IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立GEニュークリア・エナジー株式会社の特許一覧

特許7234060ロボットハンド及びロボットハンドシステム
<>
  • 特許-ロボットハンド及びロボットハンドシステム 図1
  • 特許-ロボットハンド及びロボットハンドシステム 図2
  • 特許-ロボットハンド及びロボットハンドシステム 図3
  • 特許-ロボットハンド及びロボットハンドシステム 図4
  • 特許-ロボットハンド及びロボットハンドシステム 図5
  • 特許-ロボットハンド及びロボットハンドシステム 図6
  • 特許-ロボットハンド及びロボットハンドシステム 図7
  • 特許-ロボットハンド及びロボットハンドシステム 図8
  • 特許-ロボットハンド及びロボットハンドシステム 図9
  • 特許-ロボットハンド及びロボットハンドシステム 図10
  • 特許-ロボットハンド及びロボットハンドシステム 図11
  • 特許-ロボットハンド及びロボットハンドシステム 図12
  • 特許-ロボットハンド及びロボットハンドシステム 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】ロボットハンド及びロボットハンドシステム
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20230228BHJP
【FI】
B25J15/08 H
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019129049
(22)【出願日】2019-07-11
(65)【公開番号】P2021013975
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2021-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】池田 裕
(72)【発明者】
【氏名】尾坂 忠史
(72)【発明者】
【氏名】中村 哲司
【審査官】國武 史帆
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-144985(JP,A)
【文献】特表2018-507116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピンチ動作及びグリップ動作により作業対象物を把持するロボットハンドであって、
前記グリップ動作の際に、前記作業対象物を把持する第1の軸を中心に動く第1の指部と、前記第1の指部と第2の軸で連結され、前記ピンチ動作及び前記グリップ動作の際に、前記作業対象物を把持する前記第2の軸を中心に動く第2の指部と、前記第2の指部と第3の軸で連結され、前記第3の軸を中心に動く第2の倣い部材と、前記第2の倣い部材と第4の軸で、かつ、前記第1の指部と第1の軸で、連結され、前記第1の軸を中心に動く第1の倣い部材と、前記ピンチ動作又は前記グリップ動作に応じて前記第1の指部と連結又は連結解除する嵌合部材と、を有することを特徴とするロボットハンド。
【請求項2】
前記嵌合部材に駆動力を伝達するアクチュエータを有することを特徴とする請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記嵌合部材は、前記グリップ動作の場合、前記第1の指部と連結解除すると共に、前記第1の倣い部材と連結することを特徴とする請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項4】
前記第1の指部に作用する外力により、前記嵌合部材が前記第1の指部に連結するか、又は、前記嵌合部材が前記第1の倣い部材に連結するか、を切り替えることを特徴とする請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項5】
前記第1の指部に作用する外力が所定値以下の場合には、前記アクチュエータの駆動力が前記第1の指部に作用し、前記第1の指部に作用する外力が所定値より大きい場合には、前記アクチュエータの駆動力が前記第1の倣い部材に作用することを特徴とする請求項2に記載のロボットハンド。
【請求項6】
前記第1の軸の中心線上に、前記第1の指部と、前記嵌合部材と、前記第1の倣い部材とが設置され、前記嵌合部材は、前記第1の指部と前記第1の倣い部材とに挟まれるように設置されることを特徴とする請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項7】
前記嵌合部材を前記第1の指部に押し付けるリトラクトばねが設置されることを特徴とする請求項6に記載のロボットハンド。
【請求項8】
前記嵌合部材と前記第1の指部との接触面には、複数の半球上の凹み部が、前記嵌合部材と前記第1の指部とに形成され、前記凹み部には、球状のプランジャボールが設置されることを特徴とする請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項9】
前記嵌合部材と前記第1の倣い部材とが向かい合う面には、凹凸の櫛歯が、前記嵌合部材と前記第1の倣い部材とに形成されることを特徴とする請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項10】
請求項1に記載のロボットハンドと、前記ロボットハンドを設置するアーム部と、前記ロボットハンドと前記アーム部を制御する作業対象物把持制御部と、前記作業対象物と前記ロボットハンドと前記アーム部とを撮像する撮像装置とを有することを特徴とするロボットハンドシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な大きさの物品(作業対象物)を把持するロボットハンド及びこのロボットハンドを使用するロボットハンドシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
少子高齢化に伴い、生産年齢人口が減少している。この生産年齢人口の減少は、製造業の現場において、人手不足、過重労働、労働環境の悪化、生産性の低下などを引き起こす要因となっている。更に、生産年齢人口の減少は、医療、福祉、生活支援、防災、保守点検などのサービス分野においても、人手不足、過重労働、労働環境の悪化、サービス品質の低下などを引き起こす要因となっている。
【0003】
このような社会課題を解決する手段の1つとして、ロボットの活用が期待されている。ロボットは、センサ技術、アクチュエータ技術、制御技術の3つの要素技術を有する機械システムである。ロボットが、このような社会課題を解決するためには、人が実行する複雑、緻密、かつ、柔軟性を必要とする作業を代替することができることが必須である。
【0004】
特に、作業対象物を把持するロボットハンドは重要であり、様々の大きさの作業対象物を把持する必要がある。
【0005】
小さい作業対象物を把持する場合は、小さな作業対象物を、落下させることなく、安定して確実に把持することができるように、ロボットハンドの指先でつまむ動作(ピンチ動作)が必要であり、一方、大きい作業対象物を把持する場合は、大きな作業対象物を、落下させることなく、安定して確実に把持することができるように、ロボットハンドの全体でにぎる動作(グリップ動作)が必要である。
【0006】
こうした本技術分野の背景技術として、特表2018-507116号公報(特許文献1)がある。この特許文献1には、指先リンクと、少なくとも1つの基部リンクと、第1の組の接合部による基部リンクを第2の組の接合部による指先リンクと接合する前方及び後方リンクとを含む複数バーフィンガリンク機構を備える柔軟適応ロボットグラスパが記載されている。そして、特許文献1には、基部リンクは、取付構造を含み、回転作動のために取付ブロック上に取り付けられることが記載され、接合部間の直線接続は、略平行四辺形の形態の形状を形成し、前方及び後方リンクにわたる直線接続を可能にし、複数バーフィンガリンク機構が外部物体に接触するまで、かつ接触しない限り、前方及び後方リンクが、指先リンクの向きを実質的に変えることなく、基部リンクのまわりを枢動し、互いに略平行を維持することが記載されている(要約参照)。
【0007】
また、こうした本技術分野の背景技術として、特開2013-169633号公報(特許文献2)がある。この特許文献2には、掌部と、掌部に接続された2本の指部とを備え、各指部は、回転軸を介して一端が掌部に回転可能に設けられる基部と、基部の他端側に回転軸を介して一端が回転可能に設けられる指先部と、回転軸を回転制御する超音波モータとを備え、指先部は、回転軸を挟んで互いに異なる方向に延びる第1突出部及び第2突出部を有するロボットハンドが記載されている。そして、特許文献2には、第1突出部は第1把持面を備え、第2突出部は第2把持面を備え、第1把持面及び第2把持面は、それぞれ、指先部の回転軸を挟んだ異なる側の面に設けられることが記載されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特表2018-507116号公報
【文献】特開2013-169633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載される柔軟適応ロボットグラスパや特許文献2に記載されるロボットハンドには、作業対象物を把持する指先リンクや指部を有する。
【0010】
しかし、特許文献1に記載される柔軟適応ロボットグラスパや特許文献2に記載されるロボットハンドは、作業対象物を把持する際、作業対象物の大きさが変化する場合であっても、指先リンクの先端部や指部の指先部は、同じ動作を実行するものであり、様々の大きさの作業対象物を把持することができない恐れがある。
【0011】
そこで、本発明は、様々の大きさの作業対象物を確実に把持することができるロボットハンド及びロボットハンドシステムを提供する。例えば、本発明は、ピンチ動作及びグリップ動作においても、確実に作業対象物を把持することができるロボットハンド及びロボットハンドシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明のロボットハンドは、ピンチ動作及びグリップ動作により作業対象物を把持するものであって、グリップ動作の際に、作業対象物を把持する第1の軸を中心に動く第1の指部と、第1の指部と第2の軸で連結され、ピンチ動作及びグリップ動作の際に、作業対象物を把持する第2の軸を中心に動く第2の指部と、第2の指部と第3の軸で連結され、第3の軸を中心に動く第2の倣い部材と、第2の倣い部材と第4の軸で、かつ、第1の指部と第1の軸で、連結され、第1の軸を中心に動く第1の倣い部材と、ピンチ動作又はグリップ動作に応じて第1の指部と連結又は連結解除する嵌合部材と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、様々の大きさの作業対象物を確実に把持することができるロボットハンド及びロボットハンドシステムを提供することができる。例えば、本発明によれば、ピンチ動作及びグリップ動作においても、確実に作業対象物を把持することができるロボットハンド及びロボットハンドシステムを提供することができる。
【0014】
なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、下記する実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施例に記載するロボットハンドの概略構成を説明する正面図である。
図2】本実施例に記載するロボットハンドの片側の指を説明する斜視図である。
図3】本実施例に記載するロボットハンドの片側の指を説明する側面図である
図4】本実施例に記載するロボットハンドの嵌合部材5の近傍(連結している状態)を説明する断面図である。
図5】本実施例に記載するロボットハンドの嵌合部材5の近傍(解放している状態)を説明する断面図である。
図6】本実施例に記載するロボットハンドの第1の指部1と嵌合部材5とが連結している状態(ピンチ時)を説明する斜視図である。
図7】本実施例に記載するロボットハンドの第1の指部1と嵌合部材5とが連結している状態(ピンチ時)のリンクを説明する模式図である。
図8】本実施例に記載するロボットハンドの第1の指部1と嵌合部材5とが解放している状態(グリップ時)を説明する斜視図である。
図9】本実施例に記載するロボットハンドの第1の指部1と嵌合部材5とが解放している状態(グリップ時)のリンクを説明する模式図である。
図10】本実施例に記載するロボットハンドによる小さな作業対象物の把持(ピンチ動作)を説明する斜視図である。
図11】本実施例に記載するロボットハンドによる大きな作業対象物の把持(グリップ動作)を説明する斜視図である。
図12】本実施例に記載するロボットハンドを使用するロボットハンドシステムを説明する説明図である。
図13】本実施例に記載するロボットハンドを使用するロボットハンドシステムにより、作業対象物を把持する動作を説明するフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例を、図面を使用して、説明する。なお、実質的に同一又は類似の構成には、同一の符号を付し、説明が重複する場合には、その説明を省略する場合がある。
【実施例
【0017】
まず、本実施例に記載するロボットハンドの概略構成を説明する。
【0018】
図1は、本実施例に記載するロボットハンドの概略構成を説明する正面図である。
【0019】
本実施例に記載するロボットハンド100は、作業対象物を把持する第1の指部1と、作業対象物を把持する第2の指部3と、第1の倣い部材7と、第1の倣い部材7と第2の指部3とに連結する第2の倣い部材8と、第1の指部1と第1の倣い部材7との連結(ピンチ状態)と解放(グリップ状態)とを切り替える嵌合部材5と、を有する。
【0020】
第1の指部1の一端は、第1の軸2と回転可能に連結し、第1の指部1の他端は、第2の軸4と回転可能に連結する。
【0021】
第2の指部3は、屈曲部にて長部(3a)と短部(3b)と有するように屈曲し、短部の一端及び屈曲部に、それぞれ軸穴(2つの軸穴)を有し、短部の一端の軸穴は、第3の軸6と回転可能に連結し、屈曲部の軸穴は、第2の軸4と回転可能に連結する。また、長部には、作業対象物が接触する作業対象物接触部17が設置される。
【0022】
第1の倣い部材7の一端は、第1の軸2と回転可能に連結し、第1の倣い部材7の他端は、第4の軸9と回転可能に連結する。
【0023】
第2の倣い部材8の一端は、第4の軸9と回転可能に連結し、第2の倣い部材8の他端は、第3の軸6と回転可能に連結する。
【0024】
このように、第2の軸4では、第2の指部3と第1の指部1とが連結し、第3の軸6では、第2の指部3と第2の倣い部材8とが連結し、第4の軸9では、第2の倣い部材8と第1の倣い部材7とが連結する。
【0025】
そして、第1の軸2では、第1の指部1と第1の倣い部材7と嵌合部材5とが同軸に連結する。
【0026】
更に、本実施例に記載するロボットハンド100は、第1の指部1と第1の倣い部材7と嵌合部材5とに連結する第1のフレーム12と、ロボットハンド100の駆動源であるアクチュエータ15と、アクチュエータ15の駆動力を伝達するリンク18と、を有する。つまり、アクチュエータ15の駆動力は、リンク18及び第5の軸19を介して、嵌合部材5に伝達される。
【0027】
第1のフレーム12は、第1の指部1と第1の倣い部材7と嵌合部材5と、第1の軸2にて、回転可能に連結する。
【0028】
アクチュエータ15の両端部は、リンク18と、第6の軸20にて、回転可能に連結する。なお、アクチュエータ15は、伸縮(伸長又は収縮)することにより、駆動力を発生する。
【0029】
リンク18の一端は、第6の軸20と回転可能に連結し、リンク18の他端は、第5の軸19と回転可能に連結する。そして、リンク18は、嵌合部材5と、第5の軸19にて、回転可能に連結する。
【0030】
本実施例では、アクチュエータ15は、1個の伸縮するアクチュエータであり、その両端部は、リンク18を介して、嵌合部材5に連結する。アクチュエータ15の両端部は、それぞれ両側の指部の嵌合部材5に、リンク18を介して、連結し、アクチュエータ15の伸長時には、ロボットハンド100の指が閉じるように設定され、アクチュエータ15の収縮時には、ロボットハンド100の指が開くように設定される。
【0031】
なお、アクチュエータ15は、空気圧を使用するシリンダであってもよいし、流体(例えば、水や油など)圧を使用するシリンダであってもよい。
【0032】
また、第2の指部3の長部には、作業対象物を確実に把持するために、作業対象物接触部17を有する。作業対象物接触部17は、作業対象物との接触面が凹凸になっているもの、作業対象物との接触面が柔軟材からなるもの、及び/又は、作業対象物との接触面が高摩擦係数材からなるものであることが好ましく、作業対象物の種類により、交換(着脱)することができる。また、材質も、樹脂製や金属製など、作業対象物に応じて、適宜、使用することができる。
【0033】
本実施例に記載するロボットハンド100は、第1に軸2にて、第1の指部1と第1の倣い部材7とに連結する嵌合部材5を有することにより、連結(ピンチ状態)と解放(グリップ状態)とを切り替えることができ、様々の大きさの作業対象物を確実に把持することができる。
【0034】
次に、本実施例に記載するロボットハンドの片側の指を説明する。
【0035】
図2は、本実施例に記載するロボットハンドの片側の指を説明する斜視図である。
【0036】
図3は、本実施例に記載するロボットハンドの片側の指を説明する側面図である
第1のフレーム12と第2のフレーム13との間には、第1の軸2の同軸(中心線)上に、嵌合部材5と、第1の指部1と、第1の倣い部材7と、リトラクトばね11とが設置される。そして、嵌合部材5は、第1の指部1と第1の倣い部材7とに挟まれるように設置される。
【0037】
また、リトラクトばね11は、第1の倣い部材7と嵌合部材5との間に設置され、リトラクトばね11のばね力(付勢力)により、嵌合部材5を第1の指部1に、押し付けている。なお、リトラクトばね11は、圧縮ばねである。
【0038】
また、第1の軸2は、第1のフレーム12及び第2のフレーム13により、両端が固定され、第1のフレーム12と第2のフレーム13とは、図示しないハンドベースに固定される。
【0039】
次に、第1の指部1と第1の倣い部材7との連結と解放とを切り替える嵌合部材5の動作を説明する。
【0040】
本実施例に記載するロボットハンドの嵌合部材5の近傍(連結している状態)を説明する。
【0041】
図4は、本実施例に記載するロボットハンドの嵌合部材5の近傍(連結している状態)を説明する断面図である。
【0042】
第1の軸2の中心線上に、第1の指部1と、嵌合部材5と、第1の倣い部材7と、リトラクトばね11とが設置される。
【0043】
嵌合部材5と第1の指部1との接触面には、第1の軸2を中心線とする同一直径状に複数の半球上の凹み部が、嵌合部材5と第1の指部1とのそれぞれに形成される。その凹み部には、それぞれ球状のプランジャボール10が設置される。なお、このプランジャボール10は、脱落しないように、第1の指部1に固定される。
【0044】
また、嵌合部材5と第1の倣い部材7とが向かい合う面には、第1の軸2を中心線とする円周上に凹凸の櫛歯(嵌合部材5に形成される櫛歯5aと第1の倣い部材7に形成される櫛歯7a)が、嵌合部材5と第1の倣い部材7とのそれぞれに形成される。
【0045】
ピンチ動作時(嵌合部材5と第1の指部1とが連結している状態)では、リトラクトばね11のばね力とプランジャボール10の作用とにより、嵌合部材5は、第1の指部1と一体となり、嵌合部材5と第1に指部1とは、第1の軸2の周りに回転する(矢印参照)。
【0046】
なお、この際、嵌合部材5に形成される櫛歯5aと第1の倣い部材7に形成される櫛歯7aとは、噛み合っていないため、第1の倣い部材7は回転しない。
【0047】
つまり、嵌合部材5と第1の指部1とが回転する(図4右図参照)。なお、この図4右図は、回転している状態を平面的に表現したものである。
【0048】
本実施例に記載するロボットハンドの嵌合部材5の近傍(解放している状態)を説明する
図5は、本実施例に記載するロボットハンドの嵌合部材5の近傍(解放している状態)を説明する断面図である。
【0049】
グリップ動作時(嵌合部材5と第1の指部1とが解放している状態)では、第1の指部1に外力が加わり、この外力がリトラクトばね11のばね力より大きくなる。この際、リトラクトばね11のばね力では、嵌合部材5を第1の指部1に押し付けていることができず、嵌合部材5は、第1の軸2の中心線の方向に移動する(矢印参照)。
【0050】
つまり、嵌合部材5の凹み部に設置されるプランジャボール10が、嵌合部材5の凹み部から離れ、プランジャボール10の半径分(嵌合部材5の凹み部の深さ分)、第1の指部1と嵌合部材5とが離れる。
【0051】
また、嵌合部材5は、第1の軸2の中心線の方向に移動するため、嵌合部材5に形成される櫛歯5aと第1の倣い部材7に形成される櫛歯7aとが、噛み合う。これにより、嵌合部材5は、第1の倣い部材7と噛み合い、嵌合部材5と第1の倣い部材7とは、第1の軸2の周りに回転する(矢印参照)。
【0052】
このように、嵌合部材5に形成される櫛歯5aと第1の倣い部材7に形成される櫛歯7aとは、嵌合部材5と第1の倣い部材7とが近づく場合には、お互いの櫛歯(嵌合部材5に形成される櫛歯5aと第1の倣い部材7に形成される櫛歯7a)が噛み合うように形成される。
【0053】
つまり、嵌合部材の櫛歯5aと第1の倣い部材の櫛歯7aが噛み合い、嵌合部材5が第1の軸2の周りに回転する場合には、嵌合部材5は、第1の倣い部材7と一体となって、回転する。
【0054】
なお、この際、第1の指部1の凹み部に設置されるプランジャボール10が、嵌合部材5の凹み部から離れているため、第1の指部1は回転しない。
【0055】
つまり、嵌合部材5と第1の倣い部材7とが回転する(図5右図参照)。なお、この図5右図は、回転している状態を平面的に表現したものである。
【0056】
このように、本実施例では、第1の指部1への外力の大きさにより、嵌合部材5が、第1の指部1と一体となり第1の軸2の周りに回転するか、又は、嵌合部材5が、第1の倣い部材7と一体となり第1の軸2の周りに回転するか、を切り替える。
【0057】
つまり、第1の指部1に作用する外力により、嵌合部材5が第1の指部1に連結するか、又は、嵌合部材5が第1の倣い部材7に連結するか、を切り替える。そして、第1の指部1に作用する外力が所定値以下の場合には、アクチュエータ15の駆動力が第1の指部1に作用し、第1の指部1に作用する外力が所定値より大きい場合には、アクチュエータ15の駆動力が第1の倣い部材7に作用する。
【0058】
つまり、第1の指部1への外力の大きさにより、アクチュエータ15により、第1の指部1を駆動するか、又は、第1の倣い部材7を駆動するか、を切り替える。つまり、アクチュエータ15の駆動力の伝達経路を変更する。
【0059】
このように、嵌合部材5は、ピンチ動作の場合は、第1の指部1と連結すると共に、第1の倣い部材7と連結解除し、グリップ動作の場合は、第1の指部1と連結解除すると共に、第1の倣い部材7と連結する。
【0060】
なお、リトラクトばね11のばね力は、このような切り替えを実行することができるように、適度に調整される。
【0061】
次に、本実施例に記載するロボットハンドの第1の指部1と嵌合部材5とが連結している状態(ピンチ時)を説明する。
【0062】
図6は、本実施例に記載するロボットハンドの第1の指部1と嵌合部材5とが連結している状態(ピンチ時)を説明する斜視図である。
【0063】
図7は、本実施例に記載するロボットハンドの第1の指部1と嵌合部材5とが連結している状態(ピンチ時)のリンクを説明する模式図である。
【0064】
ロボットハンド100は、後述する動力制御部により、アクチュエータ15が駆動すると、アクチュエータ15の伸縮により、嵌合部材5が第1の軸2の周りに、回転する。
【0065】
第1の指部1に作用する外力が小さい場合又は無い場合には、嵌合部材5により、第1の指部1を駆動する(図6及び図7参照)。
【0066】
図6に示すように、嵌合部材5と第1の指部1とが連結している状態では、リトラクトばね11のばね力とプランジャボール10の作用とにより、嵌合部材5は、第1の指部1と一体となり、嵌合部材5と第1に指部1とは、第1の軸2の周りに回転する。
【0067】
ここで、第1の指部1と、第2の指部3bと、第1の倣い部材7と、第2の倣い部材8とは、4節のリンク機構(略平行四辺形の形態)を構成する(図7参照)。つまり、第1の軸2と第4の軸9との間の距離と、第2の軸4と第3の軸6との間の距離とが等しく、第1の軸2と第2の軸4との間の距離と、第3の軸6と第4の軸9との間の距離とが等しい。
【0068】
これにより、第1の指部1が駆動(第1の軸2を中心に回転)する場合には、第2の倣い部材8も同じ角度で移動し、第2の指部3の指先3aは、回転せずに、平行に移動する(図7参照)。
【0069】
これにより、ロボットハンド100に指先で、小さい作業対象物を確実に把持することができるピンチ動作を実行することができる。なお、図7中の矢印は、回転方向、移動方向を示す。
【0070】
次に、本実施例に記載するロボットハンドの第1の指部1と嵌合部材5とが解放している状態(グリップ時)を説明する。
【0071】
図8は、本実施例に記載するロボットハンドの第1の指部1と嵌合部材5とが解放している状態(グリップ時)を説明する斜視図である。
【0072】
図9は、本実施例に記載するロボットハンドの第1の指部1と嵌合部材5とが解放している状態(グリップ時)のリンクを説明する模式図である。
【0073】
ロボットハンド100は、後述する動力制御部により、アクチュエータ15が駆動すると、アクチュエータ15の伸縮により、嵌合部材5が第1の軸2の周りに、回転する。
【0074】
第1の指部1に作用する外力が大きい場合には、嵌合部材5により、第1の倣い部材7を駆動する(図8及び図9参照)。
【0075】
図8に示すように、嵌合部材5と第1の指部1とが解放している状態では、嵌合部材5は、第1の倣い部材7と噛み合い、嵌合部材5と第1の倣い部材7とは、第1の軸2の周りに回転する。
【0076】
ここで、第1の指部1と、第2の指部3bと、第1の倣い部材7と、第2の倣い部材8とは、4節のリンク機構(略平行四辺形の形態)を構成する(図9参照)。つまり、第1の軸2と第4の軸9との間の距離と、第2の軸4と第3の軸6との間の距離とが等しく、第1の軸2と第2の軸4との間の距離と、第3の軸6と第4の軸9との間の距離とが等しい。
【0077】
これにより、第1の倣い部材7が駆動(第1の軸2を中心に回転)する場合には、第2の指部3bも同じ角度で移動し、第2の指部3の指先3aは、第2の軸4を中心に回転する(図9参照)。
【0078】
これにより、ロボットハンドの全体で、大きな作業対象物を確実に把持することができるグリップ動作を実現することができる。なお、図9中の矢印は、回転方向、移動方向を示す。
【0079】
次に、本実施例に記載するロボットハンドによる小さな作業対象物の把持(ピンチ動作)を説明する。
【0080】
図10は、本実施例に記載するロボットハンドによる小さな作業対象物の把持(ピンチ動作)を説明する斜視図である。
【0081】
図10に示すように、本実施例に記載するロボットハンド100は、作業対象物16が小さい場合には、第2の指部3にて、作業対象物16をつまむようになり、第1の指部1には外力が作用しない。この場合には、アクチュエータ15により、第1の指部1が駆動され、第2の指部3の指先3aが、平行に移動(2つの第2の指部3の指先3aは平行に移動)し、小さな作業対象物16をつまむ動作(ピンチ動作)を実行することができる。
【0082】
次に、本実施例に記載するロボットハンドによる大きな作業対象物の把持(グリップ動作)を説明する。
【0083】
図11は、本実施例に記載するロボットハンドによる大きな作業対象物の把持(グリップ動作)を説明する斜視図である。
【0084】
図11に示すように、本実施例に記載するロボットハンド100は、作業対象物16が大きい場合には、第2の指部3にて、作業対象物16をにぎるようになり、第1の指部1には外力が作用する。この場合、アクチュエータ15により、第1の倣い部材7が駆動され、第2の指部3の指先3aが、第2の軸4を中心に回転(2つの第2の指部3の指先3aは相互に接近)し、大きな作業対象物16をにぎる動作(グリップ動作)を実行することができる。
【0085】
つまり、第1の指部1まで作業対象物16が届き、第1の指部1に作業対象物16が当たり、第1の指部1に外力が作用する。アクチュエータ15により、第1の倣い部材7が駆動され、第1の指部1と第2の指部3の指先3aとが作業対象物16を囲うようになり、にぎる動作(グリップ動作)を実行することができる。
【0086】
つまり、本実施例に記載するロボットハンド100は、ピンチ動作及びグリップ動作により作業対象物16を把持するものであって、作業対象物16を把持する第1の軸2を中心に動く第1の指部1と、第1の指部1と第2の軸4で連結され、第2の軸4を中心に動く第2の指部3と、第2の指部4と第3の軸6で連結され、第3の軸6を中心に動く第2の倣い部材8と、第2の倣い部材8と第4の軸9で、かつ、第1の指部1と第1の軸2で、連結され、第1の軸2を中心に動く第1の倣い部材7と、ピンチ動作又はグリップ動作に応じて第1の指部1と連結又は連結解除(解放)する嵌合部材5と、を有することを特徴とする。
【0087】
これにより、本実施例に記載するロボットハンド100は、一つのアクチュエータ15にて、作業対象物16の大きさにより、ピンチ動作とグリップ動作とを切り替えることができ、作業対象物16を安定して確実に把持することができる。
【0088】
次に、本実施例に記載するロボットハンドを使用するロボットハンドシステムを説明する。
【0089】
図12は、本実施例に記載するロボットハンドを使用するロボットハンドシステムを説明する説明図である。
【0090】
本実施例に記載するロボットハンドシステム(作業対象物把持システム)500は、本実施例に記載するロボットハンド100を使用する。ロボットハンドシステム500は、作業対象物16を把持するロボットハンド100、ロボットハンド100を設置するアーム部540と、ロボットハンド100とアーム部540とを制御する作業対象物把持制御部510、作業対象物16とロボットハンド100とアーム部540とを撮像する撮像装置520、を有する。
【0091】
作業対象物把持制御部510は、撮像装置520が撮像する画像を処理する画像処理部513と、ロボットハンド100に設置される力(感圧)センサ(図示せず)のセンサ情報を処理する把持状態検出部514と、ロボットハンド100を駆動させる駆動力を付与するアクチュエータ15を制御する動力制御部516と、アーム部540を制御するアーム制御部512と、画像処理部513、把持状態検出部514、動力制御部516、及びアーム制御部512に接続される中央制御部511と、を有する。
【0092】
中央制御部511は、作業対象物16を把持するため、アーム部540やロボットハンド100の動作計画を実行する。そして、動作計画に基づいて、アーム部540やロボットハンド100へ指令値を送信する。更に、アーム部540やロボットハンド100からの情報(例えば、位置情報、力情報、トルク情報など)を取得する。なお、動作計画は、作業対象物16の大きさ(形状)とアクチュエータ15の駆動力との関係を有する。
【0093】
撮像装置520は、例えば、CCD(Charge Coupled Devices)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)を撮像素子とするビデオカメラであってもよい。また、撮像装置520には、少なくとも2台以上のビデオカメラを設置し、ステレオ視ができるようにしてもよい。
【0094】
なお、力センサ(図示せず)は、例えば、ピエゾ素子などが使用され、2つの作業対象物接触部17に、それぞれ設置される。
【0095】
次に、本実施例に記載するロボットハンドを使用するロボットハンドシステムにより、作業対象物を把持する動作を説明する。
【0096】
図13は、本実施例に記載するロボットハンドを使用するロボットハンドシステムにより、作業対象物を把持する動作を説明するフローチャート図である。
【0097】
ロボットハンドシステム500は、以下のステップに沿って、作業対象物16を把持する。
【0098】
ステップ601において、はじめに、アーム部540やロボットハンド100への指令値(作業対象物16を把持する指令)を、中央制御部511が受信する。
【0099】
ステップ602において、撮像装置520が撮像(ステップ603)する画像を、画像処理部513が入力する。
【0100】
ステップ604において、入力される画像に基づいて画像が処理され、画像処理部513にて、作業対象物16の形状が認識される。
【0101】
ステップ605において、認識される形状を作業動作データベースに送信(ステップ606)する。この送信される形状が、作業動作データベースに蓄積されている形状と、一致するか否かを判定する。送信される形状が、作業動作データベースに蓄積されている形状と、一致する場合には、その形状に付随する動作計画を引用する。送信される形状が、作業動作データベースに蓄積されている形状と、一致しない場合には、新規に形状を作成し、作成される形状と類似する形状を検索し、類似する形状に基づく動作計画を引用する。
【0102】
ここでは、作業対象物16を確実に把持するため、ピンチ動作の場合又はグリップ動作の場合に応じて、動作計画が引用され、アクチュエータ15の駆動力が伝達される。このように、本実施例では、動作計画により、嵌合部材5が、第1の指部1と一体となり第1の軸2の周りに回転するか、又は、嵌合部材5が、第1の倣い部材7と一体となり第1の軸2の周りに回転するか、を切り替える。つまり、動作計画に基づいて、アクチュエータ15により、第1の指部1を駆動するか、又は、第1の倣い部材7を駆動するか、を切り替える。
【0103】
ステップ607において、引用される動作計画に基づいて、アクチュエータ15を駆動させる。
【0104】
ステップ608において、アクチュエータ15が駆動している間、作業状態を、撮像装置520やロボットハンド100に設置される力センサ(図示せず)にて、監視する。特に、具体的には、ロボットハンド100に設置される力センサ(図示せず)のセンサ情報を入力し、入力されるセンサ情報を把持状態検出部514にて処理し、監視する。
【0105】
ステップ609において、把持状態検出部514の出力に基づいて、中央制御部511は、所定の把持状態検出部514の出力が取得できた場合には、作業対象物16の把持が完了した、と判断する。一方、中央制御部511は、所定の把持状態検出部514の出力が取得できない場合には、作業対象物16の把持が完了していない、と判断し、アクチュエータ15の駆動及び作業状態の監視を継続する。
【0106】
ステップ610において、把持が完了した場合、今回のアクチュエータ15の駆動の手順を、動作計画として、作業動作データベースに登録して、次回の動作計画に使用する。一方、把持が完了していない場合、ステップ607に戻る。
【0107】
ステップ611において、把持が完了した場合、アーム部540が動作し、作業対象物16を所定の場所へ搬送し、次動作に移行する。
【0108】
このように、本実施例によれば、様々の大きさの作業対象物16を確実に把持することができる。ピンチ動作及びグリップ動作においても、一つのロボットハンド100により、第1の指部1と第2の指部3との形状を変化させて、様々な大きさの作業対象物16を確実に把持することができる。
【0109】
なお、詳細な説明は省略するが、所定の場所の環境情報を撮像装置520にて撮像し、配置動作を計画する。この計画に基づいて、アーム部540を動作させ、撮像装置520にて作業対象物16の位置情報を監視し、作業対象物16が所定の場所へ搬送されたと判断した場合に、把持状態を解除してもよい。
【0110】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために、詳細かつ具体的に、説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成要素を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成要素の一部を、他の実施例の構成要素の一部に置き換えることが可能である。また、ある実施例の構成要素に他の実施例の構成要素を加えることも可能である。また、各実施例の構成要素の一部について、他の構成要素の一部を、追加、削除、置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0111】
1…第1の指部、2…第1の軸、3…第2の指部、4…第2の軸、5…嵌合部材、6…第3の軸、7…第1の倣い部材、8…第2の倣い部材、9…第4の軸、10…プランジャボール、11…リトラクトばね、12…第1のフレーム、13…第2のフレーム、15…アクチュエータ、16…作業対象物、17…作業対象物接触部、18…リンク、19…第5の軸、100…ロボットハンド、500…ロボットハンドシステム、510…作業対象物把持制御部、511…中央制御部、512…アーム制御部、513…画像処理部、514…把持状態検出部、516…動力制御部、520…撮像装置、540…アーム部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13