(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】タイヤ加硫装置及びタイヤ加硫方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/02 20060101AFI20230301BHJP
B29C 35/02 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C35/02
(21)【出願番号】P 2019071444
(22)【出願日】2019-04-03
【審査請求日】2022-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】鬼松 博幸
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-196305(JP,A)
【文献】特開2000-127173(JP,A)
【文献】特開昭51-097682(JP,A)
【文献】特開2000-135715(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0129653(US,A1)
【文献】特開2002-137228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/02
B29C 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に配される複数のセグメントからなるトレッドモールドと、上下のサイドモールドとを有する金型を含むタイヤ加硫装置であって、
前記各セグメントは、上下に分割された上側セグメント部と、下側セグメント部とを含み、
前記上側セグメント部と前記下側セグメント部とをタイヤ半径方向には互いに同方向に移動可能に支持し、かつタイヤ軸方向には互いに逆方向に移動可能に支持するセグメント支持手段を含
み、
前記下側セグメント部を支持する下側プレートを含み、
前記下側プレートの上面は、前記金型の閉状態から前記下側セグメント部がタイヤ半径方向外側に移動する際、前記下側セグメント部の下面を支持する支持面を含み、
前記支持面は、タイヤ半径方向外側に向かって下方に傾斜する、
タイヤ加硫装置。
【請求項2】
前記上下のサイドモールドと前記トレッドモールドとの割位置のビードベースラインからのタイヤ半径方向距離は、タイヤ断面高さの50%よりも小である、請求項1に記載のタイヤ加硫装置。
【請求項3】
前記上下のサイドモールドと前記トレッドモールドとの割位置は、タイヤ最大幅位置よりもタイヤ半径方向の内側である、請求項1に記載のタイヤ加硫装置。
【請求項4】
前記金型の閉状態において、前記上側セグメント部と離間して前記上側セグメント部の上方に配される上側プレートを含み、
前記セグメント支持手段は、前記閉状態から前記上側セグメント部がタイヤ半径方向外側に移動する際、前記上側セグメント部を前記上側プレートに接近又は当接させる第1移動具を含む、請求項1ないし3のいずれかに記載のタイヤ加硫装置。
【請求項5】
前記セグメント支持手段は、前記閉状態から前記上側セグメント部をタイヤ半径方向外側に移動させる第2移動具を含む、請求項4に記載のタイヤ加硫装置。
【請求項6】
前記第2移動具は、タイヤ軸方向に移動可能なアクチェータリングを含み、
前記上側セグメント部は、タイヤ半径方向外側の外面に、前記アクチェータリングに連結されかつタイヤ半径方向外側に向かって下方に傾斜する上側傾斜面を有する、請求項5に記載のタイヤ加硫装置。
【請求項7】
前記第2移動具は、前記閉状態から前記下側セグメント部をタイヤ半径方向外側に移動させ、
前記下側セグメント部は、タイヤ半径方向外側の外面に、前記アクチェータリングに連結されかつタイヤ半径方向外側に向かって下方に傾斜する下側傾斜面を有する、請求項6に記載のタイヤ加硫装置。
【請求項8】
タイヤ周方向に配される複数のセグメントからなるトレッドモールドと、上下のサイドモールドとを有し、かつ前記各セグメントが、上下に分割された上側セグメント部と下側セグメント部とを含み、前記下側セグメント部を支持する下側プレートをさらに含む金型により生タイヤを加硫するタイヤ加硫方法であって、
加硫後、前記金型から加硫済みタイヤを取り出すタイヤ取出し工程を含み、
前記タイヤ取出し工程は、
前記金型の閉状態において、前記上側セグメント部と前記下側セグメント部とをタイヤ半径方向外側に移動させる第1移動と、
前記上側セグメント部と前記下側セグメント部とをタイヤ軸方向に互いに離間する向きに移動させる第2移動とを含み、
前記下側プレートは、前記下側セグメント部の下面を支持する支持面を含み、
前記支持面は、タイヤ半径方向外側に向かって下方に傾斜し、
前記第2移動は、前記下側セグメント部を前記下側プレートの前記支持面に沿ってタイヤ半径方向外側に向かって下方に移動する動作を含む、
タイヤ加硫方法。
【請求項9】
前記第1移動と前記第2移動とは、並行して行われる、請求項8に記載のタイヤ加硫方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加硫済みタイヤの金型からの取り出しを可能としながら、サイドモールドとトレッドモールドとの割位置をタイヤ半径方向内側に移行しうるタイヤ加硫装置及びタイヤ加硫方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば下記の特許文献1には、タイヤを加硫成形するためのタイヤ加硫用金型(以下、金型という場合がある。)が記載されている。前記金型は、サイドウォール部を形成するサイドプレートと、トレッド部を成形するトレッド成形リングと、前記トレッド成形リングを半径方向に移動させるアクチェータリングとを含んでいる。前記金型の閉状態では、前記トレッド成形リングと前記サイドプレートとが連なる。
【0003】
他方、例えばSUV用等の四輪駆動車用のタイヤでは、近年、サイドウォール部のタイヤ最大幅位置付近の領域にも、ブロック(以下、サイドブロックという場合がある。)を設けることが提案されている(例えば特許文献2参照。)。このようなサイドブロックは、オフロードでのトラクション性能や美観性を向上させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-196114号公報
【文献】特開2016-55820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような金型を用いて、前記サイドブロックを有するタイヤを加硫成形する場合、前記サイドブロックの表面に、前記金型のパーティングラインが発生し、タイヤの見栄えを損ねるという問題が生じる。前記パーティングラインとは、前記トレッド成形リングと前記サイドプレートとの割位置に生じる突起状の金型痕である。
【0006】
この対策として、本発明者は、前記割位置を、前記サイドブロックの半径方向内側に移行させることで、前記パーティングラインを目立たなくさせることを提案した。しかしながら、単に、前記割位置を、前記サイドブロックの半径方向内側に移行させた前記金型では、前記金型を開状態にするときに、前記トレッド成形リングが前記サイドブロックに引っ掛かり、前記タイヤを前記金型から取り出すことができないという問題があった。
【0007】
そこで本発明は、加硫済みタイヤの金型からの取り出しを可能としながら、サイドモールドとトレッドモールドとの割位置をタイヤ半径方向の内側に移行しうるタイヤ加硫装置及びタイヤ加硫方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、タイヤ周方向に配される複数のセグメントからなるトレッドモールドと、上下のサイドモールドとを有する金型を含むタイヤ加硫装置であって、前記各セグメントは、上下に分割された上側セグメント部と、下側セグメント部とを含み、前記上側セグメント部と前記下側セグメント部とをタイヤ半径方向には互いに同方向に移動可能に支持し、かつタイヤ軸方向には互いに逆方向に移動可能に支持するセグメント支持手段を含む。
【0009】
本発明に係るタイヤ加硫装置は、前記上下のサイドモールドと前記トレッドモールドとの割位置のビードベースラインからのタイヤ半径方向距離が、タイヤ断面高さの50%よりも小であるのが望ましい。
【0010】
本発明に係るタイヤ加硫装置は、前記上下のサイドモールドと前記トレッドモールドとの割位置が、タイヤ最大幅位置よりもタイヤ半径方向の内側であるのが望ましい。
【0011】
本発明に係るタイヤ加硫装置は、前記金型の閉状態において、前記上側セグメント部と離間して前記上側セグメント部の上方に配される上側プレートを含み、前記セグメント支持手段は、前記閉状態から前記上側セグメント部がタイヤ半径方向外側に移動する際、前記上側セグメント部を前記上側プレートに接近又は当接させる第1移動具を含むのが望ましい。
【0012】
本発明に係るタイヤ加硫装置は、前記セグメント支持手段が、前記閉状態から前記上側セグメント部をタイヤ半径方向外側に移動させる第2移動具を含むのが望ましい。
【0013】
本発明に係るタイヤ加硫装置は、前記第2移動具が、タイヤ軸方向に移動可能なアクチェータリングを含み、前記上側セグメント部は、タイヤ半径方向外側の外面に、前記アクチェータリングに連結されかつタイヤ半径方向外側に向かって下方に傾斜する上側傾斜面を有するのが望ましい。
【0014】
本発明に係るタイヤ加硫装置は、前記第2移動具が、前記閉状態から前記下側セグメント部をタイヤ半径方向外側に移動させ、前記下側セグメント部は、タイヤ半径方向外側の外面に、前記アクチェータリングに連結されかつタイヤ半径方向外側に向かって下方に傾斜する下側傾斜面を有するのが望ましい。
【0015】
本発明に係るタイヤ加硫装置は、前記下側セグメント部を支持する下側プレートを含み、前記下側プレートの上面は、前記金型の閉状態から前記下側セグメント部がタイヤ半径方向外側に移動する際、前記下側セグメント部の下面を支持する支持面を含み、前記支持面は、タイヤ半径方向外側に向かって下方に傾斜するのが望ましい。
【0016】
本発明は、タイヤ周方向に配される複数のセグメントからなるトレッドモールドと、上下のサイドモールドとを有し、かつ前記各セグメントが、上下に分割された上側セグメント部と下側セグメント部とを含む金型により生タイヤを加硫するタイヤ加硫方法であって、加硫後、前記金型から加硫済みタイヤを取り出すタイヤ取出し工程を含み、前記タイヤ取出し工程は、前記金型の閉状態において、前記上側セグメント部と前記下側セグメント部とをタイヤ半径方向外側に移動させる第1移動と、前記上側セグメント部と前記下側セグメント部とをタイヤ軸方向に互いに離間する向きに移動させる第2移動とを含む。
【0017】
本発明に係るタイヤ加硫方法は、前記第1移動と前記第2移動とが、並行して行われるのが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のタイヤ加硫装置は、複数のセグメントからなるトレッドモールドと、上下のサイドモールドとを有する金型を含んでいる。前記各セグメントは、上下に分割された上側セグメント部と、下側セグメント部とを含んでいる。本発明のタイヤ加硫装置は、前記上側セグメント部と前記下側セグメント部とをタイヤ半径方向には互いに同方向に移動可能に支持し、かつタイヤ軸方向には互いに逆方向に移動可能に支持するセグメント支持手段をさらに含んでいる。
【0019】
これにより、例えば、割位置を、前記サイドブロックの半径方向内側に移行させたタイヤを加硫する場合でも、前記トレッドモールドを、前記サイドブロックに引っ掛けることなくタイヤ半径方向の外側に引き出すことができる。即ち、本発明のタイヤ加硫装置は、見栄えの良いタイヤ、特にサイドブロックの表面にパーティングラインが存在しないタイヤを成形できるとともに、加硫成形後、前記タイヤを前記金型から取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態のタイヤ加硫装置の閉状態の要部断面図である。
【
図2】(a)は、
図1のタイヤ加硫装置によって形成されるタイヤの断面図、(b)は、(a)の側面図である。
【
図3】タイヤ加硫装置の閉状態の要部断面図である。
【
図4】取出し工程の閉状態を概念的に示す断面図である。
【
図5】取出し工程の第1の段階を概念的に示す断面図である。
【
図6】取出し工程の第2の段階を概念的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の一形態が、図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態のタイヤ加硫装置(以下、単に「装置」と記載される場合がある。)1の要部断面図である。
図2は、装置1によって形成された加硫済みタイヤ(以下、単に「タイヤ」とい場合がある。)100の一実施形態の断面図及び側面図である。
【0022】
図2に示されるように、本実施形態のタイヤ100は、SUV用等の四輪駆動車用のタイヤである。タイヤ100は、例えば、重荷重用のタイヤであっても良い。タイヤ100は、本実施形態では、トレッド部101と、トレッド部101のタイヤ軸方向の両外側からタイヤ半径方向の内側にのびるサイドウォール部102と、各サイドウォール部102の半径方向内側に配されるビード部103とを含んでいる。タイヤ100には、カーカス、ベルト、バンド等のコード補強層(図示省略)を用いた周知の内部構造が採用される。
【0023】
トレッド部101には、例えば、タイヤ周方向にのびる複数のブロック列Rを含むトレッドパターンTpが配される。
【0024】
サイドウォール部102の半径方向外側領域Yには、例えば、オフロードでのトラクション性能を向上させるために、サイドブロックB2からなるサイドパターンSpが形成されている。サイドブロックB2は、サイドウォール部102の表面Sから突出する突起物である。サイドブロックB2は、例えば、トレッド端Teを含んで形成される。サイドブロックB2の形状、突出高さなどは、タイヤサイズ等に応じて適宜設定されうる。
【0025】
半径方向外側領域Yとは、本明細書では、タイヤ最大幅位置mよりもタイヤ半径方向の外側の領域を意味する。タイヤ最大幅位置mは、サイドウォール部102に設けられた文字やリムプロテクタ等の突起物を除き、サイドウォール部102の表面Sが最もタイヤ軸方向外側に張り出す位置である。
【0026】
図1に示されるように、装置1は、例えば、タイヤ100の外側に位置する金型2と、金型2を開閉可能に支持する装置本体3とを含んでいる。なお、本明細書では、金型2が、未加硫の生タイヤ(図示省略)を加硫成形しうる状態を閉状態J1という。また、金型2が、前記生タイヤをその内部に取付可能、及び、加硫済のタイヤ100を取出可能な状態を開状態(
図6に示す)J2という。
【0027】
本実施形態の金型2は、タイヤ半径方向に拡縮径可能な環状のトレッドモールド4と、上下のサイドモールド5U、5Lとを含む。
【0028】
本明細書では、金型2のタイヤ半径方向、タイヤ軸方向及びタイヤ周方向は、それぞれ、金型2内に収めされたタイヤ100の半径方向、軸方向及び周方向を意味し、それぞれ、X、Z及びRで示される。また、タイヤ軸方向は、本実施形態では、鉛直方向(上下方向)と一致する。符号104は、タイヤ回転軸である。
【0029】
トレッドモールド4は、例えば、トレッドパターンTp及びサイドパターンSpを形成するための成形面4aを有している。上下のサイドモールド5U、5Lは、例えば、それぞれサイドウォール部102の割位置Qよりもタイヤ半径方向の内側部分、及びビード部103を形成するための成形面5aを有している。割位置Qは、上下のサイドモールド5U、5Lとトレッドモールド4とがタイヤ100の外面に接する境界位置である。
【0030】
図2に示されるように、割位置Qは、本実施形態では、少なくともサイドブロックB2のタイヤ半径方向の内端Beよりもタイヤ半径方向内側に位置している。好ましくは、割位置QのビードベースラインBLからのタイヤ半径方向の距離Lは、タイヤ断面高さHの50%よりも小であるのが望ましい。また、割位置Qは、タイヤ最大幅位置mよりもタイヤ半径方向内側であるのも望ましい。このような割位置Qを有する金型2に対して、本願発明は最も効果を発揮しうる。
【0031】
図1に示されるように、トレッドモールド4は、例えば、タイヤ周方向に配される複数のセグメント6からなる。各セグメント6は、本実施形態では、上下に分割された上側セグメント部10と、下側セグメント部11とを含んでいる。
【0032】
また、トレッドモールド4は、本実施形態では、タイヤ100と接触するトレッド成形リング7と、トレッド成形リング7を開閉させるためのセクターシュー8とを含んでいる。トレッド成形リング7及びセクターシュー8は、それぞれ、リング状に形成されている。トレッド成形リング7は、例えば、成形面4aを有している。
【0033】
本実施形態のトレッド成形リング7は、上下かつタイヤ周方向に分割された複数の上側リング片7Aと下側リング片7Bとを含んでいる。また、本実施形態のセクターシュー8は、上下かつタイヤ周方向に分割された複数の上側セクター片8Aと下側セクター片8Bとを含んでいる。本実施形態では、上側リング片7Aと上側セクター片8Aとで、上側セグメント部10が形成されている。また、下側リング片7Bと下側セクター片8Bとで、下側セグメント部11が形成されている。
【0034】
図3は、装置1の要部断面図である。
図3に示されるように、上側セグメント部10は、例えば、タイヤ半径方向外側の外面10aに、タイヤ半径方向外側に向かって下方に傾斜する上側傾斜面12を有している。本実施形態の上側傾斜面12は、上側セクター片8Aに形成される。下側セグメント部11は、例えば、タイヤ半径方向外側の外面11aに、タイヤ半径方向外側に向かって下方に傾斜する下側傾斜面13aと、下側傾斜面13aから下方にタイヤ軸方向に沿って延びる下側軸方向面13bとを有している。また、上側セグメント部10は、下側セグメント部11と接触する接触面10bを有している。接触面10bは、本実施形態では、タイヤ半径方向と平行(水平)に形成されている。なお、接触面10bは、タイヤ半径方向と平行に形成されるものに限定されるものではない。
【0035】
下側セグメント部11は、本実施形態では、下方を向く下面14に、タイヤ半径方向外側に向かって下方に傾斜する傾斜面14aを有している。本実施形態の下側傾斜面13a、下側軸方向面13b及び傾斜面14aは、下側セクター片8Bに形成されている。
【0036】
装置本体3は、本実施形態では、上側セグメント部10及び下側セグメント部11を移動可能に支持するセグメント支持手段15と、上のサイドモールド5Uを支持する上側プレート16と、下のサイドモールド5Lを支持する下側プレート17とを含んでいる。
【0037】
金型2の閉状態J1において、上側プレート16と、上側セグメント部10との間には、タイヤ周方向に延びる隙間Kが設けられる。即ち、閉状態J1において、上側プレート16と上側セグメント部10とは、タイヤ軸方向に離間している。
【0038】
セグメント支持手段15は、例えば、第1移動具20と第2移動具21とを含んでいる。
【0039】
第1移動具20は、例えば、ロッド20aと、ロッド20aを伸縮自在に支持するシリンダ20bとを有する周知のシリンダ機構である。ロッド20a先端には、上側セグメント部10が固着されている。シリンダ20bは、例えば、上側プレート16に固着された保持部材22に保持されている。第1移動具20は、本実施形態では、上側プレート16及び保持部材22に設けられたタイヤ半径方向に延びる案内孔23によって、タイヤ半径方向に移動可能に保持されている。
【0040】
第2移動具21は、本実施形態では、タイヤ軸方向に移動可能なアクチェータリング21aを含んでいる。
【0041】
アクチェータリング21aは、タイヤ半径方向内側の内面24を有している。内面24は、タイヤ半径方向外側に向かって下方に傾斜する下向傾斜面24aを含んでいる。下向傾斜面24aは、例えば、周知構造のガイド部(図示省略)によって上側傾斜面12及び下側傾斜面13aと連結されている。これにより、アクチェータリング21aは、上側セグメント部10及び下側セグメント部11と相対移動可能となる。なお、前記ガイド部には、下向傾斜面24aが下側傾斜面13aから抜けることを防止する周知の抜け止部材が設けられるのが望ましい。
【0042】
アクチェータリング21aは、本実施形態では、タイヤ軸方向に伸縮するロッド26aに固着されている。ロッド26aは、例えば、周知構造のシリンダ部(図示省略)に伸縮自在に保持されている。
【0043】
下側プレート17は、本実施形態では、上方を向く上面28を有している。本実施形態の上面28は、下側セグメント部11の下面14を支持する支持面28aを含んでいる。支持面28aは、例えば、タイヤ半径方向外側に向かって下方に傾斜している。支持面28aは、本実施形態では、傾斜面14aと同勾配で傾斜している。これにより、例えば、アクチェータリング21aが上方へ移動すると、下側セグメント部11は、タイヤ半径方向外側に移動しつつ、その自重によって、下方に滑りながら移動しうる。
【0044】
また、装置本体3は、例えば、上側プレート16を鉛直方向に移動させる昇降手段30を有している。本実施形態の昇降手段30は、上側プレート16に固着されている。昇降手段30は、例えば、上側セグメント部10、下側セグメント部11、第1移動具20、第2移動具21、上側プレート16、及び、上のサイドモールド5Uと、下側プレート17及び下のサイドモールド5Lとをタイヤ軸方向に相対移動させる。昇降手段30は、例えば、周知構造のシリンダ機構やボールねじ機構などのアクチェータであるのが望ましい。
【0045】
次に、装置1を用いたタイヤ加硫方法が説明される。本実施形態のタイヤ加硫方法においては、開状態J2の金型2内に前記生タイヤを配置する工程、金型2を閉状態J1として配置された前記生タイヤを加硫する工程、及び加硫後に金型2から加硫済みのタイヤ100を取り出すタイヤ取出し工程とを含んでいる。このうち、生タイヤを配置する工程、及び生タイヤを加硫する工程は、従来の加硫方法と同じである。このため、タイヤ取出し工程のみが以下に説明される。
【0046】
図4は、タイヤ100の加硫成形が終了した直後の閉状態J1を概念的に示す断面図、
図5は、タイヤ取出し工程での第1の段階S1を概念的に示す断面図、
図6は、タイヤ取出し工程での第2の段階S2を概念的に示す断面図である。
【0047】
図4に示されるように、閉状態J1では、上側セグメント部10と上側プレート16との間には、隙間Kが設けられている。また、割位置Qは、本実施形態では、サイドブロックB2及びタイヤ最大幅位置mよりもタイヤ半径方向内側に配されている。
【0048】
図5に示されるように、第1の段階S1では、第1移動F1と第2移動F2とを含んでいる。第1移動F1は、本実施形態では、上側セグメント部10と下側セグメント部11とをタイヤ半径方向外側に移動させる。第2移動F2は、上側セグメント部10と下側セグメント部11とをタイヤ軸方向に互いに離間する向きに移動させる。
【0049】
このような第1移動F1及び第2移動F2を実現させるために、本実施形態では、第1移動F1と第2移動F2とが並行して行なわれる。本実施形態では、第1移動具20と第2移動具21とが、予め定められたタイミング、例えば、同時に作動させられる。即ち、ロッド26aによって、アクチェータリング21aを上方へ移動させると同時に、第1移動具20によって、上側セグメント部10がタイヤ100と離間しつつ上側プレート16に接近又は当接させるように、上方へ移動される。これにより、上側セグメント部10は、案内孔23によってタイヤ半径方向に案内されつつ、隙間K分、移動されることで、タイヤ100のサイドブロックB2(
図2に示す)と引っ掛かることなく、タイヤ半径方向外側へ移動される。また、下側セグメント部11は、サイドブロックB2と引っ掛かることなく、下側プレート17の支持面28aを自重によって滑り落ちるように、タイヤ半径方向外側かつ下方へ移動される。
【0050】
支持面28aのタイヤ半径方向に対する角度θは、割位置Qとタイヤ最大幅位置mとの関係によって決定されるが、例えば、5~15度が望ましく、8~12度がより望ましい。
【0051】
上側セグメント部10がタイヤ100と接触する鉛直方向の下端10eと上のタイヤ最大幅位置m1との間のタイヤ軸方向の距離La(
図4に示す)は、例えば、タイヤ断面幅Wの40%~60%が望ましい。距離Laがタイヤ断面幅Wの40%未満、又は、60%を超えると、第1移動F1及び第2移動F2のときに、タイヤ100のサイドブロックB2とトレッドモールド4とが引っ掛かるおそれがある。タイヤ断面幅Wは、金型2内のタイヤ100のタイヤ最大幅位置m、m間のタイヤ軸方向の長さである。上のタイヤ最大幅位置m1は、金型2内のタイヤ100の最も上方のタイヤ最大幅位置mである。
【0052】
このように、本実施形態では、第1移動具20と第2移動具21とは、予め定められたタイミングで作動できるように、例えば、コンピュータ等の制御手段(図示省略)で制御されているのが望ましい。前記制御手段は、例えば、アクチェータリング21a(ロッド26a)の移動の速度や、上側セグメント部10(ロッド20a)の移動の速度を制御し得るのが望ましい。
【0053】
第1の段階S1では、例えば、上側セグメント部10及び下側セグメント部11は、タイヤ100のタイヤ半径方向の外端105よりもタイヤ半径方向外側に移動される。
【0054】
図6に示すように、第2の段階S2は、開状態J2となる位置まで、昇降手段30が、上側セグメント部10、下側セグメント部11、第1移動具20、第2移動具21、上側プレート16、及び、上のサイドモールド5Uを上方に移動させる。下側セグメント部11は、本実施形態では、タイヤ100の鉛直方向の上端106よりも上方に位置される。これにより、割位置QがサイドブロックB2のタイヤ半径方向内側に配されたタイヤ100を金型2から取り出すことができる。
【0055】
次に、装置1を用いた他の実施形態のタイヤ加硫方法が説明される。本実施形態と同じ構成は、その説明が省略される。この実施形態では、昇降手段30が、
図4の閉状態J1から、下方に引き下げ可能に構成されている。
図4の閉状態J1から、昇降手段30を下方へ引き下げて、上側プレート16及び上のサイドモールド5Uを隙間Kのタイヤ軸方向長さに相当する距離、降下させる。これにより、タイヤ100のサイドウォール部102が上のサイドモールド5Uで下方に押し潰されるので、サイドブロックB2に引っ掛かることなく上側セグメント部10をタイヤ半径方向外側へ移動に移動することができる(図示省略)。
【0056】
また、装置1を用いたさらに他の実施形態のタイヤ加硫方法が説明される。本実施形態と同じ構成は、その説明が省略される。この実施形態では、昇降手段30が、
図4の閉状態J1から、下方に引き下げ可能に構成されている。この実施形態では、
図4の閉状態J1から、昇降手段30を下方へ引き下げつつ、同時に、上側セグメント部10を第1移動具20によって上方に移動させて隙間Kを消滅させる。これにより、タイヤ100のサイドウォール部102を下方に押し潰しつつ、上側セグメント部10をサイドブロックB2から離間させることができる。このため、サイドブロックB2に引っ掛かることなく上側セグメント部10をタイヤ半径方向外側へ移動に移動することができる(図示省略)。
【0057】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明はこれらの実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【符号の説明】
【0058】
1 タイヤ加硫装置
2 金型
4 トレッドモールド
5L 上のサイドモールド
5U 下のサイドモールド
6 セグメント
10 上側セグメント部
11 下側セグメント部
15 セグメント支持手段