(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】歯ブラシ及びそれを用いたブラッシング方法
(51)【国際特許分類】
A46B 5/00 20060101AFI20230228BHJP
【FI】
A46B5/00 A
(21)【出願番号】P 2020110910
(22)【出願日】2020-06-02
(62)【分割の表示】P 2019190583の分割
【原出願日】2020-06-02
【審査請求日】2020-10-13
【審判番号】
【審判請求日】2021-10-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】397046490
【氏名又は名称】青山 芳博
(74)【代理人】
【識別番号】100075410
【氏名又は名称】藤沢 則昭
(74)【代理人】
【識別番号】100135541
【氏名又は名称】藤沢 昭太郎
(72)【発明者】
【氏名】青山 芳博
【合議体】
【審判長】佐々木 芳枝
【審判官】田合 弘幸
【審判官】長馬 望
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-245130(JP,A)
【文献】登録実用新案第3112657(JP,U)
【文献】特開2001-340139(JP,A)
【文献】特開2002-34662(JP,A)
【文献】特開2004-154269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A46B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルダ部材と、
前記ホルダ部材に、少なくとも一端部分が前記ホルダ部材から突出した状態で保持されているネック部材と、
前記ネック部材の前記一端部分に装着されていて、毛束が起設されているヘッド部材とを備え、
前記ヘッド部材は、複数個に分割されていて、
複数個の前記ヘッド部材のうち1個の前記ヘッド部材は、前記ネック部材の前記一端部分の先端に固定されている固定ヘッド部材であり、
残りの複数の前記ヘッド部材は、前記ネック部材に、前記ネック部材の長手方向にスライド可能に装着され
、必要以上の力がかかるとスライドするスライドヘッド部材であり、
前記ネック部材には、複数個の前記スライドヘッド部材の適正使用位置を表示する
ものであり、前記各スライドヘッド部材を固定するものではない、表示部が付されていて、
複数個の前記スライドヘッド部材のうち、前記ホルダ部材側に位置する前記スライドヘッド部材の前記毛束の長さは、他の前記スライドヘッド部材の前記毛束の長さよりも長いことを特徴とする歯ブラシ。
【請求項2】
前記表示部は、前記ネック部材の表面から凹んだ断面V形状でネック部材を横断した凹部から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記ホルダ部材の後端に、ホルダ部材の延長線上に当該ホルダ部材の半分の長さのバランス部材を突出させたことを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の歯ブラシ。
【請求項4】
請求項1~3までのいずれか1項に記載の歯ブラシを用いたブラッシング方法であり、
固定ヘッド部材を使って行う、歯間部及び歯肉縁のブラッシングと、
スライドヘッド部材を、1本の臼歯を挟むスペースまで固定ヘッド部材に寄せて行う、歯面及び咬合面の1本1本のブラッシングと、
1本または複数本のスライドヘッド部材を固定ヘッド部材に寄せて行う、前歯の内側面と外側の1本1本のブラッシングとからなることを特徴とするブラッシング方法。
【請求項5】
請求項1~3までのいずれか1項に記載の歯ブラシを用いたブラッシング方法であり、
ホルダ部材の最後端あるいはバランス部材を用いて、口腔粘膜のブラッシングとマッサージを行うことを特徴とするブラッシング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、歯ブラシ及びそれを用いたブラッシング方法に関する。特に、ヘッド部材が複数個に分割されている歯ブラシを及びそれを用いたブラッシング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッド部材が複数個に分割されている歯ブラシとして、たとえば、特許文献1に示すものがある。特許文献1の歯ブラシは、ヘッド部と、ネック部と、ホルダ部とからなるものである。
【0003】
ヘッド部は、複数の分割ヘッドによって構成されている。分割ヘッドのうち第1ヘッドは、ネック部の先端に固定されている。他のヘッドは、ネック部にスライド可能に取り付けられている。特許文献1の歯ブラシは、使用者が自分の歯に合わせて他のヘッドをスライド調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の歯ブラシは、スライド調整した他のヘッドが適正使用位置に位置しているか否かを使用者が確認することができない。
歯磨き(以下ブラッシングという)において大事なことは、各個人の口腔状態を熟知したブラッシングの専門知識を持つ人が処方をした歯ブラシを使用するか、あるいは使用者自身の口腔内の理解を深めて意識してカスタマイズした歯ブラシを使用することにより、各歯に対し適正なブラッシングが可能となるのである。
そして、可及的に部分的区分、エリアごとにブラッシングをすることでブラッシングの圧をコントロールできるのであり、そのためには、一本、一本の歯のブラシング意識からさらに1歯5面を有することから一面、一面のブラッシング意識へと変化、認識をさせることが必要である。さらには、口腔内疾患から身を守り、口腔機能の維持、健康増進するためには、口腔疾患原因菌を含む口腔プラークの排除が必要である。そのひとつの方法にブラッシングがある。
そこで硬組織付着プラークはもちろん舌や歯肉をはじめとする軟組織に付着しているプラークの除去に加えて血行促進、マッサージ効果による唾液分泌効果、歯肉引き締めによる食物残渣のポケット進入阻止効果、無意識から意識化効果、モチベーション維持なども重要なブラッシング目的となる。
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、スライド調整した複数個のスライドヘッド部材が適正使用位置に位置しているか否かを使用者が確認することができる歯ブラシを提供することにある。さらに1本の歯ブラシの先端形状と全体形状の自由度を持たせて、使用者個人の口腔内環境に適切化したブラッシングを可能とする歯ブラシをそれを使ったブラッシング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の歯ブラシは、ホルダ部材と、ホルダ部材に、少なくとも一端部分が前記ホルダ部材から突出した状態で保持されているネック部材と、ネック部材の前記一端部分に装着されていて、毛束が起設されているヘッド部材とを備え、ヘッド部材が、複数個に分割されていて、1個のヘッド部材が、ネック部材の一端部分の先端に固定されている固定ヘッド部材であり、残りの複数個の前記ヘッド部材が、ネック部材に、ネック部材の長手方向にスライド可能に装着されているスライドヘッド部材であり、ネック部材には、複数個の前記スライドヘッド部材の適正使用位置を表示する表示部が付されていて、複数個のスライドヘッド部材のうち、ホルダ部材側に位置するスライドヘッド部材の前記毛束の長さが、他のスライドヘッド部材の毛束の長さよりも長いことを特徴とする。
【0008】
この発明の歯ブラシにおいて、表示部がネック部材の表面から凹んだ断面V形状でネック部材を横断した凹部から構成されていることが好ましい。
【0009】
この発明の歯ブラシにおいて、前記ホルダ部材の後端に、当該ホルダ部材の延長線上に当該ホルダ部材の半分の長さのバランス部材を突出させることが好ましい。
【0010】
この発明のブラッシング方法は、固定ヘッド部材を使って歯間部及び歯肉縁のブラッシングし、次いでスライドヘッド部材を、1本の臼歯を挟むスペースまで固定ヘッド部材に寄せてきて、その固定ヘッド部材とスライドヘッド部材を用いて歯面及び咬合面を、1本1本感じながらこきざみに振動させながらブラッシングし、ついで、1本または複数本のスライドヘッド部材を固定ヘッド部材に寄せて、前歯の内側面(舌側面)と外側(唇側面)を1本1本ごとにブラッシングすることを特徴とする。なおこのブラッシングの順序は適宜変更できる。
【0011】
この発明のブラッシング方法は、ホルダ部材の最後端あるいはバランス部材を用いて、口腔粘膜のブラッシングとマッサージを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明の歯ブラシは、スライド調整した複数個のスライドヘッド部材が適正使用位置に位置しているか否かを使用者が確認することができる。
この発明は、1本の歯ブラシの先端形状と全体形状の自由度を持たせて、使用者個人の口腔内環境に適切化したブラッシングを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】ホルダ部材中からネック部材を引き出した状態を示す全体の説明図である。
図1(A)は平面図であり、
図1(B)は断面図である。
【
図2】ホルダ部材中からネック部材を引き出した状態を示す全体の説明図である。
図2(A)は正面図であり、
図2(B)は断面図である。
【
図3】ホルダ部材中にネック部材を収納した状態を示す全体の平面図である。
【
図4】ホルダ部材中にネック部材を収納した状態を示す全体の正面図(
図3におけるIV矢視図)である。
【
図5】長さ調整機構を示す一部拡大断面図である。
図5(A)は、ネック部材の係合凸部がホルダ部材の係合孔部に係合している状態を示し、
図5(B)は、ネック部材の係合凸部とホルダ部材の係合孔部との係合状態が解除されている状態を示し、
図5(C)は、ネック部材の係合凸部とホルダ部材の係合孔部との係合状態が解除されていてネック部材がホルダ部材に対してスライドしている状態を示すものである。
【
図6】長さ調整機構を示す一部拡大断面図である。
図6(A)は
図5(A)におけるA-A線断面図であり、
図6(B)は
図5(B)におけるB-B線断面図であり、
図6(C)は
図5(C)におけるC-C線断面図である。
【
図7】要部(ネック部材、固定ヘッド部材およびスライドヘッド部材)を示す一部拡大平面図である。
【
図8】要部(ネック部材、固定ヘッド部材およびスライドヘッド部材)を示す一部拡大正面図(
図7におけるVIII矢視図)である。
【
図9】スライドヘッド部材をスライドさせた状態の要部(ネック部材固定ヘッド部材およびスライドヘッド部材)を示す一部拡大平面図である。
【
図10】スライドヘッド部材をスライドさせた状態の要部(ネック部材、固定ヘッド部材およびスライドヘッド部材)を示す一部拡大正面図(
図9におけるX矢視図)である。
【
図11】ネック部材およびスライドヘッド部材を示す拡大断面図である。
図11(A)は、
図10におけるA-A線拡大断面図である。
図11(B)は、
図10におけるB-B線拡大断面図である。
【
図12】要部(ネック部材および固定ヘッド部材)の一部拡大平面図である。
【
図13】要部(ネック部材および固定ヘッド部材)を示す一部拡大正面図(
図12におけるXIII矢視図)である。
【
図15】一般成人の歯の長さ、幅および厚さであって、歯の解剖学の平均値を示す説明図である。
【
図16】ホルダ部材の後端にバランス部材を取り付けた状態の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明にかかる歯ブラシとブラッシング方法の実施形態(実施例)の1例について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図面においては、概略図であるため、主な構成部品を図示し、主な構成部品以外の構成部品の図示を省略する。また、断面図において、構成部品の一部のハッチングを省略する。さらに、毛束は、二点鎖線にて図示する。
【0015】
(実施形態の構成の説明)
この実施形態にかかる歯ブラシ1の構成について説明する。
【0016】
(歯ブラシ1の全体構成)
この実施形態にかかる歯ブラシ1は、ホルダ部材2と、ネック部材3と、ヘッド部材4,5,6,7とを備える。歯ブラシ1の各構成部品のホルダ部材2、ネック部材3、およびヘッド部材4,5,6,7の角部は、適宜に面取り加工されている。また、歯ブラシ1は、たとえば透明またはその他の色に着色された樹脂部材を主要な材質として構成されている。なお、歯ブラシ1においては、たとえば毛束40~60を固定する部位に用いられる真鍮のように、少なくとも一部が樹脂部材以外の部材から構成されていても良い。
【0017】
(ホルダ部材2の説明)
ホルダ部材2は、
図1~
図6に示すように、ほぼ円筒形状をなすが、円筒形状でない筒形状でも良い。ホルダ部材2には、スライド孔20が、ホルダ部材2の中心線方向(長手方向A。以下「ホルダ部材2の長手方向A」と称する)に貫通して設けられている。
図6に示すように、スライド孔20の断面形状は四角形状となっているが、それ以外の形状であっても良い。
また、
図1に示すように、ホルダ部材2の一端には、略球形状のフロント部材21が設けられている。このフロント部材21はホルダ部材3に対して着脱自在であり、ネック部材3の固定及び動きのコントロールを可能としている。すなわちフロント部材21の孔21aの断面形状はネック部材3の断面形状と同一であり、ネック部材3がスライドできる大きさである。
図16に示すように歯ブラシのホルダ部2の後端部に、バランス部材100、あるいは他のネック部材(図示せず)を取り付けることができる。他のネック部材は、
図1に示すヘッド部材4,5,6,7を備えたネック部材3と同一のもので良いし、ほかの形状でもよい。この他のネック部材を付けた効果は、ブラッシングの対応性がよくなり、ブラシの歯に対する処方が2倍できるので効果が倍増する。
バランス部材100は、ホルダ部材2を保持した時の指先の保持力を、過度な歯牙と歯肉への圧力を最小限にする効果を有する。あるいは使用者のホルダ部材2を持つ位置の変化による歯ブラシの不安定さや、指でホルダ部材2の後ろを持ったとき重心位置が前にずれることによる歯ブラシの不安定さを解消する効果を有する。また、バランス部材100は球形にすると頬粘膜のマッサージができる。
【0018】
(ネック部材3の説明)
図6(C)に示すように、ネック部材3は、上記のスライド孔20に位置するため、その断面形状は、四角柱形状に近似していて下辺の両端の角部は直角で上面両端は湾曲している。そのため、スライドヘッド部材5,6,7が上下方向を間違えずに使用することができる。
しかしながら、ネック部材3は、スライド孔20の断面形状に対応じた形状であれば、四角柱形状以外の形状であっても良い。なお、ネック部材3の長手方向Aとホルダ部材2の長手方向Aとは、
図1(A)、
図2(A)、
図3、
図4に示すように、一致する。
【0019】
ネック部材3は、ホルダ部材2のスライド孔20中にスライド可能に収納されている。この結果、ネック部材3は、ホルダ部材2から突出した状態で、一端部分がホルダ部材2に保持される。ホルダ部材2のスライド孔20に対して、ネック部材3を長手方向Aに沿ってスライドさせてフロント部材21によってネック部材3が突出する長さを調整する。
ネック部材3は、フラント部材21側がわずかに細くなっている。その範囲は、ネック部材3の後端(
図1の右端)から、ネック部材3全体の3分の2の長さの位置3aまでである(
図1参照)。
【0020】
(スライドヘッド部材4,5,6,7の説明)
図1~
図4に示すように、ヘッド部材4,5,6,7は、ネック部材3の一端部分に装着されている。ヘッド部材4,5,6,7は、4個に分割されている。4個のヘッド部材4,5,6,7の正面には、それぞれ、毛束40,50,60,70が起設されている。
【0021】
(固定ヘッド部材4の説明)
4個のヘッド部材4,5,6,7のうち、1個のヘッド部材4は、ネック部材3の一端部分の先端に一体に固定されている固定ヘッド部材4である。
【0022】
固定ヘッド部材4の形状は、以下の通りである。すなわち、固定ヘッド部材4の正面視形状(
図2(A),(B)に示す形状)は、一端が半円形状であり、他端が四角形状である。固定ヘッド部材4の平面視形状(
図1(A)、(B)に示す形状)は、一端が短辺であると共に他端が長辺の台形状である。また、
図12に示すように、固定ヘッド部材4の正面とネック部材3の正面とは面一である。
【0023】
(スライドヘッド部材5,6,7の説明)
3個のヘッド部材5,6,7は、ネック部材3に、ネック部材3の長手方向Aにスライド可能に装着されているスライドヘッド部材5,6,7である。なお、スライドヘッド部材は、3個には限られず、1個以上であれば幾つ設けても良い。
【0024】
以下の説明では、3個のスライドヘッド部材5,6,7を、固定ヘッド部材4側から、第1スライドヘッド部材5、第2スライドヘッド部材6、第3スライドヘッド部材7と称する。
【0025】
第1スライドヘッド部材5および第2スライドヘッド部材6の形状は、
図2(A),(B)に示すように、正面視形状は概ね長方形状である。また、
図1(A),(B)に示すように、平面視形状も概ね長方形状である。
【0026】
また、第3スライドヘッド部材7の形状は、
図2(A),(B)に示すように、正面視形状は一端が四角形状であり、他端が半円の一部となるような形状である。また、
図1(A),(B)に示すように平面視形状は正方形状である。
【0027】
3個のスライドヘッド部材5,6,7には、
図7に示すようにそれぞれ、スライド孔51,61,71が設けられている。スライド孔51,61,71の断面形状は、概ね四角形状に設けられていて、
図6(C)に示すようなネック部材3の断面形状とほぼ一致する。
【0028】
3個のスライドヘッド部材5,6,7のスライド孔51,61,71には、ネック部材3が挿入されている。それにより、3個のスライドヘッド部材5,6,7は、ネック部材3の長手方向Aに沿ってスライド可能となっている。このとき、
図1(A),(B)および
図3等に示すように、第1スライドヘッド部材5、第2スライドヘッド部材6、および第3スライドヘッド部材7のそれぞれの正面は、同じ高さ位置に設けられている。また、これらのスライドヘッド部材5,6,7は、ネック部材3の正面よりも突出している。
【0029】
3個のスライドヘッド部材5,6,7はその植毛の長さ、太さ、及び植毛面積の大小により効果が異なる。
【0030】
ブラッシング圧力は、歯の解剖学上、歯や歯茎を傷めずに、歯に付着した汚れ、歯と歯との間の汚れ、歯と歯茎との間の汚れなどを落とすのに、最適な力である。なお、上記の摩擦力は、200gの圧力以外の値の圧力に設けられていても良い。摩擦力の調整は、ネック部材3とスライドヘッド部材5,6,7との間の嵌め合いの具合、前記のようにネック部材3全体の3分の2の長さをわずかに細くして、ネック部材3とスライドヘッド部材5,6,7との間の接触の度合いなどを調整することなどにより行われる。
【0031】
(第3スライドヘッド部材7の説明)
図11(B)に示すように、ネック部材3の正面と、ネック部材3の正面に対向する第3スライドヘッド部材7のスライド孔71の対向面との間には、隙間Cが設けられている。このような隙間Cの存在により、第3スライドヘッド部材7は、ネック部材3に、第3スライドヘッド部材7のスライド方向に対して交差(直交)する方向(
図11(B)中の実線矢印の方向および反対方向)に移動可能に装着されている。なお、この例では、第3スライドヘッド部材7の毛束70に対し、長手方向Aにおいて所定の力(たとえば200g)の圧力が作用すると、第3スライドヘッド部材7がネック部材3に対して移動する。上記の説明は、スライドヘッド部材7の
【0032】
(表示部31、32の説明)
図12および
図13に示すように、ネック部材3の正面には、3個のスライドヘッド部材5,6,7の適正使用位置を表示する表示部31,32が、2本付されている。
2本の表示部31,32は、ネック部材3の表面から凹んだV形状の凹部(すなわち刻み目)から構成されている。なお、表示部31,32は、1本でも良く、3本以上でも良い。また、表示部31,32は、V形状以外の形状の凹部であっても良い。さらに、表示部31,32を形作る面は、凸面あるいは平面状でも良く、曲面状でも良く、さらに色彩の変化によって表示部を作成できる。
【0033】
表示部31,32は、歯科医師等の専門知識を有する者が、診察した使用者の口腔内環境に合わせて、ネック部材3に付す。表示部31,32は、
図15に示す歯の解剖学の平均値であって、一般成人の歯の長さ、幅および厚さの平均値に基づいて付される。
【0034】
以下の説明では、2本の表示部31,32を、固定ヘッド部材4側から、第1表示部31、第2表示部32と称する。第1表示部31は、この例では、固定ヘッド部材4側から約5mm離れた箇所に付されている。第1表示部31は、第1スライドヘッド部材5のネック部材3に対する適正使用位置を表示する。また、第2表示部32は、この例では、固定ヘッド部材4側から約13mm離れた箇所に付されている。第2表示部32は、第2スライドヘッド部材6および第3スライドヘッド部材7のネック部材3に対する適正使用位置を表示する。なお、第1スライドヘッド部材5のスライド方向の幅を約5mmとする。
【0035】
図5、
図6に示すように、第1スライドヘッド部材5を第1表示部31に位置させ、かつ、第2スライドヘッド部材6および第3スライドヘッド部材7を第2表示部32に位置させる。すると、固定ヘッド部材4と第1スライドヘッド部材5との間は、約5mmとなり、固定ヘッド部材4の毛束40と第1スライドヘッド部材5の毛束50との間は、約5mmに準ずる。また、第1スライドヘッド部材5と第2スライドヘッド部材6との間は、約3mmとなり、第1スライドヘッド部材5の毛束50と第2スライドヘッド部材6の毛束60との間は、約3mmに準ずる。なお、上記の第1表示部31および第2表示部32の寸法はあくまでも一例であり、種々の寸法を取り得る。
【0036】
(毛束40,50,60,70の説明)
図8に示すように、固定ヘッド部材4の毛束40は、2行2列に配置されている。第1スライドヘッド部材5の毛束50および第2スライドヘッド部材6の毛束60は、2行3列に配置されている。第3スライドヘッド部材7の毛束70は、2行3列の配置に、さらに1行2列の配置を追加した状態となっている。
【0037】
毛束50,60,70の長さは、各スライドヘッド部材5,6,7の正面を基準として、第3スライドヘッド部材7の毛束70の長さは、第1スライドヘッド部材5の毛束50の長さおよび第2スライドヘッド部材6の毛束60の長さよりも、長く設けられている。なお、第3スライドヘッド部材7の毛束70の長さは、固定ヘッド部材4の毛束40の長さよりも短いが、ネック部材3の正面からの長さで比較すると、毛束70のネック部材3の正面からの長さは、毛束40のネック部材3の正面からの長さよりも長い。
【0038】
第3スライドヘッド部材7の毛束70の起設面積は、第1スライドヘッド部材5の毛束50の起設面積および第2スライドヘッド部材6の毛束60の起設面積よりも広い。また、第3スライドヘッド部材7の毛束70の起設面積は、固定ヘッド部材4の毛束40の起設面積よりも広い。
【0039】
(長さ調整機構22,33,34の説明)
図5および
図6に示すように、ホルダ部材2とネック部材3とには、ネック部材3がホルダ部材2から長手方向Aに突出する長さを調整する長さ調整機構22,33,34が設けられている。長さ調整機構22,33,34は、係合孔22と、弾性部33と、係合凸部34とを有する。
【0040】
図2に示すように、係合孔22は、ホルダ部材2の正面に、長手方向Aに複数個(この例では4個)設けられている。係合孔22の正面視形状は、菱形の両端部分が面取りされた六角形状をなす。
【0041】
弾性部33は、ネック部材3の他端に設けられている。肉薄部分である弾性部33は、正面側と平面側との間の厚みが、一端から他端に向かうにつれて徐々に薄くなるように設けられていて、しかも弾性部33の正面に対し、弾性部33の背面が傾斜している。弾性部33は、長手方向Aに対して交差(直交)する方向に弾性を有する。
【0042】
係合凸部34は、ネック部材3の弾性部33の正面に対し、弾性部33と一体的に設けられている。係合凸部34の正面視形状は、係合孔22の正面視形状とほぼ同様に、菱形の両端部分が面取りされた六角形状となっている。この結果、係合凸部34は、係合孔22に係合する。係合凸部34の平面視形状は、中央が高く両端が低い山形状となっている
このため、係合凸部34は、係合孔22に容易に係合できる。なお、係合凸部34と係合孔22との係合状態は、係合凸部34の外側面と係合孔22の内側面とが相互に当接している状態である。
【0043】
(実施形態の作用の説明)
この実施形態にかかる歯ブラシ1は、以上のごとき構成からなり、以下、この実施形態にかかる歯ブラシ1の作用について説明する。
【0044】
(長さ調整機構22,33,34の長さ調整の説明)
まず、長さ調整機構の係合凸部34と係合孔22との係合状態の解除について、
図5、
図6を参照して説明する。
図5(A)、
図6(A)に示すように、係合凸部34と係合孔22とが相互に係合している状態の時は、ネック部材3がホルダ部材2に保持されている。そして、ネック部材3がホルダ部材2から長手方向Aに突出する長さを調整する場合は、係合凸部34と係合孔22との係合状態を解除する必要がある。
【0045】
係合凸部34と係合孔22との係合状態を解除する場合は、係合孔22から係合凸部34を、
図5(A)、(B)、
図6(A)、(B)中の実線矢印方向に、弾性部33の弾性力に抗して押し込む。
【0046】
すると、
図5(B)および
図6(B)に示すように、係合凸部34と係合孔22との係合状態が解除される。そして、
図5(C)の実線矢印に示すように、ネック部材3をホルダ部材2に対してスライドさせることができる。なお、
図5(C)の実線矢印と逆方向に、ネック部材3をホルダ部材2に対してスライドさせることもできる。
【0047】
ネック部材3をホルダ部材2に対してスライドさせて、係合凸部34が係合孔22に位置すると、弾性部33の弾性力により、係合凸部34が係合孔22に係合する。そして、ネック部材3は、ホルダ部材2に保持される。このようにして、ネック部材3のホルダ部材2から突出する長さを任意に(段階的に)調整できる。
【0048】
たとえば、
図1(A),(B)に示すように、ネック部材3をホルダ部材2に対して最長の長さに調整できる。また、
図3および
図4に示すように、ネック部材3をホルダ部材2に対して最短の長さに調整できる。さらに、図示していないが、ネック部材3をホルダ部材2に対して2通りの中間長の長さに調整できる。
【0049】
(スライドヘッド部材5,6,7のスライド調整の説明)
図14に示すように、毛束40,50,60,70により、歯81,82,83,84,85,86,87(以下「歯81から87」と称する)を磨く場合、使用者が自分の歯81から87に合わせてスライドヘッド部材5,6,7をスライド調整することができる。たとえば、
図1(A),(B)、
図3、
図4等に示すように、3個のスライドヘッド部材5,6,7を固定ヘッド部材4側にスライドさせて、4個のヘッド部材4,5,6,7を相互に密着させて1つにまとめる。
【0050】
また、
図9、
図10に示すように、3個のスライドヘッド部材5,6,7をスライドさせて固定ヘッド部材4側から離す。この時、第1スライドヘッド部材5をネック部材3の第1表示部31に位置合わせする。かつ、第2スライドヘッド部材6をネック部材3の第2表示部32に位置合わせする。なお、第3スライドヘッド部材7は、第2スライドヘッド部材6に密着させている状態である。
【0051】
このように、3個のスライドヘッド部材5,6,7をネック部材3の表示部31,32に位置合わせすることができる。しかも、スライド調整した3個のスライドヘッド部材5,6,7が適正使用位置(表示部31,32)に位置しているか否かを使用者が確認することができる。
【0052】
なお、図示されていないが、3個のスライドヘッド部材5,6,7をネック部材3の表示部31,32以外の位置に位置させて、使用することもできる。
【0053】
(ブラッシングの説明)
ネック部材3の長さを調整し、かつスライドヘッド部材5,6,7をスライド調整した後に、
図14に示すように、ヘッド部材4,5,6,7の毛束40,50,60,70により、歯81から87を磨く。
【0054】
図17に示すように、ネック部材3の調整は、スライドヘッド部材5,6,7をフロント部材21方向にスライドさせて、固定ヘッド部材4を下歯列110の最遠心の歯牙111の最遠端に位置させ、フロント部材21が口唇119に触れる位置に設定する。そのことによりフロント部材21が口唇119に触れることで、歯ブラシ1の延長の固定ヘッド部材4が歯牙の最遠端までブラッシングできることが、目視せずともわかる。
ホルダ部材2の持ち方として、いわゆる鉛筆を持つときのペングリップと物を握るときのパームグリップがあるが、ペングリップの方が微細なブラッシングができる。なぜなら力のコントロールを安定化させるためにバランス部材100を付けることによって最小の指先の力によるコントロールができ、かつ毛先の状態を指先に感じることができる。オーラルブラッシングは歯牙1本1本のブラッシングの積み重ねであり、歯牙1本1本の隅々までブラッシングするために、本来歯牙1本1本を指先で触れることにより歯牙を感じることであるが、本発明においてはその指先の代わりとして固定ヘッド部材4を使っている。
プラーク形成機序として頬粘膜の口腔の細菌が遊離して歯面に付着して繁殖、形成されることをスタート起点とする。この頬粘膜に付着している細菌を除去するためにブラッシングを行うのであり、かつマッサージ効果により唾液分泌促進等がされる。
【0055】
図14中の符号「81」は、中切歯を示す。以下、「82」は側切歯を示す。「83」は犬歯を示す。「84」は第1小臼歯を示す。「85」は第2小臼歯を示す。「86」は第1大臼歯を示す。「87」は第2大臼歯を示す。なお、第3大臼歯の図示は省略されている。
【0056】
4個のヘッド部材4,5,6,7を1つにまとめて使用する場合は、
図14に示すように、前側の歯を磨くのに適している。また、3個のスライドヘッド部材5,6,7をネック部材3の表示部31,32に位置合わせして使用する場合は、
図14に示すように、奥側の歯を磨くのに適している。
【0057】
しかも、表示部31,32は、歯科医師等の専門知識を有する者が、使用者の口腔内環境等に合わせて、ネック部材3に付したものであるから、口腔ブラッシングに最適である。
口腔内歯列および歯牙の特徴は、次の通りである。すなわち、下顎の骨は上顎の骨より緻密である。鼓形空隙(歯と歯の間)は内側が外側より広い。歯頚線は曲線である。歯の表面はすべて凸形状ではない。及び1歯5面を持つ。したがって、ブラッシングは、次の通り従来の限定された条件のもとにおこなわれている。
1)口腔内に歯ブラシを、きき手を使って前方から挿入するが、根本的にブラッシング機材は異物であるため、無意識レベルで挿入を拒んでいる。
2)そのとき指先にブラシヘッドが近いほど実感覚を伴うが目視により細部を確認した方がよい。
3)口唇開口により一部の前歯は目視しやすく、歯列は舌圧および頬粘膜、口唇圧を受けている。
その結果、依然として、噛む面、歯の縁、歯の間は3大磨き残しエリアとして残っている。そのため、歯間ブラシ、デンタルフロスの補助清掃部材が使われていた。
しかし、歯は側方圧に弱いが、従来の歯ブラシでは、歯と歯の間を毛先を挿入しようとするとブラシによる過度な側方圧を加えてしまう。更に歯頚線は直線でなく曲線であるためブラシの直線運動に対して歯肉の退縮及び歯牙の楔状欠損と問題が残っている。
デンタルフロスでは、使用の際はピンと張ってその張力を利用してコンタクトポイントと歯間を清掃するものであるが、実際の歯の表面形状はすべて凸面でなく凹面をも持つため、凹面部分の清掃はできない。
歯間ブラシは、直線の金属等の芯の周囲にナイロン毛が植毛されたものでありこれを用いて歯間部を清掃するものである。これでは、噛む面、歯の縁、歯の面は3大磨き残しエリアをすべてブラッシングすることは非効率的である。
【0058】
さらに、4個のヘッド部材4,5,6,7が3個のグループ(固定ヘッド部材4のグループ、第1スライドヘッド部材5のグループ、第2スライドヘッド部材6および第3スライドヘッド部材7のグループ)に分割されるので、歯81から87にかかる力を分散させることができる。これにより、歯や歯茎を傷めることが無い。
【0059】
(第3スライドヘッド部材7の作用の説明)
ここで、ヘッド部材4,5,6,7の毛束40,50,60,70が歯81から87に所定の力、すなわち、必要以上の力(一例として200g)の圧力以上の力で作用すると、第3スライドヘッド部材7が第2スライドヘッド部材6から離れ、また、第3スライドヘッド部材7がネック部材3に対して移動する。
【0060】
使用者は、第3スライドヘッド部材7が第2スライドヘッド部材6から離れ、また、第3スライドヘッド部材7がネック部材3に対して移動することにより、ヘッド部材4,5、6,7の毛束40,50,60,70が歯81から87に必要以上の力(一例として200gの圧力以上の力)で作用していることを認識することができる。
【0061】
また、ヘッド部材4,5,6,7の毛束40,50,60,70が歯81から87に対して適正な姿勢でないときには、長さが最長である第3スライドヘッド部材7の毛束70が、歯81から87以外の箇所(たとえば頬や唇など)に接触する。これにより、使用者は、ヘッド部材4,5,6,7の毛束40,50,60,70が歯81から87に対して適正な姿勢でないことを認識することができる。
【0062】
このように、使用者に、今まで無意識に歯を磨いていた状況から意識的に歯を磨く状況に、意識改革を、促すことができる。しかも、歯科医師が診察した患者の歯の病状に合わせてネック部材3に付した表示部31,32により、3個のスライドヘッド部材5,6,7の位置を適正使用位置に位置させることができる。これにより、患者一人一人、あるいは、使用者一人一人に適した歯ブラシ1を提供することができ、歯の治療や歯の病気予防に貢献することができる。すなわち、患者一人一人、使用者一人一人のセルフメディケーションに貢献することができる。
【0063】
図18に示すように、ネック部材3上でスライドヘッド部材5,6を移動させて、その毛束50,60を前歯79,80と前歯80,81の歯間にそれぞれ位置せしめる。その後ホルダ部材2を持って動かして毛束50,60を前記歯間をブラッシングすると、スライドヘッド部材5,6の間隔が狭い場合は、毛束50,60が歯間に入らず、歯面に当たるため毛束50,60は強い圧力が受ける。そのとき前記のようにネック部材3の中央部がわずかに細くなっているため、そこに位置しているスライドヘッド部材6のネック部材3に対する摩擦力は小さいため、スライドヘッド部材6が移動することで使用者がブラッシングの正しい力の感覚が身につくのである。
【0064】
(実施形態の効果の説明)
この実施形態にかかる歯ブラシ1は、以上のごとき構成、作用からなり、以下、この実施形態にかかる歯ブラシ1の効果について説明する。
・自己に最適なブラシにより歯牙切削耗を抑える。すなわち歯に対する力、方向、動作を コントロールし物理的歯牙清掃を有害な力を減じながら行うことができる。
・歯牙圧の調整が可能となり、歯牙の弱点である側方圧をおさえて、1歯1歯その歯のコ ンディションに最適なブラッシングを行うことができる。
・軟組織に対しての加圧、マッサージ効果なども可能となる。
・ブラッシング効率の向上ならびに時間短縮ができ、ブラッシングを無意識行動から意識 行動へ変える。
・使用者自身で力のコントロールの学習ができると共に、各個人口腔内環境(いわゆるオ ーラルコンディション)に適したブラッシングが可能となり、電子機器を用いてのブラ ッシング教育、処方が可能となる。
【0065】
この実施形態にかかる歯ブラシ1は、ネック部材3に3個のスライドヘッド部材5,6、7の適正使用位置を表示する表示部31,32を付したものである。この結果、この実施形態にかかる歯ブラシ1は、3個のスライドヘッド部材5、6,7をスライド調整して表示部31、32に位置させた時に、スライド調整した3個のスライドヘッド部材5,6、7が適正使用位置に位置しているか否かを、使用者が表示部31,32により確認することができる。
【0066】
この実施形態にかかる歯ブラシ1は、表示部31,32がネック部材3の表面から凹んだ凹部等から構成されている。この結果、この実施形態にかかる歯ブラシ1は、スライド調整した3個のスライドヘッド部材5,6,7が適正使用位置に位置しているか否かを、使用者が表示部31,32により確認する時に、目視による視覚以外に指触りによる触覚により確認することができる。これにより、この実施形態にかかる歯ブラシ1は、目の不自由な人などの視覚障害者に、優しい歯ブラシである。
【0067】
この実施形態にかかる歯ブラシ1は、3個のスライドヘッド部材5,6,7のうち、ネック部材3側に位置する第3スライドヘッド部材7とネック部材3との摩擦力が、他のスライドヘッド部材とネック部材3との摩擦力よりも、小さい。この結果、この実施形態にかかる歯ブラシ1は、ヘッド部材4,5,6,7の毛束40,50,60,70が歯81から87に所定の力、すなわち、必要以上の力の圧力以上の力で作用すると、第3スライドヘッド部材7がネック部材3に対してスライドして第2スライドヘッド部材6から離れる。これにより、この実施形態にかかる歯ブラシ1は、ヘッド部材4,5,6,7の毛束40,50,60,70が歯81から87に所定の圧力以上の力で作用していることを使用者に認識させることができる。
【0068】
この実施形態にかかる歯ブラシ1は、3個のスライドヘッド部材5,6,7のうち、ネック部材3側に位置する第3スライドヘッド部材7の毛束70の長さが、他のスライドヘッド部材の毛束60の長さよりも長い。そのため、歯ブラシ1は、歯81から87に作用する力を、長さが長い毛束70を介して第3スライドヘッド部材7に対し、他のヘッド部材よりも速くかつ確実に伝えることができる。これにより、ヘッド部材4,5,6,7の毛束40,50,60,70が歯81から87に対し所定の圧力以上の力を作用させた場合に、第3スライドヘッド部材7がネック部材3に対してスライドして第2スライドヘッド部材6から速くかつ確実に離れることができる。したがって、この実施形態にかかる歯ブラシ1は、ヘッド部材4,5,6,7の毛束40,50,60,70が歯81から87に対し、必要以上の力を作用させたことを使用者に速くかつ確実に認識させることができる。
【0069】
しかも、この実施形態にかかる歯ブラシ1は、3個のスライドヘッド部材5,6,7のうち、ネック部材3側に位置する第3スライドヘッド部材7の毛束70の長さが他のスライドヘッド部材の毛束60の長さよりも長い。この結果、ヘッド部材4,5,6,7の毛束40,50,60,70が歯81から87に対して適正な姿勢でない時に、長さが最長の第3スライドヘッド部材7の毛束70が歯81から87以外の箇所(たとえば、頬や唇など)に接触する。これにより、この実施形態にかかる歯ブラシ1は、ヘッド部材4,5,6,7の毛束40,50,60,70が歯81から87に対して適正な姿勢でないことを使用者に認識させることができる。
【0070】
この実施形態にかかる歯ブラシ1は、3個のスライドヘッド部材5,6,7のうち、第3スライドヘッド部材7の毛束70の起設面積が他のスライドヘッド部材の起設面積よりも広い。この結果、この実施形態にかかる歯ブラシ1は、歯81から87に作用する力を、起設面積が広い毛束70を介して第3スライドヘッド部材7に対し、他のヘッド部材よりも、速くかつ確実に伝えることができる。ヘッド部材4,5,6,7の毛束40,50,60,70が歯81から87に所定の圧力以上の力で作用して、第3スライドヘッド部材7がネック部材3に対してスライドして第2スライドヘツド部材6から速くかつ確実に離れることができる。したがって、ヘッド部材4,5,6,7の毛束40,50,60,70が歯81から87に対して必要以上の力で作用していることを使用者に速くかつ確実に認識することができる。
【0071】
この実施形態にかかる歯ブラシ1は、3個のスライドヘッド部材5,6,7のうち、第3スライドヘッド部材7がネック部材3のスライド方向に対して交差する方向に、移動可能な状態で装着されている。この結果、ヘッド部材4,5,6,7の毛束40,50,60,70が歯81から87に所定の圧力以上の力で作用すると、第3スライドヘッド部材7がネック部材3に対して移動する。この第3スライドヘッド部材7の移動による使用者の手への感触や使用者への異音が生じる。これにより、この実施形態にかかる歯ブラシ1は、ヘッド部材4,5,6,7の毛束40,50,60,70が歯81から87に200gの圧力以上の力で作用していることを認識することができる。
【0072】
この実施形態にかかる歯ブラシ1は、ホルダ部材2とネック部材3とに、ネック部材3がホルダ部材2から一方向に突出する長さを調整する長さ調整機構22,33,34を、設けたものである。この結果、この実施形態にかかる歯ブラシ1は、ネック部材3のホルダ部材2から突出する長さを、この例では、4段階に任意に調整できる。
【0073】
この実施形態にかかる歯ブラシ1は、長さ調整機構22,33,34が、ホルダ部材2に一方向に4個設けられている係合孔22と、ネック部材3に設けられていて一方向に対して交差する方向に弾性を有する弾性部33と、ネック部材3の弾性部33に設けられていて係合孔22に係合する係合凸部34と、を有するものである。この結果、この実施形態にかかる歯ブラシ1は、ネック部材3のホルダ部材2から突出する長さを、確実に調整できる。
【0074】
この実施形態にかかる歯ブラシ1は、4個のヘッド部材4,5,6,7が3個のグループ(固定ヘッド部材4のグループ、第1スライドヘッド部材5のグループ、第2スライドヘッド部材6および第3スライドヘッド部材7のグループ)に分割されるので、歯81から87にかかる力を分散させることができる。この結果、この実施形態にかかる歯ブラシ1は、歯や歯茎を傷めることが無い。
【0075】
この実施形態にかかる歯ブラシ1は、相互に分解可能であるホルダ部材2とネック部を備えるものである。この結果、ホルダ部材2と、ネック部材3と、ヘッド部材4,5,6,7とを相互に交換可能である。しかもこの実施形態にかかる歯ブラシ1は、1本で、複数の機能(歯間歯ブラシの機能、歯茎マッサージ用歯ブラシ機能、前歯用歯ブラシ機能など)を果たすことができる。
ホルダ部材の後尾に、他のホルダ部材あるいはバランス部材を付けたため、ホルダ部材2を保持した時の指先の保持力を、過度な歯牙と歯肉への圧力を最小限にする効果を有する。あるいは使用者のホルダ部材2を持つ位置の変化による歯ブラシの不安定さや、指でホルダ部材2の後ろを持ったとき重心位置が前にずれることによる歯ブラシの不安定さを解消する効果を有する。また、バランス部材100は球形にすると頬粘膜のマッサージができる。
【0076】
なお、この発明は、前記の実施形態により限定されるものではない。
表示部は診察した歯科診療所において付したり、あるいは歯ブラシの製造工程において付したりする。製造工程において付した場合は、数種類の表示部が付された歯ブラシを、歯科診療所に取りそろえておく。
【0077】
この実施形態にかかるブラッシング方法は次の効果を有する。
固定ヘッド部材とスライドヘッド部材を用いて歯面及び咬合面を、1本1本の歯を感じながら、こきざみに振動させながら行い、その後、スライドヘッド部材を固定ヘッド部材に寄せて、前歯の内側面(舌側面)と外側(唇側面)を1本1本ごとにブラッシングするから、為害作用を最小限として、かつ3つの大きな磨き残しエリアからブラッシングを行うことができる。
【0078】
この実施形態にかかるブラッシング方法は次の効果を有する。傾斜歯、叢生歯、捻転歯、治療痕がある健全歯列でない歯あるいは混合歯列期の歯の場合には、スライドヘッド部材を交換して、形と圧力のコントロールをして固定ヘッド部材及びスライドヘッド部材による効果的なブラッシングを行うことができる。
【0079】
この実施形態にかかるブラッシング方法は次の効果を有する。
個人の磨き方の癖の弊害を除去するため、スライドヘッド部材の位置を変化させて、歯ブラシの毛束の歯及び歯肉にあたる数、方向、力等が変化することにより、毛先の当たり方の変化が生じてブラッシングのムラによる磨き残しをなくすことができる。
ネック部材の正面に対向する第3スライドヘッド部材のスライド孔の対向面との間に隙間を作成し、またネック部材の中央部がわずかに細くすることで、ネック部材とスライドヘッド部材の摩擦度を落としているために、スライドヘッド部材が過度な力が加わると移動するため、使用者自らの力と方向のコントロールトレーニングができる。さらに最後尾のバランス部材を用いて、口腔粘膜のブラッシングとマッサージ等を行うことができる。
【符号の説明】
【0080】
1 歯ブラシ 2 ホルダ部材
20 スライド孔 21 フロント部材
22 係合孔
3 ネック部材 31 第1表示部
32 第2表示部 33 弾性部
34 係合凸部
4 固定ヘッド部材(ヘッド部材) 40 毛束
5 第1スライドヘッド部材(ヘッド部材、スライドヘッド部材)
50 毛束 51 スライド孔
6 第2スライドヘッド部材(ヘッド部材、スライドヘッド部材)
60 毛束 61 スライド孔
7 第3スライドヘッド部材(ヘッド部材、スライドヘッド部材)
70 毛束
71 スライド孔
81 中切歯
82 側切歯
83 犬歯
84 第1小臼歯
85 第2小臼歯
86 第1大臼歯
87 第2大臼歯
A 長手方向(ホルダ部材2の中心線ホルダ部材2の長手方向、ネック部材3の長手方向、一方向)
C 間隙
100 バランス部材