(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】電動アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H02K 7/116 20060101AFI20230301BHJP
H02K 7/04 20060101ALI20230301BHJP
F16H 1/32 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
H02K7/116
H02K7/04
F16H1/32 A
(21)【出願番号】P 2019016461
(22)【出願日】2019-01-31
【審査請求日】2021-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】日本電産トーソク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【氏名又は名称】梶原 慶
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】金城 秀一
(72)【発明者】
【氏名】白井 寛
(72)【発明者】
【氏名】上松 豊
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-045723(JP,A)
【文献】特開平04-327047(JP,A)
【文献】特開2001-218418(JP,A)
【文献】特開平07-163086(JP,A)
【文献】特開平05-083902(JP,A)
【文献】特開2001-25826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/116
H02K 7/04
F16H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸に沿って延びるモータシャフトを有するロータ、および前記ロータと径方向に対向するステータを有するモータと、
前記ステータの軸方向一方側に配置され、前記モータシャフトに連結される減速機構と、を備え、
前記モータシャフトは、前記中心軸に対して偏心した偏心軸を中心とし、前記減速機構に連結される偏心軸部を有し、
前記偏心軸部は、前記偏心軸部のうち径方向において前記中心軸から前記偏心軸へ向かう所定方向の端部に配置され、前記偏心軸部の外
周面から窪むバランス凹部を有
し、
前記偏心軸部は、前記偏心軸部の軸方向の端部に配置され、軸方向端部側へ向かうに従い径方向内側に位置するテーパ面部を有し、
前記テーパ面部は、前記所定方向の端部の軸方向の寸法が、前記所定方向の端部以外の部分の軸方向の寸法よりも大きく、
前記バランス凹部は、前記テーパ面部の前記所定方向の端部に配置される、
電動アクチュエータ。
【請求項2】
前記バランス凹部は、前記偏心軸部の前記所定方向の端部に配置される溝である、
請求項1に記載の電動アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
電動アクチュエータは、モータシャフトを有するモータと、減速機構と、出力シャフトと、を備える。特許文献1の電動アクチュエータは、モータの出力をギヤ装置を介してねじ軸に伝達する。ギヤ装置は、軸心を一致させた入力軸と出力軸との間に配置された二つの歯車によって、一段の減速を行う。入力軸には偏芯部が設けられ、偏芯部にはウエイト部が固定される。ウエイト部を設けることで、偏芯運動を行うプラネタギアのバランスを回復させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
より簡素な構造によって、偏芯軸部の回転バランスを向上させることが求められている。
【0005】
上記事情に鑑み、本発明は、簡素な構造により、偏芯軸部の回転バランスを向上することができる電動アクチュエータを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動アクチュエータの一つの態様は、中心軸に沿って延びるモータシャフトを有するロータ、および前記ロータと径方向に対向するステータを有するモータと、前記ステータの軸方向一方側に配置され、前記モータシャフトに連結される減速機構と、を備える。前記モータシャフトは、前記中心軸に対して偏心した偏心軸を中心とし、前記減速機構に連結される偏心軸部を有する。前記偏心軸部は、前記偏心軸部のうち径方向において前記中心軸から前記偏心軸へ向かう所定方向の端部に配置され、前記偏心軸部の外面から窪むバランス凹部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様の電動アクチュエータによれば、簡素な構造により、偏芯軸部の回転バランスを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態の電動アクチュエータの縦断面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の電動アクチュエータの横断面図であり、
図1のII-II断面を示す。
【
図3】
図3は、モータシャフトの偏心軸部近傍を示す側面図である。
【
図5】
図5は、減速機構ケースを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態の電動アクチュエータ10について、図面を参照して説明する。各図においてZ軸方向は、正の側を上側とし、負の側を下側とする上下方向である。各図に適宜示す中心軸J1の軸方向は、Z軸方向、すなわち上下方向と平行である。以下の説明においては、中心軸J1の軸方向と平行な方向を単に「軸方向Z」と呼ぶ。また、各図に適宜示すX軸方向およびY軸方向は、軸方向Zと直交する水平方向であり、互いに直交する方向である。以下の説明においては、X軸方向と平行な方向を「第1方向X」と呼び、Y軸方向と平行な方向を「第2方向Y」と呼ぶ。
【0010】
また、中心軸J1を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸J1を中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。本実施形態において、上側は、軸方向他方側に相当し、下側は、軸方向一方側に相当する。なお、上下方向、水平方向、上側および下側とは、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
【0011】
図1に示すように、実施形態の電動アクチュエータ10は、ケース11と、ベアリングホルダ100と、中心軸J1に沿って延びるモータシャフト21を有するモータ20と、制御部70と、コネクタ部80と、減速機構30と、出力部40と、配線部材90と、回転検出装置60と、第1ベアリング(ベアリング)55と、第2ベアリング56と、第3ベアリング57と、第4ベアリング58と、を備える。第1ベアリング55、第3ベアリング57および第4ベアリング58は、例えば、ボールベアリングである。第2ベアリング56は、滑り軸受である。
【0012】
ケース11は、モータ20および減速機構30を収容する。ケース11は、モータ20が収容されるモータケース12と、減速機構30が収容される減速機構ケース13と、を有する。すなわち、電動アクチュエータ10は、モータケース12と、減速機構ケース13と、を備える。モータケース12は、下側に開口する開口部12gを有し、減速機構ケース13は、上側に開口する開口部13hを有する。モータケース12と減速機構ケース13とは、開口部12gと開口部13hとが軸方向Zに対向した状態で互いに固定される。モータケース12と減速機構ケース13とが互いに固定された状態において、開口部12gの内部と開口部13hの内部とは、互いに繋がる。
【0013】
モータケース12は、減速機構ケース13の上側に開口する開口部13hを覆って、減速機構ケース13の上側に配置される。本実施形態ではモータケース12に、モータ20、制御部70、ベアリングホルダ100および第4ベアリング58が収容される。
【0014】
モータケース12は、ケース筒部12aと、壁部12bと、制御基板収容部12fと、蓋体12cと、端子保持部12dと、ギア押さえ部12eと、第1配線保持部14と、を有する。モータケース12の各部は、後述する金属部材110を除いて樹脂製である。
【0015】
ケース筒部12aは、中心軸J1を中心として軸方向Zに延びる円筒状である。ケース筒部12aは、軸方向Zの両側に開口する。ケース筒部12aは、上側に開口する開口部12jと、下側に開口する開口部12gとを有する。ケース筒部12aは、モータ20の径方向外側を囲む。ケース筒部12aは、減速機構ケース13の上側に開口する開口部13hを封止する第1封止部材12lを有する。第1封止部材12lは、環状であり周方向に延びる。第1封止部材12lは、ケース筒部12aの下端部に位置し、ケース筒部12aの下側を向く面に配置される。
【0016】
壁部12bは、ケース筒部12aの内周面から径方向内側に拡がる円環板状である。壁部12bは、モータ20の後述するステータ23の上側を覆う。壁部12bは、壁部12bを軸方向Zに貫通する孔部12hを有する。本実施形態において孔部12hは、中心軸J1を中心とする円形状である。孔部12hの内径は、後述するホルダ筒部101の外径よりも大きい。壁部12bは、樹脂製の壁部本体12iと、金属製の金属部材110と、を有する。壁部本体12iは、ケース筒部12aの内周面から径方向内側に拡がる円環板状の部分である。
【0017】
金属部材110は、円筒状であり、内周面に雌ネジ部を有する。金属部材110は、例えば、ナットである。金属部材110は、壁部本体12iに埋め込まれる。金属部材110は、孔部12hの径方向内側面よりも径方向外側に離れた位置に位置する。金属部材110は、複数設けられる。複数の金属部材110は、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置される。金属部材110は、例えば、3つ設けられる。
【0018】
制御基板収容部12fは、後述する制御基板71を収容する部分である。制御基板収容部12fは、ケース筒部12aの上側部分の径方向内側に構成される。制御基板収容部12fの底面は、壁部12bの上面である。制御基板収容部12fは、上側に開口する。
【0019】
蓋体12cは、制御基板収容部12fの上端開口を塞ぐ板状の蓋である。蓋体12cは、ケース筒部12aの上側の開口部12jを封止する第2封止部材12kを有する。第2封止部材12kは、環状であり周方向に延びる。第2封止部材12kは、蓋体12cの外周部に位置し、蓋体12cの下側を向く面に配置される。端子保持部12dは、ケース筒部12aから径方向外側に突出する。端子保持部12dは、径方向外側に開口する筒状である。端子保持部12dは、後述する端子81を保持する。
【0020】
図1および
図4に示すように、ギア押さえ部12eは、ケース筒部12aの下端部に配置されて、下側に突出する。ギア押さえ部12eは、中心軸J1を中心とする環状である。ギア押さえ部12eは、減速機構30の後述する内歯ギア33の上側に配置される。ギア押さえ部12eは、内歯ギア33の上側を向く端面(つまり上面)33bに、隙間をあけて対向しまたは接触する。本実施形態ではギア押さえ部12eが、内歯ギア33の少なくとも径方向外側部分に軸方向Zに隙間をあけて対向しまたは接触する。
【0021】
第1配線保持部14は、ケース筒部12aから径方向外側に突出する。
図1では、第1配線保持部14は、ケース筒部12aから第1方向Xの負の側に突出する。第1配線保持部14は、軸方向Zに延びる。第1配線保持部14の上端部の軸方向位置は、壁部12bの軸方向位置とほぼ同じである。第1配線保持部14の周方向位置は、例えば、コネクタ部80の周方向位置と異なる。
【0022】
減速機構ケース13は、モータケース12の下側に開口する開口部12gを覆って、モータケース12の下側に配置される。本実施形態では減速機構ケース13に、モータシャフト21の一部、減速機構30、出力部40の後述する出力シャフト41の一部、第1ベアリング55および第2ベアリング56が収容される。また減速機構ケース13には、第3ベアリング57も収容される。
【0023】
減速機構ケース13は、ケース本体13iと、カップ部材16と、第1金属筒部111と、第2金属筒部112と、を有する。ケース本体13iは、樹脂製である。ケース本体13iは、単一の部材により構成される。
図1、
図4および
図5に示すように、ケース本体13iは、底壁部13aと、筒部13bと、突出筒部13cと、支持筒部13dと、連結部13eと、複数のギア支持部13fと、第2配線保持部15と、脚部13pと、を有する。つまり減速機構ケース13は、複数のギア支持部13fを有する。
【0024】
底壁部13aは、中心軸J1を中心とする円環板状である。底壁部13aは、減速機構30の下側を覆う。筒部13bは、底壁部13aの径方向外端部から上側に突出する円筒状である。筒部13bは、上側に開口する。筒部13bの上端部は、第1封止部材12lの下面と接触する。筒部13bの上端部は、ケース筒部12aの下端部と固定される。突出筒部13cは、底壁部13aの径方向内縁部から下側に突出する円筒状である。突出筒部13cは、軸方向両側に開口する。
【0025】
支持筒部13dは、中心軸J1を中心とする円筒状である。支持筒部13dは、筒部13bの径方向内側に配置される。支持筒部13dの上端は、筒部13bの上端よりも下側に位置する。支持筒部13dは、底壁部13aの径方向外側部分の上側に配置される。
【0026】
連結部13eは、軸方向Zにおいて底壁部13aと支持筒部13dとを連結する。連結部13eは、軸方向Zに延びる円柱状である。連結部13eの上端は、支持筒部13dの下面に接続する。連結部13eの下端は、底壁部13aの上面に接続する。連結部13eは、カップ部材16の後述する連結孔16g内に配置される。連結部13eは、周方向に等間隔をあけて複数設けられる。
【0027】
複数のギア支持部13fは、支持筒部13dに設けられる。つまり複数のギア支持部13fは、ケース本体13iに設けられる。ギア支持部13fの上端は、支持筒部13dの上端よりも上側に位置する。ギア支持部13fは、支持筒部13dから上側に突出する部分を有する。ギア支持部13fは、減速機構30の後述する内歯ギア33の下側に配置される。複数のギア支持部13fは、周方向に互いに間隔をあけて配置される。複数のギア支持部13fは、内歯ギア33の下側を向く端面(つまり下面)33aを支持する。
【0028】
本実施形態によれば、減速機構ケース13に設けられる複数のギア支持部13fが、内歯ギア33の下側を向く端面33aを、周方向の複数箇所において軸方向Zに支持する。本実施形態と異なり例えば内歯ギア33の端面33aを周方向全周にわたって支持する構成と比べて、本実施形態によれば、減速機構ケース13のケース本体13iの材料使用量を低減でき、かつ、樹脂成形後の引け(変形)によるギア支持部13fの位置ずれを抑えることができる。したがって、減速機構ケース13内において内歯ギア33が傾くことを抑制でき、モータシャフト21から減速機構30を介して出力部40の後述する出力シャフト41へ伝達される回転の伝達効率が、安定して高められる。
【0029】
ギア支持部13fは、内歯ギア33の少なくとも径方向内側部分に軸方向Zに接触する。本実施形態では、内歯ギア33がプレス打ち抜き品であり、内歯ギア33の下側を向く端面33aの径方向外端部には、径方向外側へ向かうに従い上側に位置するテーパ部33cが設けられる。この場合でも、ギア支持部13fが内歯ギア33の径方向内側部分に軸方向Zに接触するため、内歯ギア33を安定して支持できる。
【0030】
ギア支持部13fは、周方向に等間隔に少なくとも3つ以上配置される。本実施形態によれば、周方向に等ピッチで配列する3つ以上のギア支持部13fによって、内歯ギア33をより安定して支持できる。したがって、内歯ギア33が傾くことがより抑制される。
【0031】
図4および
図5に示すように、ギア支持部13fは、一対の第1支持部13kと、第2支持部13lと、肉抜き部13nと、支持面13mと、を有する。一対の第1支持部13kは、径方向に延び、周方向に互いに離れて配置される。第1支持部13kは、内歯ギア33の下側を向く端面33aと軸方向Zに接触する。第2支持部13lは、一対の第1支持部13kの径方向外端部同士を繋ぎ、周方向に延びる。第2支持部13lは、内歯ギア33の下側を向く端面33aと軸方向Zに接触しまたは隙間をあけて対向する。肉抜き部13nは、ギア支持部13fの径方向内側面および上面に開口する凹状の部分である。肉抜き部13nは、一対の第1支持部13k同士の間に位置する。肉抜き部13nは、第2支持部13lの径方向内側に位置する。
【0032】
本実施形態によれば、ギア支持部13fのうち、周方向における一対の第1支持部13k同士の間かつ径方向における第2支持部13lの内側に、窪み状の肉抜き部13nを設けることができる。これにより、ギア支持部13fの材料使用量を低減でき、ギア支持部13fの樹脂の引けによる位置ずれをより抑制できる。
【0033】
支持面13mは、ギア支持部13fの上面を構成する。支持面13mは、一対の第1支持部13kの上面と、第2支持部13lの上面と、により構成される。支持面13mは、軸方向Zから見て、径方向内側に開口する略U字状である。支持面13mは、内歯ギア33の下側を向く端面33aと接触する。支持面13mは、中心軸J1に垂直な平面である。
【0034】
本実施形態によれば、ギア支持部13fが、中心軸J1に垂直な支持面13mで内歯ギア33の下側を向く端面33aを支持するので、内歯ギア33の軸方向位置が安定し、かつ内歯ギア33の傾きがより抑制される。
【0035】
また本実施形態では、ギア押さえ部12eが、内歯ギア33の上側を向く端面33bに隙間をあけて対向しまたは接触する。すなわち、内歯ギア33が、軸方向の両側からギア支持部13fとギア押さえ部12eとに挟まれて配置される。これにより、内歯ギア33の傾きがより抑制される。
【0036】
また本実施形態では、ギア押さえ部12eが、中心軸J1を中心とする環状であるので、内歯ギア33を周方向全域にわたって軸方向Zから押さえることができる。これにより、内歯ギア33の傾きがより抑制される。
【0037】
図1、
図2および
図5に示すように、第2配線保持部15は、筒部13bから径方向外側に突出する。
図1では、第2配線保持部15は、筒部13bから第1方向Xの負の側、すなわち第1配線保持部14が突出する側と同じ側に突出する。第2配線保持部15は、第1配線保持部14の下側に配置される。第2配線保持部15は、例えば、中空で上側に開口する箱状である。第2配線保持部15の内部は、筒部13bの内部と繋がる。第2配線保持部15は、底壁部15aと、側壁部15bと、を有する。底壁部15aは、底壁部13aから径方向外側に延びる。
図1では、底壁部15aは、底壁部13aから第1方向Xの負の側に延びる。側壁部15bは、底壁部15aの外縁部から上側に延びる。本実施形態においては、底壁部13aと底壁部15aとによってケース本体13iの底部が構成される。
【0038】
図2および
図5に示すように、脚部13pは、筒部13bの外周面から径方向外側に延びる。筒部13bの外周面において脚部13pは、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。本実施形態では3つの脚部13pが、周方向に互いに不等間隔をあけて配置される。3つの脚部13pは、筒部13bの外周面から径方向外側へ向けた突出長さが互いに異なる。脚部13pを利用して、電動アクチュエータ10を例えば車両等の対象物に装着することができる。
【0039】
図1、
図2、
図4および
図5に示すように、カップ部材16は、中心軸J1を中心とする筒状である。カップ部材16は、軸方向Zに延びる円筒状であり、具体的には、軸方向両側に開口する多段の円筒状である。カップ部材16は、金属製の単一部材である。本実施形態においてカップ部材16は、板金製である。そのため、金属板をプレス加工することによりカップ部材16を作ることができ、カップ部材16の製造コストを低減できる。本実施形態においてカップ部材16は、非磁性材である。カップ部材16は、ケース本体13iに固定される。
【0040】
ケース本体13iを樹脂成形する際に、カップ部材16の一部が、インサート成形によりケース本体13i内に埋め込まれる。つまりカップ部材16の一部は、ケース本体13iに埋め込まれる。本実施形態によれば、減速機構ケース13の製造が容易であり、かつケース本体13iとカップ部材16との位置精度が安定して確保される。
【0041】
カップ部材16は、第1筒部16aと、第2筒部16cと、リング板部16bと、を有する。第1筒部16aは、中心軸J1を中心とし、軸方向Zに延びる円筒状である。第1筒部16aの直径は、第2筒部16cの直径よりも大きい。第1筒部16aの外周面は、筒部13bの内周面と接触する。第1筒部16aの内周面のうち下側部分は、支持筒部13dの外周面と接触する。第1筒部16aのうち下側部分は、ケース本体13iの筒部13bと支持筒部13dとの間に埋め込まれる。
【0042】
第1筒部16aには、内歯ギア33が径方向内側に嵌合する。詳しくは、第1筒部16aは、第1筒部16aの内周面に、径方向内側に露出されて内歯ギア33が嵌合する第1嵌合部16dを有する。第1嵌合部16dは、第1筒部16aの内周面の上側部分に位置し、減速機構ケース13の内部に露出される。本実施形態によれば、第1筒部16aの直径が第2筒部16cの直径よりも大きいので、第1筒部16a内に嵌合する内歯ギア33の直径を大きくして、減速機構30の減速比を高めることができる。
【0043】
図2に示すように、第1筒部16aは、凹部16eを有する。凹部16eは、第1筒部16aの内周面から径方向外側に窪む。
図2に示す中心軸J1に垂直な横断面視において、凹部16eは、凹曲線状である。
【0044】
図1、
図4および
図5に示すように、第2筒部16cは、中心軸J1を中心とし、軸方向Zに延びる円筒状である。第2筒部16cは、第1筒部16aの下側に配置される。第2筒部16cの外周面は、突出筒部13cの内周面と接触する。第2筒部16cのうち下端部は、ケース本体13iの突出筒部13cの内部に埋め込まれる。
【0045】
第2筒部16cには、第2ベアリング56が径方向内側に嵌合する。第2ベアリング56は、第2ベアリング56の上端部に、径方向外側に突出するブッシュフランジ部56aを有する。ブッシュフランジ部56aは、リング板部16bの上面に接触する。これにより、第2ベアリング56が第2筒部16cの内部から下側に抜けることが抑制される。
【0046】
本実施形態によれば、金属製の単一部材であるカップ部材16のうち、第1筒部16a内に内歯ギア33が嵌合し、第2筒部16c内に第2ベアリング56が嵌合する。これにより、第2ベアリング56内に嵌合する出力部40の後述する出力シャフト41と、内歯ギア33とが、互いに同軸に配置される。したがって、モータシャフト21から減速機構30を介して出力シャフト41へ伝達される回転の伝達効率が、安定して高められる。
【0047】
第2筒部16cは、第2筒部16cの内周面に、径方向内側に露出されて第2ベアリング56が嵌合する第2嵌合部16fを有する。第2嵌合部16fは、第2筒部16cの内周面の下端部以外の部分に位置し、減速機構ケース13の内部に露出される。本実施形態によれば、第1筒部16aの内周面において径方向内側に露出する第1嵌合部16dに、内歯ギア33が直接嵌合し、第2筒部16cの内周面において径方向内側に露出する第2嵌合部16fに、第2ベアリング56が直接嵌合する。このため、カップ部材16の一部をケース本体13iに埋め込んでこれらを互いに固定しつつ、内歯ギア33と出力シャフト41との同軸度も安定して確保される。
【0048】
リング板部16bは、中心軸J1を中心とする円環板状である。リング板部16bは、一対の板面が軸方向Zを向く。リング板部16bは、第1筒部16aの下側の端部と、第2筒部16cの上側の端部とに接続される。リング板部16bの外縁部が、第1筒部16aの下端部と接続し、リング板部16bの内縁部が、第2筒部16cの上端部と接続する。リング板部16bの下面は、底壁部13aの上面と接触する。リング板部16bのうち径方向外端部は、ケース本体13iの底壁部13aと支持筒部13dとの間に埋め込まれる。リング板部16bの上面は、中心軸J1に垂直な平面状である。リング板部16bの上面のうち径方向外端部以外の部分は、減速機構ケース13の内部に露出される。リング板部16bは、回転検出装置60の後述する第1マグネット63の下側を覆う。
【0049】
リング板部16bは、連結孔16gと、窪み部16hと、を有する。
図4に示すように、連結孔16gは、リング板部16bを軸方向Zに貫通する。連結孔16gは、例えば円孔である。連結孔16gは、リング板部16bの径方向外端部に配置される。連結孔16gは、リング板部16bに、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。本実施形態では連結孔16gが、周方向に沿って等間隔に3つ以上設けられる。連結孔16g内には、ケース本体13iの連結部13eが配置される。つまりケース本体13iの一部が、連結孔16g内に配置される。本実施形態によれば、カップ部材16とともにケース本体13iをインサート成形する際に、溶融した樹脂の一部が、リング板部16bの連結孔16g内に充填されて固化する。したがって、ケース本体13iとカップ部材16とがより安定して固定される。
【0050】
図1に示すように、窪み部16hは、リング板部16bの下面から上側に向けて窪む。つまり窪み部16hは、リング板部16bの板面から軸方向Zに窪む。本実施形態では窪み部16hに、回転検出装置60の後述する第1回転センサ61が配置される。本実施形態によれば、リング板部16bのうち窪み部16hが位置する部分の肉厚を、窪み部16h以外の部分の肉厚よりも薄くできるため、本実施形態のようにリング板部16bの軸方向両側に第1マグネット63と第1回転センサ61とが位置する場合には、第1回転センサ61の検出精度を高めることができる。なお特に図示しないが、窪み部16hには、第1回転センサ61以外の構成部材を配置してもよく、この場合、例えば減速機構ケース13の軸方向Zの寸法を小さく抑えることができる。
【0051】
図2に示すように、第1金属筒部111は、筒部13bの外周部に配置され、ケース本体13iに保持される。第1金属筒部111は、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。第1金属筒部111は、軸方向Zに延びる金属製の筒であり、内周面に雌ネジ部を有する。第1金属筒部111の雌ネジ部には、モータケース12と減速機構ケース13とを固定するためのボルト部材113の雄ネジ部がねじ込まれる。第1金属筒部111は、ケース本体13iを樹脂成形する際のインサート部品とされ、ケース本体13iと固定される。
【0052】
第2金属筒部112は、複数の脚部13pの径方向外端部に、それぞれ配置される。つまり第2金属筒部112は、複数設けられる。第2金属筒部112は、軸方向Zに延びる金属製の筒である。第2金属筒部112内には、電動アクチュエータ10を例えば車両等の対象物に固定するための不図示のボルト部材等が挿入される。第2金属筒部112は、ケース本体13iを樹脂成形する際のインサート部品とされ、ケース本体13iと固定される。
【0053】
図1に示すように、ケース11は、ケース11の外表面に位置する凹所17を有する。本実施形態において凹所17は、減速機構ケース13に設けられる。より詳細には、凹所17は、ケース本体13iの底部の下面から上側に窪む。本実施形態において凹所17は、底壁部13aと底壁部15aとにわたって配置される。凹所17は、径方向に延びる。本実施形態において凹所17が延びる方向は、径方向のうち第1方向Xと平行な方向である。
【0054】
ベアリングホルダ100は、モータケース12に固定される。ベアリングホルダ100は、金属製である。本実施形態においてベアリングホルダ100は、板金製である。そのため、金属板をプレス加工することによりベアリングホルダ100を作ることができ、ベアリングホルダ100の製造コストを低減できる。ベアリングホルダ100は、筒状のホルダ筒部101と、ホルダフランジ部102と、を有する。本実施形態においてホルダ筒部101は、中心軸J1を中心とする円筒状である。ホルダ筒部101は、径方向内側に第4ベアリング58を保持する。ホルダ筒部101は、孔部12hに挿入される。ホルダ筒部101は、制御基板収容部12fの内部から孔部12hを通して壁部12bよりも下側に突出する。
【0055】
ホルダ筒部101の外径は、孔部12hの内径よりも小さい。そのため、ホルダ筒部101の径方向外側面のうち周方向の少なくとも一部は、孔部12hの径方向内側面から径方向内側に離れた位置に位置する。
図1に示す例では、ホルダ筒部101の径方向外側面は、全周にわたって孔部12hの径方向内側面から径方向内側に離れて位置する。ホルダ筒部101は、孔部12h内において中心軸J1に直交する方向に所定範囲で位置調整可能である。
【0056】
ホルダフランジ部102は、ホルダ筒部101から径方向外側に延びる。本実施形態においてホルダフランジ部102は、ホルダ筒部101の上側の端部から径方向外側に拡がる。ホルダフランジ部102は、中心軸J1を中心とする円環板状である。ホルダフランジ部102は、壁部12bの上側に位置する。ホルダフランジ部102は、壁部12bに固定される。これにより、ベアリングホルダ100がモータケース12に固定される。
【0057】
本実施形態においてホルダフランジ部102は、壁部12bに軸方向Zに締め込まれる複数のネジ部材114によって、壁部12bに固定される。本実施形態においてホルダフランジ部102を固定するネジ部材114は、壁部12bのうち金属部材110の雌ネジ部に締め込まれる。ホルダフランジ部102を固定するネジ部材114は、周方向に互いに間隔をあけて、例えば3つ以上設けられる。
【0058】
モータ20は、モータシャフト21を有するロータ22と、ステータ23と、を有する。ロータ22は、モータシャフト21の外周面に固定される円筒状のロータコア22aと、ロータコア22aに固定されるマグネット22bと、を有する。モータシャフト21は、中心軸J1を中心として回転する。モータシャフト21は、第4ベアリング58と第3ベアリング57とによって、中心軸J1回りに回転可能に支持される。第4ベアリング58は、ベアリングホルダ100に保持され、モータシャフト21のうちロータコア22aよりも上側の部分を回転可能に支持する。第3ベアリング57は、モータシャフト21のうちロータコア22aよりも下側の部分を回転可能に支持する。第3ベアリング57は、モータシャフト21の下側の端部の径方向外側に嵌合する。
【0059】
モータシャフト21の上端部は、孔部12hを通って壁部12bよりも上側に突出する。モータシャフト21は、中心軸J1に対して偏心した偏心軸J2を中心とする偏心軸部21aを有する。偏心軸部21aは、ロータコア22aよりも下側に位置する。偏心軸部21aには、第1ベアリング55の内輪が嵌め合わされて固定される。第1ベアリング55は、偏心軸部21aの径方向外側に嵌合する。これにより、第1ベアリング55は、モータシャフト21に取り付けられる。モータシャフト21は、第1ベアリング55を介して、減速機構30に連結される。つまり偏心軸部21aは、減速機構30に連結される。
【0060】
図3に示すように、偏心軸部21aは、バランス凹部21bと、テーパ面部21cと、を有する。バランス凹部21bは、偏心軸部21aのうち径方向において中心軸J1から偏心軸J2へ向かう所定方向Pの端部に配置され、偏心軸部21aの外面から窪む。つまりバランス凹部21bは、偏心軸部21aのうち、径方向において中心軸J1からの距離が最も遠い所定方向Pの端部に配置される。本実施形態ではバランス凹部21bが、偏心軸部21aの下側部分に配置される。
【0061】
本実施形態と異なり、バランス凹部21bが設けられない偏心軸部21aに比べて、本実施形態のようにバランス凹部21bが設けられた偏心軸部21aは、重心が中心軸J1近くに配置されるため、偏心軸部21aが中心軸J1を中心に回転したときの遠心力のばらつきが小さく抑えられる。偏心軸部21a自体で遠心力のばらつきを抑えることができるため、別部材のバランサー等が不要となり、部品点数を削減できる。本実施形態によれば、簡素な構造により、偏心軸部21aの回転バランスを向上できる。そして、モータシャフト21から減速機構30を介して出力部40の後述する出力シャフト41へ伝達される回転の伝達効率が、安定して高められる。
【0062】
テーパ面部21cは、偏心軸部21aの下側の端部に配置される。テーパ面部21cは、下側に向かうに従い径方向内側に位置するテーパ面である。つまりテーパ面部21cは、偏心軸部21aの軸方向Zの端部に配置され、軸方向Zへ向かうに従い径方向内側に位置する。テーパ面部21cは、所定方向Pの端部の軸方向Zの寸法が、所定方向Pの端部以外の部分の軸方向Zの寸法よりも大きい。すなわち、テーパ面部21cの軸方向Zの寸法は、偏心軸部21aの所定方向Pの端部において最大となる。そしてバランス凹部21bは、テーパ面部21cの所定方向Pの端部に配置される。本実施形態によれば、偏心軸部21aのうち、テーパ面部21cの所定方向Pの端部にバランス凹部21bが設けられるため、テーパ面部21cにバランス凹部21bの機能を付加できる。したがって、より簡素な構造によって、偏心軸部21aの回転バランスを向上させることができる。
【0063】
図1に示すように、ステータ23は、ロータ22と径方向に対向する。ステータ23は、ロータ22の径方向外側においてロータ22を囲み、ロータ22の外周面と径方向に隙間をあけて対向する。ステータ23は、ロータ22の径方向外側を囲む環状のステータコア24と、ステータコア24に装着されるインシュレータ25と、インシュレータ25を介してステータコア24に装着される複数のコイル26と、を有する。ステータコア24は、ケース筒部12aの内周面に固定される。これにより、モータ20は、モータケース12に保持される。
【0064】
制御部70は、制御基板71と、取付部材73と、第2マグネット74と、第2回転センサ72と、を有する。制御基板71は、中心軸J1に垂直な方向に拡がる板状であり、一対の板面が軸方向Zを向く。制御基板71は、モータケース12に収容される。より詳細には、制御基板71は、制御基板収容部12f内に収容され、壁部12bから上側に離れて配置される。制御基板71は、モータ20と電気的に接続される基板である。制御基板71には、ステータ23のコイル26が電気的に接続される。制御基板71は、例えば、モータ20に供給される電流を制御する。すなわち、制御基板71には、例えばインバータ回路が搭載される。
【0065】
取付部材73は、中心軸J1を中心とする環状である。取付部材73の内周面は、モータシャフト21の上端部に固定される。取付部材73は、第4ベアリング58およびベアリングホルダ100の上側に配置される。取付部材73は、例えば非磁性材である。なお取付部材73は、磁性材であってもよい。
【0066】
第2マグネット74は、中心軸J1を中心とする円環状である。第2マグネット74は、取付部材73の径方向外縁部の上面に固定される。第2マグネット74の取付部材73への固定方法は、特に限定されず、例えば接着剤による接着である。取付部材73と第2マグネット74とは、モータシャフト21とともに回転する。第2マグネット74は、第4ベアリング58およびホルダ筒部101の上側に配置される。第2マグネット74は、周方向に沿って交互に配置されるN極とS極とを有する。
【0067】
第2回転センサ72は、モータ20の回転を検出するセンサである。第2回転センサ72は、制御基板71の下面に取り付けられる。第2回転センサ72は、第2マグネット74と軸方向Zに隙間をあけて対向する。第2回転センサ72は、第2マグネット74によって生じる磁界を検出する。第2回転センサ72は、例えばホール素子である。図示は省略するが、第2回転センサ72は、周方向に沿って複数、例えば3つ設けられる。第2回転センサ72は、モータシャフト21とともに回転する第2マグネット74によって生じる磁界の変化を検出することで、モータシャフト21の回転を検出することができる。
【0068】
コネクタ部80は、ケース11の外部の電気的配線との接続が行われる部分である。コネクタ部80は、モータケース12に設けられる。コネクタ部80は、上述した端子保持部12dと、端子81と、を有する。端子81は、端子保持部12dに埋め込まれて保持される。端子81の一端は、制御基板71に固定される。端子81の他端は、端子保持部12dの内部を通してケース11の外部に露出する。本実施形態において端子81は、例えばバスバーである。
【0069】
コネクタ部80には、図示しない外部電源が接続される。より詳細には、端子保持部12dに外部電源が取り付けられ、外部電源が有する電気的配線が、端子保持部12d内に突出した端子81の部分と電気的に接続される。これにより、端子81は、制御基板71と電気的配線とを電気的に接続する。したがって、本実施形態では、端子81および制御基板71を介して、外部電源からステータ23のコイル26に電源が供給される。
【0070】
減速機構30は、モータシャフト21の下側の部分の径方向外側に配置される。減速機構30は、ステータ23の下側に配置され、モータシャフト21に連結される。減速機構30は、底壁部13aおよびリング板部16bとモータ20との軸方向Zの間に配置される。減速機構30は、外歯ギア31と、内歯ギア33と、出力フランジ部42と、を有する。
【0071】
外歯ギア31は、偏心軸部21aの偏心軸J2を中心として、軸方向Zと直交する平面に拡がる略円環板状である。外歯ギア31は、内歯ギア33と噛み合う。外歯ギア31の径方向外側面には、歯車部が設けられる。外歯ギア31は、偏心軸部21aに第1ベアリング55を介して連結される。これにより、減速機構30は、モータシャフト21の下側の部分に連結される。外歯ギア31は、第1ベアリング55の外輪に径方向外側から嵌め合わされる。これにより、第1ベアリング55はモータシャフト21と外歯ギア31とを、偏心軸J2を中心に相対的に回転可能に連結する。
【0072】
図1、
図2および
図4に示すように、外歯ギア31は、外歯ギア31を軸方向Zに貫通する貫通孔31aを有する。貫通孔31aは、周方向に互いに間隔をあけて複数配置される。より詳細には、複数の貫通孔31aは、偏心軸J2を中心とする周方向に沿って一周にわたって等間隔に配置される。貫通孔31aは、例えば8つ設けられる。
【0073】
内歯ギア33は、中心軸J1を中心とする環状である。内歯ギア33は、略円環板状である。本実施形態では内歯ギア33が、プレス加工品である。内歯ギア33は、外歯ギア31の径方向外側を囲む。すなわち、外歯ギア31は、内歯ギア33の径方向内側に配置される。内歯ギア33は、カップ部材16の上端部の径方向内側に位置する。内歯ギア33は、カップ部材16の内周面に固定される。本実施形態において内歯ギア33は、第1筒部16aの内周面に圧入によって固定される。内歯ギア33の外周面は、第1嵌合部16dと接触する。このように、減速機構30は、カップ部材16の内周面に固定され、減速機構ケース13に保持される。内歯ギア33の内周面には、歯車部が設けられる。内歯ギア33の歯車部は、外歯ギア31の歯車部と噛み合う。より詳細には、内歯ギア33の歯車部は、外歯ギア31の歯車部と周方向の一部において噛み合う。
【0074】
図2に示すように、内歯ギア33は、凸部33dを有する。凸部33dは、内歯ギア33の外周面から径方向外側に突出し、カップ部材16の凹部16e内に配置される。
図2に示す中心軸J1に垂直な横断面視において、凸部33dは、凸曲線状である。本実施形態によれば、カップ部材16の凹部16e内に内歯ギア33の凸部33dが配置されることで、カップ部材16と内歯ギア33との中心軸J1回りの相対的な回転移動が抑えられる。したがって、減速機構30の機能が安定する。
【0075】
図1および
図4に示すように、出力フランジ部42は、外歯ギア31の下側に配置されて外歯ギア31と連結され、外歯ギア31の中心軸J1回りの回転を出力部40の後述する出力シャフト41に伝達する。出力フランジ部42は、中心軸J1を中心として径方向に拡がる円環板状である。出力フランジ部42は、出力シャフト41の上側の端部から径方向外側に拡がる。出力フランジ部42は、第2ベアリング56のブッシュフランジ部56aに上側から接触する。
【0076】
出力フランジ部42は、出力フランジ部42を軸方向Zに貫通する貫通孔42aを有する。貫通孔42aは、周方向に互いに間隔をあけて複数配置される。より詳細には、複数の貫通孔42aは、中心軸J1を中心とする周方向に沿って一周にわたって等間隔に配置される。貫通孔42aは、例えば8つ設けられる。
【0077】
出力フランジ部42の各貫通孔42aには、柱部材43がそれぞれ挿入される。つまり柱部材43は、複数設けられる。柱部材43は、軸方向Zに延びる円柱状の部材である。柱部材43は、圧入、接着、ネジ締結などにより出力フランジ部42に固定される。柱部材43は、出力フランジ部42の上面から上側に突出する。複数の柱部材43は、周方向に互いに間隔をあけて配置される。より詳細には、複数の柱部材43は、中心軸J1を中心とする周方向に沿って一周にわたって等間隔に配置される。柱部材43は、貫通孔42aと同数設けられ、本実施形態では、例えば8つ設けられる。
【0078】
図2に示すように、柱部材43は、出力フランジ部42から上側に延び、外歯ギア31の複数の貫通孔31aのそれぞれに挿入される。貫通孔31aの直径は柱部材43の直径よりも大きい。貫通孔31a内に配置される柱部材43は、貫通孔31aの内周面に沿って相対的に円運動可能である。この構成により、外歯ギア31は、中心軸J1回りに揺動可能である。
【0079】
出力部40は、電動アクチュエータ10の駆動力を出力する部分である。
図1に示すように、出力部40は、減速機構ケース13に収容される部分を有する。出力部40は、出力シャフト41と、出力フランジ部42と、を有する。すなわち、電動アクチュエータ10は、出力シャフト41を備える。本実施形態において出力部40は、単一の部材である。
【0080】
出力シャフト41は、減速機構30の下側に配置されて軸方向Zに延びる。出力シャフト41は、減速機構30を介してモータシャフト21の回転が伝達されることで、中心軸J1回りに回転する。出力シャフト41の径方向外側には、第2ベアリング56が嵌合する。出力シャフト41は、出力筒部41aと、出力軸部41bと、を有する。
【0081】
出力筒部41aは、出力フランジ部42に接続され、軸方向Zに延びる筒状である。出力筒部41aは、出力フランジ部42の内縁から下側に延びる円筒状である。出力筒部41aは、底部を有し上側に開口する円筒状である。出力筒部41aは、第2ベアリング56の径方向内側に嵌め合わされる。出力筒部41aは、出力筒部41aの径方向内側に第3ベアリング57が嵌合する。
【0082】
本実施形態によれば、出力シャフト41の出力筒部41a内に第3ベアリング57が嵌合し、第3ベアリング57内にモータシャフト21の下側の端部が嵌合する。すなわち、第3ベアリング57を介して出力シャフト41とモータシャフト21とが同軸に配置されるので、モータシャフト21、出力シャフト41および内歯ギア33が、互いに同軸に配置される。詳しくは、出力シャフト41は、第2ベアリング56を介してカップ部材16に回転可能に支持される。上述したようにカップ部材16には、減速機構30の内歯ギア33が固定される。このため、金属製のカップ部材16によって、減速機構30と出力シャフト41とをともに支持することができる。これにより、減速機構30と出力シャフト41とを軸精度よく配置することができる。したがって、モータシャフト21から減速機構30を介して出力シャフト41へ伝達される回転の伝達効率を、より安定して高めることができる。
【0083】
出力軸部41bは、出力筒部41aから下側に延びる。出力軸部41bは、出力筒部41aの底部から下側に延びる柱状である。本実施形態において出力軸部41bは、中心軸J1を中心とする略円柱状である。出力軸部41bの外径は、出力筒部41aの外径および内径よりも小さい。出力軸部41bの下側部分は、突出筒部13cよりも下側に突出する。出力軸部41bの下側部分には、電動アクチュエータ10の駆動力が出力される他の部材が取り付けられる。
【0084】
モータシャフト21が中心軸J1回りに回転されると、偏心軸部21aは、中心軸J1を中心として周方向に公転する。偏心軸部21aの公転は第1ベアリング55を介して外歯ギア31に伝達され、外歯ギア31は、貫通孔31aの内周面と柱部材43の外周面との内接する位置が変化しつつ、揺動する。これにより、外歯ギア31の歯車部と内歯ギア33の歯車部とが噛み合う位置が、周方向に変化する。したがって、内歯ギア33に、外歯ギア31を介してモータシャフト21の回転力が伝達される。
【0085】
ここで、本実施形態では、内歯ギア33はカップ部材16に固定されているため回転しない。そのため、内歯ギア33に伝達される回転力の反力によって、外歯ギア31が偏心軸J2回りに回転する。このとき外歯ギア31の回転する向きは、モータシャフト21の回転する向きと反対向きとなる。外歯ギア31の偏心軸J2回りの回転は、貫通孔31aと柱部材43とを介して、出力フランジ部42に伝達される。これにより、出力シャフト41が中心軸J1回りに回転する。このようにして、出力シャフト41には、減速機構30を介してモータシャフト21の回転が伝達される。
【0086】
出力シャフト41の回転は、減速機構30によって、モータシャフト21の回転に対して減速される。具体的に、本実施形態の減速機構30の構成では、モータシャフト21の回転に対する出力シャフト41の回転の減速比Rは、R=-(N2-N1)/N1で表される。減速比Rを表す式の先頭の負符号は、モータシャフト21の回転する向きに対して、減速される出力シャフト41の回転の向きが逆向きとなることを示している。N1は、外歯ギア31の歯数であり、N2は、内歯ギア33の歯数である。一例として、外歯ギア31の歯数N1が59で、内歯ギア33の歯数N2が60の場合、減速比Rは、-1/59となる。
【0087】
このように、本実施形態の減速機構30によれば、モータシャフト21の回転に対する出力シャフト41の回転の減速比Rを比較的大きくできる。そのため、出力シャフト41の回転トルクを比較的大きくできる。
【0088】
配線部材90は、回転検出装置60の後述する第1回転センサ61に電気的に接続される。本実施形態において配線部材90は、第1回転センサ61と制御部70の制御基板71とを繋ぐための部材である。本実施形態において配線部材90は、細長で板状のバスバーである。
図2に示すように、本実施形態において配線部材90は、3つ設けられる。各配線部材90のそれぞれは、第1配線部材91と、第2配線部材92と、が接続されて構成される。
【0089】
第1配線部材91は、第2配線保持部15の内部から制御基板収容部12fの内部まで延びる。第1配線部材91の一部は、第1配線保持部14、ケース筒部12aおよび壁部本体12iに埋め込まれる。これにより、第1配線部材91は、モータケース12に保持される。
【0090】
第1配線部材91の下端部は、第1配線保持部14から下側に突出し、第2配線保持部15の内部に位置する。第1配線部材91の上端部は、壁部本体12iから上側に突出して制御基板71に接続される。これにより、第1配線部材91は、制御基板71に電気的に接続され、コネクタ部80を介してケース11外の電気的配線と電気的に接続される。
【0091】
第2配線部材92の一部は、ケース本体13iの底部に埋め込まれる。これにより、第2配線部材92は、減速機構ケース13に保持される。第2配線部材92の上端部は、底壁部15aから上側に突出する。第2配線部材92の上端部は、第1配線部材91の下端部と接続される。第2配線部材92の下端部は、ケース本体13iの底部を貫通して凹所17の内部に突出する。第2配線部材92の下端部は、配線部材90の一端部に相当する。これにより、配線部材90は、ケース11の内部からケース11を貫通して、一端部が凹所17の内部に突出する。
【0092】
回転検出装置60は、出力部40の回転を検出する。回転検出装置60は、第1マグネット63と、第1回転センサ61と、を有する。第1マグネット63は、中心軸J1を中心とする円環状である。第1マグネット63は、出力部40に取り付けられる。第1マグネット63は、出力フランジ部42の下面の下側に位置する。第1マグネット63の下側の端部は、リング板部16bの上側に隙間をあけて対向する。
【0093】
第1回転センサ61は、凹所17の内部に位置する。第1回転センサ61は、リング板部16bを挟んで第1マグネット63の下側に位置する。第1回転センサ61は、リング板部16bの窪み部16hに配置される。第1回転センサ61は、第1マグネット63によって生じる磁界を検出する磁気センサである。第1回転センサ61は、例えばホール素子である。出力部40とともに回転する第1マグネット63によって生じる磁界の変化を検出することで、第1回転センサ61は、出力部40の回転を検出することができる。ここで、本実施形態によれば、カップ部材16は非磁性材である。そのため、第1マグネット63と第1回転センサ61との間にカップ部材16が位置しても、第1回転センサ61による第1マグネット63の磁界の検出精度が低下することを抑制できる。
【0094】
また回転検出装置60は、不図示の被覆部を有していてもよい。特に図示しないが、被覆部は、凹所17の内部に位置する。被覆部は樹脂製であり、凹所17の内部に充填される。第2配線部材92の下端部、すなわち配線部材90の一端部および第1回転センサ61は、被覆部に埋め込まれて覆われることが好ましい。この場合、凹所17内に位置する配線部材90の一端部および第1回転センサ61に水分等が接触することを阻止できる。
【0095】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0096】
前述の実施形態では、モータケース12のギア押さえ部12eが、中心軸J1を中心とする環状である例を挙げたが、これに限らない。特に図示しないが、ギア押さえ部12eは、ケース筒部12aの下端部に、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられてもよい。この場合、モータケース12を樹脂成形するときに、ギア押さえ部12eの樹脂の引けによる位置ずれを抑制できる。このため、ギア押さえ部12eが軸方向Zに押さえる内歯ギア33の位置精度が、より向上する。
【0097】
前述の実施形態では、偏心軸部21aのバランス凹部21bが、テーパ面部21cの所定方向Pの端部に配置される例を挙げたが、これに限らない。特に図示しないが、バランス凹部21bは、偏心軸部21aの所定方向Pの端部に配置される溝であってもよい。溝は、例えば軸方向Zに延びる。この場合、バランス凹部21bの機能を、溝の長さ、溝幅、溝の数等によって調整しやすくできる。またバランス凹部21bに、例えばキー溝の機能等を付加することもできる。
【0098】
また、前述の実施形態で説明した電動アクチュエータ10の用途は限定されず、電動アクチュエータ10は、いかなる機器に搭載されてもよい。前述した実施形態の電動アクチュエータ10は、例えば車両に搭載される。
【0099】
その他、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例およびなお書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0100】
10…電動アクチュエータ、20…モータ、21…モータシャフト、21a…偏心軸部、21b…バランス凹部、21c…テーパ面部、22…ロータ、23…ステータ、30…減速機構、J1…中心軸、J2…偏心軸、P…所定方向、Z…軸方向