(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】改善された長期分散性を有するポリマー繊維
(51)【国際特許分類】
D06M 15/09 20060101AFI20230228BHJP
D21H 13/24 20060101ALI20230228BHJP
D21H 17/26 20060101ALI20230228BHJP
D06M 101/32 20060101ALN20230228BHJP
【FI】
D06M15/09
D21H13/24
D21H17/26
D06M101:32
(21)【出願番号】P 2020514917
(86)(22)【出願日】2018-09-12
(86)【国際出願番号】 EP2018074633
(87)【国際公開番号】W WO2019053074
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2020-05-08
(31)【優先権主張番号】102017008637.0
(32)【優先日】2017-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506307201
【氏名又は名称】トレヴィラ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダーリンガー イェルク
(72)【発明者】
【氏名】クラネルト ミハエル
(72)【発明者】
【氏名】エンゲルハルト ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ノタルニコラ アントニオ
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-278076(JP,A)
【文献】特開昭64-077682(JP,A)
【文献】特公平06-041596(JP,B2)
【文献】特開平10-202181(JP,A)
【文献】特表2010-507024(JP,A)
【文献】特開2008-297675(JP,A)
【文献】特表2017-514023(JP,A)
【文献】特公昭46-005276(JP,B1)
【文献】中国特許出願公開第106120322(CN,A)
【文献】国際公開第2015/099282(WO,A1)
【文献】米国特許第03743570(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 1/00 - 9/04
D04H 1/00 - 18/04
D06M 13/00 - 15/715
D21B 1/00 - 1/38
D21C 1/00 - 11/14
D21D 1/00 - 99/00
D21F 1/00 - 13/12
D21G 1/00 - 9/00
D21H 11/00 - 27/42
D21J 1/00 - 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の合成ポリマーを含むポリマー繊維であって、
前記繊維が、その表面上にカルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルエチルセルロース(MEC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース及びそれらの混合物の群から選択される少なくとも1種のセルロースエーテルを含む調製物を有し、
前記セルロースエーテルは、
45℃~
70℃の範囲のゲル化温度を有し、
前記調製物は、5nm~10nmの厚さを有し、かつ
前記調製物は、前記繊維の全表面の少なくとも99.9%を覆っていることを特徴とする、ポリマー繊維。
【請求項2】
前記合成ポリマーは、熱可塑性ポリマー、好ましくは熱可塑性重縮合物、特にバイオポリマーを基礎とする熱可塑性重縮合物であることを特徴とする、請求項1に記載のポリマー繊維。
【請求項3】
前記合成ポリマーは、アクリロニトリルエチレンプロピレン(ジエン)スチレンコポリマー、アクリロニトリルメタクリレートコポリマー、アクリロニトリルメチルメタクリレートコポリマー、アクリロニトリル塩素化ポリエチレンスチレンコポリマー、アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー、アクリロニトリルエチレンプロピレンスチレンコポリマー、芳香族ポリエステル、アクリロニトリルスチレンアクリロエステルコポリマー、ブタジエンスチレンコポリマー、酢酸セルロース、セルロースアセトブチレート、セルロースアセトプロピオネート、水和セルロース、カルボキシメチルセルロース、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリ塩化ビニル、エチレンアクリル酸コポリマー、エチレンブチルアクリレートコポリマー、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー、エチレンエチルアクリレートコポリマー、エチレンメタクリレートコポリマー、エチレンメタクリル酸コポリマー、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、エチレンビニルアルコールコポリマー、エチレンブテンコポリマー、エチルセルロース、ポリスチレン、ポリフルオロエチレンプロピレン、メチルメタクリレートアクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー、メチルメタクリレートブタジエンスチレンコポリマー、メチルセルロース、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド6、ポリアミド6-3-T、ポリアミド6-テレフタル酸コポリマー、ポリアミド66、ポリアミド69、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6I、ポリアミドMXD 6、ポリアミドPDA-T、ポリアミド、ポリアリールエーテル、ポリアリールエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリアリールアミド、ポリアミノ-ビス-マレイミド、ポリアリーレート、ポリブテン-1、ポリブチルアクリレート、ポリベンゾイミダゾール、ポリ-ビス-マレイミド、ポリオキサジアゾベンゾイミダゾール、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリエステルカーボネート、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエチレンオキシド、ポリアリールエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリイソブチレン、ポリイソシアヌレート、ポリイミドスルホン、ポリメタクリルイミド、ポリメタクリレート、ポリ-4-メチルペンテン-1、ポリアセタール、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルホン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、スチレンブタジエンコポリマー、スチレンイソプレンコポリマー、スチレン無水マレイン酸コポリマー、スチレン無水マレイン酸ブタジエンコポリマー、スチレンメチルメタクリレートコポリマー、スチレンメチルスチレンコポリマー、スチレンアクリロニトリルコポリマー、塩化ビニルエチレンコポリマー、塩化ビニルメタクリレートコポリマー、塩化ビニル無水マレイン酸コポリマー、塩化ビニルマレイミドコポリマー、塩化ビニルメチルメタクリレートコポリマー、塩化ビニルオクチルアクリレートコポリマー、塩化ビニル酢酸ビニルコポリマー、塩化ビニル塩化ビニリデンコポリマー、及び塩化ビニル塩化ビニリデンアクリロニトリルコポリマーを含むポリマーの群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のポリマー繊維。
【請求項4】
前記合成ポリマーは、ポリエステルであることを特徴とする、請求項1に記載のポリマー繊維。
【請求項5】
前記合成ポリマーは、合成バイオポリマー、好ましくはポリ乳酸からの合成バイオポリマーであることを特徴とする、請求項1に記載のポリマー繊維。
【請求項6】
前記ポリ乳酸は、少なくとも500g/mol、好ましくは少なくとも1000g/mol、特に好ましくは少なくとも5000g/mol、適切には少なくとも10000g/mol、特に少なくとも25000g/molの数平均分子量(Mn)を有することを特徴とする、請求項5に記載のポリマー繊維。
【請求項7】
前記ポリ乳酸は、最大1000000g/mol、好ましくは最大500000g/mol、特に好ましくは最大100000g/mol、特に最大50000g/molの数平均分子量(Mn)を有することを特徴とする、請求項5又は6に記載のポリマー繊維。
【請求項8】
前記ポリ乳酸は、750g/mol~5000000g/molの範囲、好ましくは5000g/mol~1000000g/molの範囲、特に好ましくは10000g/mol~500000g/molの範囲、特に30000g/mol~500000g/molの範囲の重量平均分子量(Mw)を有することを特徴とする、請求項5~7のいずれか一項に記載のポリマー繊維。
【請求項9】
前記ポリ乳酸は、1.5~5の範囲の多分散性を有することを特徴とする、請求項5~8のいずれか一項に記載のポリマー繊維。
【請求項10】
前記ポリ乳酸は、ポリ-D-乳酸、ポリ-L-乳酸又はポリ-D,L-乳酸であることを特徴とする、請求項5~9のいずれか一項に記載のポリマー繊維。
【請求項11】
前記繊維は、ステープルファイバー、好ましくは1mm~200mmの範囲の長さを有するステープルファイバーの形で存在することを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のポリマー繊維。
【請求項12】
前記繊維は、0.3dtexから30dtexの間の、好ましくは0.5dtex~13dtexの繊度を有することを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載のポリマー繊維。
【請求項13】
前記繊維は、成分A(コア)及び成分B(シェル)のみからなる2成分繊維であり、成分Aの融点は、成分Bの融点より少なくとも5℃、好ましくは少なくとも10℃、特に好ましくは少なくとも20℃高いことを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載のポリマー繊維。
【請求項14】
前記繊維の表面に0.1重量%から20重量%の間の、好ましくは0.5重量%~3重量%の前記調製物が適用されていることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載のポリマー繊維。
【請求項15】
前記調製物は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルエチルセルロース(MEC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースの群から選択される少なくとも2種のセルロースエーテルを含み、特に好ましくは、メチルセルロース(MC)及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)からの調製物であることを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載のポリマー繊維。
【請求項16】
前記調製物は、前記繊維の全表面の100%を覆っていることを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載のポリマー繊維。
【請求項17】
前記セルロースエーテルは
、45℃~60℃の範囲、特に好ましくは45℃~55℃の範囲のゲル化温度を有することを特徴とする、請求項1~16のいずれか一項に記載のポリマー繊維。
【請求項18】
前記セルロースエーテルは、1.3~2.6、好ましくは1.6~2.0の範囲の置換度(グルコース1分子当たりの置換ヒドロキシ基の数)を有することを特徴とする、請求項1~17のいずれか一項に記載のポリマー繊維。
【請求項19】
前記セルロースエーテルは、好ましくは26%~33%、特に27%~32%のメトキシ基割合を有するメチルセルロースであることを特徴とする、請求項1~18のいずれか一項に記載のポリマー繊維。
【請求項20】
前記セルロースエーテルは、好ましくは最大5%のヒドロキシプロピル基割合、特に好ましくは7%~12%のヒドロキシプロピル基割合を有するヒドロキシプロピルセルロースであることを特徴とする、請求項1~18のいずれか一項に記載のポリマー繊維。
【請求項21】
前記セルロースエーテルは、26%~33%、特に27%~32%のメトキシ基割合及び最大5%のヒドロキシプロピル基割合を有することを特徴とする、請求項1~18のいずれか一項に記載のポリマー繊維。
【請求項22】
前記セルロースエーテルは、26%~33%、特に27%~32%のメトキシ基割合及び7%~12%のヒドロキシプロピル基割合を有することを特徴とする、請求項1~18のいずれか一項に記載のポリマー繊維。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか一項に規定されるポリマー繊維を含有する、特に湿式積層法により得られうるテキスタイル布。
【請求項24】
水性懸濁液の製造のための、請求項1~22のいずれか一項に定義されるポリマー繊維の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された長期分散性を有するポリマー繊維、並びにその製造方法及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー繊維、すなわち合成ポリマーを基礎とする繊維は、工業的に大規模に生産される。この場合に、基礎となる合成ポリマーは溶融紡糸法によって製造される。このために、熱可塑性ポリマー材料は溶融され、液体状態で押出機によってスピニングビームへと送られる。溶融材料はこのスピニングビームから、いわゆる紡糸口金へと供給される。紡糸口金は通常、多数の孔を備えた紡糸口金板を有し、そこから繊維の個々のキャピラリー(フィラメント)が押出される。紡糸繊維の製造には、溶融紡糸法の他に、湿式紡糸法又は溶剤紡糸法も使用される。この場合に、溶融液ではなく合成ポリマーの高粘性溶液が、細かい孔を有するダイを通して押出される。両者の方法は、当業者により、いわゆる多重位置紡糸法(multi-position spinning method)と呼ばれている。
【0003】
このようにして製造されたポリマー繊維は、テキスタイル用途及び/又は技術的用途に使用される。ここで、ポリマー繊維が、例えば湿式積層不織布の製造のために水性系において良好な分散性を有することが有利である。さらに、ポリマー繊維が良好な柔らかい手触りを有する場合にテキスタイル用途に有利である。
【0004】
ポリマー繊維の特定の最終用途又は必要な中間処理工程、例えば延伸及び/又は捲縮のための改質又は仕上げ加工は、通常、完成したポリマー繊維又は処理されるべきポリマー繊維の表面に適用される適切な仕上げ剤又は層の適用により達成される。
【0005】
化学的改質のための他の手法は、そのポリマー基礎構造に対して、例えばポリマー主鎖及び/又は側鎖へと難燃作用を有する化合物を組み込むことにより達成され得る。
【0006】
さらに、添加剤、例えば帯電防止剤又は有色顔料を、溶融された熱可塑性ポリマーへと導入することができ、又は多重位置紡糸法の間にポリマー繊維へと導入することができる。
【0007】
ポリマー繊維の分散挙動は、とりわけ合成ポリマーの性質によって影響される。したがって、特に熱可塑性ポリマーの繊維の場合に、水性系における分散性は、表面に適用される仕上げ剤又は層によって影響され、調節される。
【0008】
適切な仕上げ剤又は層によってもたらされる又は改善される分散性は、多くのテキスタイル用途には既に十分である。
【0009】
しかしながら、食品関連用途には、異なる要件が適用される。使用される物質及び材料は、EU規則第231/2012に準拠して食品との接触のために承認されていなければならない。さらに、仕上げ加工されたポリマー繊維が比較的長い時間にわたり及び/又はより過酷な条件下で、例えば高圧下、強力な剪断力下及び高められた温度下で、特にまた侵食性の酸性水性系において分散形として存在し、この分散性が比較的長い貯蔵時間後でさえも保持される場合に望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、改善された分散性、特に長期分散性を有するポリマー繊維であって、比較的長期の貯蔵後であっても良好な分散性を有し、さらにEU規則第231/2012に準拠して食品との接触のために承認されるポリマー繊維を提供するという課題がある。さらに、該ポリマー繊維は、過酷な条件下、すなわち高圧下、激しい剪断力下及び高められた温度下で、特にまた任意に7未満のpHを有し、及び/又は電解質、特に塩類を基礎とする電解質を有する侵食性の水性系においても容易に分散可能であるべきであり、この良好な分散性が比較的長期の貯蔵後でさえも保持されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、少なくとも1種の合成ポリマー、好ましくは少なくとも1種の合成熱可塑性ポリマーを含む本発明によるポリマー繊維であって、上記繊維がその表面上に、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルエチルセルロース(MEC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース及びそれらの混合物の群から選択される少なくとも1種のセルロースエーテルを含む調製物を有することを特徴とする、ポリマー繊維により解決される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ポリマー
分散媒を形成する本発明による合成ポリマーは、好ましくは、熱可塑性ポリマー、特に熱可塑性重縮合物、特に好ましくは、いわゆる合成バイオポリマー、特に好ましくは、いわゆるバイオポリマーを基礎とする熱可塑性重縮合物を含む。
【0013】
「熱可塑性ポリマー」という用語は、本発明において、特定の温度範囲、好ましくは25℃~350℃の範囲において(熱可塑的に)変形し得るプラスチックを指す。この過程は可逆的であり、すなわち、過熱によって材料のいわゆる熱分解が開始されない限り、冷却と溶融状態への再加熱とにより任意の頻度で繰り返すことができる。これが熱可塑性ポリマーと熱硬化性プラスチック及びエラストマーとの間の違いである。
【0014】
本発明の範囲内で、以下のポリマーは、好ましくは、「熱可塑性ポリマー」という用語が意味するものである:
アクリロニトリルエチレンプロピレン(ジエン)スチレンコポリマー、アクリロニトリルメタクリレートコポリマー、アクリロニトリルメチルメタクリレートコポリマー、アクリロニトリル塩素化ポリエチレンスチレンコポリマー、アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー、アクリロニトリルエチレンプロピレンスチレンコポリマー、芳香族ポリエステル、アクリロニトリルスチレンアクリロエステルコポリマー、ブタジエンスチレンコポリマー、酢酸セルロース、セルロースアセトブチレート、セルロースアセトプロピオネート、水和セルロース、カルボキシメチルセルロース、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリ塩化ビニル、エチレンアクリル酸コポリマー、エチレンブチルアクリレートコポリマー、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー、エチレンエチルアクリレートコポリマー、エチレンメタクリレートコポリマー、エチレンメタクリル酸コポリマー、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、エチレンビニルアルコールコポリマー、エチレンブテンコポリマー、エチルセルロース、ポリスチレン、ポリフルオロエチレンプロピレン、メチルメタクリレートアクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー、メチルメタクリレートブタジエンスチレンコポリマー、メチルセルロース、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド6、ポリアミド6-3-T、ポリアミド6-テレフタル酸コポリマー、ポリアミド66、ポリアミド69、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6I、ポリアミドMXD 6、ポリアミドPDA-T、ポリアミド、ポリアリールエーテル、ポリアリールエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリアリールアミド、ポリアミノ-ビス-マレイミド、ポリアリーレート(polyarylate)、ポリブテン-1、ポリブチルアクリレート、ポリベンゾイミダゾール、ポリ-ビス-マレイミド、ポリオキサジアゾベンゾイミダゾール、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリエステルカーボネート、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエチレンオキシド、ポリアリールエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリイソブチレン、ポリイソシアヌレート、ポリイミドスルホン、ポリメタクリルイミド、ポリメタクリレート、ポリ-4-メチルペンテン-1、ポリアセタール、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルホン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、スチレンブタジエンコポリマー、スチレンイソプレンコポリマー、スチレン無水マレイン酸コポリマー、スチレン無水マレイン酸ブタジエンコポリマー、スチレンメチルメタクリレートコポリマー、スチレンメチルスチレンコポリマー、スチレンアクリロニトリルコポリマー、塩化ビニルエチレンコポリマー、塩化ビニルメタクリレートコポリマー、塩化ビニル無水マレイン酸コポリマー、塩化ビニルマレイミドコポリマー、塩化ビニルメチルメタクリレートコポリマー、塩化ビニルオクチルアクリレートコポリマー、塩化ビニル酢酸ビニルコポリマー、塩化ビニル塩化ビニリデンコポリマー、及び塩化ビニル塩化ビニリデンアクリロニトリルコポリマー。
【0015】
本発明の範囲内で、「熱可塑性ポリマー」という用語は、好ましくは、調製物中に使用されるセルロースエーテルとは化学的及び/又は物理的に異なるポリマーを意味する。糸条形成用の熱可塑性ポリマーは、好ましくはセルロースエーテルを一切含まない。
【0016】
特に適しているのは、紡糸繊維の製造に非常に適している高融点熱可塑性ポリマー(融点100℃以上)である。
【0017】
適切な高融点熱可塑性ポリマーは、例えば、ポリヘキサメチレンアジピンアミド、ポリカプロラクタム、芳香族若しくは部分芳香族ポリアミド(「アラミド」)、Nylon等の脂肪族ポリアミド等のポリアミド、部分芳香族若しくは完全芳香族ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルケトン(PEK)及びポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等のエーテルとケト基とを有するポリマー、又はポリエチレン若しくはポリプロピレン等のポリオレフィンである。
【0018】
高融点熱可塑性ポリマーの中では、溶融紡糸可能なポリマーが特に好ましい。
【0019】
溶融紡糸可能なポリエステルは、主として、芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールから誘導される構成単位からなる。通常の芳香族ジカルボン酸構成単位は、ベンゼンジカルボン酸、特にテレフタル酸及びイソフタル酸の二価の基であり、通常のジオールは2個~4個の炭素原子を有し、その際、エチレングリコール及び/又はプロパン-1,3-ジオールが特に適している。
【0020】
特に好ましいのは、少なくとも95mol%のポリエチレンテレフタレート(PET)を有するポリエステルである。
【0021】
そのようなポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートは、通常、25℃でジクロロ酢酸溶液について測定された、0.4(dl/g)~1.4(dl/g)の固有粘度(IV)に相当する分子量を有する。
【0022】
「合成バイオポリマー」という用語は、本発明では、生物起源の原材料(再生可能な原材料)のみからなる材料を指す。したがって、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリ塩化ビニル(PVC)等の慣用の石油ベースの材料又はプラスチックとは区別される。
【0023】
本発明によれば、特に好ましい合成バイオポリマーは、乳酸、ヒドロキシ酪酸及び/又はグリコール酸、好ましくは乳酸及び/又はグリコール酸、特に乳酸の繰り返し単位を含む、いわゆるバイオポリマーに基づく熱可塑性重縮合物である。この場合には、ポリ乳酸が特に好ましい。
【0024】
「ポリ乳酸」は、本明細書では、乳酸単位から構成されるポリマーを意味する。そのようなポリ乳酸は、通常、乳酸の縮合により製造されるが、ラクチドの適切な条件下での開環重合によっても得られる。
【0025】
本発明によれば、特に適切なポリ乳酸は、ポリ(グリコリド-コ-L-ラクチド)、ポリ(L-ラクチド)、ポリ(L-ラクチド-コ-ε-カプロラクトン)、ポリ(L-ラクチド-コ-グリコリド)、ポリ(L-ラクチド-コ-D,L-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)、及びポリ(ジオキサノン)を含む。そのようなポリマーは、例えばResomer(商標) GL 903、Resomer(商標) L 206 S、Resomer(商標) L 207 S、Resomer(商標) L 209 S、Resomer(商標) L 210、Resomer(商標) L 210 S、Resomer(商標) LC 703 S、Resomer(商標) LG 824 S、Resomer(商標) LG 855 S、Resomer(商標) LG 857 S、Resomer(商標) LR 704 S、Resomer(商標) LR 706 S、Resomer(商標) LR 708、Resomer(商標) LR 927 S、Resomer(商標) RG 509 S、及びResomer(商標) X 206 Sという商品名でBoehringer Ingelheim Pharma KG社(ドイツ)から入手可能である。
【0026】
本発明の目的のために、特に有利なポリ乳酸は、特にポリ-D-乳酸、ポリ-L-乳酸又はポリ-D,L-乳酸である。
【0027】
特に好ましい実施形態では、合成ポリマーは、乳酸を基礎とする熱可塑性縮合物である。
【0028】
本発明により使用されるポリ乳酸は、少なくとも500g/mol、好ましくは少なくとも1000g/mol、特に好ましくは少なくとも5000g/mol、適切には少なくとも10000g/mol、特に少なくとも25000g/molの、好ましくは分布の狭いポリスチレン標準に対するゲル浸透クロマトグラフィー又は末端基滴定により測定される数平均分子量(Mn)を有する。他方で、数平均分子量は、好ましくは最大で1000000g/mol、適切には最大で500000g/mol、より好ましくは最大で100000g/mol、特に最大で50000g/molである。少なくとも10000g/molから500000g/molの範囲の数平均分子量は、本発明の範囲内で非常に特に有効であることが実証された。
【0029】
好ましい乳酸ポリマー、特にポリ-D-乳酸、ポリ-L-乳酸又はポリ-D,L-乳酸の、好ましくは分布の狭いポリスチレン標準に対するゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される重量平均分子量(Mw)は、好ましくは750g/mol~5000000g/molの範囲、好ましくは5000g/mol~1000000g/molの範囲、特に好ましくは10000g/mol~500000g/molの範囲、特に30000g/mol~500000g/molの範囲にあり、これらのポリマーの多分散性は、より好ましくは1.5~5の範囲にある。
【0030】
25℃、0.1%のポリマー濃度のクロロホルム中で測定される、特に適切な乳酸ポリマー、特にポリ-D-乳酸、ポリ-L-乳酸又はポリ-D,L-乳酸の固有粘度は、0.5dl/g~8.0dl/g、好ましくは0.8dl/g~7.0dl/gの範囲、特に1.5dl/g~3.2dl/gの範囲にある。
【0031】
さらに、30℃、0.1%のポリマー濃度のヘキサフルオロ-2-プロパノール中で測定される、特に適切な乳酸ポリマー、特にポリ-D-乳酸、ポリ-L-乳酸又はポリ-D,L-乳酸の固有粘度は、1.0dl/g~2.6dl/gの範囲、特に1.3dl/g~2.3dl/gの範囲にある。
【0032】
さらに、本発明の範囲内で、20℃より高い、より好ましくは25℃より高い、好ましくは30℃より高い、特に好ましくは35℃より高い、特に40℃より高いガラス転移温度を有するポリマー、特に熱可塑性ポリマーが極めて有利である。本発明の非常に特に好ましい実施形態の範囲内では、ポリマーのガラス転移温度は、35℃~55℃の範囲、特に40℃~50℃の範囲にある。
【0033】
さらに、50℃より高い、より好ましくは少なくとも60℃、好ましくは150℃より高い、特に好ましくは160℃~210℃の範囲、特に175℃~195℃の範囲の融点を有するポリマーが特に適している。
【0034】
この場合に、ポリマーのガラス転移温度及び融点は、好ましくは、示差走査熱量測定、すなわち略してDSCによって測定される。この関連では、以下の手順が非常に特に有効であると実証された。
【0035】
Mettler-Toledo DSC 30Sにおいて窒素下でDSC測定を実施する。好ましくは、インジウムを用いて較正する。好ましくは、乾燥した酸素不含の窒素下で測定する(流速:好ましくは40ml/分)。試料重量は、好ましくは15mgから20mgの間で選択される。試料を最初に0℃から、好ましくは研究されるべきポリマーの融点を上回る温度にまで加熱し、その後に0℃まで冷却し、2度目に0℃から上記温度まで10℃/分の加熱速度で加熱する。
【0036】
ポリエステル、特に乳酸ポリマーは、熱可塑性ポリマーとして非常に特に好ましい。
【0037】
ポリマー繊維
本発明によるポリマー繊維は、有限繊維(finite fibre)、例えば、いわゆるステープルファイバーとして又は無限繊維(infinite fibre)(フィラメント)として存在し得る。より良好な分散性のために、繊維は、ステープルファイバーとして存在することが好ましい。上述のステープルファイバーの長さは、基本的な限定を一切受けないが、一般的に1mm~200mm、好ましくは2mm~120mm、特に好ましくは2mm~60mmである。特に、本発明による繊維から短繊維が十分に切断され得る。短繊維とは、5mm以下、特に4mm以下の繊維長さを意味する。
【0038】
本発明によるポリマー繊維、好ましくはステープルファイバーの個々の繊度は、0.3dtex~30dtex、好ましくは0.5dtex~13dtexである。幾つかの用途には、0.3dtexから3dtexの間の繊度及び10mm未満、特に8mm未満、特に好ましくは6mm未満、特に好ましくは4mm未満の繊維長さが特に適している。
【0039】
本発明によるポリマー繊維は、好ましくは、熱可塑性ポリマー、特に熱可塑性有機ポリマー、特に好ましくは熱可塑性有機重縮合物から溶融紡糸法により製造される。この場合に、ポリマー材料を押出機中で溶融し、紡糸口金によって加工することで、ポリマー繊維が形成される。本発明によるポリマー繊維は、通常、溶液からの紡糸により、特に電界紡糸法により製造された繊維を一切含まない。
【0040】
ポリマー繊維は、成分A(コア)及び成分B(シェル)のみからなる2成分繊維としても存在し得る。更なる実施形態では、成分A中の熱可塑性ポリマーの融点は、成分B中の熱可塑性ポリマーの融点よりも少なくとも5℃、好ましくは少なくとも10℃、特に好ましくは少なくとも20℃高い。好ましくは、成分A中の熱可塑性ポリマーの融点は、少なくとも100℃、好ましくは少なくとも140℃、特に好ましくは少なくとも150℃である。
【0041】
2成分繊維中で使用される熱可塑性ポリマーは、既に上述のポリマーである。
【0042】
調製物
本発明によるポリマー繊維は、その表面上にカルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルエチルセルロース(MEC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース及びそれらの混合物の群から選択される少なくとも1種のセルロースエーテルを含む0.1重量%から20重量%の間の、好ましくは0.5重量%~3重量%の調製物を有する。
【0043】
好ましい実施形態では、調製物は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルエチルセルロース(MEC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースの群から選択される少なくとも2種のセルロースエーテルを含み、特に好ましいのは、メチルセルロース(MC)及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)からの調製物であり、これらは、本発明によるポリマー繊維の表面上に、0.1重量%から20重量%、好ましくは0.5重量%~3重量%の量で存在する。
【0044】
本発明による調製物は、前記繊維の全表面の少なくとも99%、好ましくは前記繊維の全表面の少なくとも99.5%、特に少なくとも99.9%、特に好ましくは100%を覆う。表面の被覆率は、顕微鏡法により測定される。本発明による調製物は、好ましくは繊維にのみ適用され、その後に該繊維から製造されたテキスタイル布には適用されない。
【0045】
本発明による調製物は、通常、繊維において5nm~10nmの厚さを有する。厚さは、顕微鏡法により測定される。
【0046】
本発明により使用される1種以上のセルロースエーテルは、EU規則第231/2012に準拠して添加物として承認された物質である。この種類の物質は、例えばVIVAPUR(商標)又はMethocel(商標)として商業的に入手可能である。
【0047】
好ましい実施形態では、調製物は、セルロースエーテル、しかしながら特にカルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルエチルセルロース(MEC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースを含み、特に好ましいのは、メチルセルロース(MC)及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の調製物であり、前記セルロースエーテルは、35℃~90℃の範囲、好ましくは40℃~70℃の範囲、特に45℃~60℃の範囲、特に好ましくは45℃~55℃の範囲のゲル化温度を有する。
【0048】
本発明により使用される1種以上のセルロースエーテルは、通常、1.3~2.6、好ましくは1.6~2.0の範囲の置換度(グルコース1分子当たりの置換ヒドロキシ基の数)を有する。置換度は、通常、ガスクロマトグラフィーによって測定される。
【0049】
本発明により使用される1種以上のセルロースエーテル、しかしながら特にメチルセルロースは、好ましくは、26%~33%、特に27%~32%のメトキシ基割合を有する。
【0050】
本発明により使用されるヒドロキシプロピルセルロースは、好ましくは、最大5%のヒドロキシプロピル基割合を有する。
【0051】
本発明により使用されるヒドロキシプロピルセルロースは、好ましくは、7%~12%のヒドロキシプロピル基割合を有する。
【0052】
本発明により使用される1種以上のセルロースエーテル、しかしながら特にメチルセルロースは、好ましくは、26%~33%、特に27%~32%のメトキシ基割合及び最大5%のヒドロキシプロピル基割合を有する。
【0053】
本発明により使用される1種以上のセルロースエーテル、しかしながら特にヒドロキシプロピルセルロースは、好ましくは、26%~33%、特に27%~32%のメトキシ基割合及び7%~12%のヒドロキシプロピル基割合を有する。
【0054】
本発明により使用される1種以上のセルロースエーテルは、通常、10000g/molから380000g/molの間、好ましくは10000g/molから200000g/molの間、特に10000g/molから100000g/molの間、特に好ましくは12000g/molから60000g/molの間、特に好ましくは12000g/molから40000g/molの間の平均分子量Mnを有する。平均分子量Mnは、通常、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される。
【0055】
本発明により使用される1種以上のセルロースエーテルは、通常、50~1000の重合度を有する。
【0056】
本発明により使用される1種以上のセルロースエーテルは、通常、20℃で脱塩水(DIN規格EN50272-2:2001による脱塩水)中の2重量%溶液として、例えばBrookfield LVTによって測定される(溶液の活性化の30秒後(休止期)に、測定は更なる30秒にわたって行われるため、測定値は1分後に得られる)10mPas~40mPasの粘度を有する。
【0057】
本発明による調製物は、通常、水性調製物として適用され、その際、1種以上のセルロースエーテルの固形分は0.1g/l~5.0g/lである。水性調製物は、更なる成分、例えば消泡剤等も含有し得る。
【0058】
本発明により仕上げ加工されたポリマー繊維は、非常に良好な水中での繊維の分散性を示す。一方では、本発明による繊維は非常に迅速に分散し、比較的長期間にわたって分散したままとなり、他方では、本発明により仕上げ加工されたポリマー繊維は良好な貯蔵安定性も示し、すなわち本発明により調製された繊維を少なくとも1ヶ月貯蔵(25℃の室温及び20%~70%の範囲の相対湿度で)した後でさえも、その繊維は容易に分散し、分散された繊維の形で非常に均一に分布して存在する。本発明により仕上げ加工されたポリマー繊維は、本発明による繊維の他に固体粒状粒子、例えば鉱物粒子が更に存在する水性分散液の安定化にも適している。0.3dtexから3dtexの間の繊度及び10mm未満、特に8mm未満、特に好ましくは6mm未満、特に好ましくは4mm未満の繊維長さを有するポリマー繊維が、この実施形態に適している。
【0059】
さらに、本発明により仕上げ加工されたポリマー繊維は、本発明により仕上げ加工されていない他のポリマー繊維を有する水性分散液も安定化する。本発明により仕上げ加工されていない他のポリマー繊維は、繊維形成用のポリマーの点で異なっていても又は同一であってもよい。したがって、本発明による繊維は、湿式積層テキスタイル布の製造に使用するために適したものであり得る。本発明により仕上げ加工されたポリマー繊維の添加は、パルパー又はシートフォーマーにおいて実施することができる。
【0060】
0.3dtexから3dtexの間の繊度及び10mm未満、特に8mm未満、特に好ましくは6mm未満、特に好ましくは4mm未満の繊維長さを有するポリマー繊維が、この実施形態に適している。
【0061】
本発明による合成ポリマー繊維は、慣用の方法により製造される。合成ポリマーは、まず必要に応じて乾燥されて、押出機に供給される。次いで、溶融された材料を、対応するダイを有する慣用の装置によって紡糸する。ダイ出口領域での吐出速度は、所望の繊度を有する繊維が生成されるような紡糸速度に適合される。紡糸速度とは、固化した糸条が引き取られる速度を意味する。こうして引き取られた糸条は、直接的に延伸へと供給されても又は巻き取られて貯蔵され、後の時点で延伸されてもよい。次いで、通常のように延伸された繊維及びフィラメントを、一般的に慣用の方法により固定して所望の長さに切断することで、ステープルファイバーを形成することができる。この場合に、繊維は捲縮されていなくても又は捲縮されていてもよく、捲縮されている場合に、捲縮は湿式積層法用に構成されねばならない(低い捲縮)。
【0062】
形成された繊維は、円形、楕円形及び他の適切な断面を有しても又は他の形状、例えばダンベル形状、腎臓形、三角形若しくは三葉以上の複葉の断面を有してもよい。中空繊維も可能である。2種以上のポリマーから形成された繊維を使用することもできる。
【0063】
こうして製造された繊維フィラメントを束ねてヤーンを形成し、更にこれらを束ねることで、トウが形成される。トウは、更なる加工のためにまず缶内に収容される。缶内で中間的に保管されたトウを取り出して、大きなトウが生成される。
【0064】
次いで、これらの大きなトウは、通常10ktex~600ktexを有しており、コンベヤーライン上で慣用の方法を使用して、好ましくは10m/分~110m/分の取込み速度(entry speed)で延伸され得る。ここで調製物を適用することができ、それにより延伸が促進されるが、後続の特性に不利な影響を及ぼさない。
【0065】
延伸比は、好ましくは1.25~4に達し、特に2.5~3.5に達する。延伸の間の温度は、延伸されるべきトウのガラス転移温度の範囲内であり、例えばポリエステルの場合には、40℃から80℃の間である。
【0066】
延伸は、1段階として又は所望であれば2段階の延伸法を使用して実施することができる(これに関しては、例えば米国特許第3816486号を参照)。延伸の前及び延伸の間に、慣用の方法を使用して1種以上の化学仕上げ(dressings)を適用することができる。
【0067】
任意に実施されるべき延伸繊維の捲縮/テクスチャリングのために、自体既知の捲縮機を使用する機械的捲縮の慣用の方法を使用することができる。好ましいのは、蒸気支援の繊維捲縮のための機械的装置、例えばスタッフィングボックスである。しかしながら、他の方法により捲縮された繊維を使用することもでき、したがって、例えば3次元捲縮された繊維を使用することもできる。捲縮を実施するために、トウを、通常まず50℃~100℃、好ましくは70℃~85℃の範囲、特に好ましくは約78℃の温度に熱処理し、1.0bar~6.0bar、特に好ましくは約2.0barのトウ取込みローラー(tow run-in rollers)の圧力、0.5bar~6.0bar、特に好ましくは1.5bar~3.0barのスタッフィングボックス内の圧力で、1.0kg/分から2.0kg/分の間の、特に好ましくは1.5kg/分の蒸気で処理する。
【0068】
本発明による調製物は延伸後に、また捲縮が与えられる場合には2度目の捲縮機の前に適用される。本発明による調製物は通常加熱され、30℃~110℃の範囲の適用温度で繊維に適用され、乾燥される。
【0069】
本発明による調製物の乾燥及び本発明による調製物を備えた繊維の全ての後処理は、最高120℃の温度で実施されることが見出された。それというのも、これより高い温度は、繊維の分散性に悪影響を及ぼすからである。最高120℃の温度で、非常に均質かつ均一な調製物の適用が達成され、事実上沈殿は観察されない。そのような適用は、本発明による分散性のために有利である。
【0070】
平滑繊維又は任意に捲縮された繊維が炉内又は熱気流中で弛緩及び/又は固定されるのであれば、これは最高130℃の温度で行われる。それというのも、これより高い温度は、繊維の分散性に悪影響を及ぼすからである。130℃を上回る温度では、以前に得られた均質かつ均一な調製物の適用は損傷を受け、本発明による分散性は減少する。
【0071】
ステープルファイバーを製造するために、平滑繊維又は任意に捲縮された繊維を取り出した後に切断し、任意に固めてフロックとして圧縮ベールに堆積させる。本発明のステープルファイバーは、好ましくは弛緩の下流にある機械的切断装置で切断される。トウの種類を製造するためには、切断は省くことができる。これらのトウの種類は非切断形でベールに堆積され、圧縮される。
【0072】
本発明により製造された繊維は、捲縮させる実施形態では、好ましくは1cm当たり少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個の捲縮(捲縮湾曲部(crimp arc))、好ましくは1cm当たり3個の湾曲部~1cm当たり9.8個の湾曲部、特に好ましくは1cm当たり3.9個の湾曲部~1cm当たり8.9個の湾曲部の捲縮度を有する。テキスタイル表面を作製する用途においては、1cm当たり約5個の湾曲部~5.5個の湾曲部の捲縮度の値が特に好ましい。湿式積層法によりテキスタイル表面を作製するためには、捲縮度は個別に調節しなければならない。
【0073】
上述のパラメーター、すなわち紡糸速度、延伸、延伸比、延伸温度、固定、固定温度、取込み速度(run-in speeds)、捲縮/テクスチャリング等は、特定のポリマーに応じて決まる。これらは、当業者により通常の範囲内で選択されるパラメーターである。
【0074】
テキスタイル布は、本発明による繊維から製造することができ、それもまた本発明の主題である。本発明による繊維の良好な分散性の結果として、そのようなテキスタイル布は、好ましくは湿式積層法により製造される。
【0075】
水中での繊維の改善された分散性に加えて、本発明によるポリマー繊維は、水中に分散された繊維の良好なポンプ圧送性も示すため、本発明によるポリマー繊維は、湿式積層法を使用するテキスタイル布の製造に特に適している。本発明による繊維は固体粒状粒子、例えば鉱物粒子の分散性を促進するので、鉱物仕上げ加工を伴うテキスタイル布を製造することもできる。0.3dtexから3dtexの間の繊度及び10mm未満、特に8mm未満、特に好ましくは6mm未満、特に好ましくは4mm未満の繊維長さを有するポリマー繊維が、この実施形態に適している。
【0076】
これらの湿式積層法に加えて、いわゆるメルトブロー法(例えば"Complete Textile Glossary",Celanese Acetate LLC社、2000年、又は"Chemiefaser-Lexikon",Robert Bauer著、第10版、1993年に記載される)も適している。そのようなメルトブロー法は、細繊度の繊維又は不織布の製造に、例えば衛生分野での用途に適している。
【0077】
したがって、「テキスタイル布」という用語は、この詳細な説明の範囲内ではその最も広い意味で解釈されるべきである。これは、布帛形成技術(surface-forming technique)により製造された本発明による繊維を含む全ての構造物を含み得る。そのようなテキスタイル布の例は、好ましくはステープルファイバーを基礎とする不織布、特に湿式積層不織布又はメルトブロー法により製造された不織布である。
【0078】
本発明による繊維は、本発明による添加剤を含まない繊維と比較して大幅に改善された分散性の性能を特徴とする。本発明による繊維は、ベール又は同等の構造物の形で比較的長期間、例えば数週間又は数ヶ月貯蔵した後でさえも非常に良好な分散性を有する。
【0079】
さらに、本発明による繊維は、改善された長期分散を示す。すなわち、本発明による繊維を液体媒体、例えば水中に分散させると、該繊維はより長期に分散したままであり、比較的長期間の後に沈降し始めるにすぎない。
【0080】
さらに、本発明による繊維は、繊維飛散の減少を示すことから、結果として労災防止における改善がもたらされる。それというのも、上記調製物は、繊維複合材において明らかに高められた保持をもたらすからである。繊維飛散の減少は、特にテキスタイル布、例えば不織布の形成に非常に重要である。
【0081】
本発明による繊維により製造されたテキスタイル布は、特に湿式積層テキスタイル布、特に湿式積層不織布である。
【0082】
本発明による繊維により製造されたテキスタイル布は、本発明によるポリマーを含有し、その表面上にカルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルエチルセルロース(MEC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース及びそれらの混合物の群から選択される少なくとも1種のセルロースエーテルを含む、0.1重量%から20重量%の間の、好ましくは0.5重量%~3重量%の調製物が適用される。テキスタイル布における本発明によるポリマー繊維の割合は、通常、テキスタイル布の全重量に対して少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%、特に少なくとも30重量%、特に好ましくは少なくとも50重量%である。特に好ましい実施形態では、テキスタイル布は、本発明によるポリマー繊維のみからなる。
【0083】
試験方法:
上記詳細な説明に既に示されていない限り、以下の測定及び試験方法が使用される:
【0084】
繊度:
繊度は、DIN EN ISO1973に従って測定した。
【0085】
分散性:
分散性を評価するために、以下の試験方法が開発され、本発明により使用される。
【0086】
本発明による繊維を2mm~12mmの長さに切断する。切断された繊維を、脱塩水(脱塩=完全脱塩)で満たしたガラス容器(寸法:長さ150mm、幅200mm、高さ200mm)中に室温(25℃)で導入した。繊維の量は、脱塩水1リットル当たり0.25gである。評価の改善のために、1gの繊維及び4リットルの脱塩水が通常使用される。
【0087】
次いで、繊維/脱塩水混合物を、慣用の研究室用磁気撹拌機(例えば、IKAMAG RCT)及び磁気撹拌バー(80mm)によって少なくとも3分間(750rpm~1500rpmの範囲の回転速度)撹拌し、撹拌機構のスイッチを切る。次いで、全ての繊維が分散しているかどうかを評価する。
【0088】
繊維の分散挙動は、以下の通りに評価した:
分散していない(-)
部分的に分散している(○)
完全に分散している(+)
【0089】
上記評価は、規定の時間間隔の後に実施した。
【0090】
比較として、本発明による調製物を含まないが、その他は同一である繊維を使用した。
【0091】
ゲル化温度:
ゲル化温度は、Anton Paar社製のモデルPhysica MCR 301の振動レオメーターによって測定した。
【0092】
上記詳細な説明に既に特定されていない限り、以下の他のパラメーターは、出版物"Methylcellulose, a Cellulose Derivative with Original Physical Properties and Extended Applications" in Polymers 2015, 7(5), 777-803による測定方法又は試験方法によって測定した。
【0093】
本発明を以下の実施例により説明するが、本発明の範囲は、それにより限定されるものではない。
【実施例】
【0094】
メチルセルロース溶液を、加工の間にコンベヤーライン上で溶融紡糸PLA繊維に適用し、その後に乾燥させた。したがって、製造されたPLA繊維は、その表面上に少なくとも1種のメチルセルロース(MC)を含む調製物を有する。
【0095】
製造されたPLA繊維は、該繊維の全表面の少なくとも99%上に本発明による調製物を含む。
【0096】
本発明によるPLA繊維を6mmの長さに切断し、1グラムの切断されたPLA繊維を分散させ、室温(25℃)で上記のように試験した。
【0097】
比較のために、本発明による添加剤を含まないが、その他は同一である1グラムのPLA繊維を分散させ、室温(25℃)で上記のように試験した。
【0098】
本発明による繊維は、比較繊維(本発明による仕上げ加工を伴わない)に対して、大幅に改善された長期分散と共に、数週間の貯蔵後の大幅に改善された分散性の性能を示す。