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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】医療機器用包装材
(51)【国際特許分類】
   G09F 3/03 20060101AFI20230301BHJP
   B65D 33/00 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
G09F3/03 F
B65D33/00 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018212954
(22)【出願日】2018-11-13
(65)【公開番号】P2020079867
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋渡 道士
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 広明
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-094404(JP,A)
【文献】実開平04-124278(JP,U)
【文献】特開平05-111525(JP,A)
【文献】実開平04-059874(JP,U)
【文献】実開昭57-167470(JP,U)
【文献】特開2013-130694(JP,A)
【文献】実開昭59-189669(JP,U)
【文献】実開昭51-110495(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 1/00-5/04
B65D 1/00-90/66
A61J 1/00-19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療機器を包装する包装材本体と、
前記包装材本体に貼付された保護シートとを備え、
前記包装材本体は、表面に情報が印刷された情報表示部を有し、
前記保護シートは、前記情報表示部に貼付され、透明なシート本体と、前記シート本体の裏面に設けられた粘着剤層とを有し
前記シート本体は、一の辺を除く他の3辺に設けられ、各辺が延びる方向と交差する方向に延びる切れ込みを有しており、
前記情報表示部に貼付された前記シート本体は、剥離する際に複数の分離片に分離して、その一部が前記包装材本体の表面に残存する、医療機器用包装材
【請求項2】
前記シート本体は、複数のミシン目を有し、
前記ミシン目は、前記シート本体の外周に達していない、請求項1に記載の医療機器用包装材
【請求項3】
前記シート本体は、複数のミシン目を有し、
前記ミシン目の少なくとも一部は、前記シート本体の他の3辺に達する、請求項1に記載の医療機器用包装材
【請求項4】
前記ミシン目は、前記一の辺と交差する方向のミシン目を含む、請求項2又は3に記載の医療機器用包装材
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の医療機器用包装材と、
前記医療機器用包装材内に収容された医療機器とを備えた、医療機器パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療機器用の情報表示を保護する保護シートに関する。
【背景技術】
【0002】
医療機器は、外部からの汚染を避けるために、包装材内の密閉された空間に収容された状態で、運搬・保管される。医療機器を使用する際には、型番やロットの確認が不可欠である。このため、包装材に収容された状態で、型番やロット番号を確認できるように、医療機器本体又は包装材の表面に種々の情報が表示される。
【0003】
医療機器の多くは、光や湿度により劣化するおそれがある。このため、包装材としてアルミラミネート袋やアルミ蒸着袋等が用いられる場合がある。これらの包装材を用いた場合、内部の確認ができないため、包装材の表面における情報表示は必須となる。また、内部が確認可能な透明の包装材を用いる場合であっても、取り扱いを容易にする観点から包装材の表面に情報表示がされていることが好ましい。
【0004】
包装材の表面に情報を表示する場合、情報を印刷したラベルを貼付したり、自動設備により包装材の表面に直接印刷したりする。
【0005】
包装材には、医療機器にとって重要な情報が表示されているため、これを改ざんしにくくするための対策が必要である。また、ダイアライザーのように使用期限が長い医療機器も存在する。このような医療機器の場合、包装材に表示された情報が長期間消えないように保護する必要もある。情報を印刷したラベルを貼付する場合、再貼付できないラベルを用いることにより改ざんを抑止することができる(例えば、特許文献1を参照。)。また、ラベルの材質やインクの選択の幅が広く、印字された情報を消えにくくすることも比較的容易である。しかし、ラベルを準備して貼付する手間を考えると、包装材に直接印刷する方法が優れている。例えば、包装材の表面に情報を印刷する技術として、発色インキを用いたレーザー印字の方法等が知られているが(特許文献2を参照)、このような方法を用いた場合、アルミ蒸着材等の一部の包装材においては印刷される文字等が薄くなり、バーコード等の情報が読み取れない問題がある。
【0006】
種々の耐アルコールインク等を用いて包装材の表面に印刷する方法も考えられるが(特許文献3を参照)、印刷された情報が完全に消えないようにするまでには至っていない。特に医療機器の分野においては、内容物である医療機器の保存の観点から、包装材の表面が樹脂(NyやPET等)やアルミ等の通気性の低い材質に限定されるため、ラベルを用いる場合と比べて消えにくくすることが難しく、改ざんも容易となる。
【0007】
そのような問題に対応するために、情報表示部分に透明な保護シートを貼り付けることが検討されているが、情報表示部分を保護できるものの、改ざんを抑止することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2010-49105号公報
【文献】特開平9-123607号公報
【文献】特開2002-294128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示の課題は、簡易な方法で情報表示部を保護するとともに、保護シートを剥がす作業が困難であり、剥がしたシートを元通りにすることが不可能となるため改ざんが抑止される保護シートを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の保護シートの一態様は、医療機器を収容する包装材に直接印刷された情報用の保護シートを対象とし、方形状の透明なシート本体と、シート本体の裏面に設けられた粘着剤層とを備え、シート本体は、一の辺を除く他の3辺に設けられ、各辺が延びる方向と交差する方向に延びる切れ込みを有しており、シート本体は、情報表示部を覆うように包装材に貼付した後、剥離すると、複数の分離片に分離して、その一部が包装材に残存する。
【0011】
保護シートの一態様によれば、シート本体が複数の分離片に分離して、その一部が表面に残存するため、剥離の有無を確認できる。さらに、シート本体が複数の分離片に分離するため、そのシートを剥がす作業が困難で、さらに剥がしたシートを貼直すことが不可能となり、同様の保護シールを別途用意しなければならなくなる。その結果、情報表示の改ざんをしにくくすることができる。
【0012】
保護シートの一態様において、シート本体は、複数のミシン目を有し、ミシン目の少なくとも一部は、他の3辺に達するようにすることができる。このような構成とすることで、シートを剥がした際により複数の分離片に分離されるとともに、繰り出す先頭側にシートの外周に一の辺を配置することにより、シート本体をロール状に巻回された台紙付きシートから、より安定した繰り出しを行うことができ、自動貼付装置にて、包装材の所定の位置に自動貼付が可能となる。
【0013】
また、シート本体は、複数のミシン目を有し、ミシン目は、他の3辺に達しないようにすることができる。この場合、ミシン目が他の3辺に達する場合に比して、他の3辺から剥がそうとするとミシン目に沿ってはがれにくい構成となる。その結果、保護シートを剥がしにくくすることができ、改ざん抑止効果が向上する。
【0014】
この場合、ミシン目は、一の辺と交差する方向のミシン目を含むようにできる。このような構成とすることにより、切れ込みが設けられていない一の辺からシートを剥がそうとした場合にも、引き裂かれやすくできる。
【0015】
本開示の医療機器用包装材の一態様は、包装材の情報表示部を覆うように貼付された、本開示の保護シートとを備えている。
【0016】
本開示の医療機器パッケージの一態様は、本開示の医療機器用包装材と、医療機器用包装材内に収容された医療機器とを備えている。
【発明の効果】
【0017】
本開示の保護シートによれば、シートを剥がす作業が困難で、再度貼り付けすることが不可能となるため改ざんが抑止される保護シートを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態に係る保護シートを用いた医療機器用包装材を示す平面図である。
図2】一実施形態に係る保護シートを用いた医療機器用包装材を示す断面である。
図3】貼付された保護シートの剥離を試みた状態を示す平面図である。
図4】保護シートの変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1及び図2に示すように、本開示の保護シート101は、医療機器を収容する包装材100に貼付される情報が表示される領域である情報表示部102を保護するために用いることができる。保護シート101は、方形状の透明なシート本体111と、シート本体111の裏面に設けられた粘着剤層112とを備えている。シート本体111は情報表示部102の大きさよりも大きくなるよう構成されている。シート本体111は、一の辺を除く他の3辺に設けられ、各辺が延びる方向と交差する方向に延びる切れ込み113を有している。情報表示部102には包装材100に収容される医療機器のロット番号、製造年月日、使用期限等の情報及びこれらの情報が含まれるバーコード等が印刷されている。
【0020】
保護シート101は、包装材100の表面に一旦貼付した後、保護シート101を引っ張って剥離しようとすると、切れ込み113を起点としてシート本体111が裂けて、複数の分離片に分離する。このため、図3に示すように、生じた分離片114が包装材100の表面に残存するので、保護シート101が剥離されていることを認識することができる。一方、残存する分離片114も、剥離を繰り返すことにより、切れ込み113を起点として剥離することは可能だが、外周部の切れ込み113があるため、剥離できる片が小さくなるので残存した分離片を全て剥がす作業は困難となる。従って、さらに剥がした保護シートを再度貼り直すことは不可能であるため改ざんを抑止できる。本実施形態では、シート本体111は情報表示部102の大きさよりも大きくなるよう構成されているが、少なくとも情報表示部102に表示された情報を覆うように設けられていればよい。すなわち、情報表示部102に対応して保護シート101が複数貼られているような態様でもよい。
【0021】
本実施形態において、切れ込み113は3つの辺にのみ設けられており、一つの辺には切れ込み113が設けられていない。このため、保護シート101を切れ込み113が設けられていない辺を先に剥離台紙から剥離して、切れ込み113が設けられていない辺から包装材100に貼付すれば、貼付する際に保護シート101が裂けることがなく、きれいに貼付することができ、自動貼付装置に対応することもできる。
【0022】
シート本体111は、一箇所から引っ張って剥離する際に引き裂かれやすいものが好ましいが、特に限定されず、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、及びポリウレタン等からなる透明な樹脂シートを用いることができる。また、複数の材料が積層された積層シートすることもできる。シート本体111の厚さは特に限定されないが、情報表示部102を保護する観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは50μm以上であり、複数片に分離しやすくする観点から、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下である。
【0023】
シート本体111の裏面に設ける粘着剤層112は特に限定されず、アクリル系、ウレタン系及びシリコーン系等の一般的な粘着剤を用いることができる。粘着剤層112は、シート本体111の裏面に均一に設けることができる。このため容易に生産することができる。また、実施例において粘着剤層の粘着力はJIS Z-0237による値が4.0N/10mmであるが、これに限定されたものではない。改ざんのしにくさの観点からは、より大きな粘着力を有する方が保護シートを剥がしづらくなる結果、改ざんを抑止することができる。
【0024】
保護シート101は、粘着剤層112側に剥離台紙が設けられた状態で製造し、保管することができる。また、保護シート101がロール状に巻回されたいわゆる台紙なしの状態で製造し、保管することもできる。この場合、シート本体111の一方の面に易剥離性とするための層を設けたり、剥離剤を塗布したりすることができる。
【0025】
図4に示す変形例に係るシート本体111Aは、複数のミシン目115を有している。ミシン目115は、規則的に設けても、不規則に設けてもよい。図4においては、ミシン目115としてシート本体111Aの外形と相似する同心方形のパターンと、シート本体111Aの縦、横及び斜めに延びるパターンとが設けられている。ミシン目115をこのような規則的なパターンで設けることにより、剥離時に残存する分離片の形状も規則的なものにすることができる。但し、ミシン目115をランダムに配置し、ランダムな形状の分離片が残存するようにしてもよい。
【0026】
複数のミシン目115のうちの少なくとも一部が、シート本体111Aの切れ込み113が設けられた辺のいずれかに達していてもよい。このようにすれば、シート本体111Aを剥離しようとするとより裂けやすくなる。但し、ミシン目115のいずれもがシート本体111Aの外周に達しないようにすることもできる。
【0027】
ミシン目115は、シート本体111Aを貫通する開口部を断続的に形成して設けることができる。この場合、開口部は情報表示と重ならない部分に設けられることが好ましい。また、シート本体111Aを貫通しない凹部を断続的に形成してもよい。また、切れ込み113も、シート本体111Aの表面から裏面にまで達するものだけでなく、厚さが他の部分よりも薄くなった凹部とすることができる。
【0028】
情報表示部102は、表面に文字、記号及び2次元又は3次元バーコード等の情報が記載されている。
【0029】
包装材100は、特に限定されないが、樹脂積層材、アルミラミネート樹脂材及びアルミ蒸着樹脂材等の防湿性に優れた材料からなる袋が好ましい。中でも、アルミラミネート樹脂材からなる袋は、医療機器を劣化される原因となる光の透過も抑えることができるため好ましい。
【0030】
包装材100に収容する医療機器は特に限定されないが、長期間保管される場合があるダイアライザー等が好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本開示の保護シートは、簡易な方法で情報表示部を保護できるとともに、シートを剥がす作業が困難で、再度貼り付けすることが不可能となるため改ざんが抑止され、特に医療機器の包装材に印字された情報の保護シート等として有用である。
【符号の説明】
【0032】
100 包装材
101 保護シート
102 情報表示部
111 シート本体
111A シート本体
112 粘着剤層
113 切れ込み
114 分離片
115 ミシン目
図1
図2
図3
図4