(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】油中水型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20230228BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20230228BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20230228BHJP
A61Q 1/12 20060101ALI20230228BHJP
A61Q 1/02 20060101ALI20230228BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/06
A61K8/36
A61Q1/12
A61Q1/02
A61Q17/04
(21)【出願番号】P 2020511111
(86)(22)【出願日】2019-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2019014086
(87)【国際公開番号】W WO2019189796
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】P 2018063662
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】久保田 俊
(72)【発明者】
【氏名】小河 頌子
(72)【発明者】
【氏名】福原 隆志
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-256154(JP,A)
【文献】特開2019-038781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)0.1~20質量%の金属石鹸処理
体質顔料粉末、及び、
(B)0.01~2質量%のカルボキシル基を有する吸水性ポリマーを含有することを特徴とする油中水型乳化化粧料。
【請求項2】
(B)カルボキシル基を有する吸水性ポリマーの吸水能が自重の10倍~1000倍であることを特徴とする請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
(A)金属石鹸処理
体質顔料粉末の処理剤が、ミリスチン酸マグネシウム、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、又はシリコーン金属石鹸であることを特徴とする請求項1に記載の化粧料。
【請求項4】
(A)金属石鹸処理
体質顔料粉末の母核がマイカ、タルク、又は硫酸バリウムである、請求項1に記載の化粧料。
【請求項5】
(B)カルボキシル基を有する吸水性ポリマーが、カルボマーNa又はアクリル酸Naグラフトデンプンである、請求項1に記載の化粧料。
【請求項6】
(B)カルボキシル基を有する吸水性ポリマーの吸水能が自重の10倍~500倍であることを特徴とする請求項2に記載の化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油中水型乳化化粧料に関する。より詳細には、肌の補正効果に優れるが厚塗り感が無く、みずみずしく滑らかな使用感の油中水型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
ファンデーション等のメーキャップ化粧料には、シミ、そばかす等の肌の色むらや毛穴等の肌の凹凸を補正する効果を有する酸化チタン等の白色顔料や酸化鉄等の着色顔料が用いられている。しかしながら、酸化チタン等のカバー力によって肌の補正効果は得られるが、仕上がりにツヤがなく白く不自然な仕上がりとなることがあった。
【0003】
特許文献1では、配合する粉末成分を工夫することにより、肌の欠点をカバーしながら、素肌に近い透明感のある自然な仕上がりとなるメーキャップ化粧料が提案されている。即ち、従来の顔料粉末に代えて、あるいはそれらに加えて、特定形状の板状アルミナ粒子表面に酸化鉄を被覆した複合顔料が用いられている。しかしながら、シリコーン処理酸化チタンでは透明感が得られず、複合顔料で十分なカバー効果と仕上がりの自然さ、透明感を得るためには配合量を10~35質量%にするのが好ましいとされている(段落0027~0032)。
【0004】
近年、厚塗り感が無く自然な仕上がりとなるナチュラルメイクに対する要求が更に高まっているが、肌の色むらや凹凸を十分にカバーするためにはファンデーション等の化粧料を重ね付けする必要があり、結果として厚塗り感を生じているのが現状である。さらに、オイルゲル状の従来のファンデーションは肌上でののびが重く、べたついてしまうという問題もあった。
【0005】
一方、特許文献2には、吸水能の高いアクリル酸Naグラフトデンプン等を配合した化粧料が、ムース状を呈し、ふんわりとした独特の軽い使用感、清涼感に優れ、特定の表面処理をした粉末の分散性に優れることが記載されている。しかしながら、当該化粧料による凹凸補正効果等については開示も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-278743号公報
【文献】特開2011-256154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上の背景技術に鑑みて、本発明は、みずみずしく滑らかな使用感で、塗布後に均一な塗膜を形成し、しみやそばかす等の色むらをカバーしながら毛穴等の肌の凹凸を目立たなくすることができ、なおかつ厚塗り感を与えない油中水型乳化化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、アクリレーツクロスポリマー-2-Naやアクリル酸Naグラフトデンプン等に代表されるカルボキシル基を有する吸水性ポリマーに適宜水分を吸収させたゲルと金属石鹸処理を施した粉末とが会合体を形成し、当該会合体が良好かつ十分な凹凸補正効果を発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(A)0.1~20質量%の金属石鹸処理粉末、及び、
(B)0.01~2質量%のカルボキシル基を有する吸水性ポリマーを含有することを特徴とする油中水型乳化化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の油中水型乳化化粧料は、適量の吸水性ポリマーを含有しているので、当該吸水性ポリマーが水を適宜吸収してゲル状の会合体を形成するため、ムース状のふんわりした手触りで肌に軽く塗布することができ、なおかつ均一な塗膜を形成する。その結果、みずみずしく滑らかな使用感でありながら重ね塗りする必要が無く、特別なメーキャップ技術を持たない一般的な使用者が厚塗り感のないナチュラルメイクをすることを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1及び比較例2の化粧料を塗布した肌の状態をスキンビジオム(登録商標)を用いて観察した画像を示す図である。
【
図2】試験例1~3の製剤から形成した薄膜の外観を示す図である。
【
図3】試験例1の薄膜の顕微鏡写真を示す図である(左側:通常モード;右側:偏光モード)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の油中水型乳化化粧料(以下、単に「化粧料」ともいう)は、(A)金属石鹸処理粉末及び(B)カルボキシル基を有する吸水性ポリマーを必須成分として含有する。
【0013】
本発明における(A)金属石鹸処理粉末は、基体(母核)となる粉末の表面を金属石鹸で処理した粉末である。
【0014】
本発明における金属石鹸とは、脂肪酸等のカルボキシル基含有化合物と2価以上の金属との塩と定義される。ここで、金属石鹸を構成するカルボキシル基含有化合物は、例えば、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を持つ脂肪酸、カルボキシル変性シリコーン等を含むが、中でも高級脂肪酸、即ち、炭素数8~24、好ましくは炭素数12~18の直鎖状もしくは分岐鎖状のカルボン酸が好ましい。高級脂肪酸の好ましい具体例としては、ステアリン酸、イソステアリン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸等が挙げられる。
【0015】
金属石鹸を構成する2価以上の金属としては、限定されないが、カルシウム、マグネシウム、亜鉛等のアルカリ土類金属、アルミニウム等の3価金属が好ましく例示される。
即ち、表面処理剤として好ましく用いられる金属石鹸の例として、ミリスチン酸マグネシウム、ミリスチン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ジステアリン酸アルミニウム、オレイン酸アルミニウム、パルミチン酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム,ミリスチン酸アルミニウム、ジミリスチン酸アルミニウム、シリコーン金属石鹸(末端カルボキシル基を有するオルガノシロキサン誘導体の2価又は3価の金属塩)等が挙げられる。
【0016】
基体粉末の表面に金属石鹸を被覆する方法としては、特に限定されず、例えば、金属石鹸をイソパラフィン,イソプロピルアルコールなどの揮発性溶媒に溶解し、基体粉末と混合した後、揮発性溶媒を揮散させることによって調製することができる。また単に基体粉末と金属石鹸とを混合するだけでも被覆することができる。基体粉末表面への金属石鹸の被覆量は、特に限定されないが、基体粉末100重量部に対して0.5~10重量部程度が好ましい。
【0017】
金属石鹸で表面処理される基体粉末は、化粧料等の分野で従来から配合されている粉末であれば特に限定されない。具体例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、酸化鉄、タルク、マイカ、セリサイト、カオリン、雲母チタン、紺青、酸化クロム、水酸化クロム、シリカ、酸化セリウム等の白色顔料、着色顔料、体質顔料を含む粉末から選択される1種又は2種以上が挙げられる。また、粉末の形状も特に限られず、球状、楕円形状、破砕状等が含まれ、一次粒子の状態であっても、凝集した二次集合体を形成したものでもよい。
【0018】
本発明における金属石鹸処理粉末の平均粒径も限定されず、顔料級又は微粒子粉末であってよい。例えば、平均粒子径が約200nm~約1μm程度の酸化チタンや約1μm~約50μmのタルク、マイカ、硫酸バリウムなどの体質顔料等が好ましく用いられる。中でも、本発明においては平均粒子径が200nm以上のものが好ましく用いられる。
【0019】
本発明の化粧料における(A)金属石鹸処理粉末の配合量は0.1~20質量%であり、好ましくは0.5~15質量%、より好ましくは約1~10質量%である。配合量が0.1質量%未満ではシミやそばかすなどに対する十分な隠蔽効果が得られず、20質量%を超えるとよれやすくなり、不自然な仕上がりになってしまう。
【0020】
本発明の化粧料における(B)カルボキシル基を有する吸水性ポリマーは、カルボキシル基を持つモノマーのホモポリマー又はコポリマー、若しくはそれらの誘導体であって、好ましくは自重の10倍以上、より好ましくは10倍~1000倍、さらに好ましくは10倍~500倍の吸水能力を有する吸水性ポリマーである。吸水能力が自重の10倍未満であると所望の特性が得られず、1000倍を超えると吸収能力の上昇に伴ってよれが生じやすくなる傾向がある。
【0021】
(B)カルボキシル基を有する吸水性ポリマーの構造は特に限定されず、ポリマー主鎖にカルボキシル基を有する構造、あるいは側鎖にカルボキシル基を有する構造であってよい。好ましくは、アクリル酸モノマーを含む原料モノマーの重合によって製造されるホモポリマー又はコポリマー(グラフト、ブロック、ランダム)が用いられる。具体例としては、架橋型又は非架橋型のポリアクリル酸ナトリウムを含むポリアクリル酸塩(例えば、架橋型カルボマーNa)、アクリル酸ナトリウム(Na)グラフトデンプン等が挙げられる。
【0022】
特に限定されるものではないが、本発明における吸水性ポリマーとしては、白色粒子状で調製された市販品として入手可能なものを使用することができる。このような市販品として、例えば、AQUPEC MG N40R(住友精化株式会社製)、Makimousse12(平均粒径約12μm(大東化成工業株式会社製)及びMakimousse25(平均粒径約25μm)(大東化成工業株式会社製)が挙げられ、それらの中でも高吸水性(自重の10倍以上)のポリマーを選択するのが望ましい。
【0023】
本発明の化粧料における(B)カルボキシル基を有する吸水性ポリマーの配合量は、0.01~2質量%、好ましくは0.05~1質量%、より好ましくは0.1~0.5質量%である。配合量が0.01質量%未満であると、みずみずしく滑らかな使用感が得られず、肌補正効果も不十分となる。配合量が2質量%を超えると「よれ」が生じる傾向がある。
【0024】
本発明を限定するものではないが、本発明の化粧料においては、適量配合された吸水性ポリマーのカルボキシル基と金属石鹸処理粉末の表面に存在する金属とが相互作用して会合体を形成し、金属石鹸処理粉末が会合体(ゲル状の構造体)内部に包含され、その結果、本発明の化粧料は、十分な肌補正効果を発揮するが、粉末が毛穴や肌の微細なしわ部分(皮溝等)に落ち込み、却って肌の凹凸を目立たせてしまう現象(毛穴落ち、きめ落ち、ともいう)を引き起こし難くなっていると考えられる。
【0025】
本発明の化粧料は、前記必須成分(A)及び(B)に加えて、(C)球状粉末及び/又は(D)シリコーンエラストマーを配合することができる。
【0026】
(C)球状粉末を適宜配合することにより、化粧料の使用感及び肌の補正効果を更に向上させることができる。本発明に用いられる球状粉末は、化粧料に一般的に用いられる、真球状、扁球状を含む略球状の粉末から選択して用いることができる。
【0027】
好ましい球状粉体としては、例えば、球状シリコーン粉末;球状シリカ粉末;ナイロン、ウレタン、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン又はポリプロピレン等の球状有機樹脂粉末などが挙げられる。本発明においては、特に吸油量が高い球状粒子が好ましく用いられ、中でもナイロン球状粉末が好ましい。
【0028】
球状粉体は、市販されているものを使用することが可能である。市販されている球状シリコーン粉末としては、KSP-300(信越化学工業株式会社製)、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー球状粉末であるトレフィルE-506S、トレフィルE-508、9701 Cosmetic Powder、EP-9215 Cosmetic Powder、EP-9261 TI Cosmetic Powder、EP-9293 AL Cosmetic Powder(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)、ポリメチルシルセスキオキサン球状粉末であるTOSPEARL 120A、TOSPEARL 145A、TOSPEARL 2000B(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)等が挙げられる。
【0029】
市販されている球状シリカ粉末としては、シリカマイクロビード P-1500(日揮触媒化成株式会社製)、サンスフェア L-51(旭硝子株式会社製)等が挙げられる。
市販されている球状有機樹脂粉末としては、球状PMMA粉末粒子(ガンツパールGMX-0810:アイカ工業株式会社製)、マイクロスフェアM-100、M-330:松本油脂製薬株式会社製)、球状ウレタン粒子(Plastic Powder D-400:東色ピグメント株式会社製)等が挙げられる。
【0030】
本発明の化粧料における(C)球状粉末の配合量は、通常は0.1~30質量%、好ましくは2~10質量%、より好ましくは3~8質量%である。配合量が0.1質量%未満であると球状粉末配合の効果が得られず、30質量%を超えて配合すると却ってみずみずしさが失われることがある。
【0031】
(D)シリコーンエラストマーを本発明の化粧料に配合すると、粉っぽさの抑制及びみずみずしさの向上が更に顕著になる。
【0032】
本発明における(D)シリコーンエラストマーとしては、架橋型又は非架橋型のシリコーン樹脂粉末(エラストマー)が使用できる。中でも、乳化能を有するポリエーテル変性シリコーンエラストマーが好ましい。
【0033】
架橋型で非乳化性のシリコーンエラストマーとしては、例えば、(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン/メチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、ジメチコンクロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマーなどの架橋型シリコーン樹脂粉末の一種または二種以上が挙げられる。
【0034】
乳化能を有するシリコーンエラストマー(シリコーン系界面活性剤ともいう)としては、シリコーン骨格にポリオキシアルキレン構造を導入したポリエーテル変性シリコーンが好ましく用いられる。例えば、シリコーン鎖をポリオキシアルキレン鎖で架橋した架橋物、シリコーン鎖に側鎖としてポリオキシアルキレン基を導入した側鎖型のポリエーテル変性シリコーンが好ましい。
【0035】
乳化能を有するシリコーンエラストマーの具体例は、PEG-10ジメチコン、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ラウリルPEG-15ポリジメチルシロキシエチルジメチコン等のポリエーテル変性シリコーン、(ジメチコン/(PEG10/15))クロスポリマー、(ジメチコン/ポリグリセリン-3)クロスポリマー等の架橋型ポリエーテル変性シリコーンを含み、これらの一種又は二種以上を混合して配合することもできる。
【0036】
本発明のシリコーンエラストマーは、乳化能の有無に依らず、エラストマーと溶媒とからなるシリコーンゲルの状態で配合してもよい。このようなシリコーンゲルは市販品を使用することができ、例えば、KSG-18A、KSG-16、KSG-15AP(以上、信越化学工業株式会社製)、エラストマーブレンドDC9045、EL-7040(東レ・ダウコーニング株式会社製)、KSG-210、KSG-710、KSG-360Z(以上、信越化学工業株式会社製)等が例示される。
【0037】
本発明の化粧料における(D)シリコーンエラストマーの配合量は、通常は0.1~30質量%、好ましくは2~10質量%、より好ましくは3~8質量%である。配合量が0.1質量%未満であるとシリコーンエラストマー配合の効果が得られず、30質量%を超えて配合すると却ってみずみずしさが失われることがある。
【0038】
本発明の化粧料は油中水型乳化化粧料である。本発明の化粧料を構成する油分は、特に限定されず、炭化水素油、エステル油、ワックス類、シリコーン油から適宜選択できる。特に、シリコーン油、中でも、揮発性の環状シリコーン油および直鎖状シリコーン油を配合するのが使用感の点で好ましい。
本発明の油中水型乳化化粧料における水の配合量は、特に限定されないが、例えば、約30質量%以下、約25質量%以下、あるいは約20質量%で調製することができる。
【0039】
本発明の化粧料は、油中水型乳化化粧料に配合可能な他の任意成分を、本発明の効果を阻害しない範囲で含有していてもよい。他の任意成分としては、限定されないが、例えば、他の粉末成分((A)金属石鹸処理粉末及び(C)球状粉末は除く)、アルコール類、多価アルコール、色素、pH調整剤、保湿剤、増粘剤(但し、(B)カルボキシル基を有する吸水性ポリマーは除く)、界面活性剤、分散剤、安定化剤、着色剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、香料等が挙げられる。
【0040】
本発明の化粧料は、油中水型乳化化粧料の常法に従って製造することができる。即ち、必要に応じて加熱しながら別途調製した油相成分に水相成分を攪拌乳化させることによって製造できる。
【0041】
本発明の化粧料は、ファンデーション等のメーキャップ化粧料に特に適したものである。従って、本発明の化粧料は、リキッドファンデーション、化粧下地、BBクリーム、CCクリーム、クッションファンデーション等の形態で提供するのが好ましい。一方、肌補正効果を有するサンスクリーンや乳液等のスキンケア化粧料としても提供できる。
【0042】
クッションファンデーションとする場合の含浸体としては、樹脂、パルプ、綿等の単一又は混合素材からなる不織布、樹脂加工した繊維体、スポンジなどの発泡体、連続機構を備えた多孔質体などが挙げられる。また素材としては、NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)、SBR(スチレンブタジエンゴム)、NR(天然ゴム)、ウレタン、ナイロン、ポリオレフィン、ポリエステル、EVA(エチレン酢酸ビニル)、PVA(ポリビニルアルコール)、シリコーンエラストマー等の例が挙げられるが、内容物を含むことのできる含浸体であればこれらの素材に限られるものではない。中でも、ポリエステル繊維を用いて成形した繊維体であって、硬度を40~60(F硬度計測定値)、密度を0.006~0.1g/cm3としたものを用いるのが好ましい。
【実施例】
【0043】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳述するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。配合量は特記しない限り、その成分が配合される組成物全量に対する質量%で示す。
【0044】
下記の表1から表4に掲げた処方で油中水型乳化ファンデーションを常法に従って調製した。調製した各例のファンデーションについて以下の項目について専門パネルによる評価を実施した。
【0045】
評価項目:
(1)よれにくさ
(2)凹凸(毛穴等)補正効果
(3)金属石鹸処理粉末と吸水性ポリマーとの会合体形成の有無
【0046】
評価方法及び結果:
(1)及び(2)については、専門パネルによる実使用試験によって以下のように評価した。
A+:非常に優れている
A:優れている
B:若干劣っている
C:劣っている
【0047】
(3)吸水性ポリマーと金属石鹸処理粉末の会合体については、肌の状態を画像で評価することのできる装置(株式会社フジミック製のスキンビジオム(登録商標))を用いて観察した。
会合体形成が観察された=「あり」
会合体形成が観察されなかった=「なし」
【0048】
【0049】
【0050】
表1に示した結果から明らかなように、(A)金属石鹸処理粉末と、(B)カルボキシル基を有する吸水性ポリマーを本発明で規定する範囲内の量で配合した実施例1~4は、評価した全ての項目で優れているという結果であった。中でも、ミリスチン酸マグネシウム処理硫酸バリウムの配合量を10~20質量%に増加した実施例5及び6は、凹凸補正効果が非常に優れていた。一方、表2に示した結果では、(B)吸水性ポリマーを配合しない比較例1及び(A)金属石鹸処理粉末をシリコーン処理粉末に置換した比較例2は凹凸補正効果が得られず、2質量%を超える吸水性ポリマーを配合した比較例3及び20質量%を超える金属石鹸処理粉末を配合した比較例4は、凹凸補正効果は得られるものの、よれを生じやすくなった。
【0051】
前記実施例1及び比較例2を塗布した肌の状態を、スキンビジオム(登録商標)を用いて観察した。得られた画像を
図1に示す。実施例1の化粧料では金属石鹸処理粉末と吸水性ポリマーとで形成された会合体が観察されたが、比較例2では観察されず、きめ落ちが生じていることが判明した。
【0052】
【0053】
表3に示すように、配合する金属石鹸処理粉末の母核を硫酸バリウムからタルクに変更しても全ての評価項目で優れているという結果が得られた(実施例7~9)。しかし、吸水性ポリマー又は金属石鹸処理粉末を含まない比較例5及び6は凹凸補正効果が得られなかった。
【0054】
【0055】
表4に示した結果から明らかなように、吸水性ポリマーを架橋型カルボマーNa(吸水能が自重の10~500倍)に変更した実施例10~12は、よれにくさ及び凹凸補正効果が極めて優れていた。一方、吸水性ポリマー又は金属石鹸処理粉末を含まない比較例7及び8は、やはり凹凸補正効果が得られなかった。
【0056】
本発明に係る油中水型乳化化粧料の別の処方例を挙げる。これらの処方を常法に従って調製した化粧料も実施例1と同等の評価結果であった。
【0057】
処方例1:乳化ファンデーション
配合成分 配合量(質量%)
(1)揮発性ジメチルポリシロキサン 30.00
(2)デカメチルシクロペンタシロキサン 10.00
(3)メチルポリシロキサン 3.00
(4)PEG-10ジメチコン 1.00
(5)PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 2.00
(6)イソステアリン酸 1.00
(7)ビスブチルジメチコンポリグリセリル-3 1.00
(8)(ジメチコン/ポリグリセリン-3)クロスポリマー 1.00
(9)ジステアルジモニウムヘクトライト 1.00
(10)(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー
3.00
(11)(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)
クロスポリマー 2.00
(12)疎水化シリコーン処理微粒子酸化チタン 5.00
(13)疎水化シリコーン処理顔料級酸化チタン 3.00
(14)疎水化シリコーン処理黄酸化鉄 1.25
(15)疎水化シリコーン処理赤酸化鉄 0.35
(16)疎水化シリコーン処理黒酸化鉄 0.02
(17)架橋型カルボマーNa 0.25
(18)ミリスチン酸マグネシウム処理硫酸バリウム 3.00
(19)イオン交換水 残余
(20)ジプロピレングリコール 5.00
(21)グリセリン 3.00
(22)防腐剤 0.10
【0058】
処方例2:化粧下地
配合成分 配合量(質量%)
(1)揮発性ジメチルポリシロキサン 25.00
(2)デカメチルシクロペンタシロキサン 10.00
(3)イソドデカン 3.00
(4)ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 5.00
(5)PEG-10ジメチコン 2.00
(6)ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン
1.00
(7)(ジメチコン/ポリグリセリン-3)クロスポリマー 1.00
(8)イソノナン酸イソノニル 3.00
(9)ジステアルジモニウムヘクトライト 1.00
(10)球状シリカ 2.00
(11)シリル化シリカ 1.00
(12)疎水化シリコーン処理酸化亜鉛 5.00
(13)疎水化シリコーン処理顔料級酸化チタン 2.00
(14)疎水化シリコーン処理黄酸化鉄 0.12
(15)疎水化シリコーン処理赤酸化鉄 0.17
(16)疎水化シリコーン処理黒酸化鉄 0.01
(17)架橋型カルボマーNa 0.50
(18)ミリスチン酸マグネシウム処理硫酸バリウム 3.00
(19)イオン交換水 残余
(20)1,3-ブチレングリコール 5.00
(21)グリセリン 3.00
(22)防腐剤 0.10
【0059】
処方例3:サンスクリーン
配合成分 配合量(質量%)
(1)揮発性ジメチルポリシロキサン 5.00
(2)デカメチルシクロペンタシロキサン 25.00
(3)オクチルメトキシシンナメート 7.50
(4)PEG-10ジメチコン 3.00
(5)ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2 1.00
(6)香料 0.10
(7)(ジメチコン/ポリグリセリン-3)クロスポリマー 1.00
(8)エチルヘキサン酸セチル 3.00
(9)ジステアルジモニウムヘクトライト 1.00
(10)メタクリル酸メチルクロスポリマー 2.00
(11)疎水化処理酸化亜鉛 3.00
(12)疎水化シリコーン処理微粒子酸化チタン 5.00
(13)疎水化シリコーン処理顔料級酸化チタン 3.00
(14)疎水化シリコーン処理黄酸化鉄 1.25
(15)疎水化シリコーン処理赤酸化鉄 0.35
(16)疎水化シリコーン処理黒酸化鉄 0.02
(17)架橋型カルボマーNa 0.30
(18)ミリスチン酸マグネシウム処理硫酸バリウム 3.00
(19)硫酸バリウム 1.00
(20)イオン交換水 残余
(21)1,3-ブチレングリコール 8.00
(22)防腐剤 0.10
【0060】
処方例4:日中用乳液
配合成分 配合量(質量%)
(1)揮発性ジメチルポリシロキサン 30.00
(2)デカメチルシクロペンタシロキサン 10.00
(3)メチルポリシロキサン 3.00
(4)PEG-10ジメチコン 3.00
(5)ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2 1.00
(6)香料 0.10
(7)(ジメチコン/ポリグリセリン-3)クロスポリマー 1.00
(8)イソノナン酸イソノニル 3.00
(9)ジステアルジモニウムヘクトライト 1.00
(10)疎水性フュームドシリカ 1.00
(11)架橋型カルボマーNa 0.30
(12)ミリスチン酸マグネシウム処理硫酸バリウム 3.00
(13)イオン交換水 残余
(14)1,3-ブチレングリコール 8.00
(15)グリセリン 6.00
(16)ヒアルロン酸 0.30
(17)防腐剤 0.10
【0061】
製造方法:
(i)油相成分の混合液中に粉末を加え、これをホモミキサーなどにより撹拌混合して粉末分散液(油相)を得た。
(ii)次いで、前記粉末分散液(油相)に対して、予め混合・静置した水相を添加してホモミキサーなどにより攪拌混合し乳化物とし、製品を得た。
【0062】
最後に、金属石鹸処理粉末とカルボキシ基を有する吸水性ポリマーを配合し、他の粉末成分を含まない単純系に関する実験結果を以下に記す。
下記の表5に示す組成の油中水型乳化製剤(試験例1、2及び3)を常法により調製した。得られた試料から0.35mmのドクターブレードを用いて均一膜を作製し、その状態を観察比較した。
【0063】
【0064】
図2に示すように、金属石鹸処理粉末とカルボキシ基を有する吸水性ポリマーのいずれか一方しか配合されていない試験例2及び3では会合体が確認されなかったのに対して、金属石鹸処理粉末とカルボキシ基を有する吸水性ポリマーの両方が配合されている試験例1では目視できるほどの会合体が確認された。
【0065】
試験例1について光学顕微鏡を用いて詳細に観察した画像が
図3である。吸水したカルボキシ基を有する吸水性ポリマーと金属石鹸処理粉末が極めて接近した会合体(構造体)が形成されていることがわかる。