(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20230301BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
H01L29/78 301Y
H01L29/78 301G
(21)【出願番号】P 2018199364
(22)【出願日】2018-10-23
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】315002243
【氏名又は名称】ユナイテッド・セミコンダクター・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】片山 雅也
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-182277(JP,A)
【文献】特開平03-188675(JP,A)
【文献】実開昭53-117173(JP,U)
【文献】国際公開第2011/148435(WO,A1)
【文献】特開2017-212267(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0345750(US,A1)
【文献】特開2008-277833(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0265335(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-0818115(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板の表層部に設けられた第1導電型の第1の半導体領域と、
前記第1の半導体領域の上方に設けられ、第1の方向に延びるゲート電極と、
前記半導体基板の上方に前記ゲート電極から離間して設けられ、
前記第1の方向に延びるダミーゲート電極と、
前記ゲート電極と前記ダミーゲート電極との間で前記半導体基板の表層部に設けられた
前記第1導電型とは異なる第2導電型の第2の半導体領域と、
前記第2の半導体領域に接続される配線と、
を有し、
前記第1の半導体領域の多数キャリアの濃度よりも、前記ダミーゲート電極の下方かつ前記第2の半導体領域の側方
に位置すると共に前記第2の半導体領域の側面に接し、前記半導体基板の表層部に設けられた第3の半導体領域における前記多数キャリアと同種
のキャリアの濃度が低いことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記ダミーゲート電極は、少なくとも、前記ゲート電極の前記第1の半導体領域の上方の部分の全体の側方に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ゲート電極と前記ダミーゲート電極との間の距離が、前記ゲート電極の前記第1の半導体領域の上方の部分の全体にわたって一定であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ダミーゲート電極の前記ゲート電極とは反対側の前記半導体基板内に設けられた第2導電型の第
4の半導体領域を有し、
前記第
4の半導体領域の電位はフローティングとされることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第3の半導体領域は前記第2導電型
であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1の半導体領域上に設けられたノンドープの第5の半導体領域を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体基板の表層部に設けられた素子分離領域を有し、
前記ダミーゲート電極の、前記第1の方向に直交する第2の方向の縁は、前記素子分離領域の上方にあることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
半導体基板の表層部に第1導電型の第1の半導体領域を形成する工程と、
前記第1の半導体領域の上方に、第1の方向に延びるゲート電極を形成する工程と、
前記半導体基板の上方に前記ゲート電極から離間して、
前記第1の方向に延びるダミーゲート電極を形成する工程と、
前記ゲート電極と前記ダミーゲート電極との間で前記半導体基板の表層部に
前記第1導電型とは異なる第2導電型の第2の半導体領域を形成する工程と、
前記第2の半導体領域に接続される配線を形成する工程と、
を有し、
前記ゲート電極を形成する工程及び前記ダミーゲート電極を形成する工程は、前記ゲート電極用のパターン及び前記ダミーゲート電極用のパターンが形成された一つの露光マスクを用いたフォトレジストの露光及び前記フォトレジストの現像を行う工程を有し、
前記第1の半導体領域の多数キャリアの濃度よりも、前記ダミーゲート電極の下方かつ前記第2の半導体領域の側方
に位置すると共に前記第2の半導体領域の側面に接し、前記半導体基板の表層部に設けられた第3の半導体領域における前記多数キャリアと同種
のキャリアの濃度が低いことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記ダミーゲート電極は、少なくとも、前記ゲート電極の前記第1の半導体領域の上方の部分の全体の側方に形成することを特徴とする請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記ゲート電極と前記ダミーゲート電極との間の距離が、前記ゲート電極の前記第1の半導体領域の上方の部分の全体にわたって一定であることを特徴とする請求項8又は9に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置のトランジスタに含まれるゲート電極のゲート長が設計値からずれることがある。例えば、一定の間隔で配置され、一方向に延びる複数のゲート電極を含む半導体装置では、最も外側に位置するゲート電極とその内側に位置するゲート電極との間でゲート長が相違することがある。また、周囲にゲート電極が存在しない、いわゆる孤立パターンのゲート電極においても、ゲート長が設計値からずれることがある。これらの原因の一つとして、ゲート電極を形成する際の露光に用いる露光マスクのパターン密度の相違が挙げられる。そこで、実際に動作させるトランジスタのゲート電極の側方にダミーゲート電極を設けることとし、露光マスクのパターン密度の均一性を高めることがある。
【0003】
しかしながら、上記のようにダミーゲート電極が設けられた半導体装置では、リーク電流が増加しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-23097号公報
【文献】特開2008-147664号公報
【文献】特開2004-327574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、リーク電流の増加を抑制しながら、ゲート電極の加工精度へのパターン密度の影響を抑制することができる半導体装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態によれば、半導体基板と、前記半導体基板の表層部に設けられた第1導電型の第1の半導体領域と、前記第1の半導体領域の上方に設けられ、第1の方向に延びるゲート電極と、前記半導体基板の上方に前記ゲート電極から離間して設けられ、前記第1の方向に延びるダミーゲート電極と、前記ゲート電極と前記ダミーゲート電極との間で前記半導体基板の表層部に設けられた前記第1導電型とは異なる第2導電型の第2の半導体領域と、前記第2の半導体領域に接続される配線と、を有し、前記第1の半導体領域の多数キャリアの濃度よりも、前記ダミーゲート電極の下方かつ前記第2の半導体領域の側方に位置すると共に前記第2の半導体領域の側面に接し、前記半導体基板の表層部に設けられた第3の半導体領域における前記多数キャリアと同種のキャリアの濃度が低い半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、リーク電流の増加を抑制しながら、ゲート電極の加工精度へのパターン密度の影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】第1の実施形態に係る半導体装置を示す平面図である。
【
図1B】第1の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図2A】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図2B】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図2C】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
【
図2D】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その4)である。
【
図2E】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その5)である。
【
図2F】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その6)である。
【
図3】第1の参考例に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図4】第1の実施形態に関するシミュレーションの結果を示す図である。
【
図5】第2の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図6A】第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図6B】第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図6C】第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
【
図6D】第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その4)である。
【
図7】第2の実施形態に関するシミュレーションの結果を示す図である。
【
図8】第3の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図9A】第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図9B】第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図9C】第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
【
図9D】第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その4)である。
【
図10】第3の実施形態に関するシミュレーションの結果を示す図である。
【
図11A】第4の実施形態に係る半導体装置を示す平面図である。
【
図11B】第4の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図12A】第4の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図12B】第4の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図12C】第4の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
【
図12D】第4の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その4)である。
【
図12E】第4の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その5)である。
【
図12F】第4の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その6)である。
【
図13】第2の参考例に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図14】第4の実施形態に関するシミュレーションの結果を示す図である。
【
図15】第5の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図16A】第5の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図16B】第5の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図16C】第5の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
【
図16D】第5の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その4)である。
【
図17】第5の実施形態に関するシミュレーションの結果を示す図である。
【
図18】第6の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図19A】第6の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図19B】第6の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図19C】第6の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
【
図19D】第6の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その4)である。
【
図20】第6の実施形態に関するシミュレーションの結果を示す図である。
【
図21A】第7の実施形態に係る半導体装置を示す平面図である。
【
図21B】第7の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図22】素子分離絶縁膜のディボットを示す図である。
【
図23A】第8の実施形態に係る半導体装置を示す平面図である。
【
図23B】第8の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。
【0010】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。
図1Aは、第1の実施形態に係る半導体装置を示す平面図であり、
図1Bは、第1の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
図1Aは、主として、素子分離絶縁膜、ソース・ドレインの半導体領域、電極及び配線の位置関係を示す。
図1Bは、
図1A中のI-I線に沿った断面図に相当する。
【0011】
図1A及び
図1Bに示すように、第1の実施形態に係る半導体装置100では、p型の半導体基板101の表層部に素子活性領域160を画定する素子分離絶縁膜102が形成されている。半導体基板101は、例えばシリコン(Si)基板である。半導体基板101にはpチャネル型のトランジスタが形成される素子活性領域及びnチャネル型のトランジスタが形成される素子活性領域が存在するが、
図1A及び
図1Bには、nチャネル型のトランジスタが形成される素子活性領域160を示す。例えば、素子活性領域160の平面形状は矩形である。以下の説明において、素子活性領域160の長辺に平行な方向をX方向、短辺に平行な方向をY方向、半導体基板101の厚さ方向をZ方向とする。X方向は第2の方向の一例であり、Y方向は第1の方向の一例である。
【0012】
素子活性領域160を含むようにpウェル103が形成されている。pウェル103は、例えばp型不純物としてボロン(B)を含有する。なお、例えば半導体基板101がp型の場合には、pウェル103を省略してp型の領域としてpウェル103を兼ねることも可能である。その場合には、pウェル103を半導体基板101と適宜読み替えることも可能である。pウェル103の上方に1本のゲート電極108及び2本のダミーゲート電極109が形成されている。ゲート電極108とpウェル103との間及びダミーゲート電極109とpウェル103との間にゲート絶縁膜107が形成されている。ゲート電極108及びダミーゲート電極109はY方向に平行に延び、ゲート電極108は2本のダミーゲート電極109の間に位置する。例えば、ゲート絶縁膜107の厚さは1.0nm~10.0nmであり、ゲート電極108及びダミーゲート電極109の厚さは50nm~200nmである。ゲート絶縁膜107の材料には、例えば、酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(Si3N4)、酸化ハフニウム(HfO2)等の絶縁物を用いることができる。ゲート電極108及びダミーゲート電極109の材料には、例えば、多結晶シリコン(ポリシリコン)を用いることができる。チタン(Ti)及びタングステン(W)等の金属やこれらの窒化物をゲート電極108及びダミーゲート電極109の材料に用いることもできる。
【0013】
ゲート電極108及びダミーゲート電極109のX方向の両側に絶縁膜のスペーサ(サイドウォール)110が形成されている。pウェル103の表層部において、スペーサ110の下に第1の深さでn型半導体領域131が形成され、スペーサ110、ゲート電極108及びダミーゲート電極109から露出する部分に、第1の深さよりも深い第2の深さでn型半導体領域132が形成されている。例えば、n型半導体領域131は第1の不純物濃度でn型不純物としてリン(P)を含有し、n型半導体領域132は第1の不純物濃度よりも高い第2の不純物濃度でn型不純物濃度としてリンを含有する。n型半導体領域131及び132のうち、ゲート電極108とダミーゲート電極109との間に位置するものがn型半導体領域105に含まれ、ダミーゲート電極109と素子分離絶縁膜102との間に位置するものがn型半導体領域106に含まれる。
【0014】
ゲート電極108の下方では、pウェル103の表層部でn型半導体領域131の間にp型半導体領域104が形成されている。p型半導体領域104は、例えばp型不純物としてボロンを含有する。p型半導体領域104の多数キャリア(ホール)の濃度よりも、ダミーゲート電極109の下方かつn型半導体領域105の側方におけるpウェル103(半導体基板101の一部)のホールの濃度が低い。p型半導体領域104は第1の半導体領域の一例であり、n型半導体領域105は第2の半導体領域の一例であり、n型半導体領域106は第4の半導体領域の一例である。
【0015】
例えば、ダミーゲート電極109は、少なくとも、ゲート電極108のp型半導体領域104の上方の部分の全体の側方に設けられている。また、例えば、ゲート電極108とダミーゲート電極109との間の距離は、ゲート電極108のp型半導体領域104の上方の部分の全体にわたって一定である。ゲート電極108と一方のダミーゲート電極109との間の距離が、ゲート電極108と他方のダミーゲート電極109との間の距離と同一であっても相違していてもよい。
【0016】
n型半導体領域132上にシリサイド層133が形成されている。シリサイド層133はゲート電極108及びダミーゲート電極109上にも形成されている。シリサイド層133は、例えばコバルト(Co)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)又はチタン(Ti)のシリサイド層である。
【0017】
半導体基板101上にスペーサ110及びシリサイド層133を覆うように層間絶縁膜111が形成されている。層間絶縁膜111に、n型半導体領域105上のシリサイド層133に到達するコンタクトホール及びゲート電極108上のシリサイド層133に到達するコンタクトホールが形成されている。n型半導体領域105上のシリサイド層133に到達するコンタクトホール内に導電プラグ112が埋め込まれ、ゲート電極108上のシリサイド層133に到達するコンタクトホール内に導電プラグ113が埋め込まれている。導電プラグ112及び113は、例えばタングステンプラグである。層間絶縁膜111上に、導電プラグ112に接続される配線114及び導電プラグ113に接続される配線115が形成されている。
【0018】
例えば、配線115を介してゲート電極108に信号が印加される。また、一方の配線114は、ゲート電極108を含むトランジスタのドレイン電圧が印加され、他方の配線114にはソース電圧が印加される。例えば、n型半導体領域106の電位はフローティングとされる。
【0019】
第1の実施形態に係る半導体装置100では、上記のように、p型半導体領域104のホールの濃度よりも、ダミーゲート電極109の下方かつn型半導体領域105の側方におけるpウェル103のホールの濃度が低い。このため、ダミーゲート電極109の下方におけるn型半導体領域105とpウェル103との間のpn接合からの空乏層は、ゲート電極108の下方におけるn型半導体領域105とp型半導体領域104との間のpn接合からの空乏層よりも伸びやすい。従って、ダミーゲート電極109からの電界を受けたとしても、ダミーゲート電極109の下方におけるpn接合の電界をゲート電極108の下方におけるpn接合の電界よりも緩和することができ、接合リーク電流を抑制することができる。
【0020】
次に、第1の実施形態に係る半導体装置100の製造方法について説明する。
図2A~
図2Fは、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0021】
先ず、
図2Aに示すように、半導体基板101の表層部に、素子活性領域160を画定する素子分離絶縁膜102を形成する。素子分離絶縁膜102は、例えばSTI(shallow trench isolation)法により形成することができる。
【0022】
次いで、
図2Bに示すように、素子活性領域160を含むようにpウェル103を形成する。pウェル103は、例えば、素子活性領域160を含むように開口するフォトレジストのマスク(図示せず)を半導体基板101上に形成し、このマスクを用いてp型不純物をイオン注入することで形成することができる。例えば、エネルギを100keV~300keV、ドーズ量を1.0×10
13cm
-2~3.0×10
14cm
-2として、p型不純物としてボロンをイオン注入する。p型不純物のイオン注入後にマスクを除去する。なお、例えば半導体基板101がp型の場合であって、所望の濃度を有する場合には、pウェル103の形成を省略してp型の領域としてpウェル103を兼ねることも可能である。その場合には、pウェル103を半導体基板101と適宜読み替えることも可能である。
【0023】
その後、同じく
図2Bに示すように、p型半導体領域104を形成する領域を開口するフォトレジストのマスク151を半導体基板101上に形成し、マスク151を用いてp型不純物をイオン注入することでpウェル103の表層部にp型半導体領域104を形成する。例えば、エネルギを0.3keV~20keV、ドーズ量を1.0×10
12cm
-2~1.0×10
14cm
-2として、p型不純物としてボロンをイオン注入する。
【0024】
続いて、
図2Cに示すように、マスク151を除去し、ゲート絶縁膜107、ゲート電極108及びダミーゲート電極109を形成する。例えば、半導体基板101上に、絶縁膜及びポリシリコン膜を形成し、これらをフォトリソグラフィ及びエッチングにより加工することで、ゲート絶縁膜107、ゲート電極108及びダミーゲート電極109を形成することができる。フォトリソグラフィでは、ゲート電極108用のパターン及びダミーゲート電極109用のパターンが形成された一つの露光マスクを用いたフォトレジストの露光及び現像を行う。ゲート電極108はp型半導体領域104の上方に形成し、ダミーゲート電極109はpウェル103のp型半導体領域104が形成されていない領域の上方に形成する。
【0025】
次いで、
図2Dに示すように、素子活性領域160内で、ゲート電極108及びダミーゲート電極109をマスクとして用いてn型不純物をイオン注入することで第1の不純物濃度のn型半導体領域131を形成する。例えば、エネルギを5keV~20keV、ドーズ量を1.0×10
13cm
-2~1.0×10
15cm
-2として、n型不純物としてリンをイオン注入する。
【0026】
その後、
図2Eに示すように、ゲート電極108及びダミーゲート電極109の両側に絶縁膜のスペーサ110を形成する。続いて素子活性領域160内で、スペーサ110、ゲート電極108及びダミーゲート電極109をマスクとして用いてn型不純物をイオン注入することで第1の不純物濃度より高い第2の不純物濃度のn型半導体領域132をn型半導体領域131よりも深く形成する。例えば、エネルギを5keV~30keV、ドーズ量を1.0×10
15cm
-2~3.0×10
16cm
-2として、n型不純物としてリンをイオン注入する。平面視で、ゲート電極108とダミーゲート電極109との間に位置するn型半導体領域131及び132がn型半導体領域105を構成し、ダミーゲート電極109のゲート電極108とは反対側に位置するn型半導体領域131及び132がn型半導体領域106を構成する。
【0027】
次いで、
図2Fに示すように、n型半導体領域132、ゲート電極108及びダミーゲート電極109上にシリサイド層133を形成する。その後、半導体基板101上に層間絶縁膜111を形成し、その表面を化学機械研磨(chemical mechanical polishing:CMP)法等により平坦化する。続いて、層間絶縁膜111に、n型半導体領域105上のシリサイド層133に到達するコンタクトホール及びゲート電極108上のシリサイド層133に到達するコンタクトホールを形成し、これらコンタクトホール内に導電膜を形成する。この結果、n型半導体領域105上のシリサイド層133に接続される導電プラグ112及びゲート電極108上のシリサイド層133に接続される導電プラグ113(
図1A参照)が形成される。次いで、層間絶縁膜111上に、導電プラグ112に接続される配線114及び導電プラグ113に接続される配線115を形成する。
【0028】
そして、必要に応じて上層の配線等を形成して、半導体装置100を完成させる。
【0029】
この製造方法では、ゲート電極108及びダミーゲート電極109を形成する際のフォトリソグラフィにて、ゲート電極108用のパターン及びダミーゲート電極109用のパターンが形成された一つの露光マスクを用いたフォトレジストの露光及び現像を行う。このため、実際に動作させるトランジスタのゲート電極108をパターン密度が低い領域に形成する場合であっても、ダミーゲート電極109用のパターンによりパターン密度を補い、露光マスクのパターン密度の均一性を高めることができる。従って、ゲート電極108の加工精度へのパターン密度の影響を抑制することができる。
【0030】
ここで、第1の実施形態の効果について、第1の参考例と比較して説明する。
図3は、第1の参考例に係る半導体装置を示す断面図である。
図4は、第1の実施形態に関するシミュレーションの結果を示す図である。
【0031】
図3に示すように、第1の参考例に係る半導体装置901では、ダミーゲート電極109の下方のpウェル103の表層部にp型半導体領域144が形成されている。p型半導体領域144はp型半導体領域104と同時に形成されており、p型半導体領域104と同じp型不純物を同じ濃度プロファイルで含有する。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0032】
このシミュレーションでは、ボロンを10keVのエネルギ、1.0×1013cm-2のドーズ量でイオン注入することでp型半導体領域104及び144が形成されている。ゲート電極108及びダミーゲート電極109のゲート長は60nm、ゲート幅は1.0μmとし、X方向でのゲート電極108とダミーゲート電極109との間の距離は200nmとする。また、ゲート電極108に0Vのゲート電圧VGを印加し、半導体基板101を介してpウェル103に-0.5Vのバイアス電圧VBを印加する。ダミーゲート電極109及びn型半導体領域106はフローティングとする。2本の配線114のうち一方に0Vのソース電圧VSを印加し、他方に0V~1.0Vのドレイン電圧VDを印加する。
【0033】
そして、ドレイン電圧VDが印加される配線114に接続されたn型半導体領域105とpウェル103との間を流れるウェル電流を接合リーク電流として算出する。
図4には、この算出結果を示す。
図4の横軸はドレイン電圧VDを示し、縦軸はウェル電流を示す。
【0034】
図4に示すように、第1の実施形態によれば第1の参考例から大幅にウェル電流を低減することができる。ダミーゲート電極109の下方におけるpn接合の電界が緩和され、このpn接合を流れる接合リーク電流が低減されるためである。
【0035】
なお、シミュレーションにおいて-0.5Vのバイアス電圧VBを印加しているが、これは、ソースとドレインとの間のサブスレッショルドリーク電流を低減させるために、基板に負電圧を印加して使用することを想定したものである。バイアス電圧VBが負電圧の場合、バイアス電圧が0Vの場合よりも基板とドレインとの電位差が広がるため、接合リーク電流は大きくなる。このような状態を想定し、このシミュレーションでは-0.5Vの負電圧をバイアス電圧としている。
【0036】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
図5は、第2の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。第2の実施形態の素子分離絶縁膜、ソース・ドレインの半導体領域、電極及び配線の位置関係は第1の実施形態のそれと同様であり、
図5は、
図1A中のI-I線に沿った断面図に相当する。
【0037】
第2の実施形態に係る半導体装置200では、
図5に示すように、ダミーゲート電極109の下方のpウェル103の表層部にp型半導体領域124が形成されている。p型半導体領域124は、p型不純物をp型半導体領域104よりも低濃度で含み、p型半導体領域104のホールの濃度よりも、p型半導体領域124のホールの濃度が低い。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0038】
第2の実施形態に係る半導体装置200では、p型半導体領域104のホールの濃度よりも、p型半導体領域124のホールの濃度が低い。このため、ダミーゲート電極109の下方におけるn型半導体領域105とp型半導体領域124との間のpn接合からの空乏層は、ゲート電極108の下方におけるn型半導体領域105とp型半導体領域104との間のpn接合からの空乏層よりも伸びやすい。従って、ダミーゲート電極109からの電界を受けたとしても、ダミーゲート電極109の下方におけるpn接合の電界をゲート電極108の下方におけるpn接合の電界よりも緩和することができ、接合リーク電流を抑制することができる。
【0039】
次に、第2の実施形態に係る半導体装置200の製造方法について説明する。
図6A~
図6Dは、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0040】
先ず、
図6Aに示すように、第1の実施形態と同様にしてpウェル103の形成までの処理を行う。次いで、pウェル103の形成に用いたマスクを用いてp型不純物をイオン注入することでpウェル103の表層部にp型半導体領域124を形成する。例えば、エネルギを0.3keV~20keV、ドーズ量を1.0×10
13cm
-2未満として、p型不純物としてボロンをイオン注入する。p型不純物のイオン注入後にマスクを除去する。
【0041】
その後、
図6Bに示すように、p型半導体領域104を形成する領域を開口するフォトレジストのマスク151を半導体基板101上に形成し、マスク151を用いてp型不純物をイオン注入することでpウェル103の表層部にp型半導体領域104を形成する。例えば、エネルギを0.3keV~20keV、ドーズ量を1.0×10
12cm
-2~1.0×10
14cm
-2として、p型不純物としてボロンをイオン注入する。p型半導体領域104は、このイオン注入で注入されたp型不純物及びp型半導体領域124の形成時に注入されたp型不純物を含む。
【0042】
続いて、
図6Cに示すように、マスク151を除去し、ゲート絶縁膜107、ゲート電極108及びダミーゲート電極109を形成する。ゲート電極108はp型半導体領域104の上方に形成し、ダミーゲート電極109はp型半導体領域124の上方に形成する。第1の実施形態と同様に、ゲート電極108及びダミーゲート電極109を形成する際のフォトリソグラフィでは、ゲート電極108用のパターン及びダミーゲート電極109用のパターンが形成された一つの露光マスクを用いたフォトレジストの露光及び現像を行う。
【0043】
次いで、
図6Dに示すように、第1の実施形態と同様にしてn型半導体領域131の形成以降の処理を行って、半導体装置200を完成させる。
【0044】
この製造方法によれば、第1の実施形態と同様に、ゲート電極108の加工精度へのパターン密度の影響を抑制することができる。
【0045】
ここで、第2の実施形態の効果について、第1の参考例と比較して説明する。
図7は、第2の実施形態に関するシミュレーションの結果を示す図である。
【0046】
このシミュレーションでは、ボロンを10keVのエネルギ、合計1.0×1013cm-2のドーズ量でイオン注入することでp型半導体領域104が形成されている。また、ボロンを10keVのエネルギ、2.0×1012cm-2のドーズ量でイオン注入することでp型半導体領域124が形成されている。他の条件は第1の実施形態と同様である。
【0047】
そして、ドレイン電圧VDが印加される配線114に接続されたn型半導体領域105とpウェル103との間を流れるウェル電流を接合リーク電流として算出する。
図7には、この算出結果を示す。
図7の横軸はドレイン電圧VDを示し、縦軸はウェル電流を示す。
【0048】
図7に示すように、第2の実施形態によっても第1の参考例から大幅にウェル電流を低減することができる。ダミーゲート電極109の下方におけるpn接合の電界が緩和され、このpn接合を流れる接合リーク電流が低減されるためである。
【0049】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
図8は、第3の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。第3の実施形態の素子分離絶縁膜、ソース・ドレインの半導体領域、電極及び配線の位置関係は第1の実施形態のそれと同様であり、
図8は、
図1A中のI-I線に沿った断面図に相当する。
【0050】
第3の実施形態に係る半導体装置300では、
図8に示すように、ダミーゲート電極109の下方のpウェル103の表層部にn型半導体領域125が形成されている。n型半導体領域125は、例えばn型不純物としてリンを含有する。他の構成は第1の実施形態と同様である。n型半導体領域125は第
3の半導体領域の一例である。
【0051】
第3の実施形態に係る半導体装置300では、n型半導体領域125とn型半導体領域105との間にpn接合が存在しない。また、n型半導体領域125が少数キャリアとしてホールを含むが、p型半導体領域104のホールの濃度よりも、n型半導体領域125のホールの濃度が低い。更に、p型半導体領域104のホールの濃度よりも、ダミーゲート電極109の下方かつn型半導体領域105の側方におけるpウェル103のホールの濃度が低い。このため、ダミーゲート電極109からの電界を受けたとしても、ダミーゲート電極109の下方におけるpn接合の電界をゲート電極108の下方におけるpn接合の電界よりも緩和することができ、接合リーク電流を抑制することができる。
【0052】
次に、第3の実施形態に係る半導体装置300の製造方法について説明する。
図9A~
図9Dは、第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0053】
先ず、
図9Aに示すように、第1の実施形態と同様にしてpウェル103の形成までの処理を行う。次いで、pウェル103の形成に用いたマスクを用いてp型不純物をイオン注入することでpウェル103の表層部にp型半導体領域104を形成する。例えば、エネルギを0.3keV~20keV、ドーズ量を1.0×10
12cm
-2~1.0×10
14cm
-2として、p型不純物としてボロンをイオン注入する。p型不純物のイオン注入後にマスクを除去する。
【0054】
その後、
図9Bに示すように、n型半導体領域125を形成する領域を開口するフォトレジストのマスク152を半導体基板101上に形成し、マスク152を用いてn型不純物をイオン注入することでpウェル103の表層部にn型半導体領域125を形成する。例えば、エネルギを5keV~30keV、ドーズ量を1.0×10
12cm
-2~1.0×10
14cm
-2として、n型不純物としてリンをイオン注入する。n型半導体領域125はp型不純物も含有するが、電子の濃度がホールの濃度を上回るため、導電型がp型からn型に反転する。半導体基板101にpチャネル型のトランジスタを形成する場合、n型半導体領域125の形成をpチャネル型のトランジスタの閾値電圧を調整するためのイオン注入と同時に行ってもよい。
【0055】
続いて、
図9Cに示すように、マスク152を除去し、ゲート絶縁膜107、ゲート電極108及びダミーゲート電極109を形成する。ゲート電極108はp型半導体領域104の上方に形成し、ダミーゲート電極109はn型半導体領域125の上方に形成する。第1の実施形態と同様に、ゲート電極108及びダミーゲート電極109を形成する際のフォトリソグラフィでは、ゲート電極108用のパターン及びダミーゲート電極109用のパターンが形成された一つの露光マスクを用いたフォトレジストの露光及び現像を行う。
【0056】
次いで、
図9Dに示すように、第1の実施形態と同様にしてn型半導体領域131の形成以降の処理を行って、半導体装置300を完成させる。
【0057】
この製造方法によれば、第1の実施形態と同様に、ゲート電極108の加工精度へのパターン密度の影響を抑制することができる。
【0058】
ここで、第3の実施形態の効果について、第1の参考例と比較して説明する。
図10は、第3の実施形態に関するシミュレーションの結果を示す図である。
【0059】
このシミュレーションでは、ボロンを10keVのエネルギ、1.0×1013cm-2のドーズ量でイオン注入することでp型半導体領域104が形成されている。また、リンを15keVのエネルギ、1.1×1013cm-2のドーズ量でイオン注入することでn型半導体領域125が形成されている。他の条件は第1の実施形態と同様である。
【0060】
そして、ドレイン電圧VDが印加される配線114に接続されたn型半導体領域105とpウェル103との間を流れるウェル電流を接合リーク電流として算出する。
図10には、この算出結果を示す。
図10の横軸はドレイン電圧VDを示し、縦軸はウェル電流を示す。
【0061】
図10に示すように、第3の実施形態によっても第1の参考例から大幅にウェル電流を低減することができる。ダミーゲート電極109の下方に、ダミーゲート電極109からの電界の影響を受けやすいpn接合がないため、ダミーゲート電極109の近傍における接合リーク電流が低減されるためである。
【0062】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。
図11Aは、第4の実施形態に係る半導体装置を示す平面図であり、
図11Bは、第4の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
図11Aは、主として、素子分離絶縁膜、ソース・ドレインの半導体領域、電極及び配線の位置関係を示す。
図11Bは、
図11A中のI-I線に沿った断面図に相当する。
【0063】
図11A及び
図11Bに示すように、第4の実施形態に係る半導体装置400では、p型の半導体基板201上にシリコン層220が形成され、p型の半導体基板201及びシリコン層220の積層体の表層部に素子活性領域260を画定する素子分離絶縁膜202が形成されている。半導体基板201は、例えばシリコン基板である。シリコン層220は、例えば意図的な不純物の導入を行っていないi型のノンドープのシリコン層である。シリコン層220の厚さは、例えば10nm~40nmである。半導体基板201にはpチャネル型のトランジスタが形成される素子活性領域及びnチャネル型のトランジスタが形成される素子活性領域が存在するが、
図11A及び
図11Bには、nチャネル型のトランジスタが形成される素子活性領域260を示す。例えば、素子活性領域260の平面形状は矩形である。以下の説明において、素子活性領域260の長辺に平行な方向をX方向、短辺に平行な方向をY方向、半導体基板201の厚さ方向をZ方向とする。X方向は第2の方向の一例であり、Y方向は第1の方向の一例である。
【0064】
素子活性領域260を含むようにpウェル203が形成されている。pウェル203は、例えばp型不純物としてボロンを含有する。なお、例えば半導体基板201がp型の場合には、pウェル203を省略してp型の領域としてpウェル203を兼ねることも可能である。その場合には、pウェル203を半導体基板201と適宜読み替えることも可能である。pウェル203の上方に1本のゲート電極208及び2本のダミーゲート電極209が形成されている。ゲート電極208とpウェル203との間及びダミーゲート電極209とpウェル203との間にゲート絶縁膜207が形成されている。ゲート電極208及びダミーゲート電極209はY方向に平行に延び、ゲート電極208は2本のダミーゲート電極209の間に位置する。例えば、ゲート絶縁膜207の厚さは1.0nm~10.0nmであり、ゲート電極208及びダミーゲート電極209の厚さは50nm~200nmである。ゲート絶縁膜207の材料には、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム等の絶縁物を用いることができる。ゲート電極208及びダミーゲート電極209の材料には、例えば、多結晶シリコンを用いることができる。チタン及びタングステン等の金属やこれらの窒化物をゲート電極208及びダミーゲート電極209の材料に用いることもできる。
【0065】
ゲート電極208及びダミーゲート電極209のX方向の両側に絶縁膜のスペーサ(サイドウォール)210が形成されている。pウェル203及びシリコン層220の積層体の表層部において、スペーサ210の下に第1の深さでn型半導体領域231が形成され、スペーサ210、ゲート電極208及びダミーゲート電極209から露出する部分に、第1の深さよりも深い第2の深さでn型半導体領域232が形成されている。例えば、n型半導体領域231は第1の不純物濃度でn型不純物としてリンを含有し、n型半導体領域232は第1の不純物濃度よりも高い第2の不純物濃度でn型不純物濃度としてリンを含有する。n型半導体領域231及び232のうち、ゲート電極208とダミーゲート電極209との間に位置するものがn型半導体領域205に含まれ、ダミーゲート電極209と素子分離絶縁膜202との間に位置するものがn型半導体領域206に含まれる。
【0066】
ゲート電極208の下方では、pウェル203の表層部でn型半導体領域231の間にp型半導体領域204が形成されている。p型半導体領域204は、例えばp型不純物としてボロンを含有する。p型半導体領域204はスクリーン層とよばれることがある。p型半導体領域204の多数キャリア(ホール)の濃度よりも、ダミーゲート電極209の下方かつn型半導体領域205の側方におけるpウェル203(半導体基板201の一部)のホールの濃度が低い。ゲート電極208の下方では、p型半導体領域204とゲート絶縁膜207との間にシリコン層220が位置する。また、ダミーゲート電極209の下方では、pウェル203とゲート絶縁膜207との間にシリコン層220が位置する。p型半導体領域204は第1の半導体領域の一例であり、n型半導体領域205は第2の半導体領域の一例であり、n型半導体領域206は第4の半導体領域の一例である。シリコン層220は第5の半導体領域の一例である。
【0067】
例えば、ダミーゲート電極209は、少なくとも、ゲート電極208のp型半導体領域204の上方の部分の全体の側方に設けられている。また、例えば、ゲート電極208とダミーゲート電極209との間の距離は、ゲート電極208のp型半導体領域204の上方の部分の全体にわたって一定である。ゲート電極208と一方のダミーゲート電極209との間の距離が、ゲート電極208と他方のダミーゲート電極209との間の距離と同一であっても相違していてもよい。
【0068】
n型半導体領域232上にシリサイド層233が形成されている。シリサイド層233はゲート電極208及びダミーゲート電極209上にも形成されている。シリサイド層233は、例えばコバルト、ニッケル、タングステン又はチタンのシリサイド層である。
【0069】
半導体基板201及びシリコン層220上にスペーサ210及びシリサイド層233を覆うように層間絶縁膜211が形成されている。層間絶縁膜211に、n型半導体領域205上のシリサイド層233に到達するコンタクトホール及びゲート電極208上のシリサイド層133に到達するコンタクトホールが形成されている。n型半導体領域205上のシリサイド層233に到達するコンタクトホール内に導電プラグ212が埋め込まれ、ゲート電極208上のシリサイド層233に到達するコンタクトホール内に導電プラグ213が埋め込まれている。導電プラグ212及び213は、例えばタングステンプラグである。層間絶縁膜211上に、導電プラグ212に接続される配線214及び導電プラグ213に接続される配線215が形成されている。
【0070】
例えば、配線215を介してゲート電極208に信号が印加される。また、一方の配線214は、ゲート電極208を含むトランジスタのドレイン電圧が印加され、他方の配線214にはソース電圧が印加される。例えば、n型半導体領域206の電位はフローティングとされる。
【0071】
第4の実施形態に係る半導体装置400では、上記のように、p型半導体領域204のホールの濃度よりも、ダミーゲート電極209の下方かつn型半導体領域205の側方におけるpウェル203のホールの濃度が低い。このため、ダミーゲート電極209の下方におけるn型半導体領域205とpウェル203との間のpn接合からの空乏層は、ゲート電極208の下方におけるn型半導体領域205とp型半導体領域204との間のpn接合からの空乏層よりも伸びやすい。従って、ダミーゲート電極209からの電界を受けたとしても、ダミーゲート電極209の下方におけるpn接合の電界をゲート電極208の下方におけるpn接合の電界よりも緩和することができ、接合リーク電流を抑制することができる。
【0072】
また、ゲート電極208の下方でゲート絶縁膜207の下に、ノンドープで不純物濃度が極めて低いシリコン層220が設けられているため、不純物のランダムばらつきによる特性のばらつきを抑制することができる。
【0073】
次に、第4の実施形態に係る半導体装置400の製造方法について説明する。
図12A~
図12Fは、第4の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0074】
先ず、
図12Aに示すように、半導体基板201の表層部にpウェル203を形成する。pウェル203は、例えば、pウェル203を形成する予定の領域を開口するフォトレジストのマスク(図示せず)を半導体基板201上に形成し、このマスクを用いてp型不純物をイオン注入することで形成することができる。例えば、エネルギを100keV~300keV、ドーズ量を1.0×10
13cm
-2~3.0×10
14cm
-2として、p型不純物としてボロンをイオン注入する。p型不純物のイオン注入後にマスクを除去する。なお、例えば半導体基板201がp型の場合であって、所望の濃度を有する場合には、pウェル203の形成を省略してp型の領域としてpウェル203を兼ねることも可能である。その場合には、pウェル203を半導体基板201と適宜読み替えることも可能である。
【0075】
次いで、同じく
図12Aに示すように、p型半導体領域204を形成する領域を開口するフォトレジストのマスク251を半導体基板201上に形成し、マスク251を用いてp型不純物をイオン注入することでpウェル203の表層部にp型半導体領域204を形成する。例えば、エネルギを0.3keV~20keV、ドーズ量を1.0×10
12cm
-2~1.0×10
14cm
-2として、p型不純物としてボロンをイオン注入する。エネルギを3keV~30keV、ドーズ量を1.0×10
12cm
-2~1.0×10
14cm
-2として、p型不純物としてBF
2をイオン注入してもよい。
【0076】
その後、
図12Bに示すように、マスク251を除去し、半導体基板201上にシリコン層220を形成する。シリコン層220は、例えばエピタキシャル成長により形成することができる。続いて、半導体基板201及びシリコン層220の積層体の表層部に、素子活性領域260を画定する素子分離絶縁膜202を形成する。素子分離絶縁膜202は、例えばSTI法により形成することができる。
【0077】
続いて、
図12Cに示すように、ゲート絶縁膜207、ゲート電極208及びダミーゲート電極209を形成する。例えば、半導体基板201上に、絶縁膜及びポリシリコン膜を形成し、これらをフォトリソグラフィ及びエッチングにより加工することで、ゲート絶縁膜207、ゲート電極208及びダミーゲート電極209を形成することができる。フォトリソグラフィでは、ゲート電極208用のパターン及びダミーゲート電極209用のパターンが形成された一つの露光マスクを用いたフォトレジストの露光及び現像を行う。ゲート電極208はp型半導体領域204の上方に形成し、ダミーゲート電極209はpウェル203のp型半導体領域204が形成されていない領域の上方に形成する。
【0078】
次いで、
図12Dに示すように、素子活性領域260内で、ゲート電極208及びダミーゲート電極209をマスクとして用いてn型不純物をイオン注入することで第1の不純物濃度のn型半導体領域231を形成する。例えば、エネルギを5keV~20keV、ドーズ量を1.0×10
13cm
-2~1.0×10
15cm
-2として、n型不純物としてリンをイオン注入する。
【0079】
その後、
図12Eに示すように、ゲート電極208及びダミーゲート電極209の両側に絶縁膜のスペーサ210を形成する。続いて、素子活性領域260内で、スペーサ210、ゲート電極208及びダミーゲート電極209をマスクとして用いてn型不純物をイオン注入することで第1の不純物濃度より高い第2の不純物濃度のn型半導体領域232をn型半導体領域231よりも深く形成する。例えば、エネルギを5keV~30keV、ドーズ量を1.0×10
15cm
-2~3.0×10
16cm
-2として、n型不純物としてリンをイオン注入する。平面視で、ゲート電極208とダミーゲート電極209との間に位置するn型半導体領域231及び232がn型半導体領域205を構成し、ダミーゲート電極209のゲート電極208とは反対側に位置するn型半導体領域231及び232がn型半導体領域206を構成する。
【0080】
次いで、
図12Fに示すように、n型半導体領域232、ゲート電極208及びダミーゲート電極209上にシリサイド層233を形成する。その後、半導体基板201及びシリコン層220上に層間絶縁膜211を形成し、その表面をCMP法等により平坦化する。続いて、層間絶縁膜211に、n型半導体領域205上のシリサイド層233に到達するコンタクトホール及びゲート電極208上のシリサイド層233に到達するコンタクトホールを形成し、これらコンタクトホール内に導電膜を形成する。この結果、n型半導体領域205上のシリサイド層233に接続される導電プラグ212及びゲート電極208上のシリサイド層233に接続される導電プラグ213(
図11A参照)が形成される。次いで、層間絶縁膜211上に、導電プラグ212に接続される配線214及び導電プラグ213に接続される配線215を形成する。
【0081】
そして、必要に応じて上層の配線等を形成して、半導体装置400を完成させる。
【0082】
この製造方法では、ゲート電極208及びダミーゲート電極209を形成する際のフォトリソグラフィにて、ゲート電極208用のパターン及びダミーゲート電極209用のパターンが形成された一つの露光マスクを用いたフォトレジストの露光及び現像を行う。このため、実際に動作させるトランジスタのゲート電極208をパターン密度が低い領域に形成する場合であっても、ダミーゲート電極209用のパターンによりパターン密度を補い、露光マスクのパターン密度の均一性を高めることができる。従って、ゲート電極108の加工精度へのパターン密度の影響を抑制することができる。
【0083】
ここで、第4の実施形態の効果について、第2の参考例と比較して説明する。
図13は、第2の参考例に係る半導体装置を示す断面図である。
図14は、第4の実施形態に関するシミュレーションの結果を示す図である。
【0084】
図13に示すように、第2の参考例に係る半導体装置902では、ダミーゲート電極209の下方のpウェル203の表層部にp型半導体領域244が形成されている。p型半導体領域244はp型半導体領域204と同時に形成されており、p型半導体領域204と同じp型不純物を同じ濃度プロファイルで含有する。他の構成は第4の実施形態と同様である。
【0085】
このシミュレーションでは、BF2を10keVのエネルギ、1.0×1013cm-2のドーズ量でイオン注入することでp型半導体領域204及び244が形成されている。ゲート電極208及びダミーゲート電極209のゲート長は60nm、ゲート幅は1.0μmとし、X方向でのゲート電極208とダミーゲート電極209との間の距離は200nmとする。また、ゲート電極208に0Vのゲート電圧VGを印加し、半導体基板201を介してpウェル203に-0.5Vのバイアス電圧VBを印加する。ダミーゲート電極209及びn型半導体領域206はフローティングとする。2本の配線214のうち一方に0Vのソース電圧VSを印加し、他方に0V~1.0Vのドレイン電圧VDを印加する。
【0086】
そして、ドレイン電圧VDが印加される配線214に接続されたn型半導体領域205とpウェル203との間を流れるウェル電流を接合リーク電流として算出する。
図14には、この算出結果を示す。
図14の横軸はドレイン電圧VDを示し、縦軸はウェル電流を示す。
【0087】
図14に示すように、第4の実施形態によれば第2の参考例から大幅にウェル電流を低減することができる。ダミーゲート電極209の下方におけるpn接合の電界が緩和され、このpn接合を流れる接合リーク電流が低減されるためである。
【0088】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。
図15は、第5の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。第5の実施形態の素子分離絶縁膜、ソース・ドレインの半導体領域、電極及び配線の位置関係は第4の実施形態のそれと同様であり、
図15は、
図11A中のI-I線に沿った断面図に相当する。
【0089】
第5の実施形態に係る半導体装置500では、
図15に示すように、ダミーゲート電極209の下方のpウェル203の表層部にp型半導体領域224が形成されている。p型半導体領域224は、p型不純物をp型半導体領域204よりも低濃度で含む。他の構成は第4の実施形態と同様である。
【0090】
第5の実施形態に係る半導体装置500では、p型半導体領域204のホールの濃度よりも、p型半導体領域224のホールの濃度が低い。このため、ダミーゲート電極209の下方におけるn型半導体領域205とp型半導体領域224との間のpn接合からの空乏層は、ゲート電極208の下方におけるn型半導体領域205とp型半導体領域204との間のpn接合からの空乏層よりも伸びやすい。従って、ダミーゲート電極209からの電界を受けたとしても、ダミーゲート電極209の下方におけるpn接合の電界をゲート電極208の下方におけるpn接合の電界よりも緩和することができ、接合リーク電流を抑制することができる。
【0091】
次に、第5の実施形態に係る半導体装置500の製造方法について説明する。
図16A~
図16Dは、第5の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0092】
先ず、
図16Aに示すように、第4の実施形態と同様にしてpウェル203の形成までの処理を行う。次いで、pウェル203の形成に用いたマスクを用いてp型不純物をイオン注入することでpウェル203の表層部にp型半導体領域224を形成する。例えば、エネルギを0.3keV~20keV、ドーズ量を1.0×10
13cm
-2未満として、p型不純物としてボロンをイオン注入する。エネルギを3keV~30keV、ドーズ量を1.0×10
13cm
-2未満として、p型不純物としてBF
2をイオン注入してもよい。p型不純物のイオン注入後にマスクを除去する。
【0093】
その後、
図16Bに示すように、p型半導体領域204を形成する領域を開口するフォトレジストのマスク251を半導体基板201上に形成し、マスク251を用いてp型不純物をイオン注入することでpウェル203の表層部にp型半導体領域204を形成する。例えば、エネルギを0.3keV~20keV、ドーズ量を1.0×10
12cm
-2~1.0×10
14cm
-2として、p型不純物としてボロンをイオン注入する。エネルギを3keV~30keV、ドーズ量を1.0×10
12cm
-2~1.0×10
14cm
-2として、p型不純物としてBF
2をイオン注入してもよい。p型半導体領域204は、このイオン注入で注入されたp型不純物及びp型半導体領域224の形成時に注入されたp型不純物を含む。
【0094】
続いて、
図16Cに示すように、マスク251を除去し、半導体基板201上にシリコン層220を形成する。シリコン層220は、例えばエピタキシャル成長により形成することができる。次いで、半導体基板201及びシリコン層220の積層体の表層部に、素子活性領域260を画定する素子分離絶縁膜202を形成する。素子分離絶縁膜202は、例えばSTI法により形成することができる。その後、ゲート絶縁膜207、ゲート電極208及びダミーゲート電極209を形成する。ゲート電極208はp型半導体領域204の上方に形成し、ダミーゲート電極209はp型半導体領域224の上方に形成する。第4の実施形態と同様に、ゲート電極208及びダミーゲート電極209を形成する際のフォトリソグラフィでは、ゲート電極208用のパターン及びダミーゲート電極209用のパターンが形成された一つの露光マスクを用いたフォトレジストの露光及び現像を行う。
【0095】
次いで、
図16Dに示すように、第4の実施形態と同様にしてn型半導体領域231の形成以降の処理を行って、半導体装置500を完成させる。
【0096】
この製造方法によれば、第4の実施形態と同様に、ゲート電極208の加工精度へのパターン密度の影響を抑制することができる。
【0097】
ここで、第5の実施形態の効果について、第2の参考例と比較して説明する。
図17は、第5の実施形態に関するシミュレーションの結果を示す図である。
【0098】
このシミュレーションでは、BF2を10keVのエネルギ、合計1.0×1013cm-2のドーズ量でイオン注入することでp型半導体領域204が形成されている。また、BF2を10keVのエネルギ、2.0×1012cm-2のドーズ量でイオン注入することでp型半導体領域224が形成されている。他の条件は第4の実施形態と同様である。
【0099】
そして、ドレイン電圧VDが印加される配線214に接続されたn型半導体領域205とpウェル203との間を流れるウェル電流を接合リーク電流として算出する。
図17には、この算出結果を示す。
図17の横軸はドレイン電圧VDを示し、縦軸はウェル電流を示す。
【0100】
図17に示すように、第5の実施形態によっても第2の参考例から大幅にウェル電流を低減することができる。ダミーゲート電極209の下方におけるpn接合の電界が緩和され、このpn接合を流れる接合リーク電流が低減されるためである。
【0101】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態について説明する。
図18は、第6の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。第6の実施形態の素子分離絶縁膜、ソース・ドレインの半導体領域、電極及び配線の位置関係は第4の実施形態のそれと同様であり、
図18は、
図11A中のI-I線に沿った断面図に相当する。
【0102】
第6の実施形態に係る半導体装置600では、
図18に示すように、ダミーゲート電極209の下方のpウェル203の表層部にn型半導体領域225が形成されている。n型半導体領域225は、例えばn型不純物としてリンを含有する。他の構成は第4の実施形態と同様である。n型半導体領域225は第
3の半導体領域の一例である。
【0103】
第6の実施形態に係る半導体装置600では、n型半導体領域225とn型半導体領域205との間にpn接合が存在しない。また、n型半導体領域225が少数キャリアとしてホールを含むが、p型半導体領域204のホールの濃度よりも、n型半導体領域225のホールの濃度が低い。更に、p型半導体領域204のホールの濃度よりも、ダミーゲート電極209の下方かつn型半導体領域205の側方におけるpウェル203のホールの濃度が低い。このため、ダミーゲート電極209からの電界を受けたとしても、ダミーゲート電極209の下方におけるpn接合の電界をゲート電極208の下方におけるpn接合の電界よりも緩和することができ、接合リーク電流を抑制することができる。
【0104】
次に、第6の実施形態に係る半導体装置600の製造方法について説明する。
図19A~
図19Dは、第6の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0105】
先ず、
図19Aに示すように、第4の実施形態と同様にしてpウェル203の形成までの処理を行う。次いで、pウェル203の形成に用いたマスクを用いてp型不純物をイオン注入することでpウェル203の表層部にp型半導体領域204を形成する。例えば、エネルギを0.3keV~20keV、ドーズ量を1.0×10
12cm
-2~1.0×10
14cm
-2として、p型不純物としてボロンをイオン注入する。エネルギを3keV~30keV、ドーズ量を1.0×10
12cm
-2~1.0×10
14cm
-2として、p型不純物としてBF
2をイオン注入してもよい。p型不純物のイオン注入後にマスクを除去する。
【0106】
その後、
図19Bに示すように、n型半導体領域225を形成する領域を開口するフォトレジストのマスク252を半導体基板201上に形成し、マスク252を用いてn型不純物をイオン注入することでpウェル203の表層部にn型半導体領域225を形成する。例えば、エネルギを5keV~30keV、ドーズ量を1.0×10
12cm
-2~1.0×10
14cm
-2として、n型不純物としてリンをイオン注入する。n型半導体領域225はp型不純物も含有するが、電子の濃度がホールの濃度を上回るため、導電型がp型からn型に反転する。半導体基板201にpチャネル型のトランジスタを形成する場合、n型半導体領域225の形成をpチャネル型のトランジスタの閾値電圧を調整するためのイオン注入と同時に行ってもよい。
【0107】
続いて、
図19Cに示すように、マスク252を除去し、半導体基板201上にシリコン層220を形成する。シリコン層220は、例えばエピタキシャル成長により形成することができる。次いで、半導体基板201及びシリコン層220の積層体の表層部に、素子活性領域260を画定する素子分離絶縁膜202を形成する。素子分離絶縁膜202は、例えばSTI法により形成することができる。その後、ゲート絶縁膜207、ゲート電極208及びダミーゲート電極209を形成する。ゲート電極208はp型半導体領域204の上方に形成し、ダミーゲート電極209はn型半導体領域225の上方に形成する。第4の実施形態と同様に、ゲート電極208及びダミーゲート電極209を形成する際のフォトリソグラフィでは、ゲート電極208用のパターン及びダミーゲート電極209用のパターンが形成された一つの露光マスクを用いたフォトレジストの露光及び現像を行う。
【0108】
次いで、
図19Dに示すように、第4の実施形態と同様にしてn型半導体領域231の形成以降の処理を行って、半導体装置600を完成させる。
【0109】
この製造方法によれば、第4の実施形態と同様に、ゲート電極208の加工精度へのパターン密度の影響を抑制することができる。
【0110】
ここで、第6の実施形態の効果について、第2の参考例と比較して説明する。
図20は、第6の実施形態に関するシミュレーションの結果を示す図である。
【0111】
このシミュレーションでは、BF2を10keVのエネルギ、1.0×1013cm-2のドーズ量でイオン注入することでp型半導体領域204が形成されている。また、リンを15keVのエネルギ、1.1×1013cm-2のドーズ量でイオン注入することでn型半導体領域225が形成されている。他の条件は第4の実施形態と同様である。
【0112】
そして、ドレイン電圧VDが印加される配線214に接続されたn型半導体領域205とpウェル203との間を流れるウェル電流を接合リーク電流として算出する。
図20には、この算出結果を示す。
図20の横軸はドレイン電圧VDを示し、縦軸はウェル電流を示す。
【0113】
図20に示すように、第6の実施形態によっても第2の参考例から大幅にウェル電流を低減することができる。ダミーゲート電極209の下方に、ダミーゲート電極209からの電界の影響を受けやすいpn接合がないため、ダミーゲート電極209の近傍における接合リーク電流が低減されるためである。
【0114】
(第7の実施形態)
次に、第7の実施形態について説明する。
図21Aは、第7の実施形態に係る半導体装置を示す平面図であり、
図21Bは、第7の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
図21Aは、主として、素子分離絶縁膜、ソース・ドレインの半導体領域、電極及び配線の位置関係を示す。
図21Bは、
図21A中のI-I線に沿った断面図に相当する。
【0115】
図21A及び
図21Bに示すように、第7の実施形態に係る半導体装置700では、素子分離絶縁膜102が、X方向でダミーゲート電極109の下方まで入り込むように形成されている。別の視点では、ダミーゲート電極109のX方向の縁は素子分離絶縁膜102の上方にある。そして、半導体装置700は、第1の実施形態に係る半導体装置100が含むn型半導体領域106を含まない。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0116】
第7の実施形態に係る半導体装置700では、p型半導体領域104のホールの濃度よりも、ダミーゲート電極109の下方かつn型半導体領域105の側方におけるpウェル103のホールの濃度が低い。このため、ダミーゲート電極109の下方におけるn型半導体領域105とpウェル103との間のpn接合からの空乏層は、ゲート電極108の下方におけるn型半導体領域105とp型半導体領域104との間のpn接合からの空乏層よりも伸びやすい。従って、ダミーゲート電極109からの電界を受けたとしても、ダミーゲート電極109の下方におけるpn接合の電界をゲート電極108の下方におけるpn接合の電界よりも緩和することができ、接合リーク電流を抑制することができる。
【0117】
また、第1の実施形態では、n型半導体領域105とn型半導体領域106との間のpウェル103の不純物濃度によっては、n型半導体領域105とn型半導体領域106とが電気的に接続されてn型半導体領域105の容量が増加するおそれがある。n型半導体領域105の容量の増加はデバイス特性の低下につながることがある。これに対し、第7の実施形態にはn型半導体領域106が設けられていないため、このようなn型半導体領域105の容量の増加を防止することができる。
【0118】
更に、第7の実施形態は、素子分離絶縁膜102に形成されるディボットを起因とするリーク電流の抑制にも効果的である。
図22は、素子分離絶縁膜のディボットを示す図である。
【0119】
図22に示す例では、素子分離絶縁膜301により画定された素子活性領域内において、pウェル302の表層部にn型半導体領域303が形成され、n型半導体領域303の表面上にシリサイド層304が形成されている。素子分離絶縁膜301及びシリサイド層304を覆うように層間絶縁膜305が形成されている。pウェル302とn型半導体領域303との間にはpn接合307が形成されている。また、素子分離絶縁膜301はSTI法で形成されており、素子分離絶縁膜301のn型半導体領域303との境界近傍では、表面にディボット306が溝状に形成される。素子分離絶縁膜301は素子分離絶縁膜102に相当し、pウェル302はpウェル103に相当し、n型半導体領域303はn型半導体領域106に相当する。シリサイド層304はシリサイド層133に相当し、層間絶縁膜305は層間絶縁膜111に相当する。
【0120】
シリサイド層304とpn接合307との間でもリーク電流が発生するため、これらの間の距離は長いことが好ましい。その一方で、ディボット306は不可避的に形成され、
図22に示すように、シリサイド層304はディボット306に入り込むように形成される。このため、シリサイド層304のディボット306に入り込んだ部分とpn接合307との間の距離D302は、シリサイド層304のn型半導体領域303の上面上の部分とpn接合307との間の距離D301よりも短い。そして、ディボット306の深さは製造プロセスのゆらぎによってばらつき、その制御は困難である。
【0121】
一方、第7の実施形態では、ダミーゲート電極109の下方で素子分離絶縁膜102の表面にディボットが形成されたとしても、ダミーゲート電極109の下方では、ディボットに入り込むシリサイド層は形成されない。このため、第7の実施形態によれば、ディボットに入り込んだシリサイド層が起因となるリーク電流を抑制することができる。
【0122】
第7の実施形態と同様の素子分離絶縁膜102の構造を第2、第3の実施形態に適用してもよい。第3の実施形態では、n型半導体領域125を介してn型半導体領域105とn型半導体領域106とが電気的に接続されるため、特に効果的である。また、第4、第5、第6の実施形態における素子分離絶縁膜102の構造を、第7の実施形態の素子分離絶縁膜102の構造と同様にしてもよい。第6の実施形態では、n型半導体領域225を介してn型半導体領域205とn型半導体領域206とが電気的に接続されるため、特に効果的である。
【0123】
(第8の実施形態)
次に、第8の実施形態について説明する。
図23Aは、第8の実施形態に係る半導体装置を示す平面図であり、
図23Bは、第8の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
図23Aは、主として、素子分離絶縁膜、ソース・ドレインの半導体領域、電極及び配線の位置関係を示す。
図23Bは、
図23A中のI-I線に沿った断面図に相当する。
【0124】
第1の実施形態では、2本のダミーゲート電極109の間に1本のゲート電極108が設けられている。これに対し、第8の実施形態に係る半導体装置800では、
図23A及び
図23Bに示すように、2本のダミーゲート電極109の間に複数本、例えば4本のゲート電極108が設けられている。4本のゲート電極108の間隔は一定であり、4本のゲート電極108の間でゲート長は同一である。そして、隣り合うゲート電極108の間には、n型半導体領域105が形成されている。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0125】
第8の実施形態においても、ダミーゲート電極109からの電界を受けたとしても、ダミーゲート電極109の下方におけるpn接合の電界をゲート電極108の下方におけるpn接合の電界よりも緩和することができ、接合リーク電流を抑制することができる。
【0126】
半導体装置800の製造方法では、ゲート電極108及びダミーゲート電極109を形成する際のフォトリソグラフィでは、ゲート電極108用のパターン及びダミーゲート電極109用のパターンが形成された一つの露光マスクを用いたフォトレジストの露光及び現像を行う。この製造方法によれば4本のゲート電極108の間でゲート長に良好な均一性を得ることができる。露光マスクの各ゲート電極108の周辺のパターン密度の均一性が高いからである。
【0127】
2本のダミーゲート電極109の間に複数本のゲート電極108が設けられる構造を第2、第3、第7の実施形態に適用してもよい。また、2本のダミーゲート電極209の間に複数本のゲート電極208が設けられる構造を第4、第5、第6の実施形態に適用してもよい。
【0128】
本開示において不純物は特に限定されず、例えば、n型不純物としてヒ素(As)又はアンチモン(Sb)を用いてもよく、p型不純物としてインジウム(In)又はアルミニウム(Al)を用いてもよい。また、本開示を適用できるトランジスタの導電型は特に限定されず、pチャネル型のトランジスタに本開示を適用してもよい。
【0129】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0130】
(付記1)
半導体基板と、
前記半導体基板の表層部に設けられた第1導電型の第1の半導体領域と、
前記第1の半導体領域の上方に設けられ、第1の方向に延びるゲート電極と、
前記半導体基板の上方に前記ゲート電極から離間して設けられ、第1の方向に延びるダミーゲート電極と、
前記ゲート電極と前記ダミーゲート電極との間で前記半導体基板の表層部に設けられた第2導電型の第2の半導体領域と、
前記第2の半導体領域に接続される配線と、
を有し、
前記第1の半導体領域の多数キャリアの濃度よりも、前記ダミーゲート電極の下方かつ前記第2の半導体領域の側方における前記多数キャリアと同種の前記半導体基板のキャリアの濃度が低いことを特徴とする半導体装置。
(付記2)
前記ダミーゲート電極は、少なくとも、前記ゲート電極の前記第1の半導体領域の上方の部分の全体の側方に設けられていることを特徴とする付記1に記載の半導体装置。
(付記3)
前記ゲート電極と前記ダミーゲート電極との間の距離が、前記ゲート電極の前記第1の半導体領域の上方の部分の全体にわたって一定であることを特徴とする付記1又は2に記載の半導体装置。
(付記4)
前記ダミーゲート電極の前記ゲート電極とは反対側の前記半導体基板内に設けられた第2導電型の第3の半導体領域を有し、
前記第3の半導体領域の電位はフローティングとされることを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記5)
前記ダミーゲート電極の下方かつ前記第2の半導体領域の側方の前記半導体基板内に設けられた第2導電型の第4の半導体領域を有することを特徴とする付記1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記6)
前記第1の半導体領域上に設けられたノンドープの第5の半導体領域を有することを特徴とする付記1乃至5のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記7)
前記半導体基板の表層部に設けられた素子分離領域を有し、
前記ダミーゲート電極の、前記第1の方向に直交する第2の方向の縁は、前記素子分離領域の上方にあることを特徴とする付記1乃至6のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記8)
前記ダミーゲート電極が2本設けられ、
前記ゲート電極は2本の前記ダミーゲート電極の間に設けられていることを特徴とする付記1乃至7のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記9)
2本以上の前記ゲート電極が2本の前記ダミーゲート電極の間に設けられていることを特徴とする付記8に記載の半導体装置。
(付記10)
半導体基板の表層部に第1導電型の第1の半導体領域を形成する工程と、
前記第1の半導体領域の上方に、第1の方向に延びるゲート電極を形成する工程と、
前記半導体基板の上方に前記ゲート電極から離間して、第1の方向に延びるダミーゲート電極を形成する工程と、
前記ゲート電極と前記ダミーゲート電極との間で前記半導体基板の表層部に第2導電型の第2の半導体領域を形成する工程と、
前記第2の半導体領域に接続される配線を形成する工程と、
を有し、
前記ゲート電極を形成する工程及び前記ダミーゲート電極を形成する工程は、前記ゲート電極用のパターン及び前記ダミーゲート電極用のパターンが形成された一つの露光マスクを用いたフォトレジストの露光及び前記フォトレジストの現像を行う工程を有し、
前記第1の半導体領域の多数キャリアの濃度よりも、前記ダミーゲート電極の下方かつ前記第2の半導体領域の側方における前記多数キャリアと同種の前記半導体基板のキャリアの濃度が低いことを特徴とする半導体装置の製造方法。
(付記11)
前記ダミーゲート電極は、少なくとも、前記ゲート電極の前記第1の半導体領域の上方の部分の全体の側方に形成することを特徴とする付記10に記載の半導体装置の製造方法。
(付記12)
前記ゲート電極と前記ダミーゲート電極との間の距離が、前記ゲート電極の前記第1の半導体領域の上方の部分の全体にわたって一定であることを特徴とする付記10又は11に記載の半導体装置の製造方法。
(付記13)
前記ダミーゲート電極の前記ゲート電極とは反対側の前記半導体基板内に第2導電型の第3の半導体領域を形成する工程を有し、
前記第3の半導体領域の電位はフローティングとされることを特徴とする付記10乃至12のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
(付記14)
前記ダミーゲート電極の下方かつ前記第2の半導体領域の側方の前記半導体基板内に第2導電型の第4の半導体領域を形成する工程を有することを特徴とする付記10乃至13のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
(付記15)
前記第1の半導体領域上にノンドープの第5の半導体領域を形成する工程を有することを特徴とする付記10乃至14のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
(付記16)
前記半導体基板の表層部に素子分離領域を形成する工程を有し、
前記ダミーゲート電極の、前記第1の方向に直交する第2の方向の縁は、前記素子分離領域の上方にあることを特徴とする付記10乃至15のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
(付記17)
前記ダミーゲート電極を2本形成し、
前記ゲート電極を2本の前記ダミーゲート電極の間に形成することを特徴とする付記10乃至16のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
(付記18)
2本以上の前記ゲート電極を2本の前記ダミーゲート電極の間に形成することを特徴とする付記17に記載の半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0131】
100、200、300、400、500、600、700、800:半導体装置
101、201:半導体基板
102、202:素子分離絶縁膜
103、203:pウェル
104、124、204、224:p型半導体領域
105、106、125、205、206、225:n型半導体領域
107、207:ゲート絶縁膜
108、208:ゲート電極
109、209:ダミーゲート電極
114、214:配線