IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士通株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-インピーダンス計算プログラム 図1
  • 特許-インピーダンス計算プログラム 図2
  • 特許-インピーダンス計算プログラム 図3
  • 特許-インピーダンス計算プログラム 図4
  • 特許-インピーダンス計算プログラム 図5
  • 特許-インピーダンス計算プログラム 図6
  • 特許-インピーダンス計算プログラム 図7
  • 特許-インピーダンス計算プログラム 図8
  • 特許-インピーダンス計算プログラム 図9
  • 特許-インピーダンス計算プログラム 図10
  • 特許-インピーダンス計算プログラム 図11
  • 特許-インピーダンス計算プログラム 図12
  • 特許-インピーダンス計算プログラム 図13
  • 特許-インピーダンス計算プログラム 図14
  • 特許-インピーダンス計算プログラム 図15
  • 特許-インピーダンス計算プログラム 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】インピーダンス計算プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/36 20200101AFI20230301BHJP
   H03H 7/38 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
G06F30/36
H03H7/38 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019103916
(22)【出願日】2019-06-03
(65)【公開番号】P2020197941
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】山ヶ城 尚志
(72)【発明者】
【氏名】吉川 学
(72)【発明者】
【氏名】川田 彦之
【審査官】堀井 啓明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-077166(JP,A)
【文献】特開平08-097733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00-30/398
H03H 7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ポートに接続される高周波部品と第1周波数でインピーダンスが整合する第1整合回路の第2ポートに、自己の第1ポートを接続すると、前記第1周波数において前記第1整合回路のインピーダンスを相殺するインピーダンスを有する仮想的な第2整合回路を求めることと、
前記求めた第2整合回路に基づいて、前記第2整合回路の第2周波数における伝送行列、アドミタンス行列、又はインピーダンス行列を求めることと、
前記第2整合回路の前記第2周波数における伝送行列、アドミタンス行列、又はインピーダンス行列と、前記高周波部品及び前記第1整合回路の前記第2周波数における合成インピーダンスとに基づいて、前記第2周波数における前記高周波部品のインピーダンスを求めることと
を含む処理をコンピュータに実行させる、インピーダンス計算プログラム。
【請求項2】
前記高周波部品のインピーダンスを求めることは、前記第2整合回路の前記第2周波数における伝送行列、アドミタンス行列、又はインピーダンス行列と、前記高周波部品及び前記第1整合回路の前記第2周波数における合成インピーダンスとに基づいて、前記第2整合回路の第2ポートから見た前記第2周波数における前記高周波部品のインピーダンスを求めることである、請求項1記載のインピーダンス計算プログラム。
【請求項3】
前記第2整合回路は、前記第1整合回路の前記第1周波数における第1伝送行列、第1アドミタンス行列、又は第1インピーダンス行列の逆行列になる第2伝送行列、第2アドミタンス行列、又は第2インピーダンス行列を有する整合回路である、請求項1又は2記載のインピーダンス計算プログラム。
【請求項4】
前記第2整合回路の第1ポートから第2ポートを見た回路構成は、前記第1整合回路の第2ポートから第1ポートを見た回路構成に対してミラー対称性を有する回路構成であり、
前記第2整合回路に含まれる1又は複数の第2素子の前記第1周波数におけるインピーダンスは、前記第1整合回路に含まれる1又は複数の第1素子の前記第1周波数におけるインピーダンスの符号を逆にした値を有する、請求項1乃至3のいずれか一項記載のインピーダンス計算プログラム。
【請求項5】
前記第2周波数における前記高周波部品のインピーダンスに基づいて、前記第2周波数において前記高周波部品に整合するインピーダンスを有する整合回路を求めることをさらに含む処理を前記コンピュータに実行させる、請求項1乃至4のいずれか一項記載のインピーダンス計算プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インピーダンス計算プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、第1ポートと第2ポートとの間に接続され、前記第1ポートと前記第2ポートとの間を伝送する高周波信号に対するインピーダンスを調整するインピーダンス調整素子であって、伝送する高周波信号の位相θの変化量dθの周波数特性であるdθ/dωが負値である構造を有する、インピーダンス調整素子がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-027018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のインピーダンス調整素子は、インピーダンスの計算に時間又は手間が掛かり、インピーダンスを容易に計算することが困難である。
【0005】
そこで、インピーダンスを容易に計算できるインピーダンス計算プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施の形態のインピーダンス計算プログラムは、第1ポートに接続される高周波部品と第1周波数でインピーダンスが整合する第1整合回路の第2ポートに、自己の第1ポートを接続すると前記第1周波数において前記第1整合回路のインピーダンスを相殺するインピーダンスを有する仮想的な第2整合回路を求めることと、前記求めた第2整合回路に基づいて、前記第2整合回路の第2周波数における伝送行列、アドミタンス行列、又はインピーダンス行列を求めることと、前記第2整合回路の前記第2周波数における伝送行列、アドミタンス行列、又はインピーダンス行列と、前記高周波部品及び前記第1整合回路の前記第2周波数における合成インピーダンスとに基づいて、前記第2周波数における前記高周波部品のインピーダンスを求めることとを含む処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0007】
インピーダンスを容易に計算できるインピーダンス計算プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】インピーダンス計算プログラムを実行するコンピュータシステム20の斜視図である。
図2】コンピュータシステム20の本体部21内の要部の構成を説明するブロック図である。
図3】実施の形態のインピーダンス計算プログラムの概略を説明する図である。
図4】整合回路51の回路構成及び回路素子値の一例を示す図である。
図5】アンテナ50のS11パラメータの周波数特性を示す図である。
図6】インピーダンス計算プログラムが生成する仮想的な整合回路52をアンテナ50及び整合回路51に接続した回路を示す図である。
図7】1.2GHz用の整合回路52を1.5GHz用に換算した整合回路におけるF行列を求める処理を説明する図である。
図8】1.5GHz用に換算した整合回路のF行列の求め方を説明する図である。
図9】1.5GHzにおけるアンテナ50の単独のインピーダンスを求める際の回路構成を示す図である。
図10】アンテナ50と整合回路53を示す図である。
図11】アンテナ50に接続した整合回路53のS11パラメータの周波数特性を示す図である。
図12】実施の形態のインピーダンス計算装置100を示す図である。
図13】実施の形態のインピーダンス計算プログラムの処理を表すフローチャートを示す図である。
図14】アンテナ50に接続される比較用の整合回路60を示す図である。
図15】インピーダンス計算装置100の入力画面23Aの一例を示す図である。
図16】整合回路とS11パラメータの計算結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のインピーダンス計算プログラムを適用した実施の形態について説明する。
【0010】
<実施の形態>
図1は、インピーダンス計算プログラムを実行するコンピュータシステム20の斜視図である。図1に示すコンピュータシステム20は、本体部21、ディスプレイ22、キーボード23、マウス24、及びモデム25を含む。
【0011】
本体部21は、CPU(Central Processing Unit:中央演算装置)、HDD(Hard Disk Drive:ハードディスクドライブ)、及びディスクドライブ等を内蔵する。ディスプレイ22は、本体部21からの指示により画面22A上に処理結果等を表示する。ディスプレイ22は、例えば、液晶モニタであればよい。キーボード23は、コンピュータシステム20に種々の情報を入力するための入力部である。マウス24は、ディスプレイ22の画面22A上の任意の位置を指定する入力部である。モデム25は、外部のデータベース等にアクセスして他のコンピュータシステムに記憶されているプログラム等をダウンロードする。
【0012】
インピーダンス計算プログラムは、ディスク27等の可搬型記録媒体に格納されるか、モデム25等の通信装置を使って他のコンピュータシステムの記録媒体26からダウンロードされ、コンピュータシステム20に入力されてコンパイルされる。
【0013】
インピーダンス計算プログラムは、コンピュータシステム20をインピーダンス計算装置として動作させる。インピーダンス計算プログラムは、例えばディスク27等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納されていてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、ディスク27、ICカードメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク等の磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の可搬型記録媒体に限定されるものではない。コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、モデム25又はLAN等の通信装置を介して接続されるコンピュータシステムでアクセス可能な各種記録媒体を含む。
【0014】
図2は、コンピュータシステム20の本体部21内の要部の構成を説明するブロック図である。本体部21は、バス30によって接続されたCPU31、RAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)等を含むメモリ部32、ディスク27用のディスクドライブ33、及びハードディスクドライブ(HDD)34を含む。
【0015】
なお、コンピュータシステム20は、図1及び図2に示す構成のものに限定されず、各種周知の要素を付加してもよく、又は代替的に用いてもよい。
【0016】
図3は、実施の形態のインピーダンス計算プログラムの概略を説明する図である。図3には、アンテナ50、整合回路51、及び整合回路52を示す。整合回路51及び整合回路52は、それぞれ、第1整合回路及び第2整合回路の一例である。ここでは、グランド配線を省略するが、整合回路51、52は、ともに二端子対回路である。整合回路51は、アンテナ50と同様に実際に存在する回路であり、整合回路52は、インピーダンス計算プログラムによって生成される仮想的な回路である。
【0017】
整合回路51は、端子51A、51Bを有し、整合回路52は、端子52A、52Bを有する。整合回路51の端子51A、51Bは、それぞれ、ポート1、ポート2であり、整合回路52の端子52A、52Bは、それぞれ、ポート1、ポート2である。
【0018】
ここで、前提条件として、アンテナ50の給電点50Aには整合回路51の端子51Aが予め接続されており、アンテナ50の動作周波数(共振周波数)が1.2GHzになるように、整合回路51のインピーダンスは、アンテナ50のインピーダンスと整合していることとする。
【0019】
また、一例として、整合回路51の端子51Bの特性インピーダンスは、50Ωであることが分かっていることとする。すなわち、アンテナ50及び整合回路51を合わせた回路の端子51Bから見たインピーダンスは、一例として50Ωであることが分かっている。端子51Bは、整合回路51を介してアンテナ50に給電する際の給電点(給電ポート)になる端子である。
【0020】
なお、ここでは、アンテナ50及び整合回路51を合わせた回路の端子51Bから見たインピーダンスが50Ωであることとして説明するが、アンテナ50及び整合回路51を合わせた回路の端子51Bから見たインピーダンスの値が測定等によって分かっていればよく、50Ωではなくてもよい。
【0021】
アンテナ50は、高周波部品の一例であり、例えば、数百MHzから数百GHzのような高周波帯域で通信を行うアンテナである。ここでは、一例として1.2Gで使用されることを前提として、整合回路51のインピーダンスが調整されている。ただし、アンテナ50の単独でのインピーダンスは分かっていない。
【0022】
整合回路51は、抵抗、インダクタ、又はキャパシタ等を含み、抵抗、インダクタ、又はキャパシタ等の回路構成と、抵抗、インダクタ、又はキャパシタ等の各回路素子の値(回路素子値)は分かっている。
【0023】
ところで、このようなアンテナ50の動作周波数を変更して利用したい場合がある。一例として、利用者がアンテナ50の動作周波数を1.2GHzから1.5GHzに変更して利用したいこととする。1.5GHzは、一例としてGPS(Global Positioning System)用のアンテナの周波数である。これは、例えばGPS以外の用途の1.2GHz用のアンテナ50をGPS用の1.5GHzで利用したい場合である。
【0024】
このような場合には、例えば、整合回路51を取り外してアンテナ50の単独の1.5GHzでのインピーダンスを測定し、1.5GHz用に整合回路51の回路素子値を計算し直し、整合回路51の回路素子を実装することになる。このような作業には非常に長い時間と手間がかかる。
【0025】
1.5GHz用の整合回路51の回路素子値を計算するには、1.5GHzにおけるアンテナ50の単独でのインピーダンスが分かればよい。
【0026】
そこで、実施の形態のインピーダンス計算プログラムは、このような動作周波数を変更する際の計算を容易に行えるようにするために、図3に示すように、整合回路51の端子51B(ポート2)に、整合回路51のインピーダンスを相殺する仮想的な整合回路52の端子52A(ポート1)を接続し、1.5GHzにおけるアンテナ50の単独のインピーダンスを求める。このような処理の詳細を以下で説明する。
【0027】
図4は、整合回路51の回路構成及び回路素子値の一例を示す図である。図4には、動作周波数が1.2GHzになるように最適化した整合回路51の回路構成及び回路素子値をアンテナ50とともに示す。
【0028】
整合回路51は、抵抗器51R1、51R2とインダクタ51L1、51L2とを有する。抵抗器51R1、51R2とインダクタ51L1、51L2の各々は、第1素子の一例である。
【0029】
抵抗器51R1は、端子51A及び51Bの間からグランド電位点51Gに向けて分岐した分岐線路にインダクタ51L1とともに直列に挿入されている。抵抗器51R1の抵抗値は0.4Ωであり、インダクタ51L1のインダクタンスは31.3nHである。なお、インダクタ51L1は抵抗器51R1の寄生インダクタンスを表したものであってもよい。
【0030】
抵抗器51R2は、端子51A及び51Bの間から分岐線路が分岐する分岐点と、端子51Bとの間にインダクタ51L2とともに直列に挿入されている。抵抗器51R2の抵抗値は0.4Ωであり、インダクタ51L2のインダクタンスは26.9nHである。なお、インダクタ51L2は抵抗器51R2の寄生インダクタンスを表したものであってもよい。
【0031】
このような整合回路51の回路構成及び回路素子値は、例えば整合回路51の設計時に作成される回路構成及び回路素子値を表すデータによって表すことができる。
【0032】
図5は、アンテナ50のS11パラメータの周波数特性を示す図である。図4に示すように動作周波数が1.2GHzになるように最適化した整合回路51をアンテナ50に接続してあるため、電圧反射係数を表すS11パラメータは、1.2GHzにおいて低い値が得られている。なお、図5に示すS11パラメータの周波数特性は、電磁界シミュレータによって計算されたものである。
【0033】
図6は、インピーダンス計算プログラムが生成する仮想的な整合回路52をアンテナ50及び整合回路51に接続した回路を示す図である。インピーダンス計算プログラムは、図4に示す整合回路51の回路構成及び回路素子値に基づいて、端子51Bに対して整合回路51とはミラー対称性を有する回路構成を備え、各回路素子値の符号を逆にした(正から負に反転させた)回路素子を有する整合回路52を生成する。
【0034】
このような整合回路52は、整合回路51のF行列の逆行列として求まるF行列によって表される整合回路である。F行列は、伝送行列又は基本行列である。
【0035】
整合回路52は、抵抗器52R1、52R2とインダクタ52L1、52L2とを有する。抵抗器52R1、52R2とインダクタ52L1、52L2との各々は、第2素子の一例である。
【0036】
抵抗器52R1は、端子52A及び52Bの間からグランド電位点52Gに向けて分岐した分岐線路にインダクタ52L1とともに直列に挿入されている。抵抗器52R1の抵抗値は-0.4Ωであり、インダクタ52L1のインダクタンスは-31.3nHである。
【0037】
抵抗器52R2は、端子52A及び52Bの間から分岐線路が分岐する分岐点と、端子52Aとの間にインダクタ52L2とともに直列に挿入されている。抵抗器52R2の抵抗値は-0.4Ωであり、インダクタ52L2のインダクタンスは-26.9nHである。
【0038】
このように、インピーダンス計算プログラムは、端子51B及び52Aに対して整合回路51とはミラー対称性を有する回路構成を備え、各回路素子値の符号を逆にした(正から負に反転させた)回路素子(抵抗器52R1、52R2とインダクタ52L1、52L2)を有する整合回路52を生成する。このような負の抵抗値及びインダクタンスのような回路素子値を有する整合回路52は、インピーダンス計算プログラムによって生成される仮想的な回路であることから実現可能なものである。
【0039】
このような整合回路52を、動作周波数が1.2GHzになるように最適化した整合回路51の端子51B(ポート2)に対してミラー対称になるように接続すると、端子52Bから見ると、整合回路51のインピーダンスと整合回路52のインピーダンスとが相殺されてゼロになり、動作周波数が1.2GHzのアンテナ50の単独のインピーダンスがあることと等価になる。
【0040】
図7は、1.2GHz用の整合回路52を1.5GHz用に換算した整合回路におけるF行列を求める処理を説明する図である。ここでは、図7の左側に示す1.2GHz用の回路素子値(-0.4Ω、-31.3nH、-0.4Ω、-26.9nH)を有する整合回路52を1.5GHz用に換算した場合の整合回路のF行列をFtとする。このようなFtを求めると、図7の右側に示すようなA~Dの値を含むFtが求まる。
【0041】
ここで、図8を用いて、1.2GHz用の整合回路52を1.5GHz用に換算した整合回路のF行列を求める具体的な方法について説明する。図8は、1.5GHz用に換算した整合回路のF行列の求め方を説明する図である。
【0042】
図8に示すように、抵抗器52R1をRp、インダクタ52L1をLpとし、抵抗器52R2をRs、インダクタ52L2をLsとする。また、Rp、Lpを表すF行列をFpとし、Rs、Lsを表すF行列をFsとする。
【0043】
1.5GHzであるため周波数f=1.5×10とすると、角周波数ωと、Rs、Ls、Rp、Lpとの各値は次式(1)の通りである。
【0044】
【数1】
【0045】
Fsは次式(2)のように計算することができる。なお、ZsはRsとLsの合成インピーダンスを表す。
【0046】
【数2】
【0047】
また、Fpは次式(3)のように計算することができる。
【0048】
【数3】
【0049】
そして、式(2)と(3)から、1.2GHz用の整合回路52を1.5GHz用に換算した整合回路のF行列であるFtは、次式(4)のように計算することができる。
【0050】
【数4】
【0051】
次に、インピーダンス計算プログラムは、式(4)で表されるFtを用いて、1.5GHzにおけるアンテナ50の単独のインピーダンスを求める。図9は、1.5GHzにおけるアンテナ50の単独のインピーダンスを求める際の回路構成を示す図である。
【0052】
1.5GHzにおけるアンテナ50の単独のインピーダンスを求める際には、アンテナ50及び整合回路51の端子51Bから見た1.5GHzにおけるインピーダンスをZamとし、アンテナ50及び整合回路51をインピーダンスがZamの1つの回路51Cとして取り扱う。なお、動作周波数が1.5GHzの場合の端子51Bにおける電圧をVam、電流をIamとする。
【0053】
また、整合回路52Mの端子52Aを端子51Bに接続する。整合回路52Mは、1.2GHz用の整合回路52を1.5GHz用に換算した整合回路であり、整合回路52MのF行列はFtである。整合回路52Mは、整合回路52と同様に端子52A(ポート1)と端子52B(ポート2)を有する。
【0054】
このような整合回路52Mを回路51Cに接続すれば、回路51CのインピーダンスZamと整合回路52Mのインピーダンスとが相殺されるため、整合回路52Mの端子52Bから回路51C側を見ると、1.5GHzにおけるアンテナ50の単独のインピーダンスが見えることになる。
【0055】
ここで、端子52Bの電圧をV2、電流をI2とすると、電圧V2、電流I2は次式(5)で表すことができる。
【0056】
【数5】
【0057】
ここで、インピーダンスZam、電圧Vam、電流Iamには次式(6)が成立する。
【0058】
【数6】
【0059】
式(6)を式(5)に代入して解くと、インピーダンスZamを次式(7)のように求めることができる。
【0060】
【数7】
【0061】
また、1.5GHzにおけるアンテナ50の単独のインピーダンスZaは、電圧V2と電流I2の比で求まるため、次式(8)のように計算することができる。
【0062】
【数8】
【0063】
以上のように、1.5GHzにおけるアンテナ50の単独のインピーダンスZaを求めることができる。
【0064】
さらに、式(8)で表される1.5GHzにおけるアンテナ50の単独のインピーダンスZaを用いて、1.5GHzにおけるアンテナ50の整合回路を求めると、例えば、図10に示すような整合回路53を求めることができる。図10は、アンテナ50と整合回路53を示す図である。
【0065】
整合回路53は、整合回路51と同様の回路構成(回路トポロジ)を有し、端子53A、53B、抵抗器53R1、53R2、及びインダクタ53L1、53L2を有する。端子53A、53B、抵抗器53R1、53R2、及びインダクタ53L1、53L2の接続関係は、整合回路51の端子51A、51B、抵抗器51R1、51R2、及びインダクタ51L1、51L2と同様である。
【0066】
抵抗器53R1は0.2Ω、インダクタ53L1は13.9nH、抵抗器53R2は0.2Ω、インダクタ53L2は3.72nHである。このような回路構成と回路素子値は、例えばマイクロ波シミュレータのような整合回路を自動設計するプログラム(整合回路自動設計プログラム)によって求めることができる。インピーダンス計算プログラムは、このような整合回路自動設計プログラムを含んでいてもよい。また、マイクロ波シミュレータの代わりに、特開2017-142731号公報に記載されたアンテナ設計用コンピュータプログラムを用いてもよい。
【0067】
図11は、アンテナ50に接続した整合回路53のS11パラメータの周波数特性を示す図である。動作周波数が1.5GHzになるように最適化した整合回路53をアンテナ50に接続してあるため、電圧反射係数を表すS11パラメータは、1.5GHzにおいて低い値が得られている。なお、図11に示すS11パラメータの周波数特性は、電磁界シミュレータによって計算されたものである。
【0068】
図12は、実施の形態のインピーダンス計算装置100を示す図である。インピーダンス計算装置100は、インピーダンス計算プログラムを実行する計算装置である。また、インピーダンス計算装置100がインピーダンス計算プログラムを実行することによって実現される方法は、インピーダンス計算方法である。以下では、アンテナ50と整合回路51、52(図3参照)を用いて説明する。
【0069】
インピーダンス計算装置100は、制御装置110及び通信部120を含む。制御装置110は、図1に示す本体部21によって実現され、通信部120は、図1に示すモデム25によって実現される。以下では、制御装置110の構成、機能、及び動作等について説明する。
【0070】
制御装置110は、主制御部111、回路構成取得部112、整合回路生成部113、F行列計算部114、インピーダンス計算部115、整合回路計算部116、及びメモリ117を有する。主制御部111、回路構成取得部112、整合回路生成部113、F行列計算部114、インピーダンス計算部115、及び整合回路計算部116は、制御装置110の機能を表したものであり、メモリ117は、制御装置110のメモリを機能的に表したものである。
【0071】
主制御部111は、制御装置110の処理を統括する処理部であり、回路構成取得部112、整合回路生成部113、F行列計算部114、インピーダンス計算部115、整合回路計算部116、及びメモリ117が実行する処理以外の処理を行う。
【0072】
回路構成取得部112は、整合回路51の回路構成(回路トポロジ)と回路素子値を取得する。すなわち、回路構成取得部112は、例えば図4に示す整合回路51の回路構成及び回路素子値を表すデータを取得する。このようなデータはメモリ117に格納しておけばよく、回路構成取得部112がメモリ117から読み出せばよい。なお、利用者がキーボード23及びマウス24(図1参照)等を用いて回路構成及び回路素子値を表すデータを入力してもよい。
【0073】
整合回路生成部113は、回路構成取得部112によって取得された回路構成(回路トポロジ)と回路素子値に基づいて、仮想的な整合回路52を生成する。整合回路生成部113は、例えば図6に示す整合回路52のように、整合回路51とはミラー対称性を有する回路構成を備え、各回路素子値の符号を負に反転させた回路素子を有する整合回路52を生成する。
【0074】
F行列計算部114は、整合回路生成部113によって生成された1.2GHz用の整合回路52を1.5GHz用に換算した整合回路のF行列を求める計算処理を行う。具体的には、F行列計算部114は、例えば、式(1)~(4)を用いて、1.2GHz用の整合回路52を1.5GHz用に換算した整合回路のF行列であるFtを求める。
【0075】
インピーダンス計算部115は、F行列計算部114によって計算されたFt(1.2GHz用の整合回路52を1.5GHz用に換算した整合回路のF行列)を用いて、1.5GHzにおけるアンテナ50の単独のインピーダンスZaを求める計算処理を行う。具体的には、例えば、式(5)~(8)を用いて、1.5GHzにおけるアンテナ50の単独のインピーダンスZaを求める計算処理を行う。
【0076】
整合回路計算部116は、インピーダンス計算部115によって計算された1.5GHzにおけるアンテナ50の単独のインピーダンスZaに基づいて、1.5GHzを動作周波数とするアンテナ50にインピーダンスが整合する整合回路の回路構成及び回路素子値を計算する。整合回路計算部116は、インピーダンス計算プログラムに含まれる整合回路自動設計プログラムであり、例えば、図10に示す整合回路53の回路構成及び回路素子値を求める計算処理を行う。
【0077】
メモリ117は、インピーダンス計算プログラム(整合回路自動設計プログラムを含む)の他、インピーダンス計算プログラムを実行する際に利用するデータ等を格納する。また、メモリ117は、アンテナ50に接続される整合回路51の回路構成及び回路素子値を表すデータを格納する。
【0078】
図13は、実施の形態のインピーダンス計算プログラムの処理を表すフローチャートを示す図である。
【0079】
主制御部111は、コンピュータシステム20のキーボード23(図1参照)等への入力操作によって処理を開始するコマンドが入力されると、処理をスタートさせる。
【0080】
回路構成取得部112は、メモリ117から整合回路51の回路構成と回路素子値を取得する(ステップS1)。
【0081】
整合回路生成部113は、ステップS1で取得された回路構成と回路素子値に基づいて、仮想的な整合回路を生成する(ステップS2)。ステップS2の処理により、整合回路51とはミラー対称性を有する回路構成を備え、各回路素子値の符号を負に反転させた回路素子を有する1.2GHz用の整合回路52が生成される。
【0082】
主制御部111は、変更後の動作周波数を取得する(ステップS3)。主制御部111は、利用者がキーボード23等を操作して入力する変更後の動作周波数(ここでは1.5GHz)を取得する。
【0083】
F行列計算部114は、ステップS2で生成された1.2GHz用の整合回路52を1.5GHz用に換算した整合回路のF行列であるFtを求める計算処理を行う(ステップS4)。ステップS4において、F行列計算部114は、例えば、式(1)~(4)を用いて、1.2GHz用の整合回路52を1.5GHz用に換算した整合回路のF行列であるFtを求める。
【0084】
インピーダンス計算部115は、ステップS4で計算されたFt(1.2GHz用の整合回路52を1.5GHz用に換算した整合回路のF行列)を用いて、1.5GHzにおけるアンテナ50の単独のインピーダンスZaを求める計算処理を行う(ステップS5)。ステップS5において、インピーダンス計算部115は、式(5)~(8)を用いて、1.5GHzにおけるアンテナ50の単独のインピーダンスZaを求める。
【0085】
整合回路計算部116は、ステップS5で計算された1.5GHzにおけるアンテナ50の単独のインピーダンスZaに基づいて、1.5GHzを動作周波数とするアンテナ50にインピーダンスが整合する整合回路の回路構成及び回路素子値を求める計算処理を行う(ステップS6)。
【0086】
主制御部111は、ステップS6で求められた回路構成及び回路素子値をディスプレイ22に表示する(ステップS7)。ステップS6で求められた回路構成及び回路素子値の組み合わせが複数ある場合には、主制御部111は、整合回路51と同一の回路構成を含む組み合わせのデータを優先的に表示する。優先的に表示する方法としては、順位を設け、整合回路51と同一の回路構成を含む組み合わせのデータを1位に表示するか、又は、整合回路51と同一の回路構成を含む組み合わせのデータのみを表示する方法等がある。
【0087】
以上、実施の形態によれば、アンテナ50に接続されてインピーダンスが整合している整合回路51とはミラー対称性を有する回路構成を備え、各回路素子値の符号を負に反転させた回路素子を有する1.2GHz用の整合回路52を生成し、1.2GHz用の整合回路52を1.5GHz用に換算した整合回路52Mを表すF行列であるFtを求める。そして、Ftを用いて、1.5GHzにおけるアンテナ50及び整合回路51の合成インピーダンスZamを求め、さらに1.5GHzにおけるアンテナ50のインピーダンスZaを求める。
【0088】
このため、非常に簡単な処理で1.5GHzにおけるアンテナ50のインピーダンスZaを求めることができる。そして、このような処理は、コンピュータがプログラムを実行することで実現可能である。
【0089】
したがって、インピーダンスを容易に計算できるインピーダンス計算プログラムを提供することができる。
【0090】
ここで、比較用に、回路方程式を立てることによって1.5GHzを動作周波数とするアンテナ50にインピーダンスが整合する整合回路の回路構成及び回路素子値を求める手法について説明する。
【0091】
図14は、アンテナ50に接続される比較用の整合回路60を示す図である。整合回路60の回路構成は、上述した整合回路51と同様であり、抵抗器51R1に相当する抵抗器の値をRp1、インダクタ51L1に相当するインダクタの値をLp1とし、抵抗器51R2に相当する抵抗器の値をRs1、インダクタ51L2に相当するインダクタの値をLs1とする。なお、ωは角周波数である。
【0092】
アンテナ50の1.5GHzにおける未知のインピーダンスをZa1、整合回路60の端子61Bから見た1.5GHzにおける既知のインピーダンスをZam1とすると、Zam1は次式(9)で表すことができる。
【0093】
【数9】
【0094】
式(9)を順次変形して行くと、式(10)、式(11)、式(12)が得られる。
【0095】
【数10】
【0096】
【数11】
【0097】
【数12】
【0098】
アンテナ50のインピーダンスZa1は、式(12)のように表されるが、整合回路60の回路構成が変われば式(9)~(12)を変更する必要があり、プログラムで自動的に計算処理を実現するのは困難である。また、回路構成がさらに複雑になると、プログラムを組んで計算すること自体が難しくなる。
【0099】
これに対して、実施の形態のインピーダンス計算プログラムは、整合回路51の回路構成及び回路素子値を用いて、上述したステップS1~S6の処理を行うことにより、1.5GHzにおけるアンテナ50の単独のインピーダンスZaを簡単に求めることができる。
【0100】
また、さらにステップS7で1.5GHzを動作周波数とするアンテナ50にインピーダンスが整合する整合回路の回路構成及び回路素子値を求めることができる。
【0101】
したがって、インピーダンスを容易に計算できるインピーダンス計算プログラムを提供することができる。
【0102】
また、インピーダンス計算プログラムを利用して、変更後の周波数におけるインピーダンスと、変更後の動作周波数でアンテナ50にインピーダンスが整合する整合回路の回路構成及び回路素子値とを求めれば、従来に比べて非常に短時間で変更後の動作周波数で動作するアンテナ50及び整合回路51を作製することができる。
【0103】
例えば、従来は、次の(1)~(6)のような作業を行って動作周波数を変更したアンテナ50及び回路素子53(図10参照)を含む回路を作製していた。(1)アンテナ50から1.2GHz用の整合回路51(図4参照)を取り外すのに10分、(2)整合回路51の回路素子を取り外した箇所を短絡する0Ωの回路素子を実装するのに15分、(3)アンテナ50単独のインピーダンスを測定するのに10分、(4)1.5GHz用の整合回路53の回路構成及び回路素子値を計算するのに10分、(5)0Ωの回路素子((2)で実装した回路素子)を取り外すのに10分、(6)1.5GHz用の整合回路53の回路構成及び回路素子を実装するのに15分掛かっていた。(1)、(2)、(5)、(6)は手作業であり、(1)~(6)の合計作業時間は70分である。
【0104】
実施の形態のインピーダンス計算プログラムでは、(2)、(3)、(5)の作業が不要になるため、35分に短縮することができる。
【0105】
したがって、動作周波数を変更したアンテナ50及び回路素子51を含む回路を短時間で作製することができる。
【0106】
なお、以上では、アンテナ50のインピーダンスZaを求める形態について説明したが、アンテナ50以外の2端子型の高周波部品のインピーダンスを求めることも可能である。例えば、終端回路、又は、インピーダンスを調整する回路等の高周波部品の未知のインピーダンスを求めてもよい。
【0107】
また、以上では、整合回路51のF行列の逆行列として求まるF行列によって表される整合回路52を求める形態について説明した。ここで、F行列は、Y行列(アドミタンス行列)及びZ行列(インピーダンス行列)に変換可能である。
【0108】
このため、整合回路51のF行列の逆行列として求まるF行列によって表される整合回路52を求めることは、整合回路51のY行列の逆行列として求まるY行列によって表される整合回路52を求めることと等価的に扱うことができる。また、整合回路51のF行列の逆行列として求まるF行列によって表される整合回路52を求めることは、整合回路51のZ行列の逆行列として求まるZ行列によって表される整合回路52を求めることと等価的に扱うことができる。
【0109】
また、以上では、F行列計算部114が整合回路生成部113によって生成された1.2GHz用の整合回路52を1.5GHz用に換算した整合回路のF行列を求める計算処理を行う形態について説明した。F行列は、Y行列(アドミタンス行列)及びZ行列(インピーダンス行列)に変換可能である。
【0110】
このため、整合回路生成部113によって生成された1.2GHz用の整合回路52を1.5GHz用に換算した整合回路のY行列を求めてもよいし、整合回路生成部113によって生成された1.2GHz用の整合回路52を1.5GHz用に換算した整合回路のZ行列を求めてもよい。
【0111】
そして、インピーダンス計算部115は、1.2GHz用の整合回路52を1.5GHz用に換算した整合回路のY行列又はZ行列を用いて、1.5GHzにおけるアンテナ50の単独のインピーダンスZaを求めてもよい。
【0112】
最後に、インピーダンス計算装置100の入力画面の一例について説明する。図15は、インピーダンス計算装置100の入力画面23Aの一例を示す図である。このような画面は、ディスプレイ22(図1)に表示される。
【0113】
アンテナ50及びポート55の間の線路と、グランドに分岐する線路とには、抵抗器(白抜きの四角い記号)、インダクタ(黒塗り潰しの四角い記号)、及びキャパシタ(キャパシタの記号)の直列回路が設けられており、抵抗値(Ω)、インダクタンス(nH)、又はキャパシタンス(pF)の具体的な値を入力することができる。また、抵抗値(Ω)、インダクタンス(nH)、又はキャパシタンス(pF)を0に設定するとショート(短絡)、-1に設定するとオープン(開放)に設定することができる。
【0114】
また、「入力ファイル」の欄と、整合させたい周波数を入力する「整合周波数」(MHz)の欄とが設けられている。
【0115】
インピーダンス計算装置100の利用者が整合回路51の設計時に作成される回路構成及び回路素子値を表すデータのファイル名を「入力ファイル」の欄に入力するとともに、「整合周波数」(MHz)の欄に変更後の動作周波数(例えば、1.5GHz)を入力する。この結果、インピーダンス計算装置100の回路構成取得部112は、図13に示すステップS1においてメモリ117から整合回路51の回路構成と回路素子値を取得する。また、主制御部111は、変更後の動作周波数を取得する。
【0116】
また、図13に示すステップS1において回路構成取得部112がメモリ117から整合回路51の回路構成と回路素子値を取得する代わりに、このような入力画面を通じて利用者によって入力される整合回路51の回路構成と回路素子値を取得してもよい。具体的には、利用者によって図4に示す整合回路51の通りに入力される抵抗器、インダクタ、及びキャパシタの直列回路における各値を整合回路51の回路構成と回路素子値として取得してもよい。
【0117】
図16は、整合回路とS11パラメータの計算結果を示す図である。利用者が入力画面を通じて指定した条件に合致する整合回路の回路構成及び回路素子値と、S11パラメータとが図16に示すように表示される。このようなS11パラメータの計算は、例えば、整合回路計算部116が行えばよい。
【0118】
以上、本発明の例示的な実施の形態のインピーダンス計算プログラムについて説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【0119】
以上の実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
第1ポートに接続される高周波部品と第1周波数でインピーダンスが整合する第1整合回路の第2ポートに、自己の第1ポートを接続すると、前記第1周波数において前記第1整合回路のインピーダンスを相殺するインピーダンスを有する仮想的な第2整合回路を求めることと、
前記求めた第2整合回路に基づいて、前記第2整合回路の第2周波数における伝送行列、アドミタンス行列、又はインピーダンス行列を求めることと、
前記第2整合回路の前記第2周波数における伝送行列、アドミタンス行列、又はインピーダンス行列と、前記高周波部品及び前記第1整合回路の前記第2周波数における合成インピーダンスとに基づいて、前記第2周波数における前記高周波部品のインピーダンスを求めることと
を含む処理をコンピュータに実行させる、インピーダンス計算プログラム。
(付記2)
前記高周波部品のインピーダンスを求めることは、前記第2整合回路の前記第2周波数における伝送行列、アドミタンス行列、又はインピーダンス行列と、前記高周波部品及び前記第1整合回路の前記第2周波数における合成インピーダンスとに基づいて、前記第2整合回路の第2ポートから見た前記第2周波数における前記高周波部品のインピーダンスを求めることである、付記1記載のインピーダンス計算プログラム。
(付記3)
前記第2整合回路は、前記第1整合回路の前記第1周波数における第1伝送行列、第1アドミタンス行列、又は第1インピーダンス行列の逆行列になる第2伝送行列、第2アドミタンス行列、又は第2インピーダンス行列を有する整合回路である、付記1又は2記載のインピーダンス計算プログラム。
(付記4)
前記第2整合回路の第1ポートから第2ポートを見た回路構成は、前記第1整合回路の第2ポートから第1ポートを見た回路構成に対してミラー対称性を有する回路構成であり、
前記第2整合回路に含まれる1又は複数の第2素子の前記第1周波数におけるインピーダンスは、前記第1整合回路に含まれる1又は複数の第1素子の前記第1周波数におけるインピーダンスの符号を逆にした値を有する、付記1乃至3のいずれか一項記載のインピーダンス計算プログラム。
(付記5)
前記第2周波数における前記高周波部品のインピーダンスに基づいて、前記第2周波数において前記高周波部品に整合するインピーダンスを有する整合回路を求めることをさらに含む処理を前記コンピュータに実行させる、付記1乃至4のいずれか一項記載のインピーダンス計算プログラム。
(付記6)
前記第1整合回路に含まれる1又は複数の第1素子のインピーダンスの符号は正であり、前記第2整合回路に含まれる1又は複数の第2素子のインピーダンスの符号は負である、付記4記載のインピーダンス計算プログラム。
(付記7)
前記第1整合回路及び前記第2整合回路は、二端子対回路である、付記1乃至6のいずれか一項記載のインピーダンス計算プログラム。
(付記8)
前記高周波部品は、二端子型である、付記1乃至6のいずれか一項記載のインピーダンス計算プログラム。
【符号の説明】
【0120】
100 インピーダンス計算装置
110 制御装置
111 主制御部
112 回路構成取得部
113 整合回路生成部
114 F行列計算部
115 インピーダンス計算部
116 整合回路計算部
117 メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16