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  • 特許-湿式クラッチの摩擦プレート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】湿式クラッチの摩擦プレート
(51)【国際特許分類】
   F16D 13/64 20060101AFI20230228BHJP
   F16D 13/38 20060101ALI20230228BHJP
   F16D 13/74 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
F16D13/64 Z
F16D13/38
F16D13/74 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021553087
(86)(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-10
(86)【国際出願番号】 US2020020257
(87)【国際公開番号】W WO2020185418
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-09-07
(31)【優先権主張番号】16/296,383
(32)【優先日】2019-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ラシッド ファラハティ
(72)【発明者】
【氏名】ムラート バカン
【審査官】糟谷 瑛
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-155096(JP,A)
【文献】特開2002-139084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 11/00-13/76
F16D 21/00-23/14
C09K 3/14
F16D 49/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラッチ用の摩擦プレートであって、
表面と、
前記表面に配置され、第1の摩擦材料の総重量のうち第1の重量濃度の第1のフィラー材料と前記第1の重量濃度よりも多い重量濃度の第1の繊維とを含む第1の組成物を有する、第1の摩擦材料と、
前記表面に配置され、前記第1の組成物とは異なる第2の組成物を有し、第2の摩擦材料の総重量のうち前記第1の重量濃度よりも高い第2の重量濃度の第2のフィラー材料と前記第2の重量濃度よりも小さい重量濃度の第2の繊維とを含む、第2の摩擦材料と、を含み、
前記第2のフィラー材料はモース硬度が6~9であり、粒子サイズが10~50μmである摩擦プレート。
【請求項2】
前記第2の重量濃度が、前記第2の摩擦材料の前記総重量のうち32重量パーセントを超える、請求項1に記載の摩擦プレート。
【請求項3】
前記第1の重量濃度が、前記第1の摩擦材料の総重量のうち30重量パーセント未満である、請求項2に記載の摩擦プレート。
【請求項4】
前記第2の重量濃度が、前記第2の摩擦材料の前記総重量のうち両端値を含む39~46重量パーセントである、請求項2に記載の摩擦プレート。
【請求項5】
前記第1の重量濃度が、前記第1の摩擦材料の前記総重量のうち両端値を含む20~30重量パーセントである、請求項4に記載の摩擦プレート。
【請求項6】
前記第2のフィラー材料が、珪藻土を含む、請求項1に記載の摩擦プレート。
【請求項7】
前記第2のフィラー材料が、少なくとも重量50パーセントの前記珪藻土を含む、請求項6に記載の摩擦プレート。
【請求項8】
前記表面が、複数の領域を含み、前記第1および第2の摩擦材料が、前記領域の異なるものに位置付けられる、請求項1に記載の摩擦プレート。
【請求項9】
前記第1および第2の摩擦材料が、別個の第1および第2のパッチとして形成され、前記第1および第2のパッチが、前記表面の周囲に円周方向に配設され、前記表面が、第2のパッチよりも多くの第1のパッチを含む、請求項8に記載の摩擦プレート。
【請求項10】
摩擦プレートを製造する方法であって、
圧力プレートの表面に第1の摩擦材料を塗布または配設することであって、前記第1の摩擦材料が、前記第1の摩擦材料の総重量のうち第1の重量濃度の第1のフィラー材料と前記第1の重量濃度よりも多い重量濃度の第1の繊維とを含む第1の組成物を有する、前記第1の摩擦材料を塗布または配設することと、
前記表面に第2の摩擦材料を塗布または配設することであって、前記第2の摩擦材料が、前記第1の組成物とは異なる第2の組成物を有し、前記第2の摩擦材料の総重量のうち前記第1の重量濃度よりも高い第2の重量濃度の第2のフィラー材料と前記第2の重量濃度よりも小さい重量濃度の第2の繊維とを含む、前記第2の摩擦材料を塗布または配設することと、を含み、
前記第2のフィラー材料はモース硬度が6~9であり、粒子サイズが10~50μmである、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、湿式クラッチのための摩擦プレートに関し、より具体的には、摩擦プレートの摩擦材料に関する。
【背景技術】
【0002】
車両は、1つの構成要素から別の構成要素に動力を伝達するために使用される、1つ以上の湿式クラッチを含み得る。例えば、湿式クラッチは、エンジンからギアボックスに動力を伝達するために、デュアルクラッチ変速機で使用され得る。湿式クラッチは、典型的に、鋼プレートと交互配置された摩擦プレートを有する、1つ以上のクラッチパックを含む。摩擦プレートは、クラッチパックが押し縮められてクラッチと係合したときに、潤滑油(自動変速機流体)と協働して、摩擦プレートと鋼プレートとの間に摩擦係合を作り出す、摩擦材料でコーティングされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一実施形態によれば、クラッチ用の摩擦プレートは、表面と、表面に配置された第1の摩擦材料と、を含む。第1の摩擦材料は、第1の摩擦材料の総重量の第1の重量濃度の第1のフィラー材料を含む、第1の組成物を有する。第2の摩擦材料は、表面に配置され、第1の組成物とは異なり、第2の摩擦材料の総重量のうち第1の重量濃度よりも高い第2の重量濃度の第2のフィラー材料を含む、第2の組成物を有する。
【0004】
別の実施形態によれば、摩擦プレートを製造する方法は、第1の摩擦材料を圧力プレートの表面に塗布することを含む。第1の摩擦材料は、第1の摩擦材料の総重量の第1の重量濃度のうち第1のフィラー材料を含む、第1の組成物を有する。本方法は、第2の摩擦材料を表面に塗布することをさらに含む。第2の摩擦材料は、第1の組成物とは異なり、第1の重量濃度よりも高い第2の摩擦材料の総重量の第2の重量濃度のうち第2のフィラー材料を含む、第2の組成物を有する。
【0005】
さらに別の実施形態によれば、クラッチ用の摩擦プレートは、摩擦プレートの表面に配置された摩擦材料の第1のパッチを含む。第1の摩擦材料は、第1の摩擦材料の総重量のうち第1の重量濃度の第1のフィラー材料を含む、第1の組成物を有する。摩擦材料の少なくとも1つの第2のパッチもまた、表面に配置される。第2の摩擦材料は、第1の組成物とは異なり、第1の重量濃度よりも高い第2の摩擦材料の総重量のうち第2の重量濃度の第2のフィラー材料を含む、第2の組成物を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】クラッチの概略分解斜視図である。
図2図1のクラッチの摩擦プレートの正面図である。
図3】クラッチの摩擦プレートを製造するための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示の実施形態が、本明細書に記載されている。しかしながら、開示された実施形態は単なる例であり、他の実施形態は様々な代替形態を採り得ることを理解されたい。図は必ずしも縮尺どおりではなく、いくつかの特徴は、特定の構成要素の詳細を示すために誇張または最小化されている場合がある。したがって、本明細書に開示される特定の構造的詳細および機能的詳細は、限定として解釈されるべきではなく、単に、当業者に実施形態を様々に使用することを教示するための代表的な基礎として解釈されるべきである。当業者が理解するように、図のいずれか1つを参照して例解および説明される様々な特徴は、1つ以上の他の図に例解される特徴と組み合わせて、明示的に例解または説明されない実施形態を生成することができる。例解された特徴の組み合わせは、典型的な用途のための代表的な実施形態を提供する。しかしながら、特定の用途または実装のために、本開示の教示と一致する特徴の様々な組み合わせおよび修正が所望される可能性がある。
【0008】
実施例を除いて、または別様に明確に示している場合を除いて、反応および/または使用の物質または状態の量を示す本説明におけるすべての数量は、本発明の最も広い範囲を説明する際に「約(about)」という語によって修飾されるものと理解されたい。一般に、述べている数値的限度内での実行が好ましい。また、明確に反対のことを述べていない限り、パーセント、「部」、および比率の値は、重量によるものであり、本発明と関連する所与の目的に対して好適なまたは好ましいものとしての物質の群またはクラスの記載は、群またはクラスの要素のうちの任意の2つ以上の混合物が同様に好適であるまたは好ましいことを示唆し、化学用語中の構成要素の説明は、説明の中で指定された任意の組み合わせへの添加時の成分を指し、一度混合した混合物の成分の間での化学的相互作用を必ずしも妨げず、頭字語または他の略語の第1の定義は、同じ略語の本明細書でのすべてのその後の使用に適用し、最初に定義された略語の通常の文法的な変化に対して必要な変更を加えて適用され、明確に反対のことを述べていない限り、特性の測定は、同じ特性について以前にまたは以後に言及されるものと同じ技術によって行われる。
【0009】
特定の構成要素および/または状態は、当然ながら変動し得るため、本発明は、下で説明する特定の実施形態および方法に限定されない。さらに、本明細書中で使用される用語は、本発明の特定の実施形態を記載する目的のためにのみ使用され、決して限定するものではない。
【0010】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、別途文脈が明確に指示しない限り、複数の支持対象を含む。例えば、単数形の構成要素に対する言及は、複数の構成要素を含むことを意図する。
【0011】
図1を参照すると、湿式クラッチ20は、複数の摩擦プレート24(クラッチプレートなどとしても知られる)および複数の圧力プレート26(鋼プレート、バンドなどとしても知られる)を有する、少なくとも1つのクラッチパック22を含む。摩擦プレート24は、摩擦プレート24および圧力プレート26がパック22の長さに沿って交互になるように、圧力プレート26と交互配置される。摩擦プレート24は、第1の構成要素に回転可能に固定され、圧力プレート26は、第2の構成要素に回転可能に固定される。クラッチ20は、クラッチが完全に係合したときに、第1および第2の構成要素を互いに回転可能に係止するように構成される。例えば、圧力プレート26は、ドラム34内に画定された溝32によってスプライン処理するフィンガ30を含み得、摩擦プレート24は、シャフトまたは他の構成要素(図示せず)内に画定された溝によってスプライン処理する歯36を含み得る。アクチュエータ(図示せず)は、クラッチパック22を圧縮して、クラッチ20に係合し、クラッチパック22を解放して、クラッチ20を係合解除するように構成される。
【0012】
第1の湿式摩擦材料40は、摩擦プレート24の一方または両方の表面に塗布され得る。摩擦材料40は、摩擦調整剤を含む潤滑剤(油)と協働して、摩擦プレート24と圧力プレート26との間の摩擦係合を容易にする。典型的な潤滑剤は、自動変速機流体(ATF)である。ATFは、クラッチパック22の係合および係合解除を容易にする、添加剤、構成要素、または成分とも称される、摩擦調整剤を含む。これらの調整剤は、よく知られており、本明細書では考察しない。
【0013】
湿式摩擦材料40は、1つ以上の繊維材料(繊維)と、複数の粒子を有する1つ以上のフィラー材料(フィラー)と、バインダと、を含み得る。摩擦材料40の総重量は、繊維、フィラー、およびバインダの総量である。第1の摩擦材料40は、フィラーよりも多くの繊維を含む。例示的な第1の摩擦材料40は、第1の摩擦材料の総重量の32重量パーセント未満の第1の重量濃度の第1のフィラー材料を含む、第1の組成物を有する。いくつかの実施形態では、第1の重量濃度は、第1の摩擦材料の総重量の20~30重量パーセントである。第1の摩擦材料40は、第1の摩擦材料の総重量の35~45パーセントの繊維を有し得る。繊維は、有機または無機であり得、例えば、セルロース繊維、綿繊維、アラミド繊維、および炭素繊維が挙げられるが、それらに限定されない。例示的なバインダとしては、変性フェノール樹脂、ポリマー紙加工助剤、シラン、カップリング剤、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。
【0014】
フィラーは、摩擦調整剤を担持するように構成される。フィラーは、例えば、摩擦調整剤の担持に寄与する形状を有する粒子を有することによって、摩擦調整剤の担持に寄与する粒子サイズを有することによって、摩擦調整剤を担持するようにサイズ決定された孔によって、またはそれらの任意の組み合わせによって、摩擦調整剤との表面相互作用を介して摩擦調整剤を担持し得る。
【0015】
フィラーは、珪藻土(DE)粒子を含有するシリカ粒子を含み得る。DEは、珪藻と呼ばれる単細胞水生生物の堆積によって形成される天然石英である。DEは、海洋または淡水環境で形成され得、また、その一意の形状および構造に関連する特性を示す。これらの特性は、各堆積物中に見出される珪藻種に応じて変化する。例えば、これらの異なる堆積物は、異なる化学物質、形状、細孔構造などを有し得る。シリカ含有DE粒子のいくつかの例は、Celite(登録商標)281、DiaFil(登録商標)230、およびCelTiX(商標)である。Celite(登録商標)281は、プランクトン海洋珪藻土のフラックス焼成珪藻土であり、DiaFil(登録商標)230は、天然珪藻土であり、CelTiX(商標)は、大部分のタイプのエラストマーにおいて優れた強化能力を有する微細な天然淡水珪藻土製品である。シリカはまた、二酸化ケイ素とも称される。珪藻土は、一般に、シリカ以外の他の酸化物を約10パーセント含有し、実質的に結晶性シリカを含まない。典型的に、珪藻土は、非晶質である。
【0016】
例示的な一態様では、シリカリッチ担体粒子は、少なくとも0.1マイクロメートル(μm)の、および最大で50μmのメジアン粒径を有し、他の例示的な実施形態では、少なくとも1μmの、および最大で20μmのメジアン粒径を有し、別の例示的な実施形態では、少なくとも5μmの、および最大で15μmのメジアン粒径を有し、さらに他の例示的な実施形態では、少なくとも9μmの、および最大で11μmのメジアン粒径を有し、さらなる実施例では、約10μmのメジアン粒径を有する。
【0017】
例示的な一実施形態では、シリカ粒子は、少なくとも0.1の、および最大で10μmのメジアン細孔直径を有し、他の例示的な実施形態では、少なくとも0.5の、および最大で7μmのメジアン細孔直径を有し、別の例示的な実施形態では、少なくとも0.5の、および最大で5μmのメジアン細孔直径を有し、さらに別の例示的な実施形態では、少なくとも1の、および最大で3μmの直径のメジアン細孔直径を有し、さらなる例示的な実施形態では、メジアン粒径は、約2μmである。
【0018】
シリカリッチ粒子は、ATFと互換性を持つ摩擦調整剤との改善されたおよび向上した相互作用を提供し得、一方で、より良好な性能も提供し得る。上述したメジアン粒径および/または上述したメジアン細孔サイズを有するシリカリッチ粒子は、ATFが、フィラーを通って容易に流れることを可能にし、したがって、改善された性能のために、潤滑剤を均一に分配する。
【0019】
湿式クラッチの1つの故障モードは、摩擦プレート上の摩擦材料の表面閉塞(ガラス故障としても知られる)である。表面閉塞は、摩擦材料および圧力プレートの表面温度がATF調整剤を分解させて摩擦材料上に堆積させる閾値温度を超えたときに生じる。ATF調整剤は、極端に高温の動作中に分解し、表面が塞がれるまで、例えば、グレージングされるまで摩擦材料表面にますます堆積し続ける。グレージングは、経時的に状態が悪化するので、すなわち、ますます塞がれるので、摩擦材料の摩擦係数を低減させ、クラッチの震動につながり得る。表面閉塞が臨界点に到達すると、摩擦プレートは、グレージングされたと見なされ、交換しなければならない。
【0020】
自動車用途では、クラッチパックにおける過剰な熱の短い事例は、一般的であり、個別に、問題を含まない。しかしながら、こうした事例があまりに高頻度である場合、グレージングは、クラッチパックの寿命を低減さ得る。表面閉塞は、経時的に増大するので、予防保守を用いて、分解したATF調整剤が蓄積するときにそれらを除去して、過剰な蓄積を防止し、摩擦プレートがグレージングされる可能性を低減させ、したがって、クラッチパックの寿命を延ばすことができる。
【0021】
予防保守は、それを実行する個人の常識では、クラッチパックが変速機または他の構成要素の内部にあるので、ここでは有用でない。代わりに、本開示は、自動的に予防保守を実行するクラッチパックを記載する。すなわち、クラッチパックは、分解したATF調整剤を摩擦面から除去して、表面閉塞を低減させるための特徴を含む。1つ以上の実施形態によれば、ワイパ(特殊なタイプの摩擦材料)を摩擦プレートの表面に提供することができる。ワイパは、摩擦プレートと圧力プレートとの間に研磨粒子を付着および分配させるように設計されている。これらの研磨粒子は、クラッチの動作中に分解したATF調整剤をこすり落として、それが蓄積したときに表面の閉塞を低減させる。ワイパは、第1の摩擦材料のパッチを摩擦プレートの表面に分散させた、第2の摩擦材料のパッチであり得る。
【0022】
図2を参照すると、摩擦プレート24は、プレートの一方または両方の表面52に少なくとも1つのワイパ(第2の摩擦材料)50を含み得る。ワイパ50は、フィラー、繊維、およびバインダを含む摩擦材料であるが、第1の摩擦材料40とは異なり、ワイパ50は、繊維よりもフィラーを多く含む。ワイパ50は、第1の摩擦材料40の第1の組成物とは異なる第2の組成物を有する。第2の組成物は、ワイパ50の総重量のうち、摩擦材料40の第1の重量濃度よりも高い第2の重量濃度の第2のフィラー材料を含む。1つ以上の実施形態では、第2の重量濃度は、ワイパ50の総重量の30重量パーセントよりも高く、ワイパ50の総重量の両端値を含む39~46重量パーセントであり得る。
【0023】
一実施形態では、研磨特性(モース硬度6~9)および粒子サイズ(10~50μm)が、クラッチパック22の他の構成要素に損傷を与えることなく、分解したATF調整剤を摩擦材料40から除去することに十分に適しているので、珪藻土(DE)が、ワイパ50のフィラーとして使用される。しかしながら、ワイパ50のフィラーは、DEに限定されず、類似の硬度および粒子サイズを有する他の適切なフィラーが使用され得る。これらのフィラーとしては、窒化ケイ素、酸化クロム、ガラス粒子、石英、長石、酸化鉄、霞石閃長岩が挙げられる。
【0024】
繊維は、第1の摩擦材料40に類似の材料であり得、また、有機または無機両方の化合物を含む。ワイパ50の繊維の濃度は、第1の摩擦材料40の繊維濃度よりも低い。ワイパ50は、ワイパの総重量の32パーセント未満の繊維を含む。例えば、ワイパ50は、ワイパ50の総重量の両端値を含む19~26重量パーセントを含み得る。
【0025】
ワイパ50のバインダは、第1の摩擦材料40に使用されるバインダよりも軟質であり得る。例えば、ワイパ50のバインダは、バインダの総重量の最大で50パーセントのシランカップリング剤を有し得る。これは、ワイパ50のより高速な付着を促進し、柔軟性を増加させて、クラッチプレートと接触するワイパ50を維持することを補助し得る。ワイパ50のバインダはまた、フェノール樹脂などの典型的なバインダ材料も含み得る。
【0026】
ワイパ50および摩擦材料40は、表面52の一方または両方に配設される摩擦材料のパッチであり得る。摩擦材料40のパッチは、ワイパ50のパッチよりも大きい表面積を有し得る。ワイパ50のパッチおよび摩擦材料40のパッチは、表面52の異なる領域内のワイパ50と摩擦材料40との間に間隔を伴って、表面52の周囲に周方向に配設され得る。例解される実施形態では、表面52は、4つのワイパ50を含むが、他の実施形態では、より多いまたはより少ないワイパが使用され得る。例えば、1つまたは2つのワイパが使用され得る。ワイパ50は、等間隔(図示されるように90度間隔)であり得るか、または不等間隔であり得る。
【0027】
摩擦材料40は、ワイパ50のための間隙を作り出すために、いくつかの領域において等間隔であり、他の領域ではより大きい間隔を有し得る。例えば、ワイパ50aのための間隙60を作成するために、摩擦材料40a、40b、および40cは、等間隔であり、一方で、摩擦材料40cおよび40dは、より大きい間隔である。
【0028】
クラッチ20の動作中に、クラッチパック22が圧縮されると、各ワイパ50がそれぞれの圧力プレート26と係合する。ワイパ50と圧力プレート26との間の摩擦は、ワイパ50に、研磨粒子である剥離フィラーを圧力プレート26の表面に付着させる。これらの粒子は、圧力プレート26と摩擦材料40との間を流れて、ATF調整剤の堆積物を摩擦材料40の表面から離れて削り取り、表面閉塞を低減させる。研磨粒子は、摩擦材料40への過剰な付着を生じさせないように選択される。研磨粒子はまた、典型的に鋼製である圧力プレート26よりも軟質であり、圧力プレートへの過剰な付着を生じさせない。
【0029】
図3を参照すると、圧力プレートを製造する方法100が開示されている。特定の順序で提示されているが、この方法は、異なる順序で実行することができることを理解されたい。さらに、追加のステップは、説明するステップと併せて含まれ得、いくつかの実施形態では、説明するステップの1つ以上が省略され得る。
【0030】
ステップ102において、摩擦プレートが提供される。ステップ104において、第1の摩擦材料が、摩擦プレートの1つ以上の表面に塗布される。第1の摩擦材料は、上で説明した摩擦材料40と同じまたは類似のものであり得る。第1の摩擦材料は、上で説明したパッチであり得る。摩擦プレートは、複数の領域を含み得、第1の摩擦材料のパッチは、領域の第1のものに配置され得る。第1の摩擦材料のパッチのいくつかは、第2の摩擦材料(ワイパ)のための1つ以上の間隙を作り出すために、周方向により大きい間隔で離間され得る。
【0031】
ステップ106において、第2の摩擦材料(1つ以上のワイパ)が、摩擦プレートの1つ以上の表面に塗布される。第2の摩擦材料は、上で説明したワイパ50と同じまたは類似のものであり得る。第2の摩擦材料は、上で説明したパッチであり得る。第2の摩擦材料の1つ以上のパッチは、間隙内の表面に塗布される。第2の摩擦材料のパッチは、第1および第2の摩擦材料が圧力プレートの周囲に周方向に配設されるように、プレートの領域の第2のものに配置され得る。
【0032】
例示的な実施形態が上記に説明されているが、これらの実施形態が、特許請求の範囲に含まれるすべての可能な形態を説明することは意図されていない。本明細書で使用される用語は、限定ではなく説明の用語であり、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができることが理解される。前述のように、様々な実施形態の特徴を組み合わせて、明示的に説明または例解されていない可能性がある本発明のさらなる実施形態を形成することができる。様々な実施形態は、1つ以上の所望の特性に関して、利点を提供するか、または他の実施形態または先行技術の実装よりも好ましいと説明されている可能性があるが、当業者は、1つ以上の特徴または特性を妥協して特定の用途および実装に依存する所望の全体的なシステム属性を達成することができることを認識する。これらの属性は、コスト、強度、耐久性、ライフサイクルコスト、市場性、外観、包装、サイズ、保守性、重量、製造性、組み立ての容易さなどを含み得るが、これらに限定されない。したがって、任意の実施形態が、1つ以上の特性に関して他の実施形態または先行技術の実装よりも望ましくないと記載される限りにおいて、これらの実施形態が本開示の範囲外ではなく、特定の用途に望ましい場合があり得る。
【0033】
以下は、図に示されている参照番号のリストである。しかしながら、これらの用語の使用は、一実施形態に関する例解を目的とするものであるに過ぎないことを理解されたい。また、図に例解され、特許請求の範囲に存在する特定の用語を相関させる参照番号の使用は、例解された実施形態のみを網羅するように特許請求の範囲を限定することを意図しない。
【符号の説明】
【0034】
22 クラッチパック
24 摩擦プレート
26 圧力プレート
30 フィンガ
32 溝
34 ドラム
36 歯
40 第1の摩擦材料
50 ワイパ
52 表面
60 間隙
図1
図2
図3