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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】インクセット
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/40 20140101AFI20230301BHJP
   C09D 11/328 20140101ALI20230301BHJP
   C09D 11/322 20140101ALI20230301BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230301BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20230301BHJP
   C09B 11/10 20060101ALI20230301BHJP
   C09B 11/28 20060101ALI20230301BHJP
   C09B 29/46 20060101ALI20230301BHJP
   C09B 35/03 20060101ALI20230301BHJP
   C09B 43/16 20060101ALI20230301BHJP
   C09B 47/20 20060101ALI20230301BHJP
   C09B 47/26 20060101ALI20230301BHJP
   C09B 67/22 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
C09D11/40
C09D11/328
C09D11/322
B41J2/01 501
B41M5/00 120
C09B11/10
C09B11/28 C
C09B29/46
C09B35/03
C09B43/16
C09B47/20
C09B47/26
C09B67/22 A
C09B67/22 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019015329
(22)【出願日】2019-01-31
(65)【公開番号】P2020122092
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼ 晋太郎
(72)【発明者】
【氏名】有賀 友洋
(72)【発明者】
【氏名】隈本 聖観
(72)【発明者】
【氏名】水瀧 雄介
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/079442(WO,A1)
【文献】特開2013-010825(JP,A)
【文献】特開2009-067833(JP,A)
【文献】特開2014-227508(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0345494(US,A1)
【文献】特開2013-147563(JP,A)
【文献】特開2010-084136(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0056704(US,A1)
【文献】特開2019-178317(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0300742(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/40
B41J 2/01
B41M 5/00
C09B 11/10
C09B 11/28
C09B 29/46
C09B 35/03
C09B 43/16
C09B 47/20
C09B 47/26
C09B 67/22
C09D 11/322
C09D 11/328
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料を含む顔料インクと、
下記式(y-1)で表される化合物又はその塩を含む染料インクと、を備え
【化1】
・・・(y-1)
前記染料インクは、下記式(y-2)で表される化合物又はその塩、
【化2】
・・・(y-2)
下記式(y-3)で表される化合物又はその塩、
【化3】
・・・(y-3)
下記式(y-4)で表される化合物又はその塩、
【化4】
・・・(y-4)
C.I.ダイレクトイエロー86、及びC.I.ダイレクトイエロー132から選択され
る1種又は2種以上さらに含む、インクセット。
【請求項2】
請求項1において、
前記染料インクにおける前記式(y-1)で表される化合物又はその塩の含有量が、前
記染料インクに含まれる染料の全量に対して、60.0質量%以上90.0質量%以下で
ある、インクセット。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記染料インクは、sp値が12.5以下の有機溶剤を、5.0質量%以上含む、イン
クセット。
【請求項4】
顔料を含む顔料インクと、
下記式(y-1)で表される化合物又はその塩を含む染料インクと、
【化5】
・・・(y-1)

下記式(c-1)で表される化合物又はその塩、
【化6】
・・・(c-1)
下記式(c-2)で表される化合物又はその塩、
【化7】
・・・(c-2)
下記式(c-3)で表される化合物又はその塩、
【化8】
・・・(c-3)
(式(c-3)中、bは、0≦b≦4を満たし、cは、0≦c≦4を満たし、b+cは、
1≦(b+c)≦4を満たす整数を表し、環A1、A2及びA3は、それぞれ、ベンゼン環
、2,3-ピリジン環及び3,2-ピリジン環から選択され、かつ、環A1、A2及びA3
の少なくとも一つは、2,3-ピリジン環又は3,2-ピリジン環であり、環A1、A2
びA3は同一でも異なっていてもよい。)
下記式(c-4)で表される化合物又はその塩、
【化9】
・・・(c-4)
下記式(c-5)で表される化合物又はその塩、
【化10】
・・・(c-5)
(式(c-5)中、環A1、A2及びA3は、それぞれ、ベンゼン環、2,3-ピリジン環
及び3,2-ピリジン環から選択され、かつ、環A1、A2及びA3の少なくとも一つは、
2,3-ピリジン環又は3,2-ピリジン環であり、環A1、A2及びA3は同一でも異な
っていてもよく、aは、1.0≦a≦3.0を満たし、bは、0.2≦b≦1.8を満た
し、cは、0.8≦c≦1.6を満たし、かつ、a、b及びcは、0≦a+b+c≦4を
満たし、xは、1≦z≦3を満たす整数であり、R1は、炭素原子数1以上6以下の直鎖
アルキレン基である。)
下記式(c-6)で表される化合物又はその塩、
【化11】
・・・(c-6)
(式(c-6)中、環A、B、C、及びDはそれぞれ独立に芳香性を有する6員環であり
、かつ、環A、B、C、及びDの少なくともひとつはピリジン環又はピラジン環である。
Eはアルキレン基である。Xは、スルホ置換アニリノ基、カルボキシ置換アニリノ基、又
はホスホノ置換アニリノ基であり、該置換アニリノ基はさらに、スルホン酸基、カルボキ
シ基、ホスホノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、
アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミ
ノ基、アセチルアミノ基、ウレイド基、アルキル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン、ア
ルキルスルホニル基、及びアルキルチオ基からなる群から選ばれる置換基を1乃至4個有
してもよい。Yはヒドロキシ基又はアミノ基である。aは、0.0≦a≦2.0を満たし
、bは、0.0≦b≦3.0を満たし、cは、0.1≦c≦3.0を満たし、かつ、a、
b及びcは、1.0≦a+b+c≦4.0を満たす。)
下記式(c-7)で表される化合物又はその塩、
【化12】
・・・(c-7)
(式(c-7)中、環A、B、C及びDは、それぞれ独立に、ベンゼン環又は含窒素複素
芳香環を表し、かつ、前記含窒素複素芳香環の数は0.0より大きく3.0以下であると
ともに残りはベンゼン環である。R1はアルキル基を表し、R2はアルキレン基を表し、X
は1以上のスルホン酸基を有するアニリノ基を表す。Xはカルボキシ基、リン酸基、ヒド
ロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニルアミノ基、ウレイド基、ニトロ基、及びハ
ロゲン原子からなる群より選択される置換基をさらに有してもよい。mは、0.0<m<
3.9であり、nは、0.1≦n<4.0であり、かつ、m及びnは、1.0≦(m+n
)<4.0である。)
下記式(c-8)で表される化合物又はその塩、
【化13】
・・・(c-8)
(式(c-8)中、R1ないしR24は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アル
キル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、
アシル基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒ
ドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、スルホン酸基、カルボン酸基、スルファモ
イル基、カルバモイル基、アルコキシスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリール
オキシスルホニル基、又はアリールオキシカルボニル基を表し、以下の(X)及び(Y)
の少なくとも一方を満たす。(X)R1ないしR24の少なくとも1つが、スルホン酸基、
又はカルボン酸基である。(Y)R6、R7、R8、R9、R16、R17、R18、及びR19の少
なくとも1つが、ハロゲン原子、アシル基、ニトロ基、又はシアノ基である。)
下記式(c-9)で表される化合物又はその塩、
【化14】
・・・(c-9)
(式(c-9)中、R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立に、アルキル基、シクロア
ルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、R1、R2
、R3、及びR4の少なくとも1つにはイオン性基が置換している。w、x、y、及びzは
、それぞれ独立に1又は2を表す。)
及び、
C.I.ダイレクトブルー199から選択される1種又は2種以上を含む、シアンインク
と、
下記式(m-1)で表される化合物又はその塩、
【化15】
・・・(m-1)
下記式(m-2)で表される化合物又はその塩、
【化16】
・・・(m-2)
下記式(m-3)で表される化合物又はその塩、
【化17】
・・・(m-3)
(式(m-3)中、R1、R5、R6及びR10は、それぞれ独立に、アルキル基を表す。R3
及びR8は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、又はアリールオキ
シ基を表し、アルキル基、アルコキシ基、及びアリールオキシ基は、アルキル基、アリー
ル基、アリールアルキル基、ヒドロキシル基、カルバモイル基、スルファモイル基、アル
コキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、及びイオン性基からなる置換基群より選択される少
なくとも1種の置換基を有していてもよい。R2、R4、R7及びR9は、それぞれ独立に、
水素原子、又は下記式(m-3’)で表されるアシルアミノ基を表し、R2、R4、R7
びR9の少なくとも1つは下記式(m-3’)で表されるアシルアミノ基である。Zは、
SO3H基、SO3M基(Mはアンモニウムイオン又はアルカリ金属イオンを表す)、又は
スルファモイル基を表す。R2、R3、R4、R7、R8及びR9の少なくとも1つが、イオン
性基で置換されている場合には、nは0乃至3の整数を表し、イオン性基で置換されてい
ない場合には、nは1ないし3の整数を表し、Zが存在する場合は芳香環の少なくとも1
つの水素原子の位置に置換している。)
【化18】
・・・(m-3’)
(式(m-3’)中、R11は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールア
ルキル基、アルケニル基、又はヘテロ環基を表し、アルキル基、シクロアルキル基、アリ
ール基、アリールアルキル基、アルケニル基、及びヘテロ環基は、アルキル基、アリール
基、アリールアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、シアノ基、アルキルアミノ基、
スルホアルキル基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニルアミノ基、ハロゲン
原子、及びイオン性基からなる置換基群より選択される少なくとも1種の置換基を有して
いてもよい。*は式(m-3)の芳香環との結合部位を表す。)
及び、
C.I.ダイレクトレッド227から選択される1種又は2種以上を含む、マゼンタイン
クと、
備えた、インクセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクセットに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット法により画像を記録するために、各種のインクセットが用いられている。インクセットに含まれるインクは、それぞれ種々の成分を含有しており、所望の色の画像を得るために、例えば、染料、顔料等の着色剤を含有している。
【0003】
インクセットには、互いに異なる色の着色剤を含有する複数のインクが備えられる。またインクセットは、互いに異なる種類の着色剤を含有する複数のインクによって構成される場合がある。例えば、特許文献1には、水系の顔料インクと、水系の染料インクと、を含むインクセットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/079422号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
顔料インクと染料インクとを含むインクセットをインクジェット記録に用いる場合、例えば、記録ヘッドのクリーニング操作等により両者が接触すると、インクの分散性が破壊され吐出性能が劣化する場合があった。これは、顔料インクの成分の分散が、染料インクに含まれるイオンにより影響を受けることが一因であると考えられる。
【0006】
特許文献1には、染料インクのイオン量を小さく抑えることが提案されている。しかし、染料インク中のイオン量を小さくするには、染料の添加量を小さくする必要があり、発色性を維持する点で限界があった。また、染料分子の構造をより複雑化して発色性を向上させることが考えられるが、この場合には、染料自体の溶解性を維持するためにカルボキシル基やスルホニル基等のイオン解離型の官能基が必要となる場合があり、必ずしも染料インク中のイオンの量を少なくすることにはつながらない場合がある。
【0007】
一方、顔料インクの成分の分散は、イオンの影響を受けるだけではなく、pH、比誘電率、顔料の径、分子間力等、さまざまな要因に支配されている。そのため、インクの分散性を調節する場合には、イオンの量のみに着目するだけでは不十分である。
【0008】
したがって、顔料インクと染料インクとが接触した場合でも、顔料インクの成分の分散性を良好に維持できるインクセットが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るインクセットの一態様は、
顔料を含む顔料インクと、
下記式(y-1)で表される化合物又はその塩を含む染料インクと、を備える。
【0010】
【化1】
・・・(y-1)
【0011】
上記インクセットの態様において、
前記染料インクにおける前記式(y-1)で表される化合物又はその塩の含有量が、前記染料インクに含まれる染料の全量に対して、60.0質量%以上90.0質量%以下であってもよい。
【0012】
上記インクセットのいずれかの態様において、
前記染料インクは、下記式(y-2)で表される化合物又はその塩をさらに含んでもよい。
【0013】
【化2】
・・・(y-2)
【0014】
上記インクセットのいずれかの態様において、
前記染料インクは、下記式(y-3)で表される化合物又はその塩をさらに含んでもよい。
【0015】
【化3】
・・・(y-3)
【0016】
上記インクセットのいずれかの態様において、
前記染料インクは、下記式(y-4)で表される化合物又はその塩をさらに含んでもよい。
【0017】
【化4】
・・・(y-4)
【0018】
上記インクセットのいずれかの態様において、
前記染料インクは、C.I.ダイレクトイエロー86をさらに含んでもよい。
【0019】
上記インクセットのいずれかの態様において、
前記染料インクは、C.I.ダイレクトイエロー132をさらに含んでもよい。
【0020】
上記インクセットのいずれかの態様において、
前記染料インクは、sp値が12.5以下の有機溶剤を、5.0質量%以上含んでもよい。
【0021】
上記インクセットのいずれかの態様において、
下記式(c-1)で表される化合物又はその塩、
【0022】
【化5】
・・・(c-1)
【0023】
下記式(c-2)で表される化合物又はその塩、
【0024】
【化6】
・・・(c-2)
【0025】
下記式(c-3)で表される化合物又はその塩、
【0026】
【化7】
・・・(c-3)
【0027】
(式(c-3)中、bは、0≦b≦4を満たし、cは、0≦c≦4を満たし、b+cは、1≦(b+c)≦4を満たす整数を表し、環A、A及びAは、それぞれ、ベンゼン環、2,3-ピリジン環及び3,2-ピリジン環から選択され、かつ、環A、A及びAの少なくとも一つは、2,3-ピリジン環又は3,2-ピリジン環であり、環A、A及びAは同一でも異なっていてもよい。)
【0028】
下記式(c-4)で表される化合物又はその塩、
【0029】
【化8】
・・・(c-4)
【0030】
下記式(c-5)で表される化合物又はその塩、
【0031】
【化9】
・・・(c-5)
【0032】
(式(c-5)中、環A、A及びAは、それぞれ、ベンゼン環、2,3-ピリジン環及び3,2-ピリジン環から選択され、かつ、環A、A及びAの少なくとも一つは、2,3-ピリジン環又は3,2-ピリジン環であり、環A、A及びAは同一でも異なっていてもよく、aは、1.0≦a≦3.0を満たし、bは、0.2≦b≦1.8を満たし、cは、0.8≦c≦1.6を満たし、かつ、a、b及びcは、0≦a+b+c≦4を満たし、xは、1≦z≦3を満たす整数であり、Rは、炭素原子数1以上6以下の直鎖アルキレン基である。)
【0033】
下記式(c-6)で表される化合物又はその塩、
【0034】
【化10】
・・・(c-6)
【0035】
(式(c-6)中、環A、B、C、及びDはそれぞれ独立に芳香性を有する6員環であり、かつ、環A、B、C、及びDの少なくともひとつはピリジン環又はピラジン環である。Eはアルキレン基である。Xは、スルホ置換アニリノ基、カルボキシ置換アニリノ基、又はホスホノ置換アニリノ基であり、該置換アニリノ基はさらに、スルホン酸基、カルボキシ基、ホスホノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アセチルアミノ基、ウレイド基、アルキル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン、アルキルスルホニル基、及びアルキルチオ基からなる群から選ばれる置換基を1乃至4個有してもよい。Yはヒドロキシ基又はアミノ基である。aは、0.0≦a≦2.0を満たし、bは、0.0≦b≦3.0を満たし、cは、0.1≦c≦3.0を満たし、かつ、a、b及びcは、1.0≦a+b+c≦4.0を満たす。)
【0036】
下記式(c-7)で表される化合物又はその塩、
【0037】
【化11】
・・・(c-7)
【0038】
(式(c-7)中、環A、B、C及びDは、それぞれ独立に、ベンゼン環又は含窒素複素芳香環を表し、かつ、前記含窒素複素芳香環の数は0.0より大きく3.0以下であるとともに残りはベンゼン環である。Rはアルキル基を表し、Rはアルキレン基を表し、Xは1以上のスルホン酸基を有するアニリノ基を表す。Xはカルボキシ基、リン酸基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニルアミノ基、ウレイド基、ニトロ基、及びハロゲン原子からなる群より選択される置換基をさらに有してもよい。mは、0.0<m<3.9であり、nは、0.1≦n<4.0であり、かつ、m及びnは、1.0≦(m+n)<4.0である。)
【0039】
下記式(c-8)で表される化合物又はその塩、
【0040】
【化12】
・・・(c-8)
【0041】
(式(c-8)中、RないしR24は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、アシル基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、スルホン酸基、カルボン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルコキシスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシスルホニル基、又はアリールオキシカルボニル基を表し、以下の(X)及び(Y)の少なくとも一方を満たす。(X)RないしR24の少なくとも1つが、スルホン酸基、又はカルボン酸基である。(Y)R、R、R、R、R16、R17、R18、及びR19の少なくとも1つが、ハロゲン原子、アシル基、ニトロ基、又はシアノ基である。)
【0042】
下記式(c-9)で表される化合物又はその塩、
【0043】
【化13】
・・・(c-9)
【0044】
(式(c-9)中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、R、R、R、及びRの少なくとも1つにはイオン性基が置換している。w、x、y、及びzは、それぞれ独立に1又は2を表す。)
【0045】
及び、
C.I.ダイレクトブルー199から選択される1種又は2種以上を含む、シアンインクと、
【0046】
下記式(m-1)で表される化合物又はその塩、
【0047】
【化14】
・・・(m-1)
【0048】
下記式(m-2)で表される化合物又はその塩、
【0049】
【化15】
・・・(m-2)
【0050】
下記式(m-3)で表される化合物又はその塩、
【0051】
【化16】
・・・(m-3)
【0052】
(式(m-3)中、R、R、R及びR10は、それぞれ独立に、アルキル基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、又はアリールオキシ基を表し、アルキル基、アルコキシ基、及びアリールオキシ基は、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、ヒドロキシル基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、及びイオン性基からなる置換基群より選択される少なくとも1種の置換基を有していてもよい。R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は下記式(m-3’)で表されるアシルアミノ基を表し、R、R、R及びRの少なくとも1つは下記式(m-3’)で表されるアシルアミノ基である。Zは、SOH基、SOM基(Mはアンモニウムイオン又はアルカリ金属イオンを表す)、又はスルファモイル基を表す。R、R、R、R、R及びRの少なくとも1つが、イオン性基で置換されている場合には、nは0乃至3の整数を表し、イオン性基で置換されていない場合には、nは1ないし3の整数を表し、Zが存在する場合は芳香環の少なくとも1つの水素原子の位置に置換している。)
【0053】
【化17】
・・・(m-3’)
【0054】
(式(m-3’)中、R11は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、又はヘテロ環基を表し、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、及びヘテロ環基は、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、シアノ基、アルキルアミノ基、スルホアルキル基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニルアミノ基、ハロゲン原子、及びイオン性基からなる置換基群より選択される少なくとも1種の置換基を有していてもよい。*は式(m-3)の芳香環との結合部位を表す。)
【0055】
及び、
C.I.ダイレクトレッド227から選択される1種又は2種以上を含む、マゼンタインクと、
をさらに含んでもよい。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下に本発明の実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
【0057】
1.インクセット
本実施形態のインクセットは、顔料インクと、染料インクと、を備える。インクセットは、顔料インクを複数備えてもよいし、染料インクを複数備えてもよい。以下の説明では、顔料インクの項で、インクセットに備えられる顔料インクの例を説明する。また、以下の説明では、本実施形態のインクセットに備えられる特定の染料インクを第1染料インクとして説明し、本実施形態のインクセットに任意に備えられる第1染料インク以外の染料インクを第2染料インクとして説明する。
【0058】
したがって、本実施形態のインクセットの態様としては、「1.1.顔料インク」の項で説明する顔料インクの1以上と、「1.2.第1染料インク」の項で説明する第1染料インクと、を含む態様と、「1.1.顔料インク」の項で説明する顔料インクの1以上と、「1.2.第1染料インク」の項で説明する第1染料インクと、「1.3.第2染料インク」の項で説明する第2染料インクの1以上と、を含む態様がある。
【0059】
1.1.顔料インク
本実施形態のインクセットには、以下に説明する顔料インクが備えられる。インクセットに備えられる顔料インクの数は、任意である。インクセットに備えられる顔料インクは、例えば、ブラックの顔料インクのみであってもよいし、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、その他の色の顔料インクから複数選ばれてもよい。いずれの場合であっても、顔料インクは、少なくとも顔料を含む。
【0060】
1.1.1.顔料
顔料としては、カーボンブラック、チタンホワイトを含む無機顔料、各種各色の有機顔料を用いることができる。顔料インクは、顔料がいわゆる自己分散顔料であってもよいし、顔料が分散樹脂により分散されていてもよい。
【0061】
無機顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ等を用いることができる。
【0062】
カーボンブラックとしては、三菱化学株式会社製のNo.2300、900、MCF88、No.20B、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No2200B等が挙げられる。デグサ社製のカラーブラックFW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、プリテックス35、U、V、140U、スペシャルブラック6、5、4A、4、250等を例示できる。コロンビアカーボン社製のコンダクテックスSC、ラーベン1255、5750、5250、5000、3500、1255、700等を例示できる。キャボット社製のリガール400R、330R、660R、モグルL、モナーク700、800、880、900、1000、1100、1300、1400、エルフテックス12等を例示できる。また、オリエント社製のBONJET BLACK CW-2等の自己分散型の顔料を用いてもよい。
【0063】
有機顔料としては、キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンツイミダゾロン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾメチン系顔料又はアゾ系顔料等を例示できる。
【0064】
顔料インクに用いられる有機顔料の具体例としては下記のものが挙げられる。
【0065】
シアン顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15:3、15:4、15:34、16、22、60等;C.I.バットブルー4、60等が挙げられ、好ましくは、C.I.ピグメントブルー15:3、15:4、及び60からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物を例示できる。
【0066】
マゼンタ顔料としては、C.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、168、184、202、C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられ、好ましくはC.I.ピグメントレッド122、202、及び209、C.I.ピグメントバイオレット19からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物を例示できる。
【0067】
イエロー顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14C、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、119、110、114、128、129、138、150、151、154、155、180、185、等が挙げられ、好ましくはC.I.ピグメントイエロー74、109、110、128、及び138からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物を例示できる。
【0068】
オレンジ顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ36若しくは43又はこれらの混合物を例示できる。グリーンインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントグリーン7若しくは36又はこれらの混合物を例示できる。
【0069】
上記例示した顔料は、好適な顔料の例であり、これらによって本発明が限定されるものではない。これらの顔料は一種又は二種以上の混合物として用いてよいし、染料と併用しても構わない。
【0070】
また、顔料は、水溶性樹脂、水分散性樹脂、界面活性剤等から選ばれる分散剤を用いて分散して用いてもよく、あるいはオゾン、次亜塩素酸、発煙硫酸等により、顔料表面を酸化、あるいはスルホン化して自己分散顔料として分散して用いてもよい。
【0071】
顔料の含有量は、用途に応じて適宜調整することができるが、好ましくは0.10質量%以上20.0質量%以下であり、より好ましくは0.20質量%以上15.0質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以上10.0質量%以下、特に好ましくは2.0質量%以上6.0質量%以下である。
【0072】
顔料粒子の体積平均粒子径は、10.0nm以上200.0nm以下が好ましく、30.0nm以上200.0nm以下がより好ましく、50.0nm以上150.0nm以下がさらに好ましく、70.0nm以上120.0nm以下が特に好ましい。
【0073】
顔料インクにおいて、顔料を分散樹脂により分散させる場合には、顔料と分散樹脂との比率は10:1~1:10が好ましく、4:1~1:3がより好ましい。また、分散時の顔料の体積平均粒子径は、動的光散乱法で計測した場合の最大粒径が500nm未満で平均粒径が300nm以下であり、より好ましくは平均粒径が200nm以下である。
【0074】
顔料インクには、顔料の分散を妨げない範囲で、染料が含まれてもよい。顔料インクに用い得る染料としては、水溶解系として酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料、水分散系として分散染料、油溶染料、昇華型染料等を挙げることができる。
【0075】
1.1.2.その他の成分
本実施形態の顔料インクは、界面活性剤、有機溶剤、樹脂、水、その他の成分を含有してもよい。
【0076】
(1)界面活性剤
顔料インクは、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤は、顔料インクの表面張力を低下させ記録媒体や下地との濡れ性を向上させる機能を備える。界面活性剤の中でも、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤を好ましく用いることができる。
【0077】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、サーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG-50、104S、420、440、465、485、SE、SE-F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA、DF110D(以上全て商品名、エア・プロダクツ&ケミカルズ社製)、オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD-001、PD-002W、PD-003、PD-004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF-103、AF-104、AK-02、SK-14、AE-3(以上全て商品名、日信化学工業社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル社製)が挙げられる。
【0078】
シリコーン系界面活性剤としては、特に限定されないが、ポリシロキサン系化合物が好ましく挙げられる。当該ポリシロキサン系化合物としては、特に限定されないが、例えばポリエーテル変性オルガノシロキサンが挙げられる。当該ポリエーテル変性オルガノシロキサンの市販品としては、例えば、BYK-306、BYK-307、BYK-333、BYK-341、BYK-345、BYK-346、BYK-348(以上商品名、ビックケミー・ジャパン社製)、KF-351A、KF-352A、KF-353、KF-354L、KF-355A、KF-615A、KF-945、KF-640、KF-642、KF-643、KF-6020、X-22-4515、KF-6011、KF-6012、KF-6015、KF-6017(以上商品名、信越化学工業社製)が挙げられる。
【0079】
フッ素系界面活性剤としては、フッ素変性ポリマーを用いることが好ましく、具体例としては、BYK-3440(ビックケミー・ジャパン社製)、サーフロンS-241、S-242、S-243(以上商品名、AGCセイミケミカル社製)、フタージェント215M(ネオス社製)等が挙げられる。
【0080】
顔料インクに界面活性剤を含有させる場合には、複数種を含有させてもよい。顔料インクに界面活性剤を含有させる場合の含有量は、全質量に対して、好ましくは0.1質量%以上2.0質量%以下、さらに好ましくは0.2質量%以上1.5質量%以下、より好ましくは、0.3質量%以上1.0質量%以下である。
【0081】
(2)有機溶剤
顔料インクは、有機溶剤を含有してもよい。顔料インクは、有機溶剤を含有しなくてもよいが、有機溶剤を含有することにより、乾燥性と吐出安定性の両立がより容易となる。有機溶剤は水溶性の有機溶剤であることが好ましい。
【0082】
有機溶剤の機能の一つは、記録媒体に対する顔料インクの濡れ性を向上させることや、顔料インクの保湿性を高めることが挙げられる。有機溶剤としては、エステル類、アルキレングリコールエーテル類、環状エステル類、含窒素溶剤、多価アルコール等を挙げることができる。含窒素溶剤としては環状アミド類、非環状アミド類などを挙げることができる。非環状アミド類としてはアルコキシアルキルアミド類などが挙げられる。
【0083】
エステル類としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、等のグリコールモノアセテート類、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、エチレングリコールアセテートプロピオネート、エチレングリコールアセテートブチレート、ジエチレングリコールアセテートブチレート、ジエチレングリコールアセテートプロピオネート、ジエチレングリコールアセテートブチレート、プロピレングリコールアセテートプロピオネート、プロピレングリコールアセテートブチレート、ジプロピレングリコールアセテートブチレート、ジプロピレングリコールアセテートプロピオネート、等のグリコールジエステル類が挙げられる。
【0084】
アルキレングリコールエーテル類としては、アルキレングリコールのモノエーテル又はジエーテルであればよく、アルキルエーテルが好ましい。具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチエレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル類、及び、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等のアルキレングリコールジアルキルエーテル類が挙げられる。
【0085】
環状エステル類としては、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、β-ブチロラクトン、β-バレロラクトン、γ-バレロラクトン、β-ヘキサノラクトン、γ-ヘキサノラクトン、δ-ヘキサノラクトン、β-ヘプタノラクトン、γ-ヘプタノラクトン、δ-ヘプタノラクトン、ε-ヘプタノラクトン、γ-オクタノラクトン、δ-オクタノラクトン、ε-オクタノラクトン、δ-ノナラクトン、ε-ノナラクトン、ε-デカノラクトン等の環状エステル類(ラクトン類)、並びに、それらのカルボニル基に隣接するメチレン基の水素が炭素数1~4のアルキル基によって置換された化合物を挙げることができる。
【0086】
アルコキシアルキルアミド類としては、例えば、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-メトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-メトキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-エトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-エトキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-n-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-n-ブトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-n-ブトキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-n-プロポキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-n-プロポキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-n-プロポキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-iso-プロポキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-iso-プロポキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-iso-プロポキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-tert-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-tert-ブトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-tert-ブトキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、等を例示することができる。
【0087】
環状アミド類としては、ラクタム類が挙げられ、例えば、2-ピロリドン、1-メチル-2-ピロリドン、1-エチル-2-ピロリドン、1-プロピル-2-ピロリドン、1-ブチル-2-ピロリドン、等のピロリドン類などが挙げられる。これらは後述する樹脂粒子の皮膜化を促進させる点で好ましく、特に2-ピロリドンがより好ましい。
【0088】
また、非環状アミド類として、下記一般式(1)で表される化合物であるアルコキシアルキルアミド類を用いることも好ましい。
【0089】
-O-CHCH-(C=O)-NR ・・・(1)
【0090】
上記式(1)中、Rは、炭素数1以上4以下のアルキル基を示し、R及びRは、それぞれ独立にメチル基又はエチル基を示す。「炭素数1以上4以下のアルキル基」は、直鎖状又は分岐状のアルキル基であることができ、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基であることができる。上記式(1)で表される化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0091】
多価アルコールとしては、1,2-アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(別名:プロパン-1,2-ジオール)、トリエチレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール等のアルカンジオール類)、1,2-アルカンジオールを除く多価アルコール(ポリオール類)(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール(別名:1,3-ブチレングリコール)、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン等)等が挙げられる。
【0092】
顔料インクは、上記例示した有機溶剤を一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。顔料インクに有機溶剤を配合する場合、顔料インク全体に対する有機溶剤の合計の含有量は、3.0質量%以上30.0質量%以下、好ましくは5.0質量%以上25.0質量%以下、より好ましくは10.0質量%以上20.0質量%以下である。
【0093】
(3)樹脂
顔料インクは、樹脂を含有してもよい。樹脂は、樹脂粒子のエマルジョンとして配合され得る。樹脂粒子は、記録媒体に付着させた顔料インクの成分の密着性や耐擦過性を向上させる、いわゆる定着用樹脂として機能する場合がある。このような樹脂粒子としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、フルオレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ロジン変性樹脂、テルペン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル系樹脂、エチレン酢酸ビニル系樹脂、酢酸ビニル樹脂、ブタジエン樹脂、スチレン樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋スチレン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、パラフィン樹脂、フッ素樹脂、等からなる樹脂粒子が挙げられる。これらの樹脂粒子は、エマルジョン形態で取り扱われることが多いが、粉体の性状であってもよい。また、樹脂粒子は1種単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0094】
ウレタン系樹脂とは、ウレタン結合を有する樹脂の総称である。ウレタン系樹脂には、ウレタン結合以外に、主鎖にエーテル結合を含むポリエーテル型ウレタン樹脂、主鎖にエステル結合を含むポリエステル型ウレタン樹脂、主鎖にカーボネート結合を含むポリカーボネート型ウレタン樹脂等を使用してもよい。ウレタン系樹脂としては、市販品を用いてもよく、例えば、スーパーフレックス 210、460、460s、840、E-4000(商品名、第一工業製薬株式会社製)、レザミン D-1060、D-2020、D-4080、D-4200、D-6300、D-6455(商品名、大日精化工業株式会社製)、タケラック WS-6020、WS-6021、W-512-A-6(商品名、三井化学ポリウレタン株式会社製)、サンキュアー2710(商品名、LUBRIZOL社製)、パーマリンUA-150(商品名、三洋化成工業社製)などの市販品の中から選択して用いてもよい。
【0095】
アクリル系樹脂は、少なくとも(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルなどのアクリル系単量体を1成分として重合して得られる重合体の総称であって、例えば、アクリル系単量体から得られる樹脂や、アクリル系単量体とこれ以外の単量体との共重合体などが挙げられる。例えばアクリル系単量体とビニル系単量体との共重合体であるアクリル-ビニル系樹脂などが挙げられる。さらに例えば、スチレンなどのビニル系単量体との共重合体が挙げられる。アクリル系単量体としてはアクリルアミド、アクリロニトリル等も使用可能である。
【0096】
アクリル系樹脂を原料とする樹脂エマルジョンには、市販品を用いてもよく、例えばFK-854(商品名、中央理科工業社製)、モビニール952B、718A(商品名、日本合成化学工業社製)、NipolLX852、LX874(商品名、日本ゼオン社製)、ポリゾールAT860(昭和電工株式会社製)、ボンコートAN-1190S、YG-651、AC-501、AN-1170、4001(商品名、DIC社製、アクリル系樹脂エマルジョン)等の中から選択して用いてもよい。
【0097】
なお、本明細書において、アクリル系樹脂は、上述のようにスチレンアクリル系樹脂であってもよい。また、本明細書において、(メタ)アクリルとの表記は、アクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味する。
【0098】
スチレンアクリル系樹脂は、スチレン単量体とアクリル系単量体とから得られる共重合体であり、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。スチレンアクリル系樹脂には、市販品を用いても良く、例えば、ジョンクリル62J、7100、390、711、511、7001、632、741、450、840、74J、HRC-1645J、734、852、7600、775、537J、1535、PDX-7630A、352J、352D、PDX-7145、538J、7640、7641、631、790、780、7610(商品名、BASF社製)、モビニール966A、975N(商品名、日本合成化学工業社製)などが挙げられる。
【0099】
塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体であってもよい。
【0100】
ポリオレフィン系樹脂は、エチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィンを構造骨格に有するものであり、公知のものを適宜選択して用いることができる。オレフィン樹脂としては、市販品を用いることができ、例えばアローベースCB-1200、CD-1200(商品名、ユニチカ株式会社製)等の中から選択して用いてもよい。
【0101】
また、樹脂粒子は、エマルジョンの形態で供給されてもよく、そのような樹脂エマルジョンの市販品の例としては、マイクロジェルE-1002、E-5002(日本ペイント社製商品名、スチレン-アクリル系樹脂エマルジョン)、ボンコートAN-1190S、YG-651、AC-501、AN-1170、4001、5454(DIC社製商品名、スチレン-アクリル系樹脂エマルジョン)、ポリゾールAM-710、AM-920、AM-2300、AP-4735、AT-860、PSASE-4210E(アクリル系樹脂エマルジョン)、ポリゾールAP-7020(スチレン・アクリル樹脂エマルジョン)、ポリゾールSH-502(酢酸ビニル樹脂エマルジョン)、ポリゾールAD-13、AD-2、AD-10、AD-96、AD-17、AD-70(エチレン・酢酸ビニル樹脂エマルジョン)、ポリゾールPSASE-6010(エチレン・酢酸ビニル樹脂エマルジョン)(昭和電工社製商品名)、ポリゾールSAE1014(商品名、スチレン-アクリル系樹脂エマルジョン、日本ゼオン社製)、サイビノールSK-200(商品名、アクリル系樹脂エマルジョン、サイデン化学社製)、AE-120A(JSR社製商品名、アクリル樹脂エマルジョン)、AE373D(イーテック社製商品名、カルボキシ変性スチレン・アクリル樹脂エマルジョン)、セイカダイン1900W(大日精化工業社製商品名、エチレン・酢酸ビニル樹脂エマルジョン)、ビニブラン2682(アクリル樹脂エマルジョン)、ビニブラン2886(酢酸ビニル・アクリル樹脂エマルジョン)、ビニブラン5202(酢酸アクリル樹脂エマルジョン)(日信化学工業社製商品名)、ビニブラン700、2586(日信化学工業社製)、エリーテルKA-5071S、KT-8803、KT-9204、KT-8701、KT-8904、KT-0507(ユニチカ社製商品名、ポリエステル樹脂エマルジョン)、ハイテックSN-2002(東邦化学社製商品名、ポリエステル樹脂エマルジョン)、タケラックW-6020、W-635、W-6061、W-605、W-635、W-6021(三井化学ポリウレタン社製商品名、ウレタン系樹脂エマルジョン)、スーパーフレックス870、800、150、420、460、470、610、620、700(第一工業製薬社製商品名、ウレタン系樹脂エマルジョン)、パーマリンUA-150(三洋化成工業株式会社製、ウレタン系樹脂エマルジョン)、サンキュアー2710(日本ルーブリゾール社製、ウレタン系樹脂エマルジョン)、NeoRez R-9660、R-9637、R-940(楠本化成株式会社製、ウレタン系樹脂エマルジョン)、アデカボンタイター HUX-380,290K(株式会社ADEKA製、ウレタン系樹脂エマルジョン)、モビニール966A、モビニール7320(日本合成化学株式会社製)、ジョンクリル7100、390、711、511、7001、632、741、450、840、74J、HRC-1645J、734、852、7600、775、537J、1535、PDX-7630A、352J、352D、PDX-7145、538J、7640、7641、631、790、780、7610(以上、BASF社製)、NKバインダーR-5HN(新中村化学工業株式会社製)、ハイドランWLS-210(非架橋性ポリウレタン:DIC株式会社製)、ジョンクリル7610(BASF社製)等の中から選択して用いてもよい。
【0102】
顔料インクに樹脂として樹脂粒子を含有させる場合の含有量は、インクの全質量に対して、固形分として、0.1質量%以上10.0質量%以下、好ましくは1.0質量%以上5.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以上3.0質量%以下である。
【0103】
(4)水
顔料インクは、水を含有してもよい。顔料インクは水系であることが好ましい。水系とは主要な溶媒成分の1つとして水を含有する組成物である。水は主となる溶媒成分として含んでもよく、乾燥により蒸発飛散する成分である。水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水又は超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものであることが好ましい。また、紫外線照射又は過酸化水素添加等により滅菌した水を用いると、顔料インクを長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を抑制できるので好適である。水の含有量は顔料インクの総量に対して好ましくは75.0質量%以上であり、より好ましくは80.0質量%以上98質量%以下であり、さらに好ましくは85.0質量%以上95.0質量%以下である。
【0104】
(5)その他
顔料インクは、その他の成分として、顔料分散剤、pH調整剤、防かび剤・防腐剤、キレート化剤、防錆剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤等を含有してもよい。
【0105】
顔料分散剤としては、インクジェット用のインクに使用可能な公知の樹脂をいずれも用いることができる。好適な顔料分散剤としては、親水性基には少なくともアニオン性基が含まれることが好ましい。親水性基としては、(メタ)アクリル酸やその塩などの親水性単量体によるものが挙げられる。また、疎水性基としては、スチレンやその誘導体、ベンジル(メタ)アクリレートなどの芳香環を有するモノマー、(メタ)アクリル酸エステルなどの脂肪族基を有するモノマー、などの疎水性単量体による官能基などが挙げられる。
【0106】
pH調整剤としては、例えば、尿素類、アミン類、モルホリン類、ピペラジン類、2種以上である等のアミノアルコール類、を例示できる。尿素類としては、尿素、エチレン尿素、テトラメチル尿素、チオ尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等、及び、ベタイン類(トリメチルグリシン、トリエチルグリシン、トリプロピルグリシン、トリイソプロピルグリシン、N,N,N-トリメチルアラニン、N,N,N-トリエチルアラニン、N,N,N-トリイソプロピルアラニン、N,N,N-トリメチルメチルアラニン、カルニチン、アセチルカルニチン等)等が挙げられる。アミン類としては、ジエタノールアミン、2種以上である、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。pH調整剤を含有することにより、例えば、インク流路を形成する部材からの不純物の溶出を抑制したり、促進したりすることができ、顔料インクの洗浄性を調節することができる。
【0107】
防かび剤・防腐剤としては、プロキセルCRL、プロキセルBDN、プロキセルGXL、プロキセルXL-2、プロキセルIB、又はプロキセルTNなどを挙げることができる。防かび剤・防腐剤を含有することにより、カビや細菌の増殖を抑制することができ、顔料インクの保存性がより良好となる。
【0108】
キレート化剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸塩(EDTA)や、エチレンジアミンのニトリロトリ酢酸塩、ヘキサメタリン酸塩、ピロリン酸塩、又はメタリン酸塩等が挙げられる。
【0109】
1.2.第1染料インク
本実施形態のインクセットには、第1染料インクが備えられる。インクセットに備えられる染料インクの数は、任意である、しかし、インクセットは、以下に説明する第1染料インクを備える。第1染料インクは、例えば、イエローの染料インクとしてインクセットに備えられる。本実施形態のインクセットに複数の染料インクが備えられる態様において備えられる第1染料インク以外の染料インクは、「1.3.第2染料インク」の項で後述する。
【0110】
第1染料インクは、下記式(y-1)で表される化合物又はその塩を含む。
【0111】
【化18】
(y-1)
【0112】
式(y-1)では、4つのスルホン酸基を含むが、それらはそれぞれ独立にスルホン酸塩の形態であってもよい。式(y-1)で表される化合物の塩のカウンターイオンとしては、水素イオン(プロトン)、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム等が挙げられ、4つのスルホン酸基におけるカウンターイオンは同じでも異なってもよい。式(y-1)で表される化合物又はその塩は、イエロー系の染料である。以下、「式(y-1)で表される化合物又はその塩」を、単に「(y-1)染料」という場合がある。
【0113】
発明者らは、イエロー系の染料インクを種々検討した結果、(y-1)染料を用いたインクは、イエロー系の他の染料を用いた染料インクと比較して、顔料インクと混合した場合に顔料インクの顔料の分散性を低下させにくいことを見出した。このような現象が生じるメカニズムの詳細は未だ不明であるが、(y-1)染料のトリアジン環に結合する3-メチル-4-ヒドロキシ-アミノ基の特性が影響していると発明者らは推定している。
【0114】
本実施形態のインクセットに第1染料インクが含まれることにより、インクセットに含まれる顔料インクに第1染料インクが接触しても顔料インクの分散性が良好に保たれる。この傾向は、顔料インクがブラックのインクである場合により顕著である。すなわち、ブラックの顔料インクとイエロー系の従来のインクとが接触した場合のほうが、他の色の顔料インクとイエロー系の従来のインクとが接触した場合よりも顔料の分散性の劣化が著しい。また、ブラックの顔料インクが、イエロー系の従来のインクとが接触した場合のほうが、他の色の従来の染料インクとが接触した場合よりも、顔料の分散性の劣化が著しい。したがって、イエロー系の染料インクにおいて、(y-1)染料を用いた本実施形態のインクセットでは、顔料インクの分散性を十分に良好に確保することができる。
【0115】
1.2.1.その他の染料
第1染料インクは、上記(y-1)染料の他に、下記式(y-2)で表される化合物又はその塩をさらに含んでもよい。
【0116】
【化19】
・・・(y-2)
【0117】
式(y-2)では、4つのカルボキシ基を含むが、それらはそれぞれ独立にカルボン酸塩の形態であってもよい。式(y-2)で表される化合物の塩のカウンターイオンとしては、水素イオン(プロトン)、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム等が挙げられ、4つのカルボキシ基におけるカウンターイオンは同じでも異なってもよい。式(y-2)で表される化合物又はその塩は、イエロー系の染料である。以下、「式(y-2)で表される化合物又はその塩」を、単に「(y-2)染料」という場合がある。
【0118】
また、第1染料インクは、上記(y-1)染料の他に、下記式(y-3)で表される染料をさらに含んでもよい。
【0119】
【化20】
・・・(y-3)
【0120】
式(y-3)では、4つのカルボキシ基を含むが、それらはそれぞれ独立にカルボン酸塩の形態であってもよい。式(y-3)で表される化合物の塩のカウンターイオンとしては、水素イオン(プロトン)、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム等が挙げられ、4つのカルボキシ基におけるカウンターイオンは同じでも異なってもよい。式(y-3)で表される化合物又はその塩は、イエロー系の染料である。以下、「式(y-3)で表される化合物又はその塩」を、単に「(y-3)染料」という場合がある。
【0121】
また、第1染料インクは、上記(y-1)染料の他に、下記式(y-4)で表される化合物又はその塩をさらに含んでもよい。
【0122】
【化21】
・・・(y-4)
【0123】
式(y-4)では、2つのスルホン酸基を含むが、それらはそれぞれ独立にスルホン酸塩の形態であってもよい。式(y-4)で表される化合物の塩のカウンターイオンとしては、水素イオン(プロトン)、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム等が挙げられ、2つのスルホン酸基におけるカウンターイオンは同じでも異なってもよい。式(y-4)で表される化合物又はその塩は、イエロー系の染料である。以下、「式(y-4)で表される化合物又はその塩」を、単に「(y-4)染料」という場合がある。
【0124】
また、第1染料インクは、上記(y-1)染料の他に、C.I.ダイレクトイエロー86をさらに含んでもよい。さらに、第1染料インクは、上記(y-1)染料の他に、C.I.ダイレクトイエロー132をさらに含んでもよい。
【0125】
C.I.ダイレクトイエロー86及びC.I.ダイレクトイエロー132は、いずれもイエロー系の染料であり。試薬又は製品として市販品を用いることができる。
【0126】
第1染料インクは、(y-2)染料、(y-3)染料、(y-4)染料、C.I.ダイレクトイエロー86及びC.I.ダイレクトイエロー132から選ばれる染料を1種又は2種以上含んでもよい。しかしこの場合には、第1染料インクにおける(y-1)染料の含有量が、第1染料インクに含まれる染料の全量に対して、60.0質量%以上99.0質量%以下であることが好ましく、60.0質量%以上90.0質量%以下であることがより好ましく、70.0質量%以上90.0質量%以下であることがさらに好ましく、80.0質量%以上90.0質量%以下であることがことさら好ましい。
【0127】
上述の(y-1)染料は、イエロー系の色を呈するが、わずかに赤色に偏っている。これに対して(y-2)染料、(y-3)染料、(y-4)染料、C.I.ダイレクトイエロー86及びC.I.ダイレクトイエロー132は、イエロー系であってわずかに緑色に偏っている。そのため、これらの染料を第1染料インクが含むことにより、インクセットの色表現範囲を広げることができる場合がある。
【0128】
さらにこの場合において、第1染料インクにおける(y-1)染料の含有量が、第1染料インクに含まれる染料の全量に対して、60.0質量%以上99.0質量%以下であれば、顔料インクと接した場合の顔料インクの成分の凝集を起こしにくく、かつ、色表現範囲を広げることができるので好ましい。
【0129】
なお、第1染料インクには、その他のイエロー系の染料が含まれてもよいが、色表現範囲を広げる効果は、上記(y-2)染料、(y-3)染料、(y-4)染料、C.I.ダイレクトイエロー86及びC.I.ダイレクトイエロー132に比較すれば、小さいと考えられる。しかし、第1染料インクに、その他のイエロー系の染料に用いる場合においても、第1染料インクにおける(y-1)染料の含有量が、第1染料インクに含まれる染料の全量に対して、60.0質量%以上99.0質量%以下とすることが好ましい。
【0130】
1.2.2.その他の成分
第1染料インクは、界面活性剤、有機溶剤、水、その他の成分を含有してもよい。界面活性剤、有機溶剤、水、その他の成分については、上記「1.1.顔料インク」の項で述べたと同様であり、「顔料インク」を「第1染料インク」と読み替えるものとして説明を省略する。なお、第1染料インクは、顔料インクと異なり、顔料を含有しないので、顔料を定着させるための樹脂、及び、顔料を分散させるための顔料分散剤は、必要がなければ含有されなくてよい。
【0131】
第1染料インクに含まれる(y-1)染料は、その構造上、他のイエロー系の染料に比較して疎水性が高いと考えられる。そのため、第1染料インクには、sp値が12.5以下の有機溶剤を5.0質量%以上含有させることが好ましい。これにより、(y-1)染料の溶解性を高め、長期放置により染料がヘッド内で析出することによって生じるノズル詰まりを防ぐことが出来る。またそのような有機溶剤のsp値は、11.0以下がより好ましく、10.5以下がさらに好ましい。また、そのような有機溶剤の含有量は、7.0質量%以上がより好ましく、10.0質量%以上がさらに好ましい。
【0132】
有機溶剤の「sp値」とは、相溶化パラメーター(Solubility Parameter)といい、溶解度パラメーターとも言うことができる。sp値は、以下に示されるハンセン(Hansen)の数式を用いて算出された値を意味する。Hansenの溶解度パラメーターは、ヒルデブランド(Hildebrand)によって導入された溶解度パラメーターを、分散項δd、極性項δp、及び水素結合項δhの3成分に分割し、3次元空間に表したものである。本明細書においては、sp値を[(cal/cm1/2]単位で表し、下記数式を用いて算出される値を用いる。
sp値[(cal/cm1/2]=(δd+δp+δh1/2
【0133】
上記の分散(力)項δd、双極子間力(極性)項δp、及び水素結合(力)項δhは、ハンセンやその研究後継者らによって多く求められており、例えばPolymer Handbook(fourth edition)のVII-698~711に掲載されている。また、多くの溶媒や樹脂に関するHansenの溶解度パラメーターが調べられており、例えば、Industrial Solvents Handbook(Wesley L.Archer著)、「色材,77[4],188-192(2004)」等に典型的な溶解度パラメーターが記載されている。これらの値を用いて有機溶剤のsp値を求めることができる。
【0134】
1.3.第2染料インク
本実施形態のインクセットには、複数の染料インクが備えられてもよく、上述の第1染料インク以外に第2染料インクが備えられてもよい。また、第2染料インクは、インクセットに複数備えられてもよい。上述したように第1染料インクは、イエロー系のインクである。そのため、第2染料インクは、イエロー系以外の染料インクであることが好ましい。以下では、イエロー系以外の染料インクを第2染料インクとして説明する。
【0135】
第2染料インクは、イエロー系以外の染料、界面活性剤、有機溶剤、水、その他の成分を含有してもよい。界面活性剤、有機溶剤、水、その他の成分については、上記「1.1.顔料インク」の項で述べたと同様であり、「顔料インク」を「第2染料インク」と読み替えるものとして説明を省略する。なお、第2染料インクは、顔料インクと異なり、顔料を含有しないので、顔料を定着させるための樹脂、及び、顔料を分散させるための顔料分散剤は、必要がなければ含有されなくてよい。
【0136】
インクセットに備えられる第2染料インクの数は、任意である。第1染料インクがイエロー系のインクであるので、インクセットに備えられる第2染料インクは、例えば、シアンインク、マゼンタインクとすることが好ましい。既に述べたようにイエロー系の染料インクは、上述の第1染料インクのように(y-1)染料を含まないと顔料インクの分散性を劣化させる恐れがあるからである。
【0137】
以下では、第2染料インクとしてのシアンインク及びマゼンタインクを説明する。また、シアンインク及びマゼンタインクであっても、それぞれ顔料インクの分散性を低下させにくいことが好ましく、それぞれ好ましい染料がある。
【0138】
1.3.1.シアンインク
シアンインクは、シアン系の染料を含有する。
シアン系の染料としては、
下記式(c-1)で表される化合物又はその塩、
【0139】
【化22】
・・・(c-1)
【0140】
下記式(c-2)で表される化合物又はその塩、
【0141】
【化23】
・・・(c-2)
【0142】
下記式(c-3)で表される化合物又はその塩、
【0143】
【化24】
・・・(c-3)
【0144】
(式(c-3)中、bは、0≦b≦4を満たし、cは、0≦c≦4を満たし、b+cは、1≦(b+c)≦4を満たす整数を表し、環A、A及びAは、それぞれ、ベンゼン環、2,3-ピリジン環及び3,2-ピリジン環から選択され、かつ、環A、A及びAの少なくとも一つは、2,3-ピリジン環又は3,2-ピリジン環であり、環A、A及びAは同一でも異なっていてもよい。)
【0145】
下記式(c-4)で表される化合物又はその塩、
【0146】
【化25】
・・・(c-4)
【0147】
下記式(c-5)で表される化合物又はその塩、
【0148】
【化26】
・・・(c-5)
【0149】
(式(c-5)中、環A、A及びAは、それぞれ、ベンゼン環、2,3-ピリジン環及び3,2-ピリジン環から選択され、かつ、環A、A及びAの少なくとも一つは、2,3-ピリジン環又は3,2-ピリジン環であり、環A、A及びAは同一でも異なっていてもよく、aは、1.0≦a≦3.0を満たし、bは、0.2≦b≦1.8を満たし、cは、0.8≦c≦1.6を満たし、かつ、a、b及びcは、0≦a+b+c≦4を満たし、xは、1≦z≦3を満たす整数であり、Rは、炭素原子数1以上6以下の直鎖アルキレン基である。)
【0150】
下記式(c-6)で表される化合物又はその塩、
【0151】
【化27】
・・・(c-6)
【0152】
(式(c-6)中、環A、B、C、及びDはそれぞれ独立に芳香性を有する6員環であり、かつ、環A、B、C、及びDの少なくともひとつはピリジン環又はピラジン環である。Eはアルキレン基である。Xは、スルホ置換アニリノ基、カルボキシ置換アニリノ基、又はホスホノ置換アニリノ基であり、該置換アニリノ基はさらに、スルホン酸基、カルボキシ基、ホスホノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アセチルアミノ基、ウレイド基、アルキル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン、アルキルスルホニル基、及びアルキルチオ基からなる群から選ばれる置換基を1乃至4個有してもよい。Yはヒドロキシ基又はアミノ基である。aは、0.0≦a≦2.0を満たし、bは、0.0≦b≦3.0を満たし、cは、0.1≦c≦3.0を満たし、かつ、a、b及びcは、1.0≦a+b+c≦4.0を満たす。)
【0153】
下記式(c-7)で表される化合物又はその塩、
【0154】
【化28】
・・・(c-7)
【0155】
(式(c-7)中、環A、B、C及びDは、それぞれ独立に、ベンゼン環又は含窒素複素芳香環を表し、かつ、前記含窒素複素芳香環の数は0.0より大きく3.0以下であるとともに残りはベンゼン環である。Rはアルキル基を表し、Rはアルキレン基を表し、Xは1以上のスルホン酸基を有するアニリノ基を表す。Xはカルボキシ基、リン酸基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニルアミノ基、ウレイド基、ニトロ基、及びハロゲン原子からなる群より選択される置換基をさらに有してもよい。mは、0.0<m<3.9であり、nは、0.1≦n<4.0であり、かつ、m及びnは、1.0≦(m+n)<4.0である。)
【0156】
下記式(c-8)で表される化合物又はその塩、
【0157】
【化29】
・・・(c-8)
【0158】
(式(c-8)中、RないしR24は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、アシル基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、スルホン酸基、カルボン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルコキシスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシスルホニル基、又はアリールオキシカルボニル基を表し、以下の(X)及び(Y)の少なくとも一方を満たす。(X)RないしR24の少なくとも1つが、スルホン酸基、又はカルボン酸基である。(Y)R、R、R、R、R16、R17、R18、及びR19の少なくとも1つが、ハロゲン原子、アシル基、ニトロ基、又はシアノ基である。)
【0159】
下記式(c-9)で表される化合物又はその塩、
【0160】
【化30】
・・・(c-9)
【0161】
(式(c-9)中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、R、R、R、及びRの少なくとも1つにはイオン性基が置換している。w、x、y、及びzは、それぞれ独立に1又は2を表す。)
及び、
C.I.ダイレクトブルー199から選択される1種又は2種以上、であることが好ましい。
【0162】
式(c-A)(Aは、1~9の数字)で表される化合物の塩のカウンターイオンとしては、水素イオン(プロトン)、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム等が挙げられ、各基におけるカウンターイオンは同じでも異なってもよい。式(c-A)で表される化合物又はその塩は、シアン系の染料である。以下、「式(c-A)で表される化合物又はその塩」を、単に「(c-A)染料」という場合がある。
【0163】
また、シアン系の染料としては、C.I.ダイレクトブルー1、2、15、71、86、87、98、165、202、等を用いてもよいが、上記の好ましい染料を主たる染料として用いることが好ましい。
【0164】
1.3.2.マゼンタインク
マゼンタインクは、マゼンタ系の染料を含有する。
【0165】
マゼンタ系の染料としては、
下記式(m-1)で表される化合物又はその塩、
【0166】
【化31】
・・・(m-1)
【0167】
下記式(m-2)で表される化合物又はその塩、
【0168】
【化32】
・・・(m-2)
【0169】
下記式(m-3)で表される化合物又はその塩、
【0170】
【化33】
・・・(m-3)
【0171】
(式(m-3)中、R、R、R及びR10は、それぞれ独立に、アルキル基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、又はアリールオキシ基を表し、アルキル基、アルコキシ基、及びアリールオキシ基は、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、ヒドロキシル基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、及びイオン性基からなる置換基群より選択される少なくとも1種の置換基を有していてもよい。R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は下記式(m-3’)で表されるアシルアミノ基を表し、R、R、R及びRの少なくとも1つは下記式(m-3’)で表されるアシルアミノ基である。Zは、SOH基、SOM基(Mはアンモニウムイオン又はアルカリ金属イオンを表す)、又はスルファモイル基を表す。R、R、R、R、R及びRの少なくとも1つが、イオン性基で置換されている場合には、nは0乃至3の整数を表し、イオン性基で置換されていない場合には、nは1ないし3の整数を表し、Zが存在する場合は芳香環の少なくとも1つの水素原子の位置に置換している。)
【0172】
【化34】
・・・(m-3’)
【0173】
(式(m-3’)中、R11は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、又はヘテロ環基を表し、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、及びヘテロ環基は、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、シアノ基、アルキルアミノ基、スルホアルキル基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニルアミノ基、ハロゲン原子、及びイオン性基からなる置換基群より選択される少なくとも1種の置換基を有していてもよい。*は式(m-3)の芳香環との結合部位を表す。)
及び、
C.I.ダイレクトレッド227から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
【0174】
式(m-B)(Bは、1~3の数字)で表される化合物の塩のカウンターイオンとしては、水素イオン(プロトン)、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム等が挙げられ、各基におけるカウンターイオンは同じでも異なってもよい。式(m-B)で表される化合物又はその塩は、シアン系の染料である。以下、「式(m-B)で表される化合物又はその塩」を、単に「(m-B)染料」という場合がある。
【0175】
また、マゼンタ系の染料としては、C.I.ダイレクトレッド1、4、9、80、81、225、C.I.アシッドレッド52、80、82、249、254、289、を用いてもよいが、上記の好ましい染料を主たる染料として用いることが好ましい。
【0176】
本実施形態のインクセットは、顔料インクと、第1染料インクと、第2染料インクとして上述したシアンインクと、第2染料インクとして上述したシアンインクと、を含んでもよい。インクセットをこのように構成することにより、顔料インクと染料インクとが接触しても顔料インクの分散安定性を阻害しにくくすることができる。
【0177】
1.4.インクの物性等
顔料インク、第1染料インク及び第2染料インクは、紙、フィルム、布帛等の記録媒体にインクジェット法により付着されることが好ましい。そのため、各インクの粘度は、20℃において、1.5mPa・s以上15.0mPa・s以下とすることが好ましく、1.5mPa・s以上5.0mPa・s以下とすることがより好ましく、1.5mPa・s以上3.6mPa・s以下とすることがより好ましい。各インクが、インクジェット法によって記録媒体に付着される場合、所定の画像を効率的に形成することが容易である。
【0178】
顔料インク、第1染料インク及び第2染料インクは、記録媒体への濡れ拡がり性を適切なものとする観点から、25.0℃における表面張力が、40.0mN/m以下、好ましくは38.0mN/m以下、より好ましくは35.0mN/m以下、さらに好ましくは30.0mN/m以下であることが好ましい。なお、表面張力の測定は、自動表面張力計CBVP-Z(協和界面科学社製)を用いて、25.0℃の環境下で白金プレートを組成物で濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
【0179】
2.実施例及び比較例
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下、「部」「%」は、特に記載のない限り、質量基準である。
【0180】
2.1.染料インク及び顔料インクの調製
表1に示す材料組成にて、材料組成の異なるイエロー染料インクY1~Y15、表2に示す材料組成にて、材料組成の異なるマゼンタ染料インクM1~M7、表3に示す材料組成にて、材料組成の異なるシアン染料インクC1~C10、及び、表4に示す材料組成にて、材料組成の異なるブラック顔料インクBk1~Bk2を調製した。各インクは、表1~表4に示す材料を容器中に入れ、マグネチックスターラーにて2時間撹拌混合した後、孔径5μmのメンブランフィルターにて濾過してゴミや粗大粒子等の不純物を除去することにより調製した。なお、表1~表4中の数値は、全て質量%を示し、純水はインクの全質量が100質量%となるように添加した。
【0181】
【表1】
【0182】
【表2】
【0183】
【表3】
【0184】
【表4】
【0185】
表1~表4中には、各インクに含まれるLi/Na/Kの合計値を記載した。各インクに含まれるイオン量については以下の条件で島津製作所製イオンクロマトグラフにて測定した。
・使用カラム:島津製作所製イオン交換樹脂(Shim-pack IC-C4)
・移動相:シュウ酸溶液(2.5mmol/L)
・流量:1.0 mL/min
・試料注入量:50μL
・カラム温度:40℃
・サプレッサ:電気透析形
・検出器:電気伝導度検出器(30℃)
なお、表中のイオン量の単位はppmである。
【0186】
表1~表4中の主な材料は以下の通りである。
・(y-1)~(y-4):それぞれ上記(y-1)染料~(y-4)染料であり、(y-1)、(y-3)、(y-4)についてはナトリウム塩、(y-2)についてはナトリウム及びカリウムの塩を用いた。
・(y-5)は、下記式(y-5)で表される化合物を用いた。
【0187】
【化35】
(y-5)
【0188】
・DY86:C.I.ダイレクトイエロー86
・DY132:C.I.ダイレクトイエロー132
・(m-1)~(m-3):それぞれ上記(m-1)染料~(m-3)染料であり、(m-1)についてはナトリウム塩、(m-2)についてはリチウム及びナトリウムの塩とした。
・(m-3)については、
(式(m-3)中、R、R、R、R、R及びR10は、メチル基を表す。R及びRは、式(m-3’)で、R11がn-Pr又はn-Buで表される基を表し、R及びRは水素原子を表す。Zは、-SOH基を表す。nは2を表し、Zは、キサンテン骨格の2位及び7位の水素原子の位置に置換している。)
を満たす化合物とした。
・RR141:C.I.リアクティブレッド141
・AR249:C.I.アシッドレッド249
・AR289:C.I.アシッドレッド289
・DR227:C.I.ダイレクトレッド227
【0189】
・(c-1)~(c-9):それぞれ上記(c-1)染料~(c-9)染料であり、(c-1)~(c-3)についてはリチウム及びナトリウムの塩、(c-4)~(c-9)についてはナトリウム塩を用いた。
【0190】
・(c-3)については、
(式(c-3)中、bは、0≦b≦4を満たし、cは、0≦c≦4を満たし、b+cは、1≦(b+c)≦4を満たす整数を表し、環A、A、Aは、それぞれ、ベンゼン環、2,3-ピリジン環及び3,2-ピリジン環から選択され、かつ、環A、A及びAの少なくとも一つは、2,3-ピリジン環又は3,2-ピリジン環であり、環A、A及びAは同一でも異なっていてもよい。)
を満たす化合物とした。
【0191】
・(c-5)については、
(式(c-5)中、環A、A及びAは、それぞれ独立に、2,3-ピリジン環及び/又は3,2-ピリジン環であり、aは、1.0であり、bは、1.8であり、cは、1.2であり、a、b及びcは、混合物における平均値である。また、Rが、-C12-で表される。)
を満たす化合物とした。
【0192】
・(c-6)については、
(式(c-6)中、環Aは、2,3-ピリド、環B、C、及びDは、ベンゾ、Eはエチレン基である。Xは、2,5-ジスルホアニリノ基であり、Yはアミノ基である。aは、0であり、bは、2であり、cは、1である。)
を満たす化合物とした。
【0193】
・(c-7)については、
(式(c-7)中、環Aは、2,3-ピリド、環B、C及びDは、ベンゾ、Rはメチル基を表し、Rはエチレン基を表し、Xは、2,5-ジスルホアニリノ基であり、mは約2.8、nは約0.2、m+nは約3.0である。)
を満たす化合物とした。
【0194】
・(c-8)については、
(式(c-8)中、R、R、R、R11、R13、R15は、メチル基を表し、Rは、R12は、-NHCOiPr基又は-NHCOCCOOH基を表し、R、R、R、R、R、R10、R14、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R23、R24は、水素原子を表し、R22は、-SOH基を表す。)
を満たす化合物とした。
【0195】
・(c-9)については、
(式(c-9)中、R、R、R、及びRは、-(CHSOH基を表し、w、x、y、及びzは、1を表す。)
を満たす化合物とした。
【0196】
・DB199:C.I.ダイレクトブルー199
・サーフィノール104PG50:(商品名、エア・プロダクツ&ケミカルズ社製):アセチレングリコール系界面活性剤
・オルフィンE1010:(商品名、日信化学工業社製):アセチレングリコール系界面活性剤
・プロキセル:プロキセルXL2:(商品名、RONZA社製):防かび剤・防腐剤
・EDTA:エチレンジアミン四酢酸2ナトリウム(試薬):キレート化剤
・樹脂エマルジョン:スチレンアクリル酸共重合体(Tg:80℃、重量平均分子量:290000、BASFジャパン社製)
【0197】
2.2.評価方法
2.2.1.各染料インクの耐オゾン性の評価
表5に示す各例のインクセットをインクジェットプリンター(商品名「EW-M660FT」、セイコーエプソン株式会社製)に装填し、記録媒体(写真用紙(光沢)、型番「EPSON写真用紙<光沢>」、セイコーエプソン株式会社製)に対して、色毎にベタパターン画像の記録を行い、評価サンプルを得た。ベタパターン画像の記録は、得られた画像のOD(Optical Density)が1.0となるようにDutyを調整して行った。
【0198】
得られた評価サンプルをオゾンウェザーメーターOMS-L型(商品名、スガ試験機株式会社製)に設置して、温度23℃、湿度50%RH、およびオゾン濃度5ppmの条件下で、所定時間オゾンによる曝露試験を行った。
【0199】
その後、測色器(商品名「Xrite i1」、Xrite社製))を使用して、サンプルに記録された画像のオゾン曝露前後のOD値を測定した。OD値の測定は、光源がD50、視野角2°、シアンにはRed、マゼンタにはGreen、イエローにはBlueのフィルターを用いて行った。ブラックインク(顔料インク)は評価を行わなかった。
【0200】
なお、耐オゾン性の評価は、得られた測定値(OD値)から、曝露試験後の各評価サンプルの画像の光学濃度残存率(Relict Optical Density:ROD)求めることにより行った。RODの算出方法は、「ROD(%)=(Dn/Do)×100(式中、Dnは曝露試験終了後の画像のOD値、Doは曝露試験開始前の画像のOD値)」である。
【0201】
OD値が、MAX(2.0)付近、1.5、1.0、0.5の4ポイントでのRODで以下の評価基準で判断し、表1~表4に評価結果を記載した。
【0202】
A:RODが80時間経過時までに70%まで減少しない。
B:RODが40時間経過時までに70%まで減少しない。
C:RODが16時間経過時までに70%まで減少しない。
D:RODが16時間経過前に70%まで減少する。
【0203】
2.2.2.各染料インクの耐光性の評価
耐オゾン性評価と同様にして得られた評価サンプルを、キセノンウェザーメーター(商品名:XL75S、スガ試験機株式会社製)を使用し、温度が23℃、湿度が50%RH、照度75kluxの条件下で曝露試験を行った。
【0204】
その後、測色器(商品名「Xrite i1」、Xrite社製))を使用して、耐オゾン性評価と同様にして、OD値が、MAX(2.0)付近、1.5、1.0、0.5の4ポイントでのRODで以下の評価基準で判断し、表1~表4に評価結果を記載した。
【0205】
A:RODが50000klx・h経過時までに70%まで減少しない。
B:RODが30000klx・h経過時までに70%まで減少しない。
C:RODが20000klx・h経過時までに70%まで減少しない。
D:RODが20000klx・h経過前に70%まで減少する。
【0206】
2.2.3.各染料インクの耐湿性の評価
上記インクジェットプリンター(商品名「EW-M660FT」、セイコーエプソン株式会社製)を用いて、各インク、Cyan、Magenta、Yellow、Blackの色の文字、及び白抜き文字(各色のベタ画像に、白抜きで文字を形成したもの)並びに各インク用いた自然画を、記録媒体(写真用紙(光沢)、型番「EPSON写真用紙<光沢>」、セイコーエプソン株式会社製)に、40℃、85%RH環境下で印刷し、24℃、50%RH環境下で24時間乾燥した。次いで、これらを光の当たらない35℃、85%RHの環境下に静置した。この環境で4日間静置後、文字及び白抜き文字の滲みの程度を観察し、以下の基準にしたがって評価を行なった。
【0207】
A:目視及び光学顕微鏡で観察しても滲みが全く観察されない。
B:目視では滲みがないが光学顕微鏡で滲みが観察されない。
C:-
D:目視において滲みが観察され、文字太りや白抜き文字の染まりが見られる。
【0208】
2.2.4.各染料インクの普通紙における発色性(普通紙OD)の評価
耐オゾン性評価と同様にして得られた評価サンプルのOD値を同様に測定してその値を用いて発色性を評価した。サンプルは、インクジェットプリンター(商品名「EW-M660FT」、セイコーエプソン株式会社製)にて普通紙(Xerox 4200:商品名、富士ゼロックス社製)に印刷したパターンとし、単色/二次色のパターンを印刷後、OD値、Labを測色し、Gamut体積を計算した。印刷環境は、25℃、40%RHとし、測定機は同様とした。以下の評価基準で評価して、結果を表1~表4に記載した。
【0209】
A:OD値が2.0以上
B:OD値が1.9以上2.0未満
C:OD値が1.8以上1.9未満
D:OD値が1.8未満
【0210】
2.2.5.各染料インクのCL誘発の評価
表1~表3に示す各染料インクと表4に示す顔料インクBk-1をインクジェットプリンター(商品名「EW-M660FT」、セイコーエプソン株式会社製)に装填し、25℃、40%RHにてノズルチェックパターンを印字して、全ノズルが正常吐出することを確認した。その後ヘッドクリーニングを1回動作させた後、そのまま30分間室温放置した。再度ノズルチェックパターンを印字した時のノズル抜け本数を観察した。この一連動作を3回実施し、3回の平均ノズル抜け本数を算出して、以下の基準で判定した。なお、前記プリンターのヘッドクリーニング動作にはワイパ部材でノズル面を拭くワイピング動作が含まれているため、顔料インクと染料インクが混合することになる。評価基準は以下の通りであり、評価結果を表1~表3に記載した。
【0211】
[判定基準]
A:成功率が90%以上
B:成功率が80%以上90%未満
C:成功率が70%以上80%未満
D:成功率が70%未満
【0212】
2.2.6.各染料インクの溶解性の評価
各染料インクの溶解性を以下のように評価した。イエローインク、マゼンタインク、シアンインクを調製後、スポイトにてインクを1滴スライドガラスに適下後、カバーガラスを被せて40℃環境にて1日放置後に固化物が析出しているか顕微鏡にて確認を行い、下記判定基準により、溶解安定性を評価した。
A:固化物が発生していない。
B:カバーガラスの端部に固化物が発生している。
C:カバーガラス中央部まで固化物が発生している
【0213】
2.2.7.インクセットの耐オゾン性の評価
単色での耐オゾン性評価結果から、以下の評価基準を基に、インクセットとしての耐オゾン性の評価を行い、結果を表5に記載した。
A:耐オゾン性評価結果が、3色について全てAである。
B:耐オゾン性評価結果が、3色のうち1種以上でBランクのインクが存在する。
C:耐オゾン性評価結果が、3色のうち1種以上でCランクのインクが存在する。
D:耐オゾン性評価結果が、3色のうち1種以上でDランクのインクが存在する。
【0214】
2.2.8.インクセットの耐光性の評価
単色での耐光性評価結果から、以下の評価基準を基に、インクセットとしての耐オゾン性の評価を行い、結果を表5に記載した。
A:耐光性評価結果が、3色について全てAである。
B:耐光性評価結果が、3色のうち1種以上でBランクのインクが存在する。
C:耐光性評価結果が、3色のうち1種以上でCランクのインクが存在する。
D:耐光性評価結果が、3色のうち1種以上でDランクのインクが存在する。
【0215】
2.2.9.インクセットの耐湿性の評価
単色での耐湿性評価結果から、以下の評価基準を基に、インクセットとしての耐オゾン性の評価を行い、結果を表5に記載した。
A:耐湿性評価結果が、3色について全てAである。
B:耐湿性評価結果が、3色のうち1種以上でBランクのインクが存在する。
C:耐湿性評価結果が、3色のうち1種以上でCランクのインクが存在する。
D:耐湿性評価結果が、3色のうち2種以上でDランクのインクが存在する。
【0216】
2.2.10.インクセットのGamut彩度の評価
普通紙における発色性(普通紙OD)の評価で得たGamut体積を以下の基準にて評価して結果を表5に記載した。
A:ガマット体積が160000以上
B:ガマット体積が155000以上160000未満
C:ガマット体積が150000以上155000未満
D:ガマット体積が145000以上150000未満
【0217】
2.2.11.インクセットのCL誘発の評価
表1~表3に示す各染料インクと表4に示す顔料インクBk-1をインクジェットプリンター(商品名「EW-M660FT」、セイコーエプソン株式会社製)に装填し、25℃、40%RHにてノズルチェックパターンを印字して、全ノズルが正常吐出することを確認した。その後ヘッドクリーニングを1回動作させた後、そのまま30分間室温放置した。再度ノズルチェックパターンを印字した時のノズル抜け本数を観察した。この一連動作を3回実施し、3回の平均ノズル抜け本数を算出して、以下の基準で判定した。なお、前記プリンターのヘッドクリーニング動作にはワイパ部材でノズル面を拭くワイピング動作が含まれているため、顔料インクと染料インクが混合することになる。評価基準は以下の通りであり、評価結果を表5に記載した。
A:成功率が90%以上
B:成功率が80%以上90%未満
C:成功率が70%以上80%未満
D:成功率が70%未満
【0218】
【表5】
【0219】
2.3.評価結果
表5に示されるように、顔料インクと、(y-1)染料を含む染料インクと、を備えた各実施例のインクセットは、CL誘発の評価が良好であった。これに対して(y-1)染料を含まない染料インクを用いた比較例のインクセットは、CL誘発の評価が不良であった。
【0220】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。