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7234101脱水処理が容易な吸水性樹脂粒子及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】脱水処理が容易な吸水性樹脂粒子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20230228BHJP
   C08J 3/24 20060101ALI20230228BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
C08J3/12 A
C08J3/24 Z CEY
A61F13/53 300
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019208531
(22)【出願日】2019-11-19
(65)【公開番号】P2021181507
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2021-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2018218294
(32)【優先日】2018-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018230095
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020558124
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104813
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 信也
(72)【発明者】
【氏名】森田 英二
(72)【発明者】
【氏名】中渕 敬士
(72)【発明者】
【氏名】宮島 徹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一充
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/204302(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/158975(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/030129(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/030130(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/170605(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/126079(WO,A1)
【文献】特開2000-063527(JP,A)
【文献】国際公開第2010/073658(WO,A1)
【文献】特開2013-203842(JP,A)
【文献】国際公開第2016/114245(WO,A1)
【文献】特開2010-185029(JP,A)
【文献】特開2018-127508(JP,A)
【文献】特開2017-206646(JP,A)
【文献】特表平06-502454(JP,A)
【文献】特開2012-007062(JP,A)
【文献】特開2012-177001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00- 3/28:99/00
C08J 5/00- 5/22
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
B29B 17/00- 17/04
C08J 11/00- 11/28
B09B 1/00- 5/10
B09C 1/00- 1/10
A61F 13/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに内部架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A)を含有し、下記式(1)で示される離水率が70%以上である、脱水処理が容易な吸水性樹脂粒子であって、前記吸水性樹脂粒子が長鎖脂肪酸エステル、長鎖脂肪酸及びその塩、長鎖脂肪族アルコール、長鎖脂肪族アミド、カルボキシ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン並びにアルコキシ変性ポリシロキサンからなる群から選ばれる少なくとも1種の疎水性物質(c)を含有している、吸水性樹脂粒子
離水率[%]={1-(1.0重量%塩化カルシウム水溶液処理後の保水量[g/g])/(生理食塩水に対する保水量[g/g])}×100 (1)
ただし、前記式(1)中、生理食塩水に対する保水量[g/g]は、生理食塩水(食塩濃度0.9%)中に無撹拌下、1時間浸漬した後、150Gで90秒間遠心脱水して求めた生理食塩水に対する保水量であり、
1.0重量%塩化カルシウム水溶液処理後の保水量[g/g]は、生理食塩水に対する保水量の測定後に、1.0重量%塩化カルシウム水溶液中に無撹拌下、5分間浸漬し、150Gで90秒間遠心脱水して求めた1.0重量%塩化カルシウム水溶液処理後の保水量である。
【請求項2】
前記離水率が75%以上である請求項1に記載の吸水性樹脂粒子。
【請求項3】
下記式(2)で示されるイオン交換水による再膨潤倍率が110%以下である請求項1又は2に記載の吸水性樹脂粒子。
イオン交換水による再膨潤倍率[%]=(1.0重量%塩化カルシウム水溶液処理後のイオン交換水に対する保水量[g/g])/(生理食塩水に対する保水量[g/g])×100 (2)
ただし、前記式(2)中、1.0重量%塩化カルシウム水溶液処理後のイオン交換水に対する保水量[g/g])は、離水率の測定後に、イオン交換水溶液中に無撹拌下、5分間浸漬し、150Gで90秒間遠心脱水して求めた1.0重量%塩化カルシウム水溶液処理後のイオン交換水に対する保水量である。
【請求項4】
生理食塩水に対する保水量が30~50g/gである請求項1~3のいずれかに記載の吸水性樹脂粒子。
【請求項5】
見かけ密度が0.40~0.62g/mlである請求項1~4のいずれかに記載の吸水性樹脂粒子。
【請求項6】
重量平均粒子径が150~500μmである請求項1~5のいずれかに記載の吸水性樹脂粒子。
【請求項7】
粒子形状が不定形破砕状である請求項1~6のいずれかに記載の吸水性樹脂粒子。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに1項に記載の吸水性樹脂粒子の製造方法であって、水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに内部架橋剤(b)を必須構成単位とする単量体組成物を重合して、架橋重合体(A)を含有する含水ゲルを得る重合工程、架橋重合体(A)の含水ゲルを細分する工程、細分した含水ゲルをゲル温度40℃~120℃でさらに混練細断する工程、及び前記混練細断した含水ゲルを乾燥した後に粉砕して、吸水性樹脂粒子を得る工程を含む、前記吸水性樹脂粒子の製造方法。
【請求項9】
表面架橋工程を有する請求項に記載の製造方法。
【請求項10】
表面架橋工程後に粒度調整する工程を有する請求項に記載の製造方法。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか1項に記載の吸水性樹脂粒子を含み、使用済品からの水分の脱水処理が容易な衛生用品。
【請求項12】
使用済み衛生用品を、
水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに内部架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A)を含有し、下記式(1)で示される離水率が70%以上である、脱水処理が容易な吸水性樹脂粒子を含み、使用済品からの水分の脱水処理が容易な衛生用品、の使用済品の処理方法であって、使用済みとなった衛生用品を粉砕する工程と、衛生用品又は粉砕された衛生用品に含まれる吸水性樹脂粒子を脱水剤により脱水処理する工程、粉砕及び脱水処理された衛生用品を水と混合して固液処理装置に輸送する工程を含む衛生用品の処理方法で処理する、固形燃料の製造方法であって、前記脱水処理が容易な吸水性樹脂粒子が長鎖脂肪酸エステル、長鎖脂肪酸及びその塩、長鎖脂肪族アルコール、長鎖脂肪族アミド、カルボキシ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン並びにアルコキシ変性ポリシロキサンからなる群から選ばれる少なくとも1種の疎水性物質(c)を含有している、製造方法
離水率[%]={1-(1.0重量%塩化カルシウム水溶液処理後の保水量[g/g])/(生理食塩水に対する保水量[g/g])}×100 (1)
ただし、前記式(1)中、生理食塩水に対する保水量[g/g]は、生理食塩水(食塩濃度0.9%)中に無撹拌下、1時間浸漬した後、150Gで90秒間遠心脱水して求めた生理食塩水に対する保水量であり、
1.0重量%塩化カルシウム水溶液処理後の保水量[g/g]は、生理食塩水に対する保水量の測定後に、1.0重量%塩化カルシウム水溶液中に無撹拌下、5分間浸漬し、150Gで90秒間遠心脱水して求めた1.0重量%塩化カルシウム水溶液処理後の保水量である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱水処理が容易な吸水性樹脂粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、衛生用品の使用量が増加するにつれて、使用後の衛生用品のごみ処理が深刻な問題となりつつある。衛生用品、特に紙おむつは少子高齢化時代に欠かせない用品として、急激に普及し、その消費は急増している。使用後の衛生用品のごみ処理に関し、紙おむつなどは通常、焼却処理されているが、おむつ中の水分の割合は約8割近くであるため、焼却には大きな燃焼エネルギーが必要となる。この処理方法は焼却炉自体に大きな負荷がかかり、結果として焼却炉の寿命を短くする原因に繋がるだけではなく、大気汚染や地球の温暖化に繋がり、環境に負荷をかける要因にもなるため改善が強く望まれている。
【0003】
使用後の衛生用品のごみ処理問題を解決するための手段がこれまでいくつか提案されている。例えば、石灰を用いることで、吸水性樹脂粒子と衛生用品の他部材を分離し回収するシステムに関する技術(特許文献1)、塩化カルシウム水溶液を用いることで吸水性樹脂粒子を脱水凝集させた後に、強酸と窒素含有塩基性化合物との塩を加えて凝集力を低下させ、その後の乾燥を容易にする技術(特許文献2)、使用済みの高吸水性ポリマーを多価金属塩水溶液で脱水処理した後、アルカリ金属塩水溶液で処理することで、高吸水性ポリマーの吸水分能力を回復させる技術(特許文献3)、パルプ繊維および高吸水性ポリマーを含む使用済み衛生用品からパルプ繊維を回収し、オゾン処理で高吸水性ポリマーを分解することで、衛生用品に再利用可能なリサイクルパルプを製造する技術(特許文献4)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-183893号公報
【文献】特開2015-120834号公報
【文献】特開2013-198862号公報
【文献】特開2017-193819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
使用後の衛生用品のごみ処理問題に対して、使用済みの衛生用品に含まれる水分を効率的に除去できれば、焼却処理時の燃焼効率やリサイクル時の生産性が向上し、環境負荷が大幅に軽減されると期待できる。本発明の目的は、通常の使用時に良好な吸収特性を有し、かつ使用済みの衛生用品に含まれる水分の脱水処理が容易な吸水性樹脂粒子及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに内部架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A)を含有し、下記式(1)で示される離水率が70%以上である脱水処理が容易な吸水性樹脂粒子及びこれを含む衛生用品である。
離水率[%]={1-(1.0重量%塩化カルシウム水溶液処理後の保水量[g/g])/(生理食塩水に対する保水量[g/g])}×100 (1)
本発明はまた、上記吸水性樹脂粒子の製造方法であって、水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに内部架橋剤(b)を必須構成単位とする単量体組成物を重合して、架橋重合体(A)を含有する含水ゲルを得る重合工程、架橋重合体(A)の含水ゲルを細分する工程、細分した含水ゲルをゲル温度40℃~120℃でさらに混練細断する工程、及び前記混練細断した含水ゲルを乾燥した後に粉砕して、吸水性樹脂粒子を得る工程を含む、上記吸水性樹脂粒子の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の脱水処理が容易な吸水性樹脂粒子(以下、単に、本発明の吸水性樹脂粒子ともいう。)は、脱水剤で処理した際に優れた離水性を示す。また、本発明の吸水性樹脂粒子を含む紙おむつ等の衛生用品は、使用時には紙おむつとして必要な吸収性能を満たしながら、使用後には多価金属塩水溶液等の脱水剤の添加により、吸水樹脂粒子の含水率を大幅に低下させることができ、容易に脱水処理することが可能である。従って、焼却処理時の燃焼効率やリサイクル時の生産性が向上し、環境負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ゲル通液速度を測定するための濾過円筒管を模式的に表した断面図である。
図2】ゲル通液速度を測定するための加圧軸及びおもりを模式的に表した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の吸水性樹脂粒子は、水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに内部架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A)を含有する吸水性樹脂粒子である。
【0010】
本発明における水溶性ビニルモノマー(a1)としては特に限定はなく、公知のモノマー、例えば、特許第3648553号公報の0007~0023段落に開示されている少なくとも1個の水溶性置換基とエチレン性不飽和基とを有するビニルモノマー(例えばアニオン性ビニルモノマー、非イオン性ビニルモノマー及びカチオン性ビニルモノマー)、特開2003-165883号公報の0009~0024段落に開示されているアニオン性ビニルモノマー、非イオン性ビニルモノマー及びカチオン性ビニルモノマー並びに特開2005-75982号公報の0041~0051段落に開示されているカルボキシ基、スルホ基、ホスホノ基、水酸基、カルバモイル基、アミノ基及びアンモニオ基からなる群から選ばれる少なくとも1種を有するビニルモノマーが使用できる。
【0011】
加水分解により水溶性ビニルモノマー(a2)となるビニルモノマー(a2)(以下、加水分解性ビニルモノマー(a2)ともいう。)は特に限定はなく公知(たとえば、特許第3648553号公報の0024~0025段落に開示されている加水分解により水溶性置換基となる加水分解性置換基を少なくとも1個有するビニルモノマー、特開2005-75982号公報の0052~0055段落に開示されている少なくとも1個の加水分解性置換基(1,3-オキソ-2-オキサプロピレン(-CO-O-CO-)基、アシル基及びシアノ基等)を有するビニルモノマー)のビニルモノマー等が使用できる。なお、水溶性ビニルモノマーとは、25℃の水100gに少なくとも100g溶解する性質を持つビニルモノマーを意味する。また、加水分解性とは、50℃の水及び必要により触媒(酸又は塩基等)の作用により加水分解され水溶性になる性質を意味する。加水分解性ビニルモノマーの加水分解(a2)は、重合中、重合後及びこれらの両方のいずれでもよいが、得られる吸水性樹脂粒子の分子量の観点等から重合後が好ましい。
【0012】
これらのうち、吸収特性の観点等から、水溶性ビニルモノマー(a1)が好ましい。水溶性ビニルモノマー(a1)としては、好ましくはアニオン性ビニルモノマー、より好ましくはカルボキシ(塩)基、スルホ(塩)基、アミノ基、カルバモイル基、アンモニオ基又はモノ-、ジ-若しくはトリ-アルキルアンモニオ基を有するビニルモノマーである。これらのなかでは、より好ましくはカルボキシ(塩)基又はカルバモイル基を有するビニルモノマー、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸(塩)及び(メタ)アクリルアミド、特に好ましくは(メタ)アクリル酸(塩)、最も好ましくはアクリル酸(塩)である。
【0013】
なお、「カルボキシ(塩)基」は「カルボキシ基」又は「カルボキシレート基」を意味し、「スルホ(塩)基」は「スルホ基」又は「スルホネート基」を意味する。また、(メタ)アクリル酸(塩)はアクリル酸、アクリル酸塩、メタクリル酸又はメタクリル酸塩を意味し、(メタ)アクリルアミドはアクリルアミド又はメタクリルアミドを意味する。また、塩としては、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム及びカリウム等)塩、アルカリ土類金属(マグネシウム及びカルシウム等)塩又はアンモニウム(NH)塩等が含まれる。これらの塩のうち、吸収特性の観点等から、アルカリ金属塩及びアンモニウム塩が好ましく、さらに好ましくはアルカリ金属塩、特に好ましくはナトリウム塩である。
【0014】
水溶性ビニルモノマー(a1)としてアクリル酸やメタクリル酸等の酸基含有モノマーを用いる場合、吸水性能や残存モノマーの観点から、酸基含有モノマーの一部が塩基で中和されていることが好ましい。中和する塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物や、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩を使用できる。中和は、吸水性樹脂粒子の製造において、重合前、重合中、重合後及びこれらの両方のいずれで行っても良いが、例えば、重合前に酸基含有モノマーを中和する方法や重合後に酸基含有ポリマーを含水ゲルの状態で中和する等の方法が好ましい例として例示される。
【0015】
また、前記酸基含有モノマーを用いる場合の酸基の中和度は、50~80モル%であることが好ましい。中和度が50モル%未満の場合、得られる含水ゲル重合体の粘着性が高くなり、製造時及び使用時の作業性が悪化する場合がある。更に得られる吸水性樹脂粒子の保水量が低下する場合がある。一方、中和度が80%を超える場合、得られた樹脂のpHが高くなり人体の皮膚に対する安全性が懸念される場合がある。
【0016】
水溶性ビニルモノマー(a1)又は加水分解性ビニルモノマー(a2)のいずれかを構成単位とする場合、それぞれ単独で構成単位としてもよく、また、必要により2種以上を構成単位としてもよい。また、水溶性ビニルモノマー(a1)及び加水分解性ビニルモノマー(a2)を構成単位とする場合も同様である。また、水溶性ビニルモノマー(a1)及び加水分解性ビニルモノマー(a2)を構成単位とする場合、これらの含有モル比(a1/a2)は、75/25~99/1が好ましく、さらに好ましくは85/15~95/5、特に好ましくは90/10~93/7、最も好ましくは91/9~92/8である。この範囲であると、吸収性能がさらに良好となる。
【0017】
架橋重合体(A)の構成単位として、水溶性ビニルモノマー(a1)及び加水分解性ビニルモノマー(a2)の他に、これらと共重合可能なその他のビニルモノマー(a3)を構成単位とすることができる。
【0018】
共重合可能なその他のビニルモノマー(a3)としては特に限定はなく公知(たとえば、特許第3648553号公報の0028~0029段落に開示されている疎水性ビニルモノマー、特開2003-165883号公報、特開2005-75982号公報の0058段落に開示されているビニルモノマー)の疎水性ビニルモノマー等が使用でき、下記の(i)~(iii)のビニルモノマー等が使用できる。
(i)炭素数8~30の芳香族エチレン性モノマー
スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン及びヒドロキシスチレン等のスチレン、並びにビニルナフタレン及びジクロルスチレン等のスチレンのハロゲン置換体等。
(ii)炭素数2~20の脂肪族エチレンモノマー
アルケン[エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン及びオクタデセン等];並びにアルカジエン[ブタジエン及びイソプレン等]等。
(iii)炭素数5~15の脂環式エチレンモノマー
モノエチレン性不飽和モノマー[ピネン、リモネン及びインデン等];並びにポリエチレン性ビニル重合性モノマー[シクロペンタジエン、ビシクロペンタジエン及びエチリデンノルボルネン等]等。
【0019】
その他のビニルモノマー(a3)を構成単位とする場合、その他のビニルモノマー(a3)単位の含有量(モル%)は、水溶性ビニルモノマー(a1)単位及び加水分解性ビニルモノマー(a2)単位のモル数に基づいて、0.01~5が好ましく、さらに好ましくは0.05~3、よりさらに好ましくは0.08~2、特に好ましくは0.1~1.5である。なお、上述にもかかわらず、吸収特性の観点等から、その他のビニルモノマー(a3)単位の含有量が0モル%であることが最も好ましい。
【0020】
内部架橋剤(b)(以下、単に架橋剤(b)ともいう)としては特に限定はなく公知(例えば、特許第3648553号公報の0031~0034段落に開示されているエチレン性不飽和基を2個以上有する架橋剤、水溶性置換基と反応し得る官能基を少なくとも1個有してかつ少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する架橋剤及び水溶性置換基と反応し得る官能基を少なくとも2個有する架橋剤、特開2003-165883号公報の0028~0031段落に開示されているエチレン性不飽和基を2個以上有する架橋剤、エチレン性不飽和基と反応性官能基とを有する架橋剤及び反応性置換基を2個以上有する架橋剤、特開2005-75982号公報の0059段落に開示されている架橋性ビニルモノマー並びに特開2005-95759号公報の0015~0016段落に開示されている架橋性ビニルモノマー)の架橋剤等が使用できる。これらの内、吸収性能等の観点から、エチレン性不飽和基を2個以上有する架橋剤が好ましく、更に好ましいのはトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート及び炭素数2~10のポリオールのポリ(メタ)アリルエーテル、特に好ましいのはトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、テトラアリロキシエタン及びペンタエリスリトールトリアリルエーテル、最も好ましいのはペンタエリスリトールトリアリルエーテルである。架橋剤(b)は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0021】
架橋剤(b)単位の含有量(モル%)は、水溶性ビニルモノマー(a1)単位及び加水分解性ビニルモノマー(a2)単位の、その他のビニルモノマー(a3)を用いる場合は(a1)~(a3)の、合計モル数に基づいて、0.001~5が好ましく、更に好ましくは0.005~3、特に好ましくは0.01~1である。この範囲であると、吸収性能が更に良好となる。
【0022】
本発明の吸水性樹脂粒子の製造方法は、前述した水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)並びに内部架橋剤(b)を必須構成単位とする単量体組成物を重合して、架橋重合体(A)を含有する含水ゲルを得る重合工程、架橋重合体(A)の含水ゲルを細分する工程、細分した含水ゲルをゲル温度40℃~120℃でさらに混練細断する工程、及び前記混練細断した含水ゲルを乾燥した後粉砕して、吸水性樹脂粒子を得る工程を含む。
【0023】
架橋重合体(A)の製造方法としては、公知の溶液重合(断熱重合、薄膜重合及び噴霧重合法等;特開昭55-133413号公報等)や、公知の懸濁重合法や逆相懸濁重合(特公昭54-30710号公報、特開昭56-26909号公報及び特開平1-5808号公報等)によって架橋重合体(A)を含有する含水ゲル(架橋重合体と水とからなる。)を得ることができる。架橋重合体(A)は、1種単独でも良いし、2種以上の混合物であっても良い。
【0024】
重合方法の内、好ましいのは溶液重合法であり、有機溶媒等を使用する必要がなく生産コスト面で有利なことから、特に好ましいのは水溶液重合法であり、保水量が大きく、且つ水可溶性成分量の少ない吸水性樹脂が得られ、重合時の温度コントロールが不要である点から、水溶液断熱重合法が最も好ましい。
【0025】
水溶液重合を行う場合、水溶液中の単量体組成物濃度は、好ましくは10~60重量%、より好ましくは15~50重量%、さらに好ましくは20~40重量%である。溶媒には、水と有機溶媒とを含む混合溶媒を使用することができ、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド及びこれらの2種以上の混合物を挙げられる。水溶液重合を行う場合、有機溶媒の使用量(重量%)は、水の重量を基準として40以下が好ましく、更に好ましくは30以下である。
【0026】
重合に開始剤を用いる場合、従来公知のラジカル重合用開始剤が使用可能であり、例えば、アゾ化合物[アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシアノ吉草酸及び2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ハイドロクロライド等]、無機過酸化物(過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム及び過硫酸ナトリウム等)、有機過酸化物[過酸化ベンゾイル、ジ-t-ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、コハク酸パーオキサイド及びジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート等]及びレドックス触媒(アルカリ金属の亜硫酸塩又は重亜硫酸塩、亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸アンモニウム及びアスコルビン酸等の還元剤とアルカリ金属の過硫酸塩、過硫酸アンモニウム、過酸化水素及び有機過酸化物等の酸化剤との組み合わせよりなるもの)等が挙げられる。これらの触媒は、単独で使用してもよく、これらの2種以上を併用しても良い。
ラジカル重合開始剤の使用量(重量%)は、水溶性ビニルモノマー(a1)及び加水分解性ビニルモノマー(a2)の、その他のビニルモノマー(a3)を用いる場合は(a1)~(a3)の、合計重量に基づいて、0.0005~5が好ましく、更に好ましくは0.001~2である。
【0027】
重合方法が懸濁重合法又は逆相懸濁重合法である場合、必要に応じて、従来公知の分散剤又は界面活性剤の存在下に重合を行っても良い。また、逆相懸濁重合法の場合、従来公知のキシレン、ノルマルヘキサン及びノルマルヘプタン等の炭化水素系溶媒を使用して重合を行うことができる。
【0028】
重合開始温度は、使用する開始剤の種類によって適宜調整することができるが、0~100℃が好ましく、更に好ましくは5~80℃である。
【0029】
重合によって得られる含水ゲル重合体は、混練細断後、乾燥した後に粉砕することで架橋重合体(A)を得ることができる。本発明において混練細断とは、剪断力(シア)により含水ゲルの切断と切断された含水ゲル粒子の合着を繰り返しながら含水ゲルを細かくする工程であり、本混練細断工程により微細な含水ゲル粒子が凝集した含水ゲルが得られ、吸水性樹脂粒子の表面に凹凸を形成することができる。混練細断後のゲルの大きさ(最長径)は50μm~10cmが好ましく、更に好ましくは100μm~2cm、特に好ましくは1mm~1cmである。この範囲であると、乾燥工程での乾燥性が更に良好となる。
【0030】
混練粉砕後のゲル粒子の大きさ(最長径)は50μm~10cmが好ましく、更に好ましくは100μm~2cm、特に好ましくは1mm~1cmである。この範囲であると、乾燥工程での乾燥性が更に良好となり、また添加剤である疎水性物質(c)との混合性が良好となるため、結果として離水率や1.0重量%塩化カルシウム水溶液のゲル通液速度が向上する。
【0031】
混練細断は、公知の方法で行うことができ、混練細断装置(例えば、ニーダー、万能混合機、一軸又は二軸の混練押出機、ミンチ機及びミートチョッパー等)を使用して混練細断できる。脱水効率、および他物性との性能バランスの観点から40~120℃、好ましくは50~110℃である。混練細断回数はゲル粒子の大きさが前記範囲内であれば特に限定は無く、1回でも複数回でも良い。また、混練細断を複数回行う場合は、1つの粉砕装置で複数回行っても良いし、複数台の粉砕装置で連続的に行っても良い。
【0032】
本発明においては、重合によって得られる含水ゲル重合体は混練細断する前に細分する。本発明において細分とは、含水ゲル内部の構造を維持したまま含水ゲルを切断して細かくする工程であり、内部構造の観点から前述した混練細断とは異なる。混練細断工程前に細分することで、混練細断工程時、含水ゲルにかかる過剰な応力を緩和し、含水ゲル重合体の劣化を抑制することができるため、吸収性能が良好となり、吸水性樹脂粒子の粒子欠損度の極端な上昇を防止することが可能となる。
【0033】
細分の方法については特に限定はなく、例えばはさみで細分してもよいし、凍結した含水ゲルを粉砕装置(例えば、ハンマー式粉砕機、衝撃式粉砕機、ロール式粉砕機及びシェット気流式粉砕機)で粉砕してもよい。
【0034】
細分後のゲルの大きさ(最長径)は50μm~10cmが好ましく、更に好ましくは100μm~2cm、特に好ましくは500μm~1cmである。この範囲であると、その後の混練細断工程を円滑に行うことができ、吸水性樹脂粒子の吸収性能が良好になる場合がある。
【0035】
また、前述のとおり、重合後に得られた酸基含有ポリマーの含水ゲルを混練細断工程前又は混練細断工程中に塩基を混合して中和することもできる。なお、酸基含有ポリマーを中和する場合の酸基の中和度の好ましい範囲も、前述と同様である。
【0036】
上記混練細断工程によって得られる架橋重合体(A)を含有する含水ゲル粒子を乾燥した後、粉砕して、吸水性樹脂粒子が得られる。
【0037】
含水ゲル粒子中の溶媒(水を含む)を乾燥(留去を含む)する方法としては、80~300℃の温度の熱風で乾燥する方法、100~300℃に加熱されたドラムドライヤー等による薄膜乾燥法、減圧乾燥法、凍結乾燥法、赤外線による乾燥法、デカンテーション及び濾過等が適用できる。
【0038】
含水ゲル粒子の溶媒に水を含む場合、乾燥後の含水率(重量%)は、架橋重合体(A)の重量に基づいて、0~20が好ましく、更に好ましくは1~10、特に好ましくは2~9、最も好ましくは3~8である。この範囲であると、後の粉砕工程において粉砕性が良好となり、かつ吸収性能が更に良好となる。
【0039】
また、含水ゲル粒子の溶媒(有機溶媒及び水等)に有機溶媒を含む場合、乾燥後の有機溶媒の含有量(重量%)は、架橋重合体(A)の重量に基づいて、0~10が好ましく、更に好ましくは0~5、特に好ましくは0~3、最も好ましくは0~1である。この範囲であると、吸水性樹脂粒子の吸収性能が更に良好となる。
【0040】
なお、有機溶媒の含有量及び含水率は、赤外水分測定器[(株)KETT社製JE400等:120±5℃、30分、加熱前の雰囲気湿度50±10%RH、ランプ仕様100V、40W]により加熱したときの測定試料の重量減量から求められる。
【0041】
含水ゲル粒子を乾燥した後に粉砕する方法については、特に限定はなく、公知の粉砕装置(例えば、ハンマー式粉砕機、衝撃式粉砕機、ロール式粉砕機及びシェット気流式粉砕機等)が使用できる。得られた吸水性樹脂粒子は、必要によりふるい分け等により分級して、粒度調整できる。
【0042】
粉砕後、必要によりふるい分け等により分級した吸水性樹脂粒子の重量平均粒子径(μm)は、150~500が好ましく、更に好ましくは250~500、最も好ましくは350~450である。この範囲であると、吸収性能や離水率や1.0重量%塩化カルシウム水溶液のゲル通液速度の向上に更に良好となる。
【0043】
なお、重量平均粒子径は、ロータップ試験篩振とう機及び標準ふるい(JIS Z8801-1:2006)を用いて、ペリーズ・ケミカル・エンジニアーズ・ハンドブック第6版(マックグローヒル・ブック・カンパニー、1984、21頁)に記載の方法で測定される。すなわち、JIS標準ふるいを、上から1000μm、850μm、710μm、500μm、425μm、355μm、250μm、150μm、125μm、75μm及び45μm、並びに受け皿、の順に組み合わせる。最上段のふるいに測定粒子の約50gを入れ、ロータップ試験篩振とう機で5分間振とうさせる。各ふるい及び受け皿上の測定粒子の重量を秤量し、その合計を100重量%として各ふるい上の粒子の重量分率を求め、この値を対数確率紙[横軸がふるいの目開き(粒子径)、縦軸が重量分率]にプロットした後、各点を結ぶ線を引き、重量分率が50重量%に対応する粒子径を求め、これを重量平均粒子径とする。
【0044】
また、吸水性樹脂粒子に含まれる微粒子の含有量は少ない方が吸収性能の良化につながるため、吸水性樹脂粒子の合計重量に占める106μm以下(好ましくは150μm以下)の微粒子の含有率(重量%)は3以下が好ましく、更に好ましくは1以下である。微粒子の含有量は、上記の重量平均粒子径を求める際に作成するグラフを用いて求めることができる。
【0045】
吸水性樹脂粒子の形状については特に限定はなく、不定形破砕状、リン片状、パール状及び米粒状等が挙げられる。これらの内、紙おむつ用途等での繊維状物とのからみが良く、繊維状物からの脱落の心配がないという観点から、不定形破砕状が好ましい。
【0046】
本発明の吸水性樹脂粒子は、疎水性物質(c)を含有することができる。(c)としては、炭化水素基を含有する疎水性物質(c1)、フッ素原子をもつ炭化水素基を含有する疎水性物質(c2)及びポリシロキサン構造をもつ疎水性物質(c3)等が含まれる。
【0047】
炭化水素基を含有する疎水性物質(c1)としては、ポリオレフィン樹脂、ポリオレフィン樹脂誘導体、ポリスチレン樹脂、ポリスチレン樹脂誘導体、ワックス、長鎖脂肪酸エステル、長鎖脂肪酸及びその塩、長鎖脂肪族アルコール、長鎖脂肪族アミド及びこれらの2種以上の混合物等が含まれる。
【0048】
ポリオレフィン樹脂としては、炭素数2~4のオレフィン{エチレン、プロピレン、イソブチレン及びイソプレン等}を必須構成単量体(オレフィンの含有量はポリオレフィン樹脂の重量に基づいて、少なくとも50重量%)としてなる重量平均分子量1000~100万の重合体{たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリ(エチレン-イソブチレン)及びイソプレン等}が挙げられる。
【0049】
ポリオレフィン樹脂誘導体としては、ポリオレフィン樹脂にカルボキシ基(-COOH)や1,3-オキソ-2-オキサプロピレン(-COOCO-)等を導入した重量平均分子量1000~100万の重合体{たとえば、ポリエチレン熱減成体、ポリプロピレン熱減成体、マレイン酸変性ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、マレイン酸変性ポリプロピレン、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-無水マレイン酸共重合体、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体、マレイン化ポリブタジエン、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びエチレン-酢酸ビニル共重合体のマレイン化物等}が挙げられる。
【0050】
ポリスチレン樹脂としては、重量平均分子量1000~100万の重合体等が使用できる。
【0051】
ポリスチレン樹脂誘導体としては、スチレンを必須構成単量体(スチレンの含有量は、ポリスチレン誘導体の重量に基づいて、少なくとも50重量%)としてなる重量平均分子量1000~100万の重合体{たとえば、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体及びスチレン-イソブチレン共重合体等}が挙げられる。
【0052】
ワックスとしては、融点50~200℃のワックス{たとえば、パラフィンワックス、ミツロウ、カルナウバワックス及び牛脂等}が挙げられる。
【0053】
長鎖脂肪酸エステルとしては、炭素数8~30の脂肪酸と炭素数1~12のアルコールとのエステル{たとえば、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、グリセリンラウリン酸モノエステル、グリセリンステアリン酸モノエステル、グリセリンオレイン酸モノエステル、ペンタエリスリットラウリン酸モノエステル、ペンタエリスリットステアリン酸モノエステル、ペンタエリスリットオレイン酸モノエステル、ソルビットラウリン酸モノエステル、ソルビットステアリン酸モノエステル、ソルビットオレイン酸モノエステル、ショ糖パルミチン酸モノエステル、ショ糖パルミチン酸ジエステル、ショ糖パルミチン酸トリエステル、ショ糖ステアリン酸モノエステル、ショ糖ステアリン酸ジエステル、ショ糖ステアリン酸トリエステル及び牛脂等}が挙げられる。
【0054】
長鎖脂肪酸及びその塩としては、炭素数8~30の脂肪酸{たとえば、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ダイマー酸及びベヘニン酸等}が挙げられ、その塩としては亜鉛、カルシウム、マグネシウム又はアルミニウム(以下、それぞれZn、Ca、Mg、Alと略す)との塩{たとえば、パルミチン酸Ca、パルミチン酸Al、ステアリン酸Ca、ステアリン酸Mg、ステアリン酸Al等}が挙げられる。
【0055】
長鎖脂肪族アルコールとしては、炭素数8~30の脂肪族アルコール{たとえば、ラウリルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等}が挙げられる。吸収性物品の耐モレ性の観点等から、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコールが好ましく、さらに好ましくはステアリルアルコールである。
【0056】
長鎖脂肪族アミドとしては、炭素数8~30の長鎖脂肪族一級アミンと炭素数1~30の炭化水素基を有するカルボン酸とのアミド化物、アンモニア又は炭素数1~7の1級アミンと炭素数8~30の長鎖脂肪酸とのアミド化物、炭素数8~30の脂肪族鎖を少なくとも1つ有する長鎖脂肪族二級アミンと炭素数1~30のカルボン酸とのアミド化物及び炭素数1~7の脂肪族炭化水素基を2個有する二級アミンと炭素数8~30の長鎖脂肪酸とのアミド化物が挙げられる。
【0057】
炭素数8~30の長鎖脂肪族一級アミンと炭素数1~30の炭化水素基を有するカルボン酸とのアミド化物としては、1級アミンとカルボン酸とが1:1で反応した物と1:2で反応した物に分けられる。1:1で反応した物としては、酢酸N-オクチルアミド、酢酸N-ヘキサコシルアミド、ヘプタコサン酸N-オクチルアミド及びヘプタコサン酸N-ヘキサコシルアミド等が挙げられる。1:2で反応したものとしては、二酢酸N-オクチルアミド、二酢酸N-ヘキサコシルアミド、ジヘプタコサン酸N-オクチルアミド及びジヘプタコサン酸N-ヘキサコシルアミド等が挙げられる。なお、1級アミンとカルボン酸とが1:2で反応した物の場合、使用するカルボン酸は、同一でも異なっていてもよい。
【0058】
アンモニアまたは炭素数1~7の1級アミンと炭素数8~30の長鎖脂肪酸とのアミド化物としては、アンモニア又は1級アミンとカルボン酸とが1:1で反応した物と1:2で反応した物に分けられる。1:1で反応した物としては、ノナン酸アミド、ノナン酸メチルアミド、ノナン酸N-ヘプチルアミド、ヘプタコサン酸アミド、ヘプタコサン酸N-メチルアミド、ヘプタコサン酸N-ヘプチルアミド及びヘプタコサン酸N-ヘキサコシルアミド等が挙げられる。1:2で反応したものとしては、ジノナン酸アミド、ジノナン酸N-メチルアミド、ジノナン酸N-ヘプチルアミド、ジオクタデカン酸アミド、ジオクタデカン酸N-エチルアミド、ジオクタデカン酸N-ヘプチルアミド、ジヘプタコサン酸アミド、ジヘプタコサン酸N-メチルアミド、ジヘプタコサン酸N-ヘプチルアミド及びジヘプタコサン酸N-ヘキサコシルアミド等が挙げられる。なお、アンモニア又は1級アミンとカルボン酸とが1:2で反応した物としては、使用するカルボン酸は、同一でも異なっていてもよい。
【0059】
炭素数8~30の脂肪族鎖を少なくとも1つ有する長鎖脂肪族二級アミンと炭素数1~30のカルボン酸とのアミド化物としては、酢酸N-メチルオクチルアミド、酢酸N-メチルヘキサコシルアミド、酢酸N-オクチルヘキサコシルアミド、酢酸N-ジヘキサコシルアミド、ヘプタコサン酸N-メチルオクチルアミド、ヘプタコサン酸N-メチルヘキサコシルアミド、ヘプタコサン酸N-オクチルヘキサコシルアミド及びヘプタコサン酸N-ジヘキサコシルアミド等が挙げられる。
【0060】
炭素数1~7の脂肪族炭化水素基を2個有する二級アミンと炭素数8~30の長鎖脂肪酸とのアミド化物としては、ノナン酸N-ジメチルアミド、ノナン酸N-メチルヘプチルアミド、ノナン酸N-ジヘプチルアミド、ヘプタコサン酸N-ジメチルアミド、ヘプタコサン酸N-メチルヘプチルアミド及びヘプタコサン酸N-ジヘプチルアミド等が挙げられる。
【0061】
疎水性物質(c1)としては、脱水効率及び吸収性物品の耐モレ性の観点から、長鎖脂肪酸エステル、長鎖脂肪酸及びその塩、長鎖脂肪族アルコール並びに長鎖脂肪族アミドが好ましく、更に好ましくはソルビットステアリン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ステアリン酸、ステアリン酸Mg、ステアリン酸Ca、ステアリン酸Zn及びステアリン酸Al、特に好ましくはショ糖ステアリン酸エステル及びステアリン酸Mgである。
【0062】
フッ素原子をもつ炭化水素基を含有する疎水性物質(c2)としては、パーフルオロアルカン、パーフルオロアルケン、パーフルオロアリール、パーフルオロアルキルエーテル、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルアルコール及びこれらの2種以上の混合物等が含まれる。
【0063】
ポリシロキサン構造をもつ疎水性物質(c3)としては、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン{ポリオキシエチレン変性ポリシロキサン及びポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)変性ポリシロキサン等}、カルボキシ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、アルコキシ変性ポリシロキサン等及びこれらの混合物等が含まれる。
【0064】
カルボキシ変性ポリシロキサンとしては、例えば、X-22-3701E、X-22-3710(いずれも信越化学工業社製)、DOWSIL(型番 BY16-880Fluid)、DOWSIL(型番BY16-880)(ダウ・東レ株式会社製)などが挙げられる。カルボキシル基のポリシロキサン主鎖に対する位置は、側鎖及び/または末端である。
【0065】
エポキシ変性ポリシロキサンとしては、例えば、X-22-343(信越化学工業社製)、KF-101、KF-1001、X-22-2000、X-22-2046、KF-102、X-22-4741、KF-1002、KF-1005(いずれも信越化学工業社製)、DOWSIL(型番BY 16-839Fluid)、DOWSIL(型番 BY8411Fluid)、DOWSIL(型番BY 8413Fluid)、DOWSIL(型番 BY8421Fluid)(いずれもダウ・東レ株式会社製)、SF8411、SF8413,BY16-839、BY16-876、FZ-3736、SF8421(いずれも東レ・ダウコーニング社製)などが挙げられる。エポキシ基のポリシロキサン主鎖に対する位置は、側鎖及び/または末端である。
【0066】
アミノ変性ポリシロキサンとしては、変性基が1級アミンのモノアミン変性タイプと、2級アミンのジアミン変性タイプのものが挙げられる。
モノアミノ変性タイプとしては、例えば、KF-868、KF-865、KF-864、PAM-E、KF-8010、X-22-161A、X-22-161B、KF-8012、KF-8008、X-22-1660B-3、X-22-9409(いずれも信越化学工業社製)、DOWSIL(型番 BY16-205)、DOWSIL(型番 BY16-213)、DOWSIL(型番 BY16-849Fluid)、DOWSIL(型番 BY16-853U)、DOWSIL(型番 BY16-871)、DOWSIL(型番 BY16-872)、DOWSIL(型番 BY16-879B)、DOWSIL(型番 BY16-892)、DOWSIL(型番 FZ-3705)、DOWSIL(型番 FZ-3710Fluid)、DOWSIL(型番 FZ-3760)、DOWSIL(型番 FZ-3785)、DOWSIL(型番 SF8417Fluid)(いずれも東レ・ダウ株式会社製)などが挙げられる。ジアミノ変性タイプとしては、例えば、KF-859、KF-393、KF-860、KF-860、KF-8004、KF-8002、KF-8005、KF-867、KF-8021、KF-869、KF-861(いずれも信越化学工業社製)などが挙げられる。ジアミノ基のポリシロキサン主鎖に対する位置は、側鎖及び/または末端である。
【0067】
アルコキシ変性ポリシロキサンとしては、例えば、X-22-4952、X-22-4272、KF-6123、KF-351A、KF-352A、KF-353、KF-354L、KF-355A、KF-615A、KF-945、KF-640、KF-642、KF-643、KF-644、KF-6020、KF-6204、X-22-4515、KF-6011,KF-6012、KF-6015、KF-6017、DOWSIL(型番 501W Additive)、DOWSIL(型番 FZ-2110)、DOWSIL(型番 FZ-2123)、DOWSIL(型番 L-7001)、DOWSIL(型番 SF8410Fluid)、DOWSIL(型番 SH3746Fluid)、DOWSIL(型番 SH8400Fluid)、DOWSIL(型番 SH8700Fluid)(いずれも東レ・ダウ株式会社製)などが挙げられる。アルコキシ基のポリシロキサン主鎖に対する位置は、側鎖及び/または末端である。
【0068】
疎水性物質(c3)としては、脱水効率及び吸収性物品の耐モレ性の観点から、カルボキシ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、アルコキシ変性ポリシロキサンが好ましく、更に好ましくはカルボキシ変性ポリシロキサンである。
【0069】
疎水性物質(c)のHLB値は、1~10が好ましく、さらに好ましくは1~8、特に好ましくは1~7である。この範囲であると、吸収性物品の耐モレ性がさらに良好となる。なお、HLB値は、親水性-疎水性バランス(HLB)値を意味し、小田法(界面活性剤入門、212頁、藤本武彦、三洋化成工業株式会社発行、2007年発行)により求められる。
【0070】
疎水性物質(c)のうち、脱水効率及び吸収性物品の耐モレ性の観点から、炭化水素基を含有する疎水性物質(c1)、またはポリシロキサン構造をもつ疎水性物質(c3)が好ましい。更に好ましくは、疎水性物質(c3)である。
【0071】
疎水性物質(c)の含有量(重量%)は、吸水特性(特に、吸水速度と通液速度)の観点から、架橋重合体(A)の重量に基づいて、0.001~2.0重量%であり、好ましくは0.01~1.0重量%、特に好ましくは0.02~0.3重量%である。
【0072】
疎水性物質(c)は、吸水性樹脂粒子の何れの箇所に存在していてもよいが、吸水特性(特に、吸水速度)及び離水率の観点から、吸水性樹脂粒子の内部に存在することが好ましい。
【0073】
疎水性物質(c)は、前述した混練細断工程時において、架橋重合体(A)を含有する含水ゲルが(c)を含有していればよく、重合工程又は混練細断工程において(c)を含有することが好ましい。(c)を添加する方法としては、重合工程開始後であって重合工程完了前において重合液に添加する方法、重合工程完了後の混練細断工程前において含水ゲルに添加する方法、混練細断工程中の含水ゲル粒子に添加する方法が挙げられるが、離水率向上の観点から、重合工程完了後の混練細断工程前において含水ゲルに添加する方法、又は混練細断工程中の含水ゲル粒子に添加する方法が好ましく、さらに好ましくは混練細断工程中の含水ゲル粒子に添加する方法である。なお、疎水性物質(c)は、水及び/又は有機溶媒に、溶解及び/又は分散した形態でも添加できる。
【0074】
吸水性樹脂粒子は、さらに粒子表面が表面架橋されていることが好ましい。従って、本発明の製造方法は、前述の含水ゲル粒子を乾燥し、粉砕した後、表面架橋する工程を含んでも良い。表面架橋することにより更にゲル強度を向上させることができ、実使用において望ましい保水量と荷重下における吸収量とを満足させることができる。なお、含水ゲル粒子に対して表面架橋を行う工程を単に架橋工程ともいう。
【0075】
吸水性樹脂粒子を表面架橋する方法としては、従来公知の方法、例えば、吸水性樹脂を粒子状とした後、表面架橋剤(e)、水及び溶媒の混合溶液を混合し、加熱反応する方法が挙げられる。混合する方法としては、吸水性樹脂粒子に上記混合溶液を噴霧するか、上記混合溶液に吸水性樹脂粒子をディッピングする方法等が挙げられ、好ましくは、吸水性樹脂粒子に上記混合溶液を噴霧して混合する方法である。
【0076】
表面架橋剤(e)としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル及びポリグリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物、グリセリン及びエチレングリコール等の多価アルコール、エチレンカーボネート、ポリアミン並びに多価金属化合物等が挙げられる。これらの内、比較的低い温度で架橋反応を行うことができる点で好ましいのは、ポリグリシジル化合物である。これらの表面架橋剤は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0077】
表面架橋剤(e)の使用量は、架橋前の吸水性樹脂粒子の重量に基づいて、好ましくは0.001~5重量%、更に好ましくは0.005~2重量%である。表面架橋剤(e)の使用量が0.001重量%未満の場合は、表面架橋度が不足し、荷重下における吸収量の向上効果が不充分となる場合がある。一方、表面架橋剤(e)の使用量が5重量%を超える場合は、表面の架橋度が過度となりすぎて保水量が低下する場合がある。
【0078】
表面架橋時の水の使用量は、架橋前の吸水性樹脂粒子の重量に基づいて、好ましくは0.5~10重量%、更に好ましくは1~7重量%である。水の使用量が0.5重量%未満の場合、表面架橋剤(e)の吸水性樹脂粒子内部への浸透度が不充分となり、荷重下における吸収量の向上効果が乏しくなる場合がある。一方、水の使用量が10重量%を越えると、表面架橋剤(e)の内部への浸透が過度となり、荷重下における吸収量の向上は認められるものの、保水量が低下する場合がある。
【0079】
表面架橋時に水と併用して使用される溶媒としては従来公知のものが使用可能であり、表面架橋剤(e)の吸水性樹脂粒子内部への浸透度合い、表面架橋剤(e)の反応性等を考慮し、適宜選択して使用することができるが、好ましくは、メタノール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等の水に溶解しうる親水性有機溶媒である。溶媒は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0080】
溶媒の使用量は、溶媒の種類により適宜調整できるが、表面架橋前の吸水性樹脂粒子の重量に基づいて、好ましくは1~10重量%である。また、水に対する溶媒の比率についても任意に調整することができるが、好ましくは重量基準で20~80重量%、更に好ましくは30~70重量%である。
【0081】
表面架橋を行うには、表面架橋剤(e)と水と溶媒との混合溶液を従来公知の方法で吸水性樹脂粒子と混合し、加熱反応を行う。反応温度は、好ましくは100~230℃、更に好ましくは120~180℃である。反応時間は、反応温度により適宜調整することができるが、好ましくは3~60分、更に好ましくは10~45分である。表面架橋して得られる吸水性樹脂粒子を、最初に用いた表面架橋剤と同種又は異種の表面架橋剤を用いて、更に表面架橋することも可能である。
【0082】
表面架橋の後、必要により篩別して粒度調整してもよい。粒度調整後に得られた粒子の重量平均粒子径、微粒子の含有量の好ましい範囲は、前述と同様である。また、含水ゲル粒子に対して表面架橋を行った後の粒度調節工程を架橋工程後の後工程、あるいは単に後工程ともいう。
【0083】
架橋工程及び/又は架橋工程後の後工程で、疎水性物質(c)を水及び/又は有機溶媒に、溶解及び/又は分散した形態でも添加できる。架橋工程及び/又は架橋工程後の後工程で添加することで、粒子表面に均一的に添加することができるため脱水効率を向上させることができる。
【0084】
本発明の吸水性樹脂粒子は、更に多価金属塩(f)を含有してもよく、このために、本発明の製造方法は、更に多価金属塩(f)と混合する工程を含んでも良い。多価金属塩(f)を含有することで、吸水性樹脂粒子の耐ブロッキング性及び通液性が向上する。多価金属塩(f)としては、マグネシウム、カルシウム、ジルコニウム、アルミニウム及びチタニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属と前記の無機酸又は有機酸との塩が挙げられる。
【0085】
多価金属塩(f)としては、入手の容易性や溶解性の観点から、アルミニウムの無機酸塩及びチタニウムの無機酸塩が好ましく、更に好ましいのは硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム及び硫酸ナトリウムアルミニウム、特に好ましいのは硫酸アルミニウム及び硫酸ナトリウムアルミニウム、最も好ましいのは硫酸ナトリウムアルミニウムである。これらは1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0086】
多価金属塩(f)の使用量(重量%)は、吸収性能及び耐ブロッキング性の観点から架橋重合体(A)の重量に基づいて、0.01~5が好ましく、更に好ましくは0.05~4、特に好ましくは0.1~3である。
【0087】
多価金属塩(f)と混合するタイミングとしては特に制限はないが、前記の含水ゲルを乾燥して吸水性樹脂粒子を得た以降に混合することが吸収性能及び耐ブロッキング性の観点から好ましい。
【0088】
本発明の吸水性樹脂粒子はさらに表面に無機質粉末をコーティングすることもできる。無機質粉末としては、親水性無機物粒子及び疎水性無機粒子等が含まれる。親水性無機物粒子としては、ガラス、シリカゲル、シリカ及びクレー等の粒子が挙げられる。疎水性無機物粒子としては、炭素繊維、カオリン、タルク、マイカ、ベントナイト、セリサイト、アスベスト及びシラス等の粒子が挙げられる。これらのうち、親水性無機粒子が好ましく、最も好ましいのはシリカである。
【0089】
親水性無機粒子及び疎水性無機粒子の形状としては、不定形(破砕状)、真球状、フィルム状、棒状及び繊維状等のいずれでもよいが、不定形(破砕状)又は真球状が好ましく、さらに好ましくは真球状である。
【0090】
無機質粉末の含有量(重量%)は、吸水性樹脂粒子の重量に基づいて、0.01~3.0が好ましく、さらに好ましくは0.05~1.0、次に好ましくは0.1~0.8、特に好ましくは0.2~0.7、最も好ましくは0.3~0.6である。この範囲であると、吸収性物品のゲル通液速度がさらに良好となる。
【0091】
本発明の吸水性樹脂粒子には、他の添加剤{たとえば、公知(特開2003-225565号、特開2006-131767号等)の防腐剤、防かび剤、抗菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、芳香剤、消臭剤及び有機質繊維状物等}を含むこともできる。これらの添加剤を含有させる場合、添加剤の含有量(重量%)は、吸水性樹脂粒子の重量に基づいて、0.001~10が好ましく、さらに好ましくは0.01~5、特に好ましくは0.05~1、最も好ましくは0.1~0.5である。
【0092】
本発明の吸水性樹脂粒子の見かけ密度(g/ml)は、0.40~0.62が好ましく、更に好ましくは0.45~0.60、特に好ましくは0.48~0.58である。この範囲であると、離水率とゲル通液速度が更に良好となる。吸水性樹脂粒子の見かけ密度は、JIS K7365:1999に準拠して、25℃で測定される。
【0093】
本発明の吸水性樹脂粒子の生理食塩水に対する保水量(g/g)は30~50であることが好ましく、より好ましくは33~49であり、36~48が更に好ましく、39~47が特に好ましい。30未満であると、繰り返し使用時に漏れが生じやすく好ましくない。また、50を超えるとブロッキングしやすくなるため好ましくない。保水量は、架橋剤(b)および表面架橋剤(e)の種類と量で適宜調整することができる。従って、例えば、保水量を上げる必要がある場合、架橋剤(b)および表面架橋剤(e)の使用量を低下させることで容易に実現することができる。
【0094】
本発明の吸水性樹脂粒子の生理食塩水のゲル通液速度(ml/分)は5~250であることが好ましく、さらに好ましくは10~230、特に好ましくは30~210である。生理食塩水のゲル通液速度(ml/分)が5未満であると液の拡散性が低下し、その結果、漏れやかぶれに繋がる懸念あり、250を超えると液の拡散性が大き過ぎるため、吸水性樹脂粒子に吸水される前に吸収体から漏れてしまう懸念がある。
【0095】
本発明における離水率は、下記式(1)で示される値であり、生理食塩水に対する保水量と、保水量測定後の膨潤ゲルを1.0重量%塩化カルシウム水溶液で処理した後の保水量との比率から算出される。即ち、脱水剤処理前の膨潤ゲルの重量に対する処理後の分離された水の重量比率を示す。従って、離水率が高いほど、所定の脱水剤処理による脱水効率が優れていることを意味する。
離水率[%]={1-(1.0重量%塩化カルシウム水溶液処理後の保水量[g/g])/(生理食塩水に対する保水量[g/g])}×100 (1)
なお、具体的な測定方法については後述する。
【0096】
本発明の吸水性樹脂粒子の離水率(%)は脱水処理の効率性の観点から、70以上であり、より好ましくは73以上であり、特に好ましくは75以上である。上限値は高いほど好ましく特に制限されないが、他物性との性能バランスや生産性の観点から、好ましくは95以下、より好ましくは90以下である。離水率を向上させるための手段としては、粒子の比表面積を広げることや粒子内又は粒子表面の親水性と疎水性のバランスを調整することが考えられる。達成するための手段としては、例えば、重合工程、混練細断工程、架橋工程、及び/又は架橋工程後の後工程において疎水性物質を併用することや、含水ゲルを混練する工程におけるゲル温度を調整すること、含水ゲルから脱水する際の乾燥時の加熱温度を上げること、架橋工程での加熱温度を上げること、重量平均粒子径を下げることなどが挙げられる。含水ゲルを混練する工程におけるゲル温度は、脱水効率、および他物性との性能バランスから好ましくは40~120℃、より好ましくは50~110℃である。含水ゲルから脱水する際の乾燥時の加熱温度としては、他物性との性能バランスや生産性の観点から、好ましくは100~300℃、より好ましくは110~280℃である。300℃を超えて加熱した場合、吸水性樹脂粒子が熱劣化を受けるため好ましくない。架橋工程での加熱温度としては、好ましくは100~230℃、より好ましくは120~180℃である。この範囲であると、疎水性物質が融解、又は粘度が低下することで吸収性樹脂粒子表面を被覆するためゲル同士の合着を防止し、脱水剤との反応点を増やすことができると考えられる。重量平均粒子径は、脱水性と他物性の性能バランスの観点から、150μmから500μmが好ましく、より好ましくは200μmから400μmである。
【0097】
本発明の吸水性樹脂粒子のイオン交換水による再膨潤倍率(%)は、下記式(2)で示される値であり、保水量測定後の膨潤ゲルを1.0重量%塩化カルシウム水溶液で脱水処理した後、イオン交換水により再度膨潤させた保水量と生理食塩水に対する保水量の比率から算出される。従って、イオン交換水による再膨潤倍率が低いほど、水での希釈下において脱水剤による脱水効果が維持されていることを意味する。
イオン交換水による再膨潤倍率[%]=(1.0重量%塩化カルシウム水溶液処理後のイオン交換水に対する保水量[g/g])/(生理食塩水に対する保水量[g/g]×100 (2)
なお、具体的な測定方法については後述する。
【0098】
本発明の吸水性樹脂粒子のイオン交換水による再膨潤倍率(%)は脱水処理の効率性の観点から、110以下であり、より好ましくは105以下である。下限値は低いほど好ましく特に制限されないが、吸収性能とのバランスや生産性の観点から、好ましくは80以上である。再膨潤倍率を低下させるための手段としては、粒子の比表面積を広げることや粒子内又は粒子表面の親水性と疎水性のバランスを調整することや、粒子内部のアニオン濃度を上げたり、脱水剤処理後の吸水性樹脂粒子の表面積を小さく保つことが考えられる。具体的には、重合工程、混練細断工程、架橋工程、又は架橋工程後の後工程において疎水性物質を併用することや、含水ゲルから脱水する際の乾燥時の加熱温度を上げること、重量平均粒子径を小さくすることなどが挙げられる。疎水性物質が吸収性樹脂粒子表面に存在することで、吸水樹脂粒子とその周囲に存在する水が接触することを妨げると想定され、結果としてゲルの再膨潤を抑止すると考えられる。
【0099】
本発明の1.0重量%塩化カルシウム水溶液のゲル通液速度は、下記式で示される値であり、生理食塩水で膨潤させた測定試料のゲルを、膨潤に使用した液の一部と共に80mlの1.0%重量塩化カルシウム水溶液に入れて、20mlの生理食塩水と塩化カルシウムの混合水溶液が、膨潤ゲルの間を流れ落ちる時間(T3;秒)から、20mlの生理食塩水と塩化カルシウムの混合水溶液が測定試料の無い状態で流れ落ちる時間(T4;秒)を差し引いた値から算出される。従って、0.1重量%塩化カルシウム水溶液のゲル通液速度が大きいほど、脱水剤が膨潤し、凝集した吸水性樹脂の粒子間に浸透しやすく、脱水効率が優れていることを意味する。
1.0重量%塩化カルシウム水溶液のゲル通液速度(ml/分)=20ml×60/(T3-T4)
なお、具体的な測定方法については後述する。
【0100】
本発明の吸水性樹脂粒子の1.0重量%塩化カルシウム水溶液のゲル通液速度(ml/分)は脱水処理の効率性の観点から、200以上であり、より好ましくは300以上、特に好ましくは500以上である。上限値は高いほど好ましく特に制限されないが、他物性との性能バランスや生産性の観点から、好ましくは2300以下、より好ましくは2000以下である。1.0重量%塩化カルシウムの水溶液ゲル通液速度は、粒子の比表面積を広げることや粒子内又は粒子表面の親水性と疎水性のバランスを調整することで制御される。
【0101】
本発明の吸水性樹脂粒子の荷重下吸収量(g/g)は19以上であることが好ましい。19未満であると、繰り返し使用時に漏れが生じやすく好ましくない。また、上限値は高いほど好ましく特に制限されないが、他物性との性能バランスや生産性の観点から、好ましくは27以下、より好ましくは25以下である。荷重下吸収量は、架橋剤(b)および表面架橋剤(e)の種類と量で適宜調整することができる。従って、例えば、荷重下吸収量を上げる必要がある場合、架橋剤(b)および表面架橋剤(e)の使用量を上げることで容易に実現することができる。
【0102】
本発明の衛生用品は、本発明の吸水性樹脂粒子を含み、使用済品からの水分の脱水処理が容易である。衛生用品としては、例えば、紙おむつ、生理用ナプキン等が挙げられるが、衛生用品のみならず、各種水性液体の吸収剤や保持剤用途、ゲル化剤用途等の各種用途に使用されるものとして適用可能である。衛生用品の製造方法等は、公知のもの(特開2003-225565号公報、特開2006-131767号公報及び特開2005-097569号公報等に記載のもの)と同様である。
【0103】
本発明の衛生用品は、吸収体として吸水性樹脂粒子を単独で用いても良く、他の材料と共に用いて吸収体としても良い。他の材料としては繊維状物等が挙げられる。繊維状物と共に用いた場合の吸収体の構造及び製造方法等は、公知のもの(特開2003-225565号公報、特開2006-131767号公報及び特開2005-097569号公報等)と同様である。
【0104】
吸水性樹脂粒子を、繊維状物と共に吸収体とする場合、吸水性樹脂粒子と繊維の重量比率(吸水性樹脂粒子の重量/繊維の重量)は30/70~90/10が好ましく、更に好ましくは40/60~70/30である。上記繊維状物としては、セルロース系繊維、有機系合成繊維及びセルロース系繊維と有機系合成繊維との混合物等が挙げられる。
【0105】
次に、本発明の衛生用品の処理方法について説明する。本発明の衛生用品の処理方法は、吸水性樹脂粒子を含み、使用済となった衛生用品の処理方法であって、使用済みとなった衛生用品を粉砕する工程(以下、「粉砕工程」と称する)と、衛生用品又は粉砕された衛生用品に含まれる吸水性樹脂粒子を脱水剤により脱水処理する工程(以下、脱水工程と称する)、粉砕及び脱水処理された衛生用品を水と混合して固液処理装置に輸送する工程(以下、「輸送工程」と称する)を含む。上記衛生用品は、さらにパルプ繊維を含んでいてもよい。
【0106】
粉砕工程は、衛生用品を粉砕して粉砕物を得る工程である。粉砕は公知の粉砕機又は破砕機を使用することができ、例えば生ごみ粉砕機に使われているディスポーザー型破砕機(高速回転するターンテーブルで該衛生用品を壁面に飛ばし、ターンテーブル周縁部についている固定式、又は可変式のハンマーと壁面の固定刃等で破砕)、カッターミル、一軸型破砕機、二軸型破砕機、同軸心型破砕機、ハンマー式破砕機、ボールミル等が挙げられるが、衛生用品の素材にはプラスチック製のシートや不織布、伸縮性のある材料が含まれることから、高速回転しながら刃で切断するディスポーザー型破砕機やカッターミルが特に好適である。
【0107】
衛生用品の粉砕物は、水性懸濁液としてもよい。水性懸濁液を得る方法としては、水を加えて衛生用品を膨潤させた後粉砕する方法、粉砕しながら水を加えて粉砕する方法、粉砕後に水を加える方法があるが、粉砕機への負荷低減の観点から、水を加えて衛生用品を膨潤させた後粉砕する方法が好ましい。
【0108】
粉砕後の衛生用品の粉砕物の大きさの好適な範囲は、後述する固液分離装置による分離回収方式にも依存するが、水流での輸送性の観点から、好ましくは衛生用品の一片の長さが100mm以下である。粉砕物の大きさは、前述した粉砕機又は破砕機の種類、及び処理条件等により適宜調整可能である。
【0109】
なお、粉砕に供する衛生用品は、衛生用品をそのまま粉砕しても、衛生用品から吸水性樹脂粒子を含有する吸収体を取り出して粉砕しても良い。
【0110】
脱水工程は、衛生用品又は粉砕された衛生用品に含まれる吸水性樹脂粒子を脱水剤により脱水処理する工程である。本脱水処理により吸水性樹脂粒子の吸水能が低下し、吸水性樹脂粒子の含水率及び体積が低下する。その結果、吸水性樹脂粒子のゲル弾性が向上し、分離回収効率が向上する。なお、本発明における脱水工程には、吸水性樹脂粒子を脱水剤により脱水する工程だけでなく、実際に脱水現象が生じておらず、単に脱水剤を添加する工程も含まれる。
【0111】
本発明における脱水剤は、脱水性能を持つ化合物であれば特に限定なく、公知の脱水剤としては水溶性多価金属化合物、酸性物質等が挙げられる。水溶性多価金属化合物は、カルボキシル基、又はカルボキシル基イオンとキレート塩を形成すること、あるいは酸性物質によってカルボキシル基イオンがカルボキシル基に変換されることによって、吸水性樹脂粒子内部と周囲の水とのイオン濃度の差が低下することにより浸透圧差も低下し、結果として吸水性樹脂粒子内部からの脱水が生じる。
【0112】
水溶性多価金属化合物は、周期表において2以上の価数を有する元素であって、水へ溶解又は水と反応後にカルボキシル基、又はカルボキシル基イオンとキレート塩を形成する水溶性多価金属化合物であれば、特に制限されない。2価金属化合物としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属を含む多価金属化合物、鉄、ニッケル、銅、亜鉛等の遷移金属を含む多価金属化合物等が挙げられ、3価金属としては、例えば、ホウ素、アルミニウム、ガリウム等の金属を含む多価金属化合物が挙げられる。なお、多価金属化合物は、非水和物であっても、一水和物、二水和物、三水和物、四水和物、五水和物、六水和物、七水和物、八水和物、九水和物のような水和物であってもよい。これらの脱水剤は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、本発明において「水溶性多価金属化合物」とは、20℃の水に対する溶解度が1mg/ml以上であり、好ましくは10mg/ml以上である多価金属化合物を示す。
【0113】
マグネシウムを含む水溶性多価金属化合物としては、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、過塩素酸マグネシウム、過マンガン酸マグネシウム、酢酸マグネシウム等が挙げられる。
【0114】
カルシウムを含む水溶性多価金属化合物としては、酸化カルシウム、過酸化カルシウム、水酸化カルシウム、フッ化カルシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、水素化カルシウム、炭化カルシウム、リン化カルシウム、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、次亜塩素酸カルシウム、塩素酸カルシウム、過塩素酸カルシウム、臭素酸カルシウム、ヨウ素酸カルシウム、クロム酸カルシウム、酢酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム等が含まれる。
【0115】
酸性物質とは、架橋重合体(A)中のカルボキシル基イオンをカルボキシル基に変換できる酸性度を有する物質のことである。より具体的には、酸解離定数が3.5以下である化合物のことである。酸性物質が多価の酸である場合、少なくとも1段階目の解離定数が3.5以下であればよく、多価の酸のうち、その一部が中和塩の状態であってもよい。
【0116】
酸性物質は、無機酸、有機酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸性化合物であって、2種以上を併用して使用することもできる。
【0117】
無機酸としては、硫酸、スルファミン酸、塩酸、硝酸、リン酸、メタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸及びヘキサメタリン酸等が挙げられる。
【0118】
有機酸としては、スルホン酸基を分子内に有する有機酸、カルボン酸基を分子内に有する有機酸、ホスホン基又はリン酸基を分子内に有する有機酸が挙げられる。
【0119】
カルボン酸基を分子内に有する有機酸としては、ハロゲン含有カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、アミノ酸、ケトカルボン酸、等が挙げられる。
【0120】
ハロゲン含有カルボン酸としては、その分子中の水素原子をフッ素原子、塩素原子、臭素原子、及び/又はヨウ素原子に置換した置換基数に応じて、モノハロゲンカルボン酸、ジハロゲンカルボン酸、トリハロゲンカルボン酸、ペンタハロゲンカルボン酸、等が挙げられる。
【0121】
モノハロゲンカルボン酸としては、モノフルオロ酢酸、モノクロロ酢酸、モノブロモ酢酸、モノヨード酢酸、2-フルオロプロピオン酸、2-クロロプロピオン酸、2-ブロモプロピオン酸、2-ヨードプロピオン酸、2-フルオロ酪酸、2-クロロ酪酸、2-ブロモ酪酸、2-ヨード酪酸、オルト-フルオロ安息香酸、オルト-クロロ安息香酸、オルト-ブロモ安息香酸、オルト-ヨード安息香酸、3-クロロマンデル酸、等が挙げられる。
【0122】
ジハロゲンカルボン酸としては、ジフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、ジブロモ酢酸、ジヨード酢酸、2、2-ジフルオロプロピオン酸、2、2-ジクロロプロピオン酸、2、3-ジクロロプロピオン酸、2、2-ジブロモプロピオン酸、2,3-ジブロモプロピオン酸、2、2-ジヨードプロピオン酸、2、2-ジフルオロ酪酸、2、2-ジクロロ酪酸、2、2-ジブロモ酪酸、2、2-ジヨード酪酸、等が挙げられる。
【0123】
トリハロゲンカルボン酸としては、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリブロモ酢酸、トリヨード酢酸、3、3、3-トリフルオロプロピオン酸、等が挙げられる。
【0124】
ペンタハロゲンカルボン酸としては、ペンタフロオロピオン酸、等が挙げられる。
【0125】
ヒドロキシカルボン酸としては、1分子中にカルボキシル基、及びヒドロキシル基を有する化合物のことであり、例えば、タルトロン酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、サリチル酸、4-クロロサリチル酸5-クロロサリチル酸、2、5-ジヒドロキシ安息香酸、3、5-ジブロモサリチル酸、4-メチルサリチル酸、等が挙げられる。
【0126】
アミノ酸とは、1分子中にカルボキシル基、及びアミノ基を有する化合物のことであり、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、アスパラギン酸、ヒスチジン、グルタミン、グルタミン酸、フェニルアラニン、トリプトファン、アルギニン、チロシン、3-アミノヘキサ二酸、等が挙げられる。
【0127】
ケトカルボン酸とは、1分子中にカルボキシル基、及びケトン基を有する化合物のことであり、例えば、ピルビン酸、オキサロ酢酸、α-ケト酪酸、α-ケトグルタル酸、アセト酢酸、オキサロ酢酸、アセトンジカルボン酸、等が挙げられる。
【0128】
ホスホン基又はリン酸基を分子内に有する有機酸としては、メチルジホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、ニトリロトリスメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、プロピレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、トリエチレンテトラミンヘキサ(メチレンホスホン酸)、トリアミノトリエチルアミンヘキサ(メチレンホスホン酸)、トランス-1、2-シクロヘキサンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、グリコールエーテルジアミン、テトラメチレンホスホン酸、及びテトラエチレンペンタミンヘプタ(メチレンホスホン酸)等が挙げられる。
【0129】
これらの脱水剤のうち、脱水性向上の観点から、2価の水溶性多価金属化合物及び酸性物質が好ましく、より好ましくはマグネシウムを含む水溶性多価金属化合物、カルシウムを含む水溶性多価金属化合物、無機酸、及びカルボン酸基を分子内に有する有機酸であり、さらに好ましくは塩化カルシウム、酸化カルシウム、酢酸カルシウム、次亜塩素酸カルシウム、塩酸、硝酸、ヒドロキシカルボン酸である。
【0130】
脱水剤で処理する方法は、衛生用品中の吸水性樹脂粒子と脱水剤が接触する方法であれば特に限定されないが、固体状の脱水剤を衛生用品に添加してもよいし、脱水剤の水溶液を添加してもよい。また、脱水剤で処理される衛生用品については、事前に水で膨潤させてから脱水剤を添加してもよいし、脱水剤添加後に水を添加してもよい。脱水剤で処理する装置については、衛生用品と脱水剤を混合することができる装置であればよく、前述した粉砕機及び破砕機で処理してもよいし、別途攪拌可能な処理槽で実施してもよい。
【0131】
脱水工程で使用する脱水剤の量は、使用する脱水剤の種類にもよるが、吸水性樹脂粒子の乾燥重量に対して好ましくは0.1%以上であり、更に好ましくは1.0%以上、より好ましくは3.0%以上である。脱水剤の量が少ないと、吸水性樹脂粒子の離水率が低下し、分離回収効率が低下する。
【0132】
前述した粉砕工程と脱水工程の工程順は、衛生用品を粉砕する工程と衛生用品又は粉砕された衛生用品に含まれる吸水性粒子を脱水剤により脱水処理する工程を順次又は同時に実施することができる。以下に、具体的な処理工程の順序を示す。矢印は順序を示す。
(1)衛生用品を粉砕する工程→粉砕された衛生用品に含まれる吸水性樹脂粒子を脱水剤により脱水処理する工程→粉砕及び脱水処理された衛生用品を水と混合して固液処理装置に輸送する工程。
(2)衛生用品に含まれる吸水性樹脂粒子を脱水剤により脱水処理する工程→衛生用品を粉砕する工程→粉砕及び脱水処理された衛生用品を水と混合して固液処理装置に輸送する工程。
(3)衛生用品又は粉砕された衛生用品に含まれる吸水性樹脂粒子を脱水剤により脱水処理する工程と、衛生用品を粉砕する工程を同時に実施する工程→粉砕及び脱水処理された衛生用品を水と混合して固液処理装置に輸送する工程。
【0133】
輸送工程は、粉砕及び脱水処理された衛生用品を水と混合して下流の固液処理装置に輸送する工程である。衛生用品粉砕物、好ましくは水性懸濁液が、給水手段により水流で固液処理装置に輸送される。
【0134】
輸送工程における輸送手段は、ポンプ式又は自然流下式により固液処理装置に輸送することができるが、粉砕及び脱水処理された衛生用品が配管又はホースを経由して、水流で固液分離装置に輸送することが好ましい。配管又はホースの種類としては、銅管、鉛管、鉄管、硬質ポリ塩化ビニル管、ポリエチレン管、硬質塩化ビニルライニング管、ステンレス管、白管、土管、耐火二層管等が含まれる。
【0135】
固液処理装置としては、公知の固液分離処理装置が使用できる。例えば、スクリーン分離、沈殿分離、膜分離、遠心分離等が挙げられる。
【0136】
本発明の衛生用品の処理方法としての好ましい実施形態の一つとして、ディスポーザー排水処理システムが挙げられる。ディスポーザー排水処理とは、通常、生ゴミを台所のシンク排水口に取り付けたディスポーザーで粉砕し、給水による排水とともに下水道や浄化槽に放流するシステムであり、ゴミを低減し、衛生面及び利便性に優れる排水処理システムであり、特に集合住宅等に広く普及が進んでいる。前記排水処理システムを衛生用品に展開するためには、吸水性樹脂粒子の水膨潤性を低減させ、排水管内での堆積や付着による排水不良や配管閉塞を防止することが重要であるが、本発明の処理方法は、このような課題を解決できるため、好ましい。
【0137】
本発明の衛生用品の処理方法は、粉砕及び脱水処理された衛生物品が固液処理装置に輸送された後、固液分離装置により粉砕及び脱水処理された吸水性樹脂粒子を含む衛生用品が回収される。本発明の衛生用品の処理方法で得られる衛生用品の回収物は含水率が低いという特徴を有するため、焼却処理時の燃焼効率が優れるだけでなく、固形燃料等としてリサイクル利用をすることができる。したがって、本発明には、前記衛生用品の処理方法で得られた衛生物品回収物及び固形燃料の製造方法が含まれる。前記固形燃料としてリサイクル利用をする場合は、前記衛生用品の回収物をさらに乾燥することが好ましい。
【実施例
【0138】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に定めない限り、部は重量部、%は重量%を示す。なお、吸水性樹脂粒子の生理食塩水に対する保水量、離水率、荷重下吸収量、生理食塩水のゲル通液速度、1.0重量%塩化カルシウム水溶液のゲル通液速度は以下の方法により測定した。
【0139】
<生理食塩水に対する保水量の測定方法>
目開き63μm(JIS Z8801-1:2006)のナイロン網で作製したティーバッグ(縦20cm、横10cm)に測定試料1.00gを入れ、生理食塩水(食塩濃度0.9%)1,000ml中に無撹拌下、1時間浸漬した後引き上げて、15分間吊るして水切りした。その後、ティーバッグごと、遠心分離器にいれ、150Gで90秒間遠心脱水して余剰の生理食塩水を取り除き、ティーバッグを含めた重量(h1)を測定し次式から保水量を求めた。なお、使用した生理食塩水及び測定雰囲気の温度は25℃±2℃とした。(h2)は、測定試料の無い場合について上記と同様の操作により計測したティーバッグの重量である。
保水量(g/g)=(h1)-(h2)
【0140】
<離水率の測定方法>
前記の保水量の測定後に、以下の操作を続けて実施した。即ち、遠心分離器測定後のティーバックを、1.0重量%塩化カルシウム水溶液500ml中に無撹拌下、5分間浸漬した後引き上げて、ティーバッグごと、遠心分離器にいれ、150Gで90秒間遠心脱水して余剰の塩化カルシウム水溶液を取り除き、ティーバッグを含めた重量(h3)を測定し次式から1.0重量%塩化カルシウム水溶液処理後の保水量を求めた。(h4)は、測定試料の無い場合について上記と同様の操作により計測したティーバッグの重量である。
1.0%塩化カルシウム水溶液処理後の保水量(g/g)=(h3)-(h4)
その後、下式により離水率を求めた。
離水率(%)=(1-1.0重量%塩化カルシウム水溶液処理後の保水量)/(生理食塩水に対する保水量)×100
【0141】
<イオン交換水による再膨潤倍率の測定方法>
前記の離水率の測定後に、以下の操作を続けて実施した。即ち、遠心脱水後のティーバックを、イオン交換水溶液500ml中に無撹拌下、5分間浸漬した後引き上げて、ティーバッグごと、遠心分離器にいれ、150Gで90秒間遠心脱水して余剰のイオン交換水溶液を取り除き、ティーバッグを含めた重量(h5)を測定し次式からイオン交換水処理後の保水量を求めた。(h6)は、測定試料の無い場合について上記と同様の操作により計測したティーバッグの重量である。
1.0重量%塩化カルシウム水溶液処理後のイオン交換水に対する保水量[g/g]=(h5)-(h6)
その後、下式によりイオン交換水による再膨潤倍率を求めた。
イオン交換水による再膨潤倍率[%]=(1.0重量%塩化カルシウム水溶液処理後のイオン交換水に対する保水量[g/g])/(生理食塩水に対する保水量[g/g])}×100
【0142】
<荷重下吸収量の測定方法>
目開き63μm(JIS Z8801-1:2006)のナイロン網を底面に貼った円筒型プラスチックチューブ(内径:25mm、高さ:34mm)内に、標準ふるいを用いて250~500μmの範囲にふるい分けした測定試料0.16gを秤量し、円筒型プラスチックチューブを垂直にしてナイロン網上に測定試料がほぼ均一厚さになるように整えた後、この測定試料の上に分銅(重量:310.6g、外径:24.5mm、)を乗せた。この円筒型プラスチックチューブ全体の重量(M1)を計量した後、生理食塩水(食塩濃度0.9%)60mlの入ったシャーレ(直径:12cm)の中に測定試料及び分銅の入った円筒型プラスチックチューブを垂直に立ててナイロン網側を下面にして浸し、60分静置した。60分後に、円筒型プラスチックチューブをシャーレから引き上げ、これを斜めに傾けて底部に付着した水を一箇所に集めて水滴として垂らすことで余分な水を除去した後、測定試料及び分銅の入った円筒型プラスチックチューブ全体の重量(M2)を計量し、次式から荷重下吸収量を求めた。なお、使用した生理食塩水及び測定雰囲気の温度は25℃±2℃とした。
荷重下吸収量(g/g)={(M2)-(M1)}/0.16
【0143】
<生理食塩水のゲル通液速度の測定方法>
図1及び図2で示される器具を用いて以下の操作により測定した。
測定試料0.32gを150ml生理食塩水1(食塩濃度0.9%)に30分間浸漬して膨潤ゲル粒子2を調製した。そして、垂直に立てた円筒3{直径(内径)25.4mm、長さ40cm、底部から60mlの位置及び40mlの位置にそれぞれ目盛り線4及び目盛り線5が設けてある。}の底部に、金網6(目開き106μm、JIS Z8801-1:2006)と、開閉自在のコック7(通液部の内径5mm)とを有する濾過円筒管内に、コック7を閉鎖した状態で、調製した膨潤ゲル粒子2を生理食塩水と共に移した後、この膨潤ゲル粒子2の上に、金網面に対して垂直に結合する加圧軸9(重さ22g、長さ47cm)を有する円形金網8(目開き150μm、直径25mm)を、金網と膨潤ゲル粒子とが接触するように載せ、更に加圧軸9におもり10(88.5g)を載せ、1分間静置した。引き続き、コック7を開き、濾過円筒管内の液面が60ml目盛り線4から40ml目盛り線5になるのに要する時間(T1;秒)を計測し、次式よりゲル通液速度(ml/min)を求めた。
ゲル通液速度(ml/min)=20ml×60/(T1-T2)
なお、使用する生理食塩水及び測定雰囲気の温度は25℃±2℃で行い、T2は測定試料の無い場合について上記と同様の操作により計測した時間である。
【0144】
<1.0重量%塩化カルシウム水溶液のゲル通液速度の測定方法>
図1及び図2で示される器具を用いて以下の操作により測定した。
測定試料0.32gを150ml生理食塩水1(食塩濃度0.9%)に30分間浸漬して膨潤ゲル粒子2を調製した。そして、垂直に立てた円筒3{直径(内径)25.4mm、長さ40cm、底部から60mlの位置及び40mlの位置にそれぞれ目盛り線4及び目盛り線5が設けてある。}の底部に、金網6(目開き106μm、JIS Z8801-1:2006)と、開閉自在のコック7(通液部の内径5mm)とを有する濾過円筒管内に、コック7を閉鎖した状態にした。測定試料の調製に使用した生理食塩水のうち、上澄み液80mlを捨て、残った膨潤ゲル粒子2を生理食塩水と共に移した後、塩化カルシウム液80mlを円筒3の中に注入し、この膨潤ゲル粒子2の上に金網面に対して垂直に結合する加圧軸9(重さ22g、長さ47cm)を有する円形金網8(目開き150μm、直径25mm)を、金網と膨潤ゲル粒子とが接触するように載せ、更に加圧軸9におもり10(88.5g)を載せ、1分間静置した。引き続き、コック7を開き、濾過円筒管内の液面が60ml目盛り線4から40ml目盛り線5になるのに要する時間(T3;秒)を計測し、次式よりゲル通液速度(ml/分)を求めた。
1.0重量%塩化カルシウム水溶液のゲル通液速度(ml/分)=20ml×60/(T3-T4)
なお、使用する生理食塩水、1.0重量%塩化カルシウム水溶液及び測定雰囲気の温度は25℃±2℃で行い、T4は測定試料の無い場合について上記と同様の操作により計測した時間である。
【0145】
<実施例1> 水溶性ビニルモノマー(a1){アクリル酸}157部(2.18モル部)、内部架橋剤(b){ペンタエリスリトールトリアリルエーテル}0.6305部(0.0024モル部)及び脱イオン水344.65部を攪拌・混合しながら3℃に保った。この混合物中に窒素を流入して溶存酸素量を1ppm以下とした後、1%過酸化水素水溶液0.63部、2%アスコルビン酸水溶液1.1774部及び2%の2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド]水溶液2.355部を添加・混合して重合を開始させた。混合物の温度が90℃に達した後、90±2℃で約5時間重合することにより含水ゲル(1)を得た。
【0146】
次にこの含水ゲル(1)502.27部をはさみで約1mm角に細分し、48.5%水酸化ナトリウム水溶液128.42部を添加して混合後にした。続いて目皿径16mmのミンチ機(ROYAL社製12VR-400K)を使い、ゲル温度80℃で疎水性物質(c-1){ステアリン酸Mg}0.10部をゲルに添加しながら4回混練細断後、通気型バンド乾燥機{150℃、風速2m/秒}で乾燥し、乾燥体を得た。乾燥体をジューサーミキサー(Oster社製OSTERIZER BLENDER)にて粉砕した後、目開き710~150μmの粒子径範囲に調整することにより、乾燥体粒子を得た。この時の乾燥粒子体の重量平均粒子径は392μmであった。この乾燥体粒子100部を高速攪拌しながらエチレングリコールジグリシジルエーテルの2%水/メタノール混合溶液(水/メタノールの重量比=70/30)の5.00部をスプレー噴霧しながら加えて混合し、150℃で30分間静置して表面架橋して、吸水性樹脂粒子(P-1)を得た。
【0147】
<実施例2>
ゲル温度80℃を120℃に変更した以外は実施例1と同様にして吸水性樹脂粒子(P-2)を得た。
【0148】
<実施例3>
ゲル温度80℃を40℃に変更した以外は実施例1と同様にして吸水性樹脂粒子(P-3)を得た。
【0149】
<実施例4>
乾燥粒子体の重量平均粒子径を392μmから200μmに変更した以外は実施例1と同様にして吸水性樹脂粒子(P-4)を得た。
【0150】
<実施例5>
含水ゲル(1)502.27部をはさみで約1mm角に細分し、48.5%水酸化ナトリウム水溶液128.42部を添加して混合後にした。続いて目皿径16mmのミンチ機(ROYAL社製12VR-400K)を使い、4回混練細断後、通気型バンド乾燥機{150℃、風速2m/秒}で乾燥し、乾燥体を得た。乾燥体をジューサーミキサー(Oster社製OSTERIZER BLENDER)にて粉砕した後、目開き710~150μmの粒子径範囲に調整することにより、乾燥体粒子を得た。この乾燥体粒子100部を高速攪拌しながらエチレングリコールジグリシジルエーテルの2%水/メタノール混合溶液(水/メタノールの重量比=70/30)の7.30部と疎水性物質(c-2){カルボキシ変性ポリシロキサン 型番 X-22-3701E 信越化学工業株式会社製}0.02部をスプレー噴霧しながら加えて混合し、150℃で30分間静置して表面架橋し、複合粒子を得た。この複合粒子100部と無機質粉末(二酸化ケイ素、トクシール、体積平均粒子経2.5μm、比表面積120m/g 株式会社トクヤマ製)0.4部とをコニカルブレンダー{ホソカワミクロン株式会社製}で均一混合して、吸収性樹脂粒子(P-5)を得た。
【0151】
<実施例6>
含水ゲル(1)502.27部をはさみで約1mm角に細分し、48.5%水酸化ナトリウム水溶液128.42部を添加して混合後にした。続いて目皿径16mmのミンチ機(ROYAL社製12VR-400K)を使い、4回混練細断後、通気型バンド乾燥機{150℃、風速2m/秒}で乾燥し、乾燥体を得た。乾燥体をジューサーミキサー(Oster社製OSTERIZER BLENDER)にて粉砕した後、目開き710~150μmの粒子径範囲に調整することにより、乾燥体粒子を得た。この乾燥体粒子100部を高速攪拌しながらエチレングリコールジグリシジルエーテルの2%水/メタノール混合溶液(水/メタノールの重量比=70/30)の7.30部をスプレー噴霧しながら加えて混合し、150℃で30分間静置して表面架橋し、複合粒子を得た。この複合粒子100部、メタノール1.0部、疎水性物質(c-2)0.02部をコニカルブレンダー{ホソカワミクロン株式会社製}で均一混合して、吸収性樹脂粒子(P-6)を得た。
【0152】
<実施例7>
無機質粉末0.4部を添加しない、に変更した以外は、実施例5と同様にして、吸水性樹脂粒子(P-7)を得た。
【0153】
<実施例8>
疎水性物質(c-2)を0.02部から0.04部に変更した以外は、実施例5と同様にして、吸水性樹脂粒子(P-8)を得た。
【0154】
<実施例9>
疎水性物質(c-2)を0.02部から0.10部に変更した以外は、実施例5と同様にして、吸水性樹脂粒子(P-9)を得た。
【0155】
<実施例10>
疎水性物質(c-1)0.10部を疎水性物質(c-3){ショ糖ステアリン酸モノエステル}0.15部に変更、4回混練を2回混練に変更した以外は、実施例1と同様にして吸水性樹脂粒子(P-10)を得た。
【0156】
<実施例11>
はさみで約1mm角に細分を約5mm角に細分に変更し、かつ、疎水性物質(c-1)0.10部を疎水性物質(c-3)0.15部に変更した以外は、実施例1と同様にして吸水性樹脂粒子(P-11)を得た。
【0157】
<実施例12>
目皿径16mmを8mmに変更し、かつ、疎水性物質(c-1)0.10部を疎水性物質(c-3)0.15部に変更した以外は、実施例1と同様にして吸水性樹脂粒子(P-12)を得た。
【0158】
<実施例13~15>
実施例13~15については、実施例5で得られた吸水性樹脂粒子(P-5)に対して、脱水剤として1.0重量%塩化カルシウム水溶液1,000mlをそれぞれ、1規定塩酸水溶液1,000ml、1.0重量%グリセリン酸水溶液1,000ml、1規定硫酸水溶液1,000mlに変更した以外は同様の操作を行って評価を行った。
【0159】
<比較例1>
疎水性物質(c-1)を添加しない、に変更した以外は、実施例1と同様にして比較用の吸水性樹脂粒子(H-1)を得た。
【0160】
<比較例2> 約1mm角に細分した含水ゲルをミンチ機(ROYAL社製12VR-400K)で混練細断せずに、通気型乾燥機{150℃、風速2m/秒}で乾燥し、乾燥体を得たこと以外、実施例1と同様にして比較用の吸水性樹脂粒子(H-2)を得た。
【0161】
<比較例3> 目開き710~150μmの粒子径範囲を、目開き710~300μmの粒子径範囲に変更する以外は、実施例1と同様の操作を行い、吸水性樹脂粒子(H-3)を得た。
【0162】
<比較例4>
ゲル温度80℃を20℃に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、吸水性樹脂粒子(H-4)を得た。
【0163】
<比較例5>
乾燥温度150℃を300℃に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、吸水性樹脂粒子(H-5)を得た。
【0164】
<比較例6>
表面架橋温度150℃を90℃に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、吸水性樹脂粒子(H-6)を得た。
【0165】
<比較例7>
表面架橋温度150℃を210℃に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、吸水性樹脂粒子(H-7)を得た。
【0166】
<比較例8> 市販品のおむつGOO.N(パンツLサイズ 大王製紙(株)社製、2018年5月 日本)を手で解砕し、吸収体に含まれている破砕状の吸水性樹脂粒子をパルプと共に取出し後にそれぞれを分別し、破砕状の吸水性樹脂粒子(H-8)を得た。
【0167】
<比較例9>
市販品のおむつGOO.N(パンツSサイズ 大王製紙(株)社製、2018年5月 日本)を手で解砕し、吸収体に含まれている球形状の吸水性樹脂粒子をパルプと共に取出し後にそれぞれを分別し、真球状の吸水性樹脂粒子(H-9)を得た。
【0168】
実施例1~15及び比較例1~9で得られた吸水性樹脂粒子について、生理食塩水に対する保水量、荷重下吸収量、生理食塩水のゲル通液速度、見かけ密度、重量平均粒子径、1.0重量%塩化カルシウム水溶液のゲル通液速度、離水率、イオン交換水による再膨潤倍率の結果を表1、2に示した。
【0169】
また、実施例1~15及び比較例1~9で得られた各吸水性樹脂粒子を使用して下記の方法で調製した吸収体の脱水性評価結果も併せて表1、2に示す。
なお、表中、脱水剤Aは1.0重量%塩化カルシウム水溶液を、脱水剤Bは1規定塩酸水溶液を、脱水剤Cは1.0重量%グリセリン酸水溶液を、脱水剤Dは1規定硫酸水溶液を、それぞれ表す。
【0170】
<衛生用品の調製>
親水性繊維(フラッフパルプ)100部と吸水性樹脂粒子(実施例及び比較例で得られた各吸水性樹脂粒子)100部とを気流型混合装置(パッドフォーマー)で混合して、混合物を得た後、この混合物を目付500g/mとなるように均一にアクリル板(厚み4mm)上に積層し、5kg/cmの圧力で30秒間プレスし、吸収体を得た。この吸収体を10cm×10cmの正方形に裁断し、各々の上下に吸収体と同じ大きさの透水性シート(目付け15.5g/m、アドバンテック社製、フィルターペーパー2番)を配置し、更に不透過性シートとしてポリエチレンシート(S-1)(タマポリ社製ポリエチレンフィルムUB-1)を裏面に、不織布層として不織布(S-2)を表面に配置することにより、衛生用品を調製した。
【0171】
<吸収体の脱水性評価>
調製した衛生用品を、不織布(S-2)側が上面になるように金属性のバット上に置き、300mlビーカーに入れた生理食塩水(食塩濃度0.9%)150mlを衛生用品に均一的になるように静かに注ぎ入れて、20分間静置した後、不織布(S-1)及び(S-2)を衛生用品から取り除き、膨潤した吸収体の重量(h5;g)を測定した。次いで、目開き63μm(JIS Z8801-1:2006)のナイロン網で作製したティーバッグ(縦15cm、横15cm)に膨潤した吸収体を入れて、1.0重量%塩化カルシウム水溶液1,000ml中に無撹拌下、5分間浸漬した後引き上げて、遠心分離器にいれ、150Gで90秒間遠心脱水して余剰の塩化カルシウム水溶液を取り除き、ティーバッグを含めた重量(h6;g)を測定し下式から吸収体脱水率を求める。なお、使用した生理食塩水、塩化カルシウム水溶液及び測定雰囲気の温度は25℃±2℃とする。(h7;g)は、同様に吸収体を作製し、5時間静置した後、不織布(S-1)及び(S-2)を衛生用品から取り除き、膨潤した吸収体の重量(h7;g)を測定した場合の重量である。
吸収体脱水率(%)=[1-{(h6)-(h7)}/(h5)]×100
【0172】
【表1】
【0173】
【表2】
【0174】
表1、2に示す結果から明らかなように、本発明の脱水処理が容易な吸水性樹脂粒子は、比較例の吸水性樹脂粒子と比べて、離水率が向上している。また、本吸水性樹脂粒子を使用した吸収体の離水率評価において、吸水性樹脂粒子の離水率が高いほど吸収体の離水率向上に寄与することが分かる。本結果は、離水率が高い吸水性樹脂粒子を使用した吸収体は、膨潤した吸収体の脱水処理後の含水量が下がり、吸収体1枚当たりの総重量を低減することができると言える。そのため、例えば、排尿後に塩化カルシウム水溶液で同様の処理操作をすることで、運搬時の労力が軽減できることや、焼却処理する際に、焼却に利用するエネルギーを抑制できるため環境負荷を低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0175】
本発明の脱水処理が容易な吸水性樹脂粒子を衛生用品を含む各種吸収性物品に適用することにより、使用時には必要な吸収性能を満たしながら、使用後には所定の脱水処理により、吸収性物品の含水率を容易に低下させることができることから、紙おむつ(子供用紙おむつ及び大人用紙おむつ等)、ナプキン(生理用ナプキン等)、紙タオル、パッド(失禁者用パッド及び手術用アンダーパッド等)及びペットシート(ペット尿吸収シート)等の衛生用品に好適に用いられ、特に紙おむつに最適である。
【符号の説明】
【0176】
1 生理食塩水
2 含水ゲル粒子
3 円筒
4 底部から60mlの位置の目盛り線
5 底部から40mlの位置の目盛り線
6 金網
7 コック
8 円形金網
9 加圧軸
10 おもり
図1
図2