IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ベークライト株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ピペット用フィルタ 図1
  • 特許-ピペット用フィルタ 図2
  • 特許-ピペット用フィルタ 図3
  • 特許-ピペット用フィルタ 図4
  • 特許-ピペット用フィルタ 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】ピペット用フィルタ
(51)【国際特許分類】
   B01L 3/02 20060101AFI20230301BHJP
   B01D 39/20 20060101ALI20230301BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20230301BHJP
   C12M 1/26 20060101ALN20230301BHJP
【FI】
B01L3/02 Z
B01D39/20 B
B01D39/20 D
B01D39/20 A
G01N1/00 101K
C12M1/26
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019025878
(22)【出願日】2019-02-15
(65)【公開番号】P2020131092
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】田中 速雄
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 幸太
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-046194(JP,U)
【文献】特開2001-121005(JP,A)
【文献】実開平04-131438(JP,U)
【文献】特表2013-542849(JP,A)
【文献】米国特許第05580529(US,A)
【文献】実開平01-132237(JP,U)
【文献】特開2018-012085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01L 3/02
G01N 1/00 - 1/44
B01D 39/00 - 39/20
C12M 1/26
G01F 11/00 - 13/00
G01F 17/00 - 22/00
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピペッターの先端部と、ピペットの上端側開口部との間に装着して用いられるピペット用フィルタであって、
非生物由来の多孔体により形成された滅菌フィルタ体が内部に充填された収容体と、前記ピペッターの前記先端部に装着する部位であるピペッター装着部と、前記ピペットの前記上端側開口部に装着する部位であるピペット装着部とを備え、
前記ピペッターおよび前記ピペットに対して着脱可能であり、
さらに、前記ピペッター装着部を備える側に、前記ピペッターの前記先端部と前記ピペット用フィルタとを掛止する掛止部を有し、前記掛止部によって、前記ピペットとの装着よりも前記ピペッターとの装着の方が強く維持される構成である、
ピペット用フィルタ。
【請求項2】
前記ピペッター装着部の形状が、前記先端部と嵌合する形状であり、且つ、前記ピペット装着部の形状が、前記上端側開口部と嵌合する形状である、請求項1に記載のピペット用フィルタ。
【請求項3】
前記多孔体が、焼結金属、セラミック、多孔質ガラスから選ばれる1以上である、請求項1または2に記載のピペット用フィルタ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のピペット用フィルタが前記ピペッターの前記先端部に装着されている、フィルタ付ピペッター。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載のピペット用フィルタが前記ピペッターおよび前記ピペットに装着されている、ピペッティングセット。
【請求項6】
前記ピペットが、フィルターレスガラスピペットである、請求項に記載のピペッティングセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピペッターとピペットとの間に装着して用いられるピペット用フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野やバイオテクノロジー等の試験研究分野などにおいて、薬液などの液体について容量計量および分注を行うために、ガラスピペットやピペットチップが使用される場合がある。そして、これらのピペットは、ピペッターと呼ばれる吸入および吐出を行う器具や装置に装着されて使用される。
【0003】
ここで、ガラスピペットでは、通常、液体の誤吸入によるピペッターの破損を防ぎ、且つ、ピペッターの先端部に付着している雑菌やゴミがピペットに吸入された液体中に混入するのを防ぐために、その上端側開口部の内側に綿などによって形成された滅菌フィルタ体を備える。
【0004】
また、主に微量(例えば1mL未満)の液体について容量計量および分注を行う場合に用いるピペットチップにおいては、上記のような滅菌フィルタ体を内部に備えないものが一般的であるが、例えば特許文献1に開示されるように、その上端側開口部の内側に焼結した高分子量ポリエチレンなどからなるフィルタ体を備えるピペットチップなども知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-071306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、医療分野やバイオテクノロジー等の試験研究分野などにおいては、ピペッターは洗浄や再滅菌をすることなく繰り返し使用されるが、滅菌ピペットは、次に容量計量を行う液体が汚染されることなどを防ぐために、繰り返し使用されない(1回限りの使用である)のが通常であり、特にピペットチップはディスポーザブル(使い捨て)であるのが通常である。このような1回限りの使用となるピペットやディスポーザブルピペットであると、ピペットの上端側開口部の内側に備わる滅菌フィルタ体も、必然的に洗浄および再滅菌が必要となったり使い捨てとなったりするため、コスト面において課題がある。このコスト面における課題は、焼結フィルタ体などの高価な滅菌フィルタ体を備える場合において特に顕著である。
【0007】
また、再生医療分野などにおいては、綿などの生物由来成分を用いて作製された滅菌フィルタ体を使用した場合、この滅菌フィルタ体から繊維片などが脱落すると生物由来成分のコンタミネーションが発生してしまい、このコンタミネーションが大きな問題となるという課題もある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、生物由来成分のコンタミネーションを防ぐことができ、また、多数本のピペットに繰り返し使用することができるピペット用フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るピペット用フィルタは、ピペッターの先端部と、ピペットの上端側開口部との間に装着して用いられるピペット用フィルタであって、非生物由来の多孔体により形成された滅菌フィルタ体が内部に充填された収容体と、ピペッターの先端部に装着する部位であるピペッター装着部と、ピペットの上端側開口部に装着する部位であるピペット装着部とを備え、ピペッターおよびピペットに対して着脱可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るピペット用フィルタは、収容体の内部に充填された滅菌フィルタ体が非生物由来の多孔体により形成されているため、ピペットに吸入された液体への生物由来成分のコンタミネーションを防ぐことができる。また、ピペッターおよびピペットのいずれとも着脱可能であるため、容易に多数本のピペットに繰り返し使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係るピペット用フィルタと、そのピペッター装着部を備える側にゴム製ピペッターと、そのピペット装着部を備える側にガラスピペットとを配置した正面図である。
図2図1に示す本実施形態に係るピペット用フィルタに、図1に示すゴム製ピペッターおよびガラスピペットを装着した後における、ピペット用フィルタ付近の拡大図である。
図3】本実施形態に係るピペット用フィルタと、そのピペッター装着部を備える側にメカニカルピペッターと、そのピペット装着部を備える側にピペットチップとを配置した正面図である。
図4】本実施形態に係るピペット用フィルタに、ゴム製ピペッターおよびガラスピペットを装着し、さらに、ピペット用フィルタの掛止部により、ピペット用フィルタとゴム製ピペッターとを掛止した後における、ピペット用フィルタ付近の拡大図である。
図5】本実施形態に係るピペット用フィルタに、メカニカルピペッターおよびピペットチップを装着し、さらに、ピペット用フィルタの掛止部により、ピペット用フィルタとメカニカルピペッターとを掛止した後における、ピペット用フィルタ付近の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るピペット用フィルタ等の実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
また、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。なお、いずれの図面についても、便宜上、符号を付していない(省略している)箇所がある。
【0013】
<概要>
まず、本実施形態に係るピペット用フィルタの概要について、図1から図5の符号を参照して説明する。なお、図1および図3は本実施形態に係るピペット用フィルタと、このピペット用フィルタに装着するピペッターおよびピペットを示す正面図であり、図2図4および図5は、本実施形態に係るピペット用フィルタにピペッターおよびピペットを装着した状態を示す拡大図である。
【0014】
本実施形態に係るピペット用フィルタ1は、ピペッター3の先端部31と、ピペット5の上端側開口部51との間に装着して用いられるピペット用フィルタ1であって、非生物由来の多孔体により形成された滅菌フィルタ体12が内部に充填された収容体11と、ピペッター3の先端部31に装着する部位であるピペッター装着部15と、ピペット5の上端側開口部51に装着する部位であるピペット装着部17とを備え、ピペッター3およびピペット5に対して着脱可能である。
つまり、本実施形態に係るピペット用フィルタ1は、複数のピペット5に着脱して繰り返し使用することが可能なピペット用のフィルタである。
【0015】
ここで、本実施形態におけるピペッター3の先端部31とは、ピペッター3において、人の手などによって吸入および吐出操作を行う部位(例えば、ゴム材料を用いて作製されたゴム製ピペッターであればゴム球部および排気バルブ部、メカニカルピペッターであればプッシュボタン部)と対向する先端側の部位を意味する。つまり、本実施形態におけるピペッター3の先端部31には、ピペッター3の末端だけでなく、ピペット用フィルタ1を装着する部位およびその近傍も包含される。
【0016】
また、本実施形態におけるピペット5の上端側開口部51とは、ピペット5において、容量計量および分注を行う液体が直接接触する下端側に設けられた開口部位(下端側開口部)と対向する側、つまり上端側に設けられた開口部位を意味する。したがって、本実施形態におけるピペット5の上端側開口部51には、その上端側の開口だけでなく、ピペット用フィルタ1を装着する部位およびその近傍も包含される。
【0017】
<全体構成について>
本実施形態に係るピペット用フィルタ等の全体構成について、図1から図5を参照して説明する。
【0018】
本実施形態に係るピペット用フィルタ1は、図1から図5に示すように、非生物由来の多孔体により形成された滅菌フィルタ体12が内部に充填された収容体11と、ピペッター3の先端部31に装着する部位であるピペッター装着部15と、ピペット5の上端側開口部51に装着する部位であるピペット装着部17とを備え、ピペッター3およびピペット5に対して着脱可能となっている。なお、図1および図3においては、収容体11の内部に充填されている滅菌フィルタ体12を点線により模式的に示しており、図2図4および図5においては、滅菌フィルタ体12の表示は省略している。
そして、このピペット用フィルタ1は、図2図4および図5に示すように、ピペッター3の先端部31とピペット5の上端側開口部51との間に装着することにより、ピペッター3とピペット5とを連通関係とすることができ、ピペッター3による吸入によってピペット5の内部に液体を吸引する作用、および、ピペッター3による吐出によってピペット5の内部から液体を排出する作用を妨げない。つまり、ピペッティング操作に支障をきたすことがない。
【0019】
また、本実施形態に係るピペット用フィルタ1に備わる収容体11の内部に充填された滅菌フィルタ体12は、非生物由来の多孔体により形成され、乾熱滅菌法やγ線照射などの公知の滅菌方法により滅菌されたフィルタ体であり、上記したピペッター3とピペット5とを連通関係とするために、目詰まりがなく、気体の通過が可能となっている。しかしながら、ピペット5に吸入された液体やピペッター3の先端部31に付着している雑菌およびゴミは、この滅菌フィルタ体12を通過しない。
【0020】
ここで、本実施形態において「非生物由来」とは、綿やセルロースなどの生物由来原料により形成されているのではなく、金属、セラミック、ガラスなどの非生物由来原料により形成されていることを意味し、また、本実施形態において「多孔体」とは、セラミックなどの内部に微細な孔を有する多孔質体であるか、あるいはガラス繊維などの繊維交絡体であることを意味する。
【0021】
本実施形態に係る滅菌フィルタ体12は、このような非生物由来の多孔体により形成されているものであるが、特に、非生物由来の多孔質体である焼結金属、セラミック、多孔質ガラスから選ばれる1以上により形成されているのがより好ましい。本実施形態に係るピペット用フィルタ1の使用時において、滅菌フィルタ体12からの繊維等の脱落がなく、ピペット5に吸入された液体への不純物混入がよりし難いからである。
【0022】
さらに、本実施形態に係る滅菌フィルタ体12は、このような非生物由来の多孔体を複数種用いて形成されたものであっても良く、例えば、焼結金属とセラミックとを重ねて形成された構成などであっても良い。
また、本実施形態に係る滅菌フィルタ体12の形状については、限定されるものではないが、例えば円筒状、円盤状、板形状、球状などの、フィルタとしての機能を発揮しやすい形状であるのが好ましい。
【0023】
そして、この滅菌フィルタ体12は、本実施形態に係るピペット用フィルタ1に備わる収容体11の内部に充填されるが、単一の滅菌フィルタ体12が収容体11の内部に充填されていてもよく、あるいは複数の滅菌フィルタ体12が収容体11の内部に充填されていても良い。
例えば、収容体11の内部形状に合わせた円筒状などの滅菌フィルタ体12が一つ充填されていても良く、あるいは、円盤状や板形状の滅菌フィルタ体12が複数積層されて収容体11の内部に充填されている構成や、収容体11の内部に球状の滅菌フィルタ体12が隙間なく多数密に充填されている構成などであっても良い。
【0024】
なお、本実施形態に係るピペット用フィルタ1に備わる収容体11の形状および容量についても、上記した滅菌フィルタ体12を充填できる形状および容量であれば良く、特段限定されない。例えば、滅菌フィルタ体12の形状に合わせた円筒状、円盤状、板形状などのものが例示される。
また、この収容体11は、硬質プラスチックなどの非可塑性材料を用いて作製されたものであると、耐久性という点においてより好ましいものとなる。一方、後述するピペッター装着部15およびピペット装着部17と同じ材料(例えばエラストマー材料など)を用いて作製されたものであると、ピペット用フィルタ1を全体として同じ材料を用いて作製することができるため、製造の簡便性という点においてより好ましいものとなる。
【0025】
そして、本実施形態に係るピペット用フィルタ1は、上記した収容体11と、さらにピペッター装着部15とピペット装着部17とを備える。このピペッター装着部15とピペット装着部17は、ピペット用フィルタ1において、収容体11に充填された滅菌フィルタ体12を介してピペッター3とピペット5とを連通することができる位置に備えられる。例えば、滅菌フィルタ体12および収容体11が円盤状や板形状である場合においては、この滅菌フィルタ体12の主面を挟んだ位置にピペッター装着部15とピペット装着部17が備わるのが好ましい。
【0026】
このように、本実施形態に係るピペット用フィルタ1のピペッター装着部15をピペッター3の先端部31に装着し、ピペット装着部17をピペット5の上端側開口部51に装着して、ピペッター3とピペット5とが滅菌フィルタ体12を介して連通関係となることにより、ピペッター3による吸入作用や吐出作用が収容体11の内部に充填された滅菌フィルタ体12を介してピペット5に伝わる構成となるため、ピペット5からピペッター3への液体の誤吸入によるピペッター3の破損や、ピペッター3の先端部31に付着している雑菌やゴミがピペット5に吸入した液体に混入することを防ぐことができる。
そして、収容体11、ピペッター装着部15およびピペット装着部17を備える本実施形態に係るピペット用フィルタ1は、滅菌フィルタ体12だけでなく、全体として、滅菌フィルタ体12と同様の方法により滅菌されていても良い。
【0027】
そして、本実施形態におけるピペッター3には、図1図2および図4に示すような、主としてガラスピペットに装着して用いられるゴム製ピペッターだけでなく、図3および図5に示すような、主としてピペットチップに装着して用いられるメカニカルピペッター(電動ピペッターなど)も包含される。
【0028】
また、本実施形態におけるピペット5には、図1図2および図4に示すような、主として1mL以上の容量計量および分注を行う場合に用いるガラスピペット(ガラス製のピペット)だけでなく、図3および図5に示すような、主として1mL未満(μLオーダー)の容量計量および分注を行う場合に用いるピペットチップも包含される。そして、本実施形態におけるピペット5は、その内部に滅菌フィルタ体12を備えていないフィルターレスピペットである。なお、このピペット5は、上記した滅菌フィルタ体12と同様の方法により滅菌された滅菌ピペットであるのが好ましい。
【0029】
このように、本実施形態では、ガラスピペットやピペットチップなどのピペット5において、個々に滅菌フィルタ体12を設けるのではなく、滅菌フィルタ体12をピペット5とは別の独立した部材であるピペット用フィルタ1の収容体11に充填したことにより、この別部材であるピペット用フィルタ1を多数本のピペット5に繰り返し使用することが可能となる。
また、本実施形態に係るピペット用フィルタ1は、生物由来成分を含まない滅菌フィルタ体12が充填されていることから生物由来成分のコンタミネーション(ピペット5に吸入した生体試料などへの異種生物由来成分混入)を生じにくく、コスト面および機能面において非常に有用である。
【0030】
<ピペットおよびピペッターとの装着について>
本実施形態に係るピペット用フィルタは、上記したようにピペッターとピペットとの間に装着して用いられるが、以下、本実施形態に係るピペット用フィルタと、ピペッターおよびピペットとの装着について詳細に説明する。
【0031】
本実施形態に係るピペット用フィルタ1は、上記したように、ピペッター3の先端部31に装着するピペッター装着部15と、ピペット5の上端側開口部51に装着するピペット装着部17とを備え、例えば、図1から図5に示すように、ピペット用フィルタ1において、円盤状である収容体11の一方の主面側にピペッター装着部15が備わり、この主面側と対向するもう一方の主面側に(滅菌フィルタ体12を挟んで)ピペット装着部17が備わる構成などが好適例として示される。そして、これら装着部の装着様式については、いずれも着脱可能であり且つピペッター3とピペット5との連通関係を妨げるものでなければ特段限定されるものではない。
【0032】
なお、この装着様式について、本実施形態においては、図2に示すような、ピペット用フィルタ1において、ピペッター3の先端部31を装着するピペッター装着部15の形状が、先端部31と嵌合する形状であり、且つ、ピペット5の上端側開口部51を装着するピペット装着部17の形状が、上端側開口部51と嵌合する形状であるのがより好ましい。このような構成であることにより、ピペット用フィルタ1とピペッター3およびピペット5との着脱がより容易となるからである。
【0033】
例えば、ピペッター装着部15およびピペット装着部17がゴムなどのエラストマー材料などを用いて作製され、ピペッター3の先端部31やピペット5の上端側開口部51に嵌合させるための凸形状や凹形状などである様式などが好適例として示される。なお、ピペッター装着部15あるいはピペット装着部17が凸形状や凹形状である場合において、嵌合をよりし易くするために、この凸形状は収容体11からピペッター3側あるいはピペット5側の方向に向かってテーパー状に縮径している構成であっても良く、また凹形状はピペッター3側あるいはピペット5側から収容体11の方向に向かってテーパー状に縮径している構成であっても良い。
【0034】
ここで、本実施形態における「嵌合」とは、ピペッター装着部15およびピペット装着部17のいずれについても、外側に嵌める様式(外嵌合)と内側に嵌める様式(内嵌合)の両方を包含する意味である。
このような構成の例としては、図2および図4のような、ピペッター装着部15がゴム製ピペットの先端部31に設けられた差し込み孔と同一形状の凸形状であって、この先端部31に設けられた差し込み孔にこのピペッター装着部15を差し込んで内嵌合させる構成であり、さらに、ピペット装着部17がガラスピペットの上端側開口部51と同一形状の凹形状であって、このピペット装着部17をこの上端側開口部51に差し込んで外嵌合させる構成や、図5のような、ピペッター装着部15がメカニカルピペッターの先端部31と同一形状の凹形状であって、この先端部31をこのピペッター装着部15に差し込んで外嵌合させる構成であり、さらに、ピペット装着部17がピペットチップの上端側開口部51の開口と同一形状の凸形状であって、この上端側開口部51の開口にこのピペット装着部17を差し込んで内嵌合させる構成などが示される。
【0035】
なお、本実施形態に係るピペット用フィルタ1においては、ピペッター装着部15の形状か、あるいは、ピペット装着部17の形状のいずれか一方が、ピペッター3の先端部31あるいはピペット5の上端側開口部51と嵌合する形状である構成であっても良いが、ピペッター3およびピペット5のいずれもがより着脱し易いという点において、上記したような、ピペッター装着部15およびピペット装着部17の両方が、ピペッター3の先端部31およびピペット5の上端側開口部51と嵌合する形状である構成であるのがより好ましい。
【0036】
また、本実施形態に係るピペット用フィルタ1は、ピペット5との装着と比較して、ピペッター3との装着の方が強く維持される構成であるのがより好ましい。このような構成であることにより、ピペット5については着脱が非常に容易でありながら、このピペット5の着脱時などにおいてピペッター3とピペット用フィルタ1との装着状態は維持されやすく、このピペッター3とピペット用フィルタ1とを多数本のピペット5に繰り返し使用することがより容易となるからである。
【0037】
特に、本実施形態に係るピペット用フィルタ1が、ピペット5との装着よりもピペッター3との装着の方が強く維持されている構成とするために、本実施形態に係るピペット用フィルタ1は、図4および図5に示すような、ピペッター装着部15を備える側に、ピペッター3の先端部31とピペット用フィルタ1とを掛止することができる掛止部13を有するのが好ましい。この掛止部13によって、ピペット用フィルタ1とピペッター3との装着は非常に強く維持されるため、ピペット用フィルタ1からピペット5を脱離するときなどに、ピペッター3とピペット用フィルタ1とが意図せず脱離することを抑制することができ、これらを多数本のピペット5に繰り返し使用することがより容易となる。
【0038】
ここで、本実施形態において「掛止」とは、引っ掛けて固定することを意味し、したがって本実施形態における「掛止部13」とは、少なくともピペッター3の先端部31におけるいずれかの部分に引っ掛けることが可能な部材を意味する。
【0039】
そして、本実施形態における掛止部13としては、例えば、図4に示すような、ゴム製ピペッターの先端部31の末端に備わる鍔状の突起に引っ掛けることが可能なフック状の部材や、図5に示すような、メカニカルピペッターの先端部31に備わる、ピペットチップを直接装着した場合に装着したピペットチップを脱離させるための部材であるチップインジェクター33に引っ掛けることが可能なフック状の部材などが示される。特に、本実施形態における掛止部13がフック状の部材である場合において、このフック状の部材におけるピペッター3を掛止する側の先端部が爪状あるいは針状であると、ピペッター3としてゴム製ピペッターを用いた時などにおいて、ピペット用フィルタ1のピペッター3への装着が極めて強く維持できるため好ましい。
【0040】
さらに、この掛止部13は、上記したようなピペッター3の先端部31に加えて、ピペッター3の先端部31以外の部位(例えばゴム製ピペッターの排気バルブ部など)にも引っ掛けて固定できる部材であっても良く、さらに、ピペット用フィルタ1のピペッター装着部15を備える側から起立していたり、接続部材(蝶番など)によりピペット用フィルタ1と接続されていたりしても良く、少なくともピペット用フィルタ1とピペッター3の先端部31とを掛止することができる形状および様式であれば、他は限定されない。
また、この掛止部13に用いられる材料も、熱可塑性樹脂、エラストマー材料、金属などが例示されるが、これも限定されるものではない。
【0041】
なお、本実施形態に係るピペット用フィルタ1では、このようなピペッター装着部15を備える側に掛止部13を有する場合において、ピペット装着部17を備える側にも、ピペット5の上端側開口部51とピペット用フィルタ1とを掛止することができる部材を有していても良いが、上記したような、ピペット用フィルタ1とピペッター3とを多数本のピペット5に繰り返し使用することをより容易とするためには、ピペッター装着部15を備える側に掛止部13を有し、ピペット装着部17を備える側にはピペット5の上端側開口部51とピペット用フィルタ1とを掛止する部材を有しない実施形態であるのがより好ましい。
【0042】
また、本実施形態に係るピペット用フィルタ1は、このピペット用フィルタ1が単体として流通、販売されても良く、さらには、ピペット用フィルタ1とピペッター3とを備え、ピペット用フィルタ1がピペッター3の先端部31に装着されているフィルタ付ピペッター、あるいは、ピペット用フィルタ1とピペッター3とピペット5とを備え、ピペット用フィルタ1がピペッター3の先端部31およびピペット5の上端側開口部51に装着されているピペッティングセットとして流通、販売されても良い。
そして、このピペッティグセットにおいて、ピペット用フィルタ1が装着されるピペット5は、その上端側開口部51の内部にフィルタが備えられていないガラス製のピペット、つまりフィルターレスガラスピペットであるのがより好ましい。
【0043】
以上のような実施形態を含む本発明に係るピペット用フィルタは、滅菌フィルタ体が非生物由来の多孔体により形成されているため、ピペットに吸入された液体への生物由来成分のコンタミネーションを防ぐことができる。さらに、本発明に係るピペット用フィルタは、ピペットおよびピペッターのいずれとも着脱可能であり、且つこの着脱が容易であるため、多数本のフィルターレスピペットに繰り返し使用することができる。これは、コスト面においても大きな有用性がある。また、ピペッターからピペットに吸入された液体への雑菌やゴミなどの混入を防ぐこともできる。
【0044】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)ピペッターの先端部と、ピペットの上端側開口部との間に装着して用いられるピペット用フィルタであって、非生物由来の多孔体により形成された滅菌フィルタ体が内部に充填された収容体と、前記ピペッターの前記先端部に装着する部位であるピペッター装着部と、前記ピペットの前記上端側開口部に装着する部位であるピペット装着部とを備え、前記ピペッターおよび前記ピペットに対して着脱可能である、ピペット用フィルタ。
(2)前記ピペッター装着部の形状が、前記先端部と嵌合する形状であり、且つ、前記ピペット装着部の形状が、前記上端側開口部と嵌合する形状である、(1)に記載のピペット用フィルタ。
(3)前記ピペッター装着部を備える側に、前記ピペッターの前記先端部と前記ピペット用フィルタとを掛止する掛止部を有する、(1)または(2)に記載のピペット用フィルタ。
(4)前記多孔体が、焼結金属、セラミック、多孔質ガラスから選ばれる1以上である、(1)~(3)のいずれか1つに記載のピペット用フィルタ。
(5)(1)~(4)のいずれか1つに記載のピペット用フィルタが前記ピペッターの前記先端部に装着されている、フィルタ付ピペッター。
(6)(1)~(4)のいずれか1つに記載のピペット用フィルタが前記ピペッターおよび前記ピペットに装着されている、ピペッティングセット。
(7)前記ピペットが、フィルターレスガラスピペットである、(6)に記載のピペッティングセット。
【符号の説明】
【0045】
1 ピペット用フィルタ
3 ピペッター
5 ピペット
11 収容体
12 滅菌フィルタ体
13 掛止部
15 ピペッター装着部
17 ピペット装着部
31 先端部
33 チップインジェクター
51 上端側開口部
図1
図2
図3
図4
図5