層の間の隙間を埋める耐火部材と、
を備え、
前記耐火部材は、可塑性を有すると共に変形可能なパテ材であ
り、
前記耐火部材は、
前記接続子と前記導体との隙間、前記導体と前記耐火層との隙間、及び前記耐火層と前記絶縁体層との隙間を塞ぐ第1耐火部材と、
前記接続子、一対の前記第1耐火部材、及び一対の前記絶縁体層を被覆する第2耐火部材と、を含んでいる、
接続部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ケーブルの接続構造、接続方法及び接続部材に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のケーブルを互いに接続する接続構造については従来から種々のものが知られている。特許文献1には、幹線側耐火ケーブルと、複数の分岐側耐火ケーブルとを互いに接続する耐火ケーブルの分岐接続構造が記載されている。幹線側耐火ケーブル及び分岐側耐火ケーブルは、互いに同一の構成を備える。
【0003】
幹線側耐火ケーブル及び分岐側耐火ケーブルは、ケーブル導体、ケーブル耐火層、ケーブル絶縁体及びケーブルシースを備える。幹線側耐火ケーブル及び分岐側耐火ケーブルは、端末側からケーブル導体、ケーブル耐火層及びケーブル絶縁体のそれぞれが露出するように端末処理が施される。また、前述の分岐接続構造は、複数の耐火ケーブルのそれぞれから延びる複数のケーブル導体を接続するスリーブ及び無機材コンパウンドと、スリーブ及び無機材コンパウンドを覆う耐火層と、耐火層を覆う絶縁層と、絶縁層を覆う保護層とを備える。
【0004】
前述の分岐接続構造の耐火層は、複数のマイカテープ(マイカ複合テープ)の巻き付けによって形成されている。マイカテープは、軟質天然集成マイカ(金雲母)とフィルム(裏打材)とを備えたもの、又は軟質天然集成マイカとガラスクロス(裏打材)とを備えたもの、によって構成されている。マイカテープは、例えば、幹線側耐火ケーブルのケーブル耐火層から分岐側耐火ケーブルのケーブル耐火層に至るまで、4枚又は5枚巻き付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した分岐接続構造のように、耐火ケーブルの接続ではマイカテープが用いられることが多い。しかしながら、マイカテープは、粘着性が低いので巻きにくいことがある。また、マイカテープは、伸縮性が低いと共に使用時に欠けたり割れたりしやすいため、扱いにくいという問題がある。従って、前述した耐火ケーブルの接続作業では、マイカテープを所定範囲に亘って複数回巻き付けなければならないため、マイカテープが巻きづらく作業性が良くないという現状がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一形態に係る接続構造は、導体、耐火層及び絶縁体層を有し、絶縁体層から導体が露出した状態で処理されるケーブルの接続構造であって、複数の導体を接続する接続子と、少なくとも、接続子、導体及び絶縁体層の間の隙間を埋める耐火部材と、耐火部材を被覆する被覆部材と、を備え、耐火部材は、可塑性を有すると共に変形可能なパテ材である。
【0008】
この形態の接続構造では、複数の導体を接続する接続子、導体及び絶縁体層の間の隙間が耐火部材によって埋められており、更に耐火部材は被覆部材によって被覆されている。耐火部材は、可塑性を有すると共に変形可能なパテ材である。従って、可塑性を有するパテ状の耐火部材によって接続子、導体及び絶縁体層の隙間を埋めると共に被覆部材で耐火部材を被覆することにより、接続子を介して接続された複数の導体を被覆する施工を容易に行うことができる。耐火部材が変形可能なパテ材とされていることにより、接続子と導体との境目部分、及び導体と絶縁体層との境目部分に確実且つ容易に耐火部材を押し込むことができる。また、耐火部材が変形可能であることにより、必要な箇所に耐火部材を厚く充填させることができ、隙間を確実に埋めて空気放電を確実に回避することができる。従って、耐火性能を向上させることができる。更に、耐火部材が変形可能なパテ材であることにより、手で簡単に耐火部材を押し込むことができるので、耐火部材を充填して耐火性能を持たせるための施工を容易に行うことができる。従って、耐火ケーブルを接続する接続作業の作業性を向上させることができる。
【0009】
別の形態に係る接続構造において、耐火部材の室温における可塑度は100以上且つ700以下であってもよい。
【0010】
別の形態に係る接続構造において、耐火部材は、加熱時に硬くなって焼結する焼結材料によって構成されていてもよい。
【0011】
別の形態に係る接続構造では、耐火部材は、外力が付与されない状態においてシート状とされていてもよい。
【0012】
本開示の一形態に係る接続方法は、導体、耐火層及び絶縁体層を有するケーブルの接続方法であって、導体、耐火層及び絶縁体層がこの順で露出するように絶縁体層及び耐火層を剥ぐ工程と、露出した複数の導体を接続子を介して接続する工程と、可塑性を有すると共に変形可能とされたパテ材である耐火部材によって、少なくとも接続子、導体及び絶縁体層の間の隙間を埋める工程と、耐火部材を被覆部材で被覆すると共に被覆部材で耐火部材を締め付ける工程と、を備える。
【0013】
この形態の接続方法では、複数のケーブルのそれぞれから導体を露出し、露出した複数の導体を接続子によって接続する。そして、接続子、導体及び絶縁体層の間の隙間を変形可能なパテ材である耐火部材によって埋めた後に、耐火部材を被覆部材によって締め付ける。従って、可塑性を有すると共に変形可能とされたパテ材である耐火部材で接続子、導体及び絶縁体層の間の隙間を埋めると共に被覆部材で耐火部材を締め付けることによって、耐火性能を向上させることができる。すなわち、隙間を埋めることによって空気放電が生じる事態を回避することができるので、耐火性能を向上させることができる。また、接続子、導体及び絶縁体層への耐火部材の充填、並びに耐火部材の被覆部材による被覆を行うことによって、耐火性能を持たせるための施工を容易に行うことができる。従って、耐火ケーブルを接続する接続作業の作業性を向上させることができる。
【0014】
本開示の一形態に係る接続部材は、導体、耐火層及び絶縁体層を有するケーブルを接続する接続部材であって、複数の導体を接続する接続子と、少なくとも、接続子、導体及び絶縁体層の間の隙間を埋める耐火部材と、を備え、耐火部材は、可塑性を有すると共に変形可能なパテ材である。
【0015】
この形態に係る接続部材では、複数の導体を接続する接続子と、接続子、導体及び絶縁体層の間の隙間を埋める耐火部材とを備え、耐火部材は可塑性を有すると共に変形可能なパテ材である。よって、可塑性を有すると共に変形可能なパテ材である耐火部材によって接続子、導体及び絶縁体層の間の隙間を埋めることができるので、接続子によって接続された複数の導体を被覆する施工を容易に行うことができる。また、耐火部材が変形可能なパテ材であることによって、接続子と導体との境目部分、及び導体と絶縁体層との境目部分に確実且つ容易に耐火部材を押し込むことができる。更に、耐火部材が変形可能であることにより、必要な箇所に耐火部材を厚く充填して空気放電を確実に回避することができるので、耐火性能を向上させることができる。その結果、耐火性能を確実に高めることができると共に耐火性能を持たせるための施工を容易に行うことができる。従って、耐火ケーブルを接続する接続作業の作業性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、耐火ケーブルを接続する接続作業の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係る耐火ケーブルの接続構造の例を示す断面図である。
【
図2】(a)及び(b)のそれぞれは、
図1の接続構造の例示的な耐火部材を示す図である。
【
図3】実施形態に係る接続方法の手順を示す図である。
【
図10】耐火ケーブルの実験装置の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、図面を参照しながら本開示に係るケーブルの接続構造、接続方法及び接続部材の実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示され、特許請求の範囲と均等の範囲における全ての変更が含まれることが意図される。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易のため、簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法等は図面に記載のものに限定されない。
【0019】
接続構造、接続方法及び接続部材は、複数の耐火ケーブルを互いに接続するためのものである。本開示において、「絶縁体層から導体が露出された状態で処理される」とは、少なくともケーブルの導体及び絶縁体層が、この順でケーブルの長手方向に並ぶように絶縁体層の剥ぎ取りが行われることを含む。「耐火」及び「耐火性能」とは、「高圧耐火ケーブル」(JCS4507:2017)に規定する耐火試験を経ても絶縁性能を発揮可能な性状を示している。「耐火」は、燃えないように耐火性能を持たせること、及び防火性能を有することを含んでいる。「耐火部材」とは、耐火性能を有する部材を示しており、例えば、他の部材に押し付けられることにより当該他の部材の燃焼を抑制する部材、を含んでいる。「被覆部材」は、他の部材を覆う部材を含んでおり、他の部材の全体を覆う部材、及び他の部材の一部を覆う部材の両方を含む。
【0020】
「可塑性」は、変形が戻らない性質を示しており、例えば、外力が付与されたときに変形すると共に外力が無くなった後に当該変形が残存することを含んでいる。「可塑性を有する」とは、材料の使用温度(一例として-20℃以上且つ45℃以下)において可塑性を有することを示しており、「可塑性を有する材料」の例としては、例えば、粘土状材料が挙げられる。「可塑性を有する材料」は、例えば、-20℃以上且つ45℃以下の範囲内の少なくともいずれかの条件下で可塑性を有する材料を示している。すなわち、「可塑性を有する材料」は、一例として、-20℃で使用されるのに適した樹脂、及び45℃で使用されるのに適した樹脂、の双方を含む。「パテ材」は、可塑性を有する材料を示しており、手等で変形可能な材料を含んでいる。「パテ状」は、可塑性を有する性状を示している。
【0021】
「可塑度」は、所定温度(例えば、室温(25℃))における可塑度、すなわち、所定温度における材料の圧縮性の指数を示しており、材料を一定荷重で所定時間圧縮した後の高さの測定値を100倍したウイリアムス可塑度を示している。具体的には、「可塑度」は、所定温度におけるゴムの圧縮性の指数を示しており、直径16mm厚さ10mmの試料を49Nの荷重で3~10分間圧縮した後に試料の厚さを測定し、その測定値を100倍した値が可塑度となる(JIS K 6249 未硬化および硬化シリコーンゴムの試験方法)。
【0022】
「変形可能」とは、手で形を変えることが可能であることを含んでおり、外力が加えられたときに自在に形が変わる性質を更に含む。「焼結材料」は、加熱されると硬くなって固まる材料を示しており、具体例として、材料が当該材料の融点よりも低い温度で加熱されたときに当該材料の粒子間の接触面積が増大して固まる現象を含む。「シート状」とは、二次元的に広がっている状態を示しており、薄くて他の部材に被せたり巻き付けたりすることが可能な状態を示している。
【0023】
図1に示されるように、本実施形態に係る接続構造1は、複数のケーブル2の間に位置するケーブル接続部Cにおいて、互いに対向する一対のケーブル2間を接続する。ケーブル2は、耐火性能を有する耐火ケーブルである。例えば、本実施形態に係るケーブル2は、6600Vの高圧耐火ケーブルである。接続構造1は、一例として、スプリンクラー又は非常灯等、非常時においても電力供給が可能な構造であってもよい。ケーブル2は、例えば、金属材料から成る導体11と、導体11を被覆する耐火層12と、耐火層12を被覆する絶縁体層13とを備える。ケーブル接続部Cにおいて、互いに対向する一対のケーブル2の端部では導体11が剥き出しにされる。ケーブル接続部Cでは、例えば、ケーブル2の端部側から、導体11、耐火層12及び絶縁体層13がこの順で並ぶように剥ぎ取られている。
【0024】
耐火層12は、例えば、マイカによって構成された防火層であってもよい。この場合、耐火層12は、雲母を含んでおり、電気絶縁性及び耐熱性に優れた層となっている。また、絶縁体層13は、例えば、シリコーンゴム又はEPDMゴムによって構成されている。複数のケーブル2において、絶縁体層13及び耐火層12が剥ぎ取られる箇所は、ケーブル2の長手方向Dに互いにずれている。但し、絶縁体層13及び耐火層12が剥ぎ取られる箇所は、長手方向Dに互いにずれていなくてもよく、絶縁体層13の端部の位置と耐火層12の端部の位置とが互いに一致していてもよい。
【0025】
本実施形態に係る接続構造1は、長手方向Dに沿って互いに対向する一対のケーブル2のそれぞれから延び出す導体11を互いに接続する接続子3と、少なくとも接続子3、導体11及び絶縁体層13の間の隙間を埋めると共に接続子3、導体11及び絶縁体層13の少なくとも一部を被覆する耐火部材4と備える。更に、接続構造1は、耐火部材4を被覆するテープ部材5と、一対のケーブル2及びテープ部材5を被覆する収縮部材6とを備える。本実施形態に係る接続部材21は、例えば、接続子3、耐火部材4、テープ部材5及び収縮部材6を備える。
【0026】
接続子3は、複数の導体11をかしめて接続するスリーブである。接続子3は、例えば、銅によって構成されている。接続子3は、筒状とされており、接続子3の内部に一対の導体11が通されてかしめられることによって一対の導体11が互いに導通する。接続子3は、例えば、2本の導体11を突き合わせた状態でかしめて接続する。接続子3の軸線方向(長手方向D)に直交する断面で接続子3を切断したときの断面形状は、例えば、多角形状(一例として六角形状)とされている。また、接続子3は、接続子3を含むケーブル導体同士の接続部が日本電力ケーブル接続技術協会規格JCAA K 1001-2010「導体接続部性能基準」を満足するものであってもよい。
【0027】
テープ部材5及び収縮部材6は、耐火部材4を被覆する被覆部材である。テープ部材5は、例えば、ガラスクロステープである。この場合、テープ部材5は、一例として、ガラス繊維とシリコーン製の接着剤とを含んでいる。テープ部材5は耐火部材4を外側から保護するために設けられる。収縮部材6は、一対のケーブル2及びテープ部材5を外側から締め付けるために設けられる。一例として、収縮部材6は、常温収縮チューブである。また、テープ部材5は、パテ材である耐火部材4によって空隙を埋めるために耐火部材4を外側から締め付けてもよい。
【0028】
収縮部材6は、ケーブル2及びテープ部材5に取り付けられる前には、引き抜き可能であって且つ管状に形成された拡径保持部材の外周面に拡径された状態で保持されていてもよい。拡径保持部材は、例えば、螺旋状に形成された解体線と、引き抜き可能な紐状体であるコアリボンとを備え、コアリボンを引き抜くことによって解体線から順次解体可能とされている。
【0029】
筒状の拡径保持部材によって拡径された収縮部材6は、内部に一対のケーブル2が通された状態でコアリボンが引き抜かれることにより、順次縮径して一対のケーブル2及びテープ部材5を締め付ける。以上のように、引き抜き可能な管状中空の拡径保持部材としては、上記のようにコアリボンを引っ張ることによって収縮部材6を順次縮径させる態様もあれば、拡径保持部材が収縮部材6に対して摺動し収縮部材6から引き抜かれることによって離脱する態様もあり、収縮部材6の態様は適宜変更可能である。
【0030】
耐火部材4は、可塑性を有すると共に変形可能なパテ材であり、例えば、手で押し付けて変形可能な粘土状の耐火部材である。耐火部材4は、少なくとも、接続子3、導体11及び絶縁体層13を隙間無く被覆して耐火性能を発揮する。耐火部材4は、接続子3、導体11、耐火層12及び絶縁体層13の一部を被覆してもよい。本実施形態において、耐火部材4は、接続子3と導体11との隙間、導体11と耐火層12との隙間、及び耐火層12と絶縁体層13との隙間を塞ぐ第1耐火部材4bと、接続子3、一対の第1耐火部材4b、及び一対の絶縁体層13を被覆する第2耐火部材4cとを含んでいる。
【0031】
耐火部材4は、着火すると絶縁性を有すると共に硬くなって焼結し火を通さなくする材料によって構成されていてもよい。耐火部材4は、着火してもカーボン等の導電性材料を生じない材料によって構成されていてもよい。耐火部材4は、例えば、シリコーンゴムによって構成されている。なお、シリコーンゴムは、燃焼前及び燃焼後のいずれにおいても電気伝導性が高い物質の発生が少ない材料である。よって、耐火部材4がシリコーンゴムによって構成されている場合、耐火性がより高い部材とすることができるので、耐火性能及び絶縁性能がより高い耐火部材4とすることができる。
【0032】
一例として、耐火部材4のアスカーC硬度、すなわちスポンジ硬度は50以上且つ60以下である。また、耐火部材4の室温(一例として25℃)における可塑度の値は100以上且つ700以下である。耐火部材4の室温における可塑度の下限は、例えば、100、200、300又は350であり、耐火部材4の室温における可塑度の上限は、700、600、500又は470である。一例として、耐火部材4の発煙性(Ds値)は30未満であり、耐火部材4の酸素指数は40以上且つ60以下である。
【0033】
図2(a)及び
図2(b)に示されるように、耐火部材4は、接続子3、導体11、耐火層12及び絶縁体層13を被覆する前、すなわち、外力が付与されてない状態においてシート状とされている。また、耐火部材4(第1耐火部材4b及び第2耐火部材4cの少なくともいずれか)は、ロール状に巻かれていてもよい。一例として、第1耐火部材4b及び第2耐火部材4cは共にシート状とされており、第1耐火部材4bの幅は第2耐火部材4cの幅よりも狭い。なお、第1耐火部材4bの大きさ、及び第2耐火部材4cの大きさは導電部分を覆うことが可能な大きさであればよく、第1耐火部材4b及び第2耐火部材4cは所要の絶縁厚を有していてもよい。
【0034】
第1耐火部材4bは、例えば、接続子3と導体11と絶縁体層13との間の隙間を塞ぐパテ材である。第2耐火部材4cは、一対の絶縁体層13、一対の第1耐火部材4b及び接続子3の間の隙間を塞ぐパテ材である。すなわち、本実施形態では、耐火部材4が第1耐火部材4b及び第2耐火部材4cを含む二重構造となっている。このため、第1耐火部材4bでケーブル接続部Cの細部の隙間を塞ぎ、第2耐火部材4cで更に第1耐火部材4b、接続子3及び絶縁体層13の間の隙間を塞ぐことにより、ケーブル接続部Cの耐火性能を更に高めることが可能である。
【0035】
一例として、耐火部材4は芯Sに巻き付けられていてもよく、芯Sは中空とされていてもよいし中実とされていてもよい。耐火部材4は、例えば、ケーブル接続部Cの大きさに応じて切断されて用いられてもよい。前述したように、耐火部材4は、押圧されることによって変形する材料であるため、切断されて接続子3、導体11、耐火層12及び絶縁体層13の間に押し付けられることにより、接続子3、導体11、耐火層12及び絶縁体層13の間に生じうる隙間を耐火部材4によって確実に塞ぐことが可能である。
【0036】
次に、接続部材21を用いてケーブル2を接続する接続方法について説明する。以下では、互いに対向する2本のケーブル2を接続する例について説明する。しかしながら、本実施形態に係る接続方法は、ケーブル2以外のケーブルを接続する場合、3本以上のケーブルを接続する場合、又はケーブルと他の機器とを接続する場合にも適用可能である。
【0037】
まず、
図3に示されるように、一方のケーブル2の端面と他方のケーブル2の端面とを各ケーブル2の長手方向Dに沿って対向させる。このとき、2本のケーブル2のうちのいずれか一方を収縮部材6に通しておく。この状態で2本のケーブル2のそれぞれからケーブル2の外被を成すケーブルシース2cを剥いで絶縁体層13を露出させる。続いて、各ケーブル2に対し、導体11が露出するように、絶縁体層13及び耐火層12を剥ぐ端末処理を行う(絶縁体層及び耐火層を剥ぐ工程)。
【0038】
このとき、導体11、耐火層12及び絶縁体層13が長手方向D1に沿って露出するように端末処理(段むき)を行ってもよい。しかしながら、本実施形態では、導体11同士を接続すればよいため、絶縁体層13の長手方向Dの端部と、耐火層12の長手方向Dの端部とを揃えてもよい。そして、複数の導体11を突き合わせた後に、互いに対向する複数の導体11を接続子3でかしめて当該複数の導体11を互いに接続する(接続する工程)。このとき、複数の導体11を突き合わせる代わりに、複数の導体11を並列させ重ね合わせた状態として接続子3で接続(分岐接続)してもよい。
【0039】
次に、
図3及び
図4に示されるように、例えば、接続子3、導体11及び絶縁体層13の大きさに応じて第1耐火部材4bを切断し、接続子3、導体11及び絶縁体層13に第1耐火部材4bを巻き付ける。一例として、ロール状に巻かれた第1耐火部材4bを所定の長さに切断し、シート状に延びる第1耐火部材4bを接続子3、導体11及び絶縁体層13に複数回巻き付ける。
【0040】
そして、外側から第1耐火部材4bを接続子3、導体11及び絶縁体層13に押し付けて、接続子3、導体11及び絶縁体層13の間に生じうる隙間を塞ぐ(隙間を埋める工程)。例えば、接続子3、導体11及び絶縁体層13に対する第1耐火部材4bの巻き付け回数は複数回であり、粘土状とされた第1耐火部材4bを手で接続子3、導体11及び絶縁体層13に押し込むことによって確実に隙間を塞ぐことが可能となる。
【0041】
以上のように、接続子3、導体11及び絶縁体層13の間のそれぞれに第1耐火部材4bを巻き付けた後には、
図5に示されるように、第2耐火部材4cを接続子3、一対の第1耐火部材4b、及び一対の絶縁体層13に巻き付ける。具体的には、接続子3及び一対の第1耐火部材4bの長手方向Dの長さ以上(接続子3及び一対の第1耐火部材4bを確実に覆うことが可能な長さ)となるように第2耐火部材4cを切断し、一対の絶縁体層13、一対の第1耐火部材4b及び接続子3に第2耐火部材4cを巻き付ける。
【0042】
このとき、一例としてロール状に巻かれた第2耐火部材4cを所定の長さに切断し、シート状に延びる第2耐火部材4cを接続子3、一対の第1耐火部材4b、及び一対の絶縁体層13に複数回巻き付けてもよい。そして、外側から第2耐火部材4cを接続子3、一対の第1耐火部材4b、及び一対の絶縁体層13に押し付けて、接続子3、一対の第1耐火部材4b、及び一対の絶縁体層13の間に生じうる隙間を塞ぐ(隙間を埋める工程)。すなわち、第1耐火部材4bを巻き付けたときと同様、粘土状とされた第2耐火部材4cを手で接続子3、一対の第1耐火部材4b、及び一対の絶縁体層13に押し込むことによって更に確実に隙間を塞ぐことが可能となる。
【0043】
図6は、第2耐火部材4cを巻き付けた後の状態の例を示している。
図6及び
図7に示されるように、第2耐火部材4cを巻き付けた後には、第2耐火部材4c及び一対の絶縁体層13にテープ部材5を巻き付ける。このように、第2耐火部材4c及び一対の絶縁体層13にテープ部材5を巻き付けることにより、耐火部材4及び絶縁体層13をテープ部材5によって被覆する。このとき、耐火部材4及び絶縁体層13をテープ部材5によって締め付けながらテープ部材5を巻き付ける(耐火部材を締め付ける工程)。
【0044】
その後、
図8及び
図9に示されるように、テープ部材5の長手方向Dの一端及び他端のそれぞれに絶縁テープ7を巻き付けた後、予めケーブル2に通しておいた収縮部材6でテープ部材5及び一対の絶縁テープ7を覆い、例えば収縮部材6の拡径保持部材のコアリボンを引き抜くことによって収縮部材6を順次縮径させる。このように縮径させた収縮部材6によって、一対の絶縁テープ7及びテープ部材5を強く締め付ける。その後、収縮部材6に遮蔽メッシュを取り付けて防水外装処理を行うことにより、一連の工程を経て接続構造1の施工が完了する。
【0045】
次に、本実施形態に係る接続構造1、接続部材21及び接続方法の作用効果について説明する。
【0046】
接続構造1及び接続部材21では、
図1に例示されるように、複数の導体11を接続する接続子3、導体11及び絶縁体層13の隙間が耐火部材4によって埋められており、更に耐火部材4は被覆部材によって被覆されている。耐火部材4は、可塑性を有すると共に変形可能なパテ材である。従って、可塑性を有するパテ状の耐火部材4によって接続子3、導体11及び絶縁体層13の間の隙間を埋めると共に被覆部材で耐火部材4を被覆することによって、接続子3によって接続された複数の導体11を被覆する施工を容易に行うことができる。
【0047】
耐火部材4が変形可能なパテ状とされていることにより、接続子3と導体11との境目部分、及び導体11から絶縁体層13までの境目部分に確実且つ容易に耐火部材4を押し込むことができる。また、耐火部材4が変形可能であることにより、必要な箇所に耐火部材4を厚く充填することができるので、耐火性能を向上させることができる。すなわち、隙間を埋めることによって空気放電が生じる事態を回避することができるので、耐火性能を向上させることができる。更に、耐火部材4が変形可能なパテ材であることにより、手で簡単に耐火部材4を押し込むことができるので、耐火部材4を充填して耐火性能を持たせるための施工を容易に行うことができる。従って、耐火ケーブルを接続する接続作業の作業性を向上させることができる。
【0048】
本実施形態において、耐火部材4の室温における可塑度は100以上且つ700以下であってもよい。この場合、耐火部材4の室温における可塑度が100以上であることによって適度な硬さの耐火部材4とすることができるので、押し込んだ後に耐火部材4が外れる事態を確実に回避することができる。また、耐火部材4の可塑度が700以下であることにより、耐火部材4を手で容易に変形させることができるので、耐火性能を持たせるための施工をより容易に行うことができる。
【0049】
本実施形態において、耐火部材4は、加熱時に硬くなって焼結する焼結材料によって構成されていてもよい。この場合、耐火部材4が加熱されたときに耐火部材4が硬化するので、加熱されても耐火部材4の形状を維持することができる。従って、加熱時に耐火部材4の内側にある導体11及び接続子3を、硬化する耐火部材4によってより確実に保護することができる。
【0050】
本実施形態において、耐火部材4は、外力が付与されない状態においてシート状とされていてもよい。この場合、外力が付与されない状態において耐火部材4がシート状とされていることにより、シート状の耐火部材4で接続子3、導体11及び絶縁体層13を巻き付けた後に耐火部材4を押し込んで隙間を埋めることが可能となる。このように耐火部材4を巻き付けて押し込む作用で耐火性能を持たせるための施工を行うことができるので、耐火部材4の取り扱い性を良好にすることができると共に施工を更に容易に行うことができる。
【0051】
本実施形態において、耐火部材4は、第1耐火部材4b及び第2耐火部材4cを含んでいてもよく、第1耐火部材4bの外側に第2耐火部材4cが巻き付けられて押し付けられてもよい。すなわち、隙間を埋める工程を複数回行ってもよい。この場合、第1耐火部材4bで接続子3、導体11及び絶縁体層13の間の隙間を塞いだ後に更に第2耐火部材4cで隙間を塞ぐことが可能となるので、耐火性能を一層向上させることができる。更に、本実施形態において、テープ部材5は、ガラスクロステープであってもよい。この場合、テープ部材として他のテープを用いた場合と比較して、耐火性能を更に向上させることができる。
【0052】
また、本実施形態に係る接続方法では、複数のケーブル2のそれぞれから導体11を露出し、露出した複数の導体11を接続子3によって接続する。そして、接続子3、導体11及び絶縁体層13の間の隙間を変形可能なパテ材である耐火部材4によって埋めた後に、耐火部材4を被覆部材によって締め付ける。従って、可塑性を有すると共に変形可能なパテ材である耐火部材4で接続子3、導体11及び絶縁体層13の間の隙間を埋めると共に被覆部材で耐火部材4を締め付けることによって、空気放電を回避して耐火性能を向上させることができる。また、接続子3、導体11及び絶縁体層13への耐火部材4の充填、並びに耐火部材4の被覆部材による被覆を行うことによって、耐火性能を持たせるための施工を容易に行うことができる。従って、耐火ケーブルを接続する接続作業の作業性を向上点せることができる。
【0053】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本発明は前述の実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。例えば、接続構造1を構成する各部品、及び接続部材21を構成する各部品の形状、大きさ、数、材料及び配置態様は適宜変更可能である。また、接続方法を構成する各工程の内容及び順序についても適宜変更可能である。
【0054】
例えば、前述の実施形態では、6600Vの高圧耐火ケーブルであるケーブル2について説明した。しかしながら、ケーブルは、高圧耐火ケーブルでないケーブルであってもよく、例えば、600V以下の低圧耐火ケーブルであってもよい。このように、ケーブルの種類は適宜変更可能である。また、前述の実施形態では、一対のケーブル2を互いに接続する例について説明した。しかしながら、接続するケーブルの本数は、上記の例に限定されない。例えば、1本のケーブルと、2本のケーブルとを互いに接続する分岐型の接続構造であってもよい。この場合も前述した実施形態と同様の効果が得られる。更に、前述の実施形態では、非常時においても電力供給が可能な接続構造1について説明した。しかしながら、接続構造は非常時に用いられるものでなくてもよく、接続構造の用途は適宜変更可能である。
【0055】
また、前述の実施形態では、耐火部材4が第1耐火部材4b及び第2耐火部材4cを含む例について説明した。しかしながら、接続子3、導体11及び絶縁体層13の隙間を埋める耐火部材の数は、1個又は3個以上であってもよく、特に限定されない。更に、前述の実施形態では、耐火部材4を被覆する被覆部材がテープ部材5及び収縮部材6である例について説明した。しかしながら、被覆部材の構成は、テープ部材5及び収縮部材6に限られず適宜変更可能である。すなわち、テープ部材5及び収縮部材6の少なくともいずれかを別の部材に代えてもよい。具体例として、被覆部材は、複数のケーブルを囲むように配置されたモールドに流し込まれる樹脂が硬化して形成された樹脂部材であってもよい。
【0056】
(実施例)
続いて、本開示の実施例について説明する。なお、本発明は、後述の実施例に限定されない。この実施例では、電気試験、耐火試験及び可塑度測定試験を行った。
【0057】
(電気試験)
電気試験で用いたケーブルの接続構造は、導体11、耐火層12及び絶縁体層13を備えるケーブルであって、一対の導体11が接続子3によって接続されると共に、接続子3、導体11及び絶縁体層13の間にパテ材である耐火部材4が充填されているものを実施例1の接続構造として用いた。ケーブルとしては、導体断面積が38mm2の株式会社フジクラダイヤケーブル(FDC)製 NH-FPTケーブルを用い、このケーブルに対し、商用周波部分放電、商用周波長時間耐電圧、及び雷インパルス耐電圧のそれぞれを測定した。その結果を以下の表1に示す。なお、以下の規格値はJCAA A 305「6600V 架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブル用直線接続部性能」によって定められたものである。
【0058】
【表1】
以上の表1より、パテ材である耐火部材4が充填されている実施例1のケーブルの接続構造では、商用周波部分放電試験、商用周波長時間耐電圧試験、及び雷インパルス耐電圧試験を合格できることが分かった。
【0059】
また、導体11、耐火層12及び絶縁体層13を備えるケーブルであって、一対の導体11が接続子3によって接続されると共に、接続子3、導体11及び絶縁体層13の間に耐火部材4が充填されており,導体断面積が150mm2である実施例2の接続構造に対して追加的に電気試験を行った。その結果を以下の表2に示す。
【0060】
【表2】
以上の表2より、パテ材である耐火部材4が充填されている実施例2のケーブルの接続構造では、商用周波部分放電試験、商用周波長時間耐電圧試験、及び雷インパルス耐電圧試験を合格できると共に、商用周波長時間耐電圧の限界が50kV(30分)、雷インパルス耐電圧の限界が-110kVまで耐えられることが分かり、高い耐電圧性能を有することが分かった。
【0061】
(耐火試験)
耐火試験では、
図10に示される実験装置Eを用いて実験を行った。実験装置Eは、ケーブルを保持するケーブル保持部E1を備えており、ケーブル保持部E1にケーブルを保持した状態でケーブルを加熱することが可能である。実験では、実験装置Eを用いてケーブルの耐火特性について確認した。
【0062】
耐火試験は、接続部耐火試験方法が定められているJCS4507規格に基づいて行った。耐火試験では、導体11、耐火層12及び絶縁体層13を備えるケーブルであって、一対の導体11が接続子3によって接続されると共に、接続子3、導体11及び絶縁体層13の間にパテ材である耐火部材4が充填されている実施例3の接続構造を用いた。なお、実施例3の接続構造では、耐火部材4の外側にガラスクロステープを巻き付けたものを使用した。この耐火試験では、実施例3の接続構造に対して6600Vの電圧を印加し、JIS A 1304:2017(建築構造部分の耐火試験方法)において定められた温度曲線に準ずる燃焼試験を行った。具体的には、6600Vの電圧を印加した状態でケーブルを850℃で30分間加熱した。この耐火試験の結果を以下の表3に示す。
【0063】
【0064】
表3は、燃焼前後における絶縁抵抗及び絶縁耐力を測定した結果を示す。その結果、実施例3に係る接続構造では、燃焼前後において高い絶縁抵抗及び絶縁耐力が得られることを確認できた。
【0065】
(可塑度測定試験)
耐火部材4として用いることが可能な材料の可塑度の一例について以下で説明する。以下では、当該材料のウイリアムス可塑度を前述したJIS K 6249(未硬化および硬化シリコーンゴムの試験方法)によって測定した結果を示している。具体的には、当該材料を室温(23℃)においてロールにより再練りし、当該材料の厚さが10.40mm程度となるように分出しし、更に、直径16mmの打ち抜き器によって打ち抜いて当該材料をペレット片としてウイリアムス可塑度を測定した。測定時間を、それぞれ、30秒、60秒、120秒及び180秒とした。ウイリアムス可塑度の測定結果を以下の表4に示す。
【0066】
【表4】
以上の表4より、耐火部材4として用いることが可能なパテ材の室温におけるウイリアムス可塑度の値は356以上且つ423以下であることが分かった。
【符号の説明】
【0067】
1…接続構造、2…ケーブル、2c…ケーブルシース、3…接続子、4…耐火部材、4b…第1耐火部材、4c…第2耐火部材、5…テープ部材、6…収縮部材、7…絶縁テープ、11…導体、12…耐火層、13…絶縁体層、21…接続部材、C…ケーブル接続部、D…長手方向、E…実験装置、E1…ケーブル保持部、S…芯。