(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】ポリウレタンウレア水分散体及び艶消し塗料
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20230228BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20230228BHJP
C08G 18/44 20060101ALI20230228BHJP
C08G 18/65 20060101ALI20230228BHJP
C09D 175/00 20060101ALI20230228BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
C08G18/00 C
C08G18/32 025
C08G18/32 003
C08G18/44
C08G18/65 005
C09D175/00
C09D5/02
(21)【出願番号】P 2021189791
(22)【出願日】2021-11-24
(62)【分割の表示】P 2017127733の分割
【原出願日】2017-06-29
【審査請求日】2021-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【氏名又は名称】田口 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】谷川 昌志
(72)【発明者】
【氏名】中山 徹
(72)【発明者】
【氏名】伊能 諒平
(72)【発明者】
【氏名】吉田 磨代
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-243163(JP,A)
【文献】特開平05-025239(JP,A)
【文献】特開2001-226444(JP,A)
【文献】特開2015-010115(JP,A)
【文献】特開平06-248046(JP,A)
【文献】国際公開第2011/132581(WO,A1)
【文献】特開平06-166735(JP,A)
【文献】特開2007-092195(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103936959(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105693983(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106318185(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00- 18/87
C08G 71/00- 71/04
C09D 1/00- 10/00
C09D101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネートポリオール(A)と、分子内に1個以上の活性水素を有し、かつ親水性基を有する化合物(B)と、2価アルコール(C)と、ポリイソシアネート(D)とを反応させて、NCO基含有ウレタンプレポリマーを得る工程と、
前記NCO基含有ウレタンプレポリマーと、2個の1級アミノ基と1個以上の2級アミノ基を有するポリアミン(E)とを反応させて、固形分の酸価が1~15mgKOH/gのポリウレタンウレア水分散体を得る工程と、
前記ポリウレタンウレア水分散体を含有する艶消し塗料を乾燥後膜厚が3~25μmになるように基材に塗布した後、乾燥する工程とを含む、艶消し塗膜の製造方法
であって、
前記2価アルコール(C)の数平均分子量が500未満であり、
前記ポリカーボネートポリオール(A)に対する前記2価アルコール(C)のモル比(C/A)が0.4~2である艶消し塗膜の製造方法。
【請求項2】
前記艶消し塗料は、艶消し剤を含まないか、又は、前記ポリウレタンウレア水分散体の固形分100質量部に対して艶消し剤を50質量部以下の量で含む、請求項1に記載の艶消し塗膜の製造方法。
【請求項3】
前記ポリカーボネートポリオール(A)に対する前記化合物(B)のモル比(B/A)を0.05~0.6とし、かつ、
前記ポリカーボネートポリオール(A)に対する前記2価アルコール(C)のモル比(C/A)を
0.7~1.2とする、
請求項1又は2に記載の艶消し塗膜の製造方法。
【請求項4】
前記2価アルコール(C)が、1,4-ブタンジオール又は1,3―ブタンジオールである請求項1~3のいずれか1項に記載の艶消し塗膜の製造方法。
【請求項5】
前記ポリイソシアネート(D)が、ヘキサメチレンジイソシアネートである請求項1~4のいずれか1項に記載の艶消し塗膜の製造方法。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の方法により製膜された塗膜。
【請求項7】
表面に請求項
6に記載の塗膜が形成された、プラスチック成型品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンウレア水分散体およびそれを含有する艶消し塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、美観性向上や保護を目的として、建築外装、建築内装、車両内装などに対して、
塗料により塗装が施されており、特に、光沢や艶を抑え、落ち着いた風合いの外観を醸し
出す場合には、艶消し塗料が多用されている。近年、環境問題や安全性の見地から、有機
溶剤の使用を極力抑えた水性塗料への転換が図られおり、水性の艶消し塗料に対する要望
が高まっている。
【0003】
艶消し塗料には、通常、艶消し剤として、疎水性シリカ、樹脂ビーズ等が使用されてい
るが、そのような艶消し塗料は、艶消し剤が塗膜上にブリードし、また、摩擦によって艶
消し剤や塗膜が剥がれ落ちることがある。その結果、耐候性、耐汚染性、艶消し性能など
が低下する問題がある。この問題を解決するため、艶消し剤を配合しなくても塗膜に艶消
し性を付与することが可能な水性塗料が開発されている。例えば、特許文献1には、平均
粒子径の異なるウレタン架橋粒子を併用することで艶消し性を付与した水系の艶消し塗料
用樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される艶消し塗料用樹脂組成物は、界面活性剤を用い
る必要から耐候性や耐熱性の低下が予想される。さらに、ハードセグメントが十分に導入
されておらず、また、架橋度が高い架橋粒子を用いていることから、粒子が塗膜から剥が
れ落ちて耐スクラッチ性が低下するといった問題も生じ得る。加えて、高い艶消し性を得
るためには、ウレタン粒子のみでは不十分であり、別途艶消し剤を添加する必要がある。
さらに、艶消し塗料には、良好な保存安定性、ソフトフィール性、塗装外観などが必要
とされるが、従来の艶消し塗料は、これらが全て優れたものにならないこともある。
【0006】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、艶消し性、耐熱
性、耐スクラッチ性、保存安定性、塗装外観、及びソフトフィール性を良好にすることが
可能なポリウレタンウレア水分散体及び艶消し剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、ポリウレタンウレア水分散体を特定の化合物により構
成することで、上記課題を解決できることを見出し、以下の本発明を完成させた。すなわ
ち、本発明は、以下の[1]~[11]を提供する。
[1]高分子ポリオール(A)、分子内に1個以上の活性水素を有しかつ親水性基を有す
る化合物(B)、2価アルコール(C)、ポリイソシアネート(D)、及び、2個の1級
アミノ基と1個以上の2級アミノ基を有するポリアミン(E)の反応生成物であるポリウ
レタンウレア水分散体。
[2]高分子ポリオール(A)、化合物(B)、及び2価アルコール(C)からなるポリ
オール成分と、ポリイソシアネート(D)との反応生成物からなるNCO基含有ウレタン
プレポリマーに、さらにポリアミン(E)を反応させた反応生成物である上記[1]に記
載のポリウレタンウレア水分散体。
[3]前記NCO基含有ウレタンプレポリマーが、ポリオール成分の活性水素に対する、
ポリイソシアネート(D)のNCO基の比率(NCO/活性水素)を1.1~5で、ポリ
オール成分とポリイソシアネート(D)とを反応させて得た反応生成物であるとともに、
前記NCO基含有ウレタンプレポリマーのNCO基に対する、ポリアミン(E)の1級
アミノ基と2級アミノ基の合計の比率(NH/NCO)を0.3~2.0で、NCO基含
有ウレタンプレポリマーにポリアミン(E)を反応させる、上記[2]に記載のポリウレ
タンウレア水分散体。
[4]高分子ポリオール(A)に対する化合物(B)のモル比(B/A)が0.05~0
.9であるとともに、高分子ポリオール(A)に対する2価アルコール(C)のモル比(
C/A)が0.4~2である上記[1]~[3]のいずれか1項に記載のポリウレタンウ
レア水分散体。
[5]高分子ポリオール(A)に対する2価アルコール(C)のモル比(C/A)が0.
6~1.5である上記[1]~[4]のいずれか1項に記載のポリウレタンウレア水分散
体。
[6]平均粒子径が0.03~15μmである上記[1]~[5]のいずれか1項に記載
のポリウレタンウレア水分散体。
[7]固形分の酸価が1~15mgKOH/gである上記[1]~[6]のいずれか1項
に記載のポリウレタンウレア水分散体。
[8]2価アルコール(C)の数平均分子量が、500未満である上記[1]~[7]の
いずれか1項に記載のポリウレタンウレア水分散体。
[9]ポリアミン(E)がジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレ
ンテトラミン、テトラエチレンペンタミン及び2-アミノエチル-3-アミノプロピルア
ミンからなる群から選ばれる少なくとも1つである上記[1]~[8]のいずれか1項に
記載のポリウレタンウレア水分散体。
[10]高分子ポリオール(A)がポリカーボネートポリオールである上記[1]~[9
]のいずれか1項に記載のポリウレタンウレア水分散体。
[11]上記[1]~[10]のいずれか1項に記載のポリウレタンウレア水分散体を含
有する艶消し塗料。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、艶消し性、耐熱性、耐スクラッチ性、保存安定性、塗装外観、及びソ
フトフィール性を良好にすることが可能なポリウレタンウレア水分散体及び艶消し塗料を
提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[ポリウレタンウレア水分散体]
本発明のポリウレタンウレア水分散体は、高分子ポリオール(A)、分子内に1個以上
の活性水素を有しかつ親水性基を有する化合物(B)(以下、単に「化合物(B)」とい
うことがある)、2価アルコール(C)、ポリイソシアネート(D)、及び2個の1級ア
ミノ基と1個以上の2級アミノ基を有するポリアミン(E)の反応生成物である。
本発明では、高分子ポリオール(A)に加えて、2価アルコール(C)を使用すること
で、ソフトセグメントとハードセグメントがポリウレタンウレア中に存在することになる
。また、2価アルコール(C)とともに上記ポリアミン(E)を使用することで適度にポ
リウレタンウレアが架橋されることになり、ポリウレタンウレア中に架橋部分と、非架橋
部分が適度に混在することになる。そして、塗膜においては、架橋部分が艶消し剤(粒子
)としての挙動を示し、非架橋部分がバインダーとしての挙動を示すと推定される。さら
に、化合物(B)を使用することでポリウレタンウレアに水分散性を付与することが可能
になる。以上により、ポリウレタンウレア水分散体は、界面活性剤を使用しなくても保存
安定性が良好となるとともに、艶消し剤を使用しなくても高い艶消し性を有することが可
能になる。さらに、耐熱性、塗装外観、ソフトフィール性、耐スクラッチ性なども良好に
することが可能になる。
【0010】
以下、本発明に使用する各成分についてより詳細に説明する。
(高分子ポリオール(A))
高分子ポリオール(A)の数平均分子量は、500以上であればよいが、好ましくは5
00~4,000、より好ましくは1000~3000である。本発明では、比較的分子
量が高い高分子ポリオール(A)を後述する2価アルコール(C)とともに使用すること
で、ポリウレタンウレアにソフトセグメント及びハードセグメントの両方を適切に形成し
やすくなり、ポリウレタンウレア水分散体の各種性能を良好にしやすくなる。
高分子ポリオール(A)は、一分子中に2個以上の水酸基を有するポリオールであれば
よいが、水酸基を2つ有するジオールであることが好ましい。
なお、高分子ポリオール(A)の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラ
フィー(GPC)法により測定された標準ポリスチレン換算の数平均分子量を意味する。
具体的には、THFを移動相としたGPC分析(装置:東ソー株式会社製「GPC-80
20」;カラム:Super AW2500+AW3000+AW4000+AW500
0;以下の実施例も同様)測定により行うものである。
【0011】
高分子ポリオール(A)としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール
、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリメタクリレートポリオ
ールなど通常のポリウレタンの製造に使用する原料が使用できる。
【0012】
高分子ポリオール(A)に使用するポリエーテルポリオールとして、例えば、エチレン
オキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイド、
テトラヒドロフランなどの複素環式エーテルから選択される1種又は2種以上を重合また
は共重合して得られるものが例示される。共重合体は、ブロック又はランダム共重合体の
いずれでもよい。より具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール
、ブロックまたはランダムのポリエチレングリコール-ポリテトラメチレングリコール、
ポリテトラメチレンエーテルグリコール及びポリヘキサメチレングリコールなどが挙げら
れる。
【0013】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グル
タル酸およびアゼライン酸などの脂肪族系ジカルボン酸類、イソフタル酸およびテレフタ
ル酸などの芳香族系ジカルボン酸から選択される1種又は2種以上と、エチレングリコー
ル、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-ブチレン
グリコール、1,4-ブチレングリコール、1,6-ヘキサメチレングリコール、ネオペ
ンチルグリコールおよび1,4-ビスヒドロキシメチルシクロヘキサンなどの低分子量グ
リコール類とを縮重合したものが例示される。具体的なポリエステルポリオールとしては
、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチ
レンアジペートジオール、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリエチレン/ブチレ
ンアジペートジオール、ポリネオペンチル/ヘキシルアジペートジオール、ポリ-3-メ
チルペンタンアジペートジオールおよびポリブチレンイソフタレートジオールなどが挙げ
られる。
また、ポリエステルポリオールとしては、ポリラクトンポリオールも使用できる。ポリ
ラクトンポリオールとしては、例えば、ポリカプロラクトンジオール及びポリ-3-メチ
ルバレロラクトンジオールなどが挙げられる。
【0014】
ポリカーボネートジオールとしては、例えば、ポリヘキサメチレンカーボネートジオー
ル、及びポリテトラメチレンカーボネートジオールなどが挙げられる。
【0015】
ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、ポリブタジエングリコールおよびポリイ
ソプレングリコール、または、その水素化物などが挙げられる。
ポリメタクリレートジオールとしては、例えば、α ,ω-ポリメチルメタクリレート
ジオール及びα,ω-ポリブチルメタクリレートジオールなどが挙げられる。
上記した中では、ポリカーボネートポリオールが好ましい。ポリカーボネートポリオー
ルを使用することで、ポリウレタンウレアの塗膜の耐溶剤性や耐熱性が良好になる。
高分子ポリオール(A)は、1種単独で使用してもよいが、2種類以上を併用してもよ
い。
【0016】
(化合物(B))
本発明で使用される分子内に1個以上の活性水素を有しかつ親水性基を有する化合物(
B)としては、ポリウレタン水分散体の水分散性を付与する成分として使用される公知の
化合物を使用できる。
化合物(B)において、活性水素とは、ポリイソシアネート(D)のイソシアネート基
と反応する水素原子であり、水酸基、メルカプト基、アミノ基などの水素原子が挙げられ
、これらの中では水酸基の水素原子が好ましい。また、親水性基は、水分散性を付与する
ための官能基であり、アニオン性、カチオン性のいずれでもよいが、アニオン性であるこ
とが好ましい。アニオン性の親水性基としては、カルボキシル基、スルホ基、燐酸基など
が挙げられ、これらの中ではカルボキシル基が好ましい。
【0017】
親水性基がアニオン性である化合物(B)としては、スルホン酸系、カルボン酸系、燐
酸系などの親水性基を有するものを用いることができ、例えばジメチロールプロピオン酸
、ジメチロールブタン酸、乳酸、グリシン等のカルボン酸化合物、タウリン、スルホイソ
フタル酸系ポリエステルジオール等のスルホン酸化合物を挙げることができる。
これらの中では、2価アルコールのカルボン酸化合物、特にジメチロールプロピオン酸
、ジメチロールブタン酸などのジメチロールアルカン酸を用いることが好ましい。
【0018】
親水性基は、中和剤により中和させ塩とすることで、ポリウレタンウレアを水に微粒子
状で分散させることが可能になる。アニオン性の親水性基に対する中和剤としては、有機
アミン、例えばエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピル
アミン、トリブチルアミンなどのアルキルアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジ
エタノールアミン、N-フェニルジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチル
エタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、2-アミノ-2-エチル-1-プロパノ
ールなどのアルカノールアミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムな
どのアルカリ金属の水酸化物などを挙げることができる。これらの中では、トリエチルア
ミンなどの3級アルキルアミン、水酸化ナトリウム、ジメチルアミノエタノールなどの3
級アルカノールアミンが好ましい。
【0019】
(2価アルコール(C))
2価アルコール(C)は、低分子量の2価アルコールであり、具体的には、数平均分子
量が500未満の2価アルコールである。2価アルコール(C)の数平均分子量を500
未満とすることで、ポリウレタンウレアにハードセグメントを導入しやすくなって耐熱性
が良好となり、高温環境下でグロスが低下するなどの不具合が生じにくくなる。また、2
価アルコール(C)を使用すると、ポリウレタンウレアにおいて、2価アルコール部分が
架橋部分とはならず非架橋部分となることで、架橋及び非架橋部分が適度に混在すると推
定され、艶消し性、耐スクラッチ性、ソフトフィール性などの各種性能を良好にしやすく
なる。2価アルコール(C)の数平均分子量は、上記観点から、350以下が好ましく、
200以下がより好ましい。また、2価アルコール(C)の数平均分子量は、実用性の観
点から、60以上が好ましく、85以上がより好ましい。なお、2価アルコール(C)の
数平均分子量とは、式量から算出される分子量の相加平均値である。
【0020】
2価アルコール(C)としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレング
リコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール(1,3-ブタ
ンジオール)、1,4-ブチレングリコール(1,4-ブタンジオール)、1,6-ヘキ
サメチレングリコール及びネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコール類及びそのア
ルキレンオキサイド低モル付加物(数平均分子量500未満);1,4-ビスヒドロキシ
メチルシクロヘキサン及び2-メチル-1,1-シクロヘキサンジメタノールなどの脂環
式系グリコール類及びそのアルキレンオキサイド低モル付加物(数平均分子量500未満
);キシリレングリコールなどの芳香環を有するグリコール類及びそのアルキレンオキサ
イド低モル付加物(数平均分子量500未満);ビスフェノールA、チオビスフェノール
及びスルホンビスフェノールなどのビスフェノール類及びそのアルキレンオキサイド低モ
ル付加物(数平均分子量500未満);及びC1~C18のアルキルジエタノールアミン
などのアルキルジアルカノールアミン類などの化合物が挙げられる。
これらの2価アルコールは、1種単独で使用してもよいが、2種類以上を組み合わせて
使用してもよい。また、2価アルコールとしては、上記した中でも低分子量のものが好ま
しく、中でも脂肪族グリコール類がより好ましく、具体的には、エチレングリコール,1
,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコ
ール、1,4-ブチレングリコールがさらに好ましく、これらの中では水分散体における
分散性の観点などから1,4-ブチレングリコールがより好ましい。
【0021】
(ポリイソシアネート(D))
ポリイソシアネート(D)としては公知の化合物を使用でき、例えば、トルエン-2,
4-ジイソシアネート、4-メトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-イソ
プロピル-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-クロル-1,3-フェニレンジイ
ソシアネート、4-ブトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、2,4-ジイソシ
アネートジフェニルエーテル、4,4’-メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(
MDI)、ジュリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソ
シアネート(XDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ベンジジンジイソシアネ
ート、1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、o-ニトロベンジジンジイソ
シアネート及び4,4’-ジイソシアネートジベンジルなどの芳香環を有するジイソシア
ネート;メチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6
-ヘキサメチレンジイソシアネート及び1,10-デカメチレンジイソシアネートなどの
脂肪族ジイソシアネート;1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4’-ジシ
クロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘ
キサン、イソホロンジイソシアネート、水素添加MDI及び水素添加XDIなどの脂環式
ジイソシアネート;並びに、これらジイソシアネート化合物と、低分子量のポリオールや
ポリアミンを末端がイソシアネートとなるように反応させて得られるポリウレタンプレポ
リマーなどを使用することができる。なお、低分子量のポリオールやポリアミンとしては
、分子量が500未満のものが挙げられる。
また、これら有機ポリイソシアネートの2量体、3量体や、ビューレット化イソシアネ
ート等の変性体も挙げることができる。これらの有機ポリイソシアネートは、単独で用い
てもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
ポリイソシアネート(D)としては、耐候性の面から脂肪族及び脂環式ポリイソシアネ
ートから選ばれたものを使用することが好ましく、具体的には、1,6-ヘキサメチレン
ジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジ
イソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を使用するこ
とが好ましく、なかでも、脂肪族イソシアネートである1,6-ヘキサメチレンジイソシ
アネート、脂環式イソシアネートであるイソホロンジイソシアネート及び4,4’-ジシ
クロヘキシルメタンジイソシアネートが高い耐候性が得られるという点で好ましい。
【0023】
(ポリアミン(E))
本発明で使用するポリアミン(E)は、2個の1級アミノ基と1個以上の2級アミノ基
を有するものである。ポリアミン(E)における2級アミノ基の数は、1~5個であるこ
とが好ましく、1~3個であることがより好ましい。
本発明では、ポリアミン(E)を使用することで、ポリウレタンウレアに架橋構造を導
入することが可能になる。そのため、耐熱性が良好となり、例えば、高温で加熱された後
でもグロスを良好に維持することが可能になる。
ポリアミン(E)としては、具体的には、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリア
ミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、2-アミノエチル-3-ア
ミノプロピルアミンなどが使用でき、これらの中ではジエチレントリアミン、トリエチレ
ンテトラミンが好ましく、ジエチレントリアミンがより好ましい。
ポリアミン(E)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
また、本発明の効果に影響のない範囲で上記ポリアミン(E)に加えて、ジアミンを併
用してもよい。ジアミンとしては、脂肪族系ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族系ジアミ
ン、及びヒドラジン系などが挙げられる。脂肪族系ジアミンとしては、炭素数2~8程度
の単鎖ジアミン、ポリアルキレンジアミンなどの長鎖ジアミンが挙げられる。
また、ジアミンとしては、自己硬化反応型の塗料が設計できる観点から、N-2-(ア
ミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのアミノ変性タイプのシ
ランカップリング剤を使用してもよい。
これらジアミンは、単独で或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0025】
本発明のポリウレタンウレア水分散体は、より具体的には、高分子ポリオール(A)、
化合物(B)、及び2価アルコール(C)からなるポリオール成分と、ポリイソシアネー
ト(D)との反応生成物からなるNCO基含有ウレタンプレポリマーに、さらにポリアミ
ン(E)を反応させた反応生成物である。なお、本発明では、高分子ポリオール(A)、
化合物(B)及び2価アルコール(C)をポリオール成分と総称して呼ぶ。
【0026】
ポリオール成分において、高分子ポリオール(A)に対する化合物(B)のモル比(B
/A)は、0.05~0.9であることが好ましく、0.08~0.6がより好ましい。
モル比(B/A)が上記下限値以上であると、ポリウレタンウレア水分散体の分散性が良
好になりやすい。また、上記上限値以下にすると耐水性が良好になりやすい。
また、高分子ポリオール(A)に対する2価アルコール(C)のモル比(C/A)は0
.4~2が好ましく、0.6~1.5がより好ましく、0.7~1.2がさらに好ましい
。モル比(C/A)を下限値以上とすると、ポリウレタンウレア中のハードセグメントが
適度に多くなり、艶消し性などの性能を向上させやすくなる。また、上記上限値以下とす
ることで、ポリウレタンウレア中のソフトセグメントを適切な量にして、塗膜のソフトフ
ィール性、耐スクラッチ性、塗装外観、塗料の保存安定性などの性能を良好にしやすくな
る。
【0027】
NCO基含有ウレタンプレポリマーは、ポリオール成分の活性水素に対する、ポリイソ
シアネート(D)のNCO基の比率(NCO/活性水素)を1.1~5で、ポリオール成
分とポリイソシアネート(D)とを反応させて得たものであることが好ましい。また、比
率(NCO/活性水素)は、1.2~1.8であることがより好ましい。比率(NCO/
活性水素)を上記下限値以上とすることで、NCO基含有ウレタンプレポリマーの分子末
端をNCO基とすることが可能になる。また、上限値以下とすることで、未反応のポリイ
ソシアネート(D)を反応系中に必要以上に残存させることを防止できる。
なお、化合物(B)の活性水素は、上記したように好ましくは水酸基の水素原子である
ので、好ましい態様において、比率(NCO/活性水素)は、ポリオール成分の水酸基に
対する、ポリイソシアネート(D)のNCO基の比率(NCO/OH)を表すものとなる
。
【0028】
また、NCO基含有ウレタンプレポリマーとポリアミン(E)は、NCO基含有ウレタ
ンプレポリマーのNCO基に対する、ポリアミン(E)の1級アミノ基と2級アミノ基の
合計の比率(NH/NCO)を0.3~2.0で反応させることが好ましい。比率(NH
/NCO)は、より好ましくは0.6以上1.0未満である。比率(NH/NCO)が1
未満の場合などポリアミン量が少ない場合には、水伸長することが可能となり、また、架
橋部分の量を適度な量としやすくなる。
【0029】
本発明のポリウレタンウレア水分散体の平均粒子径は、0.03~15μmであること
が好ましく、0.05~10μmがより好ましい。平均粒子径を上記範囲内とすることで
、本発明のポリウレタンウレア水分散体を含有する艶消し塗料に優れた艶消し性を付与す
ることが可能になる。
なお、本発明において、平均粒子径は、日機装株式会社製、「MICROTRAC U
PA-EX150」により測定したメジアン径(D50)を意味する。
【0030】
本発明のポリウレタンウレア水分散体の酸価は、固形分換算で1~15mgKOH/g
であることが好ましく、2~10mgKOH/gであることがより好ましい。酸価をこれ
ら範囲内とすることで、ポリウレタンウレア水分散体の粒径を上記範囲内にコントロール
することが可能となる。また、上限値以下とすることで、中和剤の量が少なくなるので耐
水性が向上する。
なお、ポリウレタンウレア水分散体の酸価は、化合物(B)の親水性基が中和剤などに
より中和される前の酸価であり、化合物(B)などの配合量から計算値として算出するこ
とが可能である。また、得られたポリウレタンウレアにおいて、カルボキシル基などの親
水性基の量を同定して算出することも可能である。
また、本発明のポリウレタンウレア水分散体の固形分濃度は特に限定されないが5~5
0質量%、好ましくは15~40質量%である。
【0031】
本発明のポリウレタンウレア水分散体は、界面活性剤を使用しなくても、水中に分散す
ることが可能である。そのため、界面活性剤を使用しないことで、塗膜の耐水性、耐薬品
性が向上し、更には、塗膜から界面活性剤がブリードする問題も生じない。
但し、本発明の効果に影響ない範囲で、界面活性剤を使用してもよい。使用し得る界面
活性剤としては、例えば非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤などが挙げられる
。
界面活性剤の添加量は、最終的に得られるポリウレタンウレアの各基材に対する接着性
、耐水性に悪影響を及ぼさない範囲の添加量であることが好ましい。界面活性剤の添加量
は、ポリウレタンウレアの固形分100質量部に対して例えば15質量部以下、好ましく
は10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下の範囲
である。
【0032】
[ポリウレタンウレア水分散体の製造方法]
本発明のポリウレタンウレア水分散体は公知の製造方法で得ることができる。
例えば、まず、分子内に活性水素を含まない有機溶剤の存在下、または有機溶剤の不存
在下で、高分子ポリオール(A)、化合物(B)、2価アルコール(C)及びポリイソシ
アネート(D)を、20~150℃、好ましくは60~110℃で反応生成物が例えば理
論NCO%となるまで反応してNCO基含有ウレタンプレポリマーを得る。
次いで、得られたNCO基含有ウレタンプレポリマーを水と中和剤で乳化した後、ポリ
アミン(E)を加えて、ポリアミン(E)、又はポリアミン(E)及び水により、NCO
基含有ウレタンプレポリマーを架橋及び鎖伸長してポリウレタンウレアとし、その後、必
要に応じて脱溶剤をした後本発明のポリウレタンウレア水分散体を得ることができる。
【0033】
ポリウレタンウレアの合成においては、必要に応じて触媒を使用できる。例えば、ジブ
チルチンラウレート、ジオクチルチンラウレート、スタナスオクトエート、オクチル酸鉛
、テトラn-ブチルチタネートなどの金属と有機および無機酸の塩、および有機金属誘導
体、トリエチルアミンなどの有機アミン、ジアザビシクロウンデセン系触媒などが挙げら
れる。
【0034】
ポリウレタンウレア水分散体の製造方法に有機溶剤を使用する場合、好ましい有機溶剤
としては、イソシアネート基に不活性であるか、または反応成分よりも低活性なものが挙
げられる。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘ
キサノンなどのケトン系溶媒;トルエン、キシレン、スワゾール(商品名.コスモ石油株
式会社製)、ソルベッソ(商品名.エクソン化学株式会社製)などの芳香族系炭化水素溶
剤;n-ヘキサンなどの脂肪族系炭化水素溶剤;ジオキサン、テトラヒドロフランなどの
エーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル系溶剤;エチ
レングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテ
ート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネー
トなどのグリコールエーテルエステル系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトア
ミドなどのアミド系溶剤;N-メチル-2-ピロリドンなどのラクタム系溶剤などが挙げ
られる。
これらのうち、溶媒回収、ウレタン合成時の溶解性、反応性、沸点、水への乳化分散性
を考慮すれば、メチルエチルケトン、酢酸エチル、アセトン、およびテトラヒドロフラン
などがより好ましい。
【0035】
また、ポリウレタンウレアを合成した後、ポリマー末端にイソシアネート基が残った場
合、反応停止剤を加えてイソシアネート末端の停止反応を行ってもよい。
反応停止剤としては、例えば、モノアルコール、モノアミンのような単官能性化合物、
イソシアネートに対して互いに異なる反応性を有する2種の官能基を有する化合物などが
挙げられる。具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコー
ル、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert
-ブチルアルコールなどのモノアルコール;モノエチルアミン、n-プロピルアミン、ジ
エチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジ-n-ブチルアミンなどのモノアミン;モノ
エタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアルカノールアミンなどが挙げられ、この
なかでもアルカノールアミン類が反応制御しやすいという点で好ましい。
【0036】
[艶消し塗料]
本発明の艶消し塗料は上記したポリウレタンウレア水分散体を含有するものである。ま
た、艶消し塗料は、分散媒として水を使用するものである。本発明の艶消し塗料は、固形
分がポリウレタンウレア水分散体からなるものでもよいが、ポリウレタンウレア水分散体
に加えて、ポリウレタンウレア水分散体以外の樹脂、各種の添加剤を含有してもよい。ま
た、艶消し塗料は、例えば、ディスパー、ペイントシェーカーなどによりポリウレタンウ
レア水分散体及びその他成分を水中に分散させてもよい。
添加剤としては、例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、ガス変色安定剤、金
属不活性剤、着色剤、防黴剤、難燃剤、艶消し剤などから選択される1種又は2種以上を
適宜使用することができる。
酸化防止剤の具体例としては、ヒンダードフェノール系、ホスファイト系、チオエーテ
ル系などの各種酸化防止剤が挙げられる。光安定剤の具体例としては、ヒンダードアミン
系光安定剤が挙げられる。紫外線吸収剤の具体例としては、ベンゾフェノン系、ベンゾト
リアゾール系などの各種の紫外線吸収剤が挙げられる。ガス変色安定剤の具体例としては
、ヒドラジン系などが挙げられる。また、着色剤としては、公知の顔料、染料を使用すれ
ばよい。
【0037】
また、艶消し剤としては、有機微粒子、無機微粒子のいずれでもよいが、具体的には、
シリカ、シリコーン樹脂微粒子、フッ素樹脂微粒子、アクリル樹脂微粒子、ウレタン系樹
脂微粒子、シリコーン変性ウレタン系樹脂微粒子、ポリエチレン微粒子、反応性シロキサ
ンなどが挙げられる。また、艶消し剤を使用する場合、艶消し剤を分散させるための分散
剤を併用してもよい。
ただし、本発明の艶消し塗料は、艶消し剤を含有しなくても高い艶消し性を得ることが
できるものであり、艶消し剤は含有しないか、または、本発明の効果に影響のない範囲内
で含有していればよいが、艶消し剤を含有しないことが好ましい。艶消し塗料における艶
消し剤の含有量は、含有する場合でも、ポリウレタンウレア水分散体(固形分基準)10
0質量部に対して、50質量部以下であり、好ましくは30質量部以下、より好ましくは
10質量部以下である。
また、艶消し塗料は、艶消し剤を含有せず、また、含有しても上記のように少量である
と、塗膜上に艶消し剤がブリードすることが防止される。さらに、摩擦によって塗膜が剥
がれ落ちたりすることもなく、耐スクラッチ性などもより優れたものとなる。
【0038】
本発明の艶消し塗料は、上記のように艶消し剤の含有量が少なく又は未含有であっても
、高い艶消し性を有するものである。艶消し塗料により形成された塗膜のグロス(光沢度
)は、艶消し性を高くするために低いほうがよく、具体的には5以下であることが好まし
く、より好ましくは2.5以下である。また、例えば自動車用内装材に使用する場合など
には、1.2以下であることがさらに好ましい。グロスは、その下限値については特に限
定されないが、実用的には0.1以上であることが好ましい。なお、グロスは、60°グ
ロスを意味し、後述する実施例の測定方法により測定されるものである。
【0039】
本発明の艶消し塗料が塗布される基材としては、特に限定されず、プラスチック、窯業
系基材、コンクリート及び金属などが挙げられる。
基材となるプラスチックとしては、例えば、ポリエチレン系、ポリプロピレン系などの
オレフィン系樹脂、エチレンプロピレンジエン系樹脂、スチレンアクリロニトリル系樹脂
、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系
樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリ
スチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ノルボルネン系樹脂、
セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルホルマール系樹脂、ポリビ
ニルブチラール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポ
リ酢酸ビニル系樹脂、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、塩化ビニル、
エンジニアプラスチック、生分解性プラスチックなどの従来公知の各種のプラスチックが
挙げられる。
プラスチックは、プラスチック成型品などでもよく、特に自動車用の内装材として使用
される、ポリオレフィン樹脂、TPO、ポリウレタン、ポリプロピレンなどのプラスチッ
ク成型品が好ましい例として挙げられる。また、例えば、TPO基材シートの場合、コロ
ナ放電処理されたTPO基材シート上に2液型水系ウレタン系樹脂を塗工し、さらにその
上に本発明の艶消し塗料をスプレー塗装やグラビア塗装により塗工した後に、真空成型し
て自動車用のインストルメントパネルなどの成型品を製造することができる。
また、プラスチック成型品に本発明の塗料を直接塗工する方法や、金型上に本発明の塗
料をスプレー塗装後に、ポリプロピレンやウレタン系樹脂などを金型に入れるモールド成
型法なども有用である。ただし、接着性の劣るポリプロピレン成型品に本発明の塗料を塗
布する場合には、予めプラスチック成型品の表面をプライマー処理することが好ましい。
本発明の艶消し塗料は、特に限定されないが、各種基材に固形分厚みが例えば3~25
μmとなるように塗布した後に、例えば、90~120℃で1~3分間乾燥することで艶
消し塗料からなる塗膜とすることができる。
【実施例】
【0040】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれ
らに限定されるものではない。また、以下の文中の「部」は質量部、「%」は質量%を示
す。
【0041】
[ポリウレタンウレア水分散体]
実施例1
攪拌機、還流冷却管、温度計、及び窒素吹き込み管を備えた反応容器を窒素ガスで置換
した後、プラクセルCD220(登録商標、株式会社ダイセル製のポリカーボネートジオ
ール、数平均分子量2000)100部、ジメチロールプロピオン酸2.3部、1,4-
ブタンジオール4.1部、およびアセトンを38.9部加え、均一に溶解させた。続いて
1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート25.1部を加えて80℃で反応を行い、NC
O濃度が1.84%となるまで反応を行いNCO基含有ウレタンプレポリマーを得た。そ
の後、50℃に冷却し、イオン交換水306.8部と中和剤としてのトリエチルアミン1
.7部を加え、系内を均一に乳化させ、ジエチレントリアミン2.0部を投入して鎖伸長
した。最後に、系内のアセトンを真空脱気して回収し、固形分濃度30%、平均粒子径3
.1μm、酸価(固形分換算)7mgKOH/gのポリウレタンウレア水分散体aを得た
。
【0042】
実施例2~6、比較例1~4
各成分の配合を表1の内容とする以外は実施例1と同様にしてポリウレタンウレア水分
散体を得た。なお、実施例1のジエチレントリアミンの代わりに、実施例4ではトリエチ
レンテトラミンを使用し、比較例1、2ではエチレンジアミンを使用した。また、実施例
1の1,4-ブタンジオールの代わりに、実施例5,6、比較例4ではそれぞれ、1,3
-ブタンジオール、エチレングリコール、トリメチロールプロパンを使用した。
得られたポリウレタンウレア水分散体の平均粒子径、酸価(固形分換算)および水分散
体番号を表1に示す。
【0043】
【0044】
[艶消し塗料]
実施例7~12、比較例5~10
実施例1~6及び比較例1~4で得られたポリウレタンウレア水分散体a~jを実施例
7~12、比較例5~8の艶消し塗料として調製した。
また、比較例2で得られた水分散体hに艶消し剤、又は艶消し剤及びシリカ分散剤を配
合したものをディスパーにより、1500rpmで2分間攪拌し艶消し剤を分散させ、比
較例9、10の艶消し塗料を得た。
なお、比較例9、10では、艶消し剤(商品名「エースマットTS-100」、エボニ
ック社製、シリカ)を水分散体(固形分基準)100部に対して30部配合するとともに
、比較例10では、さらにシリカ分散剤(商品名「DISPERBYK-190」、ビッ
グケミージャパン社製)を水分散体(固形分基準)100部に対して5部配合した。
各艶消し塗料について、後述する評価方法にて評価した。評価結果を表2に示す。
【0045】
【0046】
[試験シートの作成]
各実施例、比較例で得られた艶消し塗料をレネタチャートシート(レネタカンパニー社
製)にバーコータを用いて塗布し、120℃の乾燥機で1分乾燥させ、塗膜厚さ5μmの
試験シートを作成した。
【0047】
<グロス>
直読ヘーズコンピューターHGM-2DP(スガ試験機株式会社製)を使用し、試験シ
ート塗膜面のグロス(60°入射光/60°反射光)を測定した。
<加熱後グロス>
試験シートを170℃で5分間加熱した後の塗膜面のグロスを上記と同様に測定した。
【0048】
<耐スクラッチ性>
試験シート塗膜面を約1kg/cm2の荷重にてスコッチブライト(住友スリーエム株
式会社製)で100回擦り、表面の傷付きを以下の評価基準に従って目視にて確認した。
A:確認できる傷が0本以上5本未満
B:確認できる傷が5本以上10本未満
C:確認できる傷が10本以上
<保存安定性>
艶消し塗料を1か月室温(23℃)で静置後に沈降度合いや凝集度合いを以下の評価基
準に従って目視で判定した。
A:沈殿が生成していないもの、または容易に沈殿を細分させることが可能なもの
B:一部が底に固化し再分散させることが困難なもの
C:沈殿の全体が固化し再分散しないもの
【0049】
<塗装外観>
試験シート塗膜面を目視により観察して、以下の評価基準に従って塗装外観の評価を行
った。
A:塗装ムラなし
B:析出物が一部あり、塗装ムラがある
C:析出物が多く塗膜にならない
<ソフトフィール性>
試験シート塗膜面を指で触り、得られた触感から下記の評価基準によりソフトフィール
性を評価した。
A:弾力性がありシルクのような触感
B:弾力性がなく、若干グリップ感のある触感
C:べたつきのある触感
【0050】
表2に示すように、各実施例の艶消し塗料においては、ポリウレタンウレア水分散体と
して、(A)~(E)成分の反応生成物を使用することで、艶消し性、耐熱性、耐スクラ
ッチ性、保存安定性、塗装外観、及びソフトフィール性を良好にすることができた。
それに対して、比較例5~7おいては、(A)~(E)成分のいずれかを配合しないこ
とで、艶消し性、耐熱性、耐スクラッチ性、保存安定性、塗装外観、及びソフトフィール
性の少なくとも1つが良好とならなかった。その結果は、比較例9、10に示すように、
艶消し剤、さらには、艶消し剤を分散させるための分散剤を使用しても同様であり、比較
例では、艶消し性、耐熱性、耐スクラッチ性、保存安定性、塗装外観、及びソフトフィー
ル性の性能をバランスよく良好にすることができなった。また、比較例8のように、2価
アルコールの代わりに、3価アルコールを使用するとゲル化が起こり、適切な性能を有す
る水分散体及び艶消し塗料を得ることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のポリウレタンウレア水分散体及び艶消し塗料は、艶消し性、耐熱性、耐スクラ
ッチ性、保存安定性、塗装外観、及びソフトフィール性が良好であり、建築外装、建築内
装及び車両内装などへの意匠性付与塗料としての利用が可能である。