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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】画像処理装置及び画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/60 20230101AFI20230228BHJP
   H04N 23/743 20230101ALI20230228BHJP
【FI】
H04N23/60 500
H04N23/743
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019053218
(22)【出願日】2019-03-20
(65)【公開番号】P2020155953
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000108085
【氏名又は名称】セコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 純
【審査官】大濱 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-141813(JP,A)
【文献】特開2010-279002(JP,A)
【文献】特開2007-026400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/60
H04N 23/743
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定空間を順次撮影した撮影画像のうち、第1露光量で撮影した第1撮影画像及び前記第1露光量よりも小さい第2露光量で前記第1撮影画像と所定以内の時間差で撮影した第2撮影画像を取得する取得手段と、
前記第1露光量と前記第2露光量との比率と、前記第1撮影画像のダイナミックレンジを越えた値であるレンズフレアを検出するための基準閾値と、に基づいて前記第2撮影画像のダイナミックレンジに合わせた相対閾値を設定し、前記第2撮影画像における前記相対閾値以上の輝度値の画素からなる第1画像領域をレンズフレアが発生しているフレア領域として抽出するフレア検出手段と、
前記フレア領域の有無に応じてフレア除去処理を行うフレア処理手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記フレア検出手段は、異なる時刻に撮影された複数の前記第2撮影画像を比較し、当該第2撮影画像から前記抽出した第1画像領域における差分領域を検出し、当該差分領域を前記フレア領域とすることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記フレア検出手段は、異なる時刻に撮影された複数の前記第2撮影画像の差分を検出した差分領域のうち、前記相対閾値以上の輝度値の画素からなる前記差分領域を前記フレア領域とすることを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の画像処理装置であって、
前記フレア検出手段は、前記フレア領域である画像領域における前記第2撮影画像の輝度値に応じて当該画像領域を膨張させてフレア除去対象領域を求め、
前記フレア処理手段は、前記フレア除去対象領域の有無に応じてフレア除去処理を行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像処理装置であって、
前記フレア検出手段は、前記フレア領域である画像領域における前記第2撮影画像の輝度値が高いほど当該画像領域を膨張させる倍率を大きくすることを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
所定空間を順次撮影した撮影画像のうち、第1露光量で撮影した第1撮影画像及び前記第1露光量よりも小さい第2露光量で前記第1撮影画像と所定以内の時間差で撮影した第2撮影画像を取得する取得手段と、
前記第1露光量と前記第2露光量との比率に基づいて前記第2撮影画像の各画素の輝度値を前記第1露光量にて撮影したときと同じ露光量で撮影した場合の推定輝度値に変換し、前記第2撮影画像における前記第1撮影画像のダイナミックレンジを越えた値であるレンズフレアを検出するための基準閾値以上の前記推定輝度値の画素からなる第1画像領域をレンズフレアが発生しているフレア領域として抽出するフレア検出手段と、
前記フレア領域の有無に応じてフレア除去処理を行うフレア処理手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
コンピュータを、
所定空間を順次撮影した撮影画像のうち、第1露光量で撮影した第1撮影画像及び前記第1露光量よりも小さい第2露光量で前記第1撮影画像と所定以内の時間差で撮影した第2撮影画像を取得する取得手段と、
前記第1露光量と前記第2露光量との比率と、前記第1撮影画像のダイナミックレンジを越えた値であるレンズフレアを検出するための基準閾値と、に基づいて前記第2撮影画像のダイナミックレンジに合わせた相対閾値を設定し、前記第2撮影画像における前記相対閾値以上の輝度値の画素からなる第1画像領域をレンズフレアが発生しているフレア領域として抽出するフレア検出手段と、
前記フレア領域の有無に応じてフレア除去処理を行うフレア処理手段と、
して機能させることを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項8】
コンピュータを、
所定空間を順次撮影した撮影画像のうち、第1露光量で撮影した第1撮影画像及び前記第1露光量よりも小さい第2露光量で前記第1撮影画像と所定以内の時間差で撮影した第2撮影画像を取得する取得手段と、
前記第1露光量と前記第2露光量との比率に基づいて前記第2撮影画像の各画素の輝度値を前記第1露光量にて撮影したときと同じ露光量で撮影した場合の推定輝度値に変換し、前記第2撮影画像における前記第1撮影画像のダイナミックレンジを越えた値であるレンズフレアを検出するための基準閾値以上の前記推定輝度値の画素からなる第1画像領域をレンズフレアが発生しているフレア領域として抽出するフレア検出手段と、
前記フレア領域の有無に応じてフレア除去処理を行うフレア処理手段と、
して機能させることを特徴とする画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像に含まれるフレアに相当する画像領域(フレア領域)を検出する画像処理装置及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、監視領域をカメラにて撮影して取得される撮影画像と、基準画像とを比較することで、両画像間において変化のある領域である変化領域を求め、変化領域の大きさあるいは形状などの画像特徴に基づいて「人物らしさ」を判定して、撮影画像内から侵入者などの検出対象を検出する画像処理装置がある。
【0003】
このような画像処理装置において、撮影範囲に高輝度な物体が存在していると、撮影画像上の高輝度物体の周辺には撮像装置のレンズによるレンズフレアが発生してしまう。フレアは変化領域として抽出されるため、フレア内に人がいる場合、人がフレアに埋もれてしまい、人を精度良く抽出することができない。例えば、図10(b),(c)に示すように、撮影画像に人Mが写っている場合に人Mの服が白色であったり、工事現場で着用する服等のように反射材が付けられていたりすると、カメラに備えられた照明からの照明光を反射して人Mが発光しているように見え、フレアFが発生している。フレアFが発生していなければ人がいる領域が正しく抽出されるが、フレアFが発生しているために人の周囲に靄が発生しているように変化領域が抽出される。そのため、フレアFが発生しているフレア領域を特定して、フレアFを除去する処理が行われる。従来は、撮影画像上において輝度が飽和している領域をフレア領域とみなして補正を行っている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-167485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、輝度が飽和している画素がある場合にレンズフレアが必ずしも発生しているものではない。例えば、図10(a)に示すように、撮影画像に高輝度な人Mが存在しているが、フレアは発生しておらず人Mがいる領域が正しく抽出されている。そのため、画素の輝度値が飽和しているからといってフレア除去処理を行うと、フレアが発生していない領域に対してフレア除去処理を行う場合があり、そのフレア未発生領域に人が存在すると、抽出した人領域に対して余計なフレア除去処理を行ってしまい、正しく抽出されていた人領域が除去されてしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、高輝度物体を撮影した場合に、レンズフレアが起きているレンズフレア除去対象領域を正確に特定してフレア除去処理を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの態様は、所定空間を順次撮影した撮影画像のうち、第1露光量で撮影した第1撮影画像及び前記第1露光量よりも小さい第2露光量で前記第1撮影画像と所定以内の時間差で撮影した第2撮影画像を取得する取得手段と、前記第1露光量と前記第2露光量との比率と、前記第1撮影画像のダイナミックレンジを越えた値であるレンズフレアを検出するための基準閾値と、に基づいて前記第2撮影画像のダイナミックレンジに合わせた相対閾値を設定し、前記第2撮影画像における前記相対閾値以上の輝度値の画素からなる第1画像領域をレンズフレアが発生しているフレア領域として抽出するフレア検出手段と、前記フレア領域の有無に応じてフレア除去処理を行うフレア処理手段と、を備えることを特徴とする画像処理装置である。
【0008】
本発明の別の態様は、所定空間を順次撮影した撮影画像のうち、第1露光量で撮影した第1撮影画像及び前記第1露光量よりも小さい第2露光量で前記第1撮影画像と所定以内の時間差で撮影した第2撮影画像を取得する取得手段と、前記第1露光量と前記第2露光量との比率に基づいて前記第2撮影画像の各画素の輝度値を前記第1露光量にて撮影したときと同じ露光量で撮影した場合の推定輝度値に変換し、前記第2撮影画像における前記第1撮影画像のダイナミックレンジを越えた値であるレンズフレアを検出するための基準閾値以上の前記推定輝度値の画素からなる第1画像領域をレンズフレアが発生しているフレア領域として抽出するフレア検出手段と、前記フレア領域の有無に応じてフレア除去処理を行うフレア処理手段と、を備えることを特徴とする画像処理装置である。
【0009】
本発明の別の態様は、コンピュータを、所定空間を順次撮影した撮影画像のうち、第1露光量で撮影した第1撮影画像及び前記第1露光量よりも小さい第2露光量で前記第1撮影画像と所定以内の時間差で撮影した第2撮影画像を取得する取得手段と、前記第1露光量と前記第2露光量との比率と、前記第1撮影画像のダイナミックレンジを越えた値であるレンズフレアを検出するための基準閾値と、に基づいて前記第2撮影画像のダイナミックレンジに合わせた相対閾値を設定し、前記第2撮影画像における前記相対閾値以上の輝度値の画素からなる第1画像領域をレンズフレアが発生しているフレア領域として抽出するフレア検出手段と、前記フレア領域の有無に応じてフレア除去処理を行うフレア処理手段と、して機能させることを特徴とする画像処理プログラムである。
【0010】
本発明の別の態様は、コンピュータを、所定空間を順次撮影した撮影画像のうち、第1露光量で撮影した第1撮影画像及び前記第1露光量よりも小さい第2露光量で前記第1撮影画像と所定以内の時間差で撮影した第2撮影画像を取得する取得手段と、前記第1露光量と前記第2露光量との比率に基づいて前記第2撮影画像の各画素の輝度値を前記第1露光量にて撮影したときと同じ露光量で撮影した場合の推定輝度値に変換し、前記第2撮影画像における前記第1撮影画像のダイナミックレンジを越えた値であるレンズフレアを検出するための基準閾値以上の前記推定輝度値の画素からなる第1画像領域をレンズフレアが発生しているフレア領域として抽出するフレア検出手段と、前記フレア領域の有無に応じてフレア除去処理を行うフレア処理手段と、して機能させることを特徴とする画像処理プログラムである。
【0011】
ここで、前記フレア検出手段は、異なる時刻に撮影された複数の前記第2撮影画像を比較し、当該第2撮影画像から前記抽出した第1画像領域における差分領域を検出し、当該差分領域を前記フレア領域とすることが好適である。
【0012】
また、前記フレア検出手段は、異なる時刻に撮影された複数の前記第2撮影画像の差分を検出した差分領域のうち、前記相対閾値以上の輝度値の画素からなる前記差分領域を前記フレア領域とすることが好適である。
【0013】
また、前記フレア検出手段は、前記フレア領域である画像領域における前記第2撮影画像の輝度値に応じて当該画像領域を膨張させてフレア除去対象領域を求め、前記フレア処理手段は、前記フレア除去対象領域の有無に応じてフレア除去処理を行うことが好適である。
【0014】
また、前記フレア検出手段は、前記フレア領域である画像領域における前記第2撮影画像の輝度値が高いほど当該画像領域を膨張させる倍率を大きくすることが好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高輝度物体を撮影した場合に、レンズフレアが起きているレンズフレア除去対象領域を正確に特定してフレア除去処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態における警備システムの構成概略図である。
図2】本発明の実施の形態における画像処理装置の構成概略図である。
図3】対象画像(低露光画像)から2値低露光画像を生成する処理を示す図である。
図4】対象画像の1フレーム前及び1フレーム後の低露光画像から2値低露光画像を生成する処理を示す図である。
図5】2値低露光画像のフレーム間差分画像を生成する処理を示す図である。
図6】膨張処理によってフレア除去対象領域を設定する処理を示す図である。
図7】フレア除去対象領域判定処理の流れを示すフローチャートである。
図8】侵入者検出処理の流れを示すフローチャートである。
図9】膨張処理によってフレア除去対象領域を設定する処理を示す図である。
図10】従来のフレア領域を抽出する処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る警備システム10の構成概略図である。警備システム10は、店舗、オフィス、マンション、倉庫、家屋などの各監視対象物件12に設置される警備装置14、公衆電話回線などの通信網16を介して各警備装置14と接続される警備センタ装置18、及び利用者装置20とを含んで構成される。さらに、警備システム10は、監視対象物件12の監視領域を撮影した監視画像に基づいて監視対象物件12の異常を検出するための1以上の画像処理装置22、及び、画像処理装置22により撮影された監視画像を記録する録画装置24を含んで構成される。画像処理装置22及び録画装置24は警備装置14と通信可能に接続される。
【0019】
警備装置14は、構内LANなどを介してそれ自体に接続された画像処理装置22からアラーム信号を受信すると、そのアラーム信号及び警備装置14自体の識別信号、又は、監視対象物件12あるいは異常を検出した画像処理装置22の識別信号を警備センタ装置18へ送信する。そのために、警備装置14は、画像処理装置22と通信するための通信インターフェースと、警備センタ装置18及び利用者装置20と通信するための通信インターフェースと、それらを制御するための制御ユニットを有する。
【0020】
警備センタ装置18は、いわゆるコンピュータで構成され、通信網16を介して警備装置14と通信するための通信インターフェースと、液晶ディスプレイなどの表示装置と、ブザーやLEDなどで構成される報知部を備える。警備センタ装置18は、警備装置14から通信網16を介してアラーム信号を受信すると、そのアラーム信号を送信した警備装置14が設置された監視対象物件12及び検出された異常の内容を報知部及び表示装置を通じて監視員に報知する。
【0021】
利用者装置20も、いわゆるコンピュータで構成され、通信網16を介して警備装置14と通信するための通信インターフェース、液晶ディスプレイなどの表示装置、及び、キーボードやマウスなど、警備装置14を遠隔操作するための操作コマンドを入力するためのユーザインターフェースを備える。利用者装置20は、ユーザインターフェースを介して予め登録されている監視対象物件12を観察する操作がなされると、登録されている監視対象物件12に設置された警備装置14に対して、現在撮影中の監視画像又は録画装置24に記録されている監視画像を利用者装置20に送信することを要求する各種の画像要求信号を送信する。そして、警備装置14から監視画像を受信すると、利用者装置20は要求された監視画像を表示装置に表示する。
【0022】
録画装置24は、HDDなどの磁気ディスク装置、DATなどの磁気テープ、DVD-RAMなどの光記録媒体のように、録画装置24に着脱自在となる記録媒体と、それら記録媒体にアクセスしてデータの読み書きを行う装置で構成される。録画装置24は、画像処理装置22が撮影した監視画像を警備装置14から受け取り、撮影時刻と関連付けて記録する。
【0023】
図2は、画像処理装置22の構成概略図である。
【0024】
通信部30は、画像処理装置22と警備装置14との間で構内LANなどの通信ネットワークを介して各種の設定信号及び制御信号などを送受信する入出力インターフェースであり、イーサネット(登録商標)などの各種の通信インターフェース回路及びそれらを駆動するドライバソフトウェアなどで構成される。具体的には、通信部30は、後述の制御部38によって侵入者が検出された場合に、侵入者を検出したことを示す侵入アラーム信号を警備装置14に出力する。
【0025】
撮影部32は、CCDやCMOS等の可視光及び近赤外光等に感度を有する光電変換器で構成された2次元検出器と、その2次元検出器上に監視領域の像を結像する結像光学系などで構成される。撮影部32は、監視領域を撮影することによって撮影画像を取得する。本実施形態では撮影部32は、一定の時間間隔(例えば1/5秒)ごとに撮影を行うが、撮影部32の撮影方法はこれには限られない。取得された撮影画像は記憶部34に記憶される。
【0026】
撮影部32は、魚眼レンズを含んで構成することができる。すなわち、撮影部32は、全方位(360度)を撮影領域(監視領域)とすることができる全方位カメラとしてもよい。当該全方位カメラは、例えば監視対象物件12の天井などに設置され、監視領域を下方とし、略鉛直下方向を光学中心としている。しかしながら、撮影部32は全方位カメラに限られず、単方位型のカメラ(例えば視野角が90度のカメラ)であってもよい。なお、全方位カメラである撮影部32で撮像された撮影画像は全方位画像であり、全体として円形の像となっており、円形の中心が光学中心に対応する位置となっている。そして、撮影画像においては、監視領域の鉛直上方向が、撮影画像の径方向であって光学中心から外側へ向かう方向となり、監視領域の水平方向が撮影画像の周方向となる。監視領域に侵入者が存在する場合、撮影部32が取得した撮影画像には、当該人物(侵入者)に相当する人領域が含まれることとなる。
【0027】
撮影部32は、侵入者の判定に適した通常の露光量で通常露光画像46の撮影と、通常の露光量よりも小さい低露光量で低露光画像48の撮影とを行う。通常露光画像46と低露光画像48は同時期に撮影を行う。例えば、通常露光画像46と低露光画像48は交互に撮影を行うとよい。本実施例では、一定の時間間隔(例えば1/5秒)毎に通常露光画像46と低露光画像48とを交互に撮影するが、この間隔は変えてもよい。例えば、この間隔は短いほどよいが、高輝度な侵入者を検出したい場合は、1/2秒以内程度でもよい。また、撮影する間隔が1/2秒以内であれば、交互に撮影する必要はなく、通常露光画像46と低露光画像48の間に別の画像を撮影してもよい。なお、撮影部32の露光量は撮影環境に応じて変更される。すなわち、常に露光量を固定して撮影を行うのではなく、通常露光画像46と低露光画像48の露光量の比も固定されているものではない。
【0028】
記憶部34は、半導体メモリ、磁気ディスク(HDD)、又はCD-ROM、DVD-RAMなどの光ディスクドライブ及びその記録媒体で構成される記憶手段である。記憶部34には、画像処理装置22の各部を動作させるための画像処理プログラムが記憶される。また、記憶部34は、閾値40、膨張率42、背景画像44、通常露光画像46、低露光画像48が記憶される。すなわち、記憶部34は、閾値40を記憶する閾値記憶手段、膨張率42を記憶する膨張率記憶手段、背景画像44を記憶する背景画像記憶手段、通常露光画像46を記憶する通常露光画像記憶手段、低露光画像48を記憶する低露光画像記憶手段として機能する。
【0029】
閾値40は、通常露光画像46のダイナミックレンジを越えた輝度値である基準閾値である。すなわち、閾値40以上の輝度値が撮影されるとレンズフレアが発生する。予め撮影部32で種々の高輝度物体の撮影を行い、フレアが発生している撮影画像、発生していない撮影画像を集め、集めた撮影画像からフレアが発生する推定輝度値を判定して当該推定輝度値を閾値40として記憶する。
【0030】
閾値40は、以下のようにして具体的に求めることができる。予め通常露光画像46と低露光画像48とを一組として撮影し、レンズフレアが発生している画像及び発生していない画像の組を複数取得する。そして、それぞれの組について後述する露光量比率に基づいて低露光画像48の各画素の輝度値を通常露光画像46の露光量に換算した推定輝度値(通常露光画像46の露光量で撮影した場合に取得できる推定輝度値)に変換する。レンズフレアが発生している画像と発生していない画像の推定輝度値からレンズフレアが発生する推定輝度値を特定して、当該推定輝度値を閾値40に設定する。
【0031】
露光量比率は、撮影部32のシャッタースピードとゲインを基に算出することができる。このとき、撮影部32の絞りは固定とする。ただし、以下の計算に絞り等を追加して比率を求めてもよい。撮影部32によって通常露光画像46及び低露光画像48を撮影したときのシャッタースピード及び撮像素子のゲインを取得する。シャッタースピードを数式(1)にしたがってデシベル表示[dB]に変換する。例えば、1/60[msec]のシャッタースピードを基準にして撮影部32において設定可能な各シャッタースピードをデシベル表示[dB]に変換する。
20log(Out/In)=デシベル表示[dB]・・・(1)
ここで、Out:撮影に使用したシャッタースピード、In:基準のシャッタースピード(例えば、1/60)
【表1】
【0032】
デシベル表示[dB]変換後のシャッタースピードとゲインから数式(2)に基づいて撮影画像の露光量を求める。
露光量[dB]=ゲイン[dB]+シャッタースピード[dB]・・・(2)
【0033】
例えば、通常露光画像46のゲインが6[dB]で、シャッタースピードが1/60(0[dB])の場合には、通常露光画像46の露光量は6[dB]となる。一方、低露光画像48のゲインが0[dB]で、シャッタースピードが1/320(-14[dB])の場合には、低露光画像48の露光量は-14[dB]となる。通常露光画像46と低露光画像48の露光量が求められたら、露光差[dB]=通常露光画像46の露光量[dB]-低露光画像48の露光量[dB]として数式(3)に基づいて露光量比率を算出する。
20log(露光量比率)=露光差・・・(3)
【0034】
例えば、通常露光画像46の露光量が6[dB]であり、低露光画像48の露光量が-14[dB]の場合には露光差は6-(-14)=20[dB]となる。露光差が20[dB]の場合、露光量比率は10^(20/20)=10となる。すなわち、低露光画像48は通常露光画像46よりも10%の露光量で撮影されたと判定できる。表2は、通常露光画像46の露光量と低露光画像48の露光量の倍率と露光差との関係を示す。
【表2】
【0035】
推定輝度値は、低露光画像48の各画素の輝度値を通常露光画像46の露光量で撮影した場合の輝度値に換算した値である。したがって、低露光画像48の各画素の輝度値に対して露光量比率を乗算することで推定輝度値を算出することができる。例えば、低露光画像48が通常露光画像46に対して10%の露光量で撮影された場合、低露光画像48の各画素の輝度値に露光量比率である10を乗算して通常露光画像46の露光量で撮影した場合の輝度値に換算した推定輝度値を算出する。低露光画像48のある画素の輝度値が60の場合は、推定輝度値は600(60(低露光画像48の輝度値)×10(露光量比率)=600(推定輝度値))となる。また、低露光画像48のある画素の輝度値が200の場合、推定輝度値は2000となる。
【0036】
このように、露光量比率に基づいて推定輝度値を算出して、レンズフレアが発生している画像と発生していない画像の推定輝度値からレンズフレアが発生する推定輝度値を閾値40として設定する。なお、閾値40は、撮影部32のレンズの構造等に応じて変わるが、以下の説明では閾値40を600と仮定する。
【0037】
膨張率42は、後述するフレア領域抽出処理において抽出されたフレア領域を低露光画像48の輝度値に応じて膨張(拡張)させる倍率を示す。図10(b),(c)に示すように、フレアFの大きさは大小さまざまであるが、撮影画像に映る高輝度な物体の輝度値が高ければ高いほどフレアFが大きくなる。閾値40を求めるときと同様に、予め撮影部32で種々の高輝度物体の撮影を行い、レンズフレアが発生している通常露光画像46と低露光画像48を集め、レンズフレアが発生している通常露光画像46とそのときの低露光画像48に基づいて膨張率を求める。具体的には、低露光画像48を2値化処理してフレア領域を算出する。また、通常露光画像46を後述する背景画像44を用いて背景差分して変化領域を抽出する。そして、フレア領域の面積に対する変化領域の面積の比を膨張率として算出する。そして、そのときのフレア領域の推定輝度値と膨張率とを対応付けて記憶部34に記憶させる。この処理を、撮影する高輝度物体の輝度を変えて繰返し行い、推定輝度値と膨張率とを対応づけたデータベースを記憶させる。膨張率42は、撮影部32のレンズの構造等に応じて変わるが、表3に、低露光画像48から抽出されたフレア領域の推定輝度値と膨張率との関係の例を示す。
【表3】
【0038】
背景画像44は、監視領域内に人物が存在していないときの通常露光画像46に基づいて制御部38により作成される。背景画像44は1枚であってもよいが、複数枚の背景画像44が作成されてもよい。例えば、制御部38は、撮影部32が順次取得した通常露光画像46のフレーム間差分を求め、フレーム間での対応画素間の輝度差の絶対値の平均値を求める。そして、制御部38は、その平均値が所定の基準よりも小さい通常露光画像46を背景画像44として記憶部34に記憶させる。また、背景画像44は、照明状態の変動、太陽の日周変動などの監視領域の変動に対応するために、一定周期(例えば、10分間隔)毎に更新されるのが好適である。
【0039】
照明部36は、近赤外LED等の光源を含んで構成される。照明部36は、撮影環境が暗い場合に照明を点灯させて撮影部32による撮影を補助するために用いられる。
【0040】
制御部38は、組み込み型のマイクロプロセッサユニットと、ROM、RAMなどのメモリと、その周辺回路とを有し、画像処理装置22の各種信号処理を実行する。図2に示されるように、制御部38は、フレア除去対象領域判定手段50、変化領域抽出手段52及び人判定手段54の機能を発揮する。制御部38がこれらの手段を発揮することで、通常露光画像46において、人物に相当する画像領域である人領域が検出される。以下、制御部38が有する各手段について説明する。
【0041】
フレア除去対象領域判定手段50は、通常露光画像46及び低露光画像48においてフレアが撮像された領域をフレア領域として抽出するフレア領域抽出処理を行う。フレア除去対象領域判定手段50は、通常露光画像46においてフレアが発生している領域を検出するフレア検出手段として機能する。
【0042】
以下、撮影部32において順次撮影された通常露光画像46のうち侵入者検出を行う画像を処理画像とする。また、処理画像と一組で撮影された低露光画像48を対象画像とする。
【0043】
まず、処理画像の露光量と対象画像の低露光量とから上記方法を用いて処理画像と対象画像の露光量比率を算出する。以下の説明では、露光量の比率が10倍であるとする。次に、相対閾値を算出する。予め記憶部34に記憶された閾値40と、処理画像と対照画像との露光量比率とから、閾値40を対象画像の露光量に合わせた相対閾値を算出する。すなわち、対象画像となる低露光画像48のダイナミックレンジの範囲内に合わせた相対閾値を算出する。相対閾値は、閾値40に露光量比率を乗算することによって算出することができる。例えば、閾値40が600であり、露光量比率が10倍である場合、相対閾値は600×1/10=60と算出される。
【0044】
次に、図3に示すように、算出された相対閾値と対象画像の各画素の輝度値とを比較して、対象画像を2値化して2値低露光画像を生成する。すなわち、対象画像において相対閾値以上の輝度値を持つ画素は1(画像上では白色)、閾値未満の輝度値である画素は0(画像上では黒色)とした2値低露光画像を作成する。そして、2値低露光画像において抽出された領域(画素値が1(白色領域))が有るか否か判定する。抽出された領域(白色領域)がある場合には次のフレーム間差分処理を実行する。抽出された領域(白色領域)がなかった場合には、フレアは発生していないと判定して、フレア除去対象領域判定手段50での処理を終了して後述の侵入者検出処理に進む。
【0045】
フレーム間差分処理では、図4に示すように、対象画像の直前(1フレーム前)又は直後(1フレーム後)に撮影された低露光画像48を2値化処理して2値低露光画像を生成する。そして、図5に示すように、生成された2値低露光画像同士をフレーム間で差分して差分領域を抽出する。すなわち、フレーム間において2値低露光画像に差がある画素は1(画像上では白色)、差がない画像は0(画像上では黒色)とした差分画像を作成する。なお、図5の例では3フレームの2値低露光画像の差分をとっているが、2フレームを対象としてもよいし、4フレーム以上を対象としてもよい。また、図4の例では対象画像の1フレーム前又は1フレーム後の2値低露光画像の差分をとっているが、2フレーム以上前又は2フレーム以上後を対象としてもよい。なお、対象画像の直後に撮影された画像とは、侵入者検出をリアルタイムではなくリアルタイムより数秒前の撮影画像である処理画像を用いて侵入者検出を行う遅延処理を行う場合の処理画像よりも時間的に後に撮影された撮影画像のことである。
【0046】
次に、フレーム間の差分画像において差分領域(白色領域)が在るか否か判定する。差分領域が抽出された場合は、後述の領域膨張処理に進む。差分領域が抽出されなかった場合、フレアは発生していないと判定して、フレア除去対象領域判定処理を終了して後述の侵入者検出処理に進む。
【0047】
すなわち、対象画像に対する2値低露光画像において抽出された領域が存在したとしても当該領域がフレーム間差分処理において抽出されなかった場合、当該領域は高輝度の静止物体(又は、非常に動きの遅い物体)によるものであり、当該物体に対してはフレア除去領域として扱わないようにする。背景画像44を更新する場合、高輝度の静止物体が写された画像領域も背景画像44に取り込まれることになる。その場合、背景画像44には、当該高輝度の静止物体によって発生するレンズフレアも取り込まれることになる。背景画像44にも処理画像となる通常露光画像46にも同じレンズフレアが写されているので、背景画像44を用いて通常露光画像46との背景差分処理を行うことによってレンズフレアの影響は除去できる。したがって、背景差分処理に加えて高輝度の静止物体によるレンズフレアの画像領域にフレア除去処理を適用すると、高輝度の静止物体の近傍に存在する人(検出対象物)に対して余計なフレア除去処理を適用してしまうおそれがある。そのため、フレーム間差分画像において差分領域が存在する場合、すなわち移動する高輝度物体が存在する場合にのみフレア除去領域として扱うようにしている。
【0048】
フレーム間差分処理において差分領域が抽出された場合、図6に示すように、対象画像を2値化した2値低露光画像で抽出された領域(白色領域)を対象として領域を膨張(拡張)させる処理を行う。ここでは、2値低露光画像において抽出された領域(白色領域)に対応する低露光画像48の画素の輝度値に応じた膨張率にて当該抽出された領域(白色領域)を膨張させ、その膨張させた領域をフレア除去対象領域と設定する。具体的には、抽出された領域(白色領域)に対応する低露光画像48の画素の推定輝度値と予め対応づけられた膨張率(例えば、上記表3では推定輝度値が600の場合は5倍)を記憶部34から読み出し、読み出された膨張率で当該画素を膨張させる。この膨張処理を抽出された領域(白色領域)に対応する低露光画像48の画素のすべてに対して適用することでフレア除去対象領域を設定する。これによって、フレア除去対象領域判定手段50におけるフレア除去対象領域判定処理を終了する。なお、膨張率を読み出すときに確認する低露光画像48の推定輝度値は、抽出された領域(白色領域)の各画素の推定輝度値から求めた平均輝度値を推定輝度値としてもよいし、抽出された領域の各画素の推定輝度値のうち一番高い輝度値を推定輝度値としてもよい。
【0049】
侵入者検出処理として、変化領域抽出手段52において変化領域を抽出する処理をし、人判定手段54において抽出された変化領域が人であるか否かを判定する。変化領域抽出手段52は、フレア除去対象領域判定手段50においてフレア除去対象領域が設定されなかった場合、変化領域を抽出する処理を行い、フレア除去対象領域判定手段50においてフレア除去対象領域が設定された場合、変化領域を抽出し、さらにフレア除去対象領域に対してフレア除去処理を行う。
【0050】
フレア除去対象領域が設定されなかった場合、変化領域抽出手段52では、処理画像(通常露光画像46)と背景画像44とを比較し、処理画像において背景画像44から変化している変化領域を抽出する。具体的には、両画像間で相違する画素を抽出し、抽出された画素と抽出されない画素とからなる背景差分画像を求める処理を行う。ここで「両画像間で相違する画素」とは、通常露光画像46と背景画像44との間で輝度値又は色成分の差が所定値以上である通常露光画像46の画素を意味する。この処理によって変化領域が抽出されなかった場合は侵入者検出処理を終了し、変化領域が抽出された場合は人判定手段54の処理に移行する。
【0051】
フレア除去対象領域が設定された場合、変化領域抽出手段52では、フレア除去対象領域と判定された画像領域に対してのみフレア除去処理を行ったうえで変化領域を抽出する。フレア除去処理では、対象画像のフレア除去対象領域の画像領域に相当する処理画像(通常露光画像46)の画像領域を処理画像のフレア除去対象領域とする。当該フレア除去対象領域に対して行うフレア除去処理は、背景画像44からの変化があり、さらにフレア除去対象領域においてエッジが存在するか否か、及び、背景画像44との相関が低いか否かを判定する。つまり、フレア除去領域において、背景画像44から変化しておりエッジが存在し、さらに背景画像44との相関が低い領域を変化領域として抽出し、一方、フレア除去領域において、背景画像44から変化しておりエッジが存在するが背景画像44との相関が高い領域、及び、背景画像44から変化しているがエッジが存在しない領域は、変化領域として抽出しない。例えば、エッジ画像を作成してフレア除去対象領域内のエッジの有無を判定し、そしてフレア除去対象領域とフレア除去対象領域に対応する背景画像44の画像領域との正規化相関値を求め、その正規化相関値が所定の相関値以上であるか否かを判定する。フレア除去対象領域に対して背景画像44との相関を判定する目的は、フレアが発生してもその画像領域に移動体が存在しなければ処理画像は背景物を撮影しているため、背景画像44のテクスチャやエッジがフレア除去対象領域にも撮影され、背景画像44との相関が高くなるからである。そのため、エッジの有無に加えて、背景画像44との相関も判定することで、より精度良くフレアを除去することができる。当該処理によって、変化領域抽出手段52は、フレア処理手段として機能する。フレア除去対象領域以外の画像領域については、処理画像と背景画像44とを比較して処理画像において背景画像44から変化している変化領域を抽出する。この処理によって変化領域が抽出されなかった場合は侵入者検出処理を終了し、変化領域が抽出された場合は人判定手段54の処理に移行する。
【0052】
人判定手段54では、変化領域抽出手段52において抽出された変化領域が人であるか否かを判定する。人判定手段54における人の判定方法は、公知の様々な方法を適用することができる。例えば、予め検出対象となる人の特徴を表す特徴情報を記憶部34に記憶させておき、抽出された変化領域が当該特徴情報で表される特徴を満たすか否かによって当該変化領域が人であるか否かを判定することができる。特徴情報は、例えば、人らしい大きさ又は形状の画像領域であるか等の情報とすればよい。また、例えば、変化領域に識別子(ラベル)を付与するラベリング処理を行い、複数のフレームに亘って同一のラベルが付された変化領域の動きが人の動きの特徴を満たすか否かによって当該変化領域が人であるか否かを判定することもできる。
【0053】
人判定手段54は、変化領域が人であると判定された場合は通信部30を介して異常を報知して侵入者検出処理を終了し、人でないと判定された場合は報知を行うことなく侵入者検出処理を終了する。
【0054】
以下、図7に示すフローチャートにしたがってフレア除去対象領域判定処理の流れを説明する。
【0055】
ステップS10において、侵入者判定を行う対象となる処理画像(通常露光画像46)と処理画像と同時に撮影された対象画像(低露光画像48)の露光量比率を求める。ステップS12において、求められた露光量比率と、予め記憶部34に記憶させた閾値40とから相対閾値を算出する。ステップS14において、算出された相対閾値を用いて対象画像を2値化する。ステップS16において、2値化処理によって抽出された領域があるか否かを判定する。抽出された領域があった場合はステップS18に処理を進め、抽出された領域がなかった場合はフレア除去対象領域判定処理を終了して侵入者検出処理に進める。ステップS18において、2値化処理された対象画像の直前(1フレーム前)又は直後(1フレーム後)の低露光画像48と、2値化処理された対象画像とをフレーム間差分してフレーム間差分画像を作成する。ステップS20において、フレーム間差分で抽出された差分領域があるか否かを判定する。差分領域があった場合はステップS22に処理を進め、差分領域がなかった場合はフレア除去対象領域判定処理を終了して侵入者検出処理に進める。ステップS22において、フレーム間差分にて抽出された差分領域に対して、当該差分領域の低露光画像48の輝度値に応じた膨張率を掛けて膨張させた差分領域を算出し、当該膨張させた差分領域をフレア除去対象領域として設定する。これによって、フレア除去対象領域判定処理を終了して、次の侵入者検出処理へ進む。
【0056】
なお、ステップS14の処理とステップS18の処理の順番を逆にしてもよい。すなわち、フレーム間差分の処理を行った後に2値化処理を行うようにしてもよい。順番を逆にする場合、フレーム間差分の処理により抽出された差分領域の輝度値の絶対値に基づき2値化処理を行うようにしてもよい。
【0057】
以下、図8に示すフローチャートにしたがって侵入者判定処理の流れを説明する。
【0058】
ステップS30において、フレア除去対象領域判定処理にてフレア除去対象領域が抽出されたか否かが判定される。フレア除去対象領域が抽出されていなかった場合はステップS34に処理を進め、フレア除去対象領域が抽出された場合にはステップS32に処理を進める。ステップS32において、フレア除去対象領域の画像領域に対しては、処理画像(通常露光画像46)と背景画像44とを比較して変化領域を抽出すると共にエッジの有無を判定し、背景差分として変化があり且つエッジがある画像領域を変化領域とする。フレア除去対象領域以外の画像領域は処理画像と背景画像44との背景差分のみを行う。変化領域が抽出されなかったら侵入者判定を終了し、変化領域が抽出されたらステップS36に処理を進める。一方、ステップS34において、処理画像(通常露光画像46)と背景画像44とを比較して変化領域を抽出する。変化領域が抽出されなかったら侵入者判定を終了し、変化領域が抽出されたらステップS36に処理を進める。ステップS36において、抽出された変化領域が人であるか否かの判定を行い、人であった場合は警報を発報する。人でなかった場合は、次の撮影画像の侵入者判定処理へ移行する。
【0059】
このような本実施の形態の画像処理装置22によれば、露光量が異なる通常露光画像46及び低露光画像48の露光量比率と予め設定したレンズフレアが発生する閾値40とに基づいて相対閾値を算出し、低露光画像48の各画素の輝度値が相対閾値以上である画像領域をレンズフレアが起きているフレア領域と判定する。これにより、撮影する画像の露光量を撮影環境に応じて設定しても、そのときに撮影した画像の露光量比率に基づいてレンズフレアが起きているレンズフレア除去対象領域を正確に特定してフレア除去処理を行うことができる。
【0060】
また、本実施の形態では、フレーム間差分処理により抽出された差分領域をフレア領域と判定する。これにより、高輝度の移動物体に対してのみフレア除去処理を行えるため、高輝度の静止物体周辺に存在する移動体に対して余計なフレア除去処理を行うことを抑制できる。
【0061】
また、本実施の形態では、低露光画像48の輝度値に応じて、フレア領域を膨張させてフレア除去対象領域を特定してフレア除去処理を行う。これにより、フレアが発生しているフレア除去対象領域を正確に特定でき、精度良くフレア除去処理を行うことができる。
【0062】
<変形例>
上記実施の形態では、閾値40に基づいて相対閾値を算出する処理を行ったが、相対閾値を算出しないようにしてもよい。例えば、低露光画像48の各画素の輝度値に露光量比率を乗算して、通常露光画像46を撮影したときと同じ露光量で撮影した場合の推定輝度値を算出する。具体的には、例えば低露光画像48のある画素の輝度値が60であり、露光量比率が10倍であった場合、60×10=600が推定輝度値となる。そして、算出された推定輝度値と閾値40(例えば600)とを比較して低露光画像48を2値化処理するようにしてもよい。
【0063】
また、露光量比率を算出する際に、シャッタースピード、ゲイン、絞りのそれぞれのパラメーターのうち固定せずに撮影するパラメーターを使って露光量比率を算出してもよい。例えば、シャッタースピード、絞りを固定して撮影していた場合は、ゲインから露光量比率を算出してもよい。
【0064】
また、フレア領域抽出処理において、フレーム間差分処理をする際に、フレーム間差分ではなく背景差分を行ってもよい。すなわち、低露光画像48の背景画像44を記憶して背景差分を行い、背景差分において差分領域が在るか否かを判定してもよい。
【0065】
また、フレア除去対象領域判定手段50においてフレア除去処理を行う際に、フレア除去対象領域と背景画像44との相関を考慮しないようにしてもよい。すなわち、フレア除去対象領域に対して、背景画像44からの変化があり、さらにフレア除去対象領域においてエッジが存在するか否かを判定するようにしてもよい。つまり、フレア除去領域において、背景画像44から変化しておりエッジが存在する領域を変化領域として抽出し、一方、背景画像44から変化しているがエッジが存在しない領域は変化領域として抽出しないようにしてもよい。
【0066】
また、上記実施の形態では、対象画像を2値化した2値低露光画像で抽出された領域(白色領域)を膨張させる処理としたが、図9に示すように、フレーム間差分処理によって抽出された差分領域(白色領域)に対して膨張処理を適用してもよい。具体的には、フレーム間差分領域(白色領域)に対応する低露光画像48の画素の輝度値に応じた膨張率にて当該抽出された領域(白色領域)を膨張させ、その膨張させた領域をフレア除去対象領域と設定すればよい。
【0067】
なお、画像処理装置22は、自装置内の記憶部34に記憶された画像を画像処理するものに限定されない。例えば、他の外部装置から読み出した画像を画像処理したり、外部のカメラから受信した画像を画像処理したりする構成としてもよい。また、カメラを複数設けて、通常露光画像46と低露光画像48とをそれぞれのカメラで撮影するようにしてもよい。その場合、通常露光画像46と低露光画像48とを同時に撮影してもよい。
【0068】
以上、本発明に係る実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0069】
10 警備システム、12 監視対象物件、14 警備装置、16 通信網、18 警備センタ装置、20 利用者装置、22 画像処理装置、24 録画装置、30 通信部、32 撮影部、34 記憶部、36 照明部、38 制御部、40 閾値、42 膨張率、44 背景画像、46 通常露光画像、48 低露光画像、50 フレア除去対象領域判定手段、52 変化領域抽出手段、54 人判定手段。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10