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特許7234478フィラガイド支持構造体およびこれを備えたフィラガイドセット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】フィラガイド支持構造体およびこれを備えたフィラガイドセット
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/12 20060101AFI20230301BHJP
【FI】
B23K9/12 301J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018233470
(22)【出願日】2018-12-13
(65)【公開番号】P2020093288
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】土井 和徳
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-171671(JP,U)
【文献】実開平02-093078(JP,U)
【文献】特開2011-036910(JP,A)
【文献】特開平11-347774(JP,A)
【文献】実開昭54-056621(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/00 - 9/32、10/00 - 10/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端にノズルを有する溶接トーチに取り付けられ、フィラワイヤを挿通させるためのフィラガイドを支持するフィラガイド支持構造体であって、
上記フィラガイドの先端部が上記ノズルの先端に近接する使用位置と、上記フィラガイドの先端部が上記ノズルの先端から遠ざかる退避位置と、に上記フィラガイドを位置変更させる退避機構を含み、
上記退避機構は、上記溶接トーチに支持される第1部材と、
上記フィラガイドの基端部を支持し、かつ上記第1部材に対して、上記溶接トーチの軸心方向と直交する方向に延びる回動軸線の周りに回動可能である第2部材と、を有し、
上記第1部材は、上記溶接トーチに固定される固定部と、
上記固定部に取り付けられ、当該固定部に対して上記溶接トーチの軸心方向の位置調整が可能な第1位置調整部と、
上記第1位置調整部に支持され、当該第1位置調整部に対して上記溶接トーチの軸心方向と上記回動軸線が延びる方向との双方に直交する方向の位置調整が可能な第2位置調整部と、を有する、フィラガイド支持構造体。
【請求項2】
上記第2部材は、上記フィラガイドが上記使用位置にあるとき、上記フィラガイドの先端部が上記ノズルの先端に近づく方向への上記回動軸線周りの回動を制限する第1係止部、および上記回動軸線に沿う方向の移動を制限する第2係止部、を有する、請求項に記載のフィラガイド支持構造体。
【請求項3】
上記第1部材および上記第2部材の相対移動を阻止する姿勢維持機構を有する、請求項1または2に記載のフィラガイド支持構造体。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のフィラガイド支持構造体と、当該フィラガイド支持構造体に支持されたフィラガイドと、を備えたフィラガイドセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラガイドを支持するフィラガイド支持構造体、およびこれを備えたフィラガイドセットに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえばTIG(Tungsten Inert Gas)溶接等において、溶着金属量を確保するために、アークが発生して母材が溶融する近傍にフィラワイヤを供給して溶融金属量を増加させる方法がとられている。フィラワイヤは、ワイヤ送給装置により送給され、フィラガイドを介して溶接トーチの先端の近傍に供給される。フィラガイドは、フィラワイヤを挿通させるとともに、当該フィラガイドの先端部から繰り出されるフィラワイヤを適切な位置と方向に導く。フィラガイドは、ブラケット等(フィラガイド支持構造体)を介して溶接トーチに支持されている(たとえば特許文献1を参照)。
【0003】
フィラワイヤを供給して行う溶接作業において、溶接品質を維持するためには、フィラガイドの先端部が所望の位置にあることが必要である。特許文献1には、フィラガイドの交換時等においてフィラガイドの位置を調整するための位置調整機構が記載されている。同文献に記載されたフィラガイドの位置調整機構は、溶接トーチが溶接ロボットに搭載された場合について示されている。特許文献1において、フィラガイドの位置調整は、溶接ロボットのマニピュレータを所定の教示位置に配置し、溶接ロボットに固定された固定ゲージと、先端に装着したゲージとを位置合わせすることにより行う。
【0004】
TIG溶接において、溶接トーチの先端に設けられたノズルは、消耗や破損により適宜交換が必要となる。フィラガイドを所定の位置に配置したままだと、上記ノズルを交換のために取り外す際、当該ノズルが近接するフィラガイドの先端部と干渉する。したがって、ノズル交換時には、フィラガイドを一旦取り外す等によりノズルと干渉しないようにし、ノズル交換後にフィラガイドを装着し、上記のようなフィラガイドの位置調整を行う必要がある。このようにノズル交換に伴ってフィラガイドの位置調整が必要となる従来の構成では、ノズル交換作業が煩雑となり、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-39623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、フィラガイドを容易に退避させることが可能なフィラガイド支持構造体を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を採用した。
【0008】
本発明の第1の側面によって提供されるフィラガイド支持構造体は、先端にノズルを有する溶接トーチに取り付けられ、フィラワイヤを挿通させるためのフィラガイドを支持するフィラガイド支持構造体であって、上記フィラガイドの先端部が上記ノズルの先端に近接する使用位置と、上記フィラガイドの先端部が上記ノズルの先端から遠ざかる退避位置と、に上記フィラガイドを位置変更させる退避機構を含む。
【0009】
好ましい実施の形態においては、上記退避機構は、上記溶接トーチに支持される第1部材と、上記フィラガイドの基端部を支持し、かつ上記第1部材に対して所定の回動軸線の周りに回動可能である第2部材と、を有する。
【0010】
好ましい実施の形態においては、上記第2部材は、上記フィラガイドが上記使用位置にあるとき、上記フィラガイドの先端部が上記ノズルの先端に近づく方向への上記回動軸線周りの回動を制限する第1係止部、および上記回動軸線に沿う方向の移動を制限する第2係止部、を有する。
【0011】
好ましい実施の形態においては、上記回動軸線が延びる方向は、上記溶接トーチの軸心方向に対して交差する。
【0012】
好ましい実施の形態においては、上記第1部材および上記第2部材の相対移動を阻止する姿勢維持機構を有する。
【0013】
本発明の第2の側面によって提供されるフィラガイドセットは、本発明の第1の側面に係るフィラガイド支持構造体と、当該フィラガイド支持構造体に支持されたフィラガイドと、を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るフィラガイド支持構造体によれば、フィラガイド支持構造体に支持されたフィラガイドを、当該フィラガイドの先端部が溶接トーチのノズルの先端に近接する使用位置と、フィラガイドの先端部がノズルの先端から遠ざかる退避位置と、に位置変更させることができる。このような構成によれば、ノズル交換時にフィラガイドを容易に退避させることができるので、ノズル交換の作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係るフィラガイドセットが取り付けられた溶接ロボットを示す概略図である。
図2】本発明に係るフィラガイドセットの一例を示し、フィラガイドが使用位置にあるときの斜視図である。
図3図2に示すフィラガイドセットの正面図である。
図4図2に示すフィラガイドセットの左側面図である。
図5図2に示すフィラガイドセットの平面図である。
図6図4のVI-VI線に沿う部分断面図である。
図7図3のVII-VII線に沿う部分断面図である。
図8図5のVIII-VIII線に沿う部分断面図である。
図9図5のIX-IX線に沿う部分断面図である。
図10図2に示すフィラガイドセットにおいて、フィラガイドが退避位置にあるときの正面図である。
図11】フィラガイドが退避状態にあるときの図9と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態につき、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0017】
図1は、本発明に係るフィラガイドセットが、溶接ロボットの溶接トーチに取り付けられた一例を示しており、溶接ロボットの概略図である。同図に示す溶接ロボットB1は、例えば複数のアーム5を備えた多関節型ロボットであり、TIG溶接用ロボットである。最も先端側に位置するアーム5の手首部51には、TIG溶接用の溶接トーチ6が取り付けられている。溶接トーチ6先端には、交換可能なノズル61が設けられている。先端側のアーム5には、ワイヤ送給装置8が設けられている。図外のワイヤリールに巻回されたフィラワイヤがワイヤ送給装置8によりフィラガイド4に送給される。フィラワイヤは、ワイヤ送給装置8を経てフィラガイド4に至るまで、コンジット7により案内される。フィラガイド4は、コンジット7を介して送給されるフィラワイヤを挿通させて、ノズル61の先端付近まで案内する。
【0018】
図2図9は、フィラガイド4を備えて構成されたフィラガイドセットの一例を示している。本実施形態のフィラガイドセットA1は、フィラガイド支持構造体1およびフィラガイド4を備える。フィラガイド支持構造体1は、溶接トーチ6に取り付けられており、フィラガイド4を支持している。詳細は後述するが、フィラガイド支持構造体1は、フィラガイド4の溶接トーチ6に対する位置調整や、フィラガイド4の溶接トーチ6からの退避動作を行うことが可能に構成されたものである。
【0019】
本実施形態のフィラガイド支持構造体1は、第1部材2および第2部材3を備える。第1部材2は、固定部20、第1位置調整部21、および第2位置調整部22を有する。固定部20は、溶接トーチ6に固定される部分である。
【0020】
第1位置調整部21は、固定部20に取り付けられている。具体的には、第1位置調整部21は、固定部20に対して凹凸嵌合しており、図中の鉛直方向にスライド可能である。図6に示すように、第1位置調整部21には、鉛直方向に延びる一対の長孔211が形成されている。また、固定部20には、一対の長孔211に対応する一対のねじ穴201が形成されている。これらねじ穴201の各々には、長孔211に挿通された締付ボルト24が螺合している。一対の締付ボルト24を緩めると、第1位置調整部21は、固定部20に対して、長孔211の寸法に対応する所定長さ範囲で鉛直方向にスライド移動可能である。一対の締付ボルト24を締め付けると、固定部20に対して第1位置調整部21は相対移動不能となる。このような構成により、第1位置調整部21は、固定部20に対して鉛直方向の位置調整が可能である。なお、固定部20および第1位置調整部21の側面部分には、位置合わせ用の目盛りが形成されている。
【0021】
第2位置調整部22は、第1位置調整部21に支持されている。具体的には、第2位置調整部22は、図3における左寄り部分において第1位置調整部21に対して凹凸嵌合しており、図中水平方向にスライド可能である。図7に示すように、第2位置調整部22には、水平方向に延びる一対の長孔221が形成されている。また、第1位置調整部21には、一対の長孔221に対応する一対のねじ穴212が形成されている。これらねじ穴212の各々には、長孔221に挿通された締付ボルト25が螺合している。一対の締付ボルト25を緩めると、第2位置調整部22は、第1位置調整部21に対して、長孔221の寸法に対応する所定長さ範囲で水平方向にスライド移動可能である。一対の締付ボルト25を締め付けると、第1位置調整部21に対して第2位置調整部22は相対移動不能となる。このような構成により、第2位置調整部22は、第1位置調整部21に対して水平方向の位置調整が可能である。なお、第1位置調整部21および第2位置調整部22の側面部分には、位置合わせ用の目盛りが形成されている。
【0022】
図6図8に示すように、第2位置調整部22の右寄り部分には、回動用穴222が設けられている。この回動用穴222には、後述する第2部材3の回動軸部33が挿入されている。第2位置調整部22の右端にはスリットが形成されており、回動用穴222は、上記スリットに対応する部分が切り欠かれた部分円筒形状とされている。また、第2位置調整部22の右端には、上記スリットを挟んで一対の締付片223が形成されている。一対の締付片223の一方にはねじ穴が形成されている。当該ねじ穴には、他方の締付片223に挿通された締付ボルト26が螺合しており、締付ボルト26を締め付けると回動用穴222の径寸法が縮径される。
【0023】
図7図9に示すように、第2位置調整部22には、ストッパ224および端面225が形成されている。端面225は、後述する第2部材3の軸取付部32側を向く平坦面である。ストッパ224は、端面225よりも軸取付部32側に突出する部位である。ストッパ224および端面225の意義については後述する。
【0024】
図2図6図9に示すように、第2部材3は、フィラガイド支持部30、接続部31、軸取付部32、および回動軸部33を有する。フィラガイド支持部30は、フィラガイド4の基端部を着脱可能に支持している。
【0025】
フィラガイド4は、適宜カーブする形状とされており、溶接トーチ6のノズル61の先端付近まで延びる。なお、詳細な図示説明は省略するが、フィラガイド4は、フィラガイド支持部30に取り付ける際、基端部の軸方向周りの位置を調整することができる。これにより、フィラガイド4の先端部が向く方向を調整可能である。
【0026】
接続部31は、フィラガイド支持部30および軸取付部32の間に介在しており、これらを一体的に接続している。なお、フィラガイド支持部30や接続部31の形状等は特に限定されるものではなく、種々変更可能である。また、フィラガイド支持部30および接続部31に相当する部分に、フィラワイヤを送給するためのワイヤ送給装置(プルフィーダ)を組み込んでもよい。
【0027】
本実施形態において、軸取付部32および回動軸部33は、一体形成されている。図7図9に示すように、軸取付部32は、円板の一部が切り欠かれた形状とされており、第1係止部321および第2係止部322を有する。回動軸部33は、軸取付部32の平坦面から突出している。
【0028】
上述のように、回動軸部33は、第2位置調整部22の回動用穴222に挿入されている。上記の締付ボルト26を緩めると、回動軸部33は、回動軸線Ox周りに回動可能である。このとき、フィラガイド4を支持する第2部材3は、回動軸線Ox周りに回動可能である。一方、締付ボルト26を締め付けると、第2位置調整部22の回動用穴222が縮径されて、第2位置調整部22(第1部材2)に対して回動軸部33(第2部材3)が回動不能となる。
【0029】
図2図3図6等から理解されるように、回動軸線Oxが延びる方向は、溶接トーチ6の軸心方向(図中鉛直方向)に対して交差している。本実施形態では、回動軸線Oxは、水平方向に延びており、溶接トーチ6の軸心方向に対して直交する。
【0030】
第1係止部321は、軸取付部32の側面に形成された平坦面により構成される。図3図7図9等から理解されるように、第1係止部321が第2位置調整部22のストッパ224に当接するとき、フィラガイド4の先端部が溶接トーチ6(ノズル61の先端)に近づく方向への回動軸部33(第2部材3)の回動が制限される。
【0031】
図7に示すように、第2係止部322は、軸取付部32において第2位置調整部22側を向く平坦面により構成される。回動軸部33には、ねじ穴331が形成されている。このねじ穴331には、締付ボルト27が螺合している。回動軸部33の先端と締付ボルト27の頭部との間には、ワッシャ28が介在している。ワイヤの外径寸法は、回動軸部33の外径寸法よりも大である。
【0032】
また、回動軸部33の軸方向長さ(図7における上下方向寸法)は、第2位置調整部22の厚さ(図7における上下方向寸法)よりも小さい。これにより、締付ボルト27を締め付けると、軸取付部32およびワッシャ28により第2位置調整部22を挟む状態となる。このとき、第2係止部322が第2位置調整部22の端面225に当接しており、第2位置調整部22(第1部材2)に対して回動軸線Oxに沿う方向への軸取付部32(第2部材3)の移動は制限される。
【0033】
上記のように締付ボルト26,27を締め付けることによって、第1部材2および第2部材3の互いの相対移動が阻止される。このような構成は、本発明で言う姿勢維持機構に相当する。
【0034】
次に、本実施形態のフィラガイドセットA1の使用方法および作用について説明する。
【0035】
フィラガイドセットA1を使用する際には、フィラガイド支持構造体1が溶接トーチ6に取り付けられる。このとき、図2図3等に示すように、フィラガイド4の先端部がノズル61の先端に近接している。また、図7図9等に示すように、軸取付部32(第2部材3)の第1係止部321が第2位置調整部22(第1部材2)のストッパ224に当接し、軸取付部32(第2部材3)の第2係止部322が第2位置調整部22(第1部材2)の端面225に当接する。上記した締付ボルト26,27を締め付けることで、第1部材2および第2部材3は、回動軸線Ox周りおよび回動軸線Oxに沿う方向のいずれにおいても相対移動不能とされる。このとき、第2部材3(フィラガイド支持構造体1)に支持されたフィラガイド4は、使用位置にある。
【0036】
なお、第1部材2においては、固定部20に対する第1位置調整部21の鉛直方向の位置、および第1位置調整部21に対する第2位置調整部22の水平方向の位置が調整される。第2部材3においては、フィラガイド支持部30に対するフィラガイド4の軸方向周りの位置が調整される。このようにして、フィラガイド4の先端部が所望の位置および方向を向くように、フィラガイド4の位置調整がなされる。
【0037】
次に、溶接トーチ6の先端に設けられたノズル61を交換する場合について説明する。まず、フィラガイド支持構造体1の締付ボルト26,27を緩める。これにより、第2位置調整部22(第1部材2)に対して、回動軸部33(第2部材3)が相対移動可能な状態となる。なお、第2部材3が第1部材2に対して回動可能であっても、軸取付部32の第1係止部321が第2位置調整部22のストッパ224に当接することにより、フィラガイド4の先端部がノズル61の先端に近づく方向への第2部材3の回動が制限される。したがって、フィラガイド4の先端部が誤ってノズル61先端に接触するといった事態は回避される。
【0038】
次に、図10図11に示すように、フィラガイド4の先端部がノズル61の先端から遠ざかる方向(図10において矢印N1で示す)に第2部材3を回動させる。そして、締付ボルト26,27のいずれか一方または両方を締め付ける。これにより、第2位置調整部22(第1部材2)に対する回動軸部33(第2部材3)の相対移動が阻止される。このとき、第2部材3(フィラガイド支持構造体1)に支持されたフィラガイド4は退避位置にあり、第2部材3およびこれに支持されたフィラガイド4の姿勢が維持される。
【0039】
次いで、ノズル61を交換する。ノズル61の交換時には、溶接トーチ6本体からノズル61上端の接続部を分離する。そして、ノズル61に内挿されたタングステン電極に当たらないように、ノズル61を鉛直方向下方に引き抜く。交換品のノズル61を取り付けた後、第2部材3(フィラガイド支持構造体1)を、上記退避位置から上記使用位置に戻す。第2部材3の位置変更は、締付ボルト26,27を緩め、第2部材3を回動軸線Ox周りに回動させることにより行う。第2部材3を使用位置に戻した後、締付ボルト26,27を締め付ける。これにより、第1部材2および第2部材3は互いに相対移動不能となり、ノズル61の交換作業が完了する。
【0040】
本実施形態のフィラガイド支持構造体1によれば、第2部材3(フィラガイド支持構造体1)に支持されたフィラガイド4を、フィラガイド4の先端部が溶接トーチ6のノズル61の先端に近接する使用位置と、フィラガイド4の先端部がノズル61の先端から遠ざかる退避位置と、に位置変更させることができる。このような構成によれば、ノズル61交換時にフィラガイド4を容易に退避させることができるので、ノズル61の交換の作業性が向上する。
【0041】
フィラガイド支持構造体1においては、フィラガイド4を退避させる機構として、第1部材2および第2部材3を含む。第1部材2は、溶接トーチ6に支持されている。第2部材3は、フィラガイド4の基端部を支持し、かつ第1部材2に対して回動軸線Ox周りに回動可能である。このような構成によれば、フィラガイド4について、使用位置および退避位置の相互の位置変更を容易に行うことができる。このような構成は、ノズル61交換時の作業性を向上させるのに適する。
【0042】
第2部材3は、第1係止部321および第2係止部322を有する。第1係止部321は、フィラガイド4が使用位置にあるとき、フィラガイド4の先端部がノズル61の先端に近づく方向への第2部材3の回動軸線Ox周りの回動を制限する。また、第2係止部322は、第2部材3の回動軸線Oxに沿う方向への移動を制限する。このような構成によれば、フィラガイド4を使用位置から退避位置に回動させ、その後再び使用位置に戻すとき、第2部材3は第1部材2に対して一つの定められた位置に復元する。したがって、退避させられたフィラガイド4は、再現性をもって元の使用位置に容易に戻すことが可能である。これにより、ノズル61交換後において、フィラガイド4の位置調整が不要となる。このことは、ノズル61交換時の作業性を向上させる上でより好ましい。
【0043】
フィラガイド支持構造体1において、回動軸線Oxが延びる方向は、溶接トーチ6の軸心方向に直交(交差)する。このような構成によれば、回動軸線Oxを溶接トーチ6に対して比較的近づけることが可能である。このことは、フィラガイド支持構造体1の小型化に適する。
【0044】
本実施形態において、上記の締付ボルト26,27の操作により、第1部材2および第2部材3の相対移動を適宜阻止することが可能である。このような構成によれば、フィラガイド4が使用位置や退避位置にあるとき、当該フィラガイド4の不用意な位置ズレは防止される。これにより、ノズル61交換時の作業性を適切に向上させることができる。
【0045】
フィラガイドセットA1によれば、上記したフィラガイド支持構造体1の利点を享受することができるとともに、フィラガイド4もまとめて取り扱うことができるので便利である。
【0046】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲は上記した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した事項の範囲内でのあらゆる変更は、すべて本発明の範囲に包摂される。
【0047】
上記実施形態において、フィラガイド支持構造体1がTIG溶接用の溶接トーチ6に取り付けられる場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明のフィラガイド支持構造体は、フィラガイドの供給が行われる他の溶接トーチ(たとえばMIG溶接用やプラズマ溶接用の溶接トーチ)にも適用することができる。
【0048】
上記実施形態においては、回動軸線Oxの延びる方向が溶接トーチ6の軸心方向に対して直交する場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。回動軸線Oxの延びる方向は、溶接トーチ6の軸心方向に対して交差していてもよく、また、溶接トーチ6の軸心方向と平行であってもよい。
【0049】
さらに、上記実施形態では、第2部材3が第1部材2に対して回動軸線Ox周りに回動可能な構成として、第2部材3の回動軸部33が第1部材2(第2位置調整部22)の回動用穴222に挿入された構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。たとえば第1部材および第2部材を、蝶番を介して連結することにより、第2部材を第1部材に対して所定の回動軸線周りに回動するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0050】
A1:フィラガイドセット、1:フィラガイド支持構造体、2:第1部材、3:第2部材、321:第1係止部、322:第2係止部、4:フィラガイド、6:溶接トーチ、61:ノズル、Ox:回動軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11