(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】方法、装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/90 20060101AFI20230301BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20230301BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20230301BHJP
【FI】
G01N21/90 D
G01B11/00 H
G06T7/00 350B
G06T7/00 600
(21)【出願番号】P 2018064530
(22)【出願日】2018-03-29
【審査請求日】2021-01-13
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】布施 貴史
(72)【発明者】
【氏名】肥塚 哲男
【審査官】越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-257937(JP,A)
【文献】特開2001-116703(JP,A)
【文献】特開2006-214890(JP,A)
【文献】特開2004-354100(JP,A)
【文献】特開2008-102027(JP,A)
【文献】特開平08-233719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に封入された第1の液体を所定時間間隔で撮像した複数の第1画像を用い、前記第1の液体中に含まれる第1の物体の第1の動き方及び第1の比重を学習する処理と、
容器に封入された第2の液体を所定時間間隔で撮像した複数の第2画像を用い、前記第2の液体中に含まれる第2の物体の第2の動き方及び第2の比重を取得する処理と、
前記第1の動き方及び前記第1の比重と、前記第2の動き方及び前記第2の比重と、をそれぞれ比較する処理と、
をコンピュータが実行する方法。
【請求項2】
前記第1の物体は、前記第1の液体中における異物であり、
前記比較する処理において、前記第1の動き方と前記第2の動き方との類似度が第1の閾値以上であって、前記第1の比重と前記第2の比重との類似度が第2の閾値以上である場合に、前記第2の物体を前記第2の液体中における異物であると判定する処理、
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のコンピュータが実行する方法。
【請求項3】
前記学習する処理は、前記複数の第1画像を用い、前記第1の液体中に含まれる前記第1の物体の第1の重心位置を特定し、特定された前記第1の重心位置に基づいて前記第1の物体の前記第1の動き方を表す第1の特徴量を算出し、算出された前記第1の特徴量に基づいて前記第1の動き方を学習する処理を含み、
前記取得する処理は、前記複数の第2画像を用いて前記第2の液体中に含まれる前記第2の物体の第2の重心位置を特定し、特定された前記第2の重心位置に基づいて前記第2の動き方を表す第2の特徴量を取得する処理を含み、
前記比較する処理において、前記第1の特徴量と、前記第2の特徴量と、を比較する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のコンピュータが実行する方法。
【請求項4】
前記学習する処理は、前記複数の第1画像を用い、前記第1の物体の第1の形状及び第1の面積を学習する処理を含み、
前記取得する処理は、前記複数の第2画像を用い、前記第2の液体中に含まれる前記第2の物体の第2の形状及び第2の面積を取得する処理を含み、
前記比較する処理において、前記第2の特徴量に加えて、前記第2の物体の前記第2の形状及び前記第2の面積を、前記第1の物体の前記第1の形状及び前記第1の面積とそれぞれ比較する、
ことを特徴とする請求項3記載のコンピュータが実行する方法。
【請求項5】
前記第1の液体及び前記第2の液体を撮像する撮像装置の露光時間を調整する、
処理をコンピュータが実行する請求項1~4のいずれか1項記載のコンピュータが実行する方法。
【請求項6】
前記第1の液体及び前記第2の液体を載置するステージを駆動する処理、
をさらに有することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項記載のコンピュータが実行する方法。
【請求項7】
容器に封入された第1の液体を所定時間間隔で撮像した複数の第1画像を用い、前記第1の液体中に含まれる第1の物体の第1の動き方及び第1の比重を学習する学習部と、
容器に封入された第2の液体を所定時間間隔で撮像した複数の第2画像を用い、前記第2の液体中に含まれる第2の物体の第2の動き方及び第2の比重を取得する取得部と、
前記第1の動き方及び前記第1の比重と、前記第2の動き方及び前記第2の比重と、をそれぞれ比較する検査部と、
を備える装置。
【請求項8】
容器に封入された第1の液体を所定時間間隔で撮像した複数の第1画像を用い、前記第1の液体中に含まれる第1の物体の第1の動き方及び第1の比重を学習する処理と、
容器に封入された第2の液体を所定時間間隔で撮像した複数の第2画像を用い、前記第2の液体中に含まれる第2の物体の第2の動き方及び第2の比重を取得する処理と、
前記第1の動き方及び前記第1の比重と、前記第2の動き方及び前記第2の比重と、をそれぞれ比較する処理と、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、方法、装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
光源によって容器を背面から照明し、容器に封入された液体中に含まれる物体(異物、気泡)を目視で分別することが行われている。また、光の反射特性が異物と気泡とで異なることを利用して、異物と気泡とを分別する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、目視による方法では、注目する領域や照明条件、また、検査者の疲労などにより、異物を見逃したり、気泡を異物と見間違えるおそれがある。また、異物と気泡との間の光の反射特性の違いを利用する場合、容器の形状によっては、例えば、容器表面からの反射光が気泡からの反射光と重畳され、異物の識別性能が低下するおそれがある。
【0005】
1つの側面では、本発明は、異物の検出精度を向上できる方法、装置、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの態様では、方法は、容器に封入された第1の液体を所定時間間隔で撮像した複数の第1画像を用い、前記第1の液体中に含まれる第1の物体の第1の動き方及び第1の比重を学習する処理と、容器に封入された第2の液体を所定時間間隔で撮像した複数の第2画像を用い、前記第2の液体中に含まれる第2の物体の第2の動き方及び第2の比重を取得する処理と、前記第1の動き方及び前記第1の比重と、前記第2の動き方及び前記第2の比重と、をそれぞれ比較する処理と、をコンピュータが実行する。
【発明の効果】
【0007】
異物の検出精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施例1に係る検査システムを概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、情報処理装置の機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、識別データ作成時に行われる処理のフローチャートである。
【
図5】
図5は、情報処理装置が実行する学習処理のフローチャートである。
【
図6】
図6(A)~
図6(C)は、学習データDBの一例を示す図である。
【
図7】
図7(A)は、所定時間間隔で撮像された複数の画像の一例であり、
図7(B)は、液体中に存在する物体の重心位置について説明する図であり、
図7(C)は、物体の方向ベクトルの算出について説明する図であり、
図7(D)は、物体の移動軌跡について説明する図である。
【
図8】
図8(A)及び
図8(B)は、物体の分類を入力する画面を示す図である。
【
図9】
図9は、各特徴量に対する物体の分布状態を示す図である。
【
図10】
図10は、検査時の処理を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、情報処理装置が実行する検査処理のフローチャートである。
【
図12】
図12は、検査システムにおける処理の別例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0009】
以下、実施例1に係る検査システムについて、
図1~
図11に基づいて詳細に説明する。検査システムは、容器内に封入された液体中に異物が存在するか否かを検査するシステムである。
【0010】
図1には、実施例1に係る検査システム100の構成が概略的に示されている。
図1に示すように、検査システム100は、光源10と、光源制御装置11と、ステージ20と、ステージ制御装置21と、撮像装置30と、撮像制御装置31と、情報処理装置50と、を備える。
【0011】
光源10は、光源制御装置11の制御の下、検査対象となる液体封入容器C1(以下、容器C1と記載する)を照明する。
【0012】
光源制御装置11は、情報処理装置50からの指示に従って、光源10の明るさ等を制御する。
【0013】
ステージ20は、検査対象の容器C1を固定する。また、ステージ20は、ステージ制御装置21の制御の下、容器C1内の液体に外乱を与えるように駆動する。
【0014】
ステージ制御装置21は、情報処理装置50からの指示に従って、ステージ20を駆動させる。
【0015】
撮像装置30は、撮像制御装置31の制御の下、ステージ20に固定された容器C1を連続して撮像する。
【0016】
撮像制御装置31は、情報処理装置50からの指示に従って、撮像装置30の撮像タイミング、露光時間等を制御する。
【0017】
情報処理装置50は、検査システム100を全体的に制御する。また、情報処理装置50は、撮像装置30が撮像した時系列で連続する複数の画像を用いて、容器C1内の液体中に異物が存在するか否かを検査する。
【0018】
情報処理装置50は、
図2に示すようなハードウェア構成を有する。具体的には、情報処理装置50は、
図2に示すように、Central Processing Unit(CPU)511、Read Only Memory(ROM)512、Random Access Memory(RAM)513、記憶装置(Hard Disk Drive:HDD)514、ネットワークインタフェース515、及び可搬型記憶媒体516に記憶されたデータを読み取り可能な可搬型記憶媒体用ドライブ517、入力装置518、及び表示装置519等を備えている。これら情報処理装置50の構成各部は、バス520に接続されている。入力装置518は、例えば、キーボード、マウス、及びタッチパネル等であるが、これらに限定されるものではない。CPU511は、ROM512あるいはHDD514に格納されているプログラム、或いは可搬型記憶媒体用ドライブ517が可搬型記憶媒体516から読み取ったプログラムを実行することで、情報処理装置50を
図3の各部として機能させる。
【0019】
具体的には、
図3に示すように、CPU511がプログラムを実行することにより、情報処理装置50は、受付部51、学習部52、取得部及び検査部としての検査部53、調整部としての撮像制御部57、及び駆動部58として機能する。
【0020】
受付部51は、撮像装置30が所定時間間隔で撮像した複数の画像を、撮像制御装置31を介して撮像装置30から受け付け、学習部52又は検査部53に出力する。また、受付部51は、例えば入力装置518を介し、ユーザから、容器C1に封入された液体に関する情報(例えば、液体の種類及び比重等)の入力を受け付ける。また、受付部51は、入力装置518を介し、ユーザから、撮像装置30が撮像した画像において容器C1に封入された液体中に存在する各物体の分類の入力を受け付ける。
【0021】
学習部52は、受付部51を介して取得した、所定時間間隔で撮像された複数の画像を用いた学習処理を行い、容器C1に封入された液体内の物体を識別するためのデータ(識別データ)を作成する。
【0022】
検査部53は、受付部51を介して取得した、所定時間間隔で撮像された複数の画像と、学習部52が作成した識別データとを用いて、容器C1に封入された液体中に異物が存在するか否かを検査する検査処理を行う。検査部53は、検査結果を、例えば、製造ラインの制御装置に出力する。
【0023】
撮像制御部57は、撮像制御装置31を介して、撮像装置30を制御する。より具体的には、撮像制御部57は、撮像装置30側に配置された照度計(不図示)による容器C1を透過した透過光の検出結果に基づき、撮像装置30の露光時間を調整する。また、撮像制御部57は、撮像装置30の撮像タイミングを制御する。
【0024】
駆動部58は、容器C1に封入された液体中に存在する異物を浮遊させるために、ステージ制御装置21を介してステージ20を駆動し、容器C1内の液体に外乱を与える。
【0025】
(識別データの作成)
次に、検査システム100における、容器C1に封入された液体内の物体を識別するためのデータ(識別データ)の作成について説明する。
図4は、識別データ作成時の処理を示すフローチャートである。
図4の処理は、容器C1がステージ20上に配置されると開始される。
【0026】
まず、撮像制御部57が、撮像装置30の露光時間を調整する(ステップS103)。例えば、撮像制御部57は、撮像装置30側に配置された照度計(不図示)による容器C1を透過した透過光の検出結果に基づき、撮像装置30の露光時間を調整する。なお、撮像制御部57は、照度計の検出結果に基づき、光源10の明るさを調整してもよい。
【0027】
次に、駆動部58が、容器C1に封入された液体中に存在する異物を浮遊させるために、ステージ制御装置21を介してステージ20を駆動し、容器C1内の液体に外乱を与える(ステップS105)。後述する学習処理において、異物の動き方、より詳しくは、異物の動き方に関する特徴量を学習するためである。例えば、駆動部58は、容器C1を反転させるようにステージ20を駆動する。駆動部58は、容器C1を反転させた後に、容器C1を元の姿勢に戻すようにステージ20を駆動させてもよい。なお、容器C1に封入された液体中に存在する異物を浮遊させることができれば、反転ではなく、他の態様でステージ20を駆動させてもよい。
【0028】
次に、撮像制御部57は、撮像装置30によって、ステージ20に固定された容器C1内の液体を所定時間間隔で撮像する(ステップS107)。これにより、容器C1内の液体を所定時間間隔で撮像した複数の画像が得られる。
【0029】
次に、情報処理装置50は、学習処理を実行する(ステップS108)。
【0030】
(学習処理)
ここで、学習処理(ステップS108)の詳細について、
図5のフローチャート及びその他図面を適宜参照して説明する。
【0031】
図5の処理では、まず、受付部51が、入力装置518を介して、容器C1に封入された液体に関するデータ(液体の種類及び比重)の入力をユーザから受け付け、HDD514等に記憶されている学習データDB54(
図3参照)に格納する(ステップS11)。
【0032】
学習データDB54は、例えば、
図6(A)に示すように、液体種類、液体比重、物体形状、物体面積、物体比重、移動軌跡、及び分類結果のフィールドを備える。受付部51は、ステップS11において入力を受け付けた、容器C1に封入された液体の種類及び比重を、
図6(A)に示すように、学習データDB54の液体種類及び液体比重のフィールドに格納する。
【0033】
図5に戻り、続いて、学習部52は、撮像装置30により所定時間間隔で容器C1を撮像した複数の画像(
図4のステップS107で撮像した画像)を受付部51を介して撮像装置30から取得する(ステップS13)。
【0034】
続いて、学習部52は、各画像において、容器C1に封入された液体中の物体を抽出する(ステップS15)。例えば、
図7(A)に示す、所定時間間隔で撮像された4つの画像が取得されている場合、学習部52は、物体OB1、OB2、及びOB3を各画像において抽出する。
【0035】
次に、学習部52は、抽出した各物体の特徴量を算出し、学習データDB54を更新する(ステップS17)。本実施形態においては、学習部52は、物体の動き方に関する特徴量(例えば、移動方向及び移動速度の情報を含む移動軌跡)を算出し、学習データDB54を更新する。さらに、学習部52は、物体の形状、面積、比重を特徴量として算出し学習データDB54を更新する。
【0036】
ここで、移動軌跡の算出方法について説明する。まず、学習部52は、
図7(B)に示すように、ステップS15において抽出した各物体OB1~OB3の重心位置PCG1~PCG3を求める。そして、学習部52は、
図7(C)に示すように、隣接する画像間における各物体OB1~OB3の方向ベクトル(オプティカルフロー)OF1~OF3を算出する。なお、
図7(C)及び
図7(D)において、OB1(n)は、nフレーム目の画像における物体OB1を示し、OB1(n+1)は、n+1フレーム目の画像における物体OB1を示す。また、OB1(n+2)は、n+2フレーム目の画像における物体OB1を示し、OB1(n+3)は、n+3フレーム目の画像における物体OB1を示す。他の物体OB2及びOB3についても同様である。また、学習部52は、オプティカルフローOF1~OF3から、各物体OB1~OB3について、
図7(D)において矢印で示す、例えば、移動方向及び移動速度の情報を含む移動軌跡を算出する。なお、オプティカルフローは、重心位置の代わりに、各物体を囲む矩形領域の中心位置、あるいは各物体が含まれる同一領域のフレーム毎の明るさの変化に基づいて算出してもよい。
【0037】
なお、物体の比重については、学習部52は、ステップS11で入力を受け付けた容器C1に封入された液体の比重と、オプティカルフローOF1~OF3から算出された物体OB1~OB3の鉛直方向の移動速度とに基づいて、物体OB1~OB3の比重を算出する。
【0038】
また、物体の形状及び面積については、学習部52は、各画像に対し画像認識処理を行い、ステップS15において抽出した各物体OB1~OB3の形状及び面積を取得し、その平均値を算出する。
【0039】
学習部52は、各物体について算出した物体の形状、面積、比重、及び移動軌跡を、
図6(B)に示すように、学習データDB54の物体形状、物体面積、物体比重、及び移動軌跡のフィールドに格納する。
【0040】
図5に戻り、次に、学習部52は、各物体についてのデータに対し、ユーザが入力装置518を介して入力した物体の分類(例えば、異物又は気泡)を取得し、学習データDB54を更新する(ステップS19)。例えば、学習部52は、表示装置519に、
図8(A)に示すような画面SCR1を表示する。当該画面SCR1の左上には、撮像装置30が撮像した画像と、学習部52が抽出した物体とが表示され、右上には、容器C1が封入する液体の種類及び比重が表示されている。また、下側には、各物体について算出した特徴量が表示されている。ユーザは、画面SCR1において画像を確認しながら、
図8(B)に示すように、各物体の分類を入力欄EF1に入力する。そして、ユーザが保存ボタンB1を押すと、入力欄EF1に入力された分類が、受付部51を介して学習部52に入力される。学習部52は、入力された物体の分類を、
図6(C)に示すように、学習データDB54の、分類結果のフィールドに格納する。
【0041】
次に、学習部52は、物体の識別に使用する識別データの生成に過去の学習データを使用するか否かを判定する(ステップS21)。例えば、学習部52は、入力装置518を介して、過去の学習データを使用する指示をユーザから受け付けた場合に、過去の学習データを識別データの生成に使用すると判定する。
【0042】
過去の学習データを識別データの生成に使用しない場合(ステップS21/NO)、学習部52は、今回の学習データに基づいて、識別データを作成し、識別データDB56に格納する(ステップS23)。
【0043】
一方、過去の学習データを識別データの生成に使用する場合(ステップS21/YES)、学習部52は、今回及び過去の学習データに基づいて、識別データを作成し、識別データDB56に格納する(ステップS25)。
【0044】
ステップS23又はS25の処理により、
図9に示すような、各特徴量を軸とする空間における各物体の分布状態が識別データとして得られる。
図9の例では、例えば異物Aは、粒子の大きさが大きく、移動方向が下向きで、移動速度が大きい領域に分布している。異物Bは、移動方向は上向きでも下向きでもなく、移動速度が小さく、粒子の大きさが小さい領域に分布している。また、気泡は、移動方向が上向きで、粒子の大きさが小さく、移動速度は異物Aよりも遅い領域に分布している。
【0045】
(異物検査)
次に、容器C1に封入された液体中に異物が存在するか否かの検査について説明する。
図10は、検査時に行われる処理を示すフローチャートである。
図10の処理は、容器C1がステージ20に配置されると開始される。
【0046】
ステップS203~ステップS207の処理は、識別データ作成時の処理(ステップS103~S107)と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0047】
撮像装置30により所定時間間隔で容器C1を撮像すると(ステップS207)、検査部53が検査処理を実行する(ステップS208)。
【0048】
(検査処理)
ここで、検査処理の詳細について、
図11のフローチャート及びその他図面を適宜参照して説明する。
【0049】
図11において、ステップS51~ステップS55の処理は、
図5のステップS11~S15の処理と略同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0050】
検査部53は、
図5のステップS17と同様に、抽出した各物体の形状、面積、比重、及び移動軌跡を算出する(ステップS57)。
【0051】
続いて、検査部53は、ステップS57で算出した特徴量と、識別データDB56に格納されている異物の特徴量とを比較し、異物の有無を検査する(ステップS59)。具体的には、検査部53は、ステップS55で抽出した物体のそれぞれについて、物体の動き方に関する特徴量と、識別データDB56に格納されている異物の動き方に関する特徴量とを比較する。さらに、物体の形状、面積、及び比重と、識別データDB56に格納されている異物の形状、面積、及び比重とを比較する。検査部53は、例えば、ステップS57で算出した特徴量と識別データDB56に格納されている異物の特徴量との類似度が閾値以上である場合に、物体が異物であると判定する。これにより、異物の有無を検査できる。上記の類似度は、たとえば、画像間の明るさの違いを正規化相関などにより求めることで、抽出した物体の形状と格納されている異物の形状との間の類似度としたり、移動軌跡の各方向ベクトル同士の成す角度の近さをコサイン演算などにより求めることで、抽出した物体の移動軌跡と格納されている異物の移動軌跡との間の類似度としてもよい。
【0052】
続いて検査部53は、検査結果を出力する(ステップS61)。具体的には、検査部53は、異物の有無を例えば製造ラインの制御装置に出力し、
図10のステップS210に移行する。これにより、例えば、異物があるという検査結果を受信した製造ラインの制御装置は、液体中に異物を含む容器C1を製造ラインからはじくことができる。
【0053】
図10に戻り、検査処理(ステップS208)が終了すると、検査部53は、他の検査対象があるか否か判定する(ステップS210)。他の検査対象がある場合(ステップS210/YES)、ステップS203に戻り、他の検査対象がない場合(ステップS210/NO)、
図10の処理を終了する。
【0054】
以上、詳細に説明したように、本実施例1によれば、情報処理装置50は、容器C1内の液体を所定時間間隔で撮像した複数の画像を用い、液体中に含まれる物体の動き方を取得し、取得した物体の動き方と、容器C1内の液体を所定時間間隔で撮像した複数の画像を用いて予め学習しておいた、異物の動き方と、を比較することにより、液体中に異物が存在するか否かを検査する検査部53を備える。容器C1内の液体を所定時間間隔で撮像した複数の画像を用いて取得した物体の動き方を、容器C1内の液体を所定時間間隔で撮像した複数の画像を用いて予め学習しておいた物体の動き方と比較することによって、液体中の異物の有無を検査するため、異物の有無の検査精度が向上する。
【0055】
また、本実施例1において、情報処理装置50は、容器C1内の液体を所定時間間隔で撮像した複数の画像を用い、液体中に含まれる異物の重心位置を用いて異物の動き方を表す特徴量を算出し、学習する学習部52を備え、検査部53は、複数の画像を用いて液体中に含まれる物体の重心位置を用いて物体の動き方を表す特徴量を取得し、取得した物体の動き方を表す特徴量と、学習部52が学習した異物の動き方を表す特徴量と、を比較することにより、液体中に異物が存在するか否かを検査する。これにより、物体の動きに関する特徴量同士を比較するため、異物の有無の検査精度がより向上する。
【0056】
また、本実施例1において、学習部52は、複数の画像を用い、異物の形状、面積、及び比重を学習し、検査部53は、複数の画像を用い、液体中に含まれる物体の形状、面積、及び比重を取得し、取得した物体の動き方を表す特徴量に加えて、液体中に含まれる物体の形状、面積、及び比重を、学習部52が学習した異物の形状、面積、及び比重と比較することにより、液体中に異物が存在するか否かを検査する。動きに関する特徴量に加えて、物体の形状、面積、比重を用いるため、異物の有無の検査精度がより向上する。
【0057】
また、本実施例1において、情報処理装置50は、容器C1を通過する透過光に応じて撮像装置30の露光時間を調整する撮像制御部57を有する。容器C1を光源10により照明する場合、光源の駆動方法に依存して光源10が暗すぎると画像がちらつくことがある。撮像装置30の露光時間を調整することにより、画像のちらつきを抑制することができる。
【0058】
また、本実施例1において、情報処理装置50は、容器C1内の液体中の物体が浮遊するように容器C1を載置するステージ20を駆動する駆動部58を備える。これにより、液体中の物体の動き方(動き方に関する特徴量)を取得することができる。
【0059】
なお、上記実施例1では、識別データ作成時の処理と検査時の処理とを別々に実行していたが、例えば、
図12に示すように、入力装置518を介して、検査処理を行うか、学習処理を行うかの選択をユーザから受け付けて(ステップS309)、選択結果に基づいて、検査処理又は学習処理を行うようにしてもよい。なお、ステップS303、S305及びS307の処理は、それぞれステップ103、S105及びS107又はS203、S205及びS207の処理と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0060】
なお、上記の処理機能は、コンピュータによって実現することができる。その場合、処理装置が有すべき機能の処理内容を記述したプログラムが提供される。そのプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体(ただし、搬送波は除く)に記録しておくことができる。
【0061】
プログラムを流通させる場合には、例えば、そのプログラムが記録されたDVD(Digital Versatile Disc)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)などの可搬型記録媒体の形態で販売される。また、プログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することもできる。
【0062】
プログラムを実行するコンピュータは、例えば、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、自己の記憶装置に格納する。そして、コンピュータは、自己の記憶装置からプログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行する。なお、コンピュータは、可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することもできる。また、コンピュータは、サーバコンピュータからプログラムが転送されるごとに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することもできる。
【0063】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【0064】
なお、以上実施形態の説明に関して、更に以下の付記を開示する。
(付記1) 液体封入容器内の液体を所定時間間隔で撮像した複数の第1画像を用い、前記液体中に含まれる物体の動き方を取得し、
取得した前記物体の動き方と、液体封入容器内の液体を所定時間間隔で撮像した複数の第2画像を用いて予め学習しておいた異物の動き方と、を比較することにより、前記液体中に異物が存在するか否かを検査する、
処理をコンピュータが実行する検査方法。
(付記2) 前記複数の第2画像を用い、前記液体中に含まれる前記異物の重心位置を用いて前記異物の動き方を表す特徴量を算出し、学習する、処理をコンピュータが実行し、
前記取得する処理は、前記複数の第1画像を用いて前記液体中に含まれる前記物体の重心位置を用いて前記物体の動き方を表す特徴量を取得する処理を含み、
前記検査する処理は、取得した前記物体の動き方を表す特徴量と、学習した前記異物の動き方を表す特徴量と、を比較することにより、前記液体中に異物が存在するか否かを検査する処理を含む、
ことを特徴とする付記1記載の検査方法。
(付記3) 前記学習する処理は、前記複数の第2画像を用い、前記異物の形状、面積、及び比重を学習する処理を含み、
前記取得する処理は、前記複数の第1画像を用い、前記液体中に含まれる前記物体の形状、面積、及び比重を取得する処理を含み、
前記検査する処理は、取得した前記物体の動き方を表す特徴量に加えて、取得した前記液体中に含まれる前記物体の形状、面積、及び比重を、学習した前記異物の形状、面積、及び比重と比較することにより、前記液体中に異物が存在するか否かを検査する処理を含む、
ことを特徴とする付記2記載の検査方法。
(付記4) 前記液体封入容器内の液体を所定時間間隔で撮像する撮像装置の露光時間を調整する、処理をコンピュータが実行する付記1~3のいずれかに記載の検査方法。
(付記5) 前記液体封入容器内の液体中の物体が浮遊するように前記液体封入容器を載置するステージを駆動する、処理をコンピュータが実行する付記1~4のいずれかに記載の検査方法。
(付記6) 液体封入容器内の液体を所定時間間隔で撮像した複数の第1画像を用い、前記液体中に含まれる物体の動き方を取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記物体の動き方と、液体封入容器内の液体を所定時間間隔で撮像した複数の第2画像を用いて予め学習しておいた、異物の動き方と、を比較することにより、前記液体中に異物が存在するか否かを検査する検査部と、
を備える検査装置。
(付記7) 前記複数の第2画像を用い、前記液体中に含まれる前記異物の重心位置を用いて前記異物の動き方を表す特徴量を算出し、学習する学習部を備え、
前記取得部は、前記複数の第1画像を用いて前記液体中に含まれる前記物体の重心位置を用いて前記物体の動き方を表す特徴量を取得し、
前記検査部は、前記取得部が取得した前記物体の動き方を表す特徴量と、前記学習部が学習した前記異物の動き方を表す特徴量と、を比較することにより、前記液体中に異物が存在するか否かを検査する、
ことを特徴とする付記6記載の検査装置。
(付記8) 前記学習部は、前記複数の第2画像を用い、前記異物の形状、面積、及び比重を学習し、
前記取得部は、前記複数の第1画像を用い、前記液体中に含まれる前記物体の形状、面積、及び比重を取得し、
前記検査部は、前記取得部が取得した前記物体の動き方を表す特徴量に加えて、前記取得部が取得した前記液体中に含まれる前記物体の形状、面積、及び比重を、前記学習部が学習した前記異物の形状、面積、及び比重と比較することにより、前記液体中に異物が存在するか否かを検査する、
ことを特徴とする付記7記載の検査装置。
(付記9) 前記液体封入容器内の液体を連続して撮像する撮像装置の露光時間を調整する調整部、
を備える付記6~8のいずれかに記載の検査装置。
(付記10) 前記液体封入容器内の液体中の物体が浮遊するように前記液体封入容器を載置するステージを駆動する駆動部、
を備える付記6~9のいずれかに記載の検査装置。
(付記11) 液体封入容器内の液体を所定時間間隔で撮像した複数の第1画像を用い、前記液体中に含まれる物体の動き方を取得し、
取得した前記物体の動き方と、液体封入容器内の液体を所定時間間隔で撮像した複数の第2画像を用いて予め学習しておいた異物の動き方と、を比較することにより、前記液体中に異物が存在するか否かを検査する、
処理をコンピュータに実行させる検査プログラム。
【符号の説明】
【0065】
20 ステージ
30 撮像装置
50 情報処理装置
52 学習部
53 検査部
57 撮像制御部
58 駆動部
C1 容器