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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 7/00 20060101AFI20230301BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20230301BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20230301BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20230301BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20230301BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20230301BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
C08L7/00
C08L9/00
C08K3/04
C08J3/22 CEQ
C08J3/20
B60C1/00 A
B60C11/00 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017217611
(22)【出願日】2017-11-10
(65)【公開番号】P2019089872
(43)【公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-09-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣 真誉
(72)【発明者】
【氏名】河西 勇輝
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-095014(JP,A)
【文献】特開2010-084102(JP,A)
【文献】特開2003-147124(JP,A)
【文献】特開2012-126866(JP,A)
【文献】特開2010-202685(JP,A)
【文献】特開2014-218601(JP,A)
【文献】特開2017-171806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
C08J 3/00- 3/28
C08J 99/00
B60C 1/00- 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソプレン系ゴムを50質量%以上かつ100質量%未満およびブタジエンゴムを10質量%以上かつ50質量%以下含むゴム成分と、カーボンブラックとを含有するゴム組成物で構成されるトレッドを備える空気入りタイヤであって、
前記ブタジエンゴムが、シス1,4結合含有率が95%以上のブタジエンゴムであり、
前記カーボンブラックの含有量が、ゴム成分100質量部に対して、65質量部以下であり、
接地面の赤道上の部位から10点測定したときのモジュラスのバラつき(M300max-M300min)×100/M300maxが20%以下である空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記ゴム成分100質量%中、イソプレン系ゴムを50~80質量%およびブタジエンゴムを20~50質量%含む請求項1記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記カーボンブラックの含有量が、ゴム成分100質量部に対して、52質量部以下である請求項1または2記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記ブタジエンゴムのゴム成分100質量%中の含有量が、40質量%以下である請求項1~のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記ブタジエンゴムのゴム成分100質量%中の含有量が、30質量%以下である請求項1~のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記10点のモジュラスの平均値が、15MPa以上である請求項1~のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記モジュラスのバラつきが15%以下である請求項1~のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記イソプレン系ゴムが天然ゴムである請求項1~のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
乗用車用、トラック・バス用、二輪車用または競技用である請求項1~のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤ、より詳細には高シビアリティ領域においても耐摩耗性に優れた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの高寿命化およびグローバル化に伴う使用地域の拡大により、様々な路面状況で使用されることになり、トレッドゴムの耐摩耗性や耐チッピング性についてタイヤに要求されるシビアリティが高くなっており、路面状態が高シビアリティ領域での耐摩耗性については更なる向上が求められている。従来のトラックタイヤなどでは天然ゴム/ブタジエンゴム配合に補強効果を有するカーボンブラックを配合することで摩耗に対応してきた。
【0003】
また、カーボンブラックを所定のものとする技術も開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-164985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、カーボンブラックを配合することによる路面状態が高シビアリティ領域での耐摩耗性の向上には、限界があり、また、特許文献1に記載されている技術においても、なお十分なものとは言えない。
【0006】
本発明は、路面状態が高シビアリティ領域における耐摩耗性をさらに向上させた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、高シビアリティ領域においては、架橋構造の均一性が耐摩耗性能の発揮に重要であることを見出し、さらに検討を重ね、所定量のイソプレン(IR)系ゴムおよび所定量のブタジエンゴム(BR)を含むゴム成分と、カーボンブラックとを含有するゴム組成物で構成されるトレッドを備える空気入りタイヤであって、接地面の赤道上の部位から10点測定した場合のモジュラスのバラつきが所定の範囲内である空気入りタイヤとすることにより、前記課題を解決した。
【0008】
すなわち、本開示は、
[1]イソプレン系ゴムを50質量%以上かつ100質量%未満およびブタジエンゴムを0質量%超かつ50質量%以下含むゴム成分と、カーボンブラックとを含有するゴム組成物で構成されるトレッドを備える空気入りタイヤであって、
接地面の赤道上の部位から10点測定したときのモジュラスのバラつき(M300max-M300min)×100/M300maxが20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは12%以下
である空気入りタイヤ、
[2]上記ゴム成分100質量%中、イソプレン系ゴムを50~90質量%、好ましくは60~80質量%およびブタジエンゴムを10~50質量%、好ましくは20~40質量%含む上記[1]記載の空気入りタイヤ、
[3]上記ゴム組成物中のカーボンブラックの含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して40質量部以上、好ましくは45~65質量部、より好ましくは50~60質量部、さらに好ましくは50~55質量部である上記[1]または[2]記載の空気入りタイヤ、
[4]上記ブタジエンゴムが、シス1,4結合含有率が90%以上、好ましくは95%以上のブタジエンゴムである上記[1]~[3]のいずれかに記載の空気入りタイヤ、
[5]上記ゴム組成物が、加硫剤および加硫促進剤の少なくとも一つをイソプレン系ゴムとのマスターバッチとして用いて得られるものである上記[1]~[4]のいずれかに記載の空気入りタイヤ、ならびに
[6]イソプレン系ゴムを50質量%以上かつ100質量%未満、好ましくは50~90質量%、より好ましくは60~80質量%およびブタジエンゴムを0質量%超かつ50質量%以下、好ましくは10~50質量%、より好ましくは20~40質量%含むゴム成分と、カーボンブラックとを含有するゴム組成物であり、トレッドとして使用して空気入りタイヤを製造した場合、該空気入りタイヤの接地面の赤道上の部位から10点測定したときのモジュラスのバラつき(M300max-M300min)×100/M300maxが20%以下となるゴム組成物の製造方法であって、
イソプレン系ゴムの一部、ブタジエンゴムおよびカーボンブラックを混練りし、混練物Xを得る工程、
得られた混練物Xに加硫剤および加硫促進剤を混練りする工程であって、加硫剤および加硫促進剤の少なくとも一つをイソプレン系ゴムとのマスターバッチとして添加し、混練物Fを得る工程、ならびに
得られた混練物Fを加硫する工程
を含む製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の、イソプレン系ゴムを50質量%以上かつ100質量%未満およびブタジエンゴムを0質量%超かつ50質量%以下含むゴム成分と、カーボンブラックとを含有するゴム組成物で構成されるトレッドを備える空気入りタイヤであって、接地面の赤道上の部位から10点測定したときのモジュラスのバラつき(M300max-M300min)×100/M300maxが20%以下である空気入りタイヤによれば、路面状態が高シビアリティ領域での耐摩耗性をさらに向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の空気入りタイヤは、イソプレン系ゴムを50質量%以上かつ100質量%未満およびブタジエンゴムを0質量%超かつ50質量%以下を含むゴム成分と、カーボンブラックとを含有するゴム組成物で構成されるトレッドを備えるものであって、接地面の赤道上の部位から10点測定したときのモジュラスのバラつき(M300max-M300min)×100/M300maxが20%以下であるものである。このようなモジュラスのバラつきが抑制されたトレッドを備える空気入りタイヤとすることにより、耐摩耗性の向上を達成することができる。
【0011】
このような耐摩耗性の向上効果が得られる理由は明確ではないが、つぎのように考えられる。空気入りタイヤの接地面の赤道上の部位から10点測定したときの(M300max-M300min)×100/M300maxが20%以下というモジュラスのバラつきが抑制されたトレッドでは、ゴムの架橋構造が均一化し、架橋部の粗密が少なくなっていると考えられる。これにより、ゴムマトリクス中の応力集中箇所を減らし、破壊起点の発生や破壊成長を抑制することが可能となる。このゴムマトリクス中の応力集中箇所の低減と、破壊起点の発生や破壊成長の抑制が、高シビアリティ領域における耐摩耗性の向上においては、カーボンブラック等による補強効果向上に加えて重要な事項であると考えられる。このため、イソプレン系ゴムおよびブタジエンゴムにカーボンブラックを配合し、さらにこのようなモジュラスのバラつきが抑制されたトレッドを備えることにより、空気入りタイヤの高シビアリティ領域における耐摩耗性の向上につながったものと考えられる。
【0012】
本明細書において、モジュラスのバラつき(%)=((M300max-M300min)×100/M300max)は、空気入りタイヤの接地面の赤道上の部位からほぼ等間隔に10点を選んでJIS K 6251にならってサンプリングできる大きさのゴム片を切出し試料片とし、各試料片について測定した300%モジュラスM300の値のうちの最大値をM300max、最小値をM300minとして得られる値である。このモジュラスのバラつきは20%以下であり、15%以下が好ましく、12%以下がより好ましい。モジュラスのバラつきが20%以下であることは、ゴムが均一に仕上がっている証であり、これによりゴム強度および耐摩耗性が向上し、またモジュラスのバラつきを15%以下とすると、より一層耐摩耗性が向上する傾向がある。なお、300%モジュラスM300は、JIS K 6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」に準じて、23℃雰囲気下でダンベル3号サンプルにて引張試験を行い測定された300%伸張時応力(M300)である。
【0013】
トレッドを構成するゴム組成物に用いるゴム成分には、イソプレン系ゴムを50質量%以上かつ100質量%未満、ブタジエンゴム(BR)を0質量%超かつ50質量%以下含有する。
【0014】
イソプレン系ゴムとしては、特に限定されるものではなく、タイヤ業界において一般的なものを用いることができ、例えば、SIR20、RSS#3、TSR20などの天然ゴム(NR)が挙げられる。また、本発明に用いるイソプレン系ゴムとしては、改質天然ゴム、変性天然ゴム、合成イソプレンゴム、変性合成イソプレンゴムが含まれるものとする。
【0015】
トレッドを構成するゴム組成物に用いるゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、50質量%以上であり、60質量%以上が好ましい。イソプレン系ゴムの含有量が50質量%未満であると、ゴム強度が不十分となり、本発明の効果を得ることができない。また、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、100質量%未満であり、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。イソプレン系ゴムの含有量を90質量%以下とすることにより、BRの配合量を確保することができ、より耐摩耗性が向上し、耐TGC(トレッドグルーブクラック)性が良好となる傾向がある。
【0016】
BRとしては特に限定されるものではなく、例えば、シス1,4結合含有率が50%未満のBR(ローシスBR)、シス1,4結合含有率が90%以上のBR(ハイシスBR)、希土類元素系触媒を用いて合成された希土類系ブタジエンゴム(希土類系BR)、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR(SPB含有BR)、変性BR(ハイシス変性BR、ローシス変性BR)などタイヤ工業において一般的なものを使用できる。なかでも、ハイシスBR、ローシスBRおよびローシス変性BRからなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、ハイシスBRを用いることがより好ましい。
【0017】
ハイシスBRとしては、例えば、JSR(株)製のBR730、BR51、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR130B、BR150B、BR710などがあげられる。ハイシスBRのなかでも、シス1,4-結合含有率が95%以上のものがさらに好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ハイシスBRを含有することで低温特性および耐摩耗性を向上させることができる。ローシスBRとしては、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1250などがあげられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。BR中のシス1,4-結合含有率は、赤外吸収スペクトル分析により算出される値である。
【0018】
トレッドを構成するゴム組成物に用いるゴム成分100質量%中のBRの含有量は、0質量%超であり、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。BRの含有量を10質量%以上とすることにより、耐摩耗性がより良好となる傾向がある。また、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、50質量%以下であり、40質量%以下が好ましい。BRの含有量が50質量%を超えると、イソプレン系ゴムの十分な配合量を確保することができず、ゴム強度が不十分となり、本発明の効果を得ることができない。
【0019】
ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムおよびBRの合計含有量は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、100質量%がさらに好ましい。イソプレン系ゴムおよびBRの合計含有量を70質量%以上とする場合、耐摩耗性と低発熱性を両立することができる。
【0020】
トレッドを構成するゴム組成物にはカーボンブラックを含む。これにより、優れた耐摩耗性、耐チッピング性、耐カット性が得られる。
【0021】
カーボンブラックとしては特に限定されず、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFなど、タイヤ工業において一般的なものを使用することができ、例えば、N110、N220、N330などを用いることができ、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0022】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、耐候性や補強性の観点から50m2/g以上が好ましく、80m2/g以上がより好ましい。また、カーボンブラックのN2SAは、低燃費性、分散性、破壊特性および耐久性の観点から250m2/g以下が好ましく、220m2/g以下がより好ましい。なお、本明細書におけるカーボンブラックのN2SAは、JIS K 6217のA法に準じて測定される値である。
【0023】
カーボンブラックのゴム成分100質量部に対する含有量は、40質量部以上が好ましく、45質量部以上がより好ましく、50質量部以上がさらに好ましい。カーボンブラックの含有量が40質量部以上の場合、ゴム強度が十分に担保されるため好ましい。また、カーボンブラックのゴム成分100質量部に対する含有量は、65質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましく、55質量部以下がさらに好ましい。カーボンブラックの含有量が65質量部以下の場合、低燃費性や加工性を損なう懸念が少ないため好ましい。
【0024】
トレッドを構成するゴム組成物には、前記成分以外にも、必要に応じて、イソプレン系ゴムおよびBR以外のゴム成分や、従来ゴム工業で一般に使用される配合剤、例えば、カーボンブラック以外の補強用充填剤、シランカップリング剤、オイルや粘着樹脂、液状ゴムなどの軟化剤、ワックス、酸化亜鉛、ステアリン酸、各種老化防止剤、硫黄などの加硫剤、各種加硫促進剤などを適宜含有することができる。
【0025】
その他のゴム成分としては、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエン-イソプレンゴム、ブチルゴムなどを挙げることができ、さらにエチレン-プロピレン共重合体、エチレンオクテン共重合体なども挙げることができる。これらのゴム成分は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
カーボンブラック以外の補強用充填剤としては、シリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、クレー、タルクなど、従来からタイヤ用ゴム組成物において用いられているものを配合することができる。
【0027】
シリカとしては、特に限定されるものではなく、例えば、乾式法により調製されたシリカ(無水シリカ)、湿式法により調製されたシリカ(含水シリカ)など、タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。なかでもシラノール基が多いという理由から、湿式法により調製された含水シリカが好ましい。シリカは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、20m2/g以上が好ましく、30m2/g以上がより好ましく、100m2/g以上がさらに好ましい。また、シリカのN2SAは、400m2/g以下が好ましく、300m2/g以下がより好ましく、280m2/g以下がさらに好ましい。シリカのN2SAが上記範囲内の場合は、低燃費性および加工性がよりバランス良く得られる傾向がある。なお、本明細書におけるシリカのN2SAは、ASTM D3037-81に準じてBET法で測定される値である。
【0029】
シリカを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、5質量部以上が好ましく、7質量部以上がより好ましい。また、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましい。シリカの含有量が上記範囲内の場合は、より良好な低燃費性、加工性および耐摩耗性能が得られる傾向がある。
【0030】
シリカを含有させる場合には、シランカップリング剤を用いることが好ましい。シランカップリング剤としては、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィドなどが挙げられる。これらのシランカップリング剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
シランカップリング剤を含む場合、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましい。また、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。シランカップリング剤の含有量が上記範囲内の場合は、良好な加工性、ゴム強度および耐摩耗性を確保できる傾向がある。
【0032】
オイルとしては、例えば、パラフィン系、アロマ系、ナフテン系プロセスオイルなどのプロセスオイルが挙げられる。
【0033】
オイルを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、2質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましい。また、オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、5質量部以下が好ましく、4質量部以下がより好ましい。オイルの含有量が上記範囲内の場合は、オイルを含有させる効果が充分に得られ、良好な耐摩耗性を得ることができる。なお、本明細書において、オイルの含有量には、油展ゴムに含まれるオイル量も含まれる。
【0034】
粘着付与樹脂としては、芳香族系石油樹脂などの従来タイヤ用ゴム組成物で慣用される樹脂が挙げられる。芳香族石油樹脂としては例えば、フェノール系樹脂、クマロンインデン樹脂、テルペン樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ロジン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂(DCPD樹脂)などが挙げられる。フェノール系樹脂としては例えばコレシン(BASF社製)、タッキロール(田岡化学工業(株)製)などが挙げられる。クマロンインデン樹脂としては例えばクマロン(日塗化学(株)製)、エスクロン(新日鐡化学(株)製)、ネオポリマー(新日本石油化学(株)製)などが挙げられる。スチレン樹脂としては例えばSylvatraxx 4401(アリゾナケミカル社製)などが挙げられる。テルペン樹脂としては例えばTR7125(アリゾナケミカル社製)、TO125(ヤスハラケミカル(株)製)などが挙げられる。
【0035】
粘着付与樹脂の軟化点は、40℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。軟化点を40℃以上とすることにより、十分なグリップ性能が得られる傾向がある。また、該軟化点は120℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましい。軟化点を120℃以下とすることにより、十分なグリップ性能が得られる傾向がある。なお、本明細書において樹脂の軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0036】
粘着付与樹脂のゴム成分100質量部に対する含有量は、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。また、粘着付与樹脂の含有量は、30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましい。粘着付与樹脂の含有量が上記範囲内の場合は、十分なグリップ性能および耐摩耗性が得られ、良好な低燃費性能が得られる傾向がある。
【0037】
液状ジエン系重合体としては、液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)などが挙げられる。なかでも、耐摩耗性と走行中の安定した操縦安定性能がバランスよく得られるという理由から、液状SBRが好ましい。なお、本明細書における液状ジエン系重合体は、常温(25℃)で液体状態のジエン系重合体である。
【0038】
液状ジエン系重合体のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、耐摩耗性、破壊特性、耐久性の観点から、1.0×103以上が好ましく、3.0×103以上がより好ましい。また、生産性の観点から2.0×105以下が好ましく、1.5×104以下がより好ましい。なお、本明細書における液状ジエン系重合体のMwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算値である。
【0039】
液状ジエン系重合体を含有する場合のゴム成分100質量部に対する液状ジエン系重合体の含有量は、0質量部超が好ましく、5質量部以上がより好ましい。また、液状ジエン系重合体の含有量は、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましい。液状ジエン系重合体の含有量が上記範囲内である場合は、加工性が改善され、本発明の効果が得られやすい傾向がある。
【0040】
軟化剤の含有量(粘着樹脂、オイル、および液状ジエン系重合体の合計含有量)は、ゴム成分100質量部に対して、50質量部以上が好ましく、100質量部以上がより好ましく、120質量部以上がさらに好ましい。また、軟化剤の含有量は、250質量部以下が好ましく、200質量部以下がより好ましく、180質量部以下がさらに好ましい。軟化剤の含有量が上記範囲内である場合は、本発明の効果がより好適に得られる。
【0041】
老化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン、フェニル-β-ナフチルアミン、アルドール-α-トリメチル1,2-ナフチルアミンなどのナフチルアミン系;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンなどのキノリン系;p-イソプロポキシジフェニルアミン、p-(p-トルエンスルホニルアミド)-ジフェニルアミン、N,N-ジフェニルエチレンジアミン、オクチル化ジフェニルアミンなどのジフェニルアミン系;N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N-シクロヘキシル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(1-メチルヘプチル)-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(1-エチル-3-メチルペンチル)-p-フェニレンジアミン、N-4-メチル-2-ペンチル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジアリール-p-フェニレンジアミン、ヒンダードジアリール-p-フェニレンジアミン、フェニルヘキシル-p-フェニレンジアミン、フェニルオクチル-p-フェニレンジアミンなどのp-フェニレンジアミン系;2,5-ジ-(tert-アミル)ヒドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノンなどのヒドロキノン誘導体;、フェノール系(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、1-オキシ-3-メチル-4-イソプロピルベンゼン、ブチルヒドロキシアニソール、2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノール、n-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)プロピオネート、スチレン化フェノールなどのモノフェノール系;2,2’-メチレン-ビス-(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレン-ビス-(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデン-ビス-(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、1,1’-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-シクロヘキサンなどのビスフェノール系;トリスフェノール系;テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどのポリフェノール系);4,4’-チオビス-(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール)、2,2’-チオビス-(6-tert-ブチル-4-メチルフェノール)などのチオビスフェノール系;2-メルカプトメチルベンゾイミダゾールなどのベンゾイミダゾール系;トリブチルチオウレアなどのチオウレア系;トリス(ノニルフェニル)ホスファイトなどの亜リン酸系;チオジプロピオン酸ジラウリルなどの有機チオ酸系老化防止剤などが挙げられる。これら老化防止剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
なかでも、本発明の効果がより好適に得られることから、フェニレンジアミン系老化防止剤を用いることが好ましい。また、ゴム組成物に老化防止剤を配合する場合の、老化防止剤の含有量(2種以上の老化防止剤を配合する場合にはそれらの合計含有量)は、ゴム成分100質量部に対して、1~10質量部であることが好ましく、1.5~5質量部であることがより好ましい。
【0043】
ゴム組成物は、酸化亜鉛を含むことが好ましい。これにより、加硫がスムースになり、剛性と物性の等方性が得られる。酸化亜鉛としては特に限定されず、ゴム工業で従来から使用される酸化亜鉛(東邦亜鉛(株)製の銀嶺R、三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛など)や、平均粒子径が200nm以下の微粒子酸化亜鉛(ハクスイテック(株)製のジンコックスーパーF-2など)などが挙げられる。これら酸化亜鉛は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
酸化亜鉛を配合する場合の、酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上である。酸化亜鉛の含有量を1質量以上とする場合、充分な硬度(Hs)を得ることができる。酸化亜鉛の含有量は、好ましくは7質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。酸化亜鉛の含有量を7質量部以下とすることにより、破断強度の低下を抑制できる傾向がある。
【0045】
その他、ステアリン酸、ワックスなどは、従来ゴム工業で使用されるものを用いることができる。
【0046】
加硫剤は特に限定されるものではなく、ゴム工業において一般的なものを使用することができるが、硫黄原子を含むものが好ましく、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄などが挙げられる。
【0047】
加硫促進剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド-アミン系もしくはアルデヒド-アンモニア系、イミダゾリン系、キサンテート系加硫促進剤が挙げられ、なかでも、本発明の効果がより好適に得られる点から、スルフェンアミド系加硫促進剤が好ましい。
【0048】
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、CBS(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド)、TBBS(N-t-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド)、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドなどが挙げられる。チアゾール系加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアゾリルジスルフィドなどが挙げられる。チウラム系加硫促進剤としては、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)などが挙げられる。グアニジン系加硫促進剤としては、ジフェニルグアニジン(DPG)、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、本発明の効果がより好適に得られる点からCBSが好ましい。
【0049】
空気入りタイヤの、モジュラスのバラつき(M300max-M300min)×100/M300maxを20%以下とするためには、トレッドを構成するゴム組成物の架橋構造が均一化されることが必要であると考えられる。ゴム組成物の架橋構造を均一化する一つの手段として、硫黄などの加硫剤や加硫促進剤をゴム成分に十分に分散させ、架橋の足場を均一化することが考えられる。例えば、従来のゴム組成物の製造方法に一般的にみられるように、混練りの最終工程において加硫剤および加硫促進剤をそのまま加えるのではなく、加硫剤および/または加硫促進剤を最終工程より前に一部のゴム成分に分散させておくことにより、架橋の足場を均一化して加硫後の架橋構造を均一化し、ひいてはモジュラスのバラつきを本発明の範囲内のものとすることができる。
【0050】
具体的には、トレッドを構成するゴム組成物の製造において、加硫剤および/または加硫促進剤を、ゴム成分とのマスターバッチとして加える方法を使用することができる。例えば、ゴム成分を構成するイソプレン系ゴムの少なくとも一部と加硫剤または加硫促進剤とをマスターバッチ化し、残りのゴム成分および配合剤を混練りした混練物と最終工程で混練することにより、目的の架橋の足場を均一化したゴム組成物を得ることができる。イソプレン系ゴムと加硫剤または加硫促進剤とのマスターバッチは、ウェットマスターバッチであってもドライブレンドであってもよく、特に限定されるものではないが、分散の均一性の観点からはウェットマスターバッチが好ましい。このようなマスターバッチとしては、公知のものを使用することができ、例えば、三新化学工業(株)のサンミックスを使用してもよい。
【0051】
ウェットマスターバッチの製造方法としては、特に限定されるものではなく、ゴム工業の分野において公知の方法を使用することができる。
【0052】
また、加硫剤マスターバッチや加硫促進剤マスターバッチを用いない例として、例えば、イソプレン系ゴムおよびブタジエンゴムの配合割合に応じて薬品類を分割し、イソプレン系ゴムに対応する分割した薬品類を混練りし、得られた混練物に加硫剤および/または加硫促進剤を混練りしたうえで、この混練物と、ブタジエンゴムに対応する分割した薬品類を混練りした混練物とを混練りして、目的の架橋の足場を均一化したゴム組成物を製造することもできる。もちろん、加硫剤または加硫促進剤のいずれかをマスターバッチとして用い、他方を上述したように事前にイソプレン系ゴムと薬品類との混練物に混練して目的の架橋の足場を均一化したゴム組成物を製造することもできる。
【0053】
ゴム組成物の製造における各混練は、公知の混練機を用いることができ、例えば、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどの機械的なせん断力を材料に加え、混練・混合を行う装置が挙げられる。
【0054】
本発明の空気入りタイヤは、上述のように架橋の足場をなるべく均一化したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤのトレッドの形状にあわせて押出し加工し、タイヤ成形機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、通常の方法にて成形することにより、未加硫タイヤを形成する成形工程、この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧する加硫工程により製造することができる。加硫温度は、例えば120℃以上200℃以下である。
【0055】
本発明の空気入りタイヤは、タイヤのトレッドに上述した架橋の足場をなるべく均一化したゴム組成物を用い、得られるタイヤのモジュラスのバラつき(M300max-M300min)×100/M300maxを20%以下とすることにより、特に耐摩耗性に優れるものである。トレッドがキャップトレッドとベーストレッドとからなる2層構造のトレッドである場合には上述したゴム組成物は少なくともキャップトレッドとして用いる必要がある。
【0056】
本発明の空気入りイヤの用途としては、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、高性能タイヤなどが挙げられる。なお、本明細書における高性能タイヤとは、グリップ性能に特に優れたタイヤであり、競技車両に使用する競技用タイヤをも含む概念である。
【実施例
【0057】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0058】
以下、実施例および比較例において用いた各種薬品をまとめて示す。
NR:TSR20
BR1:宇部興産(株)製のBR150B(シス1,4-含有率97%)
BR2:JSR(株)製のJSR BR730(シス1,4-含有率95%)
カーボンブラック:三菱化学(株)製のダイアブラックI(N220)(N2SA:114m2/g、平均一次粒子径:22nm)
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN(パラフィン系)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸つばき
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:住友化学(株)製のソクシノールCZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫剤マスターバッチ(加硫剤MB):製造例1で製造したもの(NR/硫黄=20/80(質量比))
加硫促進剤マスターバッチ(加硫促進剤MB):製造例2で製造したもの(NR/加硫促進剤=3070(質量比))
【0059】
製造例1:加硫剤MBの製造
<NRラテックスおよび加硫剤スラリー溶液の調製>
NRを水で30%に希釈し、NRラテックスを調製した。また、加硫剤として硫黄を用い、IKA社製の高速ホモジナイザーで水を加えて、それぞれ、10%のNRラテックスおよび加硫剤スラリー溶液を調製した。
【0060】
<加硫剤MBの製造>
上記で得られたNRラテックス0.2kgと加硫剤スラリー溶液0.8kgを凝固槽(みづほ工業(株)製のLR-1)に投入し、5000rpmで30分間混合し、凝固させた。その後、さらに5000rpmで混合を続けながら、凝固槽内の破砕羽根を5000rpmで30分間回転させ、凝固物を破砕した。凝固物の破砕後、1000rpmで撹拌を続けながら、凝固溶液のpHが4となるまでギ酸を添加した。凝固溶液のpHが4になった後、撹拌を続けたままで、凝固槽内の破砕羽根を3000rpmで10分間回転させて凝固物を破砕した。得られた凝固物を2軸押出機に投入して、脱水、乾燥させてウェットマスターバッチを製造した。なお、2軸押出機としては、CTE社製のHTM型を用い、運転条件は、200rpm、湿度120℃とした。
【0061】
製造例2:加硫促進剤MBの製造
加硫剤としての硫黄に代えて加硫促進剤を所定の質量比で用いた以外は、製造例1と同様にして、加硫促進剤MBを製造した。
【0062】
実施例1~9および比較例1
表1に示す配合内容に従い、バンバリーミキサーを用いて、硫黄、加硫促進剤、加硫剤MBおよび加硫促進剤MB以外の薬品を150℃の条件下で5分間混練りし、混練物を得た。得られた混練物に、表1の配合内容に従い、硫黄あるいは加硫剤MBおよび加硫促進剤あるいは加硫促進剤MBを添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間混練りし、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を使用して、トレッドの形状に成形し、他のタイヤ部材と共に貼り合せて未加硫タイヤを形成し、150℃で30分間加硫することにより、タイヤ(タイヤサイズ:275/80R225)を製造した。
【0063】
実施例10および11
加硫剤MBおよび加硫促進剤MBを、合わせてオープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間混練りしてから用いた以外は実施例1と同様にしてタイヤを製造した。
【0064】
実施例12~15
表2に示す配合内容に従い、工程X1に示す各種薬品を、1.7Lバンバリーミキサーにて150℃の条件下で5分間混練りして混練物X1を得た。別途表2に示す配合内容に従い、工程X2に示す混練物X1と各種薬品とを、1.7Lバンバリーミキサーにて150℃の条件下で5分間混練して混練物X2を得た。混練物X2を、表2に示す配合内容に従い、工程Fに示す他の薬品がある場合にはそれらを合わせ、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間混練りし、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を使用して、実施例1と同様にしてタイヤを製造した。
【0065】
各実施例および比較例により得られたタイヤについて、耐摩耗性試験およびモジュラスのバラつきの評価を下記試験により行った。結果を表1および2に示す
【0066】
<高シビアリティ領域における耐摩耗性評価>
上記試験用タイヤを排気量12000ccの国産2-D車に装着し、一般路にて実車走行を行なった。10万km走行時のタイヤトレッドゴムの残溝量を計測し(新品時16mm)、比較例1の残溝量を100として指数表示した。指数が大きいほど、耐摩耗性が優れていることを示す。
【0067】
<モジュラスおよびそのバラつき>
上記試験用タイヤの接地面の赤道上のほぼ等間隔の部位を10点選び、試験片として、トレッドゴムを切り出した。得られた試験片の引張り特性について、JIS K 6251に基づいて、23℃雰囲気下、(株)島津製作所製の卓上型精密万能試験機(AGS-Xを用いて引っ張り試験を行い、300%モジュラスを測定した。10点の平均値をモジュラス(Pa)として表1および2に示し、10点中、最も高い値をM300maxとし、最も低い値をM300minとして下記式(1)よりモジュラスのバラつきを算出した。
モジュラスのバラつき(%)
=(M300max-M300min)×100/M300max・・・(1)
モジュラスのバラつきが小さいほど、架橋構造が均一化されていることを示す。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
表1および2の結果より、イソプレン系ゴムの含有量およびブタジエンゴムの含有量が所定範囲内であり、かつモジュラスのバラつきが小さいほど、耐摩耗性に優れ、カーボンブラックによる耐摩耗性の増強効果をさらに向上させることができることが分かる。