(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】電気車両用途およびハイブリッド車両用途のための潤滑剤
(51)【国際特許分類】
C10M 161/00 20060101AFI20230228BHJP
C10M 129/72 20060101ALN20230228BHJP
C10M 145/14 20060101ALN20230228BHJP
C10N 20/04 20060101ALN20230228BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20230228BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20230228BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20230228BHJP
C10N 40/00 20060101ALN20230228BHJP
【FI】
C10M161/00 ZHV
C10M129/72
C10M145/14
C10N20:04
C10N30:00 Z
C10N30:06
C10N40:04
C10N40:00 D
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022171346
(22)【出願日】2022-10-26
(62)【分割の表示】P 2022500641の分割
【原出願日】2020-07-01
【審査請求日】2022-11-08
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391007091
【氏名又は名称】アフトン・ケミカル・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】クァク、ユンワン
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-031359(JP,A)
【文献】特開2015-098592(JP,A)
【文献】特表2019-533736(JP,A)
【文献】国際公開第2018/139130(WO,A1)
【文献】特開2014-025081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00-177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モータまたはハイブリッド電気モータを有する変速機を潤滑するための方法であって、
電気モータまたはハイブリッド電気モータを有する変速機を潤滑剤で潤滑することを含み、
前記潤滑剤が、ポリ(メタ)アクリレートコポリマーと、分岐ジエステル成分とブレンドされた基油成分を含む溶媒系と、を含み、
前記分岐ジエステル成分が、式Iの構造を有し、
【化1】
式中、
R
1
は、nが6~10の整数である、n-2個の炭素を有する炭素鎖であり、
R
2
およびR
3
は、同一であるか、または異なり、C8~C10の分岐アルキル鎖を含み、
前記基油成分が、
APIのグループI~グループVの基油から選択される1つ以上の油を含み、
前記ポリ(メタ)アクリレートコポリマーが、50,000g/モル以下の重量平均分子量を有
し、ならびに
前記潤滑剤が、ASTM D2624-15に従って75℃で測定された80,000pS/m以下の電気伝導率、およびASTM D7896-14に従って80℃で測定された134mW/m*K以上の熱伝導率を達成するのに有効な前記分岐ジエステル成分の量および前記ポリ(メタ)アクリレートコポリマーの量を含む、方法。
【請求項2】
前記分岐ジエステル成分が、6~10個の炭素の内部炭素鎖長を有する1つ以上のジカルボン酸と、6~12個の炭素の分岐炭素鎖長を有する1つ以上のアルコールとの反応生成物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶媒系が、10~50重量パーセントの前記分岐ジエステル成分を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記分岐ジエステル成分が、ビス(6-メチルヘプチル)ヘキサンジオエート、ビス(8-メチルノニル)ヘキサンジオエート、ビス(2-エチルヘキシル)デカンジオエート、ビス(2-エチルヘキシル)ヘキサンジオエート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される
、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリ(メタ)アクリレートコポリマーが、少なくとも、C1~C4の直鎖もしくは分岐のアルキル(メタ)アクリレートモノマー単位およびC12~C20の直鎖もしくは分岐のアルキル(メタ)アクリレートモノマー単位に由来するものであり、10,000~50,000g/モルの重量平均分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリ(メタ)アクリレートコポリマーが、前記C1~C4の直鎖もしくは分岐のアルキル(メタ)アクリレートに由来する5~50モルパーセントのモノマー単位、および前記C12~C20の直鎖もしくは分岐のアルキル(メタ)アクリレートに由来する50~95モルパーセントのモノマー単位を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
電気車両またはハイブリッド電気車両のための変速機および潤滑剤であって、
電気モータまたはハイブリッド電気モータを有する変速機と、
前記電気モータまたは前記ハイブリッド電気モータの少なくとも一部分と接触している前記変速機の潤滑組成物
と、を含む変速機および潤滑剤:
ここで、前記潤滑組成物は、(i)
APIのグループI~グループVの油から選択される1つ以上の基油と分岐ジエステルとのブレンドを有する溶媒系、および(ii)50,000g/モル以下の重量平均分子量を有するコポリマー粘度指数向上剤を含
み、
前記分岐ジエステルは、式Iの構造を有し、
【化2】
式中、
R
1
は、nが6~10の整数である、n-2個の炭素を有する炭素鎖であり、
R
2
およびR
3
は、同一であるか、または異なり、C8~C10の分岐アルキル鎖を含み、
前記潤滑組成物は、ASTM D2624-15に従って75℃で測定された80,000pS/m以下の電気伝導率、およびASTM D7896-14に従って80℃で測定された134mW/m*K以上の熱伝導率を達成するのに有効な前記分岐ジエステルの量および前記コポリマー粘度指数向上剤の量を含む。
【請求項8】
前記溶媒系が、10~50重量パーセントの前記分岐ジエステルを含む、請求項7に記載の変速機および潤滑剤。
【請求項9】
前記分岐ジエステルが、ビス(6-メチルヘプチル)ヘキサンジオエート、ビス(8-メチルノニル)ヘキサンジオエート、ビス(2-エチルヘキシル)デカンジオエート、ビス(2-エチルヘキシル)ヘキサンジオエート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される
、請求項7に記載の変速機および潤滑剤。
【請求項10】
前記コポリマー粘度指数向上剤が、C1~C4の直鎖もしくは分岐の短鎖アルキル(メタ)アクリレートおよびC12~C20の直鎖もしくは分岐の長鎖アルキル(メタ)アクリレートに由来するモノマー単位を含み、10,000~50,000g/モルの重量平均分子量を有する、請求項7に記載の変速機および潤滑剤。
【請求項11】
前記コポリマー粘度指数向上剤が、前記短鎖(メタ)アクリレートに由来する5~50モルパーセントのモノマー単位、および前記長鎖(メタ)アクリレートに由来する50~95モルパーセントのモノマー単位を有する、請求項
10に記載の変速機および潤滑剤。
【請求項12】
電気モータまたはハイブリッド電気モータのための潤滑組成物であって、
式Iの構造を有する分岐ジエステルとブレンドされた1つ以上の
APIのグループI~グループVの基油を含む溶媒系と、
50,000g/モル以下の重量平均分子
量を有するコポリマー粘度指数向上剤と、を含
む潤滑組成物:
【化3】
式中、
R
1
は、nが6~10の整数である、n-2個の炭素を有する炭素鎖であり、
R
2
およびR
3
は、同一であるか、または異なり、C8~C10の分岐アルキル鎖を含む;
さらに、前記潤滑組成物
は、ASTM D2624-15に従って75℃で測定された80,000pS/m以下の電気伝導率、およびASTM D7896-14に従って80℃で測定された134mW/m*K以上の熱伝導率を同時に達成するのに有効な前記溶媒系中の前記分岐ジエステルの量および前記コポリマー粘度指数向上剤の量を含
む。
【請求項13】
前記溶媒系が、10~50重量パーセントの前記分岐ジエステルを含む、請求項12に記載の潤滑組成物。
【請求項14】
前記潤滑組成物が、オイルフリー基準で、5~40重量パーセントの前記分岐ジエステル、および8~15重量パーセントの前記コポリマー粘度指数向上剤を含む
、請求項
12に記載の潤滑組成物。
【請求項15】
前記潤滑組成物中のエステル対コポリマーの重量比が、前記コポリマーがオイルフリー基準で測定されたときに、1.4~5.0である、請求項12に記載の潤滑組成物。
【請求項16】
前記コポリマー粘度指数向上剤が、C1~C4の短鎖の直鎖もしくは分岐アルキル(メタ)アクリレート、およびC12~C20の長鎖の直鎖もしくは分岐アルキル(メタ)アクリレートに由来する、請求項12に記載の潤滑組成物。
【請求項17】
前記コポリマー粘度指数向上剤が、1~3の多分散指数を有する、請求項16に記載の潤滑組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気車両変速機またはハイブリッド電気車両変速機のための潤滑組成物、そのような潤滑組成物のための添加剤、電気車両変速機またはハイブリッド電気車両変速機を潤滑する方法、およびそのような潤滑剤を含む電気車両変速機またはハイブリッド電気車両変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
電気車両およびハイブリッド電気車両は、車両の車輪に動力を伝達するための変速機と組み合わされた動力源(ガソリンもしくはディーゼルエンジンなどの旧来の燃焼エンジン、および/または電気モータに結合されたバッテリー源)を収容することができる。変速機は、車輪に結合された電気モータおよび/またはギア減速ユニットを含み得る。いくつかの用途では、電気モータおよび動力ギア減速ユニットの両方を潤滑するための潤滑剤組成物を含有する潤滑剤リザーバが提供される。
【0003】
電気車両用途およびハイブリッド電気車両用途では、電気モータの部品、および旧来の燃焼エンジンギア減速ユニットの部品と接触し得る潤滑流体。そのため、好適な流体は、かなり固有のタイプの車両構成部品のための適用性を有していなければならない。例えば、潤滑流体は、モータステータ内の電気巻線、および変速機の機械的部分内のギアと接触し得る。したがって、これらの用途に好適な流体は、旧来の潤滑特性を有していなければならないだけでなく、電子構成部品との互換性も必要である。
【0004】
変速機のための以前の潤滑剤は、典型的には、低摩擦および耐摩耗能力、熱および酸化に対する安定性、ならびに洗浄性および分散性能力を必要としていた。そのような特徴を達成するために、以前の潤滑剤は、一般に、基油、ならびに酸化防止剤、洗浄剤/分散剤、耐摩耗剤、防錆剤、金属不活性化剤、摩擦調整剤、消泡剤、シール膨潤剤、および粘度指数向上剤などの様々な添加剤を含んでいた。
【0005】
電気構成要素に好適であるために、流体は、良好な潤滑、電気伝導率、および冷却性能を同時に提供しなければならない。多くの場合、電気用途およびハイブリッド電気用途に必要とされる所望の特性のうちの1つ以上は、そのような旧来の流体に一般的に使用される添加剤の収集によって損なわれ、したがって、これらの旧来の流体は電気車両またはハイブリッド電気車両には不適切である場合がある。つまり、いくつかの旧来の潤滑剤パッケージは、低い電気伝導率を有するが、乏しい熱伝導率を有する(乏しい冷却性能を提供する)場合がある。他の旧来の潤滑剤パッケージは、高い熱伝導率を有する(良好な冷却能力を提供する)が、乏しい電気伝導率を有する場合がある。したがって、そのような以前の流体は、これらの特有の用途に最適な性能を提供しない。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】ASTM D2624-15に従う75℃での潤滑剤の電気伝導率のグラフである。
【
図2】ASTM D7896-14に従う80℃での潤滑剤の熱伝導率のグラフである。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、電気モータまたはハイブリッド電気モータを有する変速機を潤滑するための方法に関する。一実施形態では、この方法は、電気モータまたはハイブリッド電気モータを有する変速機を潤滑剤で潤滑することを含む。ポリ(メタ)アクリレートコポリマーを含む潤滑剤、および分岐ジエステル成分とブレンドされた基油成分を含む溶媒系。一実施形態では、グループI~グループVの基油から選択される1つ以上の油、別の実施形態では、グループI~グループ1Vの基油から選択される1つ以上の油、ならびにさらに別の実施形態では、任意の組み合わせのグループI、グループ、II、グループIII、グループIV、および/またはグループVの基油から選択された基油を含む基油成分。またさらなる実施形態では、ポリ(メタ)アクリレートコポリマーは、約50,000g/モルの重量平均分子量を有する。
【0008】
この方法の他の実施形態では、分岐ジエステル成分は、6~10個の炭素の内部炭素鎖長を有する1つ以上のジカルボン酸と、6~12個の炭素の分岐炭素鎖長を有する1つ以上のアルコールとの反応生成物であり得る。溶媒系は、約10~約50重量パーセントの分岐ジエステル成分を含み得る。分岐ジエステル成分は、式Iの構造を有することができ、
【化1】
式中、R
1は、nが6~10の整数であるn-2個の炭素を有する炭素鎖であり、R
2およびR
3は、同一であるか、または異なり、C8~C10の分岐アルキル鎖を含む。分岐ジエステル成分は、ビス(6-メチルヘプチル)ヘキサンジオエート、ビス(8-メチルノニル)ヘキサンジオエート、ビス(2-エチルヘキシル)デカンジオエート、ビス(2-エチルヘキシル)ヘキサンジオエート、またはそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0009】
本明細書における実施形態のいずれかでは、潤滑剤は、ASTM D2624-15に従って75℃で測定された約80,000pS/m以下の電気伝導率、およびASTM D7896-14に従って80℃で測定された約134mW/m*K以上の熱伝導率も有し得る。またさらなる実施形態では、本開示はまた、ポリ(メタ)アクリレートコポリマーの使用、ならびに本明細書における任意の実施形態で議論されるような電気伝導率および熱伝導率を有する潤滑組成物を達成するための本明細書における任意の実施形態に記載されるような分岐ジエステル成分とブレンドされた基油成分を含む溶媒系に関する。
【0010】
他の実施形態では、ポリ(メタ)アクリレートコポリマーは、少なくともC1~C4の直鎖または分岐アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位およびC12~C20の直鎖または分岐アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位に由来してもよく、約10,000~約50,000g/モルの重量平均分子を有する。ポリ(メタ)アクリレートコポリマーは、C1~C4の直鎖または分岐アルキル(メタ)アクリレートに由来する約5~約50モルパーセントのモノマー単位、およびC12~C20の直鎖または分岐アルキル(メタ)アクリレートに由来する約50~約95モルパーセントのモノマー単位を有し得る。
【0011】
本開示はまた、電気車両またはハイブリッド電気車両のための変速機および潤滑剤に関する。いくつかの実施形態では、変速機ならびに潤滑剤は、電気モータもしくはハイブリッド電気モータ、またはその構成要素を有する変速機、ならびに電気モータもしくはハイブリッド電気モータの少なくとも一部分および/またはその構成要素と接触する変速機の潤滑組成物を含む。潤滑組成物は、いくつかの実施形態では、(i)グループI~グループVの油から選択される1つ以上の基油と分岐ジエステルとのブレンドを有する溶媒系、および(ii)約50,000g/モル以下の重量平均分子量を有するコポリマー粘度指数向上剤を含み得る。基油は、他の実施形態では、グループI~グループ1Vの基油から選択される1つ以上の油、ならびにさらに別の実施形態では、任意の組み合わせのグループI、グループII、グループIII、グループIV、および/またはグループVの基油から選択される基油も含み得る。
【0012】
他の実施形態では、変速機および潤滑剤は、式Iの構造を有する分岐ジエステルを含み得、
【化2】
式中、R
1は、nが6~10の整数であるn-2個の炭素を有する炭素鎖であり、R
2およびR
3は、同一であるか、または異なり、C8~C10の分岐アルキル鎖を含む。分岐ジエステルは、そのアルコール部分にC6~C12の分岐アルキル基、およびその酸部分に6~10個の炭素を有し得る。溶媒系は、約10~約50重量パーセントの分岐ジエステルを含み得る。分岐ジエステルは、ビス(6-メチルヘプチル)ヘキサンジオエート、ビス(8-メチルノニル)ヘキサンジオエート、ビス(2-エチルヘキシル)デカンジオエート、ビス(2-エチルヘキシル)ヘキサンジオエート、またはそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0013】
上記の実施形態のいずれも、ASTM D2624-15に従って75℃で測定された約80,000pS/m以下の電気伝導率、およびASTM D7896-14に従って80℃で測定された約134mW/m*K以上の熱伝導率を同時に達成するのに有効な分岐ジエステルの量およびコポリマー粘度指数向上剤の量を含み得る。
【0014】
変速機および潤滑剤のまた他の実施形態では、コポリマー粘度指数向上剤は、C1~C4の直鎖または分岐の短鎖アルキル(メタ)アクリレート、およびC12~C20の直鎖または分岐の長鎖アルキル(メタ)アクリレートに由来するモノマー単位を含み、約10,000~約50,000g/モルの重量平均分子量を有する。コポリマー粘度指数向上剤は、短鎖(メタ)アクリレートに由来する約5~約50モルパーセントのモノマー単位、および長鎖(メタ)アクリレートに由来する約50~約95モルパーセントのモノマー単位を有する。
【0015】
本開示はまた、電気モータまたはハイブリッド電気モータのための潤滑組成物に関する。いくつかの実施形態では、潤滑組成物は、分岐ジエステルとブレンドされた1つ以上のグループI~グループVの基油を含む溶媒系と、約50,000g/モル以下の重量平均分子量を有し、いくつかの実施形態では、約1~約2の多分散指数も有するコポリマー粘度指数向上剤と、を含む。基油は、他の実施形態では、グループI~グループ1Vの基油から選択される1つ以上の油、ならびにさらに別の実施形態では、任意の組み合わせのグループI、グループII、グループIII、グループIV、および/またはグループVの基油から選択される基油も含み得る。潤滑組成物は、ASTM D2624に従って75℃で測定された約80,000pS/m以下の電気伝導率、およびASTM D7896-14に従って80℃で測定された約134mW/m*K以上の熱伝導率を同時に達成するのに有効な溶媒系中の分岐ジエステルの量およびコポリマー粘度指数向上剤の量も含み得る。
【0016】
潤滑組成物のいくつかの実施形態では、潤滑組成物の分岐ジエステルは、6~10個の炭素の内部炭素鎖長を有する1つ以上のジカルボン酸と、6~12個の炭素の分岐炭素鎖長を有する1つ以上のアルコールとの反応生成物であり得る。溶媒系は、約10~約50重量パーセントの分岐ジエステルも含み得る。
【0017】
上記の実施形態のいずれかでは、潤滑組成物は、約5~約40重量パーセントの分岐ジエステル、および約2.5~約17.5重量パーセントのコポリマー粘度指数向上剤を含み得る。上記の実施形態のいずれかでは、潤滑組成物は、潤滑組成物中の約1.4~約5.0のエステル対コポリマーの重量比(コポリマーの固形分含有量)も含み得る。この実施形態のいずれかでは、潤滑組成物のコポリマー粘度指数向上剤は、C1~C4の短鎖の直鎖または分岐アルキル(メタ)アクリレート、およびC12~C20の長鎖の直鎖または分岐アルキル(メタ)アクリレートに由来し得る。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示は、電気用途およびハイブリッド電気用途に好適な、特に、潤滑組成物が電気モータおよび/またはハイブリッド電気モータならびにそれらの構成要素と接触し、良好な潤滑特性、良好な電気特性、および良好な熱特性を有する変速機に好適な潤滑剤組成物について記載している。いくつかの態様では、本明細書における潤滑組成物は、分岐ジエステル成分とブレンドされた鉱物および/または合成基油成分を有する溶媒系を含み、溶媒系は、低重量平均分子量ポリ(メタ)アクリレートコポリマーとさらに組み合わされる。本明細書に記載の潤滑組成物は、驚くべきことに、電気用途およびハイブリッド電気用途に必要な所望の潤滑特性、電気特性、および熱特性を達成する。
【0019】
一態様または実施形態では、本明細書における溶媒系は、ジカルボン酸の選択された分岐エステルとブレンドされた1つ以上のグループI~グループVの基油を含む。いくつかの実施形態では、本明細書における溶媒系は、グループIIIの基油成分を含む。別のアプローチでは、溶媒系は、グループIVの基油成分を含む。上記の実施形態のいずれかでは、分岐ジエステル成分は、特定の内部炭素鎖長を有する1つ以上のジカルボン酸と、特定の分岐炭素鎖長を有する1つ以上のアルコールとの反応生成物である。本明細書に記載の低重量平均分子量ポリ(メタ)アクリレートコポリマーとブレンドされたとき、異なる内部鎖長を有する酸、および直鎖または異なる炭素長を有するアルコールから得られるモノエステルならびにジエステルは、所望の潤滑剤特性を達成しない。
【0020】
本明細書に記載のポリ(メタ)アクリレートコポリマーは、少なくとも約50,000g/モル未満の重量平均分子量を含み、いくつかのアプローチでは、少なくともC1~C4のアルキル(メタ)アクリレートモノマー単位、およびC12~C20のアルキル(メタ)アクリレートモノマー単位、ならびに他のアプローチでは、分散性機能を提供する窒素含有モノマー単位にも由来する。本発明の溶媒系とブレンドされたとき、より高分子量のポリマー、および異なるモノマー組成のポリマーは、所望の潤滑剤特性も提供しない。
【0021】
溶媒系(基油成分および分岐ジエステル成分を有する)と、選択された低重量平均分子量ポリ(メタ)アクリレートコポリマーとのブレンドを含むこれらの新しい潤滑剤流体は、所望の潤滑特性(これらに限定されないが、動粘度、ブルックフィールド粘度、流動点、せん断安定性など)を達成し、高性能の電気車両用途およびハイブリッド電気車両用途、ならびに/またはそのような用途の変速機に所望の特徴を提供する、低い電気伝導率および高い熱伝導率の両方を示す。
【0022】
溶媒系の分岐ジエステル成分
本明細書における潤滑組成物の1つの成分は、少なくとも分岐ジエステル成分を含む溶媒系である。1つのアプローチでは、溶媒系は、ジカルボン酸の選択された分岐エステルを含む。このジエステルは、6~10個の炭素の内部炭素鎖長を有する1つ以上のジカルボン酸と、6~12個の炭素の分岐炭素鎖長、および他のアプローチでは、8~10個の炭素の分岐炭素鎖、およびさらにまた他のアプローチでは、8~12個の炭素の分岐炭素鎖を有する1つ以上のアルコール、ならびにそれらの様々な混合物との反応生成物であり得る。
【0023】
好適な分岐ジエステルとしては、セバシン酸、オクタン二酸、および/またはアジピン酸など、ならびにそれらの混合物を含む選択されたジカルボン酸の、4-メチルペンタノール、3-メチルペンタノール、2-メチルヘプタノール、ヘキサン-2-オール、6-メチルヘプタノール、5-メチルヘプタノール、4-メチルヘプタノール、3-メチルペンタノール、2-メチルヘプタノール、オクタン-2-オール、2-エチルヘキサノール、4-エチルヘキサノール、8-メチルノナノール、7-メチルノナノール、6-メチルノナノール、5-メチルノナノール、4-メチルノナノール、3-メチルノナノール、2-メチルノナノール、デカン2-オール、11-メチルドデカノールなど、およびそれらの混合物を含む様々な選択された分岐アルコールとの反応から得られるものが挙げられる。これらのジエステルの具体例としては、ビス(6-メチルヘプチル)ヘキサンジオエート、ビス(8-メチルノニル)ヘキサンジオエート、ビス(2-エチルヘキシル)デカンジオエート、ビス(2-エチルヘキシル)ヘキサンジオエートなど、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0024】
そのようなジエステルは、式(I)のジエステルをもたらす下記の反応スキーム1によって一般に示されるように、1モルの選択されたジカルボン酸を2モルの選択されたアルコール(またはそれらの混合物)と反応させることによって調製することができ、
【化3】
式中、R
1は、nが6~10の整数であるn-2個の炭素を含み、R
2は、同一であるか、または異なり(式Iにおいて)、C6~C12の分岐アルキル鎖、および他のアプローチでは、C8~C10の分岐アルキル鎖、およびまた他のアプローチでは、C8~C12の分岐アルキル鎖、およびまた他のアプローチでは、C6~C10の分岐アルキル鎖を含む。
【0025】
溶媒系の基油成分
本明細書における溶媒系は、基油成分として1つ以上の鉱物油および/または他の合成油も含み得る。本明細書で使用されるとき、鉱物油および他の合成油は、米国石油協会(American Petroleum Institute:API)のカテゴリーグループのグループI~Vの油によって分類された油を指す。天然油の例としては、動物油、植物油(例えば、ヒマシ油およびラード油)、および石油、パラフィン油、またはナフテン油などの鉱物油が挙げられる。石炭または頁岩に由来する油も好適である。米国石油協会は、これらの異なるベースストックタイプを次のように分類した:グループI、0.03重量パーセント超の硫黄、および/または90体積パーセント未満の飽和物、80~120の粘度指数;グループII、0.03重量パーセント以下の硫黄、および90体積パーセント以上の飽和物、80~120の粘度指数;グループIII、0.03重量パーセント以下の硫黄、および90体積パーセント以上の飽和物、120超の粘度指数;グループIV、全ポリアルファオレフィン。水素化処理ベースストックおよび接触脱ロウベースストックは、それらの低い硫黄および芳香族化合物含有量のために、一般にグループIIおよびグループIIIの範疇に入る。ポリアルファオレフィン(グループIVベースストック)は、様々なアルファオレフィンから調製された合成基油であり、硫黄および芳香族を実質的に含まない。多くのグループV基油も真の合成生成物であり、ジエステル、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール、アルキル化芳香族、ポリリン酸エステル、ポリビニルエーテル、および/またはポリフェニルエーテルなどを含み得る。グループVの油が溶媒系の基油成分として使用される場合、そのようなグループVの油は、上記で議論される溶媒系の分岐ジエステル成分に添加される。
【0026】
好適な油は、水素化分解、水素化、水素化仕上げ、未精製、精製、および再精製油、およびそれらの混合物から誘導され得る。他の基油の任意の油ブレンドは、それらが上記で議論される所望の潤滑特性、電気特性、および熱特性を損なわない限り、使用することができる。
【0027】
未精製油は、少しのさらなる精製処理を行ったか、または行っていない、天然、鉱物、または合成源から誘導されたものである。精製油は、1つ以上の特性の向上をもたらし得る、1つ以上の精製ステップによって処理されたことを除いて、未精製油と同様である。好適な精製技法の例は、溶媒抽出、二次蒸留、酸または塩基抽出、濾過、透過などである。食用油の品質に精製された油は、有用である場合もそうでない場合もある。食用油は、白油と呼ばれることもある。いくつかの実施形態では、潤滑剤組成物は、食用油または白油を含まない。
【0028】
再精製油はまた、再生油または再処理油としても知られている。これらの油は、同一または類似のプロセスを用いて精製油を得るのに用いられるものと同様の方法で得られる。付加的に、これらの油は、使用済み添加剤および油分解生成物の除去に関する技術によってさらに処理される。
【0029】
鉱物油は、掘削によって、または植物および動物から得られる油、ならびにそれらの混合物を含み得る。例えば、そのような油としては、ヒマシ油、ラード油、オリーブ油、ピーナツ油、トウモロコシ油、ダイズ油、および亜麻仁油、ならびに鉱物潤滑油、例えば、液体石油、およびパラフィン系、ナフテン系、もしくは混合されたパラフィン系-ナフテン系タイプの溶媒処理または酸処理された鉱物系潤滑油が挙げられるが、それらに限定されない。そのような油は、望ましい場合、部分または完全水素化され得る。石炭または頁岩由来の油もまた有用であり得る。
【0030】
有用な他の合成潤滑油としては、重合、オリゴマー化、もしくは共重合オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー)などの炭化水素油;ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、1-デセンのトリマーもしくはオリゴマー、例えば、ポリ(1-デセン)、多くの場合α-オレフィンと称されるそのような材料、およびそれらの混合物;アルキル-ベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ-(2-エチルヘキシル)-ベンゼン);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェニル);ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルエーテル、およびアルキル化硫化ジフェニル、ならびにそれらの誘導体、類似体、および相同体、またはそれらの混合物を挙げることができる。
【0031】
他の合成潤滑油としては、ポリオールエステル、リン含有酸の液体エステル(例えば、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、およびデカンホスホン酸のジエチルエステル)、またはポリマーテトラヒドロフランが挙げられる。合成油は、フィッシャー・トロプシュ反応によって生成されてもよく、典型的に、水素化異性化フィッシャー・トロプシュ炭化水素またはワックスであってもよい。実施形態では、油は、フィッシャー-トロプシュガス-ツー-リキッド合成手順によって、および他のガス-ツー-リキッド油から調製され得る。
【0032】
溶媒系の基油成分は、ASTM D445-18に従って測定されるような、約2~約6cSt、約2~約4cSt、約2~約3cStのKV100(100℃での動粘度)を有し得る。
【0033】
溶媒系
本明細書における潤滑剤組成物で使用される溶媒系は、上記で議論される基油成分と上記で議論される分岐ジエステル成分とのブレンドを含み、いくつかの実施形態では、グループI~グループVの基油成分のうちの1つ以上の、選択された分岐ジエステル成分とのブレンドを含む。他の実施形態では、基油は、グループI~グループ1Vの基油から選択される1つ以上の油、ならびにさらに別の実施形態では、任意の組み合わせのグループI、グループII、グループIII、グループIV、および/またはグループVの基油から選択される基油である。
【0034】
いくつかのアプローチでは、例えば、本明細書における潤滑組成物に好適な溶媒系は、(溶媒系の総重量に基づいて)約10~約50重量パーセントのジエステルを含み、また他のアプローチでは、溶媒系は、約35~約50重量パーセントのジエステル、およびまた他のアプローチでは、約10~約35重量パーセントのジエステルである。他のアプローチまたは実施形態では、溶媒系は、少なくとも約10重量パーセント、少なくとも約15重量パーセント、少なくとも約20重量パーセント、少なくとも約25重量パーセント、少なくとも約30重量パーセント、または少なくとも約35重量パーセント~約50重量パーセント以下、約40重量パーセント以下、約35重量パーセント以下、または約30重量パーセント以下の範囲の量のジエステル成分を含み得る。
【0035】
溶媒系の基油成分は、上記で議論され、グループI~グループVの基油のうちの1つ以上から選択される基油のいずれかであり得、いくつかのアプローチでは、グループIIIの基油であり、他のアプローチでは、グループIVの油である。
【0036】
いくつかのアプローチでは、例えば、本明細書における潤滑組成物に好適な溶媒系は、(溶媒系中の基油の総重量に基づいて)基油成分の約50~約95重量パーセントを含み、また他のアプローチでは、溶媒系は、基油の約60~約90重量パーセントである。他のアプローチまたは実施形態では、溶媒系は、少なくとも約50重量パーセント、少なくとも約60重量パーセント、少なくとも約70重量パーセント、少なくとも約75重量パーセント、少なくとも約80重量パーセント、または少なくとも約85重量パーセント~約95重量パーセント以下、約85重量パーセント以下、約80重量パーセント以下、または約75重量パーセント以下の範囲の量の基油成分を含み得る。
【0037】
完成した潤滑組成物は、多量の溶媒系を含み得、いくつかのアプローチでは、約70~約98重量パーセント、他のアプローチでは、約75~約90重量パーセント、およびまた他のアプローチでは、約75~約85重量パーセントの溶媒系を含み得る。他のアプローチまたは実施形態では、潤滑組成物は、少なくとも約70重量パーセント、少なくとも約75重量パーセント、少なくとも約80重量パーセント、少なくとも約85重量パーセント、または少なくとも90重量パーセント~約98重量パーセント以下、約90重量パーセント以下、約85重量パーセント以下、または約80重量パーセント以下の範囲の量の溶媒系を含み得る。
【0038】
グループI~グループVの基油と、述べられたジエステルとのブレンドを含むいくつかのアプローチまたは実施形態では、本明細書における溶媒系は、約2~約8cSt、他のアプローチでは、約2.5~約6cSt、また他のアプローチでは、約2.5~約3.5cSt、および他のアプローチでは、約2.5~約4.5cStのKV100を有する。
【0039】
低分子量ポリ(メタ)アクリレートコポリマー
完成した流体中の溶媒系と組み合わせて使用される、本明細書における潤滑組成物の別の成分は、選択された低重量平均分子量ポリ(メタ)アクリレート(「PMA」)コポリマーである。いくつかの用途では、これらのコポリマーは、粘度指数向上剤および/または分散剤粘度指数向上剤である。そのような低重量平均分子量コポリマーは、(メタ)アクリル酸の直鎖または分岐アルキルエステルに由来し、約50,000g/モルを下回る重合分子量を有する直鎖または分岐の長鎖アルキルエステルおよび直鎖または分岐の短鎖アルキルエステルの選択された量を含む。
【0040】
1つのアプローチでは、本明細書におけるコポリマーは、長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーおよび短鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーの両方の選択された量の直鎖のランダムポリマーの形態の反応生成物を含む。いくつかのアプローチでは、短鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー(またはモノマー単位)は1~4個の炭素のアルキル鎖長を有し、長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー(またはモノマー単位)は12~20個の炭素のアルキル鎖長を有する。これらのモノマーおよびモノマー単位は、下記でさらに記載され、鎖中に直鎖アルキル基および/または分岐アルキル基の両方を含む。
【0041】
本明細書で使用されるとき、「モノマー」という用語は、一般に、重合前の反応混合物内の化合物を指し、モノマー単位または(あるいは)繰り返し単位は、ポリマー骨格内で重合されるようなモノマーを指す。述べたように、本明細書における様々なモノマーは、モノマー単位または繰り返し単位として骨格内でランダムに重合される。議論がモノマーに言及する場合、それは、ポリマー中のその得られたモノマー単位も意味する。同様に、議論がモノマー単位または繰り返し単位に言及する場合、それは、関連モノマーまたはその中の繰り返し単位でポリマーを形成するのに使用されるモノマー混合物も意味する。本明細書で使用されるとき、「(メタ)アクリレート」は、用途の必要に応じてメタクリレートおよび/またはアクリレートモノマーまたはモノマー単位(または混合物)の両方を指す。
【0042】
短鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位:一実施形態では、コポリマーは、約5~約50モルパーセントの短鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーまたはモノマー単位、他のアプローチでは、約20~約50モルパーセント、およびまた他のアプローチでは、約10~約40モルパーセントの短鎖アルキル(メタ)アクリレートを含み得る。短鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーまたはモノマー単位は、1~4個の炭素原子のアルキル基または総アルキル鎖長(分岐を含む)を有するものを含み、例えば、下記の構造に示されるようなメチル(メタ)アクリレートとn-ブチル(メタ)アクリレートを含み、
【化4】
式中、Rは、モノマーまたはその繰り返し単位がアクリレートである場合は水素原子であり、モノマーまたはその繰り返し単位がメタクリレートである場合はCH
3であり、R
1は、1~4個の総炭素を有する直鎖または分岐アルキル鎖または基である。
【0043】
長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位:他の実施形態では、コポリマーは、約50~約95モルパーセント、および他のアプローチでは、約60~約90モルパーセントの長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーまたはモノマー単位も含み得る。長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、下記の構造に示されるように12~20個の炭素のアルキル基または総アルキル鎖長(任意のぶ分岐を含む)を有するものを含み、ラウリル(メタ)アクリレートまたはLMA(下記で定義する)からセチル-エイコシル(メタ)アクリレートまたはCEMA(下記で定義する)までを含み得る。
【化5】
式中、Rは、モノマーもしくはその繰り返し単位がアクリレートである場合は水素原子、またはモノマーもしくは繰り返し単位がメタクリレートである場合はCH
3であり、R
2は、直鎖もしくは分岐のC12~C20アルキル鎖または基、R
3は、直鎖もしくは分岐のC16~C20アルキル鎖または基、あるいはブレンド中の大多数のアルキル鎖(直鎖または分岐)がC16および/またはC18であるC16~C20のブレンドであり、R
4は、直鎖もしくは分岐のC12~C15アルキル鎖または基、あるいはブレンド中の大多数がC12であるC12~C15のブレンドである。様々なアルキル鎖は、直鎖または分岐であり得る。
【0044】
本明細書で使用される長鎖アルキル(メタ)アクリレートLMAまたはラウリル(メタ)アクリレートは、ブレンド中にC12~C15の範囲のアルキル鎖長、特に12、14、および15個の炭素のアルキル鎖を有する(メタ)アクリレートモノマーまたはモノマー単位のブレンドを含む。例えば、LMAまたはLMAブレンドは、大多数のC12鎖を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマーまたはモノマー単位を含むことができ、ブレンド中に混合された少量のC14およびC15鎖を有するモノマーまたはモノマー単位をさらに含む。1つのアプローチでは、LMAは、約60~約75モルパーセントのC12アルキル鎖(他のアプローチでは、約65~約75モルパーセントのC12鎖)を有するアルキル(メタ)アクリレートを含み、約20~約30モルパーセントのC14アルキル鎖(他のアプローチでは、約25~約30のC14鎖)を有するアルキル(メタ)アクリレート、および約0~約5モルパーセントのC15アルキル鎖(他のアプローチでは、約1~約2モルパーセントのC15アルキル鎖)を有するアルキル(メタ)アクリレートも含み得る。特に明記されない限り、本開示がLMAまたはラウリル(メタ)アクリレートに言及するとき、上記のモノマーまたはモノマー単位のブレンドが意図され、ブレンド中のすべてのモノマーは、ランダムモノマー単位またはランダム繰り返しとしてそれらのそれぞれの量でポリマー骨格にランダムに重合されるであろう。
【0045】
本明細書で使用される長鎖アルキル(メタ)アクリレートCEMAまたはセチル-エイコシル(メタ)アクリレートは、いくつかのアプローチでは、C16~C20の範囲のアルキル鎖長、特に16、18、および20個の炭素を有する(メタ)アクリレートモノマーまたはモノマー単位のブレンドを含む。例えば、CEMAモノマーブレンドまたはモノマー単位ブレンドは、少量のC20鎖とともに大多数のC16およびC18鎖を含み得る。本明細書では簡潔にするために、CEMAモノマーまたはモノマー単位は、大多数のC16および/またはC18鎖を含有し得るが、C18アルキル鎖を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマーまたはモノマー単位と称され得る。1つのアプローチでは、CEMAモノマーは、約30~約40モルパーセントのC18アルキル鎖(他のアプローチでは、約30~約35モルパーセントのC18鎖)を有するアルキル(メタ)アクリレートを含み、約40~約55モルパーセントのC16アルキル鎖(他のアプローチでは、約45~約53モルパーセントのC16鎖)を有するアルキル(メタ)アクリレート、および約5~約20モルパーセントのC20アルキル鎖(他のアプローチでは、約10~約16モルパーセントのC20鎖)を有するアルキル(メタ)アクリレートも含み得る。いくつかのアプローチでは、CEMAは、最大約5モルパーセントのC16よりも短いアルキル鎖、および最大3モルパーセントのC20よりも長いアルキル鎖を有する(メタ)アクリレートも含み得る。特に明記されない限り、本開示がCEMAまたはセチル-エイコシル(メタ)アクリレートに言及する場合、上記モノマーまたはモノマー単位のブレンドが意図され、ブレンド中のすべてのモノマーは、ランダムモノマー単位またはランダム繰り返し単位としてそれらのそれぞれの量でポリマーにランダムに重合される。
【0046】
付加的に、およびいくつかの任意選択的なアプローチでは、本開示のPMAコポリマーは、5~9個の炭素の総炭素鎖長(直鎖または分岐)を有する中間アルキル鎖長官能基を有するモノマーおよびモノマー単位を含まない。本明細書で使用されるとき、含まないとは、一般に、約0.5モルパーセント未満、他のアプローチでは、約0.25モルパーセント未満、他のアプローチでは、約0.1モルパーセント未満、および他のアプローチでは、ゼロを意味する。
【0047】
任意選択的なモノマーおよびモノマー単位:本明細書におけるコポリマーは、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートならびに/または様々な分散剤モノマーおよびモノマー単位を含む、他の任意選択的なモノマーおよびモノマー単位も含み得る。
【0048】
1つのアプローチでは、コポリマーは、下記で示される構造を有するヒドロキシエステル(メタ)アクリレートなどのHEMAまたは2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを含むことができ、
【化6】
式中、Rは、モノマーまたはそのモノマー単位がアクリレートである場合に水素であり、モノマーまたはそのモノマー単位がメタクリレートである場合にCH
3である。1つのアプローチでは、ポリマーは、約0~約30モルパーセント、他のアプローチでは、約0~約20モルパーセント、また他のアプローチでは、約0~約10モルパーセント、およびまた他のアプローチでは、約5~約15モルパーセントモルパーセントのHEMAを含む。
【0049】
本明細書におけるポリ(メタ)アクリレートコポリマーは、任意選択で、1つ以上の分散剤モノマーまたはモノマー単位でも官能化することができる。例えば、ポリマーは、約0~約10モルパーセント(他のアプローチでは、約0~約6モルパーセント)の1つ以上の分散剤モノマーを含むか、またはポリマー骨格内で重合して、ポリマーに分散剤官能基もしくは他の官能基を提供し得る。1つのアプローチでは、分散剤モノマーまたはモノマー単位は、窒素含有モノマーまたはそれらの単位であり得る。そのようなモノマーは、使用される場合、ポリマーに分散剤官能基を付与し得る。
【0050】
いくつかのアプローチでは、窒素含有モノマーは、メタクリレート、メタクリルアミドなどのような(メタ)アクリルモノマーであり得る。いくつかのアプローチでは、窒素含有部分のアクリル部分への結合は、窒素原子またはあるいは酸素原子を介することができ、その場合、モノマーの窒素はモノマー中の他の場所に位置するであろう。窒素含有モノマーは、ビニル置換窒素複素環モノマーおよびビニル置換アミンのような(メタ)アクリルモノマー以外であり得る。窒素含有モノマーは、例えば、US6,331,603におけるものを含む。他の好適な分散剤モノマーとしては、これらに限定されないが、ジアルキルアミノアルキルアクリレート、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノアルキルアクリルアミド、ジアルキルアミノアルキルメタクリルアミド、N-三級アルキルアクリルアミド、およびN-三級アルキルメタクリルアミドが挙げられ、アルキル基またはアミノアルキル基は、独立して、1~8個の炭素原子を含有し得る。例えば、分散剤モノマーは、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートであり得る。窒素含有モノマーは、例えば、t-ブチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルイミダゾール、またはN-ビニルカプロラクタムであり得る。それは、4-フェニルアゾアニリン、4-アミノジフェニルアミン、2-アミノベンズイミダゾール、3-ニトロアニリン、4-(4-ニトロフェニルアゾ)アニリン、N-(4-アミノ-5-メトキシ-2-メチル-フェニル)-ベンズアミド、N-(4-アミノ-2,5-ジメトキシ-フェニル)-ベンズアミド、N-(4-アミノ-2,5-ジエトキシ-フェニル)-ベンズアミド、N-(4-アミノ-フェニル)-ベンズアミド、4-アミノ-2-ヒドロキシ-安息香酸フェニルエステル、およびN,N-ジメチル-フェニレンジアミンを含むWO2005/087821に開示される芳香族アミンのいずれかをベースとする(メタ)アクリルアミドでもあり得る。
【0051】
重合中、反応混合物中のモノマーは、モノマーオレフィン官能基で炭素-炭素結合をランダムに形成して、元の反応混合物中のモノマーの濃度と一致する官能性部分または側鎖を有する炭素鎖の繰り返し単位またはモノマー単位を有する直鎖のランダムポリマーを形成する。様々なモノマーは、従来のフリーラジカル重合または下記でさらに議論されるような様々な制御された重合方法のいずれかを使用して重合されて、下記の一般構造のランダムポリマーを形成し、
【化7】
式中、1つの例示的な例では、Rは、水素基またはメチル基であり、aは、約0~約40モルパーセントのメチル(メタ)アクリレートモノマー単位を提供するのに十分な整数であり、bは、約0~約20モルパーセントのHEMAモノマー単位を提供するのに十分な整数であり、cは、約0~約20モルパーセントのn-BMAモノマー単位を提供するのに十分な整数であり、dは、約50~約95モルパーセントまたは約60~約90モルパーセントのLMAモノマー単位を提供するのに十分な整数であり、eは、約0~約20モルパーセントのCEMAモノマー単位を提供するのに十分な整数である。R
3およびR
4は、前述のとおりである。任意選択で、ポリマーは、分散剤モノマー単位も含むことができ、式中、R
5は、分散剤官能基を提供するための部分であり、したがって、fは、約0~約10モルパーセントの分散剤モノマー単位をポリマーに提供するのに十分な整数である。上記の構造は、本明細書に記載のこれらのモノマー単位の他の範囲を提供するのに十分な整数a、b、c、d、およびeも含み得る。整数aからfに関連する部分は、ポリマー内でランダムに重合されるであろう。
【0052】
本開示のPMAポリマーは、典型的には、約50kg/モル未満、他のアプローチでは、約40kg/モル未満、および他のアプローチでは、約30kg/モル未満の重量平均分子量を有するように合成される。重量平均分子量についての好適な範囲は、約10~約50kg/モル、他のアプローチでは、約15~約50kg/モル、およびまた他のアプローチでは、約15~約30kg/モルを含む。また他の実施形態では、本開示のPMAコポリマーは、少なくとも約10、少なくとも約12、少なくとも約15、少なくとも約18、または少なくとも約20kg/モル、および約50未満、約45未満、約40未満、約35未満、または約30kg/モル未満の範囲の重量平均分子量を有し得る。実施例に示されるように、本明細書における範囲よりも高い重量平均分子量を有するコポリマーは、流体中ですべての所望の特性を同時に達成しない。
【0053】
本明細書におけるコポリマーは、典型的には、約1~約3、および他のアプローチでは、約1.2~約3、およびまた他のアプローチでは、約1.2~約2、およびまた他のアプローチでは、約2~約3の範囲の多分散指数を有する。
【0054】
ポリ(メタ)アクリレートポリマーは、任意の好適な従来のまたは制御されたフリーラジカル重合技術によって調製することができる。例には、従来のフリーラジカル重合(FRP)、可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)、原子移動ラジアル重合(ATRP)、および当技術分野で知られている他の制御されたタイプの重合が含まれる。重合手順は当業者に知られており、例えば、一般的な重合開始剤(Vazo(商標)67(2.2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリルなど)、従来のFRPを使用する場合は連鎖移動剤(ドデシルメルカプタンなど)、またはRAFT重合を使用する場合はRAFT剤(4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸など)の使用を含む。他の開始剤、連鎖移動剤、RAFT剤、ATRP触媒、および開始剤系は、特定の用途の必要に応じて、選択された重合方法に依存して、当技術分野で知られているように使用することができる。
【0055】
潤滑油組成物
本開示の潤滑油組成物は、電気車両および/またはハイブリッド電気車両の変速機および他の構成要素を潤滑するのに好適であり、上記でも議論された低分子量(メタ)アクリレートコポリマーのうちの少なくとも1つ以上と組み合わされた記載されたジエステル化合物のうちの少なくとも1つ以上を有する上述の溶媒系を含む。潤滑油組成物は、ドライブライン油、自動車用変速機流体、エンジン油などであり得、モータ、発電機、モータステータ、および/またはバッテリーを含む電気車両およびハイブリッド電気車両の構成要素を潤滑および接触させるのに特に好適である。
【0056】
また他のアプローチでは、潤滑油組成物は、本明細書に記載されるように、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約5~約40重量パーセントのジエステルを含み得る。他のアプローチでは、潤滑油組成物は、少なくとも約5重量パーセント、少なくとも約10重量パーセント、少なくとも約15重量パーセント、少なくとも約20重量パーセント、少なくとも約25重量パーセント、少なくとも約30重量パーセント、または少なくとも約35重量パーセント、および約40重量パーセント未満、約35重量パーセント未満、約30重量パーセント未満、約25重量パーセント未満、約20未満重量パーセント、約15重量パーセント未満、または約10重量パーセント未満の範囲の本明細書におけるジエステルの量を含み得る。
【0057】
さらなるアプローチでは、潤滑油組成物は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約40~約80重量パーセントの1つ以上の基油も含み得る。基油は、潤滑組成物が本開示全体を通して議論されるような所望の特徴を依然として達成する限り、下記でさらに議論されるように、少なくとも1つ以上のグループI~グループVの油を含み得る。
【0058】
別のアプローチまたは実施形態では、潤滑剤油組成物中の上記で議論される(メタ)アクリレートポリマーの(固形分またはオイルフリー基準での)処理率は、約1~約20重量パーセント、他のアプローチでは、約1~約15重量パーセント、およびまた他のアプローチでは、約5~約12重量パーセント、およびまた他のアプローチでは、約10~約12重量パーセントである。いくつかの他のアプローチでは、潤滑油組成物は、少なくとも約1パーセント、少なくとも約2パーセント、少なくとも約5パーセント、少なくとも約8パーセント、または少なくとも約10パーセント~約20パーセント未満、約18パーセント未満、約15パーセント未満、約13パーセント未満、または約12パーセント未満のポリ(メタ)アクリレートコポリマーの処理率範囲を含み得る。いくつかの他のアプローチでは、潤滑油組成物は、少なくとも約8パーセント~約15パーセント未満、および他のアプローチでは、約10パーセント~約12パーセント未満のポリ(メタ)アクリレートコポリマーの処理率範囲を含み得る。
【0059】
他のアプローチでは、潤滑油組成物は、本明細書で議論される所望の性能を達成する際の補助を助けるのに有効なエステルと重量パーセントコポリマーの比の重量パーセントも有し得る。この比は、上記で議論された選択されたジエステルの量と、本明細書で議論される特定のポリ(メタ)アクリレートポリマーの量との重量比である。1つのアプローチでは、本明細書における潤滑剤組成物についてのジエステル対コポリマーの重量比は、約0.4~約5.0、他のアプローチでは、約1.4~約4.0、また他のアプローチでは、約1.0~約3.5、およびまた他のアプローチでは、約2.5~約3.0である。他の実施形態では、この重量比は、少なくとも約0.4、少なくとも約1.0、少なくとも約1.2、少なくとも約1.4、または少なくとも約2.5の範囲であり、約5未満、約4未満、約3未満、約2.8未満、または約2.7未満、約2.6未満、または約2.5未満である。
【0060】
本明細書で使用されるとき、「油組成物」、「潤滑組成物」、「潤滑油組成物」、「潤滑油」、「潤滑剤組成物」、「完全配合潤滑剤組成物」、および「潤滑剤」という用語は、多量の基油成分と少量のポリ(メタ)アクリレートコポリマー、および他の任意選択的な成分を含む最終潤滑生成物を指す、同義の完全に互換的な用語とみなされる。
【0061】
いくつかのアプローチでは、潤滑剤油組成物は、変速機潤滑剤であり得、そのような使用では、ASTM D2983-17を使用した、約30,000cP(センチポアズ、動粘度の単位)以下、いくつかのアプローチでは、約5,000~約20,000cPの-40℃でのブルックフィールド粘度を有し得る。他のアプローチでは、本明細書における潤滑組成物についての100℃での動粘度は、ASTM D445-18によって測定されるとき、約3.5~約7.0cSt、および他のアプローチでは、約4~約6.5cStの範囲であり得る。また他のアプローチでは、本明細書における潤滑組成物についての40℃での動粘度は、ASTM D445-18によって測定されるとき、約10~約35cSt、他のアプローチでは、約20~約30cSt、およびさらに他のアプローチでは、約15~約25、およびさらに他のアプローチでは、約20~約35の範囲であり得る。
【0062】
本明細書における潤滑組成物は、所望の潤滑特性だけでなく、電気車両およびハイブリッド電気車両の電気モータおよび電気構成要素と接触するのに好適な電気特性および冷却特性も達成する。1つのアプローチまたは実施形態では、本明細書における潤滑剤は、上述の潤滑特性を有するだけでなく、ASTM D2624-15に従って約75℃で測定された約80,000pS/m以下(他のアプローチでは、75℃で約20,000~約80,000pS/m)の電気伝導率、ならびにASTM D7896-14に従って約80℃で測定された約134mW/m*K以上、および約134~約160mW/m*K(他のアプローチでは、約80℃で約134~約140mW/m*K)も有する。熱伝導率および電気伝導率についての述べられた性能は、電気伝導率および熱伝導率についてそれぞれ約75℃および約80℃で例示されているが、本開示の流体は、そのような流体に好適な温度範囲(例えば、約20℃~約180℃の範囲の温度)全体にわたって同様の傾向(つまり、低い電気伝導率および高い熱伝導率を同時に)を示し、所望の熱性能および電気性能は、適した様態でその範囲内の各温度で変化するであろう。
【0063】
本明細書における潤滑剤は、そのような添加剤が本明細書で議論されるような電気特性および冷却特性を損なうことがない限り、特定の用途の必要に応じて他の任意選択的な添加剤も含み得る。いくつかの一般的な任意選択的な添加剤が本明細書に記載されている。
【0064】
任意選択的な添加剤成分
上述の基油に加えて、本明細書における潤滑油組成物は、潤滑流体の必要な1つ以上の機能を実行するための他の添加剤も含み得る。さらに、上述の添加剤の1つ以上は、多機能性であり、本明細書で記述される機能に加えて、または機能以外の他の機能を提供し得る。
【0065】
例えば、本明細書における組成物は、摩擦調整剤、空気排除添加剤、酸化防止剤、腐食抑制剤、泡防止剤、シール膨潤剤、粘度指数向上剤、防錆剤、極圧添加剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの成分のうちの1つ以上を含み得る。他の性能添加剤は、上で明記されたものに加えて、金属不活性化剤、無灰TBNブースター、解乳化剤、乳化剤、流動点降下剤、およびそれらの混合物のうちの1つ以上も含み得る。典型的には、完全配合潤滑油は、これらの性能添加剤のうちの1つ以上を含有するであろう。いくつかの一般的な任意選択的な添加剤成分の例を以下に記載する。
【0066】
粘度指数向上剤
上述のポリ(メタ)アクリレートコポリマーに加えて、本明細書における潤滑油組成物は、任意選択で、1つ以上の追加または補足の粘度指数向上剤も含有し得る。適切な補足の粘度指数向上剤としては、ポリオレフィン、オレフィンコポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、ポリイソブテン、水素化スチレン-イソプレンポリマー、スチレン/マレイン酸エステルコポリマー、水素化スチレン/ブタジエンコポリマー、水素化イソプレンポリマー、α-オレフィン無水マレイン酸コポリマー、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアクリレート、ポリアルキルスチレン、水素化アルケニルアリール共役ジエンコポリマー、またはそれらの混合物を挙げることができる。粘度指数向上剤は、スターポリマー、コームポリマーを含むことができ、好適な例は、米国公開第2012/0101017(A1)号に記載され得る。
【0067】
本明細書における潤滑油組成物は、任意選択で、上記で議論されるPMA粘度指数向上剤に加えて、1つ以上の分散剤粘度指数向上剤も含有し得る。好適な分散剤粘度指数向上剤としては、官能化ポリオレフィン、例えば、アシル化剤(無水マレイン酸など)およびアミンの反応生成物で官能化されたエチレン-プロピレンコポリマー、アミンで官能化されたポリ(メタ)アクリレート、またはアミンと反応したエステル化無水マレイン酸-スチレンコポリマーを挙げることができる。
【0068】
粘度指数向上剤および/または分散剤粘度指数向上剤の総量は、潤滑組成物の0重量%~20重量%、0.1重量%~15重量%、0.25重量%~12重量%、または0.5重量%~10重量%であり得る。
【0069】
分散剤
潤滑剤組成物は、1つ以上の選択分散剤またはそれらの混合物を含み得る。分散剤は、潤滑油組成物に混合する前に灰分を形成する金属を含まず、潤滑剤に添加するとき通常灰分に寄与しないため、しばしば無灰タイプの分散剤と呼ばれている。無灰型分散剤は、比較的高い分子または重量の炭化水素鎖に結合した極性基を特徴とする。典型的な無灰分散剤には、N-置換長鎖アルケニルスクシンイミドが含まれる。N-置換長鎖アルケニルスクシンイミドは、(180~約18,000の数平均分子量を有する)ポリスチレンを較正基準として使用したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定されたとき、約800~約2500の範囲のポリイソブチレン置換基の数平均分子量を有するポリイソブチレン(PIB)置換基を含む。分散剤に使用されるPIB置換基は、典型的には、ASTM D445を使用して決定されたとき、約2100~約2700cStの100℃での粘度を有する。スクシンイミド分散剤およびそれらの調製は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,897,696号および米国特許第4,234,435号に開示されている。スクシンイミド分散剤は、典型的には、ポリアミン、典型的にはポリ(エチレンアミン)から形成されたイミドである。分散剤は、ポリアミンによって結合された2つのスクシンイミド部分を含み得る。ポリアミンは、テトラエチレンペンタアミン(TEPA)、トリエチレンテトラアミン(TETA)、ペンタエチレンヘキサアミン(PEHA)、他の高窒素エチレンジアミン種および/またはそれらの混合物であってもよい。ポリアミンは、直鎖、分岐、および環状アミンの混合物であり得る。PIB置換基は各スクシンイミド部分に結合していてもよい。
【0070】
いくつかの実施形態では、潤滑剤組成物は、上述のGPC法によって測定されたとき、約350~約5000、または約500~約3000の範囲の数平均分子量を有するポリイソブチレンに由来する少なくとも1つのポリイソブチレンスクシンイミド分散剤を含む。ポリイソブチレンスクシンイミドは、単独で、または他の分散剤と組み合わせて使用してもよい。
【0071】
いくつかの実施形態では、ポリイソブチレン(PIB)は、含まれるとき、末端二重結合の50モル%超、60モル%超、70モル%超、80モル%超、または90モル%超の含有量を有し得る。そのようなPIBは、高反応性PIB(「HR-PIB」)とも称される。約800~約5000の範囲の数平均分子量を有するHR-PIBは、本開示の実施形態における使用に好適である。従来の非高反応性PIBは、典型的には、末端二重結合の50モル%未満、40モル%未満、30モル%未満、20モル%未満、または10モル%未満の含有量を有する。
【0072】
上記のGPC法により測定された、約900~約3000の範囲の数平均分子量を有するHR-PIBが、好適であり得る。そのようなHR-PIBは、市販されているか、または米国特許第4,152,499号および米国特許第5,739,355号に記載される、三フッ化ホウ素などの非塩素化触媒の存在下でのイソブテンの重合によって合成され得る。前述の熱エン反応に使用される場合、HR-PIBは、増加した反応性のために、反応におけるより高い変換率、およびより少ない量の沈殿物形成をもたらし得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、潤滑剤組成物は、ポリイソブチレン無水コハク酸に由来する少なくとも1つの分散剤を含む。一実施形態では、分散剤は、ポリアルファオレフィン(PAO)無水コハク酸から誘導されてもよい。一実施形態では、分散剤は、オレフィン無水マレイン酸コポリマーから誘導されてもよい。一例として、分散剤はポリPIBSAとして記載されてもよい。一実施形態では、分散剤は、エチレン-プロピレンコポリマーにグラフト化される無水物に由来してもよい。
【0074】
好適な分散剤の1つの種類は、マンニッヒ塩基であり得る。マンニッヒ塩基は、より高分子量のアルキル置換フェノール、ポリアルキレンポリアミン、およびホルムアルデヒドのようなアルデヒドの縮合によって形成される物質である。マンニッヒ塩基は、米国特許第3,634,515号により詳細に記載されている。
【0075】
好適なクラスの分散剤は、高分子量エステルまたは半エステルアミドであってもよい。
【0076】
分散剤はまた、種々の薬剤のいずれかとの反応による従来の方法によって後処理することもできる。これらの薬剤の中には、ホウ素、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換無水コハク酸、無水マレイン酸、ニトリル、エポキシド、カーボネート、環状カーボネート、ヒンダードフェノールエステル、およびリン化合物がある。米国特許第7,645,726号、米国特許第7,214,649号、および米国特許第8,048,831号には、いくつかの好適な後処理方法および後処理製品が記載されている。
【0077】
本明細書における分散剤を形成するのに有用な好適なホウ素化合物は、ホウ素含有種を無灰分散剤に導入することができるいずれかのホウ素化合物またはホウ素化合物の混合物を含む。そのような反応を受けることができる有機または無機の任意のホウ素化合物を使用することができる。したがって、酸化ホウ素、酸化ホウ素水和物、三フッ化ホウ素、三臭化ホウ素、三塩化ホウ素、ボロン酸などのHBF4ホウ素酸(例えば、アルキル-B(OH)2、またはアリール-B(OH)2)、ホウ酸(すなわち、H3BO3)、四ホウ酸(すなわち、H2B5O7)、メタホウ酸(すなわち、HBO2)、そのようなホウ素酸のアンモニウム塩、およびそのようなホウ素酸のエステルを使用することができる。三ハロゲン化ホウ素とエーテル、有機酸、無機酸、または炭化水素との錯体の使用は、ホウ素反応物質を反応混合物に導入する便利な手段である。このような錯体は知られており、三フッ化ホウ素-ジエチルエーテル、三フッ化ホウ素-フェノール、三フッ化ホウ素-リン酸、三塩化ホウ素-クロロ酢酸、三臭化ホウ素-ジオキサンおよび三フッ化ホウ素-メチルエチルエーテルにより例示される。
【0078】
本明細書における分散剤を形成するための好適なリン化合物としては、リン含有種を無灰分散剤に導入することができるリン化合物またはリン化合物の混合物が挙げられる。したがって、そのような反応を行うことができる有機または無機のいずれかのリン化合物を使用することができる。したがって、そのような無機リン化合物を、無機リン酸、およびその水和物を含む無機酸化リンとして使用することができる。典型的な有機リン化合物としては、リン酸、チオリン酸、ジチオリン酸、チオリン酸、トリチオリン酸、およびテトラチオリン酸のモノ-、ジ-、およびトリエステルなどの、リン酸の完全および部分エステル;亜リン酸、チオ亜リン酸、ジチオ亜リン酸、およびトリチオ亜リン酸のモノ-、ジ-、およびトリエステル;酸化トリヒドロカルビルホスフィン;硫化トリヒドロカルビルホスフィン;ホスホン酸モノ-およびジヒドロカルビル、(RおよびR’がヒドロカルビルであり、R”が水素原子またはヒドロカルビル基である、RPO(OR’)(OR”))、ならびにそれらのモノ-、ジ-、およびトリチオ類似体;亜ホスホン酸モノ-およびジヒドロカルビル、(RおよびR’がヒドロカルビルであり、R”が水素原子またはヒドロカルビル基である、RP(OR’)(OR”))、ならびにそれらのモノ-およびジチオ類似体などが挙げられる。したがって、そのような化合物を、例えば、亜リン酸(H3PO3、H2(HPO3)と表されることもあり、オルト-亜リン酸またはホスホン酸と呼ばれることもある)、リン酸(H3PO4、オルトリン酸と呼ばれることもある)、次リン酸(H4P2O6)、メタリン酸(HPO3)、ピロリン酸(H4P2O7)、次亜リン酸(H3PO2、ホスフィン酸と呼ばれることもある)、ピロ亜リン酸(H4P2O5、ピロホスホン酸と呼ばれることもある)、亜ホスフィン酸(H3PO)、トリポリリン酸(H5P3O10)、テトラポリリン酸(H5P4O13)、トリメタリン酸(H3P3O9)、三酸化リン、四酸化リン、五酸化リンなどとして使用することができる。ホスホロテトラチオ酸(H3PS4)、ホスホロモノチオ酸(H3PO3S)、ホスホロジチオ酸(H3PO2S2)、ホスホロトリチオ酸(H3POS3)、セスキ硫化リン、七硫化リン、および五硫化リン(P2S5、P4S10と称されることもある)などの部分または全硫黄類似体も、本開示のための分散剤の形成に使用することができる。PCl3、PBr3、POCl3、PSCl3などのような無機ハロゲン化リン化合物も使用可能である。
【0079】
同様に、そのような有機リン化合物を、リン酸のモノ-、ジ-、およびトリエステル(例えば、リン酸トリヒドロカルビル、リン酸ジヒドロカルビル一酸、リン酸モノヒドロカルビル二酸、およびそれらの混合物)、亜リン酸のモノ-、ジ、およびトリエステル(例えば、亜リン酸トリヒドロカルビル、亜リン酸ジヒドロカルビル水素、亜リン酸ヒドロカルビル二酸、およびそれらの混合物)、ホスホン酸のエステル(「一級」、RP(O)(OR)2、および「二級」、R2P(O)(OR)の両方)、ホスフィン酸のエステル、ハロゲン化ホスホニル(例えば、RP(O)Cl2およびR2P(O)Cl)、ハロ亜リン酸塩(例えば、(RO)PCl2および(RO)2PCl)、ハロリン酸塩(例えば、ROP(O)Cl2および(RO)2P(O)Cl)、三級ピロリン酸エステル(例えば、(RO)2P(O)-O-P(O)(OR)2)、ならびに前述の有機リン化合物のいずれかの全または部分硫黄類似体などとして使用することができ、各ヒドロカルビル基は、最大約100個の炭素原子、または最大約50個の炭素原子、または最大約24個の炭素原子、または最大約12個の炭素原子を含有する。ハロゲン化ハロホスフィン(例えば、四ハロゲン化ヒドロカルビルリン、三ハロゲン化ジヒドロカルビルリン、および二ハロゲン化トリヒドロカルビルリン)、およびハロホスフィン(モノハロホスフィンおよびジハロホスフィン)も使用可能である。
【0080】
本明細書における潤滑剤は、非ホウ素化および非リン酸化分散剤と組み合わされた上記の1つ以上のホウ素化およびリン酸化分散剤の混合物を含み得る。
【0081】
一実施形態では、潤滑油組成物は、少なくとも1つのホウ酸化分散剤を含んでもよく、ここで、分散剤は、オレフィンコポリマーまたはオレフィンコポリマーの反応生成物または無水コハク酸を有するオレフィンコポリマーと少なくとも1つのポリアミンとの反応生成物である。PIBSAとポリアミンの比率は、1:1~10:1、または1:1~5:1、または4:3~3:1、または4:3~2:1であってもよい。特に有用な分散剤は、上述のGPC法により測定されたとき、約500~5000の範囲の数平均分子量(Mn)を有するPIBSAのポリイソブテニル基、および(B)一般式H2N(CH2)m-[NH(CH2)m]n-NH2を有するポリアミンを含有し、式中、mは、2~4の範囲内であり、nは、1~2の範囲である。
【0082】
上記に加えて、分散剤は、芳香族カルボン酸、芳香族ポリカルボン酸、または芳香族無水物で後処理されてもよく、全カルボン酸または無水物基は、芳香環に直接結合される。そのようなカルボキシル含有芳香族化合物は、1,8-ナフタレン酸または無水物および1,2-ナフタレンジカルボン酸または無水物、2,3-ナフタレンジカルボン酸または無水物、ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸無水物、ジフェン酸または無水物、2,3-ピリジンジカルボン酸または無水物、3,4-ピリジンジカルボン酸または無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸または無水物、ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸無水物、ピレンジカルボン酸または無水物などから選択されてもよい。ポリアミン1モル当たりに反応したこの後処理構成成分のモルは、約0.1:1~約2:1の範囲であってもよい。反応混合物中のこの後処理構成成分のポリアミンに対する典型的なモル比は、約0.2:1~約2:1の範囲であってもよい。この後処理構成成分の使用され得るポリアミンに対する別のモル比は、0.25:1~約1.5:1の範囲であってもよい。この後処理構成成分は、約140℃~約180℃の範囲にある温度で他の成分と反応させてもよい。
【0083】
代替的に、または上述の後処理に加えて、分散剤は、非芳香族ジカルボン酸または無水物で後処理されてもよい。非芳香族ジカルボン酸またはその無水物は、上記のGPC法により測定されたとき、500未満の数平均分子量を有し得る。好適なカルボン酸またはその無水物は、酢酸またはその無水物、シュウ酸およびその無水物、マロン酸およびその無水物、コハク酸およびその無水物、アルケニルコハク酸およびその無水物、グルタル酸およびその無水物、アジピン酸およびその無水物、ピメリン酸およびその無水物、スベリン酸およびその無水物、アゼライン酸およびその無水物、セバシン酸およびその無水物、マレイン酸およびその無水物、フマル酸およびその無水物、酒石酸およびその無水物、グリコール酸およびその無水物、1,2,3,6-テトラヒドロナフタル酸およびその無水物などを含むがこれらに限定されない。
【0084】
非芳香族カルボン酸または無水物は、ポリアミン1モル当たり約0.1~約2.5モルの範囲であるポリアミンとのモル比で反応させる。典型的には、使用される非芳香族カルボン酸または無水物の量は、ポリアミン中の2級アミノ基の数に比例するであろう。したがって、構成成分B中の2級アミノ基当たり約0.2~約2.0モルの非芳香族カルボン酸または無水物を他の構成成分と反応させて、本開示の実施形態による分散剤を提供することができる。非芳香族カルボン酸または無水物の使用され得るポリアミンに対する別のモル比は、ポリアミン1モル当たり0.25:1~約1.5:1モルの範囲であってもよい。非芳香族カルボン酸または無水物は、約140℃~約180℃の範囲の温度で他の構成成分と反応し得る。
【0085】
アルケニルまたはアルキル無水コハク酸の活性物質重量%は、クロマトグラフィー技術を使用して測定することができる。この方法は、米国特許第5,334,321号における第5欄および第6欄に記載されている。ポリオレフィンの転化率は、米国特許第5,334,321号における第5欄および第6欄の等式を使用して、活性物質%から計算される。
【0086】
好適なホウ酸化分散剤のTBNは、油を含まない場合約10~約65mg KOH/グラムであり得、これは、約50%の希釈油を含有する分散剤試料上で測定される場合の約5~約30mg KOH/グラムのTBNと同等である。
【0087】
典型的には、上述の分散剤は、潤滑剤中に約4.5~約25重量パーセント、および他のアプローチでは、約4.5~約12重量パーセント、およびまた他のアプローチでは、約4.5~約7.7重量パーセントで提供される。
【0088】
極圧剤
本明細書における潤滑油組成物はまた、任意選択で、1つ以上の極圧剤を含有してもよい。油に可溶性である極圧(EP)剤は、硫黄およびクロロ硫黄含有EP剤、塩素化炭化水素EP剤、ならびにリンEP剤を含む。そのようなEP剤の例として、塩素化ワックス;ジベンジルジスルフィド、ジブチルテトラスルフィド、オレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、硫化ジペンテン、硫化テルペン、および硫化ディールス-アルダー付加物などの有機スルフィドおよびポリスルフィド;硫化リンとテレピンまたはオレイン酸メチルとの反応生成物などのリン硫化炭化水素;例えば、ジブチルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジシクロヘキシルホスファイト、ペンチルフェニルホスファイトといった、ジヒドロカルビルおよびトリヒドロカルビルホスファイトなどのリンエステル;ジペンチルフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、ジステアリルホスファイト、およびポリプロピレン置換フェニルホスファイト;亜鉛ジオクチルジチオカルバメートおよびバリウムヘプチルフェノール二酸などの金属チオカルバメート;例えば、ジアルキルジチオリン酸とプロピレンオキシドとの反応生成物のアミン塩を含む、アルキルおよびジアルキルリン酸のアミン塩;およびそれらの混合物が挙げられる。
【0089】
極圧剤は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、例えば、0~3.0重量%または0.1~2.0重量%の量で存在してもよい。
【0090】
耐摩耗剤:本明細書における潤滑油組成物は、任意選択で1つ以上の耐摩耗剤も含有し得る。好適な耐摩耗剤の例としては、金属チオリン酸塩、金属ジアルキルジチオリン酸塩、リン酸エステルまたはその塩、リン酸エステル、亜リン酸塩、リン含有カルボン酸エステル、エーテル、またはアミド、硫化オレフィン、チオカルバミン酸エステル、アルキレン結合チオカルバメート、および二硫化ビス(S-アルキルジチオカルバミル)を含む、チオカルバメート含有化合物、ならびにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好適な耐摩耗剤は、ジチオカルバミン酸モリブデンであり得る。リン含有耐摩耗剤は、欧州特許第612839号により詳細に記載されている。ジアルキルジチオホスフェート塩中の金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル、銅、チタン、または亜鉛であり得る。有用な耐摩耗剤は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛であり得る。
【0091】
好適な耐摩耗剤のさらなる例としては、チタン化合物、酒石酸塩、タルトリミド、リン化合物の油溶性アミン塩、硫化オレフィン、亜リン酸塩(例えば、亜リン酸ジブチル)、ホスホン酸塩、チオカルバメート含有化合物、例えば、チオカルバミン酸エステル、チオカルバミン酸アミド、チオカルバミン酸エーテル、アルキレン結合チオカルバメート、および二硫化ビス(S-アルキルジチオカルバミル)が挙げられる。酒石酸塩またはタルトリミドは、アルキル-エステル基を含有することができ、アルキル基上の炭素原子の合計は、少なくとも8であり得る。耐摩耗剤は、一実施形態では、クエン酸塩を含んでもよい。
【0092】
耐摩耗剤は、潤滑油組成物の約0重量%~約15重量%、他のアプローチでは、約0.01重量%~約10重量%、また他のアプローチでは、約0.05重量%~約5重量%、またはさらなるアプローチでは、約0.1重量%~約3重量%を含む範囲で存在し得る。
【0093】
摩擦調整剤
本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択で、1つ以上の摩擦調整剤を含有してもよい。好適な摩擦調整剤は、金属含有および金属非含有の摩擦調整剤を含んでもよく、限定されるものではないが、イミダゾリン類、アミド類、アミン類、スクシンイミド類、アルコキシル化アミン類、アルコキシル化エーテルアミン類、アミンオキシド類、アミドアミン類、ニトリル類、ベタイン類、四級アミン類、イミン類、アミン塩類、アミノグアニジン類、アルカノールアミド類、ホスホン酸類、金属含有化合物類、グリセロールエステル類、硫化脂肪族化合物およびオレフィン類、ヒマワリ油その他の天然に存在する植物油または動物油、ジカルボン酸エステル、ポリオールと1種以上の脂肪族または芳香族カルボン酸とのエステルもしくは部分エステルなどを含んでもよい。
【0094】
好適な摩擦調整剤は、直鎖状、分岐鎖状、もしくは芳香族ヒドロカルビル基、またはそれらの混合物から選択されるヒドロカルビル基を含んでもよく、かつ飽和であっても不飽和であってもよい。ヒドロカルビル基は、炭素および水素または硫黄もしくは酸素のようなヘテロ原子で構成されてもよい。ヒドロカルビル基は、12~25個の炭素原子の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、摩擦調整剤は長鎖脂肪酸エステルであってもよい。他の実施形態では、長鎖脂肪酸エステルはモノエステル、またはジエステル、または(トリ)グリセリドであってもよい。摩擦調整剤は、長鎖脂肪アミド、長鎖脂肪エステル、長鎖脂肪エポキシド誘導体、または長鎖イミダゾリンであってもよい。
【0095】
他の好適な摩擦調整剤は、有機、無灰(金属非含有)、窒素非含有有機摩擦調整剤を含み得る。そのような摩擦調整剤は、カルボン酸および無水物をアルカノールと反応させることによって形成されたエステルを含み、一般に、親油性炭化水素鎖に共有結合した極性末端基(例えば、カルボキシルまたはヒドロキシル)を含み得る。有機無灰窒素非含有摩擦調整剤の例は、一般に、オレイン酸のモノ-、ジ-およびトリ-エステルを含み得るモノオレイン酸グリセロール(GMO)として知られている。他の好適な摩擦調整剤は、米国特許第6,723,685号に記載されている。
【0096】
アミン系摩擦調整剤はアミンまたはポリアミンを含んでもよい。そのような化合物は、飽和または不飽和のいずれかの直鎖、またはそれらの混合物であるヒドロカルビル基を有することができ、12~25個の炭素原子を含有することができる。好適な摩擦調整剤のさらなる例には、アルコキシル化アミンおよびアルコキシル化エーテルアミンが含まれる。そのような化合物は、飽和、不飽和、またはこれらの混合物のいずれかの直鎖であるヒドロカルビル基を有することができる。これらは、約12~約25個の炭素原子を含有してもよい。例としては、エトキシル化アミンおよびエトキシル化エーテルアミンが挙げられる。
【0097】
アミンおよびアミドは、それ自体として、あるいは酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、メタホウ酸塩、ホウ酸またはモノ-、ジ-もしくはトリ-アルキルボレートなどのホウ素化合物との付加物もしくは反応生成物の形態で使用することができる。他の好適な摩擦調整剤は、米国特許第6,300,291号に記載されている。
【0098】
摩擦調整剤は、任意選択で、0重量%~6重量%、または0.01重量%~4重量%、または0.05重量%~2重量%などの範囲内で存在してもよい。
【0099】
洗浄剤
潤滑剤組成物はまた、潤滑組成物に特定の量の金属および石鹸含有量を提供するために、1つ以上の選択された洗浄剤またはそれらの混合物を含む。1つの手法によって、清浄剤は、中性~過塩基性清浄剤のような金属含有清浄剤である。好適な清浄剤基質には、フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、カリキサレート、サリキサレート、サリチレート、カルボン酸、リン酸、モノ-および/またはジ-チオリン酸、アルキルフェノール、硫黄結合アルキルフェノール化合物、ならびにメチレン架橋フェノールが含まれる。好適な洗浄剤およびそれらの調製方法は、米国特許第7,732,390号およびそこに引用されている参考文献を含む多数の特許公報に、より詳細に記載されている。1つの手法では、清浄剤は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩を含む、中性~過塩基性スルホネート、フェネート、またはカルボキシレートである。清浄剤は、直鎖または分岐スルホネートのような、直鎖または分岐であり得る。直鎖清浄剤は、側鎖が結合していない直鎖を含むものであり、典型的には、1個または2個の他の炭素原子にのみ結合した炭素原子を含む。分岐清浄剤は、分子の骨格に1つ以上の側鎖が結合されたものであり、1、2、3、または4個の他の炭素原子に結合した炭素原子を含み得る。一実施形態では、スルホネート清浄剤は、主に直鎖アルキルベンゼンスルホネート清浄剤であり得る。いくつかの実施形態では、直鎖アルキル(またはヒドロカルビル)基は、アルキル基の直鎖に沿ってどこでもベンゼン環に結合し得るが、直鎖の2、3、または4位であることが多く、いくつかの例では、主に2位である。他の実施形態では、アルキル(またはヒドロカルビル)基は、分岐していてもよく、すなわち、プロピレンまたは1-ブテンもしくはイソブテンのような分岐オレフィンから形成されていてもよい。直鎖および分岐アルキル基の混合物を有するスルホネート清浄剤もまた使用され得る。
【0100】
洗剤基質は、限定されないが、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、リチウム、バリウム、またはこれらの混合物などのアルカリ金属またはアルカリ土類金属で塩基化されてもよい。いくつかの実施形態では、清浄剤は、バリウムを含まない。好適な清浄剤は、石油スルホン酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩、および長鎖モノ-またはジ-アルキルアリールスルホン酸を含むことができ、アリール基は、ベンジル、トリル、およびキシリルのうちの1つである。
【0101】
過塩基性清浄剤添加剤は、当該技術分野において既知であり、アルカリまたはアルカリ土類金属過塩基性清浄剤添加剤であり得る。そのような清浄剤添加剤は、金属酸化物または金属水酸化物を基質および二酸化炭素ガスと反応させることによって調製され得る。基質は、典型的には、酸、例えば、脂肪族置換スルホン酸、脂肪族置換カルボン酸、または脂肪族置換フェノールのような酸である。一般に、「過塩基性」という用語は、存在する金属の量が化学量論的量を超える、スルホネート、カルボキシレート、およびフェネートの金属塩のような金属塩に関する。そのような塩は、100%超の変換レベルを有し得る(すなわち、それらは、酸をその「正」塩、「中性」塩に変換するのに必要な金属の理論的量の100%超を含み得る)。しばしばMRと略される「金属比」という表現は、既知の化学反応性および化学量論性による中性塩中の金属の化学当量に対する過塩基性塩中の金属の総化学当量の比を示すために使用される。正塩または中性塩では、金属比は、1であり、過塩基性塩では、MRは、1より大きい。そのような塩は、一般的には、過塩基性、高塩基性、または超塩基性塩と称され、有機硫黄酸、カルボン酸、またはフェノールの塩であり得る。清浄剤は、約27~約400、他のアプローチでは、約200~約400の全塩基価(TBN)も示し得る。
【0102】
変速機流体では、洗浄剤は、潤滑剤組成物に約455ppm未満の金属を提供する。より高いレベルの金属は、本明細書に記載の摩擦耐久性または摩耗試験のうちの1つ以上で不合格になる。他の手法では、洗浄剤は、約0~約281ppmの金属を提供する。さらに他の手法では、洗浄剤は、潤滑剤組成物に約0~約100ppmの金属を提供する。
【0103】
洗浄剤は、潤滑剤組成物に選択されたレベルの石鹸含有量も提供し、提供された石鹸の量は金属のレベルとのバランスが取れているため、金属が所望の範囲内にない場合、石鹸含有量を増加しても所望の結果は達成されず、これは、本明細書における実施例でより詳細に議論される。1つの手法により、洗浄剤は、スルホネート石鹸、フェネート石鹸、および/またはカルボキシレート石鹸などの約0.02~約0.15パーセントの石鹸含有量を最終潤滑組成物に提供する。他の手法では、洗浄剤は、約0.02~約0.1パーセントの石鹸を提供し、さらに他の手法では、約0.02~約0.05パーセントの石鹸を提供する。
【0104】
石鹸含有量は、一般に、中性の有機酸塩の量を指し、洗浄剤の浄化能力、または洗浄力、および汚れを浮かせる能力を反映している。石鹸含有量は、それぞれスルホネート基の数、カルシウム原子の数、炭酸基の数、およびヒドロキシル基の数を示すv、w、x、およびyを含む例示的なカルシウムスルホネート洗浄剤(RSO3テ゛表される)
vCa
w(CO
3)
x(Oh)
yを使用して、次の式で決定することができる。
【数1】
有効式量は、式(RSO
3)
vCa
w(CO
3)
x(OH)
yを構成するすべての原子の合計重量に他の任意の潤滑剤組成物の重量を加えたものである。石鹸の含有量の決定に関する詳細な説明は、Fuels and Lubricants Handbook、technology、properties、performance、and testing、George Totten、editor、ASTM International、2003に見出すことができ、その関連部分を参照により本明細書に組み込む。
【0105】
いくつかの手法では、潤滑剤中のホウ素が分散剤のみによって提供されるように、金属含有洗浄剤は、ホウ素化されていない。
【0106】
潤滑油組成物中に存在し得る洗浄剤の総量は、0重量%~2重量%、または約0重量%~約0.5重量%、または約0重量%~約0.15重量%であり得る。
【0107】
酸化防止剤
本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択で、1つ以上の酸化防止剤を含有してもよい。酸化防止剤化合物は既知のものであり、例えば、フェネート、フェネートスルフィド、硫化オレフィン、ホスホ硫化テルペン、硫化エステル、芳香族アミン、アルキル化ジフェニルアミン(例えば、ノニルジフェニルアミン、ジ-ノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジ-オクチルジフェニルアミン)、フェニル-アルファ-ナフチルアミン、アルキル化フェニル-アルファ-ナフチルアミン、ヒンダード非芳香族アミン、フェノール、ヒンダードフェノール、油溶性モリブデン化合物、高分子酸化防止剤、またはそれらの混合物が挙げられる。酸化防止剤化合物は、単独でまたは組み合わせて使用することができる。
【0108】
有用な酸化防止剤は、ジアリールアミンおよび高分子量フェノールを含んでもよい。一実施形態では、本潤滑油組成物は、ジアリールアミンと高分子量フェノールとの混合物を含有してもよいため、各酸化防止剤は、本潤滑油組成物の最終重量に基づいて、最大約5重量%を提供するのに十分な量で存在してもよい。一実施形態において、酸化防止剤は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、0.3~2重量%のジアリールアミンと0.4~2重量%の高分子量フェノールとの混合物であり得る。
【0109】
1つ以上の酸化防止剤は、潤滑組成物の0重量%~5重量%、または0.01重量%~5重量%、または0.1重量%~3重量%、または0.8重量%~2重量%の範囲で存在し得る。
【0110】
腐食防止剤
自動変速機潤滑剤は、追加の腐食抑制剤をさらに含み得る(他の言及された成分のいくつかは、銅腐食抑制特性も有し得ることに留意すべきである)。銅腐食の好適な追加の防止剤としては、エーテルアミン、エトキシル化アミンおよびエトキシル化アルコールなどのポリエトキシル化化合物、イミダゾリン、モノアルキルおよびジアルキルチアジアゾールなどが挙げられる。
【0111】
チアゾール、トリアゾール、およびチアジアゾールも、潤滑剤に使用され得る。例としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、オクチルトリアゾール、デシルトリアゾール、ドデシルトリアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、2-メルカプト-5-ヒドロカルビルチオ-1,3,4-チアジアゾール、および2-メルカプト-5-ヒドロカルビルジチオ-1,3,4-チアジアゾールが挙げられる。一実施形態では、チアジアゾールは1,3,4-チアジアゾールである。別の実施形態では、チアジアゾールは、2-ヒドロカルビルジチオ-5-メルカプト-1,3,4-ジチアジアゾールである。多くのチアジアゾールが商品として入手可能である。
【0112】
腐食抑制剤は、存在する場合、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、0重量%~5重量%、0.01重量%~3重量%、0.1重量%~2重量%を提供するのに十分な量で使用され得る。
【0113】
泡防止剤/消泡剤
消泡剤/界面活性剤も、本開示による流体中に含まれ得る。様々な薬剤が、そのような用途について知られている。一実施形態では、薬剤は、Solutiaから入手可能な、PC-1244のようなエチルアクリレートおよびヘキシルエチルアクリレートのコポリマーである。別の実施形態では、薬剤は、4%DCFのようなシリコーン流体である。別の実施形態では、薬剤は、消泡剤の混合物である。
【0114】
防錆剤
様々な既知の防錆剤または添加剤が、変速機流体に使用されることが知られており、本開示による流体での使用に好適である。防錆剤には、Mazawet(登録商標)77などのアルキルポリオキシアルキレンエーテル、Neofat(登録商標)8などのC-8酸、Tomah PA-14などのオキシアルキルアミン、3-デシルオキシプロピルアミン、およびPluronic(登録商標)L-81などのポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックコポリマーが含まれる。
【0115】
流動点降下剤
好適な流動点降下剤は、ポリメチルメタクリレートまたはそれらの混合物を含み得る。流動点降下剤は、潤滑組成物の総重量に基づいて、0重量%~1重量%、0.01重量%~0.5重量%、または0.02重量%~0.04重量%を提供するのに十分な量で存在し得る。
【0116】
シール膨潤剤
本開示の自動変速機流体は、シール膨潤剤をさらに含み得る。エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、アゼライン酸エステル、フタル酸エステル、スルホン、アルコール、アルキルベンゼン、置換スルホラン、芳香族化合物、または鉱油などのシール膨潤剤は、エンジンおよび自動変速機のシールとして使用されるエラストマー材料の膨潤を引き起こす。
【0117】
アルコール型シール膨潤剤は、一般に、デシルアルコール、トリデシルアルコールおよびテトラデシルアルコールなどの低揮発性直鎖アルキルアルコールである。シール膨潤剤として有用なアルキルベンゼンとしては、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニル-ベンゼン、ジ(2-エチルヘキシル)ベンゼンなどが挙げられる。置換スルホラン(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,029,588号に記載されるもの)も同様に、本発明による組成物におけるシール膨潤剤として有用である。本開示においてシール膨潤剤として有用な鉱物油は、高いナフテンまたは芳香族含有量を有する低粘度鉱物油を含む。芳香族シール膨潤剤は、市販のExxon Aromatic 200 NDシール膨潤剤を含む。鉱物油シール膨潤剤の市販の例としては、Exxon(登録商標)Necton(登録商標)-37(FN 1380)およびExxon(登録商標)Mineral Seal Oil(FN 3200)が挙げられる。
【0118】
上記議論に基づき、様々な潤滑組成物成分の例示的な範囲を以下の表1に記載する。
【表1】
【0119】
上記の各成分の百分率は、潤滑油組成物の合計最終重量に基づく、各成分の重量パーセントを表す。上文で定義されるとおり、潤滑油組成物の残部は、1つ以上の基油からなる。本明細書に記載の組成物の配合に使用される添加剤は、基油に個々にまたは様々なサブコンビネーションで混合され得る。しかしながら、添加剤濃縮物(すなわち、添加剤プラス炭化水素溶媒のような希釈剤)を使用して、成分のすべてを同時に混合することが好適であり得る。
【0120】
定義
本開示の目的のために、化学元素は、元素周期表、CAS版、Handbook of Chemistry and Physics、75th Edに従って同定される。付加的に、有機化学の一般原理は、“Organic Chemistry”,Thomas Sorrell,University Science Books,Sausolito:1999,および“March’s Advanced Organic Chemistry”,5th Ed.,Ed.:Smith,M.B.and March,J.,John Wiley & Sons,New York:2001に記載されており、これらの内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0121】
本明細書で使用されるとき、「オレフィンコポリマー」という用語は、すべてのモノマーが少なくとも1つのオレフィン(炭素-炭素二重結合)を含む、2つ以上の異なるタイプのモノマーからなるランダムおよび/またはブロックポリマーを指す。
【0122】
本明細書に記載されるように、化合物は、上で一般的に例示されるように、または特定のクラス、サブクラス、および本開示の種によって例示されるように、1つ以上の置換基で任意選択で置換されてもよい。
【0123】
その内容から特に明らかでない限り、「多量」という用語は、組成物の総重量に対して、50重量%以上、例えば、約80~約98重量%の量を意味すると理解される。また、本明細書で使用されるとき、「少量」という用語は、組成物の総重量に対して50重量パーセント未満の量を意味すると理解される。
【0124】
本明細書で使用されるとき、「ヒドロカルビル基」または「ヒドロカルビル」という用語は、当業者に周知のその通常の意味で使用される。具体的には、それは、分子の残りに直接結合した炭素原子を有し、主として炭化水素の特性を有する基を指す。ヒドロカルビル基の例としては、(1)炭化水素置換基、すなわち、脂肪族(例えば、アルキルまたはアルケニル)、脂環式(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、および芳香族-、脂肪族-、および脂環式-置換芳香族置換基、および環が分子の別の部分によって完成する(例えば、2つの置換基が一緒に脂環式ラジカルを形成する)環式置換基、(2)置換炭化水素置換基、すなわち、本明細書における説明の文脈において、主に炭化水素置換基(例えば、ハロ(特にクロロおよびフルオロ)、ヒドロキシル、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、アミノ、アルキルアミノ、およびスルホキシ)を変更しない、非炭化水素基を含有する置換基、(3)ヘテロ置換基、すなわち、本説明の文脈において、主に炭化水素の特徴を有しながら炭素原子で構成される環または鎖中に炭素以外を含有する置換基、が挙げられる。ヘテロ原子は、硫黄、酸素、および窒素を含み、ピリジル、フリル、チエニル、およびイミダゾリルなどの置換基を包含する。一般に、ヒドロカルビル基中の炭素原子10個毎に2個以下、またはさらなる例として1個以下の非炭化水素置換基が存在し、いくつかの実施形態では、ヒドロカルビル基中に非炭化水素置換基は存在しないであろう。
【0125】
本明細書で使用されるとき、「脂肪族」という用語は、アルキル、アルケニル、アルキニルという用語を包含し、それらの各々は、以下に記載されるように任意選択で置換されている。
【0126】
本明細書で使用されるとき、「アルキル」基は、1~12個(例えば、1~8個、1~6個、または1~4個)の炭素原子を含有する飽和脂肪族炭化水素基を指す。アルキル基は、直鎖または分岐鎖であり得る。アルキル基の例には、これらに限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘプチル、または2-エチルヘキシルが挙げられる。アルキル基は、1つ以上の置換基で、例えば、ハロ、ホスホ、脂環式[例えば、シクロアルキルまたはシクロアルケニル]、ヘテロ脂環式[例えば、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロシクロアルケニル]、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アロイル、ヘテロアロイル、アシル[例えば、(脂肪族)カルボニル、(脂環式)カルボニル、または(ヘテロ脂環式)カルボニル]、ニトロ、シアノ、アミド[例えば、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノアルキルアミノカルボニル、シクロアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクロアルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、またはヘテロアリールアミノカルボニル]、アミノ、[例えば、脂肪族アミノ、脂環式アミノ、またはヘテロ脂環式アミノ]、スルホニル[例えば、脂肪族-SO2-]、スルフィニル、スルファニル、スルホキシ、尿素、チオ尿素、スルファモイル、スルファミド、オキソ、カルボキシ、カルバモイル、脂環式オキシ、ヘテロシクロ脂肪族オキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアリールアルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、またはヒドロキシで、置換される(すなわち、任意選択で置換される)ことができる。限定するものではないが、置換アルキルのいくつかの例としては、カルボキシアルキル(例えば、HOOC-アルキル、アルコキシカルボニルアルキル、およびアルキルカルボニルオキシアルキル)、シアノアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アシルアルキル、アラルキル、(アルコキシアリール)アルキル、(スルホニルアミノ)アルキル(例えば、(アルキル-SO2-アミノ)アルキル)、アミノアルキル、アミドアルキル、(脂環式)アルキル、またはハロアルキルが挙げられる。
【0127】
本明細書中で使用される場合、「アルケニル」基とは、2~8個(例えば、2~12、2~6、または2~4個)の炭素原子および少なくとも1つの二重結合を含有する脂肪族炭素基を指す。アルキル基のように、アルケニル基は、直鎖または分岐鎖であり得る。アルケニル基の例には、これらに限定されないが、アリル、イソプレニル、2-ブテニル、および2-ヘキセニルが挙げられる。アルケニル基は、1つ以上の置換基で、例えば、ハロ、ホスホ、脂環式[例えば、シクロアルキルまたはシクロアルケニル]、ヘテロ脂環式[例えば、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロシクロアルケニル]、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アロイル、ヘテロアロイル、アシル[例えば、(脂肪族)カルボニル、(脂環式)カルボニル、または(ヘテロ脂環式)カルボニル]、ニトロ、シアノ、アミド[例えば、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノアルキルアミノカルボニル、シクロアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクロアルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、またはヘテロアリールアミノカルボニル]、アミノ、[例えば、脂肪族アミノ、脂環式アミノ、ヘテロ脂環式アミノ、または脂肪族スルホニルアミノ]、スルホニル[例えば、アルキル-SO2-、脂環式-SO2-、またはアリール-SO2-]、スルフィニル、スルファニル、スルホキシ、尿素、チオ尿素、スルファモイル、スルファミド、オキソ、カルボキシ、カルバモイル、脂環式オキシ、ヘテロ脂環式オキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアラルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、またはヒドロキシで、任意選択で置換されることができる。限定するものではないが、置換アルケニルのいくつかの例としては、シアノアルケニル、アルコキシアルケニル、アシルアルケニル、ヒドロキシアルケニル、アラルケニル、(アルコキシアリール)アルケニル、(スルホニルアミノ)アルケニル(例えば、(アルキル-SO2-アミノ)アルケニル)、アミノアルケニル、アミドアルケニル、(脂環式)アルケニル、またはハロアルケニルが挙げられる。
【0128】
本明細書で使用されるとき、「アルキニル」基は、2~8個(例えば、2~12、2~6、または2~4)の炭素原子を含有し、少なくとも1つの三重結合を有する脂肪族炭素基をいう。アルキニル基は、直鎖または分岐鎖であり得る。アルキニル基の例としては、これらに限定されないプロパルギルおよびブチニルが挙げられる。アルキニル基は、1つ以上置換基で、例えば、アロイル、ヘテロアロイル、アルコキシ、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ニトロ、カルボキシ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、スルホ、メルカプト、スルファニル[例えば、脂肪族スルファニルまたは脂環式スルファニル]、スルフィニル[例えば、脂肪族スルフィニルまたは脂環式フィニル]、スルホニル[例えば、脂肪族-SO2-、脂肪族アミノ-SO2-、または脂環式-SO2-]、アミド[例えば、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アルキルカルボニルアミノ、シクロアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクロアルキルアミノカルボニル、シクロアルキルカルボニルアミノ、アリールアミノカルボニル、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、またはヘテロアリールアミノカルボニル]、尿素、チオ尿素、スルファモイル、スルファミド、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アシル[例えば、(脂環式)カルボニルまたは(ヘテロ脂環式)カルボニル]、アミノ[例えば、脂肪族アミノ]、スルホキシ、オキソ、カルボキシ、カルバモイル、(脂環式)オキシ、(ヘテロ脂環式)オキシ、または(ヘテロアリール)アルコキシで、任意選択で置換されることができる。
【0129】
本明細書で使用されるとき、「アミノ」基とは、-NRXRYを指し、式中、RXおよびRYの各々は独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、(ヘテロシクロアルキル)アルキル、ヘテロアリール、カルボキシ、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、(アルキル)カルボニル、(シクロアルキル)カルボニル、((シクロアルキル)アルキル)カルボニル、アリールカルボニル、(アラルキル)カルボニル、(ヘテロシクロアルキル)カルボニル、((ヘテロシクロアルキル)アルキル)カルボニル、(ヘテロアリール)カルボニル、または(ヘテロアラルキル)カルボニルであり、それらの各々は、本明細書に定義されており、任意選択で置換されている。アミノ基の例には、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、またはアリールアミノが挙げられる。「アミノ」という用語が末端基(例えば、アルキルカルボニルアミノ)ではない場合、それは-NRX-によって表される。RXは、上記で定義されたものと同義である。
【0130】
本明細書で使用されるとき、「シクロアルキル」基は、3~10個(例えば、5~10個)の炭素原子の飽和炭素環式単環式または二環式(融合または架橋)環を指す。シクロアルキル基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル、ノルボルニル、キュービル、オクタヒドロインデニル、デカヒドロナフチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[3.3.1]ノニル、ビシクロ[3.3.2.]デシル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、アダマンチル、または((アミノカルボニル)シクロアルキル)シクロアルキルが挙げられる。
【0131】
本明細書で使用されるとき、「ヘテロシクロアルキル」基は、3~10員の単環式または二環式(融合または架橋)(例えば、5~10員の単環式または二環式)飽和環構造を指し、環原子の1つ以上は、ヘテロ原子(例えば、N、O、S、またはそれらの組み合わせ)である。ヘテロシクロアルキル基の例としては、ピペリジル、ピペラジル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフリル、1,4-ジオキソラニル、1,4-ジチアニル、1,3-ジオキソラニル、オキサゾリジル、イソオキサゾリジル、モルホリニル、チオモルホリル、オクタヒドロベンゾフリル、オクタヒドロクロメニル、オクタヒドロチオクロメニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロピリンジニル、デカヒドロキノリニル、オクタヒドロベンゾ[b]チオフェニル、2-オキサ-ビシクロ[2.2.2]オクチル、1-アザ-ビシクロ[2.2.2]オクチル、3-アザ-ビシクロ[3.2.1]オクチル、および2,6-ジオキサ-トリシクロ[3.3.1.0]ノニルが挙げられる。単環式ヘテロシクロアルキル基は、ヘテロアリール類として分類されるであろうテトラヒドロイソキノリンのような構造を形成するためにフェニル部分と融合させることができる。
【0132】
本明細書で使用される「ヘテロアリール」基は、単環式、二環式または4~15個の環原子を有する三環式環系を指し、1個以上の環原子がヘテロ原子であり(例えば、N、O、S、またはそれらの組み合わせ)、単環式環系は、香族であるか、または二環式または三環式環系中の環の少なくとも1つは芳香族である。ヘテロアリール基は、2~3の環を有するベンゾ融合環系を含む。例えば、ベンゾ融合基は、1または2つの4~8員複素環式脂肪族部分(例えば、インドリジル、インドリル、イソインドリル、3H-インドリル、インドリニル、ベンゾ[b]フリル、ベンゾ[b]チオフェニル、キノリニル、またはイソキノリニル)と融合したベンゾを含む。ヘテロアリールのいくつかの例は、ピリジル、1H-インダゾリル、フリル、ピロリル、チエニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、テトラゾリル、ベンゾフリル、イソキノリニル、ベンズチアゾリル、キサンテン、チオキサンテン、フェノチアジン、ジヒドロインドール、ベンゾ[1,3]ジオキソール、ベンゾ[b]フリル、ベンゾ[b]チオフェニル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、プリル、シンノリル、キノリル、キナゾリル、シンノリル、フタラジル、キナゾリル、キノキサリル、イソキノリル、4H-キノリジル、ベンゾ-1,2,5-チアジアゾール、または1,8-ナフチリジルである。
【0133】
限定されないが、単環式ヘテロアリールとしては、フリル、チオフェニル、2H-ピロリル、ピロリル、オキサゾリル、タゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、2H-ピラニル、4-H-プラニル、ピリジル、ピリダジル、ピリミジル、ピラゾリル、ピラジル、または1,3,5-トリアジルが挙げられる。単環式ヘテロアリール類は、標準的な化学命名法に従って番号付けされている。
【0134】
限定されないが、二環式ヘテロアリール類としては、インドリジル、インドリル、イソインドリル、3H-インドリル、インドリニル、ベンゾ[b]フリル、ベンゾ[b]チオフェニル、キノリニル、イソキノリニル、インドリジニル、イソインドリル、インドリル、ベンゾ[b]フリル、ベキソ[b]チオフェニル、インダゾリル、ベンズイミダジル、ベンズチアゾリル、プリニル、4H-キノリジル、キノリル、イソキノリル、シンノリル、フタラジル、キナゾリル、キノキサリル、1,8-ナフチリジル、またはプテリジルが挙げられる。二環式ヘテロアリールは、標準的な化学命名法に従って番号付けされている。
【0135】
本明細書で使用されるとき、「処理率」という用語は、潤滑油中の成分の重量パーセントを指す。例えば、油組成物中の特定のポリマーの処理率は、組成物中のポリマーの重量パーセントである:処理率=(油非含有分に基づくポリマーの重量)/(組成物全体の重量)×100%。上記で言及されるように、本明細書におけるポリマーの処理率は、その重合中に使用されるいかなる油またはキャリア流体も存在しないポリマーの固体を指す。
【0136】
本明細書で使用されるとき、「多分散指数」という用語は、「分散度」という用語と同義であり、(重量平均分子量)/(数平均分子量)に等しい。
【0137】
本明細書で使用されるとき、「粘度指数」という用語は、温度の変動に伴う粘度の変化についての任意の尺度である。粘度指数は、式:VI=100*[(L-U)/(L-H)]を用いて計算することができ、式中、
・L=その粘度指数が計算されるべき油と同じ100℃での動粘度を有する0粘度指数の油の40℃での動粘度mm2/s(cSt)、
・H=その粘度指数が計算されるべき油と同じ100℃での動粘度を有する100粘度指数の油の40℃での動粘度mm2/s(cSt)、および
・U=その粘度指数が計算されるべき油の40℃での動粘度mm2/s(cSt)。
【0138】
本明細書における任意のポリ(メタ)アクリレートコポリマーについての重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、Watersから得られるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)機器などの機器、およびWaters Empower Softwareなどのソフトウェアで処理されたデータを用いて決定され得る。GPC機器は、Waters Separations ModuleおよびWaters屈折率検出器(または同様の任意選択的な機器)を装備してもよい。GPC操作条件としては、カラム温度が約40℃のガードカラム、4つのAgilent PLgelカラム(長さ300×7.5mm、粒径5μ、および孔径100~10000Åの範囲)を挙げることができる。安定化されていないHPLCグレードのテトラヒドロフラン(THF)を、1.0mL/分の流速で溶媒として使用してもよい。GPC機器は、960~1,568,000g/モルの範囲の狭い分子量分布を有する市販のポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)基準物質を用いて較正してもよい。500g/モル未満の質量を有する試料の較正曲線を、外挿してもよい。試料およびPMMA基準物質を、THF中に溶解し、0.1~0.5重量%の濃度で調製し、濾過せずに使用することができる。GPC測定はまた、参照により本明細書に組み込まれるUS5,266,223に記載されている。付加的に、GPC方法は、分子量分布情報を提供し、例えばまた、参照により本明細書に組み込まれる、W.W.Yau,J.J.Kirkland and D.D.Bly,“Modern Size Exclusion Liquid Chromatography”,John Wiley and Sons,New York,1979も参照のこと。
【0139】
議論されるように、本明細書における潤滑剤は、電気車両およびハイブリッド電気車両に特に適している。電気車両とは、これらに限定されないが、鉛バッテリー、ニッケル水素バッテリー、リチウムイオンバッテリー、燃料電池などのバッテリーを含み、電気モータを装備したものである。ハイブリッド電気車両とは、バッテリー、電気モータ、および内燃エンジンを組み合わせて採用するものである。本明細書における潤滑剤は、電気モータの部品と接触していてもよく、および/または変速機およびモータの冷却および潤滑の両方に使用され得る。例えば、本明細書における潤滑組成物は、ステータ内の電気巻線と接触し得る。
【0140】
本開示およびその多くの利点のより良い理解は、以下の実施例を用いて明らかにされ得る。以下の実施例は例示的なものであり、範囲または趣旨のいずれにおいてもそれを限定するものではない。当業者であれば、これらの実施例に記載されている構成要素、方法、ステップ、およびデバイスの変形形態を使用できることを容易に理解するであろう。特に明記しない限り、または以下の実施例および本開示を通して考察の文脈から明らかでない限り、本開示に記載するすべての百分率、比、および部は、重量基準である。特に記載のない限り、本明細書および本開示全体を通して記載される例示的なポリマー反応を、一般に、オーバーヘッド撹拌、コンデンサ、温度プローブ、および窒素供給を備えた500mLフラスコ内で実行した。必要に応じて、反応物を、イソマントル(isomantle)を用いて加熱した。
【実施例】
【0141】
比較および本発明の潤滑油組成物を、動粘度、ブルックフィールド粘度、流動点、ならびに電気特性および熱特性の旧来の潤滑特性について評価した。動粘度を、ASTM D445-18tの手順を使用して100℃および40℃で測定した。ブルックフィールド粘度を、ASTM D2983-17に従って-40℃で測定した。流動点を、ASTM D5949-16に従って測定した。電気伝導率を、ASTM D2624-15の手順に従って測定した。熱伝導率を、ASTM D7896-14の手順に従って測定した。
【0142】
一般に、潤滑剤が高性能の電気車両用途およびハイブリッド電気車両用途(変速機など)において機能するためには、流体は低い電気伝導率(例えば、これに限定されないが、75℃で約80,000pS/mを下回るなど)および高い熱伝導率(例えば、80℃で134mW/m*kを上回るなど)を示す必要がある。この実施例において熱伝導率および電気伝導率について評価した温度範囲は、実証のみのために選択した。本開示の流体は、そのような流体に好適な他の温度範囲(例えば、約20℃~約180℃の範囲の温度)で同様の傾向(つまり、低い電気伝導率および高い熱伝導率)も実証するが、所望の値は特定の温度で変化するであろう。
【0143】
以下のエステルおよびポリ(メタ)アクリレートコポリマーを本明細書で試験し:
・分岐ジエステル1(BD1):ビス(8-メチルノニル)ヘキサンジオエートは、酸部分に6個の内部炭素、およびアルコール部分に10個の分岐炭素を有する分岐ジエステルであった。この分岐ジエステルは、3.6cStのKV100、13.9cStのKV40、142.6の粘度指数、231℃の引火点、2959cPの-40℃でのブルックフィールド粘度、および-49℃の流動点を有していた。
・分岐ジエステル2(BD2):ビス(2-エチルヘキシル)デカンジオエートは、酸部分に10個の内部炭素、およびアルコール部分に8個の分岐炭素を有する分岐ジエステルであった。この分岐ジエステルは、3.2cStのKV100、11.5cStのKV40、152.6の粘度指数、202.5の引火点、1450の-40℃でのブルックフィールド粘度、および-51℃の流動点を有していた。
・直鎖モノエステル1(LM1):オクタン酸オクチルは、酸部分に8個の炭素、およびアルコール部分に8個の直鎖炭素を有するモノエステルであった。このモノエステルは、1.3cStのKV100、検出限界を下回るKV40、約113℃超の引火点、粘性が高すぎて測定することができなかった-40℃でのブルックフィールド粘度、-22℃の流動点を有していた。
・分岐ジエステル3(BD3):アジピン酸ジイソブチルは、酸部分に6個の内部炭素、およびアルコール部分に4個の分岐炭素を有する分岐ジエステルであった。この分岐ジエステルは、1.4cStのKV100、検出限界を下回るKV40、130.4の引火点、粘性が高すぎて測定することができなかった-40℃でのブルックフィールド粘度、-39℃の流動点を有していた。
・コポリマー1(CP1):約27,000g/モルの重量平均分子量、約16,000g/モルの数平均分子量、および約1.69の多分散指数を有する低分子量ポリメタクリレートコポリマー。このコポリマーを、約0.3モルパーセントの2.2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)重合開始剤、約1.2モルパーセントのドデシルメルカプタン連鎖移動剤、約30.5モルパーセントのメチルメタクリレート、約63.6モルパーセントのラウリルメタクリレート、および約4.4モルパーセントのN-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミドを使用する従来のフリーラジカル重合によって調製した。CP1の固体ポリマー含有量は、希釈油中で約75.0重量%であった。
・コポリマー2(CP2):約400,000g/モルの重量平均分子量、約126,000g/モルの数平均分子量、および約3.2の多分散指数を有する高分子量ポリメタクリレートコポリマー。このコポリマーを、約0.17モルパーセントの2.2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)重合開始剤、約0.056モルパーセントのドデシルメルカプタン連鎖移動剤、約16.9モルパーセントのn-ブチルメタクリレート、約71.9モルパーセントのラウリルメタクリレート、約4.5モルパーセントのセチル-エイコシルメタクリレート、および約6.4モルパーセントのN-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミドを使用する従来のフリーラジカル重合によって調製した。CP2の固体ポリマー含有量は、希釈油中で約32.0重量%であった。
【0144】
実施例1
上記のエステルおよびコポリマーの潤滑油組成物を、各潤滑剤中に6.9重量パーセントの同一の添加剤パッケージ、および溶媒系中に各種量の鉱物油成分(Phillips 66製のUltra S2、グループIIIの基油)、溶媒系中にエステル成分(モノエステルまたはジエステル)、異なる分子量のコポリマー、ならびに潤滑剤中に溶媒系の総量を使用して調製した。潤滑剤組成物を下記の表2に示し、組成物の評価した特性を表3、ならびに
図1および2に提供する。潤滑剤に使用している溶媒系を表4に示す。
【表2】
【表3】
【表4】
【0145】
本明細書で議論される分岐ジエステルを有する選択された溶媒系と組み合わされた低重量平均分子量コポリマーを有する本発明の潤滑剤ID6および7のみが、高性能の電気用途およびハイブリッド電気用途に好適な低い電気伝導率および高い熱伝導率の両方を達成することができた。潤滑剤ID3および5は比較的低い電気伝導率を有していたが、両方の流体が比較的低い熱伝導率を有しており、したがって、電気車両用途またはハイブリッド電気車両用途に必要な冷却能力を有していない。同様に、潤滑剤ID1は低分子量コポリマーCP1と組み合わせると比較的良好な熱伝導率を有していたが、この流体は本明細書に記載のジエステルを含む選択された溶媒系を使用しておらず、したがって、比較的乏しい電気伝導率(および、低分子量ポリマーを使用する最も悪い電気伝導率)を有していた。
【0146】
特に、潤滑剤ID1~4の溶媒系には分岐ジエステル(BD3)が含まれていたが、本明細書における性能のために発見された選択された内部鎖長および分岐鎖長を有しておらず、したがって、そのような潤滑剤が望ましい電気特性および熱特性を達成しなかったため、これらの比較流体は、ジエステル成分への小さい変化でさえも、電気用途およびハイブリッド用途の観点から、性能を劇的に変化させた。溶媒系ジエステル成分におけるそのような微妙な変化が、本明細書における低分子量ポリ(メタ)アクリレートコポリマーと組み合わせたときに流体特性に大きい影響をもたらすことは予想外であった。
【0147】
実施例2
上記のエステルおよびコポリマーの潤滑油組成物を、合成PAO基油成分を使用して調製した。この実施例では、流体は、各潤滑剤中に6.9重量パーセントの同一の添加剤パッケージ、および溶媒系中に各種量の合成PAO基油成分(Exxon Mobil Chemicals製のSpectraSyn2、グループIVのPAO基油)、溶媒系中にジエステル成分、異なる分子量を有するコポリマー、ならびに潤滑剤中に溶媒系の総量を使用した。潤滑剤組成物を下記の表5に示し、組成物の評価された特性を表6に提供する。潤滑剤に使用している溶媒系を表7に示す。
【表5】
【表6】
【表7】
【0148】
本明細書における選択された溶媒系中にグループIVのPAO基油を使用したときの潤滑剤特性は、実施例1と同様の結果を示した。本明細書で議論される分岐ジエステルを含む選択された溶媒系と組み合わされた低重量平均分子量コポリマーを有する本発明の潤滑剤ID9および10のみが、高性能の電気用途およびハイブリッド電気用途に好適な低い電気伝導率および高い熱伝導率の両方を達成することができた。比較潤滑剤ID8は、比較的乏しい電気伝導率、および比較的乏しい熱伝導率を有していた。
【0149】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されているように、単数形「a」、「an」、および「the」は、明示的かつ明確に1つの指示対象に限定されない限り複数の指示対象を含むことに留意する。したがって、例えば、「抗酸化剤」への言及は、2つ以上の異なる抗酸化剤を含む。本明細書で使用されるとき、「含む」という用語およびその文法的変形は、リスト内の項目の列挙がリストの項目に置換または追加され得る他の同様の項目を除外しないように非限定的であることを意図する。
【0150】
本明細書および添付の特許請求の範囲の目的のために、他に示されない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される量、百分率または割合、および他の数値を表すすべての数字は、すべての場合において「約」という用語によって修飾されると理解される。したがって、そうでないと示されない限り、次の明細書および添付の特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、本開示によって得られることが求められる所望の特性に応じて変動し得る近似値である。最低限、特許請求の範囲の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各々の数値パラメータは少なくとも、報告された有効数字の数の観点からおよび通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。
【0151】
本明細書に開示される各成分、化合物、置換基、またはパラメータは、単独で、または本明細書に開示されるありとあらゆる他の成分、化合物、置換基、もしくはパラメータのうちの1つ以上との組み合わせでの使用について開示されていると解釈されるべきであることを理解されたい。
【0152】
本明細書に開示される各範囲は、同じ有効数字の数を有する開示範囲内の各特定値の開示として解釈されるべきであることをさらに理解されたい。よって、例えば、1~4の範囲は、1、2、3、および4の値の、およびかかる値の任意の範囲の明確な開示として解釈されるべきである。
【0153】
本明細書に開示される各範囲の各下限は、同じ成分、化合物、置換基、またはパラメータについて本明細書に開示される各範囲の各上限および各範囲内の各特定値と組み合わせて開示されると解釈されるべきであることをさらに理解されたい。よって、本開示は、各範囲の各下限を各範囲の各上限と、または各範囲内の各特定値と組み合わせることによって、または各範囲の各上限を各範囲内の各特定値と組み合わせることによって誘導されるすべての範囲の開示として解釈されるべきである。すなわち、広い範囲内の終点値の間の任意の範囲も本明細書において考察されることもまたさらに理解される。したがって、1~4の範囲は、1~3、1~2、2~4、2~3などの範囲をも意味する。
【0154】
さらに、説明または実施例において開示される成分、化合物、置換基、またはパラメータの特定量/値は、範囲の下限または上限のいずれかの開示として解釈されるべきであり、よって、本出願の他の個所で開示される同じ成分、化合物、置換基、またはパラメータについての範囲または特定量/値の任意の他の下限または上限と組み合わせて、その成分、化合物、置換基、またはパラメータについての範囲を形成することができる。
【0155】
特定の実施形態について説明してきたが、出願人らまたは他の当業者にとって現在予想されていない、または現在予想することができない代替、修正、変形、改善、および実質的な同等物が現れ得る。したがって、出願された、修正され得る添付の特許請求の範囲は、かかるすべての代替、修正、変形、改善、および実質的な同等物を包含することを意図している。