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特許7234223細胞濃縮にクロスフローろ過を利用するためのシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】細胞濃縮にクロスフローろ過を利用するためのシステム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20230228BHJP
【FI】
C12M1/00 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020519357
(86)(22)【出願日】2018-10-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 EP2018076930
(87)【国際公開番号】W WO2019068776
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-09-03
(31)【優先権主張番号】15/726,013
(32)【優先日】2017-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598041463
【氏名又は名称】グローバル・ライフ・サイエンシズ・ソリューションズ・ユーエスエー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 研二
(72)【発明者】
【氏名】チェンクン・チャン
(72)【発明者】
【氏名】カシャン・エー・シャイク
(72)【発明者】
【氏名】ウェストン・ビー・グリフィン
(72)【発明者】
【氏名】レジナルド・ドノヴァン・スミス
【審査官】幸田 俊希
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-521333(JP,A)
【文献】米国特許第04375415(US,A)
【文献】特表2013-513406(JP,A)
【文献】米国特許第03342729(US,A)
【文献】米国特許第04846970(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
C12M 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使い捨て細胞濃縮キット用のクロスフローろ過装置であって、
第1の合わせ部分と、
第2の合わせ部分と、
少なくとも1つの入口ポートと、
少なくとも1つの出口ポートと、
前記第1の合わせ部分と前記第2の合わせ部分との間に配設された微細孔膜であって、前記微細孔膜および前記第1の合わせ部分または前記第2の合わせ部分のいずれかは一緒になって、生物学的試料を含むプロセス液量を受け入れるように構成された単一チャネルの少なくとも一部分を画定し、前記単一チャネルは、前記微細孔膜に平行に延びる、微細孔膜と、
前記第2の合わせ部分と前記微細孔膜との間に配設された膜支持体であって、第1の複数の開口部を画定する第1の複数の構造的特徴を備え、前記膜支持体は、前記第2の合わせ部分および前記微細孔膜の両方に結合され、前記膜支持体は、前記第1の複数の構造的特徴によって前記微細孔膜に結合されて支持を提供する、膜支持体と
を備えた、クロスフローろ過装置において
前記第2の合わせ部分は、第2の複数の構造的特徴によって画定された第2の複数の開口部を備え、前記第2の複数の開口部は、当該クロスフローろ過装置からの排出のために前記微細孔膜を横断し、前記膜支持体の前記第1の複数の開口部を通り抜けた特有の生物学的成分を含む透過液を受け入れるように構成され、当該クロスフローろ過装置は、前記プロセス液量からの残渣液内に特有の細胞集合を保持し、前記残渣液を前記少なくとも1つの出口ポートから排出するように構成され
前記第1の合わせ部分は、前記入口ポートに結合された入口と、前記出口ポートに結合され、そこから前記残渣液を排出するための出口とを備え、前記入口および前記出口は、前記単一チャネルの対向する長手方向端部に配置され、前記入口は、前記単一チャネルの幅にわたって均一なプロセス液量の速度をもたらすように、前記単一チャネルの幅にわたって延在している、クロスフローろ過装置。
【請求項2】
前記微細孔膜が、13から25μmの間の厚さを有し、前記微細孔膜が、少なくとも40cm2の効果的な作業領域を有し、前記単一チャネルが、0.25mmから0.36mmの間の深さを有する、請求項1に記載のクロスフローろ過装置。
【請求項3】
前記微細孔膜と前記第1の合わせ部分との間に配設されたスペーサであって、前記スペーサは、前記単一チャネルの形状をさらに画定する開口部を備えている、請求項1または2に記載のクロスフローろ過装置。
【請求項4】
前記単一チャネルが、前記第1の合わせ部分内に形成されている、請求項1、2、または3に記載のクロスフローろ過装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの入口ポートおよび/または前記少なくとも1つの出口ポートが、前記単一チャネルの幅にわたって前記プロセス液量の積層流の均一な速度を提供するように構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載のクロスフローろ過装置。
【請求項6】
前記入口および前記出口は、前記単一チャネルに渡って前記入口から前記出口への層流をもたらすように構成され、さらに/または、前記入口および前記出口は、前記微細孔膜に直接衝突する流れの量を制限するように構成され、さらに/または、前記入口を介して供給される流入フローが、改善されたクロスフローろ過をもたらすために、前記微細孔膜に平行になるように向けられている、請求項1から5のいずれか一項に記載のクロスフローろ過装置。
【請求項7】
クロスフローろ過装置を備えた使い捨て細胞濃縮キットであって、
前記クロスフローろ過装置、主要ループ通路に沿って配設されるように構成され、生物学的試料を含むプロセス液量を受け入れ、微細孔膜を介するクロスフローろ過を利用して前記プロセス液量からの残渣液内に特有の細胞集団を保持し、前記プロセス液量からの特有の生物学的成分を含む透過液を除去するように構成され、前記クロスフローろ過装置請求項1から6のいずれか一項に記載のクロスフローろ過装置である、使い捨て細胞濃縮キット。
【請求項8】
少なくとも1つのプロセス容器であって、i)クロスフローろ過後のプロセス液量を受け入れるため、ii)プロセス液量を補充するために前記プロセス液量に緩衝液を提供するため、iii)プロセス容器および/またはプロセス容器のテーパ部からの排出を受け入れるため、iv)生物学的試料を受け入れ、生物学的試料を主要ループ通路に提供するため、および/または、v)廃液通路を介してクロスフローろ過装置から透過液を受け入れるために構成されている、少なくとも1つのプロセス容器をさらに備えている、請求項7に記載の使い捨て細胞濃縮キット。
【請求項9】
流体管理システム、 主要ループ通路に沿って配設された、請求項1から6のいずれか一項に記載のクロスフローろ過装置であって、生物学的試料を含むプロセス液量を受け入れ、微細孔膜を介するクロスフローろ過を利用して前記プロセス液量からの特有の細胞集団を保持し、前記プロセス液量からの特定の生物学的成分を含む透過液を除去するように構成される、クロスフローろ過装置と、
前記クロスフローろ過装置の下流側に前記主要ループ通路に沿って配設されたプロセス容器であって、前記クロスフローろ過装置を介したクロスフローろ過から続く前記プロセス液量を受け入れるように構成される、プロセス容器と、
前記主要ループ通路に結合された緩衝液通路に沿って配設された緩衝液容器であって、緩衝液を前記プロセス液量に提供するように構成される、緩衝液容器と
を備えた、クロスフローろ過装置を使用した細胞濃縮キットのためのシステムにおいて
前記流体管理システムが、
廃液通路を介して前記クロスフローろ過装置に結合された廃液ポンプであって、前記透過液を前記クロスフローろ過装置から前記廃液通路を介して制御された流量で排出するように構成される、廃液ポンプと、
前記プロセス液量への前記緩衝液の流れを制御された流量で維持するために前記主要ループ通路に沿って配設された緩衝液ポンプと、
前記クロスフローろ過装置を出入りする前記プロセス液量の流れを維持するために前記主要ループ通路に沿って配設された主要ループポンプと
を備え、
前記流体管理システムが、動作において、前記緩衝液を前記プロセス液量に提供することによって残渣液の洗浄中に前記プロセス液量を特有の液量範囲で前記プロセス容器内に維持することにより、前記生物学的試料から前記特有の細胞集団を自動的に濃縮する、クロスフローろ過装置を使用した細胞濃縮キットのためのシステム。
【請求項10】
前記流体管理システムが、動作において、前記残渣液の洗浄前および/または洗浄後に前記プロセス液量を特有の液量に自動的に濃縮する、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記流体管理システムが、前記残渣液を洗浄する初期段階ではより小さい透過液流量を利用し、次いで前記廃液通路に沿った圧力に関する実験的データまたはフィードバックに基づいて前記透過液流量を徐々に増大させるように構成されている、請求項9または10に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において開示する主題は、細胞濃縮にクロスフローろ過を利用するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞免疫療法(たとえば、自家細胞免疫療法)では、患者自身の血液、体液、組織、または細胞の試料が収集され、収集された試料から、またはこれに基づいて細胞療法が生成される。細胞療法生成物は、患者に送達されて戻される。たとえば、アフェレーシスが患者から単離され、所望の細胞集団(たとえば白血球)が、細胞療法を製造するために濃縮されるか、または収集された血液から分離され得る。通常、細胞濃縮は、コストがかかり、労力を費やし、時間がかかり、複雑である分離技術(たとえば、遠心分離による技術)を含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本来の特許請求する主題の範囲に相応する特定の実施形態が、以下でまとめられる。これらの実施形態は、特許請求する主題の範囲を限定するように意図されるのではなく、これらの実施形態は、本開示の可能な形態の概要を提供するように意図されるにすぎない。実際、開示する技術は、以下に記載する実施形態に類似しても、またはこれとは異なっていてもよいさまざまな形態を包含する。
【0004】
第1の実施形態によれば、使い捨て細胞濃縮キット用のろ過装置が、提供される。ろ過装置は、第1の合わせ部分と、第2の合わせ部分と、少なくとも1つの入口ポートと、少なくとも1つの出口ポートとを含む。ろ過装置はまた、第1の対向部分と第2の合わせ部分との間に配設された微細孔膜も含み、微細孔膜および第1の合わせ部分または第2の合わせ部分のいずれかは一緒になって、生物学的試料を含むプロセス液量を受け入れるように構成された単一チャネルの少なくとも一部分を画定し、単一チャネルは、微細孔膜に平行に延びる。ろ過装置は、第2の合わせ部分と微細孔膜との間に配設された膜支持体をさらに含み、膜支持体は、第1の複数の開口部を画定する第1の複数の構造的特徴を備え、膜支持体は、第2の合わせ部分および微細孔膜の両方に結合され、膜支持体は、第1の複数の構造的特徴によって微細孔膜に結合されて支持を提供する。第2の合わせ部分は、第2の複数の構造的特徴によって画定された第2の複数の開口部を含み、第2の複数の開口部は、ろ過装置からの排出のために微細孔膜を横断し、膜支持体の第1の複数の開口部を通り抜けた特有の生物学的成分を含む透過液を受け入れるように構成され、ろ過装置は、プロセス液量からの残渣液内に特有の細胞集合を保持し、残渣液を少なくとも1つの出口ポートから排出するように構成される。
【0005】
第2の実施形態によれば、使い捨て細胞濃縮キットが、提供される。使い捨て細胞濃縮キットは、クロスフローろ過装置であって、主要ループ通路に沿って配設されるように構成され、生物学的試料を含むプロセス液量を受け入れ、微細孔膜を介するクロスフローろ過を利用してプロセス液量からの残渣液内に特有の細胞集団を保持し、プロセス液量からの特定の生物学的成分を含む透過液を除去するように構成される、クロスフローろ過装置を含む。クロスフローろ過装置は、積層ろ過ユニットを含む。積層ろ過ユニットは、微細孔膜と、第1の合わせ部分と、第2の合わせ部分と、膜支持体とを含む。膜支持体は、第1の複数の開口部を画定する第1の複数の構造的特徴を含み、第1の複数の構造的特徴は、微細孔膜に結合され、微細孔膜に支持を提供し、第1の複数の開口部は、透過液が微細孔膜を横断した後にこれら開口部を流れ抜けることを可能にする。膜支持体は、微細孔膜と第1の合わせ部分または第2の合わせ部分のいずれかとの間に配設されるように構成される。
【0006】
第3の実施形態によれば、システムが提供される。システムは、流体管理システムに結合されるように構成された使い捨て細胞濃縮キットを含む。キットは、主要ループ通路に沿って配設されたクロスフローろ過装置であって、生物学的試料を含むプロセス液量を受け入れ、微細孔膜を介するクロスフローろ過を利用してプロセス液量からの特有の細胞集団を保持し、プロセス液量からの特定の生物学的成分を含む透過液を除去するように構成される、クロスフローろ過装置を含む。キットはまた、クロスフローろ過装置の下流側に主要ループ通路に沿って配設されたプロセス容器であって、クロスフローろ過装置によるクロスフローろ過から続くプロセス液量を受け入れるように構成される、プロセス容器を含む。キットは、主要ループ通路に結合された緩衝液通路に沿って配設された緩衝液容器であって、緩衝液をプロセス液量に提供するように構成される、緩衝液容器をさらに含む。システムはまた、流体管理システムを含む。流体管理システムは、廃液通路を介してクロスフローろ過装置に結合された廃液ポンプであって、透過液をクロスフローろ過装置から廃液通路を介して制御された流量で排出するように構成される、廃液ポンプを含む。流体管理システムはまた、プロセス液量への緩衝液の流れを制御された流量で維持するために主要ループ通路に沿って配設された緩衝液ポンプを含む。流体管理システムは、クロスフローろ過装置を出入りするプロセス液量の流れを維持するために主要ループ通路に沿って配設された主要ループポンプをさらに含む。流体管理システムおよび使い捨て細胞濃縮キットは、動作において、緩衝液をプロセス液量に提供することによって残渣液の洗浄中にプロセス液量を特有の液量範囲でプロセス容器内に維持することにより、生物学的試料から特有の細胞集団を自動的に濃縮する。
【0007】
本発明のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、添付の図を参照して以下の詳細な説明が読み取られたときにより良好に理解されることになり、全図を通じて同様の記号は同様の部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】所望の細胞集団を濃縮するためのシステムの実施形態の概略図である。
図2】濃縮キットの流路の実施形態の概略図である。
図3】クロスフローろ過装置の実施形態の分解斜視図である。
図4図3のクロスフローろ過装置の上部分の底面図である。
図5】線5-5に沿って切り取られた、図3のクロスフローろ過装置の上部分の断面図である。
図6】(たとえば底面にハニカム形状を有する)クロスフローろ過装置の上部分の実施形態の底面図である。
図7図7-7に沿って切り取られた図6の上部分の実施形態の断面図である。
図8】線8-8に沿って切り取られた図6の上部分の実施形態の断面図である。
図9図3のクロスフローろ過装置の組み立てられたろ過ユニットの実施形態の斜視図である。
図10】ハニカム形状を有するクロスフローろ過装置の組み立てられたろ過ユニットの実施形態の斜視図である。
図11図3のクロスフローろ過装置の底部分の上面図である。
図12】線12-12に沿って切り取られた、図3のクロスフローろ過装置の底部分の断面図である。
図13】線13-13に沿って切り取られた、図9のろ過ユニットの断面図である。
図14】線14-14に沿って切り取られた、図10のろ過ユニットの断面図である。
図15】(たとえばスペーサを有さない)クロスフローろ過装置の実施形態の分解斜視図である。
図16図15のクロスフローろ過装置の底部分の上面図である。
図17】線17-17に沿って切り取られた図15のクロスフローろ過装置の底部分の断面図である。
図18】所望の細胞集団(たとえば単球)を濃縮するために請求項1のシステムを利用した濃縮データのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の1つまたは複数の特有の実施形態が、以下で説明される。これらの実施形態の簡潔な説明を提供するために、実際の実施のすべての特徴は、本明細書に説明されなくてもよい。任意の工学または設計プロジェクトにおけるような任意のそのような実施の開発において、実施ごとに異なり得るシステム関連およびビジネス関連の制約の準拠などの開発者の特有の目標を達成するために、数多くの実施特有の決定がなされなければならないことを理解されたい。さらに、そのような開発努力は、複雑で時間がかり得るものであるが、それにもかかわらず、本開示の利益を有する当業者にとって設計、製作、および製造のルーティン作業であることを理解されたい。
【0010】
本開示のさまざまな実施形態の要素を導入するとき、冠詞「1つ(a)」、「1つ(an)」、「その」、および「前記」は、要素の1つまたは複数が存在することを意味するように意図される。用語「備える」、「含む」、および「有する」は、包括的であり、挙げられた要素以外に追加の要素が存在し得ることを意味するように意図される。
【0011】
細胞免疫療法を製造するために生物学的試料(たとえば血液、組織など)から所望の細胞集団(たとえば白血球)を濃縮するためのシステムおよび方法が、本明細書において開示される。開示する実施形態は、所望の細胞集団を濃縮するための自動化され、拡張性のある閉システムを形成するために流体管理システムに結合されるように構成された使い捨て細胞濃縮キットを含む。使い捨て細胞濃縮キットは、(たとえば生物学的試料をキットに導入するための)供給源バッグまたは容器と、(たとえば生物学的試料から所望の細胞集団を分離するための)クロスフローろ過装置と、プロセス液量をクロスフローろ過装置に送り出すか、または供給するためのリザーバとして働くプロセスバッグまたは容器と、(たとえば、洗浄中、所望の液量を維持するためにプロセス液量に緩衝液を提供し、洗浄に必要な流体を提供する)緩衝液バッグまたは容器と、望ましくない生物学的成分(たとえば血漿、血小板など)を含む透過液をクロスフローろ過装置から収集するための廃液バッグまたは容器とを含むことができる。流体管理システムは、細胞濃縮キットのさまざまな通路に結合され、これらの通路に沿って流体の流れ(たとえば緩衝液、プロセス液量、廃液など)を維持するポンプを含む。クロスフローろ過装置は、上部分と、底部分と、上部分と底部分との間に配設された膜(たとえば、トラックエッチ膜などの微細孔膜)とを含む。上側部分および下側部分は、重力の方向に関して限定的でないことを留意されたい。装置は、(重力による、または重力無しの)任意の位置に配向可能である。上側および下側という用語は、図を参照する上での便宜上にすぎない。膜は、厳密な公差を有する実質的に均一の孔サイズを含むことができる。チャネル(たとえば単一チャネル)が、膜と底部分との間に画定される。チャネルは、せん断力を生成する流量でプロセス液量を受け入れ、このせん断力は、プロセス液量から膜を介して望ましくない生物学的生成物(たとえば透過液)を分離する。対象の細胞が膜を横断して廃液通路に入る可能性を低減しながら、対象の細胞が流体に沿って移動するための運動量を提供するために、特定のせん断速度(すなわち距離の所与の変化に対する速度変化率)が必要である。チャネル内に生成されるせん断速度(たとえば約5000s-1)は、対象の細胞が通路に沿って、壁から離れるように移動することを保つように設計される。より小さい粒子(たとえば望ましくない生物学的成分)は、せん断力による影響がより小さくなり、より容易に膜を通過して廃液通路に至り得る。残りのプロセス液量(たとえば残渣液)は、再循環されてプロセスバッグに戻される。再循環は、液量が複数回、膜を横断して通過することを可能に(たとえばより小さい膜を可能に)しながら、(たとえば、プロセス中、対象の細胞の密度を同じに保つために)液量の一定の調整を可能にする。特定の実施形態では、透過液は、クロスフローろ過装置から制御された流量で排出され、一方で緩衝液は、(たとえば洗浄中)プロセス液量をプロセスバッグ内で一定の液量に維持するために、プロセス液量に提供される。特定の実施形態では、洗浄前、プロセス液量は、所望の液量に濃縮される。さらに、プロセス液量は、洗浄後に所望の液量に濃縮されてもよい。細胞濃縮キットは、流体管理システムに取り外し可能に結合できるキットを提供し、それにより、キットの構成要素は、流体管理システムの構成要素(たとえば、流体管理システムのポンプの構成要素に自動的に位置合わせされ、バッグとロードセルを位置合わせし、構成要素とセンサを位置合わせするなどのためにキットの圧送チューブセクション)に位置合わせされてキットの利用を簡易化する。加えて、膜の一体化は、機能的に閉鎖されたキットを提供する。開示する実施形態は、機能が閉システム内で実行されて、細胞濃縮に利用される労力を低減する自動化システムを提供する。
【0012】
図1は、所望の細胞集団を濃縮するためのシステム10の実施形態の概略図である。システム10は、望ましくない生物学的成分(たとえば、血漿、血小板、赤血球など)を生物学的試料から分離することにより、細胞免疫療法を製造するために生物学的試料(たとえば血液、組織など)内の所望の細胞タイプ(たとえば白血球)を濃縮するために使用され得る。システム10は細胞濃縮に使用されるものとして説明されるが、他の生物学的処理用途(たとえば、特定のサイズおよび/またはタイプのタンパク質のための濃縮)に利用可能である。システム10は、より大きい/より剛性である粒子を保持しながら、より小さい/より変形可能な粒子が溶液から除去される他のタイプのクロスフローろ過用途にも有用であり得る。
【0013】
システム10は、流体管理システム12と、濃縮キット14(たとえば使い捨て細胞濃縮キット)とを含む。キット14全体は使い捨てである。濃縮キット14は、さまざまな通路を介して一緒に結合された、供給源バッグ16、クロスフローろ過装置18、プロセスバッグ20、緩衝液バッグ22、および廃液バッグ24を含む。16、20、22および24はバッグとして説明されているが、これらは、任意のタイプのコンテナまたはレセプタクルまたは容器であり得る。キット14のさまざまな構成要素は、一緒に結合され、および/またはチュービング26を介して流体管理システム12の構成要素(たとえばポンプ、ピンチ弁など)に結合される。加えて、キット中に弁が配設され得る。加えて、特定の実施形態では、キット14の特定の構成要素がセンサ28に結合されて、流体管理システム12にフィードバックを提供することができる。図示するようなセンサ28は、キット14のコストを下げるシステム12の部分であり得る。特定の実施形態では、キット14は、いくつかのセンサ28(たとえば使い捨てセンサ)を含むことができる。たとえば、プロセスバッグ20は、バッグ20内のプロセス液量の重量を測定するロードセルセンサに結合されてもよい。いくつかの実施形態では、流れセンサがキット14の特定の構成要素(たとえばクロスフローろ過装置18)の上流側および下流側のチュービング26内に配設されて、構成要素を出入りする流量を測定することができる。いくつかの他の実施形態では、圧力変換器が特定の構成要素(たとえば、クロスフローろ過装置18)の上流側および下流側のチュービング26内および廃液ライン内に配設されて、膜貫通圧力を測定するか、または膜汚損を検出することができる。センサ28は、流体と接触せずにキット14内の流体と相互作用するセンサ(たとえば、光センサ、超音波センサなど)を含むことができる。特定の実施形態では、センサ(ケミオプティカルセンサ)の一部分が、キット14に関連付けられてもよく、一方で残りの部分(例えばハードウェア)は、システム12に関連付けられる。
【0014】
(たとえば供給源通路に沿って配設された)供給源バッグ16は、生物学的試料を受け入れ、生物学的試料を有するプロセス液量をキット14の残りの部分(たとえばクロスフローろ過装置18)に提供するように構成される。(たとえば主要ループ通路に沿って配設された)クロスフローろ過装置18は、プロセス液量内の生物学的試料から望ましくない生物学的生成物(たとえば、血漿、血小板、赤血球など)を分離するための膜式装置である。プロセス液量は、クロスフローろ過装置18内を、装置18内に膜に隣接して形成された単一チャネル内に必要とされるせん断速度を生成するのに十分高い流量で循環される。特定の実施形態では、膜は、積層構造の一部である。クロスフローろ過装置18の構造は、以下でより詳細に説明される。(たとえば、主要ループ通路に沿って配設された)プロセスバッグ20は、クロスフローろ過装置18によるクロスフローろ過後のプロセス液量(たとえば残渣液)および/または緩衝液バッグ22からの緩衝液を受け入れるように構成される。
【0015】
プロセスバッグ20は、バッグ20内の混合を促進するように設計される。たとえば、プロセスバッグ20は、プロセス液量を受け入れるための第1のポート21(たとえば入口)と、プロセス液量を主要ループ通路に排出するための第2のポート22(たとえば出口)とを含み、ここでは入口は、バッグ20の底部に位置する。特定の実施形態では、プロセスバッグ20は、第1のポート21から第2のポート22にかけてテーパになる(たとえば円錐形状を形成する)。特定の実施形態では、プロセスバッグ20の第1のポート21は、第2のポート22に対して傾斜されて、バッグ20内に渦(たとえば反時計回りの渦)を生成する。プロセスバッグ20のテーパにされたまたは円錐状の部分は、(たとえば細胞を沈殿させないでおくために)混合を促して、(たとえば血漿用の)所望の洗浄率が所与の時間内で達成されることを確実にする。
【0016】
(たとえば、主要ループ通路に結合された緩衝液通路に沿って配設された)緩衝液バッグ22は、緩衝液を受け入れ、プロセス液量に提供するように構成される。緩衝液は、クロスフローろ過装置18の上流側のクロスフローろ過装置18とプロセスバッグ20との間の場所において、またはプロセスバッグ20において提供される。残渣液またはプロセス液量の洗浄中、緩衝液バッグ22は、プロセス液量に緩衝液を提供してプロセス液量を一定の所望の液量に維持する。(廃液通路に沿って配設された)廃液バッグ24は、クロスフローろ過装置18から(たとえば望ましくない生物学的生成物を含む)透過液を受け入れるように構成される。
【0017】
流体管理システム12は、供給源ポンプ30と、廃液ポンプ32と、緩衝液ポンプ34と、主要ループポンプ36とを含む。供給源ポンプ30は、供給源通路に結合し、生物学的試料の流れを供給源バッグ16からプロセス液量に導入するように構成される。廃液ポンプ32は、廃液通路に結合してクロスフローろ過装置18から廃液バッグ24への透過液の流れを調節するように構成される。緩衝液ポンプ34は、(たとえば洗浄ステップ中一定の液量に維持するために)プロセス液量に提供される、緩衝液バッグ22からプロセスバッグ20、または主要ループ通路に沿った場所への緩衝液の流れを調節するために、緩衝液通路に結合するように構成される。主要ループポンプ36は、プロセスバッグ20からクロスフローろ過装置18および装置18からプロセスバッグ20に戻るプロセス液量の流れを維持するために、主要ループ通路に結合するように構成される。
【0018】
流体管理システム12は、コンピューティング装置38も含む。コンピューティング装置38は、細胞濃縮の完全自動化システムを有効にするようにシステム10を制御する。コンピューティング装置38は、メモリ40と、メモリ40内に記憶されたコードまたは命令を実行するためのプロセッサ42とを含む。コンピューティング装置38は、圧力読み取り値、流量、システムの状態、プロセスの現在点、および細胞濃縮プロセスに関連する他のシステムパラメータを表示するためのディスプレイ42も含む。メモリ40上に記憶された命令は、有形の一時的でないコンピュータ可読媒体内に記憶されたプログラムまたはコードで符合化され得る。メモリ40は、限定的ではないが、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、ディスケット、フラッシュドライブ、コンパクトディスク、デジタルビデオディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、および/またはプロセッサ42が命令および/またはデータを記憶し、検索し、および/または実行することを可能にする任意の適切な記憶装置などのコンピュータ可読媒体を含むことができる。プロセッサ42は、汎用プロセッサ(たとえばディスクトップ/ラップトップコンピュータのプロセッサ、システムオンチップ(SoC)装置、または特定用途向け集積回路、または何らかの他のプロセッサ構成であり得る。プロセッサ42は、命令を実行してセンサ(たとえば、プロセッサバッグ20に結合されたロードセルセンサ、流量センサなど)から入力を受け入れることができる。プロセッサ42は、キット14のさまざまな通路に沿ってポンプ、弁、および流体(たとえば、プロセッサ液量、透過液、緩衝液など)の流れを調節することができる。特定の実施形態では、プロセッサ42は、センサからのフィードバックに基づいてこれらの構成要素を調節することができる。たとえば、プロセッサ42は、これらの構成要素を調節して、最初に(たとえば生物学的試料を有する)プロセス液量の液量を所望の液量(たとえば50mL)に濃縮することができる。特定の実施形態では、プロセッサ42は、濃縮ステップに続いて(たとえば洗浄ステップ中)、透過液をクロスフローろ過装置18から制御された流量で除去しながら、緩衝液をほぼ同じ流量で緩衝液バッグ22を介して処理液量に提供して、所望の処理液量を一定の液量に維持することができる。特定の実施形態では、プロセッサ42は、(たとえば実験によって決定された)設定時間の間細胞濃縮プロセスを実行して、望ましくない生物学的生成物(たとえば、血小板、血漿、赤血球など)における特有の低減率または洗浄率(たとえば1ログまたは90%の残留低減、2ログまたは99%の残留低減など)を達成することができる。特定の実施形態では、プロセッサ42は、設定されたサイクル数(たとえば、主要ループ通路を通る通過)の間細胞濃縮プロセスを実行することができる。特定の他の実施形態では、プロセッサ42は、細胞濃縮プロセスをバッチモード(たとえばバッチごとのプロセス供給液量)で実行することができる。
【0019】
特定の実施形態では、流体管理システム12は、キット14の一部分を受け入れるように構成された取り外し可能なレセプタクルまたは構造44を含む。たとえば、クロスフローろ過装置18は、レセプタクル44に取り外し可能に挿入されてもよい。レセプタクル44へのキット14のその部分の挿入により、圧走チューブセクション(たとえばチュービング26、弁など)をポンプ30、32、34、36の構成要素に自動的に位置合わせすることが可能になる。特定の実施形態では、システム12は、キット14のチュービングまたは止め栓に結合させることができるピンチ弁および/または止め栓ドライブを含むこともできる。
【0020】
図2は、(たとえば流体管理システム12の一部に結合された)濃縮キット14の流路の実施形態の概略図である。図示するように、クロスフローろ過装置18およびプロセスバッグ20は、主要ループ通路46に沿って配設され、この主要ループ通路は、(緩衝液を含む)プロセス液量をプロセスバッグ20からクロスフローろ過装置18に、および装置18からプロセスバッグ20に循環させる。主要ループポンプ36は、主要ループ通路46に結合され、および/またはこれに沿って配設される。プロセスバッグ20は、主要ループ通路46に沿ってクロスフローろ過装置18の下流側に位置する。プロセスバッグ20は、プロセスバッグ20内のプロセス液量を決定するのに役立つセンサ48(たとえばロードセルセンサ)に結合される。
【0021】
供給源バッグ16は、供給源通路50に沿って配設され、および/またはこれに結合される。供給源通路50は、(プロセス液量の一部として)供給源バッグ16に受け入れられた生物学的試料を主要ループ通路46に提供する。図示するように、供給源通路50は、生物学的試料を、クロスフローろ過装置18とプロセスバッグ20との両方間の主要ループ通路46に提供して、プロセスバッグ20内のより良好な混合を可能にする。特定の実施形態では、供給源通路50は、生物学的試料をプロセスバッグ20に直接提供するか、または生物学的試料を主要ループ通路46に沿った他の場所に提供する。供給源ポンプ30は、供給源通路50に結合され、および/またはこれに沿って配設される。弁51(たとえば手動弁)が、供給源バッグ16の下流側に供給源通路50に沿って配設され得る。弁51は、生物学的試料が通路50に沿って導入された後に閉じられ得る。特定の実施形態では、弁51は、ラインをパージするためにろ過された空気53をキット14に導入するために開かれ得る。
【0022】
クロスフローろ過装置18は、廃液通路52に結合され、この廃液通路は、プロセス液量から単離された望ましくない生物学的試料(たとえば、血小板、血漿、赤血球など)を含む透過液または廃液をクロスフローろ過装置18から離れるように逸らす。廃液ポンプ32は、廃液通路52に結合され、および/またはこれに沿って配設される。廃液バッグ24は、透過液または廃液を受け入れるために廃液通路52の下流側端部に結合され得る。
【0023】
緩衝液バッグ22は、緩衝液通路54に結合され、および/またはこれに沿って配設される。緩衝液通路54は、緩衝液(たとえばクロスフローろ過溶液)を緩衝液バッグ22から、主要ループ通路46に沿った地点に提供して、洗浄(すなわち透過液を介した望ましくない生物学的生成物の除去)中、プロセス液量の一定液量を維持する。緩衝液通路54は、クロスフローろ過装置18とプロセスバッグ20との間のクロスフローろ過装置18の上流側の主要ループ通路46、またはプロセスバッグ20のところに結合され得る。緩衝液は、浸透圧溶液(たとえば、塩化ナトリウム含有溶液、リン酸緩衝食塩水、乳酸リンゲル液、グルコースを有する乳酸リンゲル液)、膨張剤、結晶剤、炭水化物、電解物、および/または生物学的緩衝液(たとえばHEPES、TES、EPPS、MOPS、THAM、TRISなど)を含むことができる。特定の実施形態では、緩衝液は、システム10の任意の処理の前に希釈剤として(すなわち線形希釈を実行するために)供給材料に付加され得る。他の実施形態では、緩衝液または希釈剤は、濃縮ステップ後または洗浄ステップ後に付加されて、所望の細胞密度を達成することができる。動作において、生物学的試料(たとえばアフェレーシスからの血液)が、供給源バッグ16に提供され、ここで試料は(たとえばプロセス液量の一部として)供給源通路50に沿って、供給源ポンプ30によって主要ループ通路46に流れる。主要ループ通路46において、プロセス液量は、クロスフローろ過装置18を通って流れ、ここで接線方向のまたはクロスフローのろ過が起こる。特定の実施形態では、試料は、供給源通路50を介してプロセスバッグ20に直接導入され得る。プロセスバッグ20および/または主要ループ通路46に供給源を提供するとき。特に、クロスフローろ過装置18は、孔を有する膜(たとえばトラックエッチ膜などの微細孔膜)を含む。膜の孔は、約1から10μmの直径の範囲であることができる。好ましい実施形態では、孔は、約1μmであり得る。他の好ましい実施形態では、孔は、約1.5から3μmの直径の範囲であることができる。膜は、少なくとも40cm2の面積を含むことができる。プロセス液量は、主要ループポンプ36によって、特有のせん断速度を有する積層流として循環されて膜に界接する細いチャネルに入り、それにより、望ましくない生物学的試料(たとえば、血小板、血漿、赤血球など)は、透過液としてチャネルから膜を通過する。透過液は、廃液通路52に沿って(たとえば制御された流量で)クロスフローろ過装置18から除去される。透過液流量を膜の本来のフラックス流量より下に保つ制御された流量を利用することにより、膜汚損の発生が最小限に抑えられる。特定の実施形態では、透過液流量は、適応的に制御され得る。たとえば、相対的に小さい透過液流量が洗浄の初期段階で利用されてよく、次いで、実験的データまたは廃液ライン圧力情報に基づいて透過液流量を徐々に上昇させてもよい。そのようにすることにより、洗浄効率は、大きく改善され得る。
【0024】
所望の細胞集団(たとえば白血球)を含む残りのプロセス液量(たとえば残渣液)は、クロスフローろ過装置18から主要ループ通路46に沿って流れてプロセスバッグ20に戻り、ここでプロセス液量は、次いで主要ループ通路46に沿って循環されてクロスフローろ過装置18に戻り、その後、再度プロセスバッグ20に戻る。特定の実施形態では、最初、プロセス液量(すなわち残渣液)は、所望のまたは設定された液量(たとえば50mL)にプロセス液量が到達するまで、透過液をクロスフローろ過装置18から制御された流量で引っ張るように主要ループ通路46を通してプロセス液量を循環させることによって濃縮され得る。所望のまたは設定された液量に到達した際、洗浄中、緩衝液は、プロセス液量から透過液を除去する制御された流量(たとえば透過液流量)と実質的に同じ流量で導入されて、プロセス液量を一定の所望の液量に維持する。洗浄ステップ中、プロセス液量(すなわち残渣液)は、望ましくない生物学的生成物の特定のログ低減(たとえば1ログまたは2ログ)を達成するために実験的に決定されるか、またはモデル化された特定の時間(たとえば処理時間)の間、主要ループ通路46を通って循環され得る。
【0025】
特定の実施形態では、システム10は、主要ループ通路46内で約1~3パーセントまでの透過液比(たとえば透過液流量/主要ループ流量)を維持する。透過液流量は、透過液がクロスフローろ過装置18から除去される流量であり、一方で主要ループ流量は、主要ループ通路46を通るプロセス液量の流量である。透過液流量が小さいと、処理時間は長くなる。透過液流量は、フィルタ表面積の1cm2当たり0.15から0.4mL/分の間の範囲であることができる。主要ループ流量は、チャネル形状および所望のせん断速度に依存し、特定の実施形態では、500mL/分未満であり得る。
【0026】
図3は、クロスフローろ過装置18の実施形態の分解斜視図である。クロスフローろ過装置18は、上部分またはブロック56と、底部分またはブロック58と、上部分56と底部分58との間に配設されたろ過装置またはユニット60(たとえば積層ろ過装置)とを含む。図示するように、ろ過ユニット60は、膜支持体62と、スペーサ64(たとえばポリイミドフィルムまたは均一な厚さを有する他の材料)と、膜支持体62とスペーサ64との間に配設された膜66(たとえば、ポリカーボネートトラックエッチ膜)とを含む。積層ろ過装置60の構成要素は、以下で説明するように一緒に(たとえば化学的、熱的などで)機械的に結合され、使用可能な膜領域72内の膜66の平坦性を維持する。特に膜支持体62は、膜66が座屈しない、またはしわにならないようにしておくのに役立ち、したがって膜66を所定場所に保つことによって、チャネルの長さにわたって流れチャンバ断面積、したがってせん断力を維持するのに役立つ。膜支持体62およびスペーサ64の両方は、膜66を強化する。圧力感知性接着剤(または他のタイプの接着剤)を利用して、膜66の底面をスペーサ64の上面に接着し、膜66の上面を膜支持体62の底面に接着することができる。
【0027】
膜66は、クロスフローろ過中、所望の細胞集団(たとえば白血球)が通過できないようにしながら、望ましくない生物学的生成物(たとえば血小板、血漿、赤血球など)がこの膜を通過できるのに十分な大きさの孔を含む。膜66の孔は、約1から10μmの直径の範囲であることができる。好ましい実施形態では、孔は、約1μmであり得る。他の好ましい実施形態では、孔は、約1.5から3μmの直径の範囲であることができる。膜66はまた、約13~25μmの厚さを含むこともできる。
【0028】
膜支持体62は、液体に対して不透過性である。膜支持体62は、支持体62の長さおよび幅にわたって延びる特徴または構造的部材68(たとえばリブ、支持体など)を含み、この特徴または構造的部材は、膜66を通って上部分56に向かう(たとえば残渣液の)流れを可能にするための開口部70を支持体62内に画定する。特徴68および開口部70の数および形状は、変わり得る。特徴68は、(たとえばチャネルによって画定される)使用可能な膜領域72内の膜66に接着し、さらに、上部分56の底面に接着されてもよい。使用可能な膜領域72を膜支持体62(特に特徴68)に接着することにより、局所的な膜の偏向が最小限に抑えられて、主要流れチャネル内の流れの閉塞を回避する。加えて、膜支持体62は不透過性であるため、膜66と膜支持体62との間の結合可能な表面積を最小限に抑えることにより、使用可能な膜領域72が最大限にされる。より大きい使用可能な膜領域72は、処理される試料材料の液量をより多くして、所与の時間期間内で所望の洗浄率を達成することを可能にする。加えて、これらの特徴は、より大きなチャネル幅および長さを有する単一チャネルの使用を可能にする。特定の実施形態では、膜厚さと支持されていない膜表面積との比は、約13μm/4×109μm2であり得る。
【0029】
スペーサ64は、膜66の底面および底部分58の上面と一緒になって装置18を通るプロセス液量の流れのための単一チャネル76を画定する開口部74を含む。加えて、スペーサ64内の領域は、膜66の使用可能な領域72を画定する。チャネル長さ、幅、および高さが、せん断速度、使用可能な表面積、試料能力、および所与の流量に対する処理時間に影響を与えることを当業者は理解するであろう。
【0030】
底部分58は、プロセス液量を受け入れるための供給ポート78と、クロスフローろ過後に残りのプロセス液量(すなわち残渣液)を排出するための残渣液ポート80とを含む。底部分58は、プロセス液量をチャネル76に提供する供給ポート78に結合された入口82を含む。底部分58はまた、残渣液をそのチャネル76および装置18から排出するために残渣液ポート80に結合された出口84も含む。図示するように、入口82および出口84は、チャネル76の対向する長手方向端部において配設される。プロセス液量は、入口82からチャネル76を渡り出口84に至る積層流を有する。(チャネル76の幅にわたって延びる)入口82は、チャネル76の幅にわたって均一な速度を提供するように構成される。特定の実施形態では、入口82および出口84は、膜に直接衝突する流れの量を限定するように構成される。換言すれば、(入口82を介して)入来する流れは、膜66にできるだけ平行に向けられ、クロスフローろ過はより良好になる。
【0031】
上部分56は、プロセス液量から分離された透過液または(望ましくない生物学的生成物を含む)廃液を装置18から廃液通路52に排出するためのろ過液または透過液ポート86を含む。上部分56は、ろ過液または透過液が膜を横断した後、装置18から排出される前にろ過液ポート86に流れることを可能にする、特徴または構造的部材(たとえばリブ、支持体など)によって画定された開口部またはポート(図4および図5を参照)を含む。特徴は、膜支持リブおよび通路パターンを合致させるとき、膜支持体を上部分の底面に接着するための領域を増大させ、透過液が透過液ポートに入る前に孔配列特徴の上方のポケット内に収集されることを可能にする通路を提供する。特定の実施形態では、上部分56の特徴は、膜支持体62の特徴(たとえばリブ)と完全に合致しなくても、位置合わせしなくてもよい。チャネル76内の高せん断速度およびろ過液ポート86を通る低流量の組合せにより、膜66を通過できない細胞および/または粒子による膜66の孔のブロッキングは、回避されるか、または最小限に抑えられる。
【0032】
上部分56、膜支持体62、膜66、スペーサ64、および底部分58すべては、それぞれの開口部88、90、92、94、96を含む。それぞれの開口部88、90、92、94、96は、互いに対して垂直に位置合わせされ、これらを通して締結具(たとえばロッド、ボルトなど)を配設してクロスフローろ過装置18の構成要素を一緒に組み立てることを可能にする。
【0033】
図4および図5は、図3のクロスフローろ過装置18の上部分56の図である。図示するように、ろ過液ポート86は、上部分56の上面98から延びる。特定の実施形態では、ろ過液ポート86は、上部分56の異なる表面(たとえば側面)上に配設され得る。底面100は、特徴または構造的支持体104(たとえばリブ、支持体など)によって画定された開口部102を含み、この開口部は、ろ過液または透過液の流れが膜を横断した後、装置18から排出される前にろ過液ポート86に流れることを可能にする。開口部102は、透過液の流れのための低抵抗流路を提供する。開口部102および特徴104の形状は変わり得る。たとえば、図4および図5に示すように、ポート102および特徴104は、円形開口部の配列によって画定される。また、図6図7、および図8に示すように、ポート102および特徴104は、ハニカム構造を画定する。図5図7、および図8に示すように、追加のチャネルまたは通路は、流体が開口部102から透過液ポート86に流れることを可能にしながら、特徴104のための構造的支持も提供する。特定の実施形態では、膜支持体62の特徴68の形状は、上部分56の底面100上の特徴104とは異なり得る(たとえば、図3の膜支持体68ならびに図9の組み立てられたろ過ユニット60と、図4の上部分56の底面100)。特定の実施形態では、膜支持体62の特徴68の形状は、上部分56の底面100上の特徴104と同じであり得る(たとえば、いずれもハニカム構造を有する、図10の組み立てられたろ過ユニット60の膜支持体68と、図6の上部分56の底面100)。
【0034】
図11および図12は、図3のクロスフローろ過装置18の底部分58の図である。図示するように、供給ポート78および残渣液ポート80は、底部分58の対向する側面106、108上にそれぞれ配設される。いくつかの実施形態では、チュービングが、締結具(たとえばジップタイ)によってポートに固定される。入口82および出口84は、底部分58の上面110に、チャネル76および使用可能な膜領域72が位置する(破線によって示す)領域116の対向する長手方向端部112、114に隣接して配設される。ポート78は入口82まで延び、出口84はポート80まで延びる。両方のポート78、80は、滑らかな輪廓付けられた形状を有して、プロセス流がより滑らかに流れてチャネル76を出入りすることを可能にする。ポート78からストリップ開口部入口82までのチャネルの輪郭付けられた形状は、チャネル76中、全幅にわたって均一に近い流れ速度の細い流れストリームを可能にする。特定の実施形態では、底部分58は、特徴無しの平坦なプレートであり得る。この実施形態では、スペーサ層は、プレナムの特徴を画定することができる(たとえば、円形ポートから広い流れチャネルへの移行)。そのような実施形態では、供給ポートおよび残渣液ポートならびに/またはプレナムは、そのため、上部ブロック内に位置することができる。
【0035】
図13および図14は、図9および図10それぞれの組み立てられたろ過ユニット60の断面図である。上記で説明したように、プロセス液量は、方向118に入口82から出口84まで流れる。プロセス流の一部分は、方向118に対して垂直である方向120に膜支持体62内の開口部70を通って(望ましくない生物学的生成物を有する透過液またはろ過液として)膜66を横断する。開口部70の数およびサイズは、特徴68の形状により、図13および図14のろ過ユニット60間で変わる。加えて、膜66に(特徴68によって)接着された膜支持体62の表面積は、図13および図14のろ過ユニット60間で異なる。上記で留意されたように、特徴68を膜66に接着することにより、局所的な膜偏向、したがって、主要流れチャネル(たとえばチャネル76)内で流れを閉塞し得る逆膜偏向が最小限に抑えられる。
【0036】
図15は、クロスフローろ過装置18の別の実施形態の分解斜視図である。図16および図17は、底部分58の異なる図である。クロスフローろ過装置18は、装置18が底部分58内に形成された単一チャネル76を有することを除いて、図3の装置18に類似する。その結果、ろ過ユニット60は、スペーサ64を含まない。入口82および出口84は、底部分58の上面110上に、チャネル76の対向する長手方向端部112、114に隣接して配設される。ポート78は入口82まで延び、出口84はポート80まで延びる。両方のポート78、80は、滑らかな輪廓付けられた形状を有して、プロセス流が、幅を通ってその幅にわたって均一に近い速度でより滑らかに流れてチャネル76を出入りすることを可能にする。単一チャネル76は、装置18がシールを提供するように組み立てられたときにOリングを保持するように構成された同心に配置された溝122、124(たとえば、Oリング溝)によって取り囲まれる。チャネル76を通過するプロセス液量の望ましいせん断速度を達成するために、チャネルの深さ126は、チャネル76の幅128および(たとえば装置18を通るプロセス液量の)流量に依存する。深さ126は、約0.25mmから0.36mmの間の範囲であることができる。特定の実施形態では、膜厚さに対するチャネル深さの比は、約300μm/20μmであり得る。
【0037】
クロスフローろ過装置に対するスケールが増大しても、設計方法の複雑性は増大しないことに留意されたい。たとえば、処理液量を2倍に(たとえば50mLから100mLに)するために、ろ過表面積は、膜の長さおよび/または幅を増大させるだけで2倍にすることができる。長さを増大させることにより、せん断速度を同じ流量に維持することが可能になるが、その結果、全体的な圧力降下の増大が生じる。幅を増大させることにより、流量を増大させながら同じ圧力降下も維持することによってせん断速度を維持することが可能になる。膜を上側または上部部分に(たとえば接着剤によって)接着する膜支持体により、大きい膜領域への拡大は、この方法に影響を与える。加えて、厳密な製造公差をより大きい/より長い領域にわたって使用して正しいサイズのポケットを作りだすこととは対照的に、スペーサを利用してより良好な正確性(およびより低いコスト)でチャネル高さを維持することができる。
【0038】
加えて、クロスフローろ過装置の構造は、上記で説明したものから変わることができる。たとえば、特定の実施形態では、結合膜間に細いチャネルが挟まれてもよい。その結果、ろ過装置は、上部分の上面および底部分の底面において透過液ポートを有することもできる。特定の実施形態では、ろ過ユニットは、直列または平行に配置され得る。
【0039】
図18は、所望の細胞集団(たとえばリンパ球)を濃縮するための図1のシステムを利用して収集された濃縮データのグラフ130である。図18のデータは、4人の異なる健康なドナーから収集された7つのアフェレーシス試料から収集された。クロスフローろ過装置18を利用する上記で説明したシステム10内の生物学的試料の投与として、50mL液量を使用した。矢印132は、それぞれの試料から回収された白血球の割合を示す。矢印134は、それぞれの試料から除去された赤血球の割合を示す。矢印136は、それぞれの試料から除去された血小板の割合を示す。グラフは、システム10が、血小板のほとんどおよび赤血球の大部分を除去しながら、アフェレーシス試料からのリンパ球を濃縮することにおいて効果的であり得ることを示している。
【0040】
開示する実施形態の技術的効果は、機能的に閉鎖されたシステム内で生物学的試料(たとえば血液)から所望の細胞集団を濃縮するための自動化され密閉されたシステムを提供することを含む。加えて、使い捨てである細胞濃縮キットが提供される。細胞濃縮に関連付けられるコストおよび労力は、両方とも低減される。さらに、細胞濃縮キットは、膜式クロスフローろ過装置を含む。膜は、クロスフローろ過装置内の隣接する流れチャネルの閉塞を低減するように構成された積層ろ過ユニットの一部である。汚損の可能性を限定し、処理時間を短縮し、またはその両方を行うのにより効果的なろ過領域を有するより大きい膜が装填されたクロスフローろ過装置を利用することにより、より大きい生物学的試料を処理することができる。
【0041】
記述する本説明は、例を使用して、最良の形態を含んで本発明を開示し、さらに、任意の装置またはシステムを作製および使用し、任意の組み込まれた方法を実行することを含んで、当業者が本発明を実施することを可能にする。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者が想定する他の例を含んでもよい。そのような他の例は、これらが特許請求の範囲の文言との相違がない構造的要素を有する場合、またはこれらが特許請求の範囲の文言とのわずかな相違を有する等価の構造的要素を有する場合、特許請求の範囲内に含まれるように意図される。
【符号の説明】
【0042】
10 システム
12 流体管理システム
14 濃縮キット
16 供給源バッグ
18 クロスフローろ過装置
20 プロセスバッグ
21 第1のポート
22 第2のポート、緩衝液バッグ
24 廃液バッグ
26 チュービング
28 センサ
30 供給源ポンプ
32 廃液ポンプ
34 緩衝液ポンプ
36 主要ループポンプ
38 コンピューティング装置
40 メモリ
42 プロセッサ、ディスプレイ
44 取り外し可能なレセプタクルまたは構造
46 主要ループ通路
48 センサ
50 供給源通路
51 弁
52 廃液通路
53 ろ過された空気
54 緩衝液通路
56 上部分またはブロック
58 底部分またはブロック
60 ろ過装置またはユニット
62 膜支持体
64 スペーサ
66 膜
68 特徴または構造的部材
70 開口部
72 使用可能な膜領域
74 開口部
76 単一チャネル
78 供給ポート
80 残渣液ポート
82 入口
84 出口
86 ろ過液または透過液ポート
88、90、92、94、96 開口部
98 上面
100 底面
102 開口部
104 特徴または構造的支持体
106、108 側面
110 上面
112、114 長手方向端部
116 領域
118 方向
120 方向
122、124 溝
126 深さ
128 幅
130 グラフ
132、134、136 矢印
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18