(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】特に航空機タービン用のラビリンスシールアブレイダブル構造体
(51)【国際特許分類】
F01D 11/12 20060101AFI20230228BHJP
F02C 7/28 20060101ALI20230228BHJP
F16J 15/447 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
F01D11/12
F02C7/28 A
F02C7/28 B
F16J15/447
(21)【出願番号】P 2020544985
(86)(22)【出願日】2018-11-20
(86)【国際出願番号】 FR2018052909
(87)【国際公開番号】W WO2019102124
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-10-05
(32)【優先日】2017-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジュイ,バティスト・マリー・オーバン・ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ベルディエール,マチュー・シャルル・ジャン
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-139788(JP,A)
【文献】特開2011-185272(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0322808(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0237836(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0305266(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 11/12
F02C 7/28
F16J 15/447
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ機械の軸(X)の周りにターボ機械内に配置されたラビリンスシールアブレイダブル構造体(29、36)であって、セルを画定する隔壁(31、32;47;64、65)を備えた外層(55)内に、軸(X)の方向に互いに連続するように並置されて軸方向に漸進的な値の耐摩耗性を有する、アブレイダブル構造体のラビリンスシールの環状バンドによって形成される少なくとも3つの領域(33、34、35;43、44、45、46;61、62、63)を備え、セルが矩形であり、各領域の隔壁が、3つのセルのみを一緒に接続する接合部に接合され、前記隔壁が、軸(X)の方向に対して30°と60°との間に含まれる角度で配向されることを特徴とする、ラビリンスシールアブレイダブル構造体。
【請求項2】
領域の各々について、セルが、同じ面積を有する多角形の断面であるものであることを特徴とする請求項1に記載のラビリンスシールアブレイダブル構造体。
【請求項3】
セルが、断面において、各領域に対して異なる面積を有することを特徴とする、請求項2に記載のラビリンスシールアブレイダブル構造体。
【請求項4】
ある領域の少なくとも1つのセルが、その領域の他のセルよりも低い耐摩耗性を有するように局所弱化領域(38)を有することを特徴とする、請求項3に記載のラビリンスシールアブレイダブル構造体。
【請求項5】
いくつかの隔壁が、いくつかのセルを通って延びる主直線隔壁であり、他の隔壁が、2つの連続する主隔壁の間だけに延びる細分化隔壁であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のラビリンスシールアブレイダブル構造体。
【請求項6】
隔壁のいくつかが、複数の領域を通って延在する主直線隔壁であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のラビリンスシールアブレイダブル構造体。
【請求項7】
隔壁が、0.1mm~0.3mmの厚さを有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のラビリンスシールアブレイダブル構造体。
【請求項8】
ラビリンスシールアブレイダブル構造体が、付加製造技術によって製造され、単一部品に形成される構造を有することを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のラビリンスシールアブレイダブル構造体。
【請求項9】
ラビリンスシールを備えたターボ機械のタービンが、請求項1~8のいずれか一項に記載のラビリンスシールアブレイダブル構造体を備えることを特徴とする、ターボ機械のタービン。
【請求項10】
ラビリンスシールが、ラビリンスシールアブレイダブル構造体の前記環状バンドのいくつかだけに対向するワイパを備え、これらの環状バンドは、ターボ機械の巡航状況において、摩耗に対してより耐性があり、しかし、前記環状バンドの他のものは、摩耗に対してより耐性が低く、前記環状バンドのいくつかの下流に位置することを特徴とする、請求項9に記載のターボ機械タービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、特に航空機タービン用のラビリンスシールアブレイダブル構造体である。
【背景技術】
【0002】
ラビリンスシールは、相対的に回転する2つの部分の間に配置され、向き合う表面によって特徴付けられ、半径方向の隙間によって互いに分離され、その2つの部分の間の漏れ流を許容する一方、波状形状によって、従って2つの部分が課す大きい圧力降下によって漏れ流を制限する。ロータとステータ間のターボ機械ではラビリンスシールの使用が多い。
【0003】
ターボ機械の効率向上のために、このようなシールを通して漏れ量を低減することが求められている。航空学では、アブレイダブル構造体と呼ばれる構造体が対向部分の一方に設けられるシール構造体に頼ることが非常に多い。このアブレイダブル構造体は、摩擦や摩耗に対して低い耐性の特性を有し、ハニカム構造を有することが多い。シールの他方の部分は、対向部分の他方の部分に配置され、ワイパ、すなわち、円環状または円錐状の突出した隆起部を備える。このワイパの自由端はアブレイダブル構造体に向けられている。(過熱または遠心力による)熱膨張差または機械的膨張差が生じ、ワイパが、アブレイダブル構造体とワイパの隆起部とを一時的に接触させる過渡状態などの状況にあるときに、ワイパがシールを破壊することなくアブレイダブル構造体に入ることができるので、この構造は、ラビリンスシールの2つの部分間の隙間を低減することを可能にする。ラビリンスシールの例は、本発明に外見上は類似しているので、ここで言及されるが、文献、仏国特許出願公開第3028882号明細書の主題である。この文献におけるアブレイダブル構造体は、アブレイダブル構造体から大きな表面の引き剥がしを回避することによって、衝撃に対してより高い耐性を有するように設計される。このアブレイダブル構造体は、ハニカムから構成される接続構造部によってその基体に固定される。ハニカムのセルは、アブレイダブル構造体の一部(ここでは、連続的かつ均質な層である)によって占められる。接続構造部はワイパの摩耗を受けないことが明記されている(第4頁第4~8行)。以下に明らかにするように、接続構造部がエンジンのある再始動時にかなりの力を受けることがありうる場所にアブレイダブル構造体をより良く固定するように、さらに下流に位置する領域において、接続構造部は、より密な隔壁およびより小さなセルを有する。しかしながら、この接続構造部の配置は、本発明のある実施形態で見られるものとは逆であり、その配置は、異なるエンジン動作段(「ロータロック」状況)の間に、アブレイダブル構造体におけるワイパロック状況を回避することをあまり有効にしない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
非常に一般的なタイプのラビリンスシールの例が、ターボ機械タービンの一部分を図示する
図1に示されている。この位置において、ロータ1は、可動ベーン2(複数)の段を備える。この可動ベーン2(複数)の段は、半径方向外側に突出する2つの円錐状ワイパ4および5をここで担持する基部3によって、半径方向外側にあるそれらの先端で一緒に接合されている。また、ターボ機械は、リブ8,9が設けられたケーシング7を含むステータ6を備える。リブ8,9は、半径方向内側に突出し、既知のフック調整部11,12によってリブ8,9に接続されたシールリング10(通常は円周上の角度セクタに分割される)の端部を担持している。シールリング10は、フックを担持する剛性基体13と、基体13上にはんだ付けされ、且つワイパ4および5の方へ向けられるアブレイダブル層14とを備える。
【0006】
ロータ1の周りのガス漏れ流は、ワイパ4および5をバイパスするために、ロータ上に課された断面制限によって流速が減少する。その自由端は、アブレイダブル構造体14のすぐ近くにある。ワイパ4および5とアブレイダブル構造体14とを含むラビリンスシールの透過性は、とりわけ、アブレイダブル構造体14をワイパ4および5の先端から分離する隙間15および16に依存する。隙間15および16は、予備設定によって冷間調整されている。これらの隙間は、新鮮な空気によって作動し、且つターボ機械のコンプレッサ部分で排出され、且つオリフィス19および20が設けられた円環状ランプ17および18によってケーシング7の外面に吹き出される、ケーシング7のリフレッシュのおかげで、ターボ機械の作動中に調整される。
【0007】
ターボ機械の巡航速度におけるラビリンスシールの配置は、典型的には、
図2に示すものであり、ここで、ワイパ4および5の自由端は、ターボ機械の過渡状態の間、アブレイダブル構造体14の局所的摩耗によって堀り削られたノッチ22および23を有した後、アブレイダブル構造体14の元の表面21のわずかに内側に貫入している。次いで、シール内の隙間15および16は大幅に減少し、漏れ流の経路は波状で不規則であり、これは漏れ流の著しい圧力降下、およびターボ機械の効率の耐えことが可能な損失を確実にする。
【0008】
それにもかかわらず、飛行中にエンジンが止められてから再点火されたときに、微妙な状況が発生する。熱膨張差は修正され、ステータ6は次いでロータ1よりも多く冷却される。これは、ステータ6のより大きな収縮と、ロータ1の軸方向変位(タービンの場合、その下流での変位)との両方をもたらし、これは、先のものの隣に位置する結果として、かつ、風車ロータ1の回転が存続する結果として、より深く位置する新しいノッチ24および25を形成するように、ワイパ4および5が、アブレイダブル層14の中へより深く貫入することにつながる。しかし、エンジンが再点火されると、加熱は、まず、ロータ1に役立って、ワイパ4および5を膨張させる、それらのワイパをさらに顕著に新しいノッチ24および25に押し込み、航空機の安全のために非常に危険であると禁止されるロータ1のロックに至る危険性をもたらす。
【0009】
図3を参照すると、硬すぎるアブレイダブル構造体14によるロータ1のロックが可能であるというこの問題を明らかにすることができる。アブレイダブル14の従来の構造は、マトリックス内の通路によって折り曲げられた金属ストリップで構成され、次いで、この種のいくつかのストリップが組み立てられ、溶接点27によって溶接されて、ハニカムの慣習的な六角形構造を形成する。しかしながら、ストリップ26が基体13上にはんだ付けされるとき、ストリップ26の隣接する面の間の毛細管作用によって、おそらくワイパに対向して配置されることを意図したアブレイダブル構造体14の外層の自由端まで、はんだ材料が上昇することが観察されている。これは、ストリップ26に接触する面の間の硬質部(複数)28を与えるものであり、これらの硬質部はアブレイダブル構造体14の摩耗に対する耐性を高める。これらの硬質部がワイパ4および5のアブレイダブル構造体14への貫入の移動方向に向けられているときには、なお一層そのようになる。これらの部分は、摩耗に対して最も耐性があり且つロータ1をロックする原因となる可能性が最も高い、アブレイダブル構造体14の部分を構成する。
【0010】
従って、この損傷の危険性を低減する努力がなされており、アブレイダブル構造体の新規で改善された設計が提案されている。
【0011】
本発明によれば、推奨されるアブレイダブル構造体は、セルを画定する隔壁を備えた外層に、軸方向に互いに連続するように並置され、軸方向に漸進的な値の耐摩耗性を有する少なくとも3つの領域を備える。
【0012】
耐摩耗性が最も高い領域(一般に軸を取り囲む環状バンドに対応する)は、巡航速度の条件下では、シールの他の部分のワイパの前に配置される。耐摩耗性がより低い領域は、ロータロックを予測し得る事象の間にワイパが達する可能性が高い場所に、すなわち、上記の例では、新しいノッチ24および25の位置に、配置される。
【0013】
本発明のこの構造は、少なくとも、アブレイダブル構造体の外層にある。つまり、この構造は、ワイパの方に向けられた自由表面を含み、または、より一般的には、仏国特許出願公開第3028882号明細書とは異なり、該自由表面を装着可能な構造を含む。自由表面は、場合によっては、アブレイダブル構造体の内側半径方向または外側半径方向位置にあってもよい。
【0014】
また、軸に沿って漸進的な耐摩耗性を有する、すなわち、軸に沿った中間領域の中間値を有する3つ以上の領域が存在するので、多かれ少なかれ大きな軸方向および半径方向の膨張に応じて、多かれ少なかれ顕著な過渡状態において、異なるエンジン動作段階に適合された摩耗性が提供される。
【0015】
実際には、前述の説明は、飛行中のエンジンの異なる継続時間の停止に一般化することができ、それは、次いで、ある状況から別の状況への異なる膨張差を生じさせ、軸方向の膨張の値は、しかしながら、半径方向の値と関連づけられる。そして、アブレイダブル構造体の耐性、および漏れ量に関してシールの透過性を、必要な程度まで低減することができ、従って、均質なアブレイダブル構造体と比較してほとんど透過性を失わないが、ロータがロックする危険性を受ける。
【0016】
ここで、本発明の好ましい実施形態のいくつかの特徴があり、およびそれらの対応する利点の説明を行う。各領域の隔壁は、第一に、有利には、3つのセルのみを互いに接続する接合部を、したがって、隔壁のうちの3つ、または隔壁のうちの3つの部分(伸長されていてもよい)についての交点である接合部を、結合することができる。従って、この結合は、互いに対するより多数の隔壁の接合部とともにロータロックの危険性を増大させながら、アブレイダブル構造体のより大きな局所的剛性に対応する硬質点の形成を回避する。
【0017】
装置の設計および製造を単純化するために、セルは、特にアブレイダブル構造体の剛性の均一性に寄与する、同じ面積を有する多角形の断面であるものが推奨される。
【0018】
多角形、またはより一般的には、異なる領域のセルは、同じ形状であってもよいが、異なる耐性、または異なる寸法、および異なる面積の断面を有するものであってもよい。ここでも、アブレイダブル構造体の設計および製造は容易にされる。従来技術の六角形ハニカムセルの他に、本発明によれば、アブレイダブル構造体の異なる領域間の容易な接合を可能にしながら、製造を単純化する矩形セル、正方形セル、またはそうでないセルを選択することもできることが理解されるであろう。
【0019】
矩形セルは、本発明の好ましい実施形態に特に適しており、それによれば、隔壁はすべて、軸に垂直な角度方向に対して非ゼロの角度で配向され、隔壁の全長に沿ったワイパの変位がないことを保証し、従って、対応するロータロックの危険性を低減する。次いで、セルの隔壁を、軸方向に対して30~60°の間に含まれる角度で配向することができる。
【0020】
しかしながら、この配置は必須ではなく、矩形セルは、軸方向に配向された隔壁と、軸に垂直な角度方向に配向された隔壁とから構成することができる。
【0021】
いくつかの他の配置は、アブレイダブル構造体の一体性を改善することを可能にする。従って、隔壁のいくつかは、いくつかのセルを通って延びる主直線隔壁とすることができ、隔壁の他のものは、2つの連続する主隔壁の間だけに延びる細分化隔壁とすることができる。この特定の配置は、連続するバンド間のセルの互い違いの配置を可能にすることによって、以下に記載される実施形態に特に適合される。
【0022】
隔壁のいくつかは、いくつかの領域を通って延在する主直線隔壁であってもよく、したがって、アセンブリの一体性を改善する。
【0023】
隔壁は、一般に、0.1mm~0.3mmの厚さを有することができる。
【0024】
有利な製造方法は、付加製造技術である。付加製造は、むしろ単一部品のアブレイダブル構造体を与えることができるので、したがって、別々に製造されており次いで組み立てられていたであろうアブレイダブル構造体の部分の間に溶接または同様の補強を伴わない。その結果、この付加製造技術はまた、アブレイダブル構造体のすべての局所的な硬質点を回避し、およびそれに対応するロックの危険性の増大を回避する。
【0025】
本発明の別の態様は、ラビリンスシールを備えるターボ機械のタービンであって、このシールは、環状であり且つ好ましくはセクタに区分けされた、上記によるアブレイダブル構造体を備え、領域は、アブレイダブル構造体の環状バンドによって形成される、ターボ機械のタービンである。
【0026】
次いで、ラビリンスシールは、ラビリンスシールアブレイダブル構造体の前記環状バンド(複数)のいくつかだけに対向するワイパ(複数)を備えることができる。これらの環状バンド(複数)は、巡航速度で摩耗に対してより耐性がある。しかし、前記環状バンドの他のものは、摩耗に対してより耐性が低く、前のものの下流に配置される。
【0027】
次に、本発明を、例示的かつ非限定的な方法で添付された以下の図面を用いて、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】すでに説明されたラビリンスシールの断面を示す図である。
【
図2】さらに説明された、アブレイダブル構造体の通常の摩耗パターンを示す図である。
【
図3】同様に説明されている、従来のアブレイダブルの構造を示す図である。
【
図8】ラビリンスシールにおける本発明の実施形態の実施を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の第1の実施形態が
図4に示されており、アブレイダブル構造体、これ以降29は、上述のようにセル構造から構成されているが、矩形セルここでは正方形セルと交差して境界を定める、ここでは直線状の隔壁30から形成されている。隔壁30は、有利には、すべてターボ機械の軸Xに対して斜めに、より好ましくは30°と60°との間で、特にこの軸に対して45°で配向される。換言すれば、いずれの隔壁30も、軸Xに垂直で且つワイパ4および5のアブレイダブル構造体29への貫入方向であるターボ機械の角度方向Tに向けられていない。大きな長さの主隔壁31と、細分化隔壁32とを、隔壁30の間で識別することができる。細分化隔壁32は、先行する隔壁と平行であってそれらの間に延在するが、短縮された長さにわたってのみ、したがってこれらの主隔壁31の一部にのみ沿って延在する。その結果、セルは、可変領域を有する。すなわち、小さなセルのバンド33と、前のものより4倍大きい中間のセルのバンド34と、軸Xに沿って互いに連続する最初のものより16倍大きい大きなセルのバンド35とが認識されることができる。アブレイダブル構造体29は、付加技術によって製造された一体構造を有する。隔壁30の厚さは、ここでは均一であり、典型的なアブレイダブル構築材料の場合、0.1mm~0.3mm(薄い厚さが好ましい)のオーダーである。
【0030】
小さなセルのバンド33は、
図8に示されるエンジンの巡航速度で、その軸方向位置に従ってワイパ4および5の前方に配置されることになる。一方、大きなセルのバンド35は、エンジンの再点火速度の間、ワイパ4および5によって到達されたと推定される位置の前方に配置されることになる。中間のセルのバンド34は、中間のものである。
【0031】
従って、アブレイダブル構造体29の耐摩耗性は、一般に、小さなセルのバンド33によって決定され、一方、大きなセルのバンド35は、はるかに低い耐摩耗性を与え、ロータロックを引き起こす可能性のある状況の間、すなわち、新しいノッチ24および25の位置において、ワイパ4および5によって到達される。その結果、再始動中のロータ1のロックの危険性は、アブレイダブル構造体29の局所的に低い耐性のおかげで低減される。一体構造を製造し、ここでは均一な厚さの隔壁30のネットワークを形成するための付加技術の使用は、摩耗耐性をより良好に制御することを可能にし、アブレイダブル構造体の隔壁間のはんだ接合部が生じることよる硬質部を回避することを可能にする。ターボ機械2の角度方向(ターボ機械の軸に垂直である)に配向された隔壁がないことは、同じ効果を有する。
【0032】
そして、中間のセルのバンド34は、中間的で中間の耐摩耗性を与え、エンジンをより短い期間停止させる状況の間、ワイパ4および5によって到達され得る。その終了時、ワイパの熱膨張はそれほど顕著ではなくなり、また、再始動時にロータがロックする危険性もそれほど顕著ではなくなる。従って、アブレイダブル構造体が、全体的な透過性があまり低下されないように、小さなセルのバンド33におけるよりも低い局所耐性を有し、しかし大きなセルのバンド35におけるよりも強い局所耐性を有することは、十分に適切であろう。
【0033】
本発明の第2の実施形態を、
図5および
図6を用いて説明する。アブレイダブル構造体は、包括的な参照符号60を有し、3つの連続するバンド61、62、63を含み、これらのバンドは、それぞれ、以前と同様に、小さなセル、中間のセル、および大きなセルから構成される。本発明にとって興味深いと考えられる実施形態によれば、セル(すべて66で参照される)も矩形である。以前の設計と比較して2つの有意差がある。第1は、セル66を区切る隔壁(複数)の方向であり、この隔壁は、ここではすべて、機械の軸Xの方向またはその角度方向Tのいずれかに配置されている。アブレイダブル構造体60上のワイパの可能な過度の摩擦を回避するのに寄与する隔壁の方向であり、対応するロックの危険性は、前の実施形態と同様に、明らかにされる。
【0034】
この危険性は、ここでは、本来の配置によって低減される。バンド61、62および63の各々の隔壁(複数)は、互いに平行であり、ここではすべて角度方向Tに配向された主隔壁64から構成される。この主隔壁は、セルのいくつかに沿って、任意選択で、アブレイダブル構造体60の全幅にわたって延在する。すなわち、この主隔壁は、リングで製造されるか、それとも円の扇形にわたって延在するいくつかの環状セグメントで製造されるかに応じて、その円周にわたって、またはその円周の一部にわたって延在する。バンド61、62および63の各々の隔壁(複数)は、主隔壁64の間に延在し、より具体的には、2つの隣接する主隔壁64の間だけに延在する細分化隔壁65からも構成される。各主隔壁64の両側の細分化隔壁65は、互いに一致しない。この両側の細分化隔壁65は、主隔壁64の反対側のセル66とともに、角度をずらしてまたは互い違いに配置された仕方で配置されたセル66を与える。バンド61、62の各々について、3つのセル66によってすべて囲まれ且つ隔壁64と65の3つの部分のみの交点に配置された、隔壁64と65との間の接合点67を、アブレイダブル構造体60を構成する隔壁64および65のネットワークは含む。隔壁64と65の3つの部分の2つは、主隔壁64の1つに属し、最後の1つは細分化隔壁65に属する。このように、接合部67は適度な剛性を有し、ワイパ4および5が細分化隔壁65の上を擦る場合、ロータロックの危険性を低減させる。主隔壁64はまた、それらの大きな伸長のおかげで、アブレイダブル構造体60の一体性に寄与する。主隔壁64と隔壁65とを、それぞれ軸方向Xおよび角度方向Tに、それぞれ逆に配置することも可能である。
【0035】
図7には、本発明の別の実施形態が示されている。この場合、36で参照されるアブレイダブル構造体は、ここでも交差してセル37を形成する隔壁47から構成されている。アブレイダブル構造体は、さらに、軸線Xの方向に並置されたバンド43、44、45、46(ここでは4つ)で構成されている。隔壁39間の間隔は、1つのバンドから他のバンドまで同一であり、その結果、セル37はすべて同じ寸法および同じ面積を有する。バンド43、44、45および46の間のアブレイダブル構造体の耐性の変動は、脆化ゾーン38によって得られる。脆化ゾーン38は、例えば、隔壁47の厚さの減少、耐性のより小さい材料等が含まれる場合がある。このような脆化部38は、3次元印刷による付加製造において容易に得られることができる。この場合、この方法は、プログラムによって完全に実施される。脆化ゾーン38は、主バンド43にはなく、バンド44、45、46には、ますます多く、または高密度になっている。この効果は以前と同じであり、アブレイダブル構造体36の耐性は、バンド43から反対側のバンド46まで次第に低くなる。
【0036】
脆化ゾーン38を形成する他の手段は、隔壁47を通るノッチまたは穿孔を形成することからなる。
【0037】
これらの実施形態の異なる特徴は、一般に、互いに組み合わせることができる。
【0038】
本発明の重要な態様は、アブレイダブル構造体29または36の異なるバンドが、
図7および
図8のレベル線39、40および41によって示される、それぞれのワイパの前で元々同じ高さを有することである。言い換えれば、ロータをロックすることができるアブレイダブル構造体29または36のゾーンは、当初は切断されておらず、これは、ワイパ4および5との干渉のこの危険性を低減する効果を有していたであろうが、ターボ機械の通常の使用中の性能の低下を犠牲にしていたであろう。
【0039】
一般的な方法では、記載された構造が、ワイパに面する自由表面によって制限される、アブレイダブル構造体の外層に延在することで十分であり、そのような外層は、
図7に示されている。
図7では、外層は、参照番号55を有し、構造的不均質性が集結されている。本発明の範囲から逸脱することなく、別の構造で構築されて任意選択で均質である、外層55の下にある他の層56を、アブレイダブル構造体は含むこともできる。