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特許7234040酸素濃度計測システムおよび酸素濃度計測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】酸素濃度計測システムおよび酸素濃度計測方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 17/00 20060101AFI20230228BHJP
【FI】
G21C17/00 040
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019101355
(22)【出願日】2019-05-30
(65)【公開番号】P2020193941
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 愛実
(72)【発明者】
【氏名】羽生 大仁
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 敏明
(72)【発明者】
【氏名】後藤 泰志
(72)【発明者】
【氏名】柳生 基茂
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 幸基
【審査官】牧 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-125138(JP,A)
【文献】特開平11-002620(JP,A)
【文献】特開2018-205040(JP,A)
【文献】特開昭59-136666(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0343459(US,A1)
【文献】特開2002-257776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 17/00 - 17/14
G21C 9/00 - 9/06
H02J 13/
G01N 27/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素イオン伝導性を有する隔膜と、前記隔膜をはさんで対向して前記隔膜に接触して配置された1対の電極とを備えて原子炉格納容器の内部に設置された酸素センサと、
前記原子炉格納容器の外部に設置された制御盤と、
前記酸素センサと前記制御盤とを接続する計測配線と、
前記原子炉格納容器の外部に設置された試験装置と、
を有する酸素濃度計測システムであって、
前記試験装置は、
前記1対の電極にインピーダンス計測用変動電圧を印加可能な変動電圧源と、
前記1対の電極に変動電圧を印加したときに前記酸素センサおよび前記計測配線のインピーダンスを計測するインピーダンス計測器と、
前記インピーダンス計測の結果を保存するインピーダンス計測結果保存部と、
前記インピーダンス計測結果保存部に保存された前記インピーダンス計測の結果と、新たに得られた前記インピーダンス計測の結果とを比較することにより、当該酸素濃度計測システムの健全性を判定するインピーダンス判定部と、
前記1対の電極にステップ状電圧を印加可能なステップ電圧源を有し前記1対の電極にステップ状電圧を印加したときに前記1対の電極に流れる電流を計測可能な直流電流計と、
前記直流電流計の計測結果を保存する電流値計測結果保存部と、
前記電流値計測結果保存部に保存された前記直流電流計の計測結果と、新たに得られた前記直流電流計の計測結果とを比較することにより、当該酸素濃度計測システムの健全性を判定する電流値判定部と、
を有すること、を特徴とする酸素濃度計測システム。
【請求項2】
前記変動電圧源は交流電圧源であって、
前記1対の電極に交流電圧を印加することにより、前記酸素センサ、前記制御盤および前記計測配線のインピーダンス計測を行うことができるように構成されていること、
を特徴とする請求項に記載の酸素濃度計測システム。
【請求項3】
前記変動電圧源はパルス電圧源であって、
前記試験装置は、前記試験装置が前記制御盤を介さずに前記計測配線に接続された配線状態において前記1対の電極にパルス状電圧を印加することにより、前記酸素センサおよび前記計測配線のインピーダンス計測を行うことができるように構成されていること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の酸素濃度計測システム。
【請求項4】
前記試験装置は、
前記パルス状電圧を印加することにより得られた前記インピーダンス計測の結果に基づいて、前記計測配線の長さ方向の位置とインピーダンスとの相関を作成して保存する相関関係作成保存部と、
前記パルス状電圧を新たに印加することにより得られた新たな前記インピーダンス計測の結果と、前記相関関係作成保存部に保存されていた前記計測配線の長さ方向の位置とインピーダンスとの相関とが所定の幅を超えて相違する部分の位置を故障位置として特定する故障位置特定部と、
をさらに有すること、を特徴とする請求項に記載の酸素濃度計測システム。
【請求項5】
酸素イオン伝導性を有する隔膜と前記隔膜をはさんで対向するように前記隔膜上に配置された1対の電極を備えて原子炉格納容器の内部に設置された酸素センサと、
前記原子炉格納容器の外部に設置された制御盤と、
前記酸素センサと前記制御盤とを接続する計測配線と、
前記原子炉格納容器の外部に設置されて変動電圧源およびインピーダンス計測器と、ステップ電圧源と、を備えた試験装置と、
を用いる酸素濃度計測方法であって、
前記変動電圧源により前記1対の電極に変動電圧を印加するとともに、前記インピーダンス計測器により、前記酸素センサおよび前記計測配線のインピーダンス計測を行うインピーダンス計測工程と、
前記インピーダンス計測の結果をインピーダンス計測結果保存部に保存するインピーダンス計測結果保存工程と、
前記インピーダンス計測結果保存工程の後に、前記1対の電極に変動電圧を印加することにより、前記酸素センサおよび前記計測配線のインピーダンス計測を行うインピーダンス再計測工程と、
前記インピーダンス計測結果保存部に保存された前記インピーダンス計測の結果と前記インピーダンス再計測工程の結果として得られた新たな前記インピーダンス計測の結果とを比較することにより、当該酸素濃度計測システムの健全性を判定するインピーダンス判定工程と、
前記ステップ電圧源により前記1対の電極にステップ状電圧を印加して、そのときの前記1対の電極に流れる出力電流値を取得する電流値計測工程と、
前記電流値計測の結果を電流値計測結果保存部に保存する電流値計測結果保存工程と、
前記電流値計測結果保存工程の後に、前記ステップ電圧源により前記1対の電極にステップ状電圧を印加して、そのときの前記1対の電極に流れる出力電流値を取得する電流値再計測工程と、
前記電流値計測結果保存部に保存された前記電流値計測の結果と、新たに得られた前記電流値再計測の結果とを比較することにより当該酸素濃度計測システムの健全性を判定する電流値判定工程と、
を有することを特徴とする酸素濃度計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、原子炉格納容器内の酸素濃度を計測する酸素濃度計測システムおよび酸素濃度計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に沸騰水型原子炉プラントは、原子炉格納容器内へ窒素を封入して、窒素雰囲気で原子炉格納容器内を不活性化している。この原子炉格納容器不活性状態を監視する目的で、原子炉格納容器内の酸素濃度を計測するためのシステムとしてサンプリング式の酸素濃度計測システムが設置されている。この酸素濃度計測システムは、一般に、原子炉格納容器内のガスを原子炉格納容器外へ吸引した後に原子炉格納容器内へ戻すプロセスの中で酸素濃度を計測する仕組みとなっている。つまり、原子炉格納容器外に引き出したサンプリングガスを原子炉格納容器外に設置した酸素濃度計で計測するシステムとなっている。この方式を取るために、サンプリングガスを冷却器で冷却することと除湿器で除湿することが必要となる。
【0003】
なお、このサンプリング式の原子炉格納容器内酸素濃度計測システムは、原子炉格納容器内が設計基準事故および過酷事故環境となった場合であっても酸素濃度の計測が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3699804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のサンプリング式の原子炉格納容器内酸素濃度計測システムは、原子炉格納容器内のガスを原子炉格納容器外へサンプリングするサンプリング装置と、サンプリングガスを冷却するための冷却器と、サンプリングガスを除湿するための除湿器とを具備する。このようなシステム構成をとるため、新規でシステムを構築するためには、原子炉格納容器外の広い機器設置スペースが必要となる。また、冷却器のための冷却水供給ラインの新規構築が必要となる等、施工上の制約が大きい。さらに、システム構成が複雑で、多くの動的機器を使用する必要があるため、いずれかの機器でトラブルが発生する確率が高くなる。そして、万一トラブルが発生すると、原子炉格納容器内酸素濃度の計測が困難になるというリスクがある。
【0006】
本発明の実施形態は、上述した課題を解決するためのものであり、原子炉格納容器外から原子炉格納容器内の酸素濃度を計測でき、酸素濃度計測システムの健全性を容易に確認できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、実施形態に係る酸素濃度計測システムは、酸素イオン伝導性を有する隔膜と、前記隔膜をはさんで対向して前記隔膜に接触して配置された1対の電極とを備えて原子炉格納容器の内部に設置された酸素センサと、前記原子炉格納容器の外部に設置された制御盤と、前記酸素センサと前記制御盤とを接続する計測配線と、前記原子炉格納容器の外部に設置された試験装置と、を有する酸素濃度計測システムであって、前記試験装置は、前記1対の電極にインピーダンス計測用変動電圧を印加可能な変動電圧源と、前記1対の電極に変動電圧を印加したときに前記酸素センサおよび前記計測配線のインピーダンスを計測するインピーダンス計測器と、前記インピーダンス計測の結果を保存するインピーダンス計測結果保存部と、前記インピーダンス計測結果保存部に保存された前記インピーダンス計測の結果と、新たに得られた前記インピーダンス計測の結果とを比較することにより、当該酸素濃度計測システムの健全性を判定するインピーダンス判定部と、前記1対の電極にステップ状電圧を印加可能なステップ電圧源を有し前記1対の電極にステップ状電圧を印加したときに前記1対の電極に流れる電流を計測可能な直流電流計と、前記直流電流計の計測結果を保存する電流値計測結果保存部と、前記電流値計測結果保存部に保存された前記直流電流計の計測結果と、新たに得られた前記直流電流計の計測結果とを比較することにより、当該酸素濃度計測システムの健全性を判定する電流値判定部と、を有すること、を特徴とする。
【0008】
また、実施形態に係る酸素濃度計測方法は、酸素イオン伝導性を有する隔膜と前記隔膜をはさんで対向するように前記隔膜上に配置された1対の電極を備えて原子炉格納容器の内部に設置された酸素センサと、前記原子炉格納容器の外部に設置された制御盤と、前記酸素センサと前記制御盤とを接続する計測配線と、前記原子炉格納容器の外部に設置されて変動電圧源およびインピーダンス計測器と、ステップ電圧源と、を備えた試験装置と、を用いる酸素濃度計測方法であって、前記変動電圧源により前記1対の電極に変動電圧を印加するとともに、前記インピーダンス計測器により、前記酸素センサおよび前記計測配線のインピーダンス計測を行うインピーダンス計測工程と、前記インピーダンス計測の結果をインピーダンス計測結果保存部に保存するインピーダンス計測結果保存工程と、前記インピーダンス計測結果保存工程の後に、前記1対の電極に変動電圧を印加することにより、前記酸素センサおよび前記計測配線のインピーダンス計測を行うインピーダンス再計測工程と、前記インピーダンス計測結果保存部に保存された前記インピーダンス計測の結果と前記インピーダンス再計測工程の結果として得られた新たな前記インピーダンス計測の結果とを比較することにより、当該酸素濃度計測システムの健全性を判定するインピーダンス判定工程と、前記ステップ電圧源により前記1対の電極にステップ状電圧を印加して、そのときの前記1対の電極に流れる出力電流値を取得する電流値計測工程と、前記電流値計測の結果を電流値計測結果保存部に保存する電流値計測結果保存工程と、前記電流値計測結果保存工程の後に、前記ステップ電圧源により前記1対の電極にステップ状電圧を印加して、そのときの前記1対の電極に流れる出力電流値を取得する電流値再計測工程と、前記電流値計測結果保存部に保存された前記電流値計測の結果と、新たに得られた前記電流値再計測の結果とを比較することにより当該酸素濃度計測システムの健全性を判定する電流値判定工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明の実施形態によれば、原子炉格納容器外から原子炉格納容器内の酸素濃度を計測でき、酸素濃度計測システムの健全性を容易に確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態に係る酸素濃度計測システムの接続状況(第1の配線状態)を示す模式図。
図2】第1の実施形態に係る酸素濃度計測システムにおける限界電流式酸素濃度計の構成を示す模式的回路図。
図3】第1の実施形態に係る酸素濃度計測システムにおける試験装置の構成を示すブロック図。
図4】第1の実施形態に係る酸素濃度計測システムにおける試験装置からステップ状電圧を印加する場合の印加電圧の時間変化を示すグラフ。
図5】第1の実施形態に係る酸素濃度計測システムで試験装置からステップ状電圧を印加した場合の酸素濃度計の出力電流値と電圧の関係を示すグラフ。
図6】第1の実施形態に係る酸素濃度計測システムにおける交流インピーダンス計測時の構成を示す模式的回路図。
図7】第1の実施形態に係る酸素濃度計測システムにおける交流インピーダンス計測時の印加電圧の時間変化を示すグラフ。
図8】第1の実施形態に係る酸素濃度計測システムにおける交流インピーダンス計測によって得られるインピーダンスとリアクタンスの関係を表すグラフ。
図9】第1の実施形態に係る酸素濃度計測システムにおける健全性試験の手順を示すフロー図。
図10】第1の実施形態に係る酸素濃度計測システムの健全性試験における電流値判定工程、インピーダンス判定工程および総合判定工程の具体的内容を示すフロー図。
図11】本発明の第2の実施形態に係る酸素濃度計測システムにおける試験装置の構成を示すブロック図。
図12】第2の実施形態に係る酸素濃度計測システムにおける健全性試験の手順を示すフロー図。
図13】第2の実施形態に係る酸素濃度計測システムの健全性試験におけるインピーダンス判定工程の具体的内容を示すフロー図。
図14】本発明の第3の実施形態に係る酸素濃度計測システムでパルス状電圧印加時の接続状況(第2の配線状態)を示す模式図。
図15】第3の実施形態に係る酸素濃度計測システムにおけるパルスインピーダンス計測時の印加電圧の時間変化を示すグラフ。
図16】第3の実施形態に係る酸素濃度計測システムにおけるパルスインピーダンス計測によって得られるインピーダンスの時間変化を示すグラフ。
図17】本発明の第4の実施形態に係る酸素濃度計測システムにおける試験装置の構成を示すブロック図。
図18】第4の実施形態に係る酸素濃度計測システムにおける故障個所を特定する手順を示すフロー図。
図19】本発明の第5の実施形態に係る酸素濃度計測システムにおける濃淡電池式酸素濃度計の構成を示す模式的回路図。
図20】第5の実施形態に係る酸素濃度計測システムにおける交流インピーダンス計測時の構成を示す模式的回路図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る酸素濃度計測システムの実施形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る酸素濃度計測システムの接続状況(第1の配線状態)を示す模式図である。図1に示すように、酸素濃度計測システム10は、原子炉格納容器100の内部に設置された酸素センサ12と、原子炉格納容器100の外部に設置された制御盤13と、原子炉格納容器100の外部に設置された試験装置14とを有する。酸素センサ12と制御盤13は計測配線11によって接続される。計測配線11は、貫通部101で原子炉格納容器100の壁を貫通して延びている。原子炉格納容器100の内部には、炉心(図示せず)を収容する原子炉圧力容器102が配置されている。
【0013】
図2は、第1の実施形態に係る酸素濃度計測システムにおける限界電流式酸素濃度計の構成を示す模式的回路図である。この限界電流式酸素濃度計は、一般的に知られている酸素ポンピングを利用した酸素計測装置である。酸素センサ12は、酸素イオン伝導性の固体電解質からなる隔膜15と、隔膜15をはさんで隔膜15に接して配置された正電極(電極)16および負電極(電極)17と、負電極17を覆うように配置された検査室カバー18とを有する。
【0014】
検査室カバー18は、隔膜15および負電極17とともにガス検査室20を形成する。正電極16は、ガス検査室20の外側にあって原子炉格納容器100内にある。検査室カバー18には、拡散孔21が形成されている。拡散孔21は、原子炉格納容器100の内部の測定対象ガスGが拡散によりガス検査室20内へ流入するようにするものであり、直径の小さな孔や多孔質材料が用いられる。
【0015】
制御盤13は、電圧調整可能な直流電源25と、電流計26と、電圧計27とを含む。直流電源25の正側は計測配線11によって正電極16に接続され、直流電源25の負側は計測配線11によって負電極17に接続されている。電圧計27は、正電極16と負電極17との間に印加される電圧を計測できるように接続されている。また、電流計26は、正電極16および負電極17を流れる電流、すなわち直流電源25から供給される電流を計測できるように接続されている。正電極16と負電極17との間に印加される電圧が所定の値に維持されるように、電圧計27の出力に基づいて、直流電源25の電圧を制御することができる。
【0016】
負電極17にガス検査室20内の酸素ガスが接触することで、酸素ガスが酸素イオンに変化し、その酸素イオンが隔膜15を図2に示す矢印aの方向に移動し、正電極16で酸素イオンから酸素ガスに再度変化する。このときの正電極16と負電極17との間の電圧を適切に設定し、隔膜15に十分な酸素イオンが流れるようにすることにより、対象ガスGの流れは、拡散孔21の拡散過程が律速となる。この際に生じる電気信号(電流)を電流計26によって測定することで、酸素濃度もしくは酸素分圧を測定することが可能である。
【0017】
図3は、第1の実施形態に係る酸素濃度計測システムにおける試験装置の構成を示すブロック図である。試験装置14は、ステップ電圧源31と、直流電流計32と、インピーダンスアナライザ50と、データ保存部37と、演算処理部38と、表示部39とを有する。インピーダンスアナライザ50は、変動電圧源33と、インピーダンス計測器34とを含む。
【0018】
ステップ電圧源31は、酸素センサ12の電極16,17に、ステップ状に変化する直流電圧を印加できるように接続される。また、直流電流計32は、電極16,17にステップ状電圧を印加したときに電極16,17に流れる電流を計測できるように接続される。
【0019】
なお、試験装置14の直流電流計32は、試験装置14に備えられていなくても、制御盤13の電流計26(図2)で代用することも可能である。
【0020】
変動電圧源33は、この実施形態では交流電圧源であって、酸素センサ12の電極16,17に、試験装置14から交流電圧を印加できるように接続される。また、インピーダンス計測器34は、試験装置14から電極16,17に交流電圧を印加したときのインピーダンス計測を行えるように接続される。
【0021】
データ保存部37は、電流値計測結果保存部42と、インピーダンス計測結果保存部43とを含む。データ保存部37は、たとえば電子計算機の記憶装置により実現できる。
【0022】
演算処理部38は、電流値判定部45と、インピーダンス判定部46と総合判定部47とを含む。演算処理部38は、たとえば電子計算機の演算処理装置により実現できる。
【0023】
つぎに、第1の実施形態に係る酸素濃度計測システム10の試験装置14を用いて酸素濃度計測システム10の健全性を試験する方法について説明する。
【0024】
図4は、第1の実施形態に係る酸素濃度計測システムにおける試験装置からステップ状電圧を印加する場合の印加電圧の時間変化を示すグラフである。また、図5は、図4に示すステップ状電圧を印加した場合の酸素濃度計の出力電流値と電圧の関係を示すグラフである。
【0025】
ステップ電圧源31により、ステップ状に変化する電圧を電極16、17に印加し、そのときの電極16、17に流れる電流値を直流電流計32により取得する(電流値計測工程)。この電流値計測結果は、電流値計測結果保存部42に保存される。
【0026】
つぎに、酸素濃度計測システム10を用いて交流インピーダンス計測を行う。図6は、第1の実施形態に係る酸素濃度計測システムにおける交流インピーダンス計測時の構成を示す模式的回路図である。図7は、交流インピーダンス計測時の印加電圧の時間変化を示すグラフである。図8は、交流インピーダンス計測によって得られるインピーダンスとリアクタンスの関係を表すグラフである。このインピーダンスおよびリアクタンスには、酸素センサ12、計測配線11および制御盤13の寄与分が含まれている。
【0027】
交流インピーダンス計測時には、変動電圧源(交流電圧源)33を用いて、電極16、17に交流電圧を印加する。このとき、インピーダンスアナライザ50により、図8に示すインピーダンスとリアクタンスの関係を得ることができる(インピーダンス計測工程)。こうして得られたインピーダンスとリアクタンスの関係は、インピーダンス計測結果保存部43に保存される。
【0028】
つぎに、以上述べた電流値計測と交流インピーダンス計測の結果に基づいて、酸素濃度計測システム10の健全性を判定する方法について説明する。
【0029】
図9は、第1の実施形態に係る酸素濃度計測システムにおける健全性試験の手順を示すフロー図である。
【0030】
初めに、酸素濃度計測システム10を新規に設置した時に、前述の電流値計測工程(初期電流値計測工程S11)およびインピーダンス計測工程(初期インピーダンス計測工程S21)を行う。そして、これらの計測結果を、それぞれ、電流値計測結果保存部42およびインピーダンス計測結果保存部43に保存する(初期電流値計測結果保存工程S12、初期インピーダンス計測結果保存工程S22)。
【0031】
つぎに、原子炉を所定時間運転した後に、電流値計測工程(電流値再計測工程S13)およびインピーダンス計測工程(インピーダンス再計測工程S23)を行う。これらの再計測工程は、原子炉運転中であってもよいし、原子炉定期点検中などの原子炉停止中であってもよい。
【0032】
つぎに、電流値判定部45は、電流値再計測工程S13の電流値再計測結果と、電流値計測結果保存部42に保存された初期データとを比較し、電流値計測が正常に行われているかを判定する(電流値判定工程S14)。同様に、インピーダンス判定部46は、インピーダンス再計測工程S23のインピーダンス再計測結果と、インピーダンス計測結果保存部43に保存された初期データとを比較し、インピーダンス計測が正常に行われているかを判定する(インピーダンス判定工程S24)。そして、最後に、総合判定部47は、電流値判定工程S14の結果とインピーダンス判定工程S24の結果とに基づいて、酸素濃度計測システム10が正常に動作しているかどうかの判定を行う(総合判定工程S30)。
【0033】
図10は、第1の実施形態に係る酸素濃度計測システムの健全性試験における電流値判定工程S14)、インピーダンス判定工程S24および総合判定工程S30の具体的内容を示すフロー図である。
【0034】
電流値判定工程S14では、電流値計測結果保存部42に保存された初期電流値計測結果と、電流値再計測工程S13での電流値再計測結果とを比較し、これらが所定の精度範囲内にあるか否かを判定する。同様に、インピーダンス判定工程S24では、インピーダンス計測結果保存部43に保存された初期インピーダンス計測結果と、インピーダンス再計測工程S23でのインピーダンス再計測結果とを比較し、これらが所定の精度範囲内にあるか否かを判定する。
【0035】
そして、総合判定工程S30では、電流値再計測結果およびインピーダンス再計測結果の両方がそれぞれの所定精度範囲内にあるかどうかが判定される。その両方がそれぞれの所定精度範囲内にある場合、すなわち総合判定工程S30でYESの場合にこの酸素濃度計測システムが健全であると判定される。電流値判定工程S14またはインピーダンス判定工程S24のいずれか一方でもNOの場合は、この酸素濃度計測システムが健全でないと判定され、何らかの補修が必要であることがわかる。
【0036】
上記各判定工程S14、S24、S30は演算処理部38によって自動的に実行され、その結果は表示部39に表示される。これにより、作業員は酸素濃度計測システムの健全性を確認し、必要な補修を行うことができる。
【0037】
以上説明した第1の実施形態に係る酸素濃度計測システムよれば、原子炉格納容器内の酸素濃度を、校正ガスを使用せずに測定することができる。しかも、その酸素濃度計測システムの健全性を、原子炉の運転中でも停止中でも容易に確認することができる。
【0038】
特に、インピーダンス計測およびそれに基づくインピーダンス判定を行うことにより、酸素センサ12および計測配線11を含めた各部での異常を検出することができる。
【0039】
[第2の実施形態]
図11は、本発明の第2の実施形態に係る酸素濃度計測システムにおける試験装置の構成を示すブロック図である。図12は、第2の実施形態に係る酸素濃度計測システムにおける健全性試験の手順を示すフロー図である。図13は、第2の実施形態に係る酸素濃度計測システムの健全性試験におけるインピーダンス判定工程の具体的内容を示すフロー図である。
【0040】
第2の実施形態は第1の実施形態の変形である。第2の実施形態における試験装置14では、インピーダンスアナライザ50およびそれに関連する部分のみで、酸素濃度計測システムの健全性を判定できる構成になっている。すなわち、図11に示すように、第1の実施形態における試験装置14(図3)のうちのステップ電圧源31、直流電流計32、電流値計測結果保存部42、電流値判定部45、総合判定部47が省略されている。
【0041】
図12に示すように、第2の実施形態における健全性試験では、酸素濃度計測システムの健全性試験がインピーダンス計測のみに基づいて行われ、第1の実施形態における電流値計測に係る工程S11~S14および総合判定工程S30(図9)が省略されている。インピーダンス判定部46は、インピーダンス再計測工程S23の結果と、インピーダンス計測結果保存部43に保存された初期データとを比較し、インピーダンス計測が正常に行われているかを判定する(インピーダンス判定工程S24)。
【0042】
より具体的には、図13に示すように、第2の実施形態における健全性試験では、インピーダンス判定工程S24で、インピーダンス計測結果保存部43に保存された初期インピーダンス計測結果と、インピーダンス再計測工程S23でのインピーダンス再計測結果とを比較し、これらが所定の精度範囲内にあるか否かを判定する。これにより、酸素濃度計測システムの健全性が確認できる。
【0043】
上記以外の部分は第1の実施形態と同様である。
【0044】
この第2の実施形態によれば、第1の実施形態に比べて、より簡便に酸素濃度計測システムの健全性を確認することができる。
【0045】
[第3の実施形態]
図14は、本発明の第3の実施形態に係る酸素濃度計測システムでパルス状電圧印加時の接続状況(第2の配線状態)を示す模式図である。この第3の実施形態は第1の実施形態の変形であって、試験装置14の構成は、第1の実施形態の場合(図3)と同様である。ただし、変動電圧源33は、第1の実施形態では交流電圧源であるとしたが、この第3の実施形態ではパルス電圧源とする。
【0046】
第1の実施形態では交流電圧源を用いたインピーダンス計測を行うが、この第3の実施形態では、パルス電圧源を用いたインピーダンス計測を行う。
【0047】
ステップ電圧源31を用いた電流値計測工程は、第1の実施形態と同様に、図1に示す第1の配線状態で行う。
【0048】
変動電圧源33としてパルス電圧源を用いるインピーダンス計測工程においては、試験装置14は、図14に示すように、制御盤13を介さずに計測配線11を介して酸素センサ12に接続される(第2の配線状態)。
【0049】
図15は、第3の実施形態に係る酸素濃度計測システムにおけるパルスインピーダンス計測時の印加電圧の時間変化を示すグラフである。図16は、第3の実施形態に係る酸素濃度計測システムにおけるパルスインピーダンス計測によって得られるインピーダンスの時間変化を示すグラフである。このインピーダンスには、酸素センサ12および計測配線11の寄与分が含まれている。
【0050】
上記以外の部分は第1の実施形態と同様である。
【0051】
第3の実施形態に係る酸素濃度計測システムよれば、第1の実施形態と同様に、原子炉格納容器内の酸素濃度を、校正ガスを使用せずに測定することができる。しかも、その酸素濃度計測システムの健全性を、原子炉の運転中でも停止中でも容易に確認することができる。また、特に、インピーダンス計測およびそれに基づくインピーダンス判定を行うことにより、酸素センサ12および計測配線11を含めた各部での異常を検出することができる。
【0052】
[第4の実施形態]
図17は、本発明の第4の実施形態に係る酸素濃度計測システムにおける試験装置の構成を示すブロック図である。この第4の実施形態は第3の実施形態の変形であって、第3の実施形態と同様に、変動電圧源としてパルス電圧源を用い、パルス電圧によるインピーダンス計測を行う。
【0053】
図17に示すように、第4の実施形態に係る酸素濃度計測システム10aにおける試験装置14aは、ステップ電圧源31と、直流電流計32と、インピーダンスアナライザ50aと、データ保存部37aと、演算処理部38aと、表示部39とを有する。インピーダンスアナライザ50aは、パルス電圧源(変動電圧源)55と、インピーダンス計測器34とを含む。
【0054】
データ保存部37aは、電流値計測結果保存部42と、インピーダンス計測結果保存部43と、相関関係保存部56と、を含む。データ保存部37aは、たとえば電子計算機の記憶装置により実現できる。
【0055】
演算処理部38aは、電流値判定部45と、インピーダンス判定部46と総合判定部47と、相関関係作成部57と、故障位置特定部58とを含む。演算処理部38aは、たとえば電子計算機の演算処理装置により実現できる。
【0056】
なお、相関関係保存部56と相関関係作成部57の機能を合わせて、「相関関係作成保存部」とも呼ぶ。
【0057】
この第4の実施形態で、酸素濃度計測システムの健全性を判定する手順は、第3の実施形態と同様である。この第4の実施形態ではさらに、酸素濃度計測システムにおける故障個所を特定することができる。
【0058】
図18は、第4の実施形態に係る酸素濃度計測システムにおける故障個所を特定する手順を示すフロー図である。
【0059】
相関関係作成部57は、酸素濃度計測システム10aの設置時の構成機器間の距離情報と、初期のインピーダンス計測結果とに基づいて、距離とインピーダンスの相関を作成する(ステップS40)。また、相関関係保存部56は、相関関係作成部57で生成された相関を保存する(ステップS41)。
【0060】
また、故障位置特定部58は、設置時から所定時間経過後のシステム試験時のインピーダンス再計測結果と、相関関係保存部56に保存されているインピーダンスの相関とに基づいて、その時のインピーダンス計測結果が所定の幅(精度)を超えている部分を抽出し、その部分の距離情報を算出する(ステップS42)。故障位置特定部58はさらに、ステップS42で得られた距離情報に基づいてシステム上の故障個所を特定する(ステップS43)。ここで特定された故障個所は表示部39に表示される。
【0061】
この第4の実施形態によれば、第3の実施形態と同様の効果を得られるほか、故障位置を特定して表示することもできる。
【0062】
[第5の実施形態]
図19は、本発明の第5の実施形態に係る酸素濃度計測システムにおける濃淡電池式酸素濃度計の構成を示す模式的回路図である。
【0063】
この第5の実施形態は、第1の実施形態の変形である。第1の実施形態では、酸素センサ12として限界電流式酸素濃度計を用いるものとしたが、この第5の実施形態では、酸素センサ12として濃淡式酸素濃度計を用いる。
【0064】
この酸素センサ12では、隔膜15の第1の面15aに接して第1の電極16が取り付けられ、隔膜15の第1の面15aの反対側の第2の面15bに接して第1の電極16に対向する位置に、第2の電極17が配置されている。
【0065】
隔膜15の第1の面15aおよび第1の電極16に接する部分には基準ガス室70が形成されている。基準ガス室70には酸素濃度が既知の基準ガスが常時供給され、その酸素濃度が一定に保たれている。隔膜15の第2の面15bおよび第2の電極17は、原子炉格納容器100内部のガスが直接接触するように配置されている。
【0066】
制御盤13には電圧計71が配置され、第1および第2の電極16、17と電圧計71は計測配線11によって接続されている。
【0067】
基準ガス室70内の酸素濃度と原子炉格納容器100内の酸素濃度との相違により隔膜15内を酸素イオンが透過し、それによって第1の電極16と第2の電極17との間に電位差が生じる。電圧計71によってこの電位差を測定することにより、原子炉格納容器100内の酸素濃度を測定することができる。
【0068】
図20は、第5の実施形態に係る酸素濃度計測システムにおける交流インピーダンス計測時の構成を示す模式的回路図である。交流インピーダンス計測の仕方は第1の実施形態と同様である。
【0069】
酸素センサ12として濃淡式酸素濃度計を用いた場合であっても、第1の実施形態の酸素濃度計測システムと同様に、試験装置14を用いて健全性の確認を行うことができる。
【0070】
[他の実施形態]
上記複数の実施形態の複数の特徴を適宜組み合わせることも可能である。
【0071】
たとえば、第5の実施形態は、第1の実施形態の酸素センサを濃淡電池式酸素濃度計に置き換える場合について説明したが、第2ないし第4の実施形態の酸素センサを濃淡電池式酸素濃度計に置き換えることもできる。
【0072】
また、上記説明ではインピーダンス測定を行う際の電圧源として交流電圧源またはパルス電圧源の一方を用いる場合について説明したが、両方の測定を組み合わせることによって測定精度を高めることも可能である。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態はその他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
10,10a…酸素濃度計測システム、 11…計測配線、 12…酸素センサ、 13…制御盤、 14,14a…試験装置、 15…隔膜、 16…正電極(電極)、 17…負電極(電極)、 18…検査室カバー、 20…ガス検査室、 21…拡散孔、 25…直流電源、 26…電流計、 27…電圧計、 31…ステップ電圧源、 32…直流電流計、 33…変動電圧源、 34…インピーダンス計測器、 37,37a…データ保存部、 38,38a…演算処理部、 39…表示部、 42…電流値計測結果保存部、 43…インピーダンス計測結果保存部、 45…電流値判定部、 46…インピーダンス判定部、 47…総合判定部、 50,50a…インピーダンスアナライザ、 55…パルス電圧源(変動電圧源)、 56…相関関係保存部、 57…相関関係作成部、 58…故障位置特定部、 70…基準ガス室、 71…電圧計、 100…原子炉格納容器、 101…貫通部、 102…原子炉圧力容器
図1
図2
図3
図4
図5
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