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特許7234486油圧システム、および油圧システムを制御するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】油圧システム、および油圧システムを制御するための方法
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/00 20060101AFI20230301BHJP
【FI】
F15B11/00 M
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021503738
(86)(22)【出願日】2019-07-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 EP2019070012
(87)【国際公開番号】W WO2020020997
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-01-19
(31)【優先権主張番号】102018117949.9
(32)【優先日】2018-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519044656
【氏名又は名称】プツマイスター エンジニアリング ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】PUTZMEISTER ENGINEERING GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ツィーメンス, クリスチャン
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/009950(WO,A1)
【文献】特開平08-200309(JP,A)
【文献】特開2008-082539(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0072749(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第19603899(DE,A1)
【文献】特開昭52-091226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の油圧ポンプ(31、32)と、複数の油圧消費器(23、24、25、26)と、前記油圧ポンプ(31、32)の圧送能力を設定するための複数の負荷感知弁(33、34、35)とを有する油圧システムであって、
前記複数の負荷感知弁(33、34、35)の開口断面積が調整可能であり、
配分ユニット(36、37)が、前記油圧ポンプ(31、32)と前記油圧消費器(23、24、25、26)との間に配置されており、
前記配分ユニット(36、37)が、第1の切替状態では前記油圧ポンプ(31、32)と前記油圧消費器(23、24、25、26)との間の第1の油圧経路を、第2の切替状態では前記油圧ポンプ(31、32)と前記油圧消費器(23、24、25、26)との間の第2の油圧経路を形成し、
当該油圧システムが、前記油圧消費器(23、24、25、26)の状態値を入力変数として処理し、前記配分ユニット(36、37)の前記切替状態に関する制御信号を決定する制御機構(38)を備え、
前記複数の負荷感知弁(33、34、35)と前記複数の油圧消費器(23、24、25、26)との間には第1の配分ユニット(36)が配置され、前記複数の油圧ポンプ(31、32)と前記複数の負荷感知弁(33、34、35)との間には第2の配分ユニット(37)が配置されており、
前記制御機構(38)が、前記油圧消費器(23、24、25、26)が1つより多くの前記油圧ポンプ(31、32)の供給を受けるように前記配分ユニット(36、37)に対する制御要求を決定するよう設計されていることを特徴とする、油圧システム。
【請求項2】
前記状態値が、前記油圧消費器(23、24、25、26)の現在の負荷圧力を表すことを特徴とする、請求項1に記載の油圧システム。
【請求項3】
前記配分ユニット(36、37)が、前記複数の負荷感知弁(33、34、35)と前記複数の油圧消費器(23、24、25、26)との間に配置されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の油圧システム。
【請求項4】
前記配分ユニット(36、37)が、前記複数の油圧ポンプ(31、32)と前記複数の負荷感知弁(33、34、35)との間に配置されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の油圧システム。
【請求項5】
前記制御機構(38)が、前記油圧消費器(23、24、25、26)を少なくとも2つのグループに分けるために、前記状態値を評価するように設計されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の油圧システム。
【請求項6】
第1のグループの前記油圧消費器(23、24、25、26)の現在の負荷圧力が、第2のグループの前記油圧消費器(23、24、25、26)の現在の負荷圧力よりも低いことを特徴とする、請求項5に記載の油圧システム。
【請求項7】
第1のグループの前記油圧消費器(23、24、25、26)の負荷圧力振動が、第2のグループの前記油圧消費器(23、24、25、26)の負荷圧力振動よりも低いことを特徴とする、請求項5または6に記載の油圧システム。
【請求項8】
前記制御機構(38)が、第1のグループが第1の油圧ポンプ(31)の供給を受け、第2のグループが第2の油圧ポンプ(32)の供給を受けるように、前記配分ユニット(36、37)に対する制御要求を決定するよう設計されていることを特徴とする、請求項5~7のいずれか一項に記載の油圧システム。
【請求項9】
複数の油圧消費器(23、24、25、26)が複数の油圧ポンプ(31、32)を使用して供給を受け、前記油圧ポンプ(31、32)の圧送能力が複数の負荷感知弁(33、34、35)を使用して設定される油圧システムを制御するための方法であって、
前記複数の負荷感知弁(33、34、35)の開口断面積が調整可能であり、
前記油圧ポンプ(31、32)と前記油圧消費器(23、24、25、26)との間に配置された配分ユニット(36、37)を用いて、前記油圧ポンプ(31、32)から前記油圧消費器(23、24、25、26)までのさまざまな油圧経路の切り替えが行われ、
制御機構(38)が、前記配分ユニット(36、37)の切替状態に関する制御信号を決定するために、前記油圧消費器(23、24、25、26)の状態値を入力変数として処理し、
前記複数の負荷感知弁(33、34、35)と前記複数の油圧消費器(23、24、25、26)との間には第1の配分ユニット(36)が配置され、前記複数の油圧ポンプ(31、32)と前記複数の負荷感知弁(33、34、35)との間には第2の配分ユニット(37)が配置されており、
前記制御機構(38)が、前記油圧消費器(23、24、25、26)が1つより多くの前記油圧ポンプ(31、32)の供給を受けるように前記配分ユニット(36、37)に対する制御要求を決定するよう設計されていることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の油圧消費器(Hydraulikverbrauchern)を有し、かつ油圧ポンプの圧送能力を設定するための複数の負荷感知弁を有する油圧システムに関する。本発明はさらに、油圧システムを制御するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の油圧システムでは、油圧ポンプの送出圧力は、負荷感知弁の制御下で、油圧消費器のうちの1つによって必要とされる現在の最大負荷圧力よりも大きい値に設定される。現在の負荷圧力がより低い消費器については、圧力保持弁によって油圧は低下される。
【0003】
圧力の低下は、いわゆる補償損失の形で容量が失われることを意味する。補償損失は、低体積流量要求および高負荷圧力の消費器と、高体積流量要求および低負荷圧力の消費器とが油圧システムで互いに組み合わされたときに特に顕著である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明によって対処されるべき課題は、補償損失がより小さく抑えられ得るように、油圧システムおよび関連する方法を導入するということである。前述の従来技術から始めて、この課題は、独立請求項の特徴を使用して解決される。好適な実施形態は、従属請求項に示されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による油圧システムの場合、配分ユニットは、油圧ポンプと油圧消費器との間に配置され、この配分ユニットは、第1の切替状態では油圧ポンプと油圧消費器との間の第1の油圧経路を、第2の切替状態では油圧ポンプと油圧消費器との間の第2の油圧経路を形成する。本システムは、油圧消費器の状態値を入力変数として処理し、配分ユニットの切替状態に関する制御信号を決定する制御機構を備える。
【0006】
本発明者らは、油圧消費器の現在の状態に依存する、配分ユニットの制御機構を用いて、油圧ポンプと油圧消費器との間の油圧経路を要求に選択的に適合させることが可能であることを確認した。
【0007】
油圧消費器の状態値は、油圧消費器の現在の動作状態を表す変数である。特に、状態値は、油圧消費器の現在の負荷圧力に関し得る。
【0008】
状態値を考慮して、制御機構は、配分ユニットの切替状態に関する制御信号を決定し得る。制御信号は配分ユニットに送信され得る。配分ユニットは、制御信号に対応する切替状態に設定され得る。
【0009】
油圧経路は、油圧消費器が油圧ポンプの供給を受ける経路を意味する。本発明の意味内の油圧経路は、一般に、油圧ポンプから負荷感知弁を経由して油圧消費器まで延びる。負荷感知弁は、油圧消費器の現在の動作状態に応じて油圧ポンプの圧送能力を設定する機能を有する。特に、負荷感知弁は、油圧ポンプの送出圧力を、油圧ポンプの供給を受ける消費器の最大負荷圧力よりも所定の圧力差だけ大きい値に設定するように設計され得る。負荷感知弁は、比例弁として構成され得る。複数の負荷感知弁が1つまたは複数の比例弁および/または1つまたは複数の定流量弁(流量制御弁)を備えることも可能である。
【0010】
一実施形態では、配分ユニットは、複数の負荷感知弁と複数の油圧消費器との間に配置される。配分ユニットの切替状態は、第1の切替状態では第1の油圧消費器が第1の負荷感知弁の供給を受け、第2の切替状態では第2の油圧消費器が第1の負荷感知弁の供給を受けるように決められる。これは、負荷感知弁と油圧消費器との任意の組み合わせに当てはまり得る。
【0011】
配分ユニットは、第1の切替状態では油圧消費器の第1のグループが第1の負荷感知弁の供給を受け、第2の切替状態では油圧消費器の第2のグループが第1の負荷感知弁の供給を受けるように構成され得る。配分ユニットおよび/または制御機構は、油圧消費器の任意のグループを各負荷感知弁にランダムに配分し得るように構成され得る。特定の配分を許可し、他の配分を最初から除外することも可能である。好ましい実施形態では、配分ユニットは、各切替状態の負荷感知弁が正確に1つの油圧消費器に供給するようにセットアップされる。したがって、負荷感知弁が正確に1つの第1の油圧消費器に供給する、配分ユニットの第1の切替状態と、負荷感知弁が正確に1つの第2の油圧消費器に供給する第2の切替状態とが存在する。
【0012】
配分ユニットの切替状態は、各油圧消費器が正確に1つの負荷感知弁の供給を受けるように決められ得る。1つまたは複数の油圧消費器が、第1の切替状態では負荷感知弁の供給を受け、第2の切替状態では1つより多くの負荷感知弁の供給を受けることも可能である。油圧消費器の日常的な動作状態に十分な体積流量を供給する負荷感知弁が事前に油圧消費器に配分されている場合、複数の負荷感知弁を油圧消費器に接続することが賢明であり得る。第2の負荷感知弁を油圧消費器に接続することによって、油圧消費器の動作速は一時的に上げられ得る。言い換えれば、弁サイズは同じままであり、および/または個別の負荷感知弁はより小さくされ得るが、油圧消費器に供給される体積流量は増加され得、その場合、体積流量は、第2の負荷感知弁を接続することによって一時的に増加される。
【0013】
例えば、油圧消費器がコンクリートポンプのブームを折り畳むために使用される場合、通常の動作速度は、ブームが伸長されるときにブームの先端が特定の速度を超えてはならないという事実によって決められ得る。第2の負荷感知弁を油圧消費器に接続することによって、ブームが折り畳まれるとき、より高い動作速度が容易になり得る。
【0014】
本発明による油圧システムは、1つより多くの油圧ポンプを備え得る。各油圧ポンプには、正確に1つの負荷感知弁が配分され得る。
【0015】
油圧システムが1つより多くの油圧ポンプを備える場合、本発明は、特定の油圧消費器が一時的に第1の油圧ポンプの供給を受け、一時的に第2の油圧ポンプの供給を受ける可能性を開く。本発明による配分ユニットを用いて、適切な方法で油圧経路の切り替えを行い得る。特に、配分ユニットは、油圧消費器がグループの油圧ポンプに配分されるように設計され得、その場合、グループの構成は、配分ユニットの切替状態に応じて変更され得る。
【0016】
本発明の一実施形態では、本発明の意味内の配分ユニットは、複数の油圧ポンプと複数の負荷感知弁との間に配置される。この配分ユニットに加えて、またはこの代わりに、配分ユニットが、複数の負荷感知弁と複数の油圧消費器との間に設けられ得る。配分ユニットの油圧経路のさまざまな可能性は、前述の可能性に対応する。
【0017】
油圧システムが、負荷感知弁と油圧消費器との間に1つの配分ユニットのみを備え、油圧ポンプと負荷感知弁との間に配分ユニットを備えない場合、1つより多くの油圧ポンプが一時的に油圧消費器に接続される可能性が出てくる。配分ユニットが油圧ポンプと負荷感知弁との間にのみ配置され、負荷感知弁と油圧消費器との間に配置されない場合にも、対応する効果が得られ得る。油圧システムが、負荷感知弁と消費器との間に配置された第1の配分ユニットと、ポンプと負荷感知弁との間に配置された第2の配分ユニットとを備える場合、油圧ポンプと消費器との間の油圧経路は、設計上、特に可撓性があり得る。
【0018】
油圧システムの制御機構は、油圧消費器の状態値の助けを借りて、油圧消費器の第1のグループおよび油圧消費器の第2のグループを形成するようにセットアップされ得る。本発明の意味内のグループは、個々の油圧消費器からなり得る。グループは、例えば、第1のグループのすべての油圧消費器で現在の負荷圧力が閾値を下回る一方で、第2のグループのすべての油圧消費器で現在の負荷圧力が閾値を上回るように決められ得る。油圧消費器が負荷レベルで分類され、油圧ポンプに配分される場合、補償損失は小さく抑えられ得る。グループの構成は、油圧消費器の現在の動作状態に応じて動的に調整され得る。制御機構は、この目的のために油圧消費器の動作状態を継続的にチェックし、配分ユニットの切替状態を必要に応じて変更する制御信号を生成し得る。
【0019】
制御機構は、油圧消費器の動作状態の関数として閾値を設定するように設計され得る。例えば、油圧消費器の負荷圧力は、昇順で観察され得、閾値は、互いに最も離れた間隔で配置された隣接する負荷圧力間に配置される。2つより多くのグループに細分化される場合、閾値は、次に小さい間隔で配置され得る。
【0020】
加えてまたは代わりに、制御機構は、適切な基準の助けを借りて、負荷圧力振動が油圧消費器に発生しているかどうかを判定するように設計され得る。負荷圧力の変動は、消費器に取り付けられた要素に機械的振動が発生したことを示し得る。振動パラメータが所定の閾値よりも大きい場合、制御機構は、当該の油圧消費器を他の油圧消費器から分離する制御要求を生成し得る。言い換えれば、配分ユニットが、関連する油圧消費器が他の消費器と共同で供給を受けている切替状態にこれまであった場合、配分ユニットは、当該の油圧消費器がこれまでのグループの他の油圧消費器とは異なる油圧ポンプの供給を受ける別の切替状態に移され得る。このようにして、ある油圧消費器から他の油圧消費器に振動が伝達されるのを防止することが可能である。
【0021】
さらなる入力変数として、制御機構は、オペレータによる入力を考慮し得る。オペレータによる入力に応じて油圧消費器の動作状態が変更された場合、これは、配分ユニットの以前の切替状態がもはや最適ではないことになり得る。制御機構は、配分ユニットに対する新しい制御要求を決定するために、オペレータ入力を処理し得る。対応する方法では、制御機構は、油圧システムの全体的な動作状態に関する情報を入力変数として処理し得る。
【0022】
これに加えて、制御機構は、負荷感知弁の状態に対する制御要求を生成し得る。特に、負荷感知弁の開口断面積が、制御機構の制御下で設定され得る。油圧消費器の負荷状態と油圧ポンプの圧送能力との間のフィードバックが、油圧経路において行われ得る。負荷圧力を電子的に検出し、油圧ポンプを電気的に調整可能にすることも可能である。この場合、ポンプは、制御機構を用いて作動され得る。
【0023】
油圧システムの消費器は、例えば、線形駆動部または回転駆動部であり得る。油圧システムは、コンクリートポンプの要素を駆動するように設計され得る。油圧システムの消費器は、例えば、コンクリートポンプのブームアームを折り畳むための線形駆動部および/またはブームアームの回転動作を駆動するための回転駆動部を備え得る。さらに、本発明は、この種の油圧システムの要素である複数の油圧消費器を有するコンクリートポンプに関する。
【0024】
さらに、本発明は、複数の油圧消費器が油圧ポンプを使用して供給を受け、油圧ポンプの圧送能力が複数の負荷感知弁を使用して設定される油圧システムを制御するための方法に関する。油圧ポンプから油圧消費器までのさまざまな油圧経路を切り替えることが可能である配分ユニットが、油圧ポンプと油圧消費器との間に配置される。制御機構は、配分ユニットの切替状態に関する制御信号を決定するために、油圧消費器の状態値を入力変数として処理する。
【0025】
本方法は、本発明による油圧システムに関連して説明されているさらなる特徴によって改善され得る。油圧システムは、本発明による方法に関連して説明されているさらなる特徴によって改善され得る。
【0026】
本発明は、好適な実施形態の助けを借りて、添付の図面を参照して例として以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明による油圧システムを備えた可動コンクリートポンプを示している。
図2】異なる状態の図2によるコンクリートポンプを示している。
図3】従来技術による比較例を示している。
図4】本発明による油圧システムの概略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1に示されているトラック14は、供給ライン17を介してプレフィルコンテナ(Vorfuellbehaelter)16から液体コンクリートを送出するコンクリートポンプ15を備える。供給ライン17は、ターンテーブル19に回転可能に取り付けられたブームアーム18に沿って延びる。ブームアーム18は、関節式に互いに接続された3つのブームアームセグメント20、21、22を備える。ジョイントを用いてブームアームセグメント20、21、22を互いに対して枢着させることによって、ブームアーム18は、折り畳まれた状態(図1)と展開された状態(図2)との間で切り替えられ得る。供給ライン17は、第3のブームアームセグメント22の外端を越えて延び、これにより、液体コンクリートは、コンクリートポンプ15から離れた領域で送出され得る。
【0029】
図1および図2による可動コンクリートポンプは、少なくとも1つの油圧ポンプおよび複数の油圧消費器を有する油圧システムを備える。油圧消費器は、第1の線形駆動部23、第2の線形駆動部24、第3の線形駆動部25、および回転駆動部26を含む。線形駆動部23、24、25を使用することによって、ブームアームセグメント20、21、22は、ブームアームを折り畳むかまたは展開するために、互いに対して枢着され得る。回転駆動部26を使用することによって、ブームアーム18は、トラック14のシャーシに対して、ターンテーブル19を用いて回転され得る。
【0030】
油圧消費器23、24、25、26は、オペレータ入力によって操作される。ブームアーム18の折り畳み状態を変更しなければならない場合、オペレータによる対応する入力は、線形駆動部23、24、25の動作に変換される。同じことが、シャーシに対するブームアーム18の回転にも当てはまる。
【0031】
従来技術では、油圧ポンプの送出圧力は、油圧消費器23、24、25、26のうちの1つによって現在必要とされている最高負荷圧力よりもわずかに高くなるように、負荷感知弁によって設定される。残りの油圧消費器については、圧力保持弁によって圧力は低下される。個々の油圧消費器が現在、小さい体積流量で高い負荷圧力を必要とする一方で、別の油圧消費器では体積流量が高く、負荷圧力が低いとき、図3によると、圧力の低下は、特に顕著な補償損失の形で容量損失をもたらす。
【0032】
図3では、特定の時間における3つの油圧消費器23、24、25に関して、負荷圧力Pが、体積流量Qに対してプロットされている。油圧消費器23、24の場合、負荷圧力Pは高く、体積流量Qは低い。油圧消費器25の場合、負荷圧力Pは低く、体積流量Qは高い。油圧システムにおける不可避の容量損失は、油圧ポンプの送出圧力29が、この場合に油圧消費器23によって必要とされる最高負荷圧力27よりもわずかに高いという事実に起因する。負荷圧力27を油圧消費器25の負荷圧力に絞ることによって生じる補償損失28はかなり大きい。本発明による油圧システムの場合、補償損失はより小さく抑えられ得る。
【0033】
図4に示されている例示的な実施形態の場合、本発明による油圧システムは、第1の油圧ポンプ31および第2の油圧ポンプ32を備える。2つの油圧ポンプ31、32は、油圧ポンプ31、32の送出圧力を調整するレギュレータを含む。3つの線形駆動部23、24、25は、本システムの油圧消費器に属する。油圧ポンプ31、32の送出圧力を線形駆動部23、24、25の現在の負荷圧力に調整する負荷感知弁33、34、35は、油圧ポンプ31、32と油圧消費器23、24、25との間に配置される。これに必要な油圧ポンプ31、32のレギュレータへのフィードバックには、油圧的手段または電子的手段が含まれ得る。
【0034】
第1の配分ユニット36は、負荷感知弁33、34、35と油圧消費器23、24、25との間に配置される。配分ユニット36は、負荷感知弁33、34、35と油圧消費器23、24、25との間の異なる油圧経路を利用可能にし得る異なる切替状態を含む。切替状態は、油圧消費器23、24、25のそれぞれが、個別にまたは任意のグループで負荷感知弁33、34、35のうちの1つに接続され得るように決められる。
【0035】
任意の方法で油圧ポンプ31、32と負荷感知弁33、34、35とを対応付けて互いに接続し得る第2の配分ユニット37は、油圧ポンプ31と油圧ポンプ32との間に配置される。
【0036】
油圧システムは、油圧システムの制御ユニット39およびより高レベルの情報システム44と結合された制御機構38を備える。制御機構38は、信号線40を介して、入力変数として油圧消費器23、24、25の現在の負荷圧力に関する情報を受信する。制御信号は、制御線41、42、43を介して、第1の配分ユニット36、負荷感知弁33、34、35、および第2の配分ユニット37に送信され得る。
【0037】
制御機構38が、図3に示されている状態に従って、第1の油圧消費器23および第2の油圧消費器24の場合の負荷圧力が高い一方で、第3の油圧消費器25の場合の負荷圧力が低いという通知を、信号線40を介して受信した場合、制御機構38は、第1の2つの油圧消費器23、24からグループを形成し、このグループから第3の油圧消費器25を分離し得る。これは、制御線41、43を介して第1の配分ユニット36および第2の配分ユニット37に伝えられる制御信号に、制御機構38によって変換され得る。配分ユニット36、37は、第1の2つの油圧消費器23、24が第1の油圧ポンプ31の供給を受け、第3の油圧消費器25が第2の油圧ポンプ32の供給を受けるように、制御信号によって切り替えられる。
【0038】
異なる制御手法によれば、制御機構38は、信号線40を介して受信した、振動に関する負荷圧力データを評価し得る。例えば、負荷圧力の振動が所定の閾値よりも大きい状態が第1の油圧消費器23に発生した場合、制御機構38は、第2の油圧消費器24および第3の油圧消費器25のグループを形成し、このグループから第1の油圧消費器23を分離し得る。制御線41、43を用いて、配分ユニット36、37は、第1の油圧消費器23が第1の油圧ポンプ31に接続され、第2の油圧消費器24および第3の油圧消費器25が第2の油圧ポンプ32に接続されるように作動され得る。第1の油圧消費器23を分離することによって、この油圧消費器23の場合に発生する振動が他の油圧消費器24、25に悪影響を及ぼすことが防止される。
【0039】
制御機構38のさらなる制御手法は、油圧消費器23、24、25のうちの2つが動作していないか、または小さい容量のみを必要とする一方で、第3の油圧消費器の高速動作が必要とされる状態を判定することを含む。図1および図2から、ブームアーム18がほぼ完全に伸長されると、線形駆動部23、24、25のゆっくりとした動作でも、ブーム先端の高速動作がもたらされ得ることが分かる。負荷感知弁33、34、35の寸法は、これらの弁のうちの1つを通る最大体積流量が、伸長状態で必要とされる線形駆動部23、24、25のゆっくりとした動作を可能にするようなものであり得る。対照的に、ブームアーム18が実質的に折り畳まれているときは、線形駆動部23、24、25のより速い動作が望ましくあり得る。しかしながら、これに必要な体積流量は、負荷感知弁33、34、35のうちの1つによっては供給され得ない。制御機構38は、例えば、第1の2つの線形駆動部23、24が動作していない一方で、第3の線形駆動部25の高速動作が必要とされる状態を確認した場合、さらなる負荷感知弁を第3の線形駆動部25に接続する制御信号を配分ユニット36、37に送信し得る。このようにして、第3の線形駆動部25のより高い動作速度が可能になる。
【0040】
制御機構38では、複数の制御手法が並行して実現され得る。競合を回避するために、制御手法間に階層が確立され得る。例えば、振動の回避に最も高い優先順位が与えられ得る。システム内のすべての油圧消費器に振動がない場合、補償損失を低く抑えるために、次の優先順位に従って現在の負荷圧力の助けを借りて、油圧消費器はグループに分類され得る。3番目の優先順位では、動作速度を上げるために、複数の油圧ポンプが1つの油圧消費器に接続され得る。
図1
図2
図3
図4