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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】冷却水管理装置、および、冷却塔設備
(51)【国際特許分類】
   F28G 13/00 20060101AFI20230228BHJP
   C02F 1/00 20230101ALI20230228BHJP
   F28F 27/00 20060101ALI20230228BHJP
   F28G 9/00 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
F28G13/00 A
C02F1/00 D
C02F1/00 K
C02F1/00 U
F28F27/00 511G
F28G9/00 L
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019135870
(22)【出願日】2019-07-24
(65)【公開番号】P2021018044
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000101042
【氏名又は名称】アクアス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】梅原 龍吾
(72)【発明者】
【氏名】徳丸 利信
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-243751(JP,A)
【文献】特開2001-276810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28G 1/00 - 15/10
C02F 1/00
F28F 11/00 - 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却水のブローを行うための電動弁またはロック式電磁弁から構成されたブロー弁と、前記冷却水に薬液を供給するための薬液供給ポンプと、を備えた冷却塔設備における前記ブローの機能と前記薬液の供給の機能とを管理する冷却水管理装置であって、
当該冷却水管理装置が、前記ブロー弁の開閉の制御を行うブロー制御手段と、前記薬液供給ポンプの運転または停止の制御を行う薬液供給制御手段と、光を受けて発電するソーラーパネルと、当該ソーラーパネルによる発電電力を蓄電し前記冷却水管理装置に電力を供給する蓄電手段と、当該蓄電手段の出力電圧を測定する電圧検出手段と、前記出力電圧に基づいて前記ブロー制御手段と前記薬液供給制御手段とを制御する冷却水管理制御手段と、を備え、
前記冷却水管理制御手段は、前記出力電圧が、前記ブロー弁の開状態から閉状態への移行動作を完了できる最低電圧である閉動作完了可能最低電圧よりも高く、かつ、前記閉動作完了可能最低電圧よりも高い電圧であって前記ブローの機能と前記薬液の供給の機能とが稼働可能な連続稼働可能電圧未満であるときに前記薬液供給ポンプが運転中であれば前記薬液供給制御手段に前記薬液供給ポンプを停止状態とさせ、前記出力電圧が低下して前記閉動作完了可能最低電圧となったときに前記ブロー弁が開状態であれば前記ブロー制御手段に前記ブロー弁を閉状態とさせる、
ことを特徴とする冷却水管理装置。
【請求項2】
前記冷却水管理制御手段は、前記出力電圧が、前記連続稼働可能電圧以上であるときに前記ブローの機能と前記薬液の供給の機能の両方を利用可能とすることを特徴とする請求項1に記載の冷却水管理装置。
【請求項3】
前記冷却水管理制御手段は、前記出力電圧が前記閉動作完了可能最低電圧以下に低下したのちに連続稼働可能電圧以上に回復したときに前記ブローの機能と前記薬液の供給の機能の両方を再び利用可能とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷却水管理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の冷却水管理装置を備えたことを特徴とする冷却塔設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却水を循環使用するとともに、ブロー弁として電動弁またはロック式電磁弁と、冷却水への薬液の供給を行う薬液供給ポンプと、を備える冷却塔設備の、ブロー弁の開閉の制御と薬液供給ポンプの運転/停止の制御にソーラーパネルの発電電力を蓄電する蓄電手段から供給する電力を用いる冷却水管理装置、および、このような冷却水管理装置を備えた冷却塔設備に関する。
【背景技術】
【0002】
開放循環冷却水系の冷却塔設備では、通常、熱交換器の被冷却媒体を冷却して温度が上昇した冷却水の一部を、冷却塔で蒸発させ、蒸発潜熱により冷却水の温度を下げて循環使用する。
【0003】
このため、冷却塔設備には一般に、蒸発により失われた水量に相当する補給水を冷却水に供給するための補給水供給ラインに、冷却塔の下部水槽の冷却水を自動的に一定に保つボールタップを接続している。
【0004】
また、冷却塔設備において、冷却水の濃縮倍率(循環している冷却水の、元の補給水に対する濃縮倍率)が過度に高くなるとカルシウム等のスケールが発生して熱交換効率が低下する。さらには、微生物の増殖によるスライム障害も発生する。他方、濃縮倍率が過度に低い場合には、防食成分であるカルシウム成分、シリカが少なくなり、配管の腐食が増加するとともに、補給水の消費量が増え、補給水コストが嵩む。
【0005】
したがって、冷却塔設備にあっては、冷却水管理装置によって冷却水の濃縮倍率が所定の範囲となるように、冷却水のブローを行うことで冷却水の濃縮倍率の管理を行っている。
【0006】
さらに、冷却塔設備では、冷却水中の溶解物は次第に濃縮され、スケール障害、腐食障害、スライム障害等の各種障害が発生しやすい。冷却塔設備には、一般にこれらの障害を防止するためにスケール防止剤、防錆剤、殺菌剤、防藻剤、スライムコントロール剤等の水処理薬液(以下、「薬液」と云う)を冷却水に供給するための薬液供給ポンプの運転または停止と、上記の冷却水のブローを行うためのブロー弁の開閉を制御する冷却水管理装置が設けられている。
【0007】
このような冷却水管理装置において、ソーラーパネルおよびこのソーラーパネルによる発電電力を蓄電できる蓄電手段を冷却塔設備の近傍に設置し、その蓄電手段からの電力を冷却水管理装置の電源として利用する技術が知られている。そして、冷却水管理装置の稼働電力すべてをこの蓄電手段からの電力でまかなうことができれば冷却塔設備の省エネ化に繋がる。
【0008】
たとえば、特許文献1には、冷却水に薬液を効率よく供給して、藻などの発生を防止するための薬液供給装置であって、日照の強さが設定強さ以上になると薬液供給動作を開始し、日照強さが設定強さ未満になると薬液供給動作を停止する供給制御部を設け、日照の強さを太陽電池パネルによる発電量に基づいて検出し、ソーラーパネルによる発電電力で駆動する薬液供給装置が開示されている。
【0009】
また、特許文献2には、冷却水への無駄な薬液供給を回避できる薬液供給装置であって、ソーラーパネルおよびこのソーラーパネルによる発電電力を蓄電する蓄電装置を備え、冷却塔や冷却水ポンプなどが運転中であることを検出し、ソーラーパネルの発電電圧あるいは蓄電装置の蓄電電圧を検出して薬液供給装置の運転を制御する、ソーラーパネルの発電電力により動作する薬液供給装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2005-218936号公報
【文献】特開2009-243751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ここで、ブロー弁として、電動弁やロック式電磁弁を使用した場合、これらは一般の電磁弁とは異なり、連続的な電力供給を必要としないため、省電力が求められる、ソーラーパネルによる発電電力を蓄電する蓄電手段からの電力を利用する冷却水管理装置に適している。このうち、電動弁は比較的、流路が広いものが多いので、ゴミ噛み等のトラブル発生が少なく大型化が容易である等の利点もある。
【0012】
しかし、一般の電磁弁を用いた場合には電力不足等のトラブルにより電源の切断時に弁が開いた状態であれば自動的に閉状態となるので、ブロー水の異常供給等のトラブルが未然に防止できるが、これら電動弁やロック式電磁弁では、電力不足時に弁が開いた状態であればその状態を維持するので、ブロー水が冷却水に供給され続けるおそれがある。
【0013】
また、電力不足等により冷却水管理装置が運転中の薬液供給ポンプを停止する制御ができなくなれば薬液が冷却水に供給され続けるおそれがある。
【0014】
このようなトラブルに対する対策として、不慮の電力不足に備えて蓄電手段の容量を大きくすることが求められる場合が生じ、冷却水管理装置の装置コストの上昇やシステムの大型化を招く。
【0015】
本発明は、上記したような、ブロー弁として電動弁またはロック式電磁弁を使用する冷却塔設備の、ブロー機能と薬液供給機能とを管理する冷却水管理装置において、比較的小容量の蓄電手段を備えながら、電力不足によるブロー水の異常排水や薬液の異常供給などの誤作動発生のおそれを低減できる冷却水管理装置、および、このような冷却水管理装置を備えた冷却塔設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の冷却水管理装置は、冷却水のブローを行うための電動弁またはロック式電磁弁から構成されたブロー弁と、前記冷却水に薬液を供給するための薬液供給ポンプと、を備えた冷却塔設備における前記ブローの機能と前記薬液の供給の機能とを管理する冷却水管理装置であって、当該冷却水管理装置が、前記ブロー弁の開閉の制御を行うブロー制御手段と、前記薬液供給ポンプの運転または停止の制御を行う薬液供給制御手段と、光を受けて発電するソーラーパネルと、当該ソーラーパネルによる発電電力を蓄電し前記冷却水管理装置に電力を供給する蓄電手段と、当該蓄電手段の出力電圧を測定する電圧検出手段と、前記出力電圧に基づいて前記ブロー制御手段と前記薬液供給制御手段とを制御する冷却水管理制御手段と、を備え、前記冷却水管理制御手段は、前記出力電圧が、前記ブロー弁の開状態から閉状態への移行動作を完了できる最低電圧である閉動作完了可能最低電圧よりも高く、かつ、前記閉動作完了可能最低電圧よりも高い電圧であって所定の管理スケジュールに従い前記ブローと前記薬液の供給とが可能な連続稼働可能電圧未満であるときに前記薬液供給ポンプが運転中であれば前記薬液供給制御手段に前記薬液供給ポンプを停止状態とさせ、前記出力電圧が低下して前記閉動作完了可能最低電圧となったときに前記ブロー弁が開状態であれば前記ブロー制御手段に前記ブロー弁を閉状態とさせる、ことを特徴とする。
【0017】
本発明の冷却水管理装置では、上記の構成に加え、前記冷却水管理制御手段は、前記出力電圧が、前記連続稼働可能電圧以上であるときに前記ブローの機能と前記薬液の供給の機能の両方を利用可能とすることができる。
【0018】
本発明の冷却水管理装置では、上記の構成に加え、前記冷却水管理制御手段は、前記出力電圧が前記閉動作完了可能最低電圧以下に低下したのちに連続稼働可能電圧以上に回復したときにブローの機能と前記薬液の供給の機能を再び利用可能とすることができる。
【0019】
本発明の冷却塔設備は上記いずれか1つの冷却水管理装置を備えた構成とすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、冷却水管理装置の電源としてソーラーパネルによる発電電力を使用し、かつ、電動弁やロック式電磁弁を使用している冷却水管理装置において比較的小容量の蓄電手段を備えながら、電力不足の際に発生する、ブロー水の異常排水や薬液の異常供給のおそれを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の冷却水管理装置の一例を備えた冷却塔設備のモデル図である。
図2図1の冷却塔設備の冷却水管理装置での制御の例を示すフローチャートである。
図3】出力電圧VSの変化に伴う、ブロー弁、および、薬液供給ポンプの状態を示すモデル図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図1~3を用いて本発明の冷却水管理装置の一例を備えた冷却塔設備について説明する。
【0023】
<冷却塔設備A>
図1は本発明の冷却塔設備の冷却水をブロー機能と薬液供給機能とにより管理する、ソーラーパネルを有する冷却水管理装置の一例を備えた冷却塔設備Aを示すモデル図である。
【0024】
冷却塔1の塔頂付近に、冷却用空気を冷却塔1内に供給するための、モータ1aにより回転するファン1bを有する。また、冷却塔1の塔底の下部水槽1c内の冷却水Wは、冷却水循環ポンプ2と冷却水循環ラインL1とにより熱交換器としての冷凍機3で熱交換した後、冷却塔1の散水パイプ1dから充填材1eに散水されてその一部が蒸発し、蒸発潜熱による冷却の後、下部水槽1cへと戻る。
【0025】
下部水槽1cでは、その冷却水Wの水位が一定となるように補給水供給ラインL2に接続するポールタップ1fから補給水を供給する。なお、下部水槽1cには、その底部から、所定の高さに開口するオーバーフロー管1gが設けられている。
【0026】
この例では冷却塔制御手段21が冷却塔1の運転/停止を制御する。冷却塔制御手段21は週間タイマと、その記憶装置内に冷却塔1の週間運転スケジュールと、を有する。この週間運転スケジュールは、たとえば平日は9~17時、土曜日は9~12時の間、冷却塔1を運転し、日曜日には終日休転する、等のスケジュールであり、また、この週間運転スケジュールは必要に応じて書き換え可能となっている。
【0027】
冷却塔制御手段21はこのような週間運転スケジュールに従ってモータ1aおよび冷却水循環ポンプ2の運転/停止を制御する。また、この冷却塔設備Aには図示しないスイッチが付属し、休日や休暇などに際して、たとえば、操作者が冷却塔制御手段21に対してこの冷却塔設備Aの稼働/非稼働を指示することができる。
【0028】
この冷却塔制御手段21は、この冷却塔1の稼働/非稼働、すなわち、信号線と信号線S1から分岐する信号線S1aおよび信号線S1bによりそれぞれ接続している冷却水循環ポンプ2およびファン用モータ1aの運転/停止の制御を行うが、その冷却水循環ポンプ2の運転/停止の情報を、信号線S2を介して後述する冷却水管理制御手段22に出力する。なお、図1での信号線の破線矢印はデータ信号あるいは制御信号の流れ方向を示す(以下、同様)。
【0029】
ここで、冷却水管理制御手段22が、上記のように、冷却塔制御手段21から冷却水循環ポンプ2の運転または停止の情報を入手する代わりに、たとえば、冷却塔1の散水パイプ1dの代わりに散水板を設け、あるいは、充填材1eの間やその下方に樋状体等の、冷却水循環ポンプ2が運転中にのみ、その上面に冷却水Wが存在する受け器を設け、これらの上面に、冷却水Wの有無を検知する、電気伝導率計等のセンサを設置し、そのセンサにより、冷却水管理制御手段22が冷却水循環ポンプ2の運転または停止の情報を得るようにしてもよい。なお、そのとき、信号線S2は不要となる。
【0030】
また、冷却水管理制御手段22が冷却塔制御手段21と同様の週間運転スケジュールを備えた週間タイマを備え、その週間運転スケジュールを冷却塔制御手段21の週間運転スケジュールと同じものとすることにより、両者の運転または停止を一致するようにしてもよい。
【0031】
冷却水管理制御手段22は、図示しないCPU、タイマ、記憶装置(プログラム(各種スケジュールを含む)および各種データ一時保管用メモリ。フラッシュメモリ等でもよい。以下、同じ)、インターフェース等から構成される。なお、後述する各制御手段も必要に応じ、これらのすべてあるいはそのいくつかを備える。
【0032】
冷却水管理制御手段22は、それぞれ信号線S3、信号線S4、および、信号線S5を介して、後述するブロー制御手段23、薬液供給制御手段24、および、電圧検出手段25に接続し、この例では冷却水管理制御手段22の記憶装置内の、冷却水管理スケジュールに従ってこれら制御手段を制御する。このような冷却水管理スケジュールにはたとえばブロー時間、ブロー間隔、あるいは、ブロー開始または終了条件等のブローに関する条件、薬液供給速度、薬液供給時間、薬液供給間隔、あるいは、薬液供給開始または終了条件等の薬液供給条件、また、後述する、冷却水管理装置の制御のための各電圧値などが定められている。なお、冷却水管理スケジュールは必要に応じて書き換え可能である。
【0033】
ここで、ブロー弁7の開閉を制御するブロー制御手段23について説明する。
腐食やスケール付着の原因となる、冷却水W中の塩濃度の過度の上昇を防ぐために、冷却水管理制御手段22はブローを実施する。ブロー制御手段23は信号線S3を介して冷却水管理制御手段22からのブロー実施の指示を受け、信号線S6を介して補給水供給ラインL2から分岐するブロー水供給ラインL2aに設けられた、この例では電動弁であるブロー弁7を開けてブローを行って、補給水を冷却塔1に供給する。下部水槽1cで過剰となった冷却水Wは、下部水槽1cに設けられた、下部水槽1cの底部から所定の高さで開口するオーバーフロー管1gから排出される。そして、ブロー開始から所定時間後、あるいは、たとえば図示しないセンサによって計測される冷却水Wの電気伝導率の値に応じた、冷却水管理制御手段22からの指示を受けて、ブロー制御手段23はブロー弁7を閉めてブローを終了する。
【0034】
上記でブロー弁7として用いる電動弁は一旦、開状態あるいは閉状態となると電力消費なしでその状態を維持する(ロック式電磁弁も同様である)。このため、電動弁、あるいは、ロック式電磁弁を用いる場合、ロック式電磁弁ではない通常の電磁弁を用いる場合に比べて消費電力が少ない冷却水管理設備とすることができる。なお、この例ではブロー弁7をブロー水供給ラインL2aに設けたが、下部水槽1cの図示しない排水ラインや冷却水循環ラインL1等に設けてもよい(このときブロー水供給ラインL2aは不要となる。)。
【0035】
次に薬液Mの冷却水Wへの供給について説明する。この冷却水管理装置の例では、所定の有効成分を含有する薬液Mを内部に収容する薬液タンク5と、薬液供給ポンプ6と、をそれぞれ薬液Mの流れ方向の順に備えた薬液供給ラインL3が冷却塔1に接続されている。
【0036】
冷却水管理制御手段22は、この例ではその内部のタイマの値と、記憶装置内の、あらかじめ定められた薬液供給時間、薬液供給間隔等からなる薬液供給スケジュールとに従い、信号線S4を介して、薬液供給制御手段24に対して薬液供給ポンプ6を運転するように信号を送り、この信号を受けて薬液供給制御手段24は信号線S7を介して薬液供給ポンプ6を開状態とし、下部水槽1cの冷却水Wに薬液Mを供給する。その後、冷却水管理制御手段22は上記の薬液供給スケジュールに従い、薬液供給制御手段24により薬液供給ポンプ6を停止して、薬液Mの冷却塔1への供給を止める。
【0037】
なお、上記の薬液供給スケジュールは、たとえば、年間の冷却塔設備の負荷の変化に応じて、薬液供給速度、薬液供給時間、薬液供給間隔等などの条件によって決定される薬液供給量を変更可能なものとすることができ、また、冷却水管理制御手段22がそのような変更を自動的に行う機能を備えていてもよい。
【0038】
また、たとえば、冷却水W中の薬液Mの有効成分の濃度、あるいは、この有効成分の濃度と比例するように冷却水Wに添加されるトレーサー物質の濃度を測定する濃度センサを冷却塔設備に設け、その測定結果により冷却水管理制御手段22が冷却水W中の薬液の有効成分が適正濃度範囲となるように薬液供給制御手段24を介して薬液供給ポンプ6の運転/停止や供給速度を制御するようにしてもよく、あるいは、補給水供給ラインL2に、冷却塔1への補給水の供給量を検出するセンサを設け、その供給量に比例した量の薬液を供給するように制御してもよい。
【0039】
図1に例示した冷却塔設備Aの冷却水管理装置はさらに、太陽電池セルを有し、光を受けて発電するソーラーパネル11と、このソーラーパネル11による発電電力を蓄電し冷却水管理装置に電力を供給する蓄電手段である蓄電池12と、蓄電池12の出力電圧VSを、信号線S8を介して検出し、この出力電圧VSの検出結果を、信号線S5を介して冷却水管理制御手段22に出力する電圧検出手段25と、を備えている。なお、図1では蓄電池12からの出力電力を冷却水管理装置の各機器や制御手段に供給する電力線については省略してある。また、ソーラーパネル11の太陽電池セルとしては十分な発電能力があるものであればよく、シリコン系、化合物系、および、有機化合物系等から適宜選択できる。
【0040】
図1に示した冷却塔設備Aにおける冷却水管理装置は、冷却水管理制御手段22、ブロー制御手段23、薬液供給制御手段24、ソーラーパネル11、蓄電池12、電圧検出手段25、および、信号線などから構成されている。なお、これらの他に蓄電池12の過充電を防止するなどの機能を備え、後述する冷却水管理制御手段22によって制御される蓄電制御手段を設けてもよい。
【0041】
なお、上記の電圧検出手段25が測定した蓄電池12の出力電圧VSの値を受けて、冷却水管理制御手段22は図2に例示したフローチャートに従って制御を行う。また、蓄電池12の出力電圧VSの変化と、ロック式電磁弁または電動弁により構成されたブロー弁7の開閉制御および薬液供給ポンプ6に対して運転/停止の制御と、の関係を図3に示す。
【0042】
図3における縦軸は蓄電池12の出力電圧VSであり、この出力電圧VSの変化に伴って変更する、ブロー弁7および薬液供給ポンプ6の制御について(1)~(5)にそれぞれ場合分けして示した。図3においては、ブローの機能のために設けられた電動弁またはロック式電磁弁から構成されるブロー弁7の開閉制御を可能とする場合、および、薬液供給の機能のために設けられた薬液供給ポンプ6の稼働制御を可能とする場合をそれぞれ「○」として示し、そして、ブロー弁7が常に閉状態あるいは薬液供給ポンプ6を停止状態に保つ場合をそれぞれ「×」として示している。また、ブロー弁7が開状態である場合に、開状態から閉状態への移行動作を行う場合を「(→×)」として示している。
【0043】
冷却水管理制御手段22は図2に示すように、冷却塔制御手段21から冷却水循環ポンプの稼働による冷却水の循環開始の情報を受けると、ステップT1で出力電圧VSが、ブロー弁7の開状態から閉状態への移行動作を完了できる最低電圧であることがあらかじめ確認された、閉動作完了可能最低電圧V1よりも高く(VS>V1)、かつ、ブローと薬液Mの供給と電圧検出手段25および冷却水管理制御手段22の稼働とが可能なことがあらかじめ確認された、連続稼働可能電圧V2以上である(VS≧V2)か否かを判断する。この連続稼働可能電圧V2は、ブロー機能と薬液供給機能が稼働可能な電圧を示すが、この電圧には、ブロー機能と薬液供給機能を実行するのに必要な各制御手段等の稼働に要する電力にかかる分も勿論含むものである。また、図3から明らかなように、連続稼働可能電圧V2は、閉動作完了可能最低電圧V1よりも高い電圧である。したがって、VS>V1かつVS≧V2は、実質的にはVS≧V2のみを判断すればよい。
【0044】
そして、出力電圧VSが上記の電圧条件、すなわち、VS>V1、かつ、VS≧V2を満たしている場合には、冷却水管理制御手段22によるブロー制御手段23によるブロー弁7の開閉制御および薬液供給制御手段24による薬液供給ポンプ6の運転/停止の制御を可能とする条件が満たされているので、ステップT2で、図示しない表示装置(LCD等。以下同じ)に、後述する「電力不足」や「一部機能停止中」等の警報表示があればその表示を消した後、ステップT3で冷却水管理制御手段22はブロー機能と薬液供給機能とを利用可能とする。すなわち、冷却水管理制御手段22による、ブロー制御手段23を介したブロー弁7の開閉制御と、薬液供給制御手段24を介した薬液供給ポンプ6の運転/停止の制御を可能とする。このときのブロー弁7および薬液供給ポンプ6に対する制御状態は図3の(1)および(2)に対応する。そして、出力電圧VSが上記の電圧条件、すなわちVS>V1、かつ、VS≧V2を満たしている限り、ステップT1、ステップT2、および、ステップT3をこの順で繰り返してすべての上記2つの機能の利用可能状態が維持される。
【0045】
その後、蓄電池12内の電力が使用された結果、その出力電圧VSが連続稼働可能電圧V2未満となったときには、その値が閉動作完了可能最低電圧V1より高くても、冷却水管理制御手段22はステップT1からステップT4に進んで、表示装置に「一部機能停止中」等の警報を表示する。次いで、ステップT5で、薬液供給ポンプ6が運転中である場合にはステップT5からステップT6に進み、冷却水管理装置の消費電力を抑制するために、運転中の薬液供給ポンプ6を停止し(このときのブロー弁7および薬液供給ポンプ6に対する制御状態は図3の(3)に対応する)、その後、ステップT7に進む。また、冷却水管理装置がポンプを有しない、あるいは、運転中のポンプがない場合にはステップT5から直接、ステップT7に進む。
【0046】
なお、図1に示した冷却塔設備Aにおいて、冷却水循環ラインL1と冷却水循環ポンプ2とによる冷却水Wの循環および冷却水の冷却の維持による、冷凍機3への冷熱の供給が最も重要であり、ブローの機能、あるいは、薬液供給の機能に関しては短時間であれば停止しても許容できる。
【0047】
冷却水管理制御手段22は、ステップT7で、出力電圧VSが低下して閉動作完了可能最低電圧V1以下となっているか否か判断し、出力電圧VSが閉動作完了可能最低電圧V1よりも高い場合にはステップT1、ステップT4、ステップT5、および、ステップT7をこの順で繰り返し、ブロー弁7を用いる機能のみが稼働可能な状態で、ソーラーパネル11の発電電力により蓄電池12に蓄電し、その出力電圧VSが連続稼働可能電圧V2以上となり上記の電圧条件、すなわちVS>V1、かつ、V1≧V2を満たすまで待機する。
【0048】
この待機中に出力電圧VSが上記の電圧条件であるVS>V1、かつ、V1≧V2を満たした場合には、冷却水管理制御手段22はステップT1からステップT2に進み、「一部機能停止中」や「電力不足」等の警報表示を消し、ステップT3に進み、冷却水管理装置のブロー機能、および、薬液供給機能を再び利用可能とする。すなわち、各制御手段によるポンプの運転/停止の制御が再度可能となり、その後、上記のようにステップT1~T3をこの順で繰り返す。
【0049】
また、上記のステップT1、ステップT4、ステップT5、および、ステップT7の繰り返しによる待機中に、出力電圧VSがさらに低下して閉動作完了可能最低電圧V1となったときには、冷却水管理制御手段22はステップT8に進み、開状態となっているブロー弁7があれば閉状態とし、ブローの機能および薬液供給の機能はともに利用できなくなる。なお、閉状態となっているブロー弁7はそのまま閉状態に維持する。このときのブロー弁7および薬液供給ポンプ6に対する制御状態は図3の(4)に対応する。ステップT8終了時には、冷却水管理装置の動作による電力消費と、加えて、開状態のブロー弁7があった場合の、その閉状態への移行のための電力消費と、により、蓄電池12の出力電圧VSはV1よりもさらに低くなる(図3の(5)参照)。その後、冷却水管理制御手段22はステップT9に進んで表示装置に「電力不足」等の表示を行う。
【0050】
なお、閉動作完了可能最低電圧V1は出力電圧VSが前記ブロー弁7の開状態から閉状態への移行動作を完了できる最低電圧であるが、厳密なピンポイントの電圧である必要はなく、たとえば長期間の使用によって生じる蓄電池12の劣化などを考慮して高電圧側に多少の幅を持たしてもよく、この場合も本発明に含まれる。
【0051】
この冷却塔設備Aでは、図3の(5)に示すように蓄電池12の出力電圧が、冷却水管理装置の上記機能に対する制御がすべて停止する電圧までに低下したときには、ロック式電磁弁や電動弁で構成されたブロー弁7は閉状態となっており、かつ、このときには上述のように薬液供給ポンプ6は停止しているため、ブロー水の異常排水、および、薬液の異常供給がともに未然に防止可能とすることができる。
【0052】
上記の例では、ステップT9終了段階で、蓄電池12の残りの電力で、電圧検出手段25による蓄電池12の出力電圧VSの測定、そして、冷却水管理制御手段22等の、冷却水管理装置における制御に必要な機器や手段が稼働可能であった場合には、冷却水管理制御手段22はステップT1、ステップT4、ステップT5、ステップT7、ステップT8、および、ステップT9をこの順で繰り返して待機状態となる。
【0053】
その後、ソーラーパネル11の発電電力により蓄電池12が充電され、その出力電圧VSが回復して再度高くなり、上記の電圧条件、すなわちVS>V1、かつ、VS≧V2を満たすようになったときには、冷却水管理制御手段22がステップT1からステップT2、そして、ステップT3に進んで、ブローの機能と薬液供給の機能がともに利用可能とする。その後は上記同様にステップT1~T3をこの順で繰り返す。
【0054】
上記の冷却水管理装置によれば、電圧検出手段25が測定した蓄電池12の出力電圧VSが、閉動作完了可能最低電圧V1<VS<連続稼働可能電圧V2の範囲である場合は、薬液供給ポンプ6が運転中であれば薬液供給ポンプ6を停止状態としているので、電力不足の際に発生する、薬液の異常供給のおそれを低減することができる。また、出力電圧VSが、VS≦閉動作完了可能最低電圧V1である場合は、ブロー弁7を閉状態としているので、電力不足の際に発生する、ブロー水の異常排水のおそれを低減することができる。
【0055】
また、上記の冷却水管理装置によれば、出力電圧VSが、VS>連続稼働可能電圧V2である場合は、ブローの機能と薬液の供給の機能の両方を利用可能としているので、蓄電手段への蓄電量が十分な状態のときに両方の機能を稼働させることができる。
【0056】
さらに、冷却水管理制御手段22は、出力電圧VSが閉動作完了可能最低電圧V1以下に低下したのちに連続稼働可能電圧V2以上に回復したときにすべての機能を再び利用可能としているので、出力電圧VSが閉動作完了可能最低電圧V1以下までに低下したのちであっても、ソーラーパネル11による発電により出力電圧VSが連続稼働可能電圧V2以上に回復したときに自動的に冷却水管理装置のすべての機能を再度、利用することが可能となる。
【0057】
本発明の冷却塔設備Aは上記いずれかの冷却水管理装置を備えることにより、安価で小型の小容量の蓄電手段を備えながら、電力不足の際に発生する、ブロー水の異常排水や薬液の異常供給等のトラブル発生のおそれを効果的に低減することが可能となる。
【0058】
上記の冷却水管理装置は、その消費電力としてソーラーパネル11が発電する再生可能なエネルギーを用いており、また、それ以外の電源設備が不要となるので、省エネでかつ低コストな冷却塔設備を実現することが可能である。しかし、天候等の外的環境の変化などにより発電電力が不足する場合には、外部から補えるように、補助的な電源設備を追加することもできるが、その場合であっても、使用電力をすべて外部から供給を受ける場合に比して、小型で安価な電源設備とすることが可能となる。
【0059】
また、図1の冷却塔設備Aでは、冷却水管理制御手段22、ブロー制御手段23、薬液供給制御手段24、および、電圧検出手段25をそれぞれ別の機器として記載してあるが、これら全部、あるいは、これらのうちのいくつかを一体化してもよく、そのとき、ハウジングはもちろん、CPU、記憶装置、各種インターフェース等を共用することが可能となり、そのとき、さらなる省電力化、コンパクト化、メンテナンス性の向上、低コスト化等の効果を得ることが可能となる。
【0060】
以上、本発明について、好ましい実施形態を挙げて説明したが、本発明の冷却水管理装置、および、冷却塔設備は、上記実施形態の構成に限定されるものではない。
【0061】
当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の冷却水管理装置、および、冷却塔設備を適宜改変することができる。このような改変によってもなお、本発明の冷却水管理装置、および、冷却塔設備の構成を具備する限り、もちろん、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0062】
1 冷却塔
1a モータ
1b ファン
1c 下部水槽
1d 散水パイプ
1e 充填材
1f ボールタップ
1g オーバーフロー管
2 冷却水循環ポンプ
3 冷凍機
5 薬液タンク
6 薬液供給ポンプ
7 ブロー弁
11 ソーラーパネル
12 蓄電池
13 薬液供給ポンプ
21 冷却塔制御手段
23 ブロー制御手段
24 薬液供給制御手段
25 電圧検出手段
L1 冷却水循環ライン
L2 補給水供給ライン
L2a ブロー水供給ライン
L3 薬液供給ライン
M 薬液
W 冷却水
S1~S7、S1a、S1b 信号線
図1
図2
図3