(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】タイヤ加硫方法及びタイヤ加硫装置
(51)【国際特許分類】
B29C 33/02 20060101AFI20230301BHJP
B29C 35/02 20060101ALI20230301BHJP
B29L 30/00 20060101ALN20230301BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C35/02
B29L30:00
(21)【出願番号】P 2019071442
(22)【出願日】2019-04-03
【審査請求日】2022-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】大谷 公二
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-060781(JP,A)
【文献】特開2000-135715(JP,A)
【文献】特開2003-285331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/02
B29C 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に配される複数のセグメントからなるトレッドモールドと、上下のサイドモールドとを含む金型により、生タイヤを加硫するタイヤ加硫方法であって、
前記タイヤは、サイドウォール部を有し、
前記サイドウォール部の半径方向外側領域には、前記サイドウォール部の表面から突出するサイドブロックが形成されており、
前記上下のサイドモールドと前記トレッドモールドとの割位置は、少なくとも前記サイドブロックのタイヤ半径方向の最内端よりもタイヤ半径方向内側に位置しており、
前記タイヤ加硫方法は、
加硫後、前記金型から加硫済みタイヤを取り出すタイヤ取出し工程を含み、
前記タイヤ取出し工程は、
前記上下のサイドモールドを、それぞれタイヤ軸方向の内側に移動させ、前記加硫済みタイヤをビード幅が減じる向きに変形させる
第1の段階と、
前記第1の段階により、前記加硫済みタイヤ
を変形
させた状態において、前記セグメントを、それぞれタイヤ半径方向の外側に移動させて前記加硫済みタイヤから取り外す
第2の段階とを含
み、
前記第1の段階は、前記第2の段階において、前記セグメントを前記サイドブロックに引っ掛けることなくタイヤ半径方向の外側に引き出すことができるように、前記サイドブロックをタイヤ軸方向の内側に逃した状態に変形させる、
タイヤ加硫方法。
【請求項2】
前
記割位置のビードベースラインからのタイヤ半径方向距離は、タイヤ断面高さの1/2より小である、請求項1記載のタイヤ加硫方法。
【請求項3】
前
記割位置は、タイヤ最大幅位置よりもタイヤ半径方向の内側である、請求項1記載のタイヤ加硫方法。
【請求項4】
前記タイヤ取出し工程は、前記金型の閉状態から前記セグメントを、それぞれタイヤ半径方向の外側に移動させ、前記トレッドモールドを前記サイドモールドから離間させる段階をさらに含む、請求項1~3の何れかに記載のタイヤ加硫方法。
【請求項5】
請求項1~4の何れかに記載のタイヤ加硫方法に用いられるタイヤ加硫装置であって、
上下のサイドモールドを、それぞれタイヤ軸方向の内側に移動させ、加硫済みタイヤをビード幅が減じる向きに変形させる
前記第1の段階と、
前記第1の段階により、前記加硫済みタイヤ
を変形
させた状態において、セグメントを、それぞれタイヤ半径方向の外側に移動させて前記加硫済みタイヤから取り外す
前記第2の段階とを経るように構成された制御手段が設けられている、
タイヤ加硫装置。
【請求項6】
前記セグメントを支持する上部プレートと、
前記上のサイドモールドを、前記上部プレートに対してタイヤ軸方向の内側に相対移動させうる第1の昇降具とを具える、請求項5記載のタイヤ加硫装置。
【請求項7】
前記上のサイドモールドの、前記上部プレートに対するタイヤ軸方向の移動距離を検出する第1の検出手段をさらに具える、請求項6記載のタイヤ加硫装置。
【請求項8】
前記下のサイドモールドを載置する下部プレートと、
前記下のサイドモールドを、前記下部プレートに対してタイヤ軸方向の内側に相対移動させうる第2の昇降具とを具える、請求項5~7の何れかに記載のタイヤ加硫装置。
【請求項9】
前記下のサイドモールドの、前記下部プレートに対するタイヤ軸方向の移動距離を検出する第2の検出手段をさらに具える、請求項8記載のタイヤ加硫装置。
【請求項10】
前
記割位置のビードベースラインからのタイヤ半径方向距離は、タイヤ断面高さの1/2より小である、請求項5~9の何れかに記載のタイヤ加硫装置。
【請求項11】
前
記割位置は、タイヤ最大幅位置よりもタイヤ半径方向の内側である、請求項5~9の何れかに記載のタイヤ加硫装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加硫済みタイヤの金型からの取り出しを可能としながら、サイドモールドとトレッドモールドとの割位置をタイヤ半径方向内側に移行しうるタイヤ加硫方法及びタイヤ加硫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば下記の特許文献1には、加硫済みタイヤを金型から取り出す工程を含むタイヤの加硫方法及び加硫装置が記載されている。
【0003】
前記加硫装置では、上部サイドモールド、上部押し板、およびアクチュエータが、それぞれ上部プラテン板に固定されている。そして、上部プラテン板の上下移動に同期して、上部サイドモールド、上部押し板、およびアクチュエータが一体に上下移動を行う。又下部サイドモールド、下部押し板は、下部プラテン板に、それぞれ固定されている。
【0004】
他方、例えばSUV用等の四輪駆動車用のタイヤでは、近年、オフロードでのトラクション性能を向上させるために、バットレス部を含むサイドウォール部の半径方向外側領域にも、ブロック(以下サイドブロックという場合がある。)を設けることが提案されている(例えば特許文献2参照。)。サイドブロックとしては、トレッドショルダに設けるブロック(以下ショルダブロックという場合がある。)を延長させたものでも良い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-231160号公報
【文献】特開2016-55820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の加硫装置を用いて、サイドブロックを有するタイヤを加硫する場合、サイドブロックの表面に、金型のパーティングラインが発生し、タイヤの見栄えを損ねるという問題が生じる。パーティングラインとは、トレッドモールドとサイドプレートとの割位置に生じる突起状の金型痕である。
【0007】
この対策として、本発明者は、前記割位置を、サイドブロックの半径方向内側に移行させた金型を使用することを提案した。しかしこの場合、金型を開状態にするときに、セグメントがサイドブロックに引っ掛かり、タイヤを金型から取り出すことができなくなってしまうという新たな問題が発生する。
【0008】
そこで本発明は、加硫済みタイヤの金型からの取り出しを可能としながら、サイドモールドとトレッドモールドとの割位置をタイヤ半径方向の内側に移行しうるタイヤ加硫方法及びタイヤ加硫装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、タイヤ周方向に配される複数のセグメントからなるトレッドモールドと、上下のサイドモールドとを含む金型により、生タイヤを加硫するタイヤ加硫方法であって、加硫後、前記金型から加硫済みタイヤを取り出すタイヤ取出し工程を含み、前記タイヤ取出し工程は、前記上下のサイドモールドを、それぞれタイヤ軸方向の内側に移動させ、前記加硫済みタイヤをビード幅が減じる向きに変形させる段階と、前記加硫済みタイヤの変形状態において、前記セグメントを、それぞれタイヤ半径方向の外側に移動させて前記加硫済みタイヤから取り外す段階とを含む。
【0010】
本発明に係るタイヤ加硫方法において、前記上下のサイドモールドと前記トレッドモールドとの割位置のビードベースラインからのタイヤ半径方向距離は、タイヤ断面高さの1/2より小であるのが好ましい。
【0011】
本発明に係るタイヤ加硫方法において、前記上下のサイドモールドと前記トレッドモールドとの割位置は、タイヤ最大幅位置よりもタイヤ半径方向の内側であるのも好ましい。
【0012】
本発明に係るタイヤ加硫方法において、前記タイヤ取出し工程は、前記金型の閉状態から前記セグメントを、それぞれタイヤ半径方向の外側に移動させ、前記トレッドモールドを前記サイドモールドから離間させる段階をさらに含むのが好ましい。
【0013】
本発明は、前記タイヤ加硫方法に用いられるタイヤ加硫装置であって、金型の閉状態において、上下のサイドモールドを、それぞれタイヤ軸方向の内側に移動させ、加硫済みタイヤをビード幅が減じる向きに変形させる段階と、前記加硫済みタイヤの変形状態において、セグメントを、それぞれタイヤ半径方向の外側に移動させて前記加硫済みタイヤから取り外す段階とを経るように構成された制御手段が設けられている。
【0014】
本発明に係るタイヤ加硫装置において、前記セグメントを支持する上部プレートと、前記上のサイドモールドを、前記上部プレートに対してタイヤ軸方向の内側に相対移動させうる第1の昇降具とを具えるのが好ましい。
【0015】
本発明に係るタイヤ加硫装置において、前記上のサイドモールドの、前記上部プレートに対するタイヤ軸方向の移動距離を検出する第1の検出手段をさらに具えるのが好ましい。
【0016】
本発明に係るタイヤ加硫装置において、前記下のサイドモールドを載置する下部プレートと、前記下のサイドモールドを、前記下部プレートに対してタイヤ軸方向の内側に相対移動させうる第2の昇降具とを具えるのが好ましい。
【0017】
本発明に係るタイヤ加硫装置において、前記下のサイドモールドの、前記下部プレートに対するタイヤ軸方向の移動距離を検出する第2の検出手段をさらに具えるのが好ましい。
【0018】
本発明に係るタイヤ加硫装置において、前記上下のサイドモールドとトレッドモールドとの割位置のビードベースラインからのタイヤ半径方向距離は、タイヤ断面高さの1/2より小であるのが好ましい。
【0019】
本発明に係るタイヤ加硫装置において、前記上下のサイドモールドとトレッドモールドとの割位置は、タイヤ最大幅位置よりもタイヤ半径方向の内側であるのも好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明のタイヤ加硫方法において、タイヤ取出し工程は、上下のサイドモールドを、それぞれタイヤ軸方向の内側に移動させ、加硫済みタイヤをビード幅が減じる向きに変形させる段階を含む。
【0021】
これにより、例えばサイドブロックを有するタイヤを加硫する際、サイドブロックの表面にパーティングラインが生じるのを防止しながら、セグメントを、サイドブロックに引っ掛けることなくタイヤ半径方向の外側に引き出すことができる。即ち、パーティングラインによる見栄えの低下を抑制しながら、加硫済みタイヤを金型から取り出すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明のタイヤ加硫装置の一実施形態を概念的に示す側面図である。
【
図3】閉状態の金型を加硫済みタイヤとともに示す断面図である。
【
図4】上下のサイドモールドをタイヤ軸方向の内側に移動させた段階を、加硫済みタイヤとともに示す断面図である。
【
図5】(a)~(c)は、タイヤ取出し工程を示す概念図である。
【
図7】(a)、(b)は、本発明で形成されるタイヤを示す断面図及び部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は、本発明のタイヤ加硫装置1の一実施形態を示す側面図である。
図7(a)、(b)は、タイヤ加硫装置1によって形成された加硫済みタイヤ100(以下タイヤ100とい場合がある。)の一実施形態の断面図及び側面図である。
【0024】
図7(a)、(b)に示すように、本実施形態のタイヤ100は、SUV用等の四輪駆動車用のタイヤであって、トレッド部101と、トレッド部101のタイヤ軸方向の両外側からタイヤ半径方向の内側にのびるサイドウォール部102と、各サイドウォール部102の半径方向内端部に配されるビード部103とを含む。タイヤ100には、カーカス、ベルト、バンド等のコード補強層(図示省略)を用いた周知の内部構造を採用することができる。
【0025】
トレッド部101には、タイヤ周方向にのびる複数のブロック列Rを含むトレッドパターンが配される。複数のブロック列Rには、タイヤ軸方向最外側に配されるショルダブロック列R1が含まれる。ショルダブロック列R1は、タイヤ周方向に配列する複数のショルダブロックB1から構成される。
【0026】
本例のタイヤ100は、オフロードでのトラクション性能を向上させるために、サイドウォール部102の半径方向外側領域Yに、サイドブロックB2からなるサイドパターンが形成されている。サイドブロックB2は、サイドウォール部102の表面Sから突出する。サイドブロックB2は、ショルダブロックB1がトレッド端Teを越えてタイヤ半径方向内側に延長してのびる延長部分B1aとして形成されても良く、又ショルダブロックB1とは異なる独立したブロックとして形成されても良い。サイドブロックB2の形状、突出高さなどは、タイヤサイズ等に応じて適宜設定されうる。
【0027】
前記半径方向外側領域Yとは、サイドウォール部102のうち、サイドウォール部102の表面Sが最もタイヤ軸方向外側に張り出す位置であるタイヤ最大幅位置mよりもタイヤ半径方向の外側の領域を意味する。
【0028】
図1に示すように、タイヤ加硫装置1は、金型2と、金型2を開閉可能に支持する装置本体3とを含む。
【0029】
図2に示すように、金型2は、タイヤ半径方向に拡縮径可能な環状のトレッドモールド4と、上下のサイドモールド5U、5Lとを含む。トレッドモールド4は、タイヤ周方向に配される複数のセグメント4Aからなり、各セグメント4Aは、セクター6に取替え可能に保持されている。
【0030】
トレッドモールド4(セグメント4A)には、前記トレッドパターン及びサイドパターンを形成するための成形面が配される。即ち、上下のサイドモールド5U、5Lとトレッドモールド4との割位置Qは、
図7(a)に示すように、少なくともサイドブロックB2のタイヤ半径方向の最内端B2eよりもタイヤ半径方向内側に位置している。
【0031】
好ましくは、前記割位置QのビードベースラインBLからのタイヤ半径方向距離Lは、タイヤ断面高さHの1/2よりも小であるのが望ましい。又前記割位置Qは、タイヤ最大幅位置mよりもタイヤ半径方向内側であるのも望ましい。このような割位置Qを有する金型2に対して、本願発明は最も効果を発揮しうる。
【0032】
又上下のサイドモールド5U、5Lには、それぞれサイドウォール部102における割位置Qよりも半径方向内側部分、及びビード部103を形成するための成形面が配される。
【0033】
図1、2に示すように、装置本体3は、トレッドモールド4(セグメント4A)を支持する上部プレート8、上のサイドモールド5Uを上部プレート8に対してタイヤ軸方向の内側に相対移動させうる第1の昇降具9(
図1に示す)、下のサイドモールド5Lを載置する下部プレート10、下のサイドモールド5Lを下部プレート10に対してタイヤ軸方向の内側に相対移動させうる第2の昇降具11(
図1に示す)とを含む。本明細書では、タイヤ軸方向(上下方向に相当する。)のうち、タイヤ赤道に向く側を「内側」と定義する。
【0034】
具体的には、本例の装置本体3は、フレーム(図示省略)等に支持される上下の基台12U、12Lをさらに含み、下の基台12L上に、前記下部プレート10が固定される。
【0035】
又下の基台12Lには、加硫用ブラダ(図示省略)を含むセンタ機構14が配される。センタ機構14は、例えばシリンダである第2の昇降具11と、そのロッド上端に支持される昇降板15と、昇降板15から立ち上がる円筒状の支持筒16とを含む。支持筒16の上端に、ホルダ24を介して前記下のサイドモールド5Lが支持される。第2の昇降具11は、下の基台12Lの下方に配される例えば底板に取り付く。従って、第2の昇降具11のロッドの伸張により、昇降板15、支持筒16、ホルダ24を介して前記下のサイドモールド5Lは、下部プレート10に対してタイヤ軸方向の内側に相対移動しうる。
【0036】
センタ機構14は、前記昇降板15に支持される例えばシリンダである第3の昇降具17を含み、そのロッド上端には、支持筒16の中心孔を通るセンタボスト18が連設される。センタボスト18の上端には、加硫用ブラダの上端部を保持するグリップリング19Uが取り付く。又下のサイドモールド5L上には、加硫用ブラダの下端部を保持するグリップリング19Lが取り付く。
【0037】
次に、上の基台12Uには、上部プレート8を上下移動可能に支持する例えばシリンダである第4の昇降具20が配される。
【0038】
本例では、第4の昇降具20は、上の基台12Uに間隔を有して取り付く天板に支持される。又第4の昇降具20のロッド下端には、継ぎ部21を介して筒状の支持筒22が連設される。この支持筒22の下端に、前記上部プレート8が固定される。従って、第4の昇降具20のロッドの伸縮により、継ぎ部21、支持筒22を介して上部プレート8をトレッドモールド4と一体に上下移動しうる。トレッドモールド4は、セクター6の下面が下部プレート10に接する下降状態PL(
図1~4に示す)と、セクター6が下部プレート10から上方に離間する待機状態PU(
図6に示す)との間を上下移動しうる。
【0039】
継ぎ部21には例えばシリンダである第1の昇降具9が支持される。この第1の昇降具9のロッド下端には、前記支持筒22の中心孔を通って下方にのびる昇降軸23が連設される。この昇降軸23の下端に、上のサイドモールド5Uが連結部25を介して取り付く。
【0040】
従って、第1の昇降具9のロッドの伸張により、昇降軸23を介して上のサイドモールド5Uを、上部プレート8に対してタイヤ軸方向の内側に相対移動させうる。本例では、上のサイドモールド5Uは、第4の昇降具20により、上部プレート8と一体に前記待機状態PUから下降状態PLまで下降しうる。又下降状態PLにおいて、上のサイドモールド5Uは、第1の昇降具9のロッドの伸張により、上部プレート8に対してタイヤ軸方向の内側に相対移動しうる。
【0041】
装置本体3は、トレッドモールド4を拡縮径するための拡縮径手段30をさらに具える。
【0042】
図2、3に示すように、拡縮径手段30は、昇降プレート31と、昇降プレート31に支持される円筒状のアクチェータ32とを含む。アクチェータ32の内周面には、下方に向かって半径方向外側に傾斜する向きのガイド部32Aが配される。又昇降プレート31は、例えばシリンダである第5の昇降具33(
図2に示す)によって、上部プレート8に対して相対的に上下移動可能に配される。
図1には、第5の昇降具33が省略して描かれる。
【0043】
図3に示すように、セグメント4Aは、セクター6上端のガイドピン35が、上部プレート8に設けるガイド溝36に案内されることで、半径方向に移動可能に上部プレート8に保持される。又セクター6の半径方向外面には、前記ガイド部32Aに案内される同勾配のガイド部6Aが設けられる。
【0044】
従って、第5の昇降具33によりアクチェータ32は、上部プレート8に対して相対的に上昇しうる。これにより、各セグメント4Aを半径方向の外側に移動でき、トレッドモールド4を拡径しうる。又拡径後、上部プレート8が、第4の昇降具20によって上昇することで、
図6に示すように、拡径状態のトレッドモールド4と上のサイドモールド5Uとを一体に上昇でき、金型2からタイヤ100を取り出すことができる。
【0045】
次に、タイヤ加硫装置1を用いたタイヤ加硫方法を説明する。本実施形態のタイヤ加硫方法においては、開状態(図示省略)の金型2内に生タイヤを配置する工程、金型2を閉状態として配置された生タイヤを加硫する工程、及び加硫後に金型2から加硫済みタイヤ100を取り出すタイヤ取出し工程とを含む。
【0046】
このうち、生タイヤを配置する工程、及び生タイヤを加硫する工程は、従来の加硫方法と同じである。そのため、その説明を省略し、タイヤ取出し工程のみを以下に説明する。
【0047】
図5(a)~(c)に概念的に示すように、タイヤ取出し工程では、第1の段階S1(
図5(b)に示す)、と第2の段階S2(
図5(c)に示す)とを含む。なお
図5(a)には、金型2が閉状態J1となり、その内部でタイヤ100が加硫された状態が示される。
【0048】
図4、5(b)に示すように、第1の段階S1では、加硫後、上下のサイドモールド5U、5Lが、それぞれタイヤ軸方向の内側に移動される。これにより、加硫済みのタイヤ100は、ビード幅が減じる向きに変形させられ、タイヤのサイドブロックB2を、セグメント4Aからタイヤ軸方向の内側に逃がすことができる。
【0049】
第1の段階S1は、本例では、第1の昇降具9により、上のサイドモールド5Uを上部プレート8に対して相対的に下降させること、及び第2の昇降具11により、下のサイドモールド5Lを下部プレート10に対して相対的に上昇させることで行われる。
【0050】
ここで、金型2の閉状態J1においては、セグメント4A、4A間、及びセグメント4Aと上下のサイドモールド5U、5Lとの間は、互いに強く押し付けられている。従って、閉状態J1から、いきなり第1の段階S1を行った場合、上下のサイドモールド5U、5Lと、セグメント4Aとが強く擦れあって互いに傷が発生する恐れを招く。
【0051】
そのため、第1の段階S1に先駆け、金型2の閉状態J1からセグメント4Aを、それぞれタイヤ半径方向の外側に移動させ、トレッドモールド4を上下のサイドモールド5U、5Lから離間させる初期の段階(図示省略)をさらに含むのか好ましい。この離間距離が大きすぎると、セグメント4Aがサイドブロックに引っ掛かり、ゴム欠けを招く。そのため離間距離は2.0mm以下が好ましい。
【0052】
図5(c)に示すように、第2の段階S2では、タイヤ100の前記変形状態において、セグメント4Aを、それぞれタイヤ半径方向の外側に移動させ、タイヤ100からセグメント4Aを取り外す。このように、サイドブロックB2をタイヤ軸方向の内側に逃がした状態とすることで、セグメント4Aを、サイドブロックB2に引っ掛けることなくタイヤ半径方向の外側に引き出すことが可能となる。即ち、タイヤ100にブロック欠け等の損傷を与えることなく、タイヤ100を金型2から容易に取り出すことが可能となる。
【0053】
なお第2の段階S2は、第1の段階S1を保ったまま、第5の昇降具33により、アクチェータ32を上部プレート8に対して相対的に上昇させることで行われる。
【0054】
第2の段階S2の後、
図6に示すように、前記待機状態PUまで、上部プレート8がアクチェータ32とともに上昇する。これにより、開状態J2となり、タイヤ100を金型2から取り出すことができる。
【0055】
なおタイヤ100を金型2から取り出すストロークを確保うるために、上下の基台12U、12Lの一方を、昇降自在に構成することもできる。又第1~第5の昇降具9、11、17、20、33としてシリンダ以外の周知の種々のものが採用しうる。
【0056】
なおタイヤ加硫装置1には、該装置1が前記初期の段階と第1の段階S1と第2の段階S2とを順次行うための制御手段(図示省略)が設けられている。制御手段は、例えばコンピュター等であり、第1~第5の昇降具9、11、17、20、33のオン/オフを制御する制御部を含む。
【0057】
図1に示すように、本例のタイヤ加硫装置1には、第1の検出手段37、及び第2の検出手段38を設けるのが好ましい。第1、第2の検出手段37、38として所謂リニアスケールが好適に採用しうる。
【0058】
第1の検出手段37は、上のサイドモールド5Uの上部プレート8に対するタイヤ軸方向の相対的な移動距離を検出する。本例の第1の検出手段37は、第1の昇降具9の例えばロッドに固定の指針と、例えばステーに固定の目盛り部とから構成される。第2の検出手段38は、下のサイドモールド5Lの、下部プレート10に対するタイヤ軸方向の相対的な移動距離を検出する。本例の第2の検出手段38は、例えば第2の昇降具11のロッド或いは昇降板15に固定の指針と、例えばステーに固定の目盛り部とから構成される。
【0059】
なお第1、第2の検出手段37、38として周知の種々な測定器、或いはセンサが採用されうる。
【0060】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【符号の説明】
【0061】
1 タイヤ加硫装置
2 金型
4 トレッドモールド
4A セグメント
5L 下のサイドモールド
5U 上のサイドモールド
8 上部プレート
9 第1の昇降具
10 下部プレート
11 第2の昇降具
100 タイヤ
BL ビードベースライン
H タイヤ断面高さ
J1 閉状態
J2 開状態
m タイヤ最大幅位置
Q 割位置
S1 段階
S2 段階