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特許7234133粉末流安定性を検出及び診断するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】粉末流安定性を検出及び診断するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20230228BHJP
   B05B 7/24 20060101ALI20230228BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
B05B7/24
G01H17/00 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019555895
(86)(22)【出願日】2018-04-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 US2018029544
(87)【国際公開番号】W WO2018200795
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-04-02
(31)【優先権主張番号】62/490,955
(32)【優先日】2017-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/609,846
(32)【優先日】2017-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515195347
【氏名又は名称】エリコン メテコ(ユーエス)インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モルツ、ロナルド ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】コルメナレス、ホセ
(72)【発明者】
【氏名】コトラー、エリオット エム.
(72)【発明者】
【氏名】エルモシージョ、サムラウィット
(72)【発明者】
【氏名】イバネス、クリスティアン
【審査官】萩田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-154419(JP,A)
【文献】特開平09-323822(JP,A)
【文献】特開平07-158837(JP,A)
【文献】特開平06-056268(JP,A)
【文献】特開2005-060021(JP,A)
【文献】特開平09-110164(JP,A)
【文献】特開昭60-106720(JP,A)
【文献】特表平11-509626(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0278726(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 99/00
G01H 17/00
B05B 7/24 - 7/32
F23K 3/02
B65G 53/00 -54/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア・ガス内の粉末が粉末供給ホースを通してホッパーから最終工程部へと導かれる、粉末供給装置の粉末搬送に関する問題を検出及び/又は診断するための方法であって、
前記粉末供給ホース内の圧力を監視するステップ、並びに
前記監視された圧力に基づいて、
欠損又は損傷した粉末供給ホースを検出するステップ、
粉末供給ホースの詰まりを検出するステップ、及び
供給の不安定さを検出及び診断するステップ
含み、
前記最終工程部がスプレー・ガンであり、
粉末供給ホース背圧の不足が、前記欠損又は損傷した粉末供給ホースを示し、
粉末供給ホース背圧の増大が、前記粉末供給ホースの詰まりを示し、
前記粉末供給ホースが欠損も損傷もしておらずまた詰まってもいないとき、前記監視された粉末供給ホース圧力の標準偏差を計算するステップを更に含み、所定値を上回る標準偏差により供給の不安定さが検出される、方法。
【請求項2】
前記標準偏差の前記所定値が、10秒間で5%である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記標準偏差を計算するために前記監視された粉末供給ホース圧力をデジタル化するステップを更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
供給の不安定さが検出されたとき、周期的な振動周波数を識別するために前記粉末供給ホース圧力を分析するステップを更に含み、このとき、
0.4から2.0Hzまでの間の範囲内の識別された振動周波数によって、前記粉末供給ホースにおける音響的振動が示され、
0.4Hz未満の識別された振動周波数によって、前記キャリア・ガスに対する前記粉末の質量流量比が所定の質量流量比を上回る流量推移が示され、また
2.0Hz超の識別された振動周波数によって、前記ホッパーにおける差圧と前記粉末供給ホース圧力との間の圧力比が、所定の圧力比範囲外にあることにより引き起こされる制御振動が示される
請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
以下、すなわち:
前記音響的振動は前記粉末供給ホースの長さを変えることによって是正可能であること、
前記所定の質量流量比は15であり、前記流量推移は、前記質量流量比を15未満に下げることによって是正可能であること、及び
前記所定の圧力比範囲は0.5から2.0の間であり、前記制御振動は前記粉末供給装置の物理的要素を変えることによって是正可能であること
のうちの少なくとも1つを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記粉末供給ホース圧力を前記分析するステップが周期的な振動周波数を識別しないとき:
前記キャリア・ガスに対する前記粉末の前記質量流量比が前記所定の質量流量比を上回っているかどうかを判定するステップと、
前記ホッパーにおける差圧と前記粉末供給ホース圧力との間の前記圧力比が、前記所定の圧力比範囲外にあるかどうかを判定するステップと、
以下のステップ、すなわち:
前記ホッパーにおける前記差圧が、使用幅の上端にあるか、下端にあるかを判定するステップ、及び
ディスク又はスクリュー速度の一方が作動範囲の上端にあるか、下端域にあるかを判定するステップ
のうちの一方と、
前記粉末供給装置が損傷しているかどうかを判定するステップと、
前記粉末が、湿っている、汚染されている、及び流れ特性が良好でない、のうちの少なくとも1つであるかどうかを判定するステップと
を更に含む、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記粉末供給ホース圧力を分析する前記ステップは、高速フーリエ変換(FFT)周波数分析を実施するステップを含む、請求項4から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
粉末供給装置の、最終工程部への粉末搬送に関する問題を検出及び/又は診断するためのシステムであって、
粉末が内部を通して搬送される粉末供給ホースと、
前記粉末供給ホース内の圧力を検出するように構成された圧力変換器と、
供給装置診断部であって、
欠損又は損傷した粉末供給ホースを検出すること、
ホースの詰まりを検出すること、並びに
供給の不安定さを検出及び診断すること
のうちの少なくとも1つを行うために前記粉末供給ホース内の圧力を監視するように前記圧力変換器と結合された供給装置診断部と
を有し、
前記最終工程部がスプレー・ガンであり、
前記供給装置診断部は、周期的な振動周波数を識別するために前記粉末供給ホース内の圧力を分析するように適合されている、システム。
【請求項9】
前記粉末供給装置が、前記粉末供給ホース内に前記粉末を投入するように構成され、前記粉末が、前記粉末供給ホースを通して前記最終工程部へ搬送される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記圧力変換器は前記粉末供給装置の外部にある、請求項8又は9に記載のシステム。
【請求項11】
前記圧力変換器は、前記粉末供給装置と前記最終工程部との間の粉末搬送経路に沿った任意の点における粉末供給ホース圧力を検出するように構成されている、請求項8から10までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記圧力変換器は、前記粉末供給装置から前記粉末供給ホースの長さの半分までの間の粉末供給ホース圧力を検出するように構成されている、請求項8から11までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記粉末供給装置はホッパーを有し、前記圧力変換器は前記粉末供給装置及び前記ホッパーの一方の出口に配置されている、請求項8から12までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記供給装置診断部は前記粉末供給装置の外部に存在する、請求項8から13までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記圧力変換器は前記粉末供給装置に統合されている、請求項8から14までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記供給装置診断部は前記粉末供給装置に統合されている、請求項8から15までのいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2017年4月27日に出願された米国仮特許出願第62/490,955号、及び2017年5月31日に出願された米国特許出願第15/609,846号の優先権を主張するものであり、これらの開示は全体が参照によって本明細書に明示的に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
搬送ホースを用いた粉末供給は、典型的には、フライト搬送(flight conveying)を用いて行われ、このとき粒子はキャリア・ガス・ストリームに取り込まれ、それにより粉末を最終工程(end process;最終工程部)へと、例えばスプレー・ガンへと送達する。いくつかの理由により、この流れにおいて、噴霧結果に影響し得る粉末流の変動をもたらす不安定さが生じる可能性がある。
【0003】
粉末流ストリーム内を通る光の透過を測定するために、レーザが採用されてきた。しかしながら、この方法にはいくつかの欠点がある:
(1)粉末ストリームを搬送するホースは、好ましくは上記工程又は最終使用の付近で、レーザが粉末流の中を通って発光できる好適な場所を提供するように、修正されねばならない。この修正自体により、流れに不連続が生じて、不安定さが導入される可能性がある。
(2)レーザ光透過に関する信号減衰が大きく、この場合優れた感度が得られるものの、信号は高流量状態下で急速に飽和状態になって、適切な診断が阻害される可能性がある。このことは、特にキャリア・ガスに対する粉末の質量流量比が高い場合に当てはまり、この場合粉末流はレーザ光の透過を完全に妨げる可能性がある。
(3)レーザの追加により、工程にかなりのコストが加算されるとともに、粉末流の正確な供給及び制御が必須である既に複雑なシステムの複雑さが増すことにもなる。
【0004】
粉末供給装置の2つの主要なタイプは、流体式と容量式である。いずれのタイプも、サイズが約150μmから5μm未満の範囲で粉末密度が約3g/ccから15g/ccという高さまでの、多種多様な粉末を供給できる。更にこれらの供給装置は、約1g/分から300g/分という高さまでの広範囲の供給速度で、粉末を供給できる。これらの粉末供給装置は産業用途で、例えば製薬、食品加工、溶射、及び他の適当な産業において利用することができる。
【0005】
いくつかの粉末供給装置には、粉末行路内の粉末供給装置の出口に、圧力変換器、例えばOerlikon Metco社の9MP-CLが組み込まれている。変換器はホース圧フィードバックを定めるために使用され、次いでこれを用いて、流体式供給装置において重量測定装置(gravimetric setup)を使用して供給速度を制御するために必要となるホッパー差圧が計算される。ホース背圧は、一部の別形式の粉末供給装置では、突然の又は予期しない高背圧状態下で粉末ホッパーを切り離すための安全検出として使用することもできる。この信号はまた、厳重にフィルタリングした信号として粉末供給装置上に表示され、ほぼ1分に1回更新される。今日まで、ホース内の粉末流が安定しているかどうかを判定するために圧力信号を使用することを試みた供給装置はない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Niederreiter、「Untersuchung zur Pfropfenentstehung und Pfropfenstabilitat bei der pneumatischen Dichtstromforderung」、Doktor-Ingenieurs genehmigten Dissertation、Technische Universitat Munchen、2005年11月16日
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
複数の実施例において、粉末供給装置からある工程(すなわち溶射ガン)へと搬送される粉末流は不安定さを有することがあり、これは、ホース背圧を用いて検出及び診断可能である。圧力変換器を粉末ホース行路内に、例えば供給装置への粉末経路の接続部に組み込むことにより、背圧を高いサンプル・レートでリアル・タイムで測定して、不安定さを検出すること及びその不安定さの原因の診断を補助することが可能になる。診断には、ホースにおける音響的なものなどの周期的振動を識別すること、並びにホースの詰まり及びホースの破断の状態を検出することが含まれる。検出されると、不安定さの原因を是正するための適切な是正措置が忠告、推奨、及び/又は実行され得る。
【0008】
したがって、実施例は、粉末流の変動を検出するための、並びに、不安定さが生じたときにこれを検出及び診断するためのデバイス及び方法を対象としている。好ましくは、これらのデバイス及び方法は、追加の機器を必要としない。
【0009】
本発明の実施例は、粉末搬送に関する問題を検出及び/又は診断するための方法を対象としている。キャリア・ガスに取り込まれた粉末は、粉末供給ホースを通してホッパーから最終工程へと案内され、方法は、粉末供給ホースにおける圧力を監視(モニター)することと、監視された圧力に基づいて:欠損(missing)又は損傷(damaged)した粉末供給ホースを検出すること、粉末供給ホースの詰まりを検出すること、並びに供給の不安定さを検出及び診断すること、のうちの少なくとも1つと、を含む。
【0010】
複数の実施例によれば、粉末のホース背圧の不在は、欠損又は損傷した粉末供給ホースを示している場合がある。更に、定常状態での流れの状態での粉末供給ホース背圧の増大は、粉末供給ホースの詰まりを示している場合がある。複数の実施例において、方法は、粉末供給ホースが欠損も損傷もしておらずまた詰まってもいないとき、監視された粉末供給ホース圧の標準偏差を計算することを更に含むことができ、このとき所定値を上回る標準偏差により供給の不安定さが検出される。標準偏差の所定値は10秒間で5%とすることができる。複数の実施例において、方法はまた、標準偏差を計算するために、監視された粉末供給ホース圧をデジタル化することも含み得る。
【0011】
本発明の実施例によれば、この方法は、供給の不安定さが検出されたとき、周期的な振動周波数(振動数)を識別するために粉末供給ホース圧を分析することを更に含み得る。0.4から約2.0Hzまでの間の範囲内の識別された振動周波数は、粉末供給ホースにおける音響的振動を示しており、0.4Hz未満の識別された振動周波数は、キャリア・ガスに対する粉末の質量流量比が所定の質量流量比を上回る流量推移を示しており、2.0Hz超の識別された振動周波数は、ホッパーにおける差圧と粉末供給ホース圧との間の圧力比が所定の圧力比範囲外にあることにより引き起こされた制御振動を示している。更に、以下のうちの少なくとも1つ、すなわち:粉末供給ホースの長さを変えることによって音響的振動を是正可能であり得る;所定の質量流量比を15とすることができ、流量推移は質量流量比を15未満に下げることによって是正可能であってもよい;及び、所定の圧力比範囲を0.5から2.0の間とすることができ、制御振動は、供給装置の物理的要素(hardware)を変えることによって、圧力比が0.5超2.0未満となるように是正可能である、のうちの少なくとも1つであってもよい。また更に、方法はまた、粉末供給ホース圧の分析により周期的な振動周波数が識別されないとき、キャリア・ガスに対する粉末の質量流量比が所定の質量流量比を上回っているかどうかを判定することと、ホッパーにおける差圧と粉末供給ホース圧との間の圧力比が所定の圧力比範囲外にあるかどうかを判定することと、ホッパーにおける差圧が使用幅(operating window)の上端域又は下端域にあるかどうかを判定すること及びディスク速度又はスクリュー速度の一方が作動範囲の上端域又は下端域にあるかどうかを判定すること、供給装置が損傷しているかどうかを判定すること、並びに、粉末が、湿っている、汚染されている、及び流れ特性が良好でない、のうちの少なくとも1つであるかどうかを判定することも含むことができる。
【0012】
複数の実施例において、粉末供給ホース圧を分析することは、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)周波数分析又は類似の数値解析法を実施して、時間ベースの圧力信号を周波数領域へと変換することを含み得る。
【0013】
本発明の実施例は、粉末搬送に関する問題を検出及び/又は診断するためのシステムを対象としている。システムは、粉末が中を通って搬送される粉末供給ホースと、粉末供給ホース内の圧力を検出するように構成された圧力変換器と、圧力変換器と結合された、以下、すなわち:欠損又は損傷した粉末供給ホースを検出すること、ホースの詰まりを検出すること、並びに供給の不安定さを検出及び診断すること、のうちの少なくとも1つを目的として粉末供給ホース内の圧力を監視するための、供給装置診断部(feeder diagnostics)と、を含む。
【0014】
複数の実施例において、システムは、粉末供給ホース内に粉末を投入するように構成された供給装置と、粉末供給ホースを通した粉末の搬送先となる最終工程と、を更に含み得る。
【0015】
複数の実施例によれば、圧力変換器は供給装置の外部にあることができる。特に、圧力変換器は、供給装置と最終工程との間の粉末搬送経路に沿った任意の点における粉末供給ホース圧を検出するように構成することができるか、又は、圧力変換器は、供給装置から粉末供給ホースの長さの半分までの間の粉末供給ホース圧を検出するように構成することができる。更に、供給装置はホッパーを含んでもよく、圧力変換器は、供給装置及びホッパーの一方の出口に配置することができる。複数の実施例において、供給装置診断部は供給装置の外部に存在し得る。複数の実施例において、圧力変換器は、供給装置内に組み込むことができる。更に、供給装置診断部は、供給装置に組み込むことができる。
【0016】
本発明のまた更に他の実施例によれば、供給装置診断部は、周期的な振動周波数を識別するために粉末供給ホース圧を分析するように適合させることができる。
【0017】
本発明の他の例示的な実施例及び利点は、本開示及び付属の図面を検討することによって明確にすることができる。
【0018】
続く詳細な説明で、本発明の例示的な実施例の非限定的な実例として上記した複数の図面を参照して、本発明について更に記載するが、これらの図面において、同様の参照符号は、図面のいくつかの図の全てを通して類似の部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】粉末ホース診断の例示的な方法のフロー図である。
図2】知られている流体タイプの粉末供給装置についてのブロック図である。
図3】知られている容量タイプの粉末供給装置についてのブロック図である。
図4】知られている重量タイプの粉末供給装置についてのブロック図である。
図5】粉末ホースにおける不安定さの様々な測定について描いたグラフである。
図6】粉末ホースにおける音響的振動の上流圧力測定を描いたグラフである。
図7】粉末ホースに圧力変換器及びレーザ変換器を装備できる例示的な試験装置を示す図である。
図8】粉末ホースにおける音響的振動に対処するための是正措置を実行する前及び是正措置を実行した後の、上流圧力の比較を描いたグラフである。
図9】ホース圧の標準偏差として計算した上流のホース圧の安定性に対する圧力比を描いたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書において示される詳細は実例であり、本発明の実施例を例示的に検討することを目的としているに過ぎず、本発明の原理及び概念的側面の最も有用で容易に理解される説明であると考えられているものを提供するために提示されている。この点に関して、本発明の基本的な理解のために必要である以上に詳細には本発明の構造的な詳細を示そうとはしていないが、この説明を図面と併せて解釈すれば、本発明のいくつかの形態を実際にどのように具現化できるかが当業者には明らかとなる。
【0021】
図2は、知られているタイプの流体タイプの粉末供給装置の機能ブロック図を示す。キャリア・ガス・ストリーム1が、キャリア・ガス提供部(図示せず)から、加圧されたホッパー4の底部を通過するホース7を介して提供されて、供給装置2から工程3、例えばスプレー・ガンへと、粉末6を輸送する。ホッパー4内の粉末6は小孔5を通ってホース7の中へと引き込まれ、流れているキャリア・ガス・ストリーム1に取り込まれて工程3に至る。ホース7を通る粉末6の粉末供給速度は、加圧されたホッパー4とホース7の圧力との間の圧力差によって決定又は確立される。ホッパー4は、ホース7を介した搬送のためのキャリア・ガス・ストリーム1内への粉末6の流れを補助する目的でホッパー4の底部内の粉末6を流動化させるために、ガス式振動器8によって駆動されるアジテータ9、又は撹拌器などの機械的アジテータ(図示せず)のいずれかを含む。
【0022】
図3は、知られているタイプのディスク又は容量タイプの粉末供給装置の機能ブロック図を示す。粉末6を収容している粉末ホッパー14が、ホッパー14の底部にある吐出口を通して、回転するディスク12の溝15の中に粉末6を提供する。ディスク12は方向22に回転して、ホッパー14からホース17へと粉末19を搬送する。粉末19がホース17に向かって搬送される際、キャリア・ガス提供部(図示せず)から提供されるキャリア・ガス・ストリーム11が溝15内へと導かれ、この結果、粉末流13、すなわちキャリア・ガス・ストリーム11に取り込まれた粉末19が粉末ホース7へと案内され、工程20、例えばスプレー・ガンへと輸送される。ホッパー14は、回転するディスク12の溝15内への粉末19の流れを補助する目的でホッパー1の底部内の粉末19を流動化させるために、ガス式振動器18によって駆動されるアジテータ16、又は撹拌器などの機械的アジテータ(図示せず)のいずれかを含む。約10~30rpmであり得るディスク12の回転速度は、粉末供給速度を決定する。
【0023】
知られている流体式粉末供給装置及び容量式粉末供給装置は、重量制御を行うことができる。図4は、重量制御を行う流体タイプの粉末供給装置の、例示的な知られている構成の機能ブロック図を示す。ホッパー41を、供給装置45の固定されたベース44に装着されている重量計42に取り付けられたブラケット43上に配置することができる。粉末供給速度は重量計42によって測定された重量損失によって直接的に制御され、所望の粉末供給速度が得られるようホッパー圧(流体式)又はディスク速度(容量式)を調節するために使用される。
【0024】
スクリューを回転させることを含め、キャリア・ガス・ストリーム内へと粉末を供給する及び/又はそれを計量する他の方法が存在し、かかる回転するスクリューの使用は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく複数の実施例において利用することができる。
【0025】
知られている粉末供給装置によって提供を受ける工程にはスプレー・ガンを含めることができ、スプレー・ガンには粉末塗料スプレー、溶射ガン、及び粉末投入器を含めることができるが、これらに限定されない。
【0026】
知られている粉末供給装置では、粉末流に不安定さが生じる可能性があり、その場合、音響的振動、ホースの詰まり、及び/又はホースの破断/脱離の状態が生じている。したがって、最終製品において一定の品質を保証するために、及び最悪でも供給装置システムの損傷を防止するために、かかる不安定さの発生を検出することが望まれる。供給装置システムから不安定さを取り除くための是正措置を実行できるように、検出された不安定さを診断することが更に望まれる。粉末流における不安定さの発生を検出する際に、ホース圧フィードバックの能動的モニタリングを用いて、以下の診断を行う。
1.粉末ホースが稼働中偶発的に脱離したか又は破損した:
かかる状況では、能動的に監視されるホース圧は、存在しなくなるか、又は、機能している粉末ホースの存在を示すのに十分に高い値を指し示さなくなる。このように、第1の診断は、ホース背圧の不在によるホース破損である。
2.粉末ホースが詰まりつつあるか又は詰まっている:
この状況では、定常状態での稼働中に、すなわちキャリア流及び粉末流が一定であるときに、粉末ホース内の圧力が増大する。このように、第2の診断は、ホース背圧の増大によるホースの詰まりである。
3.供給工程又は搬送工程において不安定さが存在する:
この状況では、ホース背圧の標準偏差が特定の事前設定値を上回る。更に、不安定さのタイプ又はパターンを分析することによって、不安定さの原因並びにその不安定さを低減又は排除するための是正措置を判定することができる。この是正措置は、自動的な措置、又は、物理的要素の構成の変更及び/若しくは動作パラメータの変更などの、手作業の措置とすることができる。当然ながら、実施例の精神及び範囲から逸脱することなく、不安定さを低減又は排除するための他の是正措置を実行することができる。この診断については図1に示すフロー図に記載されており、この場合、101において粉末ホースの圧力が判定される。この点に関して、圧力変換器、例えばOmegadyne PX209-015G10V、Prosense SPT25-10-0100Aを、粉末ホース圧を読み取るように配置することができる。変換器がデジタル・データを生成しない場合、変換器からのアナログ・データをデジタルに変換することができる。102において、不安定さを検出するために、粉末ホース圧の標準偏差が計算される。103において、診断を更に支援するために、粉末ホース圧の周波数分析が行われる。最後に、104において、周波数及び動作状態に基づいて不安定さの原因が診断される。
【0027】
流れの安定性の診断を完全に、すなわち図1のフロー図のように行うためには、ホース圧フィードバックを十分に高いサンプル・レートで精査する必要がある。101を参照されたい。100よりも大きいサンプリング・レート、例えば1秒当たり最大100,000個及びこれを超えるサンプルを利用できるが、1秒当たり50超のサンプリング・レートを使用しても、一般に診断のための情報はそれ以上提供されないことが見出されている。したがって、サンプル・レートは1分当たり10サンプルという少なさであってよく、好ましくは1分当たり10から100,000サンプル、より好ましくは1分当たり10から1000サンプル、更により好ましくは1分当たり10から100サンプルである。
【0028】
図1の102に記載したように、粉末ホース圧値の標準偏差が計算される。計算された標準偏差が事前設定値、例えば1~30秒の時間間隔にわたって1%~10%の範囲内、好ましくは5~20秒の時間間隔にわたって3%~7%の範囲内、最も好ましくは10秒の時間間隔にわたって5%を上回る場合、粉末ホースは不安定さを有すると見なされ、104においてその原因を診断することができる。粉末ホース圧値は、何らかの周期的な振動周波数を識別するために、周波数分析プログラム、例えば高速フーリエ変換(FFT)に供給される。周波数分析に基づいて、以下の不安定さの原因を診断することができる。
(1)0.4から約2.0Hzまでの間の周波数範囲内の周期的振動は通常、粉末ホースにおける音響的振動を示している。これらの振動は、条件によっては、かなり大きくなる可能性があり(例えば図6を参照。ここでは圧力が合計圧力の38%又は約1.44psi(99.3ミリバール)だけ変動している)、合計圧力の50%、例えば100ミリバール(1.45psi)を上回る可能性がある。これらの振動は、粉末のマスフローが圧力振動と同期して振動するため工程の噴煙中でのその大きさが大きいので、容易に観測できる。
(2)0.4Hz未満の周波数範囲の周期的振動は通常、キャリア・ガス流に対する粉末流の高い質量流量比によって、例えば10以上の質量流量比において、好ましくは12以上の質量流量比において、最も好ましくは15以上の質量流量比において生み出された、流量推移を示している。この診断の場合、不安定さの原因を確認するために、キャリア・ガス流に対する粉末流の、この高い質量流量比を上回る質量流量比を計算することができる。
(3)2.0Hz超の周波数範囲内での周期的な振動は通常、流体タイプの供給装置の場合に圧力不均衡により引き起こされた制御振動を示している。この診断の場合、ホッパー差圧とホース圧との間の0.5未満又は2.0超である圧力比を、0.5から2.0の間の圧力比が安定であると理解される場合に、不安定さの原因を確認するために計算できる。容量タイプの供給装置はホッパーと粉末ホースとの間で同じ圧力を維持するので、この圧力不均衡は容量タイプの供給装置では生じない。
【0029】
周波数分析において明確な周期的周波数が検出されない場合は複数の問題が存在する可能性があり、そこから以下の条件に対する排除の工程を利用して、原因を明確にすることができる。
1.キャリア・ガスに対する粉末の質量流量比が高い質量流量比が、例えば10~20、好ましくは12~18、最も好ましくは15以上である場合には、これが不安定さの原因である可能性が高い。この診断は、流体タイプ及び容量タイプの両方の供給装置に適用可能である。更に、高い質量流量比が不安定さの原因と考えられる場合、キャリア・ガスに対する粉末の質量流量比をこの定まった高い質量流量比未満に下げるための是正措置を行うことができる。
2.ホッパー差圧と粉末ホース圧との間の圧力比が0.5未満又は2.0超である場合には、ホッパー差圧と粉末ホース圧との間の圧力不均衡が不安定さの原因である可能性が高い。これは流体式供給装置のみに当てはまり得るが、その理由は、容量式供給装置ではこれらの圧力が同じに保たれるからである。かかる圧力不均衡が見つかった場合には、供給装置の物理的要素、例えばホース径、粉末取り込み孔の径、等を変えるための是正措置を実行して、圧力比をこれが限度内に入るまで変更することができる。
3.ホッパー差圧が流体式粉末供給装置の標的使用幅の下端域にある、例えば10%以下である、又は上端域にある、例えば90%以上である場合、このことは、流体式供給装置における不安定さの原因を示している可能性がある。例として、標的使用幅が1~15psi(0.069~1.034バール)であると仮定すると、ホッパー差圧が下端域内、例えば1~2.4psi(0.069~0.166バール)であるか、又は上端域内、例えば13.6~15psi(0.038~1.034バール)であるとき、このことは、流体式供給装置における不安定さの原因を示している可能性がある。容量式供給装置では、ディスク速度又はスクリュー速度が、その容量式粉末供給装置の正常な作動範囲の上端域にある、例えば90%以上であるか、又は、下端域にある、例えば10%以下である場合、このことは高い確率で不安定さの原因であり得る。この場合、例として、正常な作動範囲が1~30rpmであると仮定すると、ディスク速度又はスクリュー速度が下端域内、例えば1~3.9rpmであるか、又は上側端域内、例えば27.1~30rpmであるとき、このことは高い確率で不安定さの原因であり得る。
4.上記の条件のうちのどれも満足されない場合には、不安定さの原因は、粉末自体、例えば湿っている、汚染されている、静電付着などの良好でない流れ特性、等か、又は、供給設備の損傷、例えば不安定な調節装置、内部の漏れ、等の、いずれかである可能性がある。この場合、供給装置の漏れチェックを行うこと、供給装置を再較正すること、及び粉末の別のロットを試すことを、必須ではないが好ましくはこの順序で行うように、是正措置を実行することができる。
【0030】
複数の不安定さが検出される場合、最大の不安定さ、例えば周波数分析において識別された大きさが最大である周波数が、是正対象として診断される。その後、各識別された不安定さを次に例えば周波数の大きさが大きい順に診断する。
【0031】
方法の実施例は、最終工程へと粒子を輸送するために空中搬送を用いる、すなわち粉末がキャリア・ガスに取り込まれる、限定するものではないが以下を含む、任意の粉末供給装置に適用可能である。
・重量式供給装置
・容量式供給装置
・流体式供給装置
【0032】
この係属中の出願に記載されている方法を実施及び試験するために、粉末ホース内部の状態を計測する(instrument)ように試験装置を構成した。図7は、試験装置構成のブロック図を示す。粉末供給ホース70を3つの異なる方法で配備した:
1.粉末ホース70をキャリア・ガスとともに流れる粉末流の中を通る光の透過を測定するための、粉末ホース70の粉末出口端部に向けて配置したレーザ71、例えばKeyence社のIB-1000制御モジュールを備えたKeyence社のIB-05。粉末流における変動はその場合、結果的にホース中の粉末の中を通る光の透過の変動をもたらすことが見出された。
2.粉末ホース70の下流端部における圧力、すなわち下流圧力を測定するために、圧力変換器72、例えばOmegadyne PX209-015G10Vを、ホースのT字管内に粉末ホース70の粉末出口端部に向けて位置付けて設置した。粉末流の変動の結果、下流圧力の変動が生じることが見出された。
3.ホースの上流端部における圧力、すなわち上流圧力を測定するために、圧力変換器73、例えばOmegadyne PX209-015G10Vを、ホースのT字管内に粉末ホース70の粉末入口端部に向けて位置付けて設置した。粉末流の変動が結果的に圧力変動をもたらすことが見出された。更に、いくつかの知られている粉末供給装置、例えばOerlikon Metco社の9MPは、ホッパー差圧を計算するために使用されるホース圧フィードバックを定めるための圧力変換器を含むので、かかる圧力変換器は、実施例に従って上流圧力を測定するために更に利用することができる。更に、かかる圧力変換を行わない粉末供給装置では、圧力変換器をホッパーの吐出口に又はホースの導入口に位置付けることにより、有利な結果が得られることが見出されている。
【0033】
例示的な実施例において、例えば長さ274.32センチメートル(9フィート)、直径0.48センチメートル(3/16インチ)の標準的な粉末ホースであり得る粉末ホース70を通して、キャリア・ガス、例えば6ノルマル・リットル/分(nlpm:normal liter per minute)で流れるアルゴン・ガスを介して、粉末、例えば-45+22μmの粒体サイズを有する酸化クロム粉末を供給するために、粉末供給装置、例えばOerlikon Metco社の9MP-CL、Oerlikon Metco社の9MP若しくは5MPE、又はOerlikon Metco社の4MP若しくは9MP-DJといったより旧世代のモデルなどの、流体式粉末供給装置を用意した。実施例の精神及び範囲から逸脱することなく、選択された粉末供給装置とともに使用するのに適した任意の粉末/粒体サイズを利用できることが留意される。同じように、実施例の精神及び範囲から逸脱することなく、選択された供給装置及び粉末詳細等とともに使用するのに適した任意のサイズのホースを利用できる。かかる試験装置構成を用いて、40g/分という供給パラメータにおいて粉末ホースにおいて供給の不安定さが誘起されることが見出され、ホース70における結果的なレーザ光透過値並びに上流及び下流圧力が測定された。結果を分析するために、粉末供給装置の上記した機器、レーザ変換器71、及び圧力変換器72、73を、変換器の出力を読み取る目的で、並びに、取得したデジタル・データを、例えば取得したデータから経時的な光透過値及び圧力を受信しプロットするための命令セットを保存するためのストレージ・デバイスを含むデータ処理システム76、例えばコンピュータに転送する目的で、データ取得モジュール75、例えばNational Instruments社のNI USB-6009に結合することができる。
【0034】
図5は、図7の試験装置において行われた測定の結果を示す。特に、レーザ信号の大きさがこの試験における合計光遮断量の50%を上回ることが見出されたが、このことは、粉末供給速度がそれほど高くはないか又は不安定でないにも関わらず、レーザを使用する減衰が非常に大きいことを示している。したがって、流れが非常に不安定であるか又は粉末供給速度が高い場合、レーザ変換器71におけるレーザ信号は容易に飽和し、したがって供給装置システムの診断には使用できない可能性がある。圧力変換器72からの下流圧力信号の大きさは非常に小さいことが見出されたが、このことは流れの不安定さの検出を困難にする。圧力変換器73からの上流圧力信号の大きさは、検出を実施可能にするのに十分な信号の大きさを生み出すと同時に、圧力変換器が信号飽和を回避するのに十分な範囲を依然として実現していた。ホッパー圧とホース圧との間の差として計算された差圧もプロットし、これが低いことを見出した。
【0035】
これらの結果に基づいて、本発明者らは、変換器73が読み取った上流圧力情報が、供給装置システムにおける粉末流の不安定さの検出及び測定において最も有利な結果をもたらすことを見出した。したがって、ホッパー74の吐出口/ホース70の導入口にある圧力変換器73から取得したデータを用いて、粉末ホース70における不安定さの検出及び診断を行うことができる。結果を分析するために、圧力変換器73が、圧力変換器の出力を読み取る目的で、並びに、取得したデジタル・データを、取得したデータに対して例えばFFTなどの周波数分析を行うための命令セットを保存するためのストレージ・デバイスとその設定された命令を受信し処理して取得したデータの周波数分析を生成し提供するためのプロセッサとを含むデータ処理システム76、例えばコンピュータ又はPLCに転送する目的で、データ取得モジュール75、例えばNational Instruments社のNI USB-6009に結合される。更に、ストレージ・デバイス又は別個のストレージ・デバイスは、ホッパー74における圧力差を監視し維持するための、プロセッサが処理可能な更なる命令セットを保存することができる。周波数分析の結果を、使用者が読み取り可能なディスプレイによって受信することができる。プロセッサはまた、粉末ホース70における計算された不安定さを緩和するために使用者が実行すべき是正措置をディスプレイに送信できる。ディスプレイは、データ処理システム76に組み込むことができるか、又は、有線送信若しくはワイヤレス送信によってデータ処理システム76から表示すべきデータを受信するように構成された別個のディスプレイとすることができる。
【0036】
試験装置からの他の結果の分析により、不安定さは約0.65Hzの周期的周波数を有することが明らかになった。更に、この周期的な不安定さは、粉末ホース70における、粉末流の不安定さの主要な原因のうちの1つである音響的共振の結果であることが発見された。試験装置の結果の更なる分析により、振動の音響的性質は、一般的な音響理論に従うことが確認された。図6は、同じ40g/分の粉末流量でのキャリア・ガス流の例えば6nlpmから10nlpmへの増大の結果生じる振動の、例示的なプロットを示す。この場合、結果的な振動周波数は、ほぼちょうど1.0Hzである。追加の試験によりまた、これらの音響的振動に関する周波数範囲が、約0.4から2.0Hzという高さまでの範囲であることも明らかになった。これら音響的振動に対処するために様々な是正措置を実行し、単に粉末ホースの長さを変えることで共振を大きく低減又は排除できることが発見された。例として、図8は、中を通って粉末が搬送される274.32センチメートル(9フィート)の長さのホースにおける上流圧力を示しており、この圧力は約1.5psi(103ミリバール)の振幅を有するほぼ1Hzの周期的な振動信号であるが、457.2センチメートル(15フィート)の長さのホースに変えると、周期的振動がほぼ1桁小さくなり、同時に周波数は約0.4Hzに降下した。
【0037】
他の試験では、例えば密度が3g/ccから15g/ccという高さまでの範囲の様々な粉末に関して、キャリア・ガスに対する粉末の質量流量比が15を上回る場合、全ての粉末に関して結果的に流れが不安定になることが見出された。粉末によっては10という低さの質量流量比で不安点な流れを呈したが、質量流量比が15に達すると、試験した全ての粉末が不安定となった。粉末ホースを通る粉末流のこのシミュレーションはまた、ミュンヘン大学で行った演算と実験とによる研究(Niederreiter、2005年)(Niederreiter、「Untersuchung zur Pfropfenentstehung und Pfropfenstabilitat bei der pneumatischen Dichtstromforderung」、Doktor-Ingenieurs genehmigten Dissertation、Technische Universitat Munchen、2005年11月16日を参照、本文献の開示は参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれる)に基づく、概ね同じ質量流量比での不安定さの発現に関する本発明者らの発見を裏付けるものでもあった。更に、粉末をこの高い質量流量比の状態で引き続き流れさせると、粉末ホースが流量推移を経て最終的に詰まりを生じる十分な可能性があることが見出された。したがって、質量流量比を下げる必要性の検出及び警告を適時に行うことによって、粉末ホースの詰まりが防止されることが見出された。
【0038】
更に他の試験では、いくつかの異なる粉末、例えば、Metco 601 アルミニウム・ポリエステル・ブレンド、Amdry 9951 CoNiCrAlY、及びAmdry 6415 酸化クロムを、試験装置の例示的な流体式粉末供給装置を介し、供給の物理的要素の構成を最適化していない状態で、キャリア・ガス及び粉末流の流れの状態を変えて供給した。結論として、一部の試験条件において、ホッパー差圧とホース圧との間に圧力不均衡が生じた。更に、この試験では、音響的振動は生成されず、キャリア・ガスに対する粉末の質量流量比は15未満に留まった。
【0039】
この試験の結果を図9にプロットして示す。このグラフから、圧力比が約0.5から2.0の間であるとき、いずれのケースにおいても10秒の期間におけるホース圧の標準偏差が5%未満となり、粉末流が安定していたことが示されている。
【0040】
本発明者らは、粉末ホース圧のリアル・タイムのモニタリング及び分析を行うことによって、粉末流と関連付けられる不安定さの検出、診断、及び是正が可能であることを見出した。更に、この方法は、粉末供給装置に自己診断及び自己最適化の方法を提供するための基礎を形成することができる。
【0041】
前出の実例は単に説明の目的で提供されており、いかなる意味においても本発明を限定するものと解釈されるべきではないことが留意される。本発明について例示的な実施例を参照して記載してきたが、本明細書で使用してきた単語は記載及び説明の単語であり、限定の単語ではないことが理解される。本出願に記載の及び補正後の、付属の特許請求の範囲の範囲内で、本発明の範囲及び精神からその態様において逸脱することなく変更を行うことができる。本明細書では本発明について特定の手段、材料、及び実施例を参照して記載したが、本発明は本明細書で開示される詳細に限定されることは意図しておらず、むしろ本発明は、付属の特許請求の範囲の範囲内にあるような、機能的に等価な構造、方法、及び使用にまで拡張される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9