(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】BRAFV600E大腸癌の治療に使用するためのERK1/2阻害剤と、BRAF阻害剤およびEGFR阻害剤との三重組み合わせ
(51)【国際特許分類】
A61K 31/5377 20060101AFI20230228BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20230228BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230228BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230228BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
A61K31/5377
A61K31/506
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2021568212
(86)(22)【出願日】2020-05-12
(86)【国際出願番号】 US2020032445
(87)【国際公開番号】W WO2020231976
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-11-15
(32)【優先日】2019-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100139310
【氏名又は名称】吉光 真紀
(72)【発明者】
【氏名】バグワット,シュリパッド,ベンカトラマン
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ,サジャン
(72)【発明者】
【氏名】ティウ,ラモン,ベラスケス
【審査官】新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-538768(JP,A)
【文献】国際公開第2018/213302(WO,A1)
【文献】Cancer Discovery,2018年,Vol.8, No.4,pp.417-427
【文献】Cancer Research,2017年,Vol.13, Supplement,Abstract 4973
【文献】Pharmacology & Therapeutics,2018年,Vol.187,pp.45-60
【文献】Cancer Discovery,2017年,Vol.7, No.6,pp.610-619
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
6,6-ジメチル-2-{2-[(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)アミノ]ピリミジン-4-イル}-5-[2-(モルホリン-4-イル)エチル]-5,6-ジヒドロ-4H-チエノ[2,3-c]ピロール-4-オン、またはその薬学的に許容される塩と、エンコラフェニブ、またはその薬学的に許容される塩とを含む、大腸癌を治療するためのキット。
【請求項2】
前記6,6-ジメチル-2-{2-[(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)アミノ]ピリミジン-4-イル}-5-[2-(モルホリン-4-イル)エチル]-5,6-ジヒドロ-4H-チエノ[2,3-c]ピロール-4-オンの薬学的に許容される塩が、メタンスルホン酸塩である、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記6,6-ジメチル-2-{2-[(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)アミノ]ピリミジン-4-イル}-5-[2-(モルホリン-4-イル)エチル]-5,6-ジヒドロ-4H-チエノ[2,3-c]ピロール-4-オンの薬学的に許容される塩が、メタンスルホン酸二水和物塩である、請求項1または2に記載のキット。
【請求項4】
セツキシマブをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のキット。
【請求項5】
前記大腸癌がBRAF
V600E変異大腸癌である、請求項1~4のいずれか一項に記載のキット。
【請求項6】
エンコラフェニブ、またはその薬学的に許容される塩と同時、別々、または連続的に組み合わせて使用するための大腸癌の治療のための薬剤であって、6,6-ジメチル-2-{2-[(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)アミノ]ピリミジン-4-イル}-5-[2-(モルホリン-4-イル)エチル]-5,6-ジヒドロ-4H-チエノ[2,3-c]ピロール-4-オンである化合物、またはその薬学的に許容される塩を含む、薬剤。
【請求項7】
前記治療が、セツキシマブの投与をさらに含む、請求項6に記載の薬剤。
【請求項8】
前記化合物の薬学的に許容される塩がメタンスルホン酸塩である、請求項6または7に記載の薬剤。
【請求項9】
前記化合物の薬学的に許容される塩がメタンスルホン酸二水和物塩である、請求項8に記載の使用のための薬剤。
【請求項10】
前記大腸癌がBRAF
V600E変異大腸癌である、請求項6~9のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項11】
6,6-ジメチル-2-{2-[(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)アミノ]ピリミジン-4-イル}-5-[2-(モルホリン-4-イル)エチル]-5,6-ジヒドロ-4H-チエノ[2,3-c]ピロール-4-オン、またはその薬学的に許容される塩と同時、別々、または連続的に組み合わせて使用するための大腸癌の治療のための薬剤であって、エンコラフェニブ、またはその薬学的に許容される塩を含む、薬剤。
【請求項12】
セツキシマブを含む、6,6-ジメチル-2-{2-[(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)アミノ]ピリミジン-4-イル}-5-[2-(モルホリン-4-イル)エチル]-5,6-ジヒドロ-4H-チエノ[2,3-c]ピロール-4-オン、またはその薬学的に許容される塩と、エンコラフェニブ、またはその薬学的に許容される塩と同時、別々、または連続的に組み合わせて使用するための大腸癌の治療のための薬剤。
【請求項13】
セツキシマブをさらに含む、請求項6または7に記載の薬剤。
【請求項14】
前記6,6-ジメチル-2-{2-[(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)アミノ]ピリミジン-4-イル}-5-[2-(モルホリン-4-イル)エチル]-5,6-ジヒドロ-4H-チエノ[2,3-c]ピロール-4-オンの薬学的に許容される塩が、メタンスルホン酸塩である、請求項6~
8のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項15】
前記6,6-ジメチル-2-{2-[(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)アミノ]ピリミジン-4-イル}-5-[2-(モルホリン-4-イル)エチル]-5,6-ジヒドロ-4H-チエノ[2,3-c]ピロール-4-オンの薬学的に許容される塩が、メタンスルホン酸二水和物塩である、請求項6~
8のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項16】
前記大腸癌がBRAF
V600E変異大腸癌である、請求項6~11のいずれか一項に記載の薬剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ERK1/2阻害剤である、6,6-ジメチル-2-{2-[(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)アミノ]ピリミジン-4-イル}-5-[2-(モルホリン-4-イル)エチル]-5,6-ジヒドロ-4H-チエノ[2,3-c]ピロール-4-オン、またはその薬学的に許容される塩と、エンコラフェニブ、またはその薬学的に許容される塩、およびセツキシマブとの組み合せ、ならびに大腸癌などの特定の障害を治療するためにこれらの組み合わせを使用する方法に関する。
【0002】
BRAF(BRAFV600E)の発癌性変異は、転移性大腸癌(mCRC)の7~10%で発生している。mCRCを有する患者の一般集団における生存率の最近の改善にもかかわらず、BRAF変異mCRCを有する患者は、ほとんどの全身療法に対する反応が不良であり続け、予後は依然として不良である。BRAF変異mCRCを有する患者を治療するための新しい治療戦略に対する実質的な満たされていない要求が存在する。データは、MAPKシグナル伝達の強力な阻害がBRAF変異CRCの治療において最も重要であることを示唆している。R.B.Corcoran,et al,Mol Cell Oncol,2016,3(1),e1048405を参照のこと。
【0003】
MAPK経路阻害剤の組み合わせが当該技術分野において企図されてきた。R.B.Corcoran,et al,Cancer Discovery,2012,2:227-235、J.Tabernero,et al,Eur J Cancer,2014,50 suppl abstract 11LBAおよびJ.Tabernero,et al,J Clin Oncol,2016,34 suppl abstract 3544、R.B.Corcoran,et al,J Clin Oncol,2015,33:4023-4031、K.T.Flaherty,et al,N Engl J Med,2012,367:1694-1703、R.B.Corcoran,et al,Cancer Discov,2018,8(4):428-443、S.Huijberts,et al,J Clin Oncol,2017,35 suppl abstract TPS3622、E.V.Custem,et al,J Clin Oncol,2018,36:no 4 suppl,abstract 627、M.Hazer-Rethinam,et al,Cancer Discov,2018,8(4):417-427を参照のこと。
【0004】
WO16/106029は、癌の治療におけるERK阻害剤の実施例Aおよび化学療法剤との一般的な組み合わせを開示している。MAPKシグナル伝達の有意な遮断を維持することができる代替の戦略または薬剤が、BRAFV600E CRCの活性を高めるための鍵となる可能性がある。MEKのすぐ下流で作用するERK阻害剤は、MAPK抑制をより効果的に維持することができ、MEK阻害剤が脆弱である上流の耐性機構の多くを克服することができることが報告されている(L.G.Ahronian,et al,Mol Cell Oncol,2016,3(1):e1048405/1-e1048405/3)。BRAF V600E CRCの患者転帰を最終的に改善することができる、より強力で完全なMAPK遮断を達成する改善された治療が存在することが望ましい。
【0005】
本発明は、大腸癌、特にBRAFV600E CRCを治療するための、ERK阻害剤である、これまで実施例Aとして記載されている、6,6-ジメチル-2-{2-[(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)アミノ]ピリミジン-4-イル}-5-[2-(モルホリン-4-イル)エチル]-5,6-ジヒドロ-4H-チエノ[2,3-c]ピロール-4-オン、またはその薬学的に許容される塩と、エンコラフェニブ、またはその薬学的に許容される塩との二重組み合わせ、および実施例A、またはその薬学的に許容される塩と、エンコラフェニブ、またはその薬学的に許容される塩と、さらにセツキシマブとの三重組み合わせを提供する。
【0006】
本発明は、患者における大腸癌を治療する方法であって、その患者に、有効量の実施例A、またはその薬学的に許容される塩と、エンコラフェニブ、またはその薬学的に許容される塩とを投与することを含む、方法を提供する。好ましくは、実施例Aの薬学的に許容される塩は、メタンスルホン酸塩である。好ましくは、実施例Aの薬学的に許容される塩は、メタンスルホン酸二水和物塩である。好ましくは、この方法は、セツキシマブを投与することをさらに含む。好ましくは、大腸癌は、BRAFV600E変異大腸癌である。
【0007】
本発明はまた、実施例A、またはその薬学的に許容される塩と、エンコラフェニブ、またはその薬学的に許容される塩とを含む、大腸癌を治療するためのキットを提供する。好ましくは、実施例Aの薬学的に許容される塩は、メタンスルホン酸塩である。好ましくは、実施例Aの薬学的に許容される塩は、メタンスルホン酸二水和物塩である。好ましくは、キットは、注射用のセツキシマブをさらに含む。好ましくは、大腸癌は、BRAFV600E変異大腸癌である。
【0008】
本発明はまた、大腸癌の治療において、エンコラフェニブ、またはその薬学的に許容される塩と同時、別々、または連続的に組み合わせて使用するための、実施例A、またはその薬学的に許容される塩を提供する。好ましくは、併用使用は、セツキシマブをさらに含む。好ましくは、実施例Aの薬学的に許容される塩は、メタンスルホン酸塩である。好ましくは、実施例Aの薬学的に許容される塩は、メタンスルホン酸二水和物塩である。好ましくは、大腸癌は、BRAFV600E変異大腸癌である。
【0009】
本発明はまた、大腸癌の治療において、実施例A、またはその薬学的に許容される塩と同時、別々、または連続的に組み合わせて使用するための、エンコラフェニブ、またはその薬学的に許容される塩を提供する。好ましくは、併用使用は、セツキシマブをさらに含む。好ましくは、実施例Aの薬学的に許容される塩は、メタンスルホン酸塩である。好ましくは、実施例Aの薬学的に許容される塩は、メタンスルホン酸二水和物塩である。好ましくは、大腸癌は、BRAFV600E変異大腸癌である。
【0010】
本発明はまた、大腸癌の治療において、実施例A、またはその薬学的に許容される塩、およびエンコラフェニブ、またはその薬学的に許容される塩と同時、別々、または連続的に組み合わせて使用するためのセツキシマブを提供する。好ましくは、実施例Aの薬学的に許容される塩は、メタンスルホン酸塩である。好ましくは、実施例Aの薬学的に許容される塩は、メタンスルホン酸二水和物塩である。好ましくは、大腸癌は、BRAFV600E変異大腸癌である。
【0011】
本発明はまた、セツキシマブが、治療の初日に120分にわたって400mg/m2でIVで投与され、その後、疾患の進行または許容できない毒性まで、60分にわたって250mg/m2でIVで毎週投与される、本発明の特定の実施形態を提供する。
【0012】
本発明はまた、実施例A、またはその薬学的に許容される塩が、疾患の進行または許容できない毒性まで、1日1回の経口による450mg/m2の用量のエンコラフェニブ、またはその薬学的に許容される塩と組み合わせて経口投与により25mg~600mgの用量で1日1回投与される、本発明の別の特定の実施形態を提供する。好ましくは、実施例Aは、400mgの用量で投与される。好ましくは、実施例Aは、600mgの用量で投与される。
【0013】
本発明はまた、実施例A、またはその薬学的に許容される塩が、疾患の進行または許容できない毒性まで、1日1回の経口による450mg/m2のエンコラフェニブ、またはその薬学的に許容される塩の即時投与と組み合わせて経口投与により25mg~600mgの用量で1日1回投与され、その直後にセツキシマブが、1日目に120分にわたって400mg/m2でIVで投与され、その後、疾患の進行または許容できない毒性まで、60分にわたって250mg/m2でIVで毎週投与される、本発明の別の特定の実施形態を提供する。好ましくは、実施例Aは、400mgの用量で投与される。好ましくは、実施例Aは、600mgの用量で投与される。
【0014】
本発明はまた、実施例A、またはその薬学的に許容される塩が、疾患の進行または許容できない毒性まで、1日1回の経口による300mg/m2の用量のエンコラフェニブ、またはその薬学的に許容される塩と組み合わせて経口投与により25mg~600mgの用量で1日1回投与される、本発明の別の特定の実施形態を提供する。好ましくは、実施例Aは、400mgの用量で投与される。好ましくは、実施例Aは、600mgの用量で投与される。
【0015】
本発明はまた、実施例A、またはその薬学的に許容される塩が、疾患の進行または許容できない毒性まで、1日1回の経口による300mg/m2のエンコラフェニブ、またはその薬学的に許容される塩の即時投与と組み合わせて経口投与により25mg~600mgの用量で1日1回投与され、その直後にセツキシマブが、1日目に120分にわたって400mg/m2でIVで投与され、その後、疾患の進行または許容できない毒性まで、60分にわたって250mg/m2でIVで毎週投与される、本発明の別の特定の実施形態を提供する。好ましくは、実施例Aは、400mgの用量で投与される。好ましくは、実施例Aは、600mgの用量で投与される。
【0016】
本明細書で使用される場合、「治療すること(treating)」、「治療すること(to treat)」、または「治療(treatment)」という用語は、既存の症状、障害、状態、または疾患の進行または重症度を抑制、減速、停止、軽減、または逆転させることを指す。
【0017】
本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、哺乳動物、好ましくはヒトを指す。
【0018】
本明細書で使用される場合、「癌」という用語は、典型的には制御されていない細胞増殖を特徴とする、患者における生理学的状態を指すか、または説明する。この定義には、良性および悪性の癌が含まれる。本発明で提供される癌の例には、BRAFV600Eなどの特定の種類のCRCを含むが、これらに限定されないCRCが含まれる。
【0019】
本明細書で使用される場合、「原発腫瘍」または「原発癌」という用語は、最初に発生した癌を指し、対象における別の組織、器官、または場所に位置する転移性病変を指さない。
【0020】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、患者に単回または複数回用量を投与すると、診断または治療中の患者に効果的な応答をもたらす、実施例A、またはその薬学的に許容される塩の量または用量、ならびにエンコラフェニブの量または用量およびセツキシマブの量または用量を指す。応答には、長期にわたる安定した疾患、疾患の制御、または部分的もしくは完全な応答をもたらす腫瘍の縮小が含まれ得る。また、本発明の併用療法は、体内で実施例A、またはその薬学的に許容される塩、エンコラフェニブ、またはその薬学的に許容される塩、およびセツキシマブの効果的なレベルをもたらす任意の方法で、エンコラフェニブ、またはその薬学的に許容される塩、および任意選択でセツキシマブと一緒に、実施例A、またはその薬学的に許容される塩を投与することによって実施されることが理解される。
【0021】
有効量は、当業者のような担当診断医により、既知技法の使用により、および同様の状況下で得られた結果を観察することによって容易に決定され得る。患者のための有効量を決定する際には、限定はされないが、患者の種、そのサイズ、年齢、および全体的な健康状態、関与する特定の病気または疾患、病気または疾患の程度または関与または重症度、個々の患者の応答、投与される特定の化合物、投与の様式、投与される製剤のバイオアベイラビリティ特性、選択される投与レジメン、付随する薬物の使用、ならびに他の関連する状況を含む、多数の要因が担当診断医によって考慮される。
【0022】
実施例Aは、別々に決定された特定の頻度および用量で経口投与されるが、25mg~2000mgの用量、好ましくは25mg~1000mgの用量で好ましくは1日1回の頻度で投与される。好ましくは、25mg~600mgの用量で。好ましくは400mgの用量で。好ましくは600mgの用量で。エンコラフェニブは1日1回経口により450mgで投与される。また、エンコラフェニブは、1日1回経口により300mgで投与されてもよい。セツキシマブは、1日目に120分にわたって400mg/m2でIVで投与され、それから60分にわたって250mg/m2でIVで毎週投与される。
【0023】
本明細書で使用される場合、「と組み合わせて」という用語は、一方の薬剤が、他方の薬剤の投与の前、投与と同時、もしくは投与後、またはそれらの任意の組み合わせで投与され得るように、例えば、単回サイクルまたは1回より多いサイクルの標準的な治療過程の間のような繰り返しの間隔などで、同時または任意の順序で連続的に、実施例A、またはその薬学的に許容される塩と、エンコラフェニブ、またはその薬学的に許容される塩との投与、あるいは一方の薬剤が、他方の2つの薬剤のうちの1つまたは両方のいずれかの投与の前、投与と同時、もしくは投与後、またはそれらの任意の組み合せで投与され得るように、例えば、単回サイクルまたは1回より多いサイクルの標準的な治療過程の間のような繰り返しの間隔などで、同時または任意の順序で連続的に、実施例A、またはその薬学的に許容される塩と、エンコラフェニブ、またはその薬学的に許容される塩と、任意選択でセツキシマブとの投与のいずれかを指す。
【0024】
実施例Aが塩を形成することができることは熟練した読者によって理解されるであろう。実施例Aは、多くの無機酸および有機酸のいずれかと反応して、薬学的に許容される酸付加塩を形成することができる。このような薬学的に許容される酸付加塩およびそれらを調製するための一般的な方法論は、当該技術分野において周知である。例えば、P.Stahl,et al.,HANDBOOK OF PHARMACEUTICAL SALTS:PROPERTIES,SELECTION AND USE,(VCHA/Wiley-VCH,2002)、L.D.Bighley,S.M.Berge,D.C.Monkhouse,in “Encyclopedia of Pharmaceutical Technology’.Eds.J.Swarbrick and J.C.Boylan,Vol.13,Marcel Dekker,Inc.,New York,Basel,Hong Kong 1995,pp.453-499、S.M.Berge,et al.,“Pharmaceutical Salts”,Journal of Pharmaceutical Sciences,Vol 66,No.1,January 1977を参照のこと。実施例Aに関して、メタンスルホン酸またはメタンスルホン酸二水和物塩が好ましい。メタンスルホン酸はメシレートとも呼ばれる。
【0025】
実施例A、またはその薬学的に許容される塩、およびエンコラフェニブ、またはその薬学的に許容される塩、およびセツキシマブは、好ましくは、これらの化合物の各々が生物学的に利用可能になる任意の経路によって投与される医薬組成物として製剤化される。投与経路は、任意の形で変化し、薬物の物理的特性ならびに患者および介護人の利便性によって限定され得る。好ましくは、実施例A、またはその薬学的に許容される塩は経口投与される。あるいは、実施例A、またはその薬学的に許容される塩は、静脈内または皮下投与などの非経口投与のために製剤化される。好ましくは、エンコラフェニブは経口投与のために製剤化される。好ましくは、セツキシマブは、静脈内投与などの非経口投与のために製剤化される。最も好ましくは、セツキシマブは、静脈内投与のために製剤化される。そのような医薬組成物およびそれを調製するためのプロセスは、当該技術分野において周知である。(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,L.V.Allen,Editor,22nd Edition,Pharmaceutical Press,2012を参照)。
【0026】
エンコラフェニブは、MAPKシグナル伝達経路において重要な酵素を標的とするBRAF阻害剤である。エンコラフェニブの好ましい形態は、エンコラフェニブの遊離塩基として提供される。この化合物、ならびにこの化合物を作製する方法および癌の治療、より具体的には黒色腫およびCRCの治療を含む、この化合物を使用する方法は、US8,501,758に開示されている。エンコラフェニブの別名としては、BRAFTOVI(登録商標)、CAS番号1269440-17-6、LGX 818、NVP-LGX 818NXA、カルバミン酸、N-[(1S)-2-[[4-[3-[5-クロロ-2-フルオロ-3-[(メチルスルホニル)アミノ]フェニル]-1-(1-メチルエチル)-1H-ピラゾール-4-イル]-2-ピリミジニル]アミノ]-1-メチルエチル]-、メチルエステル、および(S)-メチル[1-[[4-[3-[5-クロロ-2-フルオロ-3-(メチルスルホンアミド)フェニル]-1-イソプロピル-1H-ピラゾール-4-イル]ピリミジン-2-イル]アミノ]プロパン-2-イル]カルバメートが挙げられる。
【0027】
セツキシマブは、mCRCおよび頭頸部癌を治療するために使用される上皮成長因子受容体(EGFR)アンタゴニストである。これは、ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)の細胞外ドメインに特異的に結合する組換え、マウス/ヒトキメラモノクローナル抗体である。セツキシマブは、マウス抗EGFR抗体のFv領域と、ヒトIgG1重鎖およびカッパ軽鎖定常領域とから構成され、約152kDaの分子量を有する。セツキシマブは哺乳動物(マウス骨髄腫)の細胞培養で産生され、静脈内注入によって投与される。別名としては、ERBITUX(登録商標)、CAS番号205923-56-4、IMC225、IMC-C225、および免疫グロブリンG1、抗(ヒト上皮成長因子受容体)(ヒト-マウスモノクローナルC225γ1鎖)、ヒト-マウスモノクローナルC225κ鎖とのジスルフィド、二量体が挙げられる。セツキシマブは、WHO Drug Information,Vol.14,No 3,2000にも記載されている。
【0028】
本明細書で使用される場合、6,6-ジメチル-2-{2-[(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)アミノ]ピリミジン-4-イル}-5-[2-(モルホリン-4-イル)エチル]-5,6-ジヒドロ-4H-チエノ[2,3-c]ピロール-4-オンまたは4H-チエノ[2,3-c]ピロール-4-オン,5,6-ジヒドロ-6,6-ジメチル-2-[2-[(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)アミノ]-4-ピリミジニル]-5-[2-(4-モルホリニル)エチル]-は、細胞外シグナル調節キナーゼ1(ERK1)および細胞外シグナル調節キナーゼ2(ERK2)の阻害剤であり、以下の構造を有する化合物を指す。
【化1】
この化合物は、例えば、WO16/106029に記載されている合成ステップを使用して調製することができる。この化合物は、塩、例えば、メタンスルホン酸塩またはメタンスルホン酸二水和物塩として存在することができ、これは、メシレート塩二水和物としても記載することができる。
【0029】
本明細書で使用される場合、以下の用語は、示した意味を有する。「ATCC」は、アメリカンタイプカルチャーコレクションを指す。「BIW」は隔週の投薬を指す。「CMC」は、カルボキシメチルセルロースを指す。「CRC」は、大腸癌または複数の大腸癌を指す。「DCM」は、ジクロロメタンまたは塩化メチレンを指す。「DDI」は、薬物間相互作用を指す。「DMSO」は、ジメチルスルホキシドを指す。「EAR」は、予想される付加応答を指す。「EGFR」は、上皮成長因子受容体を指す。「EtOAc」は、酢酸エチルを指す。「FBS」は、ウシ胎児血清を指す。「5-FU」は、5-フルオロウラシルを指す。「HBSS」は、ハンクス平衡塩溶液を指す。「HEC」は、ヒドロキシエチルセルロースを指す。「hr」または「hrs」は、それぞれ1時間または数時間を指す。「IP」は、腹腔内注射を指す。「iPrOH」は、イソプロパノールまたはイソプロピルアルコールを指す。「IV」は、静脈内を指す。「MAPK」は、マイトジェン活性化プロテインキナーゼを指す。「MEC」は、メチルセルロースを指す。「MeOH」は、メタノールまたはメチルアルコールを指す。「メシレート」は、メタンスルホン酸を指す。「mpk」は、キログラムあたりのミリグラムを指す。「ORR」は、客観的奏効率を指す。「PDX」は、患者由来の異種移植片を指す。「PO」は、経口投与を指す。「QD」は、1日1回の投与を指す。「Q7D」は、7日ごとの投与を指す。「RNA」は、リボ核酸を指す。「RP2D」は、推奨される第2相用量を指す。「rpm」は、1分あたりの回転数を指す。SEは、標準誤差を指す。「THF」は、テトラヒドロフランを指す。「トシレート」は、4-メチルベンゼンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸を指す。
【0030】
下記の調製物および実施例は、本発明をさらに例示する。
【0031】
調製物および実施例
実施例Aは、WO16/106029に記載されているように調製することができ、本明細書で遊離塩基としても特定することができる。以下の調製物はまた、以下に記載される実施例Aの調製における中間体または実施例Aの塩の例として使用することもできる。
【0032】
調製物1
6,6-ジメチル-5-(2-モルホリノエチル)-5,6-ジヒドロ-4H-チエノ[2,3-c]ピロール-4-オン
【化2】
2-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)チオフェン-3-カルボン酸(6.5g、34.9mmol)をMeOH(49.5mL、注:水も反応溶媒として使用でき、同様の結果が得られる)に溶解し、続いて2-モルホリノエタン-1-アミン(5.5mL、41.9mmol)を加える。得られた混合物を反応器に密封し、140℃まで21.0時間加熱する。反応器を冷却し、反応混合物を濃縮して、表題化合物を油(10.8g、89%、約81%の効力)として得る。粗表題化合物を温めながらiPrOH(104mL)に溶解し、撹拌しながら50℃まで加熱する。L-酒石酸(4.7g、31.2mmol)をiPrOH(100mL)に溶解し、0.5時間かけて混合物に加える。得られたスラリーを短時間で75℃まで加熱し、次いで2.0時間かけて22℃に冷却する。固体を濾過し、iPrOH(100mL)で洗浄し、45℃で真空オーブンで乾燥させて、白色の結晶性固体(11.6g、86%)としてL-酒石酸塩として表題化合物を得る。6,6-ジメチル-5-(2-モルホリノエチル)-5,6-ジヒドロ-4H-チエノ[2,3-c]ピロール-4-オン L-酒石酸塩をDCMと1MのNaOHの混合物に溶解し、有機相を分離し、重炭酸ナトリウム水溶液およびブラインで洗浄する。有機相をNa
2SO
4で乾燥し、濃縮して、ワックス状固体を生成するために静置すると結晶化する濃厚な油として表題化合物を本質的に定量的収率で得る。MS(m/z:281.1(M+H))。
【0033】
調製物2
2-ブロモ-6,6-ジメチル-5-(2-モルホリノエチル)-5,6-ジヒドロ-4H-チエノ[2,3-c]ピロール-4-オン 臭化水素酸塩
【化3】
6,6-ジメチル-5-(2-モルホリノエチル)-5,6-ジヒドロ-4H-チエノ[2,3-c]ピロール-4-オン(0.5g、1.78mmol)をMeOH(5mL)に溶解する。混合物を45℃まで温め、臭素(0.37mL、7.12mmol)を約2.0時間かけて少しずつ加える。得られたスラリーを22℃に冷却し、固体を濾過し、iPrOHで洗浄して、乾燥させ、表題化合物(0.46g、58%)を得る。MS(m/z:359.0(M+H))。
【0034】
調製物3
ジメチル{6,6-ジメチル-5-[2-(モルホリン-4-イル)エチル]-4-オキソ-5,6-ジヒドロ-4H-チエノ[2,3-c]ピロール-2-イル}ボロネート
【化4】
2-ブロモ-6,6-ジメチル-5-(2-モルホリノエチル)-5,6-ジヒドロ-4H-チエノ[2,3-c]ピロール-4-オン(200g、556.67mmol)を15~30℃の窒素雰囲気下でTHF(3L)と合わせ、得られた混合物を0.5時間撹拌する。混合物を0~10℃に冷却し、ホウ酸トリメチル(86.77g、835.05mmol)を加え、続いてTHF中2Mの塩化イソプロピルマグネシウム(419.42mL、835.05mmol)を加える。中間体は、分離せずに直接使用する。
【0035】
実施例1
6,6-ジメチル-2-{2-[(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)アミノ]ピリミジン-4-イル}-5-[2-(モルホリン-4-イル)エチル]-5,6-ジヒドロ-4H-チエノ[2,3-c]ピロール-4-オン、メタンスルホン酸
【化5】
実施例A(10.0g、22mmol)をアセトン(100mL)に懸濁し、60℃、1000rpmで撹拌する。メタンスルホン酸(2.4g、1.600mL、25mmol)をゆっくりと加える。混合物を60℃で60分間撹拌して、濃厚なオフホワイトのスラリーを得る。濾過により固体を収集し、80℃で2時間乾燥させて、表題化合物(12.1g、98.9%)を得る。
【0036】
X線粉末回折(XRD)
結晶性固体のXRDパターンは、CuKα源およびVantec検出器を備えた、35kVおよび50mAで動作するBruker D4 Endeavor X線粉末回折計で得られる。試料は、0.008の2θ°のステップサイズおよび0.5秒/ステップの走査速度で、1.0mmの発散スリット、6.6mmの固定散乱防止スリット、および11.3mm検出スリットを用いて、4~40の2θ°で走査される。乾燥粉末を石英試料ホルダーに充填し、ガラススライドを使用して滑らかな表面を得る。結晶形態の回折パターンを周囲温度および相対湿度で収集する。8.853および26.774 2θ°でピークを有する内部NIST675標準に基づいて、パターン全体をシフトした後、MDI-Jadeの結晶ピーク位置を決定する。結晶学の分野において、任意の所与の結晶形態に関して、結晶形態および晶癖などの要因から生じる好ましい配向に起因して、回折ピークの相対強度が変化し得ることが周知されている。好ましい配向の効果が存在する場合、ピーク強度は変化するが、多形体の特徴的なピーク位置は変化しない。例えば、The United States Pharmacopeia #23,National Formulary #18,pages 1843-1844,1995を参照されたい。さらに、所与の任意の結晶形態について、角ピーク位置がわずかに変化し得ることも、結晶学の分野において周知である。例えば、ピーク位置は、試料が分析される温度の変動、試料の変位、または内部標準の有無に起因して変動し得る。本発明の場合、±0.2の2θ°のピーク位置の変動は、示された結晶形態の明確な同定を妨げることなくこれらの潜在的な変動を考慮すると推定される。結晶形態の確認は、顕著なピークの任意の固有の組み合わせに基づいて行うことができる。
【0037】
調製した結晶性試料6,6-ジメチル-2-{2-[(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)アミノ]ピリミジン-4-イル}-5-[2-(モルホリン-4-イル)エチル]-5,6-ジヒドロ-4H-チエノ[2,3-c]ピロール-4-オン、メタンスルホン酸を、以下の表1に記載のように、回折ピーク(2シータ値)、特に20.2のピークと、20.9、16.9、および23.8からなる群から選択される1つ以上のピークとを組み合わせて有し、回折角の許容誤差が0.2°である、CuKα放射線を使用したXRDパターンによって特徴づける。
【表1】
【0038】
実施例1の代替的調製
6,6-ジメチル-2-{2-[(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)アミノ]ピリミジン-4-イル}-5-[2-(モルホリン-4-イル)エチル]-5,6-ジヒドロ-4H-チエノ[2,3-c]ピロール-4-オン、メタンスルホン酸
メタンスルホン酸(110mg、1.14mmol)を、MeOH(6mL)およびDCM(6mL)の混合液中の実施例A(518mg、1.14mmol)の溶液に加える。混合液を室温で30分間超音波処理する。反応物を真空下で濃縮して、表題化合物(633mg、100%)を得る。MS(m/z):454(M+1)。
【0039】
実施例2
6,6-ジメチル-2-{2-[(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)アミノ]ピリミジン-4-イル}-5-[2-(モルホリン-4-イル)エチル]-5,6-ジヒドロ-4H-チエノ[2,3-c]ピロール-4-オン、メタンスルホン酸二水和物
【化6】
実施例A(16.07g、35.4mmol)を90%エタノールに懸濁し、撹拌して70℃まで加熱する。追加のエタノール(100mL)を加えて溶液を得る。メタンスルホン酸(3.75g、39mmol)を滴下して、90%エタノール(2mL)ですすぐ。混合物を60℃に冷却し、添加時に溶解する表題化合物のシードを加える。シードの追加は50℃で繰り返す。混合物を50℃で2時間撹拌し、次いで室温に冷却する。得られた沈殿物を濾過により単離し、風乾させて、表題化合物(13.4g、70%)を得る。
【0040】
調製した結晶性6,6-ジメチル-2-{2-[(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)アミノ]ピリミジン-4-イル}-5-[2-(モルホリン-4-イル)エチル]-5,6-ジヒドロ-4H-チエノ[2,3-c]ピロール-4-オン、メタンスルホン酸二水和物を、以下の表2に記載のように、回折ピーク(2シータ値)、特に16.6のピークと、15.9、27.1、および15.6からなる群から選択される1つ以上のピークとを組み合わせて有し、回折角の許容誤差が0.2°である、CuKα放射線を使用したXRDパターンによって特徴づける。
【表2】
【0041】
実施例3
6,6-ジメチル-2-{2-[(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)アミノ]ピリミジン-4-イル}-5-[2-(モルホリン-4-イル)エチル]-5,6-ジヒドロ-4H-チエノ[2,3-c]ピロール-4-オン、4-メチルベンゼンスルホン酸
【化7】
95%エタノール(10mL)中の実施例A(1125mg、2.5mmol)および混合物を、70℃、1000rpmで撹拌する。4-トルエンスルホン酸(460mg、2.7mmol)をEtOAc(5mL)に溶解すると、最初のスラリーは粘着性の黄色の固体になる。混合物を30分間撹拌すると、白色の固体になる。固体を濾過により収集し、真空下、60℃で乾燥させて、表題化合物を得る。
【0042】
調製した結晶性試料6,6-ジメチル-2-{2-[(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)アミノ]ピリミジン-4-イル}-5-[2-(モルホリン-4-イル)エチル]-5,6-ジヒドロ-4H-チエノ[2,3-c]ピロール-4-オン、4-メチルベンゼンスルホン酸を、以下の表3に記載のように、回折ピーク(2シータ値)、特に4.4のピークと、22.1、11.6、および17.3からなる群から選択される1つ以上のピークとを組み合わせて有し、回折角の許容誤差が0.2°である、CuKα放射線を使用したXRDパターンによって特徴づける。
【表3】
【0043】
実施例3の代替的調製
6,6-ジメチル-2-{2-[(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)アミノ]ピリミジン-4-イル}-5-[2-(モルホリン-4-イル)エチル]-5,6-ジヒドロ-4H-チエノ[2,3-c]ピロール-4-オン、4-メチルベンゼンスルホン酸
4-メチルベンゼンスルホン酸一水和物(216mg、1.14mmol)をDCM(3mL)に溶解し、DCM(3mL)中の実施例A(516mg、1.14mmol)の溶液に加える。混合物を室温で30分間超音波処理する。反応物を真空下で濃縮して、表題化合物(708mg、100%)を得る。MS(m/z):454(M+H)および171(M+H)。
【0044】
インビボアッセイ
BRAFV600E CRCモデルの異種移植モデルにおけるエンコラフェニブとセツキシマブとの実施例Aの組み合わせ
ヒトCRC PDXモデル(EL2144)の生成
このPDXモデルは、結腸癌患者(60歳、女性、白人、以前に化学療法および放射線で治療された)の脳転移からの癌組織断片(2~3mm3)を、免疫不全無胸腺ヌードマウスに直接皮下移植することによって生成する。患者の腫瘍組織は、患者が手術を受けたときに採取し、EL2144とラベル付けする。腫瘍断片は、元の腫瘍のいくつかの組織構造だけでなく、細胞間相互作用も保持する。腫瘍は、生着して500~800mm3に成長すると、採取する。腫瘍を採取した後、腫瘍を小片(1~2mm3)に切断し、培養培地で洗浄する(3~4回)。最後に、組織を凍結培地(FBSと10%DMSO)に入れ、液体窒素で保存する。このストックは、後でマウスに再移植するために使用することができる。これらの腫瘍は、有効性研究に使用する前に、マウスで少なくとも3回継代される。この腫瘍組織は、全エキソームおよびRNAシークエンシングデータに基づくと、BRAFV600E変異を有する。
【0045】
動物
雌の無胸腺ヌードマウスはEnvigo(Harlan Laboratories)に注文する。全ての動物を、米国実験動物ケア学会(American Association for Laboratory Animal Care)のガイドラインならびに米国農務省および保健社会福祉省およびNIHの全ての現行の規制および基準に従って、使用前に1週間順応させ、特定の病原体のない条件下で収容し、維持する。
【0046】
異種移植モデルおよびインビボでの化合物を用いた治療的処置
このアッセイの目的は、試験化合物投与に応答する腫瘍体積の減少を測定することである。有効性研究のためのモデルをウォーミングアップするために、ヒトCRC腫瘍(EL2144、BRAFV600E)断片の凍結した腫瘍断片を、10~15匹の雌の無胸腺ヌードマウス(22~25g、Harlan Laboratories)の右後部脇腹に套管針で皮下移植する。腫瘍が400~500mm3に達するまで、移植後1週間に2回、腫瘍成長および体重を測定する。腫瘍を再移植のために採取する。腫瘍を採取した後、腫瘍を小片(1~2mm3)に切断し、培養培地で洗浄し(3~4回)、有効性研究のために雌の無胸腺ヌードマウス(22~25g、Harlan Laboratories)の右後部脇腹に套管針で皮下移植する。腫瘍が150~250mm3に達するまで、移植後18日目から開始して1週間に2回、腫瘍成長および体重を測定する。
【0047】
腫瘍サイズが150~250mm3に達すると、動物をランダム化し、5匹の動物の群に分ける。試験化合物を適切なビヒクル(ビヒクル:1%HEC/0.25%TWEEN(登録商標)80/0.05%消泡剤)中で調製し、28日間毎日強制経口投与する。腫瘍応答は、処置過程中に週に2回行われる腫瘍体積測定によって決定される。体重を毒性の一般的尺度とみなす。動物を、ビヒクル対照(1%HEC/0.25%TWEEN(登録商標)80/0.05%消泡剤、毎日、経口)、実施例A(50mg/kg、QD、PO)、エンコラフェニブ(20mg/kg、QD、PO)、またはセツキシマブ(20mpk、BIW、腹腔内)およびそれらの二重または三重の組み合わせで4週間処置する。実施例Aは、1%HEC/0.25%TWEEN(登録商標)80/0.05%消泡剤中で製剤化し、エンコラフェニブは、0.5%CMC/0.25%TWEEN(登録商標)80/0.05%消泡剤中で製剤化する。セツキシマブはリン酸緩衝生理食塩水(1x)中で製剤化する。腫瘍体積および体重は、1週間に2回測定される。腫瘍体積は、式:v=l×w2×0.536(式中、l=測定した直径の大きい方、およびw=垂直の直径の小さい方)を使用することによって推定する。
【0048】
統計分析
時間および処置群にわたる分散を等しくするために対数スケールにデータを変換して、腫瘍体積データの統計分析を始める。SASソフトウェア(バージョン9.3)のMIXED手順を用い、時間および処置による反復のある二元配置分散分析を用いて、対数体積データを分析する。反復測定の相関モデルはSpatial Powerである。各時点で処置群を対照群と比較する。各処置群について別々にMIXED手順を使用して、各時点での調整された平均および標準誤差を計算する。調整した平均およびSEを、時間に対して各処置群についてプロットする。腫瘍体積についての分析は、log10およびspatial power共分散構造に基づく。P値は、2つの特定の群間の比較に基づく。
【0049】
併用分析法(インビボでの有効性研究のためのBliss Independence)
反復測定モデルは、群および時間に対する対数体積に適合する。次いで、コントラストステートメントを使用して、組み合わせられた2つの特定の処置を使用して、各時点での相互作用効果を試験する。これは、Bliss Independence法と同等であり、理論的には腫瘍体積がゼロに達する、すなわち完全に退縮することができると仮定する。併用についてのEARは、応答(EAR)EAR体積=V1×V2/V0(式中、V0、V1、およびV2は、それぞれビヒクル対照、処置1単独、および処置2単独についての推定平均腫瘍体積である)として腫瘍体積スケールに基づいて計算される。相互作用試験が有意である場合、併用効果は、観察された併用の平均体積がEAR体積よりも小さいことに依存して統計的に付加を上回るか、または大きいことに依存して付加を下回ると宣言される。それ以外の場合、統計的結論は付加である。さらに、生物学的に関連性のある付加の範囲は、EAR体積の上下X%として定義することができる。通常、Xは、25~40%であろう。次いで、生物学的結論を、観察された併用の平均体積が、付加間隔の下、中、または上である場合に、付加を上回る、付加、または付加を下回る併用として行うことができる。
【0050】
停滞が最も期待される応答である状況があってもよい。これらの状況では、Bliss法を%デルタT/C値に直接適用してEAR%応答を得ることができる。EAR%デルタT/C=Y1×Y2/100(式中、Y1およびY2は、単一薬剤処置についての%デルタT/C値である)。現在、併用群における観察された%デルタT/CとEARとを比較するための統計的試験はないが、上記の生物学的基準を適用することができる。
【0051】
表4に示される全ての処置は、ビヒクル対照と比較して、有意および統計的に有意な(p<0.05)腫瘍成長阻害または腫瘍退縮を示した。表4および5に示すように、実施例Aおよび二重(エンコラフェニブとセツキシマブ)は、それぞれ17%(p<0.001)および11%(p<0.001)のデルタT/Cになり、併用(三重)は、腫瘍移植後54日目に41%の腫瘍退縮を伴う相加効果をもたらす(表4)。併用は、有意な体重損失のない動物において、許容される。
【表4】
【表5】
【表6】
【0052】
このアッセイでは、BRAFV600E変異CRCを治療するための実施例Aとエンコラフェニブの二重が、ERKiとエンコラフェニブとセツキシマブの三重と比較して良好な有効性を示した(表6)。総合すると、これらのデータにより、BRAF変異CRCのMAPKシグナル伝達への大きな依存性が確認され、ERK阻害剤が、この疾患についての将来の治療戦略の重要な要素になる可能性があることを示唆している。
【0053】
転移性BRAFV600E CRCにおけるエンコラフェニブとセツキシマブとを組み合わせて投与した実施例Aの第I相研究。
用量漸増段階における実施例Aの開始用量は、200mg QD(用量レベル1)であり、これは、以前の臨床試験で評価された最大用量より少なくとも1用量レベル低い。200mg QDの開始用量が安全な用量レベルとして評価されると、400mg QDのより高い用量レベルが評価される。QD投与量は、600mg QDおよび800mg QDまでさらに増やすことができる。RP2Dは、DDIおよび用量拡大コホートからの組み合わせたデータに基づいて確認されるか、または変更されてもよい。
【0054】
エンコラフェニブおよびセツキシマブは、実施例Aの投与の直後にラベルに従って投与される。実施例Aおよびセツキシマブと組み合わせたエンコラフェニブの開始用量は、各21日サイクルで300mg QDである。セツキシマブの用量は、そのラベルに従って、400mg/m2 IV(開始)、次に250mg/m2 IV Q2Wである。
【0055】
研究エンドポイントおよび効果評価
触知可能または目に見える腫瘍は、サイクルの2日目ならびにサイクル2および3の1日目に測定する。
【0056】
血液学研究および臨床化学研究は、サイクル1の1、2、9、および16日目、ならびにサイクル2の1、8、および15日目、ならびにサイクル3の1日目に実施される。尿検査は、各サイクルの1日目に実施される。
【0057】
スパイラルCTを含むコンピュータ断層撮影(CT)スキャンが、好ましい測定方法である(推奨されるCTスキャンの厚さは5mm以下である)。しかしながら、全身スキャンが指示された場合、またはCTに関連する放射線被曝について懸念がある場合など、特定の状況では磁気共鳴イメージング(MRI)も許容される。医学的に禁忌でなければ、静脈内および経口のコントラストが必要である。
【0058】
現場が、CTが診断CT(静脈内および経口のコントラストを伴う)と同一の診断品質であることを文書化できる場合、陽電子放出断層撮影(PET)-CTスキャンのCT部分を応答評価の方法として使用することができる。単独またはPET-CTの一部としてのPETスキャンを追加の分析のために実施することができるが、RECIST v.1.1(Eisenhauer et al.,Eur J Cancer,2009,45(2):228-247)に従って応答を評価するために使用することはできない。
【0059】
ベースラインで使用された腫瘍評価方法は、研究を通して一貫して使用されなければならない。各患者の疾患の全範囲は、RECIST v1.1(Eisenhauer et al.,Eur J Cancer,2009,45(2):228-247)を使用して評価される。