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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】多層回路基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20230228BHJP
   H05K 1/14 20060101ALI20230228BHJP
   H01Q 23/00 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
H05K3/46 T
H05K3/46 L
H05K1/14 H
H01Q23/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019074823
(22)【出願日】2019-04-10
(65)【公開番号】P2020174114
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】上田 芽利
(72)【発明者】
【氏名】吉野 雄信
(72)【発明者】
【氏名】奥出 聡
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-146982(JP,A)
【文献】特開2016-166347(JP,A)
【文献】国際公開第2010/125835(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/168648(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
H05K 1/14
H01Q 23/00
H01P 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波基板を含む第1回路基板と、前記第1回路基板と接合される第2回路基板とが、それぞれの厚さ方向に重ね合わされて接合された多層回路基板であって、
前記第1回路基板と前記第2回路基板との間には、前記第1回路基板と前記第2回路基板との間を電気的に接続する接続部と、前記接続部の周囲に配置された高周波材料層と、を有し、前記接続部と前記高周波材料層の間に隙間を有することを特徴とする多層回路基板。
【請求項2】
前記接続部が金属片を含むことを特徴とする請求項1に記載の多層回路基板。
【請求項3】
前記金属片は、銅、金、アルミニウム、タングステンの少なくとも1種の金属を含むピラー状であることを特徴とする請求項2に記載の多層回路基板。
【請求項4】
前記接続部が半田層又は導電ペースト層の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の多層回路基板。
【請求項5】
前記高周波基板及び前記高周波材料層は、それぞれ、誘電損失が0.01未満の絶縁材料から構成されることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の多層回路基板。
【請求項6】
前記第1回路基板には、高周波信号の送信又は受信又は送受信が可能なアンテナが形成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の多層回路基板。
【請求項7】
少なくとも1つの前記アンテナに給電する給電線が、前記アンテナと同じ層に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の多層回路基板。
【請求項8】
少なくとも1つの前記アンテナに給電する給電線が、前記アンテナと同じ層に配置されていないことを特徴とする請求項6又は7に記載の多層回路基板。
【請求項9】
前記アンテナは、無給電素子を有することを特徴とする請求項6~8のいずれか1項に記載の多層回路基板。
【請求項10】
前記第1回路基板の前記アンテナが形成された面に誘電体層が積層されていることを特徴とする請求項6~9のいずれか1項に記載の多層回路基板。
【請求項11】
前記第1回路基板と前記第2回路基板との少なくとも一方に、高周波信号を処理する集積回路(IC)が搭載されていることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の多層回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
無線局の基地局や端末で用いられるアンテナモジュールでは、高周波(RF)集積回路(IC)で生成された高周波信号が給電回路を介してアンテナから放射される。信号線の引き回しを容易にし、かつ基板面積を抑制するため、一般に多層基板が用いられている。しかし、高周波数帯に対応する基板では、特殊で高価な誘電体材料が用いられている。また、特許文献1では、電源回路等には一般的な基板材料を用い、高周波回路の部分は高周波数帯に対応する基板材料を用いた複合基板が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-40797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、一般的な基板材料を用いたベース基板と高周波特性に優れる高周波基板との電気的接続に、スルーホールを用いている。このため、ベース基板と高周波基板と貫通した孔あけ工程が必要であり、生産性が低い。また、スルーホールを設けることにより高周波信号を冗長に引き回す必要があり、特性の劣化を引き起こすおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、高周波回路を含む基板の生産性を向上できる多層回路基板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、高周波基板を含む第1回路基板と、前記第1回路基板と接合される第2回路基板とが、それぞれの厚さ方向に重ね合わされて接合された多層回路基板であって、前記第1回路基板と前記第2回路基板との間には、前記第1回路基板と前記第2回路基板との間を電気的に接続する接続部と、前記接続部の周囲に配置された高周波材料層と、を有することを特徴とする多層回路基板を提供する。
【0007】
前記接続部が金属片を含んでもよい。
前記接続部は、銅、金、アルミニウム、タングステンの少なくとも1種の金属を含むピラー状であってもよい。
前記接続部が半田層又は導電ペースト層の少なくとも一方を含んでもよい。
前記高周波基板及び前記高周波材料層は、それぞれ、誘電損失が0.01未満の絶縁材料から構成されてもよい。
【0008】
前記第1回路基板には、高周波信号の送信又は受信又は送受信が可能なアンテナが形成されていてもよい。
少なくとも1つの前記アンテナに給電する給電線が、前記アンテナと同じ層に配置されていてもよい。
少なくとも1つの前記アンテナに給電する給電線が、前記アンテナと同じ層に配置されていなくてもよい。
前記アンテナは、無給電素子を有してもよい。
前記第1回路基板の前記アンテナが形成された面に誘電体層が積層されていてもよい。
前記第1回路基板と前記第2回路基板との少なくとも一方に、高周波信号を処理する集積回路(IC)が搭載されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高周波回路を含む基板の生産性を向上できる多層回路基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態の多層回路基板を例示する断面図である。
図2】各回路基板の間に高周波材料層を設ける様子を例示する断面図である。
図3】高周波材料層に金属片を配置する様子を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、好適な実施形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
【0012】
図1は、第1実施形態の多層回路基板30を示す。多層回路基板30は、第1回路基板10と第2回路基板20とを接合して構成されている。第1回路基板10は、複数の絶縁基板11a,11b,11c,11d,11e,11fを積層して構成されている。第2回路基板20は、複数の絶縁基板21a,21b,21c,21d,21e,21fを積層して構成されている。第1回路基板10及び第2回路基板20に含まれる絶縁基板の層数は特に限定されず、それぞれ1層又は2層以上とすることができる。それぞれの絶縁基板は、フィルム、シート、プリプレグ等から構成することができる。絶縁基板の片面又は両面には、特に図示しないが、導体層を設けることができる。また、絶縁基板の1層又は2層以上を貫通して、貫通導体を設けることができる。
【0013】
第1回路基板10は、高周波基板を含む。高周波基板は、高周波に対応した絶縁基板である。高周波基板を構成する高周波材料としては、例えば誘電損失が0.01未満の絶縁材料が挙げられる。本明細書で絶縁材料とは電気絶縁材料(誘電体、非導電体)を意味し、熱絶縁材料(断熱材)とする必要はない。また、誘電損失の測定条件は、例えばJIS C 6481(プリント配線板用銅張積層板試験方法)の誘電正接(tanδ)として規定されるように、1MHzの測定周波数に対して温度20±2℃、相対湿度60~70%が挙げられる。誘電損失0.005以下の高周波材料から構成される高周波基板がより好ましい。高周波基板を構成する高周波材料の具体例としては、液晶ポリマ(LCP)、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、フッ素樹脂、シクロオレフィン樹脂、マレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、変性ポリイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、石英、セラミック、サファイアからなる群から選択される1種以上等が挙げられる。第1回路基板10の層数は特に限定されないが、例えば1~6層が挙げられる。
【0014】
第1回路基板10は、各層の厚さが100μm以下のコア基板又はプリプレグから構成される多層基板であってもよく、損失を下げるなど必要に応じて厚さが100μmを超えるコア基板又はプリプレグを含んでもよい。第1実施形態では、第1回路基板10に含まれる絶縁基板11a,11b,11c,11d,11e,11fが全て高周波基板から構成されているが、それに限らない。第1回路基板10に含まれる絶縁基板が、全て高周波基板から構成されていなくてもよい。
【0015】
第1実施形態の第1回路基板10には、高周波素子の一例として、高周波信号の送信又は受信又は送受信が可能なアンテナ12が形成される。帯域を確保する、高周波信号の損失を抑制する等の目的で、例えばアンテナ12に接する層として、高周波材料からなる基板を接着材で貼り合わせるか、あるいはプリプレグからなるビルドアップ層を設けてもよい。その場合は、第1回路基板10のアンテナ12が形成された層以外の層の少なくとも一部が高周波材料から構成されていなくてもよい。アンテナ12は、基板に搭載又は内蔵が可能な構造であれば特に限定されないが、例えば平面アンテナが好ましく、パッチアンテナ、ストリップアンテナ、スロットアンテナ等が挙げられる。基板にポスト壁導波路(PWW)等の導波路構造を構成し、導波路のスロット、開口等によりアンテナを構成してもよい。アンテナ12はアンテナアレーを構成してもよい。
【0016】
図1に示す例では、第1回路基板10の厚さ方向のうち、第2回路基板20から最も離れた層の絶縁基板11aにアンテナ12が形成されている。アンテナ12が空中に信号を送信し、又は空中から信号を受信する場合、第1回路基板10の厚さ方向において、第2回路基板20とは反対側が空中の側となるように第1回路基板10を設置することができる。特に図示しないが、第1回路基板10の他の絶縁基板11b,11c,11d,11e,11fにアンテナ12を設けることも可能である。各絶縁基板11a,11b,11c,11d,11e,11fに設ける導体層又は貫通導体(図示略)の位置は、アンテナ12における空中信号の送信又は受信への影響を考慮して設計される。
【0017】
第2回路基板20は、少なくとも一部に高周波基板を含んでもよいが、第2回路基板20の絶縁材料は、高周波対応でない一般的な絶縁材料のみから構成されてもよい。第2回路基板20に含まれる絶縁基板は、高周波基板を構成する高周波材料よりも誘電損失が高い、一般的な絶縁材料から構成することができる。高周波対応でない絶縁材料としては、例えば誘電損失が0.01以上の絶縁材料が挙げられる。絶縁基板を構成する絶縁材料の具体例としては、ガラス布基材エポキシ樹脂(FR-4等)、ガラス布・ガラス不織布複合基材エポキシ樹脂、ガラス布・紙複合基材エポキシ樹脂、合成繊維布基材エポキシ樹脂、紙基材エポキシ樹脂、ガラス布基材ポリイミド樹脂、ガラス布基材ビスマレイミド/トリアジン/エポキシ樹脂、紙基材フェノール樹脂等の他、ポリイミドなどのフレキシブル基材が挙げられる。
【0018】
第2回路基板20としては、各層の厚さが100μm以下のコア基板又はプリプレグから構成される多層基板が好ましい。これにより、基板の厚さが薄く、加工が容易になる。第2回路基板20の層数は特に限定されないが、典型的には4~10層であり、10層を超えてもよい。
【0019】
アンテナ12の利得を高めるためには、第1回路基板10に形成するアンテナ12の個数を多くすることが好ましい。そのため、第1実施形態では、第1回路基板10に高周波信号を処理する集積回路22は搭載されず、第2回路基板20に高周波信号を処理する集積回路22が搭載される。集積回路22は、第2回路基板20の導体パターン24との間に、半田等の導体からなるバンプ23を介して第2回路基板20に接続される。集積回路22としては、例えばRFIC等の集積回路(IC)が挙げられる。高周波信号を扱うアンテナ基板では、RFICからの信号の損失を抑制するために、アンテナが形成された第1回路基板と、RFICが搭載された第2回路基板とを同一の多層回路基板に一体化した構成とすることが好ましい。これにより、信号線の引き回しが容易になり、かつ基板面積を抑制することができる。高周波用の基板材料は高価であるため、電源回路、低周波数のベースバンド信号を伝搬する回路等は第2回路基板に搭載され、第2回路基板を構成する各絶縁基板には、高周波対応でない、一般的な絶縁材料を用いることができる。例えば10GHz未満(数GHz程度)の信号であれば、同軸ケーブル等により伝搬させることも可能である。
【0020】
例えば集積回路22で高周波信号を生成する場合、多層回路基板30の内部で高周波信号を伝搬させてアンテナ12に供給し、アンテナ12から空中に放射させることができる。集積回路22とアンテナ12との間を接続する配線は、高周波信号の損失を低減するため、伝送距離を短くすることが好ましい。そのため、多層回路基板30は、第1回路基板10と第2回路基板20とを、それぞれの厚さ方向に重ね合わせて接合により複合化した構成である。多層回路基板30の全体の厚さは、例えば1~2mm、具体的には1.5mm程度が挙げられる。アンテナ12は、必要に応じて、無給電素子を有してもよい。例えばパッチアンテナにおいて、放射パッチの周囲に無給電パッチを設置することにより、特性を改善することができる。
【0021】
また集積回路22で高周波信号を生成する場合、少なくとも第2回路基板20の集積回路22が搭載された層を高周波基板とし、搭載された集積回路22の信号線や接地層に接続する配線を再配置してもよい。
【0022】
第1回路基板10は、厚さ方向に垂直な面の一方に第1接合面13を有する。また、第2回路基板20は、厚さ方向に垂直な面の少なくとも一方に第2接合面25を有する。多層回路基板30は、第1接合面13と第2接合面25とが対向するように、第1回路基板10と第2回路基板20とを接合した構成である。特に図示しないが、第2回路基板20は、厚さ方向に垂直な面の両方に第2接合面25を有して、それぞれの第2接合面25に対して、第1回路基板10が接合されてもよい。第2回路基板20の厚さ方向に垂直な面の両方に第1回路基板10を接合する場合、厚さ方向に対称性が高い構造となるため、基板の反りを抑制しやすくなる。
【0023】
第1実施形態では、第2回路基板20に集積回路22を搭載したが、それに限らない。第1回路基板10に集積回路22を搭載してもよい。また、第1回路基板10及び第2回路基板20のそれぞれに1以上の集積回路22を搭載してもよい。
【0024】
第1回路基板10と第2回路基板20との電気的接続を実現するため、多層回路基板30は、第1接合面13と第2接合面25との間に、接続部35を有する。接続部35は基板間接続部である。接続部35は、金属片31を含む。金属片31はピラー状である。
金属片31の材質としては、導電性等の観点から、銅、金、アルミニウム、タングステンの少なくとも1種の金属が挙げられる。金属片31は銅合金、金合金、アルミニウム合金、タングステン合金等の合金から構成されてもよい。
【0025】
接続部35は、金属片31の他に半田層又は導電ペースト層の少なくとも一方を含んでもよい。金属片31の第1接合面13に対向する面又は金属片31の第2接合面25に対向する面には、半田層や導電ペースト層からなる導電層14,26が形成されてもよい。金属片31が導電層14,26と接する面は曲面でもよく、平面でもよい。第1実施形態では導電層14,26が形成されているが、それに限らない。導電層14のみが形成されてもよいし、導電層26のみが形成されてもよい。導電層14,26の両方を形成する場合、両方が半田層でもよく、両方が導電ペースト層でもよく、一方が半田層で他方が導電ペースト層でもよい。
【0026】
半田層を構成する半田は、半田ボール、半田ペースト等、各種の半田から適宜選択することができる。多層回路基板30の製品では、接合後の半田層を構成する半田がリフローにより層状となっていてもよい。
導電ペースト層に用いられる導体は、金、銀、銅等の金属粒子や、カーボンブラックやグラファイト、カーボンナノチューブ等の導電性カーボン等が挙げられる。導電ペースト層は、銀ペースト、銅ペースト、導電性カーボンペースト等、各種の導電ペーストから構成することができる。導電ペースト層は、製造過程で流動性又は変形性を有するペースト状であればよく、多層回路基板30の製品では、接合後の導電ペースト層が焼成、硬化等により、流動性又は変形性を有しなくてもよい。
【0027】
金属片31がCuピラー等の場合、半田層や導電ペースト層は流動性や変形性を有するので、金属片31と第1接合面13又は第2接合面25との間を充填できる。半田層の流動性又は変形性は製造時のリフローにより実現されればよく、多層回路基板30の製品では、半田層が流動性又は変形性を有しなくてもよい。導電ペースト層の流動性又は変形性は製造時の未硬化状態で実現されればよく、多層回路基板30の製品では、導電ペースト層が流動性又は変形性を有しなくてもよい。基板面に沿った金属片31の寸法を径とするとき、金属片31の厚さが径より大きくてもよく、厚さが径より小さくてもよく、厚さと径とが同等でもよい。
【0028】
第1接合面13と第2接合面25との間で、接続部35が形成されない領域には、高周波材料からなる高周波材料層32が形成されている。高周波材料層32を構成する高周波材料としては、誘電損失が0.01未満の絶縁材料が挙げられる。誘電損失0.005以下の高周波材料から構成される高周波材料層32がより好ましい。高周波材料層32を構成する高周波材料の具体例としては、液晶ポリマ(LCP)、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、フッ素樹脂、シクロオレフィン樹脂、マレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、変性ポリイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、石英、セラミック、サファイアからなる群から選択される1種以上等が挙げられる。高周波材料層32を構成する材料は、第1回路基板10の高周波基板を構成する材料と同一でも異なってもよい。接続部35の周囲に高周波材料層32を配置することにより、接続部35における損失を抑制することができる。高周波材料層32は、接続部35との間に隙間34を設けた穴33を有してもよい。また、高周波材料層32が接続部35の少なくとも一部と接していてもよい。
【0029】
第1接合面13と第2接合面25との間の機械的接合は、接続部35又は高周波材料層32の少なくとも一方が関与していればよい。高周波材料層32により、接続部35を補強することもできる。高周波材料層32は、第1回路基板10及び第2回路基板20に対して接着力を有することが好ましい。高周波材料層32が接着性材料から構成される場合、接合工程における状態は特に限定されないが、シート状、ペースト状、ゲル状、液状等が挙げられる。多層回路基板30の製品では、接合後の接着性材料が硬化状態又は乾燥状態となってもよい。
【0030】
第1実施形態の多層回路基板30を製造する方法としては、アンテナ12が形成された第1回路基板10を作製する工程、集積回路22が搭載された第2回路基板20を作製する工程、図2に示すように、第1回路基板10と第2回路基板20との間に高周波材料層32を配置する工程、図3に示すように、高周波材料層32に穴33をあけて金属片31を配置する工程、図1に示すように、第1回路基板10と第2回路基板20とを接合すると共に、金属片31を含む接続部35を構成する工程を有する製造方法が挙げられる。第1回路基板10と第2回路基板20とを別々の回路基板として準備した後で、接続部35を介して第1回路基板10と第2回路基板20とを接合することにより、第1回路基板10と第2回路基板20との間で高周波信号のやりとりが可能になる。
【0031】
第1回路基板10と第2回路基板20との間を位置合わせ(アライメント)して金属片31により接続する接合工程に先立って、金属片31と対応する位置に、導電層14,26を設けることが好ましい。導電層14は、第1接合面13において金属片31と対応する位置に配置されている。導電層26は、第2接合面25において金属片31と対応する位置に配置されている。
【0032】
第1実施形態では、図2に示すように高周波材料層32に対して、図3に示す穴33を形成する際、高周波材料層32を第2回路基板20に接着し、第1回路基板10を第2回路基板20の近傍に配置しない状態で、フォトリソグラフィー、機械加工、レーザ加工等で、高周波材料層32の一部を除去してもよい。穴33が形成された高周波材料層32は、第2接合面25のうち、少なくとも、導電層26の近傍を覆っている。高周波材料層32の穴33に金属片31を配置するとき、高周波材料層32が金属片31の外周から離れていてもよく、穴33を充填するように金属片31が高周波材料層32に密着してもよい。穴33を金属片31より大きくすることにより、穴33と金属片31との間に隙間34が生じるため、金属片31の配置が容易になる。
【0033】
特に具体例を図示しないが、第1回路基板10と第2回路基板20との間に金属片31及び高周波材料層32を配置する順序は特に限定されない。金属片31及び高周波材料層32を第1回路基板10に配置した後で、接合工程を実施してもよい。金属片31及び高周波材料層32を第2回路基板20に配置した後で、接合工程を実施してもよい。金属片31を第1回路基板10に配置し、高周波材料層32を第2回路基板20に配置した後で、接合工程を実施してもよい。金属片31を第2回路基板20に配置し、高周波材料層32を第1回路基板10に配置した後で、接合工程を実施してもよい。金属片31と高周波材料層32を一体化した後で、接合工程を実施してもよい。
また、第1接合面13又は第2接合面25の一方に対して金属片31及び高周波材料層32を配置する順序も特に限定されない。金属片31を配置した後に高周波材料層32を配置してもよく、高周波材料層32を配置した後に金属片31を配置してもよく、金属片31及び高周波材料層32を同時に配置してもよい。
【0034】
特許文献1に記載されているように、多層回路基板の全層にわたってスルーホールを形成する場合、スルーホールの長さが長くなることから、製造が難しい。スルーホールの径を大きくすると製造が容易になるが、面積効率が悪くなる。
【0035】
第1実施形態の多層回路基板30によれば、金属片31を含む接続部35を介して高周波信号を伝送することができるので、第1回路基板10又は第2回路基板20に層間スルーホールを設ける場合においても、スルーホールの長さは最大でも第1回路基板10又は第2回路基板20の厚さで済む。そのため、生産性を向上できる。また、スルーホールの径を小さくすることができるので、基板の面積効率を改善することができる。
【0036】
アンテナ12に給電する給電線は、第2回路基板20の内部において、集積回路22を搭載する導体パターン24から接続部35までの間に適宜設けられる。さらに第1回路基板10の内部において、給電線は、接続部35とアンテナ12との間に適宜設けられる。接続部35において導電層14,26を省略する場合は、給電線が金属片31に直接接続されてもよい。給電線を構成する要素としては、図1~3では部分的に図示されているが、基板面に沿った沿面接続部10a,20aと、基板の厚さ方向に沿った層間接続部10b,20bとが挙げられる。
【0037】
給電線の形態は特に限定されないが、マイクロストリップライン、ストリップライン、スルーホール、ビア等から構成することができる。第1回路基板10の基板面に沿った方向において、接続部35の位置とアンテナ12の位置との間を連絡する沿面接続部は、アンテナ12と異なる層に設けられ、アンテナ12と異なる層からアンテナ12に向けて、第1回路基板10の厚さ方向に層間接続部を有することが好ましい。第1回路基板10の給電線が、アンテナ12の層と沿面接続部の層との間に層間接続部のみを有し、他の接続部を有していない。この場合、給電線からの不要な放射を抑制することができるので、多層回路基板の特性を向上することができる。
【0038】
一方、沿面接続部をアンテナ12と同じ層に沿って配置した場合、アンテナ12と異なる層からアンテナ12に向けて層間接続部を設ける必要がない。このため、第1回路基板10を構成する絶縁基板の層数を少なくすることができるので、第1回路基板10の製造上、有利である。アンテナ12に対して、給電線が沿面接続部を介して接続されるか、層間接続部を介して接続されるかは適宜選択することができる。給電線が沿面接続部を介して接続されるアンテナ12と、給電線が層間接続部を介して接続されるアンテナ12とが、第1回路基板10に併用されてもよい。
【0039】
なお、特に図示しないが、第1回路基板10のアンテナ12が形成された面に誘電体層が形成されていてもよい。誘電体層を形成する方法は特に限定されず、アンテナ12に誘電体層を貼付、塗布等する方法が挙げられる。誘電体層は、放射パッチや無給電パッチが接触する物質を空気(誘電率1.0)から誘電体とするものであり、このためアンテナ12における空中信号の送信又は受信への影響を避けるため、導体層、貫通導体等の導電体を有しない絶縁層である。また、誘電体層によりアンテナ12を保護することができる。アンテナ12が放射素子及び無給電素子を有するときは、放射素子及び無給電素子のいずれにも誘電体層を形成することができる。
【0040】
以上、本発明を好適な第1実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の第1実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。改変としては、第1実施形態に基づいて説明された各構成要素の追加、置換、省略、その他の変更が挙げられる。また、第1実施形態に基づいて説明された各構成要素を適宜組み合わせることも可能である。例えば、金属片31を省略して、導電層14,26の少なくとも一方のみにより、接続部35を構成してもよい。また、金属片31はピラー状に限らず、板状、箔状など、他の形状でもよい。
【0041】
高周波信号の周波数は特に限定されないが、例えば30~300GHz、60~80GHz等が挙げられる。高周波回路に適用可能な高周波素子としては、アンテナ、導波路、フィルタ、ダイプレクサ、方向性結合器、分配器、光電変換素子等が挙げられる。
【符号の説明】
【0042】
10…第1回路基板、10a…沿面接続部、10b…層間接続部、11a,11b,11c,11d,11e,11f…絶縁基板、12…アンテナ、13…第1接合面、14…導電層、20…第2回路基板、20a…沿面接続部、20b…層間接続部、21a,21b,21b,21c,21d,21e,21f…絶縁基板、22…集積回路、23…バンプ、24…導体パターン、25…第2接合面、26…導電層、30…多層回路基板、31…金属片、32…高周波材料層、33…穴、34…隙間、35…接続部。
図1
図2
図3