IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲーの特許一覧

特許7234417トルクを測定するための装置及びそのような装置を備えるストレイン・ウェーブ・ギア
<>
  • 特許-トルクを測定するための装置及びそのような装置を備えるストレイン・ウェーブ・ギア 図1
  • 特許-トルクを測定するための装置及びそのような装置を備えるストレイン・ウェーブ・ギア 図2
  • 特許-トルクを測定するための装置及びそのような装置を備えるストレイン・ウェーブ・ギア 図3
  • 特許-トルクを測定するための装置及びそのような装置を備えるストレイン・ウェーブ・ギア 図4
  • 特許-トルクを測定するための装置及びそのような装置を備えるストレイン・ウェーブ・ギア 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】トルクを測定するための装置及びそのような装置を備えるストレイン・ウェーブ・ギア
(51)【国際特許分類】
   G01L 3/10 20060101AFI20230228BHJP
   G01L 3/14 20060101ALI20230228BHJP
   B25J 19/02 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
G01L3/10 311
G01L3/14 G
B25J19/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021566357
(86)(22)【出願日】2020-04-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-08
(86)【国際出願番号】 DE2020100350
(87)【国際公開番号】W WO2020224711
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2021-11-08
(31)【優先権主張番号】102019112146.9
(32)【優先日】2019-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン ギール
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ヘアニング
(72)【発明者】
【氏名】ロミーナ ベヒシュテット
(72)【発明者】
【氏名】ヨヘン ダーメラウ
(72)【発明者】
【氏名】イェンス ハイム
(72)【発明者】
【氏名】リカルド エンリケ ブルニャーラ
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特許第4518467(JP,B2)
【文献】特許第3644558(JP,B2)
【文献】中国特許出願公開第109139856(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107398921(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L
B25J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストレイン・ウェーブ・ギアのトルクを測定するための装置であって、前記装置が、前記トルクが作用するフレクススプライン(01、02)と、前記フレクススプライン(01、02)の上に配置された電気的に絶縁する絶縁層(06)と、前記絶縁層(06)の上に配置された変形感受性測定層(04)と、を備え
前記絶縁層が、少なくとも酸化物またはダイアモンドライクカーボンを含む層からなる、装置。
【請求項2】
前記フレクススプライン(01、02)が、ロボティクスシステムの一部であることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
保護層(07)が、前記測定層(04)上に適用されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記保護層(07)が、有機物又は無機物であることを特徴とする、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記フレクススプライン(01、02)上に適用された、前記測定層(04)、前記絶縁層(06)、及び前記保護層(07)からなる一連の層の総厚が、200μm未満であることを特徴とする、請求項3又は4に記載の装置。
【請求項6】
前記絶縁層が、Al またはSiO からなることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記フレクススプライン(01、02)上に適用された、前記測定層(04)及び前記絶縁層(06)からなる一連の層の総厚が、20μm未満であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
更なる構成要素が、前記フレクススプライン(01、02)の上に配置されていることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
ロボットアーム用のストレイン・ウェーブ・ギアであって、請求項1~8のいずれか一項に記載のトルクを測定するための装置を備え、駆動シャフトと、内側リング及び外側リングを有する波動発生器と、内歯付きリングギアと、外歯付きフレクススプライン(01、02)と、を更に備え、前記外歯付きフレクススプライン(01、02)及び前記内歯付きリングギアが、歯が噛み合うように互いに対して同軸であるように配置され、前記内側リングが、前記駆動シャフトが駆動して前記外歯付きフレクススプライン(01、02)を変形させるように前記駆動シャフトの上に位置付けられている、ストレイン・ウェーブ・ギア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットのストレイン・ウェーブ・ギアにおいて生じるトルクを測定するための装置に関する。特に、装置は、ロボット関節に使用される。本発明は、ストレイン・ウェーブ・ギアに更に関する。
【背景技術】
【0002】
軸に作用するトルクを決定するための測定装置は、独国特許出願公開第102010029186(A1)号から公知であり、測定装置は、第1の装置及び第2の装置を含む。装置はそれぞれ、トルクに関連付けられたアナログ電気信号を発生するように構成されている。2つの個別のトルクは、下流側アナログ-デジタル変換器及び下流側デジタル評価装置を用いて決定される。装置は、機械的測定体に適用されるストレインゲージで構成されている。
【0003】
独国特許出願公開第102014210379(B4)号には、トルクセンサと、関節アームロボットの関節で、又は関節において発生するトルクを測定するための方法と、が記載されている。センサは、トルクが作用すると変形するように構成された複数の測定スポークを含む。センサはまた、測定スポーク上に配置されたストレインゲージを含む。
【0004】
独国特許出願公開第102012208492(A1)号には、機械要素の表面にストレインゲージ構成を作製するための方法が記載されている。保護層で覆われている変形感受性測定層が表面に適用されている。保護層は、レーザ加工により局所的に除去され、露出した測定層は、電気的に接触する。更に、本公報から、絶縁層が機械要素の表面と測定層との間に配置され得ることを推測することができる。
【0005】
独国特許出願公開第102014219737(A1)号には、回転可能に取り付けられた構成要素に加えられたトルクを測定するための装置が記載されている。キャリア構成要素が、構成要素上に配置され、キャリア構成要素上に変形感受性材料がコーティングとして適用されている。変形感受性材料は、トルク測定構成を形成する。
【0006】
電気モータの出力トルクを決定するための装置及び方法は、独国特許出願公開第10317304(A1)号から公知である。リングギアを有するギアは、電気モータの下流側に配置されている。動的モータトルクは、リングギア上の固定位置で支持されたトルクセンサを用いて測定される。
【0007】
独国特許出願公開第102013204924(A1)号には、シャフトに作用するトルクを決定するための構成が記載されている。特に、本構成は、車両の操舵カラムの一部である。本構成は、操舵車輪の側の第1の操舵シャフト区分と、操舵ギアの側の第2の操舵シャフト区分と、操舵シャフト区分に接続するねじり区分と、を含む。更に、本構成は、ストレインゲージを有する、トルク測定のための直接コーティングを含む。
【0008】
先行技術では、シャフトに作用するトルクの測定のために、ストレインゲージがシャフトの外側又はシャフト上に適用された測定構成が使用されることが示されている。
【0009】
ロボットギアに関して、ストレイン・ウェーブ・ギアによって伝達されるトルクを正確に決定することが極めて重要である。例えば、ロボットアームは、いくつかある用途の中でも、医療技術において人間用のプロテーゼとして使用され、ロボットアームは、動作中に様々な速度及び様々な負荷において、正確な機械的動き及び全体的な機械的動きの両方を実施する必要がある。同様のことが工業用ロボットにも適用される。
【0010】
ストレイン・ウェーブ・ギアは、いくつかある用途の中でも、ロボット、自動車、工作機械、及び印刷機械の駆動における軸駆動部として使用される。トルクを伝達するストレイン・ウェーブ・ギアはまた、ハーモニックドライブ又はハーモニックギアとして既知である。ストレイン・ウェーブ・ギアは、通常、入力シャフトと、楕円形ディスクと、フレクススプラインと、外側リングと、入力シャフトと、ハウジングと、を含む。フレクススプラインは、外側に歯付けされ、外側リングは、内側に歯付けされ、その2つの構成要素は、歯が互いに噛み合うように互いに同軸に配置されている。
【0011】
ロボットアームにおけるトルク測定のための装置が既知であり、その装置は、ロボットアームのギアハウジングの外側に取り付けられている。例えば、ストレインゲージが上に配置された変形体は、ロボットアーム、特にロボット関節の領域に配置される。ストレインゲージを使用して、せん断ひずみを記録して、ロボット関節に加えられたトルクを決定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来技術に基づいて、本発明の目的は、空間を節約するように構成され、同時に高度な正確性及び堅牢性を提供する改善されたトルク測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
当該目的は、添付の請求項1に記載のトルクを測定するための装置によって達成される。更に、本目的は、請求項9に記載のストレイン・ウェーブ・ギアによって達成される。
【0014】
本発明による装置は、ストレイン・ウェーブ・ギアのトルクを測定するために使用される。トルク測定装置は、構成要素と、構成要素上に互いに重なり合うように配置され、ストレインゲージの直接コーティングの一部である複数の層と、を含む。電気的に絶縁する絶縁層は、構成要素上に直接配置されている。変形感受性測定層は、絶縁層上に直接配置されている。
【0015】
構成要素は、ロボットシステムの一部、特にストレイン・ウェーブ・ギアである。複数の層を支持する構成要素は、フレクススプラインである。
【0016】
本発明による装置の利点の1つは、トルクを測定するためにのみ使用される追加の変形体が不要であるため、空間を節約するように構成されていることである。本装置の別の利点は、動作中に高い精度及び精密さを可能にし、非常に堅牢であることである。
【0017】
構成要素は、好ましくは金属製である。あるいは、構成要素は、半導体材料で製造される。フレクススプラインは、その外径上に歯を有する。例えば、構成要素は、所望の制限値内で可撓性である円筒形鋼製スリーブであってもよい。
【0018】
好ましい実施形態では、保護層は、変形感受性測定層上に適用され、保護層は、保護層の下に位置する層を環境の影響から保護する。保護層は、好ましくは有機材料で製造される。あるいは、保護層は、好ましくは無機材料で製造される。
【0019】
測定層は、構成要素のひずみ又はせん断を測定するために使用され、トルクが測定される。
【0020】
測定層は、好ましくは金属又は合金、特にニッケル合金からなる。ニッケル合金は、好ましくはニッケルクロム合金(NiCr)である。
【0021】
測定層は、好ましくは構造化を有する。特に好ましくは、測定層は、ストライプパターンを形成する空間構造化を有する。異なる実施形態は、例えば、構成要素の長手方向軸線に対して35°~55°の角度範囲のストライプを有してもよい。好ましくは、構造化は、レーザを用いて又はエッチングによって作製され、構造化は、測定層が構成要素上に適用された後にのみ作製される。
【0022】
絶縁層は、好ましくは、1種類の酸化物又は複数種類の異なる酸化物からなる。あるいは、絶縁層は、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなる。あるいは、絶縁層は、1種類以上の酸化物及びDLCからなり得る。絶縁層は、特に好ましくは、Al(酸化アルミニウム)及び/又はSiO(ウォラストナイト)からなる。
【0023】
例えば、絶縁層は、物理蒸着法(PVD)又は化学支援物理蒸着法(PACVD)によって生成されてもよい。一実施形態では、絶縁層は、PVD法とPACVD法との組み合わせによって生成される。
【0024】
好ましくは、測定層、絶縁層、及び保護層からなる構成要素に適用された一連の層は、200μm未満の総厚を有する。特に好ましくは、測定層及び絶縁層を含む一連の層は、20μm未満の総厚を有する。
【0025】
好ましくは、更なる要素を構成要素上に配置することができる。一実施形態では、信号前増幅及び/又は信号評価及び/又は信号送信のための電子構成要素が、構成要素上に配置されている。
【0026】
一実施形態では、少なくとも区分において接触する電導性接触層は、ストライプ区分とストライプ区分との間に形成されている。
【0027】
本発明によるストレイン・ウェーブ・ギアは、そのすべての実施形態によって上述された装置によるトルクを測定するための装置を含む。更に、ストレイン・ウェーブ・ギアは、駆動シャフトと、非円形の、例えば、楕円形の内側リング及び変形可能な外側リングを有する転がり軸受であってもよい波動発生器と、リングギアと、フレクススプラインと称する弾性スリーブと、を含む。装置の後者の構成要素には外歯があり、リングギアには内歯がある。フレクススプライン及びリングギアは、ギア歯が互いに噛み合うように互いに対して同軸に配置されている。波動生成器の内側リングは、構成要素を駆動するように駆動シャフト上に位置付けられている。
【0028】
ストレイン・ウェーブ・ギアはまた、好ましくは、上述したギア構成要素が少なくとも部分的に配置されるハウジングを有する。
【0029】
本発明によるストレイン・ウェーブ・ギアは、装置及び装置と共にコーティングがハウジング内に配置されており、追加の変形体が不要であるため、設置空間を有利に節約する。装置がトルクを正確に測定することによって提供する高精度に起因して、装置及びストレイン・ウェーブ・ギアは、ロボットの分野で適用可能であり、特に有利である。特に、装置及びストレイン・ウェーブ・ギアは、衝突に対する保護において、又は力及び剛性の調整において有利である。
【0030】
本発明の更なる利点及び詳細は、添付図面を参照して、好ましい実施形態の以下の説明から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明による装置の第1の実施形態の側面図及び詳細図である。
図2図1に示した装置の断面図及び詳細図である。
図3】装置の第2の実施形態の平面図である。
図4図3に示した装置の側面図である。
図5図4に示した装置の側面図の断面図及び詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、本発明による装置の第1の実施形態の側面図及び詳細図を示す。装置は、ストレイン・ウェーブ・ギアにおいて使用可能なフレクススプラインを表し、フレクススプラインは、ディスク01と、ディスクに軸線方向に隣接する円筒形構成要素02と、からなる。好ましくは、フレクススプラインは、鋼製である。円筒形構成要素02、すなわちスリーブは、ディスク01の内径上に配置されている。円筒形構成要素02は、ディスク01から離れる方向に対向する区分上に外歯03を有する。ストレインゲージの形態、特にSensotectストレインゲージの形態の変形感受性測定層04が、ディスク01に面する円筒形構成要素02の外周の区分上に配置されている。絶縁する絶縁層06は、円筒形構成要素02の基材と変形感受性測定層04との間に形成されている。ストレイン・ウェーブ・ギアのトルクは、変形感受性測定層04によって決定される。測定層は、好ましくは、ストライプパターンを形成する構造化を有する。
【0033】
更に、変形感受性測定層04の詳細図を図1に示す。図示した実施例では、測定層04の形成された構造は、多数蛇行して走り、構造の非曲線区分の軸線は、構成要素02の円筒軸線に対して傾斜している。
【0034】
本発明による装置の利点の1つは、設置空間を節約するように構成されていることである。
【0035】
図2は、ディスク01及び円筒形構成要素02を有する図1に示したフレクススプラインの断面図である。図2の詳細図には、装置の一連の層が示されている。鋼製の円筒形構成要素02上に、絶縁層06が適用され、絶縁層06上に、変形感受性測定層04と、変形感受性測定層04上に配置された保護層07と、が適用されている。変形感受性測定層04は、構造化NiCr機能層である。
【0036】
図3は、装置の請求されていない実施形態の平面図を示す。図1に示した装置とは異なり、この場合、ディスク01が、変形感受性測定層04を有する。円筒形構成要素02の外周上に変形感受性測定層が形成されていない。変形感受性測定層04の個々の構成要素は、ディスク01上で円周方向に分布されている。装置は、この場合、カラースリーブとして構成されている。
【0037】
図4は、図3に示したカラースリーブの側面図を示す。変形感受性測定層04は、ディスク01上に形成されているため、円筒形構成要素02の外周上の測定層は見えない。ディスク01から離れる方向に対向する円筒形構成要素02の領域では、歯03がまた外周上に形成されている。
【0038】
図5は、図4に示した装置の側面図の断面図である。更に、図5は、ディスク01の一連の層の詳細図を示す。好ましくは鋼製ディスク01上にAlからなる絶縁層06が配置されている。絶縁層06上に保護層07が上に位置する変形感受性測定層04が配置されている。個々の変形感受性測定層04の間に電気的に接触するための接触層08が位置する。
【符号の説明】
【0039】
01 ディスク
02 円筒形構成要素
03 外歯
04 変形感受性測定層
05 -
06 絶縁層
07 保護層
08 接触層
図1
図2
図3
図4
図5