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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】放射線検出装置およびその設置方法
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/167 20060101AFI20230228BHJP
   G21C 17/00 20060101ALI20230228BHJP
   G01T 1/185 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
G01T1/167 D
G21C17/00 500
G01T1/185
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020004530
(22)【出願日】2020-01-15
(65)【公開番号】P2021110702
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】羽生 大仁
(72)【発明者】
【氏名】図子 直城
(72)【発明者】
【氏名】佐田 朋之
(72)【発明者】
【氏名】青木 政司
【審査官】後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-117192(JP,A)
【文献】特開平04-034829(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103267798(CN,A)
【文献】特開2011-080862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00 -1/16
1/167-7/12
G21C 17/00 -17/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉格納容器の外側から前記原子炉格納容器の貫通部内に配置して挿入および引き抜き可能な放射線検出装置であって、
前記挿入時に前記原子炉格納容器内で互いに隣接し並列して挿入され配置される第1および第2の電離箱検出器と、
前記挿入時に前記第1および第2の電離箱検出器それぞれに接続されて前記原子炉格納容器の貫通部内に延びる第1および第2のケーブルと、
前記第1および第2の電離箱検出器を支持して前記原子炉格納容器の貫通部の貫通方向に移動可能な保持具と、
前記保持具に保持されて前記第1および第2の電離箱検出器の間に配置されて前記第1および第2の電離箱検出器の間を電気的に絶縁する絶縁部材と、
を有し、
前記絶縁部材は、前記第1および第2の電離箱検出器の間で前記第1および第2の電離箱検出器が互いに対向する部分全体に広がるように配置され、
前記保持具は、前記第1および第2の電離箱検出器の間の部分全体に広がるように配置された金属板を含み、
前記絶縁部材は、前記第1の電離箱検出器と前記金属板との間の部分全体に広がる第1の分離絶縁部材と、前記第2の電離箱検出器と前記金属板との間の部分全体に広がる第2の分離絶縁部材と、を含むこと、を特徴とする放射線検出装置。
【請求項2】
前記保持具は、前記第1の電離箱検出器を前記金属板に取り付けるための金属製の第1の取り付け金具と、前記第2の電離箱検出器を前記金属板に取り付けるための金属製の第2の取り付け金具と、を含み、
前記絶縁部材は、前記第1の電離箱検出器と前記第1の取り付け金具との間に配置された第1の取り付け金具絶縁部材と、前記第2の電離箱検出器と前記第2の取り付け金具との間に配置された第2の取り付け金具絶縁部材と、を含むこと、を特徴とする請求項に記載の放射線検出装置。
【請求項3】
前記第1および第2のケーブルの少なくとも一方は、前記第1および第2の電離箱検出器の少なくとも一方と直接接続されたMIケーブルを含むこと、を特徴とする請求項1又は2に記載の放射線検出装置。
【請求項4】
原子炉格納容器の外側から前記原子炉格納容器の貫通部内に配置して挿入および引き抜き可能な放射線検出装置であって、
前記挿入時に前記原子炉格納容器内で互いに隣接し並列して挿入され配置される第1および第2の電離箱検出器と、
前記挿入時に前記第1および第2の電離箱検出器それぞれに接続されて前記原子炉格納容器の貫通部内に延びる第1および第2のケーブルと、
前記第1および第2の電離箱検出器を支持して前記原子炉格納容器の貫通部の貫通方向に移動可能な保持具と、
前記保持具に保持されて前記第1および第2の電離箱検出器の間に配置されて前記第1および第2の電離箱検出器の間を電気的に絶縁する絶縁部材と、
を有し、
前記原子炉格納容器内に配置された閉鎖端部と、前記原子炉格納容器外に配置された開放端部とを備えて、前記原子炉格納容器とともに圧力バウンダリを構成する筒状部材が、前記原子炉格納容器の貫通部を貫通していて、
前記第1および第2の電離箱検出器は、前記開放端部から前記筒状部材内に並列して挿入および引き抜き可能に構成され
前記保持具に取り付けられて、前記筒状部材の内側面に沿って前記保持具が前記貫通部の貫通方向に移動する際に前記筒状部材の内側面と接触して回転可能な車輪と、
前記保持具に取り付けられて、前記車輪を前記筒状部材の内側面に向かって押し出し可能な押し出し機構と、をさらに有し、
前記押し出し機構は、前記車輪を前記筒状部材の内側面に向かって押し出そうとする弾性部材を備えていること、を特徴とする放射線検出装置。
【請求項5】
前記弾性部材に取り付けられたひずみセンサをさらに有すること、を特徴とする請求項に記載の放射線検出装置。
【請求項6】
前記押し出し機構は、
前記閉鎖端部の内面に向かって突出して先端が前記閉鎖端部の内面に接触可能な突き当て部を備えて前記保持具との間の傾斜摺動面で摺動可能な摺動部材と、
前記保持具と前記摺動部材との間に取り付けられて前記突き当て部の前記先端が前記閉鎖端部の内面に押し付けられるように前記摺動部材を付勢するばねと、
を有し、
前記保持具を前記閉鎖端部の内面に向かって移動させたときに、前記摺動部材が前記ばねを介して前記閉鎖端部に向けて押され、前記突き当て部の前記先端が前記閉鎖端部の内面に押し付けられるともに、前記傾斜摺動面で摺動することにより前記摺動部材が前記筒状部材の内側面に向かって押し出されるように構成されていること、を特徴とする請求項または請求項に記載の放射線検出装置。
【請求項7】
前記第1のケーブルは、
長手方向に分離および接続可能な複数のケーブルピースと、
前記複数のケーブルピースを長手方向に互いに分離および接続可能な中継器と、
を備えていること、を特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の放射線検出装置。
【請求項8】
原子炉格納容器内の放射線を検出する放射線検出装置の設置方法であって、
第1のケーブルが接続された第1の電離箱検出器と、第2のケーブルが接続された第2の電離箱検出器とを、並列させて絶縁部材によって互いに電気的に絶縁した状態で保持具によって着脱可能に保持して、前記第1および第2の電離箱検出器と前記保持具と前記絶縁部材とを前記原子炉格納容器の貫通部の外側から前記原子炉格納容器の内側に引き抜き可能に挿入する挿入工程と、
前記原子炉格納容器の外側に配置した信号処理部に前記第1および第2のケーブルを取り外し可能に接続する接続工程と、
を有し、
前記絶縁部材は、前記第1および第2の電離箱検出器の間で前記第1および第2の電離箱検出器が互いに対向する部分全体に広がるように配置され、
前記保持具は、前記第1および第2の電離箱検出器の間の部分全体に広がるように配置された金属板を含み、
前記絶縁部材は、前記第1の電離箱検出器と前記金属板との間の部分全体に広がる第1の分離絶縁部材と、前記第2の電離箱検出器と前記金属板との間の部分全体に広がる第2の分離絶縁部材と、を含む
ことを特徴とする放射線検出装置設置方法。
【請求項9】
原子炉格納容器内の放射線を検出する放射線検出装置の設置方法であって、
第1のケーブルが接続された第1の電離箱検出器と、第2のケーブルが接続された第2の電離箱検出器とを、並列させて絶縁部材によって互いに電気的に絶縁した状態で保持具によって着脱可能に保持して、前記第1および第2の電離箱検出器と前記保持具と前記絶縁部材とを前記原子炉格納容器の貫通部の外側から前記原子炉格納容器の内側に引き抜き可能に挿入する挿入工程と、
前記原子炉格納容器の外側に配置した信号処理部に前記第1および第2のケーブルを取り外し可能に接続する接続工程と、
を有し、
前記原子炉格納容器内に配置された閉鎖端部と、前記原子炉格納容器外に配置された開放端部とを備えて、前記原子炉格納容器とともに圧力バウンダリを構成する筒状部材が、前記原子炉格納容器の貫通部を貫通していて、
前記第1および第2の電離箱検出器は、前記開放端部から前記筒状部材内に並列して挿入および引き抜き可能に構成され、
前記保持具に取り付けられて、前記筒状部材の内側面に沿って前記保持具が前記貫通部の貫通方向に移動する際に前記筒状部材の内側面と接触して回転可能な車輪と、
前記保持具に取り付けられて、前記車輪を前記筒状部材の内側面に向かって押し出し可能な押し出し機構と、をさらに有し、
前記押し出し機構は、前記車輪を前記筒状部材の内側面に向かって押し出そうとする弾性部材を備えていること、を特徴とする放射線検出装置設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、原子炉格納容器内の放射線を検出するための放射線検出装置およびその設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉格納容器内の放射線を検出するために、原子炉格納容器の壁を貫通する貫通部(ペネトレーション部)内に設置された放射線検出器と原子炉格納容器の外側に設置された信号処理装置との間をケーブルで接続する技術が知られている。この場合、放射線検出器は、原子炉格納容器の貫通部を通して原子炉格納容器の外側から内側に挿入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-80862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、原子炉建屋への故意による大型航空機の衝突その他のテロリズムによる重大事故等に対処するために必要な設備を設けることが求められている。その場合に、原子炉格納容器の破損防止機能が求められている。そのために、原子炉格納容器内の放射線を放射線検出装置によって検出し、原子炉格納容器内における炉心損傷の有無などを判断する必要がある。
【0005】
さらに、上記重大事故向けに新たに放射線検出器を追加して設置する場合、原子炉格納容器の貫通部の数を増やさずに一つの貫通部に複数の放射線検出器を設置することが求められている。
【0006】
放射線検出器は、定期点検時などに原子炉格納容器の外側に引き抜いて保守し、また挿入することが必要であり、複数の放射線検出器を容易に挿入・引き抜きできることが求められている。さらに、放射線検出器を挿入して放射線検出を行っているときに地震が発生することを想定し、十分な耐震性を確保する必要がある。
【0007】
本発明の実施形態は、かかる状況を踏まえて考えられたものであって、その目的は、原子炉格納容器内の放射線を検出するための複数個の放射線検出器を、高い信頼性で設置できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、実施形態に係る放射線検出装置は、原子炉格納容器の外側から前記原子炉格納容器の貫通部内に挿入および引き抜き可能な放射線検出装置であって、前記挿入時に前記原子炉格納容器内で互いに隣接し並列して挿入され配置される第1および第2の電離箱検出器と、前記挿入時に前記第1および第2の電離箱検出器それぞれに接続されて前記原子炉格納容器の貫通部内に延びる第1および第2のケーブルと、前記第1および第2の電離箱検出器を支持して前記原子炉格納容器の貫通部の貫通方向に移動可能な保持具と、前記保持具に保持されて前記第1および第2の電離箱検出器の間に配置されて前記第1および第2の電離箱検出器の間を電気的に絶縁する絶縁部材と、を有し、前記絶縁部材は、前記第1および第2の電離箱検出器の間で前記第1および第2の電離箱検出器が互いに対向する部分全体に広がるように配置され、前記保持具は、前記第1および第2の電離箱検出器の間の部分全体に広がるように配置された金属板を含み、前記絶縁部材は、前記第1の電離箱検出器と前記金属板との間の部分全体に広がる第1の分離絶縁部材と、前記第2の電離箱検出器と前記金属板との間の部分全体に広がる第2の分離絶縁部材と、を含むこと、を特徴とする。
【0009】
また、実施形態に係る放射線検出装置設置方法は、原子炉格納容器内の放射線を検出する放射線検出装置の設置方法であって、第1のケーブルが接続された第1の電離箱検出器と、第2のケーブルが接続された第2の電離箱検出器とを、並列させて絶縁部材によって互いに電気的に絶縁した状態で保持具によって着脱可能に保持して、前記第1および第2の電離箱検出器と前記保持具と前記絶縁部材とを前記原子炉格納容器の貫通部の外側から前記原子炉格納容器の内側に引き抜き可能に挿入する挿入工程と、前記原子炉格納容器の外側に配置した信号処理部に前記第1および第2のケーブルを取り外し可能に接続する接続工程と、を有し、前記絶縁部材は、前記第1および第2の電離箱検出器の間で前記第1および第2の電離箱検出器が互いに対向する部分全体に広がるように配置され、前記保持具は、前記第1および第2の電離箱検出器の間の部分全体に広がるように配置された金属板を含み、前記絶縁部材は、前記第1の電離箱検出器と前記金属板との間の部分全体に広がる第1の分離絶縁部材と、前記第2の電離箱検出器と前記金属板との間の部分全体に広がる第2の分離絶縁部材と、を含むことを特徴とする。

【発明の効果】
【0010】
この発明の実施形態によれば、原子炉格納容器内の放射線を検出するための複数個の放射線検出器を、高い信頼性で設置できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施形態の放射線検出装置を原子炉格納容器に設置した状態を模式的に示す立断面図。
図2図1の検出器と原子炉格納容器貫通部付近を拡大して示す立断面図。
図3図2のIII-III線矢視拡大横断面図。
図4図2のIV部拡大断面図。
図5】本発明の第2の実施形態の放射線検出装置の押し出し機構およびその付近を示す拡大断面図。
図6】本発明の第3の実施形態の放射線検出装置の押し出し機構およびその付近を示す拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0013】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態の放射線検出装置を原子炉格納容器に設置した状態を模式的に示す立断面図である。図2は、図1の検出器と原子炉格納容器貫通部付近を拡大して示す立断面図である。図3図2のIII-III線矢視拡大横断面図であり、図4図2のIV部拡大断面図である。
【0014】
原子炉格納容器10内は、ドライウェル11とウェットウェル12に仕切られている。ドライウェル11内に原子炉圧力容器13が設置されている。ウェットウェル12内には圧力抑制プール14が収容されている。
【0015】
放射線検出装置15は、第1および第2の電離箱検出器(以下、単に「検出器」とも呼ぶ)161、162と、第1および第2の信号処理部171、172とを有する。第1の電離箱検出器161と第1の信号処理部171との間は、互いに平行する2本の第1のケーブル181で接続されており、第2の電離箱検出器162と第2の信号処理部172との間は、互いに平行する2本の第2のケーブル182で接続されている。
【0016】
電離箱検出器161、162は、原子炉格納容器10内(図示の例ではドライウェル11内)に配置され、信号処理部171、172は原子炉格納容器10の外側に配置されている。
【0017】
原子炉格納容器10の壁を貫通するように貫通部20が設けられ、貫通部20に、貫通部20の貫通方向(X方向)を軸とする円筒状の筒状部材30が挿入されて固定されている。筒状部材30の原子炉格納容器10内の先端は閉鎖端部31を成し、筒状部材30の原子炉格納容器10外の先端は開放端部32を成している。筒状部材30は、原子炉格納容器10の壁とともに圧力バウンダリを形成している。筒状部材30の開放端部32には開放端フランジ33が固定されている。
【0018】
筒状部材30は、圧力バウンダリを形成するものではあるが、電離箱検出器161、162が検出対象とする放射線を透過させるものである。そのため、筒状部材30の内側は圧力バウンダリの外側ではあるが、筒状部材30内に設置された電離箱検出器161、162によって原子炉格納容器10内の放射線を検出することができる。
【0019】
以下の説明において、電離箱検出器161、162を原子炉格納容器10内に配置または挿入するという表現は、圧力バウンダリの外側であっても原子炉格納容器10内の放射線を検出することができる位置に配置または挿入することを意味する。また、原子炉格納容器10の外側という表現は、圧力バウンダリの外側という意味ではなく、原子炉格納容器10の壁の外側であってかつ筒状部材30の外側の位置を意味する。
【0020】
電離箱検出器161、162は、一つの貫通部20内に設置された筒状部材30内に挿入可能であり、また、原子炉格納容器10の外側に引き抜き可能である。ケーブル181、182は、貫通部20内に設置された筒状部材30内を延びている。
【0021】
信号処理部171、172には、たとえば、前置増幅器、対数線量率計、表示器、記録器などが含まれる。第1の信号処理部171は、通常運転時に使用される制御室内に配置し、第2の信号処理部172は、制御室とは別の過酷事故対応のための特別の施設内に配置してもよい。また、別の例としては、第1の信号処理部171と第2の信号処理部172を同じ制御室内に配置して冗長化を図ることもできる。
【0022】
この放射線検出装置15により、たとえば、原子力発電プラントの過酷事故時に原子炉格納容器10内で発生した放射性ガスを計測することができる。
【0023】
2個の電離箱検出器161、162が、原子炉格納容器10内で筒状部材30内の閉鎖端部32付近に互いに隣接し並列して配置されている。2個の電離箱検出器161、162が並ぶ方向をY方向とする。電離箱検出器161、162は外形がほぼ円柱状であって、それらの軸が筒状部材30の軸と平行(X方向)になるように、筒状部材30の軸をはさんで互いに並列して配置されている。
【0024】
第1および第2のケーブル181、182それぞれのうち筒状部材30内にある部分は、無機絶縁(MI:Mineral Insulated)同軸ケーブル(以下、「MIケーブル」と呼ぶ)で構成されている。MIケーブルは、耐放射線性、耐湿性、耐熱性にすぐれているが、剛性が大きくて曲げ伸ばししにくい。
【0025】
第1および第2の系統のケーブル181、182それぞれのうち筒状部材30内にある4本のMIケーブルの部分は、それぞれが2本のMIケーブルピース35a、35bに長手方向に分割されていて、第1および第2の中継器361、362によって、分離可能に接続されている。第1の電離箱検出器161に接続された2本の第1のケーブル181を構成する2本の第1のケーブルピース35aと2本の第2のケーブルピース35bとが第1の中継器361によって長手方向に接続されている。同様に、第2の電離箱検出器162に接続された2本の第2のケーブル182を構成する2本の第2のケーブルピース35aと2本の第2のケーブルピース35bとが第2の中継器362によって長手方向に接続されている。
【0026】
電離箱検出器161、162、ケーブルピース35a、35bおよび中継器361、362は保持具40によって保持されている。保持具40の外側端部には保持フランジ41が取り付けられている。保持フランジ41は、複数のボルト42によって、開放端フランジ33に取り外し可能に取り付けられている。
【0027】
保持フランジ41には第1および第2の外部中継器801、802が取り付けられている。
【0028】
第1のケーブル181のうちの貫通部20の外側で第1の信号処理部171に接続された部分、および、第2のケーブル182のうちの貫通部20の外側で第2の信号処理部172に接続された部分は、MIケーブルではなく、従来のソフトケーブルである。
【0029】
第1の外部中継器801は、第1のケーブル181のうちの2本の第2ケーブルピース35bの部分と、第1のケーブル181のうちの2本の第1のソフトケーブル811とを、分離可能に接続するものである。同様に、第2の外部中継器802は、第2のケーブル182のうちの2本の第2ケーブルピース35bの部分と、第2のケーブル182のうちの2本の第2のソフトケーブル812とを、分離可能に接続するものである。
【0030】
保持具40は、第1の電離箱検出器161と第2の電離箱検出器162との間を仕切るように配置された平板状の金属板45と、保持フランジ41によって金属板45を支持する支持棒70とを含んでいる。金属板45は、第1の電離箱検出器161と第2の電離箱検出器162との間でこれらが互いに対向する部分全体に広がるように配置されている。支持棒70はX方向に延びていて、第1の支持棒ピース71aと第2の支持棒ピース71bとが中継フランジ73によって、軸方向に分離可能に接続されている。第1の支持棒ピース71aは金属板45に接続され、第2の支持棒ピース71bは保持フランジ41に接続されている。
【0031】
保持具40はさらに、金属板45に第1の電離箱検出器161を取り付けるための第1の取り付け金具461と、金属板45に第2の電離箱検出器162を取り付けるための第2の取り付け金具462とを含んでいる。第1の取り付け金具461および第2の取り付け金具462は、複数のボルト50により取り外し可能に、金属板45に取り付けられている。
【0032】
第1の電離箱検出器161と第2の電離箱検出器162との間を電気的に絶縁するために、絶縁部材が配置されている。絶縁部材は、第1の電離箱検出器161と金属板45の間でこれらが互いに対向する部分全体に広がる第1の分離絶縁部材471と、第2の電離箱検出器162と金属板45の間でこれらが互いに対向する部分全体に広がる第2の分離絶縁部材472と、第1の電離箱検出器161と第1の取り付け金具461との間に介在する第1の取り付け金具絶縁部材481と、第2の電離箱検出器162と第2の取り付け金具462との間に介在する第2の取り付け金具絶縁部材482と、を含む。
【0033】
保持具40はさらに、筒状部材30の内壁に対して金属板45を支持するための複数の脚52が、周方向に互いに間隔をあけて径方向外側に突出して設けられている。各脚52の先端には、押し出し機構53を介して車輪54が取り付けられている。車輪54は、保持具40が筒状部材30内に挿入されまたは引き出されるときに(X方向に移動するときに)、筒状部材30の内壁と接触して回転し、挿入または引き出しが円滑に行われるように配置されている。
【0034】
なお、脚52は、図2および図4ではY方向に延びるように表示され、図3ではY方向と異なる径方向に延びるように表示されているが、径方向外側に突出して、周方向に互いに間隔をあけて設けられていればよい。
【0035】
押し出し機構53は、図4に示すように、摺動部材56と、押し出しボルト57とを備えている。押し出しボルト57は軸方向がX方向になるように配置されている。摺動部材56と脚52の先端とが接触する面はX方向に対して傾斜する傾斜摺動面58が形成され、押し出しボルト57を回転させることにより、摺動部材56が傾斜摺動面58に沿って摺動し、摺動部材56は径方向に移動する。これにより、筒状部材30の内壁と車輪54との位置関係を現場で調整することができる。これにより、電離箱検出器161、162を筒状部材30内に挿入または引き出す作業を円滑に行うことができるとともに、地震時に電離箱検出器161、162を確実に支持することができる。
【0036】
さらに、図4に示すように、摺動部材56の先端には窪み60が形成され、窪み60をまたぐように板状の弾性部材61が固定されている。車輪54は弾性部材61のX方向中央に取り付けられている。このような構成とすることにより、弾性部材61の弾性変形によって車輪54はY方向に柔軟に移動可能である。これにより、電離箱検出器161、162を筒状部材30内に挿入または引き出す作業を円滑に行うことができるとともに、地震時に電離箱検出器161、162を確実に支持することができる。
【0037】
以上、金属板45を筒状部材30の内壁に対して支持するものとして、脚52、摺動部材56、車輪54などについて説明したが、支持棒70を内壁に対して支持する構造もこれと同様である。
【0038】
つぎに、この実施形態の放射線検出装置の第1および第2の電離箱検出器161、162を筒状部材30内の原子炉格納容器10内に設置する手順を説明する。まず、原子炉格納容器10外で、第1および第2の電離箱検出器161、162に、第1および第2のケーブルの一部である第1のケーブルピース35aを取り付け、これらを、分離絶縁部材471、472などとともに、金属板45に取り付ける。金属板45は第1の支持棒ピース71aに接続される。
【0039】
つぎに、第1および第2の電離箱検出器161、162を先頭にして、第1および第2の電離箱検出器161、162、第1の支持棒ピース71a、ならびに第1のケーブルピース35aを、筒状部材30の開放端部32から筒状部材30内に挿入する。
【0040】
第1のケーブルピース35aの一部のみが筒状部材30内に挿入されたときに、第1および第2の中継器361、362により、第1のケーブルピース35aと第2のケーブルピース35bとを接続する。また、中継フランジ73により、第1の支持棒ピース71aと第2の支持棒ピース71bとを接続する。この接続の作業は原子炉建屋(図示せず)内の原子炉格納容器10外で行われる。
【0041】
つぎに、第1および第2の電離箱検出器161、162ならびに第1のケーブルピース35a、第2のケーブルピース35bをさらに筒状部材30の奥に挿入する。
【0042】
第1および第2の電離箱検出器161、162が所定の測定位置に達したら、保持フランジ41と開放端フランジ33とをボルト42によって結合する。
【0043】
その後、第1のケーブル181を構成する第2のケーブルピース35bと第1のソフトケーブル811とを、第1の外部中継器801を介して接合し、さらに、第1のソフトケーブル811と第1の信号処理部171とを接続する。同様に、第2のケーブル182を構成する第2のケーブルピース35bと第2のソフトケーブル812とを、第2の外部中継器802を介して接合し、さらに、第2のソフトケーブル812と第2の信号処理部172とを接続する。
【0044】
第1および第2の電離箱検出器161、162を保守のために筒状部材30内部から原子炉格納容器10外に引き出す手順は、上述の挿入の手順の逆である。
【0045】
この実施形態では、第1および第2の電離箱検出器161、162を筒状部材30内に挿入する途中で、第1および第2の中継器361、362によって、第1のケーブルピース35aと第2のケーブルピース35bとを接続する。そのため、原子炉建屋内の原子炉格納容器10外の空間が狭隘であっても、また、曲げ伸ばししにくいMIケーブルを用いていても、第1および第2の電離箱検出器161、162を筒状部材30内の設置場所に設置することができる。また、保守のためにこれらを引き出すこともできる。
【0046】
また、車輪54や押し出し機構53によって、第1および第2の電離箱検出器161、162を筒状部材30内の設置場所に設置する作業やこれらを引き出す作業を円滑に行うことができ、しかも、耐震性を確保することができる。
【0047】
また、第1の電離箱検出器161と第2の電離箱検出器162との間を電気的に絶縁するために、絶縁部材が配置されていることから、地震があっても第1の電離箱検出器161と第2の電離箱検出器162との間が電気的に接触することはなく、第1および第2の電離箱検出器161、162の機能が維持される。
【0048】
[第2の実施形態]
図5は、本発明の第2の実施形態の放射線検出装置の押し出し機構およびその付近を示す拡大断面図であって、第1の実施形態における図4に相当する図である。
【0049】
この実施形態は第1の実施形態の変形であって、板状の弾性部材61にひずみセンサ85が貼り付けられている。ひずみセンサ85に信号ケーブル86が接続されており、信号ケーブル86は、筒状部材30の開口端部31を通じて原子炉格納容器10の外に延びている(図2参照)。その他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0050】
この実施形態によれば、ひずみセンサ85の出力によって、弾性部材61の変形の程度を計測でき、それによって。車輪54が筒状部材30の内壁を押す力の強さを計測できる。その情報に基づいて、押し出しボルト57を調整して、電離箱検出器161、162を最適な力で保持することができる。
【0051】
[第3の実施形態]
図6は、本発明の第3の実施形態の放射線検出装置の押し出し機構およびその付近を示す拡大断面図であって、第2の実施形態における図5に相当する図である。
【0052】
この実施形態は第2の実施形態の変形であって、摺動部材56aは、筒状部材30の閉鎖端部31内面に向かって棒状にX方向に突出する突き当て部90を備えている。また、脚52と摺動部材56aの間にばね91が配置され、摺動部材56aはばね91によって筒状部材30の閉鎖端部31内面に向かって付勢されている。この実施形態では、押し出しボルト57(図4および図5参照)は存在しない。その他の構成は第2の実施形態と同様である。
【0053】
この実施形態で、電離箱検出器161、162を筒状部材30内に設置するにあたり、電離箱検出器161、162を取り付けた保持具40を筒状部材30内に押し込んで挿入する(図2等参照)。そのとき、脚52は図6の矢印Aの向きに押される。突き当て部90の先端が筒状部材30の閉鎖端部31内面に当たると、突き当て部90は矢印Bの向きに押され、ばね91が圧縮され、摺動部材56aは脚52に対して相対的に矢印Bの向きに移動する。そのとき、摺動部材56aは傾斜摺動面58に沿って摺動するので、車輪54は筒状部材30の内側面に向かって矢印Cの向きに移動する。これにより、車輪54は筒状部材30の内側面に向かって押し付けられ、電離箱検出器161、162が筒状部材30によって確実に支持されることになる。
【0054】
[他の実施形態]
以上説明した実施形態では、一つの貫通部20に2個の電離箱検出器161、162を配置するものとした。他の例として、一つの貫通部20に3個以上の電離箱検出器を配置する構成としてもよい。その場合は、3個以上の電離箱検出器を互いに分離するように金属板および分離絶縁部材などを配置すればよい。また、電離箱検出器に接続されるケーブルは3系統以上となる。
【0055】
上記説明では、第1および第2の系統のケーブル181、182それぞれのうち筒状部材30内にある部分は、MIケーブルで構成されているとした。他の例として、第1の系統のケーブル181はすべて従来のソフトケーブルとして、第2の系統のケーブル182の筒状部材30内にある部分をMIケーブルで構成することも考えられる。この場合、第1の電離箱検出器、第1の信号処理部は通常運転用とし、第2の電離箱検出器、第2の信号処理部は過酷事故時用とする運用が考えられる。
【0056】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0057】
10…原子炉格納容器、 11…ドライウェル、 12…ウェットウェル、 13…原子炉圧力容器、 14…圧力抑制プール、 15…放射線検出装置、 20…貫通部、 30…筒状部材、 31…閉鎖端部、 32…開放端部、 33…開放端フランジ、 35a、35b…ケーブルピース、 40…保持具、 41…保持フランジ、 42…ボルト、 45…金属板、 52…脚、 53…押し出し機構、 54…車輪、 56、56a…摺動部材、 57…押し出しボルト、 58…傾斜摺動面、 60…窪み、 61…弾性部材、 70…支持棒、 71a、71b…支持棒ピース、 73…中継フランジ、85…ひずみセンサ、 86…信号ケーブル、 56a…摺動部材、 90…突き当て部、 91…ばね、 161、162…電離箱検出器(検出器)、 171、172…信号処理部、 181、182…ケーブル、 461、462…取り付け金具、 471、472…分離絶縁部材(絶縁部材)、 481、482…取り付け金具絶縁部材(絶縁部材)、 801、802…外部中継器、 811、812…ソフトケーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6