(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】定温保管輸送容器、および積載方法
(51)【国際特許分類】
B65D 81/18 20060101AFI20230228BHJP
F25D 3/00 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
B65D81/18 C
F25D3/00 B
(21)【出願番号】P 2020509709
(86)(22)【出願日】2019-01-21
(86)【国際出願番号】 JP2019001677
(87)【国際公開番号】W WO2019187533
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2018065563
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(73)【特許権者】
【識別番号】591244878
【氏名又は名称】玉井化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】前嶋 寿広
(72)【発明者】
【氏名】坂井 正忠
(72)【発明者】
【氏名】関谷 由佳
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-043020(JP,A)
【文献】国際公開第2014/125878(WO,A1)
【文献】実開昭61-034083(JP,U)
【文献】特開2016-014088(JP,A)
【文献】特開平02-269650(JP,A)
【文献】特開2017-061332(JP,A)
【文献】特開2007-284137(JP,A)
【文献】特開2007-118972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/18
F25D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライアイスを使用する定温保管輸送容器であって、
側壁部と、
底板部と、
前記側壁部の少なくとも1つに配された第1の蓄熱材と、
前記底板部に配された第2の蓄熱材と、を備え、
前記ドライアイスは、前記第1および第2の蓄熱材の少なくとも1つに接するように配置され、
前記第1および第2の蓄熱材は、互いに接するように配置され、
前記第2の蓄熱材は、前記第1の蓄熱材から前記側壁部の壁面側に突出し、
前記第1の蓄熱材と前記第2の蓄熱材における突出した部分と前記側壁部の壁面とによって、前記ドライアイスを収納するドライアイス収納室が形成され、前記第1の蓄熱材は、前記ドライアイス収納室の側面を構成し、前記第2の蓄熱材における突出した部分は、前記ドライアイス収納室の底面を構成することを特徴とする定温保管輸送容器。
【請求項2】
ドライアイスを使用する定温保管輸送容器であって、
側壁部と、
底板部と、
前記側壁部の少なくとも1つに配された第1の蓄熱材と、
前記底板部に配された第2の蓄熱材と、
前記第1の蓄熱材に接する第1伝熱部材と、
前記第2の蓄熱材に接する第2伝熱部材と、を備え、
前記ドライアイスは、前記第1および第2の蓄熱材、並びに前記伝熱部材の少なくとも1つに接するように配置されて
おり、
前記第1伝熱部材および前記第2伝熱部材は、互いに接するように配置され、前記第2伝熱部材は、前記第1伝熱部材から前記側壁部の壁面側に突出し、
前記第1伝熱部材と前記第2伝熱部材における突出した部分と前記側壁部の壁面とによって、前記ドライアイスを収納するドライアイス収納室が形成され、前記第1伝熱部材は、前記ドライアイス収納室の側面を構成し、前記第2伝熱部材における突出した部分は、前記ドライアイス収納室の底面を構成することを特徴とする定温保管輸送容器。
【請求項3】
前記ドライアイス収納室は、前記第1の蓄熱材よりも外側に配されていることを特徴とする請求項1または2に記載の定温保管輸送容器。
【請求項4】
前記定温保管輸送容器に収容される温度管理対象物品における前記底板部と反対側に配された、第3の蓄熱材
、および
前記ドライアイス
を収納する第2のドライアイス収納室を備えたことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の定温保管輸送容器。
【請求項5】
天板部と、
互いに隣接する前記側壁部および前記天板部のうち、前記側壁部が前記天板部の外側と内側との間を摺動する、あるいは互いに隣接する2つの前記側壁部のうち、一方の側壁部が他方の側壁部の外側と内側との間を摺動するように設けられた摺動嵌合部と、を備えたことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の定温保管輸送容器。
【請求項6】
温度管理対象物品の保温又は保冷に用いられる定温保管輸送容器内にドライアイスおよび蓄熱材を積載する積載方法であって、
前記定温保管輸送容器の側壁部の少なくとも1つに第1の蓄熱材を配置し、
前記定温保管輸送容器の底板部に、前記第1の蓄熱材と接触
しかつ前記第1の蓄熱材から前記側壁部の壁面側に突出するように第2の蓄熱材を配置し、
前記第1の蓄熱材と前記第2の蓄熱材における突出した部分と前記側壁部の壁面とによって形成されるドライアイス収納室に、前記ドライアイスを、前記第1および第2の蓄熱材
に接するように配置する、積載方法。
【請求項7】
温度管理対象物品の保温又は保冷に用いられる定温保管輸送容器内にドライアイスおよび蓄熱材を積載する積載方法であって、
前記定温保管輸送容器の側壁部の少なくとも1つに第1の蓄熱材を配置し、
前記定温保管輸送容器の底板部に第2の蓄熱材を配置し、
前記第1
の蓄熱材に接するように第1伝熱部材を配置し、
前記第2の蓄熱材に接しかつ前記第1伝熱部材から前記側壁部の壁面側に突出するように第2伝熱部材を配置し、
前記第1伝熱部材と前記第2伝熱部材における突出した部分と前記側壁部の壁面とによって形成されるドライアイス収納室に、前記ドライアイスを、前記第1伝熱部材および前記第2伝熱部材
に接するように配置する、積載方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定温保管輸送容器、および積載方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品、医療機器、検体、臓器及び化学物質並びに食品等の物品の中には、輸送や運搬の際に品質を保持するために、所定温度範囲内で保温又は保冷を必要とするものがある。従来、このような温度管理が必要な物品(以下、「温度管理対象物品」という。)を保温又は保冷する方法として、断熱性を有する輸送容器内に、予め凝固又は融解させた蓄熱材を収納配置して前記物品を収容する方法が知られている。この方法では、蓄熱材の融解潜熱を利用して保温又は保冷している。
【0003】
このような温度管理対象物品の保温又は保冷に用いられる定温保管輸送容器は、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された定温保管輸送容器は、少なくとも側壁部および底板部の両方に、蓄熱材又は蓄冷材を収納可能な収納凹部が形成された構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開WO2014/125878号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された定温保管輸送容器は、蓄熱材およびドライアイスの両方を用いて温度管理対象物品を保冷する場合、改善の余地が残されている。
【0006】
容器内部を低温状態に長時間保つ場合には、蓄熱材およびドライアイスを多く使用する必要があり、容器内の蓄熱材およびドライアイスの占有容積が大きくなる。このため、温度管理対象物品を収納するスペースを十分に確保することが困難である。
【0007】
また、温度管理対象物品を収納するスペースを十分に確保した場合、容器内の蓄熱材およびドライアイスの占有容積が小さくなる。このため、容器内部を低温状態に長時間保つことが困難である。
【0008】
本発明の一態様は、温度管理対象物品を収納するためスペースを確保しつつ、容器内部を低温状態に長時間保つことができる定温保管輸送容器、および積載方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る定温保管輸送容器は、ドライアイスを使用する定温保管輸送容器であって、側壁部と、底板部と、前記側壁部の少なくとも1つに配された第1の蓄熱材と、前記底板部に配された第2の蓄熱材と、を備え、前記ドライアイスは、前記第1および第2の蓄熱材の少なくとも1つに接するように配置され、前記第1および第2の蓄熱材は、互いに接するように配置されていることを特徴としている。
【0010】
また、前記の課題を解決するために、本発明の他の態様に係る定温保管輸送容器は、ドライアイスを使用する定温保管輸送容器であって、側壁部と、底板部と、前記側壁部の少なくとも1つに配された第1の蓄熱材と、前記底板部に配された第2の蓄熱材と、前記第1および第2の蓄熱材の両方に接する伝熱部材と、を備え、前記ドライアイスは、前記第1および第2の蓄熱材、並びに前記伝熱部材の少なくとも1つに接するように配置されていることを特徴としている。
【0011】
また、前記の課題を解決するために、本発明のさらに他の態様に係る積載方法は、温度管理対象物品の保温又は保冷に用いられる定温保管輸送容器内にドライアイスおよび蓄熱材を積載する積載方法であって、前記定温保管輸送容器の側壁部の少なくとも1つに第1の蓄熱材を配置し、前記定温保管輸送容器の底板部に、前記第1の蓄熱材と接触するように第2の蓄熱材を配置し、前記ドライアイスを、前記第1および第2の蓄熱材の少なくとも1つに接するように配置することを特徴としている。
【0012】
また、前記の課題を解決するために、本発明のさらに他の態様に係る積載方法は、温度管理対象物品の保温又は保冷に用いられる定温保管輸送容器内にドライアイスおよび蓄熱材を積載する積載方法であって、前記定温保管輸送容器の側壁部の少なくとも1つに第1の蓄熱材を配置し、前記定温保管輸送容器の底板部に第2の蓄熱材を配置し、前記第1および第2の蓄熱材の両方に接するように伝熱部材を配置し、前記ドライアイスを、前記第1および第2の蓄熱材、並びに前記伝熱部材の少なくとも1つに接するように配置することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明のこれら態様によれば、温度管理対象物品を収納するためスペースを確保しつつ、容器内部を低温状態に長時間保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態1に係る定温保管輸送容器の概略構成を示す分解斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る定温保管輸送容器の概略構成を示し、(a)は側面図であり、(b)は上面図である。
【
図3】本発明の実施形態1に係る定温保管輸送容器の概略構成を示す斜視図である。
【
図4】(a)は、本発明の実施形態1に係る定温保管輸送容器に収容された収納材およびドライアイスの位置関係を示す断面図であり、(b)は、昇華による容積減少によりドライアイスが底に溜まった状態を示す断面図である。
【
図5】第3の蓄熱材およびドライアイスを備えた定温保管輸送容器の変形例を示し、(a)は、第3の蓄熱材およびドライアイスを収容するための収容枠の構成を示す断面図であり、(b)は(a)に示す収容枠が配置された定温保管輸送容器の構成を示す上面図であり、(c)は、第3の蓄熱材およびドライアイスを収容する収容枠の別の構成を示す断面図であり、(d)は第3の蓄熱材およびドライアイスが天板部に収容された別の構成を示す断面図である。
【
図6】本発明の実施形態1に係る定温保管輸送容器の変形例の概略構成を示す分解斜視図である。
【
図7】
図6に示す定温保管輸送容器の概略構成を示し、(a)は側面図であり、(b)は上面図である。
【
図8】(a)は、本発明の実施形態2に係る定温保管輸送容器に収容された収納材およびドライアイスの位置関係を示す断面図であり、(b)は、昇華による容積減少によりドライアイスが底に溜まった状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る定温保管輸送容器100の概略構成を示す分解斜視図である。
図2は、本実施形態に係る定温保管輸送容器100の概略構成を示し、
図2の(a)は側面図であり、
図2の(b)は上面図である。また、
図3は、本実施形態に係る定温保管輸送容器100の概略構成を示す斜視図である。
【0016】
図1に示されるように、定温保管輸送容器100は、温度管理対象物品を収納する矩形箱状の容器であり、4側面のうち1側面が開口した容器本体Xと、容器本体Xの側面の開口を閉塞する閉塞側壁部41とから構成されている。容器本体Xは、天板部11と、側壁部21および22、底板部31、並びに対向側壁部42とにより構成されている。対向側壁部42は、閉塞側壁部41と対向する位置にある側壁を構成している。天板部11、側壁部21および22、底板部31、並びに、閉塞側壁部41および対向側壁部42は、断熱材からなり、平面視矩形形状である。
【0017】
天板部11および底板部31はそれぞれ、側壁部21、側壁部22、閉塞側壁部41および対向側壁部42と分離可能な矩形状板材により構成されている。また、側壁部21、側壁部22、閉塞側壁部41および対向側壁部42はそれぞれ、矩形状板材により構成されている。側壁部21、側壁部22、閉塞側壁部41および対向側壁部42を構成する矩形状板材は、互いに分離可能となっている。
【0018】
側壁部21、側壁部22、および対向側壁部42は、鉛直方向の寸法が略同じである。一方、閉塞側壁部41は、鉛直方向の寸法が、側壁部21、側壁部22、および対向側壁部42よりも大きくなっている。閉塞側壁部41の鉛直方向の寸法は、側壁部21、側壁部22、および対向側壁部42の鉛直方向の寸法に天板部11の厚さを加えた寸法となっている。
【0019】
また、天板部11および底板部31と、側壁部21および22、並びに対向側壁部42との対向部分には図示しない水平凹凸嵌合部が形成されている。この水平凹凸嵌合部は、水平方向に伸びる凹溝および凸条から構成されている。この水平凹凸嵌合部により、側壁部21および22、並びに対向側壁部42において、上端部は、天板部11と嵌合し、下端部は、底板部31と嵌合する。なお、水平凹凸嵌合部を構成する凸条および水平凹溝は、天板部11および底板部31と、側壁部21および22、並びに対向側壁部42との対向部分に形成されていればよく、形成箇所は特に限定されない。
【0020】
また、側壁部21、側壁部22、および対向側壁部42には、互いに隣接する側壁部の対向面同士を連結する図示しない鉛直凹凸嵌合部により連結している。この鉛直凹凸嵌合部は、各側壁部を構成する矩形状板材の鉛直方向上下全長に渡って形成された、凹溝および凸条から構成されている。なお、鉛直凹凸嵌合部を構成する凹溝および凸条は、側壁部21および22、並びに対向側壁部42との対向部分に形成されていればよく、形成箇所は特に限定されない。
【0021】
また、
図2の(a)および(b)、並びに
図3に示されるように、閉塞側壁部41における両側端部には、鉛直凸条41aが設けられている。この鉛直凸条41aは、閉塞側壁部41の鉛直方向上下全長に渡って形成されている。側壁部21における閉塞側壁部41と対向する対向面には、鉛直凸条41aと嵌合する鉛直凹溝21aが形成されている。同様に、側壁部22における閉塞側壁部41と対向する対向面にも、鉛直凸条41aと嵌合する鉛直凹溝が形成されている。
【0022】
また、天板部11には、コの字状の切欠き部12が形成されている。この切欠き部12は、天板部11における閉塞側壁部41側の端部に設けられている。平面視において、閉塞側壁部41は、天板部11の切欠き部12に収容されている。また、切欠き部12内における閉塞側壁部41の鉛直凸条41aと対向する側面には、鉛直凸条41aが挿入される鉛直凹溝11aが設けられている。鉛直凹溝11aは、切欠き部12における側壁部21側の側面および側壁部22側の側面の両方に設けられている。そして、切欠き部12における側壁部21側の側面では、鉛直凹溝11aは、鉛直凹溝21aと連結するように形成されている。また、切欠き部12における側壁部22側の側面では、鉛直凹溝11aは、側壁部22に形成された鉛直凹溝と連結するように形成されている。
【0023】
また、閉塞側壁部41における底板部31と対向する対向面には、水平凸条41bが形成されている。水平凸条41bは、閉塞側壁部41におけるX方向の一方の端部と他方の端部との間の全長部分のうち鉛直凸条41aの部分を無視した部分に渡って形成されている。また、水平凸条41bは、側壁部21と側壁部22との間に形成されているといえる。そして、底板部31における閉塞側壁部41と対向する対向面には、水平凸条41bと嵌合する水平凹溝31aが形成されている。なお、水平凸条41bおよび水平凹溝31aは、上述した水平凹凸嵌合部を構成する凸条および凹溝と形状が異なる。水平凸条41bおよび水平凹溝31aは、互いに嵌合したとき、閉塞側壁部41と側壁部21および22とが外れにくくなるような形状となっている。それゆえ、定温保管輸送容器100を開梱するときには、閉塞側壁部41よりも前に側壁部21および22を開梱する。
【0024】
このように定温保管輸送容器100では、側壁部21および22、並びに対向側壁部42の上端部および下端部それぞれには、図示しない水平凹凸嵌合部により天板部11および底板部31が嵌合する。そして、側壁部21および22、並びに対向側壁部42における隣接する側壁部同士は、図示しない鉛直凹凸嵌合部により嵌合する。また、閉塞側壁部41は、鉛直凸条41aが鉛直凹溝11aおよび鉛直凹溝21aに挿入されることにより、天板部11および側壁部21と嵌合する。また、閉塞側壁部41は、鉛直凸条41aが鉛直凹溝11aおよび側壁部22に形成された鉛直凹溝に挿入されることにより、側壁部22と嵌合する。さらに、閉塞側壁部41は、水平凸条41bが水平凹溝31aに挿入されることにより、底板部31と嵌合する。それゆえ、定温保管輸送容器100の内部は、密閉された空間となる。
【0025】
ここで、定温保管輸送容器100の素材としては、断熱性を有するものであれば特に限定されず、発泡プラスチックや真空断熱材が好適に用いられる。発泡プラスチックとしては、具体的には、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリウレタンを発泡させたものが用いられる。また、真空断熱材としては、例えば、芯材にシリカ粉やグラスウール、ガラス繊維等を用いたものが用いられる。
【0026】
さらに、定温保管輸送容器100は、発泡プラスチックと真空断熱材との組合せにより構成されていてもよい。その場合には、発泡プラスチックからなる容器本体X及び/又は閉塞側壁部41の外面又は内面を真空断熱材で覆う、あるいは、容器本体X及び閉塞側壁部41を構成する壁の内部に真空断熱材を埋設させることにより、断熱性能の高い輸送容器が得られる。
【0027】
また、定温保管輸送容器100は、側壁部21および22に配された収納材51(第1の蓄熱材)と、底板部31に配された収納材52(第2の蓄熱材)と、を備えた構成である。より好ましくは、側壁部21および側壁部22に収納材51が収納され、底板部31に収納材52が収納されている。具体的には、側壁部21および22の内面には、蓄熱材である収納材51およびドライアイスを収容可能な収容凹部23が設けられている。また、底板部31の上面には、蓄熱材である収納材52を収容可能な収容凹部32が設けられている。なお、収容凹部23の形成箇所は、側壁部21および22に限定されず、定温保管輸送容器100を構成する4つの側壁部のうち少なくとも1つであればよい。例えば、収容凹部23は、閉塞側壁部41にも形成されていてもよく、対向側壁部42に形成されていてもよい。
【0028】
次に、定温保管輸送容器100の組立方法について説明する。定温保管輸送容器100の組立て方法では、閉塞側壁部41を構成する矩形状板材を最後に組立てる。また、定温保管輸送容器100を開梱する時は、まず、天板部11から開梱する。次いで、側壁部21、側壁部22、および対向側壁部42を開梱し、最後に閉塞側壁部41を開梱する。
【0029】
まず、前記水平凹凸嵌合部および前記鉛直凹凸嵌合部により、天板部11を構成する矩形状板材と、側壁部21および22を構成する矩形状板材と、底板部31を構成する矩形状板材と、対向側壁部42を構成する矩形状板材と、を嵌合し、容器本体Xを組立てる。なお、容器本体Xを構成する各矩形状板材同士の嵌合の順番は、前記水平凹凸嵌合部および前記鉛直凹凸嵌合部の形成箇所等に応じて適宜設定することができる。
【0030】
次いで、このように組み立てられた容器本体Xに対して、閉塞側壁部41を構成する矩形状板材を嵌合により組立てることにより、定温保管輸送容器100が完成する。このとき、閉塞側壁部41の両側端部に形成された鉛直凸条41aの下端部がそれぞれ、天板部11の切欠き部12内の側壁部21側および側壁部22側の両方に形成された鉛直凹溝11aに挿入されるように、閉塞側壁部41を構成する矩形状板材を設置する。そして、この状態で、閉塞側壁部41を構成する矩形状板材を鉛直下方向に移動することにより、鉛直凸条41aが天板部11の鉛直凹溝11aを通過し、側壁部21の鉛直凹溝21aおよび側壁部22に形成された鉛直凹溝を摺動する。そして、閉塞側壁部41の水平凸条41bが底板部31の水平凹溝31aに嵌合することにより、容器本体Xに閉塞側壁部41を組立てる。
【0031】
このように定温保管輸送容器100では、互いに隣接する天板部11および閉塞側壁部41について、天板部11の外側と内側との間を閉塞側壁部41が摺動するように、天板部11と閉塞側壁部41との間に摺動嵌合部が形成されている。この摺動嵌合部は、凸条および凹溝からなり、凸条が凹溝を摺動できるように構成されている。
【0032】
より具体的には、前記摺動嵌合部における凸条は、閉塞側壁部41の両側端部に形成された鉛直凸条41aである。また前記摺動嵌合部における凹溝は、切欠き部12内の側壁部21側に形成された鉛直凹溝11aおよび側壁部21の鉛直凹溝21aと、切欠き部12内の側壁部22側に形成された鉛直凹溝11aおよび側壁部22に形成された鉛直凹溝とにより構成されている。切欠き部12内の側壁部21側に形成された鉛直凹溝11aと側壁部21の鉛直凹溝21aとは、互いに連結する。また、切欠き部12内の側壁部22側に形成された鉛直凹溝11aと側壁部22に形成された鉛直凹溝とは、互いに連結する。それゆえ、閉塞側壁部41は、前記のように構成された摺動嵌合部により、天板部11の外側と内側との間を摺動する。このように摺動嵌合部が設けられていることにより、閉塞側壁部41を摺動する動作のみで定温保管輸送容器100の開閉操作を行うことができ、利便性が向上する。
【0033】
また、定温保管輸送容器100の構成によれば、天板部により容器本体を閉塞する構成と比較して、定温保管輸送容器100の開閉動作を簡潔にすることができる。このため、低温保管が必要な温度管理対象物品を外気に触れさせる時間を短くして定温保管輸送容器100内に収納することが容易にできる。天板部により容器本体を閉塞する構成では、(a)底板部を設置した後、温度管理対象物品を配置する、(b)側壁部を3面配置し温度管理対象物品を収容する、あるいは、(c)底板部および側壁部を組立てた後天面から温度管理対象物品を収納する、の何れかの方法により温度管理対象物品が定温保管輸送容器内に収容される。(a)~(c)の何れの方法で温度管理対象物品を収容しても、温度管理対象物品が外気と触れる時間が長くなる。
【0034】
また、上記(c)のように天面から温度管理対象物品を収納する場合では、人の手で温度管理対象物品を収納すると、ドライアイスが配置されている定温保管輸送容器内にヒトの体を入れる必要がある。このため、天板部により容器本体を閉塞する構成においても安全面が担保されているが、安全面(酸欠、二酸化炭素中毒)での危険度が増すおそれが少なからずある。
【0035】
また、外気に触れている時間が長くなればなるほど、低温維持が必要な温度管理対象物品の温度自体が外気によってあがってしまい、一部が融解する可能性がある。
【0036】
一方、上述の摺動嵌合部を備えた定温保管輸送容器100では、温度管理対象物品の温度を上げることなく収容可能になっている。また、閉塞側壁部41からの開閉動作により温度管理対象物品を収容するような容器設計にすることによって、ドライアイスによる酸欠や二酸化炭素中毒の危険性も非常に少なくなる。
【0037】
なお、上述の構成では、前記摺動嵌合部を構成する凸条(鉛直凸条41a)は、閉塞側壁部41に形成されている一方、前記摺動嵌合部を構成する凹溝(鉛直凹溝11a、鉛直凹溝21a等)は、天板部11、並びに側壁部21および22に形成されていた。しかし、凸条および凹溝の形成位置は、互いに嵌合し摺動嵌合部を構成できる位置であればよい。例えば、前記摺動嵌合部を構成する凸条は、天板部11、並びに側壁部21および22に形成され、前記摺動嵌合部を構成する凹溝は、閉塞側壁部41に形成されていてもよい。
【0038】
ところで、上述のような、定温保管輸送容器100を構成する壁部に蓄熱材である収納材およびドライアイスが収納された構成では、温度管理対象物品を収納するためスペースを確保しつつ、容器内部を低温状態に長時間保つことが困難であった。例えば特許文献1に記載の定温保管輸送容器は、側壁に収容された収納材と底板に収納された収納材とが容器本体の断熱性素材により分離した構成であった。それゆえ、例えば、収納材に接触するようにドライアイスを配置した場合、ドライアイスは、収納材および容器本体の断熱性素材の両方に接することになる。このため、ドライアイスは、昇華により容積が減少すると、底部に溜まり、最終的に容器本体の断熱素材に接触することになる。その結果、最終的に底に溜まったドライアイスは、断熱素材に潜熱を奪われ、比較的早く昇華し容積が小さくなる。このため、最終的に底に溜まったドライアイスの潜熱を、蓄熱材である収納材の冷却に有効利用できない。特許文献1に記載の定温保管輸送容器では、ドライアイスと併用した場合、ドライアイスの潜熱を有効利用する点で改善の余地がある。
【0039】
本実施形態に係る定温保管輸送容器100は、最終的に底に溜まったドライアイスの潜熱を、蓄熱材である収納材の冷却に有効利用できる構成である。
図4の(a)は、本実施形態に係る定温保管輸送容器100に収容された収納材51および52とドライアイス61との位置関係を示す断面図である。また、
図4の(b)は、昇華による容積減少によりドライアイス61が底に溜まった状態を示す断面図である。
【0040】
図4の(a)に示されるように、収納材51は、収容凹部23内にて、鉛直方向に複数積み重なって配列されている。配列した収納材51同士は互いに接している。また、収納材52は、収容凹部32にて水平方向に複数配列している。配列した収納材52同士は、互いに接している。
【0041】
定温保管輸送容器100では、側壁部21および22の収容凹部23に収容された収納材51と、底板部31に収納された収納材52(第2の蓄熱材)とが接した構成となっている。また、収容凹部23には、収納材51、収納材52および収納材51と対向する収容凹部23の外側側壁面23aによりドライアイス収納室Dが形成されている。収納材51および収納材52は、ドライアイス収納室Dの壁部の一部を構成する。ドライアイス収納室Dに収納されるドライアイス61は、収納材51および52の両方と接するように配置されている。
【0042】
それゆえ、
図4の(b)に示されるように、ドライアイス61は、昇華による容積減少により底に溜まった状態であっても、収納材51および52の両方に接している。その結果、収納材51および52は、底に溜まったドライアイス61により冷却されることになるので、最終的に底に溜まったドライアイス61の潜熱を、収納材51および52の冷却に有効利用できる。また、ドライアイス61の潜熱を有効利用できるので、ドライアイス61を設置するスペースを小さくすることができ、温度管理対象物品を収納するためスペースを十分に確保できる。したがって、定温保管輸送容器100では、温度管理対象物品を収納するためスペースを確保しつつ、容器内部を低温状態に長時間保つことができる。
【0043】
なお、定温保管輸送容器100は、収納材51および収納材52の少なくとも1つの冷却にドライアイス61の潜熱を有効利用できる構成であればよい。それゆえ、ドライアイス61は、収納材51および収納材52の少なくとも1つに接していればよい。例えば、ドライアイス61は、収納材52にのみ接し、収納材51と離間するように配置されていてもよい。このような構成であっても、ドライアイス61の潜熱を収納材51および収納材52の冷却に有効利用できる。
【0044】
また、収納材51および52の蓄熱材の融解温度とドライアイス61の昇華温度(-78℃)との差が小さければ小さいほど好ましい。これにより、ドライアイス61の昇華による容積減少速度を小さくすることができ、ドライアイス61の潜熱を収納材51および52の冷却に有効利用できる。
【0045】
また、ドライアイス61は、空気などに露出されると、より早く昇華し、容積が減少する。それゆえ、ドライアイス61は、収納材51よりも外側に配置されていることが好ましい。このような構成により、ドライアイス61は、収納材51と収容凹部23の外側側壁面23aとの両方に接触して配置される。それゆえ、ドライアイス61における空気露出面積を小さくすることができ、昇華による容積減少を抑えることができる。
【0046】
また、ドライアイス61の昇華温度と収納材51(蓄熱材)の融解温度を比較したとき、一般的に、収納材51は、ドライアイス61の昇華温度よりも高い融点を有する。それゆえ、ドライアイス61が収納材51よりも外側に配されていれば、ドライアイス61の昇華熱を有効利用し定温保管輸送容器100内部を低温状態に長時間維持することができる。
【0047】
なお、収納材51およびドライアイス61の配置は、
図4の(a)および(b)に示された配置に限定されない。収納材51がドライアイス61の昇華温度よりも低い融点を有する場合、ドライアイス61は、収納材51よりも内側に配されていてもよい。
【0048】
定温保管輸送容器100は、定温保管輸送容器100に収容される温度管理対象物品における底板部31と反対側に配された、収納材53(第3の蓄熱材)およびドライアイス61を備えた構成であってもよい。
図5は、収納材53およびドライアイス61を備えた定温保管輸送容器100の変形例を示す。
図5の(a)は、収納材53およびドライアイス61を収容するための収容枠Y1の構成を示す断面図であり、
図5の(b)は収容枠Y1が配置された定温保管輸送容器100の構成を示す上面図である。なお、
図5の(b)では、天板部11を省略している。
【0049】
図5の(a)および(b)に示されるように、定温保管輸送容器100では、収納材53およびドライアイス61は、別途独立した収容枠Y1に収容された状態で、温度管理対象物品における底板部31と反対側、すなわち温度管理対象物品の上側に配置される。収納材53およびドライアイス61は、天板部11に収容されていない。
【0050】
収容枠Y1は、側壁部と係合して位置が保持される構成となっている。そして、これにより、定温保管輸送容器100内で、温度管理対象物品を収容する荷室空間が確保される。温度管理対象物品を収容する荷室空間は、収容枠Y1の下面、側壁部21、側壁部22、閉塞側壁部41、および対向側壁部42の内面、並びに底板部31の上面によって形成されている。
【0051】
収納材53およびドライアイス61は、収容枠Y1全面に収容されている。そして、収納材53は、内側(荷室空間側)に配されおり、ドライアイス61は、外側に配されている。
【0052】
このように、
図5の(a)および(b)に示される構成では、温度管理対象物品における底板部31と反対側に収納材53およびドライアイス61が配されている。それゆえ、定温保管輸送容器100の内部を低温状態により長時間保つことができる。
【0053】
図5の(c)は、収納材53およびドライアイス61を収容する収容枠の別の構成を示す断面図である。
図5の(c)に示されるように、収納材53およびドライアイス61を収容する収容枠は、ドライアイス61のみを収容するドライアイス収容枠Y2および収納材53のみを収容する蓄熱材収容枠Y3により構成されていてもよい。
【0054】
図5の(d)は、収納材53およびドライアイス61が天板部11に収容された構成を示す断面図である。
図5の(d)に示されるように、天板部11の下面には、蓄熱材である収納材53およびドライアイス61を収容可能な収容凹部13、13、・・・が設けられている。収容凹部13内では、収納材53およびドライアイス61は互いに接しており、ドライアイス61は収納材53よりも上側に配されている。
【0055】
収容凹部13は、天板部11下面の一方の端から他方の端へ延びる溝状である。収納材53およびドライアイス61は、収容凹部13の端部の開口から挿入される。収容凹部13の下側には、収納材53およびドライアイス61の脱落を防止する脱落防止片13Aが形成されている。脱落防止片13Aは、収容凹部13に収容された収納材53の下面側部を覆うように延出している。この脱落防止片13Aにより収納材53およびドライアイス61は、収容凹部13内に確実に保持される。
【0056】
このように天板部11にも収納材53およびドライアイス61が収容されているので、定温保管輸送容器100の内部を低温状態により長時間保つことができる。
【0057】
(変形例)
本実施形態に係る定温保管輸送容器100の構成において、
図1~
図3に示す構成の変形例について説明する。
図6は、この変形例としての定温保管輸送容器101の概略構成を示す分解斜視図である。
図7は、変形例としての定温保管輸送容器101の概略構成を示し、
図7の(a)は側面図であり、
図7の(b)は上面図である。
【0058】
定温保管輸送容器101では、互いに対向する側壁部22および24のうち、一方の側壁部24の幅は、他方の側壁部22の幅よりも小さくなっている。側壁部22の幅は、側壁部24の幅と閉塞側壁部43の厚さとの合計と略同じになっている。また、天板部14には、
図1に示すようなコの字状の切欠き部12が形成されていない。
【0059】
また、閉塞側壁部43における底板部31および天板部14と対向する対向面には、水平凸条43aが設けられている。水平凸条43aは、閉塞側壁部43の水平方向(幅方向)の一方の側端部と他方の側端部との間の全長に渡って形成されている。天板部14における閉塞側壁部43と対向する対向面には、図示しない、水平凸条43aと嵌合する水平凹溝が形成されている。同様に、底板部31における閉塞側壁部43と対向する対向面にも、図示しない、水平凸条43aと嵌合する水平凹溝が形成されている。
【0060】
また、閉塞側壁部43における側壁部22と対向する対向面には、鉛直凸条43bが形成されている。鉛直凸条43bは、閉塞側壁部43の鉛直方向上下全長に渡って形成されている。そして、側壁部22における閉塞側壁部43と対向する対向面には、図示しない、鉛直凸条43bと嵌合する鉛直凹溝が形成されている。
【0061】
定温保管輸送容器101では、側壁部22および23、並びに対向側壁部42の上端部および下端部それぞれには、図示しない水平凹凸嵌合部により天板部14および底板部31が嵌合する。そして、側壁部22および23、並びに対向側壁部42における隣接する側壁部同士は、図示しない鉛直凹凸嵌合部により嵌合する。また、閉塞側壁部43は、水平凸条43aが天板部14および底板部31に形成された水平凹溝に挿入されることにより、天板部14および底板部31と嵌合する。また、閉塞側壁部43は、側壁部22に形成された図示しない鉛直凹溝に鉛直凸条43bが水平凹溝31aに挿入されることにより、側壁部22と嵌合する。それゆえ、定温保管輸送容器101内部は、密閉された空間となる。
【0062】
定温保管輸送容器101は、上述した摺動嵌合部の構成が
図1~
図3に示す構成と異なる。上述した摺動嵌合部は、互いに隣接する2つの側壁部のうち、一方の側壁部が他方の側壁部の外側と内側との間を摺動するように構成されていてもよい。定温保管輸送容器101では、互いに隣接する側壁部24および閉塞側壁部43のうち、側壁部24の外側と内側との間を閉塞側壁部43が摺動するように、天板部14と底板部31との間に摺動嵌合部が形成されている。この摺動嵌合部は、凸条および凹溝からなり、凸条が凹溝を摺動できるように構成されている。
【0063】
より具体的には、前記摺動嵌合部における凸条は、閉塞側壁部43における天板部14および底板部31との対向面に形成された水平凸条43aである。また前記摺動嵌合部における凹溝は、図示しない、天板部14および底板部31における閉塞側壁部43と対向する面に形成された、水平凹溝である。閉塞側壁部43は、前記のように構成された摺動嵌合部により、側壁部24の外側と内側との間を摺動する。このように摺動嵌合部が設けられていることにより、閉塞側壁部43を摺動する動作のみで定温保管輸送容器101の開閉操作を行うことができ、利便性が向上する。特に、定温保管輸送容器101の寸法が極めて大きい場合、例えば高さが人の身長よりも大きい場合、天板部により容器本体を閉塞する構成よりも定温保管輸送容器101の開閉動作が簡潔になる。
【0064】
(蓄熱材である収納材51~53について)
収納材51~53における蓄熱材(蓄冷材ともいう)とは、蓄熱成分(蓄冷成分ともいう)をプラスチック製容器やフィルム製の袋等に封入したものである。
【0065】
蓄熱成分を充填する容器又は袋の素材としてはドライアイスの昇華温度で低温脆性をしないものもしくは低温脆性に比較的強いものが好ましい。蓄熱成分を充填する容器又は袋の素材としては、例えば、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリフェニルオキシド、又はフッ素樹脂等が挙げられ、これらの素材のうち1種類を単独で使用してもよく、耐熱性やバリアー性を高めるため、これらの素材のうち2種類以上を組み合わせて多層構造としたものを使用することもできる。また、この容器又は袋の形状としては、特に限定されないが、熱交換率を高める観点から、表面積を大きく確保できる形状が好ましい。
【0066】
また、収納材51~53は、潜熱性の蓄熱材であることが好ましい。潜熱型の蓄熱材とは、蓄熱成分の相転移に伴う熱エネルギーを利用するものであって、蓄熱成分の相状態が、凝固状態(固体)から溶融状態(液体)に相転移する際に吸収する熱エネルギー、又は溶融状態(液体)から凝固状態(固体)に相転移する際に放出する熱エネルギーを利用するものである。
【0067】
蓄熱成分の凝固・融解温度とは、その相状態が凝固状態(固体)から溶融状態(液体)に、もしくは溶融状態(液体)から凝固状態(固体)に変化する温度である。本実施形態では示差走査熱量計(例えば セイコーインスツル(株)製:SII EXSTAR6000 DSC)を用い、2℃/minの昇温速度で測定し、得られたチャートのピーク温度の値(但し、複数のピークが存在する場合には最大のピーク温度の値)を凝固・融解温度と定義する。
【0068】
相状態とは、一般的に物質の固体、液体、気体の3つの相状態を表すが、本実施形態では、このうち固体と液体の相状態を利用する。蓄熱成分の相状態とは、50重量%以上の相状態を指し、例えば、蓄熱成分の80重量%が固体状態で20重量%が液体状態である相状態は固体(凝固状態)である。
【0069】
本実施形態に使用される潜熱型の蓄熱成分を構成する組成物は、ドライアイスと併用した低温維持を目的とした容器に使用される蓄熱材に含有することができればよい。潜熱型の蓄熱成分を構成する組成物としては、例えば、炭酸水素カリウム水溶液、塩化カリウム水溶液、塩化アンモニウム水溶液、塩化ナトリム水溶液、塩化カルシウム水溶液、臭化カルシウム水溶液等の水を主成分とするもの、水および高吸水性ポリマーを含有するもの等が挙げられる。
【0070】
(積載方法)
本実施形態は、温度管理対象物品の保温又は保冷に用いられる定温保管輸送容器100内にドライアイス61並びに蓄熱材としての収納材51および52を積載する積載方法も包含する。本実施形態に係る積載方法では、例えば、
図4の(a)および(b)に示される位置関係で、定温保管輸送容器100内にドライアイス61並びに収納材51および52を配置する。より具体的には、定温保管輸送容器100の側壁部21に収納材51(第1の蓄熱材)を配置する。そして、定温保管輸送容器100の底板部31に、収納材51と接触するように収納材52(第2の蓄熱材)を配置する。そして、ドライアイス61を、収納材51および52の少なくとも1つに接するように配置する。
【0071】
このようにドライアイス61並びに蓄熱材としての収納材51および52を定温保管輸送容器100内に積載することによって、温度管理対象物品を収納するためスペースを確保しつつ、定温保管輸送容器100内部を低温状態に長時間保つことができる。
【0072】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0073】
図8の(a)は、本実施形態に係る定温保管輸送容器100Aに収容された収納材51及び52とドライアイス61との位置関係を示す断面図である。また、
図8の(b)は、昇華による容積減少によりドライアイス61が底に溜まった状態を示す断面図である。
図8の(a)及び(b)に示されるように、本実施形態に係る定温保管輸送容器100Aでは、収納材51と収納材52との両方に接する伝熱部材70が設けられている点が実施形態1と異なる。
【0074】
伝熱部材70は、収納材51に接する第1伝熱部材71と、収納材52に接する第2伝熱部材72とからなり、第1伝熱部材71と第2伝熱部材72とが互いに接する構成となっている。伝熱部材70は、収納材51と収納材52との間で熱を伝える役割を有する。
【0075】
定温保管輸送容器100Aでは、ドライアイス61は、収容凹部23内で、第1伝熱部材71に接するように収容されている。このため、
図8の(b)に示されるように、ドライアイス61は、昇華による容積減少により底に溜まった状態では、伝熱部材70に接する。ここで、伝熱部材70は、収納材51及び52の両方に接している。それゆえ、収納材51及び52は、伝熱部材70を介して、底に溜まったドライアイス61により冷却されることになる。その結果、定温保管輸送容器100Aでは、最終的に底に溜まったドライアイス61の潜熱を、収納材51及び52の冷却に有効利用できる。また、ドライアイス61の潜熱を有効利用できるので、ドライアイス61を設置するスペースを小さくすることができ、温度管理対象物品を収納するためスペースを十分に確保できる。したがって、定温保管輸送容器100Aでは、温度管理対象物品を収納するためスペースを確保しつつ、容器内部を低温状態に長時間保つことができる。
【0076】
また、伝熱部材70としては、収納材51及び52の間で熱を伝えることが可能な材料であれば特に限定されないが、例えば、アルミニウム箔、グラファイトシートに加え、金箔、銀箔、銅板等が挙げられる。
【0077】
なお、定温保管輸送容器100Aは、収納材51及び収納材52の少なくとも1つの冷却にドライアイス61の潜熱を有効利用できる構成であればよい。それゆえ、ドライアイス61は、収納材51及び収納材52、並びに伝熱部材70の少なくとも1つに接していればよい。
図8の(a)に示される定温保管輸送容器100Aでは、伝熱部材70がドライアイス収納室Dの壁部の一部を構成している。また、例えば、ドライアイス61は、収納材51及び収納材52の何れか一方にのみ接して配置されていてもよい。このような構成であっても、ドライアイス61の潜熱を有効利用できる。
【0078】
(積載方法)
本実施形態は、温度管理対象物品の保温又は保冷に用いられる定温保管輸送容器100A内にドライアイス61並びに蓄熱材としての収納材51および52を積載する積載方法も包含する。本実施形態に係る積載方法では、例えば、
図8の(a)および(b)に示される伝熱部材70を用いて、定温保管輸送容器100A内にドライアイス61並びに収納材51および52を配置する。より具体的には、定温保管輸送容器100の側壁部21に収納材51(第1の蓄熱材)を配置する。そして、定温保管輸送容器100の底板部31に収納材52(第2の蓄熱材)を配置する。そして、収納材51および52の両方に接するように伝熱部材70を設置する。そして、ドライアイス61を、収納材51および52並びに伝熱部材70の少なくとも1つに接するように配置する。
【0079】
このように伝熱部材70を用いてドライアイス61並びに蓄熱材としての収納材51および52を定温保管輸送容器100A内に積載することによって、温度管理対象物品を収納するためスペースを確保しつつ、定温保管輸送容器100A内部を低温状態に長時間保つことができる。
【0080】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0081】
本発明の実施形態に係る定温保管輸送容器100は、ドライアイス61を使用する定温保管輸送容器100であって、側壁部(側壁部21および22、閉塞側壁部41、並びに対向側壁部42)と、底板部31と、前記側壁部の少なくとも1つに配された第1の蓄熱材(収納材51)と、前記底板部31に配された第2の蓄熱材(収納材52)と、を備え、前記ドライアイス61は、前記第1および第2の蓄熱材の少なくとも1つに接するように配置され、前記第1および第2の蓄熱材は、互いに接するように配置されている構成である。
【0082】
上記の構成によれば、前記ドライアイス61は、前記第1および第2の蓄熱材の少なくとも1つに接するように配置されている。また、前記第1および第2の蓄熱材は、互いに接するように配置されている。それゆえ、前記ドライアイス61は、昇華による容積減少により底に溜まった状態であっても、前記第1および第2の蓄熱材の少なくとも1つに接している。その結果、上記の構成によれば、前記第1および第2の蓄熱材の少なくとも1つは、底に溜まった前記ドライアイス61により冷却されることになるので、最終的に底に溜まった前記ドライアイス61の潜熱を、前記第1および第2の蓄熱材の少なくとも1つの冷却に有効利用できる。また、前記ドライアイス61の潜熱を有効利用できるので、前記ドライアイス61を設置するスペースを小さくすることができ、温度管理対象物品を収納するためスペースを十分に確保できる。
【0083】
したがって、上記の構成によれば、温度管理対象物品を収納するためスペースを確保しつつ、容器内部を低温状態に長時間保つことができる。
【0084】
なお、本発明の実施形態に係る定温保管輸送容器100は、側壁部(側壁部21および22、閉塞側壁部41、並びに対向側壁部42)と、底板部31と、前記側壁部の少なくとも1つに配された第1の蓄熱材(収納材51)と、前記底板部31に配された第2の蓄熱材(収納材52)と、前記第1および第2の蓄熱材の少なくとも1つに接するドライアイス61と、を備え、前記第1および第2の蓄熱材は、互いに接するように配置されている構成であるともいえる。
【0085】
本発明の実施形態に係る定温保管輸送容器100Aは、ドライアイス61を使用する定温保管輸送容器100Aであって、側壁部(側壁部21および22、閉塞側壁部41、並びに対向側壁部42)と、底板部31と、前記側壁部の少なくとも1つに配された第1の蓄熱材(収納材51)と、前記底板部に配された第2の蓄熱材(収納材52)と、前記第1および第2の蓄熱材の両方に接する伝熱部材70と、を備え、前記ドライアイス61は、前記第1および第2の蓄熱材、並びに前記伝熱部材70の少なくとも1つに接するように配置されている構成である。
【0086】
上記の構成によれば、前記ドライアイス61は、昇華による容積減少により底に溜まった状態では、前記第1および第2の蓄熱材、並びに前記伝熱部材70の少なくとも1つに接する。ここで、上記の構成によれば、伝熱部材70は、前記第1および第2の蓄熱材の両方に接しているので、伝熱部材70を介して、前記第1および第2の蓄熱材間の伝熱が可能となる。それゆえ、前記第1および第2の蓄熱材は、伝熱部材70を介して、底に溜まった前記ドライアイス61により冷却されることになる。その結果、上記の構成によれば、最終的に底に溜まった前記ドライアイス61の潜熱を、前記第1および第2の蓄熱材の少なくとも1つの冷却に有効利用できる。また、前記ドライアイス61の潜熱を有効利用できるので、前記ドライアイス61を設置するスペースを小さくすることができ、温度管理対象物品を収納するためスペースを十分に確保できる。
【0087】
したがって、上記の構成によれば、温度管理対象物品を収納するためスペースを確保しつつ、容器内部を低温状態に長時間保つことができる。
【0088】
なお、本発明の実施形態に係る定温保管輸送容器100Aは、側壁部(側壁部21および22、閉塞側壁部41、並びに対向側壁部42)と、底板部31と、前記側壁部の少なくとも1つに配された第1の蓄熱材(収納材51)と、前記底板部に配された第2の蓄熱材(収納材52)と、前記第1および第2の蓄熱材の両方に接する伝熱部材70と、前記第1および第2の蓄熱材、並びに前記伝熱部材70の少なくとも1つに接するドライアイス61と、を備えた構成であるともいえる。
【0089】
本発明の実施形態に係る定温保管輸送容器100および100Aにおいて、前記ドライアイス61は、前記第1の蓄熱材(収納材51)よりも外側に配されていることが好ましい。
【0090】
上記の構成によれば、前記ドライアイス61は、前記第1の蓄熱材と前記第1の板部との両方に接触して配置される。それゆえ、前記ドライアイス61における空気露出面積を小さくすることができ、昇華による容積減少を抑えることができる。
【0091】
本発明の実施形態に係る定温保管輸送容器100は、前記定温保管輸送容器100に収容される温度管理対象物品における前記底板部31と反対側に配された、第3の蓄熱材(収納材53)およびドライアイス61を備えた構成であることが好ましい。
【0092】
上記の構成によれば、第3の蓄熱材、およびドライアイス61が前記定温保管輸送容器100に収容される温度管理対象物品における前記底板部31と反対側にも配されているので、定温保管輸送容器の内部を低温状態により長時間保つことができる。
【0093】
本発明の実施形態に係る定温保管輸送容器100または101は、天板部11または14と、互いに隣接する前記側壁部(閉塞側壁部41)および前記天板部11のうち、前記側壁部が前記天板部11の外側と内側との間を摺動する、あるいは互いに隣接する2つの前記側壁部(閉塞側壁部43、側壁部24)のうち、一方の側壁部(閉塞側壁部43)が他方の側壁部(側壁部24)の外側と内側との間を摺動するように設けられた摺動嵌合部と、を備えたことが好ましい。
【0094】
上記の構成によれば、前記摺動嵌合部が設けられることにより、前記側壁部(閉塞側壁部41)または前記一方の側壁部(閉塞側壁部43)を摺動する動作のみで定温保管輸送容器の開閉操作を行うことができ、利便性が向上する。
【0095】
本発明の実施形態に係る積載方法は、温度管理対象物品の保温又は保冷に用いられる定温保管輸送容器100内にドライアイス61および蓄熱材(収納材51、52)を積載する積載方法であって、前記定温保管輸送容器100の側壁部(側壁部21および22、閉塞側壁部41、並びに対向側壁部42)の少なくとも1つ(側壁部21)に第1の蓄熱材(収納材51)を配置し、前記定温保管輸送容器100の底板部31に、前記第1の蓄熱材と接触するように第2の蓄熱材(収納材52)を配置し、前記ドライアイス61を、前記第1および第2の蓄熱材の少なくとも1つに接するように配置する構成である。これにより、温度管理対象物品を収納するためスペースを確保しつつ、容器内部を低温状態に長時間保つことができる。
【0096】
本発明の実施形態に係る積載方法は、温度管理対象物品の保温又は保冷に用いられる定温保管輸送容器100A内にドライアイス61および蓄熱材(収納材51、52)を積載する積載方法であって、前記定温保管輸送容器100Aの側壁部(側壁部21および22、閉塞側壁部41、並びに対向側壁部42)の少なくとも1つ(側壁部21)に第1の蓄熱材(収納材51)を配置し、前記定温保管輸送容器100Aの底板部31に第2の蓄熱材(収納材52)を配置し、前記第1および第2の蓄熱材の両方に接するように伝熱部材70を配置し、前記ドライアイス61を、前記第1および第2の蓄熱材、並びに前記伝熱部材70の少なくとも1つに接するように配置する構成である。これにより、温度管理対象物品を収納するためスペースを確保しつつ、容器内部を低温状態に長時間保つことができる。
【0097】
〔まとめ〕
以上のように、本発明の態様1に係る定温保管輸送容器は、ドライアイスを使用する定温保管輸送容器であって、側壁部と、底板部と、前記側壁部の少なくとも1つに配された第1の蓄熱材と、前記底板部に配された第2の蓄熱材と、を備え、前記ドライアイスは、前記第1および第2の蓄熱材の少なくとも1つに接するように配置され、前記第1および第2の蓄熱材は、互いに接するように配置されていることを特徴としている。
【0098】
また、本発明の態様2に係る定温保管輸送容器は、ドライアイスを使用する定温保管輸送容器であって、側壁部と、底板部と、前記側壁部の少なくとも1つに配された第1の蓄熱材と、前記底板部に配された第2の蓄熱材と、前記第1および第2の蓄熱材の両方に接する伝熱部材と、を備え、前記ドライアイスは、前記第1および第2の蓄熱材、並びに前記伝熱部材の少なくとも1つに接するように配置されていることを特徴としている。
【0099】
また、本発明の態様3に係る定温保管輸送容器は、態様1または2において、前記ドライアイスは、前記第1の蓄熱材よりも外側に配されていることが好ましい。
【0100】
また、本発明の態様4に係る定温保管輸送容器は、態様1~3において、前記定温保管輸送容器に収容される温度管理対象物品における前記底板部と反対側に配された、第3の蓄熱材およびドライアイスを備えたことが好ましい。
【0101】
また、本発明の態様5に係る定温保管輸送容器は、態様1~4において、天板部と、互いに隣接する前記側壁部および前記天板部のうち、前記側壁部が前記天板部の外側と内側との間を摺動する、あるいは互いに隣接する2つの前記側壁部のうち、一方の側壁部が他方の側壁部の外側と内側との間を摺動するように設けられた摺動嵌合部と、を備えたことが好ましい。
【0102】
また、本発明の態様6に係る積載方法は、温度管理対象物品の保温又は保冷に用いられる定温保管輸送容器内にドライアイスおよび蓄熱材を積載する積載方法であって、前記定温保管輸送容器の側壁部の少なくとも1つに第1の蓄熱材を配置し、前記定温保管輸送容器の底板部に、前記第1の蓄熱材と接触するように第2の蓄熱材を配置し、前記ドライアイスを、前記第1および第2の蓄熱材の少なくとも1つに接するように配置することを特徴としている。
【0103】
また、本発明の態様7に係る積載方法は、温度管理対象物品の保温又は保冷に用いられる定温保管輸送容器内にドライアイスおよび蓄熱材を積載する積載方法であって、前記定温保管輸送容器の側壁部の少なくとも1つに第1の蓄熱材を配置し、前記定温保管輸送容器の底板部に第2の蓄熱材を配置し、前記第1および第2の蓄熱材の両方に接するように伝熱部材を配置し、前記ドライアイスを、前記第1および第2の蓄熱材、並びに前記伝熱部材の少なくとも1つに接するように配置することを特徴としている。
【符号の説明】
【0104】
100、100A、101 定温保管輸送容器
11、14 天板部
11a、21a 鉛直凹溝(摺動嵌合部)
21、22、24 側壁部
31 底板部
41、43 閉塞側壁部
41a 鉛直凸条(摺動嵌合部)
43a 水平凸条(摺動嵌合部)
42 対向側壁部(第1の板部)
51 収納材(第1の蓄熱材)
52 収納材(第2の蓄熱材)
53 収納材(第3の蓄熱材)
61 ドライアイス
70 伝熱部材