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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】酸素濃縮装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/10 20060101AFI20230228BHJP
【FI】
A61M16/10 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022510641
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2021012447
(87)【国際公開番号】W WO2021193791
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2021-10-29
(31)【優先権主張番号】P 2020058147
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503369495
【氏名又は名称】帝人ファーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】平井 裕一
(72)【発明者】
【氏名】村本 明信
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-136134(JP,A)
【文献】特開2006-232632(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0361052(US,A1)
【文献】特開2006-166996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素よりも窒素を選択的に吸着する吸着剤を充填し、加圧空気中の酸素を分離生成する吸着筒と、加圧空気を供給するコンプレッサ、吸着工程、脱着工程の流路を切り替える流路切替手段を備えた圧力変動吸着型酸素濃縮装置において、
該吸着筒が交換可能なカートリッジ式吸着筒であり、該吸着筒の一方が吸着工程で酸素を生成している時に他方の吸着筒が窒素を脱着再生する脱着工程を実施する2本の吸着筒と、吸着筒のガス流れ方向に対して直角方向に、各吸着筒に加圧空気を供給する2本の流路および原料空気供給端部を有する吸着筒固定台を備え、両者を一体化した状態で固定したものであること、
コンプレッサから流路切替手段を介して加圧空気を供給する配管ノズルと、該カートリッジ式吸着筒の原料空気供給端部が着脱可能に嵌合する接続機構を形成し、加圧空気を供給する2つの配管ノズルが一体成型された配管ノズルを備え、一体成型された配管ノズルと原料空気供給端部の凹部とが嵌合接続された状態で、配管ノズルと酸素濃縮装置のケーシングとを固定する固定具を有すること、
該固定具が、一体成型された配管ノズルの両端で回転可能に接続固定され、ケーシングの底面に着脱可能にネジ止めする接続部を有することを特徴とする、酸素濃縮装置。
【請求項2】
酸素よりも窒素を選択的に吸着する吸着剤を充填し、加圧空気中の酸素を分離生成する吸着筒と、加圧空気を供給するコンプレッサ、吸着工程、脱着工程の流路を切り替える流路切替手段を備えた圧力変動吸着型酸素濃縮装置において、
該吸着筒が交換可能なカートリッジ式吸着筒であり、吸着筒の一方が吸着工程で酸素を生成している時に他方の吸着筒が窒素を脱着再生する脱着工程を実施する2本の吸着筒と、吸着筒のガス流れ方向に対して直角方向に、各吸着筒から生成された酸素を取り出す2本の流路および酸素取り出し端部を有する吸着筒固定台を備え、両者を一体化した状態で固定したものであること、
吸着筒で生成された酸素を使用者供給手段側に供給する酸素取り出し端ノズルと、該カートリッジ式吸着筒の酸素取り出し端部が着脱可能に嵌合する接続機構を形成し、2つの酸素取り出し端ノズルが一体成型されたノズルを備え、一体成型された酸素取り出し端ノズルと酸素取り出し端部の凹部とが嵌合接続された状態でノズルと酸素濃縮装置のケーシングとを固定する固定具を有すること、
該固定具が、一体成型された2つの酸素取り出し端ノズルの両端で回転可能に接続固定され、ケーシングの底面に着脱可能にネジ止めする接続部を有すること特徴とする、酸素濃縮装置。
【請求項3】
該固定台の原料空気供給端部の凹部にOリングを備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の酸素濃縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中の窒素を吸着剤で吸着することにより酸素を濃縮し、使用者に供給する酸素濃縮装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、肺気腫、肺結核後遺症や慢性気管支炎などの慢性呼吸器疾患に苦しむ患者が増加する傾向にあるが、かかる患者に対する治療方法として、高濃度酸素を吸入させる酸素吸入療法が行われている。酸素吸入療法とは前記疾病患者に対して酸素ガス若しくは酸素濃縮気体を吸入させる治療法である。治療用の酸素ガス又は濃縮酸素気体の供給源としては、高圧酸素ボンベ、液体酸素ボンベ、酸素濃縮装置等の使用が挙げられるが、長時間の連続使用に耐えることができ、また使い勝手が良いなどの理由により、酸素濃縮装置を使用するケースが増加している。
【0003】
特に空気中の酸素を分離し製品ガスとして供給する圧力変動吸着型酸素濃縮装置が実用化され、医療用酸素濃縮装置として慢性呼吸器疾患患者の治療に使用されている。最近では、外出時の酸素ボンベの持ち運びに代り、バッテリ駆動可能な携帯式酸素濃縮装置が開発され、その用途が拡大している。一般家庭での酸素濃縮装置の使用が拡大する中、これら携帯用の装置には、小型、軽量、安価であることや、組み立てやメンテナンスが容易であることが求められる。
【0004】
酸素濃縮装置では、吸着剤の吸湿劣化等の経時変化により吸着筒の窒素吸着性能が低下し、酸素生成能の低下が生じる。吸着剤の交換作業は機器のオーバーホール時以外には対処する事が困難であるため、吸着剤を充填した吸着筒ごと交換するカートリッジ式吸着筒を備えた酸素濃縮装置が開発された。メンテナンス時には、交換部品であるカートリッジ式の吸着筒の、吸着筒の継手部分と酸素濃縮装置本体の流路とを嵌合接合される際に、継手先端部のフランジを板金裏面に当接させ架台上にネジ止めする方法が開示されている(特許文献1)。また、着脱作業が更に簡便なカートリッジ式の吸着筒を採用することで、吸湿劣化した吸着筒を使用者自身で交換することが可能な装置も開発されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-119763号公報
【文献】米国特許出願公開2012/0266883号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
圧力変動吸着型酸素濃縮装置は、2つの吸着筒の一方の吸着筒に対してコンプレッサから加圧空気を供給し、加圧条件下で窒素を吸着除去し未吸着の酸素を取り出す吸着工程と、他方の吸着筒を大気開放し窒素を脱着除去し吸着剤を再生する脱着工程とを順次切り替えることで連続して酸素を生成する。コンプレッサや2つの吸着筒、生成した酸素を貯留する製品タンクと、原料空気供給路、酸素を取り出し使用者に供給する酸素供給流路、吸着剤に吸着した窒素を脱着排気する排気流路、吸着筒間を均圧する均圧流路、パージ流路などの流路を、流路切替手段である電磁弁を介して接続し、各流路の電磁弁を切り替え制御することで90%以上の高濃度酸素を空気中から分離し供給することができる。
【0007】
かかる酸素濃縮装置は、ゼオライトなどの窒素吸着剤を用いて空気中の窒素を吸着除去し未吸着の酸素を生成すると共に、窒素を脱着除去し再生して使用するが、空気中に含まれる水分が吸着剤の吸着した場合には脱着除去が出来ず、経時劣化を引きこす。このため、オーバーホール時には吸着剤の交換が必要となる。特許文献1に記載のようなネジと一体となった固定部品を用いた固定方法を用いた場合はメンテナンス性が悪く、使用者自身での交換作業はできない。
【0008】
特許文献2に記載のような使用者自身が簡易に交換可能なカートリッジ式吸着筒を用いた酸素濃縮装置では、酸素濃縮装置本体の吸着筒収納スペースに吸着筒カートリッジを押し込むことにより、酸素濃縮装置の流路と吸着筒が接続される。吸着筒の軸方向に押し込むタイプの場合は、吸着筒の先端部中央の接続口と他端部側の接続口を吸着筒中央から吸着筒周囲部の位置に先端部と同一方向に平行に設け、カートリッジを収納スペースに押し込むことによって吸着筒の両端が同時に本体の流路と接続される。また、吸着筒両端部の軸と直角方向に接続口が設けられているタイプの場合には、吸着筒カートリッジを酸素濃縮装置本体の収納部に対して、横方向から押し込むことで、吸着筒の両端部が同時に本体の流路と接続される。
【0009】
かかるカートリッジ式の吸着筒は、接続も離脱も簡易にできる必要があることから接続部は固定されていない。いずれの方式でも加圧時には、吸着筒の両端部にはカートリッジが外れる方向に力がかかることから、別途、カートリッジを酸素濃縮装置に固定するストッパーを設ける必要がある。酸素濃縮装置の使用者が確実にかかるストッパー操作が出来るかどうかが課題となり、カートリッジが固定されずに接続不十分な状態で酸素濃縮装置を使用すると、酸素漏れや酸素濃縮度の低下を招くなど、安全性に課題を残すことになる。
【0010】
吸着筒と酸素能濃縮装置本体との流路接続に着脱容易なワンタッチ継手を用いた場合には、吸着筒の両端部周囲に着脱作業用のスペースが必要となり、装着の確実性の確保と、装置の小型化という相反要求に対して、課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、酸素濃縮器本体からカートリッジ式吸着筒にかかる脱離方向の力を低減し、酸素濃縮装置との接続を確実にするととともに、吸着筒の装着、脱着など交換作業を容易かつ確実に行うことが出来る装置を提供するものである。
【0012】
本発明は、酸素よりも窒素を選択的に吸着する吸着剤を充填し、加圧空気中の酸素を分離生成する吸着筒と、加圧空気を供給するコンプレッサ、吸着工程、脱着工程の流路を切り替える流路切替手段を備えた圧力変動吸着型酸素濃縮装置において、該吸着筒が交換可能なカートリッジ式吸着筒であり、吸着筒のガス流れ方向である軸線と吸着筒への加圧空気供給端部又は吸着筒からの酸素取り出し端部の何れか一方の接続軸とが交差している酸素濃縮装置を提供する。
【0013】
また本発明は、該カートリッジ式吸着筒が、吸着筒の一方が吸着工程で酸素を生成している時に他方の吸着筒が窒素を脱着再生する脱着工程を実施する2本の吸着筒と、吸着筒のガス流れ方向に対して直角方向に、各吸着筒に加圧空気を供給する2本の流路および原料空気供給端部を有する吸着筒固定台を備え、両者を一体化した状態で固定したものであることを特徴とし、コンプレッサから流路切替手段を介して加圧空気を供給する配管ノズルと、該カートリッジ式吸着筒の原料空気供給端部が着脱可能に嵌合する接続機構を形成し、該吸着筒固定台の原料空気供給端部の凹部にOリングを備えること、加圧空気を供給する2つの配管ノズルが一体成型されたノズルを備え、一体成型された配管ノズルと原料空気供給端部とが嵌合接続された状態でノズルと酸素濃縮装置のケーシングとを固定する固定具を有することを特徴とする酸素濃縮装置を提供する。
【0014】
また本発明は、該カートリッジ式吸着筒が、吸着筒の一方が吸着工程で酸素を生成している時に他方の吸着筒が窒素を脱着再生する脱着工程を実施する2本の吸着筒と、吸着筒のガス流れ方向に対して直角方向に、各吸着筒から生成された酸素を取り出す2本の流路および酸素取り出し端部を有する吸着筒固定台を備え、両者を一体化した状態で固定したものであることを特徴とし、吸着筒で生成された酸素を使用者供給手段側に供給する酸素取り出し端ノズルと、該カートリッジ式吸着筒の酸素取り出し端部が着脱可能に嵌合する接続機構を形成し、該吸着筒固定台の酸素取り出し端部の凹部にOリングを備えること、2つの酸素取り出し端ノズルが一体成型されたノズルを備え、酸素取り出し端ノズルと酸素取り出し端部とが嵌合接続された状態でノズルと酸素濃縮装置のケーシングとを固定する固定具を有することを特徴とする酸素濃縮装置を提供する。
【0015】
また本発明は、該固定具が、一体成型された2つの配管ノズルの両端で回転可能に接続固定され、酸素濃縮装置のケーシングの底面に着脱可能にネジ止めする接続部を有すること、或いは、該固定具が、一体成型された2つの酸素取り出し端ノズルの両端で回転可能に接続固定され、酸素濃縮装置のケーシングの底面に着脱可能にネジ止めする接続部を有することを特徴とする酸素濃縮装置を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の酸素濃縮装置では、吸湿劣化し酸素生成能力が低下した吸着筒を使用者自身の手で簡単に交換することができ、接続部からの酸素漏れなどを引き起こすことなくガスシールを維持した状態で確実に吸着筒のカートリッジを酸素濃縮装置本体に装着することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の酸素濃縮装置の概略装置構成図を示す。
図2】本発明のカートリッジ式吸着筒を装着した酸素濃縮装置の底面図を示す。
図3】本発明の酸素濃縮装置に使用するカートリッジ式吸着筒の外観図。
図4】カートリッジ式吸着筒の着脱方法を示す底面斜視図を示す。
図5】カートリッジ式吸着筒の着脱方法を示す底面斜視図を示す。
図6】カートリッジ式吸着筒の着脱方法を示す底面斜視図を示す。
図7】カートリッジ式吸着筒の着脱方法を示す底面斜視図を示す。
図8】カートリッジ式吸着筒の着脱方法を示す底面斜視図を示す。
図9】吸着筒と配管ノズル、固定具の形状を示す断面図を示す。
図10】吸着筒と配管ノズルとの接続、固定具の固定方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の酸素濃縮装置の実施態様例を、図面を用いて説明する。
図1は本発明の一実施態様例である圧力変動吸着型の酸素濃縮装置を例示した概略装置構成図である。本発明の酸素濃縮装置は、加圧空気を供給するコンプレッサ102、酸素よりも窒素を選択的に吸着する吸着剤を充填した吸着筒A107,吸着筒B108、吸着工程、脱着工程や均圧工程等のシーケンスを切り換える流路切替手段である供給弁A103,供給弁B104、排気弁A105,排気弁B106、均圧弁109を備える。加圧空気から分離生成された酸素濃縮ガスは、コントロールバルブ113で所定流量に調整後、カニューラ116を用いて使用者に供給される。
【0019】
先ず、外部から取り込まれる原料空気は、塵埃などの異物を取り除くための外部空気取り込みフィルタ101等などを備えた空気取り込み口から装置内に取り込まれる。このとき、通常の空気中には、約21%の酸素ガス、約77%の窒素ガス、0.8%のアルゴンガス、二酸化炭素ほかのガスが1.2%含まれている。かかる装置では、呼吸用ガスとして必要な酸素ガスのみを濃縮して取り出す。
【0020】
酸素濃縮ガスの取り出しは、酸素分子よりも窒素分子を選択的に吸着するゼオライトなどからなる吸着剤が充填された吸着筒に対して、供給弁A,B、排気弁A,Bによって対象とする吸着筒A,Bを順次切り換えながら、原料空気をコンプレッサにより加圧して供給し、吸着筒内で原料空気中に含まれる約77%の窒素ガスを選択的に吸着除去することにより行われる。かかる吸着剤としては、5A型、13X型、Li-X型等のモレキュラーシーブゼオライト等が用いることができる。
【0021】
前記の吸着筒は、吸着剤を充填した円筒状容器で形成され、通常、1筒式、2筒式の他に3筒以上の多筒式が用いられるが、連続的かつ効率的に原料空気から酸素濃縮ガスを製造するためには、2筒式や多筒式の吸着筒を使用することが好ましい。また、前記のコンプレッサとしては、圧縮機能のみ、或いは圧縮、真空機能を有するコンプレッサとして2ヘッドのタイプの揺動型空気圧縮機が用いられるほか、スクリュー式、ロータリー式、スクロール式などの回転型空気圧縮機が用いられる場合もある。また、このコンプレッサを駆動する電動機の電源は、交流であっても直流であってもよい。
【0022】
加圧状態の吸着筒内で空気中の窒素ガスを吸着剤に吸着させ、吸着されなかった酸素を主成分とする酸素濃縮ガスが吸着筒の製品端から取り出され、吸着筒へ逆流しないように設けられた逆止弁を介して、製品タンクに流入する。一方、吸着筒内に充填された吸着剤に吸着された窒素ガスは、新たに導入される原料空気から再度窒素ガスを吸着するために、吸着剤から脱着させパージする必要がある。このために吸着筒を、排気弁を介して排気ラインに接続し、加圧状態から大気開放状態に切り換え、加圧状態で吸着されていた窒素ガスを脱着させて大気中に排気し吸着剤を再生させる。さらにこの脱着工程において、窒素の脱着効率を高めるため、均圧弁を介して吸着工程中の吸着筒の製品端側から生成された酸素濃縮ガスの一部をパージガスとして脱着工程中の吸着筒に逆流させるパージ工程を行う。
【0023】
製品タンク111に蓄えられた酸素濃縮ガスは、例えば95%といった高濃度の酸素ガスを含んでおり、医師の処方によって必要とされる酸素流量を患者自身が設定する。調圧弁112、コントロールバルブ113等の流量調整手段によってその供給流量と圧力が制御され、処方量の酸素濃縮ガスが患者に供給される。一方、患者に供給される酸素濃縮ガスの流量及び酸素濃度は酸素濃度センサ、流量センサ114で検知され、検知結果に基づいてコンプレッサの回転数や流路切換弁の開閉時間をCPU等の演算手段117で制御し、酸素生成をコントロールしている。
【0024】
2筒式の圧力変動吸着型の酸素濃縮装置では、一方の吸着筒A107が吸着工程を行っている場合は、他方の吸着筒B108では脱着工程を行い、供給弁A103,供給弁B104、排気弁A105,排気弁B106及び均圧弁109の開閉を制御することにより、吸着工程、脱着工程を各々逆位相の形で順次切り換え、酸素を連続的に生成している。再生効率を上げる為、吸着工程で生成した酸素の一部を、均圧弁109を介して脱着工程側吸着筒に流すパージ工程(パージ生成工程、パージ排気工程)、を組み込み、一方の吸着筒A107について吸着工程、パージ生成工程、脱着工程、パージ排気工程を、他方の吸着筒B108について脱着工程、パージ排気工程、吸着工程、パージ生成工程を交互に切り換える定常シーケンスを行うことにより、効率的に酸素を生成することが出来る。かかる切り換え流路は、吸着筒原料端側の供給弁A,B、排気弁A,Bの電磁弁切り換えにより、吸着筒A,Bへの供給、吸着筒からの窒素排気を行うと共に、吸着筒製品端側の逆止弁110、均圧弁109の開閉制御により吸着筒から製品タンク111への酸素取り出し、吸着筒のパージを制御しており、マニホールド成形体122,123により複雑な配管をマニホールド化することで流路を集約することが出来る。
【0025】
吸着筒は、吸着筒原料供給端に設けられた継手と酸素濃縮装置本体の加圧空気が供給し、または窒素排気するための流路切替弁側の配管継手とを嵌合挿入することにより接続し、吸着筒製品端に設けられた継手と、製品酸素ガスを取り出す配管継手とを嵌合挿入することにより接続される。
【0026】
通常、吸着筒の両端の中心軸線上に継手が設けられ、配管継手と嵌合挿入して固定される。吸着筒の交換作業を容易にするためには、吸着筒カートリッジを押込み操作だけで装着する場合、吸着筒の一端中央の継手と、他端部から流路を折り返して吸着筒の空気流れと平行になる様に継手を設けた縦押込みタイプと、吸着筒の両端部側面に吸着筒の流路流れの垂直方向に流路継手を設けた横押込みタイプの吸着筒を採用することが出来る。しかし、何れのタイプの吸着筒も酸素濃縮装置本体から離脱する方向に常に圧力がかかり、酸素濃縮装置本体と吸着筒とを確実に固定する必要がある。
【0027】
一方、酸素濃縮装置本体と吸着筒の両端部のそれぞれをネジ止め等で固定すると交換作業が困難となる。接続部にロック手段を設けた場合でも、吸着筒を交換する際にはロック解除する必要が生じ、ワンタッチ継手などの簡易ロック手段を採用したとしてもロック解除する際には、交換作業スペース確保の為に本体カバーを外すなどの必要が生じる。
【0028】
また、吸着筒を酸素濃縮装置本体と分離可能にする場合、本体流路と吸着筒との嵌合部には接続部分からのガス漏れを防止するために、Oリング、もしくはガスケットによるシールの必要性が生じる。Oリングやガスケットはゴム製であり、温度や経時変化により接触体に固着してしまうことが知られている。シール部分は吸着筒A、Bの両端側に有し、吸着筒の交換目的でこれらを一度に引き離そうとすると、固着状態によっては簡易交換が困難となる荷重が生じる可能性がある。
【0029】
本発明の酸素濃縮装置に使用する吸着筒は、図3に示すように交換可能なカートリッジ式吸着筒であり、矢印で示す様に、吸着筒内のガス流れ方向である軸線と吸着筒への加圧空気供給端部又は吸着筒からの酸素取り出し端部の何れか一方の接続軸とが交差している。これにより吸着筒両端のシール部を一度に外すことがなくなるため、Oリングやガスケットの固着による引き剥がし荷重が低減する。ガス流れ軸と吸着筒の両端が同軸上に位置した状態で、シール部の固着荷重を低減させようとした場合は、シール部を端部ごとに外すこととなる。これは吸着筒を一体したカートリッジで行うことは困難となるため、メンテナンス性が悪くなる。
【0030】
吸着筒のガス流れ方向である軸線を鉛直方向とした場合、吸着筒への原料空気供給端部又は吸着筒からの酸素取り出し端部は横方向に接続することになり、接続軸との交差角度は90±30度、好ましくは90±10度の範囲とするのが良い。かかる交差角度は、横方向から吸着筒の加圧空気供給端部等に接続することが可能であればよく、通常は90度とするが、設計可能な角度の範囲を含むものである。
【0031】
2筒式酸素濃縮装置では、吸着筒の酸素取り出し端5に酸素取り出し端ノズル6を備えた2本の吸着筒7,8と、吸着筒のガス流れ方向に対して垂直方向に、各吸着筒に加圧空気を供給する2本の流路およびその原料空気供給端凹部9を有する固定台2、とを備え、各吸着筒と固定台とを一体化したカートリッジ式吸着筒を有する。また、一端に原料空気供給端部を備えた2本の吸着筒と、吸着筒のガス流れ方向に対して垂直方向に、各吸着筒から酸素を取り出す2本の流路およびその酸素取り出し端部を有する固定台とを備え、各吸着筒と固定台とを一体化したカートリッジ式吸着筒を用いることもできる。加圧空気供給端部と酸素取り出し端部の配置は、設計によりどちらでも採用可能であるが、吸着筒の流路流れ軸と垂直方向となる端部が交換時に容易にアクセスできる側にある方が、交換作業性や、本体と吸着筒の嵌合部の視認性の観点から好ましい。
【0032】
カートリッジ式吸着筒と酸素濃縮装置本体との接続は、コンプレッサから流路切替手段を介して供給される加圧空気の配管ノズルと、カートリッジ式吸着筒の原料空気供給端部とが着脱可能に嵌合する接続機構を形成した場合には、吸着筒の固定台2の原料空気供給端凹部9にOリング13を備える。ガスシールを維持する為のOリングは必ずカートリッジ式吸着筒側に設置し、交換時にはOリングも交換する。本体側の接続ノズルにOリングを設けた場合には、吸着筒交換時にOリングが外れる可能性や交換時にOリングが傷付くことでのシール不良の原因となる可能性があり、Oリングなしの状態で新たなカートリッジ式吸着筒を接続するという、付け忘れリスクがある為、好ましくない。かかる例では酸素濃縮装置本体側の加圧空気供給端を、ノズルを用いた凸形状とし、カートリッジ式吸着筒の固定台の原料空気供給端をノズルが嵌合する凹部形状としたが、凹凸を逆にした接続部の設計としてもよい。
【0033】
図3に示すカートリッジ式吸着筒を装着した状態の酸素濃縮装置の底面図を図2に、カートリッジ式吸着筒の着脱方法を図4図8に示す。
2つの吸着筒7,8の各々に原料空気を供給する2つの配管ノズルは、接続を容易にするために、図5に示すように一体成型された原料空気供給端ノズル10とし、この2つの配管ノズルと2つの原料空気供給端凹部9とを1つの動作で嵌合接続するようにする。そのままでは接続部がコンプレッサや吸着筒からの圧力により緩んでしまうため、これを防ぐ目的で、一体成型された原料空気供給端ノズル10と酸素濃縮装置のケーシングとを固定する固定具3を備え、完全にノズルが接続された状態でピン止めやネジ止めを行い、もしくはフック等で固定するのが好ましい。接続部が緩んだ状態ではネジ止め等の固定穴の位置が一致しないために、固定具で固定することができないため、確実な接合を行うことが出来る。
【0034】
図4は酸素濃縮装置の吸着筒を取り外した状態での底面部の斜視図であり、底部側に備えた酸素濃縮装置駆動用のバッテリやカバー等を取り外した状態を示している。酸素濃縮装置の底面側には、吸着筒を収納する為のケーシング部分16を備える。
【0035】
図5図6に示すように、図3に示すカートリッジ式吸着筒の吸着筒先端の酸素取り出し端ノズル6を酸素濃縮装置の吸着筒のケーシング部分16に向けて挿入し、押し込む。これにより、吸着筒の酸素取り出し端部が、酸素濃縮装置のケーシング凹部に備えられた製品タンク側の流路に繋がる。次いで、図7に示すように、コンプレッサ側から原料空気を供給する配管の先端の2つのノズルを一体化した原料空気供給端ノズル10に回動可能に取り付けられた金属板製の固定具3を摘まみながら吸着筒の接続口である原料空気供給端凹部9にノズルを差し込み、押し込んで接続する。
【0036】
次いで、図8に示すように、金属板製の固定具3に設けたネジ4を、吸着筒カートリッジの固定台底面穴12を介しながら、酸素濃縮装置本体のケーシングの底面のネジ穴18にネジ止めする。この際、吸着筒と酸素濃縮装置本体の配管接続が不十分な場合には、所定位置にネジ穴18が来ないためにネジ止めができないことから、接続状態を交換者が容易に判断することができる。そして再度完全な位置まで吸着筒や配管ノズルを押し込むことで、ネジ止めする事が出来る。これにより原料供給ガス漏れや、圧力不足による酸素濃度低下などの不具合を防止することが出来る。
【0037】
カートリッジ式吸着筒を取り外す方法は、上記の逆の動作を行うことで酸素濃縮装置本体から吸着筒を容易に取り外すことが出来る。
【0038】
図9にカートリッジ式吸着筒と配管ノズルとの接続部分の断面構成図、図10に固定具による配管ノズルの固定方法を示す断面図を示す。図10の(A)に示すように、一体型の原料空気供給端ノズル10の側面に回動可能に取り付けられた金属板製の固定具3を持ちながら配管ノズルを吸着筒カートリッジの原料空気供給端凹部9に接続する。(B)に示すように、原料空気供給端ノズル10は原料空気供給端凹部9の内側に備えるOリング13でシールされる。これにより原料空気を供給する配管ノズルと吸着筒との配管接続が完了する。次に(C)に示すように、固定具3を回転させながら吸着筒カートリッジの底面を覆うように酸素濃縮装置の底面ケーシングのネジ穴18に押し付けて、ネジ止めする。配管ノズルと吸着筒の接続が不十分であれば、ネジ穴の位置が一致せず、(D)に示すように、さらに配管ノズルを原料空気供給端凹部に押し込むことで所定のネジ穴にネジが嵌ることで吸着筒を固定することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の酸素濃縮装置は、使用者自身が簡単かつ確実に吸着筒を交換することが出来ることから、メンテナンス業務の軽減、コスト削減に寄与する。
【符号の説明】
【0040】
1 酸素濃縮装置本体の底面
2 カートリッジ式吸着筒の固定台
3 金属板製の固定具
4 ネジ
5 カートリッジ式吸着筒の酸素取り出し端部
6 カートリッジ式吸着筒の酸素取り出し端ノズル
7 吸着筒A
8 吸着筒B
9 原料空気供給端凹部
10 酸素濃縮装置本体の原料空気を供給する配管ノズル
11 取っ手
12 吸着筒カートリッジの固定台底面穴
13 Oリング
14 カートリッジ式吸着筒の原料空気流路
15 酸素濃縮装置本体の原料空気を供給する配管ノズルの原料空気流路
16 吸着筒
17 カートリッジ式吸着筒収納部
18 ネジ穴
101 吸気フィルタ
102 コンプレッサ
103 供給弁A
104 供給弁B
105 排気弁A
106 排気弁B
107 吸着筒A
108 吸着筒B
109 均圧弁
110 逆止弁
111 製品タンク
112 調圧弁
113 CV
114 酸素濃度/流量センサ
115 フィルタ
116 カニューラ
117 CPU
118 温度センサ
119 流量設定部
120 圧力センサ
121 冷却ファン
122 マニホールド成形体
123 マニホールド成形体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10