(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】車両制御システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/015 20060101AFI20230228BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20230228BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20230228BHJP
B60W 30/14 20060101ALI20230228BHJP
B60W 30/10 20060101ALI20230228BHJP
B60W 40/00 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
G08G1/015 A
G08G1/16 E
G08G1/00 X
B60W30/14
B60W30/10
B60W40/00
(21)【出願番号】P 2019113287
(22)【出願日】2019-06-19
【審査請求日】2022-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】江副 俊樹
【審査官】上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/043753(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/100743(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/142568(WO,A1)
【文献】特開2014-152016(JP,A)
【文献】特開2003-056224(JP,A)
【文献】特開2001-322719(JP,A)
【文献】特開2007-153488(JP,A)
【文献】特開2005-085041(JP,A)
【文献】特開2013-020556(JP,A)
【文献】特開2015-079369(JP,A)
【文献】特開平09-245287(JP,A)
【文献】特開2018-010574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60W 10/00-10/30
30/00-60/00
B60P 3/00-9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車の前方を撮像する撮像部と、
前記撮像部が撮像した画像の画像情報に基づいて前記自車の前方に位置するコンテナ車のコンテナ状態を判別するコンテナ車判別部と、を備え、
前記コンテナ車判別部は、
前記画像においてコンテナ車を示すコンテナ領域についてコンテナの扉を封印する封印具を探索し、前記封印具が取り付けられているコンテナ車のコンテナ状態を積載状態と判別し、前記封印具が取り付けられていないコンテナ車のコンテナ状態を空積状態と判別する
車両制御システム。
【請求項2】
前記自車の推定重量を演算するとともに、前記推定重量が判別重量以上である場合に前記自車のコンテナ状態を積載状態と判別し、前記推定重量が前記判別重量未満である場合に前記自車のコンテナ状態を空積状態と判別する自車判別部と、を備える
請求項1に記載の車両制御システム。
【請求項3】
前記自車の走行を自動的に制御する自動運転制御部を備え、
前記自動運転制御部は、
前記自車と同じコンテナ状態にあるコンテナ車が前記自車と同じ車線を走行している場合に該コンテナ車を追従車に設定する
請求項2に記載の車両制御システム。
【請求項4】
前記自車の走行を自動的に制御する自動運転制御部を備え、
前記自動運転制御部は、
前記自車と同じコンテナ状態にあるコンテナ車が前記自車とは異なる車線を走行している場合に該コンテナ車が走行している車線を車線変更の目標車線に設定する
請求項2または3に記載の車両制御システム。
【請求項5】
前記自車の目的地を取得し、前記取得した目的地がコンテナターミナルである場合に、前記コンテナ車判別部によるコンテナ状態の判別を開始する開始位置を前記目的地からの走行距離が設定距離となる位置に設定する開始位置設定部を備える
請求項1~4のいずれか一項に記載の車両制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナを運搬するコンテナ車に搭載される車両制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンテナ船に対する荷役が行われるコンテナターミナルには、コンテナ車に対するコンテナの荷役が行われるコンテナヤードが設けられている。コンテナヤードに搬入されるコンテナは、積み荷が積み込まれた積載状態、あるいは、積み荷が積み込まれていない空積状態にある。コンテナヤードにおいては、コンテナ状態に応じて荷役が行われる場所や入場手続などが異なる。そのため、例えば特許文献1には、コンテナヤード内外におけるコンテナ車の移動が円滑となるようにコンテナ状態に応じて入口ゲートを分けるシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンテナヤードの入口ゲートにおいては、入場待ちのコンテナ車によって待機車列が形成されることがある。上述したようにコンテナ状態に応じて入場手続が異なるため、コンテナ車の待機車列はコンテナ状態ごとに形成される。そのため、誤った待機車列に並んでしまうと入口ゲート付近での移動が必要となり、その移動によって入口ゲート付近が混乱してしまうおそれがある。そのため、自車の前方に位置するコンテナ車のコンテナ状態を判別する技術が求められている。
【0005】
本発明は、自車の前方に位置するコンテナ車のコンテナ状態を判別することのできる車両制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する車両制御システムは、自車の前方を撮像する撮像部と、前記撮像部が撮像した画像の画像情報に基づいて前記自車の前方に位置するコンテナ車のコンテナ状態を判別するコンテナ車判別部と、を備え、前記コンテナ車判別部は、前記画像においてコンテナ車を示すコンテナ領域についてコンテナの扉を封印する封印具を探索し、前記封印具が取り付けられているコンテナ車のコンテナ状態を積載状態と判別し、前記封印具が取り付けられていないコンテナ車のコンテナ状態を空積状態と判別する。
【0007】
コンテナ車においては積み荷が積み込まれたコンテナの扉が封印具によって封印される。上記構成によれば、自車の前方に位置するコンテナ車の各々について封印具を探索する。そのため、封印具の有無によってコンテナ車のコンテナ状態を判別することができる。これにより、コンテナ車のコンテナ状態に応じて自車の走行する車線を選択することが可能となる。
【0008】
上記構成の車両制御システムは、前記自車の推定重量を演算するとともに、前記推定重量が判別重量以上である場合に前記自車のコンテナ状態を積載状態と判別し、前記推定重量が前記判別重量未満である場合に前記自車のコンテナ状態を空積状態と判別する自車判別部と、を備えることが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、自車判別部によって自車のコンテナ状態が自動的に判別されるため、自車および自車の前方に位置するコンテナ車の双方のコンテナ状態を把握することができる。これにより、自車のコンテナ状態とコンテナ車のコンテナ状態とに基づく各種の制御を実行することが可能となる。
【0010】
上記構成の車両制御システムは、前記自車の走行を自動的に制御する自動運転制御部を備え、前記自動運転制御部は、前記自車と同じコンテナ状態にあるコンテナ車が前記自車と同じ車線を走行している場合に該コンテナ車を追従車に設定することが好ましい。上記構成によれば、自車と同じコンテナ状態のコンテナ車が追従対象に設定される。これにより、同じコンテナ状態にあるコンテナ車を追従することができる。
【0011】
上記構成の車両制御システムは、前記自車の走行を自動的に制御する自動運転制御部を備え、前記自動運転制御部は、前記自車と同じコンテナ状態にあるコンテナ車が前記自車とは異なる車線を走行している場合に該コンテナ車が走行している車線を車線変更の目標車線に設定することが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、コンテナ状態が同じコンテナ車が走行している車線が車線変更の目標車線に設定される。そのため、例えば、車線変更後、同じコンテナ状態にあるコンテナ車の後方に自車を配置することができる。
【0013】
上記構成の車両制御システムは、前記自車の目的地を取得し、前記取得した目的地がコンテナターミナルである場合に、前記コンテナ車判別部によるコンテナ状態の判別を開始する開始位置を前記目的地からの走行距離が設定距離となる位置に設定する開始位置設定部を備えることが好ましい。
【0014】
コンテナターミナルの近くをコンテナターミナルに向かって走行しているコンテナ車は、その目的地がコンテナターミナルである可能性が高い。上記構成によれば、自車の目的地であるコンテナターミナルの近くでコンテナ車判別部によるコンテナ状態の判別が行われる。これにより、例えば、コンテナ車のコンテナ状態に応じて自車の走行車線を選択することにより、コンテナ状態の判別結果を有効的に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】車両制御システムの一実施形態を搭載したコンテナ車の概略構成を示す図。
【
図2】車両制御システムの一実施形態を示す機能ブロック図。
【
図3】周辺検出センサーによって検出可能な周辺車の一例を模式的に示す図。
【
図4】コンテナ情報取得部の一例を示す機能ブロック図。
【
図5】コンテナ車判別処理の一例を示すフローチャート。
【
図6】(a)封印具の一例を模式的に示す図、(b)封印具の他の例を模式的に示す図。
【
図7】(a)自車と同じコンテナ状態のコンテナ車が自車と同じ車線を走行している場合の運転制御の一例を模式的に示す図、(b)自車と同じコンテナ状態のコンテナ車が自車と異なる車線を走行している場合の運転制御の一例を模式的に示す図、(c)自車と同じコンテナ状態のコンテナ車が自車と異なる複数の車線を走行している場合の運転制御の一例を模式的に示す図、(d)自車と同じコンテナ状態のコンテナ車によって待機車列が形成されていた場合の運転制御の一例を模式的に示す図。
【
図8】(a)自車と異なるコンテナ状態のコンテナ車が自車と異なる車線を走行している場合の運転制御の一例を模式的に示す図、(b)自車と異なるコンテナ状態のコンテナ車が自車と同じ車線を走行している場合の運転制御の一例を模式的に示す図、(c)自車と異なるコンテナ状態のコンテナ車がすべての車線を走行している場合の運転制御の一例を模式的に示す図、(d)自車と異なるコンテナ状態のコンテナ車がすべての車線を走行している場合の運転制御の他の例を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1~
図8を参照して、車両制御システムの一実施形態について説明する。
図1に示すように、コンテナ車10は、コンテナ11と、コンテナ11が積み込まれたトラクター12とで構成されている。コンテナ11は、略直方体形状をなしている。コンテナ11は、トラクター12の背面側が開放されたコンテナ本体13と、コンテナ本体13に対して上下方向を回転軸として回転可能に取り付けられて背面側の開放口を開閉する扉14と、を備えている。
【0017】
トラクター12は、トラクター12を統括的に制御する車両制御システム15を備えている。車両制御システム15は、車載ネットワーク16を介して各種の制御対象17と電気的に接続されている。車両制御システム15は、各種の制御対象17を制御することによりトラクター12を統括的に制御する。
【0018】
図2~
図8を参照して、車両制御システム15について説明する。
図2に示すように、車両制御システム15は、各種機能部として、通信部21、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信部22、周辺状況検出部23、走行状況検出部24、走行経路設定システム25、地図データベース26、および、車両制御装置30を備えている。
【0019】
通信部21は、例えば、自車と他車との間で車々間通信可能に構成されている。通信部21は、例えば自車のコンテナ状態や位置情報など、自車に関する各種情報を自車のIDを関連付けた車両情報として他車に送信する。また、通信部21は、他車が送信した車両情報を受信し、その受信した他車の車両情報を車両制御装置30に出力する。また、通信部21は、例えば、道路上に設置された情報発信装置との通信により交通状況を示す交通情報を取得し、その取得した交通情報を車両制御装置30に出力する。
【0020】
GNSS受信部22は、自車の現在位置を示す位置情報を受信する。GNSS受信部22は、図示しない3以上のGNSS衛星からのGNSS信号を受信し、その受信したGNSS信号に基づく自車の現在地(例えば緯度および経度)を示すGNSS情報を取得する。GNSS受信部22は、その取得したGNSS情報を車両制御装置30に出力する。
【0021】
周辺状況検出部23は、レーダー部や撮像部などで構成されており、自車の周辺状況を示す情報を検出する。
図3に示すように、レーダー部は、例えば、コンテナ車10である自車40と同じ車線41や車線41に隣接する車線42,43などを走行する周辺車45が検出されるように自車40の周辺が検出範囲に設定されている。レーダー部は、例えば、自車40の周辺に検出波としてミリ波を出射するミリ波レーダーや自車40の周辺に検出波として赤外線光を出射するレーザーレーダーによって構成される。レーダー部は、出射した検出波の反射波に基づいて、周辺に位置する障害物の自車40に対する距離および相対速度を示す障害物情報を取得する。
【0022】
撮像部は、周辺車45が撮像されるように自車40の周辺が撮像範囲に設定されている。撮像部は、自車40の周辺を撮像した画像の画像情報を取得する。画像情報には、自車40の前方に撮像範囲θが設定された前方撮像部である前方撮像カメラ46が撮像した情報であって、周辺車45のうちで自車40の前方に位置する前方車50が撮像される前方画像情報が含まれている。周辺状況検出部23は、自車40の周辺状況を示す情報として、これら障害物情報および画像情報を車両制御装置30に出力する。
【0023】
走行状況検出部24は、自車の走行状況に関する各種の情報を検出する。走行状況検出部24は、例えば、車速を検出する車速センサー、加減速度を検出する加減速度センサー、ステアリングの操舵角を検出する操舵角センサーなどを有している。また走行状況検出部24は、駆動軸回転数を検出する回転数センサー、アクセル開度を検出するアクセル開度センサーなどを含んでいる。走行状況検出部24は、各センサーの検出値を検出値情報として車両制御装置30に出力する。
【0024】
走行経路設定システム25は、目的地と目的地までの走行経路とを示す経路情報を車両制御装置30に出力する。走行経路設定システム25は、例えばナビゲーションシステムであり、搭乗者が操作可能な操作装置や地図データベース26の地図情報に基づく地図を表示する表示装置によって構成されている。走行経路設定システム25は、例えば、図示されない操作装置を通じて目的地が入力されると、GNSS受信部22が出力するGNSS情報と地図データベース26の地図情報とに基づいて現在地から目的地までの走行経路を設定する。例えば、走行経路設定システム25は、目的地としてコンテナターミナルが設定されると、そのコンテナターミナルまでの走行経路を設定する。コンテナターミナルまでの走行経路は、コンテナターミナルへ左折で入場するように設定される。
【0025】
地図データベース26は、交差点や分岐点などを示すノードやノード間を繋ぐ道路区間であるリンクなどによって構成された地図情報を有するデータベースであり、自車40に搭載された記憶装置に記憶されている。地図情報には、例えば、各ノードの位置や種別などを含むノード情報、および、各リンクの種別やリンク長に加えて車線数や曲率、勾配などを含むリンク情報が含まれている。また地図情報には、コンテナターミナルなどの各施設の位置や種別などを含む施設情報が含まれている。なお、走行経路設定システム25および地図データベース26は、自車と通信可能な施設などのコンピューターに記憶される構成であってもよい。この場合、経路情報は、通信部21が受信し、通信部21によって車両制御装置30に出力される。
【0026】
車両制御装置30は、1以上のECU(Electronic Control Unit)で構成されている。ECUは、上述した各種情報、および、メモリーに記憶したプログラムや各種データに基づいて各種処理を実行する。ECUは、ASIC等の1つ以上の専用のハードウェア回路、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ、或いは、それらの組み合わせ、を含む回路として構成し得る。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリーを含み、メモリーは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリーすなわちコンピューター可読媒体は、汎用または専用のコンピューターでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0027】
車両制御装置30は、プログラムの実行により機能する各種の機能部として、周辺情報取得部31、走行情報取得部32、位置情報取得部33、自動運転制御部34、および、コンテナ情報取得部35を備えている。
【0028】
周辺情報取得部31は、周辺状況検出部23が出力した障害物情報および画像情報に基づいて自車40の周辺情報を取得する。周辺情報取得部31は、画像情報に対して例えば画像セグメーションや特徴点の抽出などの画像処理を行うことにより画像情報内の物体を識別し、それら識別した物体と障害物情報内の障害物とを関連付けることにより周辺情報を取得する。
【0029】
例えば、周辺情報取得部31は、画像情報に対する画像処理により、各周辺車45の種別(例えば普通自動車やトラック、コンテナ車など)を識別するとともに、障害物情報に基づき各周辺車45の相対位置、相対速度などを周辺情報として取得する。周辺情報には、前方画像情報に対する画像処理によって得られる各前方車50の種別のほか、障害物情報に基づく各前方車50の相対位置、相対速度などを示す前方車情報が含まれている。
【0030】
また例えば、周辺情報取得部31は、画像情報に対する画像処理により自車40の周辺の道路標識や自車線位置などを識別し、走行中の道路44における最高速度や走行中の車線41の位置などを周辺情報として取得する。
【0031】
走行情報取得部32は、自車40の走行状況を示す走行情報を取得する。走行情報取得部32は、周辺状況検出部23が出力した画像情報に対する画像処理を通じ、走行中の車線41における自車40の横位置、および、当該車線41の延在方向に対する自車40の相対角度などを走行情報として取得する。また走行情報取得部32は、走行状況検出部24が出力した検出値情報に基づき、自車40の車速、加減速度、操舵角、駆動軸回転数、アクセル開度、および、要求トルクなどを走行情報として取得する。
【0032】
位置情報取得部33は、自車40の現在位置を示す位置情報を取得する。位置情報取得部33は、GNSS受信部22が出力したGNSS情報に基づいて自車40の現在位置を取得する。
【0033】
自動運転制御部34は、上述した周辺情報、走行情報、および、位置情報などに基づいて制御対象17を制御することで自動運転走行を実現する。例えば、自動運転制御部34は、走行経路設定システム25が出力した経路情報に基づき目的地までの自動運転走行を実現する。
【0034】
制御対象17は、例えば、駆動アクチュエーター、ブレーキアクチュエーター、操舵アクチュエーター、灯火システムに組み込まれたリレーなどで構成される。駆動アクチュエーターは、エンジンやモーターなど、自車の駆動システムに組み込まれており、該駆動システムの出力を制御する。ブレーキアクチュエーターは、自車のブレーキシステムに組み込まれており、ブレーキシステムによる制動力を制御する。操舵アクチュエーターは、自車のステアリングシステムに組み込まれており、ステアリングの操舵角を制御する。灯火システムは、制動灯や方向指示器などで構成されており、リレーは、方向指示器の点灯・非点灯を制御する。
【0035】
自動運転制御部34は、駆動アクチュエーターおよびブレーキアクチュエーターを制御することにより車速制御を行う。例えば、自動運転制御部34は、車速制御の一例として、自車40と同じ車線41を走行する前方車50を追従する追従制御を実行する。追従制御において自動運転制御部34は、前方車50との車間距離および相対速度に基づいて車間距離が車速に応じた適正距離となる加減速度を演算し、その演算した加減速度の制御指示値を駆動アクチュエーターおよびブレーキアクチュエーターに出力する。
【0036】
自動運転制御部34は、操舵アクチュエーターを制御することにより操舵角制御を行う。操舵角制御において、自動運転制御部34は、例えば、自車40の横位置が車線41の中央となるように操舵アクチュエーターを制御する。また、自動運転制御部34は、例えば、隣接する車線42,43に車線変更するように操舵アクチュエーターを制御する。
【0037】
自動運転制御部34は、リレーを制御することにより灯火制御を行う。灯火制御において、自動運転制御部34は、例えば、車線変更する際に方向指示器が点灯するようにリレーを制御し、車線変更が完了すると方向指示器が消灯するようにリレーを制御する。
【0038】
自動運転制御部34は、各種情報に基づいて車線変更が必要と判断すると、目標車線を設定するとともにその目標車線への車線変更するように制御対象17を選択的に制御する車線変更制御を実行する。
【0039】
車線変更制御において、自動運転制御部34は、目標車線を設定すると灯火制御を通じて方向指示器を点灯させて車線変更することを周辺車45などに周知する。自動運転制御部34は、周辺情報取得部31の取得した周辺情報、すなわち周辺車45の位置および相対速度に基づいて、走行中の車線41から当該車線41に隣接する車線42へ車線変更可能か否かを判断する。車線変更が可能であると判断すると、自動運転制御部34は、車速制御および操舵角制御を通じて車線41から車線42に車線変更するように車速や操舵角を制御する。車線変更が完了すると、自動運転制御部34は、方向指示器を消灯する。
【0040】
コンテナ情報取得部35は、経路情報に基づく目的地がコンテナターミナルである場合、コンテナ状態に応じた入口ゲートに自車40を案内するための情報であるコンテナ情報を取得する。コンテナ情報取得部35は、経路情報に基づき目的地がコンテナターミナルであると判断すると自車を案内するコンテナ情報の取得に関連する各種処理を開始する。
【0041】
図4に示すように、コンテナ情報取得部35は、コンテナ情報の取得に関連する各種プログラムの実行によって機能する機能部として、開始位置設定部36、自車判別部37、および、コンテナ車判別部38を有している。
【0042】
開始位置設定部36は、後述するコンテナ車判別部38によるコンテナ車判別処理を開始する位置を設定する。開始位置設定部36は、経路情報を取得し、その取得した経路情報に基づいて開始位置を設定する。開始位置設定部36は、自車40の目的地がコンテナターミナルである場合、走行経路におけるコンテナターミナルまでの走行距離が設定距離となる位置を開始位置に設定する。開始位置設定部36は、通信部21を通じてその時々の交通情報を取得し、その取得した交通情報に応じて開始位置を更新するとよい。開始位置設定部36は、例えば、最小値を数百メートルとして目的地のコンテナターミナル付近が混雑していないほど大きくなるように設定距離を更新するとよい。これは、混雑していないときほど車線変更に必要となる走行距離が長くなることに基づくものである。
【0043】
自車判別部37は、上述した開始位置に到着するまでの間に自車40のコンテナ状態を判別する自車判別処理を行う。自車判別処理において、自車判別部37は、走行情報取得部32が取得した走行情報に基づいて推定重量W1を演算する。自車判別部37は、例えば、車速、加減速度、駆動アクチュエーターの駆動量、ブレーキアクチュエーターの駆動量、および、要求トルクなど、これらのパラメーターの推移や関連性に基づいて推定重量W1を演算する。自車判別部37は、推定重量W1が判別重量W2以上である場合(W2≧W1)に自車40のコンテナ状態が積載状態にあると判別する。自車判別部37は、推定重量W1が判別重量W2未満である場合(W2<W1)に自車40のコンテナ状態が空積状態にあると判別する。
【0044】
コンテナ車判別部38は、自車40が開始位置に到着するとコンテナ車判別処理を開始する。コンテナ車判別処理にて、コンテナ車判別部38は、周辺情報に基づいて前方車50のなかからコンテナ車を抽出し、その抽出したコンテナ車のコンテナ状態を判別する。
【0045】
図5に示すように、コンテナ車判別処理において、コンテナ車判別部38は、対象領域特定部として、前方画像情報で示される画像においてコンテナ車を示す領域であるコンテナ領域を特定する(ステップS101)。
【0046】
次に、コンテナ車判別部38は、特徴点抽出部として、前方画像情報のコンテナ領域に対して所定の画像処理を施すことにより、当該コンテナ領域から複数の特徴点を抽出する(ステップS102)。そしてコンテナ車判別部38は、抽出した複数の特徴点に基づいてコンテナ領域から封印具を示すオブジェクトを抽出する(ステップS103)。封印具は、積み荷が積み込まれたコンテナ11の扉に取り付けられるものであり、扉を封印することによりコンテナ11の不正な開封を防止する。ステップS103の封印具の抽出において、コンテナ車判別部38は、例えば、ニューラルネットワーク(NN:Neural Network)部39を用いて封印具を抽出する。
【0047】
ニューラルネットワーク部39は、様々な形状の封印具の単体画像のほか、
図6(a)および
図6(b)に示すように実際に封印具Sが取り付けられたコンテナの扉14の画像を教師データとした学習を行うことで構築されたものである。コンテナ車判別部38は、抽出した複数の特徴点を数値化したベクトルをニューラルネットワーク部39に入力する。なお、
図6(a)および
図6(b)では、封印具Sにドットを付している。
【0048】
コンテナ車判別部38は、ステップS102の特徴点の抽出、および、ステップS103の封印具の抽出をステップS101で特定したすべてのコンテナ領域に対して各別に行う。コンテナ車判別部38は、コンテナ領域から封印具Sが抽出された前方車50はコンテナ状態が積載状態にあるコンテナ車であると判別し、コンテナ領域から封印具Sが抽出されなかった前方車50はコンテナ状態が空積状態にあると判別する。
【0049】
コンテナ車判別部38は、自車40の前方に位置するコンテナ車について、自車40に対する相対位置や相対速度のほか、走行している車線やコンテナ状態を関連付けたコンテナ情報を生成する。自動運転制御部34は、その生成されたコンテナ情報に基づき、自車40が走行する車線を選択し、必要であれば車線変更制御を実行する。なお、前方車50からコンテナ車が抽出できなかった場合、コンテナ車判別部38は、前方車にコンテナ車が含まれていないことを示す情報をコンテナ情報として生成する。自動運転制御部34は、自車判別処理に基づく自車40のコンテナ状態と上述したコンテナ情報とに基づいて運転制御を実行する。
【0050】
図7および
図8を参照して、前方車50にコンテナ車が含まれる場合の運転制御の一例について説明する。なお、自動運転制御部34は、自車40のコンテナ状態と同じコンテナ状態のコンテナ車が存在する場合の運転制御を優先的に実行する。
【0051】
<前方車にコンテナ状態が同じにあるコンテナ車が含まれる場合>
例えば、
図7(a)に示すように、自動運転制御部34は、コンテナ状態が同じにあるコンテナ車56が自車40と同じ車線51を走行している場合、そのコンテナ車56を追従車に設定した追従制御を実行する。なお、コンテナ車56と自車40との間に普通自動車が存在する場合、自動運転制御部34は、その普通自動車との車間距離を保持しつつ、コンテナ車56を追従する。
【0052】
例えば、
図7(b)に示すように、自動運転制御部34は、コンテナ状態が同じにあるコンテナ車56が自車40の走行している車線51とは異なる車線52を走行している場合、そのコンテナ車56が走行している車線52を目標車線に設定し、その目標車線に向けた車線変更制御を実行する。
【0053】
例えば、
図7(c)に示すように、自車40が走行している車線51とは異なる車線52,53の各々にコンテナ状態が同じにあるコンテナ車56,56が存在する場合、自動運転制御部34は、それらコンテナ車56,56が走行している車線52,53のうちで最も左側に位置する車線52を目標車線に設定する。
【0054】
例えば、
図7(d)に示すように、前方車50として、コンテナ状態が同じにあるコンテナ車56とコンテナ状態が異なるコンテナ車57とが待機車列を形成している場合、自動運転制御部34は、コンテナ車56の待機車列に並ぶように自車40を制御する。
【0055】
<前方車にコンテナ状態が同じのコンテナ車が含まれない場合>
例えば、
図8(a)に示すように、コンテナ状態が異なるコンテナ車57が自車40と同じ車線51を走行していない場合、自動運転制御部34は、そのままの車線51を維持しつつ経路情報および周辺情報に基づく通常の自動運転制御を継続して実行する。
【0056】
例えば、
図8(b)に示すように、自動運転制御部34は、コンテナ状態が異なるコンテナ車57が自車40と同じ車線51を走行している場合、車線51とは異なる車線52を目標車線に設定し、その目標車線に向けた車線変更制御を実行する。
【0057】
例えば、
図8(c)に示すように、コンテナ状態が異なるコンテナ車57がすべての車線51,52,53に存在する場合、自動運転制御部34は、そのままの車線51を維持しつつ経路情報および周辺情報に基づく通常の自動運転制御を継続して実行してもよい。
【0058】
例えば、
図8(d)に示すように、コンテナ状態が異なるコンテナ車57がすべての車線51,52,53に存在する場合、自動運転制御部34は、自車40が走行している車線52とは異なる車線51,53のうちで最も左側に位置する車線51を目標車線に設定した車線変更制御を実行してもよい。
【0059】
上述した構成の車両制御システム15の作用について説明する。
コンテナターミナル付近においては、コンテナターミナルへと向かうコンテナ車の通行量が多い。また、入口ゲートでの待機車列のことを考慮してコンテナ状態に応じて走行車線を選択するコンテナ車も多い。上述した車両制御システム15は、自車40の前方を撮像した前方撮像画像に基づいて、自車40の前方に位置する前方車50からコンテナ車を抽出し、その抽出したコンテナ車について封印具Sの有無によってコンテナ状態を判別する。そして、車両制御システム15は、前方車50のコンテナ状態に応じて自車40の自動運転を制御する。そのため、例えば、
図7(d)に示すように、コンテナターミナルの入口ゲートにコンテナ車の待機車列が形成されている場合には、自車40と同じコンテナ状態にあるコンテナ車56の待機車列へ向けて自車40を案内することが可能となる。
【0060】
本実施形態の効果について説明する。
(1)車両制御システム15は、自車40の前方を撮像する撮像部を有する周辺状況検出部23と、周辺状況検出部23が撮像した画像から自車の前方に位置するコンテナ車のコンテナ状態を判別するコンテナ車判別部38と、を備える。コンテナ車判別部38は、コンテナ車の各々についてコンテナ11の扉を封印する封印具Sを探索する。そのため、コンテナ車判別部38は、封印具Sが取り付けられているコンテナ車のコンテナ状態を積載状態と判別し、封印具Sが取り付けられていないコンテナ車のコンテナ状態を空積状態と判別する。こうした構成によれば、自車40の前方を走行するコンテナ車のコンテナ状態に応じて自車40の走行する車線を選択することが可能となる。
【0061】
(2)車両制御システム15は、自車40の推定重量W1を演算するとともに、推定重量W1に基づいて自車40のコンテナ状態を判別可能に構成された自車判別部37を有している。こうした構成によれば、自車のコンテナ状態を自動的に判別することができる。これにより、自車40の前方に位置するコンテナ車のコンテナ状態と自車40のコンテナ状態とに基づく各種の制御を実行することが可能となる。また、自車40のコンテナ状態を車両制御システム15に手動で入力する入力操作を省略することができる。
【0062】
(3)車両制御システム15は、運転を自動的に制御する自動運転制御部34を有している。自動運転制御部34は、コンテナ状態が同じコンテナ車56が自車40と同じ車線を走行している場合、そのコンテナ車56を追従車に設定した追従制御を実行可能に構成されている。こうした構成によれば、同じコンテナ状態にあるコンテナ車56を追従することで、該コンテナ車56によって目的地まで案内してもらうことも可能である。
【0063】
(4)自動運転制御部34は、コンテナ状態が同じコンテナ車56が自車40の走行している車線とは異なる車線を走行している場合、そのコンテナ車56が走行している車線を目標車線に設定可能に構成されている。この構成によれば、目標車線への車線変更後、同じコンテナ状態にあるコンテナ車56に目的地まで案内してもらうことが可能である。
【0064】
(5)コンテナ車は、コンテナターミナルの近くをコンテナターミナルへ向かって走行しているほど、その目的地がコンテナターミナルである可能性が高い。これに関連して、車両制御システム15は、コンテナ車判別処理の開始位置を設定する開始位置設定部36を有している。こうした構成によれば、コンテナターミナル付近でコンテナ車判別処理が実行されることから、コンテナターミナルまでの自車40の案内にコンテナ車判別処理の判別結果を有効的に利用することができる。これにより、例えば、自車40の前方に位置するコンテナ車のコンテナ状態に応じた車線変更をコンテナターミナル付近で行うことができる。また、コンテナ車判別処理にともなう車両制御装置30への演算負荷を軽減することができる。
【0065】
(6)開始位置設定部36は、コンテナターミナル付近の交通状況に応じて開始位置を更新可能に構成されている。具体的には、開始位置設定部36は、コンテナターミナル付近が混雑していないほど大きな値を設定距離に設定する。こうした構成によれば、車線変更に必要となる走行距離をより確実に確保することができる。
【0066】
(7)コンテナ車判別部38は、封印具Sそのものの画像や実際に封印具Sが取り付けられたコンテナ11の扉14の画像を教師データとした学習を行うことにより構築されたニューラルネットワーク部39を用いて封印具Sの有無を判別している。こうした構成によれば、封印具Sの有無について高い精度のもとで判別することができる。
【0067】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・車両制御システム15において、開始位置設定部36は、設定距離を一定値として開始位置を設定してもよい。
【0068】
・車両制御システム15は、コンテナ車判別処理を常時行っていてもよい。
・車両制御システム15は、自動運転制御部34に代えて、ドライバーの運転を支援する運転支援制御部を有していてもよい。運転支援制御部は、例えば、自車40と同じコンテナ状態のコンテナ車の存在を通知装置を通じてドライバーに通知する。通知装置は、例えば、音声案内や画像案内などによってドライバーに通知する。また、車両制御システム15は、自動運転制御部34と運転支援制御部とを有し、ドライバーによる手動運転と車両制御装置30による自動運転とを選択可能に構成されていてもよい。
【0069】
・自動運転制御部34は、自車40と同じコンテナ状態のコンテナ車56が存在しない場合、経路情報、周辺情報、および、走行情報に基づく現在の自動運転制御を継続して実行してもよい。
【0070】
・自動運転制御部34は、追従車の設定や目標車線の設定に関連して、その判断対象となるコンテナ車が設定条件を満たしたときに各種の設定を行ってもよい。設定条件は、その判断対象となるコンテナ車が車線変更をすることなく同じ車線を走行し続ける可能性が高いと判断される条件である。設定条件としては、例えば、車線変更なしでの走行時間が条件成立時間に到達したことや車線変更なしでの走行距離が条件成立距離に到達したことなどが挙げられる。
【0071】
例えば、自動運転制御部34は、自車40と同じコンテナ状態にあるコンテナ車が自車40とは異なる車線を走行している場合、該コンテナ車が設定条件を満たしたときに該車線を目標車線に設定する。
【0072】
・車両制御システム15は、自車40のコンテナ状態を判別する自車判別部37を有していなくともよい。こうした構成においては、自車40のコンテナ状態が入力装置などを通じて車両制御システム15に入力される。
【0073】
・コンテナ車判別処理の封印具の抽出(ステップS103)において、コンテナ車判別部38は、例えばマッチング処理などの画像処理を用いて封印具Sを抽出してもよい。この場合、コンテナ車判別部38は、様々な形状・大きさの封印具のテンプレート画像を保持している。
【符号の説明】
【0074】
S…封印具、10…コンテナ車、11…コンテナ、12…トラクター、13…コンテナ本体、14…扉、15…車両制御システム、16…車載ネットワーク、17…制御対象、21…通信部、22…GNSS受信部、23…周辺状況検出部、24…走行状況検出部、25…走行経路設定システム、26…地図データベース、30…車両制御装置、31…周辺情報取得部、32…走行情報取得部、33…位置情報取得部、34…自動運転制御部、35…コンテナ情報取得部、36…開始位置設定部、37…自車判別部、38…コンテナ車判別部、39…ニューラルネットワーク部、40…自車、41,42,43…車線、44…道路、45…周辺車、46…前方撮像カメラ、50…前方車、51,52,53…車線、56,57…コンテナ車。