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特許7234729ノズル、塗布装置および塗布方法並びにディスプレイ用部材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】ノズル、塗布装置および塗布方法並びにディスプレイ用部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/02 20060101AFI20230301BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20230301BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20230301BHJP
   B05D 5/06 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
B05C5/02
B05C11/10
B05D1/26 Z
B05D5/06 101B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019055847
(22)【出願日】2019-03-25
(65)【公開番号】P2020157172
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】北村 義之
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-264782(JP,A)
【文献】特開2013-192983(JP,A)
【文献】特開2011-177707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00-21/00
B05D 1/00-7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布液が供給される塗布液供給口と、塗布液供給口から内部に流入する塗布液を塗布幅方向に拡幅するマニホールドと、該マニホールドに連通して塗布液が下流に向かって流れる複数の流出流路と、該複数の流出流路それぞれの下流側端部で開口して塗布液が外部に吐出される複数の吐出口と、を有するノズルであって、前記吐出口を含む吐出口先端面と、前記吐出口の塗布幅方向両端で上流側に向けて連なる外側斜面とで、下流側に突き出る突出部を外部に形成するとともに、前記流出流路の塗布幅方向両端に存在する両端流出面と前記外側斜面とで、塗布方向に延びる線状のエッジを形成し、前記両端流出面と前記外側斜面とがなす角度は60度以上90度以下であり、かつ、前記吐出口を含む平面と前記外側斜面とがなす角度は5度以上85度以下であることを特徴とするノズル。
【請求項2】
記吐出口を含む平面と前記両端流出面とがなす角度は15度以上85度以下であることを特徴とする請求項1に記載のノズル。
【請求項3】
請求項1または2に記載のノズルと、該ノズルに定量の塗布液を供給する塗布液供給装置と、基材を保持する基材載置台と、前記ノズルおよび前記基材載置台のうちの少なくとも一方を相対的に移動させる移動装置と、前記ノズルを基材に近接させる近接装置と、前記ノズルの吐出口を前記基材上の任意の場所に位置合わせをする位置合わせ装置と、を備えている塗布装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載のノズルを所望する場所で基材に近接させ、前記ノズルに塗布液を供給して前記ノズルの吐出口から塗布液を吐出するとともに、前記基材の前記ノズルに対する相対移動を行って、前記基材上にストライプ塗布膜を形成することを特徴とする塗布方法。
【請求項5】
請求項に記載の塗布方法を用いて、ディスプレイ用部材を製造することを特徴とするディスプレイ用部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属、ガラス、フィルム、紙等の基材に、ストライプ状に塗布液を塗布してストライプ塗布膜を形成するノズル、塗布装置および塗布方法並びにディスプレイ用部材の製造方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
金属、ガラス、フィルム、紙等の基材に、塗布膜を所望の幅とピッチでストライプ状に多数形成するストライプ塗布膜形成方法が注目されている。そして、このストライプ塗布膜を簡便かつ精度よく形成する手段として、ストライプノズルが知られている(例えば、特許文献1、図2参照)。
【0003】
このストライプノズルは、内部に塗布液が供給される流入流路と、ノズルの長手方向である塗布幅方向に延在するマニホールドと、塗布幅方向にストライプ塗布膜のピッチLRで設けられた複数の流出流路と、を備えている。そして、ノズルの外部には、各流出流路の流出側がノズル本体より基材側に突き出るように複数の突出部を備え、各突出部は流出側先端が平面に形成されており、該平面に吐出口が形成されている。流入流路に投入された塗布液は、マニホールドに流入して塗布幅方向に拡幅された後、各流出流路に均等に分配されて、流出流路の出口である吐出口から、流出流路の本数だけストライプ状に吐出される。
【0004】
そのため、吐出口のある突出部の流出側先端の平面(以下、吐出口先端面という)の塗布幅方向の長さは、吐出口の幅LEより少し大きな幅LDとなっている。また、隣り合う突出部間には、谷となる凹部形状の切欠きがあり、この切欠きが各吐出口ごとにある吐出口先端面を形状的に分離し、その結果吐出口先端面両側に、塗布方向に延びるエッジを形成する。このエッジは通常は90度よりも大きな鈍角の角(かど)となる。そして、このような塗布幅方向両側にエッジのある吐出口先端面を基材と一定の隙間を設けて対向させ、各吐出口からストライプ状に塗布液を吐出させながら、基材をノズルに対して一定速度Vで相対移動させる。すると吐出口から吐出された塗布液は、幅LDの吐出口先端面両側のエッジまで広がりそこで一旦留まった後に、幅LDで基材上に落下して、幅LBでピッチLRのストライプ塗布膜を形成する。ストライプ塗布膜の幅LBは、基材の相対移動速度Vに依存し、速度Vが大きければ吐出口先端面の塗布液を引きこむことになるので幅LBは幅LDより小さくなり、速度Vが小さければその反対の関係となる。
【0005】
しかしながら、以上の状況はすべての塗布液や塗布条件に対して成り立つものではない。例えば塗布液が100mPas以上の粘度で、ストライプ塗布膜の厚さが20μm以下と小さく、ノズルからの吐出速度や吐出量が小さい場合は、移動速度Vが大きくても、図6に示すように、ストライプ塗布膜の幅WD(特許文献1のLBに相当)は、吐出口先端面の幅WE(特許文献1のLDに相当)よりもかなり大きくなり、厚さも狙い厚さよりも相当小さくなる。これは、吐出口から吐出された塗布液が、壁面作用により吐出口先端面両側のエッジまで広がった後も移動してエッジを乗り越え、エッジの先にある斜面をはい上がることの結果として起こる。すなわち、斜面をはい上がる塗布液が一定量溜まってから重力により落下して基材上にストライプ塗布膜が形成されるので、ストライプ塗布膜の幅WDは、吐出口先端面両側のエッジを乗り越えて形成される塗布液の溜まり部分の最大幅(塗布幅方向長さ)に依存するようになり、吐出口先端面の幅WEよりもかなり大きくなる。そして、吐出口からの塗布液吐出量は同じであることから、ストライプ塗布膜の幅WDが吐出口先端面の幅WEよりもかなり大きいときの膜厚は、幅WEより少し大きい時の膜厚よりも減少する。
【0006】
以上のことを改善するために、吐出された塗布液が吐出口先端面両側のエッジで留まるように、エッジを鈍角ではなく、例えば特許文献2に記載されるように90度の角にしたり、さらには鋭角の角にすることが対策として考えられるが、全く改善効果がない。
【0007】
以上、塗布液の粘度や塗布条件に制約されずに、所望の小さな幅と厚さでストライプ塗布膜を形成できるノズルがないというのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2013-192983号公報
【文献】特開2016-78012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述のような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、いかなる粘度の塗布液や塗布条件であっても、所望の小さな幅と厚さでストライプ塗布膜を形成できるノズルとそれを使用した塗布装置および塗布方法を提供することにある。本発明はまた、上記の塗布方法を使用して、低コストで高品質のディスプレイ用部材を製造できるディスプレイ用部材の製造方法を提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、以下のいずれかに述べる手段によって達成される。
(1)塗布液が供給される塗布液供給口と、塗布液供給口から内部に流入する塗布液を塗布幅方向に拡幅するマニホールドと、該マニホールドに連通して塗布液が下流に向かって流れる流出流路と、該流出流路の下流側端部で開口して塗布液が外部に吐出される吐出口と、を有するノズルであって、前記吐出口を含む吐出口先端面と、前記吐出口の塗布幅方向両端で上流側に向けて連なる外側斜面とで、下流側に突き出る突出部を外部に形成するとともに、前記流出流路の塗布幅方向両端に存在する両端流出面と前記外側斜面とで、塗布方向に延びる線状のエッジを形成し、かつ、前記両端流出面と前記外側斜面とがなす角度は60度以上90度以下であることを特徴とするノズル。
(2)前記吐出口を含む平面と前記外側斜面とがなす角度は5度以上85度以下であることを特徴とする、前記(1)に記載のノズル。
(3)前記吐出口を含む平面と前記両端流出面とがなす角度は15度以上90度以下であることを特徴とする、前記(1)または(2)に記載のノズル。
(4)前記(1)~(3)のいずれかに記載のノズルと、該ノズルに定量の塗布液を供給する塗布液供給装置と、基材を保持する基材載置台と、前記ノズルおよび前記基材載置台のうちの少なくとも一方を相対的に移動させる移動装置と、前記ノズルを基材に近接させる近接装置と、前記ノズルの吐出口を前記基材上の任意の場所に位置合わせをする位置合わせ装置と、を備えている塗布装置。
(5)前記(1)~(3)のいずれかに記載のノズルを所望する場所で基材に近接させ、前記ノズルに塗布液を供給して前記ノズルの吐出口から塗布液を吐出するとともに、前記基材の前記ノズルに対する相対移動を行って、前記基材上にストライプ塗布膜を形成することを特徴とする塗布方法。
(6)前記(5)に記載の塗布方法を用いて、ディスプレイ用部材を製造することを特徴とするディスプレイ用部材の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のノズルは、吐出口を含む吐出口先端面と、前記吐出口の塗布幅方向両端で上流側に向けて連なる外側斜面とで、ノズルの下流側に突き出る突出部を外部に形成するとともに、流出流路の塗布幅方向両端に存在する両端流出面と前記外側斜面とで、塗布方向に延びる線状のエッジを形成し、かつ、前記両端流出面と前記外側斜面とがなす角度、すなわちエッジの角度を60度以上90度以下の鋭い角になるようにしたので、両端流出面に沿って下流側に向かって流れる塗布液は、エッジの位置で上流側に急激に反転する外側斜面に沿って流れることが難しくなって、エッジを乗り越えることが困難となる。そしてその位置で塗布液が落下して基材に塗布されるため、吐出口両端のエッジ間長さがほぼそのまま幅となる、小さな幅のストライプ塗布膜を安定して形成することができる。また吐出口から吐出される塗布液量を制御することにより、それがそのまま、基材上に塗布されるストライプ塗布膜の厚さを制御することになり、この厚さを所望の値にすることができる。以上のことは塗布液の粘度や塗布条件に関係なく実現することができる。
【0012】
さらに本発明の塗布装置、塗布方法は上記のすぐれたノズルを使用しているので、いかなる粘度の塗布液や塗布条件であっても、所望の小さな幅と厚さでストライプ塗布膜を形成することができる。
【0013】
または本発明のディスプレイ用部材の製造方法は上記のすぐれた塗布方法を用いているので、低コストで高品質のディスプレイ用部材を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る塗布装置1の一実施態様を示す斜視図である。
図2】本発明に係るノズル30を各構成部材に分解した概略斜視図である。
図3】ノズル30の流出スペーサ100での基材への塗布状況を示す正面断面図である。
図4】流出スペーサ100での基材への塗布状況を詳細に示す部分拡大正面断面図である。
図5】本発明に係る別のノズル200の流出スペーサ210での基材への塗布状況を詳細に示す部分拡大正面断面図である。
図6】公知の従来ノズル300の流出スペーサ310での基材への塗布状況を詳細に示す部分拡大正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態の一例を図面に基づいて説明する。
【0016】
まず図1を参照すると、塗布液を基材上にストライプ状に塗布してストライプ塗布膜を形成できる塗布装置1が示されている。この塗布装置1は、基材である基板Aに塗布液を塗布するノズル30と、ノズル30と基板Aが取りつけられてこれらを自在に移動させるXYZステージ10と、ノズル30に定量の塗布液を供給する塗布液供給手段である塗布液供給装置50と、XYZステージ10と塗布液供給装置50の動作を統括的に制御する制御装置80と、より構成されている。
【0017】
XYZステージ10の吸着盤14には基板Aが載置され、Z軸リニア駆動装置12にはノズル30が固定保持されている。吸着盤14の上面には図示されていない吸着孔が多数配置されており、図示されていない真空源からの真空圧によって基板Aを吸着保持することができる。すなわち吸着盤14は、基板Aを保持する基材載置台となっている。この吸着盤14はその中央部で図示しない回転軸を介してX-ψ駆動装置16に取り付けられている。X-ψ駆動装置16は、ベース26上に固定されており、吸着盤14のX-Y平面内での回転とX方向(基板Aの長手に平行な方向)の往復動を自在に行なうことができる。以上よりX-ψ駆動装置16は、X方向にノズル30と吸着盤14を相対的に移動させる移動装置となる。なおX、Y、Zの方向については、図1に示される通りで、XYZステージ10の左下隅にX、Y、Z各軸の原点Oが設けられているとともに、原点Oでの矢印の方向が正方向である。またX-Y平面内での回転方向がψ方向となっている。
【0018】
ノズル30を保持するZ軸リニア駆動装置12は、ノズル30をZ方向すなわち上下方向に自在に昇降することができるもので、ブラケット18に固定されている。ブラケット18はさらにY軸リニア駆動装置20に保持されている。Y軸リニア駆動装置20は、ベース26上の一端に配置されている門型ベース28上に固定されており、ブラケット18をY方向に自在に往復動させることができる。その結果ブラケット18に固定されているノズル30をY方向にも自在に往復動させることができる。以上より、Y軸リニア駆動装置20は、Y方向にノズル30と吸着盤14を相対的に移動させる移動装置となる。
【0019】
さらに吸着盤14の上方のブラケット18には、CCDカメラ22と高さセンサー24も装着されている。CCDカメラ22は制御装置80に電気的に連結されており、基板Aのアライメントマークの位置を検知して、それを制御装置80に伝える。そして制御装置80がX-ψ駆動装置16やY軸リニア駆動装置20を駆動することによって、ノズル30の吐出口110に対する基板Aの位置合わせや、ψ方向の相対回転角度設定を行うことができる。以上より、CCDカメラ22、X-ψ駆動装置16、Y軸リニア駆動装置20、制御装置80が、ノズル30の吐出口110を基板A上の任意の場所に位置合わせをする位置合わせ装置を構成している。一方高さセンサー24は、基板Aの上面の位置を検知、すなわち基板Aの厚さを検知し、それを電気的に接続されている制御装置80に伝える。その信号に基づいて制御装置80がZ軸リニア駆動装置12を駆動することによって、ノズル30の最下面と基板A上面とのすきま、すなわちクリアランスを所定値に設定することができる。以上よりZ軸リニア駆動装置12が、基材である基板Aに近接させる近接装置となる。
【0020】
再びノズル30を見ると、塗布液供給装置50に連なる供給ホース68とノズル30が常時接続されており、これによりノズル30へは塗布液供給装置50から塗布液を供給することができる。ノズル30へ供給された塗布液は、ノズル30の内部通路を経て基板Aに向かってノズル30より吐出される。
【0021】
なお、塗布液供給装置50は、供給ホース68の上流側に、フィルター56、供給バルブ52、シリンジポンプ60、吸引ホース70、吸引バルブ54、タンク72を備えている。ここで供給ホース68はノズル30~シリンジポンプ60までを連通し、吸引ホース70はシリンジポンプ60~タンク72までを連通している。供給ホース68は、ノズル30が移動するのにあわせて追従できるように樹脂製としており、耐薬品性等も考慮して、テフロン(登録商標)等を使用するのが好ましい。最も上流にあるタンク72には塗布液74が蓄えられており、圧空源76に連結されて任意の大きさの背圧を塗布液74に付加することができる。タンク72内の塗布液74は、吸引ホース70を通じてシリンジポンプ60に供給される。シリンジポンプ60では、シリンジ62、ピストン64が本体66に取り付けられている。ここでピストン64は図示しない駆動源によって上下方向に自在に往復動できる。シリンジポンプ60は、一定の内径を有するシリンジ62内に塗布液74を充填し、それをピストン64により押し出して、ノズル30に一定容量の塗布液を供給できる間欠型定容量ポンプである。シリンジ62内に塗布液74を充填するときは、シリンジポンプ60の上流側の開閉バルブである吸引バルブ54を開、下流側の開閉バルブである供給バルブ52を閉として、ピストン64を下方に移動させる。またシリンジ62内に充填された塗布液をノズル30に向かって供給するときは、吸引バルブ54を閉、供給バルブ52を開とし、ピストン64を上方に移動させることで、ピストン64でシリンジ62内部の塗布液74を押し上げ排出する。
【0022】
次に、以上の塗布液供給装置50から塗布液74が供給されるノズル30の詳細について、図2図3を用いて説明する。
【0023】
まず、ノズル30は、図2に示すように、ノズル30の長手方向である塗布幅方向(X方向)に延在する第1リップ31、第2リップ41と、それらに挟まれる第1スペーサ120、流出スペーサ100、第2スペーサ140と、リップ締結用の複数の組立ボルト42と、で構成されている。第1リップ31と第2リップ41は、それぞれの内面34と内面44が対向する状態で配置され、その間に、3種のスペーサを挟み込んで、複数の組立ボルト42で締結固定することで、ノズル30として一体化されている。
【0024】
また第1リップ31の内面34には、供給される塗布液を塗布幅方向に拡幅するためのマニホールド32が、塗布幅方向に延在して形成されている。そして、マニホールド32の塗布幅方向の中央には、塗布液が外部から供給される流入流路33が第1リップ31の外部にある塗布液供給口(図示されていない)と連通するように設けられている。すなわち、塗布液供給口から流入流路33を介して内部に流入する塗布液が、マニホールド32に供給される。なお塗布液が供給される塗布液供給口は、流入流路33が上流側にある第1リップ31の外側面で開口したものとなる。ここで、流入流路33は、塗布液供給口から供給される塗布液をマニホールド32の塗布幅方向に一様に拡幅するために、マニホールド32の塗布幅方向の中央部に設けることが好ましいが、中央部以外に設けてもよい。
【0025】
次に、ノズル30の内部に含まれる3種のスペーサはいずれも薄板であり、厚さ方向であるY方向に、第1スペーサ120、流出スペーサ100、第2スペーサ140の順に重ねられて構成されている。これら3種のスペーサが重ねられることで、図3に示すように、マニホールド32に連通する流出流路(第1流出流路101および第2流出流路102)、さらには吐出口110が形成される。またこれら3種のスペーサは、吐出口110を含む吐出口先端面111とそれらの外側斜面106A、106Bとで、ノズルの下流側外側に突き出る突出部を形成する。なお、ここでいう吐出口先端面111とは、細かい破線で位置が示されているように、重ねられた流出スペーサ100、第1スペーサ120、第2スペーサ140それぞれの流出流路最下流側端部によって形成される、吐出口110を含む面であり、塗布幅方向においてはエッジ105A、105Bの間の領域である。
【0026】
図2に示すように、第1スペーサ120の外周部または外形となる外形輪郭122と第2スペーサ140の外周部または外形となる外形輪郭142は、重ね方向であるY方向に見て同一であることが好ましい。これにより、第1スペーサ120と第2スペーサ140は、Y方向に重ねた状態で外形輪郭122と外形輪郭142を同時加工によって形成することができる。また、第1リップ31、第1スペーサ120、流出スペーサ100、第2スペーサ140、第2リップ41には、同じ位置で貫通している組立ボルト42の挿入用穴45が複数個設けられているが、この挿入用穴45も、第1リップ31、3種のスペーサ、第2リップ41をY方向に重ねた状態で同時加工によって形成することが好ましい。なお第1スペーサ120と第2スペーサ140の相違は、第1スペーサ120の内部に第1リップ31のマニホールド32からの塗布液が通過する開口部124が設けられていることだけである。また、Y方向に見て、開口部124とマニホールド32は、形状が略一致していることが好ましい。
【0027】
つづいて、第1スペーサ120と第2スペーサ140の間に位置する流出スペーサ100については、図3を用いて詳細に説明する。図3はノズル30による基材への塗布状況を示す拡大正面断面図であるが、断面は流出スペーサ100をY方向に、第2リップ41側から見たもので表している。図中、パターン模様をつけている部分は塗布液74を示し、破線は、塗布液74や流出スペーサ100越しに見える開口部124、流入流路33を示している。
【0028】
図3を見ると、流出スペーサ100の内部には、第1流出流路101とそれに連通する第2流出流路102が、X方向にピッチPで6個配置されている。ノズル30の塗布液供給口に供給された塗布液は、第1リップ31の流入流路33、マニホールド32、第1スペーサ120の開口部124を経て、第1流出流路101の一部に流れ込み、そこから第2流出流路102と流れ、第2流出流路102が下流側端部で開口して形成される吐出口110からノズル30外部に向かって吐出され、基板Aに塗布される。このことから、第1流出流路101と第2流出流路102は、マニホールド32に連通して塗布液が下流に向かって流れる流出流路となる。また吐出口110は、第2流出流路102の下流側端部で開口して塗布液が外部に吐出される部分となる。なお吐出口110の塗布幅方向両端には、塗布方向に線状に延びるエッジ105A、105Bが形成されている。
【0029】
つづいて流出スペーサ100における第1流出流路101以降での塗布状況をより詳細に、図4を用いて説明する。図4は、流出スペーサ100での基材への塗布状況を詳細に示す部分拡大正面断面図である。ここで第1流出流路101はX方向に幅WA、Z方向に長さLBの矩形状となっている。一方第2流出流路102については、第1流出流路101との接続点を起点として下流側の吐出口110までの全長LDのうち、前半の長さLEの区間で、第1両端流出面103A、103BがX方向に幅WBのスリットを形成している。そして後半の吐出口110まで及ぶ長さLFの区間では、下流側に向かうに従って互いに離れる第2両端流出面104A、104Bによって、スリットの幅WBが吐出口110のX方向に幅WCまで拡大している。すなわち第2流出流路102は、吐出口110近くで、塗布幅方向であるX方向に拡大して吐出口110に至っている。このため第2流出流路102の塗布幅方向両端に形成されている第2両端流出面104A、104Bが、一点鎖線で示されている吐出口110を含む平面となす角度αA、αBは、90度より小さくなる。
【0030】
ここで、第1両端流出面103A、103Bと第2両端流出面104A、104Bは、ともに第2流出流路102の塗布幅方向両端に形成されるものである。そして第2両端流出面104A、104Bは、吐出口110のX方向両端でそれぞれ外側斜面106A、106Bと接続し、その結果、吐出口110の塗布幅方向両端にエッジ105A、105Bが形成される。このエッジ105A、105Bは、紙面に垂直な方向、すなわち塗布方向(Y方向)に線状に延びている。以上より、第2流出流路102の塗布幅方向両端に形成されて下流の吐出口110に至る第2両端流出面104A、104Bと、外部に形成されて、吐出口110の塗布幅方向両端から上流側に延びていく外側斜面106A、106Bとによって、塗布方向に線状のエッジ105A、105Bが形成される。なお上記したように、各スペーサの流出流路最下流側端部によって形成され、かつ、塗布幅方向においてはエッジ105A、105Bで挟まれる領域が、吐出口110を含む吐出口先端面111となる。したがって以上の構成により、吐出口110を含む吐出口先端面111と、吐出口110の塗布幅方向両端で上流側に向けて連なる外側斜面106A、106Bとで、下流側に突き出る突出部109A、109Bを外部に形成する。
【0031】
ここで、第2両端流出面104A、104Bと外側斜面106A、106Bとがなす角度θA、θBは、60度以上90度以下、好ましくは70度以上90度以下とする。すなわち、第2両端流出面104A、104Bと外側斜面106A、106Bとで形成される角度60度以上90度以下の角が、エッジ105A、105Bとなる。なお角度θA、θBが60度未満であると、エッジ105A、105Bが塗布方向(Y方向)に一直線状とならず、波打ち形状となり好ましくない。
【0032】
さらにノズル30の外部に配置されている外側斜面106A、106Bは、図4中一点鎖線で示す、吐出口110を含む平面(吐出口先端面111の延長面)に対して、それぞれ角度φA、φBをなしている。すなわち角度φA、φBは、一点鎖線で示す吐出口110を含む平面と上流側に延びていく外側斜面106A、106Bとがなす角度である。これによって、外側斜面106A、106Bは、吐出口110を基準として、吐出口110の塗布幅方向両端にあるエッジ105A、105Bから上流側に延びている。この結果、本発明においては、吐出口110の塗布幅方向両側に吐出口と平行な平面は形成されない。
【0033】
なお、外側斜面106A、106Bは、エッジ105A、105Bから上流側に向かって立上ってから、吐出口110と平行な平面である底面107と接続している。そして吐出口110に塗布幅方向(X方向)に隣接する外側斜面106A、106B、底面107で囲まれる部分は、凹型形状の切欠き108を形成している。すなわち、吐出口110の塗布幅方向両端部に隣接して切欠き108が設けられる。また、底面107、外側斜面106A、吐出口先端面111、外側斜面106Bと、流出スペーサ100のその他の外形輪郭112は、第1スペーサ120の外形輪郭122、第2スペーサ140の外形輪郭142と全く一致させている。
【0034】
さらに、第1流出流路101の幅WAは、第2流出流路102の上流側の幅WBよりも大きくしているが、これは塗布液の粘度が高く、第1流出流路101での圧力損失を小さくしたい場合に有効である。塗布液の粘度が低い場合は、幅WAと幅WBを略同一にしてもよいし、第1流出流路101そのものを省略してもよい。
【0035】
つづいて図3図4を用いて、ストライプ塗布膜の塗布形成状況について説明する。
【0036】
塗布液供給装置50からノズル30に供給される塗布液74は、第1リップ31にある塗布液供給口から流入流路33、マニホールド32、第1スペーサの開口部124を経て、流出スペーサ100に複数(例えば図3の場合は6個)ある第1流出流路101に分配された後、それぞれの第2流出流路102の第1両端流出面103A、103Bおよび第2両端流出面104A、104Bに沿って下流側に向かって流れ、最終的に吐出口110から下向きに、クリアランスCだけ離れている基板Aに向かって吐出される。吐出口110に至る第2両端流出面104A、104Bに沿って下流側に流れる塗布液74は、吐出口110ではその塗布幅方向両端にあるエッジ105A、105Bによって位置規制されて幅WCよりも広がることなく落下し、移動速度VでY方向(紙面に垂直な方向)に走行する基板A上に幅WDで着地してビードBDを形成し、それによって基板Aに幅WDのストライプ塗布膜が形成される。このように、本発明においては塗布液74が吐出口110の塗布幅方向両端にあるエッジ105A、105Bで幅WCに位置規制されるが、これは、塗布液が下流側に沿って流れる第2両端流出面104A、104Bが、エッジ105A、105Bの位置で反転して上流側に向かって延びる外側斜面106A、106Bとなるために、沿って流れる面の急激な変化に塗布液74が追従できない結果である。
【0037】
塗布液が沿って流れる面をエッジ105A、105Bの位置で反転するために、角度αA、αBを好ましくは15度以上90度以下、より好ましくは30度以上85度以下にする。また、同様の理由から、角度φA、φBを好ましくは、5度以上85度以下、より好ましくは15度以上75度以下にする。なお図4では、実際に角度θA、θB=75度、角度φA、φB=45度、角度αA、αB=60度で記載している。
【0038】
本発明において、角度θAと角度θBは、60度以上90度以下の範囲にあるならば、同じでもよいし、異なっていてもよい。角度φAと角度φB、角度αAと角度αBについても同様である。
【0039】
また上記のストライプ塗布膜の幅WDは基板Aの移動速度Vに依存し、移動速度Vが小さいと幅WD≧幅WCとなり、移動速度Vが大きいと塗布液74が吐出口110を起点に引っ張られることになるので、幅WD<幅WCとなる。ただし、移動速度Vが大きくなるとビードBDが小さくなって塗布膜が切れやすくなる。したがって塗布液の物性や塗布条件によっては、幅WD<幅WCとなる前の移動速度で膜切れが生じて、幅WD<幅WCが実現できないこともある。
【0040】
さらにストライプ膜の厚さについて、本発明においては、吐出口110から吐出される塗布液がエッジ105A、105Bを乗り越えて外側斜面106A、106Bをはい上がることなく、吐出される全量が基板Aに塗布されるので、吐出口からの単位時間当たりの吐出量を幅WDと移動速度Vで除算すれば、厚さが算出される。
【0041】
次に本発明のノズル30と、従来ノズルとの形状と作用の相違点について、図4図6を参照して詳細に説明する。図6は公知となる従来ノズル300の流出スペーサ310での基材への塗布状況を詳細に示す部分拡大正面断面図である。例えば本発明の一実施形態に係る図4に示すノズル30では、吐出口110の塗布幅方向両端であるエッジ105A、105Bにおいて、角度φA、φBで上流側に向かう外側斜面106A、106Bが第2両端流出面104A、104Bに接続している。これによって吐出口110を含む平面と外側斜面106A、106Bとがなす角度φA、φBは上記したように45度で、上記した好ましい範囲にある。一方図6に示す従来ノズル300の流出スペーサ310では、吐出口320の塗布幅方向両端である内側エッジ315A、315Bで、第2流出流路312の塗布幅方向両端に存在する両端流出面313A、313Bに、吐出口320と平行な吐出口先端延在面319A、319Bが接続している。そして、吐出口先端延在面319A、319Bは、その外側にある外側エッジ321A、321Bまでは水平に延在し、外側エッジ321A、321Bで上流側に延びる外側斜面316A、316Bに接続している。このような構成のため、吐出口先端延在面319A、319Bは、吐出口320の塗布幅方向両端で上流側に向けて連なる外側斜面とはなっていない。すなわち吐出口先端延在面319A、319Bは、下流側に向う両端流出面313A、313Bに反転して上流側に向けて連なる平面になっていない。それゆえ吐出口320を含む平面と吐出口先端延在面319A、319Bとがなす角度である角度φA、φBも0度となり、本発明の好ましい範囲外の角度となる。
【0042】
以上より本発明のノズル30と従来ノズル300との形状での本質的な相違点は、流出流路の下流側の吐出口に向かう両端流出面が、吐出口の塗布幅方向両端で反転して上流側に延びる(向かう)平面と接続されているか、いないかである。
【0043】
すなわち、従来ノズル300では、第2流出流路312の両端流出面313A、313Bに内側エッジ315A、315Bで接続される吐出口先端延在面319A、319Bが、反転して上流側に向かうのでなく吐出口320と平行な方向に延びており、その結果、第2流出流路312の両端流出面313A、313Bに沿って下流側の吐出口320に向かう塗布液は、壁面効果により内側エッジ315A、315Bで容易に90度曲がって吐出口先端延在面319A、319Bの方に伝わって行く。一旦吐出口先端延在面319A、319Bを伝わって流れ出した塗布液は、その後も伝わって行く方向が反転する曲がりがない限り、その先の幅WEの位置にある外側エッジ321A、321Bを乗り越えて、外側斜面316A、316Bにも伝わって流れ、この外側斜面316A、316B上で塗布液が落下してビードBDを形成する。そのため従来ノズル300では、幅WEや幅WCよりかなり大きな幅WDで基板A上にストライプ塗布膜を形成することになる。すなわち、従来ノズル300では、小さな幅のストライプ塗布膜を形成するのは困難である。
【0044】
一方、本発明にかかるノズル30では、上記したように、下流側に塗布液を案内する第2両端流出面104A、104Bが、吐出口110の塗布幅方向両端となるエッジ105A、105Bで、反転して上流側に向かう外側斜面106A、106Bに接続されている。これによって第2両端流出面104A、104Bに沿って下流側に向かって流れる塗布液は、エッジ105A、105Bで上流側に急激に反転する外側斜面106A、106Bに沿って流れることができないので、エッジ105A、105Bを乗り越えることができず、その位置で幅WCにて落下して、ビードBDを形成する。以降は塗布条件にてビードBDの大きさが定まって、幅WCに近い幅WDで基板A上にストライプ状の塗布膜を形成することができる。すなわち、本発明のノズル30では、小さな幅のストライプ塗布膜を容易に形成できる。
【0045】
次に本発明に係る別の実施態様例であるノズル200について、図5を用いて説明する。ここで図5はノズル200の流出スペーサ210での基材への塗布状況を詳細に示す部分拡大正面断面図である。
【0046】
図5図4の比較から、ノズル200はノズル30と以下の点で異なっている他は全く同じである。(1)流出スペーサ210では、流出流路の塗布幅方向両端に存在する両端流出面間が一定の幅となるように、流出スペーサ100の第2両端流出面104A、104Bに相当する部分を有しておらず、また、底面107に相当する部分も有していない。(2)流出スペーサ210で角度αA、αBが90度(ノズル30は60度)、角度φA、φBが15度(ノズル30は45度)である。なお角度θA、θBについては75度と同じである。(3)流出スペーサ210の外形輪郭に対応した第1スペーサと第2スペーサ(いずれも図示せず)を用いている。
【0047】
このようにノズル200は、以上の相違点や流出スペーサの見た目上の形状の相違があるものの、吐出口220に向かって塗布液を下流側に案内する第2流出流路212の両端流出面213A、213Bが、吐出口220の塗布幅方向両端となるエッジ215A、215Bで、反転して上流側に延びる外側斜面216A、216Bに接続されているという本質的な点で、ノズル30と相違はない。すなわち、ノズル200においては、吐出口220を含む吐出口先端面と、吐出口220の塗布幅方向両端で上流側に向けて連なる外側斜面216A、216Bとで突出部217A、217Bが形成されるとともに、流出流路の塗布幅方向両端に存在する両端流出面213A、213Bと外側斜面216A、216Bとで塗布方向に延びる線状のエッジ215A、215Bが形成され、かつ、そのエッジの角度が60度以上90度以下である。そして、このようなノズル200において、両端流出面213A、213Bに沿って下流側の吐出口220に向かって流れる塗布液は、エッジ215A、215Bで上流側に急激に反転する外側斜面216A、216Bに沿って流れることができないので、エッジ215A、215Bを乗り越えることができず、その位置で幅WCにて落下して、ビードBDを形成する。以降は塗布条件にてビードBDの大きさが定まって、幅WCに近い幅WDで基板A上にストライプ状の塗布膜を形成することができる。なお、ノズル200においても、角度θA、θB、角度φA、φB、角度αA、αBは、上記した好ましい範囲が適用されている。
【0048】
次に、ノズル30と塗布装置1を用いた塗布液74の基板Aへのストライプ塗布膜の塗布方法について図1を用いて説明する。
【0049】
まず準備作業として、図1のタンク72~ノズル30までを塗布液74で充満して残留空気を排出する作業は既に終了しているものとする。そして塗布液供給装置50の状態は、シリンジ62に塗布液74が充填、吸引バルブ54は閉、供給バルブ52は開、そしてピストン64は最下端の位置にあり、いつでも塗布液74をノズル30に供給できるようになっている。また吸着盤14、ノズル30もそれぞれ初期位置で待機している。すなわち吸着盤14はX方向には原点位置、X-Y平面内の回転方向(ψ方向)には吸着盤14の短手側両端部がX方向と平行になるように配置されている。ノズル30はY方向には原点位置、Z方向には一番高い位置にある原点位置に配置されている。
【0050】
つづいて塗布装置1の動作開始信号が操作盤82から制御装置80に伝えられると、吸着盤14の表面に図示しないリフトピンが上昇し、図示しない移載装置から基板Aがリフトピン上部に載置される。そしてリフトピンを下降させて基板Aを吸着盤14上に載置し、同時に吸着保持する。次いで高さセンサー24によって基板Aの高さを検知するとともに、CCDカメラ22で2ヶ所設けられているアライメントマークを検知して、アライメントマークで定められる塗布方向とY方向が一致するように吸着盤14を回転させる。次いで予め定めた基板Aの塗布開始位置直上にノズル30の吐出口110が位置するように、X-ψ駆動装置16を駆動して吸着盤14をX方向に移動させるとともに、Y軸リニア装置20を駆動してノズル30をY方向に移動させる。ノズル30が基板A上の塗布開始位置直上に来たら停止させるとともに、測定した基板Aの高さに応じて、基板Aとノズル30の吐出口110の両側にあるエッジ105A、105Bとの間のすきまが所定のクリアランスCの値になるように、Z軸リニア駆動装置12を駆動してノズル30をZ方向に下降停止させる。
【0051】
基板Aとノズル30の間のすきまがクリアランスCで静止している状態で、塗布液供給装置50のシリンジポンプ60を駆動して一定供給速度で塗布液74を供給し、ノズル30から基板A上に塗布液を吐出する。この吐出開始を基点に一定時間ts後に、Y軸リニア駆動装置20を駆動してノズル30の一定速度での移動を開始して塗布を開始する。この時のノズル30の移動の一定速度は塗布速度より与えられ、シリンジポンプ60の一定供給速度は、塗布するウェット膜厚と塗布速度より与えられる。以上の動作によって、ノズル30の吐出口110と基板Aの間にビードBDが形成され、基板A上に幅WDのストライプ状の塗布膜が形成される。なお一定時間tsは好ましくは0~1秒、より好ましくは0~0.5秒とする。
【0052】
基板Aの塗布終了位置がノズル30の吐出口110の位置にきたらシリンジポンプ60の一定供給速度での塗布液74の供給を停止し、つづいてZ軸リニア駆動装置12を駆動して、ノズル30を上昇させる。これによって基板Aとノズル30間に形成されたビードBDが断ち切られ、ストライプ状の塗布が終了する。ノズル30は上昇により原点位置(初期位置)に復帰する。塗布終了後もY軸リニア駆動装置20は動きつづけ、終点位置にきたらノズル30は一旦停止する。続いて初期位置である原点位置に向かって逆方向にY軸リニア駆動装置20を駆動してノズル30を移動開始するとともに、X-ψ駆動装置16を駆動して吸着盤14も初期位置に向かってX方向に移動開始させる。そしてノズル30がY方向の原点位置、吸着盤14がX方向の初期位置である原点位置に達して静止したら、吸着盤14の基板Aの吸着を解除し、リフトピンを上昇させて基板Aを持ち上げる。この時図示されない移載装置によって基板Aの下面が保持され、次の工程に基板Aを搬送する。そして供給バルブ52を閉、吸引バルブ54は開としてから、シリンジポンプ60を逆方向に駆動して一定速度でタンク72の塗布液74をシリンジ62に充填開始する。充填完了後、シリンジポンプ60を停止させ、吸引バルブ54を閉として、次の基板Aが来るのを待ち、同じ動作をくりかえす。
【0053】
以上の塗布方法で、塗布終了時に塗布液74がシリンジ62内に十分残っているなら、塗布液74の充填は省略してもよい。またノズル30で塗布できる範囲が、基板AのX方向寸法より小さく、ノズル30の塗布位置を変えて所定回数塗布する場合は、1回の塗布終了ごとに、X-ψ駆動装置16を駆動して基板AをX方向に所定量移動させた後、1回目の塗布と同じ塗布動作を繰り返す。
【0054】
また以上の塗布方法を実行することにより、本発明のノズル30を、所望する定められた場所で基材である基板Aに近接させ、塗布液供給装置50からノズル30に塗布液を供給してノズル30の吐出口110から塗布液を吐出するとともに、基板Aのノズル30に対する相対移動を行って、基板A上にストライプ塗布膜を形成することを実現する。
【実施例
【0055】
以下実施例により本発明の具体的態様の例を説明する。
【0056】
図1~4に示すノズル30および塗布装置1を用いて、ディスプレイ用途の波長変換フィルターを作成する。
【0057】
まず265×300mmで厚さ0.7mmの無アルカリガラス基板に、厚さ20μm、幅40μm、基板長手方向(Y方向)の長さ250mmのポリイミド膜がバンクとして基板短手方向(X方向)にピッチ300μmで751本配置されている波長変換フィルターのパターン基板を用意した。なおポリイミド膜は基板中央にあり、基板長手方向の両側25mm、基板短手方向の両側20mmがストライプ状のポリイミド膜のない非製品領域であった。
【0058】
次にバンク間にR、Gの発光材をストライプ状に塗布すべく、RとGの発光材を準備した。R発光材は固形分濃度50%で粘度が200mPas、G発光材は固形分濃度50%で粘度が250mPas、であった。図1に示すストライプ塗布装置1でストライプ状の塗布を行うべく、専用のノズル30を準備した。
【0059】
このノズル30における流出スペーサ100(厚さ0.5mm)は、図4に示すものであり、各部形状は次の通りである。第1流出流路101の幅WA=0.5mm、長さLB=10mm、第2流出流路102の幅WB=0.1mm、長さLE=1.9mm、幅WC=0.22mm、長さLF=0.1mm、吐出口110を含む平面と第2両端流出面104A、104Bがなす角度αA、αB=60度、長さLD=2mm、長さLA=12mm、エッジ105A、105Bを形成する第2両端流出面104A、104Bと外側斜面106A、106Bがなす角度θA、θB=75度、吐出口110を含む平面と外側斜面106A、106Bがなす角度φA、φB=45度、ピッチP=0.9mm、である。以上によって、幅WC=0.22mmで塗布方向長さ0.5mmの矩形状の吐出口110が、ピッチP=0.9mmで250個配置されている。
【0060】
このノズル30を塗布装置1にとりつけ、上記のR発光材をタンク72~ノズル30まで充填した。上記のポリイミド膜がバンクとしてストライプ状に形成された基板を吸着盤14に吸着後、基板上のアライメントマークをCCDカメラ22で検知して、ノズル30を基板の塗布開始位置の直上に配置した。
【0061】
なお塗布開始位置は、塗布幅方向であるX方向には、原点に一番近いバンク間の溝が、ノズル30の一番原点に近い吐出口と一致する位置、塗布方向であるY方向には、基板端部から20mmの位置であり、ポリイミド膜のバンクの5mm手前であった。また塗布方向(Y方向)と、ポリイミド膜がストライプとなって伸びる方向とが平行となるように、基板AのX-Y平面内の回転角度ψをX-ψ駆動装置16により調整をした。高さセンサー24で測定した基板高さに基づいて、吐出口110の両側にあるエッジ105A、105Bと基板A間のすきまであるクリアランスCが100μmとなるように、ノズル30を下降させた。
【0062】
そして供給バルブ52が開、吸引バルブ54が閉であることを確認してから、供給速度65μl/sでシリンジポンプ60を駆動してノズル30よりR発光材を吐出開始するともに、この吐出開始より0.2秒後にY軸リニア駆動装置を駆動開始して、ノズル30をY方向に50mm/sで移動開始した。そして基板長手方向の塗布開始位置から255mmの位置でシリンジポンプ60を停止させるとともに、Z軸リニア駆動装置を駆動して、塗布開始位置から260mmの位置でノズル30を上昇させた。これらの動作によって基板端部から20mmの塗布開始位置から260μm幅でWet厚さ20μmの260mm長のストライプ状塗布膜が250本形成され、ポリイミド膜のバンク間にもR発光材が充填された。これによって必要な250箇所となるポリイミド膜のバンク間にすべてR発光材を充填した。この時、バンク上に乗り上げるR発光材はなく、R発光材が充填されていない部分もなかった。
【0063】
以上のR発光材の塗布が完了した基板を取り出し、ホットプレートで120℃、10分の乾燥を行った。乾燥後に膜厚を測定したところ、塗布開始から5mmで10μmとなっており、塗布開始と終了部から5mmずつ除いた250mmの範囲、すなわちポリイミド膜のバンクが形成されている範囲で、膜厚むらは±5%以下となって非常に良好であった。
【0064】
引き続いてG発光材についても同様のストライプ状塗布を行った。G発光材についてはR発光材のすぐ隣のバンク間に塗布できるように位置決めをし、すべてR発光材と同じ条件にて塗布と乾燥を行った。以上の塗布と乾燥を行った結果、G発光材についても、基板端部から20mmの位置から、厚さ10μm、260μm幅で260mm長のストライプ状塗布膜が250本形成され、G発光材用のポリイミド膜のバンク間がG発光材で規則正しく充填され、塗布欠陥もなかった。なお、G発光材の膜厚むらは、塗布両端から5mmを除外した250mm長の製品領域で、±5%以下で、非常に良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、有機EL、プラズマディスプレイ、カラーフィルター、波長変換フィルター等の基板上の面に、ストライプ状の塗布膜を形成する各種ディスプレイ用部材の製造に利用可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 塗布装置
10 XYZステージ
12 Z軸リニア駆動装置
14 吸着盤
16 X-ψ駆動装置
18 ブラケット
20 Y軸リニア駆動装置
22 CCDカメラ
24 高さセンサー
26 ベース
28 門型ベース
30 ノズル
31 第1リップ
32 マニホールド
33 流入流路
34 内面
41 第2リップ
42 組立ボルト
44 内面
45 挿入用孔
50 塗布液供給装置
52 供給バルブ
54 吸引バルブ
56 フィルター
60 シリンジポンプ
62 シリンジ
64 ピストン
66 本体
68 供給ホース
70 吸引ホース
72 タンク
74 塗布液
76 圧空源
80 制御装置
82 操作盤
100 流出スペーサ
101 第1流出流路
102 第2流出流路
103A、103B 第1両端流出面
104A、104B 第2両端流出面
105A、105B エッジ
106A、106B 外側斜面
107 底面
108 切欠き
109A、109B 突出部
110 吐出口
111 吐出口先端面
112 外形輪郭
120 第1スペーサ
122 外形輪郭
124 開口部
140 第2スペーサ
142 外形輪郭
200 ノズル
210 流出スペーサ
211 第1流出流路
212 第2流出流路
213A、213B 両端流出面
215A、215B エッジ
216A、216B 外側斜面
217A、217B 突出部
220 吐出口
300 従来ノズル
310 流出スペーサ
312 第2流出流路
313A、313B 両端流出面
315A、315B 内側エッジ
316A、316B 外側斜面
319A、319B 吐出口先端延在面
320 吐出口
321A、321B 外側エッジ
A 基板
BD ビード
C クリアランス
LA、LB、LD、LE、LF 長さ
P ピッチ
WA、WB、WC、WD、WE 幅
αA、αB 吐出口を含む平面と両端流出面がなす角度
θA、θB エッジで接続する両端流出面と外側斜面がなす角度
φA、φB 吐出口を含む平面と外側斜面がなす角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6