(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】補助ホールデバイスを用いるホールデバイス感度の較正
(51)【国際特許分類】
G01R 33/07 20060101AFI20230301BHJP
G01R 33/02 20060101ALI20230301BHJP
G01R 35/00 20060101ALI20230301BHJP
G01R 15/20 20060101ALI20230301BHJP
G01R 19/165 20060101ALI20230301BHJP
H10N 52/00 20230101ALI20230301BHJP
【FI】
G01R33/07
G01R33/02 X
G01R35/00 M
G01R15/20 A
G01R19/165 E
H10N52/00 A
H10N52/00 S
(21)【出願番号】P 2020556278
(86)(22)【出願日】2019-04-10
(86)【国際出願番号】 US2019026805
(87)【国際公開番号】W WO2019199983
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-04-06
(32)【優先日】2018-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230129078
【氏名又は名称】佐藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】アラップ ポリー
(72)【発明者】
【氏名】スリナス ラマスワミ
(72)【発明者】
【氏名】バヘル エス ハルーン
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-213992(JP,A)
【文献】特開2015-194450(JP,A)
【文献】特開平2-306183(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0192078(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0363693(US,A1)
【文献】特表2011-513706(JP,A)
【文献】特表2008-513762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/02
G01R 33/07
G01R 15/20
G01R 35/00
H01L 43/02
H01L 43/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホール効果センサ
装置を動作させる方法であって、
励起コイルによって較正交番磁場を生成することと、
第1のバイアス電流を第1のホール効果センサ要素に提供
して第2のバイアス電流を第2のホール効果センサ要素に提供することであって、前記第1のホール効果センサ要素が前記第2のホール効果センサ要素に近接する、前記第1のバイアス電流
と前記第2のバイアス電流
とを提供すること
と、
前記第1のホール効果センサ要素をターゲット磁場に暴露
し、前記第1のバイアス電流と前記ターゲット磁場とに応答して前記第1のホール効果センサ要素によって第1のホール電圧を生成し、前記第1のホール電圧に応答してセンサ信号を生成すること
と、
前記第2のホール効果センサ
要素を前記較正交番磁場に暴露
し、前記第2のバイアス電流と前記較正交番磁場とに応答して前記第2のホール効果センサ要素によって第2のホール電圧を生成すること
と、
前記
第2のホール電圧に応答して交流電流(AC)較正信号を生成すること
と、
前記AC較正信号
とターゲット応答信号と
の間の差に
応答してエラー信号を生成すること
と、
前記エラー信号を最小化するように前記第2のバイアス電流を調整すること
と、
前記
調整された第2のバイアス電流を追跡するように前記第1のバイアス電流を調整することと、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
センサ出力信号を形成するために前記センサ信号をバッファすることを更に含む、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
フィルタ処理されたセンサ信号を形成するために前記センサ信号をフィルタリングすること
と、
フィルタ処理された較正信号を形成するために前記
AC較正信号をフィルタリングすること
と、
前記フィルタ処理された較正信号を前記フィルタ処理されたセンサ信号から減じることによってオフセット相殺信号を生成すること
と、
センサ出力信号を形成するために前記センサ信号
と前記オフセット相殺信号
とを組み合わせること
と、
を更に含む、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、
前記
較正交番磁場が
前記励起コイルによって時間と共に周期的に生成される、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、
スピニング電流バイアスを前記第1のホール効果センサ
要素に提供するために、前記第1のバイアス電流を切り替えることによって前記第1のホール
電圧におけるオフセットを低減することを更に含む、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、
前記第1のホール効果センサ
要素が、前記第2のホール効果センサ
要素の周辺に置かれる複数のホール効果要素を含む、方法。
【請求項7】
請求項3に記載の方法であって、
スピニング電流バイアスを前記第2のホール効果センサ
要素に提供するために、前記第2のバイアス電流を切り替えることによって前記第2のホール
電圧におけるオフセットを低減することを更に含む、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、
前記スピニング電流バイアスが前記第1のホール効果センサ
要素に提供されない、方法。
【請求項9】
請求項3に記載の方法であって、
前記第2のホール効果センサ
要素が、前記第1のホール効果センサ
要素の周辺に置かれる複数のホール効果要素を含む、方法。
【請求項10】
ホール効果センサ
装置を動作させる方法であって、
励起コイルによって較正磁場を生成することと、
第1のバイアス電流を第1のホール効果センサ要素に提供
して第2のバイアス電流を第2のホール効果センサ要素に提供することであって、前記第1のホール効果センサ要素が前記第2のホール効果センサ要素に近接する、前記第1のバイアス電流
と前記第2のバイアス電流
とを提供すること
と、
前記第1のホール効果センサ要素
と前記第2のホール効果センサ要素
とをターゲット磁場に暴露
し、前記第1のバイアス電流と前記ターゲット磁場とに応答して前記第1のホール効果センサ要素によって第1のホール電圧を生成すること
と、
前記第2のホール効果センサ要素を前記較正磁場に暴露
し、前記第2のバイアス電流と前記ターゲット磁場と前記較正磁場とに応答して前記第2のホール効果センサ要素によって第2のホール電圧を生成すること
と、
前記第2のホール電圧
と前記第1のホール電圧と
の差に
応答してオフセット相殺信号を生成すること
と、
出力信号を生成するために前記第1のホール電圧
から前記オフセット相殺信号を減
算すること
と、
固定された
範囲内に
前記第2のホール電圧を維持するように前記第2のバイアス電流を調整すること
と、
前記
調整された第2のバイアス電流を追跡するように前記第1のバイアス電流を調整すること
と、
を含む、ホール効果センサ
装置を動作させる方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
スピニング電流バイアスを前記第2のホール効果センサ
要素に提供するために、前記第2のバイアス電流を切り替えることによって前記第2のホール電圧におけるオフセットを低減することを更に含む、方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法であって、
前記
較正磁場が
前記励起コイルによって時間と共に周期的に生成される、方法。
【請求項13】
請求項10に記載の方法であって、
前記第2のホール効果センサ
要素が、前記第1のホール効果センサ
要素の周辺に置かれる複数のホール効果要素を含む、方法。
【請求項14】
ホール効果センサ
装置であって、
第2のホール効果センサに近接して置かれる第1のホール効果センサ
と、
前記第1のホール効果センサに結合される第1のバイアス電流源
と、
前記第2のホール効果センサに結合される第2のバイアス電流源であって、前記第1のバイアス電流
源が前記第2のバイアス電流
源を追跡するように配置される、前記第2のバイアス電流源
と、
前記第2のホール効果センサに近接して置かれる励磁コイル
と、
前記第2のホール効果センサの出力と前記第2のバイアス電流源の制御入力との間に結合されるフィードバック回路
と、
を含む、ホール効果センサ
装置。
【請求項15】
請求項14に記載のホール効果センサ
装置であって、
前記第1のホール効果センサが、前記第2のホール効果センサの周辺に置かれる複数のホール効果要素を含む、ホール効果センサ
装置。
【請求項16】
請求項15に記載のホール効果センサ
装置であって、
前記第1のホール効果センサにおいてスピニングバイアス電流を生成するスイッチング回路要素を更に含む、ホール効果センサ
装置。
【請求項17】
請求項14に記載のホール効果センサ
装置であって、
前記第1のホール効果センサからの出力と前記第2のホール効果センサからの出力とを受信する
ように結合されるオフセット相殺回路であって、オフセット相殺出力を有する、前記オフセット相殺回路
と、
前記第1のホール効果センサからの出力を受信
し、前記オフセット相殺出力を受信する
ように結合される減算器回路であって、前記第1のホール効果センサから
のオフセット補正出力を提供する出力を有する、前記減算器回路
と、
を更に含む、ホール効果センサ
装置。
【請求項18】
請求項17に記載のホール効果センサ
装置であって、
前記フィードバック回路が、前記第1のホール効果センサからの出力
と前記第2のホール効果センサからの出力
とを受信する
ように結合される減算器を含み、前記減算器が前記第2のバイアス電流源の前記制御入力に結合される出力を有する、ホール効果センサ
装置。
【請求項19】
請求項17に記載のホール効果センサ
装置であって、
前記第2のホール効果センサが、前記第1のホール効果センサの周辺に置かれる複数のホール効果要素を含む、ホール効果センサ
装置。
【請求項20】
請求項19に記載のホール効果センサ
装置であって、
前記第2のホール効果センサにおいてスピニングバイアス電流を生成するスイッチング回路要素を更に含む、ホール効果センサ
装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、ホール効果デバイスに関し、より具体的にはホール効果デバイスの較正に関する。
【背景技術】
【0002】
ホール効果センサは、低いコスト、小さな面積、及び容易な統合可能性に起因して、媒体感度磁気センサの業界の選択肢である。しかしながら、すべての半導体ホール効果センサは、不整合、ドーピング変動、及び望ましくない圧電効果などの、製造プロセスの非理想性の結果として生じるオフセットに悩まされる。「スピニング電流」と呼ばれる技法は、厳しい帯域幅の規模縮小を犠牲にして、オフセットを部分的に低減する。なおも残余オフセットは、多くの適用例において確度を限定するのに充分な大きさである。また、残余オフセットは、温度、パッケージング、応力、変動、及びエージングなどの要因に依存してドリフトする。
【0003】
いわゆる「ホール効果」は、磁場が電流に対して垂直に向くときに発生する。典型的なホールセンサは、通常、導電性材料のストリップ又はプレートを含み、プレートを介して電流が流れる。磁場の成分がプレートに対して垂直なようにプレートが磁場内に置かれるとき、プレート内に、磁場の方向及び電流フローの方向の両方に対して垂直な方向のホール電圧が発生する。
【0004】
半導体ホール効果センサは、典型的に、シリコンから生成される感知要素を含む。ここれらのデバイスの磁気感度は、感知要素を構築するために用いられる材料の電子移動度、ミューに直接関係し、これによって制限される。シリコンは、典型的にはおよそ1500cm2/(Vs)の電子移動度を有する。
【発明の概要】
【0005】
記載される例において、ホール効果センサが、一次ホール効果センサ要素及び補助ホール効果センサ要素を含む。或る範囲の温度及び他の要因にわたって補助ホール電圧をほぼ一定に維持するように、補助ホール効果センサのバイアス電流を制御するためにフィードバックループにおいて用いられる補助ホール電圧を生成するために、既知の磁場が補助ホール効果センサに印加される。同じ範囲の温度及び他の要因にわたって一次ホール効果センサの感度をほぼ一定に維持するように、補助ホール効果センサのバイアス電流を追跡するために、一次ホール効果センサのためのバイアス電流が制御される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【0007】
【
図2】
図1の例示のホール効果センサの動作を図示する。
【0008】
【0009】
【
図4】補助ホール効果センサを備える一次ホール効果センサのセットの例示の配置を図示する。
【0010】
【
図5】
図4のホール効果センサの例示のセットのための較正回路要素を図示するブロック図である。
【0011】
【
図6】
図4のホール効果センサを含む基板の等角図である。
【0012】
【
図7】補助ホール効果センサを備える一次ホール効果センサのセットの他の例示の配置を図示する。
【
図8】補助ホール効果センサを備える一次ホール効果センサのセットの他の例示の配置を図示する。
【
図9】補助ホール効果センサを備える一次ホール効果センサのセットの他の例示の配置を図示する。
【
図10】補助ホール効果センサを備える一次ホール効果センサのセットの他の例示の配置を図示する。
【0013】
【
図11】ホール効果センサの例示のセットのためのオフセット補正回路要素と共に、較正回路要素の別の例を示すブロック図である。
【0014】
【
図12A】
図11の回路要素における様々なポイントの周波数応答曲線を図示する。
【
図12B】
図11の回路要素における様々なポイントの周波数応答曲線を図示する。
【
図12C】
図11の回路要素における様々なポイントの周波数応答曲線を図示する。
【
図12D】
図11の回路要素における様々なポイントの周波数応答曲線を図示する。
【0015】
【
図13】補助較正ホール効果センサを備える一次ホール効果センサのセットの動作を示すフローチャートである。
【0016】
【
図14】ホール効果センサを用いる例示のシステムを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面において、一貫性のために同様の要素は同様の参照番号によって示される。
【0018】
開ループ及び閉ループの較正方法は、様々な状況において適用される。こうした状況の一つは、ホール効果磁場センサの較正にある。ホール効果磁場センサは、磁場を測定するために用いられ得る固体磁気センサデバイスである。ホール効果磁場センサの適用には高確度が必要であるが、プロセス変動、温度、及びパッケージ応力変化を伴う感度における変動及びドリフトを受ける。ホール効果センサが示す複雑な温度依存性に対する制御のための従来のソリューションは、いわゆる「開ループ」温度補償回路要素構成を実装することである。プロセス変動の各部分の感度の微調整(又は、「トリミング」)が成され得、温度及び応力についての感度の変化は、オンチップ温度及び応力センサ並びに事前評価補償テーブルを用いることによって補償され得る。この手法には、費用の掛かる個々のデバイスの多地点特徴化、及び経時的な再較正が必要である。センサの較正のための磁場励起は、オンチップ電流コイル又は外部磁場源を用いてつくることができる。しかしながら、測定されるべき信号が較正信号と干渉する可能性があるため、較正はデバイスがオフラインである(動作中でない)ときにのみ実行可能である。
【0019】
開ループ技法の代替として、外部磁場が無いときに連続的較正を行なうために閉ループ方法が実装されている。閉ループ較正は、通常、既知の磁場をデバイスに印加し(既知の温度不感受性電流を、オンチップ/オフチップコイル/センサ近くの他の適切なトレースを介して流すなど)、その後、センサ出力を所望の応答と比較し、コンパレータ誤差を最小化するためにセンサ感度/利得を調節する、というように働く。その結果、開ループ較正よりも大幅に高い確度となる。
【0020】
ホール効果センサの従来の閉ループ較正に伴う問題は、ホール効果センサ近くの較正電流が、動作温度を変化させるのに充分な熱を発生させる可能性があり、結果として感度を変化させ、一次測定に影響を与えることである。また、閉ループ較正は、外部磁場が無いときにうまく作動することが実証されているが、実世界での応用例において干渉を完全になくすことは簡単ではなく、磁気的に遮蔽された環境におけるオフライン較正を必要とし得る。
【0021】
改良された閉ループ較正技法が、2016年1月14日に出願された、アラップ ポリー(Arup Polley)らによる「広帯域信号を用いる閉ループデバイス較正」という名称の米国特許第9,810,759号に記載されており、これは、参照により本明細書に組み込まれる。しかしながら、そこに記載されている技法は、較正励磁信号について、制限されたホールセンサシステム帯域幅の割り当てを必要とし得る。帯域内励磁信号が出力に容量結合し得る。較正励磁信号と測定されている外部磁場との相関が生じる場合、較正誤差が生じ得る。コイル加熱効果は、反対の磁場をつくるためにホール効果センサにわたる2つの別個のループなどの、複雑なループ設計の使用を妨げる可能性がある。
【文献】米国特許第9,810,759号
【0022】
本明細書に記載する較正技法の実施形態は、従来の閉ループ較正技法が遭遇する様々な問題を避けることができる。一次ホール効果センサの利得を較正するために、別個の整合されるホール効果センサを用いることができる。このようにして、交流電流(AC)較正/励磁信号が、一次ホール効果センサの信号帯域を外れるより高い周波数を有し得る。補助ホール効果センサは、一次ホール効果センサデバイスよりも多くの利用可能な帯域幅を有するため、高周波数磁場並びに複素周波数ホッピング技法が容易に適用され得る。この技法において、ホール効果センサ要素から妥当な距離だけ離れた位置にある単一の大きなコイルが用いられ得、したがって加熱効果を大幅に低減させることができる。別個の補助チャネルは、閉ループ較正機能を提供するために、帯域内信号及び高周波数較正信号のデカップリングを提供する。
【0023】
本明細書に記載される別の例示のホール効果センサが、閉ループ較正機能に加えて閉ループオフセット較正機能を含み得る。
【0024】
図1は、例示の水平ホール効果センサデバイス100の図である。
図2は、ホール効果センサ100の等角図である。ホール効果センサの一般概念は、本明細書では詳細に記載しない。上記のように、「ホール効果」は磁場が電流に対して垂直に向くときに生じる。磁場は、導体にわたって、磁場の方向及び電流フローの方向の両方に対して垂直な方向に、ホール電圧と呼ばれる電圧差を生成する。ホール電圧を測定することによって、磁場の大きさを判定することが可能である。
【0025】
本例において、ホール効果センサ要素102は、既知の又は後に開発される半導体製造技法を用いて、基板120上に製造され得る。ホール効果センサの感度を決定する主要な要因は、高電子移動度である。ホール効果センサに特に適した材料は、ヒ化ガリウム(GaAs)、ヒ化インジウム(InAs)、リン化インジウム(InP)、アンチモン化インジウム(InSb)、グラフェンなどである。
【0026】
コンタクト領域104、106は、ホール効果センサ要素層を介してバイアス電流110を提供するため、及び結果として生じるホール電圧112を感知するために、要素層102と接して形成される。
【0027】
ホール効果要素102は、
図1に示されるように、従来の十字形にパターン化され得る。他の実施形態において、八角形又はほぼ八角形、三角形又はほぼ三角形、四つ葉形又はほぼ四つ葉形、円形又はほぼ円形などの、他の要素形状がパターン化され得る。同様に、コンタクトパッド104、106及び対応する配線の数は、要素層102のジオメトリに応じて所与の適用例に合うように変更され得る。
【0028】
本例において、ホール電圧112は式(1)によって表され得る。
VHall=IbiasBZ/nte (1)
上式で、
Ibias=形状を横切る電流
BZ=形状に垂直な磁場
n=電荷キャリア密度
t=ホール要素の厚み
e=素電荷
である。
【0029】
この設計は、結果としておよそ300V/AT(ボルト/アンペア×テスラ)の感度を生じさせる。例えば、1mT場における100μAのバイアス電流で、およそ30μVのホール電圧が生成されることになる。チャネル抵抗はおよそ5.7kオームであり得る。
【0030】
図2は、例示の感知構成において、ホール効果要素102の上に置かれた磁石230を図示する。磁石は、感知するためにホール効果要素106に対してターゲット磁場を提供する。バイアス電流110の流れに関して垂直に又は幾分垂直なようにホール要素102に侵入する磁石230からの磁束線232は、コンタクト106にわたって形成されるホール効果電圧112を生成する。
【0031】
図3は、水平ホール効果センサ100などのホール効果センサデバイスの電気的等価物を図示する概略図である。このモデルにおいて、バイアス電流が、ポートNにおいて注入され、ポートSにおいて除去され、ホール電圧が、ポートW及びEにわたって測定されるものと想定する。バイアス電流への有効チャネル抵抗R1、及びホール電圧パスにおけるチャネル抵抗R0が存在する。また、ホイートストンブリッジ抵抗効果が、抵抗器R2~R5によって表される。通常、たとえ最新式のリソグラフィ及び製造プロセスであっても、ホイートストンブリッジ型の電気モデルにおける不可避の抵抗不整合に起因して、大きなオフセットが存在する。これらの抵抗効果の各々及びすべてが、オフセット電圧ドリフトに寄与するために時間及び温度と共に変動し得る。
【0032】
「スピニング電流」と呼ばれるバイアス電流補償技法を用いて、オフセットを少なくとも部分的に低減させ得る。本技法において、バイアス電流は、ホール要素上のコンタクトN、S、E、Wの少なくとも2つの異なるペアに順次提供される。供給される電流の重ね合わせは、ホール効果センサデバイスにおける連続的なスピニング電流ベクトルを生じさせる。対応する端子間の電圧を同時に測定することによって、ホール電圧及び周期オフセット電圧を含む信号を分離することができる。少なくとも1周期にわたって信号を平均することによって、オフセット電圧をなくし得る。
【0033】
図4は、補助較正ホール効果センサ405を備える、4つの一次ホール効果センサ401~404のアレイ400の例示的配置を示す。本例において、4つの一次ホール効果センサ401~404は「クワッドホール効果センサ」と呼ばれ得る。ホール効果センサアレイ400は、重心を画定する単一の中央ホール効果センサ要素405を含み、重心の周辺に、直交して結合されるクアッドホール効果センサ要素が配置される。単一のホール効果センサ405及び直交して結合されるクワッドホール効果センサの各々は、通常、それら独自の対称性に関して、及びホール効果センサアレイ400の他の要素の対称性に関して、同様の形状(例えば、八角形)、組成、及び機能である。こういった要素の各々は対称構成で配置されて、例えば、ホール効果センサアレイ400の各要素に対する磁場の効果が、ホール効果センサアレイの他の要素の各々に対するそれぞれの効果と実質的に類似するようにされる。直交して結合されたクワッドホール効果センサのスイッチされるバイアス電流フローの方位は、φ=0などの単一スイッチング位相について例示される。
【0034】
動作において、単一のホール効果センサ405は、磁場に応答して高帯域幅ホール効果電圧を生成する。例えば、単一のホール要素405はスピニング電流技法を用いてバイアスされないため、単一のホール要素405は磁場に応答して高帯域幅ホール効果電圧を生成する。対照的に、近接する周辺に配置される直交して結合されたクワッドホール効果センサは、スピニング電流技法を用いてバイアスされ、この場合、直交して結合されたクワッドホール効果センサ要素のバイアス電流は、北方向、東方向、南方向、及び西方向などの4方向の各々に切り替えられる。直交して結合されたクワッドホール効果センサのバイアス電流は、スイッチング位相の変化に応答したバイアス電流の方向の変化にかかわらず、バイアス電流の方向が各方向に等しい数の電流フローを有するように切り替えられる。本例は、各スイッチング位相上の各方向に一つの電流フローを有する。
【0035】
図5は、
図4の例示のクワッドホール効果センサ400についての較正回路要素を図示するホール効果センサデバイス500のブロック図である。ホール効果センサデバイス500は、本明細書に示されるトランジスタ並びにアナログ及びデジタル回路要素の他の構成要素を形成するために、既知の又は後に開発される半導体製造技法を用いて、シリコンなどの基板上に製造され得る。複数のデバイスが基板上に形成され、その後、個別のダイを形成するために切り離され得る。ダイは、後により大きなシステムにおいて用いられ得る構成要素を形成するために、既知の又は後に開発されるパッケージング技法を用いて、封止されるか又は他の方法でパッケージ化され得る。
【0036】
本例において、バイアス電流ジェネレータ512は、クワッドホール効果センサアレイ401~404において上記で説明したスピニング電流技法(SCT)配置を形成するために、スイッチング回路を介してバイアス電流を提供する。クワッドホール効果センサアレイ401~404によって生成されたホール電圧は、アナログフロントエンド(AFE)増幅器510によって受け取られ、クワッドホール効果センサアレイ401~404上に当たるターゲット磁場を表す出力信号511を生成する。AFE増幅器510は、クワッドホール効果センサ401~404の各々の出力に結合される複数の入力を含み得る。AFE増幅器510は、出力信号511から高周波数干渉を除去するために低域フィルタを含み得る。例えば、低域フィルタは、10kHzから500kHzの範囲内などの、或る周波数より上の周波数をフィルタ除去するように設計され得る。
【0037】
AFE増幅器510は、既知の又は後に開発されるアナログ回路技法を用いて製造され得る。いくつかの例において、デジタル出力を生成するためにアナログ-デジタルコンバータを含み得る。
【0038】
SCTは、公称動作温度、プロセス変動、及びパッケージ応力レベルにおいて許容し得る程度に低いオフセット電圧を有する標準ホール出力511を生成する。上記で説明したように、閉ループ較正ループを用いて、広範な動作温度、プロセス変動、及びパッケージ応力にわたって測定感度を維持し得る。本例において、コイル521などの励磁構造が、クワッドホール効果センサ400を含む基板上に製造される。励磁コイル521は、クワッドホール効果センサアレイ400を囲むように構成され得るが、コイル521を介して流れる電流に起因してクワッドホール効果センサアレイ400の加熱を生じさせないように充分離して置かれ得る。クワッドホール効果センサ400を含む基板上に電流源520も製造され得る。電流源520は、コイル521において高周波数AC電流を生成するように設計され、高周波数AC電流は、既知の磁場強度を有する高周波数磁場を生成する。
【0039】
バイアス電流源513は、補助ホール効果センサ405に提供されるバイアス電流514を生成する。ホール効果センサ405は、較正コイル521によって生成されるバイアス電流514及び磁場に応答してホール電圧を生成し、これは、AFE515によって増幅及び復調される。次いで、AFE515からの出力が、「所望の応答」電圧と呼ぶこともある基準電圧517と比較される。コンパレータ516は、AFE515の出力及び所望の応答517を比較し、バイアス電流源513を制御するために用いられ得るフィードバック信号518を生成する。このようにして、バイアス電流514の大きさを調整することによって、或る範囲の動作温度、プロセス変動、及びパッケージ応力にわたって、所望の応答電圧517にほぼ等しいAFE515の出力を維持するために、閉ループが形成される。
【0040】
バイアス電流源512は、フィードバック信号518にも結合され、クワッドホール効果センサアレイ400に提供されるバイアス電流の大きさをバイアス電流514に比例して調整するように設計される。このようにして、クワッドホール効果センサアレイの出力は、温度、プロセス変動、及びパッケージ応力を補償するように調整される。
【0041】
較正電流源の周波数520は、クワッドホール効果センサ400の予期される動作範囲より上で動作するように設計され得る。このようにして、クワッドホールアレイセンサ400上で励磁コイル521によって生成される磁場の効果は、AFE510によってフィルタ除去され得る。
【0042】
別の例において、較正電流源520の周波数は、クワッドホール効果センサ400の予期される動作範囲より下で動作するように設計され得る。このようにして、クワッドホールアレイセンサ400上でコイル521によって生成される磁場の効果は、AFE510と共に含まれる高域フィルタによってフィルタ除去され得る。
【0043】
図6は、
図4のクワッドホール効果センサ400を含む基板600の等角図である。本例において、基板600は、
図5に関して上記でより詳細に説明したような、クワッドホール効果センサ400及び補助ホール効果センサ405を製造するために既知の又は後に開発される製造技法を用いて製造されたシリコンダイであり得る。コイル521は、既知の又は後に開発される製造技法を用いて、基板600上の一つ又は複数の金属層上に製造され得る。
図5に示される追加の回路要素も、既知の又は後に開発される半導体処理技法を用いて基板600上に製造され得る。
【0044】
本例において、励磁コイル521は、加熱の影響を大幅に低減させるために、ホール効果センサ要素から妥当な距離離れて置かれる単一の大きなコイルとして示されている。別の例において、励磁コイルがホール効果センサにより近接して置かれ得る。別の例において、励磁コイルが、周辺一次ホール効果センサに重なるように置かれ得る。
【0045】
このようにして、一次ホール効果センサ要素に用いられる周波数帯域を外れたAC較正信号506が生成され得る。これにより、較正ニーズのために一次ホール効果センサ帯域幅を割り当てるいかなる必要性もなくされる。これにより、一次ホール効果センサ要素によって生成される帯域内ホール電圧信号への較正信号の容量結合もなくし得る。
【0046】
高周波数磁場並びに複素周波数ホッピング技法は、本明細書で説明する較正技法によって提供されるよりも多くの利用可能帯域幅を伴う較正プロセスに容易に用いられ得る。これにより、較正誤差を生み出す可能性のある、較正信号と外部入力磁気信号との相関を避けることができる。
【0047】
本明細書で説明する技法は、ホール効果センサ要素400の周りの妥当な距離にある単一の大きな励磁コイル521のみを必要とし、そのため、較正コイル521によって生じる加熱の影響が大幅に低減され得る。
【0048】
図7は、補助較正ホール効果センサ705を備える一次ホール効果センサのセット700の別の例示の配置を図示する。この例では、ホール効果センサ要素701~705は十字形である。また、矢印は一つのスイッチング位相についてのSCT電流方位の別の例を図示する。
【0049】
補助ホール効果センサ705、及び周辺一次ホール効果センサの各々は、通常、それら独自の対称性に関して、及びホール効果センサアレイ700の他の要素の対称性に関して、同様の形状、組成、及び機能である。こういった要素の各々は対称構成で配置されて、例えば、ホール効果センサアレイ700の各要素に対する磁場の効果が、ホール効果センサアレイの他の要素の各々に対するそれぞれの効果と実質的に類似するようにする。一次ホール効果センサの切り替えられたバイアス電流フローの方位は、φ=0などの単一スイッチング位相について図示されている。
【0050】
図8は、補助較正ホール効果センサ805を備える一次ホール効果センサのセット800の別の例示の配置を図示する。この例では、ホール効果センサ要素801~805は正方形である。また、矢印は一つのスイッチング位相についてのSCT電流方位の別の例を図示する。
【0051】
補助ホール効果センサ805、及び周辺一次ホール効果センサの各々は、通常、それら独自の対称性に関して、及びホール効果センサアレイ800の他の要素の対称性に関して、同様の形状、組成、及び機能である。こういった要素の各々は対称構成で配置されて、例えば、ホール効果センサアレイ800の各要素に対する磁場の効果が、ホール効果センサアレイの他の要素の各々に対するそれぞれの効果と実質的に類似するようにされる。一次ホール効果センサの切り替えられたバイアス電流フローの方位は、φ=0などの単一スイッチング位相について図示されている。
【0052】
図9は、補助較正ホール効果センサ909を備える一次ホール効果センサのセット900の別の例示の配置を図示する。この例では、ホール効果センサ要素901~909は八角形であるが、
図4に比べて追加の要素が存在する。また、矢印は一つのスイッチング位相についてのSCT電流方位の別の例を図示する。
【0053】
補助ホール効果センサ909、及び周辺一次ホール効果センサの各々は、通常、それら独自の対称性に関して、及びホール効果センサアレイ900の他の要素の対称性に関して、同様の形状、組成、及び機能である。こういった要素の各々は対称構成で配置されて、例えば、ホール効果センサアレイ900の各要素に対する磁場の効果が、ホール効果センサアレイの他の要素の各々に対するそれぞれの効果と実質的に類似するようにされる。一次ホール効果センサの切り替えられたバイアス電流フローの方位は、φ=0などの単一スイッチング位相について示される。
【0054】
図10は、補助較正ホール効果センサのセット1013~1015を備える一次ホール効果センサのセット1000の別の例示の配置を図示する。この例では、ホール効果センサ要素1001~1016は十字形である。また、矢印は一つのスイッチング位相についてのSCT電流方位の別の例を図示する。この例では、SCTは、矢印によって示されるように、補助ホール効果センサのセット1013~1016にも適用され得る。
【0055】
補助ホール効果センサのセット1013~1016、及び周辺一次ホール効果センサの各々は、通常、それら独自の対称性に関して、及びホール効果センサアレイ1000の他の要素の対称性に関して、同様の形状、組成、及び機能である。こういった要素の各々は対称構成で配置されて、例えば、ホール効果センサアレイ1000の各要素に対する磁場の効果が、ホール効果センサアレイの他の要素の各々に対するそれぞれの効果と実質的に類似するようにされる。一次ホール効果センサの切り替えられたバイアス電流フローの方位は、φ=0などの単一スイッチング位相について示される。
【0056】
様々な対称アレイの例が本明細書において示されたが、これらは他の構成を制限するものとみなすべきではない。例えば、より多数又はより少数の要素を用いることもできる。様々なSCT実装及びスイッチングシーケンスが用いられ得る。別の例において、非対称アレイが用いられ得る。それぞれの場合において、補助ホールセンサ要素に提供されるバイアス電流は、
図5のフィードバック信号518に類似する閉ループ信号に応答して調整される。同様に、それぞれの場合において、一次ホール効果センサ要素の各々に提供されるバイアス電流は、
図5で説明するようなフィードバック信号における変化を追跡するように調整される。
【0057】
図11は、較正回路要素の別の例を含むホール効果センサシステム1100を図示するブロック図である。
図12A~
図12Dは、
図11の回路要素における様々なポイントの電圧対周波数応答曲線を図示する。
【0058】
この例はオフセット補正回路要素も含む。この例では、単一の一次ホール効果センサ1101のみが、補助ホール効果センサ要素1102~1105のアレイによって囲まれる。また、この本例では5つの八角形のホール効果センサ要素が示されているが、他の例ではより多いか又はより少ない要素のアレイを用いることができ、また、
図7~
図10に図示されるように、異なる形状の要素を用いることもできる。
【0059】
この例では、一次ホール効果センサ1101はオフセット制御にSCTを用いない。これにより、センサシステム1100に当たる高周波数ターゲット磁場に応答して、高帯域幅ホール電圧信号1107が生成され得る。バイアス電流源1122によってバイアス電流が提供される。ホール電圧信号は、プリアンプ1108の入力に提供される。
図12Aは、ホール効果センサ1101によって生成されるホール電圧信号1107の周波数応答を図示する。
図12Aの線1207によって示されるように、高帯域幅ホール電圧信号1107は著しいオフセットを有し得る。例えば、例示のホール効果センサにおいて、およそ1mT(ミリテスラ)と同等のオフセットが存在し得る。この例では、
図12Aの1201において示されるように、受け入れ可能なオフセットは、50μT未満とすべきである。
【0060】
プリアンプ1108の出力が、アンチエイリアスフィルタ(AAF)1109に提供される。AAF 1109は、ナイキスト周波数を上回る周波数のパワーを低減させることによって、サンプリング定理をほぼ又は完全に満たすように、信号の帯域幅を制約するために用いられ得る。AAF 1109の出力が、スイッチドキャパシタ(SC)復調器1111に提供される。SC復調器1111は、スピニング電流バイアス技法を用いるホールセンサ1101の出力の離散時間復調技法を実装する。また、SC復調器1111は、低帯域出力1112を減算器1113の入力に提供する。
【0061】
この例では、4つの補助ホール効果センサ要素1102~1105は、一次ホール効果センサ1101の周辺に配列される。それらは、低帯域幅の低オフセットホール電圧を生成するために、補助バイアス電流源1122によるSCTを用いてバイアスされる。本例において、各補助ホール効果センサ1102~1105は、プリアンプ1115の入力に提供される低帯域幅較正信号を生成するため、各対応する補助ホール効果センサ上に当たる較正された磁場を生成するために、励磁信号1106によって各々駆動される、別個のコイル1132~1135によって囲まれる。
【0062】
コイルは、
図6に関して説明したものと同様に、ホール効果センサにわたって形成され得る、金属層などの一つ又は複数の導電層上に製造され得る。コイルは、いくつかの例において各補助ホール効果要素の周辺となるように配置され得る。他の例において、コイルは、各それぞれの補助ホール効果センサ要素に部分的に又は完全に重なるように配置され得る。較正磁場の大きさは、コイルの数及びコイルに提供される励磁電流によって決定される。この例では各コイルは24の巻き数を有し得るが、他の例では異なる数の巻き数が用いられ得る。より多くの巻き数は、より強い磁場を生成するが、より大きな電圧励磁信号を必要とし得る。
【0063】
コイルは固定周波数励磁電流1106によって励磁され得る。本例において、
図12Bに示されるように励磁周波数は10kHzであるが、他の例では、より高い又はより低い周波数が用いられ得る。いくつかの例において、励磁場とターゲット磁場との間の任意の相関を低減するために周波数ホッピング技法が用いられ得る。
【0064】
プリアンプ1115の出力が、アンチエイリアスフィルタ(AAF)1116に提供される。AAF 1116は、ナイキスト周波数を上回る周波数のパワーを低減させることによって、サンプリング定理をほぼ又は完全に満たすように信号の帯域幅を制約するために用いられ得る。AAF 1116の出力が、スイッチドキャパシタ(SC)復調器1117に提供される。本例において、較正バイアス源1123はおよそ10kHzの周波数で動作し、励磁コイルは、およそ200μTの磁束強さを有する磁場を生成するように設計される。結果として生じる信号は、
図12Bの1118において示される。この低帯域幅信号は、
図12Bの1202において示されるように、4つの補助ホール効果センサ要素1102~1105に適用されるSCTに起因して、低オフセットを有する。
【0065】
減算器1113は、
図12Cに示される10kHzの較正信号1218及び
図12Cに示されるオフセット相殺信号1203を含む信号1114を生成するために、高オフセット信号1112から低オフセット信号1118を減じる。
【0066】
SC復調D1(1117)は、ホールクワッド1102~1105の出力を復調するために必要である。SC復調D1(1117)は、復調と共に、高周波数磁気信号の何らかの望ましくないエイリアシングも生成し得る。エイリアシング効果が同一であり、結果として減算器1113によって完全な相殺が提供され得るように、高帯域幅パス(ホール1101)におけるSC復調器1111も、同じSC復調器構成を用いる。
【0067】
利得較正モジュール1120は、信号1114を受信し、或る範囲の温度、パッケージ応力、及びプロセスパラメータにわたって、較正信号1118の振幅をほぼ固定された値に維持するように、制御バイアス電流源1123に返送されるバイアス制御信号1121を生成する。バイアス電流源1122は、バイアス電流源1123を追跡するように構成され、それによって、同じ範囲の温度、パッケージ応力、及びプロセスパラメータにわたって、一次ホール効果センサ要素1101の感度を維持する。所望の応答方法が、較正信号1106によって励磁されるホールクワッド1102~1105に適用される。したがって、利得較正はホールクワッド1102~1105に適用可能である。近接及び対称配置に起因して、ホール効果センサ要素1101の利得/感度はホールクワッド1102~1105と同じであるものと想定し得る。
【0068】
AAF 1119は、信号1114を受信し、較正信号成分をフィルタ除去し、
図12Cに示されるオフセット相殺成分1203をプリアンプ1108の入力に提供する。プリアンプ1108は、高帯域幅の低オフセット出力信号1109を形成するために、ホール電圧信号1107からオフセット相殺成分1203を減じる。
図12Dは、
図12Dの1204において示される50μ未満のオフセットを伴う出力信号1109の周波数応答を図示する。この例ではプリアンプ1108は減算論理を含むが、別の例において、オフセット相殺信号1203とホール効果センサ1101からの出力とが、別個の減算回路において組み合わされ得る。
【0069】
別の例において、プリアンプ1108/1115において帯域幅制限を構成することによって、AAF 1110及び/又はAAF 1116を省くことができる。代替として、前述のように、2つのSC復調器1111、1117及び減算器1113を用いることによって、エイリアシング効果を相殺し得る。
【0070】
図13は、
図5におけるホール効果センサデバイス500又は
図11におけるホール効果センサデバイス1100などの、補助較正ホール効果センサを備える一次ホール効果センサのセットの動作を図示するフローチャートである。
【0071】
1302において、一次バイアス電流が一次ホール効果センサに提供され、補助バイアス電流が補助ホール効果センサに提供される。一次ホール効果は、
図5における要素401~404などの複数の要素であり得、又は、
図11における要素1101などの単一の要素であり得る。補助ホール効果センサは、
図5における要素405などの単一の要素であり得、又は、
図11における要素1102~1105などの複数の要素であり得る。
【0072】
1304において、一次ホール効果センサは、
図2における磁束線232又は
図14におけるターゲット磁束線1403などの、ターゲット磁場に曝露される。一次ホール効果センサ及び補助ホール効果センサは、
図4~
図11に示されるように互いに近接して配置され、したがって補助ホール効果センサもターゲット磁場に曝露されることになる。補助ホール効果センサは、
図5におけるコイル521又は
図11におけるコイル1332~1335などの、補助ホール効果センサに近接して配置される励磁コイルによって生成される高周波数較正磁場にも曝露される。一次ホール効果センサは、ホール効果センサの近接に起因して、較正磁場にも曝露され得る。
【0073】
1306において、補助ホール効果センサによって生成されるホール電圧によって、高周波数AC較正信号が生成される。
【0074】
1308において、AC較正信号は、励磁コイル、及び励磁コイルに提供される励磁電流の量に基づく、所望の又は「予期される」結果と比較されて、エラー信号を形成する。
【0075】
1310において、補助バイアス電流はエラー信号を最小化するように調整される。これには、或る範囲の温度、パッケージ応力、及びプロセス変動にわたって安定したホール電圧を生成するように補助ホール効果センサの感度を制御する効果がある。
【0076】
1314において、一次バイアス電流は補助バイアス電流を追跡するように調整される。これには、同じ範囲の温度、パッケージ応力、及びプロセス変動にわたって安定したホール電圧を生成するように一次ホール効果センサの感度を制御する効果がある。
【0077】
1316において、
図11におけるデバイス1100などのいくつかの例は、一次ホール効果デバイスによって生成される信号と補助ホール効果デバイスによって生成される信号とを比較することによって形成されるオフセット相殺信号を用いて、出力信号におけるオフセットを低減し得る。AC較正信号は、
図11の1119において示されるように、このオフセット相殺信号からフィルタ除去され得る。
【0078】
本プロセスは、連続して又はほぼ連続して行われ得る。例えば、1304において、較正磁場は或る時間期間の間励磁され、その後、或る時間期間の間オフにされ、周期的に反復され得る。
【0079】
いくつかの例において、較正磁場の周波数は一次ホール効果センサの動作帯域幅より高くし得る。
図11におけるデバイス1100などの他の例において、一次ホール効果センサの帯域幅ははるかに大きい場合があり得、較正信号は一次ホール効果センサの帯域幅内の周波数を有し得る。いくつかの例において、較正磁場の周波数は、ターゲット磁場との相関を最小化するために時間と共に異なる周波数にホッピングし得る。
【0080】
このようにして、或る範囲の温度、パッケージ応力、プロセス変数などにわたって安定して動作可能なホール効果センサデバイスが提供される。
【0081】
システム例
図14は、本明細書で説明するようなホール効果センサ1404を含み得る、例示のシステムを示す。本例において、ホール効果センサ1404は、
図5又は
図11に記載されるセンサに類似し得る。ホール効果センサ1404は、例えば、スタンドアロン型パッケージを形成するように封止され得る。この例は、電流1401を搬送する配線1400を含むシステムを図示する。磁場が電流搬送場を囲む。ホール効果センサ1404が置かれる領域を介してターゲット磁束1403を導くように、磁束コア1402が配線の周辺に配置され得る。
図5のデバイス500及び
図11のデバイス1100について上記で説明したように、或る範囲の温度及び他のパラメータにわたってホール効果センサ1404の感度が安定しているため、配線1400を介して流れる電流1401が正確に判定され得る。
【0082】
配線1401及びホール効果センサ1404は、例えば、直流電流(DC)-DCコンバータの一部とし得る。DC-DCコンバータは、高電圧を或るレベルから別のレベルに変換するように設計され得る。効率良く動作するために、コンバータ内を流れる電流の正確な測定が求められる。
【0083】
他の実施形態
本明細書において説明する例では、十字形のデバイスが図示されている。他の実施形態において、八角形又はほぼ八角形、三角形又はほぼ三角形、四つ葉形又はほぼ四つ葉形、円形又はほぼ円形など、他の要素形状がパターン化され得る。同様に、コンタクトパッド及び対応する配線の数は、ジオメトリに応じて所与の適用例に合うように変更され得る。
【0084】
本明細書で説明される例は、中央のホール効果要素の周りに対称的に配置される4つ又はそれ以上のホール効果要素を含む。しかしながら、いくつかの他の例において、単一の補助ホール効果センサと対にされる単一の一次ホール効果センサなど、より少ない数のホール効果要素が用いられ得る。
【0085】
本説明において、「結合」という用語及びその派生語は、間接、直接、光学、及び/又はワイヤレスの電気接続を意味する。したがって、第1のデバイスが第2のデバイスに結合する場合、その接続は、直接的な電気接続を介するもの、他のデバイスおよび接続を介した間接的な電気接続を介するもの、光学電気接続を介するもの、及び/又はワイヤレス電気接続を介するものであり得る。
【0086】
特許請求の範囲内において、記載された実施形態における改変が可能であり、また他の実施形態が可能である。