(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】粉体塊成物および粉体塊成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C22B 1/248 20060101AFI20230301BHJP
B01J 2/12 20060101ALI20230301BHJP
B01J 2/14 20060101ALI20230301BHJP
B01J 2/28 20060101ALI20230301BHJP
B09B 3/20 20220101ALI20230301BHJP
B09B 3/40 20220101ALI20230301BHJP
C22B 1/02 20060101ALI20230301BHJP
C22B 1/244 20060101ALI20230301BHJP
C21B 5/00 20060101ALN20230301BHJP
C21C 5/28 20060101ALN20230301BHJP
C21C 5/52 20060101ALN20230301BHJP
【FI】
C22B1/248 ZAB
B01J2/12
B01J2/14
B01J2/28
B09B3/20
B09B3/40
C22B1/02
C22B1/244
C21B5/00 301
C21C5/28 Z
C21C5/52
(21)【出願番号】P 2019047045
(22)【出願日】2019-03-14
【審査請求日】2021-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】谷田 晃
(72)【発明者】
【氏名】弘中 諭
(72)【発明者】
【氏名】高野 元志
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-025164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00-61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メジアン粒子径が5μm以下、かつ、ブレーン法で求まる比表面積が0.8m
2/g以上である鉄含有物
を原料とする粉体塊成物であって、
湿潤状態における粒子径が1mm以下の粉末の割合が5質量%未満、かつ、湿潤状態における圧潰強度が200kPa以上である、粉体塊成物。
【請求項2】
前記鉄含有物が酸洗ラインで発生する酸化鉄を培焼して得られる酸化鉄を含む、請求項1に記載の粉体塊成物。
【請求項3】
バインダを含む、請求項1または2に記載の粉体塊成物。
【請求項4】
前記バインダは、でんぷん、パルプ廃液、糖蜜、水飴、またはカルボキシメチルセルロースからなる群より選択される1種または2種以上のバインダが含まれる、請求項3に記載の粉体塊成物。
【請求項5】
メジアン粒子径が5μm以下、かつ、ブレーン法で求まる比表面積が0.8m
2/g以上である鉄含有物を含む原料を、内部に撹拌部材が設置された転動型造粒機を用いて鉄含有物を造粒する造粒工程を含む、粉体塊成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体塊成物および粉体塊成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄プロセスの副産物として、ダストやスラッジ、スケール、地金等の鉄分を多量に含有する鉄含有物が発生する。これら副産物は、資源の有効利用の観点から、製鉄工程で再利用される事が多いが、粉体のままでは再利用が難しいため、ペレットやブリケットに造粒処理した後に再利用される事が多い。
【0003】
鉄含有物の一種として、酸洗ラインの酸回収装置で発生する細粒の酸化鉄がある。酸回収装置では、発生した熱延スケールを培焼することにより、塩酸とともに純度の高い酸化鉄が回収される。回収された酸化鉄は、粒子が細かく、かつ、低水分なため、ハンドリング時等において発塵や着色等が問題となる。
【0004】
鉄含有物の造粒処理方法として、引用文献1には、ダスト等の原料の含水率や塊成化後の養生方法を制御することで、高強度の造粒物を製造する方法について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-149095号公報(2011年8月4日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法は、金属鉄の酸化にともなう発熱反応を利用して高強度化するため、金属鉄を含有する原料に限定される。また、造粒後に数日程度養生した後の強度に着目しているため、造粒直後の湿潤状態での強度については不明である。
【0007】
本発明の一態様は、ハンドリング性が良好な粉体塊成物を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る粉体塊成物は、メジアン粒子径が5μm以下、かつ、ブレーン法で求まる比表面積が0.8m2/g以上である鉄含有物を含む原料を造粒することにより得られる粉体塊成物であって、湿潤状態における粒子径が1mm以下の粉末の割合が5質量%未満、かつ、湿潤状態における圧潰強度が200kPa以上である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、発塵および着色が抑制されたハンドリング性が良好な粉体塊成物を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る粉体塊成物に用いる鉄含有物の粒度分布の一例を示す図である。
【
図2】本発明の実施例に係る粉体塊成物の外観を示す図である。
【
図3】本発明の実施例に係る粉体塊成物の粒度分布を示す図である。
【
図4】本発明の実施例に係る粉体塊成物の圧潰強度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0012】
〔粉体塊成物〕
本実施形態に係る粉体塊成物は、鉄含有物を含む。鉄含有物は、製鉄過程における、酸洗ラインの酸回収装置などで発生する熱延スケールを培焼することにより得られる。
【0013】
粉体塊成物全体の質量に対する、粒子径が1mm以下の湿潤状態の粉体塊成物の質量の割合が、5質量%未満であることが好ましい。粒子径が1mm以下の湿潤状態の粉体塊成物の質量の割合が5質量%未満であることにより、ハンドリング時の発塵または着色を抑制できる。なお、本実施形態において、湿潤状態の粉体塊成物とは、鉄含有物を造粒した粉体塊成物であって、乾燥を行っていない粉体塊成物である。
【0014】
粉体塊成物の湿潤状態における圧潰強度は、200kPa以上であることが好ましい。粉体塊成物の湿潤状態における圧潰強度が200kPa以上であることにより、ハンドリング時などに粉体塊成物が粉化することを抑制できる。なお、湿潤状態の粉体塊成物の圧潰強度の測定は、粒子径が6~8mmの粉体塊成物に対して、JIS M 8718:2009に準拠して評価した。
【0015】
粉体塊成物はバインダを含んでもよく、バインダを含まなくてもよい。粉体塊成物の作製においてバインダを用いないことにより、粉体塊成物を作製するために必要な原材料のコストを低減することができる。なお、本実施形態に係る粉体塊成物は、バインダを用いずに作製した。また、バインダを用いて粉体塊成物を作製する場合では、でんぷん、パルプ廃液、糖蜜、水飴、またはカルボキシメチルセルロース(CMC)などから1種または2種以上を用いてもよい。なお、バインダを用いて粉体塊成物を作製することにより、粉体塊成物の圧潰強度を上げることができる。
【0016】
(鉄含有物)
鉄含有物は、酸化鉄を主成分とし、SiO2、Cr2O3などを含んでもよく、例えば、熱延スケールを焙焼して得られる細粒の酸化鉄などである。
【0017】
鉄含有物は、メジアン粒子径が5μm以下、かつブレーン法により求まる比表面積が0.8m2/g以上である。そのため、比表面積が大きく、かつメジアン粒子径が小さいことから、発塵等の問題を有する。なお、メジアン粒子径は、平均粒子径であり、D50とも称する。
【0018】
〔粉体塊成物の作製方法〕
(造粒工程)
粉体塊成物の作製方法として、造粒工程を含む。造粒工程は、鉄含有物を原料として造粒することにより粉体塊成物を作製する工程である。
【0019】
粉体塊成物の造粒方法は、内部に撹拌部材が設置された転動型造粒機を用いる。内部に撹拌部材が設置された転動型造粒機を鉄含有物の造粒に用いることにより、撹拌部材の圧縮、剪断、および挟み込み作用により、粒子径の小さな鉄含有物を強固かつ大きな粒子に造粒できる。具体的には、湿潤状態における粒子径が1mm以下の粉体塊成物の重量が、5質量%未満となる。また、湿潤状態における圧潰強度が200kPa以上となる。撹拌部材は、撹拌翼または撹拌棒等であってよく、さらに撹拌棒は、パドルまたはロッドを備えてよい。
【0020】
鉄含有物を造粒する機構は、例えば、主に撹拌棒に形成されるパドルまたはロッドの剪断力により粉体塊成物を造粒する転動型造粒機であってよく、主に撹拌棒に形成されるパドルに挟まれた鉄含有物を圧縮することにより造粒する転動型造粒機であってよい。さらに、造粒工程の前に内部にパドルやロッドが設置された混練機で原料を混練してもよい。混練と造粒を組み合わせる事で、原料の圧密効果がさらに高まり、より高強度の造粒物を作製することができる。または、造粒において添加する水の量を減らすことができる。
【0021】
なお、粉体塊成物の作製方法において、内部に撹拌部材が設置された機構の転動型造粒機であれば、下記の条件に限定されず、適宜容積および造粒の機構に応じて変更できる。
【0022】
(転動型造粒機による粉体塊成物の作製方法)
粉体塊成物の作製方法の一例として、撹拌棒にパドルまたはロッドが形成されており、主に撹拌棒に形成されるパドルに挟まれた鉄含有物を圧縮することにより造粒する機構の転動型造粒機による粉体塊成物の作製条件について以下に示す。
【0023】
本発明の一態様における転動型造粒機は、撹拌棒を2つ備えた転動型造粒機であって、撹拌棒は軸のように転動型造粒機の内部に並行に設置される。2つの軸には、ピン、ロッド、またはパドルなどの突起物が、回転時に互いの軸に備えた突起物と衝突しないように設置される。転動型造粒機は、突起物を備えた2つの軸が回転することにより発生する、突起物による、鉄含有物に対する圧縮、せん断、挟み込み、および衝撃作用により粉体塊成物を作製する。
【0024】
転動型造粒機の軸回転数は、100~150回転/分であることが好ましい。軸回転数が100回転/分以上であることにより、転動型造粒機に投入される鉄含有物を十分に撹拌することができる。また、軸回転数が150回転/分以下であることにより、作製される粉体塊成物が、転動型造粒機の軸に備えた突起物により高く跳ね上げられることを抑制できる。それにより、粉体塊成物が高く跳ね上げられることによる落下の衝撃が小さくなるので、圧密効果の低下を抑制できる。
【0025】
転動型造粒機において添加する水の量は、添加する鉄含有物の質量に対して15.5質量%以上であることが好ましく、より好ましくは16.0質量%以上18.0質量%以下である。添加する水の量が16.0質量%以上であることにより、1mm以下の微細な粉体塊成物の発生を抑制できる。また、添加する水の量が18.0質量%以下であることにより、粉体塊成物がスラリー状とならず、ハンドリング性が良好な粉体塊成物が得られる。
【0026】
鉄含有物の転動型造粒機への投入方法は、特に限定されず、ベルトコンベアなどを用いて連続的に鉄含有物を投入してよい。
【0027】
転動型造粒機の2つの軸が回転する速さは、互いの軸を異なった速度の比(不等速比とも称する)であることが好ましい。不等速比で2つの軸が回転することにより、互いの軸に設置された突起物により軸に付着した、鉄含有物を含む原料をまんべんなく掻き落とすことができる。
【0028】
(転動型造粒機と混練機との組合せによる粉体塊成物の製造条件)
粉体塊成物の製造方法の別の一例として、造粒機同様、内部にパドルまたはロッドが設置された撹拌棒を2つ有する混練機にて混練を行った後、主に撹拌棒に形成されるパドルに挟まれた鉄含有物を圧縮することにより造粒する機構の転動型造粒機を用いて造粒する場合における粉体塊成物の製造方法について以下に示す。なお、本実施形態では、水は、混練機を用いた混練工程で添加する。また、主に撹拌棒に形成されるパドルに挟まれた鉄含有物を圧縮することにより造粒する機構の転動型造粒機は、上述の製造方法と同じであるため、記載を省略する。
【0029】
内部に撹拌棒を有する混練機では、軸回転数は30~50回転/分であることが好ましい。軸回転数が30回転/分以上であることにより、投入される鉄含有物を十分に撹拌することができる。また、軸回転数が50回転/分以下であることにより、作製される粉体塊成物が突起物により高く跳ね上げられることを抑制できる。それにより、粉体塊成物が高く跳ね上げられることによる落下の衝撃が小さくなるので、圧密効果の低下を抑制できる。
【0030】
混練機と造粒機とを組み合わせて粉体塊成物を製造する場合において、添加する水の量の割合は、添加する鉄含有物の質量に対して13.5質量%以上であることが好ましく、より好ましくは14.0質量%以上16.0質量%以下である。添加する水の量が14.0質量%以上であることにより、1mm以下の微細な粉体塊成物の発生を抑制できる。また、添加する水の量が16.0質量%以下であることにより、粉体塊成物がスラリー状とならず、ハンドリングしやすい粉体塊成物が得られる。
【0031】
混練機における鉄含有物の滞留時間は、1~3分であることが好ましい。鉄含有物の滞留時間が1分未満であることにより、パドルまたはロッドの剪断力により造粒する機構の転動型造粒機における混合による圧密効果が小さく、作製した粉体塊成物の圧潰強度が低くなる。また、作製された粉体塊成物の水分のばらつきが大きくなる。鉄含有物の滞留時間が3分以上であることにより、パドルまたはロッドの剪断力により造粒する機構の転動型造粒機の羽根等の摩耗の度合いが大きくなり、装置の負荷が増大する。
【0032】
(粉体塊成物の作製方法におけるその他の工程)
粉体塊成物を作製するその他の工程として、乾燥工程を含んでよい。乾燥工程は、作製した粉体塊成物を乾燥する工程であり、乾燥方法は特に限定されない。粉体塊成物の乾燥方法として、例えば、減圧環境下に粉体塊成物を設置し、粉体塊成物に含まれる水分を蒸発させることにより粉体塊成物を乾燥させてよい。また、粉体塊成物に熱を加えて粉体塊成物に含まれる水分を蒸発させることにより粉体塊成物を乾燥させてよい。
【0033】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【実施例】
【0034】
本発明の実施例について以下に説明する。
【0035】
(細粒酸化鉄)
本発明の実施例に係る原料(鉄含有物)としての、酸洗ラインで発生する細粒酸化鉄の粒度分布および組成の一例について
図1および表1に示す。
【表1】
【0036】
図1に示す様に、本実施例において用いた細粒酸化鉄の粒度分布におけるD50(メジアン粒子径)は、4.3μmである。また、
図1に示す鉄含有物は、表1に示す様に、Fe
2O
3をおよそ95質量%以上含み、Fe
2O
3以外の組成である、SiO
2、Cr
2O
3、およびAl
2O
3は1質量%未満である。
【0037】
〔原料および造粒方法について〕
図1および表1に示す細粒酸化鉄、ダスト、および地金について、造粒に用いる転動型造粒機を変更し粉体塊成物を作製した。作製した粉体塊成物について、造粒性および湿潤状態における圧潰強度について評価した。なお、ここで、細粒酸化鉄は、製鉄過程における、酸洗ラインの酸回収装置などで発生する熱延スケールを培焼することにより得た。ダストは、製鋼の集塵機より回収した鉄含有物、地金は転炉鍋に付着した地金を破砕・分級して得られた鉄含有物である。
【0038】
原料として用いた細粒酸化鉄、ダスト、および地金のD50、および比表面積を表2に示す。そして細粒酸化鉄、ダスト、および地金を用いて造粒方法を変更し、粉体塊成物の造粒性および湿潤状態における粉体塊成物の圧潰強度から、作製した粉体塊成物を評価した。評価した結果を表3に示す。
【表2】
【表3】
【0039】
なお、造粒性は、湿潤状態における1mm以下の粒子径の粉体塊成物の質量が、粉体塊成物全体の質量に対して5質量%未満の場合を「○」、湿潤状態における1mm以下の粒子径の粉体塊成物の質量が、粉体塊成物全体の質量に対して5質量%以上の場合を「×」として示した。また、粉体塊成物の圧潰強度は、湿潤状態における粉体塊成物の圧潰強度が200kPa以上の場合を「○」、湿潤状態における粉体塊成物の圧潰強度が200kPa未満の場合を「×」として示した。なお、湿潤状態の粉体塊成物の圧潰強度の測定は、粒子径が6~8mmの粉体塊成物に対して、JIS M 8718:2009に準拠して評価した。
【0040】
(粉体塊成物の作製方法)
粉体塊成物の作製方法として、表2に示す原料(細粒酸化鉄、ダスト、または地金)を用い表3に示す造粒方法により粉体塊成物を作製した。
【0041】
No.1では、原料として細粒酸化鉄を用い、ダウミキサ(新日南製、登録商標)を用いて混練した後、ダウペレタイザ(新日南製、登録商標)において造粒することにより粉体塊成物を作製した。ダウミキサでは、軸回転数が33rpm、パドル配列がPX、滞留時間が2分、不等速比が5:4、水を細粒酸化鉄の質量に対して14質量%添加し造粒した。そして、造粒した細粒酸化鉄をダウペレタイザにて、軸回転数が150rpm、傾斜角5°、不等速比9:8にてさらに造粒することにより粉体塊成物を作製した。
【0042】
No.2では、原料として細粒酸化鉄を用い、直径が1mのパンペレタイザ(登録商標)を用いて粉体塊成物を作製した。パンペレタイザの稼働条件として、パンの回転数を12rpm、傾斜角を40°とした。なお、パンペレタイザは、撹拌部材を備えない転動型造粒機である。
【0043】
No.3では、原料として細粒酸化鉄を用い、ブリケットマシンを用いて粉体塊成物を作製した。ブリケットマシンのロールは、径が228mm、幅が76mm、ポケットサイズが28×26×6.5mmであり、ロール回転速度を6rpm、線圧を0.4kN/cmとした。なお、ブリケットマシンは、ロール型圧縮成形機である。
【0044】
No.4では、原料としてダストを用い、No.1と同じ条件にてダウミキサおよびダウペレタイザを用いて粉体塊成物を作製した。
【0045】
No.5では原料として地金を用い、No.1と同じ条件にてダウミキサおよびダウペレタイザを用いて粉体塊成物を作製した。
【0046】
(結果)
まず、粉体塊成物を作製するために、原料として細粒酸化鉄、ダスト、および地金を用いた場合(No.1、4、および5)において、粉体塊成物の造粒性および粉体塊成物の圧潰強度を評価した。
【0047】
表3に示すように、細粒酸化鉄を用いて作製した粉体塊成物の造粒性および粉体塊成物の圧潰強度はともに良好であった。一方、ダストおよび地金を用いて作製した粉体塊成物(No.4および5)では、粉体塊成物の造粒性は良好であったが、湿潤状態の粉体塊成物の圧潰強度が200kPa以下となった。これは、表2に示すように、ダストおよび地金の比表面積が細粒酸化鉄に比べて小さく、水による粉体同士の結合力が小さくなったためであると考えられる。
【0048】
次に、粉体塊成物を作製するために細粒酸化鉄を用い、粉体塊成物を作製する装置を変更した場合(No.1、2、および3)において、作製した粉体塊成物の造粒性および粉体塊成物の圧潰強度を評価した。
【0049】
ダウミキサおよびダウペレタイザを用いて作製した粉体塊成物は、造粒性および粉体塊成物の圧潰強度がともに良好であった。
【0050】
一方、パンペレタイザを用いて作製した粉体塊成物(No.2)は、造粒性は良好であったが、湿潤状態の粉体塊成物の圧潰強度が200kPa以下となった。これは、撹拌部材を備えない転動型造粒機を用いることにより、粉体塊成物に対して造粒時に加えられる力が低下し、気孔率の大きい粉体塊成物が作製されたためと考えられる。
【0051】
また、ブリケットマシンを用いて作製した粉体塊成物(No.3)では、湿潤状態の粉体塊成物において、1mm以下の粒子径の粉体塊成物が、粉体塊成物の質量全体に対して5質量%以上であり、かつ、湿潤状態の粉体塊成物の圧潰強度が200kPa以下であった。
【0052】
このように細粒酸化鉄を用いて作製する粉体塊成物は、ダウミキサおよびダウペレタイザを用いて粉体塊成物を作製することにより、造粒性および粉体塊成物の圧潰強度がともに良好な粉体塊成物が得られた。
【0053】
〔水の量について〕
粉体塊成物の作製方法における水の量の、造粒性および粉体塊成物の圧潰強度に与える影響について評価した。
【表4】
【0054】
表4に示すように、No.6~9は、ダウペレタイザのみを用いて粉体塊成物を作製した。また、No.10~12は、ダウミキサとダウペレタイザとを用いて粉体塊成物を作製した。なお、ダウミキサは、原料の投入方向から排出方向に向かって延伸する軸方向において、撹拌棒は原料の進行方向に向かってパドルが広がるように設置されたパドル(「正方向のパドル」と称する)と、原料の進行方向に向かってパドルが狭まるように設置されたパドル(「逆方向のパドル」と称する)と、を備える。そして、ダウミキサにおけるパドル配列のPXとは、正方向のパドルが2つ連続し、正方向のパドルの両端それぞれに対して1つの逆方向のパドルが形成されたパドルの配列である。
【0055】
(結果)
ダウペレタイザのみを用いて粉体塊成物を作製したNo.6~9の方法では、添加する水の量を15.2質量%から19.0質量%まで変更した。また、ダウミキサとダウペレタイザと用いて粉体塊成物を作製したNo.10~12の方法では、添加する水の量を13.1質量%から15.0質量%まで変更した。作製した粉体塊成物の外観を
図2に示す。また、作製した粉体塊成物の粒度分布を
図3に示す。そして、作製した粉体塊成物の湿潤状態および乾燥状態の圧潰強度を
図4に示す。
【0056】
図2の(a)は、No.6の方法により作製された粉体塊成物の外観の図であり、
図2の(b)は、No.7の方法により作製された粉体塊成物の外観の図であり、
図2の(c)は、No.9の方法により作製された粉体塊成物の外観の図であり、
図2の(d)は、No.11の方法により作製された粉体塊成物の外観の図である。
図3の(a)は、No.6~8の方法にて作製した粉体含有塊成物の粒度分布を示し、
図3の(b)は、No.10~12の方法にて作製した粉体塊成物の粒度分布を示す。
図4は、No.6~8、およびNo.10~12の方法にて作製した粉体塊成物の湿潤状態における圧潰強度と、乾燥状態における圧潰強度と、を示す。また、
図4では、対照として、No.2の方法にて水を粉体塊成物に対して22.0質量%含むよう作製した粉体塊成物の湿潤状態における圧潰強度と、乾燥状態における圧潰強度と、を示す。乾燥状態の圧潰強度は、湿潤状態の粉体塊成物を乾燥機で105℃において12時間以上乾燥させて水分を除去した後測定した。
【0057】
表4のNo.6~9ではダウペレタイザのみを用いて粉体塊成物を作製した。
図2にNo.6、7、および9の方法により作製した粉体塊成物の外観の図を示し、
図3の(a)にNo.6、7および8の方法により作製した粉体塊成物の粒度分布を示す。また、
図4にNo.6、7、および8の方法により作製した粉体塊成物の湿潤状態における圧潰強度と、乾燥状態における圧潰強度と、を示す。
【0058】
No.6の方法により作製した粉体塊成物は、
図2の(a)および
図3の(a)に示すように、湿潤状態における1mm以下の粒子径である粉体塊成物が、粉体塊成物全体の質量に対して5質量%以上含む。そのため、微粉が多く、ハンドリング性に劣る粉体塊成物が得られた。
【0059】
No.7の方法により作製した粉体塊成物は、
図2の(b)および
図3の(a)に示すように、湿潤状態における1mm以下の粒子径である粉体塊成物が、粉体塊成物全体の質量に対して5質量%以下である。
【0060】
No.8の方法により作製した粉体塊成物は、
図3の(a)に示すように、湿潤状態における1mm以下の粒子径の粉体塊成物が、粉体塊成物全体の質量に対して5質量%以下である。
【0061】
No.9の方法により作製した粉体塊成物は、
図2の(c)に示すように添加した水が多く、スラリーを形成した。そのため、粒度分布を測定できなかった。また、圧潰強度についても測定できなかった。
【0062】
以上のようにNo.6~9に示すようにダウペレタイザのみを用いて粉体塊成物を作製することにより、添加する水を16.0質量%~18.0質量%とすることにより、粉体塊成物の粒度分布および湿潤状態における粉体塊成物の圧潰強度が200kPa以上となり、ハンドリング性の良好な粉体塊成物が作製できた。
【0063】
また、表4のNo.10~12では、ダウミキサとダウペレタイザとを用いて粉体塊成物を作製した。
【0064】
No.10の方法により作製した粉体塊成物は、
図3の(b)に示すように湿潤状態における1mm以下の粒子径の粉体塊成物が、粉体塊成物全体の質量に対して5質量%以上含む。そのため、微粉が多く、ハンドリング性に劣る粉体塊成物が得られた。
【0065】
No.11の方法により作製した粉体塊成物は、
図2の(d)および
図3の(b)に示すように、湿潤状態における1mm以下の粒子径の粉体塊成物が、粉体塊成物全体の質量に対して5質量%以下である。
【0066】
No.12の方法により作製した粉体塊成物は、
図3の(b)に示すように、湿潤状態における1mm以下の粒子径の粉体塊成物が、粉体塊成物全体の質量に対して5質量%以下である。
【0067】
以上のようにNo.10~12に示すようにダウミキサとダウペレタイザとを連続して用いて粉体塊成物を作製することにより、添加する水を14.0質量%~15.0質量%とすることにより、粉体塊成物の粒度分布および湿潤状態における粉体塊成物の圧潰強度が200kPa以上となり、ハンドリング性の良好な粉体塊成物が作製できた。
【0068】
また、No.6~8、および10~12の方法により作製した粉体塊成物は、
図4に示すように、湿潤状態における粉体塊成物の圧潰強度は、200kPaを超え、ハンドリング時などに粉化しにくい粉体塊成物が得られた。なお、No.2の方法により作製した粉体塊成物は、湿潤状態における圧潰強度が100kPaであった。