(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】地下埋設型タンク上部ボックスシステム、及びタンク上部ボックスの埋設方法
(51)【国際特許分類】
B65D 90/02 20190101AFI20230228BHJP
B65D 88/76 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
B65D90/02 R
B65D88/76
B65D90/02 L
(21)【出願番号】P 2019048044
(22)【出願日】2019-03-15
【審査請求日】2021-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593140956
【氏名又は名称】タマダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【氏名又は名称】須藤 章
(72)【発明者】
【氏名】西野 圭太
(72)【発明者】
【氏名】大友 忠春
(72)【発明者】
【氏名】東崎 英樹
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-048293(JP,A)
【文献】特開2003-231584(JP,A)
【文献】特開2010-019025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 90/02
B65D 88/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円弧状の上面部分に接するバンドで地中に埋設される基礎に締結された地下タンク上であって、前記バンドと重なる位置に配置され、前記バンドと重なる各個所にバンドと干渉しないように切り欠き部が形成された、FRP(Fiber-Reinforced Plastics)製のボックスピット本体枠と、
前記ボックスピット本体枠の内側に位置するバンドのうち、少なくとも前記切り欠き部から前記ボックスピット本体枠の内側に向かう部分を前記地下タンクに対して覆うカバーと、
を備え、
前記カバーは、前記切り欠き部から前記ボックスピット本体枠の内側に向かって延びるバンドを前記地下タンク上に位置する前記バンドの端部を残して前記地下タンクに対して覆うことを特徴とする地下埋設型タンク上部ボックスシステム。
【請求項2】
前記タンク上部ボックス内側において、前記バンドのうち前記カバーにより覆われずに残った部分が樹脂材で埋め込まれることを特徴とする請求項1記載の地下埋設型タンク上部ボックスシステム。
【請求項3】
前記カバーは、FRP材を用いて形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の地下埋設型タンク上部ボックスシステム。
【請求項4】
地下タンクの円弧状の上面部分に接するバンドで地中に埋設される基礎に締結された前記地下タンク上にタンク上部ボックスを埋設するタンク上部ボックスの埋設方法であって、
前記地下タンクと接する前記バンドのうち、前記タンク上部ボックスと重なるバンド部分であって少なくとも前記タンク上部ボックス壁面から内側に向かう部分をカバーで前記地下タンクに対して覆う工程と、
前記バンドと重なる個所に前記バンドと干渉しないように切り欠き部が形成された、FRP(Fiber-Reinforced Plastics)製の前記タンク上部ボックスを、前記切り欠き部が前記カバーを介して前記バンドを前記地下タンクとの間に挟むように配置する工程と、
を備えたことを特徴とするタンク上部ボックスの埋設方法。
【請求項5】
前記タンク上部ボックス内側において、前記バンドのうち前記カバーにより覆われずに残った部分を樹脂材で埋め込む工程をさらに備えたことを特徴とする請求項4記載のタンク上部ボックスの埋設方法。
【請求項6】
前記カバーと前記切り欠き部との隙間を接着剤で塞ぐ工程をさらに備えたことを特徴とする請求項4又は5記載のタンク上部ボックスの埋設方法。
【請求項7】
前記バンド
の前記地下タンクの上面部分に接する部分の端部を前記カバーと複数の壁とで囲み、囲まれた空間を前記樹脂材で埋め込むことで、前記バンド
の前記地下タンクの上面部分に接する部分の端部が樹脂材で埋め込まれることを特徴とする請求項4~6いずれか記載のタンク上部ボックスの埋設方法。
【請求項8】
前記地下タンクとして、外殻にFRP材を用いた2重殻タンクが用いられることを特徴とする請求項4~7いずれか記載のタンク上部ボックスの埋設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、地下埋設型タンク上部ボックスシステム、及びタンク上部ボックスの埋設方法に関し、例えば、地下に埋設された配管と地下に埋設された石油燃料タンクに接続された配管とを繋ぐ継手が格納された地下に埋設された地下埋設型タンク上部ボックス、タンク上部ボックスを配置した地下タンクシステム、及びタンク上部ボックスの埋設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンスタンドに代表される給油所には、地下タンクが埋設されている。タンクローリー車からガソリン、軽油、灯油等の燃料油の荷卸(注入)を受けて、かかる地下タンクに燃料油が貯蔵されている。そして、地下タンクに接続された各計量機が地下タンク内に貯蔵された燃料油を車両に給油(注出)している。
【0003】
かかる設備について、タンクローリー車から燃料油の荷卸(注入)を受ける注入口から地下タンクまでの間の配管は地中に埋設されている。同様に、地下タンクと各計量機との間の配管も地中に埋設されている。これらの配管は、地下タンクを点検するためのマンホール蓋下の地下に埋設されたタンク上部ボックス(ピット)内において、地下タンクから延びる配管と配管継手により接続されている。従来、埋設された地下タンク上には、打ちっぱなしのコンクリート(いわゆる捨てコン)、砕石、或いは砂等を堆積させて、堆積した堆積物の上にスチール(鉄)製の上部ボックスを配置して、地下タンクと各計量機との間の配管を接続していた。そのため、地下タンクと上部ボックスとの間の堆積物中を通って地下水が上部ボックス内に侵入してしまうといった問題があった。また、逆に上部ボックス内に漏れ出た油液が地中に漏れ出してしまう可能性があるといった問題があった。これらの問題を解決すべく、堆積物を取り除いて上部ボックスを地下タンク上に直接配置することも検討される。しかし、かかる場合でも、上部ボックスが載せられる地下タンクに傷が付くといった問題や、地下水等による上部ボックス自体の腐食の問題があった。そのため、新規に地下タンクを設置する場合には、スチール製の上部ボックスに代えて耐食性のあるFRP(繊維強化プラスチック)製の上部ボックスを設置している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ここで、かかる地下タンクは、基礎上に配置されるが、その際、スチール製のバンドが地下タンクの上面を押さえ付けながら基礎に締結されることで固定される。そのため、バンドが地下タンクの上面の一部を覆っている部分が存在する。新規に地下タンクを設置する場合には、FRP製の上部ボックスの配置位置から外れた位置に合わせて、地下タンクを固定するバンドの配置位置を設計できるので、バンドに干渉することなく、地下タンク上にFRP製の上部ボックスを配置できる。そのため、地下タンクとFRP製の上部ボックスとの間の密閉性をある程度高めることができ、上部ボックス内への地下水の侵入をある程度抑えることができる。しかしながら、既に埋設されている既存の地下タンク上にFRP製の上部ボックスを設置しようとする場合、既にバンドの設置位置は決まっているので、FRP製の上部ボックスが、バンドに干渉してしまい配置することが困難になるといった問題があった。既に埋設されている既存の地下タンクは多数存在する。これらの既存の地下タンクへの対策は今後の重要な問題である。
【0005】
また、地下タンクとして、スチール製の1重殻タンクの他、外殻が樹脂製で内殻がスチール製の2重殻タンクが用いられる。例えば、2重殻タンクが用いられる場合、上部ボックスを設置する場合、樹脂製の外殻に亀裂等の損傷が入らないようにすることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の一態様は、既に埋設されている既存の地下タンクに対しても設置可能な地下埋設型タンク上部ボックス、およびその方法、及び地下タンクシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の地下埋設型タンク上部ボックスシステムは、
円弧状の上面部分に接するバンドで地中に埋設される基礎に締結された地下タンク上であって、前記バンドと重なる位置に配置され、前記バンドと重なる各個所にバンドと干渉しないように切り欠き部が形成された、FRP(Fiber-Reinforced Plastics)製のボックスピット本体枠と、
ボックスピット本体枠の内側に位置するバンドのうち、少なくとも切り欠き部からボックスピット本体枠の内側に向かう部分を地下タンクに対して覆うカバーと、
を備え、
カバーは、切り欠き部からボックスピット本体枠の内側に向かって延びるバンドを地下タンク上に位置するバンドの端部を残して地下タンクに対して覆うことを特徴とする。
【0009】
また、タンク上部ボックス内側において、バンドのうちカバーにより覆われずに残った部分が樹脂材で埋め込まれると好適である。
【0010】
また、カバーは、FRP材を用いて形成されると好適である。
【0011】
本発明の一態様のタンク上部ボックスの埋設方法は、
地下タンクの円弧状の上面部分に接するバンドで地中に埋設される基礎に締結された地下タンク上にタンク上部ボックスを埋設するタンク上部ボックスの埋設方法であって、
地下タンクと接するバンドのうち、タンク上部ボックスと重なるバンド部分であって少なくともタンク上部ボックス壁面から内側に向かう部分をカバーで地下タンクに対して覆う工程と、
バンドと重なる個所にバンドと干渉しないように切り欠き部が形成された、FRP(Fiber-Reinforced Plastics)製のタンク上部ボックスを切り欠き部がカバーを介してバンドを地下タンクとの間に挟むように配置する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、タンク上部ボックス内側において、バンドのうちカバーにより覆われずに残った部分を樹脂材で埋め込む工程をさらに備えると好適である。
【0013】
また、カバーと切り欠き部との隙間を接着剤で塞ぐ工程をさらに備えると好適である。
【0014】
また、バンドの端部をカバーと複数の壁とで囲み、囲まれた空間を樹脂材で埋め込むことで、バンドの端部が樹脂材で埋め込まれると好適である。
【0015】
また、地下タンクとして、外殻にFRP材を用いた2重殻タンクが用いられると好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、新規に地下タンクを設置する場合だけではなく、既に埋設されている既存の地下タンクに対してもタンク上部ボックスを設置できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態1における給油所の構成を示す断面構成図の一例である。
【
図2】実施の形態1における地下タンクシステムの構成を示す正面図である。
【
図3】実施の形態1における地下タンクシステムの構成を示す側面図である。
【
図4】実施の形態1における地下タンクシステムの構成の一例を示す断面図である。
【
図5】実施の形態1におけるボックスピット本体の上方から見た構成の一例を示す断面図である。
【
図6】実施の形態1におけるボックスピット本体と貯蔵タンク上部の構成の一例の拡大断面図である。
【
図7】実施の形態1におけるボックスピット本体の切り欠き部周辺の構成の一例の拡大図である。
【
図8】実施の形態1における地下タンクへの接着方法の一例を説明するための断面図である。
【
図9】実施の形態1における地下タンクへの接着方法の他の一例を説明するための断面図である。
【
図10】実施の形態1と比較例とにおける2重殻タンクに与える影響について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における給油所の構成を示す断面構成図の一例である。
図1において、ガソリンスタンドに代表される給油所には、貯蔵タンク102(地下タンク)が地下(地中)に埋設されている。一方、地上には、計量機(給油器)104が配置される。また、地上には、タンクローリー車106からの燃料油の注入を受ける配管注入口116が配置される。貯蔵タンク102から上方へ延びる配管111は、地下に埋設されたボックスピット100(地下埋設型タンク上部ボックス)内で配管継手により例えば計量機104へと延びる配管112に接続される。また、貯蔵タンク102から上方へ延びる配管113は同様にボックスピット100内で配管継手により例えば配管注入口116へと延びる配管114に接続される。また、貯蔵タンク102内の圧力が所定の値を超えた場合に、圧力調整のために気化したガスは、例えば配管114を介して放出弁130から大気中に放出される。かかる配管111,112,113,114は、地下(地中)に埋設されている。
【0019】
給油所には、ガソリン、軽油、及び灯油等の燃料油を一般車両300に販売するガソリンスタンド(GS)(或いはSS:サービスステーション)の他に、運送事業者等が自己の事業に使用する車両(タクシー、バス、或いはトラック等)に燃料油を供給する給油場所も含まれる。ここで言う燃料油には、その他、液化状の天然ガス、及び液化状の水素等が含まれてもよい。
【0020】
タンクローリー車106が給油所に到来すると、タンクローリー車106の配管は配管注入口116に接続される。その後、タンクローリー車106によって運ばれてきた燃料油は、配管114,113内を流れて貯蔵タンク102内に注入される。
【0021】
地上に配置された計量機104は、配管111,112を介して貯蔵タンク102内に貯蔵された燃料油101を車両300に注出(給油)する。例えば、計量機104内に配置された図示しないポンプによって貯蔵タンク102内に貯蔵された燃料油101を移送させる。
【0022】
ここで、ボックスピット100は、貯蔵タンク102を点検するため地下に埋設される。ボックスピット100の上部には、地上から開閉可能なマンホール蓋が配置される。
【0023】
図2は、実施の形態1における地下タンクシステムの構成を示す正面図である。
図3は、実施の形態1における地下タンクシステムの構成を示す側面図である。
図3では、
図2に示した地下タンクシステム500の側面図を示している。地下タンクシステム500は、コンクリートで構成される基礎(基台)103と、貯蔵タンク102と、FRP(Fiber-Reinforced Plastics:繊維強化プラスチック)製のボックスピット100とカバー36とを備えている。ボックスピット100とカバー36は、地下埋設型タンク上部ボックスシステムを構成する構成部品の一例となる。
図2及び
図3では、配管112,114、及びボックスピット100の配管挿入口等の図示は省略している。
図2及び
図3において、基礎103上に貯蔵タンク102が配置される。貯蔵タンク102は、中央部分が水平方向に筒状に延びる円筒状に形成され、両端部分が凸の半球状に形成されている。そして、貯蔵タンク102は、スチール製のバンド18が貯蔵タンク102の上面を押さえ付けながら基礎103に締結されることで固定される。よって、貯蔵タンク102は、円弧状の上面部分に接するバンド18で地中に埋設される基礎103に締結されている。また、スチール製のバンド18で貯蔵タンク102を損傷させないように、貯蔵タンク102とバンド18との間にはゴムシート17が配置される。ゴムシート17は、例えば、バンド18と同じ幅サイズ或いはバンド18の幅サイズ以下で形成されると好適である。但し、これに限るものではない。ゴムシート17の幅は、バンド18の幅サイズよりも大きいサイズで形成されても構わない。
【0024】
貯蔵タンク102直上には、ボックスピット100が直に配置される。ボックスピット100は、貯蔵タンク102から上方に延びる配管111,113を取り囲む位置に配置される。実施の形態1では、さらに、ボックスピット100は、バンド18と重なる位置に配置される。ボックスピット100は、貯蔵タンク102上に直に配置されるボックスピット本体枠10と、中段ボックス12と、上段ボックス14と、マンホール蓋16と、を有する。ボックスピット本体枠10と、中段ボックス12と、上段ボックス14とは、この順で接続され、図示しないフランジにより例えばボルトとナットを使って固定される。ボックスピット本体枠10と、中段ボックス12と、上段ボックス14とは地下(地中)に埋設される。そして、上段ボックス14の上面付近が地上面となる。そして、上段ボックス14の上面をマンホール蓋16で覆っている。マンホール蓋16を取り外すことで、作業員がボックスピット100内で作業或いはボックスピット100を点検することができる。
【0025】
ここで、上述したように、既に埋設されている既存の地下タンク上にFRP製の上部ボックスを設置しようとする場合、既にバンドの設置位置は決まっているので、FRP製の上部ボックスが、バンドに干渉してしまい配置することが困難になるといった問題があった。そこで、実施の形態1では、ボックスピット本体枠10に、バンド18と重なる各個所にバンド18と干渉しないように例えば矩形の切り欠き部30を形成する。なお、切り欠き部30は、カバー36の断面形状に沿った形状(例えば台形と矩形を組み合わせた形状)で形成されると、切り欠き部30とカバー36との隙間が小さくなるため、より好適である。そして、切り欠き部30内にバンド18を覆うカバー36を挟むように、ボックスピット本体枠10を貯蔵タンク102上に直に配置する。これにより、バンド18との干渉を無くすことができる。なお、ボックスピット本体枠10の底面部分は、貯蔵タンク102上面側の円弧形状に合わせて形成されることは言うまでもない。
【0026】
図4は、実施の形態1における地下タンクシステムの構成の一例を示す断面図である。
図4では、
図2のA-A断面を示している。
図5は、実施の形態1におけるボックスピット本体の上方から見た構成の一例を示す断面図である。
図5では、
図2のB-B断面を示している。
図6は、実施の形態1におけるボックスピット本体と貯蔵タンク上部の構成の一例の拡大断面図である。
図7は、実施の形態1におけるボックスピット本体の切り欠き部周辺の構成の一例の拡大図である。
図4に示すように、貯蔵タンク102は、スチール製のタンク本体20の全表面にアスファルト材がコーティングされ、アスファルトシート22を構成している。なお、
図4では、タンク本体20のスチール材の厚さを示す断面部分の図示は省略している。
図4~6に示すように、基礎103の一方から1本のバンド18が貯蔵タンク102の上面を回って基礎103の他方まで繋がった状態で貯蔵タンク102を押さえ付けている訳ではない。貯蔵タンク102の頂面付近で上方に折れ曲がった返し部分である端部19から貯蔵タンク102の上面の一方側に沿って基礎103の一方に延びたバンド18で締結されると共に、同様に貯蔵タンク102の頂面付近で上方に折れ曲がった別の端部19から貯蔵タンク102の上面の他方側に沿って基礎103の他方に延びた別のバンド18で締結される。ここで、この状態でボックスピット100を貯蔵タンク102上に配置したのでは、ボックスピット本体枠10の切り欠き部30とバンド18との隙間から地下水がボックスピット100内に侵入してしまう。また、ボックスピット100内に漏れ出た油液が切り欠き部30とバンド18との隙間から地中に漏れ出してしまう可能性がある。また、切り欠き部30とバンド18との隙間をコーキング材等で埋めたとしても、バンド18とゴムシート17との接地面および/或いはゴムシート17と貯蔵タンク102上面との接地面を伝って、毛細管現象等により地下水がボックスピット100内に侵入してしまうことがあり得る。そこで、実施の形態1では、以下のように、まずはカバー36でバンド18を覆ってから、カバー36を挟み込むようにボックスピット100を貯蔵タンク102上に配置する。以下、タンク上部ボックスの埋設方法の順に沿って、その構成についても説明する。
【0027】
まず、既に埋設されている既存の貯蔵タンク102上に堆積する打ちっぱなしのコンクリート(いわゆる捨てコン)、砕石、或いは砂等の堆積物を取り除く。
【0028】
密閉工程の一部として、カバー36は、ボックスピット本体枠10の内側に位置するバンド18のうち、少なくとも切り欠き部30からボックスピット本体枠10の内側に向かう部分を貯蔵タンク102に対して覆う。言い換えれば、貯蔵タンク102と接するバンド18のうち、ボックスピット100と重なるバンド部分であって少なくともボックスピット100壁面から内側に向かう部分をカバー36で貯蔵タンク102に対して覆う。具体的には、
図4~7に示すように、カバー36は、切り欠き部30からボックスピット本体枠10の内側に向かって延びるバンド18を貯蔵タンク102上に位置するバンド18の端部19を残して覆う。これにより、ボックスピット本体枠10内側に延びるバンド18を、端部19を残して貯蔵タンク102との間で密閉する。言い換えれば、
図4~7に示すように、貯蔵タンク102と接するバンド18のうち、ボックスピット100と重なるバンド部分(ボックスピット100内に位置するバンド部分)を貯蔵タンク102上に位置するバンド18の端部19を残してカバー36で覆う。カバー36は、FRP材を用いて形成される。これにより、ボックスピット100と同様、貯蔵タンク102に傷が付くといった問題や、地下水等によるカバー36自体の腐食を防止できる。この際、カバー36裏面と貯蔵タンク102表面との間(a部)は、FRP接着剤で接着する。これにより、バンド18のうちカバー36で覆った部分をカバー36と貯蔵タンク102との間で密閉する。さらに、ゴムシート17及びバンド18と、カバー36の内側の隙間(b部)をシーリング材で埋め込むとなお良い。これにより、地下水がカバー36内を伝ってボックスピット100内に侵入することを低減できる。シーリング材は、伸縮性の材料を用いると好適である。これにより、硬化する際の収縮による歪を低減できる。
【0029】
次に、ボックスピット配置工程として、実施の形態1におけるボックスピット100(地下埋設型タンク上部ボックス)を、貯蔵タンク102上であって、バンド18と重なる位置に配置する。その際、切り欠き部30がカバー36を介してバンド18を貯蔵タンク102との間に挟むようにボックスピット100を配置する。まずは、最下部となるボックスピット本体枠10を貯蔵タンク102上に配置する。具体的には、
図4~7に示すように、ボックスピット本体枠10の切り欠き部30がカバー36と重なる位置でカバー36を挟み込むようにボックスピット本体枠10を貯蔵タンク102上に配置する。
【0030】
接着工程(1)として、ボックスピット本体枠10全周を、貯蔵タンク102と接着する。
図8は、実施の形態1における地下タンクへの接着方法の一例を説明するための断面図である。
図8に示すように、貯蔵タンク102のスチール製のタンク本体20の全表面には、アスファルトシート22がコーティングされている。そこで、ボックスピット本体枠10の底面全周を切り欠き部30以外に隙間ができないように例えばFRP40で接着する。
図8の例では、ボックスピット本体枠10全周が、コーティングされたアスファルト材と接着される。
【0031】
図9は、実施の形態1における地下タンクへの接着方法の他の一例を説明するための断面図である。FRP製のボックスピット本体枠10とアスファルトシート22との接着性が低い場合には、
図9(a)に示すように、接着工程の前に、スチール露出工程として、ボックスピット本体枠10と貯蔵タンク102とが接触する部分についてスチール材を露出させる。具体的には、ボックスピット本体枠10と貯蔵タンク102とが接触する部分のアスファルトシート22を剥がすことで、貯蔵タンク102のスチール製のタンク本体20部分を露出させる。
【0032】
そして、接着工程として、
図9(a)に示すように、ボックスピット本体枠10全周を、貯蔵タンク102の露出したスチール材と接着する。ボックスピット本体枠10の底面全周を切り欠き部30以外に隙間ができないように例えばFRP40(接着剤)で接着する。ここで、
図8(b)に示すように、事前にFRP40b(FRP材)を貯蔵タンク102の露出したスチール材に接着し、ボックスピット本体枠10全周が、FRP40bを介して貯蔵タンク102の露出したスチール材と接着されるようにしても良い。FRP40(40b)は、アスファルト材よりもスチール材との接着性の方が優れている。よって、十分にボックスピット本体枠10と貯蔵タンク102とを接着できる。これにより、ボックスピット本体枠10と貯蔵タンク102との密閉性が高まり、ボックスピット100内への地下水の侵入を防止できると共に、ボックスピット100から地中への油液も漏れ出しを防ぐことができる。但し、これだけでは、切り欠き部30を通じて地下水の侵入及び/或いは油液の漏れ出しが生じ得る。そこで、次の工程を実施する。
【0033】
接着工程(2)として、カバー36と切り欠き部30との隙間を接着剤で塞ぐ。具体的には、FRP31(接着剤)で接着する。
図5~7の例では、ボックスピット本体枠10の外側からカバー36と切り欠き部30との隙間をFRP31で接着する場合を示しているが、これに限るものではない。ボックスピット本体枠10の内側からカバー36と切り欠き部30との隙間をFRP31で接着しても良い。
【0034】
ここで、
図4~7の例では、カバー36は、ボックスピット本体枠10よりも一部が外側にはみ出すように配置しているが、これに限るものではない。カバー36の端部がボックスピット本体枠10の外周面若しくは内周面に面一になるように配置してもよい。
【0035】
埋込工程として、ボックスピット100内側において、バンド18のうちカバー36により覆われずに残った部分を樹脂材34で埋め込む。
図5~6の例では、ボックスピット100内側において、カバー36により覆われずに残ったバンド18の端部19を樹脂材34で埋め込む。
図5に示すように、バンド18の端部19をカバー36と複数の壁32とで囲み、囲まれた空間を樹脂材34で埋め込むことで、バンド18の端部19が樹脂材34で埋め込まれるようにしても好適である。樹脂材34として、エポキシ樹脂を用いると好適である。2つの壁32によって堰を作ることで、埋め込む液状の樹脂材34が外側に漏れ出すことを防止できる。或いは、複数の壁32で堰を作らずに、樹脂材34を両側から延びた2つのカバー36間の隙間に直接埋め込むようにしても良い。樹脂材34の一部が外側に漏れ出したとして、バンド18の端部19を埋め込むことができる。これにより、ボックスピット100内側において、バンド18全体を隙間なく覆うことができる。
【0036】
次に、中段ボックス12を配置して、例えば、配管112,114を接続し直す。そして、上段ボックス14と、マンホール蓋16とを取り付けた後、掘り起こした部分を埋め直す。これにより、既にバンド18で固定されている既存の貯蔵タンク102上に、バンド18と干渉することなくFRP製のボックスピット100を配置できる。
【0037】
ここで、貯蔵タンク102として、スチール製の1重殻タンクの他、外殻にFRP材を用いた2重殻タンクが用いられる。実施の形態1は、1重殻タンクに適用できることは言うまでもないが、2重殻タンクが用いられる場合に特に有効である。
【0038】
図10は、実施の形態1と比較例とにおける2重殻タンクに与える影響について説明するための図である。
図10(a)では、比較例として、ボックスピット100内に位置するバンド18のうち、端部19を残して樹脂材35で埋め込むことで地下水の侵入を防ぐ構成について示している。かかる場合、樹脂材35が多量に用いられるため、樹脂材35が硬化する際の収縮力により樹脂材35と2重殻タンクの外殻とが接する個所(A部)に亀裂等が生じる可能性がある。端部19を含めてボックスピット100内に位置するバンド18全体を樹脂材35で埋め込む場合も同様である。これに対して、実施の形態1では、
図10(b)に示すように、樹脂材34が端部19付近(A部)で使用されるだけなので、使用料が少なく樹脂材34が硬化する際の収縮力も弱い。そのため、2重殻タンクの外殻に亀裂等を生じさせないようにできる。
【0039】
以上のように、実施の形態1によれば、新規に地下タンクを設置する場合だけではなく、既に埋設されている既存の地下タンクに対してもFRP製のボックスピット100を設置できる。よって、スチール製のボックスピットよりも耐食性を高めることができる。また、既存の地下タンクとFRP製のボックスピット100との密閉性を高めることができる。よって、地下水の上部ボックス内への侵入を防止できると共に、ボックスピット100内に漏れ出た油液の地中への漏れ出しを防止できる。
【0040】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、高さ寸法を変えた複数の中段ボックス12を用意しておくと好適である。埋設された地下タンクの深さが一定でない場合でも、地下タンクの深さに合わせて中段ボックス12の高さを選択すれば、その他の部品を共通にできる。或いは、高さ寸法を変えた複数の上段ボックス14を用意してもよい。
【0041】
また、上述した例では、カバー36がバンド18の端部19を残して覆う場合を示しているが、これに限るものではない。ボックスピット本体枠10内に位置するバンド18全体を覆うように構成しても構わない。その際、上方に折り返す端部19の部分だけカバー36の高さ位置を高くし、残りはバンド18に沿って低くすると好適である。これにより、カバー36内でのバンド18との隙間を小さくできる。
【0042】
また、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成を適宜選択して用いることができる。
【0043】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての地下埋設型タンク上部ボックス、及びタンク上部ボックスの埋設方法は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0044】
10 ボックスピット本体枠
12 中段ボックス
14 上段ボックス
16 マンホール蓋
17 ゴムシート
18 バンド
20 タンク本体
22 アスファルトシート
30 切り欠き部
31 FRP
32 壁
34,35 樹脂材
36 カバー
40 FRP
100 ボックスピット
101 燃料油
102 貯蔵タンク
103 基礎
104 計量機
106 タンクローリー車
111,112,113,114 配管
116 注入口
130 放出弁
300 車両