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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】肺静脈隔離バルーンカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20230228BHJP
【FI】
A61B18/14
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021112354
(22)【出願日】2021-07-06
(62)【分割の表示】P 2019531258の分割
【原出願日】2017-12-04
(65)【公開番号】P2021178184
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2021-08-02
(31)【優先権主張番号】62/434,828
(32)【優先日】2016-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511177374
【氏名又は名称】セント・ジュード・メディカル,カーディオロジー・ディヴィジョン,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イスラエル エー. バード
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-535033(JP,A)
【文献】特表2012-515018(JP,A)
【文献】特表2015-503954(JP,A)
【文献】特開2016-185295(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0010612(US,A1)
【文献】国際公開第2014/189887(WO,A2)
【文献】国際公開第2016/180934(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12 ― 18/16
A61N 1/00 ― 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端と遠位端とを備えるカテーテルシャフトと、
近位端と遠位端とを備えるアブレーションバルーンであって、前記アブレーションバルーンの前記近位端が、前記カテーテルシャフトの前記遠位端に結合される、前記アブレーションバルーンと、を備え、
前記アブレーションバルーンは、前記アブレーションバルーンと前記アブレーションバルーンに接触する組織との間のエネルギー伝達を促進するように構成されて配置されるアブレーション電極を備え、
1つ以上の直流パルスを前記アブレーションバルーンの前記アブレーション電極に伝えるように構成される信号生成器を更に備え
前記アブレーション電極は、
肺静脈の円周部分と係合し、
前記アブレーション電極と接触する前記肺静脈の前記円周部分に沿って組織をアブレーションするように更に構成されて配置される、アブレーションバルーン装置。
【請求項2】
前記アブレーション電極は、前記アブレーションバルーンの周方向に延在する、請求項1に記載のアブレーションバルーン装置。
【請求項3】
前記カテーテルシャフトの近位端から前記カテーテルシャフトの長さを通って延在し、前記アブレーション電極に電気的に結合される複数の電気リード線と、
前記複数の電気リード線の近位端に電気的に結合される信号生成器であって、
記電気リード線を介して1つ以上のエレクトロポレーションパルスを前記アブレーションバルーンの前記アブレーション電極に伝え、
前記アブレーション電極と接触する組織をアブレーションするように構成されて配置される、信号生成器と、を更に備える、請求項1又は2に記載のアブレーションバルーン装置。
【請求項4】
前記1つ以上のエレクトロポレーションパルスは、不可逆エレクトロポレーションパルスを含む、請求項に記載のアブレーションバルーン装置。
【請求項5】
前記1つ以上のエレクトロポレーションパルスは、二相エレクトロポレーションパルスを含む、請求項に記載のアブレーションバルーン装置。
【請求項6】
前記1つ以上のエレクトロポレーションパルスは、単相エレクトロポレーションパルスを含む、請求項に記載のアブレーションバルーン装置。
【請求項7】
前記1つ以上のエレクトロポレーションパルスは、最大出力5キロワットで200ジュールのエネルギーを組織に送達する、請求項のいずれか一項に記載のアブレーションバルーン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2016年12月15日に出願された米国仮出願第62/434,828号の利益を主張する。
【0002】
本開示は、カテーテルに関し、特に、心臓内でアブレーション治療を行なうためのカテーテルに関する。1つの実施形態において、本開示は、肺静脈組織の近傍でアブレーションすることによって心臓不整脈を治療するためのカテーテルに関する。
【背景技術】
【0003】
人の心臓は、その心筋組織を横切る電流を定期的に受ける。各心収縮の後、心臓が再分極し、それにより、電流が心筋組織を通じて広がる。健康な心臓では、心臓の組織は脱分極波の規則的な進行を受ける。例えば異所性心房頻脈、心房細動及び心房粗動を含む心房性不整脈を受ける心臓などの不健康な心臓では、脱分極波の進行が無秩序状態となる。不整脈は、瘢痕組織又は急速で均一な脱分極の他の障害の結果として残る場合がある。これらの障害により、脱分極波が心臓の幾つかの部分を通じて複数回電気的に循環する場合がある。心房性不整脈は、不規則な心拍、規則的な心房収縮及び心室収縮の損失、及び、血流停止を含む様々な危険な状態をもたらす可能性がある。これらの状態の全ては、死を含む様々な疾患と関連付けられてきた。
【0004】
様々な診断的及び/又は治療的な医療処置では、例えば異所性心房頻脈、心房細動及び心房粗動を含む心房性不整脈などの状態を是正するためにカテーテルが使用される。
【0005】
一般に、血管内処置において、カテーテルは、例えば患者の心臓へ向けて患者の脈管構造を通じて操作されるとともに、マッピング、アブレーション、診断又は他の処置のために使用されてもよい1つ以上の電極を支持する。心房性不整脈を含む症状を軽減するためにアブレーション治療が望ましい場合には、アブレーションカテーテルが心筋組織に対してアブレーションエネルギーを与えて傷を形成する。傷付けられた組織は、電気信号を伝達することが殆どできず、それにより、望ましくない電気経路が断たれ、不整脈をもたらす迷走電気信号が制限又は防止される。アブレーションカテーテルは、例えば、高周波(RF)、冷凍アブレーション、レーザ、化学物質及び高密度焦点式超音波を含むアブレーションエネルギーを利用してもよい。容易に分かるように、そのようなアブレーション処置は、最適な結果のためにアブレーションカテーテルの正確な位置決めを必要とする。
【0006】
前述の議論は、本分野を説明することのみを意図しており、特許請求の範囲の否定としてとられるべきではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、心臓内での組織アブレーションのための電気生理的カテーテルに関する。特に、本開示は、組織の所望の部分にアブレーションエネルギーを収束させるための導電性の表面及び非導電性の表面を伴う電気生理的アブレーションバルーンカテーテルに関する。
【0008】
本開示の典型的な実施形態では、アブレーションバルーン装置が開示される。アブレーションバルーン装置は、カテーテルシャフトとアブレーションバルーンとを含み、この場合、アブレーションバルーンの近位端はカテーテルシャフトの遠位端に結合される。アブレーションバルーンは、導電部分と非導電部分とを含む。導電部は、アブレーションバルーンと導電部分に接触する組織との間のエネルギー伝達を促進してもよく、一方、非導電部分は、アブレーションバルーンと非導電部分に接触する組織との間のエネルギー伝達を軽減する。
【0009】
本開示の他の実施形態では、心房細動を処置するためのシステムが開示される。システムは、細長いシャフトと、バルーン送達カテーテルと、アブレーションバルーンとを含む。細長いシャフトは、細長いシャフトを通って延在するルーメンを含み、バルーン送達カテーテルは、ルーメンを通って延在する。アブレーションバルーンは、導電部分と非導電部分とを含み、バルーン送達カテーテルの遠位端に結合される。アブレーションバルーンは、アブレーションバルーンの導電部分に沿って肺静脈の組織壁と係合してもよく、バルーンの導電部分により係合される肺静脈の組織壁に沿ってアブレーション治療を行なってもよい。
【0010】
本開示の他の実施形態は、肺静脈隔離用のバルーンカテーテルを対象とする。そのような実施形態において、バルーンカテーテルは、操作可能なバルーン送達カテーテルシャフト、アブレーションバルーン及び組織アブレーション手段を含む。操作可能なバルーン送達カテーテルシャフトは、アブレーションバルーンを肺静脈内へと展開し、アブレーションバルーンは、バルーン送達カテーテルの遠位端に導電領域を含む。アブレーションバルーンは、展開されることに応じて、アブレーションバルーンの導電部分に沿って肺静脈の組織壁と係合してもよい。組織アブレーション手段は、アブレーションバルーンと共に、アブレーションバルーンの導電部分に沿って肺静脈の組織壁に対してアブレーション治療を行なう。
【0011】
本開示の上記および他の態様、特徴、詳細、有用性及び利点は、以下の説明および特許請求の範囲を読むことから、ならびに添付図面を検討することから明らかになるであろう。
【0012】
様々な例示的な実施形態は、添付図面に関連して以下の詳細な説明を考慮して、より完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の様々な態様による、治療的な医療処置を行なうためのカテーテルシステムの概略的な図である。
【0014】
図2】本開示の様々な態様による、アブレーションバルーンカテーテルが肺静脈を特定している状態の左心房の正断面図である。
【0015】
図3】本開示の様々な態様による、図2のアブレーションバルーンカテーテルが肺静脈内に配置された状態の左心房の正断面図である。
【0016】
図4】本開示の様々な態様による、アブレーションバルーンの展開前における、図2のアブレーションバルーンカテーテルが内部に配置された状態の肺静脈の正断面図である。
【0017】
図5】本開示の様々な態様による、図2のアブレーションバルーンカテーテルが内部で展開された状態の肺静脈の正断面図である。
【0018】
図6】本開示の様々な態様による、展開されたアブレーションバルーンカテーテル及びアブレーションバルーンカテーテルの中心ルーメンを通って延在する電気生理的ループカテーテルの斜視側面図である。
【0019】
図7】本開示の様々な態様による、展開されたアブレーションバルーンカテーテル及びアブレーションバルーンカテーテルの中心ルーメンを通って延在する電気生理的ループカテーテルの斜視側面図である。
【0020】
図8】本開示の様々な態様による、展開されたアブレーションバルーンカテーテル及びアブレーションバルーンカテーテルの中心ルーメンを通って延在する電気生理的ループカテーテルの斜視側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書において検討されている様々な実施形態が修正形態及び代替形態に適しているが、それらの態様は図面に例として示されており、詳細に説明される。しかしながら、特許請求の範囲を説明されている特定の実施形態に限定する意図はないことが理解されるべきである。それどころか、特許請求の範囲において定義される態様を含む本開示の範囲内に入る全ての修正形態、等価物、および代替案を包含することが意図されている。さらに、本願を通じて用いられている用語「例(example)」は実例に過ぎず、制限ではない。
【0022】
本開示は、例えば心臓内での組織アブレーションのための電気生理的カテーテルに関する。特に、本開示は、組織の所望部分(例えば、肺静脈組織)にアブレーションエネルギーを収束させるための導電性の表面及び非導電性の表面を伴う電気生理的アブレーションバルーンカテーテルに関する。本開示の様々な実施形態の詳細については、図面を具体的に参照して以下で説明する。
【0023】
一般に、アブレーション治療は、傷ラインを形成するために制御された態様で多くの個々のアブレーションを行なうことによって果たされてきた。そのような傷ラインは、多くの場合、心臓内への異常な電気信号の導入ポイントと関連付けられてきた心臓の左心房内の肺静脈周り/肺静脈間に形成されることが望ましい。エネルギーの印加を最小にして十分なアブレーションのブロックを得ようとする、開発中の、又は商品化されているデバイスが存在する。既存の設計は、フープを有する診断カテーテルから、エネルギー印加機能を有するバルーン装着設計にまで及ぶ。既存の設計は、治療を行なっている最中に肺静脈の標的の円周及び長さにアブレーションエネルギーを収束させることができないという欠点があり、その結果、血液プールへのエネルギー損失と、非標的組織の意図しないアブレーションがもたらされる。更に、それに伴うエネルギー損失は、標的組織のアブレーションの効果を低下させ、一貫性のない傷ラインと、不完全な電気信号遮断を引き起こす場合がある。
【0024】
同様の参照番号が様々な図における同様の構成要素を特定するために使用される図面を参照すると、図1は、組織アブレーション処置を行なうためのカテーテルアブレーションシステム100の概略的な図である。実施形態の一例では、組織120は人体140内の心臓組織を備える。しかしながら、システムが人の体内及び人以外の体内の様々な他の組織に関連する用途を見出してもよく、したがって、本開示が心臓組織及び/又は人体のみに関連するシステムの使用に限定されるように意図されていないことが理解されるべきである。
【0025】
カテーテルアブレーションシステム100は、カテーテル160と、カテーテル160の遠位端128でアブレーションバルーン130により行なわれるアブレーション治療を制御するためのアブレーションサブシステム180を含んでもよい。アブレーションサブシステム180は、例えば高周波(RF)、冷凍アブレーション、レーザ、化学物質、及び、高密度焦点式超音波を含むアブレーションエネルギーの印加及び/又は生成を制御できる。
【0026】
図1の例示的な実施形態において、カテーテル160は、心臓組織120などの体内組織の検査、診断及び/又は処置のために設けられる。カテーテルは、ケーブルコネクタ又はインタフェース121、ハンドル122、近位端126と遠位端128とを有するシャフト124(本明細書中で使用される「近位」は、ハンドル122付近のカテーテル160の端部へと向かう方向を指し、「遠位」は、ハンドル122から離れる方向を指す)、及び、カテーテルシャフト124の遠位端128に結合されるアブレーションバルーン130を含んでもいてよい。
【0027】
アブレーションバルーン130は、シャフト124の1つ以上の部分を操作してアブレーションバルーンを(例えば心筋内の)所望の位置に位置決めするために、ハンドル122を使用して患者140の脈管構造を通じて操作されてもよい。様々な実施形態において、アブレーションバルーンは、アブレーションサブシステム180により動作されるときにアブレーションバルーン130と接触する組織120をアブレーションするアブレーション要素(例えば、アブレーション電極、高密度焦点式超音波アブレーション要素、超冷却/超加熱流体など)を含む(また、場合によっては、アブレーションバルーン130に近接する組織が、血液プールを通って近位組織へ伝導性のエネルギーを伝達することによってアブレーションされてもよい)。
【0028】
本開示の様々な特定の実施形態において、カテーテル160は、カテーテルシャフト124の遠位端128に、電極と1つ以上の測位センサ(例えば、電極及び/又は磁気センサ)を含んでいてもよい。そのような実施形態において、電極は、心臓組織120に関連するEPデータを取得し、一方、測位センサは、アブレーションバルーン130の3D位置を示す位置データを生成する。更なる実施形態において、カテーテル160は、例えば、限定されないが、操作ワイヤとアクチュエータ、灌注ルーメンとポート、圧力センサ、接触センサ、温度センサ、付加的な電極、及び、対応する導体又はリード線などの他の従来のカテーテル構成要素を更に含む。
【0029】
コネクタ121は、例えばアブレーションサブシステム180からアブレーションバルーン130まで延在する1つ以上のケーブル132のための機械的及び電気的な接続を行なう。他の実施形態において、コネクタは、例えば、流体源(カテーテル160が灌注カテーテルを備える場合)及び接触/圧力検出回路などのカテーテルシステム100内の他の構成要素から延在するケーブルのための機械的接続、電気的接続及び/又は流体接続を行なってもよい。コネクタ121は、当該技術分野において従来のものであり、カテーテル160の近位端126に配置される。
【0030】
ハンドル122は、ユーザがカテーテル160を保持するための場所をもたらし、身体140内でシャフト124のための操作又は案内を更に行なってもよい。例えば、ハンドル122は、カテーテル160を通じてシャフト124の遠位端128まで延在することによりシャフトを操作する1つ以上の操作ワイヤを操作するための手段を含んでいてもよい。ハンドル122は、当該技術分野において従来のものであり、ハンドルの構成は異なっていてもよいことが理解される。他の実施形態において、カテーテル160の制御は、カテーテルシャフト124をロボット駆動又はロボット制御することによって、或いは磁気ベースの案内システムを使用してカテーテルシャフト124を駆動及び制御することによって、自動化されていてもよい。
【0031】
カテーテルシャフト124は、患者の身体140内で移動するように構成される細長い管状の可撓性部材である。シャフトは、アブレーションバルーン130をカテーテル160の遠位端128に支持する。また、シャフト124は、(灌注流体、低温アブレーション流体及び体液を含む)流体、薬剤、及び/又は、手術用の道具又は器具の輸送、送達及び/又は除去を可能にしてもよい。ポリウレタンなどのカテーテルのために使用される従来の材料から形成されていてもよいシャフト124は、導電体、流体及び/又は手術用の道具を収容及び/又は輸送するように構成される1つ以上のルーメンを画定する。カテーテルは、従来の導入シースを介して身体140内の血管又は他の構造体へと導入されてもよい。
【0032】
例示的な心臓アブレーション治療において、心房性不整脈を是正するために、導入シースは、抹消静脈(一般的には大腿静脈)を通って導入され、右心房内へと進められ、これは中隔アプローチと称される。その後、導入シースは、卵円窩(左心房と右心房との間の組織壁)に切開部を形成し、その中に導入シースを固定するために、卵円窩の切開部を通って延在する。その後、アブレーションカテーテル160は、導入シースのルーメンを通って左心房内へと延在してもよい。その後、アブレーションカテーテル160のカテーテルシャフト124は、肺静脈などの左心房内の所望の位置にアブレーションバルーン130を位置決めするために、左心房を通って操作又は案内されてもよい。
【0033】
アブレーションバルーン130と接触する標的の心筋組織の効果的且つ効率的なアブレーションを達成するために、標的の心筋組織と接触しないバルーンの部分を通じたエネルギー伝達を制限するやり方で、アブレーションバルーンを介したエネルギー伝達に焦点が合わされなければならない。例えば、冷凍アブレーションバルーンの用途において、バルーン内へ注入されている低温流体(極低温流体とも称される)は、標的組織と接触しているバルーンの部分だけでなく、血液プール及び非標的組織と共にヒートシンクとして作用するバルーンの他の部分も冷却し、標的組織に印加される正確なエネルギーが知られておらず、様々な非標的ヒートシンクに起因して低温流体の効率が大きく低下されるため、そのような意図しないエネルギー損失は、組織アブレーション治療の有効性を低下させる。したがって、本開示の態様は、バルーンの表面上に(又はバルーン自体の内部に)導電領域及び非導電領域を設けることによるアブレーションバルーンを通じたエネルギー伝達に焦点を合わせる。非導電部分は、標的組織がアブレーションバルーンの表面と接触する可能性が低い領域内に配置されていてもよく、望ましくないエネルギー伝達を防止するためにこれらの部分を絶縁する。導電部分は、標的組織がアブレーションバルーンの表面と接触する可能性が高い領域内に配置されていてもよく、アブレーションバルーンと導電部分に接触する組織との間でエネルギーを伝達してもよく、それにより、エネルギー使用を標的組織領域に集中させて、所与の治療に必要な全体の低温流体を減らす。
【0034】
直流エレクトロポレーションパルス及び/又は高周波を利用して組織アブレーション治療を行なう用途において、導電領域は、電波及び/又は電気パルスの流れを促進させるのに役立つことがある。そのような用途において、非導電領域は、アブレーションバルーンから発する電波及び/又は電気パルスから非標的組織を遮蔽するように作用してもよい。幾つかの特定の実施形態において、アブレーションバルーンの非導電部分内の電気的な遮蔽は、アブレーションバルーン内から発せられる電波及び/又は電気パルスを反射して戻してもよく、アブレーションバルーンの導電部分から発せられる結果として得られる電波及び/又は電気パルスの強度/強さを増大させてもよい。
【0035】
図2は、アブレーションバルーンカテーテル231がアブレーション治療を内部で行なうための肺静脈(例えば、214,216,218及び220)を特定している心筋210の一部の正断面図である。アブレーション治療は、例えば心房細動に関連付けられる症状を最小限に抑えることができる。図2に示されるように、心筋210は、左心房212L及び右心房212Rと呼ばれる2つの上側の部屋と、左心室及び右心室と呼ばれる2つの下側の部屋(部分的に見える)を含む。
【0036】
本開示の態様は、組織を通じて移動する電気信号のための導電経路を形成する肺静脈214,216,218,220における(又はこれに隣接する)組織が、肺静脈にある不要な電気インパルスの原因(例えば、不整脈病巣)を電気的に分離するために、破壊されるアブレーション治療を対象とする。不整脈病巣を破壊すること、又は、左心房212Lから不整脈病巣を電気的に分離することのいずれかによって、心房の症状の原因を低減又は排除することができる。
【0037】
図2に示されるように、アブレーションバルーンカテーテル231は、導入シース230によって左心房212L内へ導入されてもよい。導入シース230により左心房212L内へ導入された時点で、ガイドワイヤ232及びカテーテルシャフト234はアブレーションバルーン236を案内してもよい。任意で、アブレーションバルーンカテーテル231は、アブレーションバルーンの近位端及び遠位端にそれぞれマッピング電極240,238を含んでもよい。動作において、導入シース230は、その遠位端が左心房212L内に配置される。図2に示されるように、導入シース230が抹消静脈(一般に、大腿静脈)を通って導入され、右心房212Rへと進められる中隔アプローチが利用されてもよい。導入シース230は、卵円窩224内に小切開部を形成し、それにより、導入シース230の遠位端は、(中隔壁226を通って)左心房212Lに入り、それ自体を卵円窩224の壁に固定できる。
【0038】
アブレーションバルーンカテーテル231は、動脈系を通って左心房212L内へ導入されてもよい。その場合、導入シース230は、動脈(例えば、大腿動脈)内へと導入され、動脈を通って大動脈、大動脈弓へと逆行して進められ、左心室内へと至る。その後、アブレーションバルーンカテーテル231は、導入シース230のルーメン内から延在され、僧帽弁222を通って左心房212Lに入る。
【0039】
導入シース230が左心房212L内に配置されると、操作可能なアブレーションバルーンカテーテル231は、導入シース230の遠位端から肺静脈(例えば、214,216,218,220)のうちの1つに向かって進められる。図2では、標的の肺静脈は、右上の肺静脈214である。アブレーションバルーンカテーテルの遠位先端が標的の肺静脈に向かうまで、アブレーションバルーンカテーテル231のガイドワイヤ232及びカテーテルシャフト234は操作され、その後、アブレーションバルーンは、肺静脈214内へと延在される。
【0040】
アブレーションバルーン236は、アブレーションバルーンカテーテル231の遠位端付近に支持された状態では、それが導入シース230を通過して標的の肺静脈214に入ることができるように、畳まれた状態のままである。配置されると、アブレーションバルーン236は展開され、それにより、アブレーションバルーン236は係合し、標的の肺静脈214内でアブレーションバルーンカテーテル231を固定する。
【0041】
任意で示されるように、図2の実施形態は、マッピング電極238,240を含んでもよい。マッピング電極238,240は、肺静脈214の伝導電位の展開前の電気的マッピングを医師が行なうことができるようにするリング電極であってもよい。マッピング電極は、アブレーションバルーンカテーテル231に支持されているように示されているが、代替的に、別個の電気生理的カテーテルに搭載して(例えば、ループカテーテルに搭載して)支持されてもよい。様々な他の実施形態において、電極は、アブレーションバルーン236の外表面上に配置されてもよい。アブレーション治療が完了した後、医師は、マッピング電極238,240を再び利用して、肺静脈の伝導電位をマッピングし、アブレーション治療の効果を決定してもよい。
【0042】
組織をアブレーションするために、アブレーションバルーン236は、展開されると、DCエネルギー電流を肺静脈214の標的組織中へと電気的に伝導してもよい(エレクトロポレーションとも称される)。他の実施形態において、アブレーションバルーン236は、標的組織をアブレーションするために高周波エネルギーを伝達してもよい。更なる他の実施形態において、アブレーションバルーン236は、以下のエネルギー、すなわち、数ある中でも特に、冷凍アブレーション、レーザ、化学物質及び高密度焦点式超音波のうちの1つ以上を標的組織に送達してもよい。
【0043】
上記の実施による様々な実施形態において、アブレーションバルーン236はまた、アブレーションバルーンを通じたアブレーションエネルギーの流れを、絶縁、遮蔽、阻止、制限、或いはさもなければ、軽減するアブレーションバルーン236の非導電区域を含んでいてもよい。特定の実施において、非導電区域は、アブレーション治療の標的でない組織と整列し、一方、アブレーションバルーン236の導電領域は、アブレーション治療のために標的組織部分と接触するように位置決めされる。したがって、肺静脈洞をアブレーションするためのアブレーションバルーンを含む様々なアブレーションバルーンの実施が想定される。そのような実施形態において、アブレーションバルーンの遠位部は、アブレーションバルーンの導電部分と肺静脈洞との間でのアブレーションエネルギーの伝達を可能にするための導電部分から成っていてもよい。そのような実施形態において、アブレーションバルーンの近位部は、例えば血液プールヒートシンク及び/又は非標的組織によって、アブレーションエネルギーが肺静脈洞から離れるように方向付けられるのを防止するための非導電部分から成っていてもよい。本開示による更なる他のアブレーションバルーンの実施は、肺静脈口をアブレーションすることを対象とする。そのような実施形態において、アブレーションバルーンの中央外周部は、肺静脈口の標的部分に対するアブレーション治療に影響を及ぼすための導電部分から成る。そのような実施形態において、アブレーションバルーンの近位部及び遠位部は、血液プールヒートシンク及び/又は非標的組織(例えば、肺静脈洞)によってアブレーションエネルギーが肺静脈口から離れるように方向付けられるのを防止するための非導電部分を備えてもよい。
【0044】
図3は、(導入シース330から延在することによって)肺静脈314の腔内へと進むアブレーションバルーン336を含むアブレーションバルーンカテーテル331を示す。アブレーションバルーンカテーテル331が肺静脈314に入ると、アブレーションバルーン336の展開前に適切な位置を確かめるために、電極338(図では見えない),340を使用してマッピングが行なわれてもよい。
【0045】
導電部分及び非導電部分を有するアブレーションバルーン336を増補することによって、アブレーションバルーン336の内外にエネルギーをより効率的に伝達できることが分かってきた。本開示の様々な実施形態において、導電部分及び非導電部分は、拡張可能なアブレーションバルーン(例えば、金属ダストなどの材料添加剤)と一体であってもよく、アブレーションバルーンの内面及び/又は外面に結合されてもよく、アブレーションバルーン336内に付加的な/別個の層を備えていてもよく、或いは、導電性/非導電性のバルーンが外側のアブレーションバルーン内に配置される(又はその逆も同様)二重層バルーン構成の一方の層を備えていてもよい。更なる他のより特定の実施形態において、導電部分及び非導電部分のそれぞれは、他の層及び拡張可能なアブレーションバルーン自体に対して自立しているバルーンのそれ自体のセグメントを備えてもよい。そのような実施形態において、導電部分及び非導電部分は、導電部分及び非導電部分の位置を変えるために、引張ワイヤ又は他の調整機構を介して調整可能であってもよい。導電部分及び非導電部分の位置を動的に調整することにより、アブレーションバルーン336のエネルギー伝達系の焦点が、バルーンと接触する肺静脈の様々な部分に調整されてもよい。
【0046】
心房細動症状に苦しむ患者を処置するために治療が行なわれるようになっている1つの特定の用途では、(本開示による)アブレーションバルーン336は、標的の肺静脈314の内壁と係合する。適所に配置されると、アブレーションバルーン内の導電バッフル及び非導電バッフルは、カテーテルシャフト334の長さにわたって延在する引張ワイヤ及び/又は操作ワイヤを使用して、エネルギー伝達を収束させるように配置されていてもよい。第1の治療のために、導電バッフル及び非導電バッフルは、非導電部分をそれに近接して配置することによって、アブレーションバルーンの遠位部及び近位部を通じたエネルギーの伝達を最小限に抑えるように配置されてもよく、したがって、導電バッフルは、アブレーションバルーンの中央部付近に配置されてもよい。そのような構成は、肺静脈口をアブレーションするために実施されてもよい。幾つかの実施形態では、アブレーションバルーン材料が導電性である場合、導電バッフルが不要かもしれない。上記のエネルギー伝達系のうちの1つ以上を使用して、アブレーションバルーンは、非導電バッフルを通じたエネルギーの流れを遮蔽、絶縁、反射、或いはさもなければ、軽減することによって肺静脈組織の他の領域へのエネルギー伝達を最小限に抑えつつ、エネルギーの伝達を肺静脈口の組織に収束させる。治療は、肺静脈口の内壁の周囲にアブレーションの周方向ゾーンを形成する。アブレーションゾーンは、標的の肺静脈314を左心房312Lから電気的に分離する。不整脈病巣がアブレーションゾーン内に配置される限り、不整脈病巣は破壊される。不整脈病巣が左心房からアブレーションゾーンの反対側の標的の肺静脈内に配置される限り、これらの病巣によりもたらされる電気インパルスは、アブレーションゾーンによって遮断され、又は実質的に妨げられる。
【0047】
肺静脈口でのアブレーション治療が完了した後、アブレーションバルーンは、心筋310からの除去のために折り畳まれてもよく、或いは、他の肺静脈(例えば、316,318及び320)、及び/又は、標的の肺静脈314の他の部分(例えば、肺静脈洞)に対する更なるアブレーション治療を行なうために、再配置及び/又は再構成されてもよい。例えば、標的の肺静脈314の腔部に対するアブレーション治療を行なうために、導電バッフル及び非導電バッフルが再構成され、アブレーションバルーン336が再配置されてもよい。そのような用途において、アブレーションバルーンの遠位部は、標的の肺静脈の腔部と接触する状態に配置され、非導電バッフルは、ガイドワイヤを介して、アブレーションバルーンの近位部に対して再配置される。上述したエネルギー伝達系の1つ以上を使用して、アブレーションバルーンは、非導電バッフルを通じたエネルギーの流れを遮蔽、絶縁、反射、或いはさもなければ、軽減することによって、血液プール中への、及び、肺静脈組織の他の領域に対するエネルギー伝達を最小限に抑えつつ、エネルギーの伝達を肺静脈の腔部の組織に収束させる。治療は、標的の肺静脈314を左心房312Lから電気的に分離するアブレーションの周方向ゾーンを肺静脈の腔部周りに形成する。
【0048】
図4は、アブレーションバルーン436がバルーン展開前に標的の肺静脈414付近に位置している状態のアブレーションバルーンカテーテル431を示す。図4に示されるように、アブレーションバルーンカテーテル431は、標的の肺静脈414の腔部416付近の位置へと操作されている。アブレーションバルーンカテーテル431は、腔部416内に到達する前に、左心房412Lを通って標的の肺静脈414と近接する状態へとアブレーションバルーン436を操作しなければならない。本実施形態において、アブレーションバルーンカテーテル431は、標的の肺静脈414の腔部416でアブレーション治療を行なうように配置されている。そのような処置では、アブレーションバルーンが腔部416と接触する状態へと拡張されると、腔部416周りのアブレーションの周方向ゾーンをアブレーションするアブレーション治療が開始されてもよい。アブレーションの周方向ゾーンは、左心房412Lを、アブレーションの反対側の不整脈病巣によりもたらされる電気インパルスから電気的に分離する。本開示の幾つかの実施形態において、アブレーションバルーンカテーテル431を正確に位置決めすることは、アブレーション治療の効果に大きく影響を及ぼす場合があり、したがって、本開示の幾つかの実施形態は、アブレーションバルーンの展開前に(図2及び図3に示されるような)アブレーションバルーン436の近位側及び遠位側の電極を使用してマッピングすることにより、アブレーションバルーンを標的の肺静脈414内に適切に位置決めする。
【0049】
図5は、拡張されたアブレーションバルーン536が標的の肺静脈514の腔部516内に係合された状態のアブレーションバルーンカテーテル531を示す。アブレーションバルーンカテーテル531のシャフト534は、標的の肺静脈514の腔部516外の左心房512L内に延在する。アブレーションバルーン536の拡張形状は、少なくとも肺静脈514の腔部516の長さ及び円周に合わせた輪郭を成すように設計される。本開示の態様は、導電部分538及び非導電部分537をそれぞれ含むアブレーションバルーン536を対象とする。1つの実施形態において、アブレーションバルーンは、アブレーションバルーンと接触する組織(及び、幾つかの状況では、アブレーションバルーンに近接する組織)をアブレーションするために、アブレーションバルーンを充填及び冷却するための極低温流体で満たされてもよい冷凍アブレーションバルーンである。導電部分538は、アブレーションバルーン536の中央の外周の周囲に配置されていてもよく、導電部分538と接触する肺静脈514の腔部516からアブレーションバルーン536へとエネルギーを熱的に伝えることによって、導電部分538と接触する組織のアブレーションを促進してもよい。また、アブレーションバルーンは、非導電部分537をバルーンの近位端及び遠位端に含んでもよく、非導電部分537は、アブレーションバルーンのこれらの部分を絶縁して、肺静脈(例えば、肺静脈514の入口部515)及び肺静脈内の血液プールからのエネルギーの伝達を防止する。そのような実施形態は、低温流体の比熱容量が、非標的組織領域及び血液プールからのエネルギーではなく、腔部516からのエネルギーを吸収するために使用されるため、低温流体の効果を高める。したがって、アブレーションのゾーン550とも称される、同じ面積及び深さのアブレーションを達成するために、より少ない低温流体(例えば、亜酸化窒素)及びアブレーション治療時間で済む。更に、高周波又は直流エレクトロポレーションパルスなどの他のアブレーション手段を使用する用途において、非導電部分537は、導電部分538を通じたエネルギーの収束及び/又は増幅を達成するように、生成されたエネルギーを元のアブレーションバルーン536へと放射してもよい。直流エネルギーを使用する不可逆的なエレクトロポレーションアブレーションに関連して、エネルギーのパルスは、1つ以上の単相パルス、1つ以上の二相パルスなどの様々な形態で標的組織に送達されてもよい。
【0050】
アブレーションバルーン536は、図5に示されるその拡張状態で、標的の肺静脈514の内壁と係合する。前述した1つ以上のアブレーションプロセスにより、アブレーションバルーンは、腔部516において肺静脈の内壁に沿ってアブレーションの周方向ゾーン550をもたらす。アブレーションゾーンは、標的の肺静脈514を左心房512Lから電気的に分離する。不整脈病巣がアブレーションゾーン内に位置される限り、不整脈病巣は破壊される。不整脈病巣が左心房からアブレーションゾーンの反対側にある標的の肺静脈内に位置される限り、これらの病巣によりもたらされる電気インパルスがアブレーションゾーンによって遮断又は妨げられる。
【0051】
典型的なアブレーション治療において、肺静脈は、不整脈病巣を有するそれらの可能性にしたがって処置される。多くの場合、全ての肺静脈が処置される。右上の肺静脈に対する本明細書中に記載されるプロセスは、3つの他の肺静脈のそれぞれに対して同様に再現されてもよい。
【0052】
アブレーション治療が完了したら、アブレーションバルーン536は収縮されてもよく、また、アブレーションバルーンカテーテル534が導入シース330内へ引き戻されてもよい(例えば図3参照)。電気生理的カテーテル、又は、アブレーションバルーンの近位側及び遠位側の電極は、アブレーションバルーンカテーテル531の除去の前に、治療の効果を確かめるために使用されてもよい。本開示の様々な実施形態では、アブレーションバルーン536の表面上に更なる電極が、単独で、又は(図2に示されるような)電極238,240と共に配置されてもよい。更に、これらの様々な電極は、アブレーション治療前、アブレーション治療中及びアブレーション治療後に使用されてもよい。例えば、アブレーション治療前に、バルーンの最適な位置を決定し、左心房512Lからの標的の肺静脈514の電気的な分離を高めるために、電極が使用されてもよい。アブレーション治療中、アブレーション治療の長さにわたってアブレーション速度を追跡するために、電極が使用されてもよい。具体的には、電極からの検出データを使用して、肺静脈と左心房との間の十分な分離がいつ達成され、続くアブレーション治療をいつ終了するのかを決定してもよい。同様に、アブレーション治療の完了後、アブレーション治療の効果と、更なる治療の適用が必要とされ得るかどうかとを決定するために、電極が使用されてもよい。
【0053】
アブレーションバルーンは、様々な異なる用途のために開発されてきており、多くの異なる形態を成す。本開示の態様は、様々なタイプ及び機械的構造のアブレーションバルーンを利用してもよい。アブレーションバルーンは、例えば内部バルーンの使用により、自立できるか、機械的に直立され得る。1つの実施形態の例では、アブレーションバルーンカテーテル534のシャフトの長さを通じて延在するルーメンは、アブレーションバルーンに径方向の力を及ぼす流体をアブレーションバルーン内へ注入してもよく、それにより、(図5に示されるように)バルーンを直立構成へと拡張してもよい。更に、バルーン536の導電部分及び非導電部分(それぞれ538,537)は、所与の用途のために必要に応じてアブレーションバルーンの表面の全体にわたって様々なパターン、配置及び構成で配置されていてもよい。幾つかの実施形態は、バルーンの材料がアブレーションエネルギーの伝達を可能にする場合、導電部分を必要としななくてもよく、同様に、実施形態は、バルーン材料がバルーンを通じたエネルギーの伝達を絶縁する場合、非導電部分を必要としなくてもよい。導電部分及び非導電部分(それぞれ538,537)が、拡張可能なアブレーションバルーン536と一体であり、アブレーションバルーン536の内面及び/又は外面に結合され、及び/又は、拡張されたアブレーションバルーン536とシャフト534との間の隙間空間内に配置される様々な実施を、本開示の態様が対象とすることが更に理解される。
【0054】
図6は、本開示の様々な態様による、展開されたアブレーションバルーンカテーテル631と、アブレーションバルーンカテーテルの中心ルーメン641を通って延在する電気生理的ループカテーテル632とを含む電気生理的システム600の斜視側面図である。本実施形態の展開されたアブレーションバルーンカテーテル631は、アブレーションバルーン601のキャビティ内で低温流体を周方向に分配するマニホールド642までシャフトの長さにわたって低温流体を輸送する流体ルーメンを有する冷凍アブレーションバルーン601を含む。本開示による様々な実施形態において、マニホールド642(又はその中の開口部)は、アブレーションバルーン601の特定の領域に、例えば、バルーン601の遠位部、近位部又は中間部に、低温流体を収束させるように低温流体を分配するために配置されていてもよい。更なるより特定の実施形態において、マニホールド642及び/又はマニホールド内の開口部は、様々な条件が与えられる治療と肺静脈に対するアブレーションバルーン601の位置を医師が最適化できるように調整可能であってもよい。
【0055】
電気生理的システム600の態様は、肺静脈口のためのアブレーション治療を対象とするものであってもよく、この場合、アブレーションバルーン601の導電部分638は、肺静脈の入口部組織と接触し、アブレーションバルーンが低温流体で満たされていることに応じて、組織からの熱をアブレーションバルーン601へと伝える。低温流体は、それがアブレーションバルーンに入る際の急速な圧力変化に応じて、多量のエネルギーを必要とする液体から気体への相変化を受け、それにより、入口部組織をアブレーションする熱連通状態で肺静脈口からエネルギーを引き出す。
【0056】
アブレーションバルーン601によるエネルギー吸収の収束に役立つように、導電部分638の両側に隣接して、アブレーションバルーン601の非導電部分637が組織とそれに近接する血液プールとを絶縁し、肺静脈組織の意図しない/過剰なアブレーションを引き起こし得る熱伝達を防止する。また、非導電領域637は、低温流体の相変化のエネルギー吸収をアブレーションにとって望ましい組織へと収束させ、アブレーション治療の全体の効果に影響を及ぼし得る熱伝達変動を軽減させ、所与のアブレーション治療のための低温流体の使用量を減少させるのに役立つ。
【0057】
本開示の様々な実施形態において、ループカテーテル632は、標的の肺静脈の電気生理的特性を測定するために、アブレーションバルーンカテーテル631の中心ルーメン641を通通って延在されていてもよい。ループカテーテル632が中心ルーメン641から延出すると、ループカテーテルは、ループ状態へと拡張し、ループカテーテルに沿う接触電極が肺静脈の内面に接触できる。
【0058】
図7は、本開示の様々な態様による、展開されたアブレーションバルーン701と、アブレーションバルーンカテーテルの中心ルーメン741を通って延在する電気生理的ループカテーテル732を含むアブレーションバルーンカテーテル731の斜視側面図である。本実施形態の展開されたアブレーションバルーン701は、アブレーションバルーン701のキャビティ内で低温流体を周方向に分配するマニホールド742までシャフトの長さにわたって低温流体を輸送する流体ルーメンを有する冷凍アブレーションバルーンである。本開示による様々な実施形態において、マニホールド742は、アブレーションバルーン701の特定の領域に低温流体を収束させるように配置されてもよく、例えば、本実施形態において、マニホールド742は、低温流体をアブレーションバルーン701の遠位端へ向けて方向付けてもよい。
【0059】
電気生理的システム700の態様は、肺静脈洞のためのアブレーション治療を対象とするものであってもよく、アブレーションバルーン701の導電部分738は、肺静脈洞と接触して配置されていてもよく、アブレーションバルーンが低温流体で満たされていることに応じて、熱を組織からアブレーションバルーン701へと伝えてもよい。アブレーションバルーン701によるエネルギー吸収の収束に役立つように、アブレーションバルーンの近位端にある非導電部分737は、アブレーションバルーン701の遠位部と接触する血液プールを絶縁する。したがって、非導電領域737は、低温流体のアブレーションエネルギーを導電部分738と接触する標的の肺静脈組織へ向けて収束させる。より特定の実施形態において、非導電部分737は、肺静脈洞からアブレーションバルーン701へのエネルギー伝達を高める放物反射面をアブレーションバルーン701の内部に含んでいてもよい。図6に関連して論じられたように、ループカテーテル732は、標的の肺静脈の腔部付近の電気生理的特性を測定するために、アブレーションバルーンカテーテル731の中心ルーメン741を通って延在されていてもよい。
【0060】
図5図7による様々な代替実施形態において、アブレーションバルーン501,601及び701は、バルーン内のキャビティに導電流体(例えば、生理食塩水)を充填することによって展開されてもよい。そのような実施形態において、アブレーションバルーン内の電極642,742は、他のエネルギー形態の中でも特に、高周波、1つ以上の直流電気パルスを、導電領域と接触する組織をアブレーションするために、導電流体とアブレーションバルーンの導電領域538,638及び738とを通じて伝えるように給電されてもよい。上述したように、非導電領域537,637及び737は、非導電領域と接触する非標的組織へのそのようなエネルギーの伝達を遮断又は最小限に抑える。
【0061】
図8は、本開示の様々な態様による、展開されたアブレーションバルーンカテーテル831と、アブレーションバルーンカテーテル831の中心ルーメン841を通って延在する電気生理的ループカテーテル832とを含む電気生理的システム800の斜視側面図である。本開示の態様は、標的の肺静脈組織にわたって印加される直流電流を利用して組織をアブレーションするエレクトロポレーションアブレーションバルーン801を対象とする。更に、本開示の態様は、肺静脈口に向けられるアブレーション治療を更に対象とするものであってもよい。そのような実施形態において、アブレーションバルーン801の遠位部及び近位部は、電気に絶縁性の非導電部分837を備える。非導電部分837間には、アブレーションバルーン801の中央周方向区域の周囲に導電部分838が延在する。導電部分838は、アブレーションバルーンからバルーンと接触する組織への電流の流れを促進する低い電気抵抗を有する。本実施形態において、直流電流は、(患者の身体の外側の)カテーテルの遠位端で(信号生成器により)生成されて、カテーテルシャフト及びアブレーションバルーン801を通って導電部分838と接触する2つの電気リード線845A-Bに沿って伝わる。本開示の幾つかの実施形態において、アブレーションバルーン801は、電気リード線845A-Bがはんだを使用してアブレーションバルーン801に電気的に結合されるのを容易にするはんだパッドを含んでいてもよい。例えば、フレキシブル回路及び電気コネクタを含む、様々な他の電気的結合方法も容易に明らかである。
【0062】
図8の開示による幾つかの特定の実施形態において、アブレーションバルーン801は、従来のカテーテルバルーンポリマーから成っていてもよく、この場合、導電部分838はアブレーションバルーン801の外面に取り付けられ、また、外面に結合されるとともにアブレーションバルーンと共に伸縮可能な波状構造の電極を含む。電極は、ポリマーバルーンを通じて延在する電気的なビアによって電気リード線845A-Bに電気的に結合される。幾つかの特定の実施形態において、アブレーションバルーン801は、その表面全体にわたって電極が印刷されて延在する伸縮自在な電気回路であってもよい。
【0063】
図8による更なる他の実施形態において、アブレーションバルーン801を膨張させるために使用される流体は、生理食塩水溶液などの導電流体であってもよい。カテーテルシャフトの近位端で(例えば、信号生成器により)生成されるエレクトロポレーションパルスは、シャフトの電気的に絶縁性の流体ルーメン内の流体カラムを通り、アブレーションバルーン801を通り、導電部分838と接触して伝達されてもよい。幾つかの実施形態では、エレクトロポレーションパルスは直流パルスであってもよい。
【0064】
本明細書中に開示されるような様々なエレクトロポレーションに基づくアブレーションバルーンカテーテルの実施形態では、アブレーションバルーン801は、その間に孔が配置される、1つ以上の層を含んでもよい。例えば、バルーンの内層は、バルーン801を拡張するために使用される所定量の生理食塩水流体からの電流の流れを防止するために、電気的に絶縁性であってもよい。バルーンの外層は、電気的に導電性であってもよい。バルーンは、バルーンの長手方向軸の周りで周方向に延在する1つ以上の孔領域を含んでもよい。したがって、医師がアブレーションバルーン801の遠位部と接触する組織をアブレーションすることを望む場合、生理食塩水溶液は、標的組織への導電経路を形成する遠位孔内へと圧送されてもよい。エレクトロポレーションパルスは、生成され、生理食塩水で満たされた遠位孔に流体結合される流体カラムを通り、(アブレーションバルーンの導電性の外側層を介して)標的組織と接触して伝達されてもよい。他の組織部位で続くアブレーション治療を行なうために、遠位孔内の生理食塩水が排出されてもよく、アブレーションのために次の組織と接触する他の孔領域(例えば、中間孔領域)が生理食塩水溶液で満たされてもよく、そこにエレクトロポレーションパルスが送達されてもよい。
【0065】
本開示の様々な実施形態において、アブレーションバルーンは、電気生理的フープカテーテル(ループカテーテルとも称される)のシャフトに一体化させることができる。更なる他の実施形態において、アブレーションバルーンカテーテルは、電気生理的フープカテーテルがアブレーションバルーンカテーテルの長さにわたって延在できるようにする中心ルーメンを含んでいてもよい。
【0066】
本開示による実施形態は、高周波アブレーション技術を利用するアブレーションバルーンを含んでいてもよい。そのような実施形態では、高周波エミッタが、例えば、カテーテルシャフトと接触して、アブレーションバルーン内に配置されていてもよい。エミッタは、アブレーションバルーン内の流体、及び、アブレーションバルーンの導電部分を通じて、導電部分に隣接する組織と接触する高周波を伝える。幾つかの実施形態において、導電部分は、電波の伝達を可能にする単なるポリマーである。様々な実施形態では、電波による組織の選択的な放射が望ましい場合、アブレーションバルーン表面の一部が、非導電部分を通じた電波の伝達を防止し、それにより、選択的な放射及び組織のアブレーションを容易にする電波遮蔽材料であってもよく、或いは、そのような電波遮蔽材料を含んでいてもよい。
【0067】
本開示の幾つかの実施形態において、アブレーションバルーンの導電部分は、組織に対するアブレーションエネルギーの電気的な伝達を促進するために、アブレーションバルーンの導電部分の表面に沿う電極(例えば、波状電極)を含んでいてもよい。
【0068】
エレクトロポレーションを利用した本開示による様々なアブレーションバルーンの実施形態は、5キロワットの最大電力を伴う200ジュールのエネルギーを要する場合がある。エレクトロポレーションパルスがカテーテルシャフト内の流体カラムを進み上がる実施形態では、流体ルーメンの電気的な絶縁特性に基づいて要件が更に高くなる場合がある。
【0069】
本開示の様々な実施形態において、アブレーションバルーンの導電部分は、埋め込みニッケル又は他の金属ダストを有するポリマーを含んでもよい。導電部分は、少なくとも幾つかの導電材料を使用して形成されるとともに、その静止状態であっても導電性である導電ポリマーであってもよく、それにより、ポリマーは、組織をアブレーションするのに十分なエネルギーを伝導してもよい。本開示の態様は、様々な導電ポリマー材料に適している。例えば、本明細書に完全に記載されているかのように参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第6,999,821号は、本発明において有用となり得る本質的に導電性のポリマー及び導体充填ポリマーを開示する。本明細書中に開示されるように、本質的に導電性のポリマーは、とりわけ、ポリアセチレン、ポリピロール及びポリアナリンを含む。導体充填ポリマーは、埋め込み金属、カーボン又はグラファイトの粒子又は粉末を有するシリコンゴムなどの埋め込みが承認される現在利用できる材料を含んでいてもよい。埋め込みが承認されるように改変されたNuSilまたはSpecialty Silicone Productsにより製造される類の銀充填シリコンゴムは、潜在的な有用性がある。一例は、NuSil R2637として販売される銀コーティングされたニッケル充填シリコンゴムである。
【0070】
アブレーションバルーンの導電部分の基板は、シリコンである必要はなく、例えば、他の絶縁材料又は弱導電性材料(例えば、非導電性エラストマー)が、導電材料、導電合金及び/又は還元金属酸化物(例えば、金、銀、白金、イリジウム、チタン、タンタル、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、ハフニウム、アルミニウム、ケイ素、スズ、クロム、モリブデン、タングステン、鉛、マンガン、ベリリウム、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、オスミウム、レニウム、テクネチウム、ロジウム、ルテニウム、カドミウム、銅、亜鉛、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン、ビスマス、ホウ素、スカンジウム、及び、ランタニド系列及びアクチニド系列の金属のうちの1つ又以上、並びに、適切な場合には、少なくとも1つの導電剤を使用する)とともに埋め込まれてもよいと企図される。導電材料は、粉末、粒子、繊維又は他の形状の形態を成していてもよい。酸化物は、オキシ化合物の焼結粉末を備える混合物であってもよい。合金は、例えば、ホウ化チタンなどの従来のものであってもよい。
【0071】
本発明で使用されてもよい導電ポリマーの他の例としては、米国特許第6,646,540号、米国特許第6,495,069号及び米国特許第6,291,568号に記載されて開示される導電ポリマーが挙げられ、これらの特許の全ては、それらの全体が本明細書に記載されているかのように参照により組み入れられる。
【0072】
導電ポリマーは、電極の電気抵抗が電極に印加される圧力に反比例して変化し得るという点において感圧性であってもよい。しかしながら、本明細書中に開示される可撓性導電ポリマー電極が、それらの静止状態(すなわち、応力を受けていないとき)であっても導電性であり、したがって、それらの静止状態で非導電性である、例えば、米国特許第7,955,326号に開示される感圧導電複合体(「PSCC」)電極と区別されることが理解されるべきである。好ましくは、導電ポリマー材料は、細胞毒性標準規格、溶血性標準規格、全身毒性標準規格、及び、皮内注射標準規格も満たし得る。
【0073】
本発明で使用されてもよい導電ポリマーの他の例としては、本明細書に完全に記載されているかのように参照により本願に組み入れられる米国特許第8,500,731号に記載されて開示される導電ポリマーが挙げられる。カテーテルシャフトの絶縁シースは、好ましくは、例えば押出ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)チューブ(例えば、テフロン(登録商標)チューブ)などの高分子材料を含む生体適合性の電気絶縁材料から形成されてもよい。
【0074】
上記の説明及び図面に基づき、当業者であれば容易に分かるように、本明細書中で図示されて説明された例示的な実施形態及び用途に厳密に従うことなく、様々な実施形態に対して様々な修正及び変更を行なってもよい。そのような修正は、特許請求の範囲に記載される態様を含む本開示の様々な態様の真の思想及び範囲から逸脱しない。
【0075】
以上、本開示を実施できる少なくとも幾つかの方法の理解を容易にするためにある程度の特殊性を伴って幾つかの実施形態を説明してきたが、当業者は、本開示の範囲及び添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、開示された実施形態に対して多くの変更を成すことができる。上記の説明に含まれ、又は添付図面に示される全ての事柄が、限定的ではなく単なる例示として解釈されるものとすることが意図される。したがって、本明細書中の例示及び実施形態は、本開示の範囲を限定するように解釈されるべきでない。詳細又は構造の変更は、本教示から逸脱することなく行なわれてもよい。前述の説明及び以下の特許請求の範囲は、そのような修正及び変化の全てを網羅するように意図される。
【0076】
様々な装置、システム、および方法の様々な実施形態について本明細書で説明した。明細書で説明され、添付図面に示されているように、実施形態の全体的な構造、機能、製造、および使用の完全な理解を提供するために、多数の特定の詳細が示されている。しかしながら、実施形態がそのような特定の詳細なしで実施され得ることは、当業者によって理解されるであろう。他の例では、明細書で説明した実施形態を不明瞭にしないために、周知の動作、構成要素、および要素は、詳細には説明されていなくてもよい。本明細書で説明し、図示した実施形態が非限定的な例であることは、当業者には明らかであり、したがって、本明細書で開示した特定の構造的および機能的詳細が、典型的なものである場合があり、実施形態の範囲を必ずしも限定せず、その範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ規定されることは、理解され得る。
【0077】
この開示で使用される用語「含む」、「備える」及びその変形は、特に別段述べられなければ、「~を含むが、それらに限定されない」ことを意味する。この開示で使用される用語「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、特に別段述べられなければ、「1つ以上の」を意味する。
【0078】
本明細書を通して、「様々な実施形態」、「いくつかの実施形態」、「一実施形態」、「実施形態」などへの言及は、実施形態に関連して記載された特定の特徴、構造、または特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通じた所々の「様々な実施形態」、「いくつかの実施形態」、「一実施形態」、「実施形態」などの語句の表現は、必ずしもすべて同じ実施形態を指しているわけではない。さらに、具体的な特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わされる場合がある。したがって、1つの実施形態に関連して図示または説明した具体的な特徴、構造、または特性は、全体または一部において、限定されることなく、1つまたは複数の他の実施形態の特徴、構造、または特性と組み合わされる場合がある。
【0079】
プロセスステップ、方法ステップ、アルゴリズム等が連続した順序で記載される場合があるが、そのようなプロセス、方法及びアルゴリズムは、別の順序で機能するように構成されていてもよい。換言すると、記載される場合があるステップの任意のシーケンス又は順序は、必ずしもそのステップがその順序で行なわれる必要性を示すとは限らない。本明細書中に記載されるプロセス、方法及びアルゴリズムのステップは、実用的な任意の順序で行なわれてもよい。更に、幾つかのステップが同時に行なわれてもよい。
【0080】
単一のデバイス又は物品が本明細書中に記載される場合には、容易に分かるように、単一のデバイス又は物品の代わりに複数のデバイス又は物品が使用されてもよい。同様に、複数のデバイス又は物品が本明細書中に記載される場合には、容易に分かるように、複数のデバイス又は物品の代わりに単一のデバイス又は物品が使用されてもよい。1つのデバイスの機能性又は特徴は、代替的に、そのような機能性又は特徴を有するように明示的に記載されない1つ又は複数の他のデバイスによって具現化されてもよい。
【0081】
医師が患者を処置するために使用される器具の一端を操作することに関連して、用語「近位」及び「遠位」が明細書の全体にわたって使用される場合があることが分かる。用語「近位」は、医師に最も近い器具の部分を指し、用語「遠位」は、医師から最も遠くに配置される部分を指す。しかしながら、外科用器具は多くの配向及び位置で使用されてもよく、また、これらの用語は、限定的で絶対的であることを意図しない。他の全ての方向的又は空間的な言及(例えば、上側、下側、上方、下方、左、右、左方向、右方向、上端、下端、上側、下側、垂直、水平、時計回り、反時計回り)は、本開示の読み手の理解を助けるために識別の目的のためだけに使用されるにすぎず、特に本開示の位置、配向又は使用に関して限定をもたらさない。接合の言及(例えば、取り付けられ、結合され、接続され等)は、広く解釈されるべきであり、要素の接続と要素間の相対移動との間に中間部材を含んでもよい。したがって、接合の言及は、2つの要素が直接に接続されて互いに固定関係を成すことを必ずしも暗示するとは限らない。
【0082】
参照により本明細書に組み込まれると言われる任意の特許、刊行物、または他の開示資料は、全体または一部において、組み込まれた資料が、本開示に示す既存の定義、声明、または他の開示資料と矛盾しない範囲でのみ本明細書に組み込まれる。そのように、そして必要な程度まで、本明細書に明示的に示された開示は、参照により本明細書に組み込まれるいかなる矛盾する資料よりも優先される。参照により本明細書に組み込まれると言われているが、本明細書に示された既存の定義、声明、または他の開示資料と矛盾する任意の資料またはその一部は、組み込まれる資料と既存の開示資料との間に矛盾が生じない程度でのみ組み込まれることになる。
以下の項目は、本出願時の請求の範囲に記載の要素である。
(項目1)
近位端と遠位端とを備えるカテーテルシャフトと、
近位端と遠位端とを備えるアブレーションバルーンであって、前記アブレーションバルーンの前記近位端が、前記カテーテルシャフトの前記遠位端に結合される、前記アブレーションバルーンと、を備え、
前記アブレーションバルーンは、
導電部分であって、前記アブレーションバルーンと前記導電部分に接触する組織との間のエネルギー伝達を促進するように構成されて配置される、前記導電部分と、
非導電部分であって、前記アブレーションバルーンと前記非導電部分に接触する組織との間のエネルギー伝達を軽減するように構成されて配置される、前記非導電部分と、を備える、アブレーションバルーン装置。
(項目2)
前記アブレーションバルーンは、前記導電部分と接触する組織から熱を吸収する低温流体を受け入れるように構成されて配置され、
前記非導電部分は、血液プールと前記非導電部分に接触する組織とに関連付けられる熱から前記低温流体を絶縁するように更に構成されて配置される、項目1に記載の装置。
(項目3)
前記アブレーションバルーンの前記導電部分は、
肺静脈の円周部分と係合し、
前記導電部分と接触する前記肺静脈の前記円周部分に沿って組織をアブレーションするように構成されて配置される、項目1に記載の装置。
(項目4)
前記アブレーションバルーンの近位端に配置される第2の非導電部分を更に備え、
前記アブレーションバルーンの前記導電部分は、前記非導電部分と前記第2の非導電部分との間に配置され、
前記導電部分は、肺静脈口の円周に沿って組織アブレーション治療を行なうように構成されて配置される、項目1に記載の装置。
(項目5)
前記導電部分は、前記アブレーションバルーンの遠位端に配置され、
前記非導電部分は、前記アブレーションバルーンの近位端で前記導電部分に隣接して配置され、
前記導電部分は、肺静脈洞の円周に沿って組織アブレーション治療を行なうように構成されて配置される、項目1に記載の装置。
(項目6)
前記カテーテルシャフトの前記近位端から前記遠位端まで延在する流体ルーメンであって、前記アブレーションバルーンへ導電流体を送達して、動脈の内壁と接触する前記バルーンを拡張するように構成されて配置される、前記流体ルーメンと、
前記流体ルーメンの前記近位端に電気的に結合されるとともに、前記導電流体を介して1つ以上のエレクトロポレーションパルスを前記カテーテルシャフトの近位端から前記アブレーションバルーンの前記導電部分へ伝え、前記導電部分と接触する組織をアブレーションするように構成されて配置される信号生成器と、を更に備える、項目1に記載の装置。
(項目7)
前記カテーテルシャフトの近位端から前記カテーテルシャフトの長さを通って延在し、前記導電部分に電気的に結合される複数の電気リード線と、
前記複数の電気リード線の近位端に電気的に結合される信号生成器と、を更に備え、
前記信号生成器は、
前記電気リード線を介してエレクトロポレーションパルスを前記アブレーションバルーンの前記導電部分に伝え、
前記導電部分と接触する組織をアブレーションするように構成されて配置される、項目1に記載の装置。
(項目8)
前記アブレーションバルーンは、ポリマー材料から成り、
前記アブレーションバルーンの前記導電部分は、前記ポリマー材料中に金属ダストを備える、項目1に記載の装置。
(項目9)
前記カテーテルシャフトの長さに通じて前記遠位端から前記近位端まで延在する中心ルーメンを更に備え、
前記中心ルーメンは、診断カテーテルを受け入れるように構成されて配置される、項目1に記載の装置。
(項目10)
心房細動を処置するシステムであって、
細長いシャフトであって、前記細長いシャフトを通って延在するルーメンを備える、前記細長いシャフトと、
前記細長いシャフトの前記ルーメンを通って延在するように構成されるバルーン送達カテーテルと、
導電部分と非導電部分とを備えるアブレーションバルーンであって、前記バルーン送達カテーテルの遠位端に結合される、前記アブレーションバルーンと、を備え、
前記アブレーションバルーンは、
前記アブレーションバルーンの前記導電部分に沿って肺静脈の組織壁と係合し、
前記バルーンの前記導電部分により係合される前記肺静脈の前記組織壁に沿ってアブレーション治療を行なうように構成される、システム。
(項目11)
前記アブレーションバルーンの前記非導電部分は、前記非導電部分と係合される前記肺静脈の前記組織壁及び血液プールをアブレーション治療から絶縁するように構成される、項目10に記載のシステム。
(項目12)
1つ以上の直流パルスを前記アブレーションバルーンの前記導電部分に伝えるように構成される信号生成器を更に備える、項目10に記載のシステム。
(項目13)
前記アブレーションバルーンは、前記導電部分と接触する組織から熱を吸収する低温流体を受け入れるように構成されて配置され、
前記アブレーションバルーンの前記非導電部分は、血液プール及び前記非導電部分に接触する組織からの熱の吸収から前記低温流体を絶縁するように構成されて配置される、項目10に記載の装置。
(項目14)
前記アブレーションバルーンの前記導電部分は、
肺静脈と係合し、
前記導電部分と接触する肺静脈の円周に沿って組織をアブレーションするように構成されて配置される、項目10に記載の装置。
(項目15)
前記アブレーションバルーンの近位端に配置される第2の非導電部分を更に備え、
前記アブレーションバルーンの前記導電部分は、前記非導電部分と前記第2の非導電部分との間に配置され、
前記導電部は、肺静脈口の円周に沿って組織アブレーション治療を行なうように構成されて配置される、項目10に記載の装置。
(項目16)
前記導電部分は、前記アブレーションバルーンの遠位端に位置され、
前記非導電部分は、前記導電部分に対して前記アブレーションバルーンの近位端で前記導電部分に隣接して配置され、
前記導電部分は、肺静脈洞の円周に沿って組織アブレーション治療を行なうように構成されて配置される、項目10に記載の装置。
(項目17)
肺静脈隔離用のバルーンカテーテルであって、
アブレーションバルーンを肺静脈内へと展開するように構成される操作可能なバルーン送達カテーテルシャフトであって、
導電領域を備える前記アブレーションバルーンは、前記バルーン送達カテーテルシャフトの遠位端に結合され、
前記アブレーションバルーンは、
未展開構成から展開し、
前記アブレーションバルーンの前記導電部分に沿って前記肺静脈の組織壁と係合するように構成される、前記操作可能なバルーン送達カテーテルシャフトと、
前記アブレーションバルーンを用いて前記アブレーションバルーンの前記導電部分に沿って前記肺静脈の前記組織壁に対してアブレーション治療を行なうように構成される組織アブレーション手段と、を備える、バルーンカテーテル。
(項目18)
前記組織アブレーション手段は、冷凍アブレーション、エレクトロポレーション、レーザエネルギー、高周波、マイクロ波、化学反応、及び、高密度焦点式超音波のうちの1つ以上を備える、項目17に記載のバルーンカテーテル。
(項目19)
前記導電部分は、前記アブレーションバルーンの遠位端にあり、
前記アブレーションバルーンは、遠位の前記導電部分の近位側に非導電部分を更に備え、
前記導電部分は、肺静脈洞の円周と係合して、前記導電部分と接触する前記肺静脈の組織の組織アブレーション治療を行なうように構成されて配置され、
前記非導電部分は、前記非導電部分と接触する血液プール及び肺静脈組織を前記アブレーション治療から絶縁するように構成されて配置される、項目17に記載のバルーンカテーテル。
図1
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図8