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特許7234602組成物、被覆セルロース繊維、およびその製造方法
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  • 特許-組成物、被覆セルロース繊維、およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】組成物、被覆セルロース繊維、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/02 20060101AFI20230301BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20230301BHJP
   C08K 3/105 20180101ALI20230301BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20230301BHJP
   C09D 4/00 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
C08L33/02
C08J5/00
C08K3/105
C08K7/02
C09D4/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018221548
(22)【出願日】2018-11-27
(65)【公開番号】P2020084062
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591183153
【氏名又は名称】トーヨーカラー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄太
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-148044(JP,A)
【文献】特開2013-116928(JP,A)
【文献】国際公開第2015/152188(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/040884(WO,A1)
【文献】特開2009-138024(JP,A)
【文献】特開2015-196790(JP,A)
【文献】特開2018-113102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C 19/00-19/44
C08F 6/00-246/00
301/00
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
C09D 1/00-13/00
101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均繊維径30~400nmのセルロース繊維(A)、ならびにカルボキシル基および炭素数8~24の鎖状炭化水素鎖を有し3級アミノ基を有さない酸価50~400mgKOH/gの樹脂分散剤(B)を含み、
樹脂分散剤(B)の重量平均分子量が3000~100000である、組成物。
【請求項2】
さらに、カルボキシル基との塩形成化合物(C)を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記塩形成化合物(C)は、アルカリ金属、およびアルカリ土類金属の少なくとも一方を有する化合物である、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記樹脂分散剤(B)中に、炭素数8~24の鎖状炭化水素鎖を20~95質量%含む、請求項1~3いずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
さらに、非水溶性溶剤(D)を含む、請求項1~4いずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
平均繊維径30~400nmのセルロース繊維(A)のカルボキシル基および炭素数8~24の鎖状炭化水素鎖を有し3級アミノ基を有さない重量平均分子量が3000~100000で酸価50~400mgKOH/gの樹脂分散剤(B)による被覆物である、被覆セルロース繊維。
【請求項7】
平均繊維径30~400nmのセルロース繊維(A)、ならびにカルボキシル基および炭素数8~24の鎖状炭化水素鎖を有し3級アミノ基を有さない重量平均分子量が3000~100000で酸価50~400mgKOH/gの樹脂分散剤(B)を混練して前記セルロース繊維(A)を前記樹脂分散剤(B)で被覆する、被覆セルロース繊維の製造方法。
【請求項8】
請求項1~5いずれか1項に記載の組成物、または請求項6記載の被覆セルロース繊維、および希釈樹脂を含む、成形体。
【請求項9】
請求項1~5いずれか1項に記載の組成物、または請求項6記載の被覆セルロース繊維を含む、塗料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース繊維の樹脂被覆物に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロース繊維は、多くの水酸基を有する親水性素材であり、親水性溶剤中に分散することは容易である。しかし、セルロース繊維は、非水性溶剤に難溶性であるため、親水性溶剤中に分散したセルロース繊維に非水性溶剤を加えた組成物を作製すると、セルロース繊維が凝集してしまう。そのため、非水性溶剤を使用する用途(例えば、接着剤、塗料、インキ等)にセルロース繊維を展開することは、難しかった。
【0003】
セルロース繊維を非水性溶剤中に分散した組成物として、特許文献1には、セルロース繊維、ならびに分散剤として樹脂親和性セグメントAおよびセルロース親和性セグメントBを有するブロック共重合体を使用した組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-162880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の組成物は、セルロース繊維の非水溶性溶媒に対する分散安定性が低く、セルロース繊維が経時で沈降ないし凝集する問題があった。
【0006】
本発明は、例えば、非水溶性溶媒を含む場合、セルロース繊維の経時分散安定性が良好な組成物、被覆セルロース繊維、およびその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の組成物は、平均繊維径1μm以下のセルロース繊維(A)、ならびにカルボキシル基および炭素数8~24の鎖状炭化水素鎖を有する樹脂分散剤(B)を含む。
【発明の効果】
【0008】
上記の本発明によれば、例えば、非水溶性溶媒を含む場合、セルロース繊維の経時分散安定性が良好な組成物、被覆セルロース繊維、およびその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、折り曲げ加工性試験を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、本明細書の用語を定義する。
モノマーは、エチレン性不飽和基含有単量体である。ビニル樹脂は、原料にモノマーを使用した樹脂である。(メタ)アクリルモノマーは、(メタ)アクリル酸エステル、および(メタ)アクリル酸を含む。ビニルモノマーは、(メタ)アクリル酸エステル、および(メタ)アクリル酸以外のモノマーである。
【0011】
本明細書の組成物は、平均繊維径1μm以下のセルロース繊維(A)、ならびにカルボキシル基および炭素数8~24の鎖状炭化水素鎖を有する樹脂分散剤(B)を含む。
本明細書の組成物は、非水溶性溶媒中でセルロース繊維を長期間安定的に分散できる。そのため、本明細書の組成物は、セルフライフが長く、長期保存が可能であるため、廃棄ロスの抑制が可能であり、環境負荷が少ない。
【0012】
本明細書の組成物は、非水溶性溶媒中でセルロース繊維を高度に分散できるため、従来の親水性溶剤のみの組成物では展開が難しかった用途、例えば、樹脂成形体(以下、成形体という)、塗料、インキ、電子材料等の用途に広く展開できる。
【0013】
<セルロース繊維(A)>
本明細書のセルロース繊維(A)は、原料セルロース繊維を化学処理または機械処理で微細化して作製できる。また、原料セルロース繊維を使用せずに市販のセルロースナノファイバーを用いることもできる。
【0014】
(原料セルロース繊維)
原料セルロース繊維は、例えば、木材パルプ、非木材パルプ、バクテリアセルロース、バロニアセルロース、ホヤセルロース、レーヨン等の再生セルロース等や微細セルロース、微結晶セルロース等が挙げられる。これらの中でも入手しやすく安価な面で、木材パルプ、非木材パルプが好ましい。木材パルプは、化学パルプ、半化学パルプ、機械パルプが挙げられる。化学パルプは、例えば、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、サルファイトパルプ(SP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)、溶解パルプ(DP)等が挙げられる。半化学パルプは、例えば、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等が挙げられる。機械パルプは、例えば、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等が挙げられる。非木材パルプは、例えば、コットンリンターやコットンリント等の綿系パルプ;麻、麦わら、バガス等の非木材系パルプ;ホヤや海草等から単離されるセルロース;キチン、キトサン等が挙げられる。
【0015】
(解繊方法)
セルロース繊維(A)は、原料セルロース繊維を微細化して作製する。微細化方法は、セルロース繊維(A)が繊維形態を保持しつつ解繊できればよく限定されない。微細化方法は、機械的方法と化学的方法が挙げられる。機械的方法は、機械的に解す方法であり、例えば、グラインダー、高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、超音波ホモジナイザー等が挙げられる。化学的方法は、原料セルロース繊維が有する水酸基同士の水素結合を緩和する方法である。例えば、水酸基を他の官能基に変性する手法、および硫酸等の酸や酵素を用いて加水分解を行う手法等の化学処理、ならびに水酸基に他の原子団を付加する化学修飾が挙げられる。
【0016】
化学処理は、水酸基をアルデヒド基やカルボキシル基に変換する酸化が挙げられる。例えば、N-オキシル化合物を用いてカルボキシ基に変換するTEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルラジカル)酸化、オゾン酸化等が挙げられTEMPO酸化の一例としては、Biomacromolecules8、2485-2491、2007(Saitoら)に記載されている公知の方法を用いる事が出来るが、特に限定されない。
【0017】
化学修飾は、例えば、アセチル処理が挙げられる。アセチル化処理は、原料セルロース繊維アセチル化処理することで、水酸基の一部を他の原子団(アセチル基(-CHCO))で置換する方法である。アセチル化処理の方法は、例えば、原料セルロース繊維を含む分散体中に無水酢酸を添加する処理、セルロース繊維が膜状に成形されたものを無水酢酸中に浸漬する処理等が挙げられる。また、処理の際、必要に応じて、酢酸、硫酸、ベンゼン、ピリジン、酢酸ナトリウム等を添加できる。
【0018】
アセチル化処理は、水酸基全体の5%以上の処理が好ましく、10%以上がより好ましい。
【0019】
本明細書で解繊方法は、効率よく解繊できる面で酸化処理が好ましく、その中でもTEMPO酸化が好ましい。
【0020】
セルロース繊維(A)の平均繊維径は、1μm以下であり、1~750nmが好ましく、5~500nmがより好ましい。セルロース繊維(A)の平均繊維径が前記範囲内であれば、例えば、樹脂複合体に使用すると光透過性と機械強度を両立しやすい。なお、セルロース繊維(A)の平均繊維径は、SEM(走査型電子顕微鏡)またはTEM(透過型電子顕微鏡)等で観察した数値である。具体的には、拡大画像の対角線に線を引き、その近傍にある繊維をランダムに12点抽出し、最も太い繊維と最も細い繊維を除去した10点を測定して、平均した値である。
【0021】
<樹脂分散剤(B)>
樹脂分散剤(B)は、カルボキシル基および炭素数8~24の鎖状炭化水素鎖を有する樹脂である。前記カルボキシル基は、セルロース繊維(A)間の凝集を解す作用を果たす親和部位であり、前記炭素数8~24の鎖状炭化水素鎖は、セルロース繊維(A)間の再凝集を防止する反発部位である。樹脂分散剤(B)を使用することで非水溶性溶媒を含む場合でも、セルロース繊維の分散安定性が経時で継続する組成物が得られる。
【0022】
樹脂分散剤(B)は、カルボキシル基および炭素数8~24の鎖状炭化水素鎖を有し、前記課題の解決ができれば良く、樹脂の種類は限定されない。樹脂の種類は、例えば、アクリル樹脂、ポリオレフィン、およびスチレン無水マレイン酸共重合体等のビニル樹脂、ポリエステル、ポリエーテル、ならびにポリウレタン等が挙げられる。これらの中でもビニル樹脂、ポリオレフィン、ポリウレタンが好ましく、アクリル樹脂がより好ましい。
【0023】
ビニル樹脂の一例として、アクリル樹脂を説明する。アクリル樹脂は、例えば、カルボキシル基含有モノマー、および炭素数8~24の鎖状炭化水素鎖を有する(メタ)アクリル酸エステルを共重合して合成できる。また、炭素数8~24の鎖状炭化水素鎖を有する(メタ)アクリル酸エステルに代えて炭素数8~24の鎖状炭化水素鎖を有するビニルモノマーを使用できる。なお、ビニル樹脂の共重合は、例えば、ランダム重合、ブロック重合等が挙げられる。また、鎖状炭化水素鎖は、炭素数8~12がより好ましい、鎖状炭化水素鎖は、直鎖および分岐鎖を含む。
また、ビニル樹脂の他の例として、スチレン無水マレイン酸共重合体を説明する。スチレン無水マレイン酸共重合体は、スチレンと無水マレイン酸を共重合した樹脂に、炭素数8~24の鎖状炭化水素鎖を有するアルコールを反応させて合成できる。
【0024】
また、ビニル樹脂の他の例として、ポリオレフィンを説明する。ポリオレフィンは、炭素数8~24の鎖状炭化水素鎖を有するα―オレフィンと無水マレイン酸を共重合して合成できる。前記ポリオレフィンの酸無水物基に炭素数8~24の鎖状炭化水素鎖を有するアルコールを反応させる樹脂も挙げられる。
【0025】
カルボキシル基含有モノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ダイマー、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタレート、エチレンオキサイド変性コハク酸(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、及びε-カプラロラクトン付加(メタ)アクリレート、無水マレイン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸等が挙げられる。
【0026】
炭素数8~24の鎖状炭化水素鎖を有する(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
炭素数8~24の鎖状炭化水素鎖を有するα―オレフィンは、例えば、1-オクテン(C8)、1-デセン(C10)、1-ドデセン(C12)、1-テトラデセン(14)、1-ヘキサデセン(C16)、1-オクタデセン(C18)、1-エイコセン(C20)、1-ドコセン(C22)、1-テトラコセン(C24)等のα-オレフィン等が挙げられる。これらの中でもイソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、1-ドコセン(C22)、1-テトラコセン(C24)が好ましく、ベヘニル(メタ)アクリレート、1-テトラコセン(C24)がより好ましい。なお、炭素数8~24の炭化水素鎖は、直鎖または分岐鎖を問わず使用できる。
【0028】
また、ビニル樹脂の合成に使用できるモノマーは、例えば、炭素数7以下の鎖状炭化水素鎖を有する(メタ)アクリル酸エステル、その他モノマーが挙げられる。
【0029】
炭素数7以下の鎖状炭化水素鎖を有する(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
その他モノマーとして環状炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ターシャリブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、又はイソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、又はノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0030】
その他モノマーとして複素環を有する(メタ)アクリレートは、例えば、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、又はテトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフルオロアルキル(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリロキシ変性ポリジメチルシロキサン(シリコーンマクロマー)類;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、又は3-メチル-3-オキセタニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
その他モノマーとして水酸基含有モノマーは、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシビニルベンゼン、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレートまたはこれらモノマーのカプロラクトン付加物(付加モル数は1~5)等が挙げられる。
【0032】
その他モノマーとしてアルキレンオキシ基含有モノマーは、例えば、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、n-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、n-ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート2-エトキシエチル(メタ)アクリレートが等が挙げられる。
【0033】
その他モノマーとしてオキセタニル基含有モノマーは、例えば、3-(アクリロイルオキシメチル)3-メチルオキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)3-メチルオキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)3-エチルオキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)3-エチルオキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)3-ブチルオキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)3-ブチルオキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)3-ヘキシルオキセタン及び3-(メタクリロイルオキシメチル)3-ヘキシルオキセタン等の等が挙げられる。
【0034】
その他モノマーとして、例えば、α-メチルスチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸ビニル、又は(メタ)アクリル酸アリル等のビニル;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、又はアクリロイルモルホリン等のN置換型(メタ)アクリルアミド類;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、又はN,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル類;1,2,2,6,6,-ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレートや2,2,6,6,テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレート等のヒンダードアミン骨格を有する酸化防止ユニット含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0035】
炭素数8~24の炭化水素鎖を有するアルコールは、例えば、1-オクタノール、イソオクタノール、2-エチルヘキサノール、1-ノナノール、イソノナノール、1-デカノール、1-ドデカノール、1-ミリスチルアルコール、セチルアルコール、1-ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2-オクチルデカノール、2-オクチルドデカノール、2-ヘキシルデカノール、ベヘニルアルコール、またはオレイルアルコール等が挙げられる。
【0036】
ビニル樹脂の合成に使用するモノマーは、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0037】
樹脂分散剤(B)の質量平均分子量は、3,000~100,000が好ましく、5,000~25,000がより好ましい。適度な質量平均分子量を有するとセルロース繊維(A)の経時分散安定性がより向上する。
【0038】
樹脂分散剤(B)の酸価は、40~400mgKOH/gが好ましい。適度な酸価を有するとセルロース繊維(A)の経時分散安定性がより向上する。
【0039】
炭素数8~24の鎖状炭化水素鎖の含有量は、樹脂分散剤(B)100質量%中、20~95質量%が好ましく、30~95質量%がより好ましい。適量有すると非水溶性溶剤との親和性がより向上する。なお、炭素数8~24の鎖状炭化水素鎖の含有量は、炭素数8~24の鎖状炭化水素鎖を有するモノマー中の炭素数8~24の鎖状炭化水素鎖に基づき計算する。
【0040】
樹脂分散剤(B)中のカルボキシル基含有モノマーの含有量は、樹脂分散剤(B)100質量%中、5~50質量%が好ましく、10~30質量%がより好ましい。適量有するとセルロース繊維(A)をより解繊し易くなる。
【0041】
<塩形成化合物(C)>
本明細書の組成物は、塩形成化合物(C)を含有できる。これによりセルロース繊維(A)の経時分散安定性がより向上する。
塩形成化合物(C)は、カルボキシル基と塩形成可能なカチオンの供給源となりうる化合物である。塩形成化合物(C)は、遷移金属、アルカリ金属、およびアルカリ土類金属の少なくとも一方を有する化合物である。これらの中でもアルカリ金属、およびアルカリ土類金属の少なくとも一方を有する化合物が好ましい。塩形成化合物(C)は、詳しくは、アルカリ金属、およびアルカリ土類金属の、塩化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、タングステン酸塩、バナジウム酸塩、モリブデン酸塩、ニオブ酸塩、ならびにホウ酸塩等が挙げられる。また、これらの中でも容易にカチオンを供給できる面でアルカリ金属、アルカリ土類金属の塩化物、水酸化物、炭酸塩が好ましい。アルカリ金属の水酸化物は、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
アルカリ土類金属の水酸化物は、例えば、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
アルカリ金属の炭酸塩は、例えば、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。
アルカリ土類金属の炭酸塩は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムが挙げられる。
これらの中でも水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウムがより好ましい。
遷移金属の塩は、例えば、塩化ニッケル(II)、塩化コバルト(II)等が挙げられる。
【0042】
塩形成化合物(C)の配合量は、樹脂分散剤(B)100質量部に対して、10~100質量部がより好ましい。適量配合すると分散性がより向上する。
【0043】
<非水溶性溶剤(D)>
本明細書の組成物は、非水溶性溶剤(D)を含有できる。組成物は、樹脂分散剤(B)を含むため非水溶性溶剤(D)を含む場合にもセルロース繊維(A)が分離ないし沈降し難く、分散安定性を経時で維持できる。
【0044】
非水溶性溶剤(D)の親水、疎水性の指標としてClogPを用いる。ClogPは計算によるLogPの推算値のClogPであり、本発明では、CLogP値は、CambridgeSoft社製ChemDrawUltra.11.0により計算された値である。なお、LogPは、分配係数P(PartitionCoefficient)の常用対数を意味し、ある化学物質が油(一般的に1-オクタノール)と水の2相系の平衡でどのように分配されるかを定量的な数値として表す物性値であり、下記数式(1)で示す。
【0045】
LogP=Log(Coil/Cwater) 数式(1)
【0046】
上記数式(1)において、Coilは油相中のモル濃度を表し、Cwaterは水相中のモル濃度を表す。LogPの値が0をはさんでプラスに大きくなると油溶性が増し、マイナスで絶対値が大きくなると水溶性が増す。LogPは化学物質の水溶性と負の相関があり、親疎水性を見積るパラメータとして広く利用されている。
【0047】
本明細書における非水溶性溶剤(D)のClogPは、0以上が好ましく、0.15以上がより好ましく、0.3以上が最も好ましい。
【0048】
非水溶性溶剤(D)は、例えば、芳香族系炭化水素溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤が挙げられる。芳香族系炭化水素溶剤は、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。ケトン系溶剤は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等が挙げられる。エステル系溶剤は、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0049】
非水溶性溶剤(D)は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0050】
非水溶性溶剤(D)の含有量は、組成物中、50~99質量%が好ましく、70~90質量%がより好ましい。
【0051】
本明細書でセルロース繊維(A)と樹脂分散剤(B)の質量比は、(A)/(B)=90/10~5/95が好ましく、75/25~10/90がより好ましい。セルロース繊維(A)を適量含有することで、例えば、成形体に使用すると、その機械強度がより向上する。
【0052】
<組成物の製造方法>
本明細書の組成物は、セルロース繊維(A)、および樹脂分散剤(B)を分散機で混合、解繊することで製造できる。製造に使用する材料は、以下のA1~A6の組合せを使用することが好ましい。また、前記組成物は、平均繊維径1μm以下のセルロース繊維(A)のカルボキシル基および炭素数8~24の鎖状炭化水素鎖を有する樹脂分散剤(B)による被覆物である。前記被覆物は、被覆セルロース繊維である。
前記製造は、平均繊維径1μm以下のセルロース繊維(A)、およびカルボキシル基および炭素数8~24の鎖状炭化水素鎖を有する樹脂分散剤(B)を混練して前記セルロース繊維(A)を前記樹脂分散剤(B)で被覆する被覆セルロース繊維の製造方法ともいえる。
【0053】
A1:セルロース繊維(A)、樹脂分散剤(B)
A2:セルロース繊維(A)、樹脂分散剤(B)、希釈樹脂
A3:セルロース繊維(A)、樹脂分散剤(B)、塩形成化合物(C)
A4:セルロース繊維(A)、樹脂分散剤(B)、塩形成化合物(C)希釈樹脂
A5:セルロース繊維(A)、樹脂分散剤(B)、非水溶性溶剤(D)
A6:セルロース繊維(A)、樹脂分散剤(B)、塩形成化合物(C)、非水溶性溶剤(D)
【0054】
分散機は、顔料分散等で使用する装置を使用できる。例えば、例えば、ディスパー、ホモミキサー、プラネタリーミキサー等のミキサー類、ホモジナイザー(エム・テクニック社製「クレアミックス」、PRIMIX社「フィルミックス」等、シルバーソン社製「アブラミックス」等)類、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、コロイドミル(PUC社製「PUCコロイドミル」、IKA社製「コロイドミルMK」)類、コーンミル(IKA社製「コーンミルMKO」等)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル等のメディア型分散機、湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS-5」、奈良機械社製「MICROS」等のメディアレス分散機、その他ロールミル、ニーダー等が挙げられる。
【0055】
<用途>
本明細書の組成物は、セルロース繊維(A)を高度に分散できるため、セルロース繊維が有する様々な機能を最大限に活用する用途に展開できる、前記機能は、例えば、高耐熱性、低線膨張率、高弾性率、高強度、高透明性等である。そのため本明細書の組成物は、例えば、接着剤、各種塗料、包装材料、ガスバリア材、電子部材、成形体、構造体等様々な用途に利用できる。また、組成物をコーティング剤や添加剤として用い各種樹脂と複合化させることもできる。
【0056】
[塗料用途]
本明細書の塗料は、本明細書の組成物、または被覆セルロース繊維を含むことが好ましく、さらに熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を含有することがより好ましい。
【0057】
熱可塑性樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、テフロン(登録商標)、ABS樹脂、AS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、環状ポリオレフィン、ポリフェニレンスルファイド、ポリテトラフロロエチレン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド等が挙げられる。
熱硬化性樹脂は、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリエステル、熱硬化性ポリイミド、ベンゾグアナミン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、カルド樹脂等が挙げられる。
これらの中でも熱硬化性樹脂であるポリエステルが好ましい。
ポリエステルの市販品は、例えば、三菱レイヨン社製のダイヤクロンシリーズ、東洋紡社製のバイロンシリーズ、日本合成化学社製のニチゴーポリエスターTP、LPシリーズ、花王社製のアトラックシリーズ、クラレ社製のクラレポリオールシリーズ、荒川化学工業社製のアラキードシリーズなどが挙げられる。
【0058】
本明細書の塗料は、さらに添加剤として、例えば、顔料、硬化剤、添加剤、ワックス、硬化触媒、レベリング剤および可塑剤等を適宜選択して含有できる。
顔料は、化学的構造については特に制限がなく、有機顔料でも無機顔料でもよい。例えば、アゾ系、縮合アゾ系、アゾメチン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、チオインジゴ系、ペリレン系、ペリノン系等の有機顔料及びカーボンブラック、酸化チタン、硫酸バリウム、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、合成鉄黒等の無機顔料等が挙げられる。
【0059】
硬化剤は、例えば、フェノール系樹脂、アミノ樹脂、酸無水物、活性エステル、カルボン酸系化合物、スルホン酸系化合物等が挙げられる。これらの中でも、アミノ樹脂が好ましい。
アミノ樹脂は、例えば、ベンゾグアナミン樹脂(ベンゾグアナミンの縮合物)、メラミン樹脂(メラミンの縮合物)、尿素樹脂(尿素の縮合物)、ベンゾグアナミン/メラミン共縮合樹脂(ベンゾグアナミンとメラミンとの共縮合物)等が挙げられる。アミノ樹脂(B)の市販品としては、三井サイアナミッド社製のサイメル254、サイメル303、サイメル325、サイメル370;日立化成工業社製のメラン11E、メラン358D、メラン310XK-IB、メラン322BK、メラン3270;DIC社製のアミディア等が挙げられる。
【0060】
硬化剤は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0061】
硬化剤の含有量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して、5~25質量部が好ましい。
【0062】
ワックスは、例えば、カルナバワックス、ラノリンワックス、パーム油、キャンデリラワックス、ライスワックス等の動植物系ワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックス;ポリオレフィンワックス、テフロン(登録商標)ワックス等の合成ワックス等が挙げられる。
【0063】
硬化触媒は、例えばドデシルベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスル
ホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、硫酸、およびリン酸化合物ならびにこれらの中和物等が挙げられる。
【0064】
塗料の製造方法は、例えば、セルロース繊維(A)と樹脂分散剤(B)とを含む組成物に、その他材料、添加剤を配合し混合する方法、または、セルロース繊維(A)、樹脂分散剤(B)、その他材料、添加剤を同時に混合・分散する方法が挙げられる。
【0065】
塗料の使用方法は、基材上に塗料を塗装して塗膜を有する塗装板を作成することが好ましい。
基材は、例えば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ステンレス鋼、ブリキ、亜鉛メッキ鋼、合金化亜鉛(Zn-Al、Zn-Ni、Zn-Fe等)メッキ鋼等の金属材料;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂や各種のFRP等のプラスチック材料;ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料等が挙げられる。なお、基材は、アンカー処理ないしプライマー処理がされていても良い。
塗装方法は、例えば、エアースプレー、エアレススプレー、および静電スプレー等のスプレー塗装、ロールコーター塗装、浸漬塗装、ならびに電着塗装等の公知の方法を使用できる。
装条件は、約200~300℃の温度で、10秒~2分間程度焼き付けることが好ましく、20~40秒間がより好ましい。塗膜の厚みは、1~30μm程度である。
【0066】
[成形体用途]
<マスターバッチ>
本明細書のセルロース繊維含有組成物は、マスターバッチとして用いることができる。マスターバッチを得る方法としては、下記が挙げられるがこれらに限定されない。セルロース繊維(A)と樹脂分散剤(B)と、必要に応じてポリエチレン、ポリプロピレン等の希釈樹脂としての熱可塑性樹脂、その他添加剤を混合し、溶融混練し、ペレット状に成型することで、マスターバッチを製造することが好ましい。混合は、一般的な高速せん断型混合機や回転混合機であるヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、タンブラーミキサー等を用いるのが好ましい。また、溶融混練は、二本ロール、三本ロール、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、単軸混練押出し機、二軸混練押出し機等を用いるのが好ましい。溶融混練時の加熱温度は、熱可塑性樹脂が溶融する温度であれば特に制限なく、例えば、150~350℃の範囲から適宜選択することができる。
【0067】
また、マスターバッチとして作製されたセルロース繊維含有組成物は、セルロース繊維(A)を1~60質量%含むことが好ましい。セルロース繊維(A)を適量含有させることで、樹脂分散剤(B)及び熱可塑性樹脂との混練際、セルロース繊維(A)をより分散し易くなる。
【0068】
<成形体>
本明細書の成形体は、本明細書の組成物、または被覆セルロース繊維、および希釈樹脂を含むことが好ましい。
成形体は、組成物等を溶融・混練し、次いで成形して作製することが好ましい。
本明細書の組成物を使用すると、セルロース繊維(A)をより微細に分散できるため成形体の変形に対する耐久性がより向上する。
【0069】
溶融・混練に使用する装置は、例えば、溶融混練は、二本ロール、三本ロール、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、単軸混練押出し機、二軸混練押出し機等が挙げられる。
【0070】
成形方法は、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形、プレス成形、カレンダー成形、Tダイ成形、インフレーション成形、圧縮成形、パイプ押出成形、ラミネート成形、および真空成形等が挙げられる。これらの成形方法に適した例えば押出成形機、カレンダー成形機等を使用できる。
【0071】
成形温度は、150~220℃が好ましい。
【0072】
成形体の用途は、例えば、建築材料用途でいうと、例えば、地中熱交換用熱交換パイプ、搬送材[コンテナ、フレキシブルコンテナ、台車、トレー、キャリアテープ、パレット、シートスキッド(自動車シート搬送用)、ストレッチフィルム(荷崩れ防止用)、結束バンド、発泡緩衝材、エアーキャップ(緩衝材)など]、生活資材用成形品[家具(椅子、机、ハンガー等)、住宅等の建材(玄関・室内等の各種ドア、内・外壁材、天井材、屋根材、タイル等)が挙げられる。
【0073】
筐体用途でいうと、例えば、容器および包装材[食料品(生鮮食料品、加工食料品、清涼飲料等)用容器および包装材、雑貨(食器、玩具、文房具、電気部品、家電品、家具、嗜好品等)用容器および包装材、薬品(工業用薬品、医薬品等)用容器および包装材、自動車用部品[インスツルメントパネル、ドアトリム、ピラー等の内装材、バンパー等の外装材、ガソリンタンク、バルブ等の内部部品等]、家電製品[テレビ、録画再生機(ビデオ、ハードディスク、DVD、BD等)、パソコン機器[パソコン本体、ディスプレー(CRT、液晶、プラズマ、プロジェクターおよび有機EL等)、ノートパソコン、プリンター、記録媒体ドライブ(ハードディスク、MO、メモリーカード、CD、DVD、BD、フレキシブルディスク等)、記録媒体(USBメモリー、ICカード等)筐体、マウスなどの筐体および内部部品]の筐体、小型携帯機器[無線機、携帯電話、PHS、PDA、スマートフォン、携帯ゲーム機およびゲームソフト、テレビ、ナビゲーション機器、GPS機器、ヘッドホンステレオ、光学カメラ、デジタルカメラ電子辞書および計算機、リチウムイオン充電器などの筐体および内部部品等]の筐体、事務用機器[コピー、ファクシミリ、スキャナおよびそれらの複合機、シュレッダー、紙折機、電子黒板、タイムレコーダー、ネットワークカメラ、喫煙カウンター、ラベルライター、電子レジスタ、電子チェックライター、ラミネーターおよび製本機など]の筐体、遊技機[アーケード型ゲーム機、パチンコ、スロットマシーンなど]の筐体、医療機器[ドライイメージャー、メディカルプリンター、メディカルレコーダー、メディカルカメラ、X線テレビシステム、CTスキャナシステム、マンモグラフシステム、血管撮影システムおよび超音波診断システムなどの筐体などで使用することができる。
【実施例
【0074】
以下、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、以下「質量%」は「%」と記載する。表中の配合量は、質量%である。
【0075】
セルロース繊維分散液、およびセルロース繊維複合塗膜の各種物性の測定方法は次の通りである。
【0076】
(質量平均分子量(Mw)の測定方法)
質量平均分子量(Mw)は、RI検出器を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した。装置としてHLC-8220GPC(東ソー株式会社製)を用い、分離カラムを2本直列に繋ぎ、両方の充填剤には「TSK-GEL SUPER HZM-N」を2連でつなげて使用し、オーブン温度40℃、溶離液としてTHF溶液を用い、流速0.35ml/minで測定した。サンプルは1wt%の上記溶離液からなる溶剤に溶解し、20マイクロリットル注入した。分子量はいずれもポリスチレン換算値である。
【0077】
(酸価の測定方法)
酸価(mgKOH/g)は、JIS K 0070の電位差滴定法に準拠し、測定した数値である。以下、酸価の単位を省略する場合がある。
【0078】
(製造例1)
(TEMPO酸化セルロース繊維(A-2)の製造)
セルロースとして針葉樹漂白パルプを用いた。セルロース5g(絶乾質量換算)を蒸留水500gに加え撹拌し、膨潤させた後ミキサーにより解繊した。予め蒸留水200gに溶解させたTEMPOを78mg、臭化ナトリウム780mgの溶液を加え、有効塩素濃度5%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液18mlを滴下により添加し、酸化反応を開始した。反応温度は常に20℃以下に維持した。反応中は系内のpHが低下するが、0.5NのNaOH水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。そして、3時間反応させた時点で、エタノール30gを添加し、反応を停止した。続いて反応液に0.5NのHClを滴下しpHを7まで低下させた。反応物をガラスフィルターにてろ過し、ろ過物を十分な量の水で水洗するとともに、ろ過を5回繰り返した。これにより、不揮発分濃度20質量%のTEMPO酸化されたセルロース繊維(A-2)を得た。なお、セルロース繊維(A-2)の平均繊維径は、30nmであった。
【0079】
(製造例2)
(アセチル化セルロース繊維(A-3)の製造)
セパラブルフラスコに、製造例1にて得られたセルロース繊維(A-2)を1g、無水酢酸300mLと酢酸ナトリウム4gと超純水100mLとを加えて90℃で15時間、アセチル化反応を行った。得られた反応物をガラスフィルターにてろ過し、ろ過物を十分な量の水で水洗するとともに、ろ過を5回繰り返した。これにより、不揮発分濃度20質量%のアセチル化されたセルロース繊維(A-3)を得た。なお、セルロース繊維(A-3)の平均繊維径は、400nmであった。
【0080】
(製造例3)
(樹脂分散剤(B-1)の製造)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、1-ブタノール100部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を110℃に加熱して、イソステアリルアクリレート70.0部、アクリル酸7.0部、2-メトキシエチルアクリレート23.0部および及びパーブチルO(日油社製)5.0部の混合物を3時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、さらに110℃で1時間反応させた後、パーブチルOを0.5部添加し、さらに110℃で1時間反応を続けた。その後、不揮発分測定にて転化率が98%超えたことを確認し、減圧濃縮して溶剤を完全に除去し、樹脂分散剤(B-1)を得た。樹脂分散剤(B-1)の質量平均分子量(Mw)は約12,000、酸価は50mgKOH/gであった。
【0081】
(製造例2~5)
(樹脂分散剤(B-2~B-5)の製造)
表1に記載した原料と仕込み量に変更した以外は製造例3と同様にして合成を行い、樹脂分散剤B-2~B-5を得た。なお、分子量の調整はパーブチルOの添加量を変更し、適宜調整した。それぞれの質量平均分子量(Mw)、不揮発分及び酸価は表1に記載した通りである。
【0082】
【表1】
【0083】
表1の略称は以下の通りである。
MAA:メタクリル酸
AA:アクリル酸
SA:2-メタクリロイロキシエチルサクシネート
EHMA:2-エチルヘキシルメタクリレート
LMA:ラウリルメタクリレート
i-STA:イソステアリルアクリレート
VA:ベヘニルアクリレート
2MTA:2-メトキシエチルアクリレート
PME400:ブレンマーPME400(日油社製);エチレンオキシ基含有モノマー
【0084】
(製造例6)
(樹脂分散剤(B-6の製造)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、α-オレフィンとして1-オクタデセンを43.5g、無水マレイン酸を30.4g仕込み、トルエン26.0gをフラスコに仕込み、窒素置換した後、130℃で加熱、撹拌した。そこへ、撹拌しながら、パーブチルO(日油社製)1.0gとキシレントルエン5gとの混合物を、2時間かけて滴下した。その後、温度を130℃に保ったままさらに1時間撹拌して反応させ、キシレンを減圧濃縮して完全に除去し、共重合物を得た。得られた共重合物質量平均分子量(Mw)は約10,000、酸価は160mgKOH/gであった。
ついで、1-ドデカノールを39.5g、触媒としてジアザビシクロウンデセンを0.2g加え、撹拌しながら130℃に加温した。1時間後に温度を110℃に変更してさらに1時間保持し、さらに90℃に変更し4時間保持して、α-オレフィン-無水マレイン酸共重合物と1-ドデカノールのハーフエステル化合物である樹脂分散剤(B-6)を得た。得られた共重合物の質量平均分子量(Mw)は約13,000、酸価は105mgKOH/gであった。
【0085】
(製造例7)
(樹脂分散剤(B-7の製造)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、α-オレフィンとして1-デセンを42.9g、無水マレイン酸を30.0g仕込み、トルエン27.0gをフラスコに仕込み、窒素置換した後、130℃で加熱、撹拌した。そこへ、撹拌しながら、パーブチルO(日油社製)1.0gとキシレントルエン5gとの混合物を、2時間かけて滴下した。その後、温度を130℃に保ったままさらに1時間撹拌して反応させ、キシレンを減圧濃縮して完全に除去し、共重合物を得た。得られた共重合物質量平均分子量(Mw)は約12,000、酸価は235mgKOH/gであった。
ついで、1-ドデカノールを57.0g、触媒としてジアザビシクロウンデセンを0.2g加え、撹拌しながら130℃に加温した。1時間後に温度を110℃に変更してさらに1時間保持し、さらに90℃に変更し4時間保持して、α-オレフィン-無水マレイン酸共重合物と1-ドデカノールのハーフエステル化合物である樹脂分散剤B-6を得た。得られた共重合物の質量平均分子量(Mw)は約15,000、酸価は132mgKOH/gであった。
【0086】
(比較製造例1)
(比較分散剤(B-101)の製造)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、1-ブタノール100部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を110℃に加熱して、メチルメタクリレート70.0部、アクリル酸7.0部、2-メトキシエチルアクリレート23.0部および及びパーブチルO(日油社製)5.0部の混合物を3時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、さらに110℃で1時間反応させた後、パーブチルOを0.5部添加し、さらに110℃で1時間反応を続けた。その後、不揮発分測定にて転化率が98%超えたことを確認し、減圧濃縮して溶剤を完全に除去し、樹脂分散剤(B-101)を得た。樹脂分散剤(B-101)の質量平均分子量(Mw)は約12,000、酸価は50mgKOH/gであった。
【0087】
(比較製造例2)
(比較分散剤(B-102)の製造)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、1-ブタノール100部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を110℃に加熱して、2-エチルヘキシルアクリレート70.0部、アクリル酸メチル7.0部、2-メトキシエチルアクリレート23.0部および及びパーブチルO(日油株式会社)5.0部の混合物を3時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、さらに110℃で1時間反応させた後、パーブチルOを0.5部添加し、さらに110℃で1時間反応を続けた。その後、不揮発分測定にて転化率が98%超えたことを確認し、減圧濃縮して溶剤を完全に除去し、樹脂分散剤(B-102)を得た。樹脂分散剤(B-102)の質量平均分子量(Mw)は約12,000、酸価は0mgKOH/gであった。
【0088】
<セルロース繊維含有組成物の製造>
[実施例1]
セルロース繊維(A-1)(ダイセル社製「セリッシュKY100G」、平均繊維径0.3μm、不揮発分10%、水ないし親水性溶剤90%)10部、樹脂分散剤(B-1)10部、塩形成化合物(C)として炭酸ナトリウム(C-1)1.0部、非水溶性溶媒であるトルエン(D-1)79部を均一に撹拌混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミル(アイガージャパン社製「ミニモデルM-250MKII」)で30分間分散しセルロース繊維(A-1)を被覆した後、100μmのフィルタで濾過しセルロース繊維含有組成物(AD-1)を作製した。
【0089】
[実施例2~19、比較例1~3]
使用するセルロース繊維(A)、樹脂分散剤(B)、塩形成化合物(C)及び非水系有機溶剤(D)を表2に従って変更した以外は、実施例1と同様にして、それぞれセルロース繊維含有組成物(AD-2)~(AD-19)、(AD-101)~(AD-103)を作製した。
【0090】
【表2】
【0091】
表2中の略号は以下の通りである。
C-2:水酸化リチウム
C-3:炭酸リチウム
C-4:炭酸カルシウム
D-2:トルエン/MEK=1/1の混合溶液
D-3:トルエン/MEK/酢酸エチル=2/2/1の混合溶液
D-4:シクロヘキサノン=1/1の混合溶液
【0092】
<成形体としての評価>
[実施例20]
(セルロース繊維含有組成物(AM-1)の製造)
セルロース繊維(A-1)500部(不揮発分換算50部)、樹脂分散剤(B-1)20部、炭酸ナトリウム(C-1)5部、三菱ケミカル社製DIACRON(ER-561:ポリエステル樹脂ペレット)25部を混合し、3本ロールで分散することで、セルロース含有組成物を得た。その後、セルロース含有組成物50部、三菱ケミカル社製DIACRON(ER-561:ポリエステル樹脂)50部をタンブラーミキサー(カワタ社製)に投入し、温度25℃、時間3分の条件で撹拌した後、二軸押出し機(日本プラコン社製)に投入し、温度140℃で溶融混練することでセルロース繊維含有マスターバッチ(AM-1)を得た。
【0093】
得られたセルロース繊維含有組成物(AM-1)20部、ポリエチレン(メタロセン系プラストマー、日本ポリエチレン社製KJ640T、真密度0.88g/cm3、MFR=30g/10min、融点58℃)10部、ポリプロピレン樹脂(PP、真密度0.90g/cm3、MFR=5g/10min、融点130℃)60部を、ヘンシェルミキサーに投入した。
次いで、温度20℃、時間3分の条件でプレミックスした後、スクリュー直径30mm、L/D(スクリュー径/スクリュー長さ)=38~42の押出機に供給し、回転数200rpm、設定温度190℃の条件で溶融混練し、押し出したものをペレタイザーでカットしてペレット状の樹脂組成物を得た。
【0094】
<引張破壊点伸び率>
得られた樹脂組成物を熱プレスシート成形機に投入し200℃に加熱して、縦200mm・横200mm・厚み1.5mmのプレスシートを成形した。得られたプレスシートを2号ダンベル型に打抜いて試験片とした。得られた試験片を使用して引張り速度100mm/分の条件で、JISK-7127に準じて、引張破壊点伸び率を測定した。評価基準は以下の通りである。なお、試験前の試験片を伸び率100%とした。伸び率が大きい場合、成形体の柔軟性が上がり、衝撃を加えた際に割れやヒビが生成し難い。
◎:200%以上(良好)
○:150%以上200%未満(使用可)
△:110%以上150%未満(使用不可)
×:100%以上110%未満
【0095】
<曲げ弾性率>
得られた樹脂組成物を射出成形機(東芝機械社製)に投入し、温度190℃にて短冊試験片に成形した。短冊試験片は、JISK7139記載のタイプB2(縦80mm×横10mm×厚さ4mm)の規格に則った。作製した短冊試験片をJISK7171準じて、全自動曲げ試験機ベントグラフII(東洋精機社製)を用いて、曲げ弾性率を測定した。曲げ弾性率が高いほど剛性が増し、短冊試験片に荷重がかかった際に変形しにくくなる。評価基準は以下の通りである。
◎:2200MPa以上(良好)
○:2000MPa以上2200MPa未満(使用可)
△:1500MPa以上2000MPa未満(使用不可)
×:1500MPa未満
【0096】
[実施例21~34、比較例4~6]
使用するセルロース繊維(A)、樹脂分散剤(B)及び塩形成化合物(C)を表3に従って変更した以外は、実施例20と同様にして、それぞれセルロース繊維含有組成物(AM-2)~(AM-15)、(AM-101)~(AM-103)を得た。
次いで実施例20と同様に引張破壊点伸び率、及び曲げ弾性率を評価した。
【0097】
【表3】
【0098】
表3の結果から実施例20~34は、成形体の強度が高く、柔軟性に優れている。すなわち、成形体の変形に対する耐久性が優れている。
【0099】
<塗料としての評価>
[実施例35]
(塗料(P-1)の作成)
実施例1で得られたセルロース繊維含有組成物(AD-1)10部、熱硬化性樹脂であるポリエステルとしてニチゴーポリエスターLP033(日本合成化学社製)を10.0部、硬化剤としてアミノ樹脂のサイメル303(オルネクスジャパン社製)1.0部、p-トルエンスルホン酸0.02部、非水溶性溶剤としてトルエン(D-1)を混合し塗料(P-1)を調整した。
【0100】
[実施例36~65、比較例7~12]
使用するセルロース繊維含有組成物、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、非水溶性溶剤を表4に従って変更した以外は、実施例35と同様にして、それぞれ塗料(P-2)~(P-34)、および(P-101)~(P-106)を得た。
【0101】
【表4】
【0102】
表4中の名称は以下の通りである。
<ポリエステル樹脂>
ニチゴーポリエスターLP033:日本合成化学社製、Mw16000,Tg15℃
ニチゴーポリエスターTP236:日本合成化学社製、Mw16000,Tg60℃
バイロン600:東洋紡株式会社製
【0103】
<アミノ樹脂>
サイメル303:オルネクスジャパン社製、メラミン樹脂
メラン358D:日立化成株式会社製、メラミン樹脂
メラン322BK:日立化成株式会社製、メラミン樹脂
【0104】
[テストパネルの作製]
得られた塗料を厚さ0.26mmのアルミ板上に乾燥質量が80mg/dmとなるようにバーコーターで塗装し、次いで第1ゾーンの温度が286℃、第2ゾーンの温度が326℃である2連型のコンベアーオーブンを24秒間で通過させて乾燥・硬化することで塗膜を備えたテストパネルを作製した。得られたテストパネルを下記の通り評価した。
【0105】
<塗膜硬度>
得られたテストパネルの塗膜硬度について、三菱鉛筆uni(硬さ10H~10B)を使用してJISK5400の鉛筆引っかき値(手かき法エリクセン値(破断距離法)試験法)に従い測定し、以下の基準で評価した。
◎◎:鉛筆硬度5Hで塗膜に傷がつかない
◎:鉛筆硬度4Hで塗膜に傷がつかない
○:鉛筆硬度2H~3Hで塗膜に傷がつかない
△:鉛筆硬度F~Hで塗膜に傷がつかない
×:鉛筆硬度B以下で塗膜に傷がつかない
【0106】
<折り曲げ加工性>
折り曲げ加工性試験を図1に基づき説明する。得られたテストパネルを幅30mm縦50mmの大きさに準備した(テストパネル1)。次いで23℃環境下、図1(a)に示す通りテストパネル1の塗膜を外側にして、縦長さ30mmの位置に直径3mmの丸棒2を添える。そして。図1(b)に示す通り丸棒2に沿ってテストパネル2を2つ折りにして試験片3を作製した。この2つ折りにした試験片3の間に厚さ0.26mmのアルミ板(省略)2枚はさみ、図1(c)に示す通り幅15cm×高さ5cm×奥行き5cmの直方体状の1kgのおもり4を高さ40cmから試験片3の折り曲げ部に落下させて完全に折り曲げた。
次いで、アルミ板を取り除いた上で、試験片3の折り曲げ部を濃度1%の食塩水中に浸漬させた。次いで、試験片3の、食塩水中に浸漬されていない平面部の金属部分と食塩水との間を6.0V×6秒間通電させて、その電流値を測定した。塗膜の加工性が乏しい場合、折り曲げ加工部の塗膜がひび割れて、下地の金属板が露出して導電性が高まるため、電流値が高くなる。
◎◎:3mA未満(非常に良好)
◎:3mA以上5mA未満(良好)
○:5mA以上10mA未満(使用可)
△:10mA以上20mA未満(使用不可)
×:20mA以上(不良)
【0107】
耐腐食性を耐酸性試験および耐アルカリ性試験で評価した。
<耐酸性試験>
得られたテストパネルをクエン酸を2質量%含むpH2の水溶液に浸漬したまま、レトルト釜で125℃-30分間レトルト処理を行った。その後、テストパネルの塗膜の外観を目視で評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:未処理の塗膜と変化なし(良好)
○:ごく薄く白化(使用可)
△:やや白化(使用不可)
×:著しく白化(不良)
【0108】
<耐アルカリ性試験>
得られたテストパネルを水酸化ナトリウムを使用してpH12に調整した水溶液に浸漬したまま、レトルト釜で125℃-30分間レトルト処理を行った。その後、テストパネルの塗膜の外観を目視で評価した。
◎:未処理の塗膜と変化なし(良好)
○:ごく薄く白化(使用可)
△:やや白化(使用不可)
×:著しく白化(不良)
【0109】
評価結果を表5に示す。
【0110】
【表5】
【0111】
表5の結果より、実施例35~65の塗料は、硬度が高くかつ折り曲げ加工性に優れた塗膜が得られることに加え、耐酸性、耐アルカリ性も良好であった。
図1