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特許7234631ネガ型感光性樹脂組成物、硬化膜、硬化膜を具備する素子及び有機ELディスプレイ、並びにその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】ネガ型感光性樹脂組成物、硬化膜、硬化膜を具備する素子及び有機ELディスプレイ、並びにその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/027 20060101AFI20230301BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20230301BHJP
   G03F 7/037 20060101ALI20230301BHJP
   G03F 7/075 20060101ALI20230301BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20230301BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20230301BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20230301BHJP
   H10K 50/00 20230101ALI20230301BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20230301BHJP
   C08F 290/14 20060101ALI20230301BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20230301BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20230301BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
G03F7/027
G03F7/004 505
G03F7/004 501
G03F7/037
G03F7/027 514
G03F7/075 511
G03F7/075 521
H05B33/10
H05B33/12 B
H05B33/22 Z
H05B33/14 A
C08F290/06
C08F290/14
G03F7/20 501
H01L21/30 576
H01L21/30 570
G09F9/30 365
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018517902
(86)(22)【出願日】2018-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2018012431
(87)【国際公開番号】W WO2018181311
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2017064524
(32)【優先日】2017-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017241099
(32)【優先日】2017-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】谷垣 勇剛
(72)【発明者】
【氏名】三好 一登
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-045220(JP,A)
【文献】特開2015-111264(JP,A)
【文献】国際公開第2015/046332(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/143740(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/027
G03F 7/004
G03F 7/037
G03F 7/075
H05B 33/10
H10K 59/00
H05B 33/12
H05B 33/22
H10K 50/00
C08F 290/06
C08F 290/14
G03F 7/20
H01L 21/027
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)ラジカル重合性化合物、(C1)光重合開始剤及び(Da)黒色剤を含有するネガ型感光性樹脂組成物であって、
前記(A)アルカリ可溶性樹脂が、(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール、(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体及び(A1-5)ポリシロキサンからなる群より選ばれる一種類以上を含む(A1)第1の樹脂を含有し、
前記(B)ラジカル重合性化合物が、(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物及び(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物からなる群より選ばれる一種類以上を含有し、
前記(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物として、一般式(11)で表される化合物、
及び/又は
前記(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物として、一般式(12)で表される化合物及び/又は一般式(13)で表される化合物、を含有し、
前記(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物及び(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物の二重結合当量が、150~400g/molであって、
前記(B)ラジカル重合性化合物が、さらに、(B3)柔軟鎖含有脂肪族ラジカル重合性化合物を含有し、
前記(B3)柔軟鎖含有脂肪族ラジカル重合性化合物が、分子中に一般式(24)で表される基、及び、2個以上の一般式(25)で表される基を有し、
前記(B3)柔軟鎖含有脂肪族ラジカル重合性化合物が、少なくとも1つのラクトン変性鎖及び/又は少なくとも1つのラクタム変性鎖を有する、ネガ型感光性樹脂組成物。
【化1】
(一般式(11)、(12)及び(13)において、X1~X6は、それぞれ独立して、炭素数6~15及び2~10価の、単環式又は縮合多環式の芳香族炭化水素環、又は、炭素数4~10及び2~8価の、単環式又は縮合多環式の脂肪族炭化水素環を表す。Y1~Y6は、それぞれ独立して、直接結合、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数4~10のシクロアルキレン基、炭素数6~15のアリーレン基又は一般式(18)で表される基を表す。Y1~Y6が、直接結合又は一般式(18)で表される基の場合、Z1~Z6は、直接結合を表し、q、r、s、t、u及びvは、0である。Y1~Y6が、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数4~10のシクロアルキレン基又は炭素数6~15のアリーレン基の場合、Z1~Z6は、酸素原子を表し、q、r、s、t、u及びvは、それぞれ独立して、0~8の整数を表す。R31~R40は、それぞれ独立して、ハロゲン、炭素数1~10のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基、炭素数6~15のアリール基、炭素数1~10のフルオロアルキル基、炭素数4~10のフルオロシクロアルキル基又は炭素数6~15のフルオロアリール基を表し、R41~R44は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基又は炭素数6~15のアリール基を表し、R45~R50は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基又はヒドロキシ基を表す。P1~P6は、それぞれ独立して、一般式(14)で表される基を表す。a、b、c、d、e及びfは、それぞれ独立して、0又は1を表す。a、b、c、d、e及びfが、0の場合、Z1~Z6は、酸素原子を表す。g、h、i、j、k及びlは、それぞれ独立して、0~8の整数を表し、m、n、o及びpは、それぞれ独立して、0~4の整数を表す。α、β、γ、δ、ε及びζは、それぞれ独立して、1~4の整数を表す。)
【化2】
(一般式(18)において、R54は、水素又は炭素数1~10のアルキル基を表す。Z7は、一般式(19)で表される基又は一般式(20)で表される基を表す。一般式(18)のZ 7 側にある結合手は一般式(11)、(12)及び(13)におけるZ 1 ~Z 6 と結合する。また一般式(18)のカルボニル炭素側にある結合手は一般式(11)、(12)及び(13)における酸素原子と結合する。aは、1~10の整数を表し、bは、1~4の整数を表す。一般式(20)において、R55は、水素又は炭素数1~10のアルキル基を表す。)
【化3】
(一般式(14)において、R51~R53は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数6~15のアリール基を表す。)
【化4】
(一般式(24)において、R 125 は、水素又は炭素数1~10のアルキル基を表す。Z 17 は、一般式(29)で表される基又は一般式(30)で表される基を表す。aは、1~10の整数を表し、bは、1~4の整数を表し、cは、0又は1を表し、dは、1~4の整数を表し、eは、0又は1を表す。cが、0の場合、dは、1である。一般式(25)において、R 126 ~R 128 は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数6~15のアリール基を表す。一般式(30)において、R 129 は、水素又は炭素数1~10のアルキル基を表す。)
【請求項2】
前記(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物及び(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物の分子量が、400~900である、請求項1に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A1)第1の樹脂が、(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール、及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体からなる群より選ばれる一種類以上を含有する、請求項1又は2に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体から選ばれる一種類以上が、エチレン性不飽和二重結合基を有し、
前記(A1-5)ポリシロキサンが、エチレン性不飽和二重結合基を有するオルガノシラン単位を含有する、請求項1~のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、(F)架橋剤として、(F1)分子中にフルオレン骨格及び2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物、及び/又は、(F2)分子中にインダン骨格及び2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物を含有する、請求項1~のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(Da)黒色剤が、(D1a-1)黒色有機顔料を含有し、
前記(D1a-1)黒色有機顔料が、(D1a-1a)ベンゾフラノン系黒色顔料、(D1a-1b)ペリレン系黒色顔料、及び(D1a-1c)アゾ系黒色顔料からなる群より選ばれる一種類以上を含む、請求項1~のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(D1a-1)黒色有機顔料が、さらに、(DC)被覆層を含有し、
前記(DC)被覆層が、(DC-1)シリカ被覆層、(DC-2)金属酸化物被覆層及び(DC-3)金属水酸化物被覆層からなる群より選ばれる一種類以上を含む、請求項に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項8】
(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)ラジカル重合性化合物、(C1)光重合開始剤及び(Da)黒色剤を含有するネガ型感光性樹脂組成物であって、
前記(A)アルカリ可溶性樹脂が、(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール、(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体及び(A1-5)ポリシロキサンからなる群より選ばれる一種類以上を含む(A1)第1の樹脂を含有し、
前記(B)ラジカル重合性化合物が、(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物及び(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物からなる群より選ばれる一種類以上を含有し、
前記(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物として、一般式(15)で表される構造単位を有する化合物、
又は
前記(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物として、一般式(16)で表される構造単位を有する化合物若しくは一般式(17)で表される構造単位を有する化合物、
を含有する、ネガ型感光性樹脂組成物。
【化5】
(一般式(15)、(16)及び(17)において、X11~X22は、それぞれ独立して、炭素数6~15及び2~10価の、単環式又は縮合多環式の芳香族炭化水素環、又は、炭素数4~10及び2~8価の、単環式又は縮合多環式の脂肪族炭化水素環を表す。Y11~Y16は、それぞれ独立して、直接結合、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数4~10のシクロアルキレン基又は炭素数6~15のアリーレン基を表す。Y11~Y16が、直接結合の場合、Z11~Z16は、直接結合を表し、u、v、w、x、y及びzは、0である。Y11~Y16が、直接結合でない場合、Z11~Z16は、酸素原子を表し、u、v、w、x、y及びzは、それぞれ独立して、0~8の整数を表す。Y17~Y19は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数4~10のシクロアルキレン基又は炭素数6~15のアリーレン基を表す。R56~R67及びR133~R140は、それぞれ独立して、ハロゲン、炭素数1~10のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基、炭素数6~15のアリール基、炭素数1~10のフルオロアルキル基、炭素数4~10のフルオロシクロアルキル基又は炭素数6~15のフルオロアリール基を表し、R141~R148は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基又は炭素数6~15のアリール基を表し、R149~R154は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基又はヒドロキシ基を表す。a、b、c、d、e、f、g、h、i、j、k及びlは、それぞれ独立して、0~8の整数を表し、m、n、o、p、q、r、s及びtは、それぞれ独立して、0~4の整数を表す。α、β及びγは、それぞれ独立して、1又は2であり、δ、ε及びζは、それぞれ独立して、0又は1である。)
【請求項9】
(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)ラジカル重合性化合物、(C1)光重合開始剤及び(Da)黒色剤を含有するネガ型感光性樹脂組成物であって、
前記(A)アルカリ可溶性樹脂が、(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール、(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体及び(A1-5)ポリシロキサンからなる群より選ばれる一種類以上を含む(A1)第1の樹脂を含有し、
前記(B)ラジカル重合性化合物が、(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物及び(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物からなる群より選ばれる一種類以上を含有し、
前記(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物及び前記(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物が、少なくとも1つのラクトン変性鎖及び/又は少なくとも1つのラクタム変性鎖を有する、ネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項10】
(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)ラジカル重合性化合物、(C1)光重合開始剤及び(Da)黒色剤を含有するネガ型感光性樹脂組成物であって、
前記(A)アルカリ可溶性樹脂が、(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール、(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体及び(A1-5)ポリシロキサンからなる群より選ばれる一種類以上を含む(A1)第1の樹脂を含有し、
前記(B)ラジカル重合性化合物が、(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物及び(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物からなる群より選ばれる一種類以上を含有し、
前記(B)ラジカル重合性化合物が、さらに、(B3)柔軟鎖含有脂肪族ラジカル重合性化合物を含有し、
前記(B3)柔軟鎖含有脂肪族ラジカル重合性化合物が、少なくとも1つのラクトン変性鎖及び/又は少なくとも1つのラクタム変性鎖を有する、ネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項11】
(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)ラジカル重合性化合物、(C1)光重合開始剤及び(Da)黒色剤を含有するネガ型感光性樹脂組成物であって、
前記(A)アルカリ可溶性樹脂が、(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール、(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体及び(A1-5)ポリシロキサンからなる群より選ばれる一種類以上を含む(A1)第1の樹脂を含有し、
前記(B)ラジカル重合性化合物が、(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物及び(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物からなる群より選ばれる一種類以上を含有し、
前記(B)ラジカル重合性化合物が、さらに、(B3)柔軟鎖含有脂肪族ラジカル重合性化合物を含有し、
前記(B3)柔軟鎖含有脂肪族ラジカル重合性化合物が、一般式(27)で表される化合物及び/又は一般式(28)で表される化合物を含有し、
前記(Da)黒色剤が、(D1a)黒色顔料を含有する、ネガ型感光性樹脂組成物。
【化6】
(一般式(27)において、X28は、2価の有機基を表す。Y28~Y33は、それぞれ独立して、直接結合又は一般式(24)で表される基を表し、Y28~Y33のうち、少なくとも1つは一般式(24)で表される基である。P12~P17は、それぞれ独立して、水素又は一般式(25)で表される基を表し、P12~P17のうち、少なくとも2つは一般式(25)で表される基である。a、b、c、d、e及びfは、それぞれ独立して、0又は1を表し、gは、0~10の整数を表す。
一般式(28)において、X29は、2価の有機基を表す。X30及びX31は、それぞれ独立して、直接結合又は炭素数1~10のアルキレン鎖を表す。Y34~Y37は、それぞれ独立して、直接結合又は前記一般式(24)で表される基を表し、Y34~Y37のうち、少なくとも1つは前記一般式(24)で表される基である。R69及びR70は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1~10のアルキル基を表す。P18~P21は、それぞれ独立して、水素又は前記一般式(25)で表される基を表し、P18~P21のうち、少なくとも2つは前記一般式(25)で表される基である。h、i、j及びkは、それぞれ独立して、0又は1を表し、lは、0~10の整数を表す。)
【化7】
(一般式(24)において、R125は、水素又は炭素数1~10のアルキル基を表す。Z17は、一般式(29)で表される基又は一般式(30)で表される基を表す。一般式(24)のZ 17 側にある結合手は一般式(27)及び(28)におけるカルボニル炭素又はP 12 ~P 21 と結合する。また一般式(24)のカルボニル炭素側にある結合手は一般式(27)及び(28)におけるに酸素原子と結合する。aは、1~10の整数を表し、bは、1~4の整数を表し、cは、0又は1を表し、dは、1~4の整数を表し、eは、0又は1を表す。cが、0の場合、dは、1である。一般式(25)において、R126~R128は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数6~15のアリール基を表す。一般式(30)において、R129は、水素又は炭素数1~10のアルキル基を表す。)
【請求項12】
(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)ラジカル重合性化合物、(C1)光重合開始剤及び(Da)黒色剤を含有するネガ型感光性樹脂組成物であって、
前記(A)アルカリ可溶性樹脂が、(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール、(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体及び(A1-5)ポリシロキサンからなる群より選ばれる一種類以上を含む(A1)第1の樹脂を含有し、
前記(B)ラジカル重合性化合物が、(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物及び(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物からなる群より選ばれる一種類以上を含有し、
前記(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体から選ばれる一種類以上が、一般式(63)で表される基、一般式(64)で表される基、一般式(65)で表される基、一般式(66)で表される基、及び、一般式(67)で表される基から選ばれる一種類以上のエチレン性不飽和二重結合基を有し、
前記(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体の二重結合当量が、250~5,000g/molであって、
前記(A1-5)ポリシロキサンが、エチレン性不飽和二重結合基を有するオルガノシラン単位を含有する、ネガ型感光性樹脂組成物。
【化8】
(一般式(63)、(64)、(65)、(66)及び(67)において、X 41 ~X 45 は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン鎖、炭素数4~10のシクロアルキレン鎖又は炭素数6~15のアリーレン鎖を表す。X 46 は、直接結合又は炭素数1~10のアルキレン鎖を表す。R 231 ~R 252 は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数6~15のアリール基を表す。a、b、c、d及びeは、それぞれ独立して、0又は1を表す。)
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物を硬化した硬化膜。
【請求項14】
請求項13に記載の硬化膜を、画素分割層、電極絶縁層、配線絶縁層、TFT平坦化層、電極平坦化層、配線平坦化層、TFT保護層、電極保護層及び配線保護層からなる群より選ばれる一種類以上として備える、有機ELディスプレイ。
【請求項15】
機ELディスプレイの製造方法であって、
(1)基板上に、請求項1~12のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物の塗膜を成膜する工程、
(2)前記ネガ型感光性樹脂組成物の塗膜にフォトマスクを介して活性化学線を照射する工程、
(3)アルカリ溶液を用いて現像し、前記ネガ型感光性樹脂組成物のパターンを形成する工程、及び、
(4)前記パターンを加熱して、前記ネガ型感光性樹脂組成物の硬化パターンを得る工程、を有する、有機ELディスプレイの製造方法。
【請求項16】
前記フォトマスクが、透光部及び遮光部を含むパターンを有するフォトマスクであって、前記透光部と前記遮光部の間に、透過率が透光部の値より低く、かつ透過率が遮光部の値より高い、半透光部を有するハーフトーンフォトマスクであって、
前記ネガ型感光性樹脂組成物のパターンが、段差形状を有するパターンであって、
さらに、前記(3)アルカリ溶液を用いて現像し、前記ネガ型感光性樹脂組成物のパターンを形成する工程の後、(3b)前記ネガ型感光性樹脂組成物のパターンを光硬化させる工程、を有する、請求項15に記載の有機ELディスプレイの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネガ型感光性樹脂組成物及びそれを用いた硬化膜、素子、有機ELディスプレイ及び表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、タブレットPC及びテレビなど、薄型ディスプレイを有する表示装置において、有機エレクトロルミネッセンス(以下、「EL」)ディスプレイを用いた製品が多く開発されている。
【0003】
一般に、有機ELディスプレイは、発光素子の光取り出し側に酸化インジウムスズ(以下、「ITO」)などの透明電極を有し、発光素子の光取り出しでない側にマグネシウムと銀の合金などの金属電極を有する。また、発光素子の画素間を分割するため、透明電極と金属電極との層間に画素分割層という絶縁層が形成される。画素分割層を形成した後、画素領域に相当する、画素分割層が開口して下地である透明電極又は金属電極が露出した領域に、蒸着マスクを介して発光材料を蒸着によって成膜し、発光層が形成される。透明電極及び金属電極は、スパッタによって成膜されるのが一般的であるが、成膜された透明電極又は金属電極が断線するのを防ぐため、画素分割層には低テーパーのパターン形状が要求される。
【0004】
有機ELディスプレイは、陰極から注入された電子と、陽極から注入された正孔と、の再結合によるエネルギーを用いて発光する自発光素子を有する。そのため、電子又は正孔の移動を阻害する物質、及び電子と正孔の再結合を阻害するエネルギー準位を形成する物質などが存在すると、発光素子の発光効率の低下又は発光材料の失活などの影響を及ぼすため、発光素子の寿命低下に繋がる。画素分割層は、発光素子に隣接する位置に形成されるため、画素分割層からの脱ガスやイオン成分の流出は、有機ELディスプレイの寿命低下の一因と成り得る。そのため、画素分割層には高耐熱性が要求される。高耐熱性を有する感光性樹脂組成物としては、高耐熱性のポリシロキサン、及び、高耐熱性のフルオレン骨格を含有するラジカル重合性化合物を用いたネガ型感光性樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような感光性樹脂組成物を用いることで、低テーパー形状のパターンを有する、高耐熱性の画素分割層を形成することができる。
【0005】
また、有機ELディスプレイは自発光素子を有するため、屋外における太陽光などの外光が入射すると、その外光反射によって視認性及びコントラストが低下する。そのため、外光反射を低減する技術が要求される。
【0006】
外光を遮断して外光反射を低減する技術としては、アルカリ可溶性ポリイミドと着色剤を含有する感光性樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献2参照)。すなわち、ポリイミド、及び、顔料などの着色剤を含有する感光性樹脂組成物を用いて、高耐熱性及び遮光性を有する画素分割層を形成することで、外光反射を低減するという手法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】日本国特開2014-197171号公報
【文献】国際公開第2016/158672号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、感光性樹脂組成物に遮光性を付与させるために顔料などの着色剤を含有させる場合、着色剤の含有量を増加させるに従って、パターン露光時の紫外線等も遮断されるため、露光時の感度が低下してしまう。従って、従来知られていた着色剤を含有する感光性樹脂組成物は、何れも、有機ELディスプレイの画素分割層を形成する材料として使用するには特性が不十分であった。具体的には、感度、遮光性又は低テーパー形状のパターン加工性のいずれかが不足していた。
【0009】
例えば、感光性樹脂組成物の遮光性を向上させる場合、パターン露光時に膜深部の硬化が不足するため、現像時に膜深部がサイドエッチングされてしまう。そのため、現像後に逆テーパー形状となってしまい、低テーパー形状のパターン形成を阻害する要因となる。一方、膜深部まで十分に硬化させるには、パターン露光時の露光量を高くしてUV硬化を促進する必要がある。しかしながら、露光量が高くなるとUV硬化時に膜が過剰に架橋し、熱硬化時のリフロー性が低下するため、高テーパー形状のパターンが形成されてしまう。従って、例えば、特許文献2に記載の、アルカリ可溶性ポリイミド、及び、顔料などの着色剤を含有する感光性樹脂組成物では、感度、遮光性及び低テーパー形状のパターン形成、などの特性を兼ね備えることが困難であるという課題があった。
【0010】
さらに、現像後に高テーパー形状のパターンを形成し、熱硬化時のリフローによって低テーパー形状のパターンを形成する場合、熱硬化時にパターン裾もリフローしてしまう。そのため、現像後のパターン開口寸法幅と比較して、熱硬化後のパターン開口寸法幅が小さくなるため、有機ELディスプレイなどの表示装置の画素設計等に誤差が生ずる要因となる。また、熱硬化時のリフローによるパターン開口寸法幅のバラつきが、パネル製造歩留まり低下の要因となる。従って、低テーパー形状のパターン形成と、熱硬化前後におけるパターン開口寸法幅変化抑制との両立が困難であるという課題もあった。
【0011】
そこで本発明は、高感度であり、現像後及び熱硬化後に低テーパー形状のパターンを形成することができ、熱硬化前後におけるパターン開口寸法幅変化抑制が可能であって、遮光性に優れた硬化膜を得ることが可能なネガ型感光性樹脂組成物を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)ラジカル重合性化合物、(C1)光重合開始剤及び(Da)黒色剤を含有するネガ型感光性樹脂組成物であって、
前記(A)アルカリ可溶性樹脂が、(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール、(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体及び(A1-5)ポリシロキサンからなる群より選ばれる一種類以上を含む(A1)第1の樹脂を含有し、
前記(B)ラジカル重合性化合物が、(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物及び(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物からなる群より選ばれる一種類以上を含有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物によれば、高感度であり、現像後及び熱硬化後に低テーパー形状のパターンを形成することができ、熱硬化前後におけるパターン開口寸法幅変化抑制が可能であって、遮光性に優れた硬化膜を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1(1)~(7)は、本発明のネガ型感光性樹脂組成物の硬化膜を用いた有機ELディスプレイの製造プロセスを模式的断面で例示する工程図である。
図2図2(1)~(13)は、本発明のネガ型感光性樹脂組成物の硬化膜を用いた液晶ディスプレイの製造プロセスを模式的断面で例示する工程図である。
図3図3は、段差形状を有する硬化パターンの断面の一例を示す断面図である。
図4図4(1)~(4)は、発光特性評価に用いた有機ELディスプレイの概略図である。
図5図5は、偏光層を有しない有機ELディスプレイの模式的断面を例示する概略図である。
図6図6は、ハーフトーン特性評価に用いたハーフトーンフォトマスクの、透光部、遮光部及び半透光部の配置、並びに、寸法を例示する概略図である。
図7図7は、本発明のネガ型感光性樹脂組成物にて、ハーフトーンフォトマスクを用いて形成した、熱硬化後の段差形状を有するパターンの観察画像である。
図8図8は、本発明のネガ型感光性樹脂組成物にて、ハーフトーンフォトマスクを用いて形成した、光硬化させ、さらに、熱硬化させた後の段差形状を有するパターンの観察画像である。
図9図9は、発光特性評価に用いた有機ELディスプレイの、開口部、厚膜部及び薄膜部の配置、並びに、寸法を例示する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)ラジカル重合性化合物、(C1)光重合開始剤及び(Da)黒色剤を含有するネガ型感光性樹脂組成物であって、
前記(A)アルカリ可溶性樹脂が、(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール、(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体及び(A1-5)ポリシロキサンからなる群より選ばれる一種類以上を含む(A1)第1の樹脂を含有し、
前記(B)ラジカル重合性化合物が、(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物及び(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物からなる群より選ばれる一種類以上を含有する。
【0016】
<(A1)第1の樹脂>
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性樹脂として、少なくとも(A1)第1の樹脂を含有する。(A1)第1の樹脂として、(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール、(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体及び(A1-5)ポリシロキサンから選ばれる一種類以上を含有する。
本発明において、(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール、(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体及び(A1-5)ポリシロキサンは、単一の樹脂又はそれらの共重合体のいずれであっても構わない。
【0017】
<(A1-1)ポリイミド及び(A1-2)ポリイミド前駆体>
(A1-2)ポリイミド前駆体としては、例えば、テトラカルボン酸、対応するテトラカルボン酸二無水物又はテトラカルボン酸ジエステル二塩化物などと、ジアミン、対応するジイソシアネート化合物又はトリメチルシリル化ジアミンなどと、を反応させることによって得られるものが挙げられ、テトラカルボン酸及び/又はその誘導体残基と、ジアミン及び/又はその誘導体残基を有する。(A1-2)ポリイミド前駆体としては、例えば、ポリアミド酸、ポリアミド酸エステル、ポリアミド酸アミド又はポリイソイミドが挙げられる。
【0018】
(A1-1)ポリイミドとしては、例えば、上記のポリアミド酸、ポリアミド酸エステル、ポリアミド酸アミド又はポリイソイミドを、加熱又は酸若しくは塩基などを用いた反応により、脱水閉環させることによって得られるものが挙げられ、テトラカルボン酸及び/又はその誘導体残基と、ジアミン及び/又はその誘導体残基を有する。
【0019】
(A1-2)ポリイミド前駆体は、熱硬化性樹脂であり、高温で熱硬化させて脱水閉環させることで高耐熱性のイミド結合が形成され、(A1-1)ポリイミドが得られる。従って、高耐熱性のイミド結合を有する(A1-1)ポリイミドをネガ型感光性樹脂組成物に含有させることで、得られる硬化膜の耐熱性を著しく向上させることができる。そのため、硬化膜を高耐熱性が要求される用途に用いる場合などに好適である。また、(A1-2)ポリイミド前駆体は、脱水閉環後に耐熱性が向上する樹脂であるため、脱水閉環前の前駆体構造の特性と硬化膜の耐熱性を両立させたい用途に用いる場合などに好適である。
【0020】
また、(A1-1)ポリイミド及び(A1-2)ポリイミド前駆体は、極性を有する結合として、イミド結合及び/又はアミド結合を有する。そのため、後述する(D)着色剤として、特に(D1)顔料を含有させる場合、これらの極性を有する結合は(D1)顔料と強く相互作用するため、(D1)顔料の分散安定性を向上させることができる。
【0021】
本発明に用いられる(A1-1)ポリイミドとしては、硬化膜の耐熱性向上の観点から、下記一般式(1)で表される構造単位を含有することが好ましい。
【化1】
一般式(1)において、Rは、4~10価の有機基を表し、Rは、2~10価の有機基を表す。R及びRは、それぞれ独立して、フェノール性水酸基、スルホン酸基、メルカプト基又は一般式(5)若しくは一般式(6)で表される置換基を表す。pは、0~6の整数を表し、qは、0~8の整数を表す。
【0022】
一般式(1)のRは、テトラカルボン酸及び/又はその誘導体残基を表し、Rは、ジアミン及び/又はその誘導体残基を表す。テトラカルボン酸誘導体としては、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸二塩化物又はテトラカルボン酸活性ジエステルが挙げられる。ジアミン誘導体としては、ジイソシアネート化合物又はトリメチルシリル化ジアミンが挙げられる。
【0023】
一般式(1)において、Rは、炭素数2~20の脂肪族構造、炭素数4~20の脂環式構造及び炭素数6~30の芳香族構造から選ばれる一種類以上を有する4~10価の有機基が好ましい。また、Rは、炭素数2~20の脂肪族構造、炭素数4~20の脂環式構造及び炭素数6~30の芳香族構造から選ばれる一種類以上を有する2~10価の有機基が好ましい。qは、1~8が好ましい。上記の脂肪族構造、脂環式構造及び芳香族構造は、ヘテロ原子を有してもよく、無置換体又は置換体のいずれであっても構わない。
【0024】
【化2】
一般式(5)及び(6)において、R19~R21は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~6のアシル基又は炭素数6~15のアリール基を表す。一般式(5)及び(6)において、R19~R21は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~4のアシル基又は炭素数6~10のアリール基が好ましい。上記のアルキル基、アシル基及びアリール基は、無置換体又は置換体のいずれであっても構わない。
【0025】
(A1-1)ポリイミドとしては、一般式(1)で表される構造単位を主成分として含有することが好ましく、(A1-1)ポリイミド中の全構造単位に占める、一般式(1)で表される構造単位の含有比率は、50~100mol%が好ましく、60~100mol%がより好ましく、70~100mol%がさらに好ましい。含有比率が50~100mol%であると、硬化膜の耐熱性を向上させることができる。
【0026】
本発明に用いられる(A1-2)ポリイミド前駆体としては、硬化膜の耐熱性向上及び現像後の解像度向上の観点から、下記一般式(3)で表される構造単位を含有することが好ましい。
【0027】
【化3】
一般式(3)において、Rは、4~10価の有機基を表し、R10は、2~10価の有機基を表す。R11は、前記一般式(5)又は一般式(6)で表される置換基を表し、R12は、フェノール性水酸基、スルホン酸基又はメルカプト基を表し、R13は、フェノール性水酸基、スルホン酸基、メルカプト基又は前記一般式(5)若しくは一般式(6)で表される置換基を表す。tは、2~8の整数を表し、uは、0~6の整数を表し、vは、0~8の整数を表し、2≦t+u≦8である。
【0028】
一般式(3)のRは、テトラカルボン酸及び/又はその誘導体残基を表し、R10は、ジアミン及び/又はその誘導体残基を表す。テトラカルボン酸誘導体としては、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸二塩化物又はテトラカルボン酸活性ジエステルが挙げられる。ジアミン誘導体としては、ジイソシアネート化合物又はトリメチルシリル化ジアミンが挙げられる。
【0029】
一般式(3)において、Rは、炭素数2~20の脂肪族構造、炭素数4~20の脂環式構造及び炭素数6~30の芳香族構造から選ばれる一種類以上を有する4~10価の有機基が好ましい。また、R10は、炭素数2~20の脂肪族構造、炭素数4~20の脂環式構造及び炭素数6~30の芳香族構造から選ばれる一種類以上を有する2~10価の有機基が好ましい。vは、1~8が好ましい。上記の脂肪族構造、脂環式構造及び芳香族構造は、ヘテロ原子を有してもよく、無置換体又は置換体のいずれであっても構わない。
【0030】
(A1-2)ポリイミド前駆体としては、一般式(3)で表される構造単位を主成分として含有することが好ましく、(A1-2)ポリイミド前駆体中の全構造単位に占める、一般式(3)で表される構造単位の含有比率は、50~100mol%が好ましく、60~100mol%がより好ましく、70~100mol%がさらに好ましい。含有比率が50~100mol%であると、解像度を向上させることができる。
【0031】
<(A1-3)ポリベンゾオキサゾール及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体>
(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体としては、例えば、ジカルボン酸、対応するジカルボン酸二塩化物又はジカルボン酸活性ジエステルなどと、ジアミンとしてビスアミノフェノール化合物などと、を反応させることによって得られるものが挙げられ、ジカルボン酸及び/又はその誘導体残基と、ビスアミノフェノール化合物及び/又はその誘導体残基を有する。(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体としては、例えば、ポリヒドロキシアミドが挙げられる。
【0032】
(A1-3)ポリベンゾオキサゾールとしては、例えば、ジカルボン酸と、ジアミンとしてビスアミノフェノール化合物とを、ポリリン酸を用いた反応により、脱水閉環させることによって得られるものや、上記のポリヒドロキシアミドを、加熱又は無水リン酸、塩基若しくはカルボジイミド化合物などを用いた反応により、脱水閉環させることによって得られるものが挙げられ、ジカルボン酸及び/又はその誘導体残基と、ビスアミノフェノール化合物及び/又はその誘導体残基を有する。
【0033】
(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体は、熱硬化性樹脂であり、高温で熱硬化させて脱水閉環させることで高耐熱性かつ剛直なベンゾオキサゾール環が形成され、(A1-3)ポリベンゾオキサゾールが得られる。従って、高耐熱性かつ剛直なベンゾオキサゾール環を有する(A1-3)ポリベンゾオキサゾールをネガ型感光性樹脂組成物に含有させることで、得られる硬化膜の耐熱性を著しく向上させることができる。そのため、硬化膜を高耐熱性が要求される用途に用いる場合などに好適である。また、(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体は、脱水閉環後に耐熱性が向上する樹脂であるため、脱水閉環前の前駆体構造の特性と硬化膜の耐熱性を両立させたい用途に用いる場合などに好適である。
【0034】
また、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体は、極性を有する結合として、オキサゾール結合及び/又はアミド結合を有する。そのため、後述する(D)着色剤として、特に(D1)顔料を含有させる場合、これらの極性を有する結合は(D1)顔料と強く相互作用するため、(D1)顔料の分散安定性を向上させることができる。
【0035】
本発明に用いられる(A1-3)ポリベンゾオキサゾールとしては、硬化膜の耐熱性向上の観点から、一般式(2)で表される構造単位を含有することが好ましい。
【0036】
【化4】
一般式(2)において、Rは、2~10価の有機基を表し、Rは、芳香族構造を有する4~10価の有機基を表す。R及びRは、それぞれ独立して、フェノール性水酸基、スルホン酸基、メルカプト基又は前記一般式(5)若しくは一般式(6)で表される置換基を表す。rは、0~8の整数を表し、sは、0~6の整数を表す。
【0037】
一般式(2)のRは、ジカルボン酸及び/又はその誘導体残基を表し、Rは、ビスアミノフェノール化合物及び/又はその誘導体残基を表す。ジカルボン酸誘導体としては、ジカルボン酸無水物、ジカルボン酸塩化物、ジカルボン酸活性エステル、トリカルボン酸無水物、トリカルボン酸塩化物、トリカルボン酸活性エステル、ジホルミル化合物が挙げられる。
【0038】
一般式(2)において、Rは、炭素数2~20の脂肪族構造、炭素数4~20の脂環式構造及び炭素数6~30の芳香族構造から選ばれる一種類以上を有する2~10価の有機基が好ましい。また、Rは、炭素数6~30の芳香族構造を有する4~10価の有機基が好ましい。sは、1~8が好ましい。上記の脂肪族構造、脂環式構造及び芳香族構造は、ヘテロ原子を有してもよく、無置換体又は置換体のいずれであっても構わない。
【0039】
(A1-3)ポリベンゾオキサゾールとしては、一般式(2)で表される構造単位を主成分として含有することが好ましく、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール中の全構造単位に占める、一般式(2)で表される構造単位の含有比率は、50~100mol%が好ましく、60~100mol%がより好ましく、70~100mol%がさらに好ましい。含有比率が50~100mol%であると、硬化膜の耐熱性を向上させることができる。
【0040】
本発明に用いられる(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体としては、硬化膜の耐熱性向上及び現像後の解像度向上の観点から、一般式(4)で表される構造単位を含有することが好ましい。
【0041】
【化5】
一般式(4)において、R14は、2~10価の有機基を表し、R15は、芳香族構造を有する4~10価の有機基を表す。R16は、フェノール性水酸基、スルホン酸基、メルカプト基又は前記一般式(5)若しくは一般式(6)で表される置換基を表し、R17は、フェノール性水酸基を表し、R18は、スルホン酸基、メルカプト基又は前記一般式(5)若しくは一般式(6)で表される置換基を表す。wは、0~8の整数を表し、xは、2~8の整数を表し、yは、0~6の整数を表し、2≦x+y≦8である。
【0042】
一般式(4)のR14は、ジカルボン酸及び/又はその誘導体残基を表し、R15は、ビスアミノフェノール化合物及び/又はその誘導体残基を表す。ジカルボン酸誘導体としては、ジカルボン酸無水物、ジカルボン酸塩化物、ジカルボン酸活性エステル、トリカルボン酸無水物、トリカルボン酸塩化物、トリカルボン酸活性エステル、ジホルミル化合物が挙げられる。
【0043】
一般式(4)において、R14は、炭素数2~20の脂肪族構造、炭素数4~20の脂環式構造及び炭素数6~30の芳香族構造から選ばれる一種類以上を有する2~10価の有機基が好ましい。また、R15は、炭素数6~30の芳香族構造を有する4~10価の有機基が好ましい。上記の脂肪族構造、脂環式構造及び芳香族構造は、ヘテロ原子を有してもよく、無置換体又は置換体のいずれであっても構わない。
【0044】
(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体としては、一般式(4)で表される構造単位を主成分として含有することが好ましく、(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体中の全構造単位に占める、一般式(4)で表される構造単位の含有比率は、50~100mol%が好ましく、60~100mol%がより好ましく、70~100mol%がさらに好ましい。含有比率が50~100mol%であると、解像度を向上させることができる。
【0045】
<テトラカルボン酸及びジカルボン酸並びにそれらの誘導体>
テトラカルボン酸としては、例えば、芳香族テトラカルボン酸、脂環式テトラカルボン酸又は脂肪族テトラカルボン酸が挙げられる。これらのテトラカルボン酸は、カルボキシ基の酸素原子以外にヘテロ原子を有してもよい。
【0046】
芳香族テトラカルボン酸及びその誘導体としては、例えば、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリット酸)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸若しくは3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸、N,N’-ビス[5,5’-ヘキサフルオロプロパン-2,2-ジイル-ビス(2-ヒドロキシフェニル)]ビス(3,4-ジカルボキシ安息香酸アミド)、又は、それらのテトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸二塩化物若しくはテトラカルボン酸活性ジエステルが挙げられる。
【0047】
脂環式テトラカルボン酸及びその誘導体としては、例えば、ビシクロ[2.2.2]オクタン-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸若しくは2,3,4,5-テトラヒドロフランテトラカルボン酸、又は、それらのテトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸二塩化物若しくはテトラカルボン酸活性ジエステルが挙げられる。
【0048】
脂肪族テトラカルボン酸及びその誘導体としては、例えば、ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、又は、そのテトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸二塩化物若しくはテトラカルボン酸活性ジエステルが挙げられる。
【0049】
(A1-3)ポリベンゾオキサゾール及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体中のジカルボン酸及びその誘導体としては、トリカルボン酸及び/又はその誘導体を用いても構わない。
【0050】
ジカルボン酸及びトリカルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸、芳香族トリカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、脂環式トリカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸又は脂肪族トリカルボン酸が挙げられる。これらジカルボン酸及びトリカルボン酸は、カルボキシ基の酸素原子以外に、酸素原子以外のヘテロ原子を有してもよい。
【0051】
芳香族ジカルボン酸及びその誘導体としては、例えば、4,4’-ジカルボキシビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジカルボキシビフェニル、4,4’-ベンゾフェノンジカルボン酸、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン若しくは4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル、又は、それらのジカルボン酸無水物、ジカルボン酸塩化物、ジカルボン酸活性エステル若しくはジホルミル化合物が挙げられる。
【0052】
芳香族トリカルボン酸及びその誘導体としては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、2,4,5-ベンゾフェノントリカルボン酸、2,4,4’-ビフェニルトリカルボン酸若しくは3,3’,4’-トリカルボキシジフェニルエーテル、又は、それらのトリカルボン酸無水物、トリカルボン酸塩化物、トリカルボン酸活性エステル若しくはジホルミルモノカルボン酸が挙げられる。
【0053】
脂環式ジカルボン酸及びその誘導体としては、例えば、テトラヒドロフタル酸、3-メチルテトラヒドロフタル酸、4-メチルヘキサヒドロフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸若しくは1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、又は、それらのジカルボン酸無水物、ジカルボン酸塩化物、ジカルボン酸活性エステル若しくはジホルミル化合物が挙げられる。
【0054】
脂環式トリカルボン酸及びその誘導体としては、例えば、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸若しくは1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸、又は、それらのトリカルボン酸無水物、トリカルボン酸塩化物、トリカルボン酸活性エステル若しくはジホルミルモノカルボン酸が挙げられる。
【0055】
脂肪族ジカルボン酸及びその誘導体としては、例えば、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、コハク酸若しくはヘキサン-1,6-ジカルボン酸、又は、それらのジカルボン酸無水物、ジカルボン酸塩化物、ジカルボン酸活性エステル若しくはジホルミル化合物が挙げられる。
【0056】
脂肪族トリカルボン酸及びその誘導体としては、例えば、ヘキサン-1,3,6-トリカルボン酸若しくはプロパン-1,2,3-トリカルボン酸、又は、それらのトリカルボン酸無水物、トリカルボン酸塩化物、トリカルボン酸活性エステル若しくはジホルミルモノカルボン酸が挙げられる。
【0057】
<ジアミン及びその誘導体>
ジアミン及びその誘導体としては、例えば、芳香族ジアミン、ビスアミノフェノール化合物、脂環式ジアミン、脂環式ジヒドロキシジアミン、脂肪族ジアミン又は脂肪族ジヒドロキシジアミンが挙げられる。これらジアミン及びその誘導体は、アミノ基及びその誘導体が有する窒素原子、酸素原子以外に、ヘテロ原子を有してもよい。
【0058】
芳香族ジアミン及びビスアミノフェノール化合物並びにそれらの誘導体としては、例えば、p-フェニレンジアミン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジアミノ-4,4’-ビフェノール、1,5-ナフタレンジアミン、9,9-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)エーテル、3-スルホン酸-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、ジメルカプトフェニレンジアミン若しくはN,N’-ビス[5,5’-ヘキサフルオロプロパン-2,2-ジイル-ビス(2-ヒドロキシフェニル)]ビス(3-アミノ安息香酸アミド)、又は、それらのジイソシアネート化合物若しくはトリメチルシリル化ジアミンが挙げられる。
【0059】
脂環式ジアミン及び脂環式ジヒドロキシジアミン並びにそれらの誘導体としては、例えば、1,4-シクロヘキサンジアミン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、3,6-ジヒドロキシ-1,2-シクロヘキサンジアミン若しくはビス(3-ヒドロキシ-4-アミノシクロヘキシル)メタン、又は、それらのジイソシアネート化合物若しくはトリメチルシリル化ジアミンが挙げられる。
【0060】
脂肪族ジアミン及び脂肪族ジヒドロキシジアミン並びにそれらの誘導体としては、例えば、1,6-ヘキサメチレンジアミン若しくは2,5-ジヒドロキシ-1,6-ヘキサメチレンジアミン、又は、それらのジイソシアネート化合物若しくはトリメチルシリル化ジアミンが挙げられる。
【0061】
<フッ素原子を有する構造単位>
(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体から選ばれる一種類以上は、フッ素原子を有する構造単位を含有することが好ましい。
【0062】
(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体から選ばれる一種類以上が、フッ素原子を有する構造単位を含有することで、透明性が向上し、露光時の感度を向上させることができる。また、膜表面に撥水性を付与することができ、アルカリ現像時における膜表面からの浸み込みを抑制することができる。ここでいう露光とは、活性化学線(放射線)の照射のことであり、例えば、可視光線、紫外線、電子線又はX線などの照射が挙げられる。一般的に使用されている光源であるという観点から、例えば、可視光線や紫外線の照射が可能な超高圧水銀灯光源が好ましく、j線(波長313nm)、i線(波長365nm)、h線(波長405nm)又はg線(波長436nm)の照射がより好ましい。以降、露光とは、活性化学線(放射線)の照射をいう。
【0063】
また、一般に、(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール及び/又は(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体を用いる場合、これらの樹脂を溶解させるために用いられる、後述する溶剤としては、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド又はγ-ブチロラクトンなどの高極性溶剤を用いる必要がある。しかしながら、後述する(D)着色剤として、特に(D1)顔料を含有させる場合、これらの高極性溶剤は(D1)顔料と強く相互作用するため、(A1)第1の樹脂、後述する(A2)第2の樹脂又は後述する(E)分散剤による分散安定性向上の効果が不十分となる場合がある。
【0064】
(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体から選ばれる一種類以上がフッ素原子を有する構造単位を含有することで、溶剤に対する溶解性を向上させることができる。そのため、前述した高極性溶剤の含有量の低減、又は、高極性溶剤を用いずにこれらの樹脂の溶解が可能となり、(D1)顔料の分散安定性を向上させることができる。
【0065】
(A1-1)ポリイミド及び/又は(A1-2)ポリイミド前駆体が含有する、フッ素原子を有する構造単位としては、フッ素原子を有するテトラカルボン酸及び/又はその誘導体に由来する構造単位、又は、フッ素原子を有するジアミン及び/又はその誘導体に由来する構造単位が挙げられる。
【0066】
(A1-3)ポリベンゾオキサゾール及び/又は(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体が含有する、フッ素原子を有する構造単位としては、フッ素原子を有するジカルボン酸及び/又はその誘導体に由来する構造単位、又は、フッ素原子を有するビスアミノフェノール化合物及び/又はその誘導体に由来する構造単位が挙げられる。
【0067】
(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体から選ばれる一種類以上の樹脂における、全構造単位に占める、フッ素原子を有する構造単位の含有比率は、30~100mol%が好ましい。フッ素原子を有する構造単位の含有比率は、50mol%以上がより好ましく、70mol%以上がさらに好ましい。含有比率が30~100mol%であると、露光時の感度を向上させることができる。
【0068】
(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体から選ばれる一種類以上の樹脂における、全カルボン酸及びその誘導体に由来する構造単位に占める、フッ素原子を有するテトラカルボン酸、フッ素原子を有するテトラカルボン酸誘導体、フッ素原子を有するジカルボン酸及びフッ素原子を有するジカルボン酸誘導体から選ばれる一種類以上に由来する構造単位の含有比率は、30~100mol%が好ましい。フッ素原子を有する構造単位の含有比率は、50mol%以上がより好ましく、70mol%以上がさらに好ましい。含有比率が30~100mol%であると、露光時の感度を向上させることができる。
【0069】
(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体から選ばれる一種類以上の樹脂における、全アミン及びその誘導体に由来する構造単位に占める、フッ素原子を有するジアミン、フッ素原子を有するジアミン誘導体、フッ素原子を有するビスアミノフェノール化合物及びフッ素原子を有するビスアミノフェノール化合物誘導体から選ばれる一種類以上に由来する構造単位の含有比率は、30~100mol%が好ましい。フッ素原子を有する構造単位の含有比率は、50mol%以上がより好ましく、70mol%以上がさらに好ましい。含有比率が30~100mol%であると、露光時の感度を向上させることができる。
【0070】
<芳香族カルボン酸及びその誘導体に由来する構造単位>
(A1-1)ポリイミド及び/又は(A1-2)ポリイミド前駆体は、芳香族カルボン酸及び/又はその誘導体に由来する構造単位を含有することが好ましい。(A1-1)ポリイミド及び/又は(A1-2)ポリイミド前駆体が、芳香族カルボン酸及び/又はその誘導体に由来する構造単位を含有することで、芳香族基の耐熱性により、硬化膜の耐熱性を向上させることができる。芳香族カルボン酸及びその誘導体としては、芳香族テトラカルボン酸及び/又はその誘導体が好ましい。
【0071】
(A1-1)ポリイミド及び/又は(A1-2)ポリイミド前駆体における、全カルボン酸及びその誘導体に由来する構造単位に占める、芳香族カルボン酸及び/又はその誘導体に由来する構造単位の含有比率は、50~100mol%が好ましく、60~100mol%がより好ましく、70~100mol%がさらに好ましい。含有比率が50~100mol%であると、硬化膜の耐熱性を向上させることができる。
【0072】
(A1-3)ポリベンゾオキサゾール及び/又は(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体は、芳香族カルボン酸及び/又はその誘導体に由来する構造単位を含有することが好ましい。(A1-3)ポリベンゾオキサゾール及び/又は(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体が、芳香族カルボン酸及び/又はその誘導体に由来する構造単位を含有することで、芳香族基の耐熱性により、硬化膜の耐熱性を向上させることができる。芳香族カルボン酸及びその誘導体としては、芳香族ジカルボン酸若しくは芳香族トリカルボン酸及び/又はそれらの誘導体が好ましく、芳香族ジカルボン酸及び/又はその誘導体がより好ましい。
【0073】
(A1-3)ポリベンゾオキサゾール及び/又は(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体における、全カルボン酸及びその誘導体に由来する構造単位に占める、芳香族カルボン酸及び/又はその誘導体に由来する構造単位の含有比率は、50~100mol%が好ましく、60~100mol%がより好ましく、70~100mol%がさらに好ましい。含有比率が50~100mol%であると、硬化膜の耐熱性を向上させることができる。
【0074】
<芳香族アミン及びその誘導体に由来する構造単位>
(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体から選ばれる一種類以上は、芳香族アミン及び/又はその誘導体に由来する構造単位を含有することが好ましい。(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体から選ばれる一種類以上が、芳香族アミン及び/又はその誘導体に由来する構造単位を含有することで、芳香族基の耐熱性により、硬化膜の耐熱性を向上させることができる。芳香族アミン及びその誘導体としては、芳香族ジアミン、ビスアミノフェノール化合物、芳香族トリアミン若しくはトリスアミノフェノール化合物、及び/又は、それらの誘導体が好ましく、芳香族ジアミン若しくはビスアミノフェノール化合物及び/又はそれらの誘導体がより好ましい。
【0075】
(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体から選ばれる一種類以上の樹脂における、全アミン及びその誘導体に由来する構造単位に占める、芳香族アミン及び/又はその誘導体に由来する構造単位の含有比率は、50~100mol%が好ましく、60~100mol%がより好ましく、70~100mol%がさらに好ましい。含有比率が50~100mol%であると、硬化膜の耐熱性を向上させることができる。
【0076】
<シリル基又はシロキサン結合を有するジアミン及びその誘導体に由来する構造単位>
(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体から選ばれる一種類以上は、シリル基又はシロキサン結合を有するジアミン及び/又はその誘導体に由来する構造単位を含有することが好ましい。(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体から選ばれる一種類以上が、シリル基又はシロキサン結合を有するジアミン及び/又はその誘導体に由来する構造単位を含有することで、ネガ型感光性樹脂組成物の硬化膜と下地の基板界面における相互作用が増大し、下地の基板との密着性及び硬化膜の耐薬品性を向上させることができる。
【0077】
<オキシアルキレン構造を有するアミン及びその誘導体に由来する構造単位>
(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体から選ばれる一種類以上は、オキシアルキレン構造を有するアミン及び/又はその誘導体に由来する構造単位を含有することが好ましい。(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体から選ばれる一種類以上が、オキシアルキレン構造を有するアミン及び/又はその誘導体に由来する構造単位を含有することで、低テーパーのパターン形状の硬化膜を得ることができるとともに、硬化膜の機械特性及びアルカリ現像液でのパターン加工性を向上させることができる。
【0078】
<末端封止剤>
(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体から選ばれる一種類以上は、樹脂の末端が、モノアミン、ジカルボン酸無水物、モノカルボン酸、モノカルボン酸塩化物又はモノカルボン酸活性エステルなどの末端封止剤で封止されていても構わない。樹脂の末端が、末端封止剤で封止されることで、(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体から選ばれる一種類以上を含有する樹脂組成物の塗液の保管安定性を向上させることができる。
【0079】
(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール及び/又は(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体に占める、各種カルボン酸若しくはアミン及びそれらの誘導体に由来する構造単位の含有比率は、H-NMR、13C-NMR、15N-NMR、IR、TOF-MS、元素分析法及び灰分測定などを組み合わせて求めることができる。
【0080】
<エチレン性不飽和二重結合基の導入>
(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体から選ばれる一種類以上は、エチレン性不飽和二重結合基を有することが好ましい。エチレン性不飽和二重結合基を導入する反応により、これらの樹脂の側鎖に、エチレン性不飽和二重結合基を導入したものも好ましい。エチレン性不飽和二重結合基を有することで、現像後に低テーパー形状のパターンを形成することができる。加えて、熱硬化時における硬化膜の段差部位でのリフロー性制御による、段差形状保持が可能となることから、ハーフトーン特性を向上させることができる。
【0081】
(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体から選ばれる一種類以上は、それらが有する一部のフェノール性水酸基及び/又はカルボキシ基を、エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物と反応させて得られるものも好ましい。上述した反応により、樹脂の側鎖に、エチレン性不飽和二重結合基を導入することが可能となる。
【0082】
エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物としては、反応性の観点から、エチレン性不飽和二重結合基を有する求電子性化合物が好ましい。求電子性化合物としては、例えば、イソシアネート化合物、イソチオシアネート化合物、エポキシ化合物、アルデヒド化合物、チオアルデヒド化合物、ケトン化合物、チオケトン化合物、アセテート化合物、カルボン酸塩化物、カルボン酸無水物、カルボン酸活性エステル化合物、カルボン酸化合物、ハロゲン化アルキル化合物、アジ化アルキル化合物、トリフラートアルキル化合物、メシラートアルキル化合物、トシラートアルキル化合物又はシアン化アルキル化合物が挙げられるが、反応性及び化合物の利用性の観点から、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アルデヒド化合物、ケトン化合物又はカルボン酸無水物が好ましく、イソシアネート化合物又はエポキシ化合物がより好ましい。
【0083】
(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体から選ばれる一種類以上は、エチレン性不飽和二重結合基を有する基として、一般式(63)で表される基、一般式(64)で表される基、一般式(65)で表される基、一般式(66)で表される基、及び、一般式(67)で表される基から選ばれる一種類以上を有することが好ましい。
【0084】
【化6】
【0085】
一般式(63)、(64)、(65)、(66)及び(67)において、X41~X45は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン鎖、炭素数4~10のシクロアルキレン鎖又は炭素数6~15のアリーレン鎖を表す。X46は、直接結合又は炭素数1~10のアルキレン鎖を表す。R231~R252は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数6~15のアリール基を表す。a、b、c、d及びeは、それぞれ独立して、0又は1を表す。一般式(63)、(64)、(65)、(66)及び(67)において、R237、R240、R243、R246、R249及びR252は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1~4のアルキル基が好ましく、水素又はメチル基がより好ましい。R235、R236、R238、R239、R241、R242、R244、R245、R247、R248、R250及びR251は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1~4のアルキル基が好ましく、水素がより好ましい。上記のアルキレン鎖、シクロアルキレン鎖、アリーレン鎖、アルキル基及びアリール基は、無置換体又は置換体のいずれであっても構わない。
【0086】
(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体から選ばれる一種類以上の樹脂の二重結合当量としては、250g/mol以上が好ましく、300g/mol以上がより好ましく、350g/mol以上がさらに好ましい。二重結合当量が上記範囲内であると、ハーフトーン特性及び下地の基板との密着性を向上させることができる。一方、(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体から選ばれる一種類以上の樹脂の二重結合当量としては、5,000g/mol以下が好ましく、2,000g/mol以下がより好ましく、1,500g/mol以下がさらに好ましい。二重結合当量が上記範囲内であると、露光時の感度を向上させることができる。
【0087】
ここでいう二重結合当量とは、エチレン性不飽和二重結合基1mol当たりの樹脂質量をいい、単位はg/molである。二重結合当量の値から、樹脂中のエチレン性不飽和二重結合基の数を求めることができる。二重結合当量は、ヨウ素価から算出することができる。ここでいうヨウ素価とは、樹脂100g当たりと反応するハロゲンの量をヨウ素の質量に換算した値をいい、単位はgI/100gである。樹脂100gを一塩化ヨウ素と反応させた後、ヨウ化カリウム水溶液で未反応ヨウ素を捕捉し、未反応ヨウ素を、チオ硫酸ナトリウム水溶液を用いて滴定することで求めることができる。
【0088】
<(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール及び/又は(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体の物性>
(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体から選ばれる一種類以上の樹脂における、構造単位の繰り返し数nは、5以上が好ましく、10以上がより好ましく、15以上がさらに好ましい。繰り返し数nが5以上であると、現像後の解像度を向上させることができる。一方、繰り返し数nは、1,000以下が好ましく、500以下がより好ましく、100以下がさらに好ましい。繰り返し数nが1,000以下であると、塗布時のレベリング性及びアルカリ現像液でのパターン加工性を向上させることができる。
【0089】
(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体から選ばれる一種類以上の重量平均分子量(以下、「Mw」)としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」)で測定されるポリスチレン換算で、1,000以上が好ましく、3,000以上がより好ましく、5,000以上がさらに好ましい。Mwが1,000以上であると、現像後の解像度を向上させることができる。一方、Mwとしては、500,000以下が好ましく、300,000以下がより好ましく、100,000以下がさらに好ましい。Mwが500,000以下であると、塗布時のレベリング性及びアルカリ現像液でのパターン加工性を向上させることができる。
【0090】
また、数平均分子量(以下、「Mn」)としては、GPCで測定されるポリスチレン換算で、1,000以上が好ましく、3,000以上がより好ましく、5,000以上がさらに好ましい。Mnが1,000以上であると、現像後の解像度を向上させることができる。一方、Mnとしては、500,000以下が好ましく、300,000以下がより好ましく、100,000以下がさらに好ましい。Mnが500,000以下であると、塗布時のレベリング性及びアルカリ現像液でのパターン加工性を向上させることができる。
【0091】
(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体のMw及びMnは、GPC、光散乱法又はX線小角散乱法などで、ポリスチレン換算の値として容易に測定することができる。(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体(A1-3)ポリベンゾオキサゾール及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体中の構造単位の繰り返し数nは、構造単位の分子量をM、樹脂の重量平均分子量をMwとすると、n=Mw/Mで求めることができる。
【0092】
(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体から選ばれる一種類以上のアルカリ溶解速度としては、50nm/分以上が好ましく、70nm/分以上がより好ましく、100nm/分以上がさらに好ましい。アルカリ溶解速度が50nm/分以上であると、現像後の解像度を向上させることができる。一方、アルカリ溶解速度としては、12,000nm/分以下が好ましく、10,000nm/分以下がより好ましく、8,000nm/分以下がさらに好ましい。アルカリ溶解速度が12,000nm/分以下であると、アルカリ現像時における膜減りを抑制することができる。
【0093】
ここでいうアルカリ溶解速度とは、樹脂をγ-ブチロラクトンに溶解した溶液をSiウェハ上に塗布した後、120℃で4分間プリベークして膜厚10μm±0.5μmのプリベーク膜を成膜し、該プリベーク膜を23±1℃の2.38質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で60秒間現像し、水で30秒間リンスした後の膜厚減少値をいう。
【0094】
(A1-1)ポリイミド及び(A1-2)ポリイミド前駆体は、公知の方法で合成することができる。例えば、N-メチル-2-ピロリドンなどの極性溶媒中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミン(一部を末端封止剤であるモノアミンに置き換え)と、を80~200℃で反応させる方法、又は、テトラカルボン酸二無水物(一部を末端封止剤であるジカルボン酸無水物、モノカルボン酸、モノカルボン酸塩化物若しくはモノカルボン酸活性エステルに置き換え)とジアミンと、を80~200℃で反応させる方法などが挙げられる。
【0095】
(A1-3)ポリベンゾオキサゾール及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体は、公知の方法で合成できる。例えば、N-メチル-2-ピロリドンなどの極性溶媒中で、ジカルボン酸活性ジエステルとビスアミノフェノール化合物(一部を末端封止剤であるモノアミンに置き換え)と、を80~250℃で反応させる方法、又は、ジカルボン酸活性ジエステル(一部を末端封止剤であるジカルボン酸無水物、モノカルボン酸、モノカルボン酸塩化物若しくはモノカルボン酸活性エステルに置き換え)とビスアミノフェノール化合物と、を80~250℃で反応させる方法などが挙げられる。
【0096】
(A1-1)ポリイミド又は(A1-2)ポリイミド前駆体のイミド環閉環率(イミド化率)は、例えば、以下の方法で容易に求めることができる。まず、樹脂の赤外吸収スペクトルを測定し、ポリイミド構造に起因するイミド結合の吸収ピーク(1780cm-1付近、1377cm-1付近)の存在を確認する。次に、その樹脂を350℃で1時間熱硬化させ、赤外吸収スペクトルを測定する。熱硬化前後での、1780cm-1付近又は1377cm-1付近のピーク強度を比較することによって、熱硬化前の樹脂中のイミド結合の含有量を算出することで、イミド化率を求めることができる。
【0097】
(A1-3)ポリベンゾオキサゾール又は(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体のオキサゾール環閉環率(オキサゾール化率)は、例えば、以下の方法で容易に求めることができる。まず、樹脂の赤外吸収スペクトルを測定し、ポリベンゾオキサゾール構造に起因するオキサゾール結合の吸収ピーク(1574cm-1付近、1557cm-1付近)の存在を確認する。次に、その樹脂を350℃で1時間熱硬化させ、赤外吸収スペクトルを測定する。熱硬化前後での、1574cm-1付近又は1557cm-1付近のピーク強度を比較することによって、熱硬化前の樹脂中のオキサゾール結合の含有量を算出することで、オキサゾール化率を求めることができる。
【0098】
<(A1-5)ポリシロキサン>
本発明に用いられる(A1-5)ポリシロキサンとしては、例えば、三官能オルガノシラン、四官能オルガノシラン、二官能オルガノシラン及び一官能オルガノシランから選ばれる一種類以上を加水分解し、脱水縮合させて得られるポリシロキサンが挙げられる。
【0099】
(A1-5)ポリシロキサンは熱硬化性樹脂であり、高温で熱硬化させて脱水縮合させることで高耐熱性のシロキサン結合(Si-O)が形成される。従って、高耐熱性のシロキサン結合を有する(A1-5)ポリシロキサンをネガ型感光性樹脂組成物に含有させることで、得られる硬化膜の耐熱性を向上させることができる。また、脱水縮合後に耐熱性が向上する樹脂であるため、脱水縮合前の特性と硬化膜の耐熱性を両立させたい用途に用いる場合などに好適である。
【0100】
また、(A1-5)ポリシロキサンは、反応性基として、シラノール基を有する。そのため、後述する(D)着色剤として、特に(D1)顔料を含有させる場合、シラノール基が(D1)顔料の表面と相互作用及び/又は結合することが可能であるとともに、(D1)顔料の表面修飾基と相互作用及び/又は結合することが可能である。従って、(D1)顔料の分散安定性を向上させることができる。
【0101】
<三官能オルガノシラン単位、四官能オルガノシラン単位、二官能オルガノシラン単位及び一官能オルガノシラン単位>
本発明に用いられる(A1-5)ポリシロキサンとしては、硬化膜の耐熱性向上及び現像後の解像度向上の観点から、三官能オルガノシラン単位及び/又は四官能オルガノシラン単位を含有することが好ましい。三官能オルガノシランとしては、一般式(7)で表されるオルガノシラン単位が好ましい。四官能オルガノシラン単位としては、一般式(8)で表されるオルガノシラン単位が好ましい。
【0102】
本発明に用いられる(A1-5)ポリシロキサンとしては、パターン形状の低テーパー化及び硬化膜の機械特性向上の観点から、二官能オルガノシラン単位を含有しても構わない。二官能オルガノシランとしては、一般式(9)で表されるオルガノシラン単位が好ましい。
【0103】
本発明に用いられる(A1-5)ポリシロキサンとしては、樹脂組成物の塗液の保管安定性向上の観点から、一官能オルガノシラン単位を含有しても構わない。一官能オルガノシラン単位としては、一般式(10)で表されるオルガノシラン単位が好ましい。
【0104】
【化7】
一般式(7)~(10)において、R22~R27は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基又はアリール基を表す。一般式(7)~(10)において、R22~R27は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基又は炭素数6~15のアリール基が好ましい。上記のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基及びアリール基は、ヘテロ原子を有してもよく、無置換体又は置換体のいずれであっても構わない。
【0105】
一般式(7)で表されるオルガノシラン単位を有するオルガノシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]プロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(4-アミノフェニル)プロピルトリメトキシシラン、1-(3-トリメトキシシリルプロピル)尿素、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、1,3,5-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌル酸、N-t-ブチル-2-(3-トリメトキシシリルプロピル)コハク酸イミド又はN-t-ブチル-2-(3-トリエトキシシリルプロピル)コハク酸イミドなどの三官能オルガノシランが挙げられる。
【0106】
(A1-5)ポリシロキサンに占める、一般式(7)で表されるオルガノシラン単位の含有比率は、Si原子mol比で50~100mol%が好ましく、60~100mol%がより好ましく、70~100mol%がさらに好ましい。含有比率が50~100mol%であると、硬化膜の耐熱性を向上させることができる。
【0107】
一般式(8)で表されるオルガノシラン単位を有するオルガノシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン若しくはテトラ-n-プロポキシシランなどの四官能オルガノシラン又はメチルシリケート51(扶桑化学工業(株)製)、Mシリケート51(多摩化学工業(株)製)若しくはメチルシリケート51(コルコート(株)製)などのシリケート化合物が挙げられる。
【0108】
(A1-5)ポリシロキサンに占める、一般式(8)で表されるオルガノシラン単位の含有比率は、Si原子mol比で0~40mol%が好ましく、0~30mol%がより好ましく、0~20mol%がさらに好ましい。含有比率が0~40mol%であると、硬化膜の耐熱性及び現像後の解像度を向上させることができる。
【0109】
一般式(9)で表されるオルガノシラン単位を有するオルガノシランとしては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジメトキシジシロキサン又は1,1,3,3-テトラエチル-1,3-ジメトキシジシロキサンなどの二官能オルガノシランが挙げられる。
【0110】
(A1-5)ポリシロキサンに占める、一般式(9)で表されるオルガノシラン単位の含有比率は、Si原子mol比で0~60mol%が好ましく、0~50mol%がより好ましく、0~40mol%がさらに好ましい。含有比率が0~60mol%であると、硬化膜の耐熱性及び現像後の解像度を向上させることができる。
【0111】
一般式(10)で表されるオルガノシラン単位を有するオルガノシランとしては、例えば、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリ-n-プロピルメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)ジメチルメトキシシラン又は(3-グリシドキシプロピル)ジメチルエトキシシランなどの一官能オルガノシランが挙げられる。
【0112】
(A1-5)ポリシロキサンに占める、一般式(10)で表されるオルガノシラン単位の含有比率は、Si原子mol比で0~20mol%が好ましく、0~10mol%がより好ましく、0~5mol%がさらに好ましい。含有比率が0~20mol%であると、硬化膜の耐熱性を向上させることができる。
【0113】
本発明に用いられる(A1-5)ポリシロキサンとしては、一般式(7a)で表されるオルガノシラン、一般式(8a)で表されるオルガノシラン、一般式(9a)で表されるオルガノシラン及び一般式(10a)で表されるオルガノシランから選ばれる一種類以上を加水分解し、脱水縮合させて得られる(A1-5)ポリシロキサンであることが好ましい。
【0114】
【化8】
一般式(7a)~(10a)において、R22~R27は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基又はアリール基を表し、R115~R124は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、アシル基又はアリール基を表す。一般式(7a)~(10a)において、R22~R27は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基又は炭素数6~15のアリール基が好ましい。また、R115~R124は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアシル基又は炭素数6~15のアリール基が好ましい。上記のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアシル基は、ヘテロ原子を有してもよく、無置換体又は置換体のいずれであっても構わない。
【0115】
(A1-5)ポリシロキサンにおいて、一般式(7)で表されるオルガノシラン単位、一般式(8)で表されるオルガノシラン単位、一般式(9)で表されるオルガノシラン単位及び一般式(10)で表されるオルガノシラン単位は、規則的な配列又は不規則的な配列のいずれであっても構わない。規則的な配列としては、例えば、交互共重合、周期的共重合、ブロック共重合又はグラフト共重合などが挙げられる。不規則的な配列としては、例えば、ランダム共重合などが挙げられる。
【0116】
また、(A1-5)ポリシロキサンにおいて、一般式(7)で表されるオルガノシラン単位、一般式(8)で表されるオルガノシラン単位、一般式(9)で表されるオルガノシラン単位及び一般式(10)で表されるオルガノシラン単位は、二次元的な配列又は三次元的な配列のいずれであっても構わない。二次元的な配列としては、例えば、直鎖状が挙げられる。三次元的な配列としては、例えば、梯子状、籠状又は網目状などが挙げられる。
【0117】
<芳香族基を有するオルガノシラン単位>
本発明に用いられる(A1-5)ポリシロキサンとしては、芳香族基を有するオルガノシラン単位を含有することが好ましい。そのような(A1-5)ポリシロキサンは、一般式(7)、一般式(9)又は一般式(10)で表されるオルガノシラン単位を有するオルガノシランとして、芳香族基を有するオルガノシランを用いて得られるものであることが好ましい。(A1-5)ポリシロキサンが芳香族基を有するオルガノシラン単位を含有することで、芳香族基の耐熱性により、硬化膜の耐熱性を向上させることができる。
【0118】
また、後述する(D)着色剤として、特に(D1)顔料を含有させる場合、(A1-5)ポリシロキサンが芳香族基を有するオルガノシラン単位を含有することで、芳香族基の立体障害により、(D1)顔料の分散安定性を向上させることができる。さらに(D1)顔料が、(D1-1)有機顔料の場合、(A1-5)ポリシロキサン中の芳香族基は、(D1-1)有機顔料の芳香族基と相互作用するため、(D1-1)有機顔料の分散安定性を向上させることができる。
【0119】
(A1-5)ポリシロキサンに占める、芳香族基を有するオルガノシラン単位の含有比率は、Si原子mol比で、5mol%以上が好ましく、10mol%以上がより好ましく、15mol%以上がさらに好ましい。含有比率が5mol%以上であると、硬化膜の耐熱性を向上させることができる。一方、含有比率は、80mol%以下が好ましく、75mol%以下がより好ましく、70mol%以下がさらに好ましい。含有比率が80mol%以下であると、アルカリ現像液でのパターン加工性を向上させることができる。特に、一般式(7)、一般式(9)又は一般式(10)で表され、かつ芳香族基を有するオルガノシラン単位に由来するSi原子mol比が、5mol%以上80mol%以下であることが好ましい。
【0120】
<エチレン性不飽和二重結合基を有するオルガノシラン単位>
本発明に用いられる(A1-5)ポリシロキサンとしては、エチレン性不飽和二重結合基を有するオルガノシラン単位を含有することが好ましい。そのような(A1-5)ポリシロキサンは、一般式(7)、一般式(9)又は一般式(10)で表されるオルガノシラン単位を有するオルガノシランとして、エチレン性不飽和二重結合基を有するオルガノシランを用いて得られるものであることが好ましい。(A1-5)ポリシロキサンがエチレン性不飽和二重結合基を有するオルガノシラン単位を含有することで、露光時のUV硬化が促進されて、感度を向上させることができる。
【0121】
一般式(7)、一般式(9)又は一般式(10)で表され、かつエチレン性不飽和二重結合基を有するオルガノシラン単位を有するオルガノシランを用いる場合、(A1-5)ポリシロキサンの二重結合当量としては、150g/mol以上が好ましく、200g/mol以上がより好ましく、250g/mol以上がさらに好ましい。二重結合当量が150g/mol以上であると、下地の基板との密着性を向上させることができるとともに、現像後に低テーパー形状のパターンを形成することができる。一方、(A1-5)ポリシロキサンの二重結合当量としては、10,000g/mol以下が好ましく、5,000g/mol以下がより好ましく、2,000g/mol以下がさらに好ましい。二重結合当量が10,000g/mol以下であると、露光時の感度を向上させることができる。特に、(A1-5)ポリシロキサン中の、一般式(7)、一般式(9)又は一般式(10)で表され、かつエチレン性不飽和二重結合基を有するオルガノシラン単位に由来する二重結合当量が、150g/mol以上10,000g/mol以下であることが好ましい。
【0122】
<酸性基を有するオルガノシラン単位>
本発明に用いられる(A1-5)ポリシロキサンとしては、酸性基を有するオルガノシラン単位を含有することが好ましい。そのような(A1-5)ポリシロキサンは、一般式(7)、一般式(9)又は一般式(10)で表されるオルガノシラン単位を有するオルガノシランとして、酸性基を有するオルガノシランを用いて得られるものであることが好ましい。(A1-5)ポリシロキサンが酸性基を有するオルガノシラン単位を含有することで、アルカリ現像液でのパターン加工性及び現像後の解像度を向上させることができる。
【0123】
酸性基としては、pH6未満の酸性度を示す基が好ましい。pH6未満の酸性度を示す基としては、例えば、カルボキシ基、カルボン酸無水物基、スルホン酸基、フェノール性水酸基、ヒドロキシイミド基又はシラノール基が挙げられる。アルカリ現像液でのパターン加工性向上及び現像後の解像度向上の観点から、カルボキシ基、カルボン酸無水物基、フェノール性水酸基又はヒドロキシイミド基が好ましく、カルボキシ基又はカルボン酸無水物基がより好ましい。
【0124】
一般式(7)、一般式(9)又は一般式(10)で表され、かつ酸性基を有するオルガノシラン単位を有するオルガノシランを用いる場合、(A1-5)ポリシロキサンの酸当量としては、280g/mol以上が好ましく、300g/mol以上がより好ましく、400g/mol以上がさらに好ましい。酸当量が280g/mol以上であると、アルカリ現像時における膜減りを抑制することができる。一方、酸当量としては、1,400g/mol以下が好ましく、1,100g/mol以下がより好ましく、950g/mol以下がさらに好ましい。酸当量が1,400g/mol以下であると、アルカリ現像液でのパターン加工性及び現像後の解像度を向上させることができる。特に、(A1-5)ポリシロキサン中の、一般式(7)、一般式(9)又は一般式(10)で表され、かつ酸性基を有するオルガノシラン単位に由来する酸当量が、280g/mol以上1,400g/mol以下であることが好ましい。また、アルカリ現像液でのパターン加工性向上及び現像後の解像度向上の観点から、酸当量が、カルボン酸当量であることがより好ましい。
【0125】
ここでいう酸当量とは、酸性基1mol当たりの樹脂重量をいい、単位はg/molである。酸当量の値から、樹脂中の酸性基の数を求めることができる。酸当量は、酸価から算出することができる。
【0126】
ここでいう酸価とは、樹脂1g当たりと反応する水酸化カリウムの重量をいい、単位はmgKOH/gである。樹脂1gを水酸化カリウム水溶液で滴定することで求めることができる。
【0127】
(A1-5)ポリシロキサンに占める、各種オルガノシラン単位の含有比率は、H-NMR、13C-NMR、29Si-NMR、IR、TOF-MS、元素分析法及び灰分測定などを組み合わせて求めることができる。
【0128】
<(A1-5)ポリシロキサンの物性>
本発明に用いられる(A1-5)ポリシロキサンのMwとしては、GPCで測定されるポリスチレン換算で、500以上が好ましく、700以上がより好ましく、1,000以上がさらに好ましい。Mwが500以上であると、現像後の解像度を向上させることができる。一方、Mwとしては、100,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましく、20,000以下がさらに好ましい。Mwが100,000以下であると、塗布時のレベリング性及びアルカリ現像液でのパターン加工性を向上させることができる。
【0129】
(A1-5)ポリシロキサンは、公知の方法で合成することができる。例えば、反応溶媒中で、オルガノシランを加水分解し、脱水縮合させる方法などが挙げられる。オルガノシランを加水分解し、脱水縮合する方法としては、例えば、オルガノシランを含む混合物に、反応溶媒及び水、さらに必要に応じて触媒を添加し、50~150℃、好ましくは90~130℃で、0.5~100時間程度加熱攪拌する方法などが挙げられる。なお、加熱攪拌中、必要に応じて蒸留によって加水分解副生物(メタノールなどのアルコール)や縮合副生物(水)を蒸留により留去しても構わない。
【0130】
<(A2)第2の樹脂>
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性樹脂として、(A2)第2の樹脂を含有することが好ましい。(A2)第2の樹脂として、(A2-1)多環側鎖含有樹脂、(A2-2)酸変性エポキシ樹脂及び(A2-3)アクリル樹脂から選ばれる一種類以上を含有することが好ましい。
本発明において、(A2-1)多環側鎖含有樹脂、(A2-2)酸変性エポキシ樹脂及び(A2-3)アクリル樹脂は、単一の樹脂又はそれらの共重合体のいずれであっても構わない。
【0131】
<(A2-1)多環側鎖含有樹脂>
本発明に用いられる(A2-1)多環側鎖含有樹脂としては、例えば、(I)フェノール化合物、カルボン酸無水物及びエポキシ化合物を、反応させて得られる多環側鎖含有樹脂、(II)エポキシ化合物、カルボン酸化合物及びエポキシ化合物を、反応させて得られる多環側鎖含有樹脂、又は、(III)エポキシ化合物、カルボン酸化合物及びカルボン酸無水物を、反応させて得られる多環側鎖含有樹脂が挙げられる。
【0132】
(A2-1)多環側鎖含有樹脂は熱硬化性樹脂であり、主鎖と嵩高い側鎖が1つの原子で繋がれた構造を有し、嵩高い側鎖として、高耐熱性かつ剛直なフルオレン環などの環状構造を有する。従って、高耐熱性かつ剛直なフルオレン環などの環状構造を有する(A2-1)多環側鎖含有樹脂をネガ型感光性樹脂組成物に含有させることで、得られる硬化膜の耐熱性を向上させることができる。そのため、硬化膜を耐熱性が要求される用途に用いる場合などに好適である。
【0133】
本発明に用いられる(A2-1)多環側鎖含有樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合基を有することが好ましい。エチレン性不飽和二重結合基を有する(A2-1)多環側鎖含有樹脂をネガ型感光性樹脂組成物に含有させることで、露光時の感度を向上させることができる。また、形成される三次元架橋構造は、脂環式構造又は脂肪族構造が主成分であるため、樹脂の軟化点の高温化が抑制され、低テーパーのパターン形状を得ることができるとともに、得られる硬化膜の機械特性を向上させることができる。そのため、硬化膜を機械特性が要求される用途に用いる場合などに好適である。
【0134】
本発明に用いられる(A2-1)多環側鎖含有樹脂としては、硬化膜の耐熱性向上の観点から、一般式(47)で表される構造単位、一般式(48)で表される構造単位、一般式(49)で表される構造単位及び一般式(50)で表される構造単位から選ばれる一種類以上を含有することが好ましい。また、本発明に用いられる(A2-1)多環側鎖含有樹脂としては、露光時の感度向上及び硬化膜の機械特性向上の観点から、主鎖、側鎖及び末端のいずれか一ヶ所以上に、エチレン性不飽和二重結合基を含有することが好ましい。
【0135】
【化9】
一般式(47)~(50)において、X69、X70、X72、X73、X75、X76、X78及びX79は、それぞれ独立して、単環式又は縮合多環式の炭化水素環を表す。X71、X74、X77及びX80は、それぞれ独立して、カルボン酸及び/又はその誘導体残基の2~10価の有機基を表す。W~Wは、それぞれ独立して、芳香族基を2つ以上有する有機基を表す。R160~R167は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1~6のアルキル基を表し、R170~R175、R177及びR178は、それぞれ独立して、水素又はエチレン性不飽和二重結合基を有する有機基を表す。R176は、水素又は炭素数1~10のアルキル基を表す。a、b、c、d、e、f、g及びhは、それぞれ独立して、0~10の整数を表し、α、β、γ及びδは、それぞれ独立して、0又は1を表す。
一般式(47)~(50)において、X69、X70、X72、X73、X75、X76、X78及びX79は、それぞれ独立して、炭素数6~15及び2~10価の、単環式又は縮合多環式の炭化水素環が好ましい。また、X71、X74、X77及びX80は、それぞれ独立して、炭素数2~20の脂肪族構造、炭素数4~20の脂環式構造及び炭素数6~30の芳香族構造から選ばれる一種類以上を有する2~10価の有機基が好ましい。また、W~Wは、それぞれ独立して、一般式(51)~(56)のいずれかで表される置換基が好ましい。また、R170~R175、R177及びR178は、それぞれ独立して、一般式(57)で表される置換基が好ましい。上記のアルキル基、脂肪族構造、脂環式構造、芳香族構造、単環式若しくは縮合多環式の芳香族炭化水素環、及び、エチレン性不飽和二重結合基を有する有機基は、ヘテロ原子を有してもよく、無置換体又は置換体のいずれであっても構わない。
【0136】
【化10】
【0137】
一般式(51)~(56)において、R179~R182、R185及びR188は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基を表す。R183、R184、R186、R187、R189、R191及びR193~R196は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基又は炭素数6~15のアリール基を表す。R190及びR192は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基又は炭素数6~15のアリール基を表し、R190及びR192で環を形成しても構わない。R190及びR192で形成する環としては、例えば、ベンゼン環又はシクロヘキサン環が挙げられる。R183及びR184の少なくとも1つは、炭素数6~15のアリール基である。R186及びR187の少なくとも1つは、炭素数6~15のアリール基である。R189及びR190の少なくとも1つは、炭素数6~15のアリール基であり、R191及びR192の少なくとも1つは、炭素数6~15のアリール基であり、R190及びR192で環を形成しても構わない。R193及びR194の少なくとも1つは、炭素数6~15のアリール基であり、R195及びR196の少なくとも1つは、炭素数6~15のアリール基である。i、j、k、l、m及びnは、それぞれ独立して、0~4の整数を表す。一般式(51)~(56)において、R190及びR192は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数4~7のシクロアルキル基又は炭素数6~10のアリール基が好ましく、R190及びR192で形成する環としては、ベンゼン環が好ましい。上記のアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基は、無置換体又は置換体のいずれであっても構わない。
【0138】
【化11】
一般式(57)において、X81は、直接結合、炭素数1~10のアルキレン鎖、炭素数4~10のシクロアルキレン鎖又は炭素数6~15のアリーレン鎖を表し、X82は、直接結合又は炭素数6~15のアリーレン鎖を表す。R197は、ビニル基、アリール基又は(メタ)アクリル基を表す。一般式(57)において、X81は、直接結合、炭素数1~6のアルキレン鎖、炭素数4~7のシクロアルキレン鎖又は炭素数6~10のアリーレン鎖が好ましい。また、X82は、直接結合又は炭素数6~10のアリーレン鎖が好ましい。上記のアルキレン鎖、シクロアルキレン鎖、アリーレン鎖、ビニル基、アリール基及び(メタ)アクリル基は、無置換体又は置換体のいずれであっても構わない。
【0139】
<(A2-1)多環側鎖含有樹脂の合成方法>
本発明に用いられる(A2-1)多環側鎖含有樹脂としては、以下の(I)~(IV)に記載の合成方法のいずれか一種類以上の(A2-1)多環側鎖含有樹脂であることが好ましい。
【0140】
(I)の(A2-1)多環側鎖含有樹脂としては、芳香族基を分子中に2つ以上、及び、ヒドロキシ基を有する化合物と多官能活性カルボン酸誘導体(テトラカルボン酸二無水物、ジカルボン酸二塩化物及びジカルボン酸活性ジエステルから選ばれる一種類以上)と、を反応させて得られる樹脂に、エチレン性不飽和二重結合基及びエポキシ基を有する不飽和化合物を開環付加反応させて得られる(A2-1)多環側鎖含有樹脂が挙げられる。多官能活性カルボン酸誘導体としては、テトラカルボン酸二無水物が好ましい。多官能活性カルボン酸誘導体に加え、末端封止剤として、トリカルボン酸無水物、ジカルボン酸無水物、モノカルボン酸塩化物又はモノカルボン酸活性エステルを反応成分に用いても構わない。
【0141】
(II)の(A2-1)多環側鎖含有樹脂としては、芳香族基を分子中に2つ以上、及び、ヒドロキシ基を有する化合物と、エチレン性不飽和二重結合基及びエポキシ基を有する不飽和化合物と、を開環付加反応させて得られる樹脂に、多官能活性カルボン酸誘導体(テトラカルボン酸二無水物、ジカルボン酸二塩化物及びジカルボン酸活性ジエステルから選ばれる一種類以上)を反応させて得られる(A2-1)多環側鎖含有樹脂が挙げられる。多官能活性カルボン酸誘導体としては、テトラカルボン酸二無水物が好ましい。多官能活性カルボン酸誘導体に加え、末端封止剤として、トリカルボン酸無水物、ジカルボン酸無水物、モノカルボン酸塩化物又はモノカルボン酸活性エステルを反応成分に用いても構わない。
【0142】
(III)の(A2-1)多環側鎖含有樹脂としては、芳香族基を分子中に2つ以上、及び、エポキシ基を有する化合物と多官能カルボン酸(テトラカルボン酸、トリカルボン酸及びジカルボン酸から選ばれる一種類以上)と、を開環付加反応させて得られる樹脂に、エチレン性不飽和二重結合基及びエポキシ基を有する不飽和化合物を開環付加反応させて得られる(A2-1)多環側鎖含有樹脂が挙げられる。多官能カルボン酸としては、テトラカルボン酸又はトリカルボン酸が好ましい。多官能カルボン酸に加え、末端封止剤として、モノカルボン酸を反応成分に用いても構わない。
【0143】
(IV)の(A2-1)多環側鎖含有樹脂としては、芳香族基を分子中に2つ以上、及び、エポキシ基を有する化合物と、エチレン性不飽和二重結合基を有する不飽和カルボン酸と、を開環付加反応させて得られる樹脂に、多官能活性カルボン酸誘導体(テトラカルボン酸二無水物、ジカルボン酸二塩化物及びジカルボン酸活性ジエステルから選ばれる一種類以上)を反応させて得られる(A2-1)多環側鎖含有樹脂が挙げられる。多官能活性カルボン酸誘導体としては、テトラカルボン酸二無水物が好ましい。多官能活性カルボン酸誘導体に加え、末端封止剤として、トリカルボン酸無水物、ジカルボン酸無水物、モノカルボン酸塩化物又はモノカルボン酸活性エステルを反応成分に用いても構わない。
【0144】
<芳香族基カルボン酸及びその誘導体を有するテトラカルボン酸、芳香族基を有するテトラカルボン酸二無水物、芳香族基を有するトリカルボン酸及び芳香族基を有するジカルボン酸から選ばれる一種類以上に由来する構造単位>
本発明に用いられる(A2-1)多環側鎖含有樹脂としては、芳香族基カルボン酸及びその誘導体に由来する構造単位を含有することが好ましい。(A2-1)多環側鎖含有樹脂が芳香族基カルボン酸及びその誘導体に由来する構造単位を含有することで、芳香族基の耐熱性により、硬化膜の耐熱性を向上させることができる。芳香族カルボン酸及びその誘導体としては、芳香族基を有するテトラカルボン酸、芳香族基を有するテトラカルボン酸二無水物、芳香族基を有するトリカルボン酸及び芳香族基を有するジカルボン酸から選ばれる一種類以上が好ましい。
【0145】
また、後述する(D)着色剤として、特に(D1)顔料を含有させる場合、(A2-1)多環側鎖含有樹脂が芳香族カルボン酸及びその誘導体に由来する構造単位を含有することで、芳香族基の立体障害により、(D1)顔料の分散安定性を向上させることができる。さらに(D1)顔料が、(D1-1)有機顔料の場合、(A2-1)多環側鎖含有樹脂中の芳香族基は、(D1-1)有機顔料の芳香族基と相互作用するため、(D1-1)有機顔料の分散安定性を向上させることができる。
【0146】
芳香族基カルボン酸及びその誘導体としては、前述した、芳香族テトラカルボン酸及び/又はその誘導体、芳香族トリカルボン酸及び/又はその誘導体、又は、芳香族ジカルボン酸及び/又はその誘導体に含まれる化合物が挙げられる。
【0147】
(A2-1)多環側鎖含有樹脂中の、全テトラカルボン酸及び全ジカルボン酸並びにそれらの誘導体に由来する構造単位に占める、芳香族カルボン酸及び/又はその誘導体に由来する構造単位の含有比率は、10~100mol%が好ましく、20~100mol%がより好ましく、30~100mol%がさらに好ましい。含有比率が10~100mol%であると、硬化膜の耐熱性を向上させることができる。
【0148】
<カルボン酸及びその誘導体に由来する酸性基>
本発明に用いられる(A2-1)多環側鎖含有樹脂としては、カルボン酸及びその誘導体に由来する構造単位を含有し、(A2-1)多環側鎖含有樹脂が、酸性基を有することが好ましい。(A2-1)多環側鎖含有樹脂が酸性基を有することで、アルカリ現像液でのパターン加工性及び現像後の解像度を向上させることができる。
【0149】
酸性基としては、pH6未満の酸性度を示す基が好ましい。pH6未満の酸性度を示す基としては、例えば、カルボキシ基、カルボン酸無水物基、スルホン酸基、フェノール性水酸基又はヒドロキシイミド基が挙げられる。アルカリ現像液でのパターン加工性向上及び現像後の解像度向上の観点から、カルボキシ基、カルボン酸無水物基又はフェノール性水酸基が好ましく、カルボキシ基又はカルボン酸無水物基がより好ましい。
【0150】
本発明に用いられる(A2-1)多環側鎖含有樹脂の酸当量としては、280g/mol以上が好ましく、300g/mol以上がより好ましく、400g/mol以上がさらに好ましい。酸当量が280g/mol以上であると、アルカリ現像時における膜減りを抑制することができる。一方、酸当量としては、1,400g/mol以下が好ましく、1,100g/mol以下がより好ましく、950g/mol以下がさらに好ましい。酸当量が1,400g/mol以下であると、アルカリ現像液でのパターン加工性及び現像後の解像度を向上させることができる。また、アルカリ現像液でのパターン加工性向上及び現像後の解像度向上の観点から、酸当量が、カルボン酸当量であることがより好ましい。
【0151】
(A2-1)多環側鎖含有樹脂に占める、各種モノマー成分に由来する構造単位の含有比率は、H-NMR、13C-NMR、29Si-NMR、IR、TOF-MS、元素分析法及び灰分測定などを組み合わせて求めることができる。
【0152】
<(A2-1)多環側鎖含有樹脂の具体例>
本発明に用いられる(A2-1)多環側鎖含有樹脂としては、例えば、“ADEKA ARKLS”(登録商標) WR-101若しくは同 WR-301(以上、何れも(株)ADEKA製)、OGSOL(登録商標) CR-1030、同 CR-TR1、同 CR-TR2、同 CR-TR3、同 CR-TR4、同 CR-TR5、同 CR-TR6、同 CR-TR7、同 CR-TR8、同 CR-TR9若しくは同 CR-TR10(以上、何れも大阪ガスケミカル(株)製)又はTR-B201若しくはTR-B202(以上、何れもTRONLY社製)が挙げられる。
【0153】
<(A2-1)多環側鎖含有樹脂の物性>
本発明に用いられる(A2-1)多環側鎖含有樹脂の二重結合当量としては、150g/mol以上が好ましく、200g/mol以上がより好ましく、250g/mol以上がさらに好ましい。二重結合当量が150g/mol以上であると、下地の基板との密着性を向上させることができるとともに、現像後に低テーパー形状のパターンを形成することができる。一方、(A2-1)多環側鎖含有樹脂の二重結合当量としては、10,000g/mol以下が好ましく、5,000g/mol以下がより好ましく、2,000g/mol以下がさらに好ましい。二重結合当量が10,000g/mol以下であると、露光時の感度を向上させることができる。
【0154】
本発明に用いられる(A2-1)多環側鎖含有樹脂のMwとしては、GPCで測定されるポリスチレン換算で、500以上が好ましく、1,000以上がより好ましく、1,500以上がさらに好ましい。Mwが500以上であると、現像後の解像度を向上させることができる。一方、Mwとしては、100,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましく、20,000以下がさらに好ましい。Mwが100,000以下であると、塗布時のレベリング性及びアルカリ現像液でのパターン加工性を向上させることができる。
【0155】
<(A2-2)酸変性エポキシ樹脂>
本発明に用いられる(A2-2)酸変性エポキシ樹脂としては、例えば、(I)フェノール化合物、カルボン酸無水物及びエポキシ化合物を、反応させて得られる酸変性エポキシ樹脂、(II)アルコール化合物、カルボン酸無水物及びエポキシ化合物を、反応させて得られる酸変性エポキシ樹脂、(III)エポキシ化合物、カルボン酸化合物及びエポキシ化合物を、反応させて得られる酸変性エポキシ樹脂、又は、(IV)エポキシ化合物、カルボン酸化合物及びカルボン酸無水物を、反応させて得られる酸変性エポキシ樹脂が挙げられる。
【0156】
(A2-2)酸変性エポキシ樹脂は熱硬化性樹脂であり、主鎖のエポキシ樹脂骨格中に、高耐熱性の芳香族環状構造を有する。従って、酸変性エポキシ樹脂を樹脂組成物に含有させることで、得られる硬化膜の耐熱性を向上させることができる。そのため、硬化膜を耐熱性が要求される用途に用いる場合などに好適である。
【0157】
本発明に用いられる(A2-2)酸変性エポキシ樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合基を有することが好ましい。エチレン性不飽和二重結合基を有する(A2-2)酸変性エポキシ樹脂を樹脂組成物に含有させることで、露光時の感度を向上させることができる。また、形成される三次元架橋構造は、脂環式構造又は脂肪族構造が主成分であるため、樹脂の軟化点の高温化が抑制され、低テーパーのパターン形状を得ることができるとともに、得られる硬化膜の機械特性を向上させることができる。そのため、硬化膜を機械特性が要求される用途に用いる場合などに好適である。
【0158】
本発明に用いられる(A2-2)酸変性エポキシ樹脂は、アルカリ可溶性基として、カルボキシ基及び/又はカルボン酸無水物基を有する。カルボキシ基及び/又はカルボン酸無水物基を有することで、現像後の解像度を向上させることができる。
【0159】
本発明に用いられる(A2-2)酸変性エポキシ樹脂としては、硬化膜の耐熱性向上の観点から、一般式(35)で表される構造単位、一般式(36)で表される構造単位、一般式(37)で表される構造単位、一般式(38)で表される構造単位、一般式(41)で表される構造単位、一般式(42)で表される構造単位、及び、一般式(43)で表される構造単位から選ばれる一種類以上を含有することが好ましい。また、本発明に用いられる(A2-2)酸変性エポキシ樹脂は、露光時の感度向上及び硬化膜の機械特性向上の観点から、主鎖、側鎖及び末端のいずれか一ヶ所以上に、エチレン性不飽和二重結合基を有することが好ましい。
【0160】
【化12】
一般式(35)~(38)において、X51~X54は、それぞれ独立して、炭素数1~6の脂肪族構造を表す。Z51は、炭素数10~15及び3~10価の、縮合多環式の芳香族炭化水素環を表す。R71~R75は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基又は炭素数6~15のアリール基を表し、R76及びR77は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基を表し、R78~R82は、それぞれ独立して、ハロゲン、炭素数1~10のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基又は炭素数6~15のアリール基を表し、R83~R88は、それぞれ独立して、一般式(39)で表される置換基を表す。a、b、c、d及びeは、それぞれ独立して、0~10の整数を表し、fは、0~8の整数を表し、gは、0~6の整数を表し、h、i、j及びkは、それぞれ独立して、0~3の整数を表し、lは、0~4の整数を表す。上記のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、脂肪族構造及び縮合多環式の芳香族炭化水素環は、ヘテロ原子を有してもよく、無置換体又は置換体のいずれであっても構わない。
【0161】
【化13】
一般式(39)において、X55は、炭素数1~6のアルキレン鎖又は炭素数4~10のシクロアルキレン鎖を表す。R89~R91は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数6~15のアリール基を表す。R92は、水素又は一般式(40)で表される置換基を表す。一般式(39)において、R89及びR90は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1~4のアルキル基が好ましく、水素がより好ましい。R91は、水素又は炭素数1~4のアルキル基が好ましく、水素又はメチル基がより好ましい。一般式(40)において、X56は、炭素数1~6のアルキレン鎖又は炭素数4~10のシクロアルキレン鎖を表す。一般式(40)において、X56は、炭素数1~4のアルキレン鎖又は炭素数4~7のシクロアルキレン鎖が好ましい。上記のアルキレン鎖、シクロアルキレン鎖、アルキル基及びアリール基は、無置換体又は置換体のいずれであっても構わない。
【0162】
【化14】
一般式(41)~(43)において、X57~X61は、それぞれ独立して、炭素数1~6の脂肪族構造を表し、X62及びX63は、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキレン鎖又は炭素数4~10のシクロアルキレン鎖を表す。R93~R97は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基又は炭素数6~15のアリール基を表し、R98~R104は、それぞれ独立して、ハロゲン、炭素数1~10のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基又は炭素数6~15のアリール基を表し、R105は、水素又は炭素数1~6のアルキル基を表し、R106及びR107は、それぞれ独立して、一般式(39)で表される置換基を表し、R108は、水素、一般式(39)で表される置換基又は一般式(40)で表される置換基を表す。m、n、o、p及びqは、それぞれ独立して、0~10の整数を表し、r及びsは、それぞれ独立して、0~3の整数を表し、t、u、v、w及びxは、それぞれ独立して、0~4の整数を表す。上記のアルキレン鎖、シクロアルキレン鎖、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及び脂肪族構造は、ヘテロ原子を有してもよく、無置換体又は置換体のいずれであっても構わない。
本発明に用いられる(A2-2)酸変性エポキシ樹脂のうち、一般式(43)で表される構造単位を有する(A2-2)酸変性エポキシ樹脂としては、末端が、一般式(44)で表される置換基及び/又は一般式(45)で表される置換基を有することが好ましい。
【0163】
【化15】
一般式(44)において、R109は、一般式(39)で表される置換基を表す。一般式(45)において、X64は、炭素数1~6の脂肪族構造を表す。R110は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基又は炭素数6~15のアリール基を表し、R111及びR112は、それぞれ独立して、ハロゲン、炭素数1~10のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基又は炭素数6~15のアリール基を表す。R113は、一般式(39)で表される置換基を表す。αは、0~10の整数を表す。β及びγは、0~4の整数を表す。一般式(45)において、X64は、炭素数1~4の脂肪族構造が好ましい。R110は、炭素数1~6のアルキル基、炭素数4~7のシクロアルキル基又は炭素数6~10のアリール基が好ましく、R111及びR112は、それぞれ独立して、ハロゲン、炭素数1~6のアルキル基、炭素数4~7のシクロアルキル基又は炭素数6~10のアリール基が好ましい。
【0164】
<芳香族カルボン酸及びその誘導体に由来する構造単位>
本発明に用いられる(A2-2)酸変性エポキシ樹脂としては、芳香族カルボン酸及びその誘導体に由来する構造単位を含有することが好ましい。(A2-2)酸変性エポキシ樹脂が、芳香族カルボン酸及びその誘導体に由来する構造単位を含有することで、芳香族基の耐熱性により、硬化膜の耐熱性を向上させることができる。芳香族カルボン酸及びその誘導体としては、芳香族基を有するテトラカルボン酸、芳香族基を有するトリカルボン酸、芳香族基を有するトリカルボン酸無水物、芳香族基を有するジカルボン酸及び芳香族基を有するジカルボン酸無水物から選ばれる一種類以上が好ましい。
【0165】
また、後述する(D)着色剤として、特に(D1)顔料を含有させる場合、(A2-2)酸変性エポキシ樹脂が芳香族カルボン酸及びその誘導体に由来する構造単位を含有することで、芳香族基の立体障害により、(D1)顔料の分散安定性を向上させることができる。さらに(D1)顔料が、(D1-1)有機顔料の場合、(A2-2)酸変性エポキシ樹脂中の芳香族基は、(D1-1)有機顔料の芳香族基と相互作用するため、(D1-1)有機顔料の分散安定性を向上させることができる。
【0166】
芳香族カルボン酸及びその誘導体としては、前述した、芳香族テトラカルボン酸及び/又はその誘導体、芳香族トリカルボン酸及び/又はその誘導体、芳香族ジカルボン酸及び/又はその誘導体に含まれる化合物が挙げられる。
【0167】
(A2-2)酸変性エポキシ樹脂中の、全カルボン酸及びその誘導体に由来する構造単位に占める、芳香族カルボン酸及び/又はその誘導体に由来する構造単位の含有比率は、10~100mol%が好ましく、20~100mol%がより好ましく、30~100mol%がさらに好ましい。含有比率が10~100mol%であると、硬化膜の耐熱性を向上させることができる。
【0168】
<カルボン酸及びその誘導体に由来する酸性基>
本発明に用いられる(A2-2)酸変性エポキシ樹脂としては、カルボン酸及びその誘導体に由来する構造単位を含有し、(A2-2)酸変性エポキシ樹脂が、酸性基を有することが好ましい。(A2-2)酸変性エポキシ樹脂が酸性基を有することで、アルカリ現像液でのパターン加工性及び現像後の解像度を向上させることができる。
【0169】
酸性基としては、pH6未満の酸性度を示す基が好ましい。pH6未満の酸性度を示す基としては、例えば、カルボキシ基、カルボン酸無水物基、スルホン酸基、フェノール性水酸基又はヒドロキシイミド基が挙げられる。アルカリ現像液でのパターン加工性向上及び現像後の解像度向上の観点から、カルボキシ基、カルボン酸無水物基又はフェノール性水酸基が好ましく、カルボキシ基又はカルボン酸無水物基がより好ましい。
【0170】
本発明に用いられる(A2-2)酸変性エポキシ樹脂の酸当量としては、280g/mol以上が好ましく、300g/mol以上がより好ましく、400g/mol以上がさらに好ましい。酸当量が280g/mol以上であると、アルカリ現像時における膜減りを抑制することができる。一方、酸当量としては、1,400g/mol以下が好ましく、1,100g/mol以下がより好ましく、950g/mol以下がさらに好ましい。酸当量が1,400g/mol以下であると、アルカリ現像液でのパターン加工性及び現像後の解像度を向上させることができる。また、アルカリ現像液でのパターン加工性向上及び現像後の解像度向上の観点から、酸当量が、カルボン酸当量であることがより好ましい。
【0171】
(A2-2)酸変性エポキシ樹脂に占める、各種モノマー成分に由来する構造単位の含有比率は、H-NMR、13C-NMR、29Si-NMR、IR、TOF-MS、元素分析法及び灰分測定などを組み合わせて求めることができる。
【0172】
<(A2-2)酸変性エポキシ樹脂の具体例>
本発明に用いられる(A2-2)酸変性エポキシ樹脂としては、例えば、“KAYARAD”(登録商標) PCR-1222H、同 CCR-1171H、同 TCR-1348H、同 ZAR-1494H、同 ZFR-1401H、同 ZCR-1798H、同 ZXR-1807H、同 ZCR-6002H若しくは同 ZCR-8001H(以上、何れも日本化薬(株)製)又は“NK OLIGO”(登録商標) EA-6340、同 EA-7140若しくは同 EA-7340(以上、何れも新中村化学工業(株)製)が挙げられる。
【0173】
<(A2-2)酸変性エポキシ樹脂の物性>
本発明に用いられる(A2-2)酸変性エポキシ樹脂の二重結合当量としては、150g/mol以上が好ましく、200g/mol以上がより好ましく、250g/mol以上がさらに好ましい。二重結合当量が150g/mol以上であると、下地の基板との密着性を向上させることができるとともに、現像後に低テーパー形状のパターンを形成することができる。一方、(A2-2)酸変性エポキシ樹脂の二重結合当量としては、10,000g/mol以下が好ましく、5,000g/mol以下がより好ましく、2,000g/mol以下がさらに好ましい。二重結合当量が10,000g/mol以下であると、露光時の感度を向上させることができる。
【0174】
本発明に用いられる(A2-2)酸変性エポキシ樹脂のMwとしては、GPCで測定されるポリスチレン換算で、500以上が好ましく、1,000以上がより好ましく、1,500以上がさらに好ましい。Mwが上記範囲内であると、現像後の解像度を向上させることができる。一方、Mwとしては、100,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましく、20,000以下がさらに好ましい。Mwが上記範囲内であると、塗布時のレベリング性及びアルカリ現像液でのパターン加工性を向上させることができる。
【0175】
<(A2-3)アクリル樹脂>
本発明に用いられる(A2-3)アクリル樹脂としては、例えば、酸性基を有する共重合成分、(メタ)アクリル酸エステルに由来する共重合成分及びその他の共重合成分から選ばれる一種類以上の共重合成分を、ラジカル共重合させて得られるアクリル樹脂が挙げられる。
【0176】
本発明に用いられる(A2-3)アクリル樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合基を有することが好ましい。エチレン性不飽和二重結合基を有する(A2-3)アクリル樹脂をネガ型感光性樹脂組成物に含有させることで、露光時の感度を向上させることができる。また、形成される三次元架橋構造は、脂環式構造又は脂肪族構造が主成分であるため、樹脂の軟化点の高温化が抑制され、低テーパーのパターン形状を得ることができるとともに、得られる硬化膜の機械特性を向上させることができる。そのため、硬化膜を機械特性が要求される用途に用いる場合などに好適である。
【0177】
本発明に用いられる(A2-3)アクリル樹脂としては、露光時の感度向上及び硬化膜の機械特性向上の観点から、一般式(61)で表される構造単位及び/又は一般式(62)で表される構造単位を含有することが好ましい。
【化16】
一般式(61)及び(62)において、Rd及びRdは、それぞれ独立して、エチレン性不飽和二重結合基を有する、炭素数1~10のアルキル基、炭素数4~15のシクロアルキル基又は炭素数6~15のアリール基を表す。R200~R205は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基又は炭素数6~15のアリール基を表す。X90及びX91は、それぞれ独立して、直接結合、炭素数1~10のアルキレン鎖、炭素数4~10のシクロアルキレン鎖又は炭素数6~15のアリーレン鎖を表す。
【0178】
一般式(61)及び(62)において、Rd及びRdは、それぞれ独立して、エチレン性不飽和二重結合基を有する、炭素数1~6のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基又は炭素数6~10のアリール基が好ましい。また、R200~R205は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数4~7のシクロアルキル基又は炭素数6~10のアリール基が好ましい。また、X90及びX91は、それぞれ独立して、直接結合、炭素数1~6のアルキレン鎖、炭素数4~7のシクロアルキレン鎖又は炭素数6~10のアリーレン鎖が好ましい。上記のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキレン鎖、シクロアルキレン鎖及びアリーレン鎖は、ヘテロ原子を有してもよく、無置換体又は置換体のいずれであっても構わない。
【0179】
本発明に用いられる(A2-3)アクリル樹脂としては、酸性基を有する共重合成分又はその他の共重合成分を、ラジカル共重合させて得られる(A2-3)アクリル樹脂であることが好ましい。その他の共重合成分としては、芳香族基を有する共重合成分又は脂環式基を有する共重合成分が好ましい。
【0180】
<酸性基を有する共重合成分に由来する構造単位>
本発明に用いられる(A2-3)アクリル樹脂としては、酸性基を有する共重合成分に由来する構造単位を含有し、(A2-3)アクリル樹脂が、酸性基を有することが好ましい。(A2-3)アクリル樹脂が酸性基を有することで、アルカリ現像液でのパターン加工性及び現像後の解像度を向上させることができる。
【0181】
酸性基としては、pH6未満の酸性度を示す基が好ましい。pH6未満の酸性度を示す基としては、例えば、カルボキシ基、カルボン酸無水物基、スルホン酸基、フェノール性水酸基又はヒドロキシイミド基が挙げられる。アルカリ現像液でのパターン加工性向上及び現像後の解像度向上の観点から、カルボキシ基、カルボン酸無水物基又はフェノール性水酸基が好ましく、カルボキシ基又はカルボン酸無水物基がより好ましい。
【0182】
本発明に用いられる(A2-3)アクリル樹脂の酸当量としては、280g/mol以上が好ましく、300g/mol以上がより好ましく、400g/mol以上がさらに好ましい。酸当量が280g/mol以上であると、アルカリ現像時における膜減りを抑制することができる。一方、酸当量としては、1,400g/mol以下が好ましく、1,100g/mol以下がより好ましく、950g/mol以下がさらに好ましい。酸当量が1,400g/mol以下であると、アルカリ現像液でのパターン加工性及び現像後の解像度を向上させることができる。また、アルカリ現像液でのパターン加工性向上及び現像後の解像度向上の観点から、酸当量が、カルボン酸当量であることがより好ましい。
【0183】
本発明に用いられる(A2-3)アクリル樹脂としては、(A2-3)アクリル樹脂がカルボキシ基を有する場合、エポキシ基を有しない(A2-3)アクリル樹脂が好ましい。(A2-3)アクリル樹脂がカルボキシ基とエポキシ基と、の両方を有すると、ネガ型感光性樹脂組成物の塗液の保管中にカルボキシ基とエポキシ基と、が反応する可能性がある。そのため、樹脂組成物の塗液の保管安定性が低下する原因となる。エポキシ基を有しない(A2-3)アクリル樹脂としては、カルボキシ基又はカルボン酸無水物基を有する共重合成分及びエポキシ基を有しないその他の共重合成分と、をラジカル共重合させた(A2-3)アクリル樹脂が好ましい。
【0184】
<芳香族基を有する共重合成分に由来する構造単位>
本発明に用いられる(A2-3)アクリル樹脂としては、芳香族基を有する共重合成分に由来する構造単位を含有することが好ましい。(A2-3)アクリル樹脂が芳香族基を有する共重合成分に由来する構造単位を含有することで、芳香族基の耐熱性により、硬化膜の耐熱性を向上させることができる。
【0185】
また、後述する(D)着色剤として、特に(D1)顔料を含有させる場合、(A2-3)アクリル樹脂が芳香族基を有する共重合成分に由来する構造単位を含有することで、芳香族基の立体障害により、(D1)顔料の分散安定性を向上させることができる。さらに(D1)顔料が、(D1-1)有機顔料の場合、(A2-3)アクリル樹脂中の芳香族基は、(D1-1)有機顔料の芳香族基と相互作用するため、(D1-1)有機顔料の分散安定性を向上させることができる。
【0186】
(A2-3)アクリル樹脂中の全共重合成分に由来する構造単位に占める、芳香族基を有する共重合成分に由来する構造単位の含有比率は、10mol%以上が好ましく、20mol%以上がより好ましく、30mol%以上がさらに好ましい。含有比率が10mol%以上であると、硬化膜の耐熱性を向上させることができる。一方、含有比率は、80mol%以下が好ましく、75mol%以下がより好ましく、70mol%以下がさらに好ましい。含有比率が80mol%以下であると、露光時の感度を向上させることができる。
【0187】
<脂環式基を有する共重合成分に由来する構造単位>
本発明に用いられる(A2-3)アクリル樹脂としては、脂環式基を有する共重合成分に由来する構造単位を含有することが好ましい。(A2-3)アクリル樹脂が脂環式基を有する共重合成分に由来する構造単位を含有することで、脂環式基の耐熱性及び透明性により、硬化膜の耐熱性及び透明性を向上させることができる。
【0188】
(A2-3)アクリル樹脂中の全共重合成分に由来する構造単位に占める、脂環式基を有する共重合成分に由来する構造単位の含有比率は、5mol%以上が好ましく、10mol%以上がより好ましく、15mol%以上がさらに好ましい。含有比率が5mol%以上であると、硬化膜の耐熱性及び透明性を向上させることができる。一方、含有比率は、90mol%以下が好ましく、85mol%以下がより好ましく、75mol%以下がさらに好ましい。含有比率が90mol%以下であると、硬化膜の機械特性を向上させることができる。
【0189】
本発明に用いられる(A2-3)アクリル樹脂としては、酸性基を有する共重合成分又はその他の共重合成分を、ラジカル共重合させて得られる樹脂に、さらに、エチレン性不飽和二重結合基及びエポキシ基を有する不飽和化合物を開環付加反応させて得られる樹脂が好ましい。エチレン性不飽和二重結合基及びエポキシ基を有する不飽和化合物を開環付加反応させることで、(A2-3)アクリル樹脂の側鎖にエチレン性不飽和二重結合基を導入することができる。
(A2-3)アクリル樹脂に占める、各種共重合成分に由来する構造単位の含有比率は、H-NMR、13C-NMR、29Si-NMR、IR、TOF-MS、元素分析法及び灰分測定などを組み合わせて求めることができる。
【0190】
<(A2-3)アクリル樹脂の物性>
本発明に用いられる(A2-3)アクリル樹脂の二重結合当量としては、150g/mol以上が好ましく、200g/mol以上がより好ましく、250g/mol以上がさらに好ましい。二重結合当量が150g/mol以上であると、下地の基板との密着性を向上させることができるとともに、現像後に低テーパー形状のパターンを形成することができる。一方、(A2-3)アクリル樹脂の二重結合当量としては、10,000g/mol以下が好ましく、5,000g/mol以下がより好ましく、2,000g/mol以下がさらに好ましい。二重結合当量が10,000g/mol以下であると、露光時の感度を向上させることができる。
【0191】
本発明に用いられる(A2-3)アクリル樹脂のMwとしては、GPCで測定されるポリスチレン換算で、1,000以上が好ましく、3,000以上がより好ましく、5,000以上がさらに好ましい。Mwが1,000以上であると、現像後の解像度を向上させることができる。一方、Mwとしては、100,000以下が好ましく、70,000以下がより好ましく、50,000以下がさらに好ましい。Mwが100,000以下であると、塗布時のレベリング性及びアルカリ現像液でのパターン加工性を向上させることができる。
【0192】
(A2-3)アクリル樹脂は、公知の方法で合成することができる。例えば、空気下又は窒素下で、ラジカル重合開始剤の存在下、共重合成分をラジカル共重合させる方法などが挙げられる。ラジカル共重合させる方法としては、例えば、空気下又はバブリングや減圧脱気などによって反応容器内を十分窒素置換した後、反応溶媒中、共重合成分とラジカル重合開始剤と、を添加し、60~110℃で30~500分反応させる方法などが挙げられる。また、必要に応じてチオール化合物などの連鎖移動剤及び/又はフェノール化合物などの重合禁止剤を用いても構わない。
【0193】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物において、(A1)第1の樹脂及び(A2)第2の樹脂の合計100質量%に占める、(A1)第1の樹脂の含有比率は、25質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましく、70質量%以上がさらにより好ましく、80質量%以上が特に好ましい。含有比率が25質量%以上であると、硬化膜の耐熱性を向上させることができる。一方、(A1)第1の樹脂の含有比率は、99質量%以下が好ましく、98質量%以下がより好ましく、97質量%以下がさらに好ましく、95質量%以下がさらにより好ましく、90質量%以下が特に好ましい。含有比率が99質量%以下であると、低テーパーのパターン形状の硬化膜を得ることができる。加えて、熱硬化時における硬化膜の段差部位でのリフロー性制御による、段差形状保持が可能となることから、ハーフトーン特性を向上させることができる。
【0194】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物に占める、(A1)第1の樹脂及び(A2)第2の樹脂の含有比率が上記の好ましい範囲内であると、硬化膜の耐熱性を向上させることができるとともに、低テーパーのパターン形状を得ることができる。そのため、本発明のネガ型感光性樹脂組成物から得られる硬化膜は、有機ELディスプレイの画素分割層等の絶縁層など、高耐熱性及び低テーパーのパターン形状が要求される用途に好適である。特に、熱分解による脱ガスに起因した素子の不良又は特性低下や、高テーパーのパターン形状による電極配線の断線など、耐熱性及びパターン形状に起因する問題が想定される用途において、本発明のネガ型感光性樹脂組成物の硬化膜を用いることで、上記の問題が発生しない、高信頼性の素子を製造することが可能となる。加えて、本発明のネガ型感光性樹脂組成物は後述する(D)着色剤を含有するため、電極配線の可視化防止又は外光反射低減が可能となり、画像表示におけるコントラストを向上させることができる。
【0195】
<(B)ラジカル重合性化合物>
本発明のネガ型感光性樹脂組成物としては、さらに、(B)ラジカル重合性化合物を含有する。(B)ラジカル重合性化合物とは、分子中に複数のエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物をいう。露光時、後述する(C1)光重合開始剤から発生するラジカルによって、(B)ラジカル重合性化合物のラジカル重合が進行し、樹脂組成物の膜の露光部がアルカリ現像液に対して不溶化することで、ネガ型のパターンを形成することができる。
【0196】
(B)ラジカル重合性化合物を含有させることで、樹脂組成物の膜への露光時のUV硬化が促進されて、露光時の感度を向上させることができる。加えて、熱硬化後の架橋密度が向上し、硬化膜の硬度を向上させることができる。
【0197】
(B)ラジカル重合性化合物としては、ラジカル重合の進行しやすい、(メタ)アクリル基を有する化合物が好ましい。露光時の感度向上及び硬化膜の硬度向上の観点から、(メタ)アクリル基を分子中に2つ以上有する化合物がより好ましい。(B)ラジカル重合性化合物の二重結合当量としては、露光時の感度向上、及び、低テーパー形状のパターン形成の観点から、80~800g/molが好ましい。
【0198】
(B)ラジカル重合性化合物としては、後述する(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物及び(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物以外に、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールノナ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、ペンタペンタエリスリトールウンデカ(メタ)アクリレート、ペンタペンタエリスリトールドデカ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-(3-(メタ)アクリロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、1,3,5-トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌル酸若しくは1,3-ビス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌル酸又はそれらの酸変性体が挙げられる。また、現像後の解像度向上の観点から、分子中に2つ以上のグリシドキシ基を有する化合物とエチレン性不飽和二重結合基を有する不飽和カルボン酸と、を開環付加反応させて得られる化合物に、多塩基酸カルボン酸又は多塩基カルボン酸無水物を反応させて得られる化合物も好ましい。
【0199】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物に占める(B)ラジカル重合性化合物の含有量は、(A)アルカリ可溶性樹脂及び(B)ラジカル重合性化合物の合計を100質量部とした場合において、15質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、25質量部以上がさらに好ましく、30質量部以上が特に好ましい。含有量が15質量部以上であると、露光時の感度を向上できるとともに、低テーパーのパターン形状の硬化膜を得ることができる。一方、(B)ラジカル重合性化合物の含有量は、65質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましく、55質量部以下がさらに好ましく、50質量部以下が特に好ましい。含有量が65質量部以下であると、硬化膜の耐熱性を向上させることができるとともに、低テーパーのパターン形状を得ることができる。
【0200】
<(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物及び(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物>
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、(B)ラジカル重合性化合物として、(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物及び(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物からなる群より選ばれる一種類以上を含有する。
【0201】
(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物とは、分子中に複数のエチレン性不飽和二重結合基及びフルオレン骨格を有する化合物をいう。(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物とは、分子中に複数のエチレン性不飽和二重結合基及びインダン骨格を有する化合物をいう。
【0202】
(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物及び/又は(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物を含有させることで、露光時の感度向上、及び、現像後のパターン形状制御による低テーパー形成が可能になるとともに、熱硬化後に低テーパー形状のパターン形成が可能となる。これは、露光時にUV硬化した膜にフルオレン骨格又はインダン骨格が導入され、低露光量のUV硬化においても膜の分子量が飛躍的に向上することで、アルカリ現像液に対して不溶化するため、露光時の感度が向上すると推測される。また、フルオレン骨格及びインダン骨格が疎水性であるため、UV硬化した膜の疎水性が向上することで、アルカリ現像液の浸透が抑えられ、とりわけUV硬化が不足しやすい膜深部のサイドエッチングを抑制できるためと考えられる。それにより、現像後の逆テーパー化が阻害され、現像後に低テーパー形状のパターン形成が可能になるなど、現像後のパターン形状制御が可能となる。現像後の逆テーパー化の阻害に加え、フルオレン骨格又はインダン骨格の立体障害により、UV硬化時の過剰な硬化が阻害されることで、熱硬化時におけるパターンのテーパー部のリフロー性を維持できるため、低テーパー形状のパターン形成が可能になると推測される。
【0203】
加えて、(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物及び/又は(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物を含有させることで、現像後のパターン形状制御による、低テーパー形状のパターン形成が可能となることから、ハーフトーン特性を向上させることができる。これは、フルオレン骨格又はインダン骨格の疎水性により、アルカリ現像時において、完全に硬化が進行していないハーフトーン露光部のサイドエッチングを抑制できるとともに、ハーフトーン露光部のアルカリ溶解性を制御できるためと考えられる。
【0204】
また、(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物及び/又は(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物を含有させることで、熱硬化前後における、パターン開口寸法幅変化を抑制することができる。これは、上記と同様に、フルオレン骨格及びインダン骨格が疎水性であることに起因すると考えられる。すなわち、UV硬化が不足しやすい膜深部における現像時のサイドエッチングが抑制され、現像後に低テーパー形状のパターンが形成できるため、熱硬化時におけるパターン裾のリフローが抑制されることで、熱硬化前後におけるパターン開口寸法幅変化を抑制できると推測される。また、露光時にUV硬化した膜にフルオレン骨格又はインダン骨格が導入され、膜の分子量が飛躍的に向上することで、熱硬化時におけるパターン裾のリフローが抑制されることも要因と考えられる。
【0205】
さらに、後述する(Da)黒色剤として、特に(D1a-1a)ベンゾフラノン系黒色顔料を含有させる場合、前記顔料のアルカリ耐性不足に起因した、顔料由来の現像残渣が発生する場合がある。すなわち、現像時に前記(D1a-1a)ベンゾフラノン系黒色顔料の表面がアルカリ現像液に曝されることで、表面の一部が分解又は溶解し、前記顔料由来の現像残渣として基板上に残存する場合がある。そのような場合、後述する(B3)柔軟鎖含有脂肪族ラジカル重合性化合物、並びに、(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物及び/又は(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物を含有させることで、前記顔料由来の現像残渣発生を抑制することができる。上記と同様に、フルオレン骨格及びインダン骨格が疎水性であるため、UV硬化した膜の疎水性が向上することで、アルカリ現像液の浸透が抑えられ、前記(D1a-1a)ベンゾフラノン系黒色顔料のアルカリ現像液による分解又は溶解を阻害するためと推測される。
【0206】
(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物としては、一般式(11)で表される化合物を含有することが好ましい。(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物としては、一般式(12)で表される化合物、及び/又は、一般式(13)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0207】
【化17】
【0208】
一般式(11)、(12)及び(13)において、X~Xは、それぞれ独立して、炭素数6~15及び2~10価の、単環式又は縮合多環式の芳香族炭化水素環、又は、炭素数4~10及び2~8価の、単環式又は縮合多環式の脂肪族炭化水素環を表す。Y~Yは、それぞれ独立して、直接結合、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数4~10のシクロアルキレン基、炭素数6~15のアリーレン基又は一般式(18)で表される基を表す。Y~Yが、直接結合又は一般式(18)で表される基の場合、Z~Zは、直接結合を表し、q、r、s、t、u及びvは、0である。Y~Yが、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数4~10のシクロアルキレン基又は炭素数6~15のアリーレン基の場合、Z~Zは、酸素原子を表し、q、r、s、t、u及びvは、それぞれ独立して、0~8の整数を表す。R31~R40は、それぞれ独立して、ハロゲン、炭素数1~10のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基、炭素数6~15のアリール基、炭素数1~10のフルオロアルキル基、炭素数4~10のフルオロシクロアルキル基又は炭素数6~15のフルオロアリール基を表し、R41~R44は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基又は炭素数6~15のアリール基を表し、R45~R50は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基又はヒドロキシ基を表す。P~Pは、それぞれ独立して、一般式(14)で表される基を表す。a、b、c、d、e及びfは、それぞれ独立して、0又は1を表す。a、b、c、d、e及びfが、0の場合、Z~Zは、酸素原子を表す。g、h、i、j、k及びlは、それぞれ独立して、0~8の整数を表し、m、n、o及びpは、それぞれ独立して、0~4の整数を表す。α、β、γ、δ、ε及びζは、それぞれ独立して、1~4の整数を表す。上記の単環式若しくは縮合多環式の芳香族炭化水素環、単環式若しくは縮合多環式の脂肪族炭化水素環、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、フルオロアルキル基、フルオロシクロアルキル基、及び、フルオロアリール基は、ヘテロ原子を有してもよく、無置換体又は置換体のいずれであっても構わない。
【0209】
【化18】
一般式(18)において、R54は、水素又は炭素数1~10のアルキル基を表す。Zは、一般式(19)で表される基又は一般式(20)で表される基を表す。aは、1~10の整数を表し、bは、1~4の整数を表す。一般式(20)において、R55は、水素又は炭素数1~10のアルキル基を表す。一般式(20)において、R55は、水素又は炭素数1~4のアルキル基が好ましく、水素又はメチル基がより好ましい。
【0210】
【化19】
一般式(14)において、R51~R53は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数6~15のアリール基を表す。一般式(14)において、R51は、水素又は炭素数1~4のアルキル基が好ましく、水素又はメチル基がより好ましい。R52及びR53は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1~4のアルキル基が好ましく、水素がより好ましい。
【0211】
(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物及び(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物としては、少なくとも1つのラクトン変性鎖及び/又は少なくとも1つのラクタム変性鎖を有することが好ましい。少なくとも1つのラクトン変性鎖及び/又は少なくとも1つのラクタム変性鎖を有することで、露光時の感度を向上できるとともに、現像後の残渣発生を抑制することができる。加えて、熱硬化時における硬化膜の段差部位でのリフロー性制御による、段差形状保持が可能となることから、ハーフトーン特性を向上させることができる。また、熱硬化前後における、パターン開口寸法幅変化を抑制することができる。
【0212】
(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物及び(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物が、前記一般式(11)で表される化合物、前記一般式(12)で表される化合物又は前記一般式(13)で表される化合物である場合、前記一般式(11)、(12)及び(13)において、Y~Yが、一般式(18)で表される基であると、(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物及び(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物が、少なくとも1つのラクトン変性鎖及び/又は少なくとも1つのラクタム変性鎖を有する。前記一般式(11)、(12)及び(13)において、Y及びYのうち、前記一般式(18)で表される基は2つ以上が好ましく、Y及びYのうち、前記一般式(18)で表される基は2つ以上が好ましく、Y及びYのうち、前記一般式(18)で表される基は2つ以上が好ましい。Y及びY、Y及びY、並びに、Y及びYのうち、前記一般式(18)で表される基がそれぞれ2つ以上であると、露光時の感度を向上できるとともに、現像後の残渣発生を抑制することができる。加えて、ハーフトーン特性を向上させることができる。また、熱硬化前後における、パターン開口寸法幅変化を抑制することができる。
【0213】
(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物としては、一般式(15)で表される構造単位を有する化合物も好ましい。(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物としては、一般式(16)で表される構造単位を有する化合物、及び、一般式(17)で表される構造単位を有する化合物も好ましい。
【0214】
【化20】
【0215】
一般式(15)、(16)及び(17)において、X11~X22は、それぞれ独立して、炭素数6~15及び2~10価の、単環式又は縮合多環式の芳香族炭化水素環、又は、炭素数4~10及び2~8価の、単環式又は縮合多環式の脂肪族炭化水素環を表す。Y11~Y16は、それぞれ独立して、直接結合、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数4~10のシクロアルキレン基又は炭素数6~15のアリーレン基を表す。Y11~Y16が、直接結合の場合、Z11~Z16は、直接結合を表し、u、v、w、x、y及びzは、0である。Y11~Y16が、直接結合でない場合、Z11~Z16は、酸素原子を表し、u、v、w、x、y及びzは、それぞれ独立して、0~8の整数を表す。Y17~Y19は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数4~10のシクロアルキレン基又は炭素数6~15のアリーレン基を表す。R56~R67及びR133~R140は、それぞれ独立して、ハロゲン、炭素数1~10のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基、炭素数6~15のアリール基、炭素数1~10のフルオロアルキル基、炭素数4~10のフルオロシクロアルキル基又は炭素数6~15のフルオロアリール基を表し、R141~R148は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基又は炭素数6~15のアリール基を表し、R149~R154は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基又はヒドロキシ基を表す。a、b、c、d、e、f、g、h、i、j、k及びlは、それぞれ独立して、0~8の整数を表し、m、n、o、p、q、r、s及びtは、それぞれ独立して、0~4の整数を表す。α、β及びγは、それぞれ独立して、1又は2であり、δ、ε及びζは、それぞれ独立して、0又は1である。上記の単環式若しくは縮合多環式の芳香族炭化水素環、単環式若しくは縮合多環式の脂肪族炭化水素環、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、フルオロアルキル基、フルオロシクロアルキル基、及び、フルオロアリール基は、ヘテロ原子を有してもよく、無置換体又は置換体のいずれであっても構わない。
【0216】
(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物及び(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物が分子中に有するエチレン性不飽和二重結合基数は、2個以上が好ましく、3個以上がより好ましく、4個以上がさらに好ましい。エチレン性不飽和二重結合基数が2個以上であると、露光時の感度を向上させることができる。加えて、後述する(D)着色剤として、特に(D1)顔料を含有させる場合、(D1)顔料がUV硬化時の架橋によって硬化部に固定化されることで、(D1)顔料に由来する現像後の残渣発生を抑制することができる。また、熱硬化前後における、パターン開口寸法幅変化を抑制することができる。一方、(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物及び(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物が分子中に有するエチレン性不飽和二重結合基数は、12個以下が好ましく、10個以下がより好ましく、8個以下がさらに好ましく、6個以下が特に好ましい。エチレン性不飽和二重結合基数が12個以下であると、熱硬化後に低テーパー形状のパターンを形成できるとともに、熱硬化前後におけるパターン開口寸法幅変化を抑制することができる。
【0217】
また、現像後の低テーパー形状のパターン形成の観点から、(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物及び(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物が分子中に有するエチレン性不飽和二重結合基の数は、1個以上が好ましく、2個以上がより好ましい。一方、分子中に有するエチレン性不飽和二重結合基の数は、4個以下が好ましく、3個以下がより好ましい。これは、エチレン性不飽和二重結合基の数を適切に調整することで、UV硬化時の架橋過剰による高テーパー化を抑制するとともに、UV硬化時の架橋不足による現像時のサイドエッチングを抑制することで、現像後のパターン形状制御が可能となったものと推定される。
【0218】
(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物及び(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物が分子中に有するエチレン性不飽和二重結合基としては、露光時の感度向上及び現像後の残渣抑制の観点から、ラジカル重合の進行しやすい、(メタ)アクリル基が好ましく、分子中に(メタ)アクリル基を2つ以上有することがより好ましい。
【0219】
(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物及び(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物の二重結合当量は、150g/mol以上が好ましく、170g/mol以上がより好ましく、190g/mol以上がさらに好ましく、210g/mol以上が特に好ましい。二重結合当量が、150g/mol以上であると、熱硬化後に低テーパー形状のパターンを形成できるとともに、熱硬化前後におけるパターン開口寸法幅変化を抑制することができる。一方、(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物及び(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物の二重結合当量は、800g/mol以下が好ましく、600g/mol以下がより好ましく、500g/mol以下がさらに好ましく、400g/mol以下が特に好ましい。二重結合当量が、800g/mol以下であると、露光時の感度を向上させることができる。
【0220】
(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物及び(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物の分子量は、400以上が好ましく、450以上がより好ましく、470以上がさらに好ましく、500以上が特に好ましい。分子量が、400以上であると、熱硬化後に低テーパー形状のパターンを形成できるとともに、熱硬化前後におけるパターン開口寸法幅変化を抑制することができる。一方、(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物及び(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物の分子量は、1,500以下が好ましく、1,300以下がより好ましく、1,100以下がさらに好ましく、900以下が特に好ましい。分子量が、1,500以下であると、露光時の感度を向上させることができる。
【0221】
(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物としては、例えば、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(3-(メタ)アクリロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-[(3-(メタ)アクリロキシ)ヘキシルオキシ]フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス(4-(メタ)アクリロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロキシプロポキシ)-3-メチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロキシプロポキシ)-3,5-ジメチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[3-フェニル-4-(2-(メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロキシエトキシ)-1-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[3,4-ビス(2-(メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9-[3,4-ビス(2-(メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]-9-[4-(2-(メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、ε-カプロラクトン変性9,9-ビス(4-(メタ)アクリロキシフェニル)フルオレン、δ-バレロラクトン変性9,9-ビス(4-(メタ)アクリロキシフェニル)フルオレン、γ-ブチロラクトン変性9,9-ビス(4-(メタ)アクリロキシフェニル)フルオレン、β-プロピオラクトン変性9,9-ビス(4-(メタ)アクリロキシフェニル)フルオレン若しくはε-カプロラクタム変性9,9-ビス(4-(メタ)アクリロキシフェニル)フルオレン又はOGSOL(登録商標) EA-50P、同 EA-0200、同 EA-0250P、同 EA-0300、同 EA-500、同 EA-1000、同 EA-F5000-4、同 EA-F5003、同 EA-F5005、同 EA-F5503、同 EA-F5510、同 EA-F5610、同 EA-F5710若しくは同 GA-5000(以上、何れも大阪ガスケミカル(株)製)が挙げられる。
【0222】
(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物としては、例えば、1,1-ビス[4-(2-(メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]インダン、1,1-ビス[4-(3-(メタ)アクリロキシプロポキシ)フェニル]インダン、1,1-ビス[4-[(3-(メタ)アクリロキシ)ヘキシルオキシ]フェニル]インダン、1,1-ビス[4-(2-(メタ)アクリロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]インダン、1,1-ビス[4-(2-(メタ)アクリロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル]インダン、1,1-ビス(4-(メタ)アクリロキシフェニル)インダン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロキシプロポキシ)フェニル]インダン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロキシプロポキシ)-3-メチルフェニル]インダン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロキシプロポキシ)-3,5-ジメチルフェニル]インダン、1,1-ビス[4-(2-(メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]-3-フェニルインダン、1,1-ビス[3-フェニル-4-(2-(メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]インダン、1,1-ビス[4-(2-(メタ)アクリロキシエトキシ)-1-ナフチル]インダン、1,1-ビス[3,4-ビス(2-(メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]インダン、2,2-ビス[4-(2-(メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]インダン、2,2-ビス[4-(3-(メタ)アクリロキシプロポキシ)フェニル]インダン、2,2-ビス[4-[(3-(メタ)アクリロキシ)ヘキシルオキシ]フェニル]インダン、2,2-ビス[4-(2-(メタ)アクリロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]インダン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシフェニル)インダン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロキシプロポキシ)フェニル]インダン、2,2-ビス[3-フェニル-4-(2-(メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]インダン、2,2-ビス[4-(2-(メタ)アクリロキシエトキシ)-1-ナフチル]インダン、2,2-ビス[3,4-ビス(2-(メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]インダン、ε-カプロラクトン変性1,1-ビス(4-(メタ)アクリロキシフェニル)インダン、δ-バレロラクトン変性1,1-ビス(4-(メタ)アクリロキシフェニル)インダン、γ-ブチロラクトン変性1,1-ビス(4-(メタ)アクリロキシフェニル)インダン、β-プロピオラクトン変性1,1-ビス(4-(メタ)アクリロキシフェニル)インダン又はε-カプロラクタム変性1,1-ビス(4-(メタ)アクリロキシフェニル)インダンが挙げられる。
【0223】
(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物及び(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物は、公知の方法により、合成することができる。例えば、国際公開第2008/139924号パンフレットに記載の合成方法が挙げられる。
【0224】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物に占める(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物及び(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物の含有量の合計は、(A)アルカリ可溶性樹脂及び(B)ラジカル重合性化合物の合計を100質量部とした場合において、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、2質量部以上がさらに好ましく、3質量部以上がさらにより好ましく、5質量部以上が特に好ましい。含有量が0.5質量部以上であると、露光時の感度の向上、及び、現像後のパターン形状制御による低テーパー形成が可能になるとともに、熱硬化後に低テーパー形状のパターンを形成することができる。加えて、熱硬化前後におけるパターン開口寸法幅変化を抑制することができる。一方、(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物及び(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物の含有量の合計は、25質量部以下が好ましく、22質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましく、18質量部以下がさらにより好ましく、15質量部以下が特に好ましい。含有量が25質量部以下であると、熱硬化前後におけるパターン開口寸法幅変化を抑制することができるとともに、現像後の残渣発生を抑制することができる。
【0225】
<(B3)柔軟鎖含有脂肪族ラジカル重合性化合物>
本発明のネガ型感光性樹脂組成物としては、(B)ラジカル重合性化合物が、(B3)柔軟鎖含有脂肪族ラジカル重合性化合物を含有することが好ましい。(B3)柔軟鎖含有脂肪族ラジカル重合性化合物とは、分子中に複数のエチレン性不飽和二重結合基、及び、脂肪族鎖若しくはオキシアルキレン鎖などの柔軟骨格を有する化合物をいう。
【0226】
(B3)柔軟鎖含有脂肪族ラジカル重合性化合物を含有させることで、露光時のUV硬化が効率的に進行し、露光時の感度を向上させることができる。加えて、後述する(D)着色剤として、特に(D1)顔料を含有させる場合、(D1)顔料が(B3)柔軟鎖含有脂肪族ラジカル重合性化合物のUV硬化時の架橋によって硬化部に固定化されることで、(D1)顔料に由来する現像後の残渣発生を抑制することができる。また、熱硬化前後における、パターン開口寸法幅変化を抑制することができる。加えて、熱硬化時における硬化膜の段差部位でのリフロー性制御による、段差形状保持が可能となることから、ハーフトーン特性を向上させることができる。これは、脂肪族鎖などの柔軟骨格を有することで、分子間でのエチレン性不飽和二重結合基同士の衝突確率が高くなり、UV硬化が促進され、架橋密度が向上したためと推測される。
【0227】
さらに、後述する(Da)黒色剤として、特に(D1a-1a)ベンゾフラノン系黒色顔料を含有させる場合、前述した通り、前記顔料のアルカリ耐性不足に起因した、顔料由来の現像残渣が発生する場合がある。そのような場合にも、(B3)柔軟鎖含有脂肪族ラジカル重合性化合物を含有させることで、前記顔料由来の現像残渣発生を抑制することができる。
【0228】
(B3)柔軟鎖含有脂肪族ラジカル重合性化合物としては、分子中に一般式(24)で表される基、及び、2個以上の一般式(25)で表される基を有するラジカル重合性化合物が好ましい。
【0229】
【化21】
一般式(24)において、R125は、水素又は炭素数1~10のアルキル基を表す。Z17は、一般式(29)で表される基又は一般式(30)で表される基を表す。aは、1~10の整数を表し、bは、1~4の整数を表し、cは、0又は1を表し、dは、1~4の整数を表し、eは、0又は1を表す。cが、0の場合、dは、1である。一般式(25)において、R126~R128は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数6~15のアリール基を表す。一般式(30)において、R129は、水素又は炭素数1~10のアルキル基を表す。一般式(24)において、cは、1が好ましく、eは、1が好ましい。一般式(25)において、R126は、水素又は炭素数1~4のアルキル基が好ましく、水素又はメチル基がより好ましい。R127及びR128は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1~4のアルキル基が好ましく、水素がより好ましい。一般式(30)において、R129は、水素又は炭素数1~4のアルキル基が好ましく、水素又はメチル基がより好ましい。一般式(24)において、cが、1であると、現像後の残渣発生を抑制することができるとともに、ハーフトーン特性を向上させることができる。
【0230】
(B3)柔軟鎖含有脂肪族ラジカル重合性化合物としては、一般式(27)で表される化合物及び/又は一般式(28)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0231】
【化22】
一般式(27)において、X28は、2価の有機基を表す。Y28~Y33は、それぞれ独立して、直接結合又は前記一般式(24)で表される基を表し、Y28~Y33のうち、少なくとも1つは前記一般式(24)で表される基である。P12~P17は、それぞれ独立して、水素又は前記一般式(25)で表される基を表し、P12~P17のうち、少なくとも2つは前記一般式(25)で表される基である。a、b、c、d、e及びfは、それぞれ独立して、0又は1を表し、gは、0~10の整数を表す。
一般式(27)において、X28は、炭素数1~10の脂肪族構造、炭素数4~20の脂環式構造及び炭素数6~30の芳香族構造から選ばれる一種類以上を有する2価の有機基が好ましい。a、b、c、d、e及びfは、それぞれ独立して、1が好ましく、gは、0~5の整数が好ましい。上記の脂肪族構造、脂環式構造及び芳香族構造は、ヘテロ原子を有してもよく、無置換体又は置換体のいずれであっても構わない。一般式(27)において、Y28~Y33のうち、前記一般式(24)で表される基は2つ以上が好ましく、3つ以上がより好ましく、4つ以上がさらに好ましい。Y28~Y33のうち、前記一般式(24)で表される基が2つ以上であると、露光時の感度を向上できるとともに、現像後の残渣発生を抑制することができる。加えて、ハーフトーン特性を向上させることができる。
【0232】
一般式(28)において、X29は、2価の有機基を表す。X30及びX31は、それぞれ独立して、直接結合又は炭素数1~10のアルキレン鎖を表す。Y34~Y37は、それぞれ独立して、直接結合又は前記一般式(24)で表される基を表し、Y34~Y37のうち、少なくとも1つは前記一般式(24)で表される基である。R69及びR70は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1~10のアルキル基を表す。P18~P21は、それぞれ独立して、水素又は前記一般式(25)で表される基を表し、P18~P21のうち、少なくとも2つは前記一般式(25)で表される基である。h、i、j及びkは、それぞれ独立して、0又は1を表し、lは、0~10の整数を表す。
【0233】
一般式(28)において、X29は、炭素数1~10の脂肪族構造、炭素数4~20の脂環式構造及び炭素数6~30の芳香族構造から選ばれる一種類以上を有する2価の有機基が好ましい。h、i、j及びkは、それぞれ独立して、1が好ましく、lは、0~5の整数が好ましい。上記のアルキル基、アルキレン鎖、脂肪族構造、脂環式構造及び芳香族構造は、ヘテロ原子を有してもよく、無置換体又は置換体のいずれであっても構わない。一般式(28)において、Y34~Y37のうち、前記一般式(24)で表される基は2つ以上が好ましく、3つ以上がより好ましく、4つ以上がさらに好ましい。Y34~Y37のうち、前記一般式(24)で表される基が2つ以上であると、露光時の感度を向上できるとともに、現像後の残渣発生を抑制することができる。
【0234】
(B3)柔軟鎖含有脂肪族ラジカル重合性化合物としては、少なくとも1つのラクトン変性鎖及び/又は少なくとも1つのラクタム変性鎖を有することが好ましい。(B3)柔軟鎖含有脂肪族ラジカル重合性化合物が、少なくとも1つのラクトン変性鎖及び/又は少なくとも1つのラクタム変性鎖を有することで、現像後の残渣発生を抑制することができるとともに、ハーフトーン特性を向上させることができる。
(B3)柔軟鎖含有脂肪族ラジカル重合性化合物が、前記一般式(27)で表される化合物又は前記一般式(28)で表される化合物である場合、前記一般式(24)において、cが、1であって、eが、1であると、(B3)柔軟鎖含有脂肪族ラジカル重合性化合物が、少なくとも1つのラクトン変性鎖及び/又は少なくとも1つのラクタム変性鎖を有する。
【0235】
(B3)柔軟鎖含有脂肪族ラジカル重合性化合物が分子中に有するエチレン性不飽和二重結合基数は、2個以上が好ましく、3個以上がより好ましく、4個以上がさらに好ましい。エチレン性不飽和二重結合基数が2個以上であると、露光時の感度を向上させることができる。一方、(B3)柔軟鎖含有脂肪族ラジカル重合性化合物が分子中に有するエチレン性不飽和二重結合基数は、12個以下が好ましく、10個以下がより好ましく、8個以下がさらに好ましく、6個以下が特に好ましい。エチレン性不飽和二重結合基数が12個以下であると、熱硬化後に低テーパー形状のパターンを形成できるとともに、熱硬化前後におけるパターン開口寸法幅変化を抑制することができる。加えて、ハーフトーン特性を向上させることができる。
【0236】
(B3)柔軟鎖含有脂肪族ラジカル重合性化合物が分子中に有するエチレン性不飽和二重結合基としては、露光時の感度向上及び現像後の残渣抑制の観点から、ラジカル重合の進行しやすい、(メタ)アクリル基が好ましく、分子中に(メタ)アクリル基を2つ以上有することがより好ましい。
【0237】
(B3)柔軟鎖含有脂肪族ラジカル重合性化合物の二重結合当量は、100g/mol以上が好ましく、120g/mol以上がより好ましく、150g/mol以上がさらに好ましく、170g/mol以上がさらにより好ましく、200g/mol以上が特に好ましい。二重結合当量が、100g/mol以上であると、露光時の感度を向上できるとともに、現像後の残渣発生を抑制することができる。加えて、熱硬化前後における、パターン開口寸法幅変化を抑制することができるとともに、ハーフトーン特性を向上させることができる。一方、(B3)柔軟鎖含有脂肪族ラジカル重合性化合物の二重結合当量は、800g/mol以下が好ましく、600g/mol以下がより好ましく、500g/mol以下がさらに好ましく、450g/mol以下が特に好ましい。二重結合当量が、800g/mol以下であると、露光時の感度を向上できるとともに、現像後の残渣発生を抑制することができる。加えて、熱硬化前後におけるパターン開口寸法幅変化を抑制することができるとともに、ハーフトーン特性を向上させることができる。
【0238】
(B3)柔軟鎖含有脂肪族ラジカル重合性化合物の分子量は、500以上が好ましく、700以上がより好ましく、800以上がさらに好ましく、900以上がさらにより好ましく、1,000以上が特に好ましい。分子量が、700以上であると、露光時の感度を向上できるとともに、現像後の残渣発生を抑制することができる。加えて、熱硬化前後におけるパターン開口寸法幅変化を抑制することができるとともに、ハーフトーン特性を向上させることができる。一方、(B3)柔軟鎖含有脂肪族ラジカル重合性化合物の分子量は、3,000以下が好ましく、2,700以下がより好ましく、2,400以下がさらに好ましく、2,200以下が特に好ましい。分子量が、3,000以下であると、露光時の感度を向上できるとともに、現像後の残渣発生を抑制することができる。加えて、熱硬化前後における、パターン開口寸法幅変化を抑制することができるとともに、ハーフトーン特性を向上させることができる。
【0239】
(B3)柔軟鎖含有脂肪族ラジカル重合性化合物としては、少なくとも1つのラクトン変性鎖及び/又は少なくとも1つのラクタム変性鎖を有し、かつ、分子中に有するエチレン性不飽和二重結合基数が2個である化合物(以下、「柔軟鎖含有二官能脂肪族ラジカル重合性化合物」)も好ましい。柔軟鎖含有二官能脂肪族ラジカル重合性化合物を含有させることで、現像後に低テーパー形状のパターンを形成することができ、さらに、熱硬化時におけるパターン裾のリフローが抑制されることで、熱硬化前後におけるパターン開口寸法幅変化を抑制できる。これは、エチレン性不飽和二重結合基が2個であるため、露光時に膜表面における過剰な硬化が阻害される一方、少なくとも1つのラクトン変性鎖及び/又は少なくとも1つのラクタム変性鎖を有することで、膜深部におけるエチレン性不飽和二重結合基同士の衝突確率が高くなり、UV硬化が促進され、架橋密度が向上したためと推測される。加えて、柔軟鎖含有二官能脂肪族ラジカル重合性化合物を含有させることで、現像後のパターン形状制御による、低テーパー形状のパターン形成が可能となることから、ハーフトーン特性を向上させることができる。
【0240】
柔軟鎖含有二官能脂肪族ラジカル重合性化合物としては、前記一般式(27)で表される化合物において、P12~P17のうち、2つが前記一般式(25)で表される基であって、前記一般式(24)において、cが、1であって、eが、1である化合物が好ましい。前記一般式(28)で表される化合物において、P18~P21のうち、2つが前記一般式(25)で表される基であって、前記一般式(24)において、cが、1であって、eが、1である化合物も好ましい。柔軟鎖含有二官能脂肪族ラジカル重合性化合物としては、一般式(32)で表される化合物も好ましい。
【0241】
【化23】
一般式(32)において、X39及びX40は、それぞれ独立して、2価の有機基を表す。Y40及びY41は、それぞれ独立して、直接結合又は前記一般式(24)で表される基を表し、Y40及びY41のうち、少なくとも1つは前記一般式(24)で表される基である。Z38は、直接結合又は酸素を表す。P24及びP25は、前記一般式(25)で表される基を表す。m及びnは、それぞれ独立して、0又は1を表す。前記一般式(24)において、cは、1であって、eは、1である。一般式(32)において、X39及びX40は、炭素数1~10の脂肪族構造、炭素数4~20の脂環式構造及び炭素数6~30の芳香族構造から選ばれる一種類以上を有する2価の有機基が好ましく、炭素数1~6の脂肪族構造、炭素数4~15の脂環式構造及び炭素数6~25の芳香族構造から選ばれる一種類以上を有する2価の有機基がより好ましい。c及びdは、それぞれ独立して、1が好ましい。上記の脂肪族構造、脂環式構造及び芳香族構造は、ヘテロ原子を有してもよく、無置換体又は置換体のいずれであっても構わない。
【0242】
(B3)柔軟鎖含有脂肪族ラジカル重合性化合物の具体例としては、分子中に有するエチレン性不飽和二重結合基数が3個以上の化合物として、例えば、エトキシ化ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、δ-バレロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、γ-ブチロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、β-プロピオラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート若しくはε-カプロラクトン変性1,3,5-トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌル酸、“KAYARAD”(登録商標) DPEA-12、同 DPCA-20、同 DPCA-30、同 DPCA-60若しくは同 DPCA-120(以上、何れも日本化薬(株)製)又は“NK ESTER”(登録商標) A-DPH-6E、同 A-DPH-6P、同 M-DPH-6E、同 A-9300-1CL若しくは同 A-9300-3CL(以上、何れも新中村化学工業(株)製)が挙げられる。
【0243】
分子中に有するエチレン性不飽和二重結合基数が2個の化合物として、例えば、ε-カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性グリセリンジ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性1,3-ビス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌル酸若しくはε-カプロラクトン変性1,3-ビス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌル酸又は“KAYARAD”(登録商標) HX-220若しくは同 HX-620(以上、何れも日本化薬(株)製)が挙げられる。
(B3)柔軟鎖含有脂肪族ラジカル重合性化合物は、公知の方法により、合成することができる。
【0244】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物に占める(B3)柔軟鎖含有脂肪族ラジカル重合性化合物の含有量は、(A)アルカリ可溶性樹脂及び(B)ラジカル重合性化合物の合計を100質量部とした場合において、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、15質量部以上がさらに好ましく、20質量部以上が特に好ましい。含有量が5質量部以上であると、露光時の感度を向上できるとともに、現像後の残渣発生を抑制することができる。加えて、熱硬化前後における、パターン開口寸法幅変化を抑制することができる。一方、(B3)柔軟鎖含有脂肪族ラジカル重合性化合物の含有量は、45質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、35質量部以下がさらに好ましく、30質量部以下が特に好ましい。含有量が45質量部以下であると、低テーパーのパターン形状の硬化膜を得ることができる。
【0245】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物としては、(B)ラジカル重合性化合物が、(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物、及び/又は、(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物を含有し、かつ(B3)柔軟鎖含有脂肪族ラジカル重合性化合物を含有することが好ましい。本発明のネガ型感光性樹脂組成物において、(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物、(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物、及び、(B3)柔軟鎖含有脂肪族ラジカル重合性化合物の合計100質量%に占める、(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物及び(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物の含有比率の合計は、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、10質量%以上がさらにより好ましく、15質量%以上が特に好ましい。含有比率が1質量%以上であると、露光時の感度を向上、及び、現像後のパターン形状制御による低テーパー形成が可能になるとともに、熱硬化後に低テーパー形状のパターンを形成することができる。加えて、熱硬化前後におけるパターン開口寸法幅変化を抑制することができる。また、ハーフトーン特性を向上させることができる。一方、(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物及び(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物の含有比率の合計は、70質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましく、55質量%以下がさらにより好ましく、50質量%以下が特に好ましい。含有比率が70質量%以下であると、露光時の感度を向上できるとともに、現像後の残渣発生を抑制することができる。加えて、熱硬化前後における、パターン開口寸法幅変化を抑制することができる。
【0246】
<ネガ型感光性>
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、さらに、(C)感光剤として、(C1)光重合開始剤を含有する。
【0247】
<(C1)光重合開始剤>
(C1)光重合開始剤とは、露光によって結合開裂及び/又は反応してラジカルを発生する化合物をいう。(C1)光重合開始剤を含有させることで、前述した(B)ラジカル重合性化合物のラジカル重合が進行し、樹脂組成物の膜の露光部がアルカリ現像液に対して不溶化することで、ネガ型のパターンを形成することができる。また、露光時のUV硬化が促進されて、感度を向上させることができる。
【0248】
また、(C1)光重合開始剤を特定量以上含有させることで、熱硬化前後における、パターン開口寸法幅変化を抑制することができる。これは、露光時における(C1)光重合開始剤に由来するラジカル発生量の増加に起因すると考えられる。すなわち、露光時におけるラジカル発生量を増加させることで、発生したラジカルと、前記(B)ラジカル重合性化合物中のエチレン性不飽和二重結合基との衝突確率が高くなり、UV硬化が促進され、架橋密度が向上することで、熱硬化時におけるパターンのテーパー部及びパターン裾のリフローが抑制されることで、熱硬化前後におけるパターン開口寸法幅変化を抑制できると推測される。
【0249】
(C1)光重合開始剤としては、例えば、ベンジルケタール系光重合開始剤、α-ヒドロキシケトン系光重合開始剤、α-アミノケトン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、アクリジン系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、芳香族ケトエステル系光重合開始剤又は安息香酸エステル系光重合開始剤が好ましく、露光時の感度向上の観点から、α-ヒドロキシケトン系光重合開始剤、α-アミノケトン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、アクリジン系光重合開始剤又はベンゾフェノン系光重合開始剤がより好ましく、α-アミノケトン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤がさらに好ましい。
【0250】
ベンジルケタール系光重合開始剤としては、例えば、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンが挙げられる。
【0251】
α-ヒドロキシケトン系光重合開始剤としては、例えば、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン又は2-ヒドロキシ-1-[4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル]-2-メチルプロパン-1-オンが挙げられる。
【0252】
α-アミノケトン系光重合開始剤としては、例えば、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン又は3,6-ビス(2-メチル-2-モルホリノプロピオニル)-9-オクチル-9H-カルバゾールが挙げられる。
【0253】
アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド又はビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィンオキシドが挙げられる。
【0254】
オキシムエステル系光重合開始剤としては、例えば、1-フェニルプロパン-1,2-ジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニルブタン-1,2-ジオン-2-(O-メトキシカルボニル)オキシム、1,3-ジフェニルプロパン-1,2,3-トリオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシム、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]オクタン-1,2-ジオン-2-(O-ベンゾイル)オキシム、1-[4-[4-カルボキシフェニルチオ]フェニル]プロパン-1,2-ジオン-2-(O-アセチル)オキシム、1-[4-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニルチオ]フェニル]プロパン-1,2-ジオン-2-(O-アセチル)オキシム、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-3-シクロペンチルプロパン-1,2-ジオン-2-(O-ベンゾイル)オキシム、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-2-シクロペンチルエタン-1,2-ジオン-2-(O-アセチル)オキシム、1-[9,9-ジエチルフルオレン-2-イル]プロパン-1,2-ジオン-2-(O-アセチル)オキシム、1-[9,9-ジ-n-プロピル-7-(2-メチルベンゾイル)-フルオレン-2-イル]エタノン-1-(O-アセチル)オキシム、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン-1-(O-アセチル)オキシム、1-[9-エチル-6-[2-メチル-4-[1-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルオキシ]ベンゾイル]-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン-1-(O-アセチル)オキシム、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-3-シクロペンチルプロパン-1-オン-1-(O-アセチル)オキシム又は1-(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)-1-[2-メチル-4-(1-メトキシプロパン-2-イルオキシ)フェニル]メタノン-1-(O-アセチル)オキシムが挙げられる。
【0255】
アクリジン系光重合開始剤としては、例えば、1,7-ビス(アクリジン-9-イル)-n-ヘプタンが挙げられる。
【0256】
チタノセン系光重合開始剤としては、例えば、ビス(η-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス[2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル]チタン(IV)又はビス(η-3-メチル-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロフェニル)チタン(IV)が挙げられる。
【0257】
ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、4,4-ジクロロベンゾフェノン、4-ヒドロキシベンゾフェノン、アルキル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラキス(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、ジベンジルケトン又はフルオレノンが挙げられる。
【0258】
アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,3-ジエトキシアセトフェノン、4-t-ブチルジクロロアセトフェノン、ベンザルアセトフェノン又は4-アジドベンザルアセトフェノンが挙げられる。
【0259】
芳香族ケトエステル系光重合開始剤としては、例えば、2-フェニル-2-オキシ酢酸メチルが挙げられる。
【0260】
安息香酸エステル系光重合開始剤としては、例えば、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸(2-エチル)ヘキシル、4-ジエチルアミノ安息香酸エチル又は2-ベンゾイル安息香酸メチルが挙げられる。
【0261】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物に占める(C1)光重合開始剤の含有量は、(A)アルカリ可溶性樹脂及び(B)ラジカル重合性化合物の合計を100質量部とした場合において、10質量部以上が好ましく、12質量部以上がより好ましく、14質量部以上がさらに好ましく、15質量部以上が特に好ましい。含有量が10質量部以上であると、熱硬化前後における、パターン開口寸法幅変化を抑制することができる。一方、(C1)光重合開始剤の含有量は、30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましく、22質量部以下がさらに好ましく、20質量部以下が特に好ましい。含有量が30質量部以下であると、現像後の解像度を向上させることができるとともに、低テーパー形状のパターンの硬化膜を得ることができる。
【0262】
<(C2)光酸発生剤>
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、さらに、(C)感光剤として、(C2)光酸発生剤を含有しても構わない。(C2)光酸発生剤とは、露光によって結合開裂を起こして酸を発生する化合物をいう。
【0263】
(C2)光酸発生剤を含有させることで、露光時のUV硬化が促進されて、感度を向上させることができる。また、樹脂組成物の熱硬化後の架橋密度が向上し、硬化膜の耐薬品性を向上させることができる。(C2)光酸発生剤としては、イオン性化合物と、非イオン性化合物と、がある。
【0264】
イオン性化合物の(C2)光酸発生剤としては、重金属、ハロゲンイオンを含まないものが好ましく、トリオルガノスルホニウム塩系化合物がより好ましい。トリオルガノスルホニウム塩系化合物としては、例えば、トリフェニルスルホニウムの、メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩又は4-トルエンスルホン酸塩;ジメチル-1-ナフチルスルホニウムのメタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩又は4-トルエンスルホン酸塩;ジメチル(4-ヒドロキシ-1-ナフチル)スルホニウムの、メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩又は4-トルエンスルホン酸塩;ジメチル(4,7-ジヒドロキシ-1-ナフチル)スルホニウムの、メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩又は4-トルエンスルホン酸塩;ジフェニルヨードニウムのメタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩又は4-トルエンスルホン酸塩が挙げられる。
【0265】
非イオン性化合物の(C2)光酸発生剤としては、例えば、ハロゲン含有化合物、ジアゾメタン化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、カルボン酸エステル化合物、スルホンイミド化合物、リン酸エステル化合物又はスルホンベンゾトリアゾール化合物が挙げられる。
【0266】
これらの(C2)光酸発生剤のうち、溶解性と硬化膜の絶縁性の観点から、イオン性化合物よりも非イオン性化合物の方が好ましい。発生する酸の強さの観点から、ベンゼンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸又はリン酸を発生するものがより好ましい。j線(波長313nm)、i線(波長365nm)、h線(波長405nm)又はg線(波長436nm)に対する量子収率の高さによる高感度と、硬化膜の透明性の観点から、スルホン酸エステル化合物、スルホンイミド化合物やイミノスルホン酸エステル化合物がさらに好ましい。
【0267】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物に占める(C2)光酸発生剤の含有量は、(A)アルカリ可溶性樹脂及び(B)ラジカル重合性化合物の合計を100質量部とした場合において、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、0.7質量部以上がさらに好ましく、1質量部以上が特に好ましい。含有量が0.1質量部以上であると、露光時の感度を向上させることができる。一方、(C2)光酸発生剤の含有量は、25質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、17質量部以下がさらに好ましく、15質量部以下が特に好ましい。含有量が25質量部以下であると、現像後の解像度を向上させることができるとともに、低テーパーのパターン形状を得ることができる。
【0268】
<(D)着色剤、(Da)黒色剤及び(Db)黒色以外の着色剤>
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、さらに、(D)着色剤として(Da)黒色剤を含有する。(D)着色剤とは、特定波長の光を吸収する化合物であり、特に、可視光線の波長(380~780nm)の光を吸収することで、着色する化合物をいう。
【0269】
(D)着色剤を含有させることで、ネガ型感光性樹脂組成物から得られる膜を着色させることができ、樹脂組成物の膜を透過する光、又は、樹脂組成物の膜から反射する光を、所望の色に着色させる、着色性を付与することができる。また、樹脂組成物の膜を透過する光、又は、樹脂組成物の膜から反射する光から、(D)着色剤が吸収する波長の光を遮光する、遮光性を付与することができる。
【0270】
(D)着色剤としては、可視光線の波長の光を吸収し、白、赤、橙、黄、緑、青又は紫色に着色する化合物が挙げられる。これらの着色剤を二色以上組み合わせることで、樹脂組成物の膜を透過する光、又は、樹脂組成物の膜から反射する光を、所望の色座標に調色する、調色性を向上させることができる。
【0271】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、(D)着色剤として、(Da)黒色剤を必須成分として含有する。(Da)黒色剤とは、可視光線の波長の光を吸収することで、黒色に着色する化合物をいう。(Da)黒色剤を含有させることで、樹脂組成物の膜が黒色化するため、樹脂組成物の膜を透過する光、又は、樹脂組成物の膜から反射する光を遮光する、遮光性を向上させることができる。このため、カラーフィルタのブラックマトリックス又は液晶ディスプレイのブラックカラムスペーサーなどの遮光膜や、有機ELディスプレイの画素分割層又はTFT平坦化層など、外光反射の抑制によって高コントラスト化が要求される用途に好適である。
【0272】
(D)着色剤における黒色とは、Color Index Generic Number(以下、「C.I.ナンバー」)に“BLACK”が含まれるものをいう。C.I.ナンバーが付与されていないものは、硬化膜とした場合に黒色であるものをいう。二色以上のC.I.ナンバーが黒色でない(D)着色剤の混合物、及び、C.I.ナンバーが付与されていない(D)着色剤を少なくとも一つ含む、二色以上の(D)着色剤の混合物における黒色とは、硬化膜とした場合に黒色であるものをいう。硬化膜とした場合における黒色とは、(D)着色剤を含有する樹脂組成物の硬化膜の透過スペクトルにおいて、波長550nmにおける膜厚1.0μmあたりの透過率を、ランベルト・ベールの式に基づいて、波長550nmにおける透過率が10%となるように膜厚を0.1~1.5μmの範囲内で換算した場合に、換算後の透過スペクトルにおける、波長450~650nmにおける透過率が、25%以下であることをいう。
【0273】
硬化膜の透過スペクトルは、以下の方法で求めることができる。少なくとも任意のバインダー樹脂及び(D)着色剤を含む樹脂組成物を、樹脂組成物の全固形分中に占める(D)着色剤の含有比率が35質量%となるように調製する。テンパックスガラス基板(AGCテクノグラス社製)上に、該樹脂組成物の膜を塗布した後、110℃で2分間プリベークして成膜してプリベーク膜を得る。次に、高温イナートガスオーブン(INH-9CD-S;光洋サーモシステム社製)を用いて、窒素雰囲気下、250℃で60分間熱硬化させ、(D)着色剤を含有する樹脂組成物の膜厚1.0μmの硬化膜(以下、「着色剤含有硬化膜」)を作製する。また、前記バインダー樹脂を含み、かつ、(D)着色剤を含有しない樹脂組成物を調製し、上記と同様の方法でテンパックスガラス基板上に、塗布、プリベーク及び熱硬化させ、(D)着色剤を含有しない樹脂組成物の膜厚1.0μmの硬化膜(以下、「ブランク用硬化膜」)を作製する。紫外可視分光光度計(MultiSpec-1500;島津製作所社製)を用いて、まず、ブランク硬化膜を膜厚1.0μmで成膜したテンパックスガラス基板を測定し、その紫外可視吸収スペクトルをブランクとする。次に、作製した着色剤含有硬化膜を成膜したテンパックスガラス基板をシングルビームで測定し、波長450~650nmにおける膜厚1.0μmあたりの透過率を求め、ブランクとの差分から着色剤含有硬化膜の透過率を算出する。
【0274】
(Da)黒色剤としては、遮光性の観点から、可視光線の全波長の光を吸収し、黒色に着色する化合物が好ましい。また、白、赤、橙、黄、緑、青又は紫色の着色剤から選ばれる二色以上の(D)着色剤の混合物も好ましい。これらの(D)着色剤を二色以上組み合わせることで、擬似的に黒色に着色することができ、遮光性を向上させることができる。
【0275】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物としては、前記(Da)黒色剤が、後述する(D1a)黒色顔料、(D2a-1)黒色染料及び(D2a-2)二色以上の染料混合物から選ばれる一種類以上を含有することが好ましく、遮光性の観点から、後述する(D1a)黒色顔料を含有することがより好ましい。
【0276】
(Db)黒色以外の着色剤とは、可視光線の波長の光を吸収することで、着色する化合物をいう。すなわち、前述した、黒色を除く、白、赤、橙、黄、緑、青又は紫色に着色する着色剤である。(Da)黒色剤及び(Db)黒色以外の着色剤を含有させることで、樹脂組成物の膜に遮光性、並びに、着色性及び/又は調色性を付与することができる。
【0277】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物としては、前記(Db)黒色以外の着色剤が、後述する(D1b)黒色以外の顔料及び/又は(D2b)黒色以外の染料を含有することが好ましく、遮光性、及び、耐熱性又は耐候性の観点から、後述する(D1b)黒色以外の顔料を含有することがより好ましい。
【0278】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物において、(A)アルカリ可溶性樹脂、(D)着色剤、及び後述する(E)分散剤の合計100質量%に占める、(D)着色剤の含有比率は、15質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、25質量%以上がさらに好ましく、30質量%以上が特に好ましい。含有比率が15質量%以上であると、遮光性、着色性又は調色性を向上させることができる。一方、(D)着色剤の含有比率は、80質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましく、65質量%以下が特に好ましい。含有比率が80質量%以下であると、露光時の感度を向上させることができる。
【0279】
また、溶剤を除く、本発明のネガ型感光性樹脂組成物の全固形分中に占める(D)着色剤の含有比率は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上が特に好ましい。含有比率が5質量%以上であると、遮光性、着色性又は調色性を向上させることができる。一方、(D)着色剤の含有比率は、70質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましく、55質量%以下がさらにより好ましく、50質量%以下が特に好ましい。含有比率が70質量%以下であると、露光時の感度を向上させることができる。
本発明のネガ型感光性樹脂組成物において、(Da)黒色剤の好ましい含有比率は、前記(D)着色剤の好ましい含有比率の通りである。
【0280】
<(D1)顔料、(D1-1)有機顔料及び(D1-2)無機顔料>
本発明のネガ型感光性樹脂組成物としては、前記(D)着色剤が、(D1)顔料を含有することが好ましい。前記(D)着色剤が、(D1)顔料を含有する態様としては、前記(Da)黒色剤を必ず含有し、任意に(Db)黒色以外の着色剤を含有することができる。
【0281】
(D1)顔料とは、対象物の表面に(D1)顔料が物理吸着、又は、対象物の表面と(D1)顔料と、が相互作用などをすることで、対象物を着色させる化合物をいい、一般的に溶剤等に不溶である。また、(D1)顔料による着色は隠蔽性が高く、紫外線等による色褪せがしにくい。(D1)顔料を含有させることで、隠蔽性に優れた色に着色することでき、樹脂組成物の膜の遮光性及び耐候性を向上させることができる。
【0282】
(D1)顔料の数平均粒子径は、1~1,000nmが好ましく、5~500nmがより好ましく、10~200nmがさらに好ましい。(D1)顔料の数平均粒子径が1~1,000nmであると、樹脂組成物の膜の遮光性及び(D1)顔料の分散安定性を向上させることができる。
【0283】
ここで、(D1)顔料の数平均粒子径は、サブミクロン粒度分布測定装置(N4-PLUS;べックマン・コールター(株)製)又はゼータ電位・粒子径・分子量測定装置(ゼータサイザーナノZS;シスメックス(株)製)を用いて、溶液中の(D1)顔料のブラウン運動によるレーザー散乱を測定する(動的光散乱法)ことで求めることができる。また、樹脂組成物から得られる硬化膜中の(D1)顔料の数平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(以下、「SEM」)及び透過型電子顕微鏡(以下、「TEM」)を用いて測定することで求めることができる。拡大倍率を50,000~200,000倍として、(D1)顔料の数平均粒子径を直接測定する。(D1)顔料が真球の場合、真球の直径を測定し、数平均粒子径とする。(D1)顔料が真球でない場合、最も長い径(以下、「長軸径」)及び長軸径と直交する方向において最も長い径(以下、「短軸径」)を測定し、長軸径と短軸径を平均した、二軸平均径を数平均粒子径とする。
【0284】
(D1)顔料としては、例えば、(D1-1)有機顔料又は(D1-2)無機顔料が挙げられる。(D1-1)有機顔料としては、例えば、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、スレン系顔料、インドリン系顔料、ベンゾフラノン系顔料、ペリレン系顔料、アニリン系顔料、アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料又はカーボンブラックが挙げられる。(D1-2)無機顔料としては、例えば、酸化チタン、炭酸バリウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ホワイトカーボン、アルミナホワイト、二酸化ケイ素、グラファイト若しくは銀スズ合金、又は、チタン、銅、鉄、マンガン、コバルト、クロム、ニッケル、亜鉛、カルシウム若しくは銀などの金属の微粒子、酸化物、複合酸化物、硫化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、窒化物、炭化物若しくは酸窒化物が挙げられる
溶剤を除く、本発明のネガ型感光性樹脂組成物の全固形分中に占める、(D1)顔料、(D1-1)有機顔料及び(D1-2)無機顔料の好ましい含有比率は、前記(D)着色剤の好ましい含有比率の通りである。
【0285】
<(D1a)黒色顔料及び(D1b)黒色以外の顔料>
本発明のネガ型感光性樹脂組成物としては、前記(D1)顔料が、(D1a)黒色顔料、又は、(D1a)黒色顔料及び(D1b)黒色以外の顔料を含有することが好ましい。
【0286】
(D1a)黒色顔料とは、可視光線の波長の光を吸収することで、黒色に着色する顔料をいう。(D1a)黒色顔料を含有させることで、樹脂組成物の膜が黒色化するとともに、隠蔽性に優れるため、樹脂組成物の膜の遮光性を向上させることができる。
【0287】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物としては、前記(Da)黒色剤が(D1a)黒色顔料であり、この(D1a)黒色顔料が、後述する(D1a-1)黒色有機顔料、(D1a-2)黒色無機顔料及び(D1a-3)二色以上の着色顔料混合物から選ばれる一種類以上であることが好ましい。
【0288】
(D1b)黒色以外の顔料とは、可視光線の波長の光を吸収することで、黒色を除く、紫、青、緑、黄、橙、赤又は白色に着色する顔料をいう。(D1b)黒色以外の顔料を含有させることで、樹脂組成物の膜を着色させることができ、着色性又は調色性を付与することができる。(D1b)黒色以外の顔料を二色以上組み合わせることで、樹脂組成物の膜を所望の色座標に調色することができ、調色性を向上させることができる。(D1b)黒色以外の顔料としては、後述する、黒色を除く、白、赤、橙、黄、緑、青又は紫色に着色する顔料が挙げられる。
【0289】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物としては、前記(D1b)黒色以外の顔料が、後述する(D1b-1)黒色以外の有機顔料及び/又は(D1b-2)黒色以外の無機顔料であることが好ましい。
【0290】
<(D1a-1)黒色有機顔料、(D1a-2)黒色無機顔料及び(D1a-3)二色以上の顔料混合物>
本発明のネガ型感光性樹脂組成物としては、前記(D1a)黒色顔料が、(D1a-1)黒色有機顔料、(D1a-2)黒色無機顔料及び(D1a-3)二色以上の着色顔料混合物から選ばれる一種類以上であることが好ましい。
【0291】
(D1a-1)黒色有機顔料とは、可視光線の波長の光を吸収することで、黒色に着色する有機顔料をいう。(D1a-1)黒色有機顔料を含有させることで、樹脂組成物の膜が黒色化するとともに、隠蔽性に優れるため、樹脂組成物の膜の遮光性を向上させることができる。さらに、有機物であるため、化学構造変化又は官能変換により、所望の特定波長の光を透過又は遮光するなど、樹脂組成物の膜の透過スペクトル又は吸収スペクトルを調整し、調色性を向上させることができる。また、(D1a-1)黒色有機顔料は、一般的な無機顔料と比較して、絶縁性及び低誘電性に優れるため、(D1a-1)黒色有機顔料を含有させることで、膜の抵抗値を向上することができる。特に、有機ELディスプレイの画素分割層等の絶縁層などとして用いた場合に、発光不良等を抑制し、信頼性を向上させることができる。
【0292】
(D1a-1)黒色有機顔料としては、例えば、アントラキノン系黒色顔料、ベンゾフラノン系黒色顔料、ペリレン系黒色顔料、アニリン系黒色顔料、アゾ系黒色顔料、アゾメチン系黒色顔料又はカーボンブラックが挙げられる。カーボンブラックとしては、例えば、チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック及びランプブラックが挙げられる。遮光性の観点から、チャンネルブラックが好ましい。
【0293】
(D1a-2)黒色無機顔料とは、可視光線の波長の光を吸収することで、黒色に着色する無機顔料をいう。(D1a-2)黒色無機顔料を含有させることで、樹脂組成物の膜が黒色化するとともに、隠蔽性に優れるため、樹脂組成物の膜の遮光性を向上させることができる。さらに、無機物であり、耐熱性及び耐候性により優れるため、樹脂組成物の膜の耐熱性及び耐候性を向上させることができる。
【0294】
(D1a-2)黒色無機顔料としては、例えば、グラファイト若しくは銀スズ合金、又は、チタン、銅、鉄、マンガン、コバルト、クロム、ニッケル、亜鉛、カルシウム若しくは銀などの金属の微粒子、酸化物、複合酸化物、硫化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、窒化物、炭化物若しくは酸窒化物が挙げられる。遮光性向上の観点から、チタン若しくは銀の微粒子、酸化物、複合酸化物、硫化物、窒化物、炭化物若しくは酸窒化物が好ましく、チタンの窒化物若しくは酸窒化物がより好ましい。
【0295】
(D1a-3)二色以上の顔料混合物とは、白、赤、橙、黄、緑、青又は紫色の顔料から選ばれる二色以上の顔料を組み合わせることで、擬似的に黒色に着色する、顔料混合物をいう。(D1a-3)二色以上の顔料混合物を含有させることで、樹脂組成物の膜が黒色化するとともに、隠蔽性に優れるため、樹脂組成物の膜の遮光性を向上させることができる。さらに、二色以上の顔料を混合するため、所望の特定波長の光を透過又は遮光するなど、樹脂組成物の膜の透過スペクトル又は吸収スペクトルを調整し、調色性を向上させることができる。
【0296】
黒色有機顔料、黒色無機顔料、赤色顔料、橙色顔料、黄色顔料、緑色顔料、青色顔料及び紫色顔料としては、公知のものを用いることができる。白色に着色する顔料としては、例えば、酸化チタン、炭酸バリウム、酸化ジルコニウム、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ホワイトカーボン、アルミナホワイト、二酸化ケイ素、カオリンクレー、タルク又はベントナイトが挙げられる。
【0297】
<(D1b-1)黒色以外の有機顔料、(D1b-2)黒色以外の無機顔料>
本発明のネガ型感光性樹脂組成物としては、前記(D1b)黒色以外の顔料が、(D1b-1)黒色以外の有機顔料及び/又は(D1b-2)黒色以外の無機顔料であることが好ましい。
【0298】
(D1b-1)黒色以外の有機顔料とは、可視光線の波長の光を吸収することで、黒色を除く、白、赤、橙、黄、緑、青又は紫色に着色する有機顔料をいう。(D1b-1)黒色以外の有機顔料を含有させることで、樹脂組成物の膜を着色させることができ、着色性又は調色性を付与することができる。さらに、有機物であるため、化学構造変化又は官能変換により、所望の特定波長の光を透過又は遮光するなど、樹脂組成物の膜の透過スペクトル又は吸収スペクトルを調整し、調色性を向上させることができる。(D1b-1)黒色以外の有機顔料を二色以上組み合わせることで、樹脂組成物の膜を所望の色座標に調色することができ、調色性を向上させることができる。(D1b-1)黒色以外の有機顔料としては、黒色を除く、白、赤、橙、黄、緑、青又は紫色に着色する有機顔料が挙げられる。
【0299】
(D1b-2)黒色以外の無機顔料とは、可視光線の波長の光を吸収することで、黒色を除く、白、赤、橙、黄、緑、青又は紫色に着色する無機顔料をいう。(D1b-2)黒色以外の無機顔料を含有させることで、樹脂組成物の膜を着色させることができ、着色性又は調色性を付与することができる。さらに、無機物であり、耐熱性及び耐候性により優れるため、樹脂組成物の膜の耐熱性及び耐候性を向上させることができる。(D1b-2)黒色以外の無機顔料を二色以上組み合わせることで、樹脂組成物の膜を所望の色座標に調色することができ、調色性を向上させることができる。(D1b-2)黒色以外の無機顔料を二色以上組み合わせることで、樹脂組成物の膜を所望の色座標に調色することができ、調色性を向上させることができる。(D1b-2)黒色以外の無機顔料としては、黒色を除く、白、赤、橙、黄、緑、青又は紫色に着色する無機顔料が挙げられる。
【0300】
<(D1a-1a)ベンゾフラノン系黒色顔料、(D1a-1b)ペリレン系黒色顔料及び(D1a-1c)アゾ系黒色顔料>
本発明のネガ型感光性樹脂組成物としては、前記(D1a-1)黒色有機顔料が、(D1a-1a)ベンゾフラノン系黒色顔料、(D1a-1b)ペリレン系黒色顔料及び(D1a-1c)アゾ系黒色顔料からなる群より選ばれる一種類以上であることが好ましい。
(D1a-1a)ベンゾフラノン系黒色顔料、(D1a-1b)ペリレン系黒色顔料及び(D1a-1c)アゾ系黒色顔料からなる群より選ばれる一種類以上を含有させることで、樹脂組成物の膜が黒色化するとともに、隠蔽性に優れるため、樹脂組成物の膜の遮光性を向上させることができる。特に、一般的な有機顔料と比較して、樹脂組成物中の顔料の単位含有比率当たりの遮光性に優れるため、少ない含有比率で同等の遮光性を付与することができる。そのため、膜の遮光性を向上することができるとともに、露光時の感度を向上させることができる。さらに、有機物であるため、化学構造変化又は官能変換により、所望の特定波長の光を透過又は遮光するなど、樹脂組成物の膜の透過スペクトル又は吸収スペクトルを調整し、調色性を向上させることができる。特に、近赤外領域の波長(例えば、700nm以上)の透過率を向上させることができるため、遮光性を有し、近赤外領域の波長の光を利用する用途に好適である。また、一般的な有機顔料及び無機顔料と比較して、絶縁性及び低誘電性に優れるため、膜の抵抗値を向上することができる。特に、有機ELディスプレイの画素分割層等の絶縁層などとして用いた場合に、発光不良等を抑制し、信頼性を向上させることができる。
また、(D1a-1a)ベンゾフラノン系黒色顔料は、可視光線の波長の光を吸収する一方、紫外領域の波長(例えば、400nm以下)の透過率が高いため、(D1a-1a)ベンゾフラノン系黒色顔料を含有させることで露光時の感度を向上させることができる。
【0301】
(D1a-1a)ベンゾフラノン系黒色顔料とは、分子中にベンゾフラン-2(3H)-オン構造又はベンゾフラン-3(2H)-オン構造を有する、可視光線の波長の光を吸収することで黒色に着色する化合物をいう。
【0302】
一方、(D1a-1a)ベンゾフラノン系黒色顔料を含有させる場合、前述した通り、前記顔料のアルカリ耐性不足に起因した、顔料由来の現像残渣が発生する場合がある。すなわち、現像時に前記(D1a-1a)ベンゾフラノン系黒色顔料の表面がアルカリ現像液に曝されることで、表面の一部が分解又は溶解し、前記顔料由来の現像残渣として基板上に残存する場合がある。そのような場合、前述した通り、(B3)柔軟鎖含有脂肪族ラジカル重合性化合物、及び、(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物又は(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物を含有させることで、前記顔料由来の現像残渣発生を抑制することができる。
【0303】
(D1a-1a)ベンゾフラノン系黒色顔料としては、一般式(63)~(68)のいずれかで表されるベンゾフラノン化合物、その幾何異性体、その塩、又は、その幾何異性体の塩が好ましい。
【0304】
【化24】
一般式(63)~(65)において、R206、R207、R212、R213、R218及びR219は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基又はフッ素原子を1~20個有する炭素数1~10のアルキル基を表す。R208、R209、R214、R215、R220及びR221は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン原子、R251、COOH、COOR251、COO、CONH、CONHR251、CONR251252、CN、OH、OR251、OCOR251、OCONH、OCONHR251、OCONR251252、NO、NH、NHR251、NR251252、NHCOR251、NR251COR252、N=CH、N=CHR251、N=CR251252、SH、SR251、SOR251、SO251、SO251、SOH、SO 、SONH、SONHR251又はSONR251252を表し、R251及びR252は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数4~10のシクロアルケニル基又は炭素数2~10のアルキニル基を表す。複数のR208、R209、R214、R215、R220又はR221で、直接結合、又は、酸素原子ブリッジ、硫黄原子ブリッジ、NHブリッジ若しくはNR251ブリッジで環を形成しても構わない。R210、R211、R216、R217、R222及びR223は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数6~15のアリール基を表す。a、b、c、d、e及びfは、それぞれ独立して、0~4の整数を表す。上記のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基及びアリール基は、ヘテロ原子を有してもよく、無置換体又は置換体のいずれであっても構わない。
【0305】
【化25】
一般式(66)~(68)において、R253、R254、R259、R260、R265及びR266は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基又はフッ素原子を1~20個有する炭素数1~10のアルキル基を表す。R255、R256、R261、R262、R267及びR268は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン原子、R271、COOH、COOR271、COO、CONH、CONHR271、CONR271272、CN、OH、OR271、OCOR271、OCONH、OCONHR271、OCONR271272、NO、NH、NHR271、NR271272、NHCOR271、NR271COR272、N=CH、N=CHR271、N=CR271272、SH、SR271、SOR271、SO271、SO271、SOH、SO 、SONH、SONHR271又はSONR271272を表し、R271及びR272は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数4~10のシクロアルケニル基又は炭素数2~10のアルキニル基を表す。複数のR255、R256、R261、R262、R267又はR268で、直接結合、又は、酸素原子ブリッジ、硫黄原子ブリッジ、NHブリッジ若しくはNR271ブリッジで環を形成しても構わない。R257、R258、R263、R264、R269及びR270は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数6~15のアリール基を表す。a、b、c、d、e及びfは、それぞれ独立して、0~4の整数を表す。上記のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基及びアリール基は、ヘテロ原子を有してもよく、無置換体又は置換体のいずれであっても構わない。
【0306】
(D1a-1a)ベンゾフラノン系黒色顔料としては、例えば、“IRGAPHOR”(登録商標) BLACK S0100CF(BASF社製)、国際公開第2010-081624号記載の黒色顔料又は国際公開第2010-081756号記載の黒色顔料が挙げられる。
【0307】
(D1a-1b)ペリレン系黒色顔料とは、分子中にペリレン構造を有する、可視光線の波長の光を吸収することで黒色に着色する化合物をいう。
【0308】
(D1a-1b)ペリレン系黒色顔料としては、一般式(69)~(71)のいずれかで表されるペリレン化合物、その幾何異性体、その塩、又は、その幾何異性体の塩が好ましい。
【化26】
一般式(69)~(71)において、X92、X93、X94及びX95は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン鎖を表す。R224及びR225は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシ基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数2~6のアシル基を表す。R273及びR274は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1~10のアルキル基を表す。a及びbは、それぞれ独立して、0~5の整数を表す。上記のアルキレン鎖、アルコキシ基、アシル基及びアルキル基は、ヘテロ原子を有してもよく、無置換体又は置換体のいずれであっても構わない。
【0309】
(D1a-1b)ペリレン系黒色顔料としては、例えば、ピグメントブラック31又は32が挙げられる(数値は何れもC.I.ナンバー)。
【0310】
上記以外に、“PALIOGEN”(登録商標) BLACK S0084、同 K0084、同 L0086、同 K0086、同 EH0788又は同 FK4281(以上、何れもBASF社製)が挙げられる。
【0311】
(D1a-1c)アゾ系黒色顔料とは、分子内にアゾ基を有する、可視光線の波長の光を吸収することで黒色に着色する化合物をいう。
(D1a-1c)アゾ系黒色顔料としては、一般式(72)で表されるアゾ化合物が好ましい。
【化27】
一般式(72)において、X96は、炭素数6~15のアリーレン鎖を表す。Y96は、炭素数6~15のアリーレン鎖を表す。R275、R276及びR277は、それぞれ独立して、ハロゲン又は炭素数1~10のアルキル基を表す。R278は、ハロゲン、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又はニトロ基を表す。R279は、ハロゲン、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~10のアシルアミノ基又はニトロ基を表す。R280、R281、R282及びR283は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1~10のアルキル基を表す。aは、0~4の整数を表し、bは、0~2の整数を表し、cは、0~4の整数を表し、d及びeは、それぞれ独立して、0~8の整数を表し、nは、1~4の整数を表す。上記のアリーレン鎖、アルキル基、アルコキシ基及びアシルアミノ基は、ヘテロ原子を有してもよく、無置換体又は置換体のいずれであっても構わない。
【0312】
(D1a-1c)アゾ系黒色顔料としては、例えば、“CHROMOFINE”(登録商標) BLACK A1103(大日精化工業(株)製)、日本国特開平01-170601号記載の黒色顔料又は日本国特開平02-034664号記載の黒色顔料が挙げられる。
【0313】
溶剤を除く、本発明のネガ型感光性樹脂組成物の全固形分中に占める(D1a-1a)ベンゾフラノン系黒色顔料、(D1a-1b)ペリレン系黒色顔料及び(D1a-1c)アゾ系黒色顔料からなる群より選ばれる一種類以上の含有比率は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上が特に好ましい。含有比率が5質量%以上であると、遮光性及び調色性を向上させることができる。一方、(D1a-1a)ベンゾフラノン系黒色顔料、(D1a-1b)ペリレン系黒色顔料及び(D1a-1c)アゾ系黒色顔料からなる群より選ばれる一種類以上の含有比率は、70質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましく、55質量%以下がさらにより好ましく、50質量%以下が特に好ましい。含有比率が70質量%以下であると、露光時の感度を向上させることができる。
【0314】
<(DC)被覆層>
本発明のネガ型感光性樹脂組成物としては、前記(D1a-1)黒色有機顔料が、さらに、(DC)被覆層を含有することが好ましい。(DC)被覆層とは、例えば、シランカップリング剤による表面処理、ケイ酸塩による表面処理、金属アルコキシドによる表面処理又は樹脂による被覆処理などの処理することで形成される、顔料表面を被覆する層をいう。
【0315】
(DC)被覆層を含有させることで、前記(D1a-1)黒色有機顔料の粒子表面を酸性化、塩基性化、親水性化又は疎水性化させるなど、粒子の表面状態を改質することができ、耐酸性、耐アルカリ性、耐溶剤性、分散安定性又は耐熱性などを向上させることができる。それにより、顔料由来の現像残渣発生を抑制することができる。また、現像時のサイドエッチングが抑制され、現像後に低テーパー形状のパターンを形成することができ、さらに、熱硬化時におけるパターン裾のリフローが抑制されることで、熱硬化前後におけるパターン開口寸法幅変化を抑制できる。加えて、現像後のパターン形状制御による、低テーパー形状のパターン形成が可能となることから、ハーフトーン特性を向上させることができる。また、粒子表面に絶縁性の被覆層を形成させることで、硬化膜の絶縁性を向上させ、リーク電流の低減などにより、ディスプレイの信頼性などを向上させることができる。
【0316】
前記(D1a-1)黒色有機顔料として、特に(D1a-1a)ベンゾフラノン系黒色顔料を含有させる場合、(D1a-1a)ベンゾフラノン系黒色顔料に、(DC)被覆層を含有させることで、前記顔料の耐アルカリ性を向上させることができ、前記顔料由来の現像残渣発生を抑制することができる。
【0317】
前記(D1a-1)黒色有機顔料に対する、(DC)被覆層による平均被覆率は、50%以上が好ましく、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。(DC)被覆層による平均被覆率が、80%以上であると、現像時の残渣発生を抑制することができる。
前記(D1a-1)黒色有機顔料に対する、(DC)被覆層による平均被覆率は、透過型電子顕微鏡(H9500;(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、加速電圧300kVの条件下、拡大倍率を50,000~200,000倍として断面を観察し、無作為に選択した黒色顔料の粒子100個について、下記式により、各黒色顔料の被覆率M(%)を求め、その数平均値を算出することにより、平均被覆率N(%)を求めることができる。
被覆率M(%)={L1/(L1+L2)}×100
L1:粒子の外周のうち、被覆層により覆われた部位の合計長さ(nm)
L2:粒子の外周のうち、被覆層により覆われていない部位(界面と埋め込み樹脂が直接接する部位)の合計長さ(nm)
L1+L2:粒子の外周長さ(nm)。
【0318】
<(DC-1)シリカ被覆層、(DC-2)金属酸化物被覆層及び(DC-3)金属水酸化物被覆層>
(DC)被覆層としては、(DC-1)シリカ被覆層、(DC-2)金属酸化物被覆層及び(DC-3)金属水酸化物被覆層からなる群より選ばれる一種類を含有することが好ましい。シリカ、金属酸化物及び金属水酸化物は、顔料に耐アルカリ性を付与する機能を有するため、顔料由来の現像残渣発生を抑制することができる。
【0319】
(DC-1)シリカ被覆層に含まれるシリカとは、二酸化ケイ素及びその含水物の総称である。(DC-2)金属酸化物被覆層に含まれる金属酸化物とは、金属酸化物及びその水和物の総称である。金属酸化物の一例として、アルミナが挙げられ、例えば、アルミナ(Al)又はアルミナ水和物(Al・nHO)が挙げられる。(DC-3)金属水酸化物被覆層に含まれる金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム(Al(OH))などが挙げられる。シリカは誘電率が低いため、(D1a-1)黒色有機顔料の(DC)被覆層の含有量が多い場合であっても、画素分割層の誘電率の上昇を抑制することができる。
【0320】
(DC)被覆層が有する、(DC-1)シリカ被覆層、(DC-2)金属酸化物被覆層及び(DC-3)金属水酸化物被覆層は、例えば、X線回折法により分析することができる。X線回折装置としては、例えば、粉末X線回折装置(マックサイエンス社製)などが挙げられる。(DC-1)シリカ被覆層、(DC-2)金属酸化物被覆層及び(DC-3)金属水酸化物被覆層に含まれるケイ素原子又は金属原子の質量は、小数点第二位以下を四捨五入して小数点第一位までの値を算出する。また、(DC)被覆層を有する(D1a-1)黒色有機顔料に含まれる、(DC)被覆層を除く、顔料の粒子の質量は、例えば、以下の方法で求めることができる。質量を測定した顔料を乳鉢に入れ、乳棒で磨り潰して(DC)被覆層を除去した後、N,N-ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶剤に浸漬して、顔料の粒子のみを溶解して濾液として除去する作業を、濾物が黒味を完全に消失するまで繰り返した後、濾物の質量を測定し、顔料の質量との差から算出する。
【0321】
(DC-2)金属酸化物被覆層又は(DC-3)金属水酸化物被覆層に含まれる金属酸化物又は金属水酸化物としては、耐アルカリ性、耐熱性及び耐光性などの化学的耐久性と、分散工程において適宜最適化される機械的エネルギー投入に耐えうるビッカース硬度、及び、耐摩耗性等の物理的耐久性を兼ね備えたものが好ましい。金属酸化物及び金属水酸化物としては、例えば、アルミナ、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化チタン又は酸化鉄等が挙げられる。絶縁性、紫外線透過率及び近赤外線透過率の観点から、アルミナ又はジルコニアが好ましく、アルカリ可溶性樹脂及び溶剤への分散性の観点から、アルミナがより好ましい。金属酸化物及び金属水酸化物は、有機基を含む基で表面修飾されていても構わない。
【0322】
(DC)被覆層が、(DC-1)シリカ被覆層を含有する場合、(DC-1)シリカ被覆層の表面に、(DC-2)金属酸化物被覆層として、アルミナ被覆層を形成することにより、パターン直線性の低下を抑制することができる。アルミナは、顔料の表面処理工程の後に行う顔料の整粒工程においても、水性顔料懸濁液中における分散性向上に効果があるため、二次凝集粒子径を所望の範囲に調整することができ、さらに、生産性及び品質安定性を向上させることができる。(DC)被覆層に含まれる(DC-2)金属酸化物被覆層として、アルミナ被覆層の被覆量は、(DC-1)シリカ被覆層に含まれるシリカを100質量部としたとき、10質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましい。
【0323】
(DC)被覆層が、(DC-1)シリカ被覆層を含有する場合、シリカの含有量は、顔料の粒子を100質量部としたとき、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。含有量を1質量部以上とすることで、顔料の粒子表面の被覆率を高め、顔料由来の現像残渣発生を抑制することができる。一方、シリカの含有量は、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。含有量を20質量部以下とすることにで、画素分割層のパターン直線性を向上させることができる。
【0324】
(DC)被覆層が、(DC-2)金属酸化物被覆層及び/又は(DC-3)金属水酸化物被覆層を含有する場合、金属酸化物及び金属水酸化物の含有量の合計は、顔料の粒子を100質量部としたとき、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましい。含有量の合計を0.1質量部以上とすることで、分散性及びパターン直線性を向上させることができる。一方、金属酸化物及び金属水酸化物の含有量の合計は、15質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。含有量の合計を15質量部以下とすることで、粘度を低く、好ましくは15mPa・s以下の粘度となるように設計される、本発明のネガ型感光性組成物中において、顔料の濃度勾配発生を抑制し、塗液の保管安定性を向上させることができる。
【0325】
なお、シリカの含有量とは、(DC)被覆層の内部及び表層において、単一の成分とならない場合や、熱履歴により脱水量に差異が生ずる場合を含み、ケイ素原子含有量から算出される二酸化ケイ素換算値であり、SiO換算値をいう。金属酸化物及び金属水酸化物の含有量とは、金属原子含有量から算出される金属酸化物及び金属水酸化物換算値をいう。すなわち、アルミナ、ジルコニア及び酸化チタンの場合、それぞれ、Al換算値、ZrO換算値及びTiO換算値をいう。また、金属酸化物及び金属水酸化物の含有量の合計とは、金属酸化物及び金属水酸化物のいずれかを含有する場合はその含有量をいい、両方を含有する場合はその合計量をいう。
【0326】
(DC)被覆層としては、(DC-1)シリカ被覆層、(DC-2)金属酸化物被覆層又は(DC-3)金属水酸化物被覆層に含まれるシリカ、金属酸化物又は金属水酸化物の表面のヒドロキシを反応点として、シランカップリング剤を用いて、有機基により表面修飾されていても構わない。有機基としては、エチレン性不飽和二重結合基が好ましい。エチレン性不飽和二重結合基を有するシランカップリング剤により表面修飾をすることで、(D1a-1)黒色有機顔料にラジカル重合性を付与することができ、硬化部の膜の剥がれを抑制し、未露光部の顔料由来の現像残渣発生を抑制することができる。
【0327】
(DC)被覆層を有する(D1a-1)黒色有機顔料としては、さらに、最外層に対して有機系表面処理剤による表面処理をしても構わない。最外層への表面処理をすることで、樹脂又は溶剤への濡れ性を向上させることができる。(DC)被覆層としては、さらに、樹脂による被覆処理で形成される、樹脂被覆層を含有しても構わない。樹脂被覆層を含有することで、粒子表面が導電性の低い絶縁性の樹脂で被覆され、粒子の表面状態を改質することができ、硬化膜の遮光性及び絶縁性を向上させることができる。
【0328】
<(D2)染料>
本発明のネガ型感光性樹脂組成物としては、前記(D)着色剤が、(D2)染料を含有することが好ましい。前記(D)着色剤が、(D2)染料を含有する態様としては、前記(Da)黒色剤及び/又は(Db)黒色以外の着色剤として、(D2)染料を含有することが好ましい。
【0329】
(D2)染料とは、対象物の表面構造に、(D2)染料中のイオン性基若しくはヒドロキシ基などの置換基が、化学吸着又は強く相互作用などをすることで、対象物を着色させる化合物をいい、一般的に溶剤等に可溶である。また、(D2)染料による着色は、分子1つ1つが対象物と吸着するため、着色力が高く、発色効率が高い。
【0330】
(D2)染料を含有させることで、着色力に優れた色に着色することでき、樹脂組成物の膜の着色性及び調色性を向上させることができる。(D2)染料としては、例えば、直接染料、反応性染料、硫化染料、バット染料、酸性染料、含金属染料、含金属酸性染料、塩基性染料、媒染染料、酸性媒染染料、分散染料、カチオン染料又は蛍光増白染料が挙げられる。ここで分散染料とは、水に不溶又は難溶であり、スルホン酸基、カルボキシ基などのアニオン性イオン化基を持たない染料をいう。
【0331】
(D2)染料としては、アントラキノン系染料、アゾ系染料、アジン系染料、フタロシアニン系染料、メチン系染料、オキサジン系染料、キノリン系染料、インジゴ系染料、インジゴイド系染料、カルボニウム系染料、スレン系染料、ペリノン系染料、ペリレン系染料、トリアリールメタン系染料又はキサンテン系染料が挙げられる。後述する溶剤への溶解性及び耐熱性の観点から、アントラキノン系染料、アゾ系染料、アジン系染料、メチン系染料、トリアリールメタン系染料、キサンテン系染料が好ましい。
【0332】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物としては、前記(D2)染料が、後述する(D2a-1)黒色染料、(D2a-2)二色以上の染料混合物及び(D2b)黒色以外の染料から選ばれる一種類以上を含有することが好ましい。
【0333】
溶剤を除く、本発明のネガ型感光性樹脂組成物の全固形分中に占める(D2)染料の含有比率は、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましい。含有比率が0.01質量%以上であると、着色性又は調色性を向上させることができる。一方、(D2)染料の含有比率は、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。含有比率が50質量%以下であると、硬化膜の耐熱性を向上させることができる。
【0334】
<(D2a-1)黒色染料、(D2a-2)二色以上の染料混合物及び(D2b)黒色以外の染料>
本発明のネガ型感光性樹脂組成物としては、前記(D2)染料が、(D2a-1)黒色染料、(D2a-2)二色以上の染料混合物及び(D2b)黒色以外の染料から選ばれる一種類以上を含有することが好ましい。
【0335】
(D2a-1)黒色染料とは、可視光線の波長の光を吸収することで、黒色に着色する染料をいう。(D2a-1)黒色染料を含有させることで、樹脂組成物の膜が黒色化するとともに、着色性に優れるため、樹脂組成物の膜の遮光性を向上させることができる。
【0336】
(D2a-2)二色以上の染料混合物とは、白、赤、橙、黄、緑、青又は紫色の染料から選ばれる二色以上の染料を組み合わせることで、擬似的に黒色に着色する、染料混合物をいう。(D2a-2)二色以上の染料混合物を含有させることで、樹脂組成物の膜が黒色化するとともに、着色性に優れるため、樹脂組成物の膜の遮光性を向上させることができる。さらに、二色以上の染料を混合するため、所望の特定波長の光を透過又は遮光するなど、樹脂組成物の膜の透過スペクトル又は吸収スペクトルを調整し、調色性を向上させることができる。黒色染料、赤色染料、橙色染料、黄色染料、緑色染料、青色染料及び紫色染料としては、公知のものを用いることができる。
【0337】
(D2b)黒色以外の染料とは、可視光線の波長の光を吸収することで、黒色を除く、白、赤、橙、黄、緑、青又は紫色に着色する染料をいう。(D2b)黒色以外の染料を含有させることで、樹脂組成物の膜を着色させることができ、着色性又は調色性を付与することができる。(D2b)黒色以外の染料を二色以上組み合わせることで、樹脂組成物の膜を所望の色座標に調色することができ、調色性を向上させることができる。(D2b)黒色以外の染料としては、前述した、黒色を除く、白、赤、橙、黄、緑、青又は紫色に着色する染料が挙げられる。
【0338】
本発明においてのネガ型感光性樹脂組成物を硬化した硬化膜は、膜厚1μm当たりの光学濃度が、0.3以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましく、0.7以上であることがさらに好ましく、1.0以上であることが特に好ましい。膜厚1μm当たりの光学濃度が0.3以上であると、硬化膜によって遮光性を向上させることができるため、有機ELディスプレイ又は液晶ディスプレイなどの表示装置において、電極配線の可視化防止又は外光反射低減が可能となり、画像表示におけるコントラストを向上させることができる。このため、カラーフィルタのブラックマトリックス又は液晶ディスプレイのブラックカラムスペーサーなどの遮光膜や、有機ELディスプレイの画素分割層又はTFT平坦化層など、外光反射の抑制によって高コントラスト化が要求される用途に好適である。一方、膜厚1μm当たりの光学濃度は、5.0以下であることが好ましく、4.0以下であることがより好ましく、3.0以下であることがさらに好ましい。膜厚1μm当たりの光学濃度が5.0以下であると、露光時の感度を向上できるとともに、低テーパーのパターン形状の硬化膜を得ることができる。硬化膜の、膜厚1μm当たりの光学濃度は、上述した(D)着色剤の組成及び含有比率により調節することができる。
【0339】
<(E)分散剤>
本発明のネガ型感光性樹脂組成物としては、さらに、(E)分散剤を含有することが好ましい。(E)分散剤とは、前述した(D1)顔料及び/又は(D2)染料として分散染料などの表面と相互作用する表面親和性基、及び、(D1)顔料及び/又は(D2)染料として分散染料の分散安定性を向上させる分散安定化構造を有する化合物をいう。(E)分散剤の分散安定化構造としては、ポリマー鎖及び/又は静電荷を有する置換基などが挙げられる。
【0340】
(E)分散剤を含有させることで、ネガ型感光性樹脂組成物が、(D1)顔料及び/又は(D2)染料として分散染料を含有する場合、それらの分散安定性を向上させることができ、現像後の解像度を向上させることができる。特に、例えば、(D1)顔料が1μm以下の数平均粒子径に解砕された粒子の場合、(D1)顔料の粒子の表面積が増大するため、(D1)顔料の粒子の凝集が発生しやすくなる。一方、(E)分散剤を含有する場合、解砕された(D1)顔料の表面と(E)分散剤の表面親和性基と、が相互作用するとともに、(E)分散剤の分散安定化構造による立体障害及び/又は静電反発により、(D1)顔料の粒子の凝集を阻害し、分散安定性を向上させることができる。
【0341】
表面親和性基を有する(E)分散剤としては、例えば、塩基性基のみを有する(E)分散剤、塩基性基及び酸性基を有する(E)分散剤、酸性基のみを有する(E)分散剤、又は、塩基性基及び酸性基のいずれも有しない(E)分散剤が挙げられる。(D1)顔料の粒子の分散安定性向上を観点から、塩基性基のみを有する(E)分散剤、並びに、塩基性基及び酸性基を有する(E)分散剤が好ましい。
【0342】
表面親和性基を有する(E)分散剤としては、表面親和性基である塩基性基及び/又は酸性基が、酸及び/又は塩基と塩形成した構造を有することも好ましい。
【0343】
塩基性基のみを有する(E)分散剤としては、例えば、“DISPERBYK”(登録商標)-108、同-160、同-167、同-182、同-2000若しくは同-2164、“BYK”(登録商標)-9075、同-LP-N6919若しくは同-LP-N21116(以上、何れもビックケミー・ジャパン(株)製)、“EFKA”(登録商標) 4015、同 4050、同 4080、同 4300、同 4400若しくは同 4800(以上、何れもBASF社製)、“アジスパー”(登録商標) PB711(味の素ファインテクノ(株)製)又は“SOLSPERSE”(登録商標) 13240、同 20000若しくは同 71000(以上、何れもLubrizol社製)が挙げられる。
【0344】
塩基性基及び酸性基を有する(E)分散剤としては、例えば、“ANTI-TERRA”(登録商標)-U100若しくは同-204、“DISPERBYK”(登録商標)-106、同-140、同-145、同-180、同-191、同-2001若しくは同-2020、“BYK”(登録商標)-9076(ビックケミー・ジャパン(株)製)、“アジスパー”(登録商標) PB821若しくは同 PB881(以上、何れも味の素ファインテクノ(株)製)又は“SOLSPERSE”(登録商標) 9000、同 13650、同 24000、同 33000、同 37500、同 39000、同 56000若しくは同 76500(以上、何れもLubrizol社製)が挙げられる。
【0345】
酸性基のみを有する(E)分散剤としては、例えば、“DISPERBYK”(登録商標)-102、同-118、同-170若しくは同-2096、“BYK”(登録商標)-P104若しくは同-220S(以上、何れもビックケミー・ジャパン(株)製)又は“SOLSPERSE”(登録商標) 3000、同 16000、同 21000、同 36000若しくは同 55000(以上、何れもLubrizol社製)が挙げられる。
【0346】
塩基性基及び酸性基のいずれも有しない(E)分散剤としては、例えば、“DISPERBYK”(登録商標)-103、同-192、同-2152若しくは同-2200(以上、何れもビックケミー・ジャパン(株)製)又は“SOLSPERSE”(登録商標) 27000、同 54000若しくは同 X300(以上、何れもLubrizol社製)が挙げられる。
【0347】
(E)分散剤のアミン価としては、5mgKOH/g以上が好ましく、8mgKOH/g以上がより好ましく、10mgKOH/g以上がさらに好ましい。アミン価が5mgKOH/g以上であると、(D1)顔料の分散安定性を向上させることができる。一方、アミン価としては、150mgKOH/g以下が好ましく、120mgKOH/g以下がより好ましく、100mgKOH/g以下がさらに好ましい。アミン価が150mgKOH/g以下であると、樹脂組成物の保管安定性を向上させることができる。
【0348】
ここでいうアミン価とは、(E)分散剤1g当たりと反応する酸と当量の水酸化カリウムの重量をいい、単位はmgKOH/gである。(E)分散剤1gを酸で中和させた後、水酸化カリウム水溶液で滴定することで求めることができる。アミン価の値から、アミノ基などの塩基性基1mol当たりの樹脂重量であるアミン当量(単位はg/mol)を算出することができ、(E)分散剤中のアミノ基などの塩基性基の数を求めることができる。
【0349】
(E)分散剤の酸価としては、5mgKOH/g以上が好ましく、8mgKOH/g以上がより好ましく、10mgKOH/g以上がさらに好ましい。酸価が5mgKOH/g以上であると、(D1)顔料の分散安定性を向上させることができる。一方、酸価としては、200mgKOH/g以下が好ましく、170mgKOH/g以下がより好ましく、150mgKOH/g以下がさらに好ましい。酸価が200mgKOH/g以下であると、樹脂組成物の保管安定性を向上させることができる。
【0350】
ここでいう酸価とは、(E)分散剤1g当たりと反応する水酸化カリウムの重量をいい、単位はmgKOH/gである。(E)分散剤1gを水酸化カリウム水溶液で滴定することで求めることができる。酸価の値から、酸性基1mol当たりの樹脂重量である酸当量(単位はg/mol)を算出することができ、(E)分散剤中の酸性基の数を求めることができる。
【0351】
ポリマー鎖を有する(E)分散剤としては、アクリル樹脂系分散剤、ポリオキシアルキレンエーテル系分散剤、ポリエステル系分散剤、ポリウレタン系分散剤、ポリオール系分散剤、ポリエチレンイミン系分散剤又はポリアリルアミン系分散剤が挙げられる。アルカリ現像液でのパターン加工性の観点から、アクリル樹脂系分散剤、ポリオキシアルキレンエーテル系分散剤、ポリエステル系分散剤、ポリウレタン系分散剤又はポリオール系分散剤が好ましい。
【0352】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物が(D1)顔料及び/又は(D2)染料として分散染料を含有する場合、本発明のネガ型感光性樹脂組成物に占める(E)分散剤の含有比率は、(D1)顔料及び/又は分散染料、及び、(E)分散剤の合計を100質量%とした場合において、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。含有比率が1質量%以上であると、(D1)顔料及び/又は分散染料の分散安定性を向上させることができ、現像後の解像度を向上させることができる。一方、(E)分散剤の含有比率は、60質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。含有比率が60質量%以下であると、硬化膜の耐熱性を向上させることができる。
【0353】
<増感剤>
本発明のネガ型感光性樹脂組成物としては、さらに、増感剤を含有することが好ましい。増感剤とは、露光によるエネルギーを吸収し、内部転換及び項間交差によって励起三重項の電子を生じ、前述した(C1)光重合開始剤などへのエネルギー移動を介することが可能な化合物をいう。
【0354】
増感剤を含有させることで、露光時の感度を向上させることができる。これは、(C1)光重合開始剤などが吸収を持たない、長波長の光を増感剤が吸収し、そのエネルギーを増感剤から(C1)光重合開始剤などへエネルギー移動をすることで、光反応効率を向上させることができるためであると推測される。
【0355】
増感剤としては、チオキサントン系増感剤が好ましい。チオキサントン系増感剤としては、例えば、チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン又は2,4-ジクロロチオキサントンが挙げられる。
【0356】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物に占める増感剤の含有量は、(A)アルカリ可溶性樹脂及び(B)ラジカル重合性化合物の合計を100質量部とした場合において、0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上がさらに好ましく、1質量部以上が特に好ましい。含有量が0.01質量部以上であると、露光時の感度を向上させることができる。一方、増感剤の含有量は、15質量部以下が好ましく、13質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましく、8質量部以下が特に好ましい。含有量が15質量部以下であると、現像後の解像度を向上させることができるとともに、低テーパーのパターン形状の硬化膜を得ることができる。
【0357】
<連鎖移動剤>
本発明のネガ型感光性樹脂組成物としては、さらに、連鎖移動剤を含有することが好ましい。連鎖移動剤とは、露光時のラジカル重合により得られるポリマー鎖の、ポリマー生長末端からラジカルを受け取り、他のポリマー鎖へのラジカル移動を介することが可能な化合物をいう。
【0358】
連鎖移動剤を含有させることで、露光時の感度を向上させることができる。これは、露光によって発生したラジカルが、連鎖移動剤によって他のポリマー鎖へラジカル移動することで、膜の深部にまでラジカル架橋をするためであると推測される。特に、例えば、樹脂組成物が前述した(D)着色剤として、(Da)黒色剤を含有する場合、露光による光が(Da)黒色剤によって吸収されるため、膜の深部まで光が到達しない場合がある。一方、連鎖移動剤を含有する場合、連鎖移動剤によるラジカル移動によって、膜の深部にまでラジカル架橋をするため、露光時の感度を向上させることができる。
【0359】
また、連鎖移動剤を含有させることで、低テーパーのパターン形状の硬化膜を得ることができる。これは、連鎖移動剤によるラジカル移動によって、露光時のラジカル重合により得られるポリマー鎖の、分子量制御をすることができるためであると推測される。すなわち、連鎖移動剤を含有することで、露光時の過剰なラジカル重合による、顕著な高分子量のポリマー鎖の生成が阻害され、得られる膜の軟化点の上昇が抑制される。そのため、熱硬化時のパターンのリフロー性が向上し、低テーパーのパターン形状が得られると考えられる。
【0360】
連鎖移動剤としては、チオール系連鎖移動剤が好ましい。チオール系連鎖移動剤としては、例えば、β-メルカプトプロピオン酸、β-メルカプトプロピオン酸2-エチルヘキシル、1,4-ビス(3-メルカプトブタノイルオキシ)ブタン、エチレングリコールビス(チオグリコレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、1,3,5-トリス[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌル酸、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)又はジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)が挙げられる。
【0361】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物に占める連鎖移動剤の含有量は、(A)アルカリ可溶性樹脂及び(B)ラジカル重合性化合物の合計を100質量部とした場合において、0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上がさらに好ましく、1質量部以上が特に好ましい。含有量が0.01質量部以上であると、露光時の感度を向上できるとともに、低テーパーのパターン形状の硬化膜を得ることができる。一方、連鎖移動剤の含有量は、15質量部以下が好ましく、13質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましく、8質量部以下が特に好ましい。含有量が15質量部以下であると、現像後の解像度及び硬化膜の耐熱性を向上させることができる。
【0362】
<重合禁止剤>
本発明のネガ型感光性樹脂組成物としては、さらに、重合禁止剤を含有することが好ましい。重合禁止剤とは、露光時に発生したラジカル、又は、露光時のラジカル重合により得られるポリマー鎖の、ポリマー生長末端のラジカルを捕捉し、安定ラジカルとして保持することで、ラジカル重合を停止することが可能な化合物をいう。
【0363】
重合禁止剤を適量含有させることで、現像後の残渣発生を抑制し、現像後の解像度を向上させることができる。これは、露光時に発生した過剰量のラジカル、又は、高分子量のポリマー鎖の生長末端のラジカルを重合禁止剤が捕捉することで、過剰なラジカル重合の進行を抑制するためと推測される。
【0364】
重合禁止剤としては、フェノール系重合禁止剤が好ましい。フェノール系重合禁止剤としては、例えば、4-メトキシフェノール、1,4-ヒドロキノン、1,4-ベンゾキノン、2-t-ブチル-4-メトキシフェノール、3-t-ブチル-4-メトキシフェノール、4-t-ブチルカテコール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,5-ジ-t-ブチル-1,4-ヒドロキノン若しくは2,5-ジ-t-アミル-1,4-ヒドロキノン又は“IRGANOX”(登録商標) 245、同 259、同 565、同 1010、同 1035、同 1076、同 1098、同 1135、同 1330、同 1425、同 1520、同 1726若しくは同 3114(以上、何れもBASF社製)が挙げられる。
【0365】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物に占める重合禁止剤の含有量は、(A)アルカリ可溶性樹脂及び(B)ラジカル重合性化合物の合計を100質量部とした場合において、0.01質量部以上が好ましく、0.03質量部以上がより好ましく、0.05質量部以上がさらに好ましく、0.1質量部以上が特に好ましい。含有量が0.01質量部以上であると、現像後の解像度及び硬化膜の耐熱性を向上させることができる。一方、重合禁止剤の含有量は、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましく、5質量部以下がさらに好ましく、3質量部以下が特に好ましい。含有量が10質量部以下であると、露光時の感度を向上させることができる。
【0366】
<(F)架橋剤>
本発明のネガ型感光性樹脂組成物としては、さらに、(F)架橋剤を含有することが好ましい。(F)架橋剤とは、樹脂と結合可能な架橋性基を有する化合物をいう。(F)架橋剤を含有させることで、硬化膜の硬度及び耐薬品性を向上させることができる。これは、架橋剤により、樹脂組成物の硬化膜に新たな架橋構造を導入することができるため、架橋密度が向上するためと推測される。また、(F)架橋剤を含有させることで、熱硬化後に低テーパー形状のパターン形成が可能となる。これは、(F)架橋剤によってポリマー間に架橋構造が形成されることで、ポリマー鎖同士の密な配向が阻害され、熱硬化時におけるパターンのリフロー性を維持できるため、低テーパー形状のパターン形成が可能になると考えられる。
【0367】
(F)架橋剤としては、アルコキシメチル基、メチロール基、エポキシ基又はオキセタニル基などの熱架橋性基を、分子中に2つ以上有する化合物が好ましい。
【0368】
アルコキシメチル基又はメチロール基を分子中に2つ以上有する化合物としては、例えば、DML-PC、DML-OC、DML-PTBP、DML-PCHP、DML-MBPC、DML-MTrisPC、DMOM-PC、DMOM-PTBP、TriML-P、TriML-35XL、TML-HQ、TML-BPA、TML-BPAF、TML-BPAP、TMOM-BPA、TMOM-BPAF、TMOM-BPAP、HML-TPHAP若しくはHMOM-TPHAP(以上、何れも本州化学工業(株)製)又は“NIKALAC”(登録商標) MX-290、同 MX-280、同 MX-270、同 MX-279、同 MW-100LM、同 MW-30HM、同 MW-390若しくは同 MX-750LM(以上、(株)三和ケミカル製)が挙げられる。
【0369】
エポキシ基を分子中に2つ以上有する化合物としては、例えば、“エポライト”(登録商標)40E、同100E、同400E、同70P、同1500NP、同80MF 、同3002若しくは同4000(以上、何れも共栄社化学(株)製)、“デナコール”(登録商標)EX-212L、同EX-216L、同EX-321L若しくは同EX-850L(以上、何れもナガセケムテックス(株)製)、“jER”(登録商標) 828、同 1002 、同 1750、同 YX8100-BH30、同 E1256若しくは同 E4275(以上、何れも三菱化学(株)製)、GAN、GOT、EPPN-502H、NC-3000若しくはNC-6000(以上、何れも日本化薬(株)製)、“EPICLON”(登録商標) EXA-9583、同 HP4032、同 N695若しくは同 HP7200(以上、何れも大日本インキ化学工業(株)製)、“TECHMORE”(登録商標) VG-3101L((株)プリンテック製)、“TEPIC”(登録商標) S、同 G若しくは同 P(以上、何れも日産化学工業(株)製)又は“エポトート”(登録商標)YH-434L(東都化成(株)製)が挙げられる。
【0370】
オキセタニル基を分子中に2つ以上有する化合物としては、例えば、“ETERNACOLL”(登録商標) EHO、同 OXBP、同 OXTP若しくは同 OXMA(以上、何れも宇部興産(株)製)又はオキセタン化フェノールノボラックが挙げられる。
【0371】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物に占める架橋剤の含有量は、(A)アルカリ可溶性樹脂及び(B)ラジカル重合性化合物の合計を100質量部とした場合において、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、2質量部以上がさらに好ましい。含有量が0.5質量部以上であると、硬化膜の硬度及び耐薬品性を向上させることができるとともに、熱硬化後に低テーパー形状のパターンを形成できる。一方、架橋剤の含有量は、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらに好ましい。含有量が50質量部以下であると、硬化膜の硬度及び耐薬品性を向上させることができるとともに、熱硬化後に低テーパー形状のパターンを形成できる。
【0372】
<(F1)分子中にフルオレン骨格及び2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物、並びに、(F2)分子中にインダン骨格及び2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物>
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、(F)架橋剤として、(F1)分子中にフルオレン骨格及び2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物、及び/又は、(F2)分子中にインダン骨格及び2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物を含有することが好ましい。
【0373】
(F1)分子中にフルオレン骨格及び2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物、又は、(F2)分子中にインダン骨格及び2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物を含有させることで、露光時の感度向上、及び、現像後のパターン形状制御による低テーパー形成が可能になるとともに、熱硬化後に低テーパー形状のパターン形成が可能となる。これは、露光時にUV硬化した膜において、相互進入高分子網目構造形成により、硬化膜中に上述したエポキシ化合物が取り込まれ、膜の分子量が飛躍的に向上するため、露光時の感度が向上すると推測される。また、フルオレン骨格及びインダン骨格が疎水性であるため、UV硬化した膜の疎水性が向上することで、UV硬化が不足しやすい膜深部のサイドエッチングが抑制されるため、現像後のパターン形状制御による低テーパー形成が可能になると考えられる。また、フルオレン骨格又はインダン骨格の立体障害により、UV硬化時の過剰な硬化が阻害されるため、熱硬化後に低テーパー形状のパターン形成が可能となると推測される。
【0374】
また、現像後のパターン形状制御による低テーパー形成が可能となることから、ハーフトーン特性を向上させることができる。これは、フルオレン骨格又はインダン骨格の疎水性によってサイドエッチングを抑制できることで、ハーフトーン露光部のアルカリ溶解性を制御できるためと考えられる。加えて、熱硬化前後における、パターン開口寸法幅の変化を抑制できる。これは、上記と同様に、現像後に低テーパー形状のパターンが形成できることによる、熱硬化時におけるパターン裾のリフロー抑制、及び、硬化膜へのフルオレン骨格又はインダン骨格の導入によって膜の分子量が飛躍的に向上することによる、熱硬化時におけるパターン裾のリフロー抑制により、熱硬化前後におけるパターン開口寸法幅の変化を抑制できると推測される。
【0375】
(F1)分子中にフルオレン骨格及び2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物、及び、(F2)分子中にインダン骨格及び2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物のエポキシ当量は、150g/mol以上が好ましく、170g/mol以上がより好ましく、190g/mol以上がさらに好ましく、210g/mol以上が特に好ましい。エポキシ当量が、150g/mol以上であると、熱硬化後に低テーパー形状のパターンを形成できる。一方、(F1)分子中にフルオレン骨格及び2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物及び(F2)分子中にインダン骨格及び2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物のエポキシ当量は、800g/mol以下が好ましく、600g/mol以下がより好ましく、500g/mol以下がさらに好ましく、400g/mol以下が特に好ましい。エポキシ当量が、800g/mol以下であると、熱硬化前後におけるパターン開口寸法幅の変化を抑制できる。
【0376】
(F1)分子中にフルオレン骨格及び2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物としては、例えば、9,9-ビス[4-(2-グリシドキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(3-グリシドキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-((3-グリシドキシ)ヘキシルオキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-グリシドキシエトキシ)-3-メチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス(4-グリシドキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-グリシドキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[3-フェニル-4-(2-グリシドキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-グリシドキシエトキシ)-1-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[4’-(2-グリシドキシエトキシ)-(1,1’-ビフェニル)-4-イル]フルオレン若しくは9,9-ビス[3,4-ビス(2-グリシドキシエトキシ)フェニル]フルオレン、OGSOL(登録商標) PG、同 PG-100、同 EG、同 EG-200、同 EG-280、同 CG-400若しくは同 CG-500(以上、何れも大阪ガスケミカル社製)又はオンコート(登録商標)EX-1010、同EX-1012、同EX-1020、同EX-1030、同EX-1040、同EX-1050若しくは同EX-1051(以上、何れもナガセケムテックス社製)が挙げられる。
【0377】
(F2)分子中にインダン骨格及び2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物としては、例えば、1,1-ビス[4-(2-グリシドキシエトキシ)フェニル]インダン、1,1-ビス[4-(3-グリシドキシヘキシルオキシ)フェニル]インダン、1,1-ビス[4-(2-グリシドキシエトキシ)-3-メチルフェニル]インダン、1,1-ビス(4-グリシドキシフェニル)インダン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-グリシドキシプロポキシ)フェニル]インダン、1,1-ビス[4-(2-グリシドキシエトキシ)フェニル]-3-フェニルインダン、1,1-ビス[4-(2-グリシドキシエトキシ)-1-ナフチル]インダン、1,1-ビス[3,4-ビス(2-グリシドキシエトキシ)フェニル]インダン、2,2-ビス[4-(2-グリシドキシエトキシ)フェニル]インダン、2,2-ビス(4-グリシドキシフェニル)インダン、又は2,2-ビス[3,4-ビス(2-グリシドキシエトキシ)フェニル]インダンが挙げられる。
(F1)分子中にフルオレン骨格及び2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物、及び(F2)分子中にインダン骨格及び2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物は、公知の方法により合成できる。
【0378】
本発明の感光性樹脂組成物に占める(F1)分子中にフルオレン骨格及び2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、(F2)分子中にインダン骨格及び2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物との含有量の合計は、(A)アルカリ可溶性樹脂及び(B)ラジカル重合性化合物の合計を100質量部とした場合において、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、2質量部以上がさらに好ましく、3質量部以上がさらにより好ましく、5質量部以上が特に好ましい。含有量が0.5質量部以上であると、露光時の感度を向上できるとともに、現像後及び熱硬化後に低テーパー形状のパターンを形成できる。加えて、熱硬化前後におけるパターン開口寸法幅の変化を抑制できる。一方、(F1)分子中にフルオレン骨格及び2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物及び(F2)分子中にインダン骨格及び2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物の含有量の合計は、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらに好ましく、25質量部以下がさらにより好ましく、20質量部以下が特に好ましい。含有量が50質量部以下であると、熱硬化前後におけるパターン開口寸法幅の変化を抑制できるとともに、現像後の残渣発生を抑制できる。
【0379】
<シランカップリング剤>
本発明のネガ型感光性樹脂組成物としては、さらに、シランカップリング剤を含有することが好ましい。シランカップリング剤とは、加水分解性のシリル基又はシラノール基を有する化合物をいう。シランカップリング剤を含有させることで、樹脂組成物の硬化膜と下地の基板界面における相互作用が増大し、下地の基板との密着性及び硬化膜の耐薬品性を向上させることができる。シランカップリング剤としては、三官能オルガノシラン、四官能オルガノシラン又はシリケート化合物が好ましい。
【0380】
三官能オルガノシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、4-ヒドロキシフェニルトリメトキシシラン、1-ナフチルトリメトキシシラン、4-スチリルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3-[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]プロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(4-アミノフェニル)プロピルトリメトキシシラン、1-(3-トリメトキシシリルプロピル)尿素、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、1,3,5-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌル酸又はN-t-ブチル-2-(3-トリメトキシシリルプロピル)コハク酸イミドが挙げられる。
【0381】
四官能オルガノシラン又はシリケート化合物としては、例えば、一般式(73)で表されるオルガノシランが挙げられる。
【0382】
【化28】
一般式(73)において、R226~R229は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、アシル基又はアリール基を表し、xは1~15の整数を表す。一般式(73)において、R226~R229は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアシル基又は炭素数6~15のアリール基が好ましく、水素、炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアシル基又は炭素数6~10のアリール基がより好ましい。上記のアルキル基、アシル基及びアリール基は、無置換体又は置換体のいずれであっても構わない。
【0383】
一般式(73)で表されるオルガノシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン若しくはテトラアセトキシシランなどの四官能オルガノシラン又はメチルシリケート51(扶桑化学工業(株)製)、Mシリケート51、シリケート40若しくはシリケート45(以上、何れも多摩化学工業(株)製)、メチルシリケート51、メチルシリケート53A、エチルシリケート40若しくはエチルシリケート48(以上、何れもコルコート(株)製)などのシリケート化合物が挙げられる。
【0384】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物に占めるシランカップリング剤の含有量は、(A)アルカリ可溶性樹脂及び(B)ラジカル重合性化合物の合計を100質量部とした場合において、0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上がさらに好ましく、1質量部以上が特に好ましい。含有量が0.01質量部以上であると、下地の基板との密着性及び硬化膜の耐薬品性を向上させることができる。一方、シランカップリング剤の含有量は、15質量部以下が好ましく、13質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましく、8質量部以下が特に好ましい。含有量が15質量部以下であると、現像後の解像度を向上させることができる。
【0385】
<界面活性剤>
本発明のネガ型感光性樹脂組成物としては、さらに、界面活性剤を含有しても構わない。界面活性剤とは、親水性の構造及び疎水性の構造を有する化合物をいう。界面活性剤を適量含有させることで、樹脂組成物の表面張力を任意に調整することができ、塗布時のレベリング性が向上し、塗膜の膜厚均一性を向上させることができる。界面活性剤としては、フッ素樹脂系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ポリオキシアルキレンエーテル系界面活性剤又はアクリル樹脂系界面活性剤が好ましい。
【0386】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物に占める界面活性剤の含有比率は、ネガ型感光性樹脂組成物全体の、0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上がさらに好ましい。含有比率が0.001質量%以上であると、塗布時のレベリング性を向上させることができる。一方、界面活性剤の含有比率は、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.03質量%以下がさらに好ましい。含有比率が1質量%以下であると、塗布時のレベリング性を向上させることができる。
【0387】
<溶剤>
本発明のネガ型感光性樹脂組成物としては、さらに、溶剤を含有することが好ましい。溶剤とは、樹脂組成物中に含有させる各種樹脂及び各種添加剤を溶解させることができる化合物をいう。溶剤を含有させることで、樹脂組成物中に含有させる各種樹脂及び各種添加剤を均一に溶解させ、硬化膜の透過率を向上させることができる。また、樹脂組成物の粘度を任意に調整することができ、基板上に所望の膜厚で成膜することができる。加えて、樹脂組成物の表面張力又は塗布時の乾燥速度などを任意に調整することができ、塗布時のレベリング性及び塗膜の膜厚均一性を向上させることができる。
【0388】
溶剤としては、各種樹脂及び各種添加剤の溶解性の観点から、アルコール性水酸基を有する化合物、カルボニル基を有する化合物又はエーテル結合を3つ以上有する化合物が好ましい。加えて、大気圧下の沸点が、110~250℃である化合物がより好ましい。沸点を110℃以上とすることで、塗布時に適度に溶剤が揮発して塗膜の乾燥が進行するため、塗布ムラを抑制し、膜厚均一性を向上させることができる。一方、沸点を250℃以下とすることで、塗膜中に残存する溶剤量を低減することができる。そのため、熱硬化時の膜収縮量を低減させることができ、硬化膜の平坦性を高め、膜厚均一性を向上させることができる。
【0389】
アルコール性水酸基を有し、かつ大気圧下の沸点が110~250℃である化合物としては、例えば、ジアセトンアルコール、乳酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール又はテトラヒドロフルフリルアルコールが挙げられる。
【0390】
カルボニル基を有し、かつ大気圧下の沸点が110~250℃である化合物としては、例えば、3-メトキシ-n-ブチルアセテート、3-メチル-3-n-ブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート又はγ-ブチロラクトンが挙げられる。
【0391】
エーテル結合を3つ以上有し、かつ大気圧下の沸点が110~250℃である化合物としては、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル又はジプロピレングリコールジメチルエーテルが挙げられる。
【0392】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物に占める溶剤の含有比率は、塗布方法などに応じて適宜調整可能である。例えば、スピンコーティングにより塗膜を形成する場合、ネガ型感光性樹脂組成物全体の、50~95質量%とすることが一般的である。
【0393】
(D)着色剤として、(D1)顔料及び/又は(D2)染料として分散染料を含有させる場合、溶剤としては、カルボニル基又はエステル結合を有する溶剤が好ましい。カルボニル基又はエステル結合を有する溶剤を含有させることで、(D1)顔料及び/又は(D2)染料として分散染料の分散安定性を向上させることができる。また、分散安定性の観点から、溶剤としては、アセテート結合を有する溶剤がより好ましい。アセテート結合を有する溶剤を含有させることで、(D1)顔料及び/又は(D2)染料として分散染料の分散安定性を向上させることができる。
【0394】
アセテート結合を有する溶剤としては、例えば、3-メトキシ-n-ブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシ-n-ブチルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノールアセテート、プロピレングリコールジアセテート又は1,4-ブタンジオールジアセテートが挙げられる。
【0395】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物において、溶剤に占める、カルボニル基又はエステル結合を有する溶剤の含有比率は、30~100質量%が好ましく、50~100質量%がより好ましく、70~100質量%がさらに好ましい。含有比率が30~100質量%であると、(D1)顔料の分散安定性を向上させることができる。
【0396】
<その他の添加剤>
本発明のネガ型感光性樹脂組成物としては、さらに、他の樹脂又はそれらの前駆体を含有しても構わない。他の樹脂又はそれらの前駆体としては、例えば、ポリアミド、ポリアミドイミド、エポキシ樹脂、ノボラック樹脂、ウレア樹脂若しくはポリウレタン又はそれらの前駆体が挙げられる。
【0397】
<本発明のネガ型感光性樹脂組成物の製造方法>
本発明のネガ型感光性樹脂組成物の、代表的な製造方法について説明する。(D)着色剤として(Da)黒色剤を含む(D1)顔料を含有する場合、(A1)第1の樹脂及び(A2)第2の樹脂の溶液に(E)分散剤を加え、分散機を用いて、この混合溶液に(D1)顔料を分散させ、顔料分散液を調製する。次に、この顔料分散液に、(B)ラジカル重合性化合物、(C1)光重合開始剤、その他の添加剤及び任意の溶剤を加え、20分~3時間攪拌して均一な溶液とする。攪拌後、得られた溶液をろ過することで、本発明のネガ型感光性樹脂組成物が得られる。
【0398】
分散機としては、例えば、ボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー、3本ロールミル又は高速度衝撃ミルが挙げられる。分散効率化及び微分散化の観点から、ビーズミルが好ましい。ビーズミルとしては、例えば、コボールミル、バスケットミル、ピンミル又はダイノーミルが挙げられる。ビーズミルのビーズとしては、例えば、チタニアビーズ、ジルコニアビーズ又はジルコンビーズが挙げられる。ビーズミルのビーズ径としては、0.01~6mmが好ましく、0.015~5mmがより好ましく、0.03~3mmがさらに好ましい。(D1)顔料の一次粒子径及び一次粒子が凝集して形成された二次粒子の粒子径が、数百nm以下の場合、0.015~0.1mmの微小なビーズが好ましい。この場合、微小なビーズと顔料分散液と、を分離することが可能な、遠心分離方式によるセパレータを備えるビーズミルが好ましい。一方、(D1)顔料が、数百nm以上の粗大な粒子を含む場合、分散効率化の観点から、0.1~6mmのビーズが好ましい。
【0399】
<低テーパーのパターン形状の硬化パターン>
ネガ型感光性樹脂組成物を硬化することにより硬化膜が得られる。特に本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、低テーパーのパターン形状の硬化パターンを含む硬化膜を得ることが可能である。本発明のネガ型感光性樹脂組成物から得られる、硬化膜が含む硬化パターンの断面における傾斜辺のテーパー角は、1°以上が好ましく、5°以上がより好ましく、10°以上がさらに好ましく、12°以上がさらにより好ましく、15°以上が特に好ましい。テーパー角が1°以上であると、発光素子を高密度に集積及び配置できることで、有機ELディスプレイの解像度を向上させることができる。一方、硬化膜が含む硬化パターンの断面における傾斜辺のテーパー角は、60°以下が好ましく、45°以下がより好ましく、40°以下がさらに好ましく、35°以下がさらにより好ましく、30°以下が特に好ましい。テーパー角が60°以下であると、透明電極又は反射電極などの電極を形成する際の断線を防止することができる。また、電極のエッジ部における電界集中を抑制できることで、発光素子の劣化を抑制することができる。硬化膜の膜厚1μm当たりの光学濃度が、好ましくは0.3~5.0であって、硬化パターンの断面における傾斜辺のテーパー角が、好ましくは1~60°である硬化パターンを有する硬化膜は、有機ELディスプレイを構成するのに好適である。
【0400】
<段差形状を有する硬化パターン>
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、高感度を維持しつつ、厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有し、低テーパーのパターン形状を有する硬化パターンを形成することができる。
【0401】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物から得られる、段差形状を有する硬化パターンの断面の一例を、図3に示す。段差形状における厚膜部34は、露光時の硬化部に相当し、硬化パターンの最大の膜厚を有する。段差形状における薄膜部35a、35b及び35cは、露光時のハーフトーン露光部に相当し、厚膜部34の厚さより小さい膜厚を有する。段差形状を有する硬化パターンの断面における傾斜辺36a、36b、36c、36d及び36eの、テーパー角θ、θ、θ、θ及びθは、低テーパーであることが好ましい。
【0402】
ここでいうテーパー角θ、θ、θ、θ及びθとは、図3において、硬化パターンが形成される下地の基板37の水平辺、又は薄膜部35a、35b及び35cの水平辺と、それらの水平辺と交差する、段差形状を有する硬化パターンの断面における傾斜辺36a、36b、36c、36d又は36eとが成す、段差形状を有する硬化パターンの断面内部の角をいう。順テーパーとは、テーパー角が1~90°未満の範囲内であることをいい、逆テーパーとは、テーパー角が91~180°未満の範囲内であることをいい、矩形とは、テーパー角が90°であることをいい、低テーパーとは、テーパー角が1~60°の範囲内であることをいう。
【0403】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物から得られる、段差形状を有する硬化パターンの、段差の数は、1以上が好ましく、2以上がより好ましい。一方、段差の数は、10以下が好ましく、7以下がより好ましく、5以下がさらに好ましい。段差の数が上記範囲内であると、厚膜部と薄膜部の膜厚差、および任意の段差の両側で隣接する薄膜部間の膜厚差を十分に大きくできることで、発光層を形成する際の蒸着マスクとの接触面積を小さくでき、それにより、パーティクル発生によるパネルの歩留まり低下を抑制できるとともに、発光素子の劣化を抑制することができる。
【0404】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物から得られる、段差形状を有する硬化パターンの下側表面の平面および上側表面の平面間の厚さにおいて、最も大きい厚さを有する領域を厚膜部34、厚膜部34の厚さより小さい厚さを有する領域を薄膜部35とする。厚膜部34の膜厚を(TFT)μm、及び、厚膜部34に少なくとも1つの段差形状を介して配置された薄膜部35a、35b、35cの膜厚を(THT)μmとした場合、(TFT)と(THT)との膜厚差(ΔTFT-HT)μmは、0.5μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましく、1.5μm以上がさらに好ましく、2.0μm以上がさらにより好ましく、2.5μm以上が特に好ましく、3.0μm以上が最も好ましい。膜厚差が上記範囲内であると、発光層を形成する際の蒸着マスクとの接触面積を小さくできることで、パーティクル発生によるパネルの歩留まり低下を抑制できるとともに、発光素子の劣化を抑制することができる。また、段差形状を有する硬化パターン一層で十分な膜厚差を有するため、プロセスタイム短縮が可能となる。一方、膜厚差(ΔTFT-HT)μmは、10.0μm以下が好ましく、9.5μm以下がより好ましく、9.0μm以下がさらに好ましく、8.5μm以下がさらにより好ましく、8.0μm以下が特に好ましい。膜厚差が上記範囲内であると、段差形状を有する硬化パターン形成時の露光量を低減できることで、タクトタイム短縮が可能となる。
【0405】
厚膜部34の膜厚(TFT)は、2.0μm以上が好ましく、2.5μm以上がより好ましく、3.0μm以上がさらに好ましく、3.5μm以上がさらにより好ましく、4.0μm以上が特に好ましい。発光素子の劣化を抑制することができるとともに、プロセスタイム短縮が可能となる。
【0406】
厚膜部34の膜厚(TFT)は、10.0μm以下が好ましく、9.5μm以下がより好ましく、9.0μm以下がさらに好ましく、8.5μm以下がさらにより好ましく、8.0μm以下が特に好ましい。膜厚(TFT)が上記範囲内であると、段差形状を有する硬化パターン形成時の露光量を低減できることで、タクトタイム短縮が可能となる。
【0407】
厚膜部34に少なくとも1つの段差形状を介して配置された薄膜部35a、35b、35cの膜厚(THT)は、0.10μm以上が好ましく、0.15μm以上がより好ましく、0.20μm以上がさらに好ましく、0.25μm以上がさらにより好ましく、0.30μm以上が特に好ましい。発光素子の劣化を抑制することができるとともに、プロセスタイム短縮が可能となる。
【0408】
薄膜部35a、35b、35cの膜厚(THT)は、7.5μm以下が好ましく、7.0μm以下がより好ましく、6.5μm以下がさらに好ましく、6.0μm以下がさらにより好ましく、5.5μm以下が特に好ましい。膜厚(THT)が上記範囲内であると、段差形状を有する硬化パターン形成時の露光量を低減できることで、タクトタイム短縮が可能となる。
【0409】
厚膜部34の膜厚(TFT)μm及び薄膜部35a、35b、35cの膜厚(THT)μmは、一般式(α)~(γ)で表される関係をさらに満たすことが好ましい。
2.0≦(TFT)≦10.0 (α)
0.20≦(THT)≦7.5 (β)
0.10×(TFT)≦(THT)≦0.75×(TFT) (γ)
【0410】
厚膜部34の膜厚(TFT)μm及び薄膜部35a、35b、35cの膜厚(THT)μmは、一般式(δ)~(ζ)で表される関係をさらに満たすことがより好ましい。
2.0≦(TFT)≦10.0 (δ)
0.30≦(THT)≦7.0 (ε)
0.15×(TFT)≦(THT)≦0.70×(TFT) (ζ)
【0411】
厚膜部34及び薄膜部35a、35b、35cの膜厚(TFT)μm及び(THT)μmが上記範囲内であると、発光素子の劣化を抑制することができるとともに、プロセスタイム短縮が可能となる。
【0412】
本発明の有機ELディスプレイにおいて、ネガ型感光性樹脂組成物から得られる、段差形状を有する硬化パターンの断面における傾斜辺のテーパー角は、1°以上が好ましく、5°以上がより好ましく、10°以上がさらに好ましく、12°以上がさらにより好ましく、15°以上が特に好ましい。テーパー角が上記範囲内であると、発光素子を高密度に集積及び配置できることで、有機ELディスプレイの解像度を向上させることができる。一方、硬化パターンの断面における傾斜辺のテーパー角は、60°以下が好ましく、45°以下がより好ましく、40°以下がさらに好ましく、35°以下がさらにより好ましく、30°以下が特に好ましい。テーパー角が上記範囲内であると、透明電極又は反射電極などの電極を形成する際の断線を防止することができる。また、電極のエッジ部における電界集中を抑制できることで、発光素子の劣化を抑制することができる。
【0413】
<有機ELディスプレイの製造プロセス>
本発明のネガ型感光性樹脂組成物を用いたプロセスとして、該組成物の硬化膜を有機ELディスプレイの遮光性の画素分割層として用いたプロセスを例に、図1に模式的断面図を示して説明する。まず、(1)ガラス基板1上に、薄膜トランジスタ(以下、「TFT」)2を形成し、TFT平坦化膜用の感光性材料を成膜し、フォトリソグラフィーによってパターン加工した後、熱硬化させてTFT平坦化用の硬化膜3を形成する。次に、(2)銀‐パラジウム‐銅合金(以下、「APC」)をスパッタにより成膜し、フォトレジストを用いてエッチングによりパターン加工してAPC層を形成し、さらに、APC層の上層に酸化インジウムスズ(以下、「ITO」)をスパッタにより成膜し、フォトレジストを用いたエッチングによりパターン加工し、第1電極として反射電極4を形成する。その後、(3)本発明のネガ型感光性樹脂組成物を塗布及びプリベークして、プリベーク膜5aを形成する。次いで、(4)所望のパターンを有するマスク6を介して、活性化学線7を照射する。次に、(5)現像してパターン加工をした後、必要に応じてブリーチング露光及びミドルベークし、熱硬化させることで、遮光性の画素分割層として、所望のパターンを有する硬化パターン5bを形成する。その後、(6)EL発光材料を、マスクを介した蒸着によって成膜してEL発光層8を形成し、マグネシウム‐銀合金(以下、「MgAg」)を蒸着により成膜し、フォトレジストを用いてエッチングによりパターン加工し、第2電極として透明電極9を形成する。次に(7)平坦化膜用の感光性材料を成膜し、フォトリソグラフィーによってパターン加工した後、熱硬化させて平坦化用の硬化膜10を形成し、その後、カバーガラス11を接合させることで、本発明のネガ型感光性樹脂組成物を遮光性の画素分割層として有する有機ELディスプレイを得る。
【0414】
<液晶ディスプレイの製造プロセス>
本発明のネガ型感光性樹脂組成物を用いた別のプロセスとして、該組成物の硬化膜を液晶ディスプレイのブラックカラムスペーサー(以下、「BCS」)及びカラーフィルタのブラックマトリックス(以下、「BM」)として用いたプロセスを例に、図2に模式的断面図を示して説明する。まず、(1)ガラス基板12上に、バックライトユニット(以下、「BLU」)13を形成し、BLUを有するガラス基板14を得る。
【0415】
また、(2)別のガラス基板15上に、TFT16を形成し、TFT平坦化膜用の感光性材料を成膜し、フォトリソグラフィーによってパターン加工した後、熱硬化させてTFT平坦化用の硬化膜17を形成する。次に、(3)ITOをスパッタにより成膜し、フォトレジストを用いてエッチングによりパターン加工し、透明電極18を形成し、その上に平坦化膜19及び配向膜20を形成する。その後、(4)本発明のネガ型感光性樹脂組成物を塗布及びプリベークして、プリベーク膜21aを形成する。次いで、(5)所望のパターンを有するマスク22を介して、活性化学線23を照射する。次に、(6)現像してパターン加工をした後、必要に応じてブリーチング露光及びミドルベークし、熱硬化させることで、遮光性のBCSとして所望のパターンを有する硬化パターン21bを形成し、BCSを有するガラス基板24を得る。次いで、(7)前記ガラス基板14と該ガラス基板24と、を接合させることで、BLU及びBCSを有するガラス基板25を得る。
【0416】
さらに、(8)別のガラス基板26上に、赤色、緑色、青色の三色のカラーフィルタ27を形成する。次に、(9)上記と同様の方法で、本発明のネガ型感光性樹脂組成物から、遮光性のBMとして所望のパターンを有する硬化パターン28を形成する。その後、(10)平坦化用の感光性材料を成膜し、フォトリソグラフィーによってパターン加工した後、熱硬化させて平坦化用の硬化膜29を形成し、その上に配向膜30を形成することで、カラーフィルタ基板31を得る。次いで、(11)前記BLU及びBCSを有するガラス基板25と該カラーフィルタ基板31と、を接合させることで、(12)BLU、BCS及びBMを有するガラス基板32を得る。次に、(13)液晶を注入して液晶層33を形成することで、本発明のネガ型感光性樹脂組成物をBCS及びBMとして有する液晶ディスプレイを得る。
【0417】
以上のように、本発明のネガ型感光性樹脂組成物を用いた、有機ELディスプレイ及び液晶ディスプレイの製造方法によれば、パターン加工され、ポリイミド及び/又はポリベンゾオキサゾールを含有する、高耐熱性かつ遮光性の硬化膜を得ることが可能であるため、有機ELディスプレイ及び液晶ディスプレイの製造における歩留まり向上、性能向上及び信頼性向上に繋がる。
【0418】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物を用いたプロセスによれば、樹脂組成物が感光性であるため、フォトリソグラフィーにより直接パターン加工可能である。従って、フォトレジストを用いたプロセスと比較して、工程数を削減することができるため、有機ELディスプレイ及び液晶ディスプレイの生産性の向上、プロセスタイム短縮及びタクトタイム短縮が可能となる。
【0419】
<本発明のネガ型感光性樹脂組成物から得られる硬化膜を用いた有機ELディスプレイ>
本発明のネガ型感光性樹脂組成物から得られる硬化膜は、有機ELディスプレイ又は液晶ディスプレイを好適に構成することができる。
また、本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、低テーパーのパターン形状を得ることができ、高耐熱性に優れた硬化膜を得ることが可能である。そのため、有機ELディスプレイの画素分割層等の絶縁層など、高耐熱性及び低テーパーのパターン形状が要求される用途に好適である。特に、熱分解による脱ガスに起因した素子の不良又は特性低下や、高テーパーのパターン形状による電極配線の断線など、耐熱性及びパターン形状に起因する問題が想定される用途において、本発明のネガ型感光性樹脂組成物の硬化膜を用いることで、上記の問題が発生しない、高信頼性の素子を製造することが可能となる。さらに、硬化膜は遮光性に優れるため、電極配線の可視化防止又は外光反射の低減が可能となり、画像表示におけるコントラストを向上させることができる。従って、本発明のネガ型感光性樹脂組成物から得られる硬化膜を、有機ELディスプレイの画素分割層として用いることで、発光素子の光取り出し側に、偏光板及び1/4波長板を形成することなく、コントラストを向上させることができる。
【0420】
また、本発明の有機ELディスプレイは、曲面の表示部を有することが好ましい。この曲面の曲率半径は、曲面からなる表示部における断線等に起因する表示不良抑制の観点から、0.1mm以上が好ましく、0.3mm以上がより好ましい。また曲面の曲率半径は、有機ELディスプレイの小型化及び高解像化の観点から、10mm以下が好ましく、7mm以下がより好ましく、5mm以下がさらに好ましい。
【0421】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物を用いた、表示装置の製造方法は、以下の(1)~(4)の工程を有する。
(1)基板上に、本発明のネガ型感光性樹脂組成物の塗膜を成膜する工程、
(2)前記ネガ型感光性樹脂組成物の塗膜にフォトマスクを介して活性化学線を照射する工程、
(3)アルカリ溶液を用いて現像し、前記ネガ型感光性樹脂組成物のパターンを形成する工程、及び、
(4)前記パターンを加熱して、前記ネガ型感光性樹脂組成物の硬化パターンを得る工程。
【0422】
<塗膜を成膜する工程>
本発明のネガ型感光性樹脂組成物を用いた、表示装置の製造方法は、(1)基板上に、ネガ型感光性樹脂組成物の塗膜を成膜する工程、を有する。本発明のネガ型感光性樹脂組成物を成膜する方法としては、例えば、基板上に、前記樹脂組成物を塗布する方法、又は、基板上に、前記樹脂組成物をパターン状に塗布する方法が挙げられる。
【0423】
基板としては、例えば、ガラス上に、インジウム、スズ、亜鉛、アルミニウム及びガリウムから選ばれる一種類以上を有する酸化物、金属(モリブデン、銀、銅、アルミニウム、クロム若しくはチタンなど)若しくはCNT(Carbon Nano Tube)が、電極若しくは配線として形成された基板などが用いられる。
【0424】
インジウム、スズ、亜鉛、アルミニウム及びガリウムから選ばれる一種類以上を有する酸化物としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化アルミニウム亜鉛(AZO)、酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)又は酸化亜鉛(ZnO)が挙げられる。
【0425】
<基板上に、本発明のネガ型感光性樹脂組成物を塗布する方法>
基板上に、本発明のネガ型感光性樹脂組成物を塗布する方法としては、例えば、マイクログラビアコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、カーテンフローコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティング又はスリットコーティングが挙げられる。塗布膜厚は、塗布方法、樹脂組成物の固形分濃度や粘度などによって異なるが、通常は塗布及びプリベーク後の膜厚が0.1~30μmになるように塗布する。
【0426】
基板上に、本発明のネガ型感光性樹脂組成物を塗布した後、プリベークして成膜することが好ましい。プリベークは、オーブン、ホットプレート、赤外線、フラッシュアニール装置又はレーザーアニール装置などを使用することができる。プリベーク温度としては、50~150℃が好ましい。プリベーク時間としては、30秒~数時間が好ましい。80℃で2分間プリベークした後、120℃で2分間プリベークするなど、二段又はそれ以上の多段でプリベークしても構わない。
【0427】
<基板上に、本発明のネガ型感光性樹脂組成物をパターン状に塗布する方法>
基板上に、本発明のネガ型感光性樹脂組成物をパターン状に塗布する方法としては、例えば、凸版印刷、凹版印刷、孔版印刷、平版印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、オフセット印刷又はレーザー印刷が挙げられる。塗布膜厚は、塗布方法、本発明のネガ型感光性樹脂組成物の固形分濃度や粘度などによって異なるが、通常は塗布及びプリベーク後の膜厚が0.1~30μmになるように塗布する。
【0428】
基板上に、本発明のネガ型感光性樹脂組成物をパターン状に塗布した後、プリベークして成膜することが好ましい。プリベークは、オーブン、ホットプレート、赤外線、フラッシュアニール装置又はレーザーアニール装置などを使用することができる。プリベーク温度としては、50~150℃が好ましい。プリベーク時間としては、30秒~数時間が好ましい。80℃で2分間プリベークした後、120℃で2分間プリベークするなど、二段又はそれ以上の多段でプリベークしても構わない。
【0429】
<基板上に成膜した塗膜をパターン加工する方法>
基板上に成膜した、本発明のネガ型感光性樹脂組成物の塗膜をパターン加工する方法としては、例えば、フォトリソグラフィーにより直接パターン加工する方法又はエッチングによりパターン加工する方法が挙げられる。工程数の削減による生産性の向上及びプロセスタイム短縮の観点から、フォトリソグラフィーにより直接パターン加工する方法が好ましい。
【0430】
<フォトマスクを介して活性化学線を照射する工程>
本発明のネガ型感光性樹脂組成物を用いた、表示装置の製造方法は、(2)前記ネガ型感光性樹脂組成物の塗膜にフォトマスクを介して活性化学線を照射する工程、を有する。
【0431】
基板上に、本発明のネガ型感光性樹脂組成物を塗布及びプリベークして成膜した後、ステッパー、ミラープロジェクションマスクアライナー(MPA)又はパラレルライトマスクアライナー(PLA)などの露光機を用いて露光する。露光時に照射する活性化学線としては、例えば、紫外線、可視光線、電子線、X線、KrF(波長248nm)レーザー又はArF(波長193nm)レーザーなどが挙げられる。水銀灯のj線(波長313nm)、i線(波長365nm)、h線(波長405nm)又はg線(波長436nm)を用いることが好ましい。また露光量は通常100~40,000J/m(10~4,000mJ/cm)程度(i線照度計の値)であり、必要に応じて所望のパターンを有するフォトマスクを介して露光することができる。
【0432】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物を用いた、表示装置の製造方法は、フォトマスクとして、ハーフトーンフォトマスクを用いることが好ましい。ハーフトーンフォトマスクとは、透光部及び遮光部を含むパターンを有するフォトマスクであり、前記透光部と前記遮光部の間に、透過率が透光部の値より低く、かつ透過率が遮光部の値より高い、半透光部を有するフォトマスクをいう。ハーフトーンフォトマスクを用いて露光することで、現像後及び熱硬化後に段差形状を有するパターンを形成することが可能となる。なお、前記透光部を介して活性化学線を照射した硬化部は、前記厚膜部に相当し、前記半透光部を介して活性化学線を照射したハーフトーン露光部は、前記薄膜部に相当する。
【0433】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物を用いた、表示装置の製造方法において、前記ハーフトーンフォトマスクは、前記透光部と前記半透光部とが隣接する箇所を有する。前記透光部と前記半透光部とが隣接する箇所を有することで、現像後にフォトマスク上の前記透光部に相当する前記厚膜部と、フォトマスク上の前記半透光部に相当する前記薄膜部とを有するパターンを形成することができる。さらに、ハーフトーンフォトマスクは、前記遮光部と前記半透光部とが隣接する箇所を有する。現像後にフォトマスク上の前記遮光部に相当する開口部と、フォトマスク上の前記半透光部に相当する前記薄膜部とを有するパターンを形成することができる。ハーフトーンフォトマスクが、上記の箇所を有することで、現像後に前記厚膜部、前記薄膜部及び前記開口部を含む、段差形状を有するパターンを形成することができる。
【0434】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物を用いた、表示装置の製造方法において、前記ハーフトーンフォトマスクは、多面体、又は、一部若しくは全部の辺が円弧で形成された閉じた多面体の形状の透光部を有することが好ましい。該形状の透光部を有することで、現像後に該形状の厚膜部を有するパターンを形成することができる。多面体、又は、一部若しくは全部の辺が円弧で形成された閉じた多面体の形状としては、例えば、円形、正方形、長方形、正五角形、五角形、正六角形、六角形、正八角形若しくは八角形、又は、一部の辺が円弧で形成された四角形若しくは長方形などの多角形や楕円、真円が挙げられる。該形状の厚膜部は、薄膜部と隣接する箇所において、閉じた多面体の形状の柱状パターンとして存在する。従って、例えば、有機ELディスプレイの製造プロセスにおいて、後述する、有機EL層を形成する工程における、蒸着マスクの支持台として機能するため、好適である。また、ハーフトーンフォトマスクとしては、多面体、又は、一部若しくは全部の辺が円弧で形成された閉じた多面体の形状の遮光部を有することが好ましい。該形状の遮光部を有することで、現像後に該形状の開口部を有するパターンを形成することができる。該形状の開口部は、薄膜部と隣接する箇所において、閉じた多面体形状の開口パターンとして存在する。従って、例えば、有機ELディスプレイの製造プロセスにおいて、後述する、有機EL層を形成する工程において、有機EL層が形成される発光画素部として機能するため、好適である。また、前記遮光部と前記半透光部とが隣接する箇所を有することで、有機ディスプレイにおける、発光画素部と隣接する画素分割層として機能し、電極を形成する際の断線が抑制され、パネルの歩留まり低下を抑制することができるため、好適である。
【0435】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物を用いた、表示装置の製造方法において、前記ハーフトーンフォトマスクは、前記透光部及び前記半透光部の面積の合計に占める、前記透光部の面積の比率は、1%以上が好ましく、3%以上がより好ましく、5%以上がさらに好ましく、10%以上が特に好ましい。前記透光部の面積の比率が1%以上であると、有機EL層を形成する際の蒸着マスクを精度良く配置することができるため、高精度な蒸着パターンを形成できることで、パネルの歩留まり低下を抑制することができる。一方、前記透過部の面積の比率は、50%以下が好ましく、40%以下がより好ましく、30%以下がさらに好ましく、25%以下が特に好ましい。前記透光部の面積の比率が50%以下であると、有機EL層を形成する際の蒸着マスクとの接触面積を小さくできることで、パーティクル発生によるパネルの歩留まり低下を抑制できるとともに、発光素子の劣化を抑制することができる。
【0436】
ハーフトーンフォトマスクとしては、前記透光部の透過率を(%TFT)%とした場合、前記半透光部の透過率(%THT)%は、(%TFT)の10%以上が好ましく、15%以上がより好ましく、20%以上がさらに好ましく、25%以上が特に好ましい。半透光部の透過率(%THT)%が上記範囲内であると、段差形状を有する硬化パターン形成時の露光量を低減できることで、タクトタイム短縮が可能となる。一方、半透光部の透過率(%THT)%は、(%TFT)の60%以下が好ましく、55%以下がより好ましく、50%以下がさらに好ましく、45%以下が特に好ましい。半透光部の透過率(%THT)%が上記範囲内であると、厚膜部と薄膜部の膜厚差、および任意の段差の両側で隣接する薄膜部間の膜厚差を十分に大きくできることで、発光素子の劣化を抑制することができる。また、段差形状を有する硬化パターン一層で十分な膜厚差を有するため、プロセスタイム短縮が可能となる。
【0437】
ハーフトーンフォトマスクを介して活性化学線を照射して得られる、段差形状を有する硬化パターンにおいて、半透光部の透過率(%THT)%が、(%TFT)の30%である場合の薄膜部の膜厚を(THT30)μm、及び、半透光部の透過率(%THT)%が、(%TFT)の20%である場合の薄膜部の膜厚を(THT20)μmとした場合、(THT30)と(THT20)との膜厚差(ΔTHT30-HT20)μmは、0.3μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、0.7μm以上がさらに好ましく、0.8μm以上が特に好ましい。膜厚差が上記範囲内であると、厚膜部と薄膜部の膜厚差、および任意の段差の両側で隣接する薄膜部間の膜厚差を十分に大きくできることで、発光素子の劣化を抑制することができる。また、段差形状を有する硬化パターン一層で十分な膜厚差を有するため、プロセスタイム短縮が可能となる。一方、膜厚差(ΔTHT30-HT20)μmは、1.5μm以下が好ましく、1.4μm以下がより好ましく、1.3μm以下がさらに好ましく、1.2μm以下が特に好ましい。膜厚差が上記範囲内であると、装置等に起因する僅かな露光量のぶれによる膜厚バラつきの発生を低減できることで、膜厚均一性及び有機ELディスプレイ製造における歩留まりを向上させることができる。
【0438】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物を用いた、表示装置の製造方法は、フォトマスクとして、透光部の領域が異なる二つ以上のフォトマスクを用いても構わない。透光部の領域が異なる二つ以上のフォトマスクを用いて、二回以上に分けて露光することで、ハーフトーンフォトマスクを用いた場合の硬化部とハーフトーン露光部に相当する、二つ以上の露光部を形成することができる。そのため、現像後及び熱硬化後に段差形状を有するパターンを形成することが可能となる。
【0439】
露光後、露光後ベークをしても構わない。露光後ベークを行うことによって、現像後の解像度向上又は現像条件の許容幅増大などの効果が期待できる。露光後ベークは、オーブン、ホットプレート、赤外線、フラッシュアニール装置又はレーザーアニール装置などを使用することができる。露光後ベーク温度としては、50~180℃が好ましく、60~150℃がより好ましい。露光後ベーク時間は、10秒~数時間が好ましい。露光後ベーク時間が10秒~数時間であると、反応が良好に進行し、現像時間を短くできる場合がある。
【0440】
<アルカリ溶液を用いて現像し、パターンを形成する工程>
本発明のネガ型感光性樹脂組成物を用いた、表示装置の製造方法は、(3)アルカリ溶液を用いて現像し、前記ネガ型感光性樹脂組成物のパターンを形成する工程、を有する。
【0441】
露光後、自動現像装置などを用いて現像する。本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、ネガ型の感光性を有するため、現像後、未露光部が現像液で除去され、レリーフ・パターンを得ることができる。
【0442】
前記(3)アルカリ溶液を用いて現像し、前記ネガ型感光性樹脂組成物のパターンを形成する工程において、形成されるパターンの断面における傾斜辺のテーパー角は、1°以上が好ましく、5°以上がより好ましく、10°以上がさらに好ましく、12°以上がさらにより好ましく、15°以上が特に好ましい。テーパー角が1°以上であると、発光素子を高密度に集積及び配置できることで、解像度を向上させることができる。一方、形成されるパターンの断面における傾斜辺のテーパー角は、60°以下が好ましく、45°以下がより好ましく、40°以下がさらに好ましく、35°以下がさらにより好ましく、30°以下が特に好ましい。テーパー角が60°以下であると、透明電極又は反射電極などの電極を形成する際の断線を防止することができる。また、電極のエッジ部における電界集中を抑制できることで、発光素子の劣化を抑制することができる。
【0443】
また、前記(3)アルカリ溶液を用いて現像し、前記ネガ型感光性樹脂組成物のパターンを形成する工程において、形成されるパターンとしては、段差形状を有するパターンであることが好ましい。段差形状を有するパターンの場合、テーパー角は、段差形状を有するパターンの薄膜部の断面における端部の傾斜辺のテーパー角をいう。段差形状を有するパターンにおける好ましいテーパー角は、上述したテーパー角の通りである。テーパー角が1°以上であると、発光素子を高密度に集積及び配置できることで、前記薄膜部が現像後に低テーパー形状であるため、後述する(3b)前記ネガ型感光性樹脂組成物のパターンを光硬化させる工程において、段差形状を有するパターンのUV硬化度を高め、熱硬化時におけるパターンリフローを抑制する効果と組み合わせることに好適である。従って、熱硬化後においても厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを形成できるとともに、薄膜部において、熱硬化後に低テーパー形状のパターンを形成することができる。前記薄膜部は、有機ELディスプレイにおける画素分割層として機能し、透明電極又は反射電極などの電極を形成する際の断線防止によって、パネルの歩留まり低下を抑制できるため、好適である。
【0444】
現像液としては、アルカリ現像液が一般的に用いられる。アルカリ現像液としては、例えば、有機系のアルカリ溶液又はアルカリ性を示す化合物の水溶液が好ましく、環境面の観点から、アルカリ性を示す化合物の水溶液すなわちアルカリ水溶液がより好ましい。
【0445】
有機系のアルカリ溶液又はアルカリ性を示す化合物としては、例えば、2-アミノエタノール、2-(ジメチルアミノ)エタノール、2-(ジエチルアミノ)エタノール、ジエタノールアミン、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、酢酸(2-ジメチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸(2-ジメチルアミノ)エチル、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムが挙げられるが、硬化膜の金属不純物低減及び表示装置の表示不良抑制の観点から、水酸化テトラメチルアンモニウム又は水酸化テトラエチルアンモニウムが好ましい。
【0446】
現像液としては、有機溶媒を用いても構わない。現像液としては、有機溶媒と、本発明のネガ型感光性樹脂組成物に対する貧溶媒の、両方を含有する混合溶液を用いても構わない。
【0447】
現像方法としては、例えば、パドル現像、スプレー現像又はディップ現像が挙げられる。パドル現像としては、例えば、露光後の膜に上記の現像液をそのまま塗布した後、任意の時間放置する方法、又は、露光後の膜に上記の現像液を任意の時間の間、霧状に放射して塗布した後、任意の時間放置する方法が挙げられる。スプレー現像としては、露光後の膜に上記の現像液を霧状に放射して、任意の時間当て続ける方法が挙げられる。ディップ現像としては、露光後の膜を上記の現像液中に任意の時間浸漬する方法、又は、露光後の膜を上記の現像液中に浸漬後、超音波を任意の時間照射し続ける方法が挙げられる。現像時の装置汚染抑制及び現像液の使用量削減によるプロセスコスト削減の観点から、現像方法としては、パドル現像が好ましい。現像時の装置汚染を抑制することで、現像時の基板汚染を抑制することができ、表示装置の表示不良を抑制することができる。一方、現像後の残渣発生の抑制の観点から、現像方法としては、スプレー現像が好ましい。また、現像液の再利用による現像液の使用量削減及びプロセスコスト削減の観点から、現像方法としては、ディップ現像が好ましい。
【0448】
現像時間は、5秒以上が好ましく、10秒以上がより好ましく、30秒以上がさらに好ましく、1分以上が特に好ましい。現像時間が上記範囲内であると、アルカリ現像時の残渣発生を抑制することができる。一方、タクトタイム短縮の観点から、現像時間は、30分以下が好ましく、15分以下がより好ましく、10分以下がさらに好ましく、5分以下が特に好ましい。
【0449】
現像後、得られたレリーフ・パターンを、リンス液で洗浄することが好ましい。リンス液としては、現像液としてアルカリ水溶液を用いた場合、水が好ましい。リンス液としては、例えば、エタノール若しくはイソプロピルアルコールなどのアルコール類の水溶液、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類の水溶液又は炭酸ガス、塩酸若しくは酢酸などの酸性を示す化合物の水溶液を用いても構わない。リンス液としては、有機溶媒を用いても構わない。
【0450】
フォトリソグラフィーにより、本発明のネガ型感光性樹脂組成物のパターンを得た後、ブリーチング露光をしても構わない。ブリーチング露光をすることで、熱硬化後のパターン形状を任意に制御することができる。また、硬化膜の透明性を向上させることができる。
【0451】
ブリーチング露光は、ステッパー、ミラープロジェクションマスクアライナー(MPA)又はパラレルライトマスクアライナー(PLA)などの露光機を使用することができる。ブリーチング露光時に照射する活性化学線としては、例えば、紫外線、可視光線、電子線、X線、KrF(波長248nm)レーザー又はArF(波長193nm)レーザーなどが挙げられる。水銀灯のj線(波長313nm)、i線(波長365nm)、h線(波長405nm)又はg線(波長436nm)を用いることが好ましい。また露光量は通常500~500,000J/m(50~50,000mJ/cm)程度(i線照度計の値)であり、必要に応じて所望のパターンを有するマスクを介して露光することができる。
【0452】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物のパターンを得た後、ミドルベークをしても構わない。ミドルベークを行うことで、熱硬化後の解像度が向上するとともに、熱硬化後のパターン形状を任意に制御することができる。ミドルベークは、オーブン、ホットプレート、赤外線、フラッシュアニール装置又はレーザーアニール装置などを使用することができる。ミドルベーク温度としては、50~250℃が好ましく、70~220℃がより好ましい。ミドルベーク時間としては、10秒~数時間が好ましい。100℃で5分間ミドルベークした後、150℃で5分間ミドルベークするなど、二段又はそれ以上の多段でミドルベークしても構わない。
【0453】
<パターンを光硬化させる工程>
本発明のネガ型感光性樹脂組成物を用いた、表示装置の製造方法は、前記(3)アルカリ溶液を用いて現像し、前記ネガ型感光性樹脂組成物のパターンを形成する工程の後、さらに、(3b)前記ネガ型感光性樹脂組成物のパターンを光硬化させる工程、を有することが好ましい。
【0454】
前記(3b)パターンを光硬化させる工程により、パターンの架橋密度が向上し、脱ガス起因となる低分子成分が減量するため、ネガ型感光性樹脂組成物のパターンを備える発光素子の信頼性を向上させることができる。また、ネガ型感光性樹脂組成物のパターンが段差形状を有するパターンの場合、パターンの熱硬化時におけるパターンリフローを抑制でき、熱硬化後においても厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有するパターンを形成することができる。加えて、熱硬化時における膜表面のリフロー性を維持によって平坦性が向上し、パネルの歩留まり低下を抑制することができる。さらに、ネガ型感光性樹脂組成物のパターンを備える有機ELディスプレイの製造において、有機EL層を形成する際の蒸着マスクとの接触面積を小さくできることで、パーティクル発生によるパネルの歩留まり低下を抑制できるとともに、発光素子の劣化を抑制することができる。
【0455】
<パターンに活性化学線を照射する工程>
前記(3b)パターンを光硬化させる工程は、パターンに活性化学線を照射する工程、を有することが好ましい。前記パターンに活性化学線を照射する工程により、ネガ型感光性樹脂組成物のパターンの熱硬化時におけるパターンリフローを抑制できる。加えて、パネルの歩留まり低下を抑制することができる。
【0456】
前記パターンに活性化学線を照射する工程において、ネガ型感光性樹脂組成物のパターンに活性化学線を照射する方法としては、例えば、ステッパー、スキャナー、ミラープロジェクションマスクアライナー(MPA)、又はパラレルライトマスクアライナー(PLA)などの露光機を用いてブリーチング露光する方法が挙げられる。
【0457】
前記パターンに活性化学線を照射する工程における、活性化学線の露光波長は、10nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましく、200nm以上がさらに好ましい。一方、活性化学線の露光波長は、450nm以下が好ましく、420nm以下がより好ましく、380nm以下がさらに好ましく、340nm以下が特に好ましい。また、水銀灯のj線(波長313nm)、i線(波長365nm)、h線(波長405nm)、若しくはg線(波長436nm)、又は、i線、h線及びg線の混合線が特に好ましい。露光波長が上記範囲内であると、ネガ型感光性樹脂組成物のパターンの熱硬化時におけるパターンリフローを抑制できる。加えて、パネルの歩留まり低下を抑制することができる。また、段差膜厚向上の観点から、露光波長は、310nm以下が好ましく、270nm以下がより好ましく、230nm以下がさらに好ましく、200nm以下が特に好ましい。
【0458】
前記パターンに活性化学線を照射する工程における、ブリーチング露光時に照射する活性化学線としては、例えば、紫外線、可視光線、電子線、X線、XeF(波長351nm)レーザー、XeCl(波長308nm)レーザー、KrF(波長248nm)レーザー、又はArF(波長193nm)レーザーなどが挙げられる。
【0459】
前記パターンに活性化学線を照射する工程において、活性化学線の照射に用いられるランプとしては、例えば、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、Xeエキシマランプ、KrFエキシマランプ、又はArFエキシマランプなどが挙げられる。
【0460】
前記パターンに活性化学線を照射する工程における、活性化学線の露光量は、i線照度値で、100J/m(10mJ/cm)以上が好ましい。一方、活性化学線の露光量は、i線照度値で、50,000J/m(5,000mJ/cm)以下が好ましい。露光量が上記範囲内であると、ネガ型感光性樹脂組成物のパターンの熱硬化時におけるパターンリフローを抑制できる。加えて、パネルの歩留まり低下を抑制することができる。
【0461】
前記(2)ネガ型感光性樹脂組成物の塗膜にフォトマスクを介して活性化学線を照射する工程におけるフォトマスクが、ハーフトーンフォトマスクである場合、前記パターンに活性化学線を照射する工程における、活性化学線の露光量を(EBLEACH)mJ/cmとし、前記(2)フォトマスクを介して活性化学線を照射する工程における、フォトマスクの透過部における露光量を(EEXPO)mJ/cmとするとき、露光量比(EBLEACH)/(EEXPO)は、0.1以上が好ましく、0.3以上がより好ましく、0.5以上がさらに好ましく、0.7以上がさらにより好ましく、1以上が特に好ましい。露光量比が上記範囲内であると、ネガ型感光性樹脂組成物のパターンの熱硬化時におけるパターンリフローを抑制できる。加えて、パネルの歩留まり低下を抑制することができる。また、段差膜厚向上の観点から、露光量比は、0.5以上が好ましく、0.7以上がより好ましく、1以上がさらに好ましい。また、歩留まり向上の観点から、露光量比は、4未満が好ましく、3.5未満がより好ましく、3未満がさらに好ましい。
【0462】
前記パターンに活性化学線を照射する工程における、ブリーチング露光時の処理雰囲気としては、例えば、空気、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン若しくはキセノン雰囲気下、酸素を1~10,000ppm(0.0001~1質量%)含有するガス雰囲気下、真空下、水中又は有機溶媒中が好ましく、ブリーチング露光時のタクトタイム短縮の観点から、空気下がより好ましい。また、段差膜厚向上の観点から、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン若しくはキセノン雰囲気下、酸素を1~10,000ppm(0.0001~1質量%)含有するガス雰囲気下、真空下、又は、水中が好ましい。酸素を含有するガスとしては、酸素を1,000ppm以下で含有するガスがより好ましく、100ppm以下で含有するガスがさらに好ましい。
【0463】
前記パターンに活性化学線を照射する工程における、ブリーチング露光の処理温度は、10℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、30℃以上がさらに好ましく、40℃以上がさらにより好ましく、60℃以上が特に好ましい。一方、処理温度は、200℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、120℃以下がさらに好ましく、100℃以下が特に好ましい。処理温度が上記範囲内であると、ネガ型感光性樹脂組成物のパターンの熱硬化時におけるパターンリフローを抑制できる。加えて、パネルの歩留まり低下を抑制することができる。
【0464】
<パターンを活性ガス紫外線処理する工程>
前記(3b)パターンを光硬化させる工程は、パターンを活性ガス紫外線処理する工程を有することが好ましい。(3b)パターンを光硬化させる工程としては、前記パターンに活性化学線を照射する工程、を有し、さらに、前記パターンを活性ガス紫外線処理する工程を有しても構わない。前記パターンを活性ガス紫外線処理する工程により、ネガ型感光性樹脂組成物のパターンの熱硬化時におけるパターンリフローを抑制できる。加えて、パネルの歩留まり低下を抑制することができる。
【0465】
前記パターンを活性ガス紫外線処理する工程において、ネガ型感光性樹脂組成物のパターンを活性ガス紫外線処理する方法としては、例えば、ガスを暴露させて紫外線を照射する方法が挙げられる。
【0466】
前記パターンを活性ガス紫外線処理する工程における、活性ガス紫外線処理に用いられるガスとしては、酸素、オゾン、アルゴン、フッ素又は塩素から選ばれる一種類以上を成分として含有するガスが挙げられる。段差膜厚向上の観点から、酸素又はオゾンを成分として含有するガスが好ましい。段差膜厚向上の観点から、酸素を成分として含有するガスとしては、酸素を10~100質量%含有するガスが好ましい。
【0467】
前記パターンを活性ガス紫外線処理する工程における、活性ガス紫外線処理時に照射する紫外線の露光波長としては、10nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましく、50nm以上がさらに好ましく、100nm以上が特に好ましい。一方、照射する紫外線の露光波長としては、450nm以下が好ましく、400nm以下がより好ましく、350nm以下がさらに好ましく、300nm以下が特に好ましい。また、波長185nm又は波長254nmの紫外線が特に好ましい。露光波長が上記範囲内であると、ネガ型感光性樹脂組成物のパターンの熱硬化時におけるパターンリフローを抑制できる。加えて、パネルの歩留まり低下を抑制することができる。
【0468】
前記パターンを活性ガス紫外線処理する工程における、紫外線照度は、3mW/cm以上が好ましい。一方、紫外線照度は、2,000mW/cm以下が好ましい。紫外線照度が上記範囲内であると、ネガ型感光性樹脂組成物のパターンの熱硬化時におけるパターンリフローを抑制できる。加えて、パネルの歩留まり低下を抑制することができる。
【0469】
前記パターンを活性ガス紫外線処理する工程における、活性ガス紫外線処理の処理温度は、10℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、30℃以上がさらに好ましく、40℃以上が特に好ましい。一方、処理温度は、200℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、120℃以下がさらに好ましく、100℃以下が特に好ましい。処理温度が上記範囲内であると、ネガ型感光性樹脂組成物のパターンの熱硬化時におけるパターンリフローを抑制できる。加えて、パネルの歩留まり低下を抑制することができる。
【0470】
前記パターンを活性ガス紫外線処理する工程における、活性ガス紫外線処理の処理時間は、10秒以上が好ましい。一方、処理時間は、30分以下が好ましい。処理時間が上記範囲内であると、ネガ型感光性樹脂組成物のパターンの熱硬化時におけるパターンリフローを抑制できる。また、タクトタイムを短縮できる。
【0471】
<パターンをプラズマ処理する工程>
前記(3b)パターンを光硬化させる工程は、パターンをプラズマ処理する工程、を有することがより好ましい。(3b)パターンを光硬化させる工程としては、前記パターンに活性化学線を照射する工程、を有し、さらに、前記パターンをプラズマ処理する工程、を有しても構わない。前記パターンをプラズマ処理する工程により、ネガ型感光性樹脂組成物のパターンの熱硬化時におけるパターンリフローを抑制できる。加えて、パネルの歩留まり低下を抑制することができる。
【0472】
前記パターンをプラズマ処理する工程において、ネガ型感光性樹脂組成物のパターンをプラズマ処理する方法としては、例えば、電磁波の照射によってイオン化又はラジカル化させたガスを暴露させる方法が挙げられる。
【0473】
前記パターンをプラズマ処理する工程における、プラズマ処理に用いられるガスとしては、酸素、オゾン、アルゴン、フッ素又は塩素から選ばれる一種類以上を成分として含有するガスが挙げられる。段差膜厚向上の観点から、酸素又はオゾンを成分として含有するガスが好ましい。酸素を成分として含有するガスとしては、酸素を10~100質量%含有するガスが好ましい。
【0474】
前記パターンをプラズマ処理する工程における、高周波電力は、100W以上が好ましい。一方、高周波電力は、10,000W以下が好ましい。高周波電力が上記範囲内であると、ネガ型感光性樹脂組成物のパターンの熱硬化時におけるパターンリフローを抑制できる。加えて、パネルの歩留まり低下を抑制することができる。
【0475】
前記パターンをプラズマ処理する工程における、ガス流量は、10sccm(standard cc/min)以上が好ましい。一方、ガス流量は、200sccm以下が好ましい。ガス流量が上記範囲内であると、ネガ型感光性樹脂組成物のパターンの熱硬化時におけるパターンリフローを抑制できる。加えて、パネルの歩留まり低下を抑制することができる。
【0476】
前記パターンをプラズマ処理する工程における、処理圧力は、1Pa以上が好ましい。一方、処理圧力は、100Pa以下が好ましい。処理圧力が上記範囲内であると、ネガ型感光性樹脂組成物のパターンの熱硬化時におけるパターンリフローを抑制できる。加えて、パネルの歩留まり低下を抑制することができる。
【0477】
前記パターンをプラズマ処理する工程における、プラズマ処理の処理温度は、10℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、30℃以上がさらに好ましく、40℃以上が特に好ましい。一方、処理温度は、200℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、120℃以下がさらに好ましく、100℃以下が特に好ましい。処理温度が上記範囲内であると、ネガ型感光性樹脂組成物のパターンの熱硬化時におけるパターンリフローを抑制できる。加えて、パネルの歩留まり低下を抑制することができる。
【0478】
前記パターンをプラズマ処理する工程における、プラズマ処理の処理時間は、10秒以上が好ましい。一方、処理時間は、30分以下が好ましい。処理時間が上記範囲内であると、ネガ型感光性樹脂組成物のパターンの熱硬化時におけるパターンリフローを抑制できる。また、タクトタイムを短縮することができる。
【0479】
<パターンを加熱して、硬化パターンを得る工程>
本発明のネガ型感光性樹脂組成物を用いた、表示装置の製造方法は、(4)前記ネガ型感光性樹脂組成物のパターンを加熱して、前記ネガ型感光性樹脂組成物の硬化パターンを得る工程、を有する。
【0480】
基板上に成膜した、本発明のネガ型感光性樹脂組成物のパターンの加熱は、オーブン、ホットプレート、赤外線、フラッシュアニール装置又はレーザーアニール装置などを使用することができる。本発明のネガ型感光性樹脂組成物のパターンを加熱して熱硬化させることで、硬化膜の耐熱性を向上させることができるとともに、低テーパーのパターン形状を得ることができる。
【0481】
熱硬化させる温度としては、150℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、250℃以上がさらに好ましい。熱硬化温度が150℃以上であると、硬化膜の耐熱性を向上させることができるとともに、熱硬化後のパターン形状をより低テーパー化させることができる。一方、タクトタイム短縮の観点から、熱硬化させる温度は、500℃以下が好ましく、450℃以下がより好ましく、400℃以下がさらに好ましい。
【0482】
熱硬化させる時間としては、1分以上が好ましく、5分以上がより好ましく、10分以上がさらに好ましく、30分以上が特に好ましい。熱硬化時間が1分以上であると、熱硬化後のパターン形状をより低テーパー化させることができる。一方、タクトタイム短縮の観点から、熱硬化させる時間は、300分以下が好ましく、250分以下がより好ましく、200分以下がさらに好ましく、150分以下が特に好ましい。また150℃で30分間熱硬化させた後、250℃で30分間熱硬化させるなど、二段又はそれ以上の多段で熱硬化させても構わない。
【0483】
また、本発明のネガ型感光性樹脂組成物によれば、画素分割層、電極絶縁層、配線絶縁層、層間絶縁層、TFT平坦化層、電極平坦化層、配線平坦化層、TFT保護層、電極保護層、配線保護層、ゲート絶縁層、カラーフィルタ、ブラックマトリックス又はブラックカラムスペーサーなどの用途に好適に用いられる硬化膜を得ることが可能となる。また、本発明の有機ELディスプレイは、上記硬化膜からなる画素分割層、電極絶縁層、配線絶縁層、TFT平坦化層、電極平坦化層、配線平坦化層、TFT保護層、電極保護層及び配線保護層からなる群より選ばれる一種類以上を備える。特に、遮光性に優れるため、有機ELディスプレイの遮光性を有する画素分割層、ブラックマトリックス又はブラックカラムスペーサーとして好適である。加えて、該硬化膜を前記の用途として具備する素子及び表示装置を得ることが可能となる。
【0484】
さらに、本発明のネガ型感光性樹脂組成物を用いた、表示装置の製造方法によれば、パターン加工され、ポリイミド及び/又はポリベンゾオキサゾールを含有する、高耐熱性かつ遮光性の硬化膜を得ることが可能であるため、有機ELディスプレイ及び液晶ディスプレイの製造における歩留まり向上、性能向上及び信頼性向上に繋がる。加えて、本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、フォトリソグラフィーにより直接パターン加工可能であるため、フォトレジストを用いたプロセスと比較して、工程数を削減することができるため、生産性の向上、プロセスタイム短縮及びタクトタイム短縮が可能となる。
【実施例
【0485】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの範囲に限定されない。なお、用いた化合物のうち略語を使用しているものについて、名称を以下に示す。
6FDA:2,2-(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物;4,4’-ヘキサフルオロプロパン-2,2-ジイル-ビス(1,2-フタル酸無水物)
A-BPEF:“NK ESTER”(登録商標) A-BPEF(新中村化学工業(株)製;9,9-ビス[4-(2-アクリロキシエトキシ)フェニル]フルオレン)
AcrTMS:3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン
A-DPH-12E:“NK ESTER”(登録商標) A-DPH-12E(新中村化学工業(株)製;オキシエチレン構造を分子中に12個有する、エトキシ化ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
A-DPH-6E:“NK ESTER”(登録商標) A-DPH-6E(新中村化学工業(株)製;オキシエチレン構造を分子中に6個有する、エトキシ化ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
A-DPH-6P:“NK ESTER”(登録商標) A-DPH-6P(新中村化学工業(株)製;オキシプロピレン構造を分子中に6個有する、プロポキシ化ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
APC:Argentum‐Palladium‐Cupper(銀‐パラジウム‐銅合金)
BAHF:2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン
BFE:1,2-ビス(4-ホルミルフェニル)エタン
BGPF:9,9-ビス(4-グリシドキシフェニル)フルオレン
BHPF:9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン
Bis-A-AF:2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン
Bk-A1103:“CHROMOFINE”(登録商標) BLACK A1103(大日精化工業(株)製;一次粒子径50~100nmのアゾ系黒色顔料)
Bk-S0084:“PALIOGEN”(登録商標) BLACK S0084(BASF社製;一次粒子径50~100nmのペリレン系黒色顔料)
Bk-S0100CF:“IRGAPHOR”(登録商標) BLACK S0100CF(BASF社製;一次粒子径40~80nmのベンゾフラノン系黒色顔料)
CPL-1:オキシペンチレンカルボニル構造を分子中に1個有する、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
CPL-2:オキシペンチレンカルボニル構造を分子中に4個有する、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
CPL-3:オキシペンチレンカルボニル構造を分子中に5個有する、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
D.BYK-167:“DISPERBYK”(登録商標)-167(ビックケミー・ジャパン(株)製;アミン価を有する分散剤)
DFA:N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール
DMeDMS:ジメチルシメトキシシラン
DPCA-20:“KAYARAD”(登録商標) DPCA-20(日本化薬(株)製;オキシペンチレンカルボニル構造を分子中に2個有する、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
DPCA-30:“KAYARAD”(登録商標) DPCA-30(日本化薬(株)製;オキシペンチレンカルボニル構造を分子中に3個有する、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
DPCA-60:“KAYARAD”(登録商標) DPCA-60(日本化薬(株)製;オキシペンチレンカルボニル構造を分子中に6個有する、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
DPCA-120:“KAYARAD”(登録商標) DPCA-120(日本化薬(株)製;オキシペンチレンカルボニル構造を分子中に12個有する、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
DPHA:“KAYARAD”(登録商標) DPHA(日本化薬(株)製;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
FLN-1:9,9-ビス(4-アクリロキシフェニル)フルオレン
FLN-2:9,9-ビス[3,4-ビス(2-アクリロキシエトキシ)フェニル]フルオレン
FLN-3:9,9-ビス[4-(2-アクリロキシエトキシ)-1-ナフチル]フルオレン
FLN-4:フルオレン骨格を分子中に2個、及び、アクリロキシ基を分子中に2個有する、ラジカル重合性化合物
FLN-5:オキシペンチレンカルボニル構造を分子中に2個有する、ε-カプロラクトン変性9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンジアクリレート
FR-201:9,9-ビス(4-グリシドキシフェニル)フルオレン(Tronly社製)
FR-301:9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-アクリロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン(Tronly社製)
GMA:メタクリル酸グリシジル
HFHA:N,N’-ビス[5,5’-ヘキサフルオロプロパン-2,2-ジイル-ビス(2-ヒドロキシフェニル)]ビス(3-アミノ安息香酸アミド)
HX-220:“KAYARAD”(登録商標) HX-220(日本化薬(株)製;オキシペンチレンカルボニル構造を分子内に2個有する、ε-カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート)
IDE-1:1,1-ビス(4-グリシドキシフェニル)-3-フェニルインダン
IDN-1:1,1-ビス(4-アクリロキシフェニル)インダン
IDN-2:1,1-ビス[4-(2-アクリロキシエトキシ)フェニル]インダン
IDN-3:1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-アクリロキシプロポキシ)フェニル]インダン
IGZO:酸化インジウムガリウム亜鉛
ITO:酸化インジウムスズ
MAA:メタクリル酸
MAP:3-アミノフェノール;メタアミノフェノール
MBA:3-メトキシ-n-ブチルアセテート
MeTMS:メチルトリメトキシシラン
MgAg:Magnesium‐Argentum(マグネシウム‐銀合金)
MOI:“カレンズ”(登録商標) MOI(昭和電工(株)製;2-メタクリロキシエチルイソシアネート)
NA:5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物;ナジック酸無水物
NC-7000L:ナフタレン骨格、ベンゼン骨格、及び、2つのエポキシ基を含む構造単位を有するエポキシ樹脂(日本化薬(株)製)
NCI-831:“アデカアークルズ”(登録商標)NCI-831((株)ADEKA製;オキシムエステル系光重合開始剤)
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
ODPA:ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物;オキシジフタル酸二無水物
P.B.15:6:C.I.ピグメントブルー15:6
P.R.254:C.I.ピグメントレッド254
P.V.23:C.I.ピグメントバイオレット23
P.Y.139:C.I.ピグメントイエロー139
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
PHA:フタル酸無水物
PhTMS:フェニルトリメトキシシラン
S-20000:“SOLSPERSE”(登録商標) 20000(Lubrizol社製;ポリエーテル系分散剤)
SiDA:1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン
STR:スチレン
TCDM:メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イル;ジメチロール-トリシクロデカンジメタアクリレート
THPHA:1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物
TMAH:水酸化テトラメチルアンモニウム
TMOS:テトラメトキシシラン
TMSSucA:3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物
TPK-1227:スルホン酸基を導入する表面処理がされたカーボンブラック(CABOT製)
TrisP-PA:1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-[4-[1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]フェニル]エタン(本州化学工業(株)製)
WR-301:“ADEKA ARKLS”(登録商標) WR-301((株)ADEKA製;エポキシ基を有する芳香族化合物及び不飽和カルボン酸を開環付加反応させて得られる樹脂に、カルボン酸無水物を反応させて得られる多環側鎖含有樹脂、酸当量:560、二重結合当量:450)
【0486】
合成例(A)
三口フラスコに、BAHFを18.31g(0.05mol)、プロピレンオキシドを17.42g(0.3mol)、アセトンを100mL秤量して溶解させた。ここに、アセトン10mLに塩化3-ニトロベンゾイルを20.41g(0.11mol)溶かした溶液を滴下した。滴下終了後、-15℃で4時間反応させ、その後室温に戻した。析出した白色固体をろ取し、50℃で真空乾燥させた。得られた固体30gを、300mLのステンレスオートクレーブに入れ、2-メトキシエタノール250mLに分散させ、5%パラジウム-炭素を2g加えた。ここに水素を風船で導入して、室温で2時間反応させた。2時間後、風船がこれ以上しぼまないことを確認した。反応終了後、ろ過して触媒であるパラジウム化合物を除去し、減圧留去させて濃縮し、下記構造のヒドロキシ基含有ジアミン化合物(HFHA)を得た。
【化29】
【0487】
合成例1 ポリイミド(PI-1)の合成
乾燥窒素気流下、三口フラスコに、BAHFを31.13g(0.085mol;全アミン及びその誘導体に由来する構造単位に対して77.3mol%)、SiDAを1.24g(0.0050mol;全アミン及びその誘導体に由来する構造単位に対して4.5mol%)、末端封止剤として、MAPを2.18g(0.020mol;全アミン及びその誘導体に由来する構造単位に対して18.2mol%)、NMPを150.00g秤量して溶解させた。ここに、NMP50.00gにODPAを31.02g(0.10mol;全カルボン酸及びその誘導体に由来する構造単位に対して100mol%)溶かした溶液を添加し、20℃で1時間攪拌し、次いで50℃で4時間攪拌した。その後、キシレン15gを添加し、水をキシレンとともに共沸しながら、150℃で5時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を水3Lに投入し、析出した固体沈殿をろ過して得た。得られた固体を水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で24時間乾燥し、ポリイミド(PI-1)を得た。得られたポリイミドのMwは27,000、酸当量は350であった。
【0488】
合成例2~4 ポリイミド(PI-2)~ポリイミド(PI-4)の合成
表1-1に記載のモノマー種およびその比率にて、合成例1と同様に重合をして、ポリイミド(PI-2)~ポリイミド(PI-4)を得た。
【0489】
合成例5 ポリイミド(PI-5)の合成
表1-1に記載のモノマー種およびその比率にて、合成例1と同様に重合をして、ポリイミド樹脂を得た。乾燥窒素気流下、三口フラスコに、得られたポリイミド樹脂を32.79g、MBAを76.51g秤量して溶解させた。混合溶液を0℃に冷却し、ここに、MBA3.16gにMOI3.16g(樹脂中のフェノール性水酸基に対して0.45mol当量)を溶かした溶液を滴下した。滴下終了後、80℃で1時間攪拌して、ポリイミド溶液(PI-5)を得た。得られたポリイミドのMwは33,000、酸当量は760g/molであり、二重結合当量は930g/molであった。
【0490】
合成例6 ポリイミド前駆体(PIP-1)の合成
乾燥窒素気流下、三口フラスコに、6FDAを44.42g(0.10mol;全カルボン酸及びその誘導体に由来する構造単位に対して100mol%)、NMPを150g秤量して溶解させた。ここに、NMP50gにBAHFを14.65g(0.040mol;全アミン及びその誘導体に由来する構造単位に対して32.0mol%)、HFHAを18.14g(0.030mol;全アミン及びその誘導体に由来する構造単位に対して24.0mol%)、SiDAを1.24g(0.0050mol;全アミン及びその誘導体に由来する構造単位に対して4.0mol%)溶かした溶液を添加し、20℃で1時間攪拌し、次いで50℃で2時間攪拌した。次に、末端封止剤として、NMP15gにMAPを5.46g(0.050mol;全アミン及びその誘導体に由来する構造単位に対して40.0mol%)溶かした溶液を添加し、50℃で2時間攪拌した。その後、NMP15gにDFAを23.83g(0.20mol)溶かした溶液を10分かけて滴下した。滴下終了後、50℃で3時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を室温に冷却した後、反応溶液を水3Lに投入し、析出した固体沈殿をろ過して得た。得られた固体を水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で24時間乾燥し、ポリイミド前駆体(PIP-1)を得た。得られたポリイミド前駆体のMwは20,000、酸当量は450であった。
【0491】
合成例7 ポリイミド前駆体(PIP-2)の合成
表1-2に記載のモノマー種およびその比率にて、合成例6と同様に重合をして、ポリイミド前駆体(PIP-2)を得た。
【0492】
合成例8 ポリベンゾオキサゾール(PBO-1)の合成
トルエンを満たしたディーンスターク水分離器及び冷却管を付けた500mL丸底フラスコに、BAHFを34.79g(0.095mol;全アミン及びその誘導体に由来する構造単位に対して95.0mol%)、SiDAを1.24g(0.0050mol;全アミン及びその誘導体に由来する構造単位に対して5.0mol%)、NMPを75.00g秤量して、溶解させた。ここに、NMP25.00gに、BFEを19.06g(0.080mol;全カルボン酸及びその誘導体に由来する構造単位に対し66.7mol%)、末端封止剤として、NAを6.57g(0.040mol;全カルボン酸及びその誘導体に由来する構造単位に対し33.3mol%)溶かした溶液を添加し、20℃で1時間攪拌し、次いで50℃で1時間攪拌した。その後、窒素雰囲気下、200℃以上で10時間加熱攪拌し、脱水反応を行った。反応終了後、反応溶液を水3Lに投入し、析出した固体沈殿をろ過して得た。得られた固体を水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で24時間乾燥し、ポリベンゾオキサゾール(PBO-1)を得た。得られたポリベンゾオキサゾールのMwは25,000、酸当量は330であった。
【0493】
合成例9 ポリベンゾオキサゾール前駆体(PBOP-1)の合成
トルエンを満たしたディーンスターク水分離器及び冷却管を付けた500mL丸底フラスコに、BAHFを34.79g(0.095mol;全アミン及びその誘導体に由来する構造単位に対して95.0mol%)、SiDAを1.24g(0.0050mol;全アミン及びその誘導体に由来する構造単位に対して5.0mol%)、NMPを70.00g秤量して、溶解させた。ここに、NMP20.00gに、BFEを19.06g(0.080mol;全カルボン酸及びその誘導体に由来する構造単位に対し66.7mol%)溶かした溶液を添加し、20℃で1時間攪拌し、次いで50℃で2時間攪拌した。次に、末端封止剤として、NMP10gにNAを6.57g(0.040mol;全カルボン酸及びその誘導体に由来する構造単位に対し33.3mol%)溶かした溶液を添加し、50℃で2時間攪拌した。その後、窒素雰囲気下、100℃で2時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を水3Lに投入し、析出した固体沈殿をろ過して得た。得られた固体を水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で24時間乾燥し、ポリベンゾオキサゾール前駆体(PBOP-1)を得た。得られたポリベンゾオキサゾール前駆体のMwは20,000、酸当量は330であった。
【0494】
合成例10 ポリシロキサン溶液(PS-1)の合成
三口フラスコに、MeTMSを23.84g(35mol%)、PhTMSを49.57g(50mol%)、TMOSを3.81g(5mol%)、PGMEAを76.36g仕込んだ。フラスコ内に空気を0.05L/分で流し、混合溶液を攪拌しながらオイルバスで40℃に加熱した。混合溶液をさらに攪拌しながら、水28.38gにリン酸0.271gを溶かしたリン酸水溶液を10分かけて滴下した。滴下終了後、40℃で30分間攪拌して、シラン化合物を加水分解させた。加水分解終了後、PGMEA8.48gにTMSSucA13.12g(10mol%)を溶かした溶液を添加した。その後、バス温を70℃にして1時間攪拌した後、続いてバス温を115℃まで昇温した。昇温開始後、約1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから2時間加熱攪拌した(内温は100~110℃)。2時間加熱攪拌して得られた樹脂溶液を氷浴にて冷却した後、陰イオン交換樹脂及び陽イオン交換樹脂を、それぞれ樹脂溶液に対して2質量%加えて12時間攪拌した。攪拌後、陰イオン交換樹脂及び陽イオン交換樹脂をろ過して除去し、ポリシロキサン溶液(PS-1)を得た。得られたポリシロキサンのMwは4,200であり、カルボン酸当量(酸当量)は700g/molであった。
【0495】
合成例11 ポリシロキサン溶液(PS-2)の合成
三口フラスコにMeTMSを13.62g(20mol%)、PhTMSを49.57g(50mol%)、AcrTMSを23.43g(20mol%)、PGMEAを89.84g仕込んだ。フラスコ内に窒素を0.05L/分で流し、混合溶液を攪拌しながらオイルバスで40℃に加熱した。混合溶液をさらに攪拌しながら、水27.93gにリン酸0.499gを溶かしたリン酸水溶液を10分かけて添加した。添加終了後、40℃で30分間攪拌して、シラン化合物を加水分解させた。加水分解終了後、PGMEA9.98gにTMSSucA13.12g(10mol%)を溶かした溶液を添加した。その後、バス温を70℃にして1時間攪拌した後、続いてバス温を115℃まで昇温した。昇温開始後、約1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから2時間加熱攪拌した(内温は100~110℃)。2時間加熱攪拌して得られた樹脂溶液を氷浴にて冷却した後、陰イオン交換樹脂及び陽イオン交換樹脂を、それぞれ樹脂溶液に対して2質量%加えて12時間攪拌した。攪拌後、陰イオン交換樹脂及び陽イオン交換樹脂をろ過して除去し、ポリシロキサン溶液(PS-2)を得た。得られたポリシロキサンのMwは5,200、カルボン酸当量(酸当量)は800g/molであり、二重結合当量は800g/molであった。
【0496】
合成例12
表1-5に記載の比率にて、合成例11と同様に重合をして、ポリシロキサン溶液(PS-3)を得た。
【0497】
合成例13 多環側鎖含有樹脂溶液(CR-1)の合成
三口フラスコに、BHPFを35.04g(0.10mol)、MBAを40.31g秤量して溶解させた。ここに、MBA30.00gにODPAを27.92g(0.090mol)、末端封止剤として、PHAを2.96g(0.020mol)溶かした溶液を添加し、20℃で1時間攪拌した。その後、窒素雰囲気下、150℃で5時間攪拌した。反応終了後、得られた溶液に、MBA10.00gにGMAを14.22g(0.10mol)、ジベンジルアミンを0.135g(0.0010mol)、4-メトキシフェノールを0.037g(0.0003mol)溶かした溶液を添加し、90℃で4時間攪拌して、多環側鎖含有樹脂溶液(CR-1)を得た。得られた多環側鎖含有樹脂のMwは4,000、カルボン酸当量(酸当量)は810g/molであり、二重結合当量は810g/molであった。
【0498】
合成例14 多環側鎖含有樹脂溶液(CR-2)の合成
三口フラスコに、BGPFを46.25g(0.10mol)、MBAを54.53g秤量して溶解させた。ここに、MBA10.00gにMAAを17.22g(0.20mol)、ジベンジルアミンを0.135g(0.0010mol)、4-メトキシフェノールを0.037g(0.0003mol)溶かした溶液を添加し、90℃で4時間攪拌した。その後、MBA30.00gにODPAを27.92g(0.090mol)、末端封止剤として、PHAを2.96g(0.020mol)溶かした溶液を添加し、20℃で1時間攪拌した。その後、窒素雰囲気下、150℃で5時間攪拌して、多環側鎖含有樹脂溶液(CR-2)を得た。得られた多環側鎖含有樹脂のMwは4,700、カルボン酸当量(酸当量)は470g/molであり、二重結合当量は470g/molであった。
【0499】
合成例15 酸変性エポキシ樹脂溶液(AE-1)の合成
三口フラスコに、NC-7000L(エポキシ当量:230g/mol)を46.00g、MBAを47.91g秤量して溶解させた。ここに、MBA10.00gにMAAを17.22g(0.20mol)、ジベンジルアミンを0.270g(0.0020mol)、4-メトキシフェノールを0.074g(0.0006mol)溶かした溶液を添加し、90℃で4時間攪拌した。その後、MBA30.00gにTHPHAを24.34g(0.160mol)溶かした溶液を添加し、20℃で1時間攪拌した。その後、窒素雰囲気下、150℃で5時間攪拌して、酸変性エポキシ樹脂溶液(AE-1)を得た。得られた酸変性エポキシ樹脂のMwは5,000、酸当量は540g/molであり、二重結合当量は430g/molであった。
【0500】
合成例16 アクリル樹脂溶液(AC-1)の合成
三口フラスコに、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)を0.821g(1mol%)、PGMEAを29.29g仕込んだ。次に、MAAを21.52g(50mol%)、TCDMを22.03g(20mol%)、STRを15.62g(30mol%)仕込み、室温でしばらく攪拌して、フラスコ内をバブリングによって十分に窒素置換した後、70℃で5時間攪拌した。次に、得られた溶液に、PGMEAを59.47gにGMAを14.22g(20mol%)、ジベンジルアミンを0.676g(1mol%)、4-メトキシフェノールを0.186g(0.3mol%)溶かした溶液を添加し、90℃で4時間攪拌して、アクリル樹脂溶液(AC-1)を得た。得られたアクリル樹脂のMwは15,000、カルボン酸当量(酸当量)は490g/molであり、二重結合当量は740g/molであった。
合成例1~16の組成を、まとめて表1-1~表1-3に示す。
【0501】
【表1-1】
【0502】
【表1-2】
【0503】
【表1-3】
【0504】
被覆例1 表面被覆ベンゾフラノン系黒色顔料(Bk-CBF1)の合成
黒色顔料として、ベンゾフラノン系黒色顔料であるBk-S0100CF(表面未処理品;顔料表面のpH4.5)150gを、2,850gの脱イオン水を入れたガラス容器に投入してディゾルバーで攪拌し、水性顔料懸濁液を得た。これをチューブポンプで吸い上げ、0.4mmφジルコニアビーズ(“トレセラム”(登録商標);東レ(株)製)が充填された横型ビーズミル内に送液して2パス分散処理を行った後、元のガラス容器内に全量を吐出させ、再びディゾルバーで攪拌した。pHメーターを、その先端電極部が、ガラス容器内で攪拌中の水性顔料懸濁液の液面から3~5cmの深さで漬かるようにセットし、得られた水性顔料懸濁液のpHを測定したところ、pH4.5(液温25℃)を示した。その後、攪拌しながら水性顔料懸濁液の液温を60℃に上げ、30分後に一旦攪拌を止めて、2分後ガラス容器の底に沈降堆積物が無いことを確認し、攪拌を再開した。
【0505】
水性顔料懸濁液に対して、シリカの被覆量が黒色顔料100質量部に対してSiO換算値で10.0質量部となるよう、ケイ酸ナトリウム水溶液(NaO・nSiO・mHO;酸化ナトリウムとして30質量%、二酸化ケイ素として10質量%)を脱イオン水で100倍希釈した液と、0.001mol/Lの硫酸とを、pHが2以上7未満の範囲で維持されるようにそれぞれの添加速度を調整しながら並行添加し、黒色顔料の粒子表面にシリカを析出させて被覆した。次いで、水性顔料懸濁液に対して、アルミナの被覆量が黒色顔料100質量部に対してAl換算値で2.0質量部となるよう、アルミン酸ナトリウム水溶液(NaO・nAl・mHO;酸化ナトリウムとして40質量%、アルミナとして50質量%)を脱イオン水で100倍希釈した液と、0.001mol/Lの硫酸とを、pHが2以上7未満の範囲で維持されるようにそれぞれの添加速度を調整しながら並行添加し、シリカ被覆層の表面にアルミナを析出させて被覆した。続いて、濾過および水洗作業を3回繰り返して水性顔料懸濁液中の水溶性不純物の一部を除去し、0.4mmφジルコニアビーズが充填された横型ビーズミル内に送液して1パス分散処理した。さらに、イオン性不純物を除去するため、各10gの陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂(アンバーライト;オルガノ(株)製)を水性顔料懸濁液に投入して12時間攪拌し、濾過して黒色濾物を得た。これを90℃の乾燥オーブン内で6時間、200℃の乾燥オーブン内で30分間乾燥した後、ジェットミルを用いた乾式粉砕処理により整粒し、表面被覆ベンゾフラノン系黒色顔料(Bk-CBF1)を得た。
【0506】
飛行時間型二次イオン質量分析及びX線回折法による分析の結果、得られた表面被覆ベンゾフラノン系黒色顔料(Bk-CBF1)のシリカ及びアルミナの被覆量は、それぞれ、黒色顔料100質量部に対して、SiO換算値で10.0質量部、Al換算値で2.0質量部であり、顔料に対する被覆層の平均被覆率は97.5%であった。
【0507】
調製例1 顔料分散液(Bk-1)の調製
分散剤として、S-20000を34.5g、溶剤として、MBAを782.0g秤量して混合し、10分間攪拌して拡散した後、着色剤として、Bk-S0100CFを103.5g秤量して混合して30分間攪拌し、0.40mmφのジルコニアビーズが充填された横型ビーズミルを用いて、数平均粒子径が100nmとなるように湿式メディア分散処理を行い、固形分濃度15質量%、着色剤/分散剤=75/25(質量比)の顔料分散液(Bk-1)を得た。得られた顔料分散液中の顔料の数平均粒子径は100nmであった。
【0508】
調製例2 顔料分散液(Bk-2)の調製
樹脂として、合成例1で得られた、ポリイミド(PI-1)の30質量%のMBA溶液を92.0g、分散剤として、S-20000を27.6g、溶剤として、MBAを717.6g秤量して混合し、10分間攪拌して拡散した後、着色剤として、Bk-S0100CFを82.8g秤量して混合して30分間攪拌し、0.40mmφのジルコニアビーズが充填された横型ビーズミルを用いて、数平均粒子径が100nmとなるように湿式メディア分散処理を行い、固形分濃度15質量%、着色剤/樹脂/分散剤=60/20/20(質量比)の顔料分散液(Bk-2)を得た。得られた顔料分散液中の顔料の数平均粒子径は100nmであった。
【0509】
調製例3~9 顔料分散液(Bk-3)~顔料分散液(Bk-9)の調製
表2-1に記載の着色剤、(A1)第1の樹脂及び(E)分散剤の種類並びにこれらの比率にて、調製例2と同様に顔料分散をして、顔料分散液(Bk-3)~顔料分散液(Bk-9)を得た。
調製例1~9の組成を、まとめて表2-1に示す。
【0510】
【表2-1】
【0511】
各実施例及び比較例で使用した、(B)ラジカル重合性化合物、(B1)フルオレン骨格含有ラジカル重合性化合物、(B2)インダン骨格含有ラジカル重合性化合物、及び、(B3)柔軟鎖含有脂肪族ラジカル重合性化合物の一覧及び物性値を、まとめて表2-2に示す。
【0512】
【表2-2】
【0513】
FLN-4(フルオレン骨格を分子中に2個、及び、アクリロキシ基を分子中に2個有する、ラジカル重合性化合物)の構造を以下に示す。
【化30】
【0514】
FLN-5(オキシペンチレンカルボニル構造を分子中に2個有する、ε-カプロラクトン変性9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンジアクリレート)の構造を以下に示す。
【化31】
【0515】
合成例14で得られた酸変性エポキシ樹脂(AE-1)が有する構造単位を以下に示す。酸変性エポキシ樹脂(AE-1)は、一般式(38a)で表される構造単位を有する。
【化32】
【0516】
各実施例及び比較例における評価方法を以下に示す。
(1)樹脂の重量平均分子量
GPC分析装置(HLC-8220;東ソー(株)製)を用い、流動層としてテトラヒドロフラン又はNMPを用いて、「JIS K7252-3(2008)」に基づき、常温付近での方法により、ポリスチレン換算の重量平均分子量を測定して求めた。
【0517】
(2)酸価、酸当量
電位差自動滴定装置(AT-510;京都電子工業(株)製)を用い、滴定試薬として0.1mol/Lの水酸化ナトリウム/エタノール溶液、滴定溶剤としてキシレン/N,N-ジメチルホルムアミド=1/1(質量比)を用いて、「JIS K2501(2003)」に基づき、電位差滴定法により、酸価(単位はmgKOH/g)を測定して求めた。測定した酸価の値から、酸当量(単位はg/mol)を算出した。
【0518】
(3)二重結合当量
電位差自動滴定装置(AT-510;京都電子工業(株)製)を用い、ヨウ素供給源として一塩化ヨウ素溶液(三塩化ヨウ素=7.9g、ヨウ素=8.9g、酢酸=1,000mLの混合溶液)、未反応ヨウ素の捕捉水溶液として100g/Lのヨウ化カリウム水溶液、滴定試薬として0.1mol/Lのチオ硫酸ナトリウム水溶液を用いて、JIS K0070:1992「化学製品の酸価、けん化価、エステル価、よう素価、水酸基価及び不けん化物の試験方法」の「第6項よう素価」に記載の方法に基づき、ウィイス法により、樹脂のヨウ素価を測定した。測定したヨウ素価(単位はgI/100g)の値から、二重結合当量(単位はg/mol)を算出した。
【0519】
(4)ポリシロキサン中の各オルガノシラン単位の含有比率
29Si-NMRの測定を行い、オルガノシランに由来するSi全体の積分値に対する、特定のオルガノシラン単位に由来するSiの積分値の割合を算出して、それらの含有比率を計算した。試料(液体)は、直径10mm の“テフロン”(登録商標)製NMRサンプル管に注入して測定に用いた。29Si-NMR測定条件を以下に示す。
装置:核磁気共鳴装置(JNM-GX270;日本電子(株)製)
測定法:ゲーテッドデカップリング法
測定核周波数:53.6693MHz(29Si核)
スペクトル幅:20000Hz
パルス幅:12μs(45°パルス)
パルス繰り返し時間:30.0秒
溶媒:アセトン-d6
基準物質:テトラメチルシラン
測定温度:23℃
試料回転数:0.0Hz。
【0520】
(5)顔料に対する被覆層の平均被覆率
2液常温硬化型透明アクリル系透明樹脂(Techovit4006;Heraeus Kulzer社製)に、被覆例1で得られた表面被覆ベンゾフラノン系黒色顔料(Bk-CBF1)を含浸し、25℃で3時間静置して反応硬化させて観察試料を得た。ダイヤモンド研磨紙を用いて、観察試料を大まかに機械研磨した後、イオンミリング装置(IM4000;(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いたアルゴンイオンビーム研磨により、観察試料の一部に平滑な断面を作製した。透過型電子顕微鏡(H9500;(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、加速電圧300kVの条件下、拡大倍率を100,000倍として断面を観察し、黒色顔料の粒子の外周をコントラスト差として認識できるよう表示モニターの明度及びコントラストを調整して断面の撮像を得た。無作為に選択した黒色顔料の粒子100個の撮像について、下記式により、各黒色顔料の被覆率M(%)を求め、その数平均値を算出することにより、黒色顔料の平均被覆率N(%)を求めた。
なお、黒色顔料の粒子の外周のうち、空気との界面が観られた黒色顔料については、観察試料の作製途中に埋め込み樹脂が十分に含浸しておらず、被覆層の一部が研磨中に欠けて被覆率が低下した場合を含むため、平均被覆率N(%)の算出における対象から除外した。
被覆率M(%)={L1/(L1+L2)}×100
L1:粒子の外周のうち、被覆層により覆われた部位の合計長さ(nm)
L2:粒子の外周のうち、被覆層により覆われていない部位(界面と埋め込み樹脂が直接接する部位)の合計長さ(nm)
L1+L2:核の外周長さ(nm)。
【0521】
(6)顔料の数平均粒子径
ゼータ電位・粒子径・分子量測定装置(ゼータサイザーナノZS;シスメックス(株)製)を用い、希釈溶媒としてPGMEAを用いて、顔料分散液を1.0×10-5~40体積%の濃度に希釈し、希釈溶媒の屈折率をPGMEAの屈折率に、測定対象の屈折率を1.6に設定して、波長633nmのレーザー光を照射して顔料分散液中の顔料の数平均粒子径を測定した。
【0522】
(7)基板の前処理
ガラス上に、ITOをスパッタにより100nm成膜したガラス基板(ジオマテック(株)製;以下、「ITO基板」)は、卓上型光表面処理装置(PL16-110;セン特殊光源(株)製)を用いて、100秒間UV-O洗浄処理をして使用した。
【0523】
(8)膜厚測定
表面粗さ・輪郭形状測定機(SURFCOM1400D;(株)東京精密製)を用いて、測定倍率を10,000倍、測定長さを1.0mm、測定速度を0.30mm/sとして、プリベーク後、現像後及び熱硬化後の膜厚を測定した。
【0524】
(9)感度
FPD/LSI検査顕微鏡(OPTIPHOT-300;(株)ニコン製)を用いて、作製した現像後膜の解像パターンを観察し、20μmのライン・アンド・スペースパターンを1対1の幅に形成する露光量(i線照度計の値)を感度とした。下記のように判定し、感度が90mJ/cm以下となる、A+、A、B及びCを合格とし、感度が60mJ/cm以下となる、A+、A及びBを感度良好とし、感度45mJ/cm以下となる、A+及びAを感度優秀とした。
A+:感度が1~30mJ/cm
A:感度が31~45mJ/cm
B:感度が46~60mJ/cm
C:感度が61~90mJ/cm
D:感度が91~150mJ/cm
E:感度が151~500mJ/cm
【0525】
(10)現像残渣
FPD/LSI検査顕微鏡(OPTIPHOT-300;(株)ニコン製)を用いて、作製した硬化膜の解像パターンを観察し、20μmのライン・アンド・スペースパターンの開口部における顔料由来の残渣の有無を観察した。下記のように判定し、開口部における残渣の存在面積が10%以下となる、A+、A及びBを合格とし、開口部における残渣の存在面積が5%以下となる、A+及びAを現像残渣良好とし、開口部における残渣の存在面積が無い、A+を現像残渣優秀とした。
A+:開口部における残渣無し
A:開口部における残渣の存在面積が1~5%
B:開口部における残渣の存在面積が6~10%
C:開口部における残渣の存在面積が11~30%
D:開口部における残渣の存在面積が31~50%
E:開口部における残渣の存在面積が51~100%。
【0526】
(11)現像後のパターン断面形状、及び、熱硬化後のパターン断面形状
電界放出型走査電子顕微鏡(S-4800;(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、作製した現像後膜の解像パターン、及び、硬化膜の解像パターンのうち、スペース寸法幅20μmのライン・アンド・スペースパターンの断面を観察し、断面のテーパー角を測定した。現像後のパターン断面形状、及び、熱硬化後のパターン断面形状の観察結果を、下記のように判定し、断面のテーパー角が60°以下となる、A+、A及びBを合格とし、断面のテーパー角が45°以下となる、A+及びAをパターン形状良好とし、断面のテーパー角が30°以下となる、A+をパターン形状優秀とした。
A+:断面のテーパー角が1~30°
A:断面のテーパー角が31~45°
B:断面のテーパー角が46~60°
C:断面のテーパー角が61~70°
D:断面のテーパー角が71~80°
E:断面のテーパー角が81~179°。
【0527】
(12)熱硬化前後のパターン開口寸法幅変化
FPD/LSI検査顕微鏡(OPTIPHOT-300;(株)ニコン製)を用いて、作製した現像後膜の解像パターンを観察し、20μmのライン・アンド・スペースパターンの開口寸法幅を測長し、現像後のパターン開口寸法幅(CDDEV)とした。その後、上記の現像後膜を、下記、実施例1記載の方法で、高温イナートガスオーブン(INH-9CD-S;光洋サーモシステム(株)製)を用いて熱硬化させ、ネガ型感光性樹脂組成物の硬化膜を作製した。FPD/LSI検査顕微鏡(OPTIPHOT-300;(株)ニコン製)を用いて、作製した硬化膜の解像パターンを観察し、現像後に観察した箇所と同一箇所の20μmのライン・アンド・スペースパターンの開口寸法幅を測長し、熱硬化後のパターン開口寸法幅(CDCURE)とした。
【0528】
現像後のパターン開口寸法幅及び熱硬化後のパターン開口寸法幅から、熱硬化前後のパターン開口寸法幅変化((CDDEV)-(CDCURE))を算出した。下記のように判定し、熱硬化前後のパターン開口寸法幅変化が0.60μm以下となる、A+、A及びBを合格とし、熱硬化前後のパターン開口寸法幅変化が0.40μm以下となる、A+及びAをパターン寸法幅変化良好とし、熱硬化前後のパターン開口寸法幅変化が0.20μm以下となる、A+をパターン寸法幅変化優秀とした。
A+:熱硬化前後のパターン開口寸法幅変化が0~0.20μm
A:熱硬化前後のパターン開口寸法幅変化が0.21~0.40μm
B:熱硬化前後のパターン開口寸法幅変化が0.41~0.60μm
C:熱硬化前後のパターン開口寸法幅変化が0.61~1.00μm
D:熱硬化前後のパターン開口寸法幅変化が1.01~2.00μm
E:熱硬化前後のパターン開口寸法幅変化が2.01μm以上
【0529】
(13)耐熱性(高温重量残存率差)
熱硬化後、作製した硬化膜を基板から削りとり、アルミセルに約10mg入れた。このアルミセルを、熱重量測定装置(TGA-50;(株)島津製作所製)を用い、窒素雰囲気中、30℃にて10分間保持した後、昇温速度10℃/分で150℃まで昇温させ、その後、150℃で30分間保持し、さらに昇温速度10℃/分で500℃まで昇温させながら熱重量分析を行った。150℃で30分間加熱した後の重量100質量%に対して、さらに加熱した場合の350℃での重量残存率を(M)質量%、400℃での重量残存率を(M)質量%とし、耐熱性の指標として、高温重量残存率差((M)-(M))を算出した。
【0530】
下記のように判定し、高温重量残存率差が25.0質量%以下となる、A+、A及びBを合格とし、高温重量残存率差が15.0%以下となる、A+及びAを耐熱性良好とし、高温重量残存率差が5.0%以下となる、A+を耐熱性優秀とした。
A+:高温重量残存率差が0~5.0%
A:高温重量残存率差が5.1~15.0%
B:高温重量残存率差が15.1~25.0%
C:高温重量残存率差が25.1~35.0%
D:高温重量残存率差が35.1~45.0%
E:高温重量残存率差が45.1~100%。
【0531】
(14)遮光性(光学濃度(以下、「OD」)値)
下記、実施例1記載の方法で、ネガ型感光性樹脂組成物の硬化膜を作製した。透過濃度計(X-Rite 361T(V);X-Rite製)を用いて、作製した硬化膜の入射光強度(I)及び透過光強度(I)をそれぞれ測定した。遮光性の指標として、OD値を下記式により算出した。
OD値=log10(I/I)。
【0532】
(15)絶縁性(表面抵抗率)
下記、実施例1記載の方法で、ネガ型感光性樹脂組成物の硬化膜を作製した。高抵抗抵抗率計(“ハイレスタ”UP;三菱化学(株)製)を用いて、作製した硬化膜の表面抵抗率(Ω/□)を測定した。
【0533】
(16)有機ELディスプレイの発光特性
(有機ELディスプレイの作製方法)
図4(1)~(4)に、使用した基板の概略図を示す。まず、38×46mmの無アルカリガラス基板47に、スパッタ法により、ITO透明導電膜10nmを基板全面に形成し、第1電極48としてエッチングし、透明電極を形成した。また、第2電極を取り出すため補助電極49も同時に形成した(図4(1))。得られた基板を“セミコクリーン”(登録商標)56(フルウチ化学(株)製)で10分間超音波洗浄し、超純水で洗浄した。
【0534】
次に、この基板上に、ネガ型感光性樹脂組成物を実施例1記載の方法で塗布及びプリベークし、所定のパターンを有するフォトマスクを介してパターンニング露光、現像及びリンスした後、加熱し熱硬化させた。以上の方法で、幅70μm及び長さ260μmの開口部が、幅方向にピッチ155μm及び長さ方向にピッチ465μmで配置され、それぞれの開口部が第1電極を露出せしめる形状の絶縁層50を、基板有効エリアに限定して形成した(図4(2))。なお、この開口部が、最終的に有機ELディスプレイの発光画素となる。また、基板有効エリアは、16mm四方であり、絶縁層50の厚さは、約1.0μmで形成した。
【0535】
次に、第1電極48、補助電極49及び絶縁層50を形成した基板を用いて、有機ELディスプレイの作製を行った。前処理として、窒素プラズマ処理を行った後、真空蒸着法により、発光層を含む有機EL層51を形成した(図4(3))。なお、蒸着時の真空度は、1×10-3Pa以下であり、蒸着中は蒸着源に対して基板を回転させた。まず、正孔注入層として、化合物(HT-1)を10nm、正孔輸送層として、化合物(HT-2)を50nm蒸着した。次に、発光層に、ホスト材料として、化合物(GH-1)とドーパント材料として、化合物(GD-1)を、ドープ濃度が10%になるように40nmの厚さに蒸着した。その後、電子輸送材料として、化合物(ET-1)と化合物(LiQ)を、体積比1:1で40nmの厚さに積層した。有機EL層で用いた化合物の構造を以下に示す。
【化33】
【0536】
次に、化合物(LiQ)を2nm蒸着した後、MgAgを体積比10:1で100nm蒸着して第2電極52とし、反射電極を形成した(図4(4))。その後、低湿窒素雰囲気下、エポキシ樹脂系接着剤を用いて、キャップ状ガラス板を接着することで封止をし、1枚の基板上に5mm四方のボトムエミッション型有機ELディスプレイを4つ作製した。なお、ここでいう膜厚は、水晶発振式膜厚モニター表示値である。
【0537】
(発光特性評価)
上記の方法で作製した有機ELディスプレイを、10mA/cmで直流駆動にて発光させ、非発光領域や輝度ムラなどの発光不良がないかを観察した。作製した有機ELディスプレイのうち、初期特性に問題が無かった良品素子について、耐久性試験として、80℃で500時間保持した。耐久性試験後、有機ELディスプレイを、10mA/cmで直流駆動にて発光させ、発光領域や輝度ムラなどの発光特性に変化がないかを観察した。下記のように判定し、耐久試験前の発光領域面積を100%とした場合の、耐久試験後の発光領域面積が80%以上となる、A+、A及びBを合格とし、発光領域面積が90%以上となる、A+及びAを発光特性良好とし、発光領域面積が95%以上となる、A+を発光特性優秀とした。
A+:耐久試験後の発光領域面積が95~100%
A:耐久試験後の発光領域面積が90~94%
B:耐久試験後の発光領域面積が80~89%
C:耐久試験後の発光領域面積が70~79%
D:耐久試験後の発光領域面積が50~69%
E:耐久試験後の発光領域面積が0~49%。
【0538】
[実施例1]
黄色灯下、NCI-831を0.341g秤量し、MBAを7.915g、PGMEAを4.816g添加し、攪拌して溶解させた。次に、合成例1で得られたポリイミド(PI-1)の30質量%のMBA溶液を6.157g、DPHAの50質量%のMBA溶液を1.421g、A-BPEFの50質量%のPGMEA溶液を0.568g添加して攪拌し、均一溶液として調合液を得た。次に、調製例1で得られた顔料分散液(Bk-1)を7.319g秤量し、ここに、上記で得られた調合液を17.681g添加して攪拌し、均一溶液とした。その後、得られた溶液を0.45μmφのフィルターでろ過し、組成物1を調製した。
【0539】
調製した組成物1を、ITO基板上にスピンコーター(MS-A100;ミカサ(株)製)を用いて任意の回転数でスピンコーティングにより塗布した後、ブザーホットプレート(HPD-3000BZN;アズワン(株)製)を用いて110℃で120秒間プリベークし、膜厚約1.8μmのプリベーク膜を作製した。作製したプリベーク膜を、フォトリソ用小型現像装置(AD-2000;滝沢産業(株)製)を用いて、2.38質量%TMAH水溶液でスプレー現像し、プリベーク膜(未露光部)が完全に溶解する時間(Breaking Point;以下、「B.P.」)を測定した。
【0540】
上記と同様にプリベーク膜を作製し、作製したプリベーク膜を、両面アライメント片面露光装置(マスクアライナー PEM-6M;ユニオン光学(株)製)を用いて、感度測定用のグレースケールマスク(MDRM MODEL 4000-5-FS;Opto-Line International製)を介して、超高圧水銀灯のi線(波長365nm)、h線(波長405nm)及びg線(波長436nm)でパターニング露光した。露光後、フォトリソ用小型現像装置(AD-2000;滝沢産業(株)製)を用いて、2.38質量%TMAH水溶液で現像し、水で30秒間リンスした。現像時間は、B.P.の1.5倍とした。現像後、高温イナートガスオーブン(INH-9CD-S;光洋サーモシステム(株)製)を用いて、250℃で熱硬化させ、膜厚約1.2μmの硬化膜を作製した。熱硬化条件は、窒素雰囲気下、250℃で60分間熱硬化させた。
【0541】
[実施例2~85及び比較例1~8]
実施例1と同様に、組成物2~93を表3-1~表16-1に記載の組成にて調製した。得られた各組成物を用いて、実施例1と同様に、基板上に組成物を成膜し、感光特性及び硬化膜の特性の評価を行った。それらの評価結果を、まとめて表3-2~表16-2に示す。なお、表4-1~表6-1、表11-1~表12-1、表4-2~表6-2及び表11-2~表12-2に、実施例6の組成及び評価結果を、また、表8-1~表10-1、表13-1~表15-1、表8-2~表10-2及び表13-2~表15-2に、実施例37の組成及び評価結果を比較しやすくするため記載した。
【0542】
【表3-1】
【0543】
【表3-2】
【0544】
【表4-1】
【0545】
【表4-2】
【0546】
【表5-1】
【0547】
【表5-2】
【0548】
【表6-1】
【0549】
【表6-2】
【0550】
【表7-1】
【0551】
【表7-2】
【0552】
【表8-1】
【0553】
【表8-2】
【0554】
【表9-1】
【0555】
【表9-2】
【0556】
【表10-1】
【0557】
【表10-2】
【0558】
【表11-1】
【0559】
【表11-2】
【0560】
【表12-1】
【0561】
【表12-2】
【0562】
【表13-1】
【0563】
【表13-2】
【0564】
【表14-1】
【0565】
【表14-2】
【0566】
【表15-1】
【0567】
【表15-2】
【0568】
【表16-1】
【0569】
【表16-2】
【0570】
[実施例86]
(偏光層を有しない有機ELディスプレイの製造方法)
作製する有機ELディスプレイの概略を図5に示す。まず、38×46mmの無アルカリガラス基板53上に、電子ビーム蒸着法により、クロムと金の積層膜を成膜し、エッチングによりソース電極54とドレイン電極55を形成した。次に、APC(銀/パラジウム/銅=98.07/0.87/1.06(質量比))をスパッタにより100nm成膜し、エッチングによりパターン加工してAPC層を形成し、さらに、APC層の上層にITOをスパッタにより10nm成膜し、エッチングにより、第1電極として反射電極56を形成した。電極表面を酸素プラズマで洗浄した後、スパッタ法により、アモルファスIGZOを成膜し、エッチングによりソース・ドレイン電極間に酸化物半導体層57を形成した。次に、スピンコート法により、ポジ型感光性ポリシロキサン系材料(SP-P2301;東レ(株)製)を成膜し、フォトリソグラフィーにより、ビアホール58と画素領域59を開口した後、熱硬化させてゲート絶縁層60を形成した。その後、電子ビーム蒸着法により、金を成膜し、エッチングによりゲート電極61を形成することで、酸化物TFTアレイとした。
【0571】
上記、実施例1記載の方法で、組成物6を、酸化物TFTアレイ上に塗布及びプリベークして成膜し、所定のパターンを有するフォトマスクを介してパターニング露光、現像及びリンスして画素領域を開口した後、熱硬化させて、遮光性を有するTFT保護層/画素分割層62を形成した。以上の方法で、幅70μm及び長さ260μmの開口部が、幅方向にピッチ155μm及び長さ方向にピッチ465μmで配置され、それぞれの開口部が反射電極を露出せしめる形状の画素分割層を、基板有効エリアに限定して形成した。なお、この開口部が、最終的に有機ELディスプレイの発光画素となる。また、基板有効エリアは、16mm四方であり、画素分割層の厚さは、約1.0μmで形成した。
次に、上記(16)記載の方法で、正孔注入層として化合物(HT-1)、正孔輸送層として化合物(HT-2)、ホスト材料として化合物(GH-1)、ドーパント材料として化合物(GD-1)、電子輸送材料として化合物(ET-1)と化合物(LiQ)を用いて、有機EL発光層63を形成した。
【0572】
その後、蒸着法により、MgAgを体積比10:1で10nm成膜し、エッチングにより、第2電極として透明電極64を形成した。次いで、低湿窒素雰囲気下、有機ELシール材(ストラクトボンド(登録商標)XMF-T;三井化学(株)製)を用いて封止膜65を形成した。さらに、無アルカリガラス基板66を、封止膜上に貼りあわせ、1枚の基板上に5mm四方の、偏光層を有しないトップエミッション型有機ELディスプレイを4つ作製した。なお、ここでいう膜厚は、水晶発振式膜厚モニター表示値である。
【0573】
(発光特性評価)
上記の方法で作製した有機ELディスプレイを、10mA/cmで直流駆動にて発光させ、外光を画素分割層部に照射した場合の輝度(Y’)、外光を照射しない場合の輝度(Y)を測定した。外光反射低減の指標として、コントラストを下記式により算出した。
コントラスト=Y/Y’。
【0574】
下記のように判定し、コントラストが0.80以上となる、A+、A及びBを合格とし、コントラストが0.90以上となる、A+及びAを外光反射低減効果良好とし、コントラストが0.95以上となる、A+を外光反射低減効果優秀とした。上記の方法で作製した有機ELディスプレイは、コントラストが0.90であり、外光反射低減が可能であることを確認した。
A+:コントラストが0.95~1.00
A:コントラストが0.90~0.94
B:コントラストが0.80~0.89
C:コントラストが0.70~0.79
D:コントラストが0.50~0.69
E:コントラストが0.01~0.49。
【0575】
[実施例87]
(ハーフトーン特性の評価1)
上記、実施例1記載の方法で、ITO基板上に組成物6のプリベーク膜を5μmの膜厚で成膜し、両面アライメント片面露光装置(マスクアライナー PEM-6M;ユニオン光学(株)製)を用いて、ハーフトーン特性評価用のハーフトーンフォトマスクを介して、透光部の露光量が、プリベーク後の膜厚が5μmの場合の感度の露光量となるように超高圧水銀灯のi線(波長365nm)、h線(波長405nm)及びg線(波長436nm)でパターニング露光し、フォトリソ用小型現像装置(AD-2000;滝沢産業(株)製)を用いて現像した後、高温イナートガスオーブン(INH-9CD-S;光洋サーモシステム(株)製)を用いて、組成物6の段差形状を有する硬化膜を作製した。
【0576】
ハーフトーンフォトマスクとしては、透光部、遮光部、及び、前記透光部と前記遮光部の間に半透光部を有するフォトマスクを用いた。前記半透光部の透過率(%THT)%がそれぞれ、前記透光部の透過率(%TFT)の10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%及び50%である箇所を有する。前記透光部と前記半透光部は隣接しており、前記半透光部と前記遮光部は隣接している。前記透光部、前記半透光部及び前記遮光部のパターン形状が、いずれもライン形状である箇所を有する。前記透光部及び前記遮光部が、いずれも四角形形状である箇所を有する。前記透光部のパターン寸法が、それぞれ、2μm、5μm、10μm、15μm、20μm、30μm、40μm、50μm又は100μmである箇所を有する。また、前記遮光部のパターン寸法は10μmである。一方、前記半透光部のパターン寸法は、それぞれ、2μm、5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm及び100μmである箇所を有する。
ハーフトーンフォトマスクの一例として、透光部、遮光部及び半透光部の配置、並びに、寸法の一例を、図6に示す。
【0577】
表面粗さ・輪郭形状測定機(SURFCOM1400D;(株)東京精密製)を用いて、測定倍率を10,000倍、測定長さを1.0mm、測定速度を0.30mm/sとして、透光部の現像後の膜厚、及び熱硬化後の膜厚(TFT)μmを測定した。半透光部について、透過率の異なる箇所の現像後の膜厚、及び、熱硬化後の膜厚(THT)μmを測定し、現像後に残膜した、半透光部の熱硬化後の最小膜厚(THT/min)μmを求めた。ハーフトーン特性の指標として、最大段差膜厚を下記式により算出した。
最大段差膜厚=(TFT)-(THT/min)。
【0578】
下記のように判定し、最大段差膜厚が1.0μm以上となる、A+、A、B及びCを合格とし、最大段差膜厚が1.5μm以上となる、A+、A及びBをハーフトーン特性良好とし、最大段差膜厚が2.0μm以上となる、A+及びAをハーフトーン特性優秀とした。上記の方法で作製した組成物6の硬化膜は、透光部の熱硬化後の膜厚(TFT)が4.0μm、半透光部の熱硬化後の最小膜厚(THT/min)が2.3μmであったため、最大段差膜厚が1.7μmであり、ハーフトーン特性合格であることを確認した。
A+:最大段差膜厚が2.5μm以上
A:最大段差膜厚が2.0μm以上かつ2.5μm未満
B:最大段差膜厚が1.5μm以上かつ2.0μm未満
C:最大段差膜厚が1.0μm以上かつ1.5μm未満
D:最大段差膜厚が0.5μm以上かつ1.0μm未満
E:最大段差膜厚が0.1μm以上かつ0.5μm未満
F:最大段差膜厚が0.1μm未満又は現像後に残膜せず測定不能。
【0579】
[実施例88~93及び比較例9~10]
同様の方法で、実施例88~93として、組成物37、80、81、82、83及び84を用い、比較例9及び10として、組成物86及び91を用いて、それぞれの組成物の段差形状を有する硬化膜を作製し、それぞれの感度の露光量(EFT)mJ/cmでの現像後の膜厚、及び、熱硬化後の膜厚(TFT)μmを測定した。同様に、それぞれの半透光部の現像後の膜厚、及び、熱硬化後の膜厚(THT)μmを測定し、現像後に残膜した、半透光部の熱硬化後の最小膜厚(THT/min)μmを求め、最大段差膜厚を算出した。
【0580】
組成物37の硬化膜は、透光部の熱硬化後の膜厚(TFT)が4.0μm、半透光部の熱硬化後の最小膜厚(THT/min)が1.5μmであったため、最大段差膜厚が2.5μmであり、ハーフトーン特性優秀であった。組成物80の硬化膜は、透光部の熱硬化後の膜厚(TFT)が4.0μm、半透光部の熱硬化後の最小膜厚(THT/min)が1.0μmであったため、最大段差膜厚が3.0μmであり、ハーフトーン特性優秀であった。組成物81の硬化膜は、透光部の熱硬化後の膜厚(TFT)が4.0μm、半透光部の熱硬化後の最小膜厚(THT/min)が1.0μmであったため、最大段差膜厚が3.0μmであり、ハーフトーン特性優秀であった。組成物82の硬化膜は、透光部の熱硬化後の膜厚(TFT)が4.0μm、半透光部の熱硬化後の最小膜厚(THT/min)が1.1μmであったため、最大段差膜厚が2.9μmであり、ハーフトーン特性優秀であった。組成物83の硬化膜は、透光部の熱硬化後の膜厚(TFT)が4.0μm、半透光部の熱硬化後の最小膜厚(THT/min)が1.2μmであったため、最大段差膜厚が2.8μmであり、ハーフトーン特性優秀であった。組成物84の硬化膜は、透光部の熱硬化後の膜厚(TFT)が4.0μm、半透光部の熱硬化後の最小膜厚(THT/min)が1.0μmであったため、最大段差膜厚が3.0μmであり、ハーフトーン特性優秀であった。一方、組成物86の硬化膜は、透光部の熱硬化後の膜厚(TFT)が4.0μm、半透光部の熱硬化後の最小膜厚(THT/min)が3.7μmであったため、最大段差膜厚が0.3μmであり、ハーフトーン特性不良であった。組成物91の硬化膜は、透光部の熱硬化後の膜厚(TFT)が4.0μm、半透光部の熱硬化後の最小膜厚(THT/min)が3.3μmであったため、最大段差膜厚が0.7μmであり、ハーフトーン特性不良であった。
組成物37にて、図6に記載のハーフトーンフォトマスクを用いて形成した、熱硬化後の段差形状を有するパターンの観察画像を、図7に示す。
【0581】
[実施例94]
また、同様の方法で、組成物37を用いて、段差形状を有する現像後膜を作製した後、作製した現像後膜に、両面アライメント片面露光装置(マスクアライナー PEM-6M;ユニオン光学社製)を用いて、超高圧水銀灯のi線(波長365nm)、h線(波長405nm)及びg線(波長436nm)で、空気雰囲気下、23℃の条件下でブリーチング露光し、段差形状を有する現像後膜を光硬化させた。その後、上記と同様の方法で、熱硬化させ、段差形状を有する硬化膜を作製した。同様に、現像後に残膜した半透光部における、光硬化させ、さらに、熱硬化させた後の最小膜厚(THT/min)μmを求め、最大段差膜厚を算出した。組成物37を光硬化させ、さらに、熱硬化させた硬化膜は、透光部の熱硬化後の膜厚(TFT)が4.2μm、半透光部の熱硬化後の最小膜厚(THT/min)が0.7μmであったため、最大段差膜厚が3.5μmであり、ハーフトーン特性優秀であった。
【0582】
[実施例95]
同様の方法で、組成物37を用いて、段差形状を有する現像後膜を作製した後、作製した現像後膜に、卓上型光表面処理装置(PL16-110;セン特殊光源(株)製、紫外線照度:18mW/cm(測定波長254nm))を用いて、低圧水銀灯の紫外線(波長185nm及び波長254nm)で、オゾン雰囲気下、23℃の条件下で120秒間紫外線を照射し、段差形状を有する現像後膜を光硬化させた。その後、上記と同様の方法で、熱硬化させ、段差形状を有する硬化膜を作製した。同様に、現像後に残膜した半透光部における、光硬化させ、さらに、熱硬化させた後の最小膜厚(THT/min)μmを求め、最大段差膜厚を算出した。組成物37を光硬化させ、さらに、熱硬化させた硬化膜は、透光部の熱硬化後の膜厚(TFT)が4.5μm、半透光部の熱硬化後の最小膜厚(THT/min)が0.8μmであったため、最大段差膜厚が3.7μmであり、ハーフトーン特性優秀であった。
【0583】
[実施例96]
さらに、同様の方法で、組成物37を用いて、段差形状を有する現像後膜を作製した後、作製した現像後膜に、プラズマ洗浄装置(SPC-100B+H;(株)日立ハイテクインスツルメンツ製)を用いて、酸素雰囲気下、50sccmの酸素ガス流量及び20Paの処理圧力の条件下、23℃の条件下で120秒間、1,200Wの高周波電力(RF電力)でプラズマを発生させて処理し、段差形状を有する現像後膜を光硬化させた。その後、上記と同様の方法で、熱硬化させ、段差形状を有する硬化膜を作製した。同様に、現像後に残膜した半透光部における、光硬化させ、さらに、熱硬化させた後の最小膜厚(THT/min)μmを求め、最大段差膜厚を算出した。組成物37を光硬化させ、さらに、熱硬化させた硬化膜は、透光部の熱硬化後の膜厚(TFT)が4.4μm、半透光部の熱硬化後の最小膜厚(THT/min)が0.7μmであったため、最大段差膜厚が3.7μmであり、ハーフトーン特性優秀であった。
組成物37にて、図6に記載のハーフトーンフォトマスクを用いて形成した、光硬化させ、さらに、熱硬化させた後の段差形状を有するパターンの観察画像を、図8に示す。
【0584】
[実施例97]
(ハーフトーン特性の評価2)
上記、実施例85記載の方法で、両面アライメント片面露光装置(マスクアライナー PEM-6M;ユニオン光学(株)製)、ハーフトーン特性評価用のハーフトーンフォトマスク、フォトリソ用小型現像装置(AD-2000;滝沢産業(株)製)、及び、高温イナートガスオーブン(INH-9CD-S;光洋サーモシステム(株)製)を用いて、ITO基板上に組成物6の段差形状を有する硬化膜を作製した。ハーフトーンフォトマスクとしては、実施例85記載のフォトマスクを用いた。
【0585】
表面粗さ・輪郭形状測定機(SURFCOM1400D;(株)東京精密製)を用いて、測定倍率を10,000倍、測定長さを1.0mm、測定速度を0.30mm/sとして、透光部の現像後の膜厚、及び熱硬化後の膜厚(TFT)μmを測定した。半透光部について、半透光部の透過率(%THT)%が、前記透光部の透過率(%TFT)の30%である箇所の膜厚(THT30)μm、及び、前記透光部の透過率(%TFT)の20%である箇所の膜厚(THT20)μmを測定し、ハーフトーン特性の指標として、(THT30)と(THT20)との膜厚差(ΔTHT30-HT20)μmを算出した。
【0586】
下記のように判定し、(THT30)と(THT20)との膜厚差が0.30~1.50μmとなる、A+、A、B及びCをハーフトーン特性合格とし、(THT30)と(THT20)との膜厚差が0.50~1.30μmとなる、A+、A及びBをハーフトーン特性良好とし、(THT30)と(THT20)との膜厚差が0.70~1.20μmとなる、A+及びAをハーフトーン特性優秀とした。また(THT30)と(THT20)との膜厚差が0.29μm以下、又は、1.51μm以上となる、D及びE、並びにFをハーフトーン特性不良とした。上記の方法で作製した組成物6の硬化膜は、(THT30)と(THT20)との膜厚差が0.55μmであり、ハーフトーン特性合格であることを確認した。
A+:(THT30)と(THT20)との膜厚差が0.80~1.10μm
A:(THT30)と(THT20)との膜厚差が0.70~0.79μm、又は、1.11~1.20μm
B:(THT30)と(THT20)との膜厚差が0.50~0.69μm、又は、1.21~1.30μm
C:(THT30)と(THT20)との膜厚差が0.30~0.49μm、又は、1.31~1.50μm
D:(THT30)と(THT20)との膜厚差が0.10~0.29μm、又は、1.51~2.00μm
E:(THT30)と(THT20)との膜厚差が0.09μm以下、又は、2.01μm以上
F:(THT30)と(THT20)との膜厚差が現像後に残膜せず測定不能。
【0587】
[実施例98~103及び比較例11~12]
同様の方法で、実施例98~103として、組成物37、80、81、82、83及び84を用い、比較例11及び12として、組成物86及び91を用いて、それぞれの組成物の段差形状を有する硬化膜を作製し、それぞれの(THT30)と(THT20)との膜厚差(ΔTHT30-HT20)μmを算出した。
【0588】
組成物37の硬化膜は、(THT30)と(THT20)との膜厚差が0.80μmであり、ハーフトーン特性優秀であった。組成物80の硬化膜は、(THT30)と(THT20)との膜厚差が1.00μmであり、ハーフトーン特性優秀であった。組成物81の硬化膜は、(THT30)と(THT20)との膜厚差が1.00μmであり、ハーフトーン特性優秀であった。組成物82の硬化膜は、(THT30)と(THT20)との膜厚差が0.90μmであり、ハーフトーン特性優秀であった。組成物83の硬化膜は、(THT30)と(THT20)との膜厚差が0.90μmであり、ハーフトーン特性優秀であった。組成物84の硬化膜は、(THT30)と(THT20)との膜厚差が1.00μmであり、ハーフトーン特性優秀であった。一方、組成物86の硬化膜は、(THT30)と(THT20)との膜厚差が0.10μmであり、ハーフトーン特性不良であった。組成物91の硬化膜は、(THT30)と(THT20)との膜厚差が0.20μmであり、ハーフトーン特性不良であった。
【0589】
[実施例104]
また、同様の方法で、組成物37を用いて、段差形状を有する現像後膜を作製した後、作製した現像後膜に、両面アライメント片面露光装置(マスクアライナー PEM-6M;ユニオン光学社製)を用いて、超高圧水銀灯のi線(波長365nm)、h線(波長405nm)及びg線(波長436nm)で、空気雰囲気下、23℃の条件下でブリーチング露光し、段差形状を有する現像後膜を光硬化させた。露光量は、感度の露光量の2倍((EFT)×2)mJ/cmとした。その後、上記と同様の方法で、熱硬化させ、段差形状を有する硬化膜を作製した。同様に、(THT30)と(THT20)との膜厚差(ΔTHT30-HT20)μmを算出した。組成物37を光硬化させ、さらに、熱硬化させた硬化膜は、(THT30)と(THT20)との膜厚差が0.90μmであり、ハーフトーン特性優秀であった。
【0590】
[実施例105]
(表示不良発生率評価)
上記、(16)記載の方法で、所定のパターンを有し、かつ、透光部、遮光部及び半透光部を有するハーフトーンフォトマスクを用いて、組成物6の段差形状を有する硬化膜を絶縁層50として形成し、38×46mmの無アルカリガラス基板5枚から、有機ELディスプレイを5枚×4=20個作製した。前記段差形状を有する硬化膜は、厚膜部、薄膜部及び開口部を有し、前記開口部は隣接する前記薄膜部に囲まれており、前記厚膜部は前記薄膜部に隣接している。前記開口部については、幅70μm及び長さ260μmの開口部が、幅方向にピッチ155μm及び長さ方向にピッチ465μmで配置されている。薄膜部と厚膜部については、前記幅70μmの開口部と開口部の間の85μm(ピッチ155μm-幅70μm=85μm)は、厚膜部25μmと、前記開口部に隣接する薄膜部30μmが、前記厚膜部の両側に配置されている。また、前記長さ260μmの開口部と開口部の間の205μm(ピッチ465μm-長さ260μm=205μm)は、厚膜部65μmと、前記開口部に隣接する薄膜部70μmが、前記厚膜部の両側に配置されている。絶縁層50において、前記厚膜部の膜厚は約4.0μm、及び、前記薄膜部の膜厚は約2.3μmで形成し、前記厚膜部と前記薄膜部との膜厚差は、約1.7μmであった。
【0591】
作製した有機ELディスプレイの、前記開口部、前記厚膜部及び前記薄膜部の配置、並びに、寸法の概略図を、図9に示す。なお、図9に示すパターンを得るために用いたハーフトーンフォトマスクは、透光部と半透光部とが隣接する箇所を有し、かつ遮光部と半透光部とが隣接する箇所を有する。また、四角形形状の遮光部を有する。さらに、遮光部の外周に占める、透光部の外周が接する比率は、0%である。
【0592】
作製した有機ELディスプレイを、10mA/cmで直流駆動にて発光させ、蒸着時のパーティクルに起因するダークスポット、及び、絶縁層の損傷に起因する非発光領域や輝度ムラなどの表示不良がないかを観察し、20個の有機ELディスプレイのうち、正常に発光する個数から表示不良発生率を算出した。
【0593】
下記のように判定し、表示不良発生率が25%以下となる、A+、A、B及びCを合格とし、表示不良発生率が15%以下となる、A+、A及びBを歩留まり良好とし、表示不良発生率が5%以下となる、A+及びAを歩留まり優秀とした。上記の方法で作製した組成物6の段差形状を有する硬化膜を絶縁層50として形成した有機ELディスプレイは、表示不良発生率が10%であり、歩留まり良好であることを確認した。
A+:表示不良発生率が0%
A:表示不良発生率が1~5%
B:表示不良発生率が6~15%
C:表示不良発生率が16~25%
D:表示不良発生率が26~35%
E:表示不良発生率が36~65%
F:表示不良発生率が66~100%。
【0594】
[実施例106~111及び比較例13~14]
同様の方法で、実施例106~111として、組成物37、80、81、82、83及び84を用い、比較例13及び14として、組成物86及び91を用いて、それぞれの組成物の段差形状を有する硬化膜を絶縁層50として形成した有機ELディスプレイを作製し、それぞれの表示不良発生率を算出した。絶縁層50において、前記厚膜部の膜厚は約4.0μmで形成した。
【0595】
組成物37を用いた場合、前記薄膜部の膜厚は約1.5μmで形成し、前記厚膜部と前記薄膜部との膜厚差は、約2.5μmであった。組成物80を用いた場合、前記薄膜部の膜厚は約1.0μmで形成し、前記厚膜部と前記薄膜部との膜厚差は、約3.0μmであった。組成物81を用いた場合、前記薄膜部の膜厚は約1.0μmで形成し、前記厚膜部と前記薄膜部との膜厚差は、約3.0μmであった。組成物82を用いた場合、前記薄膜部の膜厚は約1.1μmで形成し、前記厚膜部と前記薄膜部との膜厚差は、約2.9μmであった。組成物83を用いた場合、前記薄膜部の膜厚は約1.2μmで形成し、前記厚膜部と前記薄膜部との膜厚差は、約2.8μmであった。組成物84を用いた場合、前記薄膜部の膜厚は約1.0μmで形成し、前記厚膜部と前記薄膜部との膜厚差は、約3.0μmであった。一方、組成物86を用いた場合、前記薄膜部の膜厚は約3.7μmで形成し、前記厚膜部と前記薄膜部との膜厚差は、約0.3μmであった。組成物91を用いた場合、前記薄膜部の膜厚は約3.3μmで形成し、前記厚膜部と前記薄膜部との膜厚差は、約0.7μmであった。
【0596】
組成物37を用いて作製した有機ELディスプレイは、表示不良発生率が3%であり、歩留まり優秀であった。組成物80、81、82、83又は84を用いて作製した有機ELディスプレイは、表示不良発生率が0%であり、歩留まり優秀であった。一方、組成物86を用いて作製した有機ELディスプレイは、表示不良発生率が40%であり、歩留まり不良であった。組成物91を用いて作製した有機ELディスプレイは、表示不良発生率が30%であり、歩留まり不良であった。
【0597】
[実施例112]
また、同様の方法で、組成物37を用いて、段差形状を有する現像後膜を作製した後、作製した現像後膜に、両面アライメント片面露光装置(マスクアライナー PEM-6M;ユニオン光学社製)を用いて、超高圧水銀灯のi線(波長365nm)、h線(波長405nm)及びg線(波長436nm)で、空気雰囲気下、23℃の条件下でブリーチング露光し、段差形状を有する現像後膜を光硬化させた。露光量は、感度の露光量の2倍((EFT)×2)mJ/cmとした。その後、上記と同様の方法で、熱硬化させ、段差形状を有する硬化膜を絶縁層50として形成した有機ELディスプレイを作製し、同様に、表示不良発生率を算出した。絶縁層50において、前記厚膜部の膜厚は約5.0μmで形成した。組成物37を光硬化させ、さらに、熱硬化させた場合、前記薄膜部の膜厚は約1.5μmで形成し、前記厚膜部と前記薄膜部との膜厚差は、約3.5μmであった。作製した有機ELディスプレイは、表示不良発生率が0%であり、歩留まり優秀であった。
【符号の説明】
【0598】
1 ガラス基板
2 TFT
3 TFT平坦化用の硬化膜
4 反射電極
5a プリベーク膜
5b 硬化パターン
6 マスク
7 活性化学線
8 EL発光層
9 透明電極
10 平坦化用の硬化膜
11 カバーガラス
12 ガラス基板
13 BLU
14 BLUを有するガラス基板
15 ガラス基板
16 TFT
17 TFT平坦化用の硬化膜
18 透明電極
19 平坦化膜
20 配向膜
21a プリベーク膜
21b 硬化パターン
22 マスク
23 活性化学線
24 BCSを有するガラス基板
25 BLU及びBCSを有するガラス基板
26 ガラス基板
27 カラーフィルタ
28 硬化パターン
29 平坦化用の硬化膜
30 配向膜
31 カラーフィルタ基板
32 BLU、BCS及びBMを有するガラス基板
33 液晶層
34 厚膜部
35a,35b,35c 薄膜部
36a,36b,36c,36d,36e 硬化パターンの断面の傾斜辺
37 下地の基板の水平辺
47 無アルカリガラス基板
48 第1電極
49 補助電極
50 絶縁層
51 有機EL層
52 第2電極
53 無アルカリガラス基板
54 ソース電極
55 ドレイン電極
56 反射電極
57 酸化物半導体層
58 ビアホール
59 画素領域
60 ゲート絶縁層
61 ゲート電極
62 TFT保護層/画素分割層
63 有機EL発光層
64 透明電極
65 封止膜
66 無アルカリガラス基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9