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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】有機化合物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4985 20060101AFI20230228BHJP
   A61P 25/32 20060101ALI20230228BHJP
   A61P 25/36 20060101ALI20230228BHJP
   A61P 25/30 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
A61K31/4985
A61P25/32
A61P25/36
A61P25/30
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021203529
(22)【出願日】2021-12-15
(62)【分割の表示】P 2018538850の分割
【原出願日】2017-01-26
(65)【公開番号】P2022050417
(43)【公開日】2022-03-30
【審査請求日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】62/287,264
(32)【優先日】2016-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/440,130
(32)【優先日】2016-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507401225
【氏名又は名称】イントラ-セルラー・セラピーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】INTRA-CELLULAR THERAPIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ・ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】リ・ポン
【審査官】松本 淳
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-502331(JP,A)
【文献】特表2014-520159(JP,A)
【文献】特表2013-525352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中枢神経系障害の治療または予防を必要とする患者において該治療または予防に用いるための医薬組成物であって、薬学的に許容される希釈剤または担体と混合した、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式:
【化1】
で示される化合物を含む、医薬組成物であり、該障害が、薬物依存症、アルコール依存症、薬物またはアルコール依存症からの離脱症状、物質中毒、物質使用障害および物質誘発障害からなる群から選択され、該患者がオピエートアゴニストまたは部分オピエートアゴニストを併用投与されている患者である、医薬組成物。
【請求項2】
該障害が薬物依存症である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
該薬物依存症がオピエート依存症である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
該障害がアルコール依存症である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
該障害が、薬物またはアルコール依存症からの離脱症状である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
該障害が、物質中毒、物質使用障害または物質誘発障害である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
該オピエートアゴニストまたは部分オピエートアゴニストが、μアゴニストもしくは部分アゴニスト、またはκアゴニストもしくは部分アゴニスト(混合アゴニスト/アンタゴニストを含む)、請求項1~6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
該オピエートアゴニストまたは部分オピエートアゴニストが、ブプレノルフィンである、請求項1~7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
該化合物が薬学的に許容される塩形態のものである、請求項1~8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
該薬学的に許容される塩が、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パルモン酸(palmoic)、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸およびイセチオン酸から選択される酸の酸付加塩である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
該薬学的に許容される塩が、塩酸、トルエンスルホン酸、シュウ酸、酒石酸、アスコルビン酸、コハク酸、フマル酸、グルタミン酸およびリンゴ酸から選択される酸の酸付加塩である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項12】
該薬学的に許容される塩が、トルエンスルホン酸の酸付加塩である、請求項9に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本明細書に記載されるような遊離形態、固体形態、薬学的に許容される塩形態および/または実質的に純粋な形態の、特定の置換複素環縮合γカルボリンおよびそれらのプロドラッグ、その医薬組成物、ならびに5-HT2A受容体、セロトニン輸送体(SERT)、ドパミンD1およびD2受容体シグナル伝達系が関わる経路、ならびに/またはμオピオイド受容体が関与する疾患、例えば、不安、精神病、統合失調症、睡眠障害、性障害、片頭痛、頭部痛と関連する状態、社会恐怖症、胃腸管運動の機能障害のような胃腸障害、および肥満症;精神病またはパーキンソン病と関連するうつ病および気分障害;うつ病と関連する統合失調症のような精神病;双極性障害;気分障害;オピエート依存症およびアルコール依存症のような薬物依存症、薬物禁断症状、および他の精神医学的状態および神経学的状態などの疾患または障害の治療における使用方法、ならびに他の薬剤との組合せに関する。
【背景技術】
【0002】
置換複素環縮合γカルボリンは、中枢神経系障害の治療における5-HT2受容体、特に5-HT2Aおよび5-HT2C受容体のアゴニストまたはアンタゴニストであることが知られている。これらの化合物は、特許文献1;特許文献2;特許文献3;特許文献4;特許文献5;特許文献6および特許文献7に、肥満症、不安、うつ病、精神病、統合失調症、睡眠障害、性障害、片頭痛、頭部痛と関連する状態、社会恐怖症、胃腸管運動の機能障害のような胃腸障害、および肥満症のような5-HT2A受容体調節と関連する障害の治療に有用な新規化合物として記載されている。特許文献8および特許文献9には、また、置換複素環縮合γカルボリンの製造方法、ならびにこれらγカルボリンの、嗜癖行動および睡眠障害のような中枢神経系障害の制御および予防に有用なセロトニンアゴニストおよびアンタゴニストとしての使用が開示されている。
【0003】
加えて、特許文献10には、精神病とうつ病性障害の合併、ならびに精神病またはパーキンソン病患者における睡眠障害、うつ病性障害および/または気分障害の治療のための特定の置換複素環縮合γカルボリンの使用が開示されている。精神病および/またはうつ病と関連する障害に加えて、この特許出願は、ドパミンD2受容体に影響を及ぼさないかまたは最小限にしか影響を及ぼさず、それによりドパミンD2経路の副作用または慣用の鎮静催眠剤(例えば、ベンゾジアゼピン系薬剤)と関連する他の経路(例えば、GABAA受容体)の副作用(薬物依存、筋緊張低下、脱力感、頭痛、霞目、回転性めまい、悪心、嘔吐、心窩部苦悶、下痢、関節痛および胸痛の発症を包含するがこれらに限定されない)を伴わずに、睡眠障害の治療に有用な、5-HT2A受容体を選択的に拮抗するためのこれら化合物の低用量での使用を記載し、クレームする。特許文献11には、また、これら置換複素環縮合γカルボリンのトルエンスルホン酸付加塩結晶の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第6548493号明細書
【文献】米国特許第7238690号明細書
【文献】米国特許第6552017号明細書
【文献】米国特許第6713471号明細書
【文献】米国特許第7183282号明細書
【文献】米国再発行特許発明第39680号明細書
【文献】米国再発行特許発明第39679号明細書
【文献】PCT/US08/03340(国際公開第2008/112280号)
【文献】米国特許出願第10/786935号明細書
【文献】国際公開第2009/145900号
【文献】国際公開第2009/114181号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、5-HT2A受容体、D1受容体およびμオピエート受容体を結合する新規受容体結合プロファイルを有する新規化合物を提供する。5-HT2Aアンタゴニズム、D1活性およびモルヒネアンタゴニズムを包含するこれら化合物の特有の薬理学的プロファイルにより、当該化合物は、本開示でさらに説明するように物質使用障害および合併する精神障害に罹患している患者の治療を含む、うつ病、不安、睡眠障害、精神病または認知症などの様々な物質使用障害および精神障害の治療に有用となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、かくして、中枢神経系障害の治療または予防に有用な式Iで示される化合物を提供する。第1の態様において、本開示は、遊離形態または塩形態、例えば単離または精製された遊離形態または塩形態の、式I:
【化1】
[式中、
Xは、-NH-または-N(CH3)-であり;
Lは、O、NH、NRaおよびSから選択され;
Zは、-CH(O-R1)-、-O-または-C(=O)-であり;
1は、H、-C(O)-C1-21アルキル(例えば、-C(O)-C1-5アルキル、-C(O)-C6-15アルキルまたは-C(O)-C16-21アルキル)であり、好ましくは、該アルキルは、飽和または不飽和であってよく、1個以上のヒドロキシまたはC1-22アルコキシ(例えば、エトキシ)基で置換されていてもよい、直鎖であり、例えば、R1は、C(O)-C3アルキル、-C(O)C6アルキル、-C(O)-C7アルキル、-C(O)-C9アルキル、-C(O)-C11アルキル、-C(O)-C13アルキルまたは-C(O)-C15アルキルであり;
aは、
各々が独立して、3個までの独立して選択されるRb基で置換され得る、ハロゲン、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニルまたはC3-6シクロアルキル、例えば、C1-3ハロアルキルまたはC1-3ヒドロキシアルキル;または
5個までの独立して選択されるRbで置換されていてもよいアリール;
であり;
各Rbは、独立して、H、ハロゲン、NH2、NO2、OH、C(=O)OH、CN、SO3およびC1-4アルキルから選択される]
で示される化合物(化合物I)に関する。
【0007】
本開示は、遊離形態または塩形態、例えば、単離または精製された、遊離形態または塩形態の以下のものを包含する、遊離形態または塩形態、例えば、単離または精製された、遊離形態または塩形態の、式Iで示される化合物のさらなる例示的な実施態様を提供する:
1.1 Lが-O-である、化合物I;
1.2 Zが-CH(O-R1)-である、化合物Iまたは1.1;
1.3 Zが-C(=O)-である、化合物Iまたは1.1;
1.4 LがNHである、化合物I;
1.5 LがNRaである、化合物I;
1.6 LがSである、化合物I;
1.7 固体形態、例えば、固体塩形態の、化合物Iまたは1.1~1.5のいずれか;
1.8 Zが-CH(O-R1)-である、化合物Iまたは1.1~1.7のいずれか;
1.9 Zが-C(=O)-である、化合物Iまたは1.1~1.7のいずれか;
1.10 Zが-O-である、化合物Iまたは1.1~1.7のいずれか;
1.11 Xが-NH-である、化合物Iまたは1.1~1.9のいずれか;
1.12 Xが-N(CH3)-である、化合物Iまたは1.1~1.9のいずれか;
1.13 Lが-O-であり、Xが-N(CH3)-である、化合物Iまたは1.1~1.12のいずれか;
1.14 Lが-O-であり、Xが-NH-である、化合物Iまたは1.1~1.12のいずれか;
1.15 Zが-C(=O)-である、化合物1.13;
1.16 Zが-C(=O)-である、化合物1.14;
1.17 Zが-CH(O-R1)-であり、R1がHである、化合物Iまたは1.1~1.14のいずれか;
1.18 Zが-CH(O-R1)-であり、R1が-C(O)-C1-5アルキル、-C(O)-C6-15アルキルまたは-C(O)-C16-21アルキルである、化合物Iまたは1.1~1.14のいずれか;
1.19 Zが-CH(O-R1)-であり、R1がC(O)-C3アルキル、-C(O)C6アルキル、-C(O)-C7アルキル、-C(O)-C9アルキル、-C(O)-C11アルキル、-C(O)-C13アルキルまたは-C(O)-C15アルキルからなる群から選択される、例えば、R1がアセチル、エチルカルボニルまたはプロピルカルボニルである、化合物Iまたは1.1~1.14のいずれか;
1.20 LがNRaであり、Raが、各々が独立して、3個までの独立して選択されるRb基で置換され得る、ハロゲン、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニルまたはC3-6シクロアルキルであるか、またはRaが、5個までの独立して選択されるRbで置換されていてもよいアリールであり、Rbが、H、ハロゲン、NH2、NO2、OH、C(=O)OH、CN、SO3およびC1-4アルキルから独立して選択される、化合物Iまたは1.1~1.12もしくは1.17-1.19のいずれか;
1.21 Raが、3個までの独立して選択されるRb基で置換されていてもよいC1-4アルキルまたはC3-6シクロアルキルである、化合物1.20;
1.22 Raが、3個までの独立して選択されるRb基で置換されていてもよいアリールである、化合物1.20;
1.23 Raが、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、またはフェニルからなる群から選択される、化合物1.20;
1.24 Zが-CH(O-R1)-であり;該-CH(O-R1)-基中の炭素原子CHがR配置もしくはS配置のいずれかまたはその混合体である、化合物Iまたは1.1~1.14もしくは1.17-1.23のいずれか;
1.25 炭素原子CHが実質的にR配置またはS配置で存在する、例えば、この炭素原子においてR配置またはS配置を有するジアステレオマーが、70%を超えるジアステレオマー過剰率、例えば、75%を超えるかまたは80%を超えるかまたは85%を超えるかまたは90%を超えるかまたは95%を超えるかまたは97%を超えるかまたは98%を超えるかまたは99%を超えるジアステレオマー過剰率で存在する、化合物1.24;
1.26 化合物が、
【化2】
からなる群から選択される、化合物Iまたは1.1~1.25のいずれか;
1.27 化合物が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化3】
(すなわち、それぞれ、
4-((6bR,10aS)-2-オキソ-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-1-(4-フルオロ-フェニル)-ブタン-1-オン;
4-((6bR,10aS)-2-オキソ-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-1-(4-フルオロ-フェニル)-ブタン-1-オール;および
(6bR,10aS)-8-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オン)
からなる群から選択される、例えば、(6bR,10aS)-8-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オンである、化合物Iまたは1.1~1.26のいずれか;
1.28 遊離形態の、化合物Iまたは1.1~1.27のいずれか;
1.29 塩形態の、例えば、薬学的に許容される塩形態の、化合物Iまたは1.1~1.28のいずれか;
1.30 固体形態の、化合物Iまたは1.1~1.29のいずれか。
【0008】
第2の態様において、本開示は、遊離形態または塩形態、例えば、単離または精製された、遊離形態または塩形態の、式II:
【化4】
[式中、
Xは、-NH-または-N(CH3)-であり;
Yは、-CH(O-R1)-または-C(=O)-であり;
1は、H、-C(O)-C1-21アルキル(例えば、-C(O)-C1-5アルキル、-C(O)-C6-15アルキルまたは-C(O)-C16-21アルキル)であり、好ましくは、該アルキルは、飽和または不飽和であってよく、1個以上のヒドロキシまたはC1-22アルコキシ(例えば、エトキシ)基で置換されていてもよい、直鎖であり、例えば、R1は、C(O)-C3アルキル、-C(O)C6アルキル、-C(O)-C7アルキル、-C(O)-C9アルキル、-C(O)-C11アルキル、-C(O)-C13アルキルまたは-C(O)-C15アルキルである]
で示される化合物(化合物II)に関する。
【0009】
本開示は、以下のものを包含する、遊離形態または塩形態、例えば、単離または精製された、遊離形態または塩形態の、式IIで示される化合物のさらなる例示的な実施態様を提供する:
2.1 Xが-NH-である、化合物II;
2.2 Xが-N(CH3)-である、化合物II;
2.3 Yが-C(=O)-である、化合物IIまたは2.1~2.4;
2.4 Yが-CH(O-R1)-である、すなわち、式II-A:
【化5】
を有する、化合物II;
2.5 Yが-CH(O-R1)-である、化合物IIまたは2.1~2.4;
2.6 XがNHであり、Yが-C(=O)-である、すなわち、式II-B:
【化6】
を有する、化合物II;
2.7 Xが-NH-であり、Yが-CH(O-R1)-である、化合物II;
2.8 Xが-NH-であり、Yが-CH(O-R1)-であり、R1がHである、すなわち、式II-C:
【化7】
を有する、化合物II;
2.9 Xが-N(CH3)-であり、Yが-C(=O)-である、すなわち、式II-D:
【化8】
を有する、化合物II;
2.10 Xが-N(CH3)-であり、Yが-CH(O-R1)-である、化合物II;
2.11 Xが-N(CH3)-であり、Yが-CH(O-R1)-であり、R1がHである、すなわち、式II-E:
【化9】

を有する、化合物II;
2.12 固体形態、例えば、固体塩形態の、化合物IIまたは2.1~2.11のいずれか。
【0010】
第3の態様において、本開示は、遊離形態または塩形態、例えば、単離または精製された、遊離形態または塩形態の、式III:
【化10】
[式中、
Xは、-NH-または-N(CH3)-であり;
1は、H、-C(O)-C1-21アルキル(例えば、-C(O)-C1-5アルキル、-C(O)-C6-15アルキルまたは-C(O)-C16-21アルキル)であり、好ましくは、該アルキルは、飽和または不飽和であってよく、1個以上のヒドロキシまたはC1-22アルコキシ(例えば、エトキシ)基で置換されていてもよい、直鎖であり、例えば、R1は、C(O)-C3アルキル、-C(O)C6アルキル、-C(O)-C7アルキル、-C(O)-C9アルキル、-C(O)-C11アルキル、-C(O)-C13アルキルまたは-C(O)-C15アルキルである]
で示される化合物(化合物III)に関する。
【0011】
本開示は、以下のものを包含する、遊離形態または塩形態、例えば、単離または精製された、遊離形態または塩形態の、式IIIで示される化合物のさらなる例示的な実施態様を提供する:
3.1 R1がHである、すなわち、遊離形態または塩形態、例えば、単離または精製された、遊離形態または塩形態の、式III-A:
【化11】
を有する、化合物III;
3.2 Xが-NH-である、化合物IIIまたは3.1;
3.3 Xが-N(CH3)-である化合物IIIまたは3.1;
3.4 Xが-NH-である、すなわち、式III-B:
【化12】
を有する、化合物3.1;
3.5 Xが-N(CH3)-である、すなわち、式III-C:
【化13】
を有する、化合物3.1;
3.6 化合物が70%を超えるジアステレオマー過剰率を有する、化合物IIIまたは3.1~3.5のいずれか;
3.7 化合物が80%を超えるジアステレオマー過剰率を有する、化合物IIIまたは3.1~3.6のいずれか;
3.8 化合物が90%を超えるジアステレオマー過剰率を有する、化合物IIIまたは3.1~3.7のいずれか;
3.9 化合物が95%を超えるジアステレオマー過剰率を有する、化合物IIIまたは3.1~3.8のいずれか;
3.10 化合物が実質的に純粋なジアステレオマー形態である(すなわち、他のジアステレオマーを実質的に含まない)、化合物IIIまたは3.1~3.9のいずれか;
3.11 固体形態、例えば、固体塩形態の、化合物IIIまたは3.1~3.10のいずれか。
【0012】
第4の態様において、本開示は、遊離形態または塩形態、例えば、単離または精製された、遊離形態または塩形態の、式IV:
【化14】
[式中、
Xは、-NH-または-N(CH3)-であり;
1は、H、-C(O)-C1-21アルキル(例えば、-C(O)-C1-5アルキル、-C(O)-C6-15アルキルまたは-C(O)-C16-21アルキル)であり、好ましくは、該アルキルは、飽和または不飽和であってよく、1個以上のヒドロキシまたはC1-22アルコキシ(例えば、エトキシ)基で置換されていてもよい、直鎖であり、例えば、R1は、C(O)-C3アルキル、-C(O)C6アルキル、-C(O)-C7アルキル、-C(O)-C9アルキル、-C(O)-C11アルキル、-C(O)-C13アルキルまたは-C(O)-C15アルキルである]
で示される化合物(化合物IV)に関する。
【0013】
本開示は、以下のものを包含する、遊離形態または塩形態、例えば、単離または精製された、遊離形態または塩形態の、式IVで示される化合物のさらなる例示的な実施態様を提供する:
4.1 R1がHである、すなわち、遊離形態または塩形態、例えば、単離または精製された、遊離形態または塩形態の、式IV-A:
【化15】
を有する、化合物IV;
4.2 Xが-NH-である、化合物IVまたは4.1;
4.3 Xが-N(CH3)-である、化合物IVまたは4.1;
4.4 Xが-NH-である、すなわち、式IV-B:
【化16】
を有する、化合物4.1;
4.5 Xが-N(CH3)-である、すなわち、式IV-C:
【化17】
を有する、化合物4.1;
4.6 化合物が70%を超えるジアステレオマー過剰率を有する、化合物IVまたは4.1~4.5のいずれか;
4.7 化合物が80%を超えるジアステレオマー過剰率を有する化合物IVまたは4.1~4.6のいずれか;
4.8 化合物が90%を超えるジアステレオマー過剰率を有する化合物IVまたは4.1~4.7のいずれか;
4.9 化合物が95%を超えるジアステレオマー過剰率を有する化合物IVまたは4.1~4.8のいずれか;
4.10 化合物が実質的に純粋なジアステレオマー形態である(すなわち、他のジアステレオマーを実質的に含まない)、化合物IVまたは4.1~4.9のいずれか;
4.11 固体形態、例えば、固体塩形態の、化合物IVまたは4.1~4.10のいずれか。
【0014】
第5の態様において、本開示は、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、前記化合物Iもしくは1.1~1.30、化合物IIもしくは2.1~2.12、化合物IIIもしくは3.1~3.11、または化合物IVもしくは4.1~4.11(以下、まとめて、「式I~IVおよびそれらに続く式で示される化合物」または「本開示の化合物」)の各々を提供する。本開示は、以下のものを包含する、式I~IVおよびそれらに続く式で示される化合物のさらなる例示的な実施態様を提供する:
5.1 塩が、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パルモン酸(palmoic)、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸および同類のものから選択される酸付加塩である、式I~IVおよびそれらに続く式で示される化合物;
5.2 塩がフマル酸付加塩である、式I~IVおよびそれらに続く式で示される化合物;
5.3 塩がリン酸付加塩である、式I~IVおよびそれらに続く式で示される化合物;
5.4 塩がトルエンスルホン酸付加塩である、式I~IVおよびそれらに続く式で示される化合物;
5.5 塩が固体形態である、5.1~5.4のいずれか。
【0015】
第6の態様において、本開示は、例えば薬学的に許容される希釈剤または担体と混合した、化合物Iもしくは1.1~1.30、化合物IIもしくは2.1~2.12、化合物IIIもしくは3.1~3.11、または化合物IVもしくは4.1~4.11(まとめて、式I~IVおよびそれらに続く式で示される化合物または本開示の化合物)のいずれか1つに従う化合物を含む医薬組成物(医薬組成物6)を提供する。本開示は、以下のものを包含する、医薬組成物6のさらなる例示的な実施態様を提供する:
6.1 化合物Iまたは1.1~1.30のいずれかを含む、医薬組成物6;
6.2 化合物IIまたは2.1~2.12のいずれかを含む、医薬組成物6;
6.3 化合物IIIまたは3.1~3.11のいずれかを含む、医薬組成物6;
6.4 化合物IVまたは4.1~4.11のいずれかを含む、医薬組成物6;
6.5 式I~IVおよびそれらに続く式で示される化合物が固体形態である、医薬組成物6または6.1~6.4のいずれか;
6.6 式I~IVおよびそれらに続く式で示される化合物が化合物5.1~5.5に記載される薬学的に許容される塩形態である、医薬組成物6または6.1~6.5のいずれか;
6.7 式I~IVおよびそれらに続く式で示される化合物が薬学的に許容される希釈剤または担体と混合されている、医薬組成物6または6.1~6.6のいずれか。
【0016】
好ましい実施態様において、本開示の医薬組成物は、薬学的に許容される希釈剤または担体と混合した、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式II-A、II-BまたはII-Cで示される化合物を含む。別の好ましい実施態様において、本開示の医薬組成物は、薬学的に許容される希釈剤または担体と混合した、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式III-A、III-BまたはIII-Cで示される化合物を含む。別の好ましい実施態様において、本開示の医薬組成物は、薬学的に許容される希釈剤または担体と混合した、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式IV-A、IV-BまたはIV-Cで示される化合物を含む。
【0017】
さらなる好ましい実施態様において、本開示の医薬組成物は、持続放出または遅延放出製剤用、例えば、デポ製剤用である。一の実施態様において、デポ製剤(デポ製剤6.8)は、好ましくは遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、かつ、好ましくは薬学的に許容される希釈剤または担体と混合した、例えば注射用デポ剤として持続放出または遅延放出を提供する、6.1~6.7のいずれかの医薬組成物である。
【0018】
さらなる好ましい実施態様において、デポ組成物(デポ組成物6.9)は、薬学的に許容される希釈剤または担体と混合した、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、R1が-C(O)-C6-15アルキルである、6.1~6.7のいずれかの医薬組成物を含む。
【0019】
別の態様において、本開示は、式I~IVおよびそれらに続く式で示される化合物がポリマーマトリックス中に存在している、医薬組成物6または6.1~6.9のいずれかである医薬組成物6.10を提供する。一の実施態様において、本開示の化合物は、ポリマーマトリックス内に分散または溶解されている。さらなる好ましい実施態様において、該ポリマーマトリックスは、ヒドロキシ脂肪酸のポリエステルおよびその誘導体、またはアルキル-α-シアノアクリレートのポリマー、ポリアルキレンオキサレート、ポリオルトエステル、ポリカーボネート、ポリオルトカーボネート、ポリアミノ酸、ヒアルロン酸エステル、およびこれらの混合物から選択されるポリマーのような、デポ製剤に用いられる標準ポリマーを含む。さらなる好ましい実施態様において、該ポリマーは、ポリラクチド、ポリd,l-ラクチド、ポリグリコリド、PLGA50:50、PLGA85:15およびPLGA90:10ポリマーからなる群から選択される。別の実施態様において、該ポリマーは、ポリ(グリコール酸)、ポリ-D,L-乳酸、ポリ-L-乳酸、上記のコポリマー、ポリ(脂肪族カルボン酸)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリジオキソノン、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(アセタール)、ポリ(乳酸-カプロラクトン)、ポリオルトエステル、ポリ(グリコール酸-カプロラクトン)、ポリ無水物、および天然ポリマー(アルブミン、カゼイン、ならびにグリセロールモノステアレートおよびグリセロールジステアレートなどのワックスを包含する)、および同類のものから選択される。好ましい実施態様において、ポリマーマトリックスは、ポリ(d,l-ラクチド-co-グリコリド)を含む。
【0020】
例えば、医薬組成物6.10の一の実施態様において、該化合物は、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、Xが-NH-または-N(CH3)-であり、Yが-C(=O)-または-C(H)(OH)-である式Iで示される化合物である。医薬組成物6.10の別の例において、該化合物は、薬学的に許容される希釈剤または担体と混合した、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式II-A、II-BまたはII-Cで示される化合物である。医薬組成物6.10の別の例において、該化合物は、薬学的に許容される希釈剤または担体と混合した、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式III-A、III-BまたはIII-Cで示される化合物である。医薬組成物6.10の別の例において、該化合物は、薬学的に許容される希釈剤または担体と混合した、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式IV-A、IV-BまたはIV-Cで示される化合物である。医薬組成物6.10の上記各例の別の実施態様において、ポリマーマトリックスは、ポリ(d,l-ラクチド-co-グリコリド)を含む。
【0021】
(医薬)組成物6および6.1~6.10は、ポリマーマトリックスが分解すると本開示の化合物が放出される、徐放または遅延放出に特に有用である。これらの組成物は、最大180日間にわたる、例えば約14日間~約30日間~約180日間にわたる、本開示の化合物の制御放出および/または徐放のために(例えば、デポ組成物として)製剤化され得る。例えば、ポリマーマトリックスは、約30日間、約60日間または約90日間にわたって分解して本開示の化合物を放出し得る。別の例において、ポリマーマトリックスは、約120日間または約180日間にわたって分解して本開示の化合物を放出し得る。
【0022】
さらに別の実施態様において、本開示の医薬組成物、例えば本開示のデポ組成物、例えば医薬組成物6.10は、注射による投与のために製剤化される。
【0023】
第7の態様において、本開示は、国際公開第2000/35419号および欧州特許出願公開第1539115号(米国出願公開第2009/0202631号)(各出願の内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)に記載されている浸透圧制御放出経口送達系(OROS)における、上記の式I~IVおよびそれらに続く式で示される化合物を提供する。したがって、第7の態様の一の実施態様において、本開示は、(a)上記の、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式I~IVおよびそれらに続く式のいずれかで示される化合物または本発明の医薬組成物を含有するゼラチンカプセル;(b)カプセルから外側へ向かう順で、(i)バリア層、(ii)膨張層、および(iii)半透過性層を含む、ゼラチンカプセル上に重ねられた多層壁;ならびに(c)該壁を通って形成されたかまたは形成可能なオリフィスを含む、医薬組成物またはデバイス(組成物P.1)を提供する。
【0024】
別の実施態様において、本発明は、液体、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式I~IVおよびそれらに続く式で示される化合物または本発明の医薬組成物、例えば、医薬組成物6もしくは6.1~6.10のいずれかを含有するゼラチンカプセルを含む医薬組成物であって、該ゼラチンカプセルが、該ゼラチンカプセルの外表面と接触しているバリア層、該バリア層と接触している膨張層、該膨張層を覆っている半透過性層、および壁内に形成されたかまたは形成可能な出口オリフィスを含む複合壁によって囲まれている、医薬組成物(組成物P.2)を提供する。
【0025】
第7の態様のさらに別の実施態様において、本発明は、液体、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式I~IVおよびそれらに続く式で示される化合物または本発明の医薬組成物、例えば医薬組成物6もしくは6.1~6.10のいずれかを含有するゼラチンカプセルを含む組成物であって、該ゼラチンカプセルが、該ゼラチンカプセルの外表面と接触しているバリア層、該バリア層と接触している膨張層、該膨張層を覆っている半透過性層、および壁内に形成されたかまたは形成可能な出口オリフィスを含む複合壁によって囲まれており、該バリア層が該膨張層と該出口オリフィスでの環境との間でシールを形成する、組成物(組成物P.3)を提供する。
【0026】
第7の態様のさらに別の実施態様において、本発明は、液体、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式I~IVおよびそれらに続く式で示される化合物または本発明の医薬組成物、例えば医薬組成物6もしくは6.1~6.10のいずれかを含有するゼラチンカプセルを含む組成物であって、該ゼラチンカプセルが、該ゼラチンカプセルの外表面と接触しているバリア層、該バリア層の一部と接触している膨張層、少なくとも該膨張層を覆っている半透過性層、およびゼラチンカプセルの外表面から使用環境まで延びている、該投与剤形において形成されたかまたは形成可能な出口オリフィスによって囲まれている、組成物(組成物P.4)を提供する。該膨張層は、1つ以上の個別セクション、例えば、ゼラチンカプセルの対向する側部または端部に位置する2つのセクションで形成され得る。
【0027】
第7の態様の特定の実施態様において、浸透圧制御放出経口送達系(すなわち、組成物P.1~P.4)における本開示の化合物は、液体製剤であり、該製剤は、純粋な液体活性剤、溶液、懸濁液、乳濁液もしくは自己乳化組成物の液体活性剤、または同類のものであり得る。
【0028】
ゼラチンカプセル、バリア層、膨張層、半透過性層;およびオリフィスの特徴を含む浸透圧制御放出経口送達系のさらなる情報は、国際公開第2000/35419号(その内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)に見ることができる。
【0029】
式I~IVおよびそれらに続く式で示される化合物または本開示の医薬組成物についての他の浸透圧制御放出経口送達系は、欧州特許出願公開第1539115号(米国特許出願公開第2009/0202631号)(その内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)に見ることができる。したがって、第7の態様の別の実施態様において、本発明は、(a)2つ以上の層(この2つ以上の層は第1の層および第2の層を含み、該第1の層は、上記の、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式I~IVおよびそれらに続く式で示される化合物または医薬組成物を含み、該第2の層は、ポリマーを含む);(b)該2つ以上の層を囲む外壁;および(c)該外壁中のオリフィスを含む組成物またはデバイス(組成物P.5)を提供する。
【0030】
組成物P.5は、好ましくは、三層コアを囲む半透過膜を利用する:これらの実施態様において、第1の層は、第1薬物層と称され、少量の薬物(例えば、式I~IVおよびそれらに続く式で示される化合物)および浸透圧調整剤(osmotic agent)(例えば、塩)を含有し、第2薬物層と称される中間層は、より多量の薬物、および賦形剤を含有し、塩を含有せず;プッシュ層と称される第3の層は、浸透圧調整剤を含有し、薬物を含有しない。少なくとも1つのオリフィスは、カプセル型錠剤の第1薬物層末端で膜に穴を開ける。(組成物P.6)
【0031】
組成物P.5またはP.6は、コンパートメントを画定する膜であって、該膜が内部保護サブコートを囲んでおり、少なくとも1つの出口オリフィスがそこで形成されたかまたは形成可能であり、該膜の少なくとも一部が半透性である、膜;出口オリフィスから遠く離れて該コンパートメント内に位置する膨張層であって、該膜の半透過性部分と流体連結している膨張層;出口オリフィスと隣接して位置する第1薬物層;および該第1薬物層と該膨張層との間で該コンパートメント内に位置する第2薬物層を含み得、これら薬物層は、遊離形態の本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む。第1薬物層および第2薬物層の相対粘度によって異なる放出プロファイルが得られる。各層の最適な粘度を同定するのは不可欠である。本発明において、粘度は、塩、塩化ナトリウムの添加によって調節される。該コアからの送達プロファイルは、各薬物層の重量、処方および厚さに依存する。(組成物P.7)
【0032】
特定の実施態様において、本発明は、第1薬物層が塩を含み、第2薬物層が塩を含まない、組成物P.7を提供する。組成物P.5~P.7は、膜と薬物層との間に流動促進層を含んでもよい。
【0033】
組成物P.1~P.7は、概して、浸透圧制御放出経口送達系組成物と称される。
【0034】
第8の態様において、本発明は、中枢神経系障害の治療または予防のための方法であって、該治療または予防を必要とする患者に、式I~IVおよびそれらに続く式で示される化合物または医薬組成物6もしくは6.1~6.10またはP.1~P.7を投与することを含む、方法(方法1)を提供し、例えば、投与される化合物または組成物が下記のものである、方法1を提供する:
1.1 遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、化合物Iまたは1.1~1.30のいずれか;
1.2 遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、化合物IIまたは2.1~2.12のいずれか;
1.3 遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、化合物IIIまたは3.1~3.11のいずれか;
1.4 遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、化合物IVまたは4.1~4.11のいずれか;
1.5 実施態様5または5.1~5.5のいずれかの化合物;
1.6 薬学的に許容される希釈剤または担体と混合した、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式II-A、II-BまたはII-Cで示される化合物;
1.7 薬学的に許容される希釈剤または担体と混合した、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式III-A、III-BまたはIII-Cで示される化合物;
1.8 薬学的に許容される希釈剤または担体と混合した、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式IV-A、IV-BまたはIV-Cで示される化合物;
1.9 組成物6および6.1~6.10のいずれかによって記載されている医薬組成物;
1.10 薬学的に許容される希釈剤または担体と混合した、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式II-A、II-BまたはII-Cで示される化合物を含む、医薬組成物;
1.11 薬学的に許容される希釈剤または担体と混合した、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式III-A、III-BまたはIII-Cで示される化合物を含む、医薬組成物;
1.12 薬学的に許容される希釈剤または担体と混合した、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式IV-A、IV-BまたはIV-Cで示される化合物を含む、医薬組成物;
1.13 デポ組成物6.09または6.10に記載されているデポ組成物;
1.14 医薬組成物P.1~P.7;
1.15 上記されている浸透圧制御放出経口送達系組成物;
【0035】
第8の態様のさらなる好ましい実施態様において、本開示は、さらに以下のとおり記載される、方法1または方法1.1~1.15のいずれかを提供する:
1.16 中枢神経系障害が、肥満症、不安、うつ病(例えば、難治性うつ病およびMDD)、精神病(進行パーキンソン病における幻覚または偏執性妄想のような、認知症と関連する精神病を包含する)、統合失調症、睡眠障害(特に、統合失調症ならびに他の精神および神経疾患と関連する睡眠障害)、性障害、片頭痛、頭部痛と関連する状態、社会恐怖症、認知症における激越(例えば、アルツハイマー病における激越)、自閉症および関連自閉症性障害における激越、胃腸管運動の機能障害のような胃腸障害、および認知症、例えばアルツハイマー病もしくはパーキンソン病の認知症;気分障害;ならびに薬物依存症、例えば、オピエート依存症および/またはアルコール依存症、または薬物もしくはアルコール依存症(例えば、オピエート依存症)からの離脱症状;または過食性障害からなる群から選択される障害であり;例えば、例えば物質使用障害および随伴性(co-existing)中枢神経系障害の患者における、気分障害および物質使用障害(例えばオピエート乱用)の症状、例えばうつ病(双極性うつ病を包含する)、不安、睡眠障害、精神病(例えば、統合失調症)、または認知症(アルツハイマー病を包含する)である、方法1または1.1~1.15のいずれか;
1.17 中枢神経系障害が、国際公開第2009/145900号(その内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)に同様に記載されるようなセロトニン5-HT2A 、ドパミンD 2 受容体系および/またはセロトニン再取り込み輸送体(SERT)経路が関与する障害である、方法1または方法1.1~1.16のいずれか;
1.18 中枢神経系障害が、μ-オピオイド受容体が関与する障害である、方法1または方法1.1~1.17のいずれか;
1.19 中枢神経系障害が、()うつ病に罹患している患者における精神病(例えば、統合失調症);(2)精神病(例えば、統合失調症)に罹患している患者におけるうつ病;(3)精神病(例えば、統合失調症)またはパーキンソン病と関連する気分障害;(4)精神病(例えば、統合失調症)またはパーキンソン病と関連する睡眠障害;および(5)物質中毒、物質使用障害および/または物質誘発障害から選択される障害であり、患者が不安または不安障害の残遺障害に罹患している場合であってもよい、方法1または方法1.1~1.18のいずれか;
1.20 中枢神経系障害が精神病(例えば、統合失調症)であり、該患者がうつ病に罹患している患者である、方法1または方法1.1~1.18のいずれか;
1.21 該患者が、慣用の統合失調症治療薬(例えば、クロルプロマジン、ハロペリドール、ドロペリドール、フルフェナジン、ロキサピン、メソリダジン、モリンドン、ペルフェナジン、ピモジド、プロクロルペラジン、プロマジン、チオリダジン、チオチキセチン、トリフロペラジン、クロザピン、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドンおよびジプラシドン)の副作用に耐えられない、方法1または方法1.1~1.20のいずれか;
1.22 該患者が、慣用の統合失調症治療薬(例えば、ハロペリドール、アリピプラゾール、クロザピン、オランザピン、クエチアピン、リスペリドンおよびジプラシドン)の副作用に耐えられない、方法1または方法1.1~1.20のいずれか;
1.23 該障害がうつ病であり、該患者が精神病(例えば、統合失調症)またはパーキンソン病に罹患している患者である、方法1または方法1.1~1.22のいずれか;
1.24 該障害が睡眠障害であり、該患者がうつ病に罹患している、方法1または方法1.1~1.22のいずれか;
1.25 該1つ以上の障害が睡眠障害であり、該患者が精神病(例えば、統合失調症)に罹患している、方法1または方法1.1~1.22のいずれか;
1.26 該1つ以上の障害が睡眠障害であり、該患者がパーキンソン病に罹患している、方法1または方法1.1~1.22のいずれか;
1.27 該1つ以上の障害が睡眠障害であり、該患者がうつ病と精神病(例えば、統合失調症)またはパーキンソン病とに罹患している、方法1または方法1.1~1.22のいずれか;
1.28 該患者が、いずれもの上記障害を伴っていてもよい、薬物依存障害に罹患しており、例えば、患者がオピエート依存症および/またはアルコール依存症に罹患しているかまたは薬物もしくはアルコール依存症からの離脱症状に罹患しており、患者が不安または不安障害の残遺症状に罹患している場合であってもよい、方法1または1.1~1.27のいずれか;
1.29 有効量が1mg~1000mg、好ましくは2.5mg~50mgである、上記方法のいずれか;
1.30 有効量が1mg~100mg/日、好ましくは2.5mg~50mg/日である、上記方法のいずれか;
1.31 治療されるべき状態が、例えば、ドパミン作用薬、例えばレボドパおよびレボドパ補助剤(カルビドパ、COMT阻害剤、MAO-B阻害剤)、ドパミンアゴニストならびに抗コリン薬から選択される薬物、例えばレボドパを投与されている患者における、ジスキネジアである、上記方法のいずれか;
1.32 患者がパーキンソン病に罹患している上記の方法のいずれか。
【0036】
物質使用障害および物質誘発障害は、DSM(精神障害の診断と統計マニュアル)の第5版によって定義されている物質関連障害の2つのカテゴリーである。物質使用障害は、個体が、結果として問題を抱えているにもかかわらず取り続ける物質の使用により生じる症状のパターンである。物質誘発障害は、物質の使用により誘発される障害である。物質誘発障害としては、中毒、離脱症状、物質誘発精神障害(物質誘発精神病、物質誘発双極性および関連障害、物質誘発うつ病性障害、物質誘発不安障害、物質誘発強迫性および関連障害、物質誘発睡眠障害、物質誘発性機能障害、物質誘発せん妄および物質誘発神経認知障害を包含する)が挙げられる。
【0037】
DSM-Vは、物質使用障害を軽度、中等度または重度に分類する判断基準を含む。本明細書に開示の方法のいくつかの実施態様において、物質使用障害は、軽度物質使用障害、中等度物質使用障害または重度物質使用障害から選択される。いくつかの実施態様において、物質使用障害は、軽度物質使用障害である。いくつかの実施態様において、物質使用障害は、中等度物質使用障害である。いくつかの実施態様において、物質使用障害は重度物質使用障害である。
【0038】
不安は、物質使用または物質乱用の治療を受けている患者において高度に蔓延している合併性障害である。物質乱用障害のための一般的な治療は、オピオイド部分作動薬であるブプレノルフィンとオピオイド拮抗薬であるナロキソンとの併用であるが、これらの薬物はどちらも不安に対して有意な効果がなく、かくして、ベンゾジアゼピン系抗不安薬のような第3の薬物という共通の結果をもたらす。これは、治療計画および患者のコンプライアンスをより困難にする。対照的に、本開示の化合物は、セロトニンアンタゴニズムおよびドパミンモジュレーションとともにオピエートアンタゴニズムを提供する。これにより、物質使用または乱用障害を不安と併発している患者の治療が有意に増強され得る。
【0039】
かくして、いくつかの実施態様において、本開示は、中枢神経系障害が、例えば不安の症状に罹患している患者または合併性障害としてまたは残遺障害としての不安と診断された患者における、物質中毒、物質使用障害および/または物質誘発障害、または物質使用障害であり、方法がベンゾジアゼピンのような抗不安剤のさらなる投与を含まない、方法1または方法1.1~1.32のいずれかに係る方法を提供する。ベンゾジアゼピンは、下記の方法3.1および3.2を参照して説明するものを含む、GABA調節化合物である。
【0040】
別の実施態様において、本開示は、式I~IVおよびそれらに続く式で示される化合物または医薬組成物6もしくは6.1~6.10またはP.1~P.7が以下のものを含む、方法1または方法1.1~1.32のいずれかを提供する:
1.33 薬学的に許容される希釈剤または担体と混合した、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式II-A、II-B、II-CまたはII-Dで示される化合物;
1.34 薬学的に許容される希釈剤または担体と混合した、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式III-A、III-BまたはIII-Cで示される化合物;または
1.35 薬学的に許容される希釈剤または担体と混合した、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式IV-A、IV-BまたはIV-Cで示される化合物。
【0041】
さらに別の実施態様において、本開示は、障害が統合失調症または睡眠障害である、上記の方法1または1.1~1.35のいずれかを提供する。
【0042】
さらに別の実施態様において、本開示は、本発明のデポ組成物(例えば、式6.8~6.10のいずれかのデポ組成物)、または(医薬)組成物6もしくは6.1~6.7、または組成物P.1~P.7が、約14日間、約30日間~約180日間にわたって、好ましくは約30日間、約60日間または約90日間にわたって、本発明の化合物の制御放出および/または徐放のために投与される、方法1.1~1.35を提供する。制御放出および/または徐放は、特に投薬計画の不履行またはノンアドヒアランスが一般的な出来事である統合失調症治療薬療法のための、治療の早期中断を回避するのに特に有用である。
【0043】
さらに別の実施態様において、本発明は、本開示のデポ組成物が、一定期間にわたって、本発明の化合物の制御放出および/または徐放のために投与される、上記の方法1または1.1~1.35のいずれかを提供する。
【0044】
第9の態様において、本発明は、1つ以上の睡眠障害の予防または治療のための方法であって、該予防または治療を必要とする患者に、式I~IVおよびそれらに続く式で示される化合物または医薬組成物6もしくは6.1~6.10またはP.1~P.7を投与することを含む、方法(方法2)を提供し、例えば、投与される化合物または組成物が以下のものである方法2を提供する:
2.1 遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、化合物Iまたは1.1~1.30;
2.2 遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、化合物IIまたは2.1~2.12;
2.3 遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、化合物IIIまたは3.1~3.11;
2.4 遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、化合物IVまたは4.1~4.11;
2.5 化合物5または5.1~5.5;
2.6 薬学的に許容される希釈剤または担体と混合した、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式II-A、II-B、II-CまたはII-Dで示される化合物;
2.7 薬学的に許容される希釈剤または担体と混合した、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式III-A、III-BまたはIII-Cで示される化合物;
2.8 薬学的に許容される希釈剤または担体と混合した、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式IV-A、IV-BまたはIV-Cで示される化合物;
2.9 組成物6および6.1~6.10のいずれかによって記載されている医薬組成物;
2.10 薬学的に許容される希釈剤または担体と混合した、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式II-A、II-BまたはII-Cで示される化合物を含む、医薬組成物;
2.11 薬学的に許容される希釈剤または担体と混合した、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式III-A、III-BまたはIII-Cで示される化合物を含む、医薬組成物;
2.12 薬学的に許容される希釈剤または担体と混合した、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式IV-A、IV-BまたはIV-Cで示される化合物を含む、医薬組成物;
2.13 デポ組成物6.09または6.10に記載されているデポ組成物;
2.14 医薬組成物P.1~P.7;
2.15 上記されている浸透圧制御放出経口送達系組成物;
【0045】
第9の態様のさらなる好ましい実施態様において、本発明は、睡眠障害が、睡眠維持障害、頻発覚醒(frequent awakenings)、および目覚め時にすっきりしていないこと(waking up feeling unrefreshed)を包含する、方法2または2.1~2.15を提供する;例えば:
2.16 睡眠障害が睡眠維持障害である、上記の方法のいずれか;
2.17 有効量が、1日当たり、1mg~5mg、好ましくは2.5~5mgである、上記の方法のいずれ;
2.18 有効量が、1日当たり2.5mgまたは5mgである、上記の方法のいずれか;
2.19 睡眠障害が、ジスキネジアに罹患しているかまたはそのリスクがある患者、例えば、例えばレボドパおよびレボドパ補助剤(カルビドパ、COMT阻害剤、MAO-B阻害剤)、ドパミンアゴニスト、および抗コリン薬から選択されるドパミン作用薬を投与されている患者、例えばレボドパを投与されている患者におけるものである、上記の方法のいずれか;
2.20 患者がパーキンソン病に罹患している、上記の方法のいずれか。
【0046】
第9の態様のさらなる好ましい実施態様において、本発明は、睡眠障害が、睡眠維持障害、頻発覚醒、および目覚め時にすっきりしていないことを包含する、方法2または2.1~2.20のいずれかを提供する。
【0047】
本開示の化合物、本開示の医薬組成物または本開示のデポ組成物は、第2の治療剤と併せて、慣用の単剤療法で一般的に生じる望ましくない副作用を生じることなく併用薬剤の治療活性を増強するように、特に個々の薬剤が単剤療法として使用される場合よりも低い用量で、使用され得る。したがって、本開示の化合物は、他の抗うつ薬、抗精神病薬、他の睡眠薬、および/またはパーキンソン病または気分障害の治療に使用する薬剤と同時に(simultaneously)、連続して(sequentially)、または同時期に(contemporaneously)、投与され得る。別の例において、副作用は、遊離形態または塩形態の1つ以上の第2の治療剤と組み合わせて本開示の化合物を投与することによって(ここで、(i)第2の治療剤の用量または(ii)本開示の化合物と第2の治療剤の療法の用量は、該薬剤/化合物が単剤療法として投与される場合よりも少ない)、減少し得るかまたは最小化され得る。特定の実施態様において、本開示の化合物は、例えばパーキンソン病の治療に使用されるような、例えばレボドパおよびレボドパ補助剤(カルビドパ、COMT阻害剤、MAO-B阻害剤)、ドパミンアゴニストおよび抗コリン薬から選択される、ドパミン作用薬を投与されている患者におけるジスキネジアの治療に有用である。
【0048】
したがって、第10の態様において、本開示は、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、GABA活性を調節する(例えば、該活性を増強し、GABA伝達を促進する)化合物、GABA-Bアゴニスト、5-HT調節薬(例えば、5-HTIaアゴニスト、5-HT2Aアンタゴニスト、5-HT2aインバースアゴニスト等)、メラトニンアゴニスト、イオンチャネル調節薬(例えば、ブロッカー)、セロトニン-2アンタゴニスト/再取り込み阻害剤(SARI)、オレキシン受容体アンタゴニスト、H3アゴニストまたはアンタゴニスト、ノルアドレナリン作動性アゴニストまたはアンタゴニスト、ガラニンアゴニスト、CRHアンタゴニスト、ヒト成長ホルモン、成長ホルモンアゴニスト、エストロゲン、エストロゲンアゴニスト、ニューロキニン-1薬、抗うつ薬、およびオピエートアゴニストおよび/または部分オピエートアゴニスト、および統合失調症治療薬、例えば、非定型統合失調症治療薬から選択される1つ以上の治療薬をさらに含む、方法Iもしくは方法1.1~35のいずれか、または方法2もしくは2.1~20のいずれかを提供する(それぞれ、方法I-AおよびII-A;まとめて、「方法3」)。
【0049】
第10の態様のさらなる好ましい実施態様において、本発明は、1つ以上の治療薬をさらに含む、以下のとおりの方法I-AまたはII-Aを提供する。
3.1 該治療薬が、GABA活性を調節する(例えば、該活性を増強し、GABA伝達を促進する)化合物である、方法I-AまたはII-A;
3.2 GABA化合物が、ドキセピン、アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼペート、ジアゼパム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパム、テマゼパム、トリアゾラム、インジプロン、ゾピクロン、エスゾピクロン、ザレプロン、ゾルピデム、ガボキサドール、ビガバトリン、チアガビン、EVT 201(Evotec Pharmaceuticals)およびエスタゾラムのうち1つ以上からなる群から選択される、方法I-AまたはII-Aまたは3.1;
3.3 該治療薬がさらなる5HT2aアンタゴニストである、方法I-AまたはII-A;
3.4 該さらなる5HT2aアンタゴニストが、ケタンセリン、リスペリドン、エプリバンセリン、ボリナンセリン(Sanofi-Aventis、France)、プルバンセリン、MDL 100907(Sanofi-Aventis、France)、HY 10275(Eli Lilly)、APD 125(Arena Pharmaceuticals、San Diego、CA)、およびAVE8488(Sanofi-Aventis、France)のうち1つ以上からなる群から選択される、方法I-AまたはII-Aまたは3.3;
3.5 該治療薬がメラトニンアゴニストである、方法I-AまたはII-A;
3.6 該メラトニンアゴニストが、メラトニン、ラメルテオン(ROZEREM(登録商標)、武田薬品工業株式会社、日本)、VEC-162(Vanda Pharmaceuticals、Rockville、MD)、PD-6735(Phase II Discovery)およびアゴメラチンのうち1つ以上からなる群から選択される、方法I-AまたはII-Aまたは3.5;
3.7 該治療薬がイオンチャネルブロッカーである、方法I-AまたはII-A;
3.8 該イオンチャネルブロッカーが、ラモトリギン、ガバペンチンおよびプレガバリンのうち1つ以上である、方法I-AまたはII-Aまたは3.7;
3.9 該治療薬がオレキシン受容体アンタゴニストである、方法I-AまたはII-A;
3.10 該オレキシン受容体アンタゴニストが、オレキシン、1,3-ビアリール尿素、SB-334867-a(GlaxoSmithKline、UK)、GW649868(GlaxoSmithKline)およびベンズアミド誘導体からなる群から選択される、方法I-AまたはII-Aまたは3.9;
3.11 該治療薬がセロトニン-2アンタゴニスト/再取り込み阻害剤(SARI)である、方法I-AまたはII-A;
3.12 該セロトニン-2アンタゴニスト/再取り込み阻害剤(SARI)が、1つ以上のOrg 50081(Organon-Netherlands)、リタンセリン、ネファゾドン、セルゾンおよびトラゾドンからなる群から選択される、方法I-AまたはII-Aまたは3.11;
3.13 該治療薬が5HTIaアゴニストである、方法I-AまたはII-A;
3.14 該5HTIaアゴニストが、レピノタン、サリゾタン、エプタピロン、ブスピロンおよびMN-305(MediciNova、San Diego、CA)のうち1つ以上からなる群から選択される、方法I-AまたはII-Aまたは3.13;
3.15 該治療薬がニューロキニン-1薬である、方法I-AまたはII-A;
3.16 該ニューロキニン-1薬がカソピタント(GlaxoSmithKline)である、方法I-AまたはII-Aまたは3.15;
3.17 該治療薬が統合失調症治療薬である、方法I-AまたはII-A;
3.18 該統合失調症治療薬が、クロルプロマジン、ハロペリドール、ドロペリドール、フルフェナジン、ロキサピン、メソリダジン、モリンドン、ペルフェナジン、ピモジド、プロクロルペラジン、プロマジン、チオリダジン、チオチキセチン、トリフロペラジン、クロザピン、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドンおよびパリペリドンからなる群から選択される、方法I-AまたはII-Aまたは3.17;
3.19 該治療薬が抗うつ薬である、方法I-AまたはII-A;
3.20 該抗うつ薬が、アミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、シタロプラム、クロミプラミン、デシプラミン、ドキセピン、デュロキセチン、エスシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、イミプラミン、イソカルボキサジド、マプロチリン、ミルタザピン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、パロキセチン、フェネルジン硫酸塩、プロトリプチリン、セルトラリン、トラニルシプロミン、トラゾドン、トリミプラミン、およびベンラファキシンから選択される、方法I-AまたはII-Aまたは3.19;
3.21 該統合失調症治療薬が非定型統合失調症治療薬である、方法I-AまたはII-A、3.17または3.18;
3.22 該非定型統合失調症治療薬が、クロザピン、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドン、およびパリペリドンからなる群から選択される、方法I-AまたはII-Aまたは3.17-3.21のいずれか;
3.23 該治療薬が、方法3.1~3.22のいずれかから選択され、例えば、モダフィニル、アルモダフィニル、ドキセピン、アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼペート、ジアゼパム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパム、テマゼパム、トリアゾラム、インジプロン、ゾピクロン、エスゾピクロン、ザレプロン、ゾルピデム、ガボキサドール、ビガバトリン、チアガビン、EVT 201(Evotec Pharmaceuticals)、エスタゾラム、ケタンセリン、リスペリドン、エプリバンセリン、ボリナンセリン(Sanofi-Aventis、France)、プルバンセリン、MDL 100907(Sanofi-Aventis、France)、HY 10275(Eli Lilly)、APD 125(Arena Pharmaceuticals、San Diego、CA)、AVE8488(Sanofi-Aventis、France)、レピノタン、サリゾタン、エプタピロン、ブスピロン、MN-305(MediciNova、San Diego、CA)、メラトニン、ラメルテオン(ROZEREM(登録商標)、武田薬品工業株式会社、日本)、VEC-162(Vanda Pharmaceuticals、Rockville、MD)、PD-6735(Phase II Discovery)、アゴメラチン、ラモトリギン、ガバペンチン、プレガバリン、オレキシン、1,3-ビアリール尿素、SB-334867-a(GlaxoSmithKline、UK)、GW649868(GlaxoSmithKline)、ベンズアミド誘導体、Org 50081(Organon-Netherlands)、リタンセリン、ネファゾドン、セルゾン、トラゾドン、カソピタント(GlaxoSmithKline)、アミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、シタロプラム、クロミプラミン、デシプラミン、ドキセピン、デュロキセチン、エスシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、イミプラミン、イソカルボキサジド、マプロチリン、ミルタザピン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、パロキセチン、フェネルジン硫酸塩、プロトリプチリン、セルトラリン、トラニルシプロミン、トラゾドン、トリミプラミン、ベンラファキシン、クロルプロマジン、ハロペリドール、ドロペリドール、フルフェナジン、ロキサピン、メソリダジン、モリンドン、ペルフェナジン、ピモジド、プロクロルペラジン、プロマジン、チオリダジン、チオチキセチン、トリフロペラジン、クロザピン、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドンおよびパリペリドンからなる群から選択される、方法I-AまたはII-A;
3.24 該治療薬がH3アゴニストである、方法I-AまたはII-A;
3.25 該治療薬がH3アンタゴニストである、方法I-AまたはII-A;
3.26 該治療薬がノルアドレナリン作動性アゴニストまたはアンタゴニストである、方法I-AまたはII-A;
3.27 該治療薬がガラニンアゴニストである、方法I-AまたはII-A;
3.28 該治療薬がCRHアンタゴニストである、方法I-AまたはII-A;
3.29 該治療薬がヒト成長ホルモンである、方法I-AまたはII-A;
3.30 該治療薬が成長ホルモンアゴニストである、方法I-AまたはII-A;
3.31 該治療薬がエストロゲンである、方法I-AまたはII-A;
3.32 該治療薬がエストロゲンアゴニストである、方法I-AまたはII-A;
3.33 該治療薬がニューロキニン-1薬である、方法I-AまたはII-A;
3.34 該治療薬が式(I)で示される化合物と組み合わせられ、該治療薬が、抗パーキンソン薬、例えば、L-ドパ、コ-カレルドパ、デュオドパ、スタレボ、シンメトレル、ベンゾトロピン、ビペリデン、ブロモクリプチン、エンタカポン、ペルゴリド、プラミペキソール、プロシクリジン、ロピニロール、セレギリンおよびトルカポンである、方法I-AまたはII-A;
3.35 該治療薬が、オピエートアゴニストまたは部分オピエートアゴニスト、例えば、μアゴニストもしくは部分アゴニスト、またはκアゴニストもしくは部分アゴニスト(混合アゴニスト/アンタゴニスト(例えば、部分μアゴニスト活性およびκアンタゴニスト活性を有する薬剤)を含む)である、方法I-AまたはII-A;
3.36 該治療薬がブプレノルフィンであり、該方法が抗不安剤(例えば、GABA化合物またはベンゾジアゼピン)との共処置を含まない場合であってもよい、方法3.35;
3.37 式(I)で示される化合物が、下記の疾患および/またはパーキンソン病に罹患している患者における睡眠障害、うつ病、精神病またはその組合せの治療に使用され得る、方法I-AまたはII-A;
3.38 該障害が、精神病(例えば、統合失調症)、うつ病、気分障害、睡眠障害(例えば、睡眠維持および/または睡眠開始)またはその障害の組合せのうち少なくとも1つ以上から選択される、方法I-AまたはII-A;
3.39 該障害が睡眠障害である、上記の方法のいずれか;
3.40 該障害が精神病(例えば、統合失調症)またはパーキンソン病と関連する睡眠障害である;遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、上記の方法のいずれか。
【0050】
本発明の第11の態様において、本開示の化合物と、方法I-A、II-Aまたは方法3もしくは3.1~3.40に記載の1つ以上の第2の治療剤との組合せは、上記の医薬組成物またはデポ組成物として投与され得る。該組合せ組成物は、併用薬物の混合物、およびこれら薬物の2つ以上の個別の組成物を包含することができ、この個々の組成物は、例えば患者に一緒に共投与され得る。
【0051】
特定の実施態様において、方法I-A、II-A、3または3.1~3.40は、必要とする患者に、本発明の化合物を、非定型統合失調症治療薬、例えば、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、クロザピン、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドンまたはパリペリドンから選択される化合物と組み合わせて投与することを含み、例えば、非定型統合失調症治療薬の用量が減少し、および/または副作用が減少する。
【0052】
別の実施態様において、方法I-A、II-A、3または3.1~3.40は、必要とする患者に、本発明の化合物を、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、抗うつ薬、例えば、アミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、シタロプラム、クロミプラミン、デシプラミン、ドキセピン、デュロキセチン、エスシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、イミプラミン、イソカルボキサジド、マプロチリン、ミルタザピン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、パロキセチン、フェネルジン硫酸塩、プロトリプチリン、セルトラリン、トラニルシプロミン、トラゾドン、トリミプラミンまたはベンラファキシンと組み合わせて投与することを含む。別法として、該抗うつ薬は、本発明の化合物に加えて補助薬として使用され得る。
【0053】
さらに別の実施態様において、方法I-A、II-A、3または3.1~3.40は、必要とする患者に、本発明の化合物を、GABA活性を調節する化合物、例えば、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、ドキセピン、アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼペート、ジアゼパム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパム、テマゼパム、トリアゾラム、インジプロン、ゾピクロン、エスゾピクロン、ザレプロン、ゾルピデム、ガボキサドール、ビガバトリン、チアガビン、EVT 201(Evotec Pharmaceuticals)、エスタゾラムまたはその組合せから選択される化合物と組み合わせて投与することを含む。他の実施態様において、本明細書に記載の該方法は、GABA化合物、ベンゾジアゼピンまたは他のいずれかもの抗不安剤の投与をさらには含まない。
【0054】
別の好ましい実施態様において、方法I-A、II-A、3または3.1~3.40は、必要とする患者に、本発明の化合物を遊離形態または薬学的に許容される塩形態のドキセピンと組み合わせて投与することを含む。ドキセピンの用量は、当業者に公知の範囲内で変化し得る。一の例において、ドキセピンの用量10mgをいずれかの用量の本発明の化合物と組み合わせることができる。
【0055】
別の実施態様において、方法I-A、II-A、3または3.1~3.40は、必要とする患者に、本発明の化合物を、非定型刺激薬、例えば、モダフィニル、アドラフィニルまたはアルモダフィニルと組み合わせて(連日投与計画の一部として含む)投与することを含む。本発明の化合物を該薬物と一緒に組み込む投与計画は、より規則的な睡眠を促進し、例えば、双極性うつ病、統合失調症と関連する認知、ならびにパーキンソン病および癌のような状態における過剰な眠気および疲労の治療において、高レベルの該薬物と関連する精神病または躁病のような副作用を回避する。
【0056】
式I~IVおよびそれらに続く式で示される化合物;医薬組成物6および6.1~6.8;デポ組成物6.9および6.10;組成物P.1~P.7;方法1および1.1~1.35;ならびに方法2および2.1~2.20の各々のいくつかの実施態様において、本開示の化合物は、式Aで示される化合物を実質的に含まない。
【0057】
第12の態様において、本発明は、例えば方法1もしくは1.1~1.35のいずれか、方法2および2.1~2.20のいずれか、ならびに方法3もしくは3.3-3.40、または本発明の第11の態様に記載の方法における、上記の1つ以上の障害の治療または予防のための(医薬の製造における)、以下に記載される化合物の使用を提供する:
11.1 遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、化合物Iまたは1.1~1.30;
11.2 遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、化合物IIまたは2.1~2.12;
11.3 遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、化合物IIIまたは3.1~3.11;
11.4 遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、化合物IVまたは4.1~4.11;
11.5 化合物5または5.1~5.5;
11.6 遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式II-A、II-B、II-C、II-DまたはII-Eで示される化合物;
11.7 遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式III-A、III-BまたはIII-Cで示される化合物;
11.8 遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式IV-A、IV-BまたはIV-Cで示される化合物;
11.9 医薬組成物6および6.1~6.10;
11.10 医薬組成物P.1~P.7;
11.11 上記の浸透圧制御放出経口送達系組成物。
【0058】
第13の態様において、本発明は、例えば、方法1および1.1~1.35のいずれか、方法2および2.1~2.20、方法I-A、II-A、3もしくは3.1~3.40、または本発明の第11または第12の態様に記載の方法における、上記の1つ以上の障害の治療または予防用の、上記の医薬組成物、例えば
12.1 医薬組成物6および6.1~6.10;
12.2 医薬組成物P.1~P.7;
12.3 上記の浸透圧制御放出経口送達系組成物
を提供する。
【0059】
発明の詳細な説明
他に特記されない場合または文脈から明らかでない場合、本明細書で用いる下記の用語は、下記の意味を有する:
【0060】
本明細書で用いる場合、「アルキル」とは、例えば1~21炭素原子長の、飽和または不飽和炭化水素であり、特記しない限り、直鎖または分枝鎖であってよく(例えば、n-ブチルまたはtert-ブチル)、好ましくは直鎖である。例えば、「C1-21アルキル」は、1~21個の炭素原子を有するアルキルを意味する。一の実施態様において、アルキルは、1つ以上のヒドロキシまたはC1-22アルコキシ(例えば、エトキシ)基で置換されていてもよい。別の実施態様において、アルキルは、1~21個の炭素原子を含有し、好ましくは直鎖であり、飽和または不飽和であってよく、例えば、いくつかの実施態様において、R1は、例えば、結合している-C(O)-と一緒になって、例えば式Iで示される化合物から切断される場合、天然または非天然の飽和または不飽和脂肪酸の残基を形成するような、1~21個の炭素原子、好ましくは6~15個の炭素原子、16~21個の炭素原子を含有するアルキル鎖である。
【0061】
用語「薬学的に許容される希釈剤または担体」は、医薬製剤に有用であり、アレルギー性、発熱性または病原性であって病気を引き起こす可能性があるかまたは促進する可能性があることが知られている物質を含まない、希釈剤および担体を意味するよう意図されている。薬学的に許容される希釈剤または担体は、かくして、血液、尿、髄液、唾液などのような体液、ならびに血液細胞および血中タンパク質のようなそれらの構成成分を排除する。好適な薬学的に許容される希釈剤および担体は、例えば下記のような医薬製剤についてのいくつかの周知の論文のいずれかに見ることができる:Anderson, Philip O.; Knoben, James E.; Troutman, William G, eds., Handbook of Clinical Drug Data, Tenth Edition, McGraw-Hill, 2002;Pratt and Taylor, eds., Principles of Drug Action, Third Edition, Churchill Livingston, New York, 1990;Katzung, ed., Basic and Clinical Pharmacology, Ninth Edition, McGraw Hill, 20037ybg;Goodman and Gilman, eds., The Pharmacological Basis of Therapeutics, Tenth Edition, McGraw Hill, 2001;Remington's Pharmaceutical Sciences, 20th Ed., Lippincott Williams & Wilkins., 2000;およびMartindale, The Extra Pharmacopoeia, Thirty-Second Edition (The Pharmaceutical Press, London, 1999);これらの全ては出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する。
【0062】
化合物についての用語「精製された」、「精製された形態の」または「単離および精製された形態の」とは、合成工程(例えば、反応混合物から)、またはその天然源もしくはまたはその組合せから単離された後の該化合物の物理的状態をいう。かくして、化合物についての用語「精製された」、「精製された形態の」または「単離および精製された形態の」とは、本明細書に記載されているかまたは当業者に周知である標準的な分析技術によって特徴付けられるのに十分な純度の、本明細書に記載されているかまたは当業者に周知である精製工程(例えば、クロマトグラフィー、再結晶、LC-MSおよびLC-MS/MS技術など)から得られた後の該化合物の物理的状態を表す。
【0063】
例えば式II-BおよびII-Cで示される化合物を包含する、Zが-(C=O)-または-(CH(OH))-である式Iで示される化合物は、式Aで示される化合物の代謝物および/または式Bで示される化合物の代謝物として生成され得る:
【化18】
【化19】
式Aで示される化合物は、国際公開第2009/145900号(その内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)に同様に開示されクレームに挙げられているように、重大な錐体外路副作用を伴わずに、5-HT2A、SERTおよび/またはD2受容体関連障害の有効な治療を提供することが知られている。しかしながら、式Aで示される化合物の代謝により生成される式II-BおよびII-Cで示される化合物の血漿中濃度は、かなり低く、おそらく、式Aで示される化合物の治療活性と有意に寄与しない。式II-DおよびII-Eで示される化合物もまた代謝物として存在することができるが、これはこれまでのところ検出されていない。式Iで示される化合物は、予想外にμ-オピオイド受容体のアンタゴニストとして活性を有することが判明した。式Aで示される化合物がμ-オピオイド受容体活性または結合を有することは知られておらず、また理解されていなかったので、このことは予想外である。Xが-NH-であり、Lが-O-である式Iで示される化合物は、特に優れたμ-オピオイド受容体アンタゴニズムを有することが示される。したがって、このような式Iで示される化合物は、違法薬物投与に対する内因性オピエート反応を阻害することによって、また違法オピエート薬物の摂取の直接的作用を阻害することによって、オピエート依存症および/またはアルコール依存症のような薬物依存の治療に有用であり得る。
【0064】
式Aで示される化合物の代謝物が式Aで示される化合物と若干異なる相対的な受容体結合アフィニティを有することは驚くべきことである。例えば、式II-Bで示される化合物の受容体結合プロファイルは非常に特有のものであり、5-HT2A、D1およびμオピエート受容体でのアンタゴニスト活性の組合せにより、この化合物は気分障害の治療に非常に興味深いものになる。式Aで示される化合物は、例えば、μオピエート受容体では活性ではない。
【0065】
他に特記しない限り、本開示の化合物、例えば、化合物Iもしくは1.1~1.30、化合物IIもしくは2.1~2.18、化合物IIIもしくは3.1~3.13、または化合物IVもしくは4.1~4.13(まとめて、式I~IVおよびそれらに続く式で示される化合物)は、遊離形態または塩形態(例えば、酸付加塩として)で存在し得る。十分に塩基性である本発明の化合物の酸付加塩、例えば、例えば無機酸または有機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、マレイン酸、トルエンスルホン酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パルモ酸(palmoic acid)、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸などとの酸付加塩。加えて、十分に酸性である本発明の化合物の塩は、アルカリ金塩、例えばナトリウム塩もしくはカリウム塩、アルカリ土類金属塩、例えばカルシウム塩もしくはマグネシウム塩、アンモニウム塩、または生理学的に許容されるカチオンを提供する有機塩基との塩、例えばメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ピペリジン、モルホリンもしくはトリス(2-ヒドロキシエチル)-アミンとの塩である。特定の実施態様において、本発明の化合物の塩はトルエンスルホン酸付加塩である。別の特定の実施態様において、本発明の化合物の塩はフマル酸付加塩である。特定の実施態様において、本発明の化合物の塩はリン酸付加塩である。
【0066】
本開示の化合物は医薬品としての使用を意図しており、したがって、薬学的に許容される塩が好ましい。医薬用途に適さない塩は、例えば本発明の遊離化合物の単離または精製に有用であり得、したがって、包含される。
【0067】
本開示の化合物は、1つ以上のキラル炭素原子を含み得る。かくして、該化合物は、個々の異性体、例えばエナンチオマー形態またはジアステレオマー形態で、または個々の形態の混合物として、例えば、ラセミ/ジアステレオマー混合物として存在する。不斉中心が(R)配置、(S)配置、または(R,S)配置であるいずれもの異性体が存在し得る。本発明は、両方の個々の光学活性異性体、およびその混合物(例えば、ラセミ/ジアステレオマー混合物)を包含すると解されるべきである。したがって、本発明の化合物は、ラセミ混合物であり得るか、または、主に、例えば純粋なまたは実質的に純粋な異性体形態で、例えば70%を超えるエナンチオマー/ジアステレオマー過剰率(「ee」)、好ましくは80%を超えるee、より好ましくは90%を超えるee、最も好ましくは95%を超えるeeであり得る。該異性体の精製および該異性体混合物の分離は、当該技術分野で公知の標準的な技術(例えば、カラムクロマトグラフィー、分取TLC、分取HPLC、疑似移動床など)によって行われ得る。
【0068】
二重結合または環についての置換基の性質による幾何異性体は、シス(Z)またはトランス(E)形態で存在し得、両方の異性体形態は、本発明の範囲内に含まれる。
【0069】
本開示の化合物は、それらの安定な同位体および不安定な同位体を含むことも意図される。安定な同位体は、同じ種(すなわち、元素)の大量に存在する核種と比べて1個のさらなる中性子を含有する非放射性同位体である。このような同位体を含む化合物の活性は保持され、このような化合物はまた非同位体アナログの薬物動態を測定するための有用性を有することが予想される。例えば、本開示の化合物のある位置における水素原子は、重水素(非放射性である安定な同位体)と置き換えられることができる。公知の安定な同位体の例としては、重水素、13C、15N、18Oが挙げられるが、これらに限定されない。別法として、同じ種(すなわち、元素)の多量に存在する核種と比べてさらなる中性子を含有する放射性同位体である不安定な同位体、例えば、123I、131I、125I、11C、18Fは、I、CおよびFの対応する大量に存在する種と置き換わることができる。本発明の化合物の有用な同位体の別の例は、11C同位体である。これらの放射性同位体は、本発明の化合物の放射線画像研究および/または薬物動態研究に有用である。加えて、天然の同位体分布を有する原子を重同位体で置換することによって、これらの置換が代謝的に責任のある部位で行われた場合に薬物動態速度の望ましい変化がもたらされ得る。例えば、水素の代わりに重水素(2H)を取り込むことにより、水素の位置が酵素活性または代謝活性の部位である場合に代謝分解が遅くなり得る。
【0070】
本開示の化合物の特有の特徴に加えて、Yが-C(H)(OH)-である式Iで示される化合物はエステル化されて、生理学的に加水分解性でかつ許容されるエステルプロドラッグを形成することもできる。本明細書で用いる場合、「生理学的に加水分解性でかつ許容されるエステル」とは、生理的条件下で加水分解できて、一方ではヒドロキシを、他方では酸(例えば、カルボン酸)を生じ、投与されるべき用量で自体が生理学的に耐えられる本開示の化合物のエステルを意味する。例えば、Yが-C(H)(OH)である式Iまたは式IIで示される化合物は、エステル化されてプロドラッグ、すなわち、R1が-C(O)-C1-21アルキルである式Iまたは式IIで示される化合物を形成する。いくつかの好ましい実子態様において、R1は、-C(O)-C1-21アルキル、例えばアシル酸エステル、例えば、ヘプタン酸エステル、オクタン酸エステル、デカン酸エステル、ドデカン酸エステル、テトラデカン酸エステルまたはヘキサデカン酸エステルである。
【0071】
同様に、本開示の化合物がアミン基を含有する場合、投与後にインビボでプロドラッグが切断されてアミン代謝物を放出する該アミンのプロドラッグ、例えば、メチルアミンプロドラッグも存在し得る。
【0072】
1が、-C(O)-C1-21アルキルであり、好ましくは-C6-21アルキルであり、より好ましくはC6-15アルキルであり、より好ましくは直鎖であって、飽和または不飽和であり、1つ以上のヒドロキシまたはアルコキシ基で置換されていてもよいものである本開示の化合物のプロドラッグは、特に長時間作用効果を達成するような、例えば、本開示の化合物が、例えば本明細書に記載のデポ組成物のいずれかにおいて記載されるように、約14日間~約30日間~約180日間にわたって、好ましくは約30日間または約60日間または約90日間にわたって放出される、徐放および/または遅延放出のために有用である。好ましくは、徐放および/または遅延放出製剤は、注射製剤である。
【0073】
別法として、および/または加えて、本開示の化合物は、ポリマーが経時的に分解するにつれて該化合物が連続的に放出されるように、例えば組成物6および6.1~6.10のいずれかに記載されるポリマーマトリックスに本発明の化合物を分散、溶解または封入させることによって、デポ製剤として含まれ得る。ポリマーマトリックスからの本発明の化合物の放出は、例えば医薬デポ組成物から、該医薬デポが投与される対象体(例えば、ヒトのような温血動物)への、化合物の制御放出および/または遅延放出および/または徐放を提供する。かくして、該医薬デポは、長時間、例えば、14日間~180日間、好ましくは約30日間、約60日間または約90日間にわたって、特定の疾患または医学的状態の治療に効果的な濃度で本発明の化合物を対象体に送達する。
【0074】
本発明の組成物(例えば、本発明のデポ組成物)におけるポリマーマトリックスのために有用なポリマーとしては、ヒドロキシ脂肪酸のポリエステルおよびその誘導体、または他の剤、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリクエン酸、ポリリンゴ酸、ポリ-β-ヒドロキシ酪酸、ε-カプロカクトン開環ポリマー、乳酸-グリコール酸コポリマー、2-ヒドロキシ酪酸-グリコール酸コポリマー、ポリ乳酸-ポリエチレングリコールコポリマーまたはポリグリコール酸-ポリエチレングリコールコポリマー)、アルキル-α-シアノアクリレートのポリマー(例えば、ポリ(ブチル2-シアノアクリレート))、ポリアルキレンオキサレート(例えば、ポリトリメチレンオキサレートまたはポリテトラメチレンオキサレート)、ポリオルトエステル、ポリカーボネート(例えば、ポリエチレンカーボネートまたはポリエチレンプロピレンカーボネート)、ポリオルトカーボネート、ポリアミノ酸(例えば、ポリ-γ-L-アラニン、ポリ-γ-ベンジル-L-グルタミン酸またはポリ-y-メチル-L-グルタミン酸)、ヒアルロン酸エステルなどを挙げることができ、これらポリマーのうち1つ以上を使用することができる。
【0075】
ポリマーがコポリマーである場合、それらは、ランダム、ブロックおよび/またはグラフトコポリマーのいずれかであり得る。上記のα-ヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシジカルボン酸およびヒドロキシトリカルボン酸がそれらの分子中に光学活性を有する場合、D-異性体、L-異性体および/またはDL-異性体のうちいずれか1つを使用することができる。とりわけ、α-ヒドロキシカルボン酸ポリマー(好ましくは、乳酸-グリコール酸ポリマー)、そのエステル、ポリ-α-シアノアクリル酸エステル等を使用することができ、乳酸-グリコール酸コポリマー(ポリ(ラクチド-α-グリコリド)またはポリ(乳酸-co-グリコール酸)とも称され、以下、PLGAと称される)が好ましい。かくして、一の態様において、ポリマーマトリックスのために有用なポリマーはPLGAである。本明細書で用いる場合、用語PLGAとしては、乳酸のポリマー(ポリラクチド、ポリ(乳酸)、またはPLAとも称される)が挙げられる。最も好ましくは、該ポリマーは生分解性ポリ(d,l-ラクチド-co-グリコリド)ポリマーである。
【0076】
好ましい実施態様において、本発明のポリマーマトリックスは生体適合性および生分解性ポリマー材料である。用語「生体適合性」とは、毒性がなく、発癌性ではなく、体組織内に炎症を有意に誘導しない、ポリマー材料であると定義される。該マトリックス材料は生分解性であるべきであり、該ポリマー材料は、身体過程によって、身体により容易に処理できる生成物へ分解し、体内に蓄積することはない。生分解の生成物は、ポリマーマトリックスが身体と生体適合性であるという点で、身体と生体適合性でもあるべきである。ポリマーマトリックス材料の特定の有用な例としては、ポリ(グリコール酸)、ポリ-D,L-乳酸、ポリ-L-乳酸、上記のコポリマー、ポリ(脂肪族カルボン酸)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリジオキソノン、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(アセタール)、ポリ(乳酸-カプロラクトン)、ポリオルトエステル、ポリ(グリコール酸-カプロラクトン)、ポリ無水物、および天然ポリマー(アルブミン、カゼイン、およびワックス、例えばグリセロールモノステアレートおよびグリセロールジステアレートを包含する)などが挙げられる。本発明の実施に際して用いるための好ましいポリマーはdl(ポリラクチド-co-グリコリド)である。このようなコポリマー中のラクチド対グリコリドのモル比が約75:25~50:50の範囲であるのが好ましい。
【0077】
有用なPLGAポリマーは、約5,000~500,000ダルトン、好ましくは約150,000ダルトンの重量平均分子量を有し得る。達成されるべき分解の速度に応じて、異なる分子量のポリマーを使用することができる。薬物放出の拡散メカニズムについて、該ポリマーは、薬物の全てがポリマーマトリックスから放出されるまで無傷のままであるべきであり、次いで、分解する。ポリマー賦形剤が生体腐食する(bioerode)につれて、薬物がポリマーマトリックスから放出されることもできる。
【0078】
PLGAは、慣用方法によって製造され得るか、または市販のものであってもよい。例えば、PLGAは、好適な触媒を用いる環状ラクチド、グリコリド等からの開環ポリマー化によって生成され得る(欧州特許第0058481号を参照;PLGA特性に対するポリマー化可変因子の作用:分子量、組成および鎖構造)。
【0079】
PLGAは、生物学的条件下(例えば、ヒトのような温血動物の組織中に見られる水および生物学的酵素の存在下)で加水分解性で酵素的切断性のエステル結合の分解に起因して、固体ポリマー組成物全体の分解による生分解性であって、乳酸およびグリコール酸を形成すると考えられる。乳酸およびグリコール酸はともに、水溶性で無毒性の、正常な代謝の生成物であり、さらに生分解して、二酸化炭素と水を形成することができる。言い換えると、PLGAは、例えばヒトのような温血動物の体内で、水の存在下でそのエステル基の加水分解によって分解して乳酸およびグリコール酸を生成し、酸性の微小気候(acidic microclimate)を作成すると考えられる。乳酸およびグリコール酸は、正常な生理学的条件下でのヒトのような温血動物の体内における種々の代謝経路の副産物であり、したがって、十分に耐えられ、生じる全身毒性は最小である。
【0080】
別の実施態様において、本発明のために有用なポリマーマトリックスは、ポリエステルの構造が星形であるスターポリマーを含み得る。これらのポリエステルは、酸性残基鎖によって囲まれている中心部分として単一のポリオール残基を有する。該ポリオール部分は、例えばグルコース、または例えばマンニトールであり得る。これらのエステルは、公知であり、英国特許第2,145,422号および米国特許第5,538,739号(これらの内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)に記載されている。
【0081】
スターポリマーは、開始物質として、ポリヒドロキシ化合物、例えばポリオール、例えばグルコースまたはマンニトールを用いて製造され得る。該ポリオールは、少なくとも3個のヒドロキシ基を含有しており、最大約20,000ダルトンの分子量を有し、該ポリオールのヒドロキシ基のうち少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個、例えば平均3個がエステル基の形態であり、ポリラクチドまたはコ-ポリラクチド鎖を含有する。分枝ポリエステル、例えばポリ(d,l-ラクチド-co-グリコリド)は、直鎖状ポリラクチド鎖のレイ(rays)を有する中心グルコース部分を有する。
【0082】
上記の本発明のデポ組成物(例えば、組成物6および6.1~6.10、ポリマーマトリックス内)は、微粒子またはナノ粒子の形態、または液体形態のポリマーを含むことができ、該ポリマー内に本発明の化合物が分散または封入されている。「微粒子」とは、溶液または固体形態のいずれかで本発明の化合物を含有する固体粒子を意味し、該化合物は、該粒子のマトリックスとしての機能を果たすポリマーに分散または溶解している。ポリマー材料の適切な選択により、得られた微粒子が拡散放出特性および生分解放出特性の両方を示す微粒子製剤を調製することができる。
【0083】
該ポリマーが微粒子の形態である場合、該微粒子は、溶媒蒸発法または溶媒抽出法などの適切な方法を用いて調製され得る。例えば、溶媒蒸発法においては、本発明の化合物およびポリマーを揮発性有機溶媒(例えば、アセトンのようなケトン、クロロホルムもしくは塩化メチレンのようなハロゲン化炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素、ジオキサンのような環状エーテル、酢酸エチルのようなエステル、アセトニトリルのようなニトリル、またはエタノールのようなアルコール)に溶解し、好適な乳化安定剤(例えば、ポリビニルアルコール、PVA)を含有する水相に分散させることができる。次いで、有機溶媒が蒸発して、本発明の化合物が封入されている微粒子が得られる。溶媒抽出法においては、本発明の化合物およびポリマーを極性溶媒(例えば、アセトニトリル、ジクロロメタン、メタノール、酢酸エチルまたはギ酸メチル)に溶解し、次いで、水相(例えば、水/PVA溶液)に分散させることができる。エマルションが生成されて、本発明の化合物が封入されている微粒子が得られる。スプレードライは、微粒子調製のための代替製造技術である。
【0084】
本発明の微粒子の別の調製方法は、米国特許第4,389,330号および米国特許第4,530,840号のどちらにも記載されている。
【0085】
本発明の微粒子は、注射用組成物における使用に適しているサイズ範囲の微粒子を製造することができる方法によって調製され得る。一の好ましい調製方法は米国特許第4,389,330号に記載されている。この方法において、活性薬剤は、適切な溶媒に溶解または分散させられる。該薬剤含有媒体に、所望の活性薬剤添加量を有する生成物を提供する活性成分に対して相対的な量のポリマーマトリックス材料が添加される。所望により、微粒子生成物の成分の全てが溶媒媒体中に一緒にブレンドされ得る。
【0086】
本発明の実施に際して用いることができる本発明の化合物およびポリマーマトリックス材料のための溶媒としては、有機溶媒、例えばアセトン;ハロゲン化炭化水素、例えばクロロホルム、塩化メチレン、および同類のもの;芳香族炭化水素化合物;ハロゲン化芳香族炭化水素化合物;環状エーテル;アルコール、例えばベンジルアルコール;酢酸エチル;ならびに同類のものが挙げられる。一の実施態様において、本発明の実施に際して用いるための溶媒は、ベンジルアルコールと酢酸エチルとの混合物であり得る。本発明に有用な微粒子の調製についてのさらなる情報は、米国特許出願公開第2008/0069885号(その内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)に見ることができる。
【0087】
該微粒子に組み込まれる本開示の化合物の量は、通常、約1重量%~約90重量%、好ましくは30~50重量%、より好ましくは35~40重量%の範囲である。重量%とは、微粒子の全重量に対する本開示の化合物の部分を意味する。
【0088】
医薬デポ組成物は、薬学的に許容される希釈剤または担体、例えば、水混和性希釈剤または担体を含み得る。
【0089】
浸透圧制御放出経口送達系組成物の詳細は、欧州特許第1539115号(米国特許出願公開第2009/0202631号)および国際公開第2000/35419号(各々の内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)に見ることができる。
【0090】
「治療有効量」とは、疾患または障害に罹患している対象体に投与された場合に、治療のために意図された期間にわたって該疾患または障害の軽減、寛解または退行を引き起こすのに有効である、(例えば、医薬デポに含有されるような)本発明の化合物の量である。
【0091】
本発明を実施する際に用いる用量は、当然、例えば、治療されるべき特定の疾患または状態、使用される特定の本発明の化合物、投与方法、および所望の療法に応じて変わる。他に特記しない限り、本発明の化合物の投与量(遊離塩基としてか塩形態としてにかかわらない)は、遊離塩基形態の本発明の化合物の量をいうかまたはこの量に基づく(すなわち、量の計算は、遊離塩基の量に基づく)。
【0092】
本発明の化合物は、経口、非経口(静脈内、筋肉内または皮下)または経皮を含む満足のいく経路によって投与され得るが、好ましくは経口投与される。ある実施態様において、本発明の化合物(例えば、デポ製剤中)は、好ましくは、非経口投与され、例えば注射により投与される。
【0093】
一般に、方法1および1.1~1.35、方法2および2.1~2.20、ならびに方法3および3.1~3.40、または例えば少なくともうつ病、精神病の組合せ、例えば、(1)うつ病に罹患している患者における精神病(例えば、統合失調症);(2)精神病(例えば、統合失調症)に罹患している患者におけるうつ病;(3)精神病(例えば、統合失調症)またはパーキンソン病と関連する気分障害;(4)精神病(例えば、統合失調症)またはパーキンソン病と関連する睡眠障害;および(5)上記の物質中毒、物質使用障害および/または物質誘発障害のような疾患の組合せの治療のための、上記の本開示の化合物の使用についての満足のいく結果は、好ましくは経口投与により、1日1回約1mg~100mgのオーダーの用量で、好ましくは2.5mg~50mg、例えば、2.5mg、5mg、10mg、20mg、30mg、40mgまたは50mgで1日1回の経口投与して得られることが示される。
【0094】
方法2もしくは2.1~2.20、または例えば睡眠障害単独の治療のための、上記の本開示の化合物の使用についての満足のいく結果は、好ましくは経口投与により、1日1回、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の本発明の化合物約2.5mg~5mgのオーダーの用量で、例えば、2.5mg、3mg、4mgまたは5mgの用量で経口投与して得られることが示される。
【0095】
方法I-Aもしくは方法II-A、または3.1~3.40のいずれかについての満足のいく結果は、1日1回、100mg未満、好ましくは50mg未満、例えば、40mg未満、30mg未満、20mg未満、10mg未満、5mg未満、2.5mg未満で得られることが示される。方法 II-Aまたは3.1~3.40のいずれかについての満足のいく結果は、5mg未満、好ましくは2.5mg未満で得られることが示される。
【0096】
より長い作用時間を達成するためにデポ組成物が用いられる、本明細書に記載の障害の治療について、用量は、短時間作用型組成物と較べて高く、例えば、1~100mgよりも高く、例えば、25mg、50mg、100mg、500mg、1,000mg、または1000mgよりも高い。本開示の化合物の作用時間は、ポリマー組成、すなわち、ポリマー:薬物比および微粒子サイズの操作によって制御され得る。本発明の組成物がデポ組成物である場合、注射による投与が好ましい。
【0097】
本開示の化合物の薬学的に許容される塩は、慣用の化学的方法によって、塩基性部分または酸性部分を含有する親化合物から合成することができる。一般に、このような塩は、水中にて、または有機溶媒中にて、またはこの2つの混合物中にて、これら化合物の遊離塩基形態を化学量論量の適切な酸と反応させることによって調製することができる;一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルのような非水性媒体が好ましい。これら塩、例えば、アモルファス形態または結晶形態のトルエンスルホン酸塩の調製についてのさらなる詳細は、PCT/US08/03340および/または米国仮出願第61/036,069号に見ることができる。
【0098】
本開示の化合物を含む医薬組成物は、慣用の希釈剤または賦形剤(例えば、ゴマ油を包含するがこれに限定されない)およびガレヌス技術分野(galenic art)で公知の技術を用いて調製することができる。かくして、経口投与剤形として、錠剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤などを挙げることができる。
【0099】
本発明の化合物の製造方法:
Xが-NH-または-N(CH3)-であり、Yが-C(=O)である本開示の化合物は、下記スキーム1に従って、(6bR,10aS)-2-オキソ-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリンまたはその1-メチルアナログを4-クロロ-4'-フルオロブチロフェノンと反応させることによって製造することができる:
【化20】
【0100】
Xが-NH-または-N(CH3)-であり、Yが-CH(OH)-である本開示の化合物は、下記スキーム2に従って、スキーム1で生成した4-((6bR,10aS)-2-オキソ-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-1-(4-フルオロ-フェニル)-ブタン-1-オン(またはその1-メチルアナログ)を還元剤と反応させることによって製造することができる:
【化21】
【0101】
還元剤は、水素化金属、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化アルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、好ましくは水素化ホウ素ナトリウムであってよい。ケトン類の還元のためのさらなる試薬は、Jerry March, Advanced Organic Chemistry, Reactions Mechanisms and Structures, p. 910-911, (1992, John Wiley & Sons, Inc.), Fourth Edition(その内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)に見ることができる。
【0102】
本発明の化合物のジアステレオマーの単離または精製は、当該技術分野で公知の慣用方法、例えば、カラム精製、分取薄層クロマトグラフィー、分取HPLC、結晶化、トリチュレーション、疑似移動床および類似のものによって達成することができる。
【0103】
Yが-CH(O-R1)-であり、R1がH以外である式Iで示される化合物は、アシルのハロゲン化物、無水物または活性エステルのアルコーリシスのようないくつかの汎用のエステル化法によって製造することができる。例えば、R1が-C(O)-アルキルである式Iで示される化合物は、
(a) L-C(O)-C1-21アルキル(ここで、Lは、ハロ基(例えば、クロロまたはブロモ)、トリフルオロメチルスルホニルオキシ(-OSO2CF3)、トシルオキシ(-O-S(O)2-C64-CH3)、メチルスルホニルオキシ(-O-S(O)2-CH3)、1H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-1-イルオキシまたはスクシンイミジルオキシ基のような脱離基である)

(b) Yが-C(H)(OH)である式Iで示される化合物
と、好ましくは塩基(例えば、ジイソプロピルアミン、トリエチルアミンまたはピリジン)の存在下で、反応させることによって製造することができる。例えば、L-C(O)-C1-21アルキルは、ハロゲン化アセチル、ハロゲン化デカノイルまたはハロゲン化ヘプタノイルであり、これらは、HO-C(O)-C1-21アルキルを、例えば、塩化チオニル、P(X')3またはP(X')5(ここで、X'はClまたはBrである)と反応させることによって製造することができる。Lがトシルオキシ-C(O)-C1-21アルキルまたはメチルスルホニルオキシ-C(O)-C1-21アルキルである場合、これらの化合物は、HO-C(O)-C1-21アルキルをトシル-塩化物またはメシル-塩化物と、好ましくはピリジンのような塩基の存在下で、反応させることによって製造することができる。R1がH以外である式II-Aで示される化合物の合成は、下記スキーム3に概略記載され得る:
【化22】
【0104】
別法として、R1がH以外である式II-Aで示される化合物の合成は、HO-C(O)-C1-21アルキルを(i)DIEPAおよびNEt3のような塩基の存在下で、Yが-C(H)(OH)である式Iで示される化合物と、および(ii)2-フルオロ-1-エチルピリジニウムテトラフルオロボレート(FEP)、テトラメチルフルオロマミジニウムヘキサフルオロホスフェート(TFFH)または1,1,3,3-ビス(テトラメチレン)クロロウロニウムヘキサフルオロホスフェート(PyClU)のような脱水試薬またはカップリング試薬と、反応させることによって達成され得る。
【0105】
本開示の化合物の塩は、米国特許第6,548,493号;第7,238,690号;第6,552,017号;第6,713,471号;第7,183,282;号;米国再発行特許発明第39680号;米国再発行特許発明第39679号;および国際公開第2009/114181号(各々の内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)に同様に記載されるように製造することができる。
【0106】
製造された化合物のジアステレオマーは、室温で、例えばCHIRALPAK(登録商標)AY-H、5μ、30×250mmを用いるHPLCにより、分離し、10%エタノール/90%ヘキサン/0.1%ジメチルエチルアミンで溶離することができる。ピークは、230nmで検出することができ、98~99.9%eeのジアステレオマーを精製することができる。
【実施例
【0107】
実施例1: 4-((6bR,10aS)-2-オキソ-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-1-(4-フルオロ-フェニル)-ブタン-1-オンの合成
【化23】
室温で、(6bR,10aS)-2-オキソ-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-カルボン酸エチルエステル(6.4g、21.2mmol)をHBr酢酸溶液(64mL、33%w/w)に懸濁する。該混合物を50℃で16時間加熱する。冷却および酢酸エチル(300mL)による処理の後、該混合物を濾過する。濾過ケーキを酢酸エチル(300mL)で洗浄し、次いで、真空乾燥させる。次いで、得られたHBr塩をメタノール(200mL)に懸濁し、イソプロパノール中のドライアイスで冷却する。強撹拌下で、該懸濁液にアンモニア溶液(10mL、メタノール中7N)を徐々に添加して混合物のpHを10に調整する。得られた混合物を、さらなる精製を行わずに真空乾燥させて、粗(6bR,10aS)-2-オキソ-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン(8.0g)を得、これを直接次工程で使用する。MS (ESI) m/z 230.2 [M+H]+
【0108】
該粗(6bR,10aS)-2-オキソ-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン(1.4 g)をDMF(14mL)に溶解し、次いで、KI(2.15g)および4-クロロ-4'-フルオロブチロフェノン(2mL)を連続的に添加する。該混合物をアルゴンで脱気し、次いで、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、2mL)を添加する。該混合物を78℃で2時間加熱する。冷却後、溶媒を減圧除去する。暗褐色の残留物をジクロロメタン(100mL)に懸濁し、次いで、水(30mL)で抽出する。有機層を分取し、K2CO3で乾燥させる。濾過後、溶媒を減圧除去する。得られた粗生成物を、メタノール中0.1%の7Nアンモニアを含有する酢酸エチル中0~10%のメタノールで溶離するシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、淡黄色の固体として4-((6bR,10aS)-2-オキソ-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-1-(4-フルオロ-フェニル)-ブタン-1-オン(767mg)を得る。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 10.3 (s, 1H), 8.1 - 8.0 (m, 2H), 7.3 (dd, J = 8.86 Hz, 2H), 6.8 (d, J = 7.25 Hz, 1H), 6.6 (dd, J = 7.55 Hz, 1H), 6.6 (d, J = 7.74 Hz, 1H), 3.8 (d, J = 14.49 Hz, 1H), 3.3 - 3.3 (m, 1H), 3.2 - 3.2 (m, 1H), 3.1 - 3.0 (m, 1H), 3.0 (t, J = 6.88 Hz, 2H), 2.8 - 2.8 (m, 1H), 2.6 - 2.5 (m, 1H), 2.3 - 2.2 (m, 2H), 2.1 - 2.0 (m, 1H), 1.9 - 1.8 (m, 1H), 1.8 (t, J = 6.99 Hz, 2H), 1.6 (t, J = 11.25 Hz, 2H)。MS (ESI) m/z 394.2 [M+H]+
【0109】
実施例2: 4-((6bR,10aS)-2-オキソ-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-1-(4-フルオロ-フェニル)-ブタン-1-オールの合成
【化24】
4-((6bR,10aS)-2-オキソ-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-1-(4-フルオロ-フェニル)-ブタン-1-オン(50mg、0.127mmol)をメタノール(5mL)に溶解する。撹拌下にて、NaBH4(31mg、0.82mmol)を複数のバッチで添加する。添加完了後、該混合物を室温で30分間撹拌する。減圧下にてメタノールを蒸発させる。残留物をジクロロメタン(10mL)に溶解し、次いで、水(2×0.5mL)で抽出する。合わせた有機相をK2CO3で乾燥させる。濾過後、濾液を減圧濃縮し、次いで、さらに真空乾燥させて、薄黄色の泡沫状固体として4-((6bR,10aS)-2-オキソ-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-1-(4-フルオロ-フェニル)-ブタン-1-オール(45mg、収率90%)を得る。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 10.3 (s, 1H), 8.1 - 8.0 (m, 2H), 7.3 (dd, J = 8.86 Hz, 2H), 6.8 (d, J = 7.25 Hz, 1H), 6.6 (dd, J = 7.55 Hz, 1H), 6.6 (d, J = 7.74 Hz, 1H), 3.8 (d, J = 14.49 Hz, 1H), 3.3 - 3.3 (m, 1H), 3.2 - 3.2 (m, 1H), 3.1 - 3.0 (m, 1H), 3.0 (t, J = 6.88 Hz, 2H), 2.8 - 2.8 (m, 1H), 2.6 - 2.5 (m, 1H), 2.3 - 2.2 (m, 2H), 2.1 - 2.0 (m, 1H), 1.9 - 1.8 (m, 1H), 1.8 (t, J = 6.99 Hz, 2H), 1.6 (t, J = 11.25 Hz, 2H)。MS (ESI) m/z 394.2 [M+H]+
【0110】
実施例3: (6bR,10aS)-8-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オンの合成
【化25】
(6bR,10aS)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オン (100mg、0.436mmol)、1-(3-クロロプロキシ)-4-フルオロベンゼン(100μL、0.65mmol)およびKI(144mg、0.87mmol)のDMF(2mL)中混合物をアルゴンで3分間脱気し、DIPEA(150μL、0.87mmol)を添加する。得られた混合物を78℃に加熱し、この温度で2時間撹拌する。該混合物を室温に冷却し、次いで、濾過する。濾過ケーキを、溶離液としてメタノール/7N NH3のメタノール中混合物(1:0.1v/v)中0~100%の酢酸エチルの勾配液を用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、部分精製生成物を得、これを、さらに、0.1%ギ酸を含有する水中0~60%のアセトニトリルの勾配液を用いる半分取HPLCシステムで16分間にわたって精製して、固体として標記生成物(50mg、収率30%)を得る。MS (ESI) m/z 406.2 [M+1] +1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 10.3 (s, 1H), 7.2 - 7.1 (m, 2H), 7.0 - 6.9 (m, 2H), 6.8 (dd, J = 1.03, 7.25 Hz, 1H), 6.6 (t, J = 7.55 Hz, 1H), 6.6 (dd, J = 1.07, 7.79 Hz, 1H), 4.0 (t, J = 6.35 Hz, 2H), 3.8 (d, J = 14.74 Hz, 1H), 3.3 - 3.2 (m, 3H), 2.9 (dd, J = 6.35, 11.13 Hz, 1H), 2.7 - 2.6 (m, 1H), 2.5 - 2.3 (m, 2H), 2.1 (t, J = 11.66 Hz, 1H), 2.0 (d, J = 14.50 Hz, 1H), 1.9 - 1.8 (m, 3H), 1.7 (t, J = 11.04 Hz, 1H)。
【0111】
薬理学的プロファイル
上記のとおり、本開示の化合物は、5-HT2A受容体、D1受容体およびμオピエート受容体への結合をもって、特有の薬理学的プロファイルを有する。
【0112】
例えば、実施例3の化合物は、5-HT2A受容体、D1受容体およびμオピエート受容体に対して、それぞれ8.3nM、50nMおよび11nMのKi値をもって、低いナノモル親和性を有する。
【0113】
実施例3の化合物の薬理学的プロファイルは、DOI誘発性頭部攣縮、モルヒネ誘発性活動亢進(hyperactivity)、脳のリンタンパク質レベルのウエスタンブロット測定(チロシンヒドロキシラーゼおよびGluN2B)、および疼痛の古典的なマウステールフリックアッセイにおけるモルヒネ活性の遮断を包含する、インビトロ受容体結合および細胞ベース機能アッセイ、ならびに5-HT2A受容体、D1受容体、D2受容体およびμオピエート受容体での機能活性のインビボ試験を用いて研究される。
【0114】
実施例3の化合物は、動物において、経口活性および優れた代謝安定性を示す。実施例3の化合物の経口投与は、マウスにおいてDOI誘発性頭部攣縮を強くブロックし(EC50=0.23mg/kg、経口)、5-HT2Aアンタゴニストとして強い機能活性を示す。実施例3の化合物は、ドパミン合成の律速酵素である線条体チロシンヒドロキシラーゼに対する作用の欠如によって示されるように、試験した用量で線条体ドパミン神経伝達を妨害しない。実施例3の化合物(0.3mg/kg、経口)は、インビボでの強力なモルヒネアンタゴニズムを示し、その5-HT2A受容体効果に匹敵する用量レベル(すなわち、0.1mg/kg以上、経口)でマウスにおいてモルヒネ誘発性活動亢進およびモルヒネ誘発性鎮痛をブロックする。
【0115】
本開示の化合物の薬理学的プロファイルのさらなる詳細は、以下の実施例に記載される。
【0116】
実施例4: 細胞および核受容体機能アッセイ(Cellular and Nuclear Receptor Functional Assay)
細胞および核受容体機能アッセイは、Wang, J.B. et al. (1994), FEBS Lett., 338:217-222の手順に従って、式II-BおよびII-Cで示される化合物について行われる。該化合物をいくつかの濃度で試験して、それらのIC50またはEC50を決定する。細胞アゴニスト効果は、各標的について公知の基準アゴニストに対する対照応答のパーセントとして算出され、細胞アンタゴニスト効果は、各標的について対照基準アゴニスト応答の阻害パーセントとして算出される。
【0117】
以下のアッセイは、μ(MOP)(h)受容体に対する式II-Bで示される化合物の効果を決定するために行われる:
【表1】
【0118】
アンタゴニストについて、見かけの解離定数(KB)は、改変したチェンプルソフ式(Cheng Prusoff equation):
【数1】
[式中、A=アッセイにおける基準アゴニストの濃度、およびEC50A=基準アゴニストのEC50値]
を用いて算出される。
【0119】
式II-Bで示される化合物は、1.3×10-6MのIC50および1.4×10-7MのKBをもって、μ(MOP)(h)(アンタゴニスト効果)を有することが判明する;式II-Cで示される化合物は、1×10-5を超えるIC50を有することが判明し、これは試験した最高濃度であった。
【0120】
結果は、式II-BまたはII-Cで示される化合物の存在下で得られた、対照アゴニスト応答のパーセント:
【数2】
として、また、対照アゴニスト応答の阻害パーセント:
【数3】
として表される。
【0121】
EC50値(最大半量応答を生じる濃度)およびIC50値(対照アゴニスト応答の最大半量阻害を生じる濃度)は、ヒル式(Hill equation)カーブフィッティング:
【数4】
[式中、Y=応答、A=曲線の左漸近線、D=曲線の右漸近線、C=化合物濃度、およびC50=EC50またはIC50、およびnH=傾斜因子]
を用いて平均反復値を用いて作成した濃度応答曲線の非線形回帰分析によって決定される。該分析は、自社で開発したソフトウェアを用いて行われ、市販のソフトウェアSigmaPlot(登録商標)4.0 for Windows(登録商標)(SPSS Inc.による著作権1997)によって作成されたデータとの比較によって正当性が認められる。
【0122】
実施例5: 式II-BおよびII-Cで示される化合物の受容体結合プロファイル
受容体結合は、対照として式Aで示される化合物のトシレート塩を用いて、式II-AおよびII-Bで示される化合物および実施例3の化合物について決定される。下記の文献(各文献は出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)の手順が使用される:5-HT2A:Bryant, H.U. et al. (1996), Life Sci., 15:1259-1268;D2:Hall, D.A. and Strange, P.G. (1997), Brit. J. Pharmacol., 121:731-736;D1:Zhou, Q.Y. et al. (1990), Nature, 347:76-80; SERT: Park, Y.M. et al. (1999), Anal. Biochem., 269:94-104;μオピエート受容体:Wang, J.B. et al. (1994), FEBS Lett., 338:217-222。
【0123】
一般に、結果は、試験化合物の存在下で得られた、対照特異的結合のパーセント:
【数5】
として、また、対照特異的結合の阻害パーセント:
【数6】
として表される。
【0124】
IC50値(対照特異的結合の最大半量阻害を生じる濃度)およびヒル係数(nH)は、ヒル式カーブフィッティング:
【数7】
[式中、Y=特異的結合、A=曲線の左漸近線、D=曲線の右漸近線、C=化合物濃度、C50=IC50、およびnH=傾斜因子]
を用いて平均反復値を用いて作成した競合曲線の非線形回帰分析によって決定される。この分析は、自社ソフトウェアを用いて行われ、市販のソフトウェアSigmaPlot(登録商標)4.0 for Windows(登録商標)(SPSS Inc.による著作権1997)によって作成されたデータとの比較によって正当性が認められる。阻害定数(Ki)は、チェンプルソフ式:
【数8】
[式中、L=アッセイにおける放射性リガンドの濃度、およびKD=受容体に対する放射性リガンドの親和性]
を用いて算出された。KDを決定するためにスキャッチャードプロットが用いられる。
【0125】
対照として式Aで示される化合物のトシレート塩を用いて、以下の受容体親和性の結果が得られる:
【表2】
【0126】
実施例6: マウスのDOI誘発性頭部攣縮モデル
R-(-)-2,5-ジメトキシ-4-ヨードアンフェタミン(DOI)は、セロトニン5-HT2受容体ファミリーのアゴニストである。それは、マウスに投与されると、高頻度の頭部攣縮と関連する行動プロファイルを生じる。所定の期間中のこれら頭部攣縮の頻度は、脳内の5-HT2受容体アゴニズムの推定値として取ることができる。逆に、この行動アッセイは、アンタゴニストを用いるかまたは用いずにDOIを投与し、アンタゴニストの投与後のDOI誘発性頭部攣縮の減少を記録することによって、脳内の5-HT2受容体アンタゴニズムを決定するために使用することができる。
【0127】
若干の改変を伴ってDarmani et al., Pharmacol Biochem Behav. (1990) 36:901-906(この内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)の方法が使用される。(±)-DOI HClを皮下注射し、該マウスをすぐに慣用のプラスチックケージに容れる。DOI投与の1分後から始めて6分間、頭部攣縮の回数をカウントする。DOI注射の0.5時間前に被験化合物を経口投与する。結果は、DOI誘発性頭部攣縮を減少させるためのEC50として算出される。結果は下記の表に示される:
【表3】

結果は、実施例1および3の化合物がDOI頭部攣縮を強くブロックし、式AおよびCで示される参照化合物に匹敵し、実施例5に示されるインビトロ5-HT2A結果と一致することを示している。対照的に、実施例2の化合物は、この機能アッセイにおいて想定的に弱く、他の構造類似化合物と比べてこの化合物がそのセロトニン受容体(5-HT2A )アンタゴニズムにおいて相対的に弱いことを示している実施例5のインビトロデータと一致する。
【0128】
実施例7: マウステールフリックアッセイ
マウステールフリックアッセイは、拘束されたマウスの疼痛反射閾値によって示される、鎮痛の測定である。雄性CD-1マウスを、高強度赤外熱源の収束ビーム下にその尾がくるように配置し、尾が加熱される。加熱装置を付けた時と熱源の経路の外側にマウスの尾をフリックした時との間の時間量(レイテンシー(latency))を記録する。モルヒネの投与により、鎮痛がもたらされ、これにより、熱に対するマウスの反応の遅延が生じる(レイテンシーの増大)。モルヒネアンタゴニスト、すなわち、ナロキソンの前投与により、この効果は逆転し、正常なレイテンシー時間となる。この試験は、μオピエート受容体のアンタゴニズムを計測するための機能アッセイとして使用される。
【0129】
5つの処置グループの各々に10匹の雄性CD-1マウス(約8週齢)が割り当てられる。グループは以下のとおり処置される:グループ(1)[陰性対照]:テールフリック試験の60分前に0.25%メチルセルロースビヒクルが経口投与され、テールフリック試験の30分前に生理食塩水ビヒクルが投与される;グループ(2)[陽性対照]:該試験の60分前に0.25%メチルセルロースビヒクルが経口投与され、該試験の30分前に生理食塩水中モルヒネ5mg/kgが投与される;グループ(3)[陽性対照]:該試験の50分前に生理食塩水中ナロキソン3mg/kgが投与され、該試験の30分前に生理食塩水中モルヒネ5mg/kgが投与される;グループ(4)~(6):該試験の60分前に0.25%メチルセルロースビヒクル中被験化合物0.1mg/kg、0.3mg/kgまたは1mg/kgが経口投与され、該試験の30分前にモルヒネ5mg/kgが投与される。実験は実施例1および実施例3の化合物について繰り返される。結果は、秒で測定した平均レイテンシーとして下記の表に示される:
【表4】
【0130】
結果は、実施例1および実施例3の化合物がともにモルヒネ誘発性μオピエート受容体活性の用量依存的遮断を発揮することを示している。
【0131】
実施例8: CNSリンタンパク質プロファイル
実施例1および実施例3の化合物の中枢神経系(CNS)プロファイルを試験するために、総合的なリン酸化研究も行われる。マウスの側坐核において、選択された重要な中枢神経系タンパク質についてのタンパク質リン酸化の程度が測定される。被験タンパク質としてはERK1、ERK2、Glu1、NR2BおよびTH(チロシンヒドロキシラーゼ)が挙げられ、実施例1および3の化合物を統合失調症治療薬であるリスペリドンおよびハロペリドールと比較した。
【0132】
3mg/kgの実施例1もしくは3の化合物、または2mg/kgのハロペリドールを用いてマウスを試験した。マウスを、注射後30分~2時間に、収束したマイクロ波全脳照射によって屠殺し、死亡時に脳のリンタンパク質は存在しているのでそれを貯蔵する。次いで、各マウスの脳から側坐核を解体し、スライスし、液体窒素で凍結させた。Zhu H, et al., Brain Res. 2010 Jun 25; 1342:11-23に記載されるように、SDS-PAGE電気泳動に次いでリンタンパク質特異的イムノブロット法によるリンタンパク質分析のために、さらに試料を調製した。各部位でのリン酸化を定量化し、該タンパク質(非リン酸化)の総量に対して標準化し、ビヒクル試験した対照マウスにおけるリン酸のレベルのパーセントとして表した。
【0133】
結果は、THリン酸化において400%を超える増加を生じるハロペリドールおよび500%を超える増加を生じるリスペリドンとは対照的に、実施例1および実施例3のいずれの化合物も、30分目および60分目に、Ser40でチロシンヒドロキシラーゼリン酸化に対して有意な効果を有しないことを示している。これは、本発明の化合物がドパミン代謝を妨害しないことを示している。
【0134】
結果は、さらに、実施例1および実施例3のいずれの化合物も、30~60分目に、Tyr1472でNR2Bリン酸化に対する有意な効果を有しないことを示している。該化合物は、Ser845でGluR1リン酸化のわずかな増加を生じ、Thr183およびTyr185でERK2リン酸化のわずかな減少を生じる。
本願は以下の態様も包含する。
[態様1]
遊離形態または塩形態の、単離または精製された遊離形態または塩形態であってもよい、式I:
【化26】
[式中、
Xは、-NH-または-N(CH 3 )-であり;
Lは、O、NH、NR a およびSから選択され;
Zは、-CH(O-R 1 )-、-O-または-C(=O)-であり;
1 は、H、-C(O)-C 1-21 アルキル(例えば、-C(O)-C 1-5 アルキル、-C(O)-C 6-15 アルキルまたは-C(O)-C 16-21 アルキル)であり、好ましくは、該アルキルは、飽和または不飽和であってよく、1個以上のヒドロキシまたはC 1-22 アルコキシ(例えば、エトキシ)基で置換されていてもよい、直鎖であり、例えば、R 1 は、C(O)-C 3 アルキル、-C(O)C 6 アルキル、-C(O)-C 7 アルキル、-C(O)-C 9 アルキル、-C(O)-C 11 アルキル、-C(O)-C 13 アルキルまたは-C(O)-C 15 アルキルであり;
a は、
各々が独立して、3個までの独立して選択されるR b 基で置換され得る、ハロゲン、C 1-4 アルキル、C 2-4 アルケニル、C 2-4 アルキニルまたはC 3-6 シクロアルキル、例えば、C 1-3 ハロアルキルまたはC 1-3 ヒドロキシアルキル;または
5個までの独立して選択されるR b で置換されていてもよいアリール;
であり;
各R b は、独立して、H、ハロゲン、NH 2 、NO 2 、OH、C(=O)OH、CN、SO 3 およびC 1-4 アルキルから選択される]
で示される化合物。
[態様2]
LがOである、態様1に記載の化合物。
[態様3]
Zが-CH(O-R 1 )-である、態様1または態様2に記載の化合物。
[態様4]
Zが-C(=O)-である、態様1または態様2に記載の化合物。
[態様5]
Zが-O-である、態様1または2に記載の化合物。
[態様6]
Xが-NH-である、態様1~5のいずれか1つに記載の化合物。
[態様7]
Xが-N(CH 3 )-である、態様1~5のいずれか1つに記載の化合物。
[態様8]
化合物が
【化27】
からなる群から選択される、態様1~7のいずれか1つに記載の化合物。
[態様9]
化合物が
【化28】
からなる群から選択される、態様1~7のいずれか1つに記載の化合物。
[態様10]
塩形態の、例えば薬学的に許容される塩形態の、態様1~9のいずれか1つに記載の化合物。
[態様11]
薬学的に許容される希釈剤または担体と混合した、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、態様1~10のいずれか1つに記載の化合物を含む、医薬組成物。
[態様12]
薬学的に許容される希釈剤または担体がポリマーマトリックスを含む、態様11に記載の医薬組成物。
[態様13]
ポリマーマトリックスが生分解性ポリ(d,l-ラクチド-co-グリコリド)マイクロスフェアである、態様12に記載の医薬組成物。
[態様14]
中枢神経系障害の治療または予防のための方法であって、該治療または予防を必要とする患者に、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、態様1~10のいずれか1つに記載の化合物、または態様11~13のいずれか1つに記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
[態様15]
該障害が、肥満症、不安、うつ病(例えば、難治性うつ病、MDDまたは双極性うつ病)、精神病(進行パーキンソン病における幻覚または偏執性妄想のような、認知症と関連する精神病を包含する)、統合失調症、睡眠障害(特に、統合失調症ならびに他の精神および神経疾患と関連する睡眠障害)、性障害、片頭痛、頭部痛と関連する状態、社会恐怖症、認知症における激越(例えば、アルツハイマー病における激越)、自閉症および関連自閉症性障害における激越、胃腸管運動の機能障害のような胃腸障害、ならびに認知症、例えばアルツハイマー病またはパーキンソン病の認知症;気分障害;ならびに薬物依存症、例えばオピエート依存症および/またはアルコール依存症、または薬物もしくはアルコール依存症(例えば、オピエート依存症)からの離脱症状;または過食性障害からなる群から選択される障害からなる群から選択される、態様14に記載の方法。
[態様16]
該障害が、セロトニン5-HT 2A 、セロトニン再取り込み輸送体(SERT)、ドパミンD 1 経路および/またはμオピオイド受容体が関与する障害である、態様14に記載の方法。
[態様17]
該障害が、以下のものから選択される障害である、態様14に記載の方法:(1)うつ病に罹患している患者における精神病(例えば、統合失調症);(2)精神病(例えば、統合失調症)に罹患している患者におけるうつ病;(3)精神病(例えば、統合失調症)またはパーキンソン病と関連する気分障害;(4)精神病(例えば、統合失調症)またはパーキンソン病と関連する睡眠障害;および(5)物質中毒、物質使用障害および/または物質誘発障害。
[態様18]
患者が第2中枢神経系障害と一緒に物質使用障害に罹患している、態様14~17のいずれか1つに記載の方法。
[態様19]
例えば態様14~18のいずれか1つに記載の方法において、医薬として用いるための、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、態様1~10のいずれか1つに記載の化合物。
[態様20]
中枢神経系障害の治療または予防のための、例えば態様14~18のいずれか1つに記載の方法における使用のための、医薬の製造における、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、態様1~10のいずれか1つに記載の化合物、または遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、態様11~13のいずれか1つに記載の医薬組成物の使用。