(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】浸漬コーティングプロセスにおいてゴム物品を製造するために使用されるポリマー/無機複合粒子配合物及び該配合物を使用するゴム物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20230228BHJP
C08K 3/00 20180101ALI20230228BHJP
C08L 33/02 20060101ALI20230228BHJP
C08J 3/02 20060101ALI20230228BHJP
C08J 5/02 20060101ALI20230228BHJP
B29C 41/14 20060101ALI20230228BHJP
B29C 41/36 20060101ALI20230228BHJP
A41D 19/00 20060101ALN20230228BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K3/00
C08L33/02
C08J3/02 B CEQ
C08J5/02
B29C41/14
B29C41/36
A41D19/00 P
(21)【出願番号】P 2022526443
(86)(22)【出願日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 MY2020000008
(87)【国際公開番号】W WO2021091366
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-07-08
(31)【優先権主張番号】PI2019006533
(32)【優先日】2019-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】MY
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510112981
【氏名又は名称】コッサン エスディーエヌ.ビーエイチディー.
【氏名又は名称原語表記】KOSSAN SDN.BHD.
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オン,エン ロン
(72)【発明者】
【氏名】ウィスバー,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】リム,シアウ ティアン
(72)【発明者】
【氏名】ソー,シアウ チアン
(72)【発明者】
【氏名】ガン,シュウ ペン
(72)【発明者】
【氏名】アファンディ,ヌルル アシキン
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-123306(JP,A)
【文献】国際公開第2010/098008(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/046391(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08K,C08J,B29C,A41D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸漬コーティングプロセスにおいてゴム物品を製造するために使用されるポリマー/無機複合粒子配合物であって、
a)乾燥体積で30.00~67.00%の濃度のポリマー分散液、
b)乾燥体積で15.00~65.00%の濃度の無機粒子、
c)0.30~3.00重量%の濃度のpH調整剤、及び
d)0.25~5.00重量%の濃度であって、50,000~3,000,000g/モルの分子量を有するポリカルボン酸又はポリカルボン酸塩である分散剤を含み、
前記ポリマー分散液中の粒子及び前記無機材料の粒子は安定化され、複合粒子を形成する、配合物。
【請求項2】
前記ポリマー分散液は、カルボキシル化ラテックス又は非カルボキシル化ラテックスである、請求項1に記載の配合物。
【請求項3】
請求項1に記載の前記ポリマー/無機複合粒子配合物から単層ゴム物品を製造する方法であって、
a)フォーマーを、0.10~2.00重量%の濃度の湿潤剤、0.50~30.00重量%の濃度の多価金属塩、及び0.10~5.00重量%の濃度の離型添加剤を含む第1の配合物と接触させる工程、
b)工程(a)の前記フォーマーを乾燥する工程、
c)工程(b)の前記フォーマーを、前記ポリマー/無機複合粒子配合物と接触させ、それによって前記フォーマーに前記ポリマー/無機複合粒子配合物を凝固させ、前記フォーマーにポリマー/無機複合膜を堆積する工程、
d)前記堆積したポリマー/無機複合膜を硬化する工程、及び
e)前記フォーマーから前記ポリマー/無機複合膜を剥離して、単層ゴム物品を形成する工程を含む、方法。
【請求項4】
工程(d)の前記ポリマー/無機複合膜を硬化する前に、工程(c)の前記フォーマーを乾燥する工程を導入する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリマー分散液は、カルボキシル化ラテックス又は非カルボキシル化ラテックスである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
請求項1に記載の前記ポリマー/無機複合粒子配合物から多層ゴム物品を製造する方法であって、
a)フォーマーを、0.10~2.00重量%の濃度の湿潤剤、0.50~30.00重量%の濃度の多価金属塩、及び0.10~5.00重量%の濃度の離型添加剤を含む第2の配合物と接触させる工程、
b)工程(a)の前記フォーマーを乾燥する工程、
c)工程(b)の前記フォーマーを、ラテックス配合物と接触させ、それによって前記フォーマーにラテックスを凝固させ、前記フォーマーにラテックスの膜を堆積する工程、
d)工程(c)の前記フォーマーを、0.10~2.00重量%の濃度の湿潤剤及び0.10~30.00重量%の濃度の多価金属塩を含む第3の配合物と接触させる工程、
e)工程(d)の前記フォーマーを、前記ポリマー/無機複合粒子配合物と接触させ、それによって前記フォーマーに前記ポリマー/無機複合粒子配合物を凝固させ、前記フォーマーに前記ポリマー/無機複合膜を堆積する工程、
f)工程(e)の前記フォーマーを前記第3の配合物と接触させる工程、
g)工程(f)の前記フォーマーを、前記ラテックス配合物と接触させ、それによって前記フォーマーにラテックスを凝固させ、前記フォーマーにラテックスの膜を堆積する工程、
h)前記堆積した膜を硬化する工程、
i)前記フォーマーから前記堆積した膜を剥離して、多層ゴム物品を形成する工程を含む、方法。
【請求項7】
工程(e)の前記フォーマーを、工程(f)の前に5回以下、前記ポリマー/無機複合粒子配合物と繰り返し接触させ、その後、前記フォーマーを前記第3の配合物と接触させ、それによって、前記フォーマーに前記ポリマー/無機複合粒子配合物を凝固させ、前記フォーマーにポリマー/無機複合膜を堆積する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程(g)の前記フォーマーを、前記多層ゴム物品を形成する前、前記ラテックス配合物と5回以下、繰り返し接触させ、それによって前記フォーマーのラテックスを凝固させ、前記フォーマーにラテックスの膜を堆積する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
工程(c)の前記フォーマーを乾燥する工程は、工程(c)の前記フォーマーを工程(d)の第3の配合物と接触させる前に導入される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
工程(d)の前記フォーマーを乾燥する工程は、工程(d)の前記フォーマーを工程(e)の前記ポリマー/無機複合粒子配合物と接触させる前に導入される、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
工程(e)の前記フォーマーを乾燥する工程は、工程(e)の前記フォーマーを工程(f)の前記第3の配合物と接触させる前に導入される、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
工程(f)の前記フォーマーを乾燥する工程は、工程(f)の前記フォーマーを工程(g)の前記ラテックス配合物と接触させる前に導入される、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
工程(g)の前記フォーマーを乾燥する工程は、工程(h)の前記ポリマー/無機複合膜を硬化する前に導入される、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリマー分散液は、カルボキシル化ラテックス又は非カルボキシル化ラテックスである、請求項6に記載の方法。
【請求項15】
請求項1に記載の前記ポリマー/無機複合粒子配合物から多層ゴム物品を製造する方法であって、
a)フォーマーを、0.10~2.00重量%の濃度の湿潤剤、0.50~30.00重量%の濃度の多価金属塩、及び0.10~5.00重量%の濃度の離型添加剤を含む第2の配合物と接触させる工程、
b)工程(a)の前記フォーマーを乾燥する工程、
c)前記フォーマーを、ラテックス配合物と接触させ、それによって前記フォーマーにラテックスを凝固させ、前記フォーマーにラテックスの膜を堆積する工程、
d)前記フォーマーを、0.10~2.00重量%の濃度の湿潤剤及び0.10~30.00重量%の濃度の多価金属塩を含む第3の配合物と接触させる工程、
e)前記フォーマーを、前記ポリマー/無機複合粒子配合物と接触させ、それによって前記フォーマーに前記ポリマー/無機複合粒子配合物を凝固させ、前記フォーマーにポリマー/無機複合膜を堆積する工程、
f)工程(d)の前記フォーマーを、ラテックス配合物と接触させ、それによって前記フォーマーにラテックスを凝固させ、前記フォーマーにラテックスの膜を堆積する工程、
g)前記堆積した膜を硬化する工程、及び
h)前記フォーマーから前記堆積した膜を剥離して、多層ゴム物品を形成する工程を含む、方法。
【請求項16】
工程(c)の前記フォーマーを、工程(d)の前に5回以下、前記ラテックス配合物と繰り返し接触させ、それによって前記フォーマーにラテックスを凝固して、前記フォーマーにラテックスの膜を堆積する、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
工程(e)の前記フォーマーを、前記多層ゴム物品を形成する前に、前記ポリマー/無機複合粒子配合物と5回以下繰り返し接触させ、それによって、前記フォーマーに前記ポリマー/無機複合粒子配合物を凝固させ、前記フォーマーに前記ポリマー/無機複合膜を堆積する、請求項
15に記載の方法。
【請求項18】
工程(f)の前記フォーマーを、工程(
g)の前に5回以下、ラテックス配合物と繰り返し接触させ、それによって前記フォーマーにラテックスを凝固させ、前記フォーマーにラテックスの膜を堆積する、請求項
15に記載の方法。
【請求項19】
前記フォーマーに堆積した膜を、工程(c)の後に乾燥する、請求項
15に記載の方法。
【請求項20】
前記フォーマーに堆積した膜を、工程(d)の後に乾燥する、請求項
15に記載の方法
【請求項21】
前記フォーマーに堆積した膜を、工程(e)の後に乾燥する、請求項
15に記載の方法
【請求項22】
前記フォーマーに堆積した膜を、工程(f)の後、工程(g)の前に乾燥する、請求項
15に記載の方法。
【請求項23】
前記ポリマー分散液は、カルボキシル化ラテックス又は非カルボキシル化ラテックスである、請求項
15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浸漬コーティングプロセスにおいてゴム物品を製造するために使用されるポリマー/無機複合粒子配合物及び該配合物を使用するゴム物品を製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
手袋のようなゴム物品を使用して商品を取り扱う産業では、使用中に手袋が裂けた場合、手袋自体が汚染物質になる可能性がある。通常、これらの汚染物質は、検出するのが非常に難しい。食品や医薬品のような分野では、これらの汚染物質は、衛生上の理由から極めて望ましくない。
【0003】
高原子量元素及びその化合物は、電離放射線や電離放射線遮蔽による検出に有用な電離放射線を吸収するという固有の性質のために、ゴム物品に使用されてきた。高原子量元素及び水性ポリマー分散液の粒子状無機化合物のブレンドの使用については、ポリマーが天然ゴム、合成ポリイソプレン(PI)又はポリクロロプレンゴム(CR)等の非カルボキシル化ポリマーであるものが既に開示されている。天然ゴムは、アレルギー性タンパク質を含み、PI及びCRは高コストである。手袋製造のための別のより一般的なタイプのポリマーは、カルボキシル化アクリロニトリル/ブタジエンゴム(XNBR)である。しかしながら、一般的なXNBRにおける無機粒子の充填レベルは限られており、ゴムと無機材料との間のイオン相互作用のために、硬い膜又は脆い膜が形成される。
【0004】
電離放射線を吸収する高原子量元素の特に有用なグループとしては、重金属、重金属酸化物又は他の重金属化合物が含まれる。このような材料は、非常に高密度(通常、8g/cm3を超える)を有するため、水分散液は急速に沈殿する傾向がある。これは、ゴム物品内の無機粒子の不均一な分布をもたらす。
【0005】
沈殿の問題は、WRP Asia Pacific Sdn.Bhd.による特許文献1及び特許文献2に開示されているようなレオロジー調整剤の使用によって緩和することができる。しかしながら、前述の2つの特許文献には、アレルギー性タンパク質を含む天然ゴム又は予備加硫天然ゴムの使用が記載されており、これらのタンパク質を除去するための追加の工程を必要とするが、このような除去処理は100%信頼性があるものではない。前述の開示における他の欠点は、変性セルロース系レオロジー調整剤の使用にあり、これは、得られる混合物のかなり高い粘度をもたらし、浸漬コーティングプロセスにおいて厚い膜の形成を引き起こし、封入空気の漏出を妨げてゴム物品におけるピンホールの形成をもたらす。天然ゴムを、合成の類似物と置き換える選択肢があるが、アレルギー性タンパク質を含まないものの、高粘度から生じる問題がそれを上回る。
【0006】
沈殿の問題は、特許文献3(Gould)に開示されているような機械的手段によっても対処された。強力な撹拌又は再循環が記載されているが、機械的混合は、モールドが配合物中に浸漬される直前に停止される。このやり方には、低粘度が必要とされ、これはまた、ピンホール欠陥を防ぐために、配合物から気泡の漏出を可能にするために有益である。しかし、分散されたタングステン粒子の高密度(19.3g/cm3)のために、沈殿は、数秒以内に配合物中の重金属粒子の濃縮勾配を生じる。このようなブレンドの性質のために、濃度勾配は、容器の頂部及び底部において、ポリマー対無機材料の異なる比を生じる。
【0007】
品質管理に関して、無機粒子の濃度の違いを検出する簡単な方法はなく、その意図された用途に十分な電離放射線を吸収する物品の能力は、物品の厚さによって判断することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】欧州特許EP1644938B1号
【文献】国際公開WO第2004/114323A1号
【文献】米国特許第5001354号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、高密度無機粒子を使用する新たな配合物、及び配合物を使用するゴム物品の製造方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、本発明は、(a)乾燥体積で30.00~67.00%の濃度のポリマー分散液、(b)乾燥体積で15.00~65.00%の濃度の粒子状無機材料、(c)0.30~3.00重量%の濃度のpH調整剤、及び(d)0.25~5.00重量%の濃度であって、50,000~3,000,000g/モルの分子量を有するポリカルボン酸又はポリカルボン酸塩である分散剤を含み、前記ポリマー分散液中の粒子及び前記無機材料の粒子は安定化され、複合粒子を形成する、浸漬コーティングプロセスにおいてゴム物品を製造するために使用されるポリマー/無機複合粒子配合物を提供する。
【0011】
さらに、本発明は、ポリマー/無機複合粒子配合物から単層ゴム物品を製造する方法であって、(a)フォーマーを、0.10~2.00重量%の濃度の湿潤剤、0.50~30.00重量%の濃度の多価金属塩、及び0.10~5.00重量%の濃度の離型添加剤を含む第1の配合物と接触させる工程、(b)工程(a)のフォーマーを乾燥する工程、(c)工程(b)のフォーマーを、ポリマー/無機複合粒子配合物と接触させ、それによってフォーマーにポリマー/無機複合粒子配合物を凝固させ、フォーマーにポリマー/無機複合膜を堆積する工程、(d)ポリマー/無機複合膜を硬化する工程、(e)フォーマーからポリマー/無機複合膜を剥離して単層ゴム物品を形成する工程を含む、方法も提供する。
【0012】
また、ポリマー/無機複合粒子配合物から多層ゴム物品を製造する方法であって、(a)フォーマーを、0.10~2.00重量%の濃度の湿潤剤、0.50~30.00重量%の濃度の多価金属塩、及び0.10~5.00重量%の濃度の離型添加剤を含む第2の配合物と接触させる工程、(b)工程(a)のフォーマーを乾燥する工程、(c)工程(b)のフォーマーを、ラテックス配合物と接触させ、それによってフォーマーにラテックスを凝固させ、フォーマーにラテックスの膜を堆積する工程、(d)工程(c)のフォーマーを、0.10~2.00重量%の濃度の湿潤剤及び0.10~30.00重量%の濃度の多価金属塩を含む第3の配合物と接触させる工程、(e)工程(d)のフォーマーを、ポリマー/無機複合粒子配合物と接触させ、それによってフォーマーにポリマー/無機複合粒子配合物を凝固させ、フォーマーにポリマー/無機複合膜を堆積する工程、(f)工程(e)のフォーマーを第3の配合物と接触させる工程、(g)工程(f)のフォーマーを、ラテックス配合物と接触させ、それによってフォーマーにラテックスを凝固させ、フォーマーにラテックスの膜を堆積する工程、(h)堆積した膜を硬化する工程、及び(i)フォーマーから堆積した膜を剥離して、多層ゴム物品を形成する工程を含む、方法も提供する。
【0013】
それに加えて、本発明はまた、ポリマー/無機複合粒子配合物から多層ゴム物品を製造する方法であって、(a)フォーマーを、0.10~2.00重量%の濃度の湿潤剤、0.50~30.00重量%の濃度の多価金属塩、及び0.10~5.00重量%の濃度の離型添加剤を含む第2の配合物と接触させる工程、(b)工程(a)のフォーマーを乾燥する工程、(c)工程(b)のフォーマーを、ラテックス配合物と接触させ、それによってフォーマーにラテックスを凝固させ、フォーマーにラテックスの膜を堆積する工程、(d)工程(c)のフォーマーを、0.10~2.00重量%の濃度の湿潤剤及び0.10~30.00重量%の濃度の多価金属塩を含む第3の配合物と接触させる工程、(e)工程(d)のフォーマーを、ポリマー/無機複合粒子配合物と接触させ、それによってフォーマーにポリマー/無機複合粒子配合物を凝固させ、フォーマーにポリマー/無機複合膜を堆積する工程、(f)工程(e)のフォーマーを第3の配合物と接触させる工程、(g)工程(f)のフォーマーを、ラテックス配合物と接触させ、それによってフォーマーにラテックスを凝固させ、フォーマーにラテックスの膜を堆積する工程、(h)堆積した膜を硬化する工程、及び(i)フォーマーから堆積した膜を剥離して、多層ゴム物品を形成する工程を含む、方法も提供する。
【0014】
さらに、ポリマー/無機複合粒子配合物である多層ゴム物品を製造する方法であって、(a)フォーマーを、0.10~2.00重量%の濃度の湿潤剤、0.50~30.00重量%の濃度の多価金属塩、及び0.10~5.00重量%の濃度の離型添加剤を含む第2の配合物と接触させる工程、(b)工程(a)のフォーマーを乾燥する工程、(c)フォーマーを、ラテックス配合物と接触させ、それによってフォーマーにラテックスを凝固させ、フォーマーにラテックスの膜を堆積する工程、(d)フォーマーを、0.10~2.00重量%の濃度の湿潤剤及び0.10~30.00重量%の濃度の多価金属塩を含む第3の配合物と接触させる工程、(e)フォーマーを、ポリマー/無機複合粒子配合物と接触させ、それによってフォーマーにポリマー/無機複合粒子配合物を凝固させ、フォーマーにポリマー/無機複合膜を堆積する工程、(f)工程(d)のフォーマーを、ラテックス配合物と接触させ、それによってフォーマーにラテックスを凝固させ、フォーマーにラテックスの膜を堆積する工程、(g)堆積した膜を硬化する工程、及び(h)フォーマーから堆積した膜を剥離して、多層ゴム物品を形成する工程を含む、方法が提供される。
【0015】
最後に、本発明はまた、ポリマー/無機複合粒子配合物から多層ゴム物品を製造する方法であって、(a)フォーマーを、0.10~2.00重量%の濃度の湿潤剤、0.50~30.00重量%の濃度の多価金属塩、及び0.10~5.00重量%の濃度の離型添加剤を含む第2の配合物と接触させる工程、(b)工程(a)のフォーマーを乾燥する工程、(c)フォーマーを、ラテックス配合物と接触させ、それによってフォーマーにラテックスを凝固させ、フォーマーにラテックスの膜を堆積する工程、(d)フォーマーを、0.10~2.00重量%の濃度の湿潤剤及び0.10~30.00重量%の濃度の多価金属塩を含む第3の配合物と接触させる工程、(e)フォーマーを、ポリマー/無機複合粒子配合物と接触させ、それによってフォーマーにポリマー/無機複合粒子配合物を凝固させ、フォーマーにポリマー/無機複合膜を堆積する工程、(f)フォーマーを、第3の配合物と接触させる工程、(g)工程(f)のフォーマーをラテックス配合物と接触させ、それによってフォーマーにラテックスを凝固させ、フォーマーにラテックスの膜を堆積する工程、(h)堆積した膜を硬化する工程、及び(i)フォーマーから堆積した膜を剥離して、多層ゴム物品を形成する工程を含む、方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】
図1A及び
図1Bは、ゴム物品のポリマー/無機複合材料の少なくとも1つの層を示す断面図である。
【
図1B】
図1A及び
図1Bは、ゴム物品のポリマー/無機複合材料の少なくとも1つの層を示す断面図である。
【
図2A】
図2A及び
図2Bは、ポリマー/無機複合粒子配合物を使用して薄いゴム物品を製造するプロセスのフローチャートである。
【
図2B】
図2A及び
図2Bは、ポリマー/無機複合粒子配合物を使用して薄いゴム物品を製造するプロセスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
概して、本発明は、浸漬コーティングプロセスにおいてゴム物品を製造するために使用されるポリマー/無機複合粒子配合物に関し、配合物は、(a)乾燥体積で30.00~67.00%の濃度のポリマー分散液、(b)乾燥体積で15.00~65.00%の濃度の粒子状無機材料、(c)0.30~3.00重量%の濃度のpH調整剤、及び(d)0.25~5.00重量%の濃度の分散剤を含み、分散剤は、分子量が50,000~3,000,000g/モルのポリカルボン酸又はポリカルボン酸塩であり、ポリマー分散液中の粒子及び無機材料の粒子は、安定化されて、複合粒子を形成する。
【0018】
配合物は、0.15~2.00重量%の濃度のレオロジー調整剤を含有していてもよい。
【0019】
配合物は、乾燥重量ゴムの5.00%までの濃度の硫黄を含有していてもよい。
【0020】
配合物は、乾燥重量ゴムの2.00%までの濃度の加硫促進剤を含有していてもよい。
【0021】
配合物は、乾燥重量ゴムの1040.00%までの濃度の酸化亜鉛を含有していてもよい。
【0022】
配合物は、乾燥重量ゴムの5.00%までの濃度の分解防止剤を含有していてもよい。
【0023】
複合粒子が撹拌されるとき、複合粒子は自由に動くことができ、沈殿しない。撹拌されないときは、透明又は半透明の上澄み層が、複合粒子の沈殿物の上に形成される。
【0024】
配合物は、手袋、管、コンドーム、アームカバー、カバースキン及びカテーテル等の単層又は多層薄膜ゴム物品等のゴム物品を製造するために使用してよい。
【0025】
ポリマー分散液は、アクリロニトリル-ブタジエンゴム又はスチレン-ブタジエンゴム又はポリクロロプレンゴムのカルボキシル化ラテックスであってもよい。
【0026】
ポリマー分散液は、アクリロニトリル-ブタジエンゴム又はスチレン-ブタジエンゴム又はポリクロロプレンゴム又はブチルゴムの非カルボキシル化ラテックスであってもよい。
【0027】
ポリマー分散液は、天然ゴムラテックス又は予備加硫天然ゴムラテックスであってもよい。
【0028】
ポリマー分散液は、合成ポリイソプレンラテックス又はポリウレタン分散液であってもよい。
【0029】
配合物は、5重量%までの濃度の湿潤剤を含有してもよく、湿潤剤は界面活性剤であってもよい。
【0030】
粒子状無機材料は、電離放射線吸収材料であってもよい。電離放射線吸収材料は、重金属粉末であってもよい。電離放射線吸収材料は、様々な重金属の混合物又は合金であってもよい。電離放射線吸収材料は、重金属化合物であってもよい。
【0031】
粒子状無機材料は、磁性材料であってもよい。
【0032】
pH調整剤は、アルカリ性溶液であってもよい。
【0033】
レオロジー調整剤は、キサンタンガム、メチルセルロース、クレイ、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリウレタン又はそれらの混合物から選択してよい。
【0034】
さらに、本発明はまた、ポリマー/無機複合粒子配合物から単層ゴム物品を製造する方法を提供し、この方法は、(a)フォーマーを、0.10~2.00重量%の濃度の湿潤剤、濃度0.50~30.00重量%を有する多価金属塩、及び濃度0.10~5.00重量%を有する離型添加剤を含む第1の配合物と接触させる工程、(b)工程(a)のフォーマーを乾燥する工程、(c)工程(b)のフォーマーを、ポリマー/無機複合粒子配合物と接触させ、それによってフォーマーにポリマー/無機複合粒子配合物を凝固させ、フォーマーにポリマー/無機複合膜を堆積する工程、(d)ポリマー/無機複合膜を硬化する工程、e)フォーマーからポリマー/無機複合膜を剥離して、単層ゴム物品を形成する工程を含む。
【0035】
工程(d)のポリマー/無機複合膜を硬化する前に、工程(c)のフォーマーを乾燥する工程を導入してもよい。
【0036】
工程(d)のポリマー/無機複合膜を硬化する前に、工程(c)のポリマー/無機複合膜をビード形成する工程を導入してもよい。
【0037】
工程(d)のポリマー/無機複合膜を硬化する前に、工程(c)のポリマー/無機複合膜を浸出する工程を導入してもよい。
【0038】
配合物は、0.15~2.00重量%の濃度のレオロジー調整剤を含有していてもよい。
【0039】
配合物は、乾燥重量ゴムの5.00%までの濃度の硫黄を含有していてもよい。
【0040】
配合物は、乾燥重量ゴムの2.00%までの濃度の加硫促進剤を含有していてもよい。
【0041】
配合物は、乾燥重量ゴムの1040.00%までの濃度の酸化亜鉛を含有していてもよい。
【0042】
配合物は、乾燥重量ゴムの5.00%までの濃度の分解防止剤を含有していてもよい。
【0043】
ポリマー分散液及び粒子状無機材料中の粒子は、安定化されて、複合粒子を形成する。複合粒子が撹拌されるとき、複合粒子は自由に動くことができ、沈殿しない。撹拌されないとき、透明又は半透明の上澄み層が、複合粒子の沈殿物の上に形成される。
【0044】
単層ゴム物品は、手袋、チューブ、コンドーム、アームカバー、カバースキン及びカテーテル等のゴム物品である。
【0045】
ポリマー分散液は、アクリロニトリル-ブタジエンゴム又はスチレン-ブタジエンゴム又はポリクロロプレンゴムのカルボキシル化ラテックスであってもよい。
【0046】
ポリマー分散液は、アクリロニトリル-ブタジエンゴム又はスチレン-ブタジエンゴム又はポリクロロプレンゴム又はブチルゴムの非カルボキシル化ラテックスであってもよい。ポリマー分散液は、天然ゴムラテックス又は予備加硫天然ゴムラテックスであってもよい。ポリマー分散液は、合成ポリイソプレンラテックス又はポリウレタン分散液であってもよい。
【0047】
配合物は、5.00重量%までの濃度の湿潤剤を含有してもよく、湿潤剤は界面活性剤であってもよい。
【0048】
粒子状無機材料は、電離放射線吸収材料であってもよい。電離放射線吸収材料は、重金属粉末であってもよい。電離放射線吸収材料は、各種重金属の混合物又は合金であってもよい。電離放射線吸収材料は、重金属化合物であってもよい。
【0049】
粒子状無機材料は、磁性材料であってもよい。
【0050】
分散剤は、分子量が50,000~3,000,000g/モルのポリカルボン酸又はポリカルボン酸塩であってもよい。
【0051】
pH調整剤は、アルカリ性溶液であってもよい。
【0052】
レオロジー調整剤は、キサンタンガム、メチルセルロース、クレイ、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリウレタン又はそれらの混合物から選択されてもよい。
【0053】
第1の配合物中の湿潤剤は、非イオン性界面活性剤であってもよい。
【0054】
第1の配合物中の多価金属塩は、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化アルミニウム又は硝酸アルミニウム又はそれらの混合物であってもよい。
【0055】
離型添加剤は、ステアリン酸塩であってもよい。
【0056】
また、ポリマー/無機複合粒子配合物から多層ゴム物品を製造する方法も提供され、この方法は、(a)0.10~2.00重量%の濃度の湿潤剤、0.50~30.00重量%の濃度の多価金属塩、及び0.10~5.00重量%の濃度の離型添加剤を含む第2の配合物と接触させる工程、(b)工程(a)のフォーマーを乾燥する工程、(c)工程(b)のフォーマーを、ラテックス配合物と接触させ、それによってフォーマーにラテックスを凝固させ、フォーマーにラテックスの膜を堆積する工程、(d)工程(c)のフォーマーを、0.10~2.00重量%の濃度の湿潤剤及び0.10~30.00重量%の濃度の多価金属塩を含む第3の配合物と接触させる工程、(e)工程(d)のフォーマーを、ポリマー/無機複合粒子配合物と接触させ、それによってフォーマーにポリマー/無機複合粒子配合物を凝固させ、フォーマーにポリマー/無機複合膜を堆積する工程、(f)工程(e)のフォーマーを第3の配合物と接触させる工程、(g)工程(f)のフォーマーを、ラテックス配合物と接触させ、それによってフォーマーにラテックスを凝固させ、フォーマーにラテックスの膜を堆積する工程、(h)堆積した膜を硬化する工程、(i)フォーマーから堆積した膜を剥離して、多層ゴム物品を形成する工程を含む。
【0057】
工程(c)のフォーマーを工程(d)の第3の配合物と接触する前に、工程(c)のフォーマーを乾燥する工程を導入してもよい。
【0058】
工程(d)のフォーマーを工程(e)のポリマー/無機粒子配合物と接触する前に、工程(d)のフォーマーを乾燥する工程を導入してもよい。
【0059】
工程(e)のフォーマーを工程(f)の第3の配合物と接触する前に、工程(e)のフォーマーを乾燥する工程を導入してもよい。
【0060】
工程(f)のフォーマーを工程(g)のラテックス配合物と接触する前に、工程(f)のフォーマーを乾燥する工程を導入してもよい。
【0061】
工程(h)のポリマー/無機複合膜を硬化する前に、工程(g)のフォーマーを乾燥する工程を導入してもよい。
【0062】
工程(h)のポリマー/無機複合膜を硬化する前に、工程(g)のポリマー/無機複合膜にビード形成する工程を導入してもよい。
【0063】
工程(h)のポリマー/無機複合膜を硬化する前に、工程(g)のポリマー/無機複合膜を浸出する工程を導入してもよい。
【0064】
配合物は、0.15~2.00重量%の濃度のレオロジー調整剤を含有していてもよい。
【0065】
配合物は、乾燥重量ゴムの5.00%までの濃度の硫黄を含有していてもよい。
【0066】
配合物は、乾燥重量ゴムの2.00%までの濃度の加硫促進剤を含有していてもよい。
【0067】
配合物は、乾燥重量ゴムの1040.00%までの濃度の酸化亜鉛を含有していてもよい。
【0068】
配合物は、乾燥重量ゴムの5.00%までの濃度の分解防止剤を含有していてもよい。
【0069】
ポリマー分散液及び粒子状無機材料中の粒子は、安定化されて、複合粒子を形成する。
【0070】
複合粒子が撹拌されるとき、複合粒子は自由に動くことができ、沈殿しない。撹拌されないとき、透明又は半透明の上澄み層が、複合粒子の沈殿物の上に形成される。
【0071】
単層ゴム物品は、手袋、チューブ、コンドーム、アームカバー、カバースキン及びカテーテル等のゴム物品である。
【0072】
ポリマー分散液は、アクリロニトリル-ブタジエンゴム又はスチレン-ブタジエンゴム又はポリクロロプレンゴムのカルボキシル化ラテックスであってもよい。ポリマー分散液は、アクリロニトリル-ブタジエンゴム又はスチレン-ブタジエンゴム又はポリクロロプレンゴム又はブチルゴムの非カルボキシル化ラテックスであってもよい。ポリマー分散液は、天然ゴムラテックス又は予備加硫天然ゴムラテックスであってもよい。ポリマー分散液は、合成ポリイソプレンラテックス又はポリウレタン分散液であってもよい。
【0073】
配合物は、5.00重量%までの濃度の湿潤剤を含有していてもよい。
【0074】
湿潤剤は、界面活性剤であってもよい。
【0075】
粒子状無機材料は、電離放射線吸収材料であってもよい。電離放射線吸収材料は、重金属粉末、異なる重金属の混合物又は合金、あるいは重金属化合物であってもよい。
【0076】
粒子状無機材料は、磁性材料であってもよい。
【0077】
分散剤は、分子量が50,000~3,000,000g/モルのポリカルボン酸又はポリカルボン酸塩であってもよい。
【0078】
pH調整剤は、アルカリ性溶液であってもよい。
【0079】
レオロジー調整剤は、キサンタンガム、メチルセルロース、クレイ、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリウレタン又はそれらの混合物から選択されてもよい。
【0080】
第2の配合物及び第3の配合物中の湿潤剤は、非イオン性界面活性剤であってもよい。
【0081】
第2の配合物及び第3の配合物中の多価金属塩は、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化アルミニウム又は硝酸アルミニウム又はそれらの混合物であってもよい。
【0082】
離型添加剤は、ステアリン酸塩であってもよい。
【0083】
ラテックス配合物は、非カルボキシル化ニトリルブタジエンゴム(NBR)、カルボキシル化ニトリルブタジエンゴム(XNBR)、非カルボキシル化スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシル化スチレンブタジエンゴム(XSBR)、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)、ブチルゴム(IIR)又はそれらの混合物のうちの1つのラテックス分散液である。
【0084】
多層ゴム物品は、外層、中間層及び内層を含む3層ゴム物品であってもよい。外層及び内層は、非カルボキシル化ニトリルブタジエンゴム(NBR)、カルボキシル化ニトリルブタジエンゴム(XNBR)、非カルボキシル化スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシル化スチレンブタジエンゴム(XSBR)、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)、ブチルゴム(IIR)又はそれらの混合物から選択されるポリマー分散液から作製されてもよい。
【0085】
多層ゴム物品は、塩素化されていてもよく、又は摩擦を減少させるためにその内層表面がコーティングされていてもよい。
【0086】
さらに、ポリマー/無機複合粒子配合物から多層ゴム物品を製造する方法であって、(a)フォーマーを、0.10~2.00重量%の濃度の湿潤剤と、0.50~30.00重量%の濃度の多価金属塩と、0.10~5.00重量%の濃度の離型添加剤とを含む第2の配合物と接触させる工程、(b)工程(a)のフォーマーを乾燥する工程、(c)工程(b)のフォーマーをラテックス配合物と接触させ、それによってフォーマーにラテックスの膜を堆積する工程、(d)工程(c)のフォーマーを0.10~2.00重量%の濃度の湿潤剤及び0.10~30.00重量%の濃度の多価金属塩を含む第3の配合物と接触させる工程、(e)工程(d)のフォーマーをポリマー/無機複合粒子配合物と接触させ、それによってフォーマーにポリマー/無機複合粒子配合物を凝固させ、フォーマーにポリマー/無機複合膜を堆積する工程、(f)工程(e)のフォーマーを第3の配合物と接触させる工程、(g)工程(f)のフォーマーをラテックス配合物と接触させ、それによってフォーマーにラテックスを凝固させ、フォーマーにラテックスの膜を堆積する工程、(h)堆積した膜を硬化する工程、及び(i)堆積した膜をフォーマーから剥離して、多層ゴム物品を形成する工程を含む。
【0087】
フォーマーに堆積した膜を、工程(c)が導入された後、工程(d)の前に乾燥してもよい。
【0088】
乾燥工程は、工程(d)の後、工程(e)の前に導入されてもよい。
【0089】
フォーマーに堆積した膜を、工程(e)の後、工程(f)の前に乾燥してもよい。
【0090】
乾燥工程は、工程(f)の後、工程(g)の前に導入される。
【0091】
フォーマーに堆積した膜を、工程(g)の後、工程(h)の前に乾燥してもよい。
【0092】
堆積した膜に、工程(g)の後、工程(h)の前にビード形成してもよい。
【0093】
フォーマーに堆積した膜を、工程(g)の後、工程(h)の前に浸出してもよい。
【0094】
配合物は、0.15~2.00重量%の濃度のレオロジー調整剤を含有していてもよい。
【0095】
配合物は、乾燥重量ゴムの5.00%までの濃度の硫黄を含有していてもよい。
【0096】
配合物は、乾燥重量ゴムの2.00%までの濃度の加硫促進剤を含有していてもよい。
【0097】
配合物は、乾燥重量ゴムの1040.00%までの濃度の酸化亜鉛を含有していてもよい。
【0098】
配合物は、乾燥重量ゴムの5.00%までの濃度の分解防止剤を含有していてもよい。
【0099】
ポリマー分散液及び粒子状無機材料中の粒子は、安定化されて、複合粒子を形成する。複合粒子が撹拌されるとき、複合粒子は自由に動くことができ、沈殿しない。撹拌されないとき、透明又は半透明の上澄み層が、複合粒子の沈殿物の上に形成される。
【0100】
多層ゴム物品は、手袋、チューブ、コンドーム、アームカバー、カバースキン及びカテーテル等のゴム物品であってもよい。
【0101】
ポリマー分散液は、アクリロニトリル-ブタジエンゴム又はスチレン-ブタジエンゴム又はポリクロロプレンゴムのカルボキシル化ラテックスであってもよい。ポリマー分散液は、アクリロニトリル-ブタジエンゴム又はスチレン-ブタジエンゴム又はポリクロロプレンゴム又はブチルゴムの非カルボキシル化ラテックスであってもよい。ポリマー分散液は、天然ゴムラテックス又は予備加硫天然ゴムラテックスであってもよい。
【0102】
ポリマー分散液は、合成ポリイソプレンラテックス又はポリウレタン分散液であってもよい。
【0103】
配合物は、乾燥ゴム重量で5.00%までの濃度の湿潤剤を含有していてもよい。
【0104】
湿潤剤は、界面活性剤であってもよい。
【0105】
粒子状無機材料は、電離放射線吸収材料であってもよい。
【0106】
電離放射線吸収材料は、重金属粉末、異なる重金属の混合物もしくは合金、又は重金属化合物であってもよい。
【0107】
粒子状無機材料は、磁性材料であってもよい。
【0108】
分散剤は、分子量が50,000~3,000,000g/モルのポリカルボン酸又はポリカルボン酸塩であってもよい。
【0109】
pH調整剤は、アルカリ性溶液であってもよい。
【0110】
レオロジー調整剤は、キサンタンガム、メチルセルロース、クレイ、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリウレタン又はそれらの混合物であってもよい。
【0111】
第2の配合物及び第3の配合物中の湿潤剤は、非イオン性界面活性剤であってもよい。
【0112】
第2の配合物及び第3の配合物中の多価金属塩は、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化アルミニウム又は硝酸アルミニウム又はそれらの混合物であってもよい。
【0113】
離型添加剤は、ステアリン酸塩であってもよい。
【0114】
ラテックス配合物は、非カルボキシル化ニトリルブタジエンゴム(NBR)、カルボキシル化ニトリルブタジエンゴム(XNBR)、非カルボキシル化スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシル化スチレンブタジエンゴム(XSBR)、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)、ブチルゴム(IIR)又はそれらの混合物のうちの1つのラテックス分散液である。
【0115】
多層ゴム物品は、外層、中間層及び内層を含む3層ゴム物品であってもよい。外層及び内層は、非カルボキシル化ニトリルブタジエンゴム(NBR)、カルボキシル化ニトリルブタジエンゴム(XNBR)、非カルボキシル化スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシル化スチレンブタジエンゴム(XSBR)、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)、ブチルゴム(IIR)又はそれらの混合物から選択されるポリマー分散液から作製されてもよい。
【0116】
多層ゴム物品は、塩素化されていてもよく、又は摩擦を減少させるためにその内層表面がコーティングされていてもよい。
【0117】
また、ポリマー/無機複合粒子配合物から多層ゴム物品を製造する方法も提供され、この方法は、(a)フォーマーを、0.10~2.00重量%の濃度の湿潤剤、0.50~30.00重量%の濃度の多価金属塩、及び0.10~5.00重量%の濃度の離型添加剤を含む第2の配合物と接触させる工程、(b)工程(a)のフォーマーを乾燥する工程、(c)フォーマーを、ラテックス配合物と接触させ、それによってフォーマーにラテックスを凝固させ、フォーマーにラテックスの膜を堆積する工程、(d)フォーマーを、0.10~2.00重量%の濃度の湿潤剤及び0.10~30.00重量%の濃度の多価金属塩を含む第3の配合物と接触させる工程、(e)フォーマーを、ポリマー/無機複合粒子配合物と接触させ、それによってフォーマーにポリマー/無機複合粒子配合物を凝固させ、フォーマーにポリマー/無機複合膜を堆積する工程、(f)工程(d)のフォーマーを、ラテックス配合物と接触させ、それによってフォーマーにラテックスを凝固させ、フォーマーにラテックスの膜を堆積する工程、(g)堆積した膜を硬化する工程、(h)フォーマーから堆積した膜を剥離して、多層ゴム物品を形成する工程を含む、方法が提供される。
【0118】
工程(c)のフォーマーを、工程(d)の前に5回以下、ラテックス配合物と繰り返し接触させ、それによってフォーマーにラテックスを凝固させ、フォーマーにラテックスの膜を堆積させてもよい。
【0119】
工程(e)のフォーマーを、多層ゴム物品を形成する前に、ポリマー/無機複合粒子配合物と5回以下繰り返し接触させ、それによって、フォーマーにポリマー/無機複合粒子配合物を凝固させ、フォーマーにポリマー/無機複合膜を堆積させてもよい。
【0120】
工程(f)のフォーマーを、工程(d)の前に5回以下、ラテックス配合物と繰り返し接触させ、それによってフォーマーにラテックスを凝固させ、フォーマーにラテックスの膜を堆積させてもよい。
【0121】
フォーマーに堆積した膜を、工程(c)の後に乾燥してもよい。
【0122】
フォーマーに堆積した膜を、工程(d)の後に乾燥してもよい。
【0123】
フォーマーに堆積した膜を、工程(e)の後に乾燥してもよい。
【0124】
フォーマーに堆積した膜を、工程(f)の後、工程(g)の前に乾燥してもよい。
【0125】
堆積した膜に、工程(f)の後、工程(g)の前にビード形成してもよい。
【0126】
堆積した膜を、工程(f)の後、工程(g)の前に浸出してもよい。
【0127】
配合物は、0.15~2.00重量%の濃度のレオロジー調整剤を含有していてもよい。
【0128】
配合物は、乾燥重量ゴムの5.00%までの濃度の硫黄を含有していてもよい。
【0129】
配合物は、乾燥重量ゴムの2.00%までの濃度の加硫促進剤を含有していてもよい。
【0130】
配合物は、乾燥重量ゴムの1040.00%までの濃度の酸化亜鉛を含有していてもよい。
【0131】
配合物は、乾燥重量ゴムの5.00%までの濃度の分解防止剤を含有していてもよい。
【0132】
ポリマー分散液及び粒子状無機材料中の粒子は、安定化されて、複合粒子を形成する。複合粒子が撹拌されるとき、複合粒子は自由に動くことができ、沈殿しない。撹拌されないとき、透明又は半透明の上澄み層が、複合粒子の沈殿物の上に形成される。
【0133】
多層ゴム物品は、手袋、チューブ、コンドーム、アームカバー、カバースキン及びカテーテル等のゴム物品であってもよい。
【0134】
ポリマー分散液は、アクリロニトリル-ブタジエンゴム又はスチレン-ブタジエンゴム又はポリクロロプレンゴムのカルボキシル化ラテックスであってもよい。ポリマー分散液は、アクリロニトリル-ブタジエンゴム又はスチレン-ブタジエンゴム又はポリクロロプレンゴム又はブチルゴムの非カルボキシル化ラテックスであってもよい。ポリマー分散液は、天然ゴムラテックス又は予備加硫天然ゴムラテックスであってもよい。ポリマー分散液は、合成ポリイソプレンラテックス又はポリウレタン分散液であってもよい。
【0135】
配合物は、5乾燥ゴム重量%までの濃度の湿潤剤を含有していてもよい。
【0136】
湿潤剤は、界面活性剤であってもよい。
【0137】
粒子状無機材料は、電離放射線吸収材料であってもよい。電離放射線吸収材料は、重金属粉末、又は異なる重金属の混合物もしくは合金、又は重金属化合物である。
【0138】
粒子状無機材料は、磁性材料であってもよい。
【0139】
分散剤は、分子量が50,000~3,000,000g/モルのポリカルボン酸又はポリカルボン酸塩であってもよい。
【0140】
pH調整剤は、アルカリ性溶液であってもよい。
【0141】
レオロジー調整剤は、キサンタンガム、メチルセルロース、クレイ、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリウレタン又はそれらの混合物であってもよい。
【0142】
第2の配合物及び第3の配合物中の湿潤剤は、非イオン性界面活性剤であってもよい。
【0143】
第2の配合物及び第3の配合物中の多価金属塩は、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化アルミニウム又は硝酸アルミニウム又はそれらの混合物であってもよい。
【0144】
離型添加剤は、ステアリン酸塩であってもよい。
【0145】
ラテックス配合物は、非カルボキシル化ニトリルブタジエンゴム(NBR)、カルボキシル化ニトリルブタジエンゴム(XNBR)、非カルボキシル化スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシル化スチレンブタジエンゴム(XSBR)、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)、ブチルゴム(IIR)又はそれらの混合物のうちの1つのラテックス分散液である。
【0146】
多層ゴム物品は、外層、中間層及び内層を含む3層ゴム物品であってもよい。外層及び内層は、非カルボキシル化ニトリルブタジエンゴム(NBR)、カルボキシル化ニトリルブタジエンゴム(XNBR)、非カルボキシル化スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシル化スチレンブタジエンゴム(XSBR)、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)、ブチルゴム(IIR)又はそれらの混合物から選択されるポリマー分散液から作製されてもよい。
【0147】
多層ゴム物品は、塩素化されていてもよく、又は摩擦を減少させるためにその内層表面がコーティングされていてもよい。
【0148】
また、ポリマー/無機複合粒子配合物から多層ゴム物品を製造する方法も提供され、この方法は、(a)フォーマーを、0.10~2.00重量%の濃度の湿潤剤、0.50~30.00重量%の濃度の多価金属塩、及び0.10~5.00重量%の濃度の離型添加剤を含む第2の配合物と接触させる工程、(b)工程(a)のフォーマーを乾燥する工程、(c)フォーマーを、ラテックス配合物と接触させ、それによってフォーマーにラテックスを凝固させ、フォーマーにラテックスの膜を堆積する工程、(d)フォーマーを、0.10~2.00重量%の濃度の湿潤剤及び0.10~30.00重量%の濃度の多価金属塩を含む第3の配合物と接触させる工程、(e)フォーマーを、ポリマー/無機複合粒子配合物と接触させ、それによってフォーマーにポリマー/無機複合粒子配合物を凝固させ、フォーマーにポリマー/無機複合膜を堆積する工程、(f)フォーマーを第3の配合物と接触させる工程、(g)工程(f)のフォーマーを、ラテックス配合物と接触させ、それによってフォーマーにラテックスを凝固させ、フォーマーにラテックスの膜を堆積する工程、(h)堆積した膜を硬化する工程、(i)フォーマーから堆積した膜を剥離して、多層ゴム物品を形成する工程を含む。
【0149】
フォーマーに堆積した膜を、工程(c)の後に乾燥してもよい。
【0150】
工程(d)の後に乾燥工程を導入してもよい。
【0151】
フォーマーに堆積した膜を、工程(e)の後に乾燥してもよい。
【0152】
工程(f)の後に乾燥工程を導入してもよい。
【0153】
フォーマーに堆積した膜を、工程(g)の後に乾燥してもよい。
【0154】
工程(e)のフォーマーを、工程(f)の前に5回以下、ポリマー/無機複合粒子配合物と繰り返し接触させ、その後、フォーマーを第3の配合物と接触させ、それによって、フォーマーにポリマー/無機複合粒子配合物を凝固させ、フォーマーにポリマー/無機複合膜を堆積してもよい。
【0155】
工程(g)のフォーマーを、多層ゴム物品を形成する前、ラテックス配合物と5回以下、繰り返し接触させてもよく、それによってフォーマーのラテックスを凝固させ、フォーマーにラテックスの膜を堆積してもよい。
【0156】
フォーマーに堆積した膜を、工程(g)の後に乾燥してもよい。
【0157】
フォーマーに堆積した膜を、フォーマーに堆積した膜を乾燥させた後に硬化してもよい。
【0158】
堆積した膜に、工程(g)の後にビード形成してもよい。
【0159】
堆積した膜を、工程(g)の後に浸出してもよい。
【0160】
配合物は、0.15~2.00重量%の濃度のレオロジー調整剤を含有していてもよい。
【0161】
配合物は、乾燥重量ゴムの5.00%までの濃度の硫黄を含有していてもよい。
【0162】
配合物は、乾燥重量ゴムの2.00%までの濃度の加硫促進剤を含有していてもよい。
【0163】
配合物は、乾燥重量ゴムの1040.00%までの濃度の酸化亜鉛を含有していてもよい。
【0164】
配合物は、乾燥重量ゴムの5.00%までの濃度の分解防止剤を含有していてもよい。
【0165】
ポリマー分散液及び粒子状無機材料中の粒子は、安定化されて、複合粒子を形成する。複合粒子が撹拌されるとき、複合粒子は自由に動くことができ、沈殿しない。撹拌されないとき、透明又は半透明の上澄み層が、複合粒子の沈殿物の上に形成される。
【0166】
多層ゴム物品は、手袋、チューブ、コンドーム、アームカバー、カバースキン及びカテーテル等のゴム物品であってもよい。
【0167】
ポリマー分散液は、アクリロニトリル-ブタジエンゴム又はスチレン-ブタジエンゴム又はポリクロロプレンゴムのカルボキシル化ラテックスであってもよい。
【0168】
ポリマー分散液は、アクリロニトリル-ブタジエンゴム又はスチレン-ブタジエンゴム又はポリクロロプレンゴム又はブチルゴムの非カルボキシル化ラテックスであってもよい。
【0169】
ポリマー分散液は、天然ゴムラテックス又は予備加硫天然ゴムラテックスであってもよい。
【0170】
ポリマー分散液は、合成ポリイソプレンラテックス又はポリウレタン分散液であってもよい。
【0171】
配合物は、乾燥ゴム重量で5.00%までの濃度の湿潤剤を含有していてもよい。
【0172】
湿潤剤は、界面活性剤であってもよい。
【0173】
粒子状無機材料は、電離放射線吸収材料であってもよい。
【0174】
電離放射線吸収材料は、重金属粉末、異なる重金属の混合物もしくは合金、又は重金属化合物であってもよい。
【0175】
粒子状無機材料は、磁性材料であってもよい。
【0176】
分散剤は、分子量が50,000~3,000,000g/モルのポリカルボン酸又はポリカルボン酸塩であってもよい。
【0177】
pH調整剤は、アルカリ性溶液であってもよい。
【0178】
レオロジー調整剤は、キサンタンガム、メチルセルロース、クレイ、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリウレタン又はそれらの混合物であってもよい。
【0179】
第2の配合物及び第3の配合物中の湿潤剤は、非イオン性界面活性剤であってもよい。
【0180】
第2の配合物及び第3の配合物中の多価金属塩は、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化アルミニウム又は硝酸アルミニウム又はそれらの混合物であってもよい。
【0181】
離型添加剤は、ステアリン酸塩である。
【0182】
ラテックス配合物は、非カルボキシル化ニトリルブタジエンゴム(NBR)、カルボキシル化ニトリルブタジエンゴム(XNBR)、非カルボキシル化スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシル化スチレンブタジエンゴム(XSBR)、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)、ブチルゴム(IIR)又はそれらの混合物のうちの1つのラテックス分散液である。
【0183】
多層ゴム物品は、外層、中間層及び内層を含む3層ゴム物品であってもよい。外層及び内層は、非カルボキシル化ニトリルブタジエンゴム(NBR)、カルボキシル化ニトリルブタジエンゴム(XNBR)、非カルボキシル化スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシル化スチレンブタジエンゴム(XSBR)、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)、ブチルゴム(IIR)又はそれらの混合物から選択されるポリマー分散液から作製されてもよい。
【0184】
多層ゴム物品は、塩素化されていてもよく、又は摩擦を減少させるためにその内層表面がコーティングされていてもよい。
【0185】
以下、本発明をより具体的に詳細に説明する。
【0186】
具体的には、本発明は、ポリマー/無機複合体の1つ以上の層を含有する薄いゴム物品(手のひらの厚さ、≦0.2mm)を提供する。
【0187】
それに加えて、本発明は、ポリマー/無機複合粒子を含有する低粘度化合物をもたらすポリマー分散液に粒子状無機材料を組み込むための複合化手順を提供する。
【0188】
本発明は、1つ以上がポリマー/無機複合体を含有する異なる層を含むゴム物品の厚さを制御することを可能にする浸漬手順を提供する。
【0189】
本発明は、制御された厚さの少なくとも2つの層からなる薄膜ゴム物品の製造方法を提供する。各層は、カルボキシル化ニトリルブタジエンゴム(NBR)又はカルボキシル化ニトリルブタジエンゴム(XNBR)、非カルボキシル化スチレンブタジエンゴム(SBR)又はカルボキシル化スチレンブタジエンゴム(XSBR)、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、ポリ塩化ビニル(PVC)又はポリウレタン(PU)等の異なるベースポリマーを含んでもよい。少なくとも1つの層(複合層)は、約10~90体積%を含む粒子状無機材料を含有する(
図1A及び1Bにおける層2)。複合層の厚さ及び粒子状無機材料の含有量は、用途によって決まる、すなわち、X線による検出のためには、放射線遮蔽と比較して、放射線吸収材料の厚さは薄く、及び/又は低い含有量が必要とされる。
【0190】
放射線吸収の程度は、高原子量元素の濃度、層の厚さ、密度及び原子量(より高い=より良好)に依存する。
【0191】
カルボキシル化ゴムは、特に、カルボン酸官能基が、共有結合又はイオン架橋のいずれかによって一次架橋部位として役立つ低皮膚炎ゴム物品の製造に適している。放射線遮蔽/検出は、得られるアイオノマー架橋が過剰になり、硬い膜又は脆い膜をもたらすような高充填の重金属又は重金属酸化物を必要とする。一方、カルボキシル化のないゴムは、これらのタイプの粒子状無機材料との相互作用ははるかに少ないが、架橋のための唯一の担体硬化添加剤として使用する場合には必要とされる。これらの硬化添加剤は、型IVアレルギーをもたらすが、硬化しないと、充填された非カルボキシル化ゴムは、有用なゴム物品に必要とされる十分な物理的強度を示さない。複合層を、カルボキシル化ゴム層(支持層)の間に挟むことによって、IV型アレルギー原因物質を含まない十分な物理的強度(表1)を有する粒子状無機材料を高含有量で有する物品を製造することができることが分かった。このアプローチから生じる1つの問題は、2つの異なるポリマー型の、それらの極性の差による非相溶性である。カルボキシル化ポリマーは、例えば、天然ゴム又は合成ポリイソプレンよりもはるかに極性が高い。実際的な問題は、通常の使用条件下で、層間剥離につながる層間密着性不良の差から生じる。複合層のベースポリマーは、支持層と相溶性がある必要があり、それによって、物品が使用されている間、これらの層の層間剥離を回避することができる。
【0192】
昭和電工製CL-750等のポリクロロプレンラテックスは、支持層への十分な接着性を維持しながら、65%(乾燥ポリマー中の体積乾燥充填剤)を超える無機充填剤粒子、例えば、酸化ビスマス(粒子サイズ径d50約1.6μm)で充填できることが分かった(表1パートI)。しかしながら、酸化ビスマスは、急速に沈殿するので、化合物中の無機粒子の均一な分布を確実にするために、激しい撹拌又はレオロジー調整剤が必要とされる。
【0193】
前述のクロロプレンラテックスと酸化ビスマスとの混合物は、手袋を製造するのに適しており、ビスマス粒子の沈殿を低減するためのレオロジー調整剤を含有していてもよい。撹拌又はポンプ輸送のような機械的解決策を、沈殿を制限して、ほぼ均一に充填された層を得るために使用してもよい。
【0194】
表1パートIに示すような配合物への分散剤、分子量(MW)50000~3000000g/モルのポリカルボン酸塩の添加は、凝固ラテックス(AL)を形成する無機粒子及びポリクロロプレンゴム粒子の共凝固をもたらす(表1パートII)。これは、ポリマー粒子、無機粒子、分散剤がアニオン性であるため、驚くべき結果である。7を超えるpHでは、凝固は、無機材料の性質とは無関係であり、通常の硫黄粉末(粒径:30μm)、酸化亜鉛粉末(粒径:1μm、白色シール)又は二酸化チタン(粒径:300nm)が複合粒子の分散液を形成することが示される(表3)。これらの実施例は、粒子状無機材料の性質に関して、本方法の一般的な適用可能性を実証するものである。また、凝固は、ポリクロロプレンラテックス、カルボキシル化アクリロニトリル/ブタジエンラテックス等の種々のアニオン的に安定化されたポリマー分散液を用いてなされることも示される。カルボキシル化ポリマー分散液は、主にALを製造するために使用することができるが、無機粒子の濃度及びカルボキシル化の程度に依存して、得られる膜はカルボキシル化されていないポリマーで製造された膜よりも大きな剛性を示す。一般に、pH7未満では、凝固が優勢であり、不規則な形状及びサイズの複合粒子が形成される。
【0195】
ALは依然として沈殿するが、透明な上澄み層の形成を伴って沈殿し、沈殿物は全体として均一な外観を有する。凝固工程において、無機材料及びゴムからなる複合粒子が生成される。複合層の非凝固分散液の代わりにALを使用することによって、ポリマーに対する無機材料の比率が先行する配合工程で決定されるので、複合層の均一性が確保され、従って、複合層の厚さ及び無機材料の量は正比例する。ALは、放置しても硬い沈殿物層を形成せず、これは、保管に適しており、浸漬の間、連続的な撹拌が必要とされる。少量のレオロジー調整剤、例えば、キサンタンガム、メチルセルロース又はクレイを添加すること良い。レオロジー調整剤なしの沈殿速度は、分散剤の濃度に依存することも分かった。透明な上澄み層の形成は、保管中の剥離を防止するというさらなる利点を有する。レオロジー調整剤を含まないALの粘度は30mPa・sを超えず、これは連続チェーン浸漬(表2に示すようなALの典型的な特性)に適している。
【0196】
図2A及び2Bに示されるように、物品は、複数浸漬プロセスを用いて層ごとに形成される。最初の工程(グループA)は、多価金属塩、離型添加剤及び湿潤剤を含む凝固剤配合物を使用する従来の凝固剤浸漬と同一である。本発明の方法は、追加のラテックス浸漬を、前に凝固剤浸漬(
図2A及び2Bの凝固剤浸漬2及び3)してから行われるという点で、従来の処理と異なる。凝固剤浸漬2及び3は、湿潤剤及び多価金属塩を含むが、離型添加剤を含まない1つ以上の補助凝固剤配合物を使用して実施され、それによって、多価金属塩濃度を、後のラテックス浸漬の組成及び必要とされる層厚さに合わせられる(補助凝固剤配合物の例を表4に示す)。
図2A及び
図2Bに示すように、グループBの最後の工程に達した後、グループBの工程を複数回繰り返すことによって、追加の層を構築することができる。各グループ(A、B、C及びD)における乾燥及び浸出工程は任意である。補助凝固剤浸漬を使用することにより、3層以上のサンドイッチ構造を容易に達成でき、それらの各々は定義された厚さを有し、第1と第3の層に同じ配合物を使用することが可能となる。補助凝固剤浸漬を使用することにより、ポリマー/無機複合粒子配合物の非常に薄い層を堆積させ、続いて従来のゴムの厚い支持層を堆積させることが可能となる。補助凝固剤配合物中に離型添加剤が存在しないことが、物品の個々の層の層間剥離を防止するために重要である。
【0197】
【0198】
【0199】
【0200】
実施例1
L1: セラミック手袋フォーマーを洗浄し、乾燥し、標準的な凝固剤配合物(14%硝酸カルシウム)でコーティングし、次いで70℃で乾燥する。乾燥コーティングされたフォーマーを、7秒の総接触時間で、標準的なXNBR化合物(総固体化合物、15%、pH: 10.0)に浸漬して、第1の層を形成する。次いで、第1の層を有するフォーマーを、90℃で1分間乾燥し、60℃の水中で10秒間浸出し、35℃で60秒間乾燥する。
【0201】
L2:次に、層L1を有する乾燥フォーマーを、14秒の総接触時間で、第1の補助凝固剤配合物(表4、湿潤剤としてテリック320)に浸漬する。次いで、フォーマーを、70℃で5分間乾燥させ、続いて、表1に示すようなポリマー/無機複合粒子配合物(非カルボキシル化ラテックスとしてCL-750、湿潤剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、粒子状無機物質として酸化ビスマス、レオロジー調整剤なし、分散剤としてダウケミカルズ製アクメル1510を使用、Mw=60000g/モル)中に7秒の総接触時間で浸漬して、第2の層を堆積し、続いて、90℃で1分間乾燥し、水中で60℃で10秒間浸出し、35℃で60秒間乾燥する。
【0202】
L3:次に、層L1+L3を有する乾燥フォーマーを、14秒の総接触時間で第2の補助凝固剤配合物(表4)に浸漬する。次いで、フォーマーを、70℃で5分間乾燥し、続いて、層L1に使用したのと同じ標準的なXNBR化合物に、7秒の総接触時間で浸漬して、第3の層を堆積する。次に、3つの層を有するフォーマーを、90℃で1分間乾燥し、60℃で2分間浸出する。浸出後、3層膜にビード形成し、90℃で5分間乾燥し、最後に、120℃で20分間硬化する。硬化後、手袋をフォーマーから剥がす。各層の厚さは、後の層L2+L3又はL3が省略されたサンプルで評価する。
【0203】
【0204】
実施例2
実施例1の工程を繰り返したが、表1に示すような配合物には、200phrの代わりに600phrの粒子状無機材料を使用した。
【0205】
実施例1、2の物性を表6に示す。
【0206】
実施例3
実施例3で使用した放射線ポリマー/無機複合粒子配合物を沈殿させ、室温で4週間保管した。1時間穏やかに撹拌した後、保管した配合物を用いて実施例1の工程を繰り返した。
【0207】
実施例1~3の減衰結果を表5に示す。
【0208】
実施例4
L2の後の補助凝固剤浸漬を省いたことを除いて、実施例1の工程を繰り返した。
【0209】
実施例1~4の個々の層の厚さを表7に示す。補助凝固剤を使用したときのみ、望ましい分布の層厚さが得られたことは明らかである。
【0210】
【0211】
【0212】