(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】高性能ネオジム鉄ホウ素等方性磁性粉末の製造方法
(51)【国際特許分類】
B22F 1/145 20220101AFI20230228BHJP
B22D 11/06 20060101ALI20230228BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20230228BHJP
B22F 3/00 20210101ALI20230228BHJP
B22F 9/04 20060101ALI20230228BHJP
H01F 1/057 20060101ALI20230228BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
B22F1/145 100
B22D11/06 360A
B22D11/06 360Z
B22F1/00 Y
B22F3/00 F
B22F9/04 C
B22F9/04 E
H01F1/057 110
H01F41/02 G
(21)【出願番号】P 2021159497
(22)【出願日】2021-09-29
【審査請求日】2021-09-29
(31)【優先権主張番号】202110356690.4
(32)【優先日】2021-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521426501
【氏名又は名称】バオトウ ケルイ マイクロ マグネット ニュー マテリアルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジーロン リン
(72)【発明者】
【氏名】ルイガン ワン
(72)【発明者】
【氏名】ヂーガン ワン
(72)【発明者】
【氏名】ジィェンシン レン
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-179195(JP,A)
【文献】国際公開第2012/105399(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106486227(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110660553(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00
B22F 1/145
B22F 9/04
H01F 1/057
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配合原料を真空条件下で製錬および精製して合金インゴットを取得し、合金インゴットを粉砕して合金ブロックを取得するステップであって、前記製錬温度は1350~1450℃、前記精製条件は1335~1430℃および900~1100Pa不活性ガス雰囲気下で3~7分間精製する合金製錬ステップS1と、
ステップS1で得られた合金ブロックを溶融して合金溶液を得て、合金溶液を冷却して固化させてネオジム鉄ホウ素急冷合金シートにする合金急冷ステップ
であって、不活性ガスの充填流量を0.2~1.5m
3
/min、保持圧力を200~2000Paに制御することを特徴とする合金急冷ステップS2と、
ステップS2で得られたネオジム鉄ホウ素急冷合金シートを破砕して磁性粉末を得る合金シートの破砕ステップS3と、
ステップS3で得られた磁性粉末を、不活性ガス雰囲気中で結晶化熱処理し、冷却して、前記ネオジム鉄ホウ素等方性磁性粉末を得る結晶化熱処理ステップS4と、を含むことを特徴とするネオジム鉄ホウ素等方性磁性粉末の製造方法。
【請求項2】
配合原料を真空条件下で製錬および精製して合金インゴットを取得し、合金インゴットを粉砕して合金ブロックを取得するステップであって、前記製錬温度は1350~1450℃、前記精製条件は1335~1430℃および900~1100Pa不活性ガス雰囲気下で3~7分間精製する合金製錬ステップS1と、
ステップS1で得られた合金ブロックを溶融して合金溶液を得て、合金溶液を冷却して固化させてネオジム鉄ホウ素急冷合金シートにする合金急冷ステップであって、不活性ガスの充填流量を0.4~1.0m
3
/min、保持圧力を400~1900Paに制御することを特徴とする合金急冷ステップS2と、
ステップS2で得られたネオジム鉄ホウ素急冷合金シートを破砕して磁性粉末を得る合金シートの破砕ステップS3と、
ステップS3で得られた磁性粉末を、不活性ガス雰囲気中で結晶化熱処理し、冷却して、前記ネオジム鉄ホウ素等方性磁性粉末を得る結晶化熱処理ステップS4と、を含むことを特徴とするネオジム鉄ホウ素等方性磁性粉末の製造方法。
【請求項3】
ステップS1に記載の配合原料は、希土類金属ネオジム、電気純鉄、フェロホウ素、金属ニオブ、金属コバルトを含むことを特徴とする請求項1
又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
ステップS1に記載の合金ブロックの粒径は10~50mmであることを特徴とする請求項1
又は2に記載の製造方法。
【請求項5】
ステップS3に記載の磁性粉末の粒径は45~380μmであることを特徴とする請求項1
又は2に記載の製造方法。
【請求項6】
ステップS4に記載の結晶化熱処理は、630~700℃で9~18分間保持することであることを特徴とする請求項1
又は2に記載の製造方法。
【請求項7】
ステップS1とS4に記載の不活性ガスはアルゴンガスであることを特徴とする請求項1
又は2に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希土類永久磁性材料の技術分野、具体的には、高性能ネオジム鉄ホウ素等方性磁性粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製造工程により、ネオジム鉄ホウ素希土類磁性材料は基本的に2種類に分類できる。1つは焼結ネオジム鉄ホウ素で、もう1つは等方性ネオジム鉄ホウ素である。等方性ネオジム鉄ホウ素磁石の基本原料はネオジム鉄ホウ素急冷磁性粉末と呼ばれ、急冷磁性粉末の大規模生産と応用は1980年代後半に始まった。ネオジム鉄ホウ素急冷磁性粉末の基本原料は、希土類ネオジム金属、ホウ素、金属鉄である。急冷磁性粉末の製造プロセスは非常に複雑であり、主に合金製錬、合金急冷、磁性粉末破砕、および磁性粉末結晶化のステップが含まれる。
【0003】
中国のこの分野での開発と研究は20年以上の歴史があるが、上記の理由から、主要な技術に最終的な突破口はない。特に溶融合金の急速凝固速度をどのように制御するかという点では、進展は遅い。したがって、小規模で生産できる国内の少数のメーカーを除いて、高性能磁性粉末を生産する能力と規模はまだ形成されていない。
【0004】
出願人は、さまざまな高性能急冷ネオジム鉄ホウ素磁性粉末の製造プロセスの研究と開発を行ってきた。大量の実験的研究を通じて、急冷ネオジム鉄ホウ素磁性粉末溶融合金は急冷凝固の過程で、強力な真空ユニットを使用して急冷炉を高真空状態に保っても、得られた磁性粉末の酸素含有量は依然として高い。したがって、磁性粉末の磁気特性は高くない。同時に、高真空条件下では、真空炉の壁やるつぼなどの材料が高温で大量の酸素と窒素を継続的に放出し、これらの不純物ガスが排出される前に、ノズルとるつぼ内の高温ネオジム鉄ホウ素との酸化反応の可能性が高く、それによって磁性粉末の酸素含有量が増加し、ネオジム鉄ホウ素格子構造が破壊され、磁性粉末の磁気特性が低下する。したがって、磁性粉末の酸素含有量をどのように減らすかは、高性能磁性粉末を製造するための重要な方法の1つである。
【0005】
例えば、特許文献1は、等方性ネオジム鉄ホウ素磁石の成形方法を開示している。この方法では、合金原料を製錬して予め合金鋳塊にし、予め合金鋳塊をアモルファス化処理して急冷合金を得て、前記急冷合金をボールミル粉砕して粉末を得て、前記粉末をバインダーと混合してスラリーを形成し、前記スラリーで磁石を形成するステップ、および前記粉末の表面を表面処理剤で処理するステップにより、等方性ネオジム鉄ホウ素の酸素含有量を減らすことができる。
【0006】
特許文献2は、ネオジム鉄ホウ素磁石と、ネオジム鉄ホウ素磁石の粗い結晶層の粒径と粒径分布を調整する方法を開示している。この方法では、酸性溶液を使用してネオジム鉄ホウ素急冷磁性粉末を酸洗い、洗浄および乾燥して、ネオジム鉄ホウ素急冷磁性粉末の表面の酸素含有量を少なくとも200ppm削減する。該方法で製造した急冷磁性粉末は、等方性ネオジム鉄ホウ素磁石及び異方性ネオジム鉄ホウ素磁石の保磁力を向上させることができる。
【0007】
上記の従来技術はすべて試薬を用いて急冷磁性粉末の表面処理を行っており、ある程度酸素含有量を減らすことはできるが効果は良くないと同時に、既存の製造工程を改善する必要があり、運用コストが高いなどの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】中国特許第103862052号明細書
【文献】中国特許第111755237号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の技術的課題を解決するために、本発明は、高性能ネオジム鉄ホウ素等方性磁性粉末の製造方法を提供する。該製造方法は、急冷炉内の不活性ガスの圧力値や流量などのパラメータを制御することにより、酸素含有量を効果的に低減することができ、同類の磁性粉末と比較して、製造された急冷磁性粉末の性能は10%以上改善されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の技術的解決手段を採用する。
【0011】
高性能ネオジム鉄ホウ素等方性磁性粉末の製造方法であって、
配合原料を真空条件下で製錬および精製して合金インゴットを取得し、合金インゴットを粉砕して合金ブロックを取得するステップであって、前記製錬温度は1350~1450℃、前記精製条件は1335~1430℃および900~1100Pa不活性ガス雰囲気下で3~7分間精製する合金製錬ステップS1と、
ステップS1で得られた合金ブロックを溶融して合金溶液を得て、合金溶液を冷却して固化させてネオジム鉄ホウ素急冷合金シートにする合金急冷ステップS2と、
ステップS2で得られたネオジム鉄ホウ素急冷合金シートを破砕して磁性粉末を得る合金シートの破砕ステップS3と、
ステップS3で得られた磁性粉末を、不活性ガス雰囲気中で結晶化熱処理し、冷却して、前記ネオジム鉄ホウ素等方性磁性粉末を得る結晶化熱処理ステップS4と、を含む。
【0012】
好ましくは、ステップS1に記載の製錬温度は1395℃、精製条件は、1380℃および1000Paアルゴン雰囲気で5分間精製することである。
【0013】
好ましくは、ステップS1に記載の合金ブロックの粒径は10~50mm、より好ましくは15~45mmである。
【0014】
好ましくは、ステップS2に記載の合金を急冷するための条件は、不活性ガスの充填流量を0.2~1.5m3/min、保持圧力を200~2000Paに制御することである。
【0015】
より好ましくは、ステップS2に記載の合金を急冷するための条件は、不活性ガスの充填流量を0.4~1.0m3/min、保持圧力を400~1900Paに制御することである。
【0016】
好ましくは、ステップS3に記載の磁性粉末の粒径は45~380m、より好ましくは58~250mである。
【0017】
好ましくは、ステップS4に記載の熱処理は、630~700℃で9~18分間保持することであり、より好ましくは650~680℃で10~15分間保持することである。
【0018】
好ましくは、ステップS1とS4に記載の不活性ガスはアルゴンガスである。
【0019】
本発明はさらに、上記の製造方法によって製造された高性能ネオジム鉄ホウ素等方性磁性粉末を提供する。
【0020】
本発明はさらに、上記の製造方法によって製造されたネオジム鉄ホウ素等方性磁性粉末を使用することによって製造されるネオジム鉄ホウ素磁石を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。
(1)本発明は、合金製錬、精製、および急冷炉内の不活性ガスの圧力値および流量などのパラメータを改善することにより、磁性粉末の酸素含有量を効果的に低減し、急冷磁性粉末の磁気性能を改善することができる。
(2)本発明は、既存のプロセス装置を変更する必要がなく、同時に、追加の有機試薬を使用する必要がなく、運用コストが低く、より環境に優しく、大規模な普及および応用に適している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の実施例の説明は本発明の方法及びそのコアアイデアを理解するように寄与するだけである。当業者にとって、本発明の原理から逸脱することなく、本発明にいくつかの改良および修正を加えることができ、これらの改良および修正もまた、本発明の特許請求の範囲の保護範囲に含まれる。開示された実施例の以下の説明は、当業者が本発明を実施または使用することを可能にする。これらの実施例に対する様々な修正は当業者には明らかであり、本明細書で定義される一般原理は、本発明の精神または範囲から逸脱することなく、他の実施例で実施することができる。したがって、本発明は、本明細書に示される実施例に限定されず、本明細書に開示される原理および新規の特徴と一致するより広い範囲に応用することができる。本発明に記載されているものと類似または同等の任意の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、好ましい方法および材料をここに列挙する。
【0023】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0024】
本発明の実施例で使用される配合原料は、重量パーセントで希土類金属ネオジム26.2%、フェロホウ素4.7%、金属ニオブ0.2%、金属コバルト2.0%、残りの電気純鉄を含み、具体的には、前記希土類金属ネオジムの純度は99.9%で、酸素含有量は400ppm未満、窒素含有量は60ppm未満である。前記電気純鉄の炭素含有量は400ppm未満、シリコン含有量は1500ppm未満、前記フェロホウ素のホウ素含有量は20.2%、前記金属ニオブの純度は99.5%、前記金属コバルトの純度は99.9%であり、酸素含有量は500ppm未満、窒素含有量は70ppm未満である。
【0025】
(基本的な実施例:高性能ネオジム鉄ホウ素等方性磁性粉末及びその製造方法)
中間周波数の真空誘導炉に配合原料を加えて製錬および精製し、合金インゴットのように注入し、合金インゴットを粉砕して、粒径10~50mmの合金ブロックを取得するステップであって、前記製錬温度は1350~1450℃であり、前記精製条件は、1335~1430℃および900~1100Paの不活性ガス雰囲気で3~7分間精製する合金製錬ステップS1と、
ステップS1で得られた合金ブロックを真空誘導溶解急冷炉に加えて溶融して合金溶液を得て、合金溶液を冷却して固化させてネオジム鉄ホウ素急冷合金シートにするステップであって、前記合金を急冷するための条件は、真空ボールバルブを通してアルゴンガスを充填し、アルゴンガス充填流量を0.2~1.5m3/minに維持し、真空バタフライバルブを調整し、空気圧を200~2000Paに維持する合金急冷ステップS2と、
ステップS2で得られたネオジム鉄ホウ素急冷合金シートを破砕して粒径45~380μmの磁性粉末を得る合金シートの破砕ステップS3と、
ステップS3で得られた磁性粉末を、アルゴンガス雰囲気中で結晶化熱処理し、冷却して、前記ネオジム鉄ホウ素等方性磁性粉末を得るステップであって、前記結晶化熱処理の条件は、630~700℃で9~18分間保持する結晶化熱処理ステップS4と、を含む高性能ネオジム鉄ホウ素等方性磁性粉末の製造方法。
【0026】
(実施例1~5:高性能ネオジム鉄ホウ素等方性磁性粉末及びその製造方法)
前記高性能ネオジム鉄ホウ素等方性磁性粉末の製造方法におけるプロセスパラメータを表1に示す。
【0027】
【0028】
(比較例1:高性能ネオジム鉄ホウ素等方性磁性粉末及びその製造方法)
この比較例と実施例5との区別は、ステップS2における合金急冷の条件が次のとおりであるということである:真空誘導溶融急冷炉の真空度は2×10-2Paであり、アルゴンガスは充填されていなかった。
【0029】
(比較例2:高性能ネオジム鉄ホウ素等方性磁性粉末及びその製造方法)
この比較例と実施例5との区別は、ステップS2における合金急冷の条件が次のとおりであるということである:アルゴンガスが1330Paになるまで真空ボールバルブを介してアルゴンガスを充填し、排気真空バタフライバルブを閉じた。
【0030】
(比較例3:高性能ネオジム鉄ホウ素等方性磁性粉末及びその製造方法)
この比較例と実施例5との区別は、ステップS2における合金急冷の条件が次のとおりであるということである:アルゴンガスが3000Paになるまで真空ボールバルブを介してアルゴンガスを充填し、排気真空バタフライバルブを閉じた。
【0031】
(比較例4:高性能ネオジム鉄ホウ素等方性磁性粉末及びその製造方法)
高性能ネオジム鉄ホウ素等方性磁性粉末の製造方法であって、
中間周波数の真空誘導炉に配合原料を加えて製錬および精製し、合金インゴットのように注入し、合金インゴットを粉砕して、粒径40mmの合金ブロックを取得するステップであって、前記製錬温度は1500℃であり、前記精製条件は、1450℃および200Paの不活性ガス雰囲気で25分間精製する合金製錬ステップS1と、
ステップS1で得られた合金ブロックを真空誘導溶解急冷炉に加えて溶融して合金溶液を得て、合金溶液を冷却して固化させてネオジム鉄ホウ素急冷合金シートにするステップであって、前記合金を急冷するための条件は、真空ボールバルブを通してアルゴンガスを充填し、アルゴンガス充填流量を3m3/minに維持し、真空バタフライバルブを調整し、空気圧を2500Paに維持する合金急冷ステップS2と、
ステップS2で得られたネオジム鉄ホウ素急冷合金シートを破砕して粒径200μmの磁性粉末を得る合金シートの破砕ステップS3と、
ステップS3で得られた磁性粉末を、アルゴンガス雰囲気中で結晶化熱処理し、冷却して、前記ネオジム鉄ホウ素等方性磁性粉末を得るステップであって、前記結晶化熱処理の条件は、720℃で10分間保持する結晶化熱処理ステップS4と、を含む。
【0032】
(比較例5:高性能ネオジム鉄ホウ素等方性磁性粉末及びその製造方法)
高性能ネオジム鉄ホウ素等方性磁性粉末の製造方法であって、
中間周波数の真空誘導炉に配合原料を加えて製錬および精製し、合金インゴットのように注入し、合金インゴットを粉砕して、粒径40mmの合金ブロックを取得するステップであって、前記製錬温度は1300℃であり、前記精製条件は、1285℃および1500Paの不活性ガス雰囲気で10分間精製する合金製錬ステップS1と、
ステップS1で得られた合金ブロックを真空誘導溶解急冷炉に加えて溶融して合金溶液を得て、合金溶液を冷却して固化させてネオジム鉄ホウ素急冷合金シートにするステップであって、前記合金を急冷するための条件は、真空ボールバルブを通してアルゴンガスを充填し、アルゴンガス充填流量を0.1m3/minに維持し、真空バタフライバルブを調整し、空気圧を80Paに維持する合金急冷ステップS2と、
ステップS2で得られたネオジム鉄ホウ素急冷合金シートを破砕して粒径200μmの磁性粉末を得た合金シートの破砕ステップS3と、
ステップS3で得られた磁性粉末を、アルゴンガス雰囲気中で結晶化熱処理し、冷却して、前記ネオジム鉄ホウ素等方性磁性粉末を得るステップであって、前記結晶化熱処理の条件は、600℃で20分間保持する結晶化熱処理ステップS4と、を含む。
【0033】
実施例1~5および比較例1~5で製造したネオジム鉄ホウ素等方性磁性粉末の酸素含有量分析および磁気分析(VSM測定)を実施し、その結果を表2に示す。
【0034】
【0035】
出願人は、高真空雰囲気の条件下で、様々な理由により酸素分子が急冷炉に現れると、その平均自由行程が非常に長くなることを発見した。例えば、1.33×10-2Paでは、理想的な条件下での酸素分子の平均自由行程は0.52メートルである。言い換えれば、平均速度450m/sの酸素分子として、真空炉に現れると、真空ユニットによってポンプで排出される前、ノズルの下のネオジム鉄ホウ素ストリームに到達するか、またはるつぼの液面に到達し、ネオジム鉄ホウ素中のネオジム原子と反応する十分な機会がある。これが、高真空手段を使用しても磁性粉末の酸素含有量を減らすことができない理由である。
【0036】
同時に、出願人は、少量のアルゴンガスを急冷炉に充填して保持すると、圧力が133Paに達すると、酸素分子の平均自由行程が0.052mmに急速に低下し、急冷炉内に到達するアルゴンガス圧力が2000Paに達した後、同じ温度での酸素原子の平均自由行程は2.0μm以下に低下したことを発見した。アルゴンガスなどの不活性ガスは、ネオジム鉄ホウ素液体の周囲に完全な保護層を形成する。この時、ガス分子間の衝突頻度は毎秒7000万回に達した。したがって、急冷炉内に酸素原子が出現した場合、ほとんどの酸素原子は、ネオジム鉄ホウ素液体の表面に到達する前に、真空ポンプによって急冷炉から排出される。真空ポンプは、アルゴンガスを連続的に注入しながら、汚染されたアルゴンガスを除去し、酸素や窒素などの有害分子を取り除く。これにより、急冷炉内の酸素や窒素などの有害分子の量を効果的に減らすことができる。
【0037】
一連の試験と研究の結果、急冷炉内にアルゴンガスを連続的に充填し、炉内のガスを真空ポンプで連続的に抽出すると、連続的な流れと交換が維持され、圧力が200Pa以上であると維持される場合、急冷磁性粉末の酸素含有量が大幅に減少する。アルゴンガス圧力が1330Paの場合、磁性粉末の酸素含有量は最低になることが示される。同時に、炉本体の底部にアルゴンガスを充填し、炉本体の頂部にガスを抽出すると、有害なガスが除去され、効果が向上することが実験により証明されている。ただし、炉内の圧力が高すぎてはいけない。高すぎると、急冷ロールの高速回転によるガスの渦によって酸素含有量が減少しなくなり、ガスの渦によって急冷プロセスがより複雑で、磁気特性に影響を与える。
【0038】
要約すると、本発明は、合金の製錬、精製、および急冷炉における不活性ガスの圧力値および流量等のパラメータを改善することによって、磁性粉末の酸素含有量を効果的に低減し、急冷磁性粉末の磁気特性を改善することができる。
【0039】
同時に、本発明は、既存のプロセス装置を変更する必要がなく、追加の有機試薬を使用する必要がなく、運用コストが低く、より環境に優しく、大規模な普及および応用に適している。
【0040】
上記は、具体的な実施例を参照した本発明のさらなる説明であるが、これらの実施例は単なる例示であり、本発明の範囲に対するいかなる制限も構成しない。当業者は、本発明の技術的解決手段の詳細および形態は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく修正または置換できるが、これらの修正および置換は、本発明の保護範囲に含まれることを理解すべきである。