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特許7234632一方向に配向したテープ状プリプレグ、およびその成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】一方向に配向したテープ状プリプレグ、およびその成形品
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/04 20060101AFI20230301BHJP
   B29B 11/16 20060101ALI20230301BHJP
   B29K 105/10 20060101ALN20230301BHJP
【FI】
C08J5/04 CFG
B29B11/16
B29K105:10
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018528351
(86)(22)【出願日】2018-05-15
(86)【国際出願番号】 JP2018018751
(87)【国際公開番号】W WO2019017057
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-04-27
(31)【優先権主張番号】P 2017138723
(32)【優先日】2017-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018064032
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山田 麻由佳
(72)【発明者】
【氏名】金野 栄太
(72)【発明者】
【氏名】上田 大斗
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/046290(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/122500(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/078167(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B11/16
15/08-15/14
C08J5/04-5/10
5/24
B29K105/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に配向した強化繊維と熱可塑性樹脂組成物とを含むテープ状プリプレグであって、平均厚みが0.2mm以上1.5mm以下であり、空隙率が5体積%以下であり、かつ、強化繊維分散度が0.4以下であり、かつ、前記強化繊維分散度のテープ状プリプレグ長手方向における変動係数(%)が5.0%以下である、テープ状プリプレグ。
【請求項2】
繊維体積含有率が30~70体積%である、請求項1に記載のテープ状プリプレグ。
【請求項3】
ASTM D3039/D3039-07で測定した引張強度が1500~3500MPaである、請求項1または2に記載のテープ状プリプレグ。
【請求項4】
前記テープ状プリプレグの厚みの変動係数(%)が2.0%以下である、請求項1~3のいずれかに記載のテープ状プリプレグ。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂の溶融粘度が、その融点より50℃以上高い温度において200Pa・s以下である、請求項1~のいずれかに記載のテープ状プリプレグ。
【請求項6】
前記強化繊維が炭素繊維である、請求項1~のいずれかに記載のテープ状プリプレグ。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂組成物がポリアミド樹脂組成物である、請求項1~のいずれかに記載のテープ状プリプレグ。
【請求項8】
一方向に配向した強化繊維と熱可塑性樹脂組成物とを含むテープ状プリプレグを用いた成形品であって、
前記テープ状プリプレグは、
平均厚みが0.2mm以上1.5mm以下であり、
空隙率が5体積%以下であり、かつ、
強化繊維分散度が0.4以下であり、
前記強化繊維分散度のテープ状プリプレグ長手方向における変動係数(%)が5.0%以下である、
成形品。
【請求項9】
一方向に配向した強化繊維と熱可塑性樹脂組成物とを含むテープ状プリプレグの製造方法であって、
前記強化繊維に前記熱可塑性樹脂組成物を含浸させる槽内に固定ガイドを有し、
前記固定ガイドは、前記強化繊維がその上を通過する面及び/又はその下を通過する面に、少なくとも一対となる突出部が設けられ、
前記一対の突出部間の距離が最短となる直線の方向は、前記強化繊維の配向方向と略垂直であり、
前記一対の突出部の間隔の規定により前記一方向に配向した強化繊維の幅方向への拡幅を制限する、テープ状プリプレグの製造方法であって、該テープ状プリプレグは平均厚みが0.2mm以上1.5mm以下であり、繊維体積含有率が30~70体積%であるテープ状プリプレグの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引張強度に優れ、一方向に配向した強化繊維及び熱可塑性樹脂組成物を含むテープ状プリプレグに関する。
【背景技術】
【0002】
強化繊維とマトリックス樹脂からなる複合材料は、軽量で優れた力学特性を有しており、自動車部材、航空宇宙産業用途、建築・土木材料、スポーツ用品等、一般産業用途に幅広く利用されている。特に、前記マトリックス樹脂として熱可塑性樹脂を用いた複合材料は、繊維強化熱硬化性材料と比較して、加熱による溶融、冷却による固化が容易であることから、成形時におけるハンドリング性、サイクルタイムの短縮などの効果が見込まれ、工数低減、コスト低減の観点から注目を集めている。
【0003】
一方で、熱硬化性樹脂と比較して熱可塑性樹脂の溶融粘度は一般に非常に高いため、強化繊維束への含浸性の悪化、高粘度樹脂の流動に伴う強化繊維の乱れによる繊維の配向性、分散性の悪化、生産性の低下といった懸念が生じる。
【0004】
また、多種にわたる複合材料の中でも、連続した強化繊維を一方向に引き揃えマトリックス樹脂を含浸させたテープ状プリプレグは、引張応力場での補強材としてその特性を最大限に発揮することが知られている。
【0005】
上記引張応力場での補強方法の例として、例えば、樹脂部品との溶着一体成形や、フィラメントワインディングによる構造部材への巻きつけによる補強方法が知られており、自動車部材や土木・建築用途として使用されている。このような使用形態では、厚みが薄いほどテープ状プリプレグの加工性、部品への追随性が高くなる。
【0006】
溶着一体成形やフィラメントワインディングでは、テープ状プリプレグを必要な強度を満たす厚さに積層する必要がある。この場合、テープ状プリプレグの厚みが薄いほど積層数が増えるためレイアップの時間がかかり、層間の空隙やズレ等、成形技術への懸念も生じる。したがって、厚物のテープ状プリプレグを成形品に使用する方が、成形時間短縮、製造コストの削減および成形品の品質の均一化が可能となる。一方で、厚みが厚くなるほど、強化繊維間へのマトリックス樹脂の含浸性の低下が懸念される。
【0007】
特許文献1では、サイズ剤の種類、付着量を規定することで、ラージトウタイプの繊維束でありながら厚み斑やワレの少ないプリプレグを提供している。すなわち、マトリックス樹脂として熱可塑性樹脂を用いた場合に生じる含浸性の低下を改善したことの発明が記載されている。
【0008】
特許文献2には熱可塑性樹脂を用いた空隙率の低いテープ状物を収束して得られる成形材が開示されている。強化繊維間への熱可塑性樹脂の含浸性を空隙率で規定しており、規定の数値を超える空隙を有するテープ状物を用いると、収束後の成形材の曲げ強度が低下することについて記載されている。
【0009】
特許文献3では、強化繊維の分散度と配向度を評価し曲げ強度の高いテープ状プリプレグを開示している。テープ状プリプレグの厚さを50μm以上150μm以下に規定し、薄物であるために柔軟性があり、成形体への加工性に優れることを特徴としている。
【0010】
特許文献4では、強化繊維束を開繊により拡幅し、厚み方向に複数配置して熱可塑性樹脂を含浸させ、含浸槽内で複数の強化繊維束を積層してシート状プリプレグを製造する製造方法について開示されている。この方法で、均一かつ良好に強化繊維間に樹脂を含浸することができ、含浸に要する時間を短縮できることを特徴としている。
【0011】
特許文献5には、強化繊維とマトリックス樹脂とを含み、ボイド率が6%以下、厚さが0.1mm以上、1.5mm以下である一方向性繊維強化テープが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2013-203943号公報
【文献】特許第3317357号公報
【文献】特開2016-216654号公報
【文献】国際公開2012/002417号パンフレット
【文献】国際公開2015/046290号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1には、含浸性を改善しても、その程度については規定されていないため、力学特性に優れたプリプレグは得られると言い得ず、また炭素繊維の分散性について記載がない。
【0014】
特許文献2では、強化繊維の配向性や分散性については記載されていない。テープ状物を複数枚積層し、実施例ではこれをロッド状やT字状の成形材に収束しているため、収束時の強化繊維の位置の変動は非常に大きく、強化繊維の分散性および配向性は悪いと予想される。
【0015】
特許文献3に記載の発明では、厚みが薄い分レイアップに要する時間が長くなるため、最終製品製造コストの増加が懸念される。
【0016】
特許文献4に係る発明では、製造されたテープ状プリプレグについて、含浸や分散の均一性の程度については記述されていないため不明であるが、拡幅の程度によっては強化繊維の分散性に影響することについて言及がなかった。さらに、槽内で帯状強化繊維束内に溶融熱可塑性樹脂を含浸させる工程で、溶融熱可塑性樹脂の流れにより帯状強化繊維の位置が大幅に変動し分散性が悪化すると予測されるものであった。
【0017】
特許文献5に係る発明では、樹脂を含浸させるときに強化繊維が拡幅し、結果として繊維の断面における分散性が低下することの課題を見出してなく、その解決手段も示されていなかった。
【0018】
すなわち、これらの課題を解決するためには、比較的厚物でありながら強化繊維への熱可塑性樹脂の含浸性が高く、かつ、強化繊維の分散性の高いテープ状プリプレグでなければならない。
【0019】
本発明は、最終製品製造コスト削減を一つの目的として、比較的厚物でありながら、引張強度が高くかつ均一なテープ状プリプレグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題は、本発明の以下に示すテープ状プリプレグによって解決される。
【0021】
(1)一方向に配向した強化繊維と熱可塑性樹脂組成物とを含むテープ状プリプレグであって、
平均厚みが0.2mm以上1.5mm以下であり、
空隙率が5体積%以下であり、かつ、
強化繊維分散度が0.4以下であり、かつ、前記強化繊維分散度のテープ状プリプレグ長手方向における変動係数(%)が5.0%以下である、テープ状プリプレグ。
【0022】
(2)一方向に配向した強化繊維と熱可塑性樹脂組成物とを含むテープ状プリプレグを
用いた成形品であって、前記テープ状プリプレグは、
平均厚みが0.2mm以上1.5mm以下であり、
空隙率が5体積%以下であり、かつ、
強化繊維分散度が0.4以下であり、
前記強化繊維分散度のテープ状プリプレグ長手方向における変動係数(%)が5.0%以下である、
成形品。
【0023】
また、上記テープ状プリプレグを製造可能な方法の1つとして、含浸槽に強化繊維束を導入する直前の強化繊維束にしごきを与える、張力をかけるなどの開繊手法を用いるテープ状プリプレグの製造方法の発明である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、引張強度が高く、かつ引張強度やテープ厚みのばらつきが少なく、同時に最終製品の製造コストの低減が可能となるテープ状プリプレグを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係る製造方法の一例の模式図面である。
図2】本発明に用いる幅規制部材を設けた固定ガイドの一例の模式図面である。
図3】本発明に用いる幅規制部材を設けた固定ガイドの一例の模式図面である。
図4】本発明に用いる幅規制部材を設けた固定ガイドの一例の模式図面である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明のテープ状プリプレグにおいて、強化繊維は一方向に配向されており、以下に記載の方法によって評価される強化繊維分散度Xが0.5以下である。この強化繊維分散度は、0.4以下であることが好ましい。強化繊維分散度が0.5以下であれば強化繊維が概ね均一に分散されておりテープ状プリプレグの位置による力学強度のばらつきが低下する。また、本発明では熱可塑性樹脂を用いるが、熱可塑性樹脂は成形後に収縮する性質を有するところ、強化繊維は原則として成形後にも体積変化することがないため、強化繊維が均一に分散しているほど、テープ状プリプレグの厚みのばらつきが低下する。一方、強化繊維分散度Xが0.1未満であるテープ状プリプレグでは、強化繊維はより均一に分散してテープ状プリプレグとしては優れているが、成形工程での生産性が低下する恐れがあって、現実的には必ずしも好ましくない場合があることから、強化繊維分散度は0.1以上が好ましい。強化繊維分散度Xが0.5を超えると、強化繊維の偏りが大きく、厚みや力学強度のばらつきが大きくなる。テープ状プリプレグの強化繊維分散度の評価の手順は以下(i)~(iii)のとおりである。
(i)前記強化繊維の配向方向にほぼ垂直な横断面を撮影する。
(ii)撮影画像を0.1mm四方の正方形ユニットに分割し、(正方形ユニットの合計面積/テープ状プリプレグの断面積×100(%))が10%以上となるように、正方形ユニット複数枚を無作為に選択し、選択した全ての正方形ユニットの各々について含まれている強化繊維部分の面積を求める。
(iii)前記強化繊維の面積の変動係数を求め、強化繊維分散度と規定する。
【0027】
上記をより詳細に説明すると、まず、テープ状プリプレグにおける強化繊維の配向方向に垂直な横断面を倍率200倍で撮影する。撮影した画像を0.1mm四方の正方形ユニットに分割する。次に、撮像した横断面画像において、(正方形ユニットの合計面積/テープ状プリプレグの断面積×100(%))が10%以上となるように、正方形ユニット複数枚を無作為に選択する。ただし、このとき選択する画像としては画像中にテープ状プリプレグのみが写っている画像とし、テープ状プリプレグが見切れているものや写っていないものは選択しないこととする。続いて、選択した全ての正方形ユニットの各々に対して強化繊維の面積を求める。このとき、画像処理ソフトを用いて二値化処理を行い、強化繊維の面積をピクセル数で求めてもよい。最後に、選択した全ての正方形ユニットにおいて求めた強化繊維の面積から以下の式で変動係数を算出する。これを強化繊維分散度とする。
選択する正方形ユニットの数:N≧S/S1×0.1
S1:正方形ユニットの面積
S:テープ状プリプレグの断面積
なお、Nは上記式を満たす範囲であれば通常は十分であるが、選択したNの数によってXの値に大きな変動を生じるようであれば、可能な限り大きな数とすべきであり、究極的には全ての正方形ユニット(但し、テープ状プリプレグが見切れているものや写っていないものを除く)を対象に求めるべきである。
【0028】
変動係数(強化繊維分散度):X=√(Σ(Ai-Aave)/(N-1))/Aave
Ai:N個中i番目の正方形ユニット中の強化繊維の面積
Aave:正方形ユニット中の強化繊維の面積の平均値 。
【0029】
また、本発明における好ましい態様では、変動係数として規定される強化繊維分散度について、そのテープ状プリプレグの長さ方向において何カ所かを選び、選んだ箇所の断面において求めた変動係数(%)、すなわち、プリプレグ長さ方向での強化繊維分散度の変動係数を一定以下とすることも可能であり、具体的に好ましい変動係数Y(%)は5.0%以下であり、より好ましくは3.0%以下である。強化繊維分散度のプリプレグ長さ方向における変動係数(%)が5.0%以下であれば、長さ方向に亘ってテープ状プリプレグの厚みや引張強度のばらつきが低下するため、連続生産時の品質の安定性が向上する。ここで、変動係数Y(%)は、テープ状プリプレグの長さ方向において任意に4カ所以上の断面写真を測定し、各々について上記の方法で各断面における変動係数Xを求め、さらに下式により算出する。
【0030】
強化繊維分散度の長さ方向の変動係数(%):Y=√(Σ(Xi-Xave)/(M-1))/Xave×100
M:テープ状プリプレグの長さ方向の断面写真の数
Xi:M個の断面写真中、i番目の断面写真から求まる強化繊維分散度
Xave:強化繊維分散度の平均値 。
【0031】
テープ状プリプレグの強化繊維と強化繊維の間は熱可塑性樹脂組成物で充填されている。すなわち本発明のテープ状プリプレグにおいて、強化繊維はマトリックス樹脂としての熱可塑性樹脂組成物で含浸されている。
【0032】
本発明のテープ状プリプレグの製造方法は特に限定されないが、引抜成形法などの連続成形により製造されることが好ましい。
【0033】
強化繊維に熱可塑性樹脂組成物を含浸させて、一方向に配向したテープ状プリプレグを製造する方法としては、溶融法、粉末法、フィルム法、混繊(コミングル)法などが例示される。本発明において、含浸させる方法は特に限定されないが、事前に熱可塑性樹脂組成物を加工する必要がない溶融法が好ましく用いられる。図1に示す製造装置を用いて、テープ状プリプレグを製造することができる。例を示すと、図1において、ボビン102から連続的に糸道ガイド103を通じて強化繊維束101を送り出し、含浸槽104に導入する前に強化繊維束1ストランドあたりの幅と張力を調整する。連続的に送り出された強化繊維束101が含浸槽104内を通過する際、熱可塑性樹脂組成物105をフィーダー106から定量供給し、固定ガイド107により強化繊維束101をしごいて強化繊維束101に含浸させる。ここで、固定ガイドは、強化繊維がその上を通過する面またはその下を通過する面が曲面を有するものが通常であり、例として図2、3、4に示すものがある。熱可塑性樹脂組成物105が含浸した強化繊維束101を、含浸槽104のノズルから連続的に引取ロール109にて引き抜き、冷却ロール108を通過させ冷却固化し、巻取機111にて巻き取り、テープ状プリプレグ110を得ることができる。上記製造方法において、強化繊維間への樹脂の含浸性および強化繊維の分散性を両立するため、含浸ダイ導入前の1ストランドあたりの強化繊維束の幅を5mm以上20mm以下の範囲とすることが好ましく、5mm以上15mm以下の範囲がより好ましい。また、含浸ダイ導入前の1ストランドあたりの強化繊維束にかかる張力を200cN以上1800cN以下とすることが好ましく、400cN以上1600cN以下に制御することがより好ましい。上記の上限と下限のいずれを組み合わせた範囲であってもよい。なお、含浸ダイ導入前の張力とは、図1で例示すると、糸道ガイド103と含浸ダイ104における強化繊維束にかかる張力を指し、公知の測定方法が利用できる。また、固定ガイド107はその両端にテープ状プリプレグの幅に相当する間隔を設けて幅規制部材112を持つことが好ましい。ここで、幅規制部材とは、図2、3、4に例示するように、固定ガイド107の上記面上に一対の突出部として設けられるものである。上記面上には、少なくとも一対の突出部が設けられ、一対の突出部が複数設けられていてもよく(なお、突出部の数は両側で同数であることが好ましいが、数が異なっていても構わない)、この場合、複数ラインにて強化繊維束に樹脂が含浸されたプリプレグ前駆体を流し、テープ状プリプレグ複数を同時に製造することもできる。ここで、一対の突出部は、その距離が最短となる直線の方向が強化繊維の配向方向と略垂直となるように配置されることが望ましい。また、一対の突出部の間隔の規定により強化繊維束の幅方向への過度な拡幅が抑制され、プリプレグ前駆体の幅が規制される。かかる幅規制部材、すなわち一対の突出部の間隔は、テープ状プリプレグの幅以上かつテープ状プリプレグの幅の1.1倍以下であることが好ましい。含浸槽内では、熱可塑性樹脂組成物の流動により強化繊維束がテープ状プリプレグの幅方向に乱される。特に、溶融熱可塑性樹脂のように高粘度な場合、乱れが顕著である。これにより、強化繊維束に熱可塑性樹脂を含浸させる際に、強化繊維束が幅方向に過度に広がることを防ぐことができ、強化繊維分散度が向上する。また、強化繊維の真直性が向上することで、テープ状プリプレグの長さ方向で強化繊維分散度の変動が抑制されたテープ状プリプレグが得られる。なお、固定ガイドに位置する幅規制部材は突起または壁または段差などでもよく、図2、3、4に示された形態に限らない。
【0034】
本発明に用いられる強化繊維としては、特に限定されないが、炭素繊維、金属繊維、有機繊維および無機繊維が例示される。
【0035】
炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(Poly Acrylo-Nitrile:PAN)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、気相成長系炭素繊維、これらの黒鉛化繊維などが例示される。このうちPAN系炭素繊維は、ポリアクリロニトリル繊維を原料とする炭素繊維である。ピッチ系炭素繊維は石油タールや石油ピッチを原料とする炭素繊維である。セルロース系炭素繊維はビスコースレーヨンや酢酸セルロースなどを原料とする炭素繊維である。気相成長系炭素繊維は炭化水素などを原料とする炭素繊維である。これら炭素繊維のうち、強度と弾性率のバランスに優れる点で、PAN系炭素繊維が好ましく用いられる。
【0036】
金属繊維としては、例えば、鉄、金、銀、銅、アルミニウム、黄銅、ステンレスなどの金属からなる繊維が挙げられる。
【0037】
有機繊維としては、アラミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリエチレン繊維などの有機材料からなる繊維が挙げられる。アラミド繊維としては強度や弾性率に優れたパラ系アラミド繊維と難燃性、長期耐熱性に優れるメタ系アラミド繊維とが例示される。パラ系アラミド繊維としては、例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維、コポリパラフェニレン-3,4’-オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維などが挙げられ、メタ系アラミド繊維としては、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維などが挙げられる。アラミド繊維としては、メタ系アラミド繊維に比べて弾性率の高いパラ系アラミド繊維が好ましく用いられる。
【0038】
無機繊維としては、ガラス、バサルト、シリコンカーバイト、シリコンナイトライドなどの無機材料からなる繊維が挙げられる。ガラス繊維としては、Eガラス繊維(電気用)、Cガラス繊維(耐食用)、Sガラス繊維、Tガラス繊維(高強度、高弾性率)などが例示されるがこのいずれを用いても良い。バサルト繊維は、鉱物である玄武岩を繊維化した物で、耐熱性の非常に高い繊維である。玄武岩には、一般に鉄の化合物であるFeOまたはFeOを9~25%、チタンの化合物であるTiOまたはTiOを1~6%含有するが、溶融状態でこれらの成分を増量して繊維化することも可能である。
【0039】
本発明においては、強化繊維として、炭素繊維、ガラス繊維、バサルト繊維、及びアラミド繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種の強化繊維を用いることがより好ましく、これらの中でも、軽量化や強度などの力学特性を効率よく発揮できる炭素繊維を用いることが特に好ましい。
【0040】
強化繊維は、その複数種を組み合わせて使用してもよく、これらの繊維を組み合わせることで複合的な効果が期待でき、例えば炭素繊維とガラス繊維を組み合わせる事で、炭素繊維による高い補強効果および安価なガラス繊維によるコストの低減が両立できる。
【0041】
本発明のテープ状プリプレグにおいて、強化繊維は通常、多数本の単繊維を束ねた強化繊維束を1本または複数本を並べて構成される。1本または複数本の強化繊維束を並べたときの強化繊維の総フィラメント数(単繊維の本数)は、本発明のテープ状プリプレグ中に1,000~2,000,000本の範囲にあることが好ましい。生産性の観点からは、本発明の基材中の強化繊維の総フィラメント数は、1,000~1,000,000本がより好ましく、1,000~600,000本がさらに好ましく、1,000~300,000本が特に好ましい。強化繊維の総フィラメント数の上限は、分散性や取り扱い性とのバランスも考慮して、生産性と分散性、取り扱い性を良好に保てるように選択する。
【0042】
また、強化繊維は引張強度が3,000~6,000MPaのものを用いることが好ましい。なお、強化繊維の引張強度(MPa)=単繊維強力(N)/単繊維断面積(mm)という関係となる。
【0043】
また、強化繊維は、接着性やコンポジット総合特性、高次加工性を向上させるためにサイジング剤で表面処理されていてもよい。サイジング剤には、ビスフェノール型エポキシ化合物、直鎖状低分子量エポキシ化合物、ポリエチレングリコール、ポリウレタン、ポリエステル、乳化剤あるいは界面活性剤などの成分を粘度調整、耐擦過性向上、耐毛羽性向上、集束性向上、高次加工性向上等の目的で混合したものが好ましい。
【0044】
サイジング剤の付与手段としては特に限定されるものではないが、例えばローラを介してサイジング液に浸漬する方法、サイジング液の付着したローラに接する方法、サイジング液を霧状にして吹き付ける方法などがある。また、バッチ式、連続式いずれでもよいが、生産性がよくバラツキが小さくできる連続式が好ましい。この際、強化繊維に対するサイジング剤有効成分の付着量が適正範囲内で均一に付着するように、サイジング液濃度、温度、糸条張力などをコントロールすることが好ましい。また、サイジング剤付与時に強化繊維を超音波で加振させることはより好ましい。
【0045】
本発明のテープ状プリプレグ中の熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂としては、熱可塑性樹脂でありさえすれば特に限定されず、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリアルキレンオキサイド、ポリサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、液晶ポリマー、ポリメチルメタアクリレート、ポリスルホンなどが挙げられる。なお、本発明において熱可塑性樹脂組成物の意味は、複数の熱可塑性樹脂の混合物である場合や熱可塑性樹脂と添加剤との混合物である場合以外にも1種類の熱可塑性樹脂のみからなる場合も含む意味として用いられる。
【0046】
特に、耐熱性や強度、剛性などの各物性が優れたテープ状プリプレグが得られるので、本発明のテープ状プリプレグ中の熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂を用いることが好ましい。
【0047】
ここで、ポリアミド樹脂とは、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を主たる構成成分とするポリアミドである。その主要構成成分の代表例としては、6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε-カプロラクタム、ω-ラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2 - メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-/2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂肪族、脂環族、芳香族のジアミン、およびアジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2-クロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、5-メチルイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂肪族、脂環族、芳香族のジカルボン酸が挙げられ、本発明においては、これらの原料から誘導されるナイロンホモポリマーまたはコポリマーを各々単独または混合物の形で用いることができる。
【0048】
本発明のテープ状プリプレグ中の熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂として特に有用なポリアミド樹脂の具体的な例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン66 /6I/6)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ-2-メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、およびこれらの混合物、ないし共重合体などが挙げられ、中でも強化繊維への含浸性、取扱い性に優れるポリアミド6が好ましい。
【0049】
本発明のテープ状プリプレグ中の熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の溶融粘度は、その融点より50℃以上高い温度において200Pa・s以下が好ましく、より具体的には上記融点より50℃高い温度から上記融点より100℃高い温度までの範囲において200Pa・s以下が好ましい。上記溶融粘度であると、樹脂の流動性に優れ、強化繊維間への含浸性に優れる。ここで溶融粘度は、剪断速度1000sec-1の条件下でノズル径0.5mmφ、ノズル長10mmのノズルを用い、高化式フローテスターによって測定した値である。
【0050】
本発明におけるテープ状プリプレグの平均の厚さは、0.2~1.5mmであり、好ましくは0.25~1.2mm、より好ましくは0.3~1.0mmである。上記の上限と下限のいずれを組み合わせた範囲であってもよい。テープ状プリプレグの平均の厚みが0.2mm未満であれば、成形の際に積層の時間がかかり最終製品の製造コストが増加したり、積層数が増えることで層間の空隙やズレ等の懸念が生じる。1.5mmを超えると、強化繊維間への熱可塑性樹脂組成物の含浸性が悪化する。なお、テープ状プリプレグの平均厚みは、テープ状プリプレグの任意の異なる15点以上の厚みの測定値を平均した値とする。テープ状プリプレグの厚みの変動係数C(%)は、以下式により求められ、2.0%以下が好ましく、より好ましくは1.0%以下である。厚みの変動係数C(%)が2.0%以下であると、他部材への接着性に優れる。
【0051】
テープ状プリプレグの厚みの変動係数(%):C=√(Σ(Di-Dave)/(K-1))/Dave×100
Di:K箇所の厚みの測定中、i番目の箇所の測定値
Dave:テープ状プリプレグの厚みの平均値
K:厚みの測定箇所数
本発明のテープ状プリプレグ100体積%中の繊維体積含有率は、30~70体積%が好ましく、より好ましくは35~65体積%、さらに好ましくは40~60体積%である。上記の上限と下限のいずれを組み合わせた範囲であってもよい。繊維体積含有率が30体積%以上であると、テープ状プリプレグの力学特性に優れ、他部材への補強に優れる。繊維体積含有率が70体積%以下であると、強化繊維への熱可塑性樹脂組成物の含浸性に優れる。
【0052】
本発明のテープ状プリプレグ100体積%中の空隙率は、5体積%以下であり、好ましくは4体積%以下、より好ましくは3体積%以下である。空隙率が5体積%を超えると、テープ状プリプレグの引張強度が低下する。なお、テープ状プリプレグの空隙率は、小さいほど好ましく、そのため下限は0体積%である。空隙率を5体積%以下に制御するための手段としては、含浸させる熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度を下げる、含浸時にかかる圧力を上昇させる、などの手段がある。
【0053】
本発明では、上記繊維体積含有率および空隙率は、実施例に下記した方法によって測定可能である。なお、算出過程で必要となる比重の測定は、下記した特定の機器によるものに限られるものではない。
【0054】
本発明におけるASTM D3039/D3039M-07で測定したテープ状プリプレグの引張強度は、1,500MPa以上が好ましく、より好ましくは1,750MPa以上である。引張強度が1,500MPa以上であると他部材への補強に優れる。なお、テープ状プリプレグの引張強度は大きいほど好ましいが、含浸性の高いテープ状プリプレグを製造するためには3,500MPa以下が好ましく、現実的な上限としては4,200MPa程度と考えられる。引張強度を1,500MPa以上に制御するための手段としては、強化繊維を均一に分散させる、空隙率を調整する、などの手段がある。
【0055】
本発明では、引張強度は、実施例に下記した方法によって測定可能である。
【実施例
【0056】
次に本発明を、実施例、比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により制限して解釈されるものではない。
【0057】
(1)テープ状プリプレグの製造方法
強化繊維として炭素繊維を用い、熱可塑性樹脂組成物としては市販のポリアミド6樹脂を用いた。図1に示す製造装置を用いて、テープ状プリプレグを製造した。図1において、強化繊維束101が巻かれたボビン102を準備し、それぞれボビン102から連続的に糸道ガイド103を通じて強化繊維束101を送り出した。連続的に送り出された強化繊維束101が含浸槽104内を通過する際、固定ガイド107により強化繊維束101をしごいて、熱可塑性樹脂組成物を充填したフィーダー106から定量供給された熱可塑性樹脂組成物105を含浸させた。含浸槽104内で熱可塑性樹脂組成物105が含浸した強化繊維束101を、含浸槽104のノズルから連続的に引き抜いた。引取ロール109にて引き抜かれた強化繊維束101を、冷却ロール108を通過させ冷却固化し、巻取機111にて巻き取り、テープ状プリプレグ110を得た。
【0058】
(2)テープ状プリプレグの厚みの測定方法
テープ状プリプレグの任意の異なる15点以上の厚みをマイクロメーター(ミツトヨ BLM-25M)で測定し、平均厚みとその変動係数(%)を求めた。得られた厚みの変動係数に応じて、以下の基準で判定をした。なお、A、Bが合格基準であり、Aの方が優れている。
【0059】
A:1.0%以下
B:1.0%を超え2.0%以下
C:2.0%を超える。
【0060】
(3)強化繊維分散度の評価方法
テープ状プリプレグの強化繊維の配向方向に垂直な横断面を撮影した。このとき、光学顕微鏡(KEYENCE VHX-1000)を用いて倍率200倍で撮影を行った。得られたテープ状プリプレグの断面画像を画像処理ソフトImageJを用いて0.1mm四方の正方形ユニットに分割した。続いて、(正方形ユニットの合計面積/テープ状プリプレグの断面積×100(%))が10%以上となるように、正方形ユニットを複数枚無作為に選択した。但し、テープ状プリプレグが見切れているものや写っていないものは除いて選択した。選択した全ての正方形ユニットの各々に対して強化繊維の面積を求めた。このとき、先述の画像処理ソフトを用いて、二値化処理を行い、強化繊維の面積を画像のピクセル数で求めた。最後に、全ての強化繊維の面積から下記式で変動係数を算出した。これを強化繊維分散度とする。また、テープ状プリプレグの長さ方向に各3m以上の間隔をあけて強化繊維分散度を4カ所測定し、その平均値および変動係数(%)を算出した。
選択する正方形ユニットの数:N≧S/S1×0.1
S1:正方形ユニットの面積
S:テープ状プリプレグの断面積
変動係数(強化繊維分散度):X=√(Σ(Ai-Aave)/(N-1))/Aave
Ai:N個中i番目の正方形ユニット中の強化繊維の面積
Aave:正方形ユニット中の強化繊維の面積の平均値
強化繊維分散度の長さ方向の変動係数(%):Y=√(Σ(Xi-Xave)/(M-1))/Xave×100
Xi:M個の断面写真中、i番目の断面写真から求まる強化繊維分散度
Xave:強化繊維分散度の平均値 。
【0061】
M:テープ状プリプレグの長さ方向の断面写真の数
得られた強化繊維分散度の長さ方向の変動係数値に応じて、以下の基準で判定をした。なお、A、Bが合格基準であり、Aの方が優れている。
A:3.0%以下
B:3.0%を超え5.0%以下
C:5.0%を超える。
【0062】
(4)比重の測定方法
比重測定機(ALFA MIRAGE製、ELECTRONIC DENSIMETER SD-200L)を用いて測定した。
【0063】
(5)繊維体積含有率、空隙率の測定方法
約0.5gのテープ状プリプレグをとり、秤量(W1(g))した後、50ミリリットル/分の窒素気流中、500℃の温度に設定した電気炉に120分間放置し、テープ状プリプレグ中の熱可塑性樹脂組成物を完全に熱分解させる。そして、20リットル/分の乾燥窒素気流中の容器に移し、15分間冷却した後に得られる強化繊維を秤量(W2(g))して、強化繊維量を求めた。次に各測定値から次式により各値を算出した。
【0064】
繊維体積含有率(%)=(W2(g)/強化繊維比重(g/cm))/(W1(g)/テープ状プリプレグの比重(g/cm))×100
樹脂体積含有率(%)=((W1-W2)(g)/熱可塑性樹脂組成物比重(g/cm))/(W1(g)/テープ状プリプレグの比重(g/cm))×100
空隙率(%)=100-繊維体積含有率(%)-樹脂体積含有率(%) 。
【0065】
(6)引張強度の測定方法
テープ状プリプレグの引張強度は、ASTM D3039/D3039-07に従って測定した。
【0066】
得られた引張強度の測定値に応じて、以下の基準で判定をした。なお、A、Bが合格基準であり、Aの方が優れている。
A:1750MPa以上3500MPa未満
B:1500MPa以上1750MPa未満
C:1500MPa未満 。
【0067】
(7)原材料
(A)連続強化繊維としては、炭素繊維(東レ株式会社製T700S)を用いた。
(B)熱可塑性樹脂としては、ポリアミド6(東レ株式会社製)を用いた。融点より50℃高い温度での粘度は約40Pa・sであった。
【0068】
(実施例1)
上記(1)テープ状プリプレグの製造方法において、含浸ダイ104前の強化繊維束1ストランドあたりの張力を1000cN、含浸ダイ104前の強化繊維束1ストランドの幅を15mmとし、一対の幅規制部材112を突出部間の最短距離が繊維方向と略垂直になるようにその面上に設けた固定ガイド107を用いて、繊維体積含有率が50体積%でテープ平均厚みが0.4mmのテープ状プリプレグ109を成形した。
【0069】
(実施例2)
上記(1)テープ状プリプレグの製造方法において、含浸ダイ104前の強化繊維束1ストランドあたりの張力を600cN、含浸ダイ104前の強化繊維束1ストランドの幅を15mmとし、一対の幅規制部材112を突出部間の最短距離が繊維方向と略垂直になるようにその面上に設けた固定ガイド107を用いて、繊維体積含有率が50体積%でテープ平均厚みが0.4mmのテープ状プリプレグ109を成形した。
【0070】
(実施例3)
上記(1)テープ状プリプレグの製造方法において、含浸ダイ104前の強化繊維束1ストランドあたりの張力を400cN、含浸ダイ104前の強化繊維束1ストランドの幅を15mmとし、一対の幅規制部材112を突出部間の最短距離が繊維方向と略垂直になるようにその面上に設けた固定ガイド107を用いて、繊維体積含有率が50体積%でテープ平均厚みが0.4mmのテープ状プリプレグ109を成形した。
【0071】
(実施例4)
上記(1)テープ状プリプレグの製造方法において、含浸ダイ104前の強化繊維束1ストランドあたりの張力を1000cN、含浸ダイ104前の強化繊維束1ストランドの幅を15mmとし、一対の幅規制部材112を突出部間の最短距離が繊維方向と略垂直になるようにその面上に設けた固定ガイド107を用いて、繊維体積含有率が50体積%でテープ平均厚みが0.3mmのテープ状プリプレグ109を成形した。
【0072】
(実施例5)
上記(1)テープ状プリプレグの製造方法において、含浸ダイ104前の強化繊維束1ストランドあたりの張力を600cN、含浸ダイ104前の強化繊維束1ストランドの幅を15mmとし、一対の幅規制部材112を突出部間の最短距離が繊維方向と略垂直になるようにその面上に設けた固定ガイド107を用いて、繊維体積含有率が50体積%でテープ平均厚みが0.3mmのテープ状プリプレグ109を成形した。
【0073】
(実施例6)
上記(1)テープ状プリプレグの製造方法において、含浸ダイ104前の強化繊維束1ストランドあたりの張力を400cN、含浸ダイ104前の強化繊維束1ストランドの幅を15mmとし、一対の幅規制部材112を突出部間の最短距離が繊維方向と略垂直になるようにその面上に設けた固定ガイド107を用いて、繊維体積含有率が50体積%でテープ平均厚みが0.3mmのテープ状プリプレグ109を成形した。
【0074】
(実施例7)
上記(1)テープ状プリプレグの製造方法において、含浸ダイ104前の強化繊維束1ストランドあたりの張力を1000cN、含浸ダイ104前の強化繊維束1ストランドの幅を10mmとし、一対の幅規制部材112を突出部間の最短距離が繊維方向と略垂直になるようにその面上に設けた固定ガイド107を用いて、繊維体積含有率が50体積%でテープ平均厚みが0.4mmのテープ状プリプレグ109を成形した。
【0075】
参考例1
上記(1)テープ状プリプレグの製造方法において、含浸ダイ104前の強化繊維束1ストランドあたりの張力を1000cN、含浸ダイ104前の強化繊維束1ストランドの幅を15mmとし、一対の幅規制部材112を突出部間の最短距離が繊維方向と略垂直になるようにその面上に設けた固定ガイド107を用いて、繊維体積含有率が40体積%でテープ平均厚みが0.4mmのテープ状プリプレグ109を成形した。
【0076】
(実施例9)
上記(1)テープ状プリプレグの製造方法において、含浸ダイ104前の強化繊維束1ストランドあたりの張力を1000cN、含浸ダイ104前の強化繊維束1ストランドの幅を15mmとし、一対の幅規制部材112を突出部間の最短距離が繊維方向と略垂直になるようにその面上に設けた固定ガイド107を用いて、繊維体積含有率が50体積%でテープ平均厚みが0.2mmのテープ状プリプレグ109を成形した。
【0077】
(実施例10)
上記(1)テープ状プリプレグの製造方法において、含浸ダイ104前の強化繊維束1ストランドあたりの張力を1600cN、含浸ダイ104前の強化繊維束1ストランドの幅を15mmとし、一対の幅規制部材112を突出部間の最短距離が繊維方向と略垂直になるようにその面上に設けた固定ガイド107を用いて、繊維体積含有率が50体積%でテープ平均厚みが0.8mmのテープ状プリプレグ109を成形した。
【0078】
(実施例11)
上記(1)テープ状プリプレグの製造方法において、含浸ダイ104前の強化繊維束1ストランドあたりの張力を1600cN、含浸ダイ104前の強化繊維束1ストランドの幅を15mmとし、一対の幅規制部材112を突出部間の最短距離が繊維方向と略垂直になるようにその面上に設けた固定ガイド107を用いて、繊維体積含有率が50体積%でテープ平均厚みが1.2mmのテープ状プリプレグ109を成形した。
【0079】
空隙率がやや高めであったこともあって、引張強度に若干の減少が認められた。
【0080】
(実施例12)
上記(1)テープ状プリプレグの製造方法において、含浸ダイ104前の強化繊維束1ストランドあたりの張力を1800cN、含浸ダイ104前の強化繊維束1ストランドの幅を15mmとし、一対の幅規制部材112を突出部間の最短距離が繊維方向と略垂直になるようにその面上に設けた固定ガイド107を用いて、繊維体積含有率が50体積%でテープ平均厚みが1.5mmのテープ状プリプレグ109を成形した。
【0081】
(比較例1)
上記(1)テープ状プリプレグの製造方法において、含浸ダイ104前の強化繊維束1ストランドあたりの張力を100cN、含浸ダイ104前の強化繊維束1ストランドの幅を5mmとし、幅規制部材112を持たない固定ガイド107を用いて、繊維体積含有率が50体積%でテープ平均厚みが0.4mmのテープ状プリプレグ109を成形した。
【0082】
(比較例2)
上記(1)テープ状プリプレグの製造方法において、含浸ダイ104前の強化繊維束1ストランドあたりの張力を400cN、含浸ダイ104前の強化繊維束1ストランドの幅を5mmとし、幅規制部材112を持たない固定ガイド107を用いて、繊維体積含有率が50体積%でテープ平均厚みが0.4mmのテープ状プリプレグ109を成形した。
【0083】
引張特性を含むテープ品質にばらつきが大きく、実用には供し得ないものであった。
【0084】
(比較例3)
上記(1)テープ状プリプレグの製造方法において、含浸ダイ104前の強化繊維束1ストランドあたりの張力を2000cN、含浸ダイ104前の強化繊維束1ストランドの幅を15mmとし、幅規制部材112を持たない固定ガイド107を用いて、繊維体積含有率が50体積%でテープ平均厚みが2.0mmのテープ状プリプレグ109を成形した。
【0085】
上記実施例、比較例の結果を表1および表2に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【符号の説明】
【0088】
100 製造装置
101 強化繊維束
102 ボビン
103 糸道ガイド
104 含浸槽
105 熱可塑性樹脂組成物
106 フィーダー
107 固定ガイド
108 冷却ロール
109 引取ロール
110 テープ状プリプレグ
111 巻取ロール
112 幅規制部材

図1
図2
図3
図4